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特開2024-172808特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法
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  • 特開-特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172808
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/18 20120101AFI20241205BHJP
【FI】
G06Q50/18 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090789
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 哲
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC33
5L050CC33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】出願に供する発明の特許請求の範囲の記載に依存せず、先行文献に記載された発明との相違点を認定して、特許出願書類を作成する方法を提供すること。
【解決手段】特許請求の範囲の記載及び明細書1次原稿、並びに先行文献の記載を、それぞれ入力情報として対話型AI及び/又は生成AIを備えた文書作成装置に入力し、特許請求の範囲に記載された発明と先行文献に記載された発明との相違点を特定しながら、特許出願明細書を作成する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出願に供する発明又は考案の、特許請求の範囲又は実用新案登録請求の範囲に係る文章1と、明細書に係る文章2とで構成される文書を、文書作成装置を用いて作成する、特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法であって、 前記文書作成装置は、入力された情報から文章を生成する文章生成フィールドと、元の文章をあらたな文章に編集する編集フィールドと、少なくとも文章1及び文章2とを入力情報として特許請求の範囲又は実用新案登録請求の範囲に記載された発明又は考案を認定する認定フィールドとを少なくとも有する、対話型AI(Artificial Intelligence)及び/又は生成AIを備えた装置であり、 文章1、並びに少なくとも背景技術に係る文章2-1、発明又は考案を実施するための形態に係る文章2-2、及び発明又は考案の効果に係る文章2-3から構成される文章2を、以下の工程を経て作成することを特徴とする、特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法。 基礎となる明細書0次原稿を選択する工程1と、 少なくとも次の工程2-1~3を任意の順で有する工程2と、 (工程2-1)前記出願に供する発明又は考案が解決しようとする課題を、前記文章生成フィールドに入力し、1次文章2-1を生成する工程 (工程2-2)前記出願に供する発明又は考案を実施するための形態を、前記文章生成フィールドに入力し、1次文章2-2を生成する工程
(工程2-3)前記出願に供する発明又は考案の効果を、前記文章生成フィールドに入力し、1次文章2-3を生成する工程 工程1で選択された明細書0次原稿を前記編集フィールドに格納する工程3と、 工程2-1~3で生成された1次文章2-1~3を、前記編集フィールドに格納された明細書0次原稿の文章2-1~3に導入し、明細書1次原稿を作成する工程4と、 明細書1次原稿を前記認定フィールドに導入する工程5と、 特許請求の範囲又は実用新案登録請求の範囲に係る1次文章1を前記認定フィールドに導入する工程6と、 工程5及び6で導入された1次文章及び明細書1次原稿を入力情報として、前記対話型AI及び/又は生成AIを用いて1次文章に記載された発明又は考案を認定する工程7と、 前記出願に供する発明又は考案と比較すべき先行文献の情報を前記認定フィールドに入力する工程8と、 工程8で入力された先行文献の情報を入力情報として、前記対話型AI及び/又は生成AIを用いて前記先行文献に記載された発明又は考案を認定する工程9と、 工程7及び工程9で認定された1次文章に記載された発明又は考案と先行文献に記載された発明又は考案とを比較し、相違点の有無を判定する工程10と、 を、工程1~3を任意の順番で、工程1~3の後に工程4及び工程5をこの順で、工程5及び6を少なくとも工程7の前に、工程8を少なくとも工程9の前に、工程7及び9を少なくとも工程10の前に、実行し、工程10で相違点なしと判定された場合には、明細書1次原稿をあらたな明細書0次原稿とし、工程2-1~3の少なくとも1つの工程において追加の情報を入力して生成される文章2をあらたな1次文章2とし、1次文章1に変更を加えあらたな1次文章とし、相違点ありとなるまで工程1~10を繰り返し、工程10で相違点ありと判定されたときの1次文章1及び1次文章2を、文章1及び文章2として確定させる。
【請求項2】
工程6の前に、特許請求の範囲又は実用新案登録請求の範囲の0次文章1を前記文章生成フィールドに入力し、1次文章1を生成する、請求項1に記載の特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法。
【請求項3】
工程10で相違点ありと判定された後に、当業者が前記相違点に係る構成を容易に想到できるかの論理付けができるかを判定する工程を加え、論理付けができると判定した場合に、前記工程10で相違点なしと判定された場合と同じ繰り返しを実行する、請求項1又は2に記載の特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法。
【請求項4】
前記文書作成装置は先行文献データベースと連結されており、工程7で認定された発明又は考案を入力情報として、工程8の前に、前記対話型AI及び/又は生成AIを用いて提案された発明又は考案と比較すべき先行文献を抽出する、請求項1又は2に記載の特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法。
【請求項5】
前記文書作成装置は先行文献データベースと連結されており、工程7で認定された発明又は考案を入力情報として、工程8の前に、前記対話型AI及び/又は生成AIを用いて提案された発明又は考案と比較すべき先行文献を抽出する、請求項3に記載の特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法。
【請求項6】
前記文書作成装置は、前記先行文献データベースに収録されているデータから技術常識を認定でき、前記技術常識を前記論理付けができるかの判定に用いる、請求項5に記載の特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法。
【請求項7】
文章1及び文章2に、図面を加える、請求項1又は2に記載の特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法に関する。なお、本明細書において、「実用新案」、「実用新案登録出願」の記載を省き「特許」、「特許出願」を代表として説明することがあるが、特に断りがない限り省略した「考案」、「実用新案」、「実用新案登録出願」を含む。一般的に特許出願書類は、特許法、特許法施行規則などに記されている、「願書」、「明細書」、「特許請求の範囲」、「図面」などの総称として扱われるが、法改正や規則改正により定義や書類の名称が変わることもある。そのため本発明における「特許出願書類」は、本発明に欠くことのできない「明細書」、「特許請求の範囲」及び必要に応じ添付される「図面」の総称又は区別して記す必要がない場合には各書類の1又は複数を意味する。
【背景技術】
【0002】
従来から特許出願書類を作成するためには、技術的知見とともに、特許制度、特に特許庁が発行する審査基準に係る知見が必要といわれてきた。係る知見を有する専門家にゆだねられていた特許出願書類作成業務を支援又は代替するために、これまでもコンピュータプログラムを用いて特許出願書類を作成する方法が提案されていた。
【0003】
大別すると、(イ)基礎となる明細書原稿を選択し、当該基礎となる明細書に対し出願に供する発明に対応する文章をあてはめていくもの。さらには(イ)の応用として、(ロ)出願に供する発明に対応する文章の候補を提示したり、出願に供する発明を特許出願文書に仕上げていくにあたり文書作成者に文章の組み立てをガイダンスしたりするもの。(ハ)出願に供する発明の特許請求の範囲と先行文献の記述とを比較するもの。(ニ)出願に供する発明の実施例を適切に明細書に加筆するもの。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-118768号公報
【特許文献2】特開2019-121164号公報
【特許文献3】WO2021/152712号パンフレット
【特許文献4】特開2007-149087号公報
【特許文献5】特開2020-140369号公報
【特許文献6】特許第6618104号公報
【特許文献7】特許第7086424号公報
【特許文献8】WO2019/102687号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
明細書は、特許法施行規則の求めにより、記載される事項が定型化されている。したがって、(イ)や(ロ)のような提案のように、明細書の初稿を作成することや初稿からより適切な文章に変更を加えていくことは可能となっている。一方で、当該発明に係る技術分野によって、求められる実施例や図面は千差万別である。そのため、技術分野に応じ、定型化された記載事項の各々に当てはまるような最適な記述を盛り込むことも、求められる事項に応じて(ニ)のような提案も組み合わせることで可能と推測される。
【0006】
また、特許出願文書は特許権取得のためのものであるため、特許庁の審査官による適切な審査、特に新規性や進歩性を担保した文書に仕上げる必要がある。そのためには、従来技術との対比において一致点及び相違点を認定することが求められる。この点、(ハ)のような提案によって、出願に供する発明の特許性を把握する試みもみられる。例えば特許請求の範囲に記載された単語から、類似語や同義語も加味しながら先行文献に記載された単語との比較において、出現頻度などを参照し類似度合いを数値化することで、特許性の確度を把握する開示がある。
【0007】
しかしながら、これら(イ)~(ハ)によって作成される特許出願書類は、特許庁の審査における拒絶理由の克服可能性を、より高めることができるか不明である。具体的には、出願に供する発明の特許請求の範囲に記載された発明と先行文献に記載された発明とを比較するにあたり、例えば当該発明は物の発明である場合、特許請求の範囲に記載された物が特殊パラメータで特定されていると、先行文献に記載された発明と同じ物であるか否か、判定できるかどうかが、課題となる。すなわち、出願に供する発明の特許請求の範囲の記載に依存して、特許請求の範囲に記載された発明と先行文献に記載された発明との一致点、相違点を認定可能か否かが、課題であるといえる。
【0008】
本発明は、出願に供する発明の特許請求の範囲の記載に依存せず、特許請求の範囲に記載された発明と先行文献に記載された発明との一致点、相違点を認定し得る、特許出願書類の作成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、出願に供する発明又は考案の、特許請求の範囲又は実用新案登録請求の範囲に係る文章1と、明細書に係る文章2とで構成される文書を、文書作成装置を用いて作成する、特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法であって、前記文書作成装置は、入力された情報から文章を生成する文章生成フィールドと、元の文章をあらたな文章に編集する編集フィールドと、少なくとも文章1及び文章2とを入力情報として特許請求の範囲又は実用新案登録請求の範囲に記載された発明又は考案を認定する認定フィールドとを少なくとも有する、対話型AI(Artificial Intelligence)及び/又は生成AIを備えた装置であり、文章1、並びに少なくとも背景技術に係る文章2-1、発明又は考案を実施するための形態に係る文章2-2、及び発明又は考案の効果に係る文章2-3から構成される文章2を、以下の工程を経て作成することを特徴とする、特許出願又は実用新案登録出願書類の作成方法、である。
【0010】
基礎となる明細書0次原稿を選択する工程1と、少なくとも次の工程2-1~3を任意の順で有する工程2と、工程1で選択された明細書0次原稿を前記編集フィールドに格納する工程3と、工程2-1~3で生成された1次文章2-1~3を、前記編集フィールドに格納された明細書0次原稿の文章2-1~3に導入し、明細書1次原稿を作成する工程4と、明細書1次原稿を前記認定フィールドに導入する工程5と、特許請求の範囲又は実用新案登録請求の範囲に係る1次文章1を前記認定フィールドに導入する工程6と、工程5及び6で導入された1次文章及び明細書1次原稿を入力情報として、前記対話型AI及び/又は生成AIを用いて1次文章に記載された発明又は考案を認定する工程7と、前記出願に供する発明又は考案と比較すべき先行文献の情報を前記認定フィールドに入力する工程8と、工程8で入力された先行文献の情報を入力情報として、前記対話型AI及び/又は生成AIを用いて前記先行文献に記載された発明又は考案を認定する工程9と、工程7及び工程9で認定された1次文章に記載された発明又は考案と先行文献に記載された発明又は考案とを比較し、相違点の有無を判定する工程10と、を、工程1~3を任意の順番で、工程1~3の後に工程4及び工程5をこの順で、工程5及び6を少なくとも工程7の前に、工程8を少なくとも工程9の前に、工程7及び9を少なくとも工程10の前に、実行し、工程10で相違点なしと判定された場合には、明細書1次原稿をあらたな明細書0次原稿とし、工程2-1~3の少なくとも1つの工程において追加の情報を入力して生成される文章2をあらたな1次文章2とし、1次文章1に変更を加えあらたな1次文章とし、相違点ありとなるまで工程1~10を繰り返し、工程10で相違点ありと判定されたときの1次文章1及び1次文章2を、文章1及び文章2として確定させる。
【0011】
(工程2-1)前記出願に供する発明又は考案が解決しようとする課題を、前記文章生成フィールドに入力し、1次文章2-1を生成する工程。(工程2-2)前記出願に供する発明又は考案を実施するための形態を、前記文章生成フィールドに入力し、1次文章2-2を生成する工程。(工程2-3)前記出願に供する発明又は考案の効果を、前記文章生成フィールドに入力し、1次文章2-3を生成する工程。
【発明の効果】
【0012】
本発明の特許出願書類の作成方法によれば、出願に供する発明の特許請求の範囲の記載に依存せず、特許請求の範囲に記載された発明と先行文献に記載された発明との一致点、相違点を認定し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る文書の作成方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、本実施形態に係る文書の作成方法の全体の流れが示されている。本実施形態を説明するにあたり、まず、図1を参照しながら全体の流れを説明する。本実施形態において書類作成者は、入力された情報から文章を生成する文章生成フィールドと、元の文章をあらたな文章に編集する編集フィールドと、特許請求の範囲に係る文章1及び明細書に係る文章2とを入力情報として特許請求の範囲に記載された発明を認定する認定フィールドとを有する、対話型AI及び/又は生成AIを備えた文書作成装置を操作して、特許出願書類を作成する。
【0015】
文書作成者は工程1において、基礎となる明細書0次原稿を選択する。この場合文書作成者は、本実施形態に係る文書作成装置に連結された先行文献データベースが抽出する、出願に供する発明に近いと判定された複数の先行特許文献から、自身が最も適切と判断する先行文献を指定し、基礎となる明細書0次原稿とする。
【0016】
次いで文書作成者は工程2において、出願に供する発明の背景技術に係る、初期の文章である1次文章2-1、出願に供する発明を実施するための形態に係る、初期の文章である1次文章2-2、出願に供する発明の効果に係る、初期の文章である1次文章2-3、を作成する。この際文書作成者は、あらかじめ出願に供する発明の背景技術、発明を実施するための形態、及び効果を用意し、それぞれ文書生成フィールドに入力することで、文書作成装置にそれぞれ1次文章2-1、1次文章2-2、1次文章2-3を生成させる。
【0017】
その後文書作成者は、工程1で選択された明細書0次原稿を編集フィールドに格納する(工程3)とともに、工程2で生成された1次文章2-1~3を編集フィールドに格納された明細書0次原稿の文章2-1~3に導入する。こうして文書作成者は、文書作成装置に明細書1次原稿を作成させる(工程4)。このとき編集フィールドでは、明細書0次原稿の背景技術、発明を実施するための形態、発明の効果に係る各パートに、入力された1次文章2-1~3のそれぞれをあてはめ、かつ前後のつながりを調整し、明細書1次原稿が生成されていく。
【0018】
工程4で作成された明細書1次原稿は、文書作成装置内で認定フィールドに導入される(工程5)。また、文書作成者により準備された、出願に供する発明の特許請求の範囲に係る1次文章1も、認定フィールドに導入される(工程6)。
【0019】
こうして工程5及び6で導入された1次文章及び明細書1次原稿を入力情報として、文書作成者は、文書作成装置の対話型AI及び/又は生成AIによって、1次文章に記載された発明を認定する(工程7)。また文書作成者は、出願に供する発明と比較すべき先行文献の情報を認定フィールドに入力する(工程8)。こうして工程8で入力された先行文献の情報を入力情報として、文書作成者は、対話型AI及び/又は生成AIによって、先行文献に記載された発明を認定する(工程9)。
【0020】
その後文書作成者は、工程7で認定された1次文章に記載された発明と工程9で認定された先行文献に記載された発明とをそれぞれ入力情報として、それぞれに記載された発明を対話型AI及び/又は生成AIに比較させ、相違点の有無を判定させる(工程10)。
【0021】
工程10で相違点「有」と判定された場合文書作成者は、1次文章及び明細書1次原稿を、出願に供する特許出願書類として扱う。工程10で相違点「無」と判定された場合、工程10までで作成された明細書1次原稿をあらたな明細書0次原稿とし、工程1が再開される。文書作成者は、1次文章の変更に関する情報及び/又は文章2に関する追加の情報を容易する。これら用意されたものは文書作成装置
に入力され、再開される工程2において生成される文章2をあらたな1次文章2と、変更を加えられた1次文章をあらたな1次文章とし、工程1~10が繰り返される。この繰り返しは、工程10で相違点「有」と判定されるまで、実行される。
【0022】
次に本実施形態における工程7~9に係る発明の認定について、より詳細に説明する。特許法や審査基準にもあるとおり、発明は特許請求の範囲の記載に基づき認定されるものであり、明細書(及び図面)の記載を考慮して特許請求の範囲に記載されている用語の意義を解釈する。したがって、工程7において1次文章11である特許請求の範囲に記載された発明の認定にあたっては、1次文章1に記載されている用語の意義を明細書及び図面の記載を考慮することになる。
【0023】
このとき、出願に供する発明が物の発明である場合に、1次文章1に記載された物が特殊パラメータで特定されていると、その用語の意味として先行文献に記載された用語と同じであるか否かが、判定し難い。したがって特殊パラメータで特定された1次文章1に記載された用語の意義を見出すにあたっては、明細書1次原稿に記載されている実施例や図面などを考慮することになる。
【0024】
すなわち、工程7において対話型AI及び/又は生成AIは、1次文章1及び明細書第1原稿を入力情報としている。したがって、1次文章1における特殊パラメータの用語を明細書第1原稿における実施例をもとに、特殊パラメータの用語の意義を解釈し、1次文章に記載された物がいかなるものを指すのかを定めていく。
【0025】
一方工程8では、出願に供する発明と比較すべき先行文献の情報が認定フィールドに入力される。次いで工程9において、入力された先行文献の情報に基づき、先行文献に記載された発明が認定される。このとき、先行文献に記載された物がいかなるものかを、入力された先行文献の情報を入力情報とし対話型AI及び/又は生成AIによって、定められる。
【0026】
こうして、1次文章1において単なる表現上用いられている用語ではなく、その意義をも考慮して1次文章1に記載された発明を認定し、同様に先行文献に記載された発明を認定することで、工程10において両者を比較できる。これによって、表現上の相違ではなく物としての相違を判定することで、1次文章1に記載された発明と先行文献に記載された発明とを比較し、双方の相違点の有無を判定する。
【0027】
本発明は、ここまで上述した本実施形態には限らない。例えば工程1において、先行文献データベースが抽出する複数の先行特許文献から、文書作成者が最も適切と判断する先行文献を指定するのではなく、これら複数の先行文献の情報を対話型AI及び/又は生成AIに適切な先行文献を指定させることもできる。また、先行文献データベースによらず文書作成者が、自ら知見に基づき適切な先行文献を指定することもできる。
【0028】
工程2においては、文書作成者が自ら出願に供する発明の背景技術、発明を実施するための形態、及び効果を用意する際に、特許出願書類に準じた書式でなくても、これら用意すべき事項のエッセンスを記した箇条書きのようなものでもよい。また、発明を実施するための形態などについては、出願に供する発明の発明者などが作成した実験ノートの記述を入力情報として文書生成フィールドに入力することもできる。このように実験ノートを利用することは、具体的な実験手順や実験条件なども記されているため好ましい。
【0029】
さらに、先行文献データベースに出願に供する発明の関連発明の情報を付与しておき、類似する発明の実験手順や実験条件を参照させるようにしておいてもよい。この場合、特定の実験手順に限らず、出願に供する発明を実施するための総合的又は一般的な物の製造方法などを先行文献データベースに記憶させておくことで、1次文章2-2の生成を補助できる。
【0030】
本実施形態の工程4では、工程1で選択された明細書0次原稿を編集フィールドに格納する(工程3)と並行して、工程2で生成された1次文章2-1~3を編集フィールドに格納された明細書0次原稿の文章2-1~3に導入しているが、編集フィールドと1次文章2の作成フィールドとは区別されたフィールドでなく同じフィールドでもよい。同様に、工程6などで用いられる認定フィールドも、他のフィールドと区別されたフィールドでなくてもよい。
【0031】
本実施形態の工程6において導入される、出願に供する発明の特許請求の範囲に係る1次文章1は、文書作成者により準備されるが、必ずしも文書作成者は最終的な特許請求の範囲の記載に寄せたものを用意しなくてもよい。例えば、工程6の前に、特許請求の範囲の0次文章1を文章生成フィールドに入力しこの情報を入力情報として、対話型AI及び/又は生成AIにより1次文章1を生成させることもできる。また、文書作成者ではなく出願に供する発明の発明者などが用意した組織内での技術説明資料を入力情報として、対話型AI及び/又は生成AIにより1次文章1を生成させることもできる。
【0032】
上述の本実施形態では、工程7における発明の認定にあたり、1次文章に特殊パラメータによる用語を含む例を示した。他に、1次文章に明細書1次原稿に格別に定義される用語が含まれる場合には、対話型AI及び/又は生成AIへの入力情報として、格別に定義された用語を修飾語と一般名称との組み合わせ用語と認識させたうえで、発明の認定を行うこともできる。また、こうした格別に定義された用語の意義を解釈するにあたり、1次文章及び明細書1次原稿に加え図面を認定フィールドに導入することもできる。この場合認定フィールドでは、引き出し線を参照しながら導入された図面を画像解析することで、格別に定義された用語と対比して用語を解釈できる。
【0033】
1次文章の用語の解釈と同じ手法で、先行文献に記載された発明の認定もできる。すなわち工程9においては、先行文献に記載された格別な用語や図面の画像解析によって、先行文献に記載された発明を認定できる。
【0034】
本実施形態における工程8では、文書作成者が出願に供する発明と比較すべき先行文献の情報を認定フィールドに入力しているが、工程8の前に工程7で認定された発明又は考案と比較すべき先行文献を先行文献データベースから抽出することもできる。また、先行文献データベースから候補となる複数の先行文献を抽出した後に、工程9の要領で先行文献に記載された発明を認定することで、出願に供する発明と比較すべき先行文献を指定してもよい。先行文献データベースの情報の持ち方によっては、工程1で抽出された明細書0次原稿に係る先行文献を工程8での入力情報にすることもできる。
【0035】
本実施形態では工程10で、工程7で認定された1次文章に記載された発明と工程9で認定された先行文献に記載された発明との相違点の有無を判定し、相違点「有」と判定された時点での1次文章及び明細書1次原稿を、特許出願書類として確定させているが、確定前にさらに次の工程を追加することは好ましい。追加する工程は、当業者が相違点に係る構成を容易に想到できるかの論理付けができるかを判定する工程である。この場合、論理付けができると判定した場合に、工程10で相違点なしと判定された場合と同じ繰り返しを実行する。
【0036】
当業者が相違点に係る構成を容易に想到できるかの論理付けにあたっては、工程10で1次文章に記載された発明との相違点の有無を判定される先行文献に類似する先行文献を、先行文献データベースから複数抽出する。抽出にあたっては、認定フィールドで先行文献に記載された発明との技術分野の関連性、課題の共通性、採用・機能の共通性、先行文献の記載における示唆、などを入力情報として、対話型AI及び/又は生成AIにより抽出する。次いで、工程10で判定された相違点が、抽出された類似する先行文献認に記載されているかを判定する。
【0037】
さらに、工程2で生成された明細書1次原稿から、出願に供する発明の効果の著しさも工程10のあとの論理付けの判定に用いることは、好ましい。具体的には、工程2で生成された明細書1次原稿を入力情報として、工程7の派生工程として1次文章に記載された発明の認定とともに発明の効果の認定を行う。次いで、工程9で認定された先行文献に記載された発明の効果を同じく入力情報として、対話型AI及び/又は生成AIに先行文献に記載された発明の効果の認定を行う。こうして認定された双方の効果を比較することで、1次文章に記載された発明が有利な効果を奏するか判定することで、論理付けができるかの判定を行うことができる。
【0038】
さらにまた、先行文献データベースに収録されているデータを入力情報として、この入力情報から技術常識を認定することもできる。これによって、上記の論理付けができるかの判定に、認定した技術常識を用いることができる。
【0039】
以上説明した本実施形態及び本実施形態に限らない他の形態において、工程1~3を任意の順番で、工程1~3の後に工程4及び工程5をこの順で、工程5及び6を少なくとも工程7の前に、工程8を少なくとも工程9の前に、工程7及び9を少なくとも工程10の前に、実行するものであるが、これらの順番は、文書作成者の作成のしやすさや関係する者の役割などに応じ、決められる。
【0040】
文書作成者は、特定の1名であっても複数人の共働作業者であってもよい。また、対象となる文書作成者の具体的な例示として、発明者、発明者の協力者、企業における知的財産部員、特許業務法人の弁理士や特許技術者などがあげられるが、本発明の実施にあたり特に制限はない。
【0041】
ここまで、作成される特許出願書類として特許請求の範囲、明細書を例に説明したが、図面はもちろん、要約書を本発明の特許出願文書の作成方法によって作成することもできる。
【0042】
本発明の実施にあたっては、背景技術に記した(イ)~(ニ)の各方法及び/又は装置を、本発明における各工程に適した方法及び/又は装置として取捨選択したり組み合わせたりすることで、形式的であったり部分的であったりした工程に使用できる。これらの各方法及び/又は装置に加えて、特許請求の範囲に記載された発明を確実に認定する工程を設けることによって、専門的な知見に基づく専門家によるところが大きいとされてきた特許出願書類の作成を、実施できる。特に、本出願の出願日時点においても加速度的に発展を遂げている対話型AIや生成AIの利用にあたり、特許請求の範囲に記載された発明を確実に認定させるために、これらAIに対する入力情報を適切に指定することによって、審査に耐え得る特許出願書類の作成方法を実現できる。
図1