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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172734
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ゲッタリング層検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/322 20060101AFI20241205BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241205BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/322 M
H01L21/304 631
H01L21/66 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090657
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沢辺 大樹
【テーマコード(参考)】
4M106
5F057
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA04
4M106CA21
4M106CA53
4M106DJ18
5F057GB02
5F057GB20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シリコンウエーハの電気抵抗率に影響されることがなく、電気抵抗率が10Ω・cm以下でもゲッタリング層が適正に形成されているかを判定できるゲッタリング層検出装置を提供する。
【解決手段】シリコンウエーハ10を保持する保持手段3と、シリコンウエーハ10に光を照射して検出するゲッタリング層検出手段7とを含み、ゲッタリング層検出手段7は、光源71と、光源71が発する光L1をシリコンウエーハ10に照射する照射器74と、シリコンウエーハ10から反射した戻り光を受光する受光部77とを備え、受光部77は分光器84aと分光された第一の波長の戻り光L1’を受光する第一の受光素子77bと、第一の波長より長い第二の波長の戻り光L2’を受光する第二の受光素子77cとを備え、第一の受光素子77bの受光光の強さS1と第二の受光素子77cの受光光の強さS2の比率によってゲッタリング層が形成されているかを判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウエーハの面に金属イオンを保持するゲッタリング層が形成されているか否かを検出するゲッタリング層検出装置であって、
シリコンウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたシリコンウエーハに光を照射してゲッタリング層を検出するゲッタリング層検出手段と、を含み、
該ゲッタリング層検出手段は、光源と、該光源が発する光を該保持手段に保持されたシリコンウエーハに照射する照射器と、シリコンウエーハから反射した戻り光を受光する受光部と、を備え、
該受光部は、分光器と、該分光器によって分光された第一の波長の戻り光を受光する第一の受光素子と、該第一の波長よりも長い第二の波長の戻り光を受光する第二の受光素子と、を少なくとも備え、
該第一の受光素子が受光した光の強さと該第二の受光素子が受光した光の強さとの比率によって、ゲッタリング層が形成されているか否かを判定するゲッタリング層検出装置。
【請求項2】
該第一の波長は、
鏡面加工されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さが、ゲッタリング層が形成されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さより大きい300nm帯域が選択され、
該第二の波長は、
鏡面加工されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さが、ゲッタリング層が形成されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さより小さい600nm帯域が選択される請求項1に記載のゲッタリング層検出装置。
【請求項3】
該受光部は、該第一の波長よりも長く、該第二の波長よりも短い第三の波長の戻り光を受光する第三の受光素子を備え、
該第三の波長は、
鏡面加工されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さが、ゲッタリング層が形成されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さと略同じとなる400nm帯域が選択され、
該照射器は、400nmの光の戻り光が該第三の受光素子によって最も強く受光される集光位置に設定される請求項2に記載のゲッタリング層検出装置。
【請求項4】
鏡面加工されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光を該第一の受光素子が受光した光の強さと該第二の受光素子が受光した光の強さとが同じになるように調整される請求項1に記載のゲッタリング層検出装置。
【請求項5】
該光源は、ハロゲンランプである請求項1に記載のゲッタリング層検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエーハの面に金属イオンを保持するゲッタリング層が形成されているか否かを検出するゲッタリング層検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたシリコンウエーハは、研削装置によって裏面が研削され、所望の厚みに形成された後、切削装置、又はレーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、シリコンウエーハの内部に金属イオンが存在すると金属イオンが遊動してデバイスの機能を低下させることから、シリコンウエーハの裏面に対し、抗折強度を低下させない程度にゲッタリング層と称される歪層を形成することで金属イオンの遊動を抑制してデバイスの機能の低下を抑制している(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
近年においては、デバイスチップの小型化が要求されているのに伴い、デバイスチップが薄化される傾向があることから、ゲッタリング層を形成する際には、デバイスの機能を低下させないようにしつつ、抗折強度を低下させない程度の研削加工を実施する必要があり、ゲッタリング層が適正に形成されているのかを検出する必要がある。
【0005】
シリコンウエーハの裏面に形成されたゲッタリング層を構成する非晶質(アモルファス)層の厚みを検出する手段としては、該アモルファス層が形成されたシリコンウエーハの抵抗(電気抵抗率)を検出するマイクロPCD法が知られており、このマイクロPCD法によって、シリコンウエーハの裏面にゲッタリング層が形成されているか否かを検出することができる(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-317846号公報
【特許文献2】特開2016-015390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本出願人が、上記のマイクロPCD法について検討したところ、シリコンウエーハの電気抵抗率が10Ω・cm以下であると、ゲッタリング層が適正に形成されている否かを判定できないという問題があることが判明した。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、シリコンウエーハの電気抵抗率に影響されることがなく、シリコンウエーハの電気抵抗率が10Ω・cm以下であってもゲッタリング層を検出し、適正に形成されているか否かを判定することができるゲッタリング層検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、シリコンウエーハの面に金属イオンを保持するゲッタリング層が形成されているか否かを検出するゲッタリング層検出装置であって、シリコンウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたシリコンウエーハに光を照射してゲッタリング層を検出するゲッタリング層検出手段と、を含み、該ゲッタリング層検出手段は、光源と、該光源が発する光を該保持手段に保持されたシリコンウエーハに照射する照射器と、シリコンウエーハから反射した戻り光を受光する受光部と、を備え、該受光部は、分光器と、該分光器によって分光された第一の波長の戻り光を受光する第一の受光素子と、該第一の波長よりも長い第二の波長の戻り光を受光する第二の受光素子と、を少なくとも備え、該第一の受光素子が受光した光の強さと該第二の受光素子が受光した光の強さとの比率によって、ゲッタリング層が形成されているか否かを判定するゲッタリング層検出装置が提供される。
【0010】
該第一の波長は、鏡面加工されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さが、ゲッタリング層が形成されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さより大きい300nm帯域が選択され、該第二の波長は、鏡面加工されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さが、ゲッタリング層が形成されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さより小さい600nm帯域が選択されることが好ましい。また、該受光部は、該第一の波長よりも長く、該第二の波長よりも短い第三の波長の戻り光を受光する第三の受光素子を備え、該第三の波長は、鏡面加工されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さが、ゲッタリング層が形成されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さと略同じとなる400nm帯域が選択され、該照射器は、400nmの光の戻り光が該第三の受光素子によって最も強く受光されるようにしてもよい。さらに、鏡面加工されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光を該第一の受光素子が受光した光の強さと該第二の受光素子が受光した光の強さとが同じになるように調整されるようにすることもできる。該光源は、ハロゲンランプを選択することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゲッタリング層検出装置は、シリコンウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたシリコンウエーハに光を照射してゲッタリング層を検出するゲッタリング層検出手段と、を含み、該ゲッタリング層検出手段は、光源と、該光源が発する光を該保持手段に保持されたシリコンウエーハに照射する照射器と、シリコンウエーハから反射した戻り光を受光する受光部と、を備え、該受光部は、分光器と、該分光器によって分光された第一の波長の戻り光を受光する第一の受光素子と、該第一の波長よりも長い第二の波長の戻り光を受光する第二の受光素子と、を少なくとも備え、該第一の受光素子が受光した光の強さと該第二の受光素子が受光した光の強さとの比率によって、ゲッタリング層が形成されているか否かを判定することから、シリコンウエーハの電気抵抗率に影響されることなく、シリコンウエーハの電気抵抗率が10Ωcm以下であっても、シリコンウエーハに形成されたゲッタリング層が適正か否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ゲッタリング層検出装置の全体斜視図である。
図2】被検出物であるウエーハ及び保護テープの斜視図である。
図3図1に示すゲッタリング層検出装置に装着されるゲッタリング層検出手段を構成する第一の光学系を示すブロック図である。
図4】シリコンウエーハに照射される光の波長と実効反射率との関係を示す概念図である。
図5】ゲッタリング層が適正に形成されているかの判定に使用するゲッタリング層比率マップの概念図である。
図6図1のゲッタリング層検出装置に装着されるゲッタリング層検出手段を構成する第二の光学系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に基づいて構成されるゲッタリング層検出装置に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0014】
図1には、シリコンウエーハの面に金属イオンを保持するゲッタリング層が形成されているか否かを検出するゲッタリング層検出装置1の全体斜視図が示されている。図示のゲッタリング層検出装置1は、基台2上に配設され、シリコンウエーハ10を保持する保持手段3と、該保持手段3に保持されたシリコンウエーハ10に光を照射してゲッタリング層を検出するためのゲッタリング層検出手段7とを少なくとも備えている。
【0015】
ゲッタリング層検出装置1は、上記したゲッタリング層検出手段7に加え、保持手段3を移動する移動手段4と、該移動手段4の側方に立設される垂直壁部5a及び垂直壁部5aの上端部から水平方向に延びる水平壁部5bからなる枠体5とを備え、各作動部を制御すると共にゲッタリング層が形成されているか否かを判定する制御手段100と、を備えている。
【0016】
保持手段3は、シリコンウエーハ10を保持する手段であり、図1に示すように、X軸方向において移動自在に基台2に搭載された矩形状のX軸方向可動板31と、X軸方向に直交するY軸方向において移動自在にX軸方向可動板31に搭載された矩形状のY軸方向可動板32と、Y軸方向可動板32の上面に固定された円筒状の支柱33と、支柱33の上端に固定された矩形状のカバー板34とを含む。カバー板34にはカバー板34上に形成された長穴を通って上方に延びるチャックテーブル35が配設されている。チャックテーブル35は、支柱33内に収容された図示を省略する回転駆動手段により回転可能に構成される。チャックテーブル35の上面には、通気性を有する多孔質材料から形成され、X座標及びY座標で特定されるXY平面を保持面とする円形状の吸着チャック36が配設されている。吸着チャック36は、支柱33を通る流路によって図示を省略する吸引手段に接続されている。
【0017】
移動手段4は、チャックテーブル35をX軸方向に移動するX軸移動手段42と、チャックテーブル35をY軸方向に移動するY軸移動手段44と、を備え、X軸移動手段42は、モータ42aの回転運動を、ボールねじ42bを介して直線運動に変換してX軸方向可動板31に伝達し、基台2上にX軸方向に沿って配設された一対の案内レール2A、2Aに沿ってX軸方向可動板31をX軸方向に移動させる。Y軸移動手段44は、モータ44aの回転運動を、ボールねじ44bを介して直線運動に変換し、Y軸方向可動板32に伝達し、X軸方向可動板31上においてY軸方向に沿って配設された一対の案内レール31a、31aに沿ってY軸方向可動板32をY軸方向に移動させる。
【0018】
枠体5の水平壁部5bの内部には、上記のゲッタリング層検出手段7を構成する光学系であって、図3に示すような第一の実施形態である第一の光学系70、又は図6に示すような第二の実施形態である第二の光学系80が収容される。なお、第一の光学系70と、第二の光学系80とは、略同一の機能を有する光学系であり、いずれの光学系を採用しても、本発明の効果を得ることが可能であり、以下に順を追って説明する。
【0019】
図2には、本実施形態のゲッタリング層検出装置1によってゲッタリング層が検出される被検出物であるシリコンウエーハ10が示されている。図示のシリコンウエーハ10は、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画され表面10aに形成されたシリコンのウエーハであり、図示のように、表面10aに対して保護テープTを貼着し一体とした後、反転して裏面10bを上方に露出させる。被検出物となるシリコンウエーハ10は、事前に図示を省略する研削装置に搬送されて、裏面10bが研削加工され、所望の厚みに加工されている。その研削加工の際、シリコンウエーハ10における金属イオンの遊動によって生じるデバイス12の機能の低下を抑制し、且つ抗折強度を低下させない程度にシリコンウエーハ10の裏面10bを研削して、ゲッタリング層と称される歪層を形成している。しかし、実際に該裏面10bにゲッタリング層が適正な厚みで形成されているのか否かは、目視により確認することは困難であることから、以下に説明する本実施形態のゲッタリング層検出手段7を使用してゲッタリング層を検出し、該ゲッタリング層が適正に形成されているのか否かを判定する。
【0020】
図3には、本実施形態のゲッタリング層検出手段7を構成する第一の光学系70のブロック図が示されている。該第一の光学系70は、光源71と、該光源71が発する光を保持手段3のチャックテーブル35に保持されたシリコンウエーハ10の裏面10bに照射する照射器74と、シリコンウエーハ10から反射した戻り光を受光する受光部77と、を備えている。
【0021】
図3に示す光源71は、第一の光源72と、第二の光源73とを備えている。第一の光源72は、第一の波長の光L1を発するファイバ出力LED72bと、該ファイバ出力LED72bの出力を調整するLEDドライバ72aとを備えている。また第二の光源73は、第一の波長の光L1よりも長い波長である第二の波長の光L2を発するファイバ出力LED73bと、該ファイバ出力LED73bの出力を調整するLEDドライバ73aとを備えている。上記の第一の光源72から照射される第一の波長の光L1は、例えば、365nmの波長の光であり、第二の光源73から照射される第二の波長の光L2は、例えば、617nmの波長の光が選択される。
【0022】
照射器74は、第一のファイバカプラ75と、第二のファイバカプラ76とを備えている。第一のファイバカプラ75は、第一の光源72の第一の波長の光L1が出力されるコネクタ72cと、第二の光源73の第二の波長の光L2が出力されるコネクタ73cとに接続される2つの光ファイバからなる光路を有し、該光L1と光L2とを合波してコネクタ75aから出力された光L3は、ファイバ端76aから、保持手段3のチャックテーブル35に保持されるシリコンウエーハ10に向けて照射される。
【0023】
光L3がチャックテーブル35に保持されたシリコンウエーハ10にて反射した戻り光L3’は、ファイバ端76aから、第二のファイバカプラ76に導入されて受光部77側に導かれる。図示の受光部77は、分光器77aと、該分光器77aによって分光された第一の波長の戻り光L1’を受光する第一の受光素子77bと、該第一の波長よりも長い第二の波長の戻り光L2’を受光する第二の受光素子77cと、を備えている。分光器77aは、戻り光L3’を波長毎に分光する手段であり、例えば、回折格子、プリズム等により構成され、戻り光L3’を、上記した第一の波長の光L1に対応する第一の戻り光L1’と、上記した第二の波長の光L2に対応する第二の戻り光L2’とに分光し出力する。分光器77aによって分光された第一の戻り光L1’は、第一の受光素子77bに導かれて光の強さ(光強度)S1が検出され、第二の戻り光L2’は、第二の受光素子77cに導かれて光の強さ(光強度)S2が検出される。第一の受光素子77bと、第二の受光素子77cによって検出された光強度S1、S2は、図3では図示が省略されている上記の制御手段100に伝達され、制御手段100によって、該第一の戻り光L1’の光の強さS1と該第二の戻り光L2’の光の強さS2との比率(S2/S1)に基づいて、チャックテーブル35に保持されたシリコンウエーハ10にゲッタリング層が形成されているか否かを検出し、適正なゲッタリング層であるか否かを判定する。
【0024】
ここで、上記した第一の受光素子78aが受光した第一の戻り光L1’の光の強さS1と第二の受光素子78bが受光した第二の戻り光L2’の光の強さS2との比率(S2/S1)によって、チャックテーブル35に保持されたシリコンウエーハ10にゲッタリング層が形成されているか否かを検出し、適正なゲッタリング層であるか否かを判定する手順について、より具体的に説明する。
【0025】
まず、シリコンウエーハであって、研削及び研磨加工が施されて鏡面加工された単結晶のシリコンウエーハ、すなわちゲッタリング層となる非晶質(アモルファス)層が全く形成されていない結晶質のシリコンウエーハに対し、波長を変化させながら一定の強度の光を照射し、その戻り光を測定して実効反射率を測定すると、図4において、丸印で示すように、波長(横軸で示されている)に応じて、シリコンウエーハが100%結晶質である場合に特有の実効反射率(縦軸で示されている)の変化を示すことが知られている。
【0026】
また、シリコンウエーハ全体がゲッタリング層と称される非晶質(アモルファス)層になるように形成される加工が施された非晶質のシリコンウエーハに対し、波長を変化させながら一定の強度の光を照射して、その戻り光を測定して実効反射率を測定すると、図4において、×印で示すように、波長(横軸で示されている)に応じて、シリコンウエーハが100%非晶質である場合に特有の実効反射率(縦軸で示されている)の変化を示すことも知られている。
【0027】
そして、図4を参照して、シリコンウエーハが100%結晶質で形成されている場合と、100%非結晶質で形成されている場合とを比較すると、照射される光の波長に応じて変化する実効反射率の特性が異なる傾向を示していることが理解される。より具体的に説明すると、照射される光の強度が一定である場合、波長が400nm未満の領域では、鏡面加工された100%結晶質のシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さが、100%ゲッタリング層が形成された非晶質のシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さより大きくなり、波長が400nmより大きい領域では、鏡面加工された100%結晶質のシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さが、100%ゲッタリング層が形成された非晶質のシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さより小さくなる。
【0028】
そこで、本実施形態においては、上記した図4に基づき理解される特性を利用して、以下に説明する手順により、シリコンウエーハ10においてゲッタリング層が適正に形成されているか否かを検出する。
【0029】
まず、非晶質層が形成されていない鏡面加工された単結晶シリコンウエーハを用意する。この単結晶シリコンウエーハは、上記した被検出物であるシリコンウエーハ10と同じ寸法であり、同一のシリコン基板によって構成されたものを用意する。該単結晶シリコンウエーハを、上記したゲッタリング層検出装置1に搬送して、保持手段3のチャックテーブル35に吸引保持する。次いで、上記した移動手段4を作動して、ゲッタリング層検出手段7の直下に該単結晶シリコンウエーハを位置付ける。次いで、上記したゲッタリング層検出手段7の第一の光学系70を構成するLEDドライバ72a、73aによって、第一の光源72から照射される第一の波長(365nm)の光L1の強度と、第二の光源73から照射される第二の波長(617nm)の光L2の強度とを調整して一致させておき、第一の光源72から照射された第一の波長(365nm)の光L1と、第二の光源73から照射された第二の波長(617nm)の光L2とを、照射器74を構成する第一のファイバカプラ75によって合波して光L3を生成すると共に、ファイバ端76aからチャックテーブル35に保持された該単結晶シリコンウエーハに対して照射する。
【0030】
図3に基づき説明したように、チャックテーブル35に向けて照射された光L3は、保持手段3に保持された単結晶シリコンウエーハにおいて反射して戻り光L3’を形成し、該戻り光L3’が第二のファイバカプラ76を介して、受光部77を構成する分光器77aに導かれる。分光器77aにおいて、戻り光L3’は、第一の波長の光L1に対応する第一の戻り光L1’と、第二の波長の光L2に対応する第二の戻り光L2’とに分光されて、第一の受光素子78aによって第一の戻り光L1’の光の強度Aが検出されると共に、第二の受光素子78bによって第二の戻り光L2’の光の強度Bが検出される。そして、検出された光の強度Aと光の強度Bとにより、両者の比率、すなわちB/Aを演算する。本実施形態の手順では、第一の光源72から照射される第一の波長(365nm)の光L1の強度と、第二の光源73から照射される第二の波長(617nm)の光L2の強度とを一致させていることから、B/Aは、図4に示される実効反射率、より具体的には、第一の波長(365nm)の光L1を照射したときの実効反射率=0.58、及び第二の波長(617nm)の光L2を照射したときの実効反射率=0.35の比率と一致する値0.60が算出される。これが本実施形態の第一の光学系70において、被検出物であるシリコンウエーハのゲッタリング層比率が0%である場合に検出される第一の戻り光L1’の光の強さS1と、第二の戻り光L2’の光の強さS2との比率(S2/S1)の基準値G1となる。
【0031】
次いで、全体が非晶質(アモルファス)層とされた非晶質シリコンウエーハを用意する。この非晶質シリコンウエーハは、上記した被検出物であるシリコンウエーハ10と同じ寸法であり、同一のシリコン基板によって構成されたものを非晶質化したものである。該非晶質シリコンウエーハを保持手段3のチャックテーブル35に載置して吸引保持し、上記したのと同様にして、第一の光源72と第二の光源73とを作動して、第一の波長の光L1と第二の波長の光L2とを合波した光L3を生成すると共に、照射器74を介して、チャックテーブル35に保持された該非晶質シリコンウエーハに照射する。
【0032】
該非晶質シリコンウエーハに照射された光L3は、該非晶質シリコンウエーハにおいて反射して戻り光L3’を形成し、該戻り光L3’が、第二のファイバカプラ76を介して、受光部77を構成する分光器77aに導かれる。分光器77aにおいて、第一の波長の光L1に対応する第一の戻り光L1’と、第二の波長の光L2に対応する第二の戻り光L2’に分光されて、第一の受光素子77bによって第一の戻り光L1’の光の強度Cが検出されると共に、第二の受光素子77cによって第二の戻り光L2’の光の強度Dが検出される。そして、検出された光の強度Cと光の強度Dとにより、D/Cを演算する。上記したのと同様に、本実施形態の手順では、第一の光源72から照射される第一の波長(365nm)の光L1の強度と、第二の光源73から照射される第二の波長(617nm)の光L2の強度とを一致させていることから、D/Cは、図4に基づき算出される実効反射率(第一の波長の光L1を照射したときの実効反射率(=0.49)と第二の波長の光L2を照射したときの実効反射率(=0.39)の比率と一致する値、より具体的には、0.80と算出される。これが本実施形態の第一の光学系70において、被検出物のシリコンウエーハ10の全体が非晶質であった場合、すなわち、ゲッタリング層比率が100%である場合に算出される第一の戻り光L1’の光の強さS1と第二の受光素子78bが受光した第二の戻り光L2’の光の強さS2との比率(S2/S1)の基準値G2となる。
【0033】
次いで、上記の基準値G1(=0.60)と、基準値G2(=0.80)とにより、図5に示すようなゲッタリング層比率マップを生成する。図示のゲッタリング層比率マップは、横軸にゲッタリング層比率(0-100%)を示すと共に縦軸に第一の戻り光L1’の光の強さS1と第二の受光素子78bが受光した第二の戻り光L2’の光の強さS2との比率S2/S1を示し、上記したゲッタリング層比率が0%である場合のS2/S1の基準値G1と、ゲッタリング層比率が100%である場合のS2/S1の基準値G2とを該ゲッタリング層比率マップにプロットし、該基準値G1と該基準値G2とを直線で結んだ関数を形成する。これにより、上記した第一の光学系70によってS2/S1の値を算出し、図5に示すゲッタリング層比率マップを参照することで、ゲッタリング層比率を検出することが可能になる。
【0034】
ここで、例えば、ゲッタリング層比率の適性値が、12%~27%である場合、上記した図5に示すゲッタリング層比率マップに基づけば、ゲッタリング層比率が適性値の下限値である12%となる場合のS2/S1(=P1)は、上記したように生成した直線を示す関数から、0.624と演算される。また、ゲッタリング層比率の適性値の上限である27%となるS2/S1(=P2)は、0.654と演算される。そして、上記のP1=0.624及びP2=0.654が、第一の戻り光L1’の光の強さS1と第二の受光素子78bが受光した第二の戻り光L2’の光の強さS2との比率であるS2/S1の判定値として、上記した制御手段100に保存される。
【0035】
被検出物となるシリコンウエーハ10は、事前に図示を省略する研削装置に搬送されて、裏面10bが研削加工されて、所望の厚みに加工されると共に、ゲッタリング層が形成されたものである。このようなシリコンウエーハ10を上記したゲッタリング層検出装置1に搬送して、チャックテーブル35に載置して吸引保持する。そして、上記した第一の光学系70を構成する第一の光源72と、第二の光源73とから、第一の波長の光L1と、第二の波長の光L2とをチャックテーブル35に吸引保持されたシリコンウエーハ10に照射して、第一の受光素子77bによって第一の戻り光L1’の光の強度S1を検出すると共に、第二の受光素子77cによって第二の戻り光L2’の光の強度S2を検出して制御手段100に伝達する。上記した第一の戻り光L1’及び第二の戻り光L2’の強度S1、S2が検出されたならば、その比率(S2/S1)を制御手段100において演算する。そして、図5に示すゲッタリング層比率マップを参照し、該比率(S2/S1)が、P1以上P2以下の範囲にあるか否かを判定する。該比率(S2/S1)が、P1以上P2以下である場合は、図5から理解されるように、ゲッタリング層比率が12~27%にあると判断されることから、ゲッタリング層が適正に形成されていると判定される。また、該比率(S2/S1)が、P1以上P2以下の範囲にない場合は、ゲッタリング層比率が12~27%にでないことから、ゲッタリング層が適正に形成されていないと判定される。
【0036】
なお、上記したように、ゲッタリング層検出手段7によって適正に形成されていないと判定された場合であっても、図5に示すゲッタリング層比率マップを参照することによりゲッタリング層比率が具体的にどの程度形成されているのかが検出されることから、ゲッタリング層を形成する際の加工条件を調整して、適正な加工条件に再設定することができる。
【0037】
上記した判定の手順においては、シリコンウエーハのゲッタリング層比率が0%である場合のS2/S1の基準値G1と、シリコンウエーハのゲッタリング層比率が100%である場合のS2/S1の基準値G2とを演算する際に、予め、第一の光源72から照射される第一の波長(365nm)の光L1の強度と、第二の光源73から照射される第二の波長(617nm)の光L2の強度とを一致させていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、以下のような別の実施形態の手順によってゲッタリング層比率マップを作成してもよい。
【0038】
まず、非晶質層が形成されていない鏡面加工された単結晶シリコンウエーハを用意し、上記した第一の光学系70を含むゲッタリング層検出装置1に搬送して、該単結晶シリコンウエーハを保持手段3のチャックテーブル35に吸引保持する。次いで、上記した移動手段4を作動して、ゲッタリング層検出手段7の直下に該単結晶シリコンウエーハを位置付ける。次いで、上記した第一の光源72と第二の光源73とを作動して、第一の光源72から照射された第一の波長(365nm)の光L1と、第二の光源73から照射された第二の波長(617nm)の光L2とを、照射器74を構成する第一のファイバカプラ75によって合波して光L3を生成すると共に、ファイバ端76aからチャックテーブル35に保持された単結晶シリコンウエーハに対して照射する。
【0039】
上記した単結晶シリコンウエーハに照射された光L3は、該単結晶シリコンウエーハにおいて反射して戻り光L3’を形成し、該戻り光L3’が第二のファイバカプラ76を介して、受光部77を構成する分光器77aに導かれる。戻り光L3’は、分光器77aにおいて第一の波長の光L1に対応する第一の戻り光L1’と、第二の波長の光L2に対応する第二の戻り光L2’とに分光されて、第一の受光素子78aに導かれて第一の戻り光L1’の光の強度Aが検出されると共に、第二の受光素子78bに導かれて第二の戻り光L2’の光の強度Bが検出される。
【0040】
ここで、この実施形態では、上記した、第一の受光素子78aによって検出される第一の戻り光L1’の光の強度Aと、第二の受光素子78bによって検出される第二の戻り光L2’の光の強度Bとが一致するように、第一の光源72のLEDドライバ72aと、第二の光源73のLEDドライバ73aを調整する。これにより、第一の戻り光L1’の光の強度Aと、第二の戻り光L2’の光の強度Bとの比率B/A=1として、被検出物であるシリコンウエーハ10においてゲッタリング層比率が0%である場合に算出される第一の戻り光L1’の光の強さS1と、第二の戻り光L2’の光の強さS2との比率(S2/S1)の基準値であるG1を1とする。
【0041】
次いで、全体が非晶質(アモルファス)層とされた非晶質シリコンウエーハを用意し、上記の単結晶シリコンウエーハをチャックテーブル35から外して、該非晶質シリコンウエーハをチャックテーブル35に載置して吸引保持する。そして、上記したように単結晶シリコンウエーハに照射して基準値G1が1となるように調整された第一の光源72のLEDドライバ72aと、第二の光源73のLEDドライバ73aの調整量を維持したまま、第一の光源72と第二の光源73とを作動して、第一の波長の光L1と第二の波長の光L2とを合波した光L3を生成すると共に、照射器74を介して、チャックテーブル35に保持された非晶質シリコンウエーハに照射する。
【0042】
該非晶質シリコンウエーハに照射された光L3は、該非晶質シリコンウエーハにおいて反射して戻り光L3’を形成し、該戻り光L3’が第二のファイバカプラ76を介して、受光部77を構成する分光器77aに導かれる。分光器77aにおいては、第一の波長の光L1に対応する第一の戻り光L1’と、第二の波長の光L2に対応する第二の戻り光L2’に分光されて、第一の受光素子77bによって第一の戻り光L1’の光の強度Cが検出されると共に、第二の受光素子77cによって第二の戻り光L2’の光の強度Dが検出される。そして、検出された光の強度Cと光の強度Dとにより、D/Cを演算する。これにより、被検出物であるシリコンウエーハ10においてゲッタリング層比率が100%である場合に算出される第一の戻り光L1’の光の強さS1と、第二の戻り光L2’の光の強さS2との比率(S2/S1)の基準値G2が1.33として演算される。
【0043】
そして、基準値B/A=G1(=1)と、基準値D/C=G2とを、上記した図5に基づき説明したゲッタリング層比率マップにプロットして、該G1と該G2とを結ぶ直線の関数を生成して、ゲッタリング層比率が適性値の下限値である12%となる場合のS2/S1(=P1)を演算すると共に、ゲッタリング層比率の適性値の上限である27%となるS2/S1(=P2)を演算する。そして、上記のP1及びP2を、図5に示すゲッタリング層比率マップにプロットして、制御手段100に保存する。このようにすることで、ゲッタリング層比率マップを完成させることができる。このようにゲッタリング層比率マップを完成させたならば、被検出物となるシリコンウエーハ10を保持手段3のチャックテーブル35に吸引保持し、該シリコンウエーハ10に光源71の第一の光源72と第二の光源73とから、第一の波長の光L1と、第二の波長の光L2とを照射して、第一の受光素子78aが受光した第一の戻り光L1’の光の強さS1と、第二の受光素子78bが受光した第二の戻り光L2’の光の強さS2との比率S2/S1を算出する。そして、算出した比率S2/S1に基づき、先に説明した実施形態と同様に、ゲッタリング層比率マップを参照することで、シリコンウエーハ10におけるゲッタリング層比率を検出すると共に、ゲッタリング層が適正に形成されているかを判定することができる。本実施形態によれば、ゲッタリング層比率が0%である場合の第一の戻り光L1’の光の強さS1と第二の受光素子78bが受光した第二の戻り光L2’の光の強さS2との比率(S2/S1)の基準値G1が1となり、該基準値G1=1を基準にして、ゲッタリング層比率を検出し判定することができることから、ゲッタリング層比率の検出結果を、作業者がより容易に理解することができる。
【0044】
さらに、本発明のゲッタリング層検出手段は、図3に示す第一の光学系70を採用した上記の実施形態には限定されない。以下に示す実施形態では、ゲッタリング層検出手段7における光学系として、図6に示す第二の光学系80を採用する。
【0045】
図6に示す第二の光学系80は、光源81と、光源81が発する光L0を上記した保持手段3に保持されたシリコンウエーハに照射する照射器82と、光L0がシリコンウエーハで反射した戻り光L0’を受光する受光部84とを備えている。
【0046】
光源81は、広帯域の波長の光L0(例えば白色光)を照射する光源であり、光L0は、後述する第一の波長の光と、第一の波長よりも長い波長である第二の波長の光と、第一の波長よりも長く第二の波長よりも短い第三の波長の光を少なくとも含む。光源81は、例えばハロゲンランプが用いられる。本実施形態における第一の波長は、300nm帯域の波長が選択され、第二の波長は、600nm帯域の波長が選択され、第三の波長は、鏡面加工された結晶質のシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さが、ゲッタリング層が形成された非晶質のシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さと略同じとなる400nm帯域の波長が選択される。照射器82は、光源81から照射される光L0をチャックテーブル35に載置され吸引保持される被検出物に導き、該被検出物で反射した戻り光L0’を受光部84に導く例えばマルチモードファイバカプラが採用される。該マルチモードファイバカプラのファイバ端には、チャックテーブル35に吸引保持された被検出物に対して光源81から照射される光L0の集光位置の微調整を行うフォーカサー83が配設されている。
【0047】
受光部84は、分光器84aと、第一の受光素子84bと、第二の受光素子84cと、第三の受光素子84dとを備えている。分光器84aは、光源81が照射する広帯域の光L0に含まれる第一の波長(例えば300nm)の光に対応する戻り光L1’と、該戻り光L1’より長い波長の第二の波長(例えば600nm)の光L2に対応する戻り光L2’と、該第一の波長よりも長く、該第二の波長よりも短い第三の波長(例えば400nm)の光に対応する戻り光L4とに分光する手段であり、例えば回折格子、プリズム等により構成される。第一の受光素子84bは、分光器84aによって分光された戻り光L1’を受光して光の強度を検出し、第二の受光素子84cは、分光器84aによって分光された戻り光L2’を受光して光の強度を検出する。分光器84aと、第三の受光素子84dとの間には、ピンホールマスク84eが配設されており、分光器84aによって分光された第三の波長の光に対応する戻り光L4が、該ピンホールマスク84eに形成された微小な孔(ピンホール)を通過し、該ピンホールを通過した後の戻り光L4’が第三の受光素子84dによって受光されて光の強度が検出される。
【0048】
上記した第二の光学系80を採用して、チャックテーブル35に保持されたシリコンウエーハ10にゲッタリング層が形成されているか否かを検出し、適正なゲッタリング層であるか否かを判定する実施形態について、より具体的に説明する。
【0049】
まず、非晶質層が形成されていない鏡面加工された単結晶シリコンウエーハを用意し、上記した第二の光学系80を備えたゲッタリング層検出装置1に搬送して、該単結晶シリコンウエーハを保持手段3のチャックテーブル35に吸引保持する。次いで、上記した移動手段4を作動して、ゲッタリング層検出手段7の直下に該単結晶シリコンウエーハを位置付ける。次いで、上記した第二の光学系80の光源81を作動して、光L0を照射する。該光L0は、照射器82を介して、チャックテーブル35に保持された単結晶シリコンウエーハに対して照射される。ここで、上記した照射器82に配設されたフォーカサー83を調整し、ピンホールマスク84eを通過して第三の受光素子84dによって受光される戻り光L4’の光の強度が最大になるように調整する。これにより、光L0に含まれる第三の波長の光の集光位置が、該単結晶シリコンウエーハの面に位置付けられると共に、第一の波長の光の集光点位置と、第二の波長の光の集光位置も、該単結晶シリコンウエーハの表面の上下に位置付けられるように調整され、該単結晶シリコンウエーハに照射される第一の波長(300nm)の光の強度と、第二の波長(600nm)の光の強度とを略一致させることができる。
【0050】
該単結晶シリコンウエーハに照射された光L0は、該単結晶シリコンウエーハにおいて反射して戻り光L0’を形成し、該戻り光L0’が受光部84を構成する分光器84aに導かれる。分光器84aにおいて、戻り光L0’は、第一の波長の光に対応する第一の戻り光L1’と、第二の波長の光に対応する第二の戻り光L2’とに分光されて、第一の受光素子84bによって第一の戻り光L1’の光の強度Aが検出されると共に、第二の受光素子84cによって第二の戻り光L2’の光の強度Bが検出される。そして、検出された光の強度Aと光の強度Bとにより、両者の比率、すなわちB/Aを演算する。本実施形態では、第三の波長の光の戻り光L4を利用して、第三の波長の光の集光位置を上記のように調整していることにより、該単結晶シリコンウエーハに照射される第一の波長(300nm)の光の強度と、第二の波長(600nm)の光の強度とを略一致させていることから、B/Aは、図4に基づき算出される実効反射率、より具体的には、第一の波長(300nm)の光を照射したときの実効反射率(=0.63)と、第二の波長(600nm)の光を照射したときの実効反射率(=0.35)との比率と一致する値0.56が算出される。これが本実施形態において、被検出物であるシリコンウエーハ10が、ゲッタリング層比率が0%であるシリコンウエーハである場合に算出される第一の戻り光L1’の光の強さS1と、第二の戻り光L2’の光の強さS2との比率(S2/S1)の基準値G1となる。
【0051】
次いで、全体が非晶質(アモルファス)層とされた非晶質シリコンウエーハを用意し、該非晶質シリコンウエーハをチャックテーブル35に載置して吸引保持する。次いで、上記したのと同様にして、光源81を作動して光L0を、照射器82を介して、チャックテーブル35に保持された非晶質シリコンウエーハに対して照射する。
【0052】
該非晶質シリコンウエーハに照射された光L0は、該非晶質シリコンウエーハにおいて反射して戻り光L0’を形成し、該戻り光L0’が照射器82を介して、分光器84aに導かれる。分光器84aにおいて、第一の波長の光に対応する第一の戻り光L1’と、第二の波長の光に対応する第二の戻り光L2’に分光されて、第一の受光素子84bによって第一の波長の戻り光L1’の光の強度Cが検出されると共に、第二の受光素子84cによって第二の波長の戻り光L2’の光の強度Dが検出される。そして、検出された光の強度Cと光の強度Dとにより、D/Cを演算する。上記したのと同様に、D/Cは、図4に基づき算出される第一の波長の光を照射したときの実効反射率(=0.53)と第二の波長の光を照射したときの実効反射率(=0.39)との比率と一致する0.74と算出される。これが本実施例の第二の光学系80において、被検出物のシリコンウエーハ10の全体が非晶質であった場合、すなわち、ゲッタリング層比率が100%である場合に算出される第一の波長の戻り光L1’の光の強さS1と第二の波長の戻り光L2’の光の強さS2との比率(S2/S1)の基準値G2となる。
【0053】
この実施形態においても、上記した基準値G1と基準値G2とを、図5に示すゲッタリング層比率マップにプロットし、該基準値G1と該基準値G2とを直線で結び関数を形成する。これにより、先に説明した実施形態と同様に、第二の光学系80によって第一の波長の戻り光L1’の光の強さS1と第二の波長の戻り光L2’の光の強さS2との比率S2/S1の値を算出し、作成したゲッタリング層比率マップを参照することで、被検出物であるシリコンウエーハに形成されたゲッタリング層比率を検出し、適正にゲッタリング層が形成されているか否かを判定することが可能になる。
【0054】
上記した各実施形態によれば、シリコンウエーハの電気抵抗率に影響されることないため、シリコンウエーハの電気抵抗率が10Ωcm以下であっても、シリコンウエーハに形成されたゲッタリング層が適正か否かを判定することができる。
【0055】
上記したように、本実施形態のゲッタリング層検出装置では、第一の受光素子が受光した光の強さと該第二の受光素子が受光した光の強さとの比率によって、ゲッタリング層が形成されているか否かを判定することになっており、好適には、図5に示すようなゲッタリング層比率マップを使用する。この際、図5から理解されるように、単結晶シリコンウエーハに光を照射した場合の第一の戻り光の光の強度Aと、第二の戻り光の光の強度Bの比率(B/A)と、非晶質シリコンウエーハに光を照射した場合の第一の戻り光の光の強度Cと、第二の戻り光の光の強度Dの比率(D/C)との差が大きい程、直線の傾きが大きくなり、ゲッタリング層が適切に形成されているか否かの判定がしやすくなる。このためには、図4に示す実効反射率の特性から理解されるように、第一の波長は、鏡面加工された単結晶シリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さが、100%ゲッタリング層が形成されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さより大きくなる400nm帯域よりも小さい、より具体的には300nm帯域で選択され、第二の波長は、鏡面加工された単結晶シリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さが、100%ゲッタリング層が形成されたシリコンウエーハの面に照射された戻り光の光の強さより小さくなる400nmよりも大きい、より具体的には600nm帯域で選択されることが好ましい。
【符号の説明】
【0056】
1:ゲッタリング層検出装置
2:基台
3:保持手段
35:チャックテーブル
4:移動手段
42:X軸移動手段
44:Y軸移動手段
5:枠体
7:ゲッタリング層検出手段
70:第一の光学系
71:光源
72:第一の光源
72a:LEDドライバ
72b:ファイバ出力LED
72c:コネクタ
73:第二の光源
73a:LEDドライバ
73b:ファイバ出力LED
73c:コネクタ
74:照射器
75:第一のファイバカプラ
76:第二のファイバカプラ
76a:ファイバ端
77:受光部
77a:分光器
77b:第一の受光素子
77c:第二の受光素子
80:第二の光学系
81:光源
82:照射器
83:フォーカサー
84:受光部
84a:分光器
84b:第一の受光素子
84c:第二の受光素子
84d:第三の受光素子
84e:ピンホールマスク
10:シリコンウエーハ
10a:表面
10b:裏面
12:デバイス
14:分割予定ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6