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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173012
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】試験装置、試験体及び試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/20 20060101AFI20241205BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20241205BHJP
【FI】
G01N3/20
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091117
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 安弘
(72)【発明者】
【氏名】泉 俊光
(72)【発明者】
【氏名】玉松 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩波 基
【テーマコード(参考)】
2G024
2G061
【Fターム(参考)】
2G024AD34
2G024BA13
2G024CA04
2G024DA01
2G024FA02
2G061AA07
2G061AB01
2G061BA07
2G061DA01
2G061EA01
2G061EA02
2G061EA03
2G061EA04
2G061EB04
2G061EB05
2G061EC04
(57)【要約】
【課題】補強された複合構造を有する構造物において、初期構造の劣化による応力の分配を精度よく評価することが可能な試験装置、試験体及び試験方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る試験装置100は、構造物200の少なくとも一部を模した主構造部10と、構造物200を補強するための補強部材220の少なくとも一部を模した補強部20とを備えた試験体30と、試験体30を支持する支持部40と、試験体30に載荷する載荷部50と、載荷された試験体30を計測する計測部60とを備える試験装置100であって、主構造部10は、構造物200の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部13を含み、劣化領域部13は主構造部の他の部位に対して着脱可能とされていることを特徴とする。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の少なくとも一部を模した主構造部と、
前記構造物を補強するための補強部材の少なくとも一部を模した補強部と
を備えた試験体と、
前記試験体を支持する支持部と、
前記試験体に載荷する載荷部と、
載荷された前記試験体を計測する計測部と
を備える試験装置であって、
前記主構造部は、前記構造物の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部を含み、該劣化領域部は前記主構造部の他の部位に対して着脱可能とされている、試験装置。
【請求項2】
前記劣化領域部は、板状の前記主構造部の厚み方向に着脱可能であり、前記主構造部の面方向の略中央位置に位置する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記劣化領域部を前記主構造部に固定する固定部は、平面視及び底面視において前記補強部と重なっておらず、
前記補強部を前記主構造部に固定する固定部は、平面視及び底面視において前記劣化領域部と重なっていない、請求項1又は2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記補強部は、前記主構造部における前記劣化領域部とは反対側の面に装着される、請求項1又は2に記載の試験装置。
【請求項5】
前記載荷部は、板状の前記主構造部における一方の面の前記劣化領域部ではない2点に載荷し、
前記支持部は、前記主構造部における他方の面の前記補強部ではない2点を支持する、請求項1又は2に記載の試験装置。
【請求項6】
前記載荷部は、前記主構造部における上端部を下方に向けて載荷し、
前記支持部は、前記主構造部における下端部及び下部側面を支持する、請求項1又は2に記載の試験装置。
【請求項7】
構造物の少なくとも一部を模した主構造部と、
前記構造物を補強するための補強部材の少なくとも一部を模した補強部と
を備えた試験体であって、
前記主構造部は、前記構造物の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部を含み、該劣化領域部は前記主構造部の他の部位に対して着脱可能とされている、試験体。
【請求項8】
構造物の少なくとも一部を模した主構造部であって、該主構造部は前記構造物の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部を含む、該主構造部を試験装置に設置することと、
前記主構造部に載荷しながら変位を計測することと、
前記主構造部への載荷を維持しつつ前記構造物を補強するための補強部材の少なくとも一部を模した補強部を前記主構造部に取り付けて補強試験体を形成することと、
前記補強試験体に載荷しながら変位を計測することと、
前記補強試験体への載荷を維持しつつ前記補強試験体から前記劣化領域部を取り外して劣化試験体を形成することと、
前記劣化試験体に載荷しながら変位を計測することと
を含む、試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、試験装置、試験体及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルや橋梁などのインフラストラクチャーを構成する構造物は、鋼材の腐食等により強度等の構造物としての性能が低下するため、継続して構造物を使用することを目的として補強が行われることがある。構造物を補強する際には、初期の構造と補強部材とを複合構造とすることによって荷重に対する補強効果を評価する手法が検討されており、経済的な補強設計が可能となっている(非特許文献1及び非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】鈴木博之、″供用中の鋼橋の溶接による補修・補強に関する実験的研究″、大阪大学博士論文、1986年
【非特許文献2】塩冶幸男 他、″経年劣化したシールドトンネルの補強に関する研究″、土木学会論文集 F1 (トンネル工学), 67(2)、2011、p. 62-78
【非特許文献3】松本安弘 他、″二次覆工の建設順序を考慮したシールドトンネルの劣化時挙動に関する一考察″、第72回土木学会年次学術講演会公演概要集、2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような初期の構造と補強部材とを複合構造とした構造物においては、補強後に初期の構造部分の劣化が進行した場合、トンネルにかかる土圧や水圧、橋梁にかかる自重等の死荷重が不変であっても補強部材への応力の分配が行われる。しかし、この応力分配の大きさの評価は、数値計算によるものが提案されているものの(非特許文献3)、模型実験による再現が難しく、数値計算による評価の精度が不明であったため、この点において改善の余地があった。
【0005】
従って、かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、補強された複合構造を有する構造物において、初期構造の劣化による応力の分配を精度よく評価することが可能な試験装置、試験体及び試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係る試験装置は、
構造物の少なくとも一部を模した主構造部と、
前記構造物を補強するための補強部材の少なくとも一部を模した補強部と
を備えた試験体と、
前記試験体を支持する支持部と、
前記試験体に載荷する載荷部と、
載荷された前記試験体を計測する計測部と
を備える試験装置であって、
前記主構造部は、前記構造物の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部を含み、該劣化領域部は前記主構造部の他の部位に対して着脱可能とされていることを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するため、本開示に係る試験体は、
構造物の少なくとも一部を模した主構造部と、
前記構造物を補強するための補強部材の少なくとも一部を模した補強部と
を備えた試験体であって、
前記主構造部は、前記構造物の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部を含み、該劣化領域部は前記主構造部の他の部位に対して着脱可能とされていることを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するため、本開示に係る試験方法は、
構造物の少なくとも一部を模した主構造部であって、該主構造部は前記構造物の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部を含む、該主構造部を試験装置に設置することと、
前記主構造部に載荷しながら変位を計測することと、
前記主構造部への載荷を維持しつつ前記構造物を補強するための補強部材の少なくとも一部を模した補強部を前記主構造部に取り付けて補強試験体を形成することと、
前記補強試験体に載荷しながら変位を計測することと、
前記補強試験体への載荷を維持しつつ前記補強試験体から前記劣化領域部を取り外して劣化試験体を形成することと、
前記劣化試験体に載荷しながら変位を計測することと
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、補強された複合構造を有する構造物において、初期構造の劣化による応力の分配を精度よく評価することが可能な試験装置、試験体及び試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本開示の第1実施形態に係る試験装置の正面図である。
図1B図1AのA-A断面による断面図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る試験装置が模している構造物の断面図である。
図3A】本開示の第1実施形態に係る試験装置に用いる試験体の正面図である。
図3B】本開示の第1実施形態に係る試験装置に用いる試験体の平面図である。
図3C】本開示の第1実施形態に係る試験装置に用いる試験体の底面図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る試験装置の制御を行う制御回路の構成例を示すブロック図である。
図5】本開示の第1実施形態に係る試験方法の実施手順を示すフローチャートである。
図6A】本開示の第1実施形態に係る試験方法により主構造部に載荷した状態を示す図である。
図6B図6Aに示す試験体への載荷により評価している構造物(シールドトンネル)の状態を示す図である。
図7A】本開示の第1実施形態に係る試験方法により補強構造部に載荷した状態を示す図である。
図7B図7Aに示す試験体への載荷により評価している構造物(シールドトンネル)の状態を示す図である。
図8A】本開示の第1実施形態に係る試験方法により劣化構造部に載荷した状態を示す図である。
図8B図8Aに示す試験体への載荷により評価している構造物(シールドトンネル)の状態を示す図である。
図9】本開示の第2実施形態に係る試験装置の正面図である。
図10】本開示の第2実施形態に係る試験装置が模している構造物の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の第1実施形態に係る試験装置100、試験装置100に用いる試験体30、及びこれらを用いた試験方法について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1A及び図1Bに示すように、本実施形態に係る試験装置100は、構造物200(一次覆工、図2等参照)の一部を模した板状の主構造部10と、構造物200を補強するための補強部材220(二次覆工)の少なくとも一部を模した板状の補強部20とを備えた試験体30と、試験体30の下面2箇所を支持する支持部40と、試験体30に上方から載荷する載荷部50と、載荷された試験体30を計測する計測部60とを備えている。
【0013】
また、主構造部10は、図1A及び図1Bに示すように、構造物200の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部13を含み、劣化領域部13は主構造部10の他の部位(基部11)に対して着脱可能とされている。
【0014】
なお、本実施形態の試験装置100は、図1AにおけるZ軸プラス方向を上方、Z軸マイナス方向を下方とする。また、図1AにおけるX軸方向を左右方向とし、Y軸方向を奥行き方向とする。
【0015】
また、構造物200の劣化とは、時間の経過や外部環境の影響によって構造物200の機械的強度等の性能が低下した状態を指す。構造物200の劣化の具体例としては、金属を含む構造物200が湿度、塩分などの影響により錆びる腐食や、構造物200が長年の荷重や地震等の影響を受けて表面や内部に生じるひび割れなどが挙げられる。
【0016】
本実施形態の試験体30は、図2に示す構造物200(本実施形態ではシールドトンネル)の周方向の一部を模しており、図2のB領域が図1Aに示す試験体30に対応する。すなわち、試験体30の上方(図1AにおけるZ軸プラス方向)が構造物200の径方向外側方向、試験体30の下方(図1AにおけるZ軸マイナス方向)が構造物200の径方向内側方向、試験体30の左右方向(図1AにおけるX軸方向)が構造物200の周方向、試験体30の奥行き方向(図1AにおけるY軸方向)が構造物200の長手方向に対応している。
【0017】
本実施形態の試験装置100は、図2に図示するように、土圧や水圧等の死荷重に起因するトンネルを下方に向けて押し潰す方向の荷重によって構造物200にかかる曲げモーメント並びにこれによって各部位に発生する変位と歪みが、補強部材220を設置後に構造物200の一部が劣化した場合に、劣化していない残りの構造物200’(図8B参照)と補強部材220との間でどのように応力分担されるかを確認することを目的としている。
【0018】
つまり、本実施形態の試験体30は、構造物200の径方向内側に補強部材220を組み合わせた複合構造を模しており、主構造部10、補強部20、及び劣化領域部13は、それぞれ初期の構造物200、補強部材220、及び構造物200のうち劣化により構造物として機能しなくなった部位に対応している。
【0019】
主構造部10の基部11は、図1A及び図1Bに示すようにXY平面方向に延びる平板状の部材である。また、基部11の上面には、面方向(XY平面)の略中央位置に配置された劣化領域部13と、劣化領域部13のX軸方向両側に配置された非劣化領域部12とが設けられている。劣化領域部13は、図3A及び図3Bに示すように、基部11に対してボルト13a及びナット13bによりねじ締結されている。同様に、非劣化領域部12は、基部11に対してボルト12a及びナット12bによりねじ締結されている。また、劣化領域部13と非劣化領域部12のX軸方向端部同士が突き合せられた箇所において上方から連結板14により覆われている。連結板14は、ボルト14a及びナット14bによって基部11に対して固定されている。なお、ボルト13a,14a及びナット13b,14bと締結材料との間には図示するように平座金を設けてもよく、更に平座金に加えて図示しないばね座金を設けてもよい。
【0020】
本実施形態において、劣化領域部13は、基部11の厚みよりも薄く形成され、主構造部10の厚み方向(図1Aの上下方向)に着脱可能とされている。この構成によって、劣化領域部13を基部11から取り外すことによって主構造部10のうち劣化して構造物として機能しなくなった一部の厚み領域を除いた残りの構造物200’(図8B参照)を模した試験を行うことができる。
【0021】
劣化領域部13及び非劣化領域部12は、図3Aに示すように上下方向(Z軸方向)に同一厚みを有しており、図3Bに示すように奥行き方向(Y軸方向)に基部11より短い同一幅を有している。この構成によって、劣化領域部13及び非劣化領域部12よりも奥行き方向(Y軸方向)外側の領域において基部11と後述する補強部20の補強基部21とをボルト21a及びナット21bにより固定することができる。従って、主構造部10における基部11と劣化領域部13及び非劣化領域部12との締結状態を維持したまま、主構造部10と補強部20との着脱を行うことができる。
【0022】
本実施形態では、図3B及び図3Cに示すように、劣化領域部13及び連結板14を基部11に装着するためのボルト13a,14a及びナット13b,14bは、補強部20と平面視及び底面視において重なっておらず、補強部20の補強基部21を基部11に装着するためのボルト21a及びナット21bは、劣化領域部13及び連結板14と平面視及び底面視において重なっていない。この構成によって、補強部20を基部11に装着したままの状態で劣化領域部13及び連結板14を基部11に着脱し易くすることができる。また、劣化領域部13及び連結板14を基部11に装着したままの状態で補強部20を基部11に着脱し易くすることができる。なお、ボルト21a及びナット21bと締結材料との間には図示するように平座金を設けてもよい。
【0023】
基部11、非劣化領域部12、劣化領域部13及び連結板14に用いる材料は、略同一の縦弾性係数を有し、好ましくは構造物200と略同一の縦弾性係数を有していることが好ましい。本実施形態において、構造物200は例えば鋼材を主材料とした鋼製のセグメントの組み合わせにより形成することができるため、基部11、非劣化領域部12、劣化領域部13及び連結板14に用いる材料は、鋼製セグメントと同一材料であるか、鋼製セグメントと略同一の縦弾性係数を有していることが好ましい。鋼製セグメントには、例えばSM400B、SM490Bなどの溶接構造用圧延鋼材やSS400、SS490などの高張力の一般構造用圧延鋼材を用いることができるが、他の鋼材等を用いてもよい。また、試験体30は、図1Aに示すような平板状ではなく、図1Aにおける下方(構造物200における径方向内側)に延びるリブを有するなど実際の構造物200の実施態様に合わせて適宜変更してもよい。
【0024】
なお、構造物200と試験体30の弾性係数は、必ずしも一致していなくてもよい。試験体30の弾性係数に合わせて数値計算モデルを作成し、応力、変位又は歪み等の測定結果と数値計算結果とが合致するか否かを確認することによって数値計算の精度を確認することができるからである。
【0025】
基部11の下面には、補強部20が装着されている。補強部20は、構造物200(一次覆工)の径方向内側に後から設けられた補強部材220(二次覆工)の一部を模しており、好ましくは補強部材220と略同一の縦弾性係数を有していることが好ましい。補強部20は、図3Aに示すように主構造部10における劣化領域部13とは反対側の面に装着されている。また、補強部20は、図3Cに示すように、左右方向(X軸方向)に延在するとともに、奥行き方向(Y軸方向)に分割されて配置されている。この構成によって、補強部20を主構造部10に装着した状態で、Y軸方向中央位置に配置されたボルト13a及びナット13bを緩めることによって劣化領域部13を基部11から取り外して、構造物200のうち劣化により構造物として機能しなくなった部位を除いた構造物200’を模した試験を実施することができる。なお、補強部材220には、例えば無筋コンクリートを用いることができる。また、補強部20にも補強部材220と同一材料又は略同一の縦弾性係数を有する材料を用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0026】
支持部40は、試験体30の長手方向(左右方向すなわちX軸方向)の両端部近傍を下方から支持して四点曲げ試験をおこなうための支点である。支持部40は、奥行き方向に延在し、XZ平面内の回転方向のモーメントが作用しないように主構造部10の基部11の下面を支持している。本実施形態において、支持部40は、補強部20の左右方向両端部の外側に隣接する位置において基部11を支持している。この構成によって、主構造部10を載荷部50及び支持部40により四点支持して載荷した状態で、補強部20を着脱することができる。また、支持部40は、主構造部10における後述する載荷部50とは反対側の面の補強部20ではない(基部11の)2点を支持している。
【0027】
載荷部50は、図1A等に示すように、主構造部10における劣化領域部13ではない(非劣化領域部12の)2点に当接して駆動部53からの荷重を主構造部10に伝える圧子である押圧部51と、押圧部51の上部に装着された載荷板52と、押圧部51を載荷板52を介して油圧シリンダー等により下方に押圧する駆動部53とを備えている。なお、図1Aにおいて、A-A断面は押圧部51を通らないため、図1Bにおいて押圧部51は図示していない。
【0028】
次に、試験装置100の制御を行う制御回路400の構成例を図4に示す。制御回路400は、試験装置100の各機能部の制御を行う制御部410と、制御部410に作業者からの操作等を入力する入力部420と、試験結果の記憶等を行う記憶部430と、試験結果の表示等を行う表示部480とを備えている。制御部410は、試験装置100が備えるCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)で実行させることによって、ソフトウエア処理として実現することができる。しかし、この態様には限定されず、各処理は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等によってハードウエア処理として実現するように構成してもよい。制御部410は、駆動部53の油圧シリンダーを動作させる流量調整バルブ460を制御可能である。また、制御部410は、押圧荷重測定用のロードセル440からの出力を取得可能に構成されている。これによって、制御部410は押圧荷重から換算した曲げモーメントをモニターすることができる。また、試験体30に歪みゲージGを貼付し、制御部410が当該歪みゲージGからの出力を取得可能に構成されていてもよい。試験体30の歪みは、例えば歪みゲージGを非劣化領域部12における上面や補強部20の下面などに装着することによって、曲げ歪みを検出することができる。また、制御部410は、載荷板52の変位量を試験体30の変位として変位センサ450から取得可能に構成されていてもよい。これによって、制御部410は、試験体30にかかる曲げモーメントと試験体30の変位及び歪みとの関係をデータ化することができる。上述のロードセル440、変位センサ450及び歪みゲージGは、載荷された試験体30を計測する計測部60として機能する。
【0029】
次に、本実施形態にかかる試験装置100による試験方法の実行手順について図5から図8B等を用いて説明する。
【0030】
まず、試験装置100の作業者は、図3Aから図3Cに示す試験体30のうち、主構造部10のみを試験装置100に設置する(図5のステップS101)。この試験体30の設置は、図3Aから図3Cに示す試験体30においてボルト21a及びナット21bを緩めることで補強部20を主構造部10から取り外し、主構造部10の下面を支持部40上に固定することにより実行される。
【0031】
次に作業者は、試験装置100の入力部420から試験開始の指示を行う。制御部410は、試験開始の指示に基づいて、流量調整バルブ460の制御を行い駆動部53の油圧シリンダーを作動させて載荷板52を下方に変位させる。これによって、載荷部50は、載荷板52を介して押圧部51を下方に押圧するように荷重を作用させる(図6A参照)。このとき、制御部410は、載荷板52の変位量を変位センサ450から取得すると共に、ロードセル440から試験体30に作用している押圧荷重値を取得し、曲げモーメントを算出する。制御部410は、予め決められた速度で載荷部50の載荷板52が下降するように流量調整バルブ460の制御を行う。なお、図6A及び後述する図6B図6Cにおいては、駆動部53の図示を省略している。
【0032】
制御部410は、試験体30に配置した歪みゲージGから、試験体30の歪みを取得する。制御部410は、載荷部50の載荷板52の変位量と、ロードセル440からの荷重値(又は曲げモーメント)と、歪みゲージGからの歪みとをほぼ同時に取得して記憶部430に記憶する。
【0033】
制御部410は、試験体30に係る曲げモーメント、変位量、又は歪みが所定値に達するまで載荷板52を移動させつつ、載荷板52の荷重値(又は曲げモーメント)、変位量、及び歪みを取得し、記憶部430に記憶する。制御部410は、曲げモーメント、変位量、又は歪みが所定値に達すると、載荷板52の移動を停止して載荷した状態を継続する。
【0034】
制御部410は、本実施形態の試験装置100により取得された主構造部10の曲げモーメント-変位特性、及び曲げモーメント-歪み特性を表示部480に表示する。以上の動作により、主構造部10に曲げモーメントを載荷しながら試験体30の変位及び歪みを計測する(図5のステップS102)。
【0035】
なお、この図6Aに示す試験体30の状態は、図6B(a)に示すように土壌300中に構造物200(一次覆工)を建設した状態から、土圧や水圧等の死荷重が構造物200にかかり、図6B(b)に示すように構造物200が押し潰される方向に曲げモーメントが作用した状態を模したものである。
【0036】
次に、作業者は、主構造部10に載荷した状態を維持したまま、主構造部10に補強部20を取り付けて補強試験体を形成する(図7A参照)(図5のステップS103)。そして、補強試験体に曲げモーメントが載荷された状態で、補強試験体の変位及び歪みを計測する(図5のステップS104)。この図7Aに示す状態では、既に加えられた曲げモーメントにより主構造部10が変形した状態で補強部20を取り付けているため、補強部20が応力分担することがなく、主構造部10の変位及び歪みは変化しないはずである。このステップS104において、補強試験体の変位及び歪みがステップS102と比較して大きく変化した場合には、補強部20の装着によって主構造部10に意図しない歪みが生じている可能性があるため、補強部20の再装着等を試みてもよい。
【0037】
なお、この図7Aに示す試験体30(補強試験体)の状態は、図7Bに示すように土壌300中の構造物200(一次覆工)に土圧や水圧等の死荷重がかかった状態のまま、構造物200の径方向内側に補強部材220(二次覆工)を形成した状態を模したものである。
【0038】
次に、作業者は、図7Aに示す補強試験体に載荷した状態のまま、補強試験体から劣化領域部13を取り外して劣化試験体を形成する(図8A参照)(図5のステップS105)。このステップS105では、補強試験体から劣化領域部13を取り外すことによって、それまで主構造部10が支えてきた荷重の一部を支えられなくなるため、主構造部10から補強部20への応力の分配が発生する。劣化試験体に曲げモーメントが載荷され、この応力分配が発生した状態で、劣化試験体の変位及び歪みを計測する(図5のステップS106)。
【0039】
なお、この図8Aに示す試験体30(劣化試験体)の状態は、図8Bに示すように土壌300中の構造物200(一次覆工)に土圧や水圧等の死荷重がかかった状態で補強部材220(二次覆工)が形成された後、構造物200の一部が劣化して構造物200’となった状態を模したものである。図8Bは、構造物200の一部が劣化したことにより初期の破線の形状から実線の形状(構造物200’)へと一部が薄肉化し、これによって構造物200にかかっていた荷重が補強部材220に応力分配されて、補強部材220が初期の破線の形状から実線の形状へと変形している様子を示している。
【0040】
以上述べたように、本実施形態に係る試験装置100は、構造物200の少なくとも一部を模した主構造部10と、構造物200を補強するための補強部材220の少なくとも一部を模した補強部20とを備えた試験体30と、試験体30を支持する支持部40と、試験体30に載荷する載荷部50と、載荷された試験体30を計測する計測部60とを備える試験装置100であって、主構造部10は、構造物200の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部13を含み、劣化領域部13は主構造部の他の部位に対して着脱可能とされるように構成した。このような構成の採用によって、主構造部10に曲げモーメントがかかった状態で補強部20を装着した後、劣化領域部13を取り外すことによって、主構造部10にかかっていた曲げモーメントの一部が補強部20へと分配される前後の主構造部10及び補強部20の変位及び歪みを定量化することができる。従って、補強された複合構造を有する構造物200において、初期構造の劣化による応力の分配を精度よく評価することが可能となる。これによって、劣化進行を伴う構造物200の応力増加を補強部材220により軽減する効果を実測して、従来行われてきた数値計算モデルの精度検証が可能となる。特に、構造物200がトンネルである場合、一次覆工の建設直後に二次覆工が建設される場合、二次覆工が補強部材220として機能することが期待できるため、二次覆工による一次覆工の応力増加の軽減効果を評価可能とすることによって、トンネルの耐用年数を精度よく評価することができる。
【0041】
本実施形態に係る試験装置100を用いて数値計算手法の精度を確認し、評価対象の構造物200に確認済みの数値計算手法を適用することによって、構造物200の評価の効率と精度とを両立させることができる。数値計算手法の精度の確認は、試験体30により実測した変位及び/又は歪みと、数値計算手法により得られた各部材の変位及び/又は歪みとを比較することによって行うことができる。
【0042】
また、本実施形態では、劣化領域部13は、板状の主構造部10の厚み方向に着脱可能であり、主構造部10の面方向の略中央位置に位置するように構成した。このような構成の採用によって、劣化領域部13を主構造部10の基部11から厚み方向に離隔させることで構造物200の一部が劣化した状態を容易に模して評価することができる。
【0043】
また、本実施形態では、劣化領域部13を主構造部10に固定する固定部(ボルト13a及びナット13b)は、平面視及び底面視において補強部20と重なっておらず、補強部20を主構造部10に固定する固定部(ボルト21a及びナット21b)は、平面視及び底面視において劣化領域部13と重なっていないように構成した。このような構成の採用によって、試験体30の厚み方向にドライバーやトルクレンチ等を挿入して固定部を緩め、劣化領域部13及び補強部20を互いに干渉することなく独立して基部11に対して容易に着脱することができる。
【0044】
また、本実施形態では、補強部20は、主構造部10における劣化領域部13とは反対側の面に装着されるように構成した。このような構成の採用によって、劣化領域部13及び補強部20の一方を基部11に固定した状態で、他方を容易に基部11に対して着脱することができる。
【0045】
また、本実施形態では、載荷部50は、板状の主構造部10における一方の面の劣化領域部13ではない2点に載荷し、支持部40は、主構造部10における他方の面の補強部20ではない2点を支持するように構成した。このような構成の採用によって、劣化領域部13及び補強部20が共に載荷部50及び支持部40に当接していないので、試験体30を載荷した状態で劣化領域部13及び補強部20を基部11に対して着脱し易くすることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る試験体30は、構造物200の少なくとも一部を模した主構造部10と、構造物200を補強するための補強部材220の少なくとも一部を模した補強部20とを備えた試験体30であって、主構造部10は、構造物200の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部13を含み、劣化領域部13は主構造部10の他の部位に対して着脱可能とされるように構成した。このような構成の採用によって、主構造部10に曲げモーメントがかかった状態で補強部20を装着した後、劣化領域部13を取り外すことによって、主構造部10にかかっていた曲げモーメントの一部が補強部20へと分配される前後の主構造部10及び補強部20の変位及び歪みを定量化することができる。従って、補強された複合構造を有する構造物200において、初期構造の劣化による応力の分配を精度よく評価することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態に係る試験方法は、構造物200の少なくとも一部を模した主構造部10であって、主構造部10は構造物200の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部13を含む、主構造部10を試験装置100に設置することと、主構造部10に載荷しながら変位を計測することと、主構造部10への載荷を維持しつつ構造物200を補強するための補強部材220の少なくとも一部を模した補強部20を主構造部10に取り付けて補強試験体を形成することと、補強試験体に載荷しながら変位を計測することと、補強試験体への載荷を維持しつつ補強試験体から劣化領域部13を取り外して劣化試験体を形成することと、劣化試験体に載荷しながら変位を計測することとを含むように構成した。このような構成の採用によって、主構造部10に曲げモーメントがかかった状態で補強部20を装着した後、劣化領域部13を取り外すことによって、主構造部10にかかっていた曲げモーメントの一部が補強部20へと分配される前後の主構造部10及び補強部20の変位及び歪みを定量化することができる。従って、補強された複合構造を有する構造物200において、初期構造の劣化による応力の分配を精度よく評価することが可能となる。
【0048】
次に、本開示の第2実施形態に係る試験装置500、試験体530及び試験方法について説明する。本実施形態の試験体530は、第1実施形態の試験体30を上下方向が長手方向となるように縦置きしており、図9におけるZ軸プラス方向を上方、Z軸マイナス方向を下方とする。また、図9におけるX軸方向を左右方向とし、Y軸方向を奥行き方向とする。
【0049】
本実施形態では、上下方向に延びる主構造部510の基部511の右側面に劣化領域部513及び非劣化領域部512を装着し、基部511の左側面に補強部520が装着されている。
【0050】
なお、本実施形態にかかる試験体530は、第1実施形態の試験体30を縦置きしており、材質や寸法は異なるものの、構造については近似しているため、ここでの更なる説明は省略する。
【0051】
載荷部550は、板状の主構造部510の上端部531を下方に向けて載荷している。また、支持部540aが主構造部510の下端部532を下方から支持するとともに、他の支持部540bは、試験体530の下端部近傍の非劣化領域部512の右面及び基部511の左面を支持している。この構成によって、載荷部550の駆動部553が載荷板552を介して主構造部510の上端部531を下方に押下することによって、試験体530に圧縮応力を加えることができる。
【0052】
すなわち、図9に示す試験装置500は、図10に示すような橋梁の一部をなすH型鋼である構造物600のウェブ602部分を模した主構造部510と、ウェブ602を補強するための補強部材620を模した補強部520とを備えた試験体530と、試験体530の下部3箇所を支持する支持部540a及び540bと、試験体530に上方から載荷する載荷部550と、載荷された試験体530を計測する計測部60とを備えている。
【0053】
本実施形態の試験体530は、上フランジ601、ウェブ602及び下フランジ603を有するH型鋼である構造物600において、ウェブ602の側方に補強部材620を組み合わせた複合構造を模しており、主構造部510、補強部520、及び劣化領域部513は、それぞれ初期のウェブ602、補強部材620、及びウェブ602のうち劣化により構造物600として機能しなくなった部位に対応している。
【0054】
主構造部510や補強部520の材料には、ウェブ602や補強部材620と同じ材料を用いることが好ましく、例えばSM490Bなどの溶接構造用圧延鋼やSS540などの高張力の一般構造用圧延鋼材等を用いることができる。
【0055】
載荷部550は、図9に示すように、主構造部510の上端部531に当接する載荷板552と、載荷板552を下方に押圧する駆動部553とを備えている。
【0056】
試験装置500の制御を行う制御回路400の構成例については、第1実施形態と同様に図4の構成を用いることができる。試験体530の歪みについては、歪みゲージGを例えば非劣化領域部512における右側面や補強部520の左側面などに装着することによって、圧縮歪みを検出することができる。制御部410は、押圧荷重から換算した圧縮応力をモニターすることができる。制御部410は、試験体530にかかる圧縮応力と試験体530の変位及び歪みとの関係をデータ化することができる。
【0057】
本実施形態にかかる試験装置500による試験方法の実行手順については、第1実施形態(図5)との差異点に絞って説明する。
【0058】
まず、試験装置500の作業者は、試験体530のうち、主構造部510のみを試験装置500に設置する(図5のステップS101)。この試験体530の設置は、ボルト及びナットを緩めることで補強部520を主構造部510から取り外し、主構造部510の下端部を支持部540a,540b上に固定することにより実行される。
【0059】
制御部410は、載荷板552の変位量を変位センサ450から取得すると共に、ロードセル440から試験体530に作用している押圧荷重値を取得し、載荷する圧縮応力を算出する。
【0060】
制御部410は、試験体530に配置した歪みゲージGから、試験体530の歪みを取得する。制御部410は、載荷部550の載荷板552の変位量と、ロードセル440からの荷重値(又は圧縮応力)と、歪みゲージGからの歪みとをほぼ同時に取得して記憶部430に記憶する。
【0061】
制御部410は、試験体530に係る圧縮応力、変位量、又は圧縮歪みが所定値に達するまで載荷板52を移動させつつ、載荷板52の荷重値(又は圧縮応力)、変位量、及び歪みを取得し、記憶部430に記憶する。制御部410は、圧縮応力、変位量、又は歪みが所定値に達すると、載荷板52の移動を停止して載荷した状態を継続する。
【0062】
制御部410は、本実施形態の試験装置500により取得された主構造部510の圧縮応力-変位特性、及び圧縮応力-歪み特性を表示部480に表示する。以上の動作により、主構造部510に圧縮応力を載荷しながら試験体530の変位及び歪みを計測する(図5のステップS102)。
【0063】
次に、作業者は、主構造部510に載荷した状態を維持したまま、主構造部510に補強部520を取り付けて補強試験体を形成する(図5のステップS103)。そして、補強試験体に圧縮応力が載荷された状態で、補強試験体の変位及び歪みを計測する(図5のステップS104)。この状態では、既に加えられた圧縮応力により主構造部510が変形した状態で補強部520を取り付けているため、補強部520が応力分担することがなく、主構造部510の変位及び歪みは変化しないはずである。
【0064】
この試験体530(補強試験体)の状態は、橋梁の構造物600に橋梁重量等の死荷重がかかった状態のまま、ウェブ602の側方に補強部材620を形成した状態を模したものである。橋梁上を走行する車両等の一定の活荷重を更に仮定して評価を行ってもよい。
【0065】
なお、図10に示すような劣化したウェブ602の両側の側方に補強部材620を固定した状態を模すため、図9において主構造部510に関して補強部520の反対側にも更なる補強部を固定してもよい。その場合、補強部520を装着したまま劣化領域部513を取り外すことができるように各部材のレイアウトや着脱方法を見直してもよい。
【0066】
次に、作業者は、補強試験体に載荷した状態のまま、補強試験体から劣化領域部513を取り外して劣化試験体を形成する(図5のステップS105)。このステップS105では、補強試験体から劣化領域部513を取り外すことによって、それまで主構造部510が支えてきた荷重の一部を支えられなくなるため、主構造部510から補強部520への応力の分配が発生する。劣化試験体に圧縮応力が載荷され、この応力分配が発生した状態で、劣化試験体の変位及び歪みを計測する(図5のステップS106)。
【0067】
なお、この試験体530(劣化試験体)の状態は、ウェブ602に橋梁重量等の死荷重がかかった状態で補強部材620が形成された後、ウェブ602の一部が劣化した状態を模したものである。
【0068】
以上述べたように、本実施形態では、載荷板552は、主構造部510における下端部及び下部側面を支持するように構成した。このような構成の採用によって、縦長となる姿勢で支持された構造物600の圧縮応力による変位及び歪みを容易に評価することができる。
【0069】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0070】
例えば、第1実施形態では、主構造部10が構造物200の一部を模したものであり、補強部20が補強部材220の一部を模したものとして構成したが、この態様には限定されない。主構造部10及び補強部20が、それぞれ構造物200及び補強部材220の全体を模した試験体を構成するようにしてもよい。
【0071】
また、第1実施形態では、四点曲げ試験により評価するように構成したが、この態様には限定されず、三点曲げ試験など他の試験法に基づいて評価を行ってもよいし、分布荷重を与えることにより評価を行ってもよい。
【0072】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0073】
(付記項1)
構造物の少なくとも一部を模した主構造部と、
前記構造物を補強するための補強部材の少なくとも一部を模した補強部と
を備えた試験体と、
前記試験体を支持する支持部と、
前記試験体に載荷する載荷部と、
載荷された前記試験体を計測する計測部と
を備える試験装置であって、
前記主構造部は、前記構造物の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部を含み、該劣化領域部は前記主構造部の他の部位に対して着脱可能とされている、試験装置。
(付記項2)
前記劣化領域部は、板状の前記主構造部の厚み方向に着脱可能であり、前記主構造部の面方向の略中央位置に位置する、付記項1に記載の試験装置。
(付記項3)
前記劣化領域部を前記主構造部に固定する固定部は、平面視及び底面視において前記補強部と重なっておらず、
前記補強部を前記主構造部に固定する固定部は、平面視及び底面視において前記劣化領域部と重なっていない、付記項1又は2に記載の試験装置。
(付記項4)
前記補強部は、前記主構造部における前記劣化領域部とは反対側の面に装着される、付記項1から3のいずれか一項に記載の試験装置。
(付記項5)
前記載荷部は、板状の前記主構造部における一方の面の前記劣化領域部ではない2点に載荷し、
前記支持部は、前記主構造部における他方の面の前記補強部ではない2点を支持する、付記項1から4のいずれか一項に記載の試験装置。
(付記項6)
前記載荷部は、前記主構造部における上端部を下方に向けて載荷し、
前記支持部は、前記主構造部における下端部及び下部側面を支持する、付記項1から4のいずれか一項に記載の試験装置。
(付記項7)
構造物の少なくとも一部を模した主構造部と、
前記構造物を補強するための補強部材の少なくとも一部を模した補強部と
を備えた試験体であって、
前記主構造部は、前記構造物の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部を含み、該劣化領域部は前記主構造部の他の部位に対して着脱可能とされている、試験体。
(付記項8)
構造物の少なくとも一部を模した主構造部であって、該主構造部は前記構造物の使用による劣化部位の少なくとも一部を表す劣化領域部を含む、該主構造部を試験装置に設置することと、
前記主構造部に載荷しながら変位を計測することと、
前記主構造部への載荷を維持しつつ前記構造物を補強するための補強部材の少なくとも一部を模した補強部を前記主構造部に取り付けて補強試験体を形成することと、
前記補強試験体に載荷しながら変位を計測することと、
前記補強試験体への載荷を維持しつつ前記補強試験体から前記劣化領域部を取り外して劣化試験体を形成することと、
前記劣化試験体に載荷しながら変位を計測することと
を含む、試験方法。
【符号の説明】
【0074】
10 主構造部
11 基部
12 非劣化領域部
12a,13a,14a,21a ボルト
12b,13b,14b,21b ナット
13 劣化領域部
14 連結板
20 補強部
21 補強基部
30 試験体
40 支持部
50 載荷部
51 押圧部
52 載荷板
53 駆動部
60 計測部
100 試験装置
200 構造物
200’ 劣化していない構造物
220 補強部材
300 土壌
400 制御回路
410 制御部
420 入力部
430 記憶部
440 ロードセル
450 変位センサ
460 流量調整バルブ
480 表示部
500 試験装置
510 主構造部
511 基部
512 非劣化領域部
513 劣化領域部
520 補強部
530 試験体
531 上端部
532 下端部
540a 支持部
540b 支持部
550 載荷部
552 載荷板
553 駆動部
600 構造物
601 上フランジ
602 ウェブ
603 下フランジ
620 補強部材
G 歪みゲージ
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10