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特開2024-172619ジアミン化合物およびポリアミド化合物
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  • 特開-ジアミン化合物およびポリアミド化合物 図1
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  • 特開-ジアミン化合物およびポリアミド化合物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172619
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ジアミン化合物およびポリアミド化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 381/00 20060101AFI20241205BHJP
   C08G 69/42 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C07C381/00 CSP
C08G69/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090458
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】行森 大貴
【テーマコード(参考)】
4H006
4J001
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB84
4H006TN50
4J001DA01
4J001DB01
4J001DD18
4J001EB57
4J001EC33
4J001EC65
4J001FB03
4J001FC03
4J001FD05
4J001GA13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規なポリアミド化合物を提供する。
【解決手段】本発明のある態様は、下記式(2)で表される構造単位を含むポリアミド化合物である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される、ジアミン化合物。
【化1】
【請求項2】
下記式(2)で表される構造単位を含む、ポリアミド化合物。
【化2】
式(2)において、Rは、2価の有機基である。
【請求項3】
上記Rが、下記式(3)で表される、請求項2に記載のポリアミド化合物。
【化3】
式(3)において、Aは、単結合、直鎖型または分岐型の炭素数1~18のアルキレン、-O-、-CO-、-S-、-SO-および-C(CF-から選択され、「*」は、連結部を表す。また、芳香環の置換基として、式(3)の連結部の隣にカルボキシル基を有してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアミン化合物およびポリアミド化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のポリアミド化合物は、たとえば、テレフタル酸等のジカルボン酸と、1,6-ジアミノヘキサン等のジアミン化合物とを反応させることで製造される。一般に、ポリアミド化合物は、耐熱性が高く、強度に優れるため、エンジニアリングプラスチックとして幅広く利用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-72564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリアミド化合物の適用領域は広がりを増しており、たとえば、電気・電子部品材料への応用が期待されている。
本発明は上述のような期待を鑑みたものであり、新規なジアミン化合物およびそれを用いた新規なポリアミド化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、ジアミン化合物である。当該ジアミン化合物は、下記式(1)で表される。
【化1】
本発明の他の態様は、ポリアミド化合物である。ポリアミド化合物は、下記式(2)で表される構造単位を含む。
【化2】
式(2)において、Rは、2価の有機基である。
上記態様のポリアミド化合物において、上記Rが下記式(3)を含んでもよい。
【化3】
式(3)において、Aは、単結合、直鎖型または分岐型の炭素数1~18のアルキレン、-O-、-CO-、-S-、-SO-および-C(CF-から選択され、「*」は、連結部を表す。また、芳香環の置換基として、式(3)の連結部の隣にカルボキシル基を有してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電気・電子部品用部材に好適である新規なポリアミド化合物に関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1のジアミン化合物の1H-NMR測定における化学シフト値を示すチャートである。
図2】実施例1のポリアミド化合物の1H-NMR測定における化学シフト値を示すチャートである。
図3】実施例1のポリアミド化合物のUV-Vis吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
【0009】
(ジアミン化合物)
実施形態に係るジアミン化合物は、下記式(1)で表される。
【化4】
式(1)において、SF基の結合部位は、NH基の位置に対して、オルト位、パラ位、メタ位のいずれでもよいが、パラ位であることが好ましい。
【0010】
実施形態に係るジアミン化合物の製造例は以下のとおりである。
まず、アミノフェニルサルファーペンタフルオリドを出発原料とし、N-ブロモスクシンイミドを反応させることにより、アミノ基に対してオルト位がブロモ化された中間体を得る。続いて、パラジウム触媒(たとえば、Pd(PPh)、インジウム触媒などを用いた触媒反応により、得られた中間体を二量化することにより、上記式(1)に示すようなジアミン化合物を得ることができる。
【0011】
本実施形態に係るジアミン化合物はポリアミド化合物前駆体として好適に用いることができる。なお、本実施形態においてポリアミド化合物とは、繰り返し単位構造にアミド結合を有する高分子化合物を意味し、ポリアミド酸やポリヒドロキシアミド等のアミド結合以外の官能基を繰り返し単位構造に有する高分子化合物も含まれる。すなわち、本実施形態に係るジアミン化合物は、ポリアミド酸やポリヒドロキシアミド等の前駆体としても用いることができる。
【0012】
(ポリアミド化合物)
実施形態に係るポリアミド化合物は、下記式(2)で表される構造単位を含む。
【化5】
式(2)において、Rは、2価の有機基である。
具体的には、Rは、アルキル基、シクロアルキレン基、アルキルエーテル基、ケトン基、エステル基、芳香環を有する基などが挙げられる。芳香環を有する基としては、例えば、以下の下記式(3)で表されるものが挙げられる。
【化6】
式(3)において、Aは、単結合、直鎖型または分岐型の炭素数1~18のアルキレン、-O-、-CO-、-S-、-SO-および-C(CF-から選択され、「*」は、連結部を表す。また、芳香環の置換基として式(3)の連結部の隣にカルボキシル基を有するポリアミド酸であってもよい。
はベンゼン、ナフタレン、ペリレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ベンゾフェノン等の芳香族炭化水素基、または、ブタン、シクロブタン等の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0013】
実施形態に係るポリアミド化合物の重量平均分子量(Mw)や数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、典型的にはそれぞれ独立に1000~10万である。「重量平均分子量」や「数平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による、ポリスチレンスタンダード換算の重量平均分子量や数平均分子量を意味する。
また、実施形態に係るポリアミド化合物の分子量分散度(Mw/Mn)は典型的には1.5~5.0である。
【0014】
実施形態に係るポリアミド化合物のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上または150℃以上であり、耐熱性に優れている。
【0015】
実施形態に係るポリアミド化合物はSF基を有することにより、以下のような効果を得ることが期待できる。
・SF基は分極率が低く、立体的に嵩高いため、ポリアミド化合物の低誘電化(低Df化)を図ることができる。
・SF基の脂溶性と嵩高さのため、溶媒への溶解性を高めることができる。
・SF基の電子求引性が強いため、紫外線透過性を高めることができる。
・SF基は化学的安定性と疎水性が高いため、ポリアミド化合物のBHAST耐性を向上させることができる。
【0016】
以上示したポリアミド化合物は、低誘電材料や透明材料としての有用性が期待される。
また、ポリアミド化合物をポリアミド酸やポリヒドロキシアミドとした場合には、感光性材料としての有用性が期待される。
【0017】
(ポリアミド化合物の合成方法)
実施形態に係るポリアミド化合物は、N-メチルピロリドン(NMP)などの有機溶媒中で、下記反応式に従って、上述したジアミン化合物と下記式(5)で表されるモノマーとを加熱(たとえば100℃)・反応させることにより得ることができる。
【化7】
式(5)において、Rは2価の有機基である。
具体的には、Rは、アルキル基、シクロアルキレン基、アルキルエーテル基、ケトン基、エステル基、または、芳香環を有する2価の有機基などが挙げられる。芳香環を有する2価の有機基としては、例えば、以下の下記式(3)で表される有機基が挙げられる。
【化8】
上記2価の有機基の構造式において、Aは、単結合、直鎖型または分岐型の炭素数1~18のアルキレン、-O-、-CO-、-S-、-SO-、および-C(CF)から選択され、「*」は、連結部を表す。
はベンゼン、ナフタレン、ペリレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ベンゾフェノン等の芳香環を有する二課の有機基、または、ブタン、シクロブタン等の2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。
また、実施形態に係るポリアミド化合物は、上述したジアミン化合物と酸無水物化合物とを混合・撹拌して反応させることにより得ることもできる。酸無水物化合物は従来公知のものを使用することができる。
【0018】
<組成物>
本実施形態のポリアミド化合物は、他成分と組合せて組成物とすることができる。たとえば、本実施形態のポリアミド化合物と従来公知の無機充填剤とを組み合わせることにより、低誘電特性や放熱特性、高屈折率性といった各種特性を兼ね備えた組成物とすることができる。また、本実施形態のポリアミド酸やポリヒドロキシアミド等を感光性組成物として用いる場合には、ナフトキノンジアジド化合物等と組合せてポジ型の感光性組成物とすることができ、光酸発生剤および架橋剤等と組み合わせてネガ型の感光性組成物とすることもできる。
また、他成分として、例えば、溶媒、架橋剤、熱酸発生剤、シランカップリング剤、増感剤、接着助剤、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子、密着剤、塩基性化合物等を添加することができる。
【0019】
溶媒としては、ポリアミド化合物、および、他の任意の他成分を溶解させるものであれば、特に限定されない。溶媒の具体例としては、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもかまわない。
【0020】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0021】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
<ジアミン化合物の合成>
4-アミノフェニルサルファーペンタフルオリド(9.0g、41.1mmol)を1,4-ジオキサン(70mL)に溶解し、N-ブロモスクシンイミド(7.3g、41.1mmol)を撹拌しながら加えた。室温にて2時間撹拌後、ジクロロメタン(90mL)で希釈した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(90mL)で洗浄し、その後、イオン交換水(90mL)で洗浄した。洗浄後の有機層を飽和食塩水(45mL)と硫酸ナトリウムで脱水操作を行った。得られた有機層を減圧濃縮することで、下記式(a)で表される化合物A12.1gを得た(収率:98.9%)。
【化9】
【0023】
上記化合物A(12.0g、40.3mmol)、インジウム(4.6g、40.3mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(2.3g、2.0mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(80mL)中で混合し、窒素雰囲気下で100℃へ昇温し、温度を維持しながら21時間撹拌した。反応溶液を自然冷却し、ろ過にてインジウムを除去した。洗浄溶媒として、酢酸エチル(50mL)を使用し、得られた有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(90mL)で洗浄し、その後、イオン交換水(90mL)で洗浄した。洗浄後の有機層を飽和食塩水(45mL)と硫酸ナトリウムで脱水操作を行った。有機層を減圧濃縮し、カラム(酢酸エチル/ヘキサン)にて精製し、溶媒を減圧濃縮することで化合物Bを4.6g得た(収率:51.8%)。
【0024】
得られた化合物Bについて、1H-NMR測定を行い(図1参照)、下式(b)で表されるジアミン化合物(SF-NHモノマー)であることを確認した。
【化10】
【0025】
<SF-NHモノマー(ジアミン化合物)の1H-NMR測定における化学シフト値>
1H-NMR(d6-DMSO):δ/ppm=5.55(s,4H),6.83(d, 2H),7.31(d,2H),7.57(dd,2H)
【0026】
<ポリアミド化合物の合成>
攪拌機、温度計を備えた50mLフラスコ中で、得られたジアミン化合物(SF-NH)1.75g(4.01mmol)を、N-メチルピロリドン(NMP)11.2g中で撹拌溶解した。その後、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(DEDC)1.17g(3.96mmol)を固体のまま加え、100℃で12時間撹拌後、溶液を大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。析出した固体を回収後、減圧乾燥して化合物Cを得た。
得られた化合物CについてGPCを用いて分子量を求めたところ、重量平均分子量(Mw)が31,000、数平均分子量(Mn)が15,000、分子量分散度(PDI)が2.0であった。
また、得られた化合物Cについて、1H-NMR測定を行い(図2参照)、下式(c)で表されるポリアミド化合物であることを確認した。
【化11】
【0027】
<ポリアミド化合物の1H-NMR測定における化学シフト値>
1H-NMR(d6-DMSO):δ/ppm=7.06(d,4H),7.72(d,4H),7.81(d,2H),7.91-7.97(m,4H),9.84(s,2H)
【0028】
(UV-Vis吸収特性の評価)
実施例1のポリアミド化合物をシクロペンタノンへ溶解してポリアミド溶液とした後に、石英基板上に膜厚3μmになるように塗布し、乾燥させることでポリアミド化合物の塗膜を形成した。
得られた塗膜のUV-Vis吸収スペクトルを紫外可視分光光度計(日本分光社製、V-570)を用いて取得した。得られたUV-Vis吸収スペクトルを図3に示す。
図3に示すように、実施例1のポリアミド化合物は、吸収端が短波長側にあり、非常に優れた透明性、紫外線透過性を有することが確認された。
図1
図2
図3