(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172823
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】基板のベベル部を含む外周部に保護膜を成膜する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20241205BHJP
C23C 16/26 20060101ALI20241205BHJP
C23C 16/27 20060101ALI20241205BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20241205BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/31 C
C23C16/26
C23C16/27
C23C16/42
C23C16/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090817
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】藤方 淳平
(72)【発明者】
【氏名】戸川 哲二
(72)【発明者】
【氏名】畠山 雅規
(72)【発明者】
【氏名】辻 一仁
(72)【発明者】
【氏名】堀 勝
(72)【発明者】
【氏名】宮下 直人
(72)【発明者】
【氏名】関根 誠
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030BA27
4K030BA28
4K030BA37
4K030BB13
4K030CA04
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4K030FA01
5F045AA08
5F045AA09
5F045AB06
5F045AB07
5F045AB31
5F045AF03
5F045BB08
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5F045BB17
5F045DP28
5F045EC01
5F045EE20
5F045EH02
5F045EH11
5F045EH12
(57)【要約】
【課題】基板外周部を保護するための保護膜の品質を向上させることにある。
【解決手段】プラズマを用いて基板のベベル部を含む外周部に保護膜を成膜する方法であって、 互いに対向する第1面及び第2面を有する基板の前記第2面を、前記基板の寸法より小さいステージ上に、前記ステージの外縁から前記基板の前記外周部が突出するように載置する工程と、 前記基板の前記外周部の周方向の少なくとも一部と電極とを対向させる工程と、 前記基板の前記第1面に前記外周部とその内側の領域とを区切る第1遮蔽構造物を接触させる、及び/又は前記基板の前記第2面に前記外周部とその内側の領域とを区切る第2遮蔽構造物を接触させる工程と、 前記基板の前記外周部と前記電極との間に成膜ガスを供給し、前記基板の前記外周部に保護膜を形成する工程と、を含む方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを用いて基板のベベル部を含む外周部に保護膜を成膜する方法であって、
互いに対向する第1面及び第2面を有する基板の前記第2面を、前記基板の寸法より小さいステージ上に、前記ステージの外縁から前記基板の前記外周部が突出するように載置する工程と、
前記基板の前記外周部の周方向の少なくとも一部と電極とを対向させる工程と、
前記基板の前記第1面に前記外周部とその内側の領域とを区切る第1遮蔽構造物を接触させる、及び/又は前記基板の前記第2面に前記外周部とその内側の領域とを区切る第2遮蔽構造物を接触させる工程と、
前記基板の前記外周部と前記電極との間に成膜ガスを供給し、前記基板の前記外周部に保護膜を形成する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記基板の前記第1面に前記第1遮蔽構造物を接触させる工程を含み、
前記第1遮蔽構造物は、前記基板に接触する接触部と、前記接触部の内側に設けられ前記基板と共に遮蔽空間を形成する中空部とを有し、前記基板の前記外周部の内側の領域を前記中空部内に収容する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記第1遮蔽構造物は、前記基板に接触する筒状部と、前記筒状部の一端側を閉鎖する蓋部とを有し、前記筒状部の他端側を前記基板に接触させる、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記蓋部は前記筒状部の外側まで延びており、前記筒状部の外側で前記蓋部に前記基板の外周部に沿って配置された複数のガス供給孔を介して、前記基板の前記外周部と前記電極との間に前記成膜ガスを供給する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
前記蓋部の外側に設けられた前記複数のガス供給孔と連通するバッファ室を介して、前記複数のガス供給孔に前記成膜ガスを供給する、方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法において、
前記蓋部は前記筒状部の外側まで延びており、前記筒状部の外側で前記蓋部を貫通するように環状に配置された多孔体を介して、前記基板の前記外周部と前記電極との間に前記成膜ガスを供給する、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記蓋部の外側に設けられた前記多孔体と連通するバッファ室を介して、前記多孔体に前記成膜ガスを供給する、方法。
【請求項8】
請求項3に記載の方法において、
前記蓋部は前記筒状部の外側まで延びており、前記筒状部の外側で前記蓋部と前記電極との間に前記成膜ガスを供給し、前記成膜ガスを前記筒状部に衝突させた後に、前記基板の前記外周部と前記電極との間に供給する、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
前記電極に設けられた1又は複数のガス供給孔を介して、前記基板の側方から前記基板の前記外周部と前記電極との間に前記成膜ガスを供給する、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記電極に複数のガス供給孔が設けられ、前記電極の外側に設けられた前記複数のガス供給孔と連通するバッファ室を介して、前記複数のガス供給孔に前記成膜ガスを供給する、方法。
【請求項11】
請求項1から10の何れかに記載の方法において、
前記第1遮蔽構造物と、前記ステージと、前記電極とに囲まれた領域をプラズマ生成領域とする、方法。
【請求項12】
請求項1から10の何れかに記載の方法において、
前記第1遮蔽構造物と、前記第2遮蔽構造物と、前記電極とに囲まれた領域をプラズマ生成領域とする、方法。
【請求項13】
請求項1から10の何れかに記載の方法において、
前記電極は、上部電極と下部電極とに分割されており、前記上部電極と前記下部電極とを離した状態で前記ステージに前記基板を載置し、前記基板を載置した後に、前記上部電極と前記下部電極とを合わせる、方法。
【請求項14】
請求項1から10の何れかに記載の方法において、
前記ステージを接地電位又は負の電位又は正の電位に接続する、方法。
【請求項15】
請求項1から10の何れかに記載の方法において、
前記ステージの外周部において前記基板の前記外周部又は前記外周部の内側に電気的に接触するように配置された第1導電体を接地電位又は負の電位又は正の電位に接続する、方法。
【請求項16】
請求項1から10の何れかに記載の方法において、
前記第1遮蔽構造物及び/又は前記第2遮蔽構造物は、少なくとも前記基板に接触する部分が導電体であり、前記第1遮蔽構造物及び/又は前記第2遮蔽構造物の前記導電体の部分を接地電位又は負の電位又は正の電位に接続する、方法。
【請求項17】
請求項1から10の何れかに記載の方法において、
前記基板の前記第2面に前記第2遮蔽構造物を接触させる工程を含み、前記第2遮蔽構造物は前記ステージの外側で前記基板の前記第2面に接触する、方法。
【請求項18】
請求項1から10の何れかに記載の方法において、
前記基板を回転させながら前記基板の前記外周部に保護膜を形成する、方法。
【請求項19】
請求項1から10の何れかに記載の方法において、
前記基板の径方向に沿った断面において、前記電極は、前記基板の前記外周部と前記電極との間の距離が前記基板の成膜領域にわたって一定となる形状及び配置を有する、方法。
【請求項20】
請求項1から10の何れかに記載の方法において、
前記電極は、前記基板の前記外周部の全周にわたって連続して又は断続的に配置される、方法。
【請求項21】
請求項1から10の何れかに記載の方法において、
前記電極は、前記基板の前記外周部の周方向の一部に配置され、前記基板を回転させる
ことにより、前記基板の前記外周部の周方向全体に前記保護膜を形成する、方法。
【請求項22】
請求項1から10の何れかに記載の方法において、
前記保護膜は、絶縁膜、誘電膜、導体膜、又は有機膜のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
前記保護膜は、アモルファスカーボン又はダイヤモンドライクカーボンからなる層を含む、方法。
【請求項24】
プラズマを用いて基板のベベル部を含む外周部に保護膜を成膜する基板処理装置であって、
基板の寸法より小さいステージであって、かつ前記ステージの外縁から前記基板の前記外周部が突出するように、前記基板の互いに対向する第1面及び第2面のうち前記第2面が載置されるステージと、
前記基板の前記外周部に配置される電極であって前記基板の前記外周部の周方向の少なくとも一部に対向する電極と、
前記基板の前記第1面に接触し前記基板の前記外周部とその内側の領域とを区切る第1遮蔽構造物、及び/又は、前記基板の前記第2面に接触し前記基板の前記外周部とその内側の領域とを区切る第2遮蔽構造物と、
前記基板の前記外周部と前記電極との間に成膜ガスを供給するガス供給装置と、
を備えた基板処理装置。
【請求項25】
基板の外周部に保護膜が成膜され、
前記保護膜は1又は複数の層を有し、前記1又は複数の層の少なくとも最外層がアモルファスカーボン又はダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜である、基板。
【請求項26】
請求項25に記載の基板において、
前記保護膜は、複数の層を含み、前記複数の層のうち少なくとも最外層がアモルファスカーボン又はDLC膜である、基板。
【請求項27】
請求項26に記載の基板において、
前記保護膜は、第1層と、前記第1層上に形成された第2層とを含み、前記第2層がアモルファスカーボン又はDLC膜である、基板。
【請求項28】
請求項27に記載の基板において、
前記基板はシリコン基板であり、前記第1層はSiC膜である、基板。
【請求項29】
請求項25から28の何れかに記載の基板において、
前記保護膜は前記基板のベベル部のみに形成されている、基板。
【請求項30】
請求項29に記載の基板において、
前記保護膜は前記基板の一方の面の側においてベベル部のみに形成されている、基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法、特に、基板のベベル部を含む外周部に保護膜を成膜する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許3949941号明細書(特許文献1)に記載されているように、半導体製造プロセスにおいて、基板のエッチング処理時に、基板の外周部(エッジ部及びベベル部)が侵食されることがある。これにより、基板搬送時や基板プロセス中に基板の外周部の破損の要因となる。また、侵食された部分にパーティクルがトラップされ、それが後続の工程で基板プロセスに悪影響を及ぼす虞があり、結果として、歩留まりの低下を引き起こす可能性がある。
【0003】
特許5982383号明細書(特許文献2)に記載されているように、基板の外周部(エッジ部及びベベル部)に保護膜を成膜し、エッチングから保護することが解決方法として提案されている。この技術によれば、基板の外周部のみにプラズマを維持させる一方、基板の中央部では電極ギャップを所定の距離にしてプラズマ形成を防止する圧力に調整することで、基板の外周部のみに保護膜を成膜させている。また、特開2020-021931号公報(特許文献3)には、基板の外周部の一部のみに電極を配置し、基板を回転させることによって、基板外周部にプラズマ処理を施すことが提案されている。何れの特許文献の技術でも、基板の中央部からガスを流入させ、基板の外周部に電極を配置する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3949941号明細書
【特許文献2】特許5982383号明細書
【特許文献3】特開2020-021931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の方法では、ガスの圧力の境界も連続的に変化すため、プラズマが維持されている空間とプラズマ形成が防止される空間との境界が明確ではない。これにより、基板外周部にプラズマプロセスを用いて保護膜を成膜する場合、その保護膜の内側境界部は、成膜が不完全なものとなる。つまり、保護膜の内側境界部の膜厚が薄くなり、又は、保護膜の密着性が低下する可能性がある。その結果、保護膜成膜後の工程で、保護膜の剥がれやパーティクル発生が生じ得る。
【0006】
なお、基板の外周部以外にレジスト膜を成膜した後に、基板の外周部に保護膜を成膜し、その後レジストを除去することによって境界部の膜厚の均一性を向上させる方法も考えられるが、レジストの塗布、ベイク工程、除去工程などでコストがかかる欠点があると予想される。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題の少なくとも一部を解決することである。本発明の目的の1つは、基板外周部を保護するための保護膜の品質を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、プラズマを用いて基板のベベル部を含む外周部に保護膜を成
膜する方法であって、 互いに対向する第1面及び第2面を有する基板の第2面を前記基板の寸法より小さいステージ上に、前記ステージの外縁から前記基板の前記外周部が突出するように載置する工程と、 前記基板の前記外周部の周方向の少なくとも一部と電極とを対向させる工程と、 前記基板の前記第1面に前記外周部とその内側の領域とを区切る第1遮蔽構造物を接触させる、及び/又は前記基板の前記第2面に前記外周部とその内側の領域とを区切る第2遮蔽構造物を接触させる工程と、 前記基板の前記外周部と前記電極との間に成膜ガスを供給し、前記基板の前記外周部に保護膜を形成する工程と、を含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る基板処理装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】一実施形態に係る基板処理装置の構成例を示す概略図である。
【
図3A】成膜ガスを供給する構成の例を示す断面図である。
【
図4A】成膜ガスを供給する構成の例を示す断面図である。
【
図5】成膜ガスを供給する構成の例を示す断面図である。
【
図6】成膜ガスを供給する構成の例を示す断面図である。
【
図8A】上下に分割した電極の構成例を示す開放時の断面図である。
【
図8B】上下に分割した電極の構成例を示す閉鎖時の断面図である。
【
図9A】基板を負のバイアスに接続する接続例を示す概略図である。
【
図9B】基板を負のバイアスに接続する接続例を示す概略図である。
【
図10A】トップカバー及びボトムカバーをバイアスする接続例を示す概略図である。
【
図10B】トップカバー及びボトムカバーをバイアスする接続例を示す概略図である。
【
図11A】基板の心出しの方法を説明する説明図である。
【
図11B】基板の心出しの方法を説明する説明図である。
【
図12A】一実施形態に係る保護膜の形成を模式的に説明する説明図である。
【
図12B】比較例に係る保護膜の形成を模式的に説明する説明図である。
【
図13A】一形態に係る保護膜が形成された基板(保護膜付き基板)を示す概略図である。
【
図13B】一形態に係る保護膜が形成された基板(保護膜付き基板)を示す概略図である。
【
図13C】一形態に係る保護膜が形成された基板(保護膜付き基板)を示す概略図である。
【
図13D】一形態に係る保護膜が形成された基板(保護膜付き基板)を示す概略図である。
【
図13E】一形態に係る保護膜が形成された基板(保護膜付き基板)を示す概略図である。
【
図14A】半導体製造工程のフローチャートである。
【
図14B】半導体製造工程のフローチャートである。
【
図15A】半導体製造工程のフローチャートである。
【
図15B】半導体製造工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同一または相当する部材には同一符号を付して重複した説明を省略する。また、本明細書において「上」、「下」、「左」、「右」等の表現を用いるが、これらは、説明の都合上、例示の図面の紙面上における位置、方向を示すものであり、装置使用時等の
実際の配置では異なる場合がある。
【0011】
図1は、一実施形態に係る基板処理装置100の構成例を示す概略図である。この基板処理装置100は、局所プラズマにより基板Wの外周部(エッジ部及びベベル部)に保護膜90(
図12A)を成膜する装置である。基板処理装置100は、容量結合型プラズマ、誘導結合型プラズマ、マイクロ波プラズマ、その他のプラズマを使用する基板処理装置とすることができる。本実施形態では、基板処理装置100としてプラズマ成膜装置を例に挙げるが、プラズマエッチング装置その他のプラズマ基板処理装置であってもよい。本明細書では、
図12Aに示すように、基板Wの外周部200は、エッジ部201と、ベベル部202とを含むものとする。ベベル部202は、基板Wの面取りされた側面の部分であり、エッジ部201は、基板Wの外周部200においてベベル部202内側の平坦な部分とする。本実施形態では、基板Wの外周部200の内側の領域(範囲)を中央部300と称す。本実施形態では、基板Wの表面及び裏面(
図1では上面及び下面)のうち表面の中央部300は、デバイス形成領域とする。他の実施形態では、基板Wの表面及び裏面の両方にデバイス形成領域を有してもよい。外周部200は、デバイス形成領域の外側の領域として定義することができる。例えば、基板Wの表面にデバイス形成領域がある場合、デバイス形成領域に対応する基板Wの表面及び裏面の領域を中央部300、基板Wの表面及び裏面の中央部300の外側を外周部200とすることができる。
【0012】
本実施形態では、基板Wは、例えば、半導体装置、光学素子、MEMS等が形成される円形のウエハである。なお、基板Wは、他の種類のデバイスが形成される基板であってもよく、円形以外の多角形(四角形等)その他任意の形状の基板であってもよい。基板Wは、シリコン基板(シリコンを材料とする基板、表面がシリコンであるSOI基板等の複合基板を含む)、化合物半導体基板、その他任意の材料の基板であってもよい。
【0013】
本実施形態では、保護膜90は、絶縁膜、誘電膜、導体膜、有機膜、その他半導体製造において用いられている他の膜であってよい。保護膜90は、エッチング耐性があり、硬度が高い膜であることが好ましい。そのような保護膜90として、例えば、アモルファスカーボン又はDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を採用することができる。
【0014】
基板処理装置100は、プラズマチャンバ11を構成する筐体10と、筐体10内に配置されたステージ20と、電極60と、トップカバー40と、ボトムカバー50と、を主に備えている。
【0015】
ステージ20は、基板Wを載置する載置面と、基板Wを固定するためのチャック機能とを備えている。ステージ20は、基板Wを加熱するヒータ機能を備えてもよい。このステージ20は、図示しないモータ等の駆動装置によって回転させることができる。ステージ20の載置面(
図1では上面)には、保護膜90を形成する対象の基板Wが載置される。基板Wの直径は、ステージ20の載置面の直径よりも大きい。言い換えれば、ステージ200の載置面の直径は、基板Wの直径よりも小さい。そのため、基板Wの外周部200(エッジ部201及びベベル部202)は、ステージ20に支持されない。ステージ20は、この例では、接地電位に接続され、基板Wがステージ20を介して接地電位に接続されるようになっている。筐体10も接地電位に接続されており、ステージ20は筐体100を介して接地電位に接続される。
【0016】
電極60は、ステージ20の外側において、基板Wの外周部に対向して基板Wの外周部200を側方から覆うような形状であり、例えば、弧状の断面形状を有する。電極60は、導電性の材料からなり、例えば金属からなる。電極60には、例えば、電極60に高周波電力を与えるRF電源110が接続されている。本実施形態では、電極60から成膜ガス70に高周波電力を供給し成膜ガス70を電離させてプラズマを生成する。なお、電極
60に直流電源を接続し、電極60から成膜ガス70に直流電力を供給し成膜ガス70を電離させてプラズマを生成しても良い。電極60と基板Wの外周部200(エッジ部201、ベベル部202)の距離が成膜領域又はプラズマ生成領域71で一定になるように、電極60が配置されており、電極60と基板Wの外周部200との間に流れる成膜ガス70の流れが一様になるようにされている。プラズマ生成領域71は、三次元の空間であり、プラズマ生成空間とも称される。電極60は、例えば、
図1に示すように、基板Wの全周にわたって連続的又は断続的(離散的)に配置されるように設けられる。また、電極60は、
図7Bに示すように、基板Wの周方向の一部に配置されることが可能である。
【0017】
電極60を基板Wの全周にわたって連続的に設ける場合には、例えば、
図8A及び
図8Bに示すように、電極60を上下の上部電極60A及び下部電極60Bに分割して、基板Wの設置及び取り外しを容易にすることが好ましい。電極60を基板Wの全周にわたって離散的に設ける場合には、例えば、図示しないアクチュエータにより複数の個別の電極60を基板径方向に沿って基板Wに接近又は離間するように移動して、基板Wの設置及び取り外しを容易にすることが好ましい。電極60を基板Wの周方向の一部に配置する場合には、例えば、基板Wを回転させることで、電極60を基板Wの全周に順次に対向させ、基板Wの全周に保護膜90を成膜するようにする(
図7B)。電極60を基板Wの周方向の一部に配置する場合にも、図示しないアクチュエータにより電極60を基板径方向に沿って基板Wに接近又は離間するように移動して、基板Wの設置及び取り外しを容易にすることができる。
【0018】
トップカバー40は、基板Wの中央部300(外周部200の内側の領域)をプラズマから遮蔽するための遮蔽構造物である。トップカバー40は、内部に中空部を有し、この中空部に基板Wの中央部300(
図1では基板Wの上面の中央部300)が収容されるようになっている。トップカバー40内の中空部、基板Wの中央部300は、プラズマから遮蔽される非プラズマ生成領域72である。基板Wの上面の中央部300はデバイス形成領域であり、デバイス形成領域に直接トップカバー40が接触しないようにトップカバー40が配置されている。トップカバー40の中空部内の圧力は、基板Wの外周部200の周囲の真空圧力より低くても、高くても、同一であってもよく、例えば大気圧であってもよい。トップカバー40は、プラズマ耐性のあるもの、例えばポリイミド、イットリアコートした金属、その他の材料で形成されることができる。
【0019】
トップカバー40は、例えば、基板Wに接触する接触部を一端に有する円筒形状の筒状部42と、筒状部42の他端に設けられた円盤状の蓋部41とを備えている。同図の例では、蓋部41の外周部は、筒状部42の外側まで延びるフランジ部41Aになっている。筒状部42の外側(フランジ部41A)において、蓋部41には、周方向に沿って複数のガス供給孔43が設けられている(
図3B)。複数のガス供給孔43は、周方向にわたって成膜ガス70のダウンフローを均一に生成するように構成されている。複数のガス供給孔43は、成膜ガス43をトップカバー40及びボトムカバー50と電極60とに囲まれる領域(プラズマ生成領域71)に、筒状部42に沿って且つ鉛直方向(基板Wと垂直な方向)に供給するように方向付けられている。蓋部41の上面には、基板Wの外周部200に供給される成膜ガス70が周方向全体で(全周で)均一になるように、バッファ室30が設けられている。バッファ室30は、例えば、
図1に示すように、中央部が空いた環状又はドーナツ状の形状で構成することができる。バッファ室30の内部空間は、複数のガス供給孔43と流体的に接続されている。バッファ室30には、内部空間と流体的に接続される供給口31が設けられており、供給口31を介してバッファ室30内に成膜ガスが供給され、バッファ室30から各ガス供給孔43に成膜ガスが分配される。この構成によれば、複数のガス供給孔43を介して、トップカバー40及びボトムカバー50と電極60とに囲まれる領域に、周方向にわたって均一に成膜ガスを供給することができる。
【0020】
トップカバー40の上面には、アクチュエータ12の駆動軸13が固定されている。アクチュエータ12は、プラズマチャンバ11の外にあり、アクチュエータ12の駆動軸13が、筐体10の壁を貫通してトップカバー40に接続されている。駆動軸13と筐体10との間は磁性流体シール14でシールされる。駆動軸13は、アクチュエータ12の動力により上下移動可能に構成されている。また、駆動軸13は、トップカバー40を基板Wに押し付けた状態で基板Wが回転されると、トップカバー40と共に回転可能にアクチュエータ本体に取り付けられている。基板Wをチャンバ11内に搬入してステージ20に載置する際には、アクチュエータ12によりトップカバー40はステージ20の上方に退避した位置に移動され、ステージ20に基板Wを載置した後に、アクチュエータ12によりトップカバー40が下降されて基板Wにトップカバー40が接触し、押し付けられる。これにより、トップカバー40がプラズマ生成領域71と非プラズマ生成領域72とを物理的に隔離する。
【0021】
本実施形態では、基板Wの周方向で成膜ガス70の流れが均一になるように、基板Wを回転させる。これにより、基板Wの外周部全周にわたって均一に保護膜90を形成し易くなる。なお、他の実施形態では、基板Wを回転させなくてもよい。例えば、電極60が基板Wの全周にわたって連続的に配置される場合に、許容範囲の均一性で基板Wの外周部全周にわたって保護膜90を形成できる場合には、基板Wを回転させなくてもよい。例えば、電極60が基板Wの全周にわたって断続的(離散的)に配置される場合に、許容範囲の均一性で基板Wの外周部全周にわたって保護膜90を形成できる程度に各電極片が十分に近接していれば、基板Wを回転させなくてもよい。
【0022】
本実施形態では、トップカバー40の上面にアクチュエータ12の駆動軸13が固定されるが、バッファ室30を環状ではなく円盤状の形状とする場合には、バッファ室30の上面にアクチュエータ12の駆動軸13が固定されてもよい。
【0023】
ボトムカバー50は、ステージ20の外側側方に配置されており、ステージ20の全周を囲む円筒形状の筒状部として構成されている。ボトムカバー50は、ステージ20から電気的に絶縁されている。ボトムカバー50は、プラズマ耐性のあるもの、例えばポリイミド、イットリアコートした金属、その他の材料で形成されることができる。ボトムカバー50の上面は、ステージ20の上面(載置面)と同一の高さにあり、ボトムカバー50は、トップカバー40が基板Wと接触するときの力を利用して基板Wに確実に接触し、プラズマ生成領域71を物理的に隔離する。ボトムカバー50は、ステージ20の外周面から所定の間隔をもって配置されている。但し、ステージ20の外周面との隙間からプラズマが侵入して基板Wの下面に膜が生成されない程度の間隔になっている。
【0024】
この基板処理装置100によれば、トップカバー40及びボトムカバー50と電極60とに囲まれる領域をプラズマ生成領域71とし、しかも、基板Wの外周部200と中央部300とは、トップカバー40及びボトムカバー50で物理的に区切られるため、プラズマ生成領域71と非プラズマ生成領域72との境界が明確になる。このため、
図12Aに示すように、保護膜90の内側境界において保護膜90が安定した膜厚で形成され(膜厚を均一性が向上され)、保護膜90の密着性を向上させることができる。一方、比較例として示した
図12Bは、基板Wの中央部300を加圧すること、及び/又は、パージガスを導入することで、非物理的にプラズマ生成領域71と非プラズマ生成領域72とを分けるものであるため、2つの領域の境界が明確でなく、その保護膜の内側境界部では成膜が不完全なものとなる。このため、保護膜90の内側境界部で、膜厚が薄くなり、保護膜90の密着性が低下する。
【0025】
図2は、一実施形態に係る基板処理装置100の他の構成例を示す概略図である。同図の基板処理装置100は、ボトムカバー50を備えていない点で
図1の基板処理装置10
0と異なる。また、ステージ20の載置面がトップカバー40の筒状部42の外周面と概ね同一位置まで、ステージ20の寸法が拡大されている。他の構成は、
図1の構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。この基板処理装置100では、ボトムカバー50の代わりに、ステージ20によってプラズマ生成領域71を仕切る。つまり、トップカバー40と、ステージ20と、電極60とによってプラズマ生成領域71を仕切るものである。この構成によっても、
図1の構成と同様の作用効果を得ることができる。また、ステージ20を遮蔽構造物としても用いるので、ボトムカバー50を省略し、装置構成を簡略化できる利点がある。
【0026】
図3Aは、成膜ガスを供給する構成の例を示す断面図である。
図3Bは、トップカバーの底面図である。この構成では、筒状部42の外側(フランジ部41A)で蓋部41に、貫通孔であるガス供給孔43を周方向に沿って複数設ける。プラズマ生成領域71に周方向にわたって均一に成膜ガスを供給するために、複数のガス供給孔43は、周方向にわたって均等な間隔で設けられることが好ましい。この構成では、バッファ室70から複数のガス供給孔43に成膜ガス70が供給され、各ガス供給孔43からプラズマ生成領域71(トップカバー40、ステージ20(又はボトムカバー50)、電極60で囲まれる領域)に成膜ガス70を供給する。成膜ガス70は、プラズマ生成領域71において基板Wの外周部200の成膜に使用された後に、ステージ20(又はボトムカバー50)と電極60との間を通って下方に流れ出る。なお、
図3Aでは、ボトムカバー50を省略する例(
図2)を示すが、ボトムカバー50を設ける例(
図1)についても同様である。
【0027】
図4Aは、成膜ガスを供給する他の構成の例を示す断面図である。
図4Bは、トップカバーの底面図である。この構成では、筒状部42の外側(フランジ部41A)で蓋部41に円環状の多孔体44が設けられている。多孔体44は、蓋部41の上面と下面との間を貫通するように設けられる。ここでは、多孔体44が全周にわたって連続して設けられる例を示すが、多孔体44は周方向に断続的又は離散的に設けられてもよい。プラズマ生成領域71に周方向にわたって均一に成膜ガスを供給するために、断続的又は離散的に設けられる多孔体44は、周方向にわたって均等な間隔で設けられることが好ましい。この構成では、バッファ室70から多孔体44に成膜ガス70が供給され、多孔体44からプラズマ生成領域71(トップカバー40、ステージ20(又はボトムカバー50)、電極60で囲まれる領域)に成膜ガス70を供給する。成膜ガス70は、プラズマ生成領域71において基板Wの外周部の成膜に使用された後に、ステージ20(又はボトムカバー50)と電極60との間を通って下方に流れ出る。なお、
図4Aでは、ボトムカバー50を省略する例(
図2)を示すが、ボトムカバー50を設ける例(
図1)についても同様である。
【0028】
図5は、成膜ガスを供給する他の構成の例を示す断面図である。この構成では、基板Wの周方向に沿って配置された複数のノズル81から、筒状部42の外側の蓋部41(フランジ部41A)と電極60との間の隙間に、成膜ガス70を水平方向に供給する。プラズマ生成領域71に周方向にわたって均一に成膜ガスを供給するために、複数のノズル81は、周方向にわたって均等な間隔で設けられることが好ましい。この構成では、成膜ガス70は、ノズル81から蓋部41と電極60との間の隙間に水平方向に供給され、その後筒状部42に当たって鉛直方向下方に向きを変え、プラズマ生成領域71(トップカバー40、ステージ20(又はボトムカバー50)、電極60で囲まれる領域)に供給される。成膜ガス70は、プラズマ生成領域71において基板Wの外周部の成膜に使用された後に、ステージ20(又はボトムカバー50)と電極60との間を通って下方に流れ出る。この構成では、成膜ガス70をトップカバー40の筒状部42に対して垂直に流し、筒状部42に一度当てることにより成膜ガス70の均一性を高める。なお、
図5では、ボトムカバー50を省略する例(
図2)を示すが、ボトムカバー50を設ける例(
図1)についても同様である。
【0029】
図6は、成膜ガスを供給する他の構成の例を示す断面図である。なお、
図6では、ボトムカバー50を省略する例(
図2)を示すが、ボトムカバー50を設ける例(
図1)についても同様である。この構成では、電極60に1又は複数のガス供給孔61を設け、成膜ガス70を基板Wの面に平行な流れでプラズマ生成領域71に供給する。電極60が基板Wの全周にわたって連続的又は断続的に設けられる場合には、基板Wの周方向にわたって電極60に複数のガス供給孔61を設ける。プラズマ生成領域71に周方向にわたって均一に成膜ガスを供給するために、複数のガス供給孔61は、周方向にわたって均等な間隔で設けられることが好ましい。電極60の外周面には、バッファ室82が電極60の全周にわたって円環状に設けられており、バッファ室82は複数のガス供給孔61に流体的に連絡されている。バッファ室82には、1又は複数のガス供給管83から成膜ガス70が供給される。バッファ室82を介して各ガス供給孔61に成膜ガス70を供給することで、各ガス供給孔61に均一な流量で成膜ガス70を供給することができる。この構成では、成膜ガス70は、ガス供給管83からバッファ室82に供給され、バッファ室82から各ガス供給孔61を介してプラズマ生成領域71(トップカバー40、ステージ20(又はボトムカバー50)、電極60で囲まれる領域)に供給される。プラズマ生成領域71に供給された成膜ガス70は、上下に分流し、上方に流れた成膜ガス70は、トップカバー40と電極60との間の隙間から流れ出る一方、下方に流れた成膜ガス70は、ステージ20(又はボトムカバー50)と電極60との間を通って流れ出る。
【0030】
ガス供給孔61からプラズマ生成領域71に入った成膜ガス70が上下方向に均一な流量で分流するように、上方に向かう流路と下方に向かう流路の流通抵抗が略同一になることが好ましい。このため、
図6の例では、ガス供給孔61は、基板W(又は基板Wの高さ方向の中心の高さ)と同一の高さに位置するように設けられる。電極60が上下対称の場合には、電極60の高さ方向の中心にガス供給孔61を設ける。また、上方に向かう流路と下方に向かう流路の流通抵抗が略同一になるように、
図6の例では、トップカバー40の蓋部41のフランジ部41Aに対応するように、ステージ20に延長部又はフランジ部21を設けている。但し、ステージ20にフランジ部21を設ける代わりに、トップカバー40の蓋部41のフランジ部41Aに対応するように、ボトムカバー50にフランジ部を設けてもよい。
【0031】
なお、電極60は、基板Wの外周部200の周方向の一部に対向するように設けられる場合(
図7A、
図7B参照)には、電極60に1つのガス供給孔61が設けられてもよい。また、バッファ室82を省略してもよい。
【0032】
図7Aは、電極60の構成例を示す断面図である。
図7Bは、電極60の構成例を示す平面図である。これらの図に示すように、電極60は、基板Wの外周部200の周方向の一部に対向するように設けられてもよい。この構成では、例えば、ステージ20により基板Wを回転させることで、電極60及び電極60内側のプラズマ生成領域71が、基板Wの外周部の全周に対向するようにする。即ち、基板Wの外周部の周方向の一部に対応する寸法の電極60を配置し、基板Wを回転させることにより、基板Wの外周部200の全周に保護膜90を形成する。符号25は、基板Wの回転方向を示す。回転方向は逆方向でもよく、任意である。なお、
図7Aでは、ボトムカバー50を設ける例(
図1)を示すが、ボトムカバー50を省略する例(
図2)についても同様である。
【0033】
図8Aは、上下に分割した電極60の構成例を示す開放時の断面図である。
図8Bは、上下に分割した電極60の構成例を示す閉鎖時の断面図である。電極60を基板Wの全周にわたって円環状に配置する場合、基板Wのステージ20への設置を容易にするために、電極60を上部電極60Aと下部電極60Bとに上下に分割してもよい。この場合、上部電極60Aは、例えば、トップカバー40の蓋部41のフランジ部41Aに固定し、アク
チュエータ12によるトップカバー40の移動と共に上下移動するように構成することができる。基板Wをステージ20に載置する場合には、
図8Aに示すように、トップカバー40及び上部電極60Aを上方に移動させて退避させ、基板Wをステージ20に載置した後、トップカバー40及び上部電極60Aを下方に移動させて、トップカバー40を基板Wに接触させると共に、上部電極60A及び下部電極60Bが合わせて一体とし、プラズマ生成領域71(トップカバー40、ステージ20(又はボトムカバー50)、電極60で囲まれる領域)を形成するようにする。なお、ここでは、ステージ20がプラズマ生成領域71を区切る構成(
図2対応)を例として挙げているが、ボトムカバー50を配置してプラズマ生成領域71を区切る構成(
図1対応)の場合も同様である。
【0034】
図9Aは、基板を負のバイアスに接続する接続例を示す概略図である。上述した実施形態では、ステージ20及び基板Wを接地電位に接続する例を挙げたが、ステージ20及び基板Wを直流電源111の低電位側に接続し、負の直流電圧(負のバイアス電圧)にバイアスしてもよい。直流電源111は、負のバイアス電圧を調整可能な電源とすることが好ましい。基板Wに負のバイアス電圧を印加することで、電極60と対向している基板Wの外周部200のみに負の電荷を溜め、プラズマの生成を促進させることができる。基板Wの中央部300は、電極60と対向していないので、電荷が溜まらない。なお、
図9Aでは、トップカバー40の蓋部41にフランジ部が設けられず、トップカバー40と電極60の間から下方に向かって成膜ガスが供給される例を示すが、上述した実施形態の構成でも同様である。
図9Aに示すように、電極60を筐体10の内壁に固定する場合には、電極60と筐体10との間に絶縁体62を配置し、電極60と筐体10とを電気的に絶縁してもよい。
【0035】
図9Bは、基板を負のバイアスに接続する他の接続例を示す概略図である。同図に示すように、基板Wに接触する負のバイアス電圧を印加する部品である導電体22を、基板Wの外周部200に近い位置で、ステージ20に配置する。導電体22は、基板Wの外周部200にその内側で対応する環状(リング状)の部品とすることができる。導電体22は、基板Wの外周部200の全周に対応して、連続して又は断続的に設けることができる。導電体22は、直流電源111の低電位側に接続され、ステージ20の外周部に配置され基板Wと接触し、基板Wに負のバイアス電圧を印加する。導電体22は、図示しない絶縁体等によりステージ20の他の部分とは電気的に絶縁されている、又はステージ20は絶縁体で構成される。導電体22は、ステージ20の外周部を貫通するように設けられ、導電体22の上面はステージ20の載置面と面一(完全に面一又は僅かに載置面から突出する)になるようにし、導電体22の下面は、ステージ20の下面に露出するようにする。この構成によれば、基板Wの外周部200に近い位置から基板Wの外周部200に必要な負のバイアス電圧を効率的に与えることができる。なお、ここでは、直流電源111により負のバイアス電圧を基板Wに印加する例を挙げるが、パルス電源により負のバイアス電圧を基板Wに印加してもよい。
図9Bでは、ボトムカバー50を設ける例(
図1対応)を示すが、ボトムカバー50を省略してステージ20をボトムカバー50の位置まで延長してもよい。その場合、導電体22は基板Wの外周部200に接触してもよい。
【0036】
図10A、
図10Bは、トップカバー40及びボトムカバー50をバイアスする接続例を示す概略図である。
図10Aに示すように、基板Wに接触するトップカバー40及びボトムカバー50を導電体で形成し、トップカバー40及びボトムカバー50を直流電源111の低電位側に接続し、基板Wの外周部を負の直流電圧にバイアスしてもよい。ステージ20は、接地電位に接続してもよい。なお、トップカバー40及びボトムカバー50の全体を導電体で形成してもよいが、トップカバー40及びボトムカバー50の基板Wに接触する部分を少なくとも導電体で形成してもよい。また、
図10Bに示すように、プラズマ生成領域71に露出される部分においてトップカバー40及びボトムカバー50を絶縁体(絶縁体42A及び絶縁体50A)で覆ってもよい。このようにすれば、トップカバー
40及びボトムカバー50がプラズマによって劣化することを抑制又は防止することができる。なお、トップカバー40又はボトムカバー50の一方を用いて基板Wの外周部を負の直流電圧にバイアスしてもよい。
【0037】
バイアスは、直流電圧に限らす、パルスや高周波電圧であってもかまわない。また、負のバイアスは正のイオンを引き付け易くするが、負のイオンを引き付ける場合は正のバイアスを印加する。
【0038】
本実施形態で保護膜90としてDLCを採用する場合は、例えば、基板バイアス電圧は-500V~-50V、成膜部圧力は0.1~1Pa、材料ガスはCH4、C2H2、COなどの炭素を含むガスが用いられる
【0039】
図11A及び
図11Bは、基板Wの心出しの方法を説明する説明図である。
図11Aに示すように、ステージ20上に載置された基板Wの外周上のθ=180°の位置にラインセンサ120を設置し、ステージ20により基板Wを回転させ、基板Wの外周上のθ=θ1及びθ=θ1+180°の位置で、照射領域121を遮る距離を測定する。原点θ=0は、任意の位置に設定可能であり、
図11Aの例では基板Wの外周部200の一部に配置される電極60の位置を原点θ=0としている。ラインセンサ120は、一対の発光部120Aと受光部120Bを有するものであり、発光部120Aから受光部120Bに向けて光をライン状に照射して照射領域121を形成し、基板Wが照射領域121を遮る距離又は位置を測定するものである。
図11Bに示すように、θ=θ1+180°の位置で基板Wがラインセンサ120の照射領域121を遮る距離が、θ=θ1の位置で基板Wがラインセンサ120の照射領域121を遮る距離よりも、距離Dだけ長いとする。この場合、基板Wの中心がステージ20の回転中心に対して、θ=θ1の位置からθ=θ1+180°の位置に向かって距離D/2だけ変位しているので、反対方向に、即ち基板Wをθ=θ1+180°の位置からθ=θ1の位置に向かって、距離D/2だけ移動させる。このようにして、基板Wをステージ20の回転中心に位置合わせ(心出し)することができる。これにより、基板Wの外周部200と電極60との間の距離が全周にわたって均一にすることが容易になる。
図11Aのように基板Wの外周部200の一部に配置される電極60に対して基板Wを回転させる場合には、基板Wの外周部200が全周にわたって均一な距離で電極60に対向するようにすることができる。
【0040】
図12Aは、一実施形態に係る保護膜の形成を模式的に説明する説明図である。
図12Bは、比較例に係る保護膜の形成を模式的に説明する説明図である。上記実施形態に係る基板処理装置100によれば、
図12Aに示すように、トップカバー40及びステージ20(又はボトムカバー50)と電極60とに囲まれる領域をプラズマ生成領域71とし、しかも、基板Wの外周部200と中央部300とは、トップカバー40及びステージ20(又はボトムカバー50)で物理的に区切られるため、プラズマ生成領域71と非プラズマ生成領域72との境界が明確になる。このため、保護膜90の内側境界において保護膜90が安定した膜厚で形成され(膜厚を均一性が向上され)、保護膜90の密着性を向上させることができる。
図12Aでは、基板Wの下面をステージ20で区切る例(
図2)を示すが、基板Wの下面をボトムカバー50で区切る場合(
図1)も同様である。一方、比較例として示した
図12Bは、基板Wの中央部300を加圧すること、及び/又は、パージガスを導入することで、非物理的にプラズマ生成領域71と非プラズマ生成領域72とを分けるものであり、両領域の境界が明確にならない。このように非物理的に2つの領域を分ける場合には、保護膜90の内側境界部で安定した膜を形成することができず、保護膜90の内側境界部で、膜厚が薄くなり、保護膜90の密着性が低下する。
【0041】
(変形例)
(1)上記実施形態では、トップカバー及びボトムカバーを設ける例(
図1)、トップカ
バーのみ設ける例(
図2)を説明したが、ボトムカバーのみ設ける構成としてもよい。この場合、少なくとも基板Wの下面において、ボトムカバーによって、保護膜の内側境界部の膜厚の減少及び密着性の低下を抑制又は防止し、保護膜の品質を向上し得る。また、基板上面側では、レジスト膜など他の遮蔽方式、によって、基板の上面の中央部分に成膜材料が形成されないようにしてもよい。
(2)上記ではプラズマ成膜装置について説明したが、プラズマエッチング装置その他のプラズマ基板処理装置にも上記実施形態の構造(トップカバー及び/又はボトムカバーによる遮蔽構造物)を適用することができる。
【0042】
(他の実施形態)
図13AからEは、種々の形態の保護膜が形成された基板W(保護膜付き基板)を示す概略図である。保護膜90は、基板Wの両面又は片面において、基板Wの外周部200の径方向の一部又は全部(例えば、エッジ部201及びベベル部202の少なくとも一方)に亘って形成することができる。例えば、保護膜90は、基板Wの両面又は片面において、エッジ部201及びベベル部202に形成することができる。また、保護膜90は、基板Wの両面又は片面において、ベベル部202のみに形成することができる。また、保護膜90は、基板Wの両面又は片面において、エッジ部201のみに形成することができる。また、保護膜90は、複数の層から構成されてもよい。基板Wの片面に保護膜を形成する場合には、デバイス形成領域を含む面の外周部の径方向の一部又は全部(例えば、エッジ部201及びベベル部202の少なくとも一方)に保護膜を形成することが好ましい。保護膜90を形成する領域(基板Wの両面又は片面におけるエッジ部201及び/又はベベル部202)は、基板の外周部において特に保護する必要がある領域、又は、基板外周部においてそこを保護すれば十分である領域とすることができる。
【0043】
図13Aは、基板Wの両面において、エッジ部201及びベベル部202にアモルファスカーボン又はDLC膜かからなる保護膜90を形成した例を示す。
図13Bは、基板Wの両面において、ベベル部202のみにアモルファスカーボン又はDLC膜からなる保護膜90を形成した例を示す。保護膜90を形成しない領域は、上述したトップカバー40、ボトムカバー50、ステージ20、レジスト膜のうち1又は複数を組み合わせて保護すればよい。ベベル部202のみに保護膜90を成膜する場合、例えば、上述したトップカバー40で中央部300及びエッジ部201をプラズマから遮蔽するようにすることができる。
【0044】
図13Cは、基板の両面において、エッジ部201及びベベル部202に、アモルファスカーボン又はDLC膜を含む複数の層からなる保護膜90を形成した場合を示す。この例では、保護膜90は、基板W上に成膜された第1層90A、及び第1層90A上に成膜された第2層90Bを含む。各層の一例として、第1層90AをSiC膜とし、第2層90Bをアモルファスカーボン又はDLC膜としてもよい。例えば、基板Wの材料又は基板Wの表面がシリコン(Si)からなる場合には、シリコン上に第1層90AとしてのSiC層を形成し、さらに第2層90Bとしてアモルファスカーボン又はDLCを成膜しても良い。
このSiC層の形成は、化学気相成長法(CVD)やエピタキシャル成長などの方法が可能である。アモルファスカーボン又はDLC膜は、例えば、上述したプラズマ成膜法により形成することができる。保護膜90を形成しない領域は、上述したトップカバー40、ボトムカバー50、ステージ20、レジスト膜のうち1又は複数を組み合わせて保護すればよい。
なお、保護膜90は、3層以上から構成されてもよい。保護膜90を複数の層で構成する場合には、少なくとも最外層をアモルファスカーボン又はDLC膜等のエッチング耐性があり、硬度が高い膜で形成することが好ましい。なお、何れの形態に係る保護膜も、複数の層で構成してもよく、その場合、少なくとも最外層をアモルファスカーボン又はDL
C膜等のエッチング耐性があり、硬度が高い膜で形成することが好ましい。
【0045】
図13Dは、基板Wの片面において、エッジ部201及びベベル部202にアモルファスカーボン又はDLC膜を含む保護膜90を形成した例を示す。この例では、基板Wの上面に保護膜90を形成している。なお、ベベル部202において基板Wの上面と下面との境界は、例えば、基板Wの厚みの半分とすることができる。この例においても、
図13Cと同様に保護膜90を複数の層から構成してもよい。保護膜90を形成しない領域は、上述したトップカバー40、ボトムカバー50、ステージ20、レジスト膜の成膜のうち1又は複数を組み合わせて保護すればよい。
【0046】
図13Eは、基板Wの片面において、ベベル部202のみにアモルファスカーボン又はDLC膜を含む保護膜90を形成した例を示す。この例においても、
図13Cと同様に保護膜90を複数の層から構成してもよい。保護膜90を形成しない領域は、上述したトップカバー40、ボトムカバー50、ステージ20、レジスト膜のうち1又は複数を組み合わせて保護すればよい。
【0047】
このように基板の外周部にアモルファスカーボン又はDLC膜を含む保護膜が形成された基板Wによれば、半導体製造工程の加工工程で生じ得る基板Wの外周部への浸食を防ぐことができる。このため、基板の外周部にアモルファスカーボン又はDLC膜を含む保護膜がある基板を使用して半導体製造工程を開始することで、基板外周部への浸食を半導体製造工程の全工程で保護することができる。
【0048】
なお、基板外周部の保護膜の剥離は、半導体製造工程の基板ダイシング工程の前に行っても良い。一方、基板外周部の保護膜を剥離せずにダイシング工程を実施してもよい。この場合、保護膜の剥離工程を省略することが可能になる。
【0049】
なお、基板外周部の保護が必要とされる工程の前に基板外周部に保護膜を形成してもよい。例えば、基板外周部が侵食される虞があるエッチング工程の前に、基板外周部に保護膜を形成してもよい。
【0050】
図14Aは、一例に係る半導体製造工程のフローチャートを示す。この例では、半導体製造工程の最初の工程で基板外周部に保護膜を形成した後、後続の半導体製造工程を実施する。先ず、基板外周部の径方向の一部又は全部に対してアモルファスカーボン又はDLC膜を含む保護膜90を形成する(ステップS11)。保護膜90は、1又は複数の層を含み、少なくとも最外層はアモルファスカーボン又はDLC膜であることが好ましい。基板Wのデバイス形成領域に対するトランジスタ形成工程(ステップS12)、配線層形成工程(ステップS13)を実施した後、薬液を用いたエッチング、ドライエッチング、その他の方法により保護膜90を基板Wから剥離する(ステップS14)。次に、ダイシング等により基板Wから複数の半導体デバイス(半導体チップ)W
deviceを個片化する等の処理を実施することで、半導体製造工程(前工程)を完了する(ステップS15)。なお、基板外周部に保護膜が形成された基板(保護膜付き基板)を準備/購入し、保護膜付き基板に対して半導体製造工程を実施してもよい。
【0051】
図14Bは、他の例に係る半導体製造工程のフローチャートを示す。この例では、半導体製造工程の最初の工程で基板外周部に保護膜を形成した後、後続の半導体製造工程を実施する。また、基板外周部の保護膜の剥離を行わずにダイシング工程を実施する。基板外周部の径方向の一部又は全部に対してアモルファスカーボン又はDLC膜を含む保護膜90を形成する(ステップS21)。保護膜90は、1又は複数の層を含み、少なくとも最外層はアモルファスカーボン又はDLC膜であることが好ましい。基板Wのデバイス形成領域に対するトランジスタ形成工程(ステップS22)、配線層形成工程(ステップS2
3)を実施した後、ダイシング工程により基板Wから複数の半導体デバイス(半導体チップ)を個片化等の処理を実施することで、半導体製造工程(前工程)を完了する(ステップS24、S25)。この場合、保護膜の剥離工程を省略することが可能になる。なお、基板外周部に保護膜が形成された基板(保護膜付き基板)を準備/購入し、保護膜付き基板に対して半導体製造工程を実施してもよい。
【0052】
図15Aは、他の例に係る半導体製造工程のフローチャートを示す。この例では、配線層形成工程の前に基板外周部にアモルファスカーボン又はDLC膜を含む保護膜を形成することにより、配線層形成工程において基板外周部を侵食から保護する。具体的には、半導体製造工程中のトランジスタ形成工程(ステップS31)が完了した後、基板外周部の径方向の一部又は全部に対してアモルファスカーボン又はDLC膜を含む保護膜90を形成する(ステップS32)。保護膜90は、1又は複数の層を含み、少なくとも最外層はアモルファスカーボン又はDLC膜であることが好ましい。次に、保護膜形成後の基板Wに対して配線層形成工程(ステップS33)を実施した後、薬液を用いたエッチング、ドライエッチング、その他の方法により保護膜90を基板Wから剥離する。その後、ダイシング工程により基板Wから複数の半導体デバイス(半導体チップ)を個片化する等の処理を実施することで、半導体製造工程(前工程)を完了する(ステップS35)。
【0053】
図15Bは、他の例に係る半導体製造工程のフローチャートを示す。この例では、シリコンエッチング工程の前に基板外周部にアモルファスカーボン又はDLC膜を含む保護膜が形成することにより、シリコンエッチング工程において基板外周部を侵食から保護する。半導体製造工程中のトランジスタ形成工程(ステップS41)が完了した後、基板外周部の径方向の一部又は全部に対してアモルファスカーボン又はDLC膜を含む保護膜90を形成する(ステップS42)。保護膜90は、1又は複数の層を含み、少なくとも最外層はアモルファスカーボン又はDLC膜であることが好ましい。次に、保護膜形成後の基板Wに対してシリコンエッチング工程(ステップS43)を実施した後、薬液を用いたエッチング、ドライエッチング、その他の方法により保護膜90を基板Wから剥離する(ステップS44)。引き続き、基板Wに対して配線層形成工程(ステップS45)等の工程を実施する。
【0054】
図15A及び
図15Bの例では、配線形成工程又はシリコンエッチング工程の前にアモルファスカーボン又はDLC膜を含む保護膜を基板外周部に形成する場合を説明したが、他の工程の前にアモルファスカーボン又はDLC膜を含む保護膜を基板外周部に形成してもよい。
【0055】
上記実施形態によれば、基板の外周部の径方向の一部又は全部に保護膜が形成された基板を準備(購入)し、半導体製造工程を実施することで、半導体製造工程の加工工程で生じ得る基板Wの外周部への浸食を防ぐことができる。また、基板外周部の保護が必要とされる工程の前に基板外周部に保護膜を形成することで、当該工程で生じ得る基板Wの外周部への浸食を防ぐことができる。
【0056】
上記実施形態から少なくとも以下の技術的思想が把握される。
【0057】
[1]一形態によれば、プラズマを用いて基板のベベル部を含む外周部に保護膜を成膜する方法であって、 互いに対向する第1面及び第2面を有する基板の前記第2面を、前記基板の寸法より小さいステージ上に、前記ステージの外縁から前記基板の前記外周部が突出するように載置する工程と、 前記基板の前記外周部の周方向の少なくとも一部と電極とを対向させる工程と、 前記基板の前記第1面に前記外周部とその内側の領域とを区切る第1遮蔽構造物を接触させる、及び/又は前記基板の前記第2面に前記外周部とその内側の領域とを区切る第2遮蔽構造物を接触させる工程と、 前記基板の前記外周部と前
記電極との間に成膜ガスを供給し、前記基板の前記外周部に保護膜を形成する工程と、を含む方法が提供される。
この形態によれば、第1遮蔽構造物及び/又は第2遮蔽構造物により基板の第1面及び/又は第2面の外周部以外(中央部)を物理的に遮蔽した状態で、基板の外周部に保護膜を形成することができる。基板上において、プラズマ生成領域(外周部)と非プラズマ生成領域(中央部)とが物理的な構造物で区切られるため、保護膜の内側境界部の膜厚の減少及び密着性の低下を抑制又は防止できる。
例えば、第1遮蔽構造物と、電極と、ステージ又は第2遮蔽構造物との間に囲まれた領域をプラズマ生成領域とし、第1遮蔽構造物とステージ又は第2遮蔽構造物とで基板の外周部以外(中央部)を遮蔽した状態で、基板の外周部に保護膜を形成することができる。基板上において、プラズマ生成領域(外周部)と非プラズマ生成領域(中央部)とが物理的な構造物で区切られるため、保護膜の内側境界部の膜厚の減少及び密着性の低下を抑制又は防止できる。
また、基板の第1面の第1遮蔽構造物を省略し、基板の第2面のみに第2遮蔽構造物を設けて、第2面上で保護膜の内側境界部の膜厚の減少及び密着性の低下を抑制又は防止してもよい。この場合、少なくとも基板の第2面において保護膜の内側境界部の膜厚の減少及び密着性の低下を抑制又は防止し、保護膜の品質を向上し得る。
【0058】
[2]一形態によれば、 前記基板の前記第1面に前記第1遮蔽構造物を接触させる工程を含み、 前記第1遮蔽構造物は、前記基板に接触する接触部と、前記接触部の内側に設けられ前記基板と共に遮蔽空間を形成する中空部とを有し、前記基板の前記外周部の内側の領域を前記中空部内に収容する。
この形態によれば、基板の外周部の内側の部分(中央部)を中空部内に収容することができるので、基板のデバイス形成領域に第1遮蔽構造物を接触させることなく保護することができ、デバイス形成領域の劣化を抑制又は防止できる。
【0059】
[3]一形態によれば、 前記第1遮蔽構造物は、前記基板に接触する筒状部と、前記筒状部の一端側を閉鎖する蓋部とを有し、前記筒状部の他端側を前記基板に接触させる。
この形態によれば、第1遮蔽構造物を簡易な構成で形成することができる。
【0060】
[4]一形態によれば、 前記蓋部は前記筒状部の外側まで延びており、前記筒状部の外側で前記蓋部に前記基板の外周部に沿って配置された複数のガス供給孔を介して、前記基板の前記外周部と前記電極との間に前記成膜ガスを供給する。
この形態によれば、簡易な構成により、プラズマ生成領域(第1遮蔽構造物と、電極と、ステージ又は第2遮蔽構造物との間に囲まれた領域)に成膜ガスを均一に供給することができる。
【0061】
[5]一形態によれば、 前記蓋部の外側に設けられた前記複数のガス供給孔と連通するバッファ室を介して、前記複数のガス供給孔に前記成膜ガスを供給する。
この形態によれば、バッファ室を介して複数のガス供給孔に成膜ガスを供給することにより、各ガス供給孔に均一にガスを供給し、それにより、プラズマ生成領域の周方向全体にわたって成膜ガスを均一に供給することができる。
【0062】
[6]一形態によれば、 前記蓋部は前記筒状部の外側まで延びており、前記筒状部の外側で前記蓋部を貫通するように環状に配置された多孔体を介して、前記基板の前記外周部と前記電極との間に前記成膜ガスを供給する。
この形態によれば、簡易な構成により、プラズマ生成領域(第1遮蔽構造物と、電極と、ステージ又は第2遮蔽構造物との間に囲まれた領域)に成膜ガスを均一に供給することができる。
【0063】
[7]一形態によれば、 前記蓋部の外側に設けられた前記多孔体と連通するバッファ室を介して、前記多孔体に前記成膜ガスを供給する。
この形態によれば、バッファ室を介して環状の多孔体に成膜ガスを供給することにより、環状の多孔体の周方向全体にわたって均一にガスを供給し、それにより、プラズマ生成領域の周方向全体にわたって成膜ガスを均一に供給することができる。
【0064】
[8]一形態によれば、 前記蓋部は前記筒状部の外側まで延びており、前記筒状部の外側で前記蓋部と前記電極との間に前記成膜ガスを供給し、前記成膜ガスを前記筒状部に衝突させた後に、前記基板の前記外周部と前記電極との間に供給する。
この形態によれば、成膜ガスを第1遮蔽構造物の筒状部に対して垂直に流し、筒状部に一度当てることにより成膜ガスの均一性を高めることができる。また、第1遮蔽構造物にガス供給孔又は多孔体の流路を形成することなく、プラズマ生成領域(第1遮蔽構造物と、電極と、ステージ又は第2遮蔽構造物との間に囲まれた領域)に成膜ガスを均一に供給することができる。これにより、第1遮蔽構造物の構造を簡易にすることができる。
【0065】
[9]一形態によれば、 前記電極に設けられた1又は複数のガス供給孔を介して、前記基板の側方から前記基板の前記外周部と前記電極との間に前記成膜ガスを供給する。
この形態によれば、電極に設けられたガス供給孔を介して横方向からプラズマ生成領域に成膜ガスを供給することで、プラズマ生成領域の全域にわたって均一に成膜ガスを供給することができる。また、第1遮蔽構造物にガス供給孔又は多孔体の流路を形成することなく、プラズマ生成領域に成膜ガスを均一に供給することができため、第1遮蔽構造物の構造を簡易にすることができる。
【0066】
[10]一形態によれば、 前記電極に複数のガス供給孔が設けられ、前記電極の外側に設けられた前記複数のガス供給孔と連通するバッファ室を介して、前記複数のガス供給孔に前記成膜ガスを供給する。
この形態によれば、バッファ室を介して電極の複数のガス供給孔に成膜ガスを供給することにより、各ガス供給孔に均一にガスを供給し、それにより、プラズマ生成領域の周方向全体にわたって成膜ガスを均一に供給することができる。
【0067】
[11]一形態によれば、 前記第1遮蔽構造物と、前記ステージと、前記電極とに囲まれた領域をプラズマ生成領域とする。
この形態によれば、プラズマ生成領域を区切る構造の一部としてステージを利用するため、基板の一方の面で遮蔽構造物を省略することができる。即ち、基板の第2面側の第2遮蔽構造物を省略できる。
【0068】
[12]一形態によれば、 前記第1遮蔽構造物と、前記第2遮蔽構造物と、前記電極とに囲まれた領域をプラズマ生成領域とする。
この形態によれば、基板の各面でプラズマ生成領域を区切る構造物をより柔軟に設計することが可能である。
【0069】
[13]一形態によれば、前記電極は、上部電極と下部電極とに分割されており、前記上部電極と前記下部電極とを離した状態で前記ステージに前記基板を載置し、前記基板を載置した後に、前記上部電極と前記下部電極とを合わせる。
この形態によれば、基板の全周にわたる電極を設ける場合に、基板の設置及び取り外しが容易である。
【0070】
[14]一形態によれば、前記ステージを接地電位又は負の電位又は正の電位に接続する。
この形態によれば、保護膜を形成する基板外周部に接地電位又は負の電位又は正の電位
を与え、基板外周部に負の電荷/正の電荷を溜めて、成膜ガス中の正のイオン/負のイオンを引き付け易くすることができる。これにより、保護膜の生成を促進させることができる。
【0071】
[15]一形態によれば、 前記ステージの外周部において前記基板の前記外周部又は前記外周部の内側に電気的に接触するように配置された第1導電体を接地電位又は負の電位又は正の電位に接続する。
この形態によれば、保護膜を形成する基板外周部に効率よく接地電位又は負の電位又は正の電位を与えることができる。
【0072】
[16]一形態によれば、 前記第1遮蔽構造物及び/又は前記第2遮蔽構造物は、少なくとも前記基板に接触する部分が導電体であり、前記第1遮蔽構造物及び/又は前記第2遮蔽構造物の前記導電体の部分を接地電位又は負の電位又は正の電位に接続する。
この形態によれば、基板の外周部と中央部との境界に接触する第1遮蔽構造物及び/又は第2遮蔽構造物を利用して保護膜を形成する基板外周部に効率よく接地電位又は負の電位又は正の電位を与えることができる。基板外周部に電位を与えるための導電体を別途設ける必要がない。
【0073】
[17]一形態によれば、前記基板の前記第2面に前記第2遮蔽構造物を接触させる工程を含み、前記第2遮蔽構造物は前記ステージの外側で前記基板の前記第2面に接触する。
この形態によれば、基板の第2面でプラズマ生成領域を区切る構造物をより柔軟に設計することが可能である。
【0074】
[18]一形態によれば、 前記基板を回転させながら前記基板の前記外周部に保護膜を形成する。
この形態によれば、プラズマ生成領域の周方向全体にわたってより均一に成膜ガスを供給することができ、周方向全体にわたってより均一に基板外周部に成膜ガス及びプラズマを接触させることができる。これにより、基板外周部の全周にわたってより均一に保護膜を形成することができる。
【0075】
[19]一形態によれば、 前記基板の径方向に沿った断面において、前記電極は、前記基板の前記外周部と前記電極との間の距離が前記基板の成膜領域にわたって一定となる形状及び配置を有する。電極は、例えば、弧状の断面形状を有する。
この形態によれば、成膜領域にわたって電極と基板外周部との間の距離が一定であるので、基板外周部全体にわたって均一な膜厚の保護膜を形成することができる。
【0076】
[20]一形態によれば、 前記電極は、前記基板の前記外周部の全周にわたって連続して又は断続的に配置される。
この形態によれば、基板の前記外周部の周方向全体にわたって電極が配置されるので、電極と基板外周部との間を安定して一定の距離に保つことができ、保護膜の膜厚均一性をより向上させることができる。
【0077】
[21]一形態によれば、 前記電極は、前記基板の前記外周部の周方向の一部に配置され、前記基板を回転させることにより、前記基板の前記外周部の周方向全体に前記保護膜を形成する。
この形態によれば、電極を基板外周部の周方向の一部に配置するため、電極の構成が容易である。
【0078】
[22]一形態によれば、 前記保護膜は、絶縁膜、誘電膜、導体膜、又は有機膜のう
ちの少なくとも1つを含む。保護膜は、異なる種類の複数の層を含んでもよい。
この形態によれば、保護膜形成後の基板プロセスにおいて基板外周部を保護するのに適した多様な保護膜を形成することができる。
【0079】
[23]一形態によれば、 前記保護膜は、アモルファスカーボン又はダイヤモンドライクカーボンからなる層を含む。
この形態によれば、エッチング耐性及び硬度の観点で良好なアモルファスカーボン又はDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を保護膜(複数層の場合には、少なくとも最外層)に使用することで、保護膜形成後の基板プロセスにおいて、基板外周部を適切に保護できる。
【0080】
[24]一形態によれば、 プラズマを用いて基板のベベル部を含む外周部に保護膜を成膜する基板処理装置であって、 基板の寸法より小さいステージであって、かつ前記ステージの外縁から前記基板の前記外周部が突出するように、前記基板の互いに対向する第1面及び第2面のうち前記第2面が載置されるステージと、 前記基板の前記外周部に配置される電極であって前記基板の前記外周部の周方向の少なくとも一部に対向する電極と、 前記基板の前記第1面に接触し前記基板の前記外周部とその内側の領域とを区切る第1遮蔽構造物、及び/又は、前記基板の前記第2面に接触し前記基板の前記外周部とその内側の領域とを区切る第2遮蔽構造物と、 前記基板の前記外周部と前記電極との間に成膜ガスを供給するガス供給装置と、を備えた基板処理装置が提供される。
この形態によれば、第1遮蔽構造物及び/又は第2遮蔽構造物により基板の第1面及び/又は第2面の外周部以外(中央部)を物理的に遮蔽した状態で、基板の外周部に保護膜を形成することができる。基板上において、プラズマ生成領域(外周部)と非プラズマ生成領域(中央部)とが物理的な構造物で区切られるため、保護膜の内側境界部の膜厚の減少及び密着性の低下を抑制又は防止できる。
例えば、第1遮蔽構造物と、電極と、ステージ又は第2遮蔽構造物との間に囲まれた領域をプラズマ生成領域とし、第1遮蔽構造物とステージ又は第2遮蔽構造物とで基板の外周部以外(中央部)を遮蔽した状態で、基板の外周部に保護膜を形成することができる。基板上において、プラズマ生成領域(外周部)と非プラズマ生成領域(中央部)とが物理的な構造物で区切られるため、保護膜の内側境界部の膜厚の減少及び密着性の低下を抑制又は防止できる。
また、基板の第1面の第1遮蔽構造物を省略し、基板の第2面のみに第2遮蔽構造物を設けて、第2面上で保護膜の内側境界部の膜厚の減少及び密着性の低下を抑制又は防止してもよい。この場合、少なくとも基板の第2面において保護膜の内側境界部の膜厚の減少及び密着性の低下を抑制又は防止し、保護膜の品質を向上し得る。
【0081】
[25]一形態によれば、基板の外周部に保護膜が成膜され、 前記保護膜は1又は複数の層を有し、前記1又は複数の層の少なくとも最外層がアモルファスカーボン又はダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜である、基板が提供される。保護膜が単層である場合には、保護膜全体が最外層でありアモルファスカーボン又はDLC膜である。外周部のうち基板径方向の一部の領域、即ち、エッジ部及びベベル部の少なくとも一方が保護膜で覆われてもよい。
この形態によれば、エッチング耐性があり且つ硬度の高いアモルファスカーボン又はDLC膜で基板の外周部を覆うことにより、半導体製造工程において、基板の外周部を侵食から保護することができる。
【0082】
[26]一形態によれば、前記保護膜は、複数の層を含み、前記複数の層のうち少なくとも最外層がアモルファスカーボン又はDLC膜である。
この形態によれば、保護膜を複数の層から構成し、例えば、基板上に1又は複数の下地膜を形成し、その上にアモルファスカーボン又はDLC膜を形成することにより、アモル
ファスカーボン又はDLC膜の基板への密着性を向上させることができる。
【0083】
[27]一形態によれば、 前記保護膜は、第1層と、前記第1層上に形成された第2層とを含み、前記第2層がアモルファスカーボン又はDLC膜である。
この形態によれば、保護膜を2層で構成し、最外層である第2層をアモルファスカーボン又はDLC膜とすることで、上述した作用効果を奏することができる。
【0084】
[28]一形態によれば、 前記基板はシリコン基板であり、前記第1層はSiC膜である。
この形態によれば、シリコン基板上にSiC膜を下地膜として形成することで、アモルファスカーボン又はDLC膜の基板への密着性を向上させることができる。
【0085】
[29]一形態によれば、 前記保護膜は前記基板のベベル部のみに形成されている。
この形態によれば、基板のベベル部を特に保護する必要がある場合、又はベベル部を保護すれば十分である場合に、保護膜を形成する領域を低減することができる。
【0086】
[30]一形態によれば、 前記保護膜は前記基板の一方の面の側においてベベル部のみに形成されている。
この形態によれば、基板の一方の面(例えば、デバイス形成領域がある面)側のベベル部を特に保護する必要がある場合、又は基板の片面側のベベル部を保護すれば十分である場合に、保護膜を形成する領域を低減することができる。
【0087】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 筐体
11 プラズマチャンバ
12 アクチュエータ
13 駆動軸
14 磁気流体シール
20 ステージ
22 導電体
30 バッファ室
31 供給口
40 トップカバー
41 蓋部
41A フランジ部
42 筒状部
42A 絶縁体
43 ガス供給孔
44 多孔体
50 ボトムカバー
50A 絶縁体
60 電極
60A 上部電極
60B 下部電極
61 ガス供給孔
62 絶縁体
70 成膜ガス
71 プラズマ生成領域
72 非プラズマ生成領域
81 ノズル
82 バッファ室
83 ガス供給管
90 保護膜
90A 第1層
90B 第2層
100 基板処理装置
110 RF電源
111 直流電源
120 ラインセンサ
121 照射領域
200 外周部
201 エッジ部
202 ベベル部
300 中央部