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特開2024-172812ポリエステルフィルムロール及び加飾成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172812
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルムロール及び加飾成形体
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/12 20060101AFI20241205BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20241205BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241205BHJP
   B29K 1/00 20060101ALN20241205BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20241205BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
B29C55/12
B32B27/36
C08J5/18 CFD
B29K1:00
B29K67:00
B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090796
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智博
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F210
【Fターム(参考)】
4F071AA46
4F071AA88
4F071AF15Y
4F071AF21Y
4F071AF30
4F071AF52
4F071AF61Y
4F071AG26
4F071AG28
4F071AH07
4F071AH12
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CC00D
4F100CC00E
4F100EJ38A
4F100EJ94
4F100EJ94A
4F100GB32
4F100GB48
4F100HB00
4F100HB00A
4F100HB31D
4F100HB31E
4F100JA03
4F100JA03A
4F100JC00A
4F100JK02
4F100JK02A
4F100JK08
4F100JK08A
4F100JN30
4F100YY00A
4F210AA01
4F210AA24
4F210AG01
4F210AG03
4F210AH81
4F210AR01
4F210AR04
4F210AR12
4F210AR20
4F210QA02
4F210QA03
4F210QC06
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG15
4F210QG18
4F210QL16
4F210QM15
4F210QW07
4F210QW12
4F210QW36
4F210QW50
(57)【要約】
【課題】本発明は、ポリエステルフィルムロールの加工適性を高め、かつ加工時の印刷ズレの発生が少ないポリエステルフィルムロールを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、バイオマス由来のポリエステルを含み、下記測定方法で測定されたタルミ量の最大値が10mm未満であるポリエステルフィルムを巻き取ってなる、ポリエステルフィルムロールに関する。
測定方法;間隔が1.5mで平行かつ水平に設置した2本のロールにポリエステルフィルムの長手方向がまたがるように渡し架け、2本のロール間のポリエステルフィルムに0.4MPaの一定張力をかけ、ポリエステルフィルムの両方の端部に生ずるたるみの最高点と最低点の差をタルミ量(mm)として測定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス由来のポリエステルを含み、
下記測定方法で測定されたタルミ量の最大値が10mm未満であるポリエステルフィルムを巻き取ってなる、ポリエステルフィルムロール;
(測定方法)
間隔が1.5mで平行かつ水平に設置した2本のロールにポリエステルフィルムの長手方向がまたがるように渡し架け、2本のロール間のポリエステルフィルムに0.4MPaの一定張力をかけ、ポリエステルフィルムの両方の端部に生ずるたるみの最高点と最低点の差をタルミ量(mm)として測定する。
【請求項2】
前記ポリエステルフィルムが、バイオマス由来のポリエステルを主成分として含む層と、化石燃料由来のポリエステルを主成分として含む層を有する、請求項1に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムが、前記バイオマス由来のポリエステルを主成分として含む層を中間層として有し、前記化石燃料由来のポリエステルを主成分として含む層を表層として有する、請求項2に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項4】
前記ポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位を含み、
前記ジオール単位が、バイオマス由来のエチレングリコール単位を含む、請求項1に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項5】
前記ポリエステルが、前記バイオマス由来のエチレングリコール単位を10モル%以上含む、請求項4に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項6】
前記ポリエステルフィルムが二軸延伸ポリエステルフィルムである、請求項1に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項7】
MD方向の引張破断伸度が50%以上である、請求項1に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項8】
MD方向の引張破断強度が100MPa以上である、請求項1に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項9】
MD方向の5%伸び時の荷重が150MPa以下である、請求項1に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項10】
180℃で5分加熱した際のMD方向の熱収縮率が3%以下である、請求項1に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項11】
加飾成形用フィルムである、請求項1に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項12】
請求項1に記載のポリエステルフィルムの少なくとも一方の面にさらにコーティング層を有する、積層フィルム。
【請求項13】
請求項1に記載のポリエステルフィルムの少なくとも一方の面にさらに印刷層を有する、積層フィルム。
【請求項14】
加飾成形用フィルムである、請求項12に記載の積層フィルム。
【請求項15】
成形同時転写用フィルムである、請求項13に記載の積層フィルム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムを用いて加飾された、加飾成形体。
【請求項17】
モバイル機器、家電製品又は車輌用部品である、請求項16に記載の加飾成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムロール及び加飾成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、耐熱性、耐候性、機械的強度、透明性、耐薬品性、ガスバリア性などの性質に優れており、かつ、価格的にも入手し易いことから、汎用性が高く、包装材料、光学用途などの各種用途に使用されている。ポリエステルは、ジオールとジカルボン酸とを重縮合して得られ、例えば、ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコールとテレフタル酸とを原料として製造されている。従来、ポリエステルの原料は、化石燃料である石油から生産されている。
【0003】
近年、地球温暖化や海洋汚染問題が大きな問題となっている。例えば、プラスチックが燃やされるときにも温室効果ガスが発生し、また、大量のプラスチックが海に流れ出て、プラスチックごみとして溜まり続けることが問題となっている。また、石油資源は有限であり、化石燃料由来のプラスチックの製造により資源が枯渇することも問題視されている。このため、化石燃料の使用量を減らすべく、バイオマス由来原料の利用が注目されている。バイオマスとは、太陽エネルギーを使って水と二酸化炭素から生物が光合成によって生成した植物由来の有機性資源である。バイオマスを燃焼させた際に放出される二酸化炭素は、化石燃料を燃焼させて出る二酸化炭素とは異なり、生物の成長過程で光合成により大気中から吸収した二酸化炭素であるため、バイオマスは、大気中で新たに二酸化炭素を増加させない「カーボンニュートラル」な資源といわれている。
【0004】
例えば、特許文献1には、少なくとも2層を有する積層体であって、第1の層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50~95質量%含んでなり、第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなることを特徴とする、積層体が開示されている。また、特許文献2には、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなる2軸延伸樹脂フィルムの製造方法であって、樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である、バイオマス由来のポリエステルと、ジオール単位としてジオール単位が化石燃料由来のジオールまたはバイオマス由来のエチレングリコールを用い、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のテレフタル酸を用いて重縮合反応により得られたポリエステル樹脂からなる製品をリサイクルして得られる、リサイクルポリエステルと、を含む2軸延伸樹脂フィルムの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-52125号公報
【特許文献2】特開2022-97531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バイオマス由来のポリエステルは、化石燃料由来のポリエステルと同等の機械的物性等を有することが求められているが、バイオマス由来のポリエステルの種々の機械的物性については、未だ改善の余地がある。例えば、ポリエステルフィルムに印刷層や粘着層等を付与する等の加工を施したり、加工が施されたポリエステルフィルムを使用して製品を加工等する際には、ロールtoロールでフィルムを走行させたり、フィルムに印刷を施したりする場合があるが、その際にロール間のフィルムがたるんだり、伸びたりすることで、ポリエステルフィルムロールを使用して製品を加工等する際の加工適性が低下したり、印刷ズレが生じるなど問題となっていた。そこで本発明は、このような従来技術の課題を解決するために、ポリエステルフィルムロールを用いて製品を製造したり加工したりする際の加工適性を高め、かつ加工時に印刷ズレの発生が少ないポリエステルフィルムロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の具体的な態様の例を以下に示す。
【0008】
[1] バイオマス由来のポリエステルを含み、
下記測定方法で測定されたタルミ量の最大値が10mm未満であるポリエステルフィルムを巻き取ってなる、ポリエステルフィルムロール;
(測定方法)
間隔が1.5mで平行かつ水平に設置した2本のロールにポリエステルフィルムの長手方向がまたがるように渡し架け、2本のロール間のポリエステルフィルムに0.4MPaの一定張力をかけ、ポリエステルフィルムの両方の端部に生ずるたるみの最高点と最低点の差をタルミ量(mm)として測定する。
[2] ポリエステルフィルムが、バイオマス由来のポリエステルを主成分として含む層と、化石燃料由来のポリエステルを主成分として含む層を有する、[1]に記載のポリエステルフィルムロール。
[3] ポリエステルフィルムが、バイオマス由来のポリエステルを主成分として含む層を中間層として有し、化石燃料由来のポリエステルを主成分として含む層を表層として有する、[1]又は[2]に記載のポリエステルフィルムロール。
[4] ポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位を含み、
ジオール単位が、バイオマス由来のエチレングリコール単位を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[5] ポリエステルが、バイオマス由来のエチレングリコール単位を10モル%以上含む、[4]に記載のポリエステルフィルムロール。
[6] ポリエステルフィルムが二軸延伸ポリエステルフィルムである、[1]~[5]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[7] MD方向の引張破断伸度が50%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[8] MD方向の引張破断強度が100MPa以上である、[1]~[7]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[9] MD方向の5%伸び時の荷重が150MPa以下である、[1]~[8]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[10] 180℃で5分加熱した際のMD方向の熱収縮率が3%以下である、[1]~[9]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[11] 加飾成形用フィルムである、[1]~[10]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[12] [1]~[11]のいずれかに記載のポリエステルフィルムの少なくとも一方の面にさらにコーティング層を有する、積層フィルム。
[13] [1]~[12]のいずれかに記載のポリエステルフィルムの少なくとも一方の面にさらに印刷層を有する、積層フィルム。
[14] 加飾成形用フィルムである、[12]又は[13]に記載の積層フィルム。
[15] 成形同時転写用フィルムである、[12]~[14]のいずれかに記載の積層フィルム。
[16] [1]~[15]のいずれかに記載のポリエステルフィルムを用いて加飾された、加飾成形体。
[17] モバイル機器、家電製品又は車輌用部品である、[16]に記載の加飾成形体。
【0009】
[A] [1]~[11]のいずれかに記載のポリエステルフィルムを用いた加飾成形方法。
[B] 対象物を加飾成形するための[1]~[11]のいずれかに記載のポリエステルフィルムの使用。
[C] [12]~[15]のいずれかに記載の積層フィルムを用いた加飾成形方法。
[D] 対象物を加飾成形するための[12]~[15]のいずれかに記載の積層フィルムの使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリエステルフィルムロールの加工適性を高めることができ、かつ、加工時に印刷ズレの発生が低減されたポリエステルフィルムロールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、タルミ量を測定する方法を説明する概略図である。
図2図2は、ポリエステルフィルムの積層構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。なお、以下の説明において使用される「フィルム」と「シート」は明確に区別されるものではなく、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0013】
また、本明細書において、フィルムのMD方向とは、フィルム成形時の押出方向(或いは引き取り方向、流れ方向)であり、縦方向とも言う。一方、TD方向とは当該MD方向に直交する方向であり、横方向又は幅方向とも言う。
【0014】
(ポリエステルフィルムロール)
本実施形態のポリエステルフィルムロール(以下、「本ロール」とも称する)は、バイオマス由来のポリエステルを含み、下記測定方法で測定されたタルミ量の最大値が10mm未満であるポリエステルフィルムを巻き取ってなる、ポリエステルフィルムロールに関する。
(測定方法)
間隔が1.5mで平行かつ水平に設置した2本のロールにポリエステルフィルムの長手方向がまたがるように渡し架け、2本のロール間のポリエステルフィルムに0.4MPaの一定張力をかけ、ポリエステルフィルムの両方の端部に生ずるたるみの最高点と最低点の差をタルミ量(mm)として測定する。
【0015】
本ロールは、大気中で新たに二酸化炭素を増加させないカーボンニュートラルなポリエステルを含むため、環境への負荷を低減することができる。そして、本ロールを構成するポリエステルフィルムは、従来の化石燃料を用いて製造されるポリエステルフィルムと同等の機械的物性等を有している。加えて、本ロールを構成するポリエステルフィルムは、従来の化石燃料を用いて製造されるポリエステルフィルムでは達成し得なかった物性も兼ね備えている。例えば、本ロールを構成するポリエステルフィルムのタルミ量は10mm未満である。ポリエステルフィルムのタルミ量を10mm未満とすることにより、ポリエステルフィルムロールの加工適性を効果的に高めることができる。また、ポリエステルフィルムに印刷層を形成する際には、印刷ズレの発生を抑制することができる。さらに、ポリエステルフィルムを例えば、加飾成形用フィルムとして用いる場合には、成形樹脂を加飾する際の図柄の位置ズレを抑制することができ、見当精度を高めることができる。
【0016】
本ロールは、紙管、金属管、プラスチック管等のコアにポリエステルフィルムを巻き取ってなる。コアの直径は特に限定されないが、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがさらに好ましい。コアの直径の上限値は、特に限定されないが、例えば、500mm以下であることが好ましい。
【0017】
本ロールの幅は0.2m以上であることが好ましく、0.3m以上であることがより好ましく、1m以上であることがさらに好ましい。本ロールの幅の上限値は、特に限定されないが、例えば、3m以下であることが好ましい。また、本ロールに巻き取られるポリエステルフィルムの長さは、特に限定されないが、1000m以上であることが好ましく、2000m以上であることがより好ましく、4000m以上であることがさらに好ましく、6000m以上であることが特に好ましい。本ロールに巻き取られるポリエステルフィルムの長さの上限値は、特に限定されないが、例えば、65000m以下であることが好ましく、40000m以下であることがより好ましく、20000m以下であることがさらに好ましい。
【0018】
<ポリエステルフィルム>
ポリエステルフィルムは単層構造であっても積層(多層)構造であってもよい。ポリエステルフィルムが積層構造の場合、ポリエステルフィルムは2層構造又は3層構造であってもよく、4層構造又はそれ以上の多層構造であってもよい。積層する層数は特に限定されないが、10層以下であることが好ましい。ポリエステルフィルムが積層構造である場合、ポリエステルフィルムは共押出積層ポリエステルフィルムであることが好ましい。
【0019】
ポリエステルフィルムが積層構造である場合、ポリエステルフィルムは、バイオマス由来のポリエステルを主成分として含む層を有することが好ましい。また、ポリエステルフィルムは、バイオマス由来のポリエステルを主成分として含む層と、化石燃料由来のポリエステルを主成分として含む層を有していてもよい。
【0020】
ポリエステルフィルムが積層構造である場合、好ましい形態は、表層、中間層及び表層をこの順に有する少なくとも3層からなる積層構造である。各層の間には、他の層が設けられてもよいが、本実施形態では、表層、中間層及び表層はこの順にそれぞれが直接積層されたものであることが好ましい。また、ポリエステルフィルムの積層構造は、2種3層もしくは3種3層構造であることが好ましく、2種3層構造であることがより好ましい。図2に示されるように、ポリエステルフィルム100が2種3層構造の場合、中間層10の両面に積層される表層20は同種の層であり、中間層10のみが異種の層であることが好ましい。
【0021】
ポリエステルフィルムが表層、中間層及び表層をこの順に有する少なくとも3層からなる積層構造である場合、ポリエステルフィルムは、バイオマス由来のポリエステルを主成分として含む層を中間層として有することが好ましい。この場合、表層は、バイオマス由来のポリエステルを主成分として含む層であってもよく、化石燃料由来のポリエステルを主成分として含む層であってもよい。一実施形態として、ポリエステルフィルムが、バイオマス由来のポリエステルを主成分として含む層を中間層として有し、化石燃料由来のポリエステルを主成分として含む層を表層として有する態様が例示される。
【0022】
ポリエステルフィルムの厚み(全体の厚み)は、1μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることがさらに好ましく、12μm以上であることが特に好ましい。また、ポリエステルフィルムの厚みは、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましく、200μm以下であることが一層好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。
【0023】
ポリエステルフィルムが積層構造であり、例えば、表層、中間層及び表層をこの順に有する少なくとも3層からなる積層構造である場合、表層の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましく、1μm以上であることが特に好ましい。表層の厚みは、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、30μm以下であることが一層好ましく、10μm以下であることが特に好ましい。また、上記の場合、中間層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましく、10μm以上であることが一層好ましく、20μm以上であることが特に好ましい。中間層の厚みは、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましく、300μm以下であることが一層好ましく、100μm以下であることがより一層好ましく、80μm以下であることが特に好ましい。なお、ポリエステルフィルムの層構成及び各層の厚みは、ウルトラミクロトームにて冷凍破断した断面を、透過型電子顕微鏡を用いて3000~200000倍に拡大観察し、断面写真を撮影することで求められる。
【0024】
ポリエステルフィルムが積層構造である場合、バイオマス由来のポリエステルを主成分として含む層の厚みは、ポリエステルフィルムの全体の厚みに対して50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
【0025】
ポリエステルフィルムは、無延伸ポリエステルフィルムであっても延伸ポリエステルフィルムであってもよい。中でも、ポリエステルフィルムは延伸ポリエステルフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエステルフィルムであることが特に好ましい。ポリエステルフィルムを二軸延伸ポリエステルフィルムとすることで、力学特性や印刷適性を効果的に高めることができる。
【0026】
<ポリエステルフィルムの物性>
ポリエステルフィルムのタルミ量の最大値は、10mm未満であることが好ましく、9.5mm以下であることがより好ましく、9mm以下であることがさらに好ましく、8mm以下であることが一層好ましく、7.5mm以下であることが特に好ましい。ポリエステルフィルムのタルミ量の最大値の下限値は限定されるものではなく0mmであることが特に好ましいが、1mmであってもよい。
【0027】
ポリエステルフィルムのタルミ量を測定する際には、ポリエステルフィルムロールからポリエステルフィルムを巻き出して、図1に示されるように、間隔が1.5mで平行かつ水平に設置した2本のロールにポリエステルフィルムの長手方向がまたがるように渡し架ける。次いで、2本のロール間のポリエステルフィルムに0.4MPaの一定張力をかける。2本のロール間のポリエステルフィルムに一定張力をかけると、幅方向のどちらか一方あるいは両方の端部が弛んで垂れ下がる状態となることがある。その際にポリエステルフィルムの幅方向の端部に生ずるたるみの最高点と最低点の差(たるみの最大深さ)を、超音波式変位センサ(キーエンス社製 UD-500)で測定し、タルミ量(mm)とする。ポリエステルフィルムの幅方向の第1端(走行方向右端)と第2端(走行方向左端)においてタルミ量が異なる場合には、いずれか大きな値をタルミ量の最大値とする。なお、ポリエステルフィルムの幅方向の第1端と第2端のタルミ量が同じ場合には、それぞれの端部におけるタルミ量がタルミ量の最大値となる。
【0028】
なお、フィルムロールの幅が大きいほど、タルミ量の絶対値が大きくなるため、ポリエステルフィルムの幅が1000mm以上である場合には、1000mm幅あたりに比例換算した値をタルミ量とする。例えば、1500mm幅でタルミ量が7.5mmの場合、1000mm幅あたりに比例換算すると、7.5mm×1000/1500=5mmとなり、1000m幅でタルミ量5mmのフィルムロールと同じとなる。
【0029】
このタルミはフィルムの幅方向の位置によって長手方向のフィルムの寸法が極僅かに異なることで発生すると考えられる。すなわち、フィルムの長さが長い部分には張力が加わらないため、フィルムが垂れ下がってタルミとなり、長さが短い部分には張力が集中して緊張状態となりたるみは発生しない。また、たるみが発生する箇所は、フィルムロールの端部であることが多いが、フィルムロールの中央部の場合もあり得る。但し、このような場合であって、中央部のたるみ具合がフィルム端部のたるみ具合よりも大きい場合であっても、本発明における「タルミ量」とは、ポリエステルフィルムの幅方向の端部に生ずるたるみのうち最大値を示すものである。
【0030】
ポリエステルフィルムロールを用いて例えば自動車部品等の製品を製造したり、加工したりする際には、ロールtoロールでフィルムを走行させる場合があるが、ポリエステルフィルムのタルミ量の最大値を上記範囲内とすることで、フィルムのロール走行性をより効果的に高めることができる。その結果、ポリエステルフィルムロールを使用して製品を加工等する際の加工適性を効果的に高めることができる。なお、フィルムがたるむことにより装置トラブルが発生することがあるが、そのような不具合も抑制することができる。また、ポリエステルフィルムのタルミ量の最大値を上記範囲内とすることにより、ポリエステルフィルムに印刷層を形成する際の印刷ズレの発生を抑制することができる。さらに、ポリエステルフィルムを例えば、加飾成形用フィルムとして用いる場合には、成形樹脂を加飾する際の図柄の位置ズレを抑制することができ、見当精度を高めることができる。
【0031】
ポリエステルフィルムのタルミ量を低減するためには、ポリエステルにおけるバイオマス由来の原料の種類や使用量を調整したり、ポリエステルフィルム製造時の、例えば、延伸倍率、延伸温度、延伸後の熱処理(熱固定)温度、熱処理後の冷却温度と幅出しや弛緩処理、巻き取り時の張力等の延伸条件や製造工程を適宜コントロールしたりする方法が挙げられる。特に、ポリエステルにおけるバイオマス由来の原料の種類や使用量を調整することに加えて、各種製造条件を適切にコントロールすることで、ポリエステルフィルムのタルミ量を低減しやすい傾向となる。
【0032】
溶融状態からの冷却は、例えば、冷却機としてキャストロールを用い、押し出された溶融樹脂をキャストロールに接触させることにより行うことができるが、具体的には、冷却温度を原料の樹脂成分のガラス転移温度より30~130℃高い温度とする方法が挙げられる。冷却温度は樹脂成分のガラス転移温度より35~120℃高い温度であることがより好ましく、40~110℃高い温度であることが特に好ましい。冷却温度を上記範囲とすることで、フィルムの冷却速度すなわち相対結晶化度を調整することができ、タルミ量の調整が容易となる。
【0033】
フィルムが二軸延伸フィルムの場合は、例えば、二軸延伸し熱固定したフィルムを冷却する際に、好ましくは100~160℃の温度領域で、たるみの形状(たるみの位置)やたるみ具合に応じて、フィルムの一方又は両方の側縁に僅に広げる又は縮める処理を行う方法を用いることができる。この処理は、通常、テンタークリップ間隔を広げる方向に移動する(以降「幅出し処理」と称する。)か、あるいは縮める方向に移動する(以降、「弛緩処理」と称する。)ことで調整することができる。この幅出しまたは弛緩処理の量は、フィルムの幅方向の中央部を中心とし側端までの長さ(すなわち、テンタークリップ間隔の半分の長さ)に対して0.1~2%の範囲内から選んで調節することができる。
【0034】
フィルムの側縁部を幅出し処理すると、その側縁部の長さ(長手方向の寸法)は幅出し処理前よりも長くなり、逆に弛緩処理すると短くなる。これらの幅出しまたは弛緩処理によるフィルムの長さの変化は、フィルム側縁部において最も大きく、フィルム中央部にはその効果は僅かしか及ばないと考えられる。従って、幅出しまたは弛緩処理のいずれかの処理を選択するかは、処理効果の及び難いフィルムの中央部におけるフィルム長さを基準として決めるのがよい。
上述したタルミ量の調整手法は、バイオマス由来原料を含むポリエステル系樹脂を用いる場合に特に有効である。
【0035】
さらに、上記のタルミ量低減を目的とした幅出しや弛緩処理とともに、二軸延伸フィルムの幅方向の収縮率を低減するための弛緩処理を組み合わせることも可能である。この場合、二軸延伸されたフィルムは、テンター内の熱固定ゾーンで最高温度領域あるいはそれよりも低い温度の冷却ゾーンにおいて、通常テンタークリップ間隔の0.1~10%の範囲で低収縮化のための弛緩処理が施され、その後さらに温度の低い冷却ゾーンにおいて、上記のタルミ量低減を目的とした幅出しや弛緩処理を施される序列であることが好ましい。
【0036】
ポリエステルフィルムのMD方向の引張破断伸度は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、120%以上であることがさらに好ましく、150%以上であることが一層好ましく、170%以上であることがより一層好ましく、190%以上であることが特に好ましい。ポリエステルフィルムのMD方向の引張破断伸度の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、300%であることが好ましく、280%であることがより好ましい。また、ポリエステルフィルムのTD方向の引張破断伸度は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、120%以上であることがさらに好ましく、150%以上であることが特に好ましい。ポリエステルフィルムのTD方向の引張破断伸度の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、300%であることが好ましく、250%であることがより好ましい。ポリエステルフィルムの引張破断伸度を上記範囲内とすることにより、例えば加飾成形に適したポリエステルフィルムを得ることができる。特にポリエステルフィルムの引張破断伸度が所定値以上の場合、被着体への追従性が高まり、被着体が凹凸構造を有する場合や、被着面積が大きな場合であっても、加飾成形性が良好となる。ポリエステルフィルムの引張破断伸度は、幅15mm、長さ150mmのサイズの試料片を採取し、引張試験機を用い試験片のつかみ間隔50mm、引張速度200mm/分にて引張試験を行うことで測定することができる。その際、引張破断時の伸びを測定し、引張破断伸度とする。
【0037】
ポリエステルフィルムのMD方向の引張破断強度は、100MPa以上であることが好ましく、120MPa以上であることがより好ましく、150MPa以上であることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムのMD方向の引張破断強度の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、400MPaであることが好ましく、300MPaであることがより好ましい。また、ポリエステルフィルムのTD方向の引張破断強度は、100MPa以上であることが好ましく、120MPa以上であることがより好ましく、150MPa以上であることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムのTD方向の引張破断強度の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、400MPaであることが好ましく、300MPaであることがより好ましい。ポリエステルフィルムの引張破断強度を上記範囲内とすることにより、例えば加飾成形に適したポリエステルフィルムを得ることができる。特にポリエステルフィルムの引張破断強度が所定値以上の場合、加飾成形時にポリエステルフィルムが破断することを抑制することができる。ポリエステルフィルムの引張破断強度は、幅15mm、長さ150mmのサイズの試料片を採取し、引張試験機を用い試験片のつかみ間隔50mm、引張速度200mm/分にて引張試験を行うことで測定することができる。その際、引張破断時(切断時)の荷重を測定し、引張破断強度とする。
【0038】
ポリエステルフィルムのMD方向の5%伸び時の荷重は、150MPa以下であることが好ましく、140MPa以下であることがより好ましく、130MPa以下であることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムのMD方向の5%伸び時の荷重は、特に限定されるものではないが、50MPa以上であることが好ましく、70MPa以上であることがより好ましい。また、TD方向の5%伸び時の荷重は、150MPa以下であることが好ましく、140MPa以下であることがより好ましく、130MPa以下であることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムのTD方向の5%伸び時の荷重は、特に限定されるものではないが、50MPa以上であることが好ましく、70MPa以上であることがより好ましい。ポリエステルフィルムが5%伸びている状態は、例えば加飾成形時のポリエステルフィルムの状態に近似している。このため、5%伸び時の荷重を上記範囲内とすることにより、ポリエステルフィルムが収縮する力をコントロールしやすくなり、加飾位置のズレや印刷位置のズレの発生をより効果的に抑制することができる。ポリエステルフィルムの5%伸び時の荷重は、幅15mm、長さ150mmのサイズの試料片を採取し、引張試験機を用い試験片のつかみ間隔50mm、引張速度200mm/分にて引張試験を行うことで測定することができる。その際、5%伸び時の荷重を測定する。
【0039】
ポリエステルフィルムを180℃で5分加熱した際のMD方向の熱収縮率は、3%以下であることが好ましく、2.8%以下であることがより好ましく、2.5%以下であることがさらに好ましく、2.2%以下であることが特に好ましい。MD方向の熱収縮率は、0%程度であってもよいが、0.3%程度であってもよい。また、ポリエステルフィルムを180℃で5分加熱した際のTD方向の熱収縮率は、2%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。TD方向の熱収縮率は、-1%程度であってもよいが、-0.7%程度であってもよい。
【0040】
ポリエステルフィルムを120℃で5分加熱した際のMD方向の熱収縮率は、3%以下であることが好ましく、2.8%以下であることがより好ましく、2.5%以下であることがさらに好ましく、2%以下であることが特に好ましい。MD方向の熱収縮率は、0%程度であってもよいが、0.2%程度であってもよい。また、ポリエステルフィルムを120℃で5分加熱した際のTD方向の熱収縮率は、2%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。TD方向の熱収縮率は、-1%程度であってもよいが、-0.5%程度であってもよい。
【0041】
ポリエステルフィルムの熱収縮率は、1.5cm×15cmのポリエステルフィルムを無張力状態で所定の温度(180℃もしくは120℃ )に保った熱風式オーブン中、5分間熱処理を施し、その前後のポリエステルフィルムの長さを測定し、下記式を用いて算出することができる。
熱収縮率(%)={(熱処理前のサンプル長)-(熱処理後のサンプル長)}/(熱処理前のサンプル長)×100
【0042】
ポリエステルフィルムのヘーズは、7%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、4.5%以下であることが特に好ましい。ポリエステルフィルムのヘーズの下限値は特に限定されるものではなく、例えば0%であってもよいが、1%であってもよい。また、ポリエステルフィルムを180℃で5分加熱した際のヘーズは、10%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましく、7%以下であることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムのヘーズの下限値は特に限定されるものではなく、例えば0%であってもよいが1%であってもよい。加熱処理後のポリエステルフィルムのヘーズ値が上記範囲内であれば、加飾成形後であっても、その透明性が維持されていることを意味する。なお、ポリエステルフィルムのヘーズは、JIS K 7136:2000に準拠して測定される。
【0043】
加熱処理前後のポリエステルフィルムのヘーズの変化量(ΔH)は、2%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましく、1.5%以下であることが特に好ましい。また、ヘーズの変化量(ΔH)は0%であることが特に好ましいが、0.3%程度であってもよい。加熱処理前後のポリエステルフィルムのヘーズの変化量(ΔH)は以下の式で算出される値である。
変化量(ΔH)(%)=(180℃で5分加熱した後のフィルムのヘーズ)(%)-(加熱前のフィルムのヘーズ)(%)
加熱処理前後のポリエステルフィルムのヘーズの変化量(ΔH)が上記範囲内であれば、加熱処理により、フィルムの透明性が低下していないことを意味し、このことは、加熱処理により、ポリエステルに由来するオリゴマー成分の析出が少ないことを意味している。
【0044】
ポリエステルフィルムの全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。ポリエステルフィルムの全光線透過率の上限値は特に限定されるものではなく、例えば100%であってもよいが、95%であってもよい。ポリエステルフィルムの全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される。
【0045】
ポリエステルフィルムの色調反射法によるy値は0.323より小さいことが好ましく、0.321以下であることより好ましく、0.319以下であることがさらに好ましく、0.317以下であることが特に好ましい。ポリエステルフィルムのy値の下限値は限定されるものではないが、0.310以上であることが好ましく、0.320以上であってもよい。ポリエステルフィルムのy値を測定する際には、ポリエステルフィルムを重ね厚み(測定時の総厚み)が500μmに一番近い枚数となるように重ね測定を行う。測定装置としては、分光測色計を用いることができ、測定条件は反射条件とする。なお、測定は、23℃の環境下で行う。
【0046】
<ポリエステル>
ポリエステルフィルムは、バイオマス由来のポリエステルを含む。ポリエステルは、主鎖に連続してエステル結合を有する高分子化合物をいい、具体的には、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合反応させることによって得られる。このように、ポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位を含む。本明細書において、バイオマス由来のポリエステルとは、バイオマス由来の原料を用いて製造されるポリエステルであり、バイオマス由来単位を含んでいればよいが、好ましくは5モル%以上含むものを指し、より好ましくは10モル%以上含むものを指す。具体的には、ジカルボン酸成分及び/又はジオール成分がバイオマス由来の原料であることが好ましく、バイオマス由来のポリエステルは、バイオマス由来のジカルボン酸単位及び/又はジオール単位を好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上含む。
【0047】
ポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分として含むフィルムである。ポリエステルの含有量はポリエステルフィルムの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが一層好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。本実施形態では、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの少なくとも一部は、バイオマス由来のポリエステルであるが、ポリエステルフィルムは、バイオマス由来のポリエステルを主成分として含むフィルムであることが好ましい。バイオマス由来のポリエステルの含有量はポリエステルフィルムの全質量に対して20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが一層好ましく、60質量%以上であることがより一層好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
【0048】
バイオマス由来のポリエステルは、バイオマス由来単位を含んでいればよいが5モル%以上含むことが好ましく、10モル%以上含むことがより好ましく、15モル%以上含むことがさらに好ましく、20モル%以上含むことが一層好ましく、25モル%以上含むことがより一層好ましく、30モル%以上含むことがさらに一層好ましく、35モル%以上含むことが特に好ましく、40モル%以上含むことがより特に好ましく、45モル%以上含むことが最も好ましい。また、ジカルボン酸成分及びジオール成分の両方がバイオマス由来の原料であってもよく、バイオマス由来のポリエステルは、バイオマス由来単位を100モル%含むものであってもよい。
【0049】
バイオマス由来のポリエステルは、全ジール由来単位に対してバイオマス由来単位を10モル%以上含むことが好ましく、30モル%以上含むことがより好ましく、50モル%以上含むことがさらに好ましく、70モル%以上含むことが一層好ましく、80モル%以上含むことがより一層好ましく、90モル%以上含むことがさらに一層好ましく、バイオマス由来単位を100モル%含むものであってもよい。
【0050】
本実施形態では特にジオール成分がバイオマス由来の原料であることが好ましい。ここで、ジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。中でもジオール成分はエチレングリコールであることが好ましく、エチレングリコールがバイオマス由来の原料であることが好ましい。すなわち、バイオマス由来のポリエステルにおいて、ジオール単位が、バイオマス由来のエチレングリコール単位であることが好ましい。
【0051】
バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)から得られる。具体的には、バイオマスエタノールから、エチレンを経てエチレングリコールを生成することにより、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。また、バイオマス由来のエチレングリコールとしては、市販のバイオマス由来のエチレングリコールを用いることもできる。
【0052】
バイオマス由来のポリエステルは、バイオマス由来のエチレングリコール単位を5モル%以上含むことが好ましく、10モル%以上含むことがより好ましく、15モル%以上含むことがさらに好ましく、20モル%以上含むことが一層好ましく、25モル%以上含むことがより一層好ましく、30モル%以上含むことがさらに一層好ましく、35モル%以上含むことが特に好ましく、40モル%以上含むことがより特に好ましく、45モル%以上含むことが最も好ましい。また、ポリエステルフィルムの全ポリエステル中におけるバイオマス由来のエチレングリコール単位の含有量は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることがさらに好ましく、20モル%以上であることがよりさらに好ましく、30モル%以上であることが一層好ましく、40モル%以上であることがより一層好ましく、45モル%以上であることが特に好ましい。
【0053】
ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸を用いることができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸等のフランジカルボン酸等が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸であることが好ましく、テレフタル酸であることが特に好ましい。テレフタル酸としては、石油から抽出されるパラキシレンを原料とするものを用いてもよい。
【0054】
ポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。本明細書において、ホモポリエステルとは、1種のジオール成分と1種のジカルボン酸成分を重縮合させてなるポリエステルである。代表的なホモポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等を例示することができる。一方、共重合ポリエステルとは、第3成分も重縮合させてなるポリエステルである。第3成分とは、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の主成分(すなわち、最も含有量が多い成分)となる化合物と、ジオール成分の主成分(すなわち、最も含有量が多い成分)となる化合物以外の成分である。第3成分のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。ポリエステルが共重合ポリエステルである場合、第3成分の含有量は30モル%以下であることが好ましい。
【0055】
なお、通常、エチレングリコールを原料の1つとしてポリエステルを製造(重縮合)する場合、エチレングリコールからジエチレングリコールが副生する。本明細書においては、このジエチレングリコールを副生ジエチレングリコールと称する。エチレングリコールからのジエチレングリコールの副生量は、重縮合の様式等によっても異なるが、エチレングリコールのうち5モル%以下程度である。本明細書においては、5モル%以下のジエチレングリコールを副生ジエチレングリコールとした上で、副生ジエチレングリコールもエチレングリコールに包含されるものとし、共重合成分とは区別する。但し、ジエチレングリコールが5モル%を超えて含有されている場合には、ジエチレングリコールは副生ジエチレングリコールとしてではなく、共重合成分として扱う。
【0056】
本実施形態ではポリエステルとして、再生原料を併用してもよい。再生原料としては、例えば、ポリエステルフィルムの製造ラインにおいて製品とならなかったポリエステルフィルムの耳部や、ペットボトル由来のリサイクルポリエステル、ペットボトルのラベルや弁当の結束ラベル、包装材由来のリサイクルポリエステルなどが挙げられる。但し、再生原料がバイオマス由来のポリエステルではない場合は、再生原料の使用量は、ポリエステルフィルムの全ポリエステル質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0057】
近年、メカニカルリサイクルによる再生原料、特にメカニカルリサイクルポリエステルを用いることが検討されているが、メカニカルリサイクル原料は熱履歴が重なるため黄色味が強いという課題がある。メカニカルリサイクル原料をうまく使いこなし、環境に対する負荷を低減するという目的で、バイオマス由来のポリエステルとメカニカルリサイクル原料、特にメカニカルリサイクルポリエステルを組み合わせてもよい。これにより、メカニカルリサイクル原料による黄色味を調整することがより容易となり、環境負荷低減型かつ外観や意匠性に優れたフィルムとすることがより容易となる。
【0058】
ポリエステルフィルムのバイオマス度は、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。バイオマス度の上限値は特に限定されるものではないが、100%であってもよい。
なお、本明細書におけるバイオマス度は、下記の方法により算出することができる。
「バイオマス度」(%)=「バイオマス原料のバイオマス度」(%)×「フィルム中のバイオマス原料の質量割合」(%)
バイオマス原料のバイオマス度とは、バイオマス原料中のバイオマス由来の炭素濃度の指標であり、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物中のC14含有量は105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、バイオマス原料中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス原料のバイオマス度を算出することができる。
【0059】
<重縮合触媒>
上記ポリエステルを重縮合する際の重縮合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えばチタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物等が挙げられる。
【0060】
本実施形態では、ポリエステルフィルムにおけるオリゴマー成分の析出量を抑えるために、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルを原料としてポリエステルフィルムを製造してもよい。オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を用いることができ、例えばポリエステル製造後に固相重合する方法等が挙げられる。また、ポリエステルは、エステル化もしくはエステル交換反応をした後に、さらに反応温度を高くして減圧下で溶融重縮合して得てもよい。
【0061】
<固有粘度>
ポリエステルの固有粘度(IV)は、0.5dL/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.52dL/g以上、さらに好ましくは0.54dL/g以上である。また、ポリエステルの固有粘度(IV)は、例えば、1dL/g以下であり、好ましくは0.8dL/g以下である。ポリエステルの固有粘度を上記範囲内とすることにより、ポリエステルフィルムのタルミ量等を所望の範囲にコントロールしやすくなる。また、ポリエステルの固有粘度を上記範囲内とすることにより、ポリエステルフィルムの生産効率をより効果的に高めることができる。
【0062】
<任意成分>
ポリエステルフィルムは、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、核剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、無機粒子、有機粒子などの添加剤を含有していてもよい。
【0063】
本実施形態では、ポリエステルフィルムは任意成分として顔料、染料などの着色剤を含有することも好ましい形態である。この場合、ポリエステルフィルムは青色着色剤を含むことが好ましい。ポリエステルフィルムが青色着色剤を含むことにより、フィルムの色調や意匠性を高めることができる。また、このようなポリエステルフィルムは加飾成形用フィルムとして好ましく用いられる。
【0064】
青色着色剤としては、従来公知の青色染料、青色顔料等が挙げられる。中でも、青色染料を使用することが好ましく、青色染料としてはアントラキノン系、アゾ系、フタロシアニン系等の青色染料が挙げられる。また、青色着色剤は、ハロゲン非含有のものが好ましい。ハロゲン非含有の着色剤を用いると、ポリエステルフィルムを廃棄する場合に、環境に与える悪影響、すなわち環境負荷を小さくすることができる。中でも、青色着色剤としては、ハロゲン非含有アントラキノン系青色染料を用いることが好ましい。ハロゲン非含有アントラキノン系青色染料の具体例としては、Disperse Blue 3、Disperse Blue 5、Disperse Blue 14、Disperse Blue 26、Disperse Blue 28、Disperse Blue 35、Disperse Blue 334、Disperse Blue 359、Disperse Blue 60、Disperse Blue 72、Disperse Blue 73、Disperse Blue 77、Disperse Blue 214、Disperse Blue 167、Disperse Blue 54、SolventBlue 101、Solvent Blue 102、Solvent Blue 104、Solvent Blue 122、Solvent Blue 35、Solvent Blue 36、Solvent Blue 59、Solvent Blue 63、Solvent Blue 68、Solvent Blue 78、Solvent Blue 97などが挙げられる。
【0065】
着色剤の含有量は、着色剤の種類にも依存するが、ポリエステルフィルムの全質量に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、0.03質量%以上であることがさらに好ましい。また、着色剤の含有量は、1質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0066】
ポリエステルフィルム中には、易滑性の付与及び各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を含有させてもよい。ポリエステルフィルム中に含有させる粒子の種類は、易滑性を付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子の他、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン-アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子等の架橋高分子、シュウ酸カルシウム及びイオン交換樹脂等の有機粒子を挙げることができる。粒子としては、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0067】
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、粒子の硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0068】
用いる粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.01~3μm、より好ましくは0.02~1.5μm、さらに好ましくは0.03~1μmの範囲である。平均粒径がかかる範囲であれば、ポリエステルフィルムの取り扱い性と表面平滑性を両立させることができる。
なお、粒子の平均粒径は、粒子が粉体の場合には、遠心沈降式粒度分布測定装置(例えば株式会社島津製作所製、「SA-CP3型」)を用いて粉体を測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径(d50)を平均粒径とすることができる。フィルム、層又は樹脂中の粒子の平均粒径については、10個以上の粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)観察して粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
【0069】
ポリエステルフィルムに粒子を含有させる場合、例えば、表層と中間層を設けて、表層に粒子を含有させることが好ましい。また、2種3層構造や3種3層構造などの設計とする場合は、少なくとも一方の表層のみに粒子を含有させることも可能である。
【0070】
粒子の含有量は、平均粒径にも依存するが、粒子を含有する層において、質量基準で、10000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは8000ppm以下、さらに好ましくは7000ppm以下、より好ましくは6000ppm以下である。かかる範囲であれば、ポリエステルフィルムの表面平滑性を良好なものとすることができる。また、粒子の含有量は50ppm以上であることが好ましく、より好ましくは100ppm以上である。
【0071】
ポリエステルフィルム中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、積層構造のポリエステルフィルムであれば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化又はエステル交換反応終了後、添加するのが好ましい。
【0072】
また、ポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分として含みつつも、本発明の効果を損なわない範囲において他の樹脂を含んでもいてもよい。他の樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0073】
<積層フィルム>
本実施形態は、上述したポリエステルフィルムの少なくとも一方の面にさらに任意層を有する積層フィルムに関するものであってもよい。例えば、本実施形態は、上述したポリエステルフィルムの少なくとも一方の面にさらにコーティング層を有する積層フィルムに関するものであってもよい。コーティング層は、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に設けられていてもよく、両面に設けられていてもよい。コーティング層としては、例えば、易接着層、離型層、帯電防止層、アンチブロッキング層等を挙げることができる。なお、積層フィルムのタルミ量等の物性もポリエステルフィルムのタルミ量等の物性と同等であることが好ましく、積層フィルムの各種物性を測定する場合は、積層フィルムの状態で各種物性を測定すればよい。
【0074】
例えば、コーティング層を含む積層フィルムとしては、以下の層構成が挙げられる。なお、以下において、「帯電防止層・離型層」とは、帯電防止層であってもよく、離型層であってもよく、もしくは、帯電防止機能を有する離型層であってもよい。
(1)易接着層/ポリエステルフィルム
(2)ポリエステルフィルム/帯電防止層・離型層
(3)ポリエステルフィルム/アンチブロッキング層
(4)易接着層/ポリエステルフィルム/帯電防止層・離型層
(5)離型層/易接着層/ポリエステルフィルム/帯電防止層・離型層
(6)離型層/ポリエステルフィルム/帯電防止層・離型層
(7)易接着層/ポリエステルフィルム/易接着層
(8)アンチブロッキング層/易接着層/ポリエステルフィルム/易接着層
(9)アンチブロッキング層/ポリエステルフィルム/易接着層
(10)アンチブロッキング層/易接着層/ポリエステルフィルム/帯電防止層・離型層
(11)アンチブロッキング層/ポリエステルフィルム/帯電防止層・離型層
【0075】
易接着層は、ポリマーおよび架橋剤を含むことが好ましい。ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂等が挙げられる。中でも、ポリマーは、ポリウレタンであることが好ましく、ポリエステルポリウレタンであることがより好ましい。また、ポリマーは、カルボン酸残基を持ち、その少なくとも一部はアミンまたはアンモニアを用いて水性化されているものが好ましい。ポリマーのガラス転移温度(Tg)は0℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましい。易接着層に含まれる架橋剤としては、メラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系樹脂が挙げられるが、塗布性、耐久接着性の点で、メラミン系樹脂を値いることが好ましい。
【0076】
離型層は、離型剤を含む。離型剤としては、例えば、長鎖アルキル化合物、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン、ワックス等が挙げられる。また、離型層には、ポリエステルフィルムとの密着性を向上させるためにバインダーポリマーを併用してもよい。バインダーポリマーとしては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、でんぷん類等が挙げられる。さらに、離型層は架橋剤を含んでもよい。架橋剤としては、例えば、メチロール化またはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、ブロックポリイソシアネート、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋成分はバインダーポリマーと予め結合していてもよい。離型層は、滑り性改良を目的として、不活性粒子を含有してもよく、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、有機粒子等が挙げられる。
【0077】
帯電防止層は、帯電防止剤を含む。帯電防止剤としては、例えば、第一級アミン塩、第三級アミン、第四級アンモニウム化合物などのカチオン系帯電防止剤;硫化油、硫酸化アミド油、硫酸化エステル油、脂肪アルコール硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン系帯電防止剤;多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪アミンまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、アルキルジエタノールアミンの脂肪酸エステル等の非イオン系帯電防止剤;カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等の両性系帯電防止剤が挙げられる。中でも帯電防止性能と透明性の観点でアルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸リチウム、アルキルベンゼンスルホン酸リチウムなどが好ましく用いられる。なお、上述した帯電防止剤は易接着層や離型層に含まれていてもよく、易接着層や離型層が帯電防止性能を兼ね備えていることも好ましい。
【0078】
アンチブロッキング層は、水分散可能なポリオレフィン系樹脂および架橋剤を含むことが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、次の(1)~(5)に記載の化合物を基本骨格として有する化合物を挙げることができる。
(1)エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン系不飽和炭化水素の単独または共重合体からなるワックス、樹脂、ゴム状物。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体等が挙げられる。
(2)上記のα-オレフィンの2種以上と共役または非共役ジエンとのゴム状共重合体。例えば、エチレン-プロピレン-ブダジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン-プロピレン-1,5-ヘキサジエン共重合体、イソブテン-イソブレン共重合体等が挙げられる。
(3)上記のα-オレフィンと共役または非共役ジエンとの共重合体。例えば、エチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-エチリデンノルボルネン共重合体等が挙げられる。
(4)上記のα-オレフィン(特にエチレン)と酢酸ビニルとの共重合体およびその完全もしくは部分ケン化物。
(5)上記のα-オレフィンの単独または共重合体に上記の共役もしくは非共役ジエンまたは酢酸ビニル等をグラフトさせたグラフト重合体およびその完全もしくは部分ケン化物。
架橋剤としては、メラミン系、エポキシ系、アミド系、アクリルアミド系等の化合物、ポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネート、カルボジイミド化合物等が挙げられる。メラミン系架橋剤としては、アルキロールまたはアルコキシアルキロール化したメラミン系化合物であるメトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン等が例示され、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。
【0079】
上述したコーティング層には必要に応じ、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、殺菌剤、無機粒子、有機粒子、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料を添加することができる。
【0080】
コーティング層を形成する際には、コーティング剤(塗布剤)をポリエステルフィルムの表面に塗布する。塗布方法としては、例えば、リバースロールコ一ター、グラビアコ一ター、ロッドコ一ター、エアドクターコ一ター等の塗布装置を用いることができる。また、塗布前にフィルムの表面を改質するために、ポリエステルフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。
【0081】
コーティング層の厚み(乾燥後厚み)は、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましい。また、コーティング層の厚みは1μm以下であることが好ましい。
【0082】
コーティング層はポリエステルフィルムの延伸工程中に形成されることが好ましく、いわゆるインラインコーティングにより形成されることが好ましい。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上にコーティング層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共に、コーティング層の厚みを延伸倍率により変化させることができるため、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造することができる。コーティング層をインラインコーティングで形成する場合、例えば、逐次二軸延伸においては、縦延伸が終了し横延伸前にコーティング処理を施すことが好ましい。
【0083】
本実施形態は、上述したポリエステルフィルムの少なくとも一方の面にさらに印刷層を有する積層フィルムに関するものであってもよい。積層フィルムが印刷層を有する場合、印刷層は上述したコーティング層(例えば易接着層)上に積層されることが好ましい。例えば、印刷層を含む積層フィルムとしては、以下の層構成が挙げられる。
(1)印刷層/ポリエステルフィルム
(2)印刷層/ポリエステルフィルム/コーティング層(易接着層、帯電防止層、離型層、アンチブロッキング層等)
(3)印刷層/コーティング層(離型層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(易接着層、帯電防止層、離型層、アンチブロッキング層等)
(4)印刷層/コーティング層(離型層)/コーティング層(易接着層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(易接着層、帯電防止層、離型層、アンチブロッキング層等)
(5)コーティング層(離型層)/印刷層/コーティング層(易接着層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(易接着層、帯電防止層、離型層、アンチブロッキング層等)
(6)コーティング層(離型層)/印刷層/コーティング層(離型層)/コーティング層(易接着層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(易接着層、帯電防止層、離型層、アンチブロッキング層等)
【0084】
印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、その形成方法は特に限定されない。印刷層は着色剤(顔料や染料)に加えてバインダーポリマーを含むことが好ましい。バインダーポリマーとしては、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂などが挙げられる。着色剤としては、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いることが好ましい。
【0085】
印刷層の形成方法は公知の方法を用いることができ、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることが好ましい。特に多色刷りや階調色彩を必要とする場合は、オフセット印刷法やグラビア印刷法が好ましく用いられる。また、単色の場合はグラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することもできる。印刷法は図柄に応じて、ポリエステルフィルムの全面的に形成する場合も部分的に形成する場合もある。
【0086】
また、積層フィルムは、さらにハードコート層や無機蒸着層などの機能層を有していてもよい。このような積層体としては、例えば、以下のような積層構造が例示される。
(1)機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/印刷層/コーティング層(易接着層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(易接着層)
(2)機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/印刷層/コーティング層(離型層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(帯電防止層、離型層、アンチブロッキング層等)
(3)機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/印刷層/コーティング層(離型層)/コーティング層(易接着層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(帯電防止層、離型層、アンチブロッキング層等)
(4)機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/印刷層/機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/コーティング層(易接着層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(易接着層)
(5)機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/印刷層/機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/コーティング層(離型層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(帯電防止層、離型層、アンチブロッキング層等)
(6)機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/印刷層/機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/コーティング層(離型層)/コーティング層(易接着層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(帯電防止層、離型層、アンチブロッキング層等)
(7)コーティング層(離型層)/機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/印刷層/コーティング層(易接着層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(易接着層)
(8)コーティング層(離型層)/機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/印刷層/コーティング層(離型層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(帯電防止層、離型層、アンチブロッキング層等)
(9)コーティング層(離型層)/機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/印刷層/コーティング層(離型層)/コーティング層(易接着層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(帯電防止層、離型層、アンチブロッキング層等)
(10)コーティング層(離型層)/機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/印刷層/機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/コーティング層(易接着層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(易接着層)
(11)コーティング層(離型層)/機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/印刷層/機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/コーティング層(離型層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(帯電防止層、離型層、アンチブロッキング層等)
(12)コーティング層(離型層)/機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/印刷層/機能層(ハードコート層、無機蒸着層等)/コーティング層(離型層)/コーティング層(易接着層)/ポリエステルフィルム/コーティング層(帯電防止層、離型層、アンチブロッキング層等)
【0087】
<ポリエステルフィルム/ポリエステルフィルムロールの製造方法>
以下では、本ロールにおける、ポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
【0088】
ポリエステルフィルムが二軸延伸ポリエステルフィルムである場合、原料となるポリエステルを、押出機を用いてダイから溶融シートとして押出し、回転冷却ドラム(キャスティングドラム)で冷却固化して、未延伸シートを得る方法が好ましい。ポリエステルフィルムが多層構造である場合、それぞれの層を構成する原料となるポリエステルをそれぞれの押出機に供給し、各々を溶融した後、共押出し、冷却固化する。ここで、冷却は、例えばポリマーのガラス転移点以下の温度となるように行い、実質的に非晶状態の未配向シート(未延伸シート)を得るとよい。また、シートの平面性を向上させるためシートと冷却ロールとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法及び/又は液体塗布密着法が好ましく採用される。なお、原料となるポリエステルは、ペレットなどとして、適宜乾燥されたうえで押出機に供給されるとよい。また、粒子、紫外線吸収剤、その他の添加剤などは、適宜ペレットに配合されてもよい。
【0089】
次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、未延伸シートを一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~120℃、好ましくは80~110℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは3~6倍である。
【0090】
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70~170℃であり、延伸倍率は通常3~7倍、好ましくは3.5~6倍である。なお、上述したようにコーティング層をインラインコーティングで形成する場合、例えば、一段目の延伸が終了し二段目の延伸前にコーティング処理を施してもよい。
【0091】
そして、引き続き、通常180~270℃の温度で、緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。この熱処理は、熱固定工程とも呼ばれる。熱処理は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
また、熱処理の後に冷却ゾーンにて冷却を行ってもよい。冷却温度は、フィルムを構成するポリエステルのガラス転移温度(Tg)より高い温度であることが好ましく、より具体的には、100~160℃の範囲であることが好ましい。この冷却は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0092】
また、ポリエステルフィルムの製造に同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70~120℃、好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向(縦方向)及び幅方向(横方向)に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で好ましくは4~50倍、より好ましくは7~35倍、さらに好ましくは10~25倍である。
そして、引き続き、通常170~250℃の温度で、緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式及びリニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0093】
なお、ポリエステル原料の一部として再生原料を用いる場合、再生原料としては、選別された後、粉砕してフレーク及び/又はフレークをペレット等のチップ化したものが用いられる。フレークを得る方法としては、従来公知の方法を使用することができ、粉砕機により粉砕してフレークを得る方法が挙げられる。また、フレークをチップ化する方法としても、従来公知の方法を用いることができ、例えばフレークを溶融押出した後、ストランド状の溶融押出物を裁断することでペレット状等のチップ化した原料を得る方法が挙げられる。
【0094】
上記のようにして得られたポリエステルフィルムは、ワインダー装置により巻き取られ、マスターロールとなる。その後、スリット工程において、得られたマスターロールから二軸配向ポリエステルフィルムを巻出し、所定の幅となるように裁断しながら、コンタクトロールでフィルムロールに面圧と、2軸ターレットワインダーでフィルムに張力をかけながら、ポリエステルフィルムロールを巻き取ることができる。
【0095】
<ポリエステルフィルムの用途>
本実施形態のポリエステルフィルムや積層フィルムは、例えば、包装製品、各種ラベル材料、蓋材、シート成形品、窓貼り、建材、離型フィルム、農業用ハウス、航空機等の複合材部品、飲料缶、家具、医療、光学(OLET等の工程用フィルム、偏光板、液晶ディスプレイのバックライト、タッチパネルのベースフィルム)、スマートフォン・タブレット等のモバイル機器、家電製品、自動車等の車輌用部品、ドライフィルム、昇華・転写用フィルム、加飾成形用フィルム等の用途に好適に使用することができる。中でも、ポリエステルフィルムや積層フィルムは加飾成形用フィルムであることが好ましい。特に、上述したコーティング層や印刷層を有する積層フィルムは、加飾成形用フィルムに好ましく用いられる。
【0096】
加飾成形用フィルムは、例えば、フィルムインサート成形とフィルムインモールド成形に用いることができる。フィルムインサート成形は、加飾成形用フィルムを真空成形などの方法で立体加工した後に、立体加工したインサートフィルムを射出成形用の金型内にセットし、型閉めし、成形樹脂をキャビティに射出し、成形樹脂を固化させることによって、樹脂成形品を形成すると同時にその表面に加飾成形用フィルム(インサートフィルム)を一体化接着させて、樹脂成形品を装飾する方法である。フィルムインサート成形では、製品計上となったフィルムを金型にセットし、樹脂を流し込むことで、フィルムと一体化された加飾成形体を得ることができる。
【0097】
一方、フィルムインモールド成形は、印刷層を有する加飾成形用フィルムを用い、プラスチックの射出成形時の熱と圧力を利用して印刷層のみを転写印刷する方法である。フィルムインモールド成形では、あらかじめ離型層等を含む印刷層をポリエステルフィルム(基材フィルム)の上に積層させた積層フィルム(転写フィルム)を作製し、樹脂の射出成形時の熱と圧力を利用して転写印刷する。この際、転写フィルムは、離型層面と印刷層面との間で剥がされ、分離される。すなわち、成形転写後に印刷層は成形品の表面に接着して製品として取り出され、離型層は基材フィルムの表面に密着した状態で製品から取り除かれる。このように、フィルムインモールド成形では、成形と転写が同時に行われるため、成形同時転写法とも言う。
【0098】
以上のように、フィルムインサート成形では、ポリエステルフィルムも成形樹脂と一体化することで加飾成形体が形成されるが、フィルムインモールド成形では、ポリエステルフィルムは転写フィルムの基材であり、基材上に積層された印刷層のみが成形樹脂に転写されることになる。本実施形態の積層フィルムはフィルムインサート成形とフィルムインモールド成形のいずれにも好ましく用いられ、積層フィルムはインサートフィルムであってもよく、成形同時転写用フィルムであってもよい。
【0099】
本実施形態のポリエステルフィルムはタルミ量が所定値以下に抑えられているため、成形樹脂を加飾する際に印刷ズレを抑制することができる。すなわち、成形樹脂を加飾する際の図柄の位置ズレを抑制することができ、見当精度を高めることができる。また、本実施形態のポリエステルフィルムでは、5%伸び時の荷重や引張破断強度、引張破断伸度を所定範囲とすることで、成形樹脂への応答追従性を高めたり、加飾成形時にポリエステルフィルムが破断することが抑制される。
【0100】
なお、加飾成形用フィルムは、上記成形方法以外に、熱プレス成形や真空・圧空熱プレス成形等にも好ましく用いられる。
【0101】
(加飾成形体)
本実施形態は、上述したポリエステルフィルム(積層フィルム)を用いて加飾された、加飾成形体に関する。加飾成形がインサート成形で成形された場合には、加飾成形体には、上述したポリエステルフィルムが含まれていてもよい。また、加飾成形がインモールド成形で成形された場合には、加飾成形体には、上述したポリエステルフィルムが含まれておらず、積層シートにおける印刷層が転写されている。加飾成形体は、例えば、自動車等の車輌用部品や住宅設備部品、家電製品、スマートフォンやタブレット等のモバイル機器部品として用いられる。
【実施例0102】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0103】
(1)ポリエステルの固有粘度(IV)の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0104】
(2)ポリエステルフィルムのタルミ量(mm)
フィルムロールからフィルム(F)を巻き出して、間隔が1.5mで平行かつ水平に設置した2本のロール(R)にフィルム(F)の長手方向がまたがるように渡し架けた(図1)。2本のロール間のフィルムに0.4MPaの一定張力をかけ、その際に両方の端部に生ずるたるみの最高点と最低点の差を、超音波式変位センサ(キーエンス社製 UD-500)で測定してタルミ量(mm)とした。
【0105】
(3)ポリエステルフィルムの5%伸び時の荷重、引張破断強度及び引張破断伸度
ポリエステルフィルムの所定の場所から、幅15mm、長さ150mmのサイズの試料片を採取し、株式会社島津製作所製のオートグラフAGX-Vを用いて引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。各試験片の中央部に50mm間隔の標点をつけ、引張試験機を用い試験片のつかみ間隔50mm、引張速度200mm/分にて引張試験を行い、5%伸び時の荷重、切断時の荷重(引張破断強度)および伸び(引張破断伸度)を測定した。なお、引張試験はフィルムの長手方向(MD)と幅方向(TD)のそれぞれについて行った。
【0106】
(4)ポリエステルフィルムのヘーズ(H0)
JIS K 7136:2000に準拠し、日本電色工業(株)製ヘーズメーター NDH4000を用いて測定した。
【0107】
(5)加熱処理後のポリエステルフィルムのヘーズ(H1)
試料フィルムを所定の熱処理条件(180℃、5分間)で処理した後、上記と同様にして、フィルムヘーズを測定した。また、加熱前後のヘーズの変化量(ΔH)を以下の式を用いて算出した。
ΔH(%)=(H1)(%)-(H0)(%)
【0108】
(6)ポリエステルフィルムの熱収縮率
1.5cm×15cmのポリエステルフィルムを無張力状態で所定の温度(180℃もしくは120℃)に保った熱風式オーブン中、5分間熱処理を施し、その前後のポリエステルフィルムの長さを測定し、熱収縮率(%)を下記式にて算出した。なお、熱収縮率(%)はフィルムの長手方向(MD)と幅方向(TD)のそれぞれについて算出した。
熱収縮率(%)={(熱処理前のサンプル長)-(熱処理後のサンプル長)}/(熱処理前のサンプル長)×100
【0109】
[ポリエステル原料]
原料A:バイオ度30%バイオマス由来PET、IV=0.63dL/g(全ジオール由来単位に対して、バイオマス由来のエチレングリコール単位が98モル%、バイオマス由来のジエチレングリコール単位が2モル%)、ジオール単位とジカルボン酸単位との合計全単位中バイオマス由来単位が50モル%
原料B:原料A、C及びEの再生原料、IV=0.57dL/g、バイオマス度21%
原料C:化石燃料由来PET、IV=0.82dL/g(全ジオール由来単位に対して、ジエチレングリコール単位が2モル%)
原料D:化石燃料由来のPET再生原料(粒径3μmのシリカ粒子0.06質量%含有)、IV=0.57dL/g
原料E:シリカ粒子(粒径3μm)を0.7質量%含む化石燃料由来PET(粒子マスターバッチ)、IV=0.59dL/g
【0110】
(実施例1)
製造原料C、Eをそれぞれ69質量%、31質量%の割合で混合した混合原料を両表層の原料とし、原料A、Bをそれぞれ75質量%、25質量%の割合で混合した混合原料を中間層の原料とした。両表層及び中間層の混合原料をそれぞれ2台の押出機に供給し、各々280℃で溶融した後、25℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=5.5/39/5.5の吐出量)の層構成で共押出し、冷却固化させて未延伸シートを得た。
次いで、得られた未延伸シートをロール延伸機で長手方向(MD)に88℃で3.1倍に延伸した。さらに、テンター内にて100℃で予熱した後、幅方向(TD)に135℃で4.1倍に延伸した。最後に238℃で熱処理を施し、幅方向に7%弛緩処理を行い、ワインダーでロール状に巻取ることで、厚み50μm(各表層:5.5μm、中間層:39μm)の二軸延伸ポリエステルフィルムのマスターロールを作製した。
得られたマスターロールから二軸配向ポリエステルフィルムを巻出し、直径6インチ(152.2mm) の巻芯に、1300mm幅でスリットしながら、コンタクトロールでフィルムロールに面圧と、2軸ターレットワインダーでフィルムに張力をかけながら、フィルムロールを巻き取った。
【0111】
(比較例1)
製造原料を下記表に記載のとおり変更した以外は実施例1と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルム及びポリエステルフィルムロールを得た。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
化石燃料由来のポリエステルフィルムからなる比較例のポリエステルフィルムロールに比べてバイオマス由来のポリエステルを含む実施例のポリエステルフィルムロールでは、タルミ量が小さく、その結果、加工時の印刷ズレが低減され、さらにポリエステルフィルムロールの加工適性が高まった。
【符号の説明】
【0115】
10 中間層
20 表層
100 ポリエステルフィルム
図1
図2