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特開2024-172963形状特性値推定装置、形状特性値推定方法、及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172963
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】形状特性値推定装置、形状特性値推定方法、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20241205BHJP
   G01B 11/06 20060101ALI20241205BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01B11/02 H
G01B11/06 H
H01L21/66 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091050
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼田 豊久
(72)【発明者】
【氏名】保坂 理人
【テーマコード(参考)】
2F065
4M106
【Fターム(参考)】
2F065AA22
2F065AA30
2F065BB03
2F065CC19
2F065CC31
2F065FF01
2F065FF42
2F065GG24
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065PP12
2F065QQ03
2F065QQ41
4M106AA01
4M106CA39
4M106CA48
4M106DB04
4M106DB13
4M106DJ19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板に形成された対象膜の形状に係る特性値を精度良く推定すること。
【解決手段】形状特性値推定装置(CD推定装置)は、処理後画像取得部102と、推定部104と、処理前基板影響モデル作成部107と、推定結果補正部108と、を備える。処理前基板影響モデル作成部107は、複数の処理後画像について、第1集合と第2集合とに分けることを実行するように構成されている。処理前基板影響モデル作成部107は、第1集合に基づいて処理前基板影響モデルの候補である第1候補を作成すると共に、第2集合に基づいて処理前基板影響モデルの候補である第2候補を作成することを実行するように構成されている。処理前基板影響モデル作成部107は、第1候補に基づいて推定結果補正部108が推定結果を補正した結果、及び、第2候補に基づいて推定結果補正部108が推定結果を補正した結果、を比較し、処理前基板影響モデルを決定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象膜に係る処理後の基板の表面に係る画像情報を含む処理後画像を取得する処理後画像取得部と、
前記処理後画像に含まれる前記基板の色に係る情報と当該基板に形成された前記対象膜の形状に係る特性値である形状特性値との相関に係る、前記対象膜の形状特性値を推定するための推定モデルを、前記処理後画像に対して適用することで、前記対象膜の形状特性値の推定を行う推定部と、
前記推定部による前記対象膜の形状特性値の推定結果と前記推定モデルを用いずに取得される前記対象膜の形状特性値との差分と、前記対象膜に係る処理前の基板である処理前基板の色に係る情報と、の相関に係るモデルである処理前基板影響モデルを作成する処理前基板影響モデル作成部と、
前記処理前基板影響モデルに基づいて、前記推定部による前記対象膜の形状特性値の推定結果を補正する推定結果補正部と、
を有し、
前記処理前基板影響モデル作成部は、
複数の前記処理後画像について、第1集合と第2集合とに分けることと、
前記第1集合に基づいて前記処理前基板影響モデルの候補である第1候補を作成すると共に、前記第2集合に基づいて前記処理前基板影響モデルの候補である第2候補を作成することと、
前記第1候補に基づいて前記推定結果補正部が前記推定結果を補正した結果、及び、前記第2候補に基づいて前記推定結果補正部が前記推定結果を補正した結果、を比較することにより、前記処理前基板影響モデルを決定することと、
を実行するように構成されている、形状特性値推定装置。
【請求項2】
前記処理前基板影響モデル作成部は、
前記複数の処理後画像について、前記第1集合と前記第2集合と第3集合とに分け、
前記第1候補に基づいて前記推定結果補正部が前記第3集合に係る前記推定結果を補正した結果、及び、前記第2候補に基づいて前記推定結果補正部が前記第3集合に係る前記推定結果を補正した結果、を比較することにより、前記処理前基板影響モデルを決定する、請求項1記載の形状特性値推定装置。
【請求項3】
前記処理前基板影響モデル作成部は、
前記複数の処理後画像について、前記第1集合と前記第2集合と前記第3集合とに分ける処理を、前記第1集合及び前記第2集合に含まれる前記処理後画像の組み合わせを変更しながら複数回繰り返し、
各前記第1集合に関する、前記第1候補に基づいて前記推定結果補正部が前記第3集合に係る前記推定結果を補正した結果、及び、各前記第2集合に関する、前記第2候補に基づいて前記推定結果補正部が前記第3集合に係る前記推定結果を補正した結果、の全てを互いに比較することにより、前記処理前基板影響モデルを決定する、請求項2記載の形状特性値推定装置。
【請求項4】
前記処理前基板影響モデル作成部は、
前記処理後画像の枚数が所定値以上である場合に限り、前記複数の処理後画像を前記第1集合と前記第2集合とに分ける処理を行い、
前記処理後画像の枚数が前記所定値よりも少ない場合には、前記第1集合と前記第2集合とに分ける処理を行わずに前記処理前基板影響モデルを作成する、請求項1~3のいずれか一項記載の形状特性値推定装置。
【請求項5】
基板上に形成された対象膜の形状に係る特性値である形状特性値を推定する形状特性値推定方法であって、
前記対象膜に係る処理後の基板の表面に係る画像情報を含む処理後画像を取得することと、
前記処理後画像に含まれる前記基板の色に係る情報と当該基板に形成された前記対象膜の形状特性値との相関に係る、前記対象膜の形状特性値を推定するための推定モデルを、前記処理後画像に対して適用することで、前記対象膜の形状特性値の推定を行うことと、
前記対象膜の形状特性値の推定結果と前記推定モデルを用いずに取得される前記対象膜の形状特性値との差分と、前記対象膜に係る処理前の基板である処理前基板の色に係る情報と、の相関に係るモデルである処理前基板影響モデルを作成することと、
前記処理前基板影響モデルに基づいて、前記対象膜の形状特性値の推定結果を補正することと、
を含み、
前記処理前基板影響モデルの作成では、
複数の前記処理後画像について、第1集合と第2集合とに分けることと、
前記第1集合に基づいて前記処理前基板影響モデルの候補である第1候補を作成すると共に、前記第2集合に基づいて前記処理前基板影響モデルの候補である第2候補を作成することと、
前記第1候補に基づいて前記推定結果を補正した結果、及び、前記第2候補に基づいて前記推定結果を補正した結果、を比較することにより、前記処理前基板影響モデルを決定することと、
を実行する、形状特性値推定方法。
【請求項6】
前記複数の処理後画像について、前記第1集合と前記第2集合と第3集合とに分け、
前記第1候補に基づいて前記第3集合に係る前記推定結果を補正した結果、及び、前記第2候補に基づいて前記第3集合に係る前記推定結果を補正した結果、を比較することにより、前記処理前基板影響モデルを決定する、請求項5記載の形状特性値推定方法。
【請求項7】
前記複数の処理後画像について、前記第1集合と前記第2集合と前記第3集合とに分ける処理を、前記第1集合及び前記第2集合に含まれる前記処理後画像の組み合わせを変更しながら複数回繰り返し、
各前記第1集合に関する、前記第1候補に基づいて前記第3集合に係る前記推定結果を補正した結果、及び、各前記第2集合に関する、前記第2候補に基づいて前記第3集合に係る前記推定結果を補正した結果、の全てを互いに比較することにより、前記処理前基板影響モデルを決定する、請求項6記載の形状特性値推定方法。
【請求項8】
前記処理後画像の枚数が所定値以上である場合に限り、前記複数の処理後画像を前記第1集合と前記第2集合とに分ける処理を行い、
前記処理後画像の枚数が前記所定値よりも少ない場合には、前記第1集合と前記第2集合とに分ける処理を行わずに前記処理前基板影響モデルを作成する、請求項5~7のいずれか一項記載の形状特性値推定方法。
【請求項9】
請求項5~7のいずれか一項に記載の形状特性値推定方法を装置に実行させるためのプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、形状特性値推定装置、形状特性値推定方法、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板表面を撮像した画像から、基板上に形成された膜の膜厚を算出する構成が開示されている。この際に、準備用撮像画像から得られた画素値と画素値に対応する各座標における膜厚測定値とが対応付けられた相関データを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-215193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板に形成された対象膜の形状に係る特性値を精度良く推定する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る形状特性値推定装置は、対象膜に係る処理後の基板の表面に係る画像情報を含む処理後画像を取得する処理後画像取得部を備える。形状特性値推定装置は、推定部を備える。推定部は、処理後画像に含まれる基板の色に係る情報と当該基板に形成された対象膜の形状に係る特性値である形状特性値との相関に係る、対象膜の形状特性値を推定するための推定モデルを、処理後画像に対して適用することで、対象膜の形状特性値の推定を行う。形状特性値推定装置は、処理前基板影響モデル作成部を備える。処理前基板影響モデル作成部は、推定部による対象膜の形状特性値の推定結果と推定モデルを用いずに取得される対象膜の形状特性値との差分と、対象膜に係る処理前の基板である処理前基板の色に係る情報と、の相関に係るモデルである処理前基板影響モデルを作成する。形状特性値推定装置は、処理前基板影響モデルに基づいて、推定部による対象膜の形状特性値の推定結果を補正する推定結果補正部を備える。処理前基板影響モデル作成部は、複数の処理後画像について、第1集合と第2集合とに分けることを実行するように構成されている。処理前基板影響モデル作成部は、第1集合に基づいて処理前基板影響モデルの候補である第1候補を作成すると共に、第2集合に基づいて処理前基板影響モデルの候補である第2候補を作成することを実行するように構成されている。処理前基板影響モデル作成部は、第1候補に基づいて推定結果補正部が推定結果を補正した結果、及び第2候補に基づいて推定結果補正部が推定結果を補正した結果、を比較することにより、処理前基板影響モデルを決定することを実行するように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板に形成された対象膜の形状に係る特性値を精度良く推定する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、基板処理システムの概略構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、塗布現像装置の一例を示す模式図である。
図3図3は、検査ユニットの一例を示す模式図である。
図4図4は、制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、複数枚のウェハを撮像した画像データから取得した色に係る情報の変化を模式的に示したものである。
図6図6は、制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図7図7は、CD推定方法の一例を示すフロー図である。
図8図8は、CD推定方法の一例を示すフロー図である。
図9図9は、CD推定モデルによる推定結果のばらつきの一例を説明する模式図である。
図10図10は、処理前基板影響モデルの一例を説明する模式図である。
図11図11は、処理前基板影響モデルの作成処理を示すフロー図である。
図12図12は、処理前基板影響モデルの作成に係るサンプルの分け方を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0009】
[基板処理システム]
基板処理システム1は、基板に対し、感光性被膜の形成、当該感光性被膜の露光、及び当該感光性被膜の現像を施すシステムである。処理対象の基板は、例えば半導体のウェハWである。
【0010】
基板処理システム1は、塗布・現像装置2と露光装置3とを備える。露光装置3は、ウェハW(基板)上に塗布されたレジスト膜(感光性被膜)の露光処理を行う。具体的には、露光装置3は、液浸露光等の方法によりレジスト膜の露光対象部分にエネルギー線を照射する。塗布・現像装置2は、露光装置3による露光処理の前に、ウェハW(基板)の表面にレジスト膜を塗布する処理を行い、露光処理後にレジスト膜の現像処理を行う。一連の処理を行うことで、所定のパターンのレジスト膜が形成される。
【0011】
[基板処理装置]
以下、基板処理装置の一例として、塗布・現像装置2の構成を説明する。図1及び図2に示すように、塗布・現像装置2は、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インタフェースブロック6と、制御装置100とを備える。本実施形態で説明する基板処理装置としての塗布・現像装置2は、基板上に形成された対象膜の形状に係る形状特性値を推定する形状特性値の推定装置に相当する。本実施形態における対象膜の形状に係る「形状特性値」とは、対象膜の形状に係る特徴量に相当するものである。一例として、形状特性値には、対象膜の線幅・ホール径などの限界寸法(CD:Critical Dimension)、または、対象膜の膜厚が挙げられる。以下の実施形態では、塗布・現像装置2が形状特性値推定装置として、対象膜のCDを推定する場合について説明する。塗布・現像装置2のCDを推定する機能については後述する。
【0012】
キャリアブロック4は、塗布・現像装置2内へのウェハWの導入及び塗布・現像装置2内からのウェハWの導出を行う。例えばキャリアブロック4は、ウェハW用の複数のキャリアC(収容部)を支持可能であり、受け渡しアームを含む搬送装置A1を内蔵している。キャリアCは、例えば円形の複数枚のウェハWを収容する。搬送装置A1は、キャリアCからウェハWを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5からウェハWを受け取ってキャリアC内に戻す。処理ブロック5は、複数の処理モジュール11,12,13,14を有する。
【0013】
処理モジュール11は、複数の塗布ユニットU1と、複数の熱処理ユニットU2と、複数の検査ユニットU3と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール11は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりウェハWの表面上に下層膜を形成する。処理モジュール11の塗布ユニットU1は、例えば、ウェハWを所定の回転数で回転させながら、下層膜形成用の処理液をウェハW上に塗布する。処理モジュール11の熱処理ユニットU2は、下層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。熱処理ユニットU2は、例えば熱板及び冷却板を内蔵しており、熱板によりウェハWを所定の加熱温度に加熱し、加熱後のウェハWを冷却板により冷却して熱処理を行う。検査ユニットU3は、ウェハWの表面の状態を検査するための処理を行い、ウェハWの表面の状態を示す情報として、例えば表面画像を取得する。
【0014】
処理モジュール12は、複数の塗布ユニットU1と、複数の熱処理ユニットU2と、複数の検査ユニットU3と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール12は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2により下層膜上に中間膜を形成する。処理モジュール12の塗布ユニットU1は、中間膜形成用の処理液を下層膜の上に塗布することで、ウェハWの表面に塗布膜を形成する。処理モジュール12の熱処理ユニットU2は、中間膜の形成に伴う各種熱処理を行う。熱処理ユニットU2は、例えば熱板及び冷却板を内蔵しており、熱板によりウェハWを所定の加熱温度に加熱し、加熱後のウェハWを冷却板により冷却して熱処理を行う。検査ユニットU3は、ウェハWの表面の状態を検査するための処理を行い、ウェハWの表面の状態を示す情報として、例えば表面画像を取得する。
【0015】
処理モジュール13は、複数の塗布ユニットU1と、複数の熱処理ユニットU2と、複数の検査ユニットU3と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール13は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2により中間膜上にレジスト膜を形成する。処理モジュール13の塗布ユニットU1は、例えば、ウェハWを所定の回転数で回転させながら、レジスト膜形成用の処理液を中間膜の上に塗布する。処理モジュール13の熱処理ユニットU2は、レジスト膜の形成に伴う各種熱処理を行う。処理モジュール13の熱処理ユニットU2は、塗布膜が形成されているウェハWに対して所定の加熱温度で熱処理(PAB:Post Applied Bake)を施すことでレジスト膜を形成する。検査ユニットU3は、ウェハWの表面の状態を検査するための処理を行い、ウェハWの表面の状態を示す情報として、例えば表面画像を取得する。
【0016】
処理モジュール14は、複数の現像ユニットと、複数の熱処理ユニットU2と、複数の検査ユニットU3と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール14は、現像ユニット及び熱処理ユニットU2により、露光後のレジスト膜Rの現像処理を行う。処理モジュール14の現像ユニットは、例えば、ウェハWを所定の回転数で回転させながら、露光済みのウェハWの表面上に現像液を供給した後、これをリンス液により洗い流すことで、レジスト膜Rの現像処理を行う。このような現像処理は、レジスト膜R(対象膜)に係る処理であり、具体的にはレジスト膜Rの一部を除去する処理である。処理モジュール14の熱処理ユニットU2は、現像処理に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、現像処理前の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)、現像処理後の加熱処理(PB:Post Bake)等が挙げられる。検査ユニットU3は、ウェハWの表面の状態を検査するための処理を行い、ウェハWの表面の状態を示す情報として、例えば表面画像を取得する。このような表面画像は、レジスト膜R(対象膜)に係る処理である現像処理後のウェハWの表面に係る画像情報を含む処理後画像である。
【0017】
処理ブロック5内におけるキャリアブロック4側には棚ユニットU10が設けられている。棚ユニットU10は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームを含む搬送装置A7が設けられている。搬送装置A7は、棚ユニットU10のセル同士の間でウェハWを昇降させる。
【0018】
処理ブロック5内におけるインタフェースブロック6側には棚ユニットU11が設けられている。棚ユニットU11は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
【0019】
インタフェースブロック6は、露光装置3との間でウェハWの受け渡しを行う。例えばインタフェースブロック6は、受け渡しアームを含む搬送装置A8を内蔵しており、露光装置3に接続される。搬送装置A8は、棚ユニットU11に配置されたウェハWを露光装置3に渡し、露光装置3からウェハWを受け取って棚ユニットU11に戻す。
【0020】
[検査ユニット]
処理モジュール11~14に含まれる検査ユニットU3について説明する。処理モジュール11~13に含まれる検査ユニットU3は、レジスト膜Rに係る処理(現像処理)前のウェハWである処理前基板の表面の画像データ(処理前画像)を得る機能を有する。また、処理モジュール14に含まれる検査ユニットU3は、レジスト膜Rに係る処理(現像処理)後のウェハWの表面の画像データ(処理後画像)を得る機能を有する。
【0021】
図3に示すように、検査ユニットU3は、筐体30と、保持部31と、リニア駆動部32と、撮像部33と、投光・反射部34と、を含む。保持部31は、ウェハWを水平に保持する。リニア駆動部32は、例えば電動モータなどを動力源とし、水平な直線状の経路に沿って保持部31を移動させる。撮像部33は、例えばCCDカメラ等のカメラ35を有する。カメラ35は、保持部31の移動方向において検査ユニットU3内の一端側に設けられており、当該移動方向の他端側に向けられている。投光・反射部34は、撮像範囲に投光し、当該撮像範囲からの反射光をカメラ35側に導く。例えば投光・反射部34は、ハーフミラー36及び光源37を有する。ハーフミラー36は、保持部31よりも高い位置において、リニア駆動部32の移動範囲の中間部に設けられており、下方からの光をカメラ35側に反射する。光源37は、ハーフミラー36の上に設けられており、ハーフミラー36を通して下方に照明光を照射する。
【0022】
検査ユニットU3は、次のように動作してウェハWの表面の画像データを取得する。まず、リニア駆動部32が保持部31を移動させる。これにより、ウェハWがハーフミラー36の下を通過する。この通過過程において、ウェハW表面の各部からの反射光がカメラ35に順次送られる。カメラ35は、ウェハW表面の各部からの反射光を結像させ、ウェハW表面の画像データを取得する。ウェハW表面に形成される膜の形状(例えば、線幅等)が変化すると、例えば、形状の変化に応じて色がウェハW表面の色が変化する等、カメラ35で撮像されるウェハW表面の画像データが変化する。すなわち、ウェハW表面の画像データを取得することは、ウェハWの表面に形成された膜の形状に係る情報を取得することに相当する。
【0023】
カメラ35で取得された画像データは、制御装置100に対して送られる。制御装置100において、画像データに基づいてウェハW表面の膜の形状特性値を推定することができ、推定結果が制御装置100において検査結果として保持されることになる。また、画像データ自体についても制御装置100において保持される。
【0024】
線幅のCDは、現像後の対象膜(例えば、レジスト)のパターンの最小幅であり、数nm~数μm程度である。ここで、処理前画像及び処理後画像の取得に使用される検査ユニットU3の撮像部33は、撮像された画像からパターンのCDを正確に測定できる程度の分解能(解像度)は有していないとする。撮像部33で撮像される画像においては、パターン部分の色は、CDサイズに依存し変化する。そのため、画素毎に取得される表面の色に係る情報(ここでは、グレイ値)は、対象膜に形成されたパターンの形状によって変化し得る。
【0025】
[制御装置]
制御装置100の一例について詳細に説明する。制御装置100は、塗布・現像装置2に含まれる各要素を制御する。制御装置100は、ウェハWの表面に上述の各膜を形成させること、及び、現像処理を行うことを含むプロセス処理を実行するように構成されている。また、制御装置100は、形状特性値推定装置の主要部として、形成された膜の形状特性値を推定するための処理を実行するように構成されている。ここでは、塗布・現像装置2において、形状特性値として対象膜のCDの推定を行う場合の制御装置100の構成例について説明する。
【0026】
図4に示されるように、制御装置100は、機能上の構成として、処理前画像取得部101、処理後画像取得部102、画像情報保持部103、推定部104、推定モデル保持部105、形状特性値情報保持部106を有する。さらに、制御装置100は、処理前基板影響モデル作成部107、及び、推定結果補正部108を有する。図4に示す各機能部は、形状特性値推定装置の一種として、CD推定装置としての機能を実現するための機能部である。
【0027】
各機能部の説明の前に、制御装置100を含む塗布・現像装置2が基板に係る検査を行う装置(形状特性値推定装置)として行う処理(検査)の概要について説明する。塗布・現像装置2では、ウェハWの表面を撮像した画像からウェハWの表面に形成された膜のCDを推定するという処理を行う。ウェハWの表面の膜が現像されると、パターンのCDによって表面の色が変化する。このことを利用して、塗布・現像装置2では、ウェハWの表面の色に係る情報を含む画像データから、ウェハWの表面の各点でのCDを推定する。
【0028】
一例として、CDの推定の手順は以下の通りである。すなわち、まず、推定の対象となる膜(対象膜)のCDが既知であるウェハを複数準備する。そして、これらのウェハの表面を撮像した画像情報における各画素の色に係る情報と、当該画素に撮像された位置のウェハ表面の膜のCDとの相関関係に基づいたCD推定モデル(形状特性値推定モデル)を作成する。その後、CD推定の対象となる対象膜が形成された後に現像処理が行われたウェハの表面を撮像した画像を取得し、画像データに含まれる各画素の色に係る情報と、CD推定モデルと、に基づいて、ウェハ表面の膜のCDを推定する。これにより、ウェハ表面の対象膜のCDを推定することができる。
【0029】
図5は、複数枚のウェハを撮像した画像データから取得した色に係る情報の変化を模式的に示したものである。図5では、対象膜を形成した後のウェハ表面を撮像した画像データから取得した表面の色に係る情報(ここでは、グレイ値)を示している。図5に示すように、ウェハ毎に互いに異なる色を示しているので、この色の違いを利用してウェハ表面の膜のCDを推定することになる。
【0030】
ただし、上記の手法では、CDを推定する対象とする膜の下層がどのような状況かを考慮したCD推定モデルが作成できていない可能性がある。上述のように、ウェハには複数の膜が形成されている。したがって、CDの推定の対象膜がレジスト膜である場合、レジスト膜の下に下層膜及び中間膜が積層されている。したがって、図5で示すようなウェハ毎のウェハ表面の色の違いは、CDの推定の対象の膜のCDに由来する変化ではなく、それより前のレジスト膜及び下地部分の状態のばらつきが反映されている可能性もある。本実施形態で対象としているウェハのように表面に形成する膜の膜厚が薄い場合、下地部分等の状態のばらつきがウェハ表面の色の変化のばらつきに反映されることが考えられる。
【0031】
上記のCD推定モデルは、レジスト膜のCDと画像データにおける色情報との相関関係を推定したものであるが、レジスト膜及びその下方の各膜の膜厚が異なる場合については考慮されていないといえる。例えば、レジスト膜の下の中間膜の膜厚が変化すると、レジスト膜を塗布する前の状態でも中間膜の膜厚によってウェハ表面の色が変化する可能性がある。しかしながら、CD推定モデルではこのような下側の膜の影響は十分反映されていない可能性がある。上記のような問題点を考慮して、下側の膜の状況(膜厚等)を変化させたウェハを用いてCD推定モデルを作成することも一案ではある。しかしながら、推定精度の高いモデルを作成するために必要な種々の条件に対応したウェハを相当数準備することは困難である可能性が考えられる。
【0032】
そこで、本実施形態で説明する塗布・現像装置2では、レジスト膜形成後であってレジスト膜に係る処理である現像処理が実施される前のウェハである処理前基板の表面を撮像した画像情報(処理前画像)を利用して、処理前基板の下地部分等の違いがCDの推定結果にどの程度影響を与えるかを推定するモデルを作成する。具体的には、対象となる膜が形成された後に膜に係る処理が実施されたウェハについて、CD推定モデルを用いたCDの推定結果と、CD推定モデルを用いない方法で得られたCD値と、対象となる膜を現像する前のウェハである処理前基板の表面の画像情報とからモデルを作成する。このモデル(処理前基板影響モデル)は、レジスト膜及び下地部分がCD推定モデルによる対象膜のCDの推定結果にどの程度影響を与えているかを、処理前基板の画像データから推定するモデルである。本実施形態で説明する塗布・現像装置2では、処理前基板影響モデルを利用して、下地部分等の膜厚のばらつき等に由来するCDの誤差を除去し、より精度の高いCD推定結果を算出することを実現している。制御装置100は、このような高精度でのCD推定に係る処理を行っている。
【0033】
図4に示される制御装置100の処理前画像取得部101は、形成された対象膜に係る処理である現像処理前のウェハである処理前基板の表面の画像情報(処理前画像)を取得する機能を有する。処理前画像取得部101は、例えば処理モジュール13の検査ユニットU3を制御することで、対象となるウェハWの処理前画像を取得する。
【0034】
処理後画像取得部102は、対象膜に係る処理後(詳細には現像処理後)のウェハWの表面の画像情報を含む処理後画像を取得する機能を有する。処理後画像取得部102は、例えば、処理モジュール14の検査ユニットU3を制御することで、対象となるウェハWの処理後画像を取得する。
【0035】
画像情報保持部103は、処理前画像取得部101で取得された処理前画像と、処理後画像取得部102で取得された処理後画像を保持する機能を有する。画像情報保持部103で保持される画像情報は、ウェハWに形成された対象膜のCDの推定において使用される。
【0036】
推定部104は、画像情報保持部103において保持される処理後画像に基づいて対象膜のCDを推定する機能を有する。推定部104によるCDの推定には、CD推定モデルが用いられる。CD推定モデルは、処理後画像に含まれるウェハWの表面の色に係る情報と、当該ウェハWに形成された対象膜のCDとの素案に係る、対象膜のCDを推定するための推定モデルである。推定部104は、推定モデルを処理後画像に対して適用することで、対象膜のCDの推定を行う。
【0037】
推定モデル保持部105は、推定部104によるCDの推定に利用するCD推定モデルを保持する機能を有する。CD推定モデルとは、対象膜に係る処理後(詳細には現像処理後)のウェハWの表面を撮像した画像データにおける各画素の色の情報からCDを算出するためのモデルであり、この色に係る情報とCDとの対応関係を示したモデルである。このようなモデルを用いることによって、画像データの各位置におけるウェハW表面の色に係る情報を取得することで、当該色に係る情報からCDを推定することができる。CD推定モデルの作成方法は特に限定されず、既知の統計処理の手法等を用いて作成することができる。処理前画像取得部101で取得された処理前画像に含まれる処理前基板の表面の色に係る情報と、処理後画像取得部102で取得された処理後画像に含まれる処理後の基板の表面の色に係る情報と、から膜の形成による基板表面の色の変化に係る情報を取得する。そのうえで、色の変化とCDとの相関を算出することでCD推定モデルを作成することができる。ただし上記の手法は一例であり、上記の例に限定されない。例えば、処理前基板の表面の色に係る情報を用いず、処理後の基板の表面の色に係る情報のみを用いて色の変化とCDとの相関を算出することでモデルを作成してもよい。なお、CD推定モデルは、塗布・現像装置2で作成してもよいし、例えば、他の装置等で作成してもよい。
【0038】
形状特性値情報保持部106は、CD推定モデルを用いずに取得した対象膜に係る形状特性値に相当する、対象膜のCDに係る情報を保持する機能を有する。CD推定モデルを用いずに取得した対象膜のCDとしては、例えば、何らかの方法で測定した対象膜のCDの測定値とすることができる。また、塗布・現像装置2の動作が安定している状況では、例えば、装置の動作確認に係る詳細な検査(QC検査)の際に検査用基板に対して膜形成を行って評価を行うので、このときの検査結果をCDとしてもよい。また、塗布・現像装置2に含まれる膜形成に係る複数のユニット(塗布ユニット、熱処理ユニット等)それぞれについての特性がある程度把握できるのであれば、どのユニットで処理を行ったかに基づいてCDを求める構成としてもよい。また、装置特性から成膜後のCDが徐々に変化することが予め把握されているのであれば、定期的に測定した測定値に対して経時的変化の予測値を加味した値をCDとしてもよい。このようなCDは、ある程度信頼性の高い値であり、且つ、CD推定モデルは用いずに取得された(または算出された)値であればよく、種々の手法を用いて取得することができる。形状特性値情報保持部106において保持するCDは、何らかの方法で実測する場合のようにウェハWに対する成膜に係る処理を行いながら取得する構成としてもよいし、予測値等をCDとして用いる場合には、予め取得(算出)しておく構成としてもよい。また、CDは、ウェハW毎に1つの値を設定してもよいし、例えば、1つのウェハWに対して複数(例えば、ショットまたはダイ毎に)定義してもよい。
【0039】
処理前基板影響モデル作成部107は、CDの推定結果と、CD推定モデルを用いずに取得される対象膜のCDと、対象膜に係る処理前のウェハのWである処理前基板の画像である処理前画像と、に基づいて処理前基板影響モデルを作成する機能を有する。詳細には、処理前基板影響モデル作成部107は、推定結果とCD推定モデルを用いずに取得される対象膜のCDとの差分と、処理前画像(処理前基板の色に係る情報)と、の相関に係るモデルである処理前基板影響モデルを作成する。処理前基板影響モデルは、CD推定モデルによる推定結果がある程度蓄積されてから作成される。処理前基板影響モデル作成部107の詳細については後述する。
【0040】
推定結果補正部108は、処理前基板影響モデル作成部107によって作成された処理前基板影響モデルに基づいて、推定部104による対象膜のCDの推定結果を補正する機能を有する。処理前基板影響モデルを用いてレジスト膜及び下地部分等がCDの推定結果に影響を与えているかを推定することができるので、CD推定モデルによって推定されたCDから、レジスト膜及び下地部分等の影響の成分を除去することによって、より正確なCD推定結果を得ることができる。
【0041】
制御装置100は、一つまたは複数の制御用コンピュータにより構成される。例えば制御装置100は、図6に示される回路120を有する。回路120は、一つまたは複数のプロセッサ121と、メモリ122と、ストレージ123と、入出力ポート124とを有する。ストレージ123は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、後述の基板検査手順を制御装置100に実行させるためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ122は、ストレージ123の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ121による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ121は、メモリ122と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。入出力ポート124は、プロセッサ121からの指令に従って、制御対象の部材との間で電気信号の入出力を行う。
【0042】
なお、制御装置100のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えば制御装置100の各機能モジュールは、専用の論理回路またはこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0043】
なお、以下の実施形態では、制御装置100内に上記構成が含まれている場合について説明するが、制御装置100に上記の全機能が含まれていなくてもよい。例えば、画像情報保持部103、推定モデル保持部105、形状特性値情報保持部106等のデータベースとしての機能部を外部装置に設ける構成であってもよい。
【0044】
[プロセス処理手順]
続いて、塗布・現像処理の一例として塗布・現像装置2において実行されるプロセス処理手順について説明する。
【0045】
プロセス処理手順において、まず制御装置100は、キャリアC内のプロセス処理対象のウェハWを棚ユニットU10に搬送するように搬送装置A1を制御し、このウェハWを処理モジュール11用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0046】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール11内の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウェハWの表面上に下層膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、下層膜が形成されたウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウェハWを処理モジュール12用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0047】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール12内の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウェハWの下層膜上に中間膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。例えば、制御装置100は、ウェハWの下層膜上に中間膜形成用の処理液を塗布することによって中間膜を形成するように塗布ユニットU1を制御する。次に、制御装置100は、中間膜に熱処理を施すように熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、ウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウェハWを処理モジュール13用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0048】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール13内の各ユニットに搬送するように搬送装置A3を制御し、このウェハWの中間膜上にレジスト膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。例えば、制御装置100は、ウェハWの中間膜上にレジスト膜形成用の処理液を塗布することによってレジスト膜を形成するように塗布ユニットU1を制御する。次に、制御装置100は、レジスト膜に熱処理を施すように熱処理ユニットU2を制御する。レジスト膜の形成後、制御装置100は、ウェハWを検査ユニットU3に搬送するように搬送装置A3を制御し、検査ユニットU3を用いて当該ウェハWの表面を撮像し画像情報(処理前画像)を取得するように制御する。その後制御装置100は、ウェハWを棚ユニットU11に搬送するように搬送装置A3を制御する。
【0049】
次に制御装置100は、棚ユニットU11のウェハWを露光装置3に送り出すように搬送装置A8を制御する。その後制御装置100は、露光処理が施されたウェハWを露光装置3から受け入れて、棚ユニットU11における処理モジュール14用のセルに配置するように搬送装置A8を制御する。
【0050】
次に制御装置100は、棚ユニットU11のウェハWを処理モジュール14内の各ユニットに搬送するように搬送装置A3を制御し、このウェハWのレジスト膜Rに現像処理を施すように現像ユニット及び熱処理ユニットU2を制御する。現像処理後、制御装置100は、ウェハWを検査ユニットU3に搬送するように搬送装置A3を制御し、検査ユニットU3を用いて当該ウェハWの表面を撮像し画像情報(処理後画像)を取得するように制御する。その後制御装置100は、ウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウェハWをキャリアC内に戻すように搬送装置A7及び搬送装置A1を制御する。以上でプロセス処理が完了する。
【0051】
[CD推定方法]
次に、図7図10を参照しながら、制御装置100による処理モジュール11~14におけるCD推定方法について説明する。CD推定方法は、処理モジュール11~14に設けられた検査ユニットU3において行われる成膜後のウェハWの検査に係る方法である。検査ユニットU3では、成膜後のウェハWにおいて所望の成膜が実施されたか、特に、所望のCDの成膜が行われたかをCDを推定することによって評価する。
【0052】
なお、以下の実施形態では、レジスト膜のCDを推定する場合について説明する。したがって、対象処理が現像処理であり、現像処理を実施する前のウェハW(すなわち、レジスト膜までが形成されたウェハ)を処理前基板として説明する。ただし、対象膜はレジスト膜に限定されない。例えば、対象膜を中間膜として、中間膜の膜厚を推定することとしてもよい。その場合には、処理前基板は中間膜を形成する前のウェハ、すなわち、下地膜が形成されたウェハとなる。このように、CDの推定の対象となる対象膜に応じて処理前基板の設定を変更することができる。また、処理前基板は、他の装置による処理(例えば、成膜、エッチング、洗浄等)が行われた後の基板としてもよい。このように、処理前基板とは、対象処理前の基板であればよく、特に限定されない。
【0053】
図7は、CD推定方法の一連の流れのうち、CD推定モデルを適用したCDの推定までの手順を説明するフロー図である。まず、制御装置100は、ステップS01を実行する。ステップS01では、下地基板を準備し、検査ユニットU3に搬入する。ここでの下地基板とは、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2において中間膜までの成膜が行われたウェハWである。搬入された下地基板は保持部31において保持される。
【0054】
次に、制御装置100は、ステップS02を実行する。ステップS02では、対象膜であるレジスト膜を下地基板に対して成膜する。次に、制御装置100の処理前画像取得部101は、ステップS03を実行する。ステップS03では、撮像部33により処理前基板の表面を撮像する。具体的には、リニア駆動部32の駆動により保持部31を所定の方向に移動させながら撮像部33により処理前基板の表面の撮像を行う。これにより、撮像部33において処理前基板の表面に係る画像情報(処理前画像)が取得される。処理前画像は、制御装置100の画像情報保持部103において保持される。
【0055】
次に、制御装置100は、ステップS04を実行する。ステップS04では、現像処理によって対象膜の一部除去が行われる。現像処理が行われたウェハWは検査ユニットU3に搬入される。搬入された現像処理後のウェハWは保持部31において保持される。
【0056】
次に、制御装置100の処理後画像取得部102は、ステップS05を実行する。ステップS05では、ステップS02と同様に、撮像部33により処理後のウェハWの表面を撮像する。具体的には、リニア駆動部32の駆動により保持部31を所定の方向に移動させながら撮像部33によりウェハW表面の撮像を行う。これにより、撮像部33においてウェハWの表面に係る画像情報(処理後画像)が取得される。処理後画像は、制御装置100の画像情報保持部103において保持される。
【0057】
次に、制御装置100の推定部104は、ステップS06を実行する。ステップS065では、ウェハW表面に係る処理後画像に基づいて、ウェハW表面の対象膜のCDを推定する。推定部104によるCDの推定には、推定モデル保持部105において保持されるCD推定モデルが使用される。
【0058】
処理後画像からのCDの推定方法は、具体的には以下のとおりである。まず、処理後画像から画素毎のウェハW表面の色に係る情報を取得する。このとき、成膜前の下地画像との相関を算出する処理を行うこととしてもよい。この手順を行うかは、CD推定モデルがどのような条件に係るモデルであるかに応じて適宜変更することができる。その後、推定モデル保持部105で保持されるCD推定モデルとの比較を行う。これにより、画素毎に当該画素が撮像した領域のCDを推定することができる。これにより、ウェハW表面の各位置での対象膜のCDを推定することが可能となる。
【0059】
次に、本実施形態で説明するCD推定方法では、図8に示す処理前基板影響モデルを用いた補正を行う。
【0060】
図8に示すように、制御装置100の処理前基板影響モデル作成部107は、処理前基板影響モデルの作成に係るステップS11~S13を順に実行する。ステップS11では、まず、特定の画素におけるCD推定モデル(F)による対象膜のCD推定結果yと、CD推定モデルを用いずに取得される対象膜のCD情報Yとを取得する。ステップS12では、CDを推定したウェハWに係る処理前画像を準備する。そして、ステップS13では、CD推定結果yとCD情報Yとの差分と、処理前画像に含まれる色情報との相関に係る処理前基板影響モデル(G)を作成する。そして、処理前基板影響モデル(G)を作成した後に、制御装置100の推定結果補正部108は、ステップS14を実行する。ステップS14では、処理前基板影響モデル(G)から算出される処理前基板影響要素y’を対象膜のCD推定結果yから差し引くことで、CD推定結果の補正を行う。以下、これらのステップについて説明する。
【0061】
処理後画像におけるCD推定モデルによるCD推定結果をyとし、CD推定モデルを用いずに取得される対象膜のCD情報をYとする。また、現像処理後の画像(処理後画像)に基づいて作成されたCD推定モデルをFとする。CD推定結果yは、CD推定モデルから算出されるものであるので、以下の数式(1)の関係を満たすはずである。
y=F(処理後画像) …(1)
【0062】
ここで、CD推定モデルの精度が十分に高い場合には、CD推定結果yはCD情報Yと一致するはずである。しかしながら、実際には以下の数式(2)の状態となっている。
Y=F(処理後画像)+error1 …(2)
【0063】
図9では、数式(2)に示すように、CD推定結果が誤差「error1」を含み得る状態を模式的に示している。図9では、対象となるウェハWそれぞれについて、特定の画素におけるCD推定結果yとCD情報Yとの関係をプロットしている。CD推定結果yとCD情報Yとが一致する場合には、図9に示す直線L(y=Y)上に各点が並ぶはずである。しかしながら、実際には、CD推定結果yとCD情報Yとが一致しておらず、CD推定結果yがCD情報Yに対して大きい群T1と、CD推定結果yがCD情報Yに対して小さい群T2と、が存在している。数式(2)における「error1」には、単純誤差のほか、CD推定モデルFの精度が十分ではないことによる誤差が含まれ得る。CD推定モデルFの精度が低下する原因の一つとして、上述のように対象処理よりも前の処理前基板に由来する変動分を十分に除去できていないことが考えられる。
【0064】
そこで、処理前基板影響モデルとして、処理前画像から得られる色情報と「error1」に相当する部分との相関関係を把握する。処理前基板影響モデルをGとすると、処理前基板影響モデルは以下の数式(3)を満たすモデルとなる。
y-Y=G(処理前画像)+error2 …(3)
【0065】
数式(2)における「error1」には、上述のように処理前基板に由来する変動分が含まれると考えられるが、上記のように処理前基板に由来する成分を処理前基板影響モデルGとして取り扱う。この結果、数式(3)における「error2」には、処理前基板に由来する成分は除去され、所謂単純誤差のみが含まれることとなる。
【0066】
図10では、処理前基板影響モデルGを模式的に示している。処理前基板影響モデルGは、例えば処理前画像における処理前基板表面の色に係る情報(例えば、処理前画像における輝度値)と、y-Yとの相関関係を示すモデルである。図10に示すように処理前基板表面の色に係る情報(例えば、処理前画像における輝度値)と、y-Yとの相関関係をモデル化することで、処理前基板の表面の色に応じた補正を加えることができる。すなわち、CD推定モデルFを用いて推定されたCDの推定値に含まれると考えられる処理前基板由来の変動分(y-Yに相当する)を、処理前基板影響モデルGから把握することができる。
【0067】
特定の画素における処理前基板影響モデルから求められる処理前基板影響要素をy’とすると、y’は以下の数式(4)の関係を満たす。
y’=G(処理前画像) …(4)
【0068】
CD推定モデルFを用いて推定されたCD推定結果yからCD影響要素y’を差し引くと、数式(5)に示すように、CDの推定結果yをCD情報Yに近付ける、すなわち、より正確な値に近付けることができる。数式(5)に示すように、このy-y’には、単純誤差に係るerror2が含まれる。ただし、上述のようにerror2にはモデル誤差は含まれないため、y-y’には、CD推定モデルFを用いた場合だけでは推定結果に含まれ得るモデル誤差を除去することができる。
y-y’=y-(y-Y)+error2=Y-error2 …(5)
【0069】
なお、図10では、処理前基板影響モデルGが処理前画像の輝度値に対する一次関数となる状態を示しているが、これは説明のためにより簡単な例を示したものである。処理前基板影響モデルGは、図10に示すように、処理前画像の色に係る情報として1つの値のみを用いて、一次関数として求めてもよいが、より高い精度でのモデル化を実現するためにより複雑な統計的手法を用いてもよい。すなわち、処理前基板影響モデルGを作成する際の処理前画像の色に係る情報として輝度値のみを用いるのではなく、例えば、RGB値等複数のパラメータを用いて、これらの特徴量を利用した統計的手法を用いてモデルを作成してもよい。処理前基板影響モデルGは、例えば、重回帰分析、非線形分析、決定木分析のほか、公知の回帰分析等の統計的手法を用いて作成してもよい。
【0070】
上記で説明した処理前基板影響モデルGの作成及び処理前基板影響モデルGを利用したCD推定結果の補正(図8で示した一連の処理)は、CD推定モデルFを用いた対象膜のCDの推定結果がある程度蓄積された段階で行うことができる。CD推定モデルFが処理前基板に由来する変動分(すなわち、処理前基板影響モデルGに相当する成分)をどの程度含んでいるかは、CD推定モデルFが準備された段階では把握できないためである。したがって、CD推定モデルFを用いて複数のウェハWに関してCDの推定を行った後に、上記の処理前基板影響モデルGの作成及び処理前基板影響モデルGを用いたCD推定結果の補正が行われる。処理前基板影響モデルGの精度をある程度高めるためには、処理前基板影響モデルGを作成するためのデータ数は数十程度あるとよいと考えられるが、この数に限定されるものではない。
【0071】
また、処理前基板影響モデルGは所定の間隔を空けて修正されてもよい。例えば、塗布・現像装置2におけるウェハWの処理枚数が所定数を超えた際に、直近の数十のウェハWに係る情報を用いて処理前基板影響モデルGを再度作成し、それ以降のウェハWのCDの推定に反映させる構成としてもよい。このように、処理前基板影響モデルGの作成タイミング及びその変更等は、塗布・現像装置2の運転状況、ウェハWの特性等を考慮して適宜変更することができる。
【0072】
なお、処理前基板影響モデルGを作成する際に用いられるデータは、1枚のウェハWに対して1つに限定されるものではない。CD推定モデルFを用いたCDの推定は例えばショット毎に行われるので、これらの画素毎の推定結果をそれぞれ取り込んで処理前基板影響モデルGを作成してもよい。
【0073】
[処理前基板影響モデル作成の詳細]
次に、処理前基板影響モデル作成部107による処理前基板影響モデル作成の詳細について説明する。なお、処理前基板影響モデル作成部107による処理前基板影響モデル作成手法は以下で説明する態様に限定されない。
【0074】
処理前基板影響モデル作成部107は、処理後画像の枚数(すなわちサンプルとなるウェハの枚数)が所定値以上である場合に限り、過剰適合を抑制するための処理を行った上で、処理前基板影響モデルを作成する。過剰適合とは、学習用サンプルに対しては適合できているが未知データに対して適合できていないモデルの状態をいう。以下では、図11及び図12を参照して、過剰適合を抑制しながら実施する処理前基板影響モデルの作成処理を説明する。
【0075】
図11は、処理前基板影響モデルの作成処理を示すフローチャートである。図11に示すように、処理前基板影響モデル作成部107は、最初に、処理後画像であるサンプルSの枚数が、所定値(ここでは75)以上であるか否かを判定する(ステップS31)。ステップS31においてサンプルSの枚数が所定値以上でない場合には、後述する集合分けが行われずに、処理前基板影響モデル作成部107は、全てのサンプルSから処理前基板影響モデルを作成する(ステップS32)。
【0076】
一方で、サンプルSの枚数が所定値以上である場合には、図12(a)に示されるように、サンプルSが時系列に並べられる(ステップS13)。そして、図12(b)に示されるように、全体でN枚あるサンプルSの内、例えば時系列的に新しいN/3枚のサンプルSが検証用サンプルS1の集合(第3集合)とされる(ステップS34)。
【0077】
そして、図12(c)に示されるように、処理前基板影響モデル作成部107は、残りのサンプルSからランダムにN/3枚のサンプルS2を第1集合に分ける(ステップS35)。また、図12(d)に示されるように、処理前基板影響モデル作成部107は、残りのN/3枚のサンプルS3を第2集合に分ける(ステップS36)。
【0078】
つづいて、処理前基板影響モデル作成部107は、第1集合の学習を実施し(ステップS37)、処理前基板影響モデルの候補である第1候補モデル式CD(第1候補)を作成する。第1候補モデル式CDは下記の(6)式に示される。
CD=CD+FUNC1(Gray) …(6)
上記(6)式において、CDはCD推定モデルによって推定されるCDの推定値、Grayは処理前画像のグレイ値、FUNC1は処理前基板学習による補正量を表す関数である。
【0079】
そして、推定結果補正部108は、第1候補モデル式CDに基づいて、検証用サンプルS1に係るCDの推定値が補正されたベリファイデータを導出する(ステップS38)。具体的には、推定結果補正部108は、以下の(7)式により、第1候補モデル式CDを用いた検証用サンプルS1のベリファイデータを導出する。
CD1verify=CD0verify+FUNC1(Grayverify) …(7)
【0080】
また、第1候補モデル式CDに基づいて、以下(8)式のとおり、第2集合のサンプルS3に係るCDデータ(学習用のデータ)が導出される。group2は第2集合を示している。このような学習用のデータは、第1世代(第1集合)の学習を利用したCDデータである。
CD1group2=CD0group2+FUNC1(Graygroup2) …(8)
【0081】
つづいて、処理前基板影響モデル作成部107は、第2集合の学習を実施し(ステップS39)、処理前基板影響モデルの候補である第2候補モデル式CD(第2候補)を作成する。第2候補モデル式CDは下記の(9)式に示される。
CD=CD+FUNC2(Gray)…(9)
上記(9)式において、CDは1回目の処理前基板学習補正後のCDデータ、FUNC2は2回目の処理前基板学習による補正量を表す関数である。
【0082】
そして、推定結果補正部108は、第2候補モデル式CDに基づいて、検証用サンプルS1に係るCDの推定値が補正されたベリファイデータを導出する(ステップS40)。具体的には、推定結果補正部108は、以下の(10)式により、第2候補モデル式CDを用いた検証用サンプルS1のベリファイデータを導出する。
CD2verify=CD1verify+FUNC2(Grayverify) …(10)
【0083】
つづいて、上述したS15~S20の処理が所定回数行われたか否かが判定され(ステップS21)、所定回数行われるまでステップS35~S40の処理が繰り返し行われる。このように、処理前基板影響モデル作成部107は、複数のサンプルSについて、第1集合と第2集合と検証用サンプルS1の集合(第3集合)とに分ける処理を、第1集合及び第2集合に含まれるサンプルSの組み合わせを変更しながら複数回繰り返す。
【0084】
そして、S35~S40の処理が所定回数行われると、処理前基板影響モデル作成部107は、各第1集合に関するモデル式に基づくベリファイデータ、及び、各第2集合に関するモデル式に基づくベリファイデータの全てを互いに比較する。処理前基板影響モデル作成部107は、例えば、ベリファイデータの変動値(例えば推定モデルを用いずに得られたCD値との差の3σ)の値が最小となる候補モデル式を、ベストモデルとして処理前基板影響モデルに決定する(ステップS42)。なお、処理前基板影響モデル作成部107は、既に作成済みの処理前基板影響モデルがある場合、新たな処理前基板影響モデルの変動値(例えば推定モデルを用いずに得られたCD値との差の3σ)と作成済みの処理前基板影響モデルの変動値とを比較してもよい。そして、変動値の改善が確認される場合に限り、新たな処理前基板影響モデルを採用してもよい。サンプルの変動因子が少なかった場合には、世代が進んだ学習モデルは過学習となるリスクがあるが、この場合には検証サンプルの変動値が大きくなるため、過去の(古い)学習モデルが選択されることになる。このことにより、安全に因子数を増加させることができる。
【0085】
[作用]
本実施形態に係る形状特性値推定装置(CD推定装置)は、対象膜に係る処理後のウェハWの表面に係る画像情報を含む処理後画像を取得する処理後画像取得部102を備える。形状特性値推定装置は、推定部104を備える。推定部104は、処理後画像に含まれるウェハWの表面の色に係る情報と当該ウェハWに形成された対象膜のCDとの相関に係る、CD推定モデルを、処理後画像に対して適用することで、対象膜のCDの推定を行う。形状特性値推定装置は、処理前基板影響モデル作成部107を備える。処理前基板影響モデル作成部107は、推定部104による対象膜のCDの推定結果とCD推定モデルを用いずに取得されるCDとの差分と、対象膜に係る処理前のウェハWである処理前基板の色に係る情報と、の相関に係るモデルである処理前基板影響モデルを作成する。形状特性値推定装置は、処理前基板影響モデルに基づいて、推定部104による対象膜のCDの推定結果を補正する推定結果補正部108を備える。処理前基板影響モデル作成部107は、複数の処理後画像について、第1集合と第2集合とに分けることを実行するように構成されている。処理前基板影響モデル作成部107は、第1集合に基づいて処理前基板影響モデルの候補である第1候補を作成すると共に、第2集合に基づいて処理前基板影響モデルの候補である第2候補を作成することを実行するように構成されている。処理前基板影響モデル作成部107は、第1候補に基づいて推定結果補正部108が推定結果を補正した結果、及び、第2候補に基づいて推定結果補正部108が推定結果を補正した結果、を比較する。これにより、処理前基板影響モデルが決定される。
【0086】
本実施形態に係る形状特性値推定装置では、まず、CD推定モデルを用いて対象膜のCDが推定される。次に、対象膜のCDの推定結果とCD推定モデルを用いずに取得される対象膜のCDとの差分と、処理前画像に含まれる処理前基板の色に係る情報と、の相関に係るモデルである処理前基板影響モデルが作成される。そして、この処理前基板影響モデルに基づいて、推定結果が補正される。このような構成とすることで、処理前基板の色等に由来する推定結果の変動成分を処理前基板影響モデルに基づいて補正することができる。そのため、ウェハWに形成された対象膜の形状に係る特性値(例えばCD)をより精度良く推定することができる。そして、本実施形態に係る形状特性値推定装置では、処理後画像が第1集合と第2集合とに分けられ、それぞれの集合毎に処理前基板影響モデルの候補が作成される。そして、推定部104による形状特性値の推定結果が、処理前基板影響モデルの候補毎に補正され、候補毎の補正結果が比較されることにより、適切な処理前基板影響モデルが選択(決定)される。複数の処理後画像から処理前基板影響モデルが作成される場合において、学習用サンプルが過度に多い場合には、過剰適合(学習用サンプルに対しては適合できているが未知データに対して適合できていない状態)が生じる場合がある。この場合、処理前基板影響モデルの補正精度が低下してしまう。この点、複数の処理後画像がグループ分けされ、グループ毎に学習が行われて処理前基板影響モデルの候補が作成されることにより、一度に学習される因子数が小さくなり、過剰適合を抑制することができる。そして、処理前基板影響モデルの候補毎の補正結果が比較されて適切な処理前基板影響モデルが選択(決定)されることによって、補正精度の高い処理前基板影響モデルを作成することができる。このようにして作成された処理前基板影響モデルにより推定結果が補正されることにより、ウェハWに形成された対象膜の形状に係る特性値を精度良く推定することができる。
【0087】
処理前基板影響モデル作成部107は、複数の処理後画像について、第1集合と第2集合と第3集合とに分ける。処理前基板影響モデル作成部107は、第1候補に基づいて推定結果補正部108が第3集合に係る推定結果を補正した結果、及び、第2候補に基づいて推定結果補正部108が第3集合に係る推定結果を補正した結果、を比較する。これにより、処理前基板影響モデルが決定される。このように、複数の処理後画像から学習用サンプルと検証用サンプルとが準備されることにより、一度に学習される因子数を小さくしながら、検証用サンプルを効率的且つ適切に準備することができる。
【0088】
処理前基板影響モデル作成部107は、複数の処理後画像について、第1集合と第2集合と第3集合とに分ける処理を、第1集合及び第2集合に含まれる処理後画像の組み合わせを変更しながら複数回繰り返す。そして、処理前基板影響モデル作成部107は、各第1集合に関する推定結果を補正した結果、及び、各第2集合に関する推定結果を補正した結果、の全てを互いに比較することにより、処理前基板影響モデルを決定する。このように、各集合に含まれるサンプルを変えながら、第1候補及び第2候補がそれぞれ複数パターン作成され、各候補に基づく補正結果が互いに比較されることによって、複数の補正結果に基づき、より適切な処理前基板影響モデルを選択することができる。すなわち、取り込み因子数を増加させながら、より高精度に補正を行う処理前基板影響モデルを選択することができる。
【0089】
処理前基板影響モデル作成部107は、処理後画像の枚数が所定値以上である場合に限り、複数の処理後画像を第1集合と前記第2集合とに分ける処理を行ってもよい。処理前基板影響モデル作成部107は、処理後画像の枚数が所定値よりも少ない場合には、第1集合と第2集合とに分ける処理を行わずに処理前基板影響モデルを作成してもよい。処理後画像の枚数が少ない場合に上述したグループ分けが行われると、モデル化できない因子が発生する過少適合が生じるおそれがある。この点、処理後画像の枚数が所定値以上である場合に限り上述したグループ分けが行われて学習が行われ、処理後画像の枚数が所定値よりも少ない場合にはグループ分けが行われずに学習が行われることにより、過剰適合及び過少適合の双方を抑制することができる。これにより、補正精度の高い処理前基板影響モデルを作成し、ウェハWに形成された対象膜の形状に係る特性値を精度良く推定することができる。
【0090】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、本開示は上記例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0091】
例えば、上記の実施形態では、「形状特性値」が線幅等の限界寸法(CD)である場合について説明したが、「形状特性値」は対象膜の膜厚であってもよい。この場合、対象膜に係る処理とは、基板への対象膜の塗布であり、処理後画像とは、対象膜が塗布された基板の表面に係る画像である。すなわち、CD推定の場合には、処理後画像とは現像処理後の、対象膜が一部除去された状態の画像であったが、膜厚推定の場合には、処理後画像とは現像処理前の、対象膜が除去されていない状態の画像である。
【符号の説明】
【0092】
1…基板処理システム、2…塗布・現像装置(形状特性値推定装置)、3…露光装置、4…キャリアブロック、5…処理ブロック、6…インタフェースブロック、11~14…処理モジュール、30…筐体、31…保持部、32…リニア駆動部、33…撮像部、34…反射部、35…カメラ、36…ハーフミラー、37…光源、100…制御装置、101…処理前画像取得部、102…処理後画像取得部、103…画像情報保持部、104…推定部、105…推定モデル保持部、106…形状特性値情報保持部、107…処理前基板影響モデル作成部、108…推定結果補正部。
図1
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