(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172979
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】異物検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/72 20060101AFI20241205BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20241205BHJP
G01V 3/10 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01N27/72
G01R33/02 Q
G01V3/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091070
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大三
【テーマコード(参考)】
2G017
2G053
2G105
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA03
2G017AC07
2G017AC09
2G017AD55
2G017BA03
2G017BA09
2G053AA13
2G053AB01
2G053BA03
2G053BB03
2G053BC10
2G053BC20
2G053CA04
2G053CA17
2G053CB05
2G053CB24
2G053DA01
2G105AA01
2G105BB05
2G105DD02
2G105EE02
2G105HH05
(57)【要約】
【課題】磁気センサから出力される信号に基づいて異物を検出する異物検出装置において、出力される信号の強度を大きくする。
【解決手段】異物検出装置は、第1方向に一軸磁気異方性を有し第1方向と交差する第2方向に向かうバイアス磁界が印加され磁気インピーダンス効果により磁界を感受する第1感受素子を含む第1磁気センサと、第1磁気センサに対し第1方向に交差する方向に並んで配置され、第2方向に向かう当該第1磁気センサと同じ向きのバイアス磁界が印加され磁気インピーダンス効果により磁界を感受する第2感受素子を含む第2磁気センサとを有し、第1磁気センサおよび第2磁気センサから出力された信号の差分に基づいて、第1磁気センサと第2磁気センサとが並ぶ方向に移動する対象物に含まれる異物を検出する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に一軸磁気異方性を有し当該第1方向と交差する第2方向に向かうバイアス磁界が印加され磁気インピーダンス効果により磁界を感受する第1感受素子を含む第1磁気センサと、
前記第1磁気センサに対し前記第1方向に交差する方向に並んで配置され、前記第2方向に向かう当該第1磁気センサと同じ向きのバイアス磁界が印加され磁気インピーダンス効果により磁界を感受する第2感受素子を含む第2磁気センサとを有し、
前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサから出力された信号の差分に基づいて、当該第1磁気センサと当該第2磁気センサとが並ぶ方向に移動する対象物に含まれる異物を検出する異物検出装置。
【請求項2】
前記第1磁気センサと前記第2磁気センサとは、予め定められた距離を介して並んで配置され、
前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサから出力された信号の差分に基づいて、前記距離に対して10分の1以下の外径を有する微小な異物を検出する請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項3】
前記第1磁気センサと前記第2磁気センサとの距離が、1mm以上20mm以下の範囲である請求項2に記載の異物検出装置。
【請求項4】
前記第1磁気センサは、前記第1感受素子に対向し、当該第1感受素子に外部からの磁力線を集束させる第1集束部材をさらに含み、当該第1集束部材を介して当該第1感受素子にバイアス磁界が印加されており、
前記第2磁気センサは、前記第2感受素子に対向し、当該第2感受素子に外部からの磁力線を集束させる第2集束部材をさらに含み、当該第2集束部材を介して当該第2感受素子にバイアス磁界が印加されている請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項5】
前記第1磁気センサは、前記第1感受素子に対向し、当該第1感受素子を透過した磁力線を外部に発散させる第1発散部材をさらに含み、前記第1集束部材および当該第1発散部材を介して当該第1感受素子にバイアス磁界が印加されており、
前記第2磁気センサは、前記第2感受素子に対向し、当該第2感受素子を透過した磁力線を外部に発散させる第2発散部材をさらに含み、前記第2集束部材および当該第2発散部材を介して当該第2感受素子にバイアス磁界が印加されている請求項4に記載の異物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1には、基体の表面あるいは内部に存在する金属異物に由来する交流磁界の磁気変動を、磁気センサにより検出する金属異物検出装置が開示されている。この金属異物検出装置は、キャンセルコイルにより交流磁界に対し所定の磁界を発生させることで、金属異物に由来する磁気変動以外のノイズ成分を打ち消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気センサから出力される信号に基づいて異物を検出する異物検出装置では、微小な異物の検出精度を高めるために、出力される信号の信号強度を大きくすることが好ましい。
本発明は、磁気センサから出力される信号に基づいて異物を検出する異物検出装置において、出力される信号の強度を大きくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、下記(1)~(5)に係る発明が提供される。
(1)第1方向に一軸磁気異方性を有し当該第1方向と交差する第2方向に向かうバイアス磁界が印加され磁気インピーダンス効果により磁界を感受する第1感受素子(感受素子50)を含む第1磁気センサ(第1磁気センサ40A)と、
前記第1磁気センサに対し前記第1方向に交差する方向に並んで配置され、前記第2方向に向かう当該第1磁気センサと同じ向きのバイアス磁界が印加され磁気インピーダンス効果により磁界を感受する第2感受素子(感受素子50)を含む第2磁気センサ(第2磁気センサ40B)とを有し、
前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサから出力された信号の差分に基づいて、当該第1磁気センサと当該第2磁気センサとが並ぶ方向に移動する対象物(対象物9)に含まれる異物(異物91)を検出する異物検出装置。
(2)前記第1磁気センサと前記第2磁気センサとは、予め定められた距離(距離D)を介して並んで配置され、
前記第1磁気センサおよび前記第2磁気センサから出力された信号の差分に基づいて、前記距離に対して10分の1以下の外径を有する微小な異物を検出する(1)に記載の異物検出装置。
(3)前記第1磁気センサと前記第2磁気センサとの距離が、1mm以上20mm以下の範囲である(2)に記載の異物検出装置。
(4)前記第1磁気センサは、前記第1感受素子に対向し、当該第1感受素子に外部からの磁力線を集束させる第1集束部材(集束部材41)をさらに含み、当該第1集束部材を介して当該第1感受素子にバイアス磁界が印加されており、
前記第2磁気センサは、前記第2感受素子に対向し、当該第2感受素子に外部からの磁力線を集束させる第2集束部材(集束部材41)をさらに含み、当該第2集束部材を介して当該第2感受素子にバイアス磁界が印加されている(1)~(3)に記載の異物検出装置。
(5)前記第1磁気センサは、前記第1感受素子に対向し、当該第1感受素子を透過した磁力線を外部に発散させる第1発散部材(発散部材42)をさらに含み、前記第1集束部材および当該第1発散部材を介して当該第1感受素子にバイアス磁界が印加されており、
前記第2磁気センサは、前記第2感受素子に対向し、当該第2感受素子を透過した磁力線を外部に発散させる第2発散部材(発散部材42)をさらに含み、前記第2集束部材および当該第2発散部材を介して当該第2感受素子にバイアス磁界が印加されている(4)に記載の異物検出装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、磁気センサから出力される信号に基づいて磁性体からなる異物を検出する異物検出装置において、出力される信号の強度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態が適用される異物検出装置を説明する概略図である。
【
図2】磁気センサ部の構成を説明する概略図であって、
図1に示した検出部における磁気センサ部の拡大図である。
【
図3】(a)~(b)は、それぞれ、
図2に示した磁気センサ部における第1磁気センサおよび第2磁気センサをIII方向から見た図である。
【
図4】(a)~(b)は、本実施形態が適用される感受素子の一例を説明する図である。
【
図5】(a)~(b)は、第1磁気センサおよび第2磁気センサにおいて、第1磁石~第4磁石によって発生する磁力線の状態を示した図である。
【
図6】第1磁気センサおよび第2磁気センサの感受素子における感受部の長手方向に印加された磁界と感受素子のインピーダンスZとの関係を示す図である。
【
図7】本実施形態の磁気センサ部の回路構成の一例を示した図である。
【
図8】本実施形態が適用される磁気センサ部のブリッジ回路部から出力される出力信号Vabの時間変化の一例を示したグラフである。
【
図9】(a)~(b)は、第1磁気センサおよび第2磁気センサと、移動機構により移動される対象物に含まれる異物との位置関係の一例を説明する図である。
【
図10】第1磁気センサの感受素子と第2磁気センサの感受素子とに対して、反対向きのバイアス磁界が印加されている場合に、磁気センサ部のブリッジ回路部から出力される出力信号Vabの時間変化の一例を示したグラフである。
【
図11】(a)~(b)は、出力信号Vabにおけるノイズの大きさを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(異物検出装置1の構成)
図1は、本実施形態が適用される異物検出装置1を説明する概略図である。本実施形態の異物検出装置1は、予め定められた移動方向に沿って移動する対象物9に含まれる、磁性体からなる異物91を検出する。なお、以下では、対象物9に含まれる、磁性体からなる異物91を、単に異物91と表記する場合がある。
異物検出装置1は、対象物9を予め定められた移動方向に沿って移動させる移動機構10と、対象物9に含まれる異物91を着磁する着磁部20と、着磁部20により着磁された異物91を検出する検出部30とを備えている。本実施形態の異物検出装置1では、着磁部20と検出部30とは、移動機構10による対象物9の移動方向に並んで配置されている。
【0009】
移動機構10は、所謂ベルトコンベアにより構成されている。移動機構10は、一対のローラ11、12と、ローラ11、12に巻き回されるベルト15とを含む。移動機構10では、一方のローラ11が不図示の駆動手段により予め定められた回転速度で回転駆動される。これにより、ベルト15が、
図1に示す矢印A方向に循環移動する。
移動機構10は、循環移動するベルト15により、ベルト15上に載せられた対象物9を、
図1における左側から右側に向けて予め定められた移動速度で移動させる。これにより、対象物9は、着磁部20および検出部30に順に案内される。
【0010】
移動機構10による対象物9の移動速度(すなわち、対象物9に含まれる異物91の移動速度)は、検出部30の後述する磁気センサ部31の構成等によっても異なるが、例えば、30mm/秒以上500mm/秒以下の範囲とすることができる。
【0011】
着磁部20は、移動機構10により移動される対象物9に含まれる異物91を着磁する。
着磁部20は、移動機構10のベルト15を挟んで対向して配置される一対の永久磁石21、22を含む。着磁部20は、移動機構10により移動される対象物9が一対の永久磁石21、22の間を通過する際に、対象物9に含まれる異物91を着磁する。
具体的には、
図1に示すように、一対の永久磁石21、22は、N極(例えば、永久磁石21のN極)とS極(例えば、永久磁石22のS極)とが、移動機構10のベルト15を挟んで対向するように配置される。そして、着磁部20では、永久磁石21と永久磁石22との間に、ベルト15を厚さ方向に横切る磁力線が発生する。これにより、着磁部20では、ベルト15に載せられて移動する対象物9に含まれる異物91が、磁力線によって着磁される。
なお、着磁部20は、対象物9に含まれる異物91を着磁するための磁力線を発生させるものであれば、永久磁石21、22の配置は
図1に示したものに限られない。また、永久磁石21、22に変えて電磁石を用いてもよい。
【0012】
検出部30は、移動機構10により移動される対象物9に含まれている異物91であって、着磁部20により着磁された異物91を検出する。
なお、本実施形態の検出部30により検出可能な異物91の大きさは、後述する磁気センサ部31の構成や異物91の材質等によっても異なるが、10μm以上の範囲である。
【0013】
本実施形態の検出部30は、複数の磁気センサ(後述する第1磁気センサ40A、第2磁気センサ40B)により対象物9に含まれる異物91に応じた電気信号を出力する磁気センサ部31を含む。また、検出部30は、磁気センサ部31および、磁気センサ部31と対向する部分のベルト15を被覆し、外部から遮蔽する遮蔽部33を備えている。さらに、検出部30は、磁気センサ部31の制御を行う制御部35を備えている。
【0014】
遮蔽部33は、箱状の形状を有しており、その内部に磁気センサ部31およびベルト15の一部を収容する。また、遮蔽部33には、磁気センサ部31に対向するベルト15の移動方向における上流側および下流側に、ベルト15およびベルト15に載せられた対象物9が通過するための開口331、332が設けられている。
遮蔽部33は、例えば、鉄やステンレス鋼等の磁気シールド材料により構成される。そして、遮蔽部33は、遮蔽部33の内部空間および遮蔽部33に収容される磁気センサ部31等を、外部磁界から遮蔽する。
【0015】
制御部35は、磁気センサ部31の第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bから出力された電気信号に基づいて、対象物9に異物91が存在するか否かを判断する。詳細については後述するが、本実施形態の制御部35は、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bから出力された電気信号の差分(後述するブリッジ回路部70の出力信号Vab)に基づいて、対象物9に異物91が存在するか否かを判断する。
【0016】
制御部35は、例えば、CPU(Central Processing Unit)(不図示)、ROM(Read Only Memory)(不図示)、RAM(Random Access Memory)(不図示)等を有している。ROMには、CPUにより実行される基本プログラム(オペレーションシステム)や各種の設定等が記憶されている。CPUは、RAMを作業エリアに使用し、ROMや、半導体メモリやHDD(Hard Disk Drive)等の記憶部(不図示)から読み出したアプリケーションプログラムを実行する。
【0017】
(磁気センサ部31の構成)
続いて、検出部30が備える磁気センサ部31の構成について説明する。
図2は、磁気センサ部31の構成を説明する概略図であって、
図1に示した検出部30における磁気センサ部31の拡大図である。
図2において、紙面の奥行き方向(奥から手前に向かう方向)をx方向、紙面の上下方向(下から上に向かう方向)をy方向、紙面の横方向(左から右に向かう方向)をz方向と表記する。
【0018】
図3(a)~(b)は、それぞれ、
図2に示した磁気センサ部31における第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40BをIII方向から見た図である。付言すると、
図3(a)~(b)は、磁気センサ部31における第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bを、移動機構10による対象物9の移動方向の上流側から見た図に対応する。なお、
図3では、紙面の上下方向(下から上に向かう方向)がx方向、紙面の横方向(右から左に向かう方向)がy方向、紙面の奥行き方向(手前から奥に向かう方向)がz方向となるように、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bを示している。また、
図3(a)~(b)には、後述する第1磁石61~第4磁石64により発生する磁力線を矢印で示している。
なお、本実施形態の磁気センサ部31において、x方向が第1方向の一例であり、第2方向がy方向の一例である。
【0019】
磁気センサ部31は、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bを備える。第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとは、z方向に並んで配置されている。付言すると、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとは、移動機構10(
図1参照)による対象物9(
図1参照)の移動方向に並んで配置されている。本実施形態では、z方向が、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとが並ぶ方向の一例である。
本実施形態の磁気センサ部31では、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとは、同じ構造を有している。以下では、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとが共通して有する構成については、同じ符号を用いて説明する。
【0020】
なお、図示は省略するが、検出部30は、移動機構10により移動される対象物9がx方向に長い形状を有している場合や、複数の対象物9がx方向に複数並んでいる場合には、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとを含む磁気センサ部31を、x方向に複数並べて配置してもよい。このような構成を採用することで、検出部30では、複数の磁気センサ部31によって、x方向に長い形状を有する対象物9に含まれる異物91や、x方向に並ぶ複数の対象物9に含まれる異物91を検出することが可能となる。
【0021】
第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bは、感受素子50と、外部空間からの磁力線を感受素子50に集束する集束部材41と、感受素子50を透過した磁力線を発散させる発散部材42とを備えている。そして、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bでは、集束部材41、感受素子50および発散部材42がこの順に配列されている。この例では、集束部材41、感受素子50および発散部材42は、y方向に並んで配列されている。
さらにまた、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bは、感受素子50に対して予め定められたバイアス磁界Hbを印加する4個の磁石(第1磁石61、第2磁石62、第3磁石63、第4磁石64)を有している。
ここでは、第1磁気センサ40Aは、
図3(a)に示す一点鎖線で囲んだ部分をいい、第2磁気センサ40Bは、
図3(b)に示す一点鎖線で囲んだ部分をいい、それら以外の部分を外部空間または外部と表記する場合がある。
【0022】
磁気センサ部31において、第1磁気センサ40Aの感受素子50が第1感受素子の一例であり、第1磁気センサ40Aの集束部材41が第1集束部材の一例であり、第1磁気センサ40Aの発散部材42が第1発散部材の一例である。
また、磁気センサ部31において、第2磁気センサ40Bの感受素子50が第2感受素子の一例であり、第2磁気センサ40Bの集束部材41が第2集束部材の一例であり、第2磁気センサ40Bの発散部材42が第2発散部材の一例である。
【0023】
感受素子50は、磁気インピーダンス効果によって、y方向における磁界または磁界の変化を感受する。感受素子50の構成については、後段にて詳細に説明する。
【0024】
集束部材41は、感受素子50に対向する対向部411と、対向部411よりx方向の幅が広い幅広部412とを備えている。つまり、集束部材41は、平面形状において、対向部411が縦棒、幅広部412が横棒となるT字状である。
そして、集束部材41は、z方向において予め定められた一定の厚さを有している。集束部材41のz方向の厚さは、1mm以上5mm以下の範囲とすることができる。
【0025】
集束部材41において、対向部411の感受素子50に対向する部分のx方向の幅は、感受素子50のx方向の幅と同程度とすることができ、例えば4.2mmである。また、集束部材41において、対向部411のy方向の長さは、例えば4.5mmである。
さらに、集束部材41において、幅広部412のx方向の幅は、例えば、13mmであり、y方向の長さは、例えば2mmである。
なお、これらの値は一例であって、他の値であってもよい。
【0026】
発散部材42は、感受素子50に対向する対向部421と、対向部421よりx方向の幅が広い幅広部422とを備えている。つまり、発散部材42は、平面形状において、集束部材41と同様に、平面形状がT字状である。
そして、発散部材42は、z方向において予め定められた一定の厚さを有している。発散部材42のz方向の厚さは、1mm以上5mm以下の範囲とすることができる。
【0027】
発散部材42において、対向部421の感受素子50に対向する部分のx方向の幅は、感受素子50のx方向の幅と同程度とすることができ、例えば4.2mmである。また、発散部材42において、対向部421のy方向の長さは、例えば4.5mmである。
さらに、発散部材42において、幅広部422のx方向の幅は、例えば、13mmであり、y方向の長さは、例えば2mmである。
なお、これらの値は一例であって、他の値であってもよい。
【0028】
付言すれば、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bでは、y方向において、集束部材41の幅広部412、対向部411、感受素子50、発散部材42の対向部421、幅広部422が、この順で配列されている。そして、集束部材41と発散部材42とは、平面形状が同じT字状で、y方向において感受素子50を挟んで対称となるように配置されている。
【0029】
なお、
図3に示す集束部材41では、対向部411は、幅広部412におけるx方向の中心部に設けられている。しかし、対向部411は、幅広部412の中心部に設けられなくてもよく、幅広部412のy方向における一端または他端に設けられてもよい。すなわち、集束部材41は、平面形状がL字型であってもよい。発散部材42も同様である。
【0030】
集束部材41および発散部材42は、軟磁性体で構成されている。軟磁性体とは、磁界によって容易に磁化されるが、磁界を取り除くと速やかに磁化がないか、または磁化が小さい状態に戻る、いわゆる保磁力が小さい材料である。ここでは、集束部材41および発散部材42は、一例としてフェライトで構成されている。このようなフェライトとしては、材質がMnZnで、初透磁率が2500±25%、飽和磁束密度Bsが420mTのものが挙げられる。
また、集束部材41の対向部411と幅広部412とは、一体で構成され、発散部材42の対向部421と幅広部422とは、一体で構成されている。
【0031】
図3に示すように、外部空間からの磁力線は、
図3における右側(-y方向側)から集束部材41の幅広部412に入り、幅広部412から対向部411に進むにつれて集束され、対向部411から出る。そして、感受素子50を透過した磁力線は、発散部材42の対向部421に入る。そして、磁力線は、対向部421から幅広部422に進むにつれて発散し、幅広部422から、外部空間に出る。つまり、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bでは、外部空間からの磁力線が、集束部材41により集束され、磁力線の密度である磁束密度が大きくなって感受素子50を透過するようにしている。なお、
図3には、外部空間の磁界(以下、外部磁界と表記する。)を符号Hで示している。
【0032】
そして、発散部材42は、集束部材41と同じ平面形状を有し、y方向において感受素子50を挟んで対称に配置されている。発散部材42は、集束部材41で集束された磁力線が、集束された状態で感受素子50を透過するようにするために設けられている。つまり、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bでは、発散部材42を設けることで、磁力線が、感受素子50を並行に透過しやすくなる。
なお、磁気センサ部31において必要な感度が得られれば、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bは、発散部材42を備えなくてもよい。
【0033】
本実施形態の磁気センサ部31では、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bは、磁気センサ部31と移動機構10のベルト15との間の空間のうち、集束部材41における幅広部412が対向する領域の磁界を主に感受する。
付言すると、本実施形態の磁気センサ部31では、第1磁気センサ40Aは、第1磁気センサ40Aの集束部材41における幅広部412が対向する領域の磁界を主に感受する一方で、第2磁気センサ40Bの集束部材41における幅広部412が対向する領域の磁界はほとんど感受しない。同様に、第2磁気センサ40Bは、第2磁気センサ40Bの集束部材41における幅広部412が対向する領域の磁界を主に感受する一方で、第1磁気センサ40Aの集束部材41における幅広部412が対向する領域の磁界はほとんど感受しない。
以下では、磁気センサ部31と移動機構10のベルト15との間の空間のうち、第1磁気センサ40Aが主に磁界を感受する領域を、第1磁気センサ40Aによる感受領域S1と表記し、第2磁気センサ40Bが主に磁界を感受する領域を、第2磁気センサ40Bによる感受領域S2と表記する場合がある。
【0034】
本実施形態の磁気センサ部31では、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bからベルト15までの距離が、1mm以上10mm以下であることが好ましい。第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bからベルト15までの距離が過度に長い場合、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bが、ベルト15により移動する対象物9に含まれる異物91による磁界の変化を感受しにくくなる場合がある。また、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bからベルト15までの距離が過度に短い場合、異物91を検出可能な対象物9の大きさに制限が生じやすい。
なお、本実施形態において、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bからベルト15までの距離とは、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bの集束部材41における幅広部412からベルト15の表面までのy方向に沿った距離である。
【0035】
(第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとの関係)
図2に戻り、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとの関係について説明する。
本実施形態の磁気センサ部31では、z方向(すなわち、移動機構10による対象物9の移動方向)に沿った第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとの距離D(以下、単に第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとの距離Dと表記する。)は、検出部30により検出することが想定される異物91の外径に対して、十分に大きいことが好ましい。
【0036】
より具体的には、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとの距離Dは、検出部30により検出することが想定される異物91の外径に対し、10倍以上であることが好ましく、30倍以上であることがより好ましい。
これにより、移動機構10により移動される対象物9に含まれる異物91が、第1磁気センサ40Aによる感受領域S1と、第2磁気センサ40Bによる感受領域S2とに跨って存在しにくくなる。そして、検出部30において、移動機構10により移動される対象物9に含まれる異物91による磁界の変化を、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとで同時に感受しにくくなる。
この場合、異物検出装置1では、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとの距離Dに対し、10分の1以下、より好ましくは30分の1以下の外径を有する微小な異物91を検出することが可能となる。
【0037】
また、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとの距離Dは、検出部30により検出することが想定される異物91の外径に対し、400倍以下であることが好ましく、200倍以下であることがより好ましく、100倍以下であることがさらに好ましい。
第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとの距離Dが過度に大きい場合には、磁気センサ部31が大型化しやすくなる。
【0038】
例えば、検出部30により外径が30μm程度の異物91を検出することを想定する場合、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとの距離Dは、1mm以上20mm以下とすることが好ましく、5mm以上15mm以下とすることがより好ましい。
【0039】
なお、本実施形態において、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとの距離Dとは、
図2に示すように、第1磁気センサ40Aの集束部材41と第2磁気センサ40Bの集束部材41とのz方向に沿った距離(間隔)を意味する。言い換えると、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとの距離Dとは、移動機構10による対象物9の移動方向に沿った距離(間隔)を意味する。
【0040】
(感受素子50)
続いて、磁気センサ部31の第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bが備える感受素子50について説明する。
図4(a)~(b)は、本実施形態が適用される感受素子50の一例を説明する図である。
図4(a)は、感受素子50の平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のIVB-IVB線での断面図である。
図4(a)において、紙面の上下方向(下から上に向かう方向)がx方向、紙面の横方向(右から左に向かう方向)がy方向、紙面の奥行き方向(手前側から奥側に向かう方向)がz方向である。
【0041】
図4(b)に示すように、感受素子50は、非磁性の基板505上に、軟磁性体(軟磁性体層)で構成される感受回路500が積層された構造を有している。本実施形態の感受素子50では、基板505と感受回路500とがz方向に積層されている。付言すると、z方向が感受素子50の厚さ方向である。
基板505は、例えばガラス、サファイアといった酸化物基板やシリコン等の半導体基板、あるいは、アルミニウム、ステンレススティール、ニッケルリンメッキを施した金属等の金属基板等が挙げられる。
なお、例えば基板505として金属基板等の感受回路500と比べて電気抵抗が低い材料を用いる場合には、感受回路500が設けられる側の基板505の表面に、基板505と感受回路500とを絶縁する絶縁層を設けることが好ましい。
【0042】
感受回路500は、複数の感受部51と、隣接する感受部51をつづら折りに直列接続する接続部52と、直列接続された感受部51の一方の端部と他方の端部とに設けられた端子部53とを備えている。
【0043】
感受部51は、平面形状が長手方向と短手方向とを有する矩形状である。
図4(a)に示すように、感受部51は、y方向を長手方向、x方向を短手方向とする。また、この例では、6個の感受部51が、x方向に並列に配置されている。
それぞれの感受部51は、長手方向の長さが1mm~2mm、短手方向の幅が50μm~150μmである。また、隣接する感受部51同士の間隔は、50μm~150μmである。
なお、感受部51の長さおよび幅、並列させる個数等の上記した数値は一例であって、感受する磁界の値や用いる軟磁性体材料等によって変更してもよい。
【0044】
それぞれの感受部51は、長手方向に交差する方向、例えば長手方向に直交する短手方向に一軸磁気異方性が付与されている。なお、長手方向に交差する方向とは、長手方向に対して45°を越えた角度を有すればよい。これにより、感受部51が磁気インピーダンス効果を示す。すなわち、感受部51が磁気インピーダンス効果素子である。
また、詳細については後述するが、それぞれの感受部51には、第1磁石61~第4磁石64によって予め定められた大きさのバイアス磁界Hbが印加されている。
【0045】
接続部52は、隣接する感受部51の端部間に設けられ、隣接する感受部51をつづら折りに直列接続する。
図4(a)に示す感受回路500では、6個の感受部51が並列に配置されているため、接続部52は5個である。接続部52の数は、感受部51の数によって異なる。例えば、感受部51が3個であれば、接続部52は2個である。
【0046】
端子部53は、接続部52で接続されていない感受部51の端部にそれぞれ設けられている。端子部53は、電線等を接続しうる大きさであればよい。なお、本実施形態の感受回路500は、感受部51が6個であるため、2個の端子部53はともに、
図4(a)において左側に設けられている。感受部51の数が奇数の場合には、2個の端子部53を左右に分けて設ければよい。
【0047】
感受回路500の感受部51、接続部52および端子部53を構成する軟磁性体としては、Coを主成分とした合金に高融点金属Nb、Ta、W等を添加したアモルファス合金(以下では、感受回路500を構成するCo合金と表記する。)を用いるのがよい。感受回路500を構成するCo合金としては、CoNbZr、CoFeTa、CoWZr等が挙げられる。このような感受回路500を構成するCo合金は、例えば、スパッタリング法により形成することができる。
【0048】
そして、感受回路500の感受部51、接続部52および端子部53は、一層の軟磁性体で一体に構成されている。軟磁性体は、導電性であるので、一方の端子部53から他方の端子部53に、電流を流すことができる。
なお、接続部52および端子部53の一方または両方を、導電体で構成してもよい。このような接続部52、端子部53を構成する導電体としては、例えば、Ag、Cu、Au、Al等が挙げられる。また、接続部52と端子部53とを異なる導電体で構成してもよい。
【0049】
(第1磁石61~第4磁石64)
図3(a)~(b)に戻り、磁気センサ部31の第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bが備える第1磁石61~第4磁石64について説明する。
第1磁石61~第4磁石64は、例えば、ネオジム磁石やフェライト磁石等の永久磁石により構成される。ここで、永久磁石とは、外部から磁界や電流の供給を受けることなく磁化を発生させる材料である。
第1磁石61~第4磁石64を構成する永久磁石の磁束密度は、感受素子50に印加するバイアス磁界Hbの大きさ等によっても異なるが、例えば、20mT~500mT程度とすることができる。
【0050】
第1磁石61~第4磁石64は、集束部材41の幅広部412におけるx方向の両端部、および、発散部材42の幅広部422におけるx方向の両端部に、それぞれ設けられている。
具体的には、第1磁石61は、集束部材41の幅広部412におけるx方向の端部において、感受素子50側に接触して設けられている。また、第1磁石61は、N極が集束部材41の幅広部412に接触するように配置されている。
第2磁石62は、集束部材41の幅広部412における-x方向の端部において、感受素子50側に接触して設けられている。また、第2磁石62は、N極が集束部材41の幅広部412に接触するように配置されている。
【0051】
第3磁石63は、発散部材42の幅広部422におけるx方向の端部において、感受素子50側に接触して設けられている。また、第3磁石63は、S極が発散部材42の幅広部422に接触するように配置されている。
第4磁石64は、発散部材42の幅広部422における-x方向の端部において、感受素子50側に接触して設けられている。また、第4磁石64は、S極が発散部材42の幅広部422に接触するように配置されている。
【0052】
付言すると、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bでは、第1磁石61のS極と第3磁石63のN極とが、集束部材41の幅広部412と発散部材42の幅広部422との間隙を介して、y方向に対向している。
同様に、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bでは、第2磁石62のS極と第4磁石64のN極とが、集束部材41の幅広部412と発散部材42の幅広部422との間隙を介して、y方向に対向している。
【0053】
ここで、本実施形態の磁気センサ部31では、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとで、第1磁石61~第4磁石64が設けられる位置、および第1磁石61~第4磁石64における磁極(S極、N極)が向く方向が互いに等しくなっている。
【0054】
第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bでは、第1磁石61~第4磁石64のN極からS極へ向かう磁力線が生じる。これにより、第1磁気センサ40Aの感受素子50および第2磁気センサ40Bの感受素子50に対して、予め定められたバイアス磁界Hbが印加される。
図5(a)~(b)は、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bにおいて、第1磁石61~第4磁石64によって発生する磁力線の状態を示した図である。
【0055】
図5(a)~(b)に示すように、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bでは、第1磁石61のN極から出た磁力線が、集束部材41の幅広部412から対向部411を経て、感受素子50を透過する。同様に、第2磁石62のN極から出た磁力線が、集束部材41の幅広部412から対向部411を経て、感受素子50を透過する。
そして、感受素子50を透過した磁力線は、発散部材42の対向部421から幅広部422を経て、第3磁石63および第4磁石64のS極に到達する。
また、第3磁石63のN極から出た磁力線は、発散部材42の幅広部422と集束部材41の幅広部412との間隙を経て、第1磁石61のS極に到達する。同様に、第4磁石64のN極から出た磁力線は、発散部材42の幅広部422と集束部材41の幅広部412との間隙を経て、第2磁石62のS極に到達する。
【0056】
以上により、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bでは、第1磁石61~64からの磁力線が、集束部材41および発散部材42を経由して、感受素子50を透過する。より具体的には、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bでは、y方向に向かう磁力線が感受素子50のそれぞれの感受部51を通過する。
これにより、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bでは、感受素子50のそれぞれの感受部51に対して、予め定められた大きさのバイアス磁界Hbが印加される。付言すると、本実施形態の磁気センサ部31では、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに、同じ向きのバイアス磁界Hbが印加されている。この例では、
図5(a)~(b)に示すように、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに、y方向に向かうバイアス磁界Hbが印加されている。
【0057】
(第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bの作用)
続いて、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bの作用について説明する。上述したように、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとは、互いに等しい構成を有することから、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとは同様の作用を奏する。
図6は、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bの感受素子50における感受部51の長手方向(y方向)に印加された磁界と感受素子50のインピーダンスZとの関係を示す図である。
図6において、横軸が磁界H、縦軸がインピーダンスZである。感受素子50のインピーダンスZは、2個の端子部53間に高周波電流を流すことにより測定される。
【0058】
図6に示すように、感受素子50のインピーダンスZは、磁界Hが0の場合(H=0)を境界としてプラス方向またはマイナス方向に磁界Hの絶対値が大きくなるに従い、増加、減少と変化している。また、磁界Hの変化に対するインピーダンスZの変化量(すなわち、グラフの傾き)は、磁界Hの大きさによって異なっている。
したがって、印加される磁界Hの変化量ΔHに対してインピーダンスZの変化量ΔZが急峻な部分(すなわち、ΔZ/ΔHが大きい部分)を用いれば、磁界Hの微弱な変化をインピーダンスZの変化量ΔZとして取り出すことができる。
図6では、磁界Hがプラスの領域において、磁界Hの変化量ΔHに対するインピーダンスの変化量ΔZ(ΔZ/ΔH)が最も大きくなる磁界Hを、磁界Hbとして示している。
【0059】
このように、第1磁気センサ40A、第2磁気センサ40Bでは、磁界Hbの近傍における磁界Hの変化量ΔHが高精度に測定できる。
したがって、本実施形態の第1磁気センサ40A、第2磁気センサ40Bでは、第1磁石61~第4磁石64を用いて、感受素子50の感受部51に対してバイアス磁界として、磁界Hb(バイアス磁界Hbと表記する場合がある。)を印加している。
【0060】
(磁気センサ部31の回路構成)
図7は、本実施形態の磁気センサ部31の回路構成の一例を示した図である。
図7に示すように、磁気センサ部31は、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bを含むブリッジ回路部70を有する。
ブリッジ回路部70は、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bに加えて、第1磁気センサ40Aに直列接続される第1コンデンサ71、および第2磁気センサ40Bに直列接続される第2コンデンサ72を備えている。具体的には、ブリッジ回路部70は、第1磁気センサ40Aと第1コンデンサ71とが第1接続点73を介して直列接続されている第1直列回路部81を有している。また、ブリッジ回路部70は、第2磁気センサ40Bと第2コンデンサ72とが第2接続点74を介して直列接続されている第2直列回路部82を有している。
【0061】
さらに、ブリッジ回路部70は、第1直列回路部81の第1磁気センサ40A側の端部と、第2直列回路部82の第2磁気センサ40B側の端部とが、第3接続点75を介して接続されている。さらにまた、ブリッジ回路部70は、第1直列回路部81の第1コンデンサ71側の端部と、第2直列回路部82の第2コンデンサ72側の端部とが、第4接続点76を介して接続されている。これにより、ブリッジ回路部70では、第1直列回路部81と第2直列回路部82とが並列接続され、第1磁気センサ40A、第2磁気センサ40B、第1コンデンサ71および第2コンデンサ72によりブリッジ回路が構成されている。
【0062】
また、ブリッジ回路部70は、第3接続点75と第4接続点76との間に、電圧印加部83が接続されている。そして、ブリッジ回路部70には、第3接続点75および第4接続点76を介して、電圧印加部83によって予め定められた周波数を有する高周波電圧が印加される。
具体的には、電圧印加部83は、ブリッジ回路部70に対して、予め定められた振幅および周波数を有する高周波電圧を印加する。電圧印加部83が印加する高周波電圧の大きさ(振幅)は、例えば、0.1V以上10V以下の範囲とすることができる。なお、電圧印加部83がブリッジ回路部70に対して印加する高周波電圧の各条件は、例えば、ブリッジ回路部70の回路構成、想定される異物91の大きさや材質等に応じて設定することができ、上記範囲に限定されるものではない。
【0063】
また、ブリッジ回路部70は、第1接続点73および第2接続点74に、電圧測定部85が接続されている。本実施形態の電圧測定部85は、第1接続点73の電圧Vaおよび第2接続点74の電圧Vbを測定し、第1接続点73の電圧Vaと第2接続点74の電圧Vbの差分(Va-Vb)を出力する。以下、電圧測定部85により出力される、第1接続点73の電圧Vaと第2接続点74の電圧Vbの差分を、出力信号Vabと表記する場合がある。
詳細については後述するが、本実施形態の磁気センサ部31では、制御部35(
図1参照)が、電圧測定部85から出力される出力信号Vabに基づいて、対象物9(
図1参照)における異物91を検出する。
【0064】
(磁気センサ部31における出力信号Vabについて)
続いて、磁気センサ部31のブリッジ回路部70において、電圧測定部85により出力される出力信号Vabについて説明する。以下では、第1磁気センサ40AのインピーダンスをZ1、第2磁気センサ40BのインピーダンスをZ2、第1コンデンサ71のインピーダンスをZ3、第2コンデンサ72のインピーダンスをZ4と表記する。なお、本実施形態では、第1コンデンサ71のインピーダンスZ3と第2コンデンサ72のインピーダンスZ4とは等しくなっている(Z3=Z4)。
本実施形態が適用される磁気センサ部31のブリッジ回路部70では、電圧印加部83により印加される高周波電圧をVinとした場合、第1接続点73の電圧Vaと第2接続点74の電圧Vbとの差分である出力信号Vabは、以下の式(1)により表される。
Vab={(Z1*Z4-Z2*Z3)/(Z1+Z2)*(Z3+Z4)}Vin…(1)
【0065】
また、ブリッジ回路部70は、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bが感受する磁界が予め定められた基準値である場合(例えば、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bが感受する磁界が0Hである場合)に、平衡条件を満たす。
具体的には、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bが予め定められた基準値である場合に、第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1と第2コンデンサ72のインピーダンスZ4との積と、第2磁気センサ20BのインピーダンスZ2と第1コンデンサ71のインピーダンスZ3との積とが、等しくなっている(Z1*Z4=Z2*Z3)。
【0066】
したがって、磁気センサ部31のブリッジ回路部70では、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bが感受する磁界が予め定められた基準値(例えば0H)である場合、出力信号Vabは0となる。
言い換えると、本実施形態の異物検出装置1では、第1磁気センサ40Aによる感受領域S1および第2磁気センサ40Bによる感受領域S2に対象物9の異物91が存在しない場合に、ブリッジ回路部70における出力信号Vabは0となる。
【0067】
そして、磁気センサ部31のブリッジ回路部70では、第1磁気センサ40Aで感受される磁界が基準値から変化した場合、第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1が変化する。付言すると、第1磁気センサ40Aによる感受領域S1に対象物9の異物91が存在する場合、感受領域S1の磁界が基準値から変化し、第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1が変化する。
同様に、第2磁気センサ40Bで感受される磁界が基準値から変化した場合、第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2が変化する。付言すると、第2磁気センサ40Bによる感受領域S2に対象物9の異物91が存在する場合、感受領域S2の磁界が基準値から変化し、第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2が変化する。
なお、上述したように、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとは互いに等しい構成を有している。そして、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに対して、同じ大きさのバイアス磁界Hbが印加されている。したがって、本実施形態の磁気センサ部31では、感受される磁界Hの変化量に対するインピーダンスZの変化量は、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとで等しい。
【0068】
一方、ブリッジ回路部70では、第1コンデンサ71のインピーダンスZ3および第2コンデンサ72のインピーダンスZ4は、磁界の変化によっては変化しない。
以上により、本実施形態の磁気センサ部31では、ブリッジ回路部70の出力信号Vabが、第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1の変化、または、第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2の変化に応じて変化する。すなわち、ブリッジ回路部70の出力信号Vabは、第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1と第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2との差分(Z1-Z2)に応じた大きさとなる。
【0069】
図8は、本実施形態が適用される磁気センサ部31のブリッジ回路部70から出力される出力信号Vabの時間変化の一例を示したグラフである。
図8では、横軸が時間経過を表し、縦軸が出力信号Vabの大きさを表している。また、
図8では、ブリッジ回路部70に対し、電圧印加部83により周波数50MHz、振幅1Vの高周波電圧を印加した場合の出力信号Vabの時間変化を示している。
図9(a)~(b)は、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bと、移動機構10により移動される対象物9に含まれる異物91との位置関係の一例を説明する図である。
【0070】
図9(a)に示すように、移動機構10による対象物9の移動に伴って対象物9に含まれる異物91が第1磁気センサ40Aによる感受領域S1に到達すると、異物91によって感受領域S1の磁界が大きくなる。この結果、第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1が上昇する。その一方で、第2磁気センサ40Bによる感受領域S2には異物91が存在しないため、感受領域S2の磁界は変化せず、第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2は変化しない。
この場合、第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1が第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2よりも大きくなり(Z1>Z2)、出力信号Vabは、正の値となる。
図8では、T1で示す時間が、対象物9に含まれる異物91が第1磁気センサ40Aによる感受領域S1に存在する時間に相当する。
図8に示すように、異物91が感受領域S1に存在する時間では、出力信号Vabは、プラス方向に突出するピーク(以下、第1ピークP1と表記する。)を含む波形となる。
【0071】
図9(b)に示すように、移動機構10による対象物9の移動に伴って対象物9に含まれる異物91が第1磁気センサ40Aによる感受領域S1から第2磁気センサ40Bによる感受領域S2まで移動すると、異物91による影響が無くなることで、感受領域S1の磁界が予め定められた基準値(例えば0H)に戻る。これに伴い、第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1が元の値まで低下する。また、第2磁気センサ40Bによる感受領域S2まで移動した異物91によって、感受領域S2の磁界が大きくなる。この結果、第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2が上昇する。
この場合、第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2が第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1よりも大きくなり(Z1<Z2)、出力信号Vabは、負の値となる。
図8では、T2で示す時間が、対象物9に含まれる異物91が第2磁気センサ40Bによる感受領域S2に存在する時間に相当する。
図8に示すように、異物91が感受領域S2に存在する時間では、出力信号Vabは、マイナス方向に突出するピーク(以下、第2ピークP2と表記する。)を含む波形となる。
【0072】
このように、本実施形態の磁気センサ部31では、移動機構10により移動される対象物9に異物91が存在する場合、対象物9が感受領域S1から感受領域S2へ移動するのに伴って、出力信号Vabに、第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1が変化することによる第1ピークP1と、第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2が変化することによる第2ピークP2とが続いて表れる。
【0073】
検出部30では、制御部35は、出力信号Vabにおけるピークの信号値を予め定められた閾値と比較することで、対象物9における異物91の存在を検出する。すなわち、制御部35は、出力信号Vabにおけるピークの信号値の絶対値が、閾値の絶対値を超える場合、対象物9に異物91が存在すると判断することができる。
例えば、本実施形態の制御部35は、出力信号Vabにおける第1ピークP1の信号値を予め定められた第1の閾値V1と比較する。これにより、対象物9が第1磁気センサ40Aによる感受領域S1を通過するタイミングで、対象物9における異物91の存在を検出することができる。
同様に、制御部35は、出力信号Vabにおける第2ピークP2の信号値を予め定められた第2の閾値V2と比較する。これにより、対象物9が第2磁気センサ40Bによる感受領域S2を通過するタイミングで、対象物9における異物91の存在を検出することができる。
【0074】
上述したように、本実施形態の検出部30では、磁気センサ部31において、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに対して、同じ向きのバイアス磁界Hbが印加されている。
そして、本実施形態の検出部30では、ブリッジ回路部70が、出力信号Vabとして、第1磁気センサ40Aが接続される第1接続点73の電圧Vaと、第2磁気センサ40Bが接続される第2接続点74の電圧Vbとの差分を出力する。
これにより、対象物9に異物91が存在する場合に、出力信号Vabに、プラス方向に突出する第1ピークP1と、マイナス方向に突出する第2ピークP2とが続いて表れる。
【0075】
ここで、磁気センサ部31において、本実施形態とは異なり、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに対して、反対向きのバイアス磁界が印加されている場合を考える。例えば、第1磁気センサ40Aの感受素子50に対して、
図5(a)に示すように、y方向に向かうバイアス磁界Hbが印加され、第2磁気センサ40Bの感受素子50に対して、
図5(b)に示す例とは反対に、-y方向に向かうバイアス磁界(
図6に示す磁界Hb´)が印加されている場合を考える。
図10は、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに対して、反対向きのバイアス磁界が印加されている場合に、磁気センサ部31のブリッジ回路部70から出力される出力信号Vabの時間変化の一例を示したグラフである。
図10では、
図8と同様に、ブリッジ回路部70に対し、電圧印加部83により周波数50MHz、振幅1Vの高周波電圧を印加した場合の出力信号Vabの時間変化を示している。
【0076】
図9(a)に示すように、対象物9に含まれる異物91が第1磁気センサ40Aによる感受領域S1に到達すると、異物91によって感受領域S1の磁界が大きくなる。この場合、上述した例と同様に、第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1が上昇する一方で、第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2は変化しない。この結果、第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1が第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2よりも大きくなり(Z1>Z2)、出力信号Vabは、正の値となる。
図10では、T1で示す時間が、対象物9に含まれる異物91が第1磁気センサ40Aによる感受領域S1に存在する時間に相当する。
図10に示すように、異物91が感受領域S1に存在する時間では、出力信号Vabは、プラス方向に突出するピーク(以下、第1ピークP1´と表記する。)を含む波形となる。
【0077】
その後、
図9(b)に示すように、対象物9に含まれる異物91が第2磁気センサ40Bによる感受領域S2まで移動すると、感受領域S1の磁界が基準値(例えば0H)に戻り、第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1が元の値まで低下する。また、第2磁気センサ40Bによる感受領域S2にまで移動した異物91によって、感受領域S2の磁界が大きくなる。ここでは、第2磁気センサ40Bの感受素子50に対して、第1磁気センサ40Aの感受素子50とは反対向きのバイアス磁界Hb´が印加されている。このため、感受領域S2の磁界が大きくなることにより、第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2が低下する。
この場合、第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2が第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1よりも小さくなり(Z1>Z2)、出力信号Vabは、正の値となる。
図10では、T2で示す時間が、対象物9に含まれる異物91が第2磁気センサ40Bによる感受領域S2に存在する時間に相当する。
図10に示すように、異物91が感受領域S2に存在する時間では、出力信号Vabは、プラス方向に突出するピーク(以下、第2ピークP2´と表記する。)を含む波形となる。
【0078】
このように、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに対して反対向きのバイアス磁界が印加されている場合、対象物9が感受領域S1から感受領域S2へ移動するのに伴って、出力信号Vabに、プラス方向に突出する第1ピークP1´と、プラス方向に突出する第2ピークP2´とが続いて表れる。
この場合、制御部35は、出力信号Vabにおける第1ピークP1´および第2ピークP2´の信号値を予め定められた閾値と比較することで、対象物9における異物91の存在を検出する。
【0079】
ここで、検出部30では、異物91の検出精度を向上させる観点から、出力信号Vabにおけるピークの信号値の絶対値(以下、信号強度と表記する。)が大きいことが好ましい。
本実施形態では、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに同じ向きのバイアス磁界Hbを印加することで、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに反対向きのバイアス磁界を印加する場合と比べて、出力信号Vabにおけるピークの信号強度が大きくなる。付言すると、本実施形態の検出部30では、出力信号Vabにおける第1ピークP1および第2ピークP2の信号強度が、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに反対向きのバイアス磁界を印加する場合の出力信号Vabにおける第1ピークP1´および第2ピークP2´の信号強度と比べて大きくなる。
これにより、本実施形態の異物検出装置1では、検出部30による異物91の検出精度を向上させることが可能となる。付言すると、本実施形態の異物検出装置1では、対象物9に外径が数十μm程度の微小な異物91が含まれる場合であっても、異物91を検出しやすくなる。
【0080】
また、検出部30では、異物91の検出精度を向上させる観点から、出力信号Vabにおけるピークの信号値(Signal)とノイズ(Noise)との比であるSN比が大きいことが好ましい。
本実施形態では、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに同じ向きのバイアス磁界Hbを印加することで、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに反対向きのバイアス磁界を印加する場合と比べて、出力信号Vabにおけるノイズを低減することができる。
【0081】
図11(a)~(b)は、出力信号Vabにおけるノイズの大きさを説明する図であって、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bが感受する磁界が予め定められた基準値(例えば0H)である場合の出力信号Vabの時間変化を高速フーリエ変換(FFT)したFFTデータの一例である。
図11(a)~(b)において、横軸が周波数(Hz)、縦軸がFFTデータ(mV/√Hz)である。
図11(a)は、本実施形態の磁気センサ部31による出力信号Vabであって、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに同じ向きのバイアス磁界Hbが印加されている場合の出力信号VabのFFTデータを示している。また、
図11(b)は、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに反対向きのバイアス磁界が印加されている場合の出力信号VabのFFTデータを示している。
【0082】
ここで、対象物9の異物91ではなく外部磁界に由来するノイズは、通常、対象物9における異物91の位置によらず、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとに同時に感受される。
そして、本実施形態では、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに同じ向きのバイアス磁界Hbを印加していることから、ノイズを感受することによる第1磁気センサ40AのインピーダンスZ1の変化量と第2磁気センサ40BのインピーダンスZ2の変化量とは、互いに等しくなる。
この結果、第1接続点73の電圧Vaと第2接続点74の電圧Vbとの差分である出力信号Vabでは、第1磁気センサ40Aにより感受されるノイズと第2磁気センサ40Bにより感受されるノイズとが相殺される。これにより、出力信号Vabにおけるノイズを低減することができる。
【0083】
例えば、
図11(a)に示す出力信号Vabでは、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに反対向きのバイアス磁界が印加されている
図11(b)の出力信号Vabと比較して、周波数50Hz、150Hz近傍のノイズが低減している。
このように、本実施形態では、第1磁気センサ40Aの感受素子50と第2磁気センサ40Bの感受素子50とに同じ向きのバイアス磁界Hbを印加することで、出力信号Vabにおけるノイズを低減することができ、出力信号Vabにおけるピークの信号値(Signal)とノイズ(Noise)との比であるSN比を大きくすることが可能となる。これにより、本実施形態の異物検出装置1では、検出部30による異物91の検出精度を向上させることが可能となる。
【0084】
以上、本発明の実施形態および実施例について説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない限りにおいては様々な変形や組み合わせを行っても構わない。
【0085】
例えば、本実施形態の磁気センサ部31では、感受素子50の厚さ方向が移動機構10による対象物9の移動方向であるz方向と一致するように、第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bを配置しているが、これに限られない。磁気センサ部31では、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとが移動機構10による対象物9の移動方向であるz方向に並んでいれば、例えば、感受素子50の厚さ方向がx方向となるように、第1磁気センサ40Aと第2磁気センサ40Bとを配置してもよい。
【0086】
また、本実施形態の磁気センサ部31における第1磁気センサ40Aおよび第2磁気センサ40Bでは、4個の永久磁石である第1磁石61~第4磁石64を用いて感受素子50にバイアス磁界Hbを印加しているが、これに限られない。磁気センサ部31では、第1磁気センサ40Aの感受素子50および第2磁気センサ40Bの感受素子50に同じ方向を向くバイアス磁界Hbを印加することができれば、4個以外の単数または複数の永久磁石を用いてもよく、第1磁石61~第4磁石64に変えて電磁石を用いてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…異物検出装置、10…移動機構、20…着磁部、30…検出部、31…磁気センサ部、35…制御部、40A…第1磁気センサ、40B…第2磁気センサ、41…集束部材、42…発散部材、50…感受素子、61…第1磁石、62…第2磁石、63…第3磁石、64…第4磁石、70…ブリッジ回路部