IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-内視鏡用チューブ及び内視鏡 図1
  • 特開-内視鏡用チューブ及び内視鏡 図2
  • 特開-内視鏡用チューブ及び内視鏡 図3
  • 特開-内視鏡用チューブ及び内視鏡 図4
  • 特開-内視鏡用チューブ及び内視鏡 図5
  • 特開-内視鏡用チューブ及び内視鏡 図6
  • 特開-内視鏡用チューブ及び内視鏡 図7
  • 特開-内視鏡用チューブ及び内視鏡 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173018
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】内視鏡用チューブ及び内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A61B1/005 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091128
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】下山 雄土
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161FF34
4C161FF35
4C161JJ06
4C161JJ11
(57)【要約】
【課題】先端側チューブの座屈及び太径化を防止可能な内視鏡用チューブ及び内視鏡を提供する。
【解決手段】先端側チューブ50と、先端側チューブ50の外面である第1チューブ外面50aの少なくとも一部に巻き付けられたコイル58と、基端側チューブ60と、先端側チューブ50と基端側チューブ60とを接続する接続パイプ70と、を備え、先端側チューブ50が、コイル58の基端よりも先端側チューブ50の基端側に位置するチューブ基端部(第1チューブ基端部54)を有し、チューブ基端部が、接続パイプ70に接続されて接続パイプ70に接触している接続領域W1Aと、接続パイプ70よりも先端側チューブ50の先端側に位置する非接続領域W1Bと、を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿入部内に挿通される内視鏡用チューブにおいて、
先端側チューブと、
前記先端側チューブの外面である第1チューブ外面の少なくとも一部に巻き付けられたコイルと、
基端側チューブと、
前記先端側チューブと前記基端側チューブとを接続する接続パイプと、
を備え、
前記先端側チューブが、前記コイルの基端よりも前記先端側チューブの基端側に位置するチューブ基端部を有し、
前記チューブ基端部が、前記接続パイプに接続されて前記接続パイプに接触している接続領域と、前記接続パイプよりも前記先端側チューブの先端側に位置する非接続領域と、を有する内視鏡用チューブ。
【請求項2】
前記第1チューブ外面の少なくとも一部に螺旋状の溝が形成され、
前記コイルが、前記チューブ基端部よりも前記先端側チューブの先端側で前記溝の少なくとも一部に巻き付けられ、
前記チューブ基端部の第1チューブ外面には前記溝が形成されている請求項1に記載の内視鏡用チューブ。
【請求項3】
前記接続パイプの外面であるパイプ外面には、前記接続パイプの径方向外側に突出したフランジが設けられており、
前記フランジに、前記チューブ基端部の基端と、前記基端側チューブの先端と、が当接している請求項1に記載の内視鏡用チューブ。
【請求項4】
前記接続パイプの先端部であるパイプ先端部の内面に形成され、前記パイプ先端部の先端側に向かって前記パイプ先端部の内径を拡径する先端側拡径面と、
前記接続パイプの基端部であるパイプ基端部の内面に形成され、前記パイプ基端部の基端側に向かって前記パイプ基端部の内径を拡径する基端側拡径面と、
の少なくとも一方を備える請求項1に記載の内視鏡用チューブ。
【請求項5】
前記基端側チューブの外面である第2チューブ外面が平滑面である請求項1に記載の内視鏡用チューブ。
【請求項6】
前記非接続領域の長さが40mmから60mmである請求項1に記載の内視鏡用チューブ。
【請求項7】
前記基端側チューブが、前記接続パイプに接続されるチューブ先端部を有し、
前記コイルの外径が、前記チューブ基端部及び前記チューブ先端部の少なくとも一方の外径よりも小さい請求項1に記載の内視鏡用チューブ。
【請求項8】
湾曲部と前記湾曲部に接続された軟性部とを有する挿入部と、
前記挿入部内に挿通された請求項1から7のいずれか1項に記載の内視鏡用チューブと、
を備える内視鏡。
【請求項9】
前記先端側チューブが、前記湾曲部内に配置され、
前記基端側チューブ及び前記接続パイプが、前記軟性部内に配置されている請求項8に記載の内視鏡。
【請求項10】
前記接続パイプが、前記挿入部の先端から200mmから400mmの間に配置されている請求項9に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の挿入部内に挿通される内視鏡用チューブ、及びこの内視鏡用チューブを備える内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において気管支鏡及び超音波内視鏡等の各種の内視鏡が利用されている。内視鏡は、被検体に挿入される挿入部と、操作部とを備えている。このような内視鏡では、操作部に設けられた処置具導入口から各種の処置具を導入し、この処置具を、挿入部の先端部に開口した処置具導出口から外部に導出して処置に用いる。そして、内視鏡の挿入部の内部には、例えば、処置具が挿通される処置具挿通チューブ(チャンネルともいう)などの内視鏡用チューブが挿通配置されている。
【0003】
特許文献1から特許文献4には、挿入部が湾曲した場合に内視鏡用チューブが座屈することを防止するために、内視鏡用チューブの外面の一部に螺旋溝を形成して、この螺旋溝にコイルを巻き付けることが記載されている。
【0004】
ここで特許文献4には、内視鏡用チューブを容易且つ精度良く製造するために、内視鏡用チューブを先端側チューブ及び基端側チューブの2本のチューブで構成して、先端側チューブと基端側チューブとを接続パイプで接続することで内視鏡用チューブを製造する方法が記載されている。
【0005】
特許文献4に記載の先端側チューブの基端部は、接続パイプの先端側に外嵌接続される接続領域と、コイルが巻き付けられているコイル巻付領域と、を有する。接続領域は、先端側チューブの基端部の最も基端側に設けられており、コイルが巻き付けられていない非巻付領域である。コイル巻付領域は、接続領域の先端側に連続して設けられている。これにより、先端側チューブの基端部の外面には、接続パイプに外嵌接続している接続領域の直近位置までコイルが巻き付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-000330号公報
【特許文献2】特開2009-247413号公報
【特許文献3】特開2008-229067号公報
【特許文献4】国際公開第2013/088791号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に記載の内視鏡用チューブでは、先端側チューブの基端部の外面にコイルを巻き付ける場合に、接続領域の直近位置までコイルを巻き付けている。このため、操作部での湾曲操作に応じて挿入部の湾曲部が湾曲した場合に、挿入部内での接続領域の位置によっては接続領域の直近位置(接続領域とコイル巻付領域との境界)に応力が集中して座屈が発生するおそれがある。また、コイルが接続領域に乗り上げることでこの接続領域の外径が増加するおそれがある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、先端側チューブの座屈及び太径化を防止可能な内視鏡用チューブ及び内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様に係る内視鏡用チューブは、内視鏡の挿入部内に挿通される内視鏡用チューブにおいて、先端側チューブと、先端側チューブの外面である第1チューブ外面の少なくとも一部に巻き付けられたコイルと、基端側チューブと、先端側チューブと基端側チューブとを接続する接続パイプと、を備え、先端側チューブが、コイルの基端よりも先端側チューブの基端側に位置するチューブ基端部を有し、チューブ基端部が、接続パイプに接続されて接続パイプに接触している接続領域と、接続パイプよりも先端側チューブの先端側に位置する非接続領域と、を有する。
【0010】
この内視鏡チューブによれば、先端側チューブの座屈及び太径化が防止される。
【0011】
本発明の第2態様に係る内視鏡用チューブは、第1態様において、第1チューブ外面の少なくとも一部に螺旋状の溝が形成され、コイルが、チューブ基端部よりも先端側チューブの先端側で溝の少なくとも一部に巻き付けられ、チューブ基端部の第1チューブ外面には溝が形成されている。
【0012】
本発明の第3態様に係る内視鏡用チューブは、第1態様又は第2態様において、接続パイプの外面であるパイプ外面には、接続パイプの径方向外側に突出したフランジが設けられており、フランジに、チューブ基端部の基端と、基端側チューブの先端と、が当接している。これにより、接続パイプにチューブ基端部及び基端側チューブを接続する際に、チューブ基端部の基端の位置と、基端側チューブの先端の位置とを位置決めすることができる。
【0013】
本発明の第4態様に係る内視鏡用チューブは、第1態様から第3態様のいずれかにおいて、接続パイプの先端部であるパイプ先端部の内面に形成され、パイプ先端部の先端側に向かってパイプ先端部の内径を拡径する先端側拡径面と、接続パイプの基端部であるパイプ基端部の内面に形成され、パイプ基端部の基端側に向かってパイプ基端部の内径を拡径する基端側拡径面と、の少なくとも一方を備える。これにより、先端側チューブの内面と接続パイプの内面との段差を小さくしたり、基端側チューブの内面と接続パイプの内面との段差を小さくしたりすることができる。
【0014】
本発明の第5態様に係る内視鏡用チューブは、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、基端側チューブの外面である第2チューブ外面が平滑面である。
【0015】
本発明の第6態様に係る内視鏡用チューブは、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、非接続領域の長さが40mmから60mmである。
【0016】
本発明の第7態様に係る内視鏡用チューブは、第1態様から第6態様のいずれかにおいて、基端側チューブが、接続パイプに接続されるチューブ先端部を有し、コイルの外径が、チューブ基端部及びチューブ先端部の少なくとも一方の外径よりも小さい。これにより、コイルが巻き付けられている先端側チューブの太径化が防止される。
【0017】
本発明の第8態様に係る内視鏡は、湾曲部と湾曲部に接続された軟性部とを有する挿入部と、挿入部内に挿通された第1態様から第7態様のいずれかの内視鏡用チューブと、を備える。
【0018】
本発明の第9態様に係る内視鏡は、第8態様において、先端側チューブが、湾曲部内に配置され、基端側チューブ及び接続パイプが、軟性部内に配置されている。
【0019】
本発明の第10態様に係る内視鏡は、第8態様又は第9態様において、接続パイプが、挿入部の先端から200mmから400mmの間に配置されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、先端側チューブの座屈及び太径化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】内視鏡の全体図である。
図2】先端部本体の斜視図である。
図3】処置具挿通チューブの側面図である。
図4図3中の処置具挿通チューブの楕円Cで示した部分の拡大図である。
図5】処置具挿通チューブの分解図である。
図6】接続パイプの拡大図である。
図7】接続パイプの断面拡大図である。
図8】第1チューブ基端部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[内視鏡の全体構成]
図1は、内視鏡1の全体図である。図1に示すように、内視鏡1は、例えば気管支鏡であり、気管、気管支及び肺の観察部位(病変部、検査部位又は診察部位でも可)の観察及び細胞組織の採取などに用いられる。気管支鏡はその使用箇所から消化器内視鏡に比べて細径であることが求められ、処置具挿通チューブ23(図3参照)を有するものでも先端部本体34の外径は4mm~6mm、軟性部30の外径は4mm~7mmのものが用いられる。
【0023】
内視鏡1は、施術者が把持して各種操作を行う操作部10と、患者の体内に挿入される挿入部12と、ユニバーサルコード14と、を備える。内視鏡1は、ユニバーサルコード14を介して、内視鏡システムを構成する不図示のプロセッサ装置及び光源装置等のシステム構成装置に接続される。
【0024】
操作部10には、施術者によって操作される各種操作部材が設けられており、例えば、アングルレバー16及び吸引ボタン22などが設けられている。
【0025】
また、操作部10には、処置具導入部25が設けられている。この処置具導入部25には、挿入部12内の処置具挿通チューブ23(図3参照)に処置具(図示は省略、以下同じ)を挿入するための処置具導入口24が設けられている。
【0026】
挿入部12は、操作部10の先端から延出されており、全体が細径で長尺状に形成されている。挿入部12は、その基端側から先端側に向かって順に軟性部30、受動湾曲部31、湾曲部32及び先端部本体34により構成されている。
【0027】
軟性部30は、挿入部12の基端側からの大部分を占めており、例えば不図示の金属製の螺旋管(螺旋状に巻回された金属板)及びネットにより構成され、さらにこれらの外周を樹脂で被覆することで構成されている。この軟性部30は、任意の方向に湾曲可能な可撓性を有しており、挿入部12を体腔内に挿入した場合には体腔内への挿入経路に沿って湾曲する。
【0028】
受動湾曲部31は、例えば不図示の金属製の螺旋管(螺旋状に巻かれた金属板)及びネットにより構成されており、さらに後述の湾曲部32と共に不図示のアングルゴムが被せられる。この受動湾曲部31は、外力に応じて受動的に湾曲できるように軟性部30より柔軟に構成されており、挿入部12を体腔内に挿入した場合には軟性部30と同様に体腔内への挿入経路に沿って湾曲する。
【0029】
湾曲部32は、例えば不図示の複数の湾曲駒を連結して構成されており、操作部10のアングルレバー16をA1方向に回転操作することによって上下方向(A2方向)に能動的に湾曲可能な能動湾曲部である。この湾曲部32を湾曲動作させることによって先端部本体34を所望の方向に向けることができる。なお、アングルレバー16の代わりに一対のアングルノブを設けて、一対のアングルノブを回転操作することで湾曲部32を上下方向及び左右方向に湾曲させてもよい。
【0030】
図2は、先端部本体34の斜視図である。図2に示すように、先端部本体34の先端面34aには、観察窓40と、一対の照明窓42と、処置具導出口44と、が設けられている。先端部本体34の内部で観察窓40の後方には、図示は省略するが、レンズなどにより構成される観察光学系と、撮像素子などにより構成される撮像部と、が設けられている。撮像部は、観察光学系を通して観察部位を撮影して観察画像の信号を出力する。
【0031】
先端部本体34の内部で一対の照明窓42の後方には、それぞれ不図示のライトガイドの出射端が配置される。
【0032】
処置具導出口44は、処置具導入口24から処置具挿通チューブ23(図3参照)に挿入された処置具を導出する。
【0033】
図1に戻って、ユニバーサルコード14は、図示は省略するが、上述の観察光学系の撮像素子に接続された信号ケーブル、及び上述のライトガイドなどを内包している。ユニバーサルコード14の不図示の端部にはコネクタが備えられている。コネクタは、プロセッサ装置及び光源装置 等の内視鏡システムを構成する所定のシステム構成装置に接続される。これにより、システム構成装置から内視鏡1に対して、内視鏡1の運用に必要な電力、制御信号、及び照明光等が供給される。また、観察光学系により取得された観察画像の信号が内視鏡1からシステム構成装置(プロセッサ装置)に対して伝送される。なお、システム構成装置に伝送された信号は画像処理され、観察部位の観察画像が不図示のモニタに表示される。また、システム構成装置(光源装置)からライトガイドに照明光が供給されて、一対の照明窓42から観察部位に照明光が照射される。
【0034】
なお、操作部10及び先端部本体34の構成は、図1及び図2に示した態様に特に限定されず、公知の気管支鏡で採用されている各種構成に変更可能である。
【0035】
[処置具挿通チューブ]
図3は、処置具挿通チューブ23の側面図である。図4は、図3中の処置具挿通チューブ23の楕円Cで示した部分の拡大図である。図5は、処置具挿通チューブ23の分解図である。
【0036】
図3から図5に示すように、処置具挿通チューブ23(処置具挿通チャンネルともいう)は、本発明の内視鏡用チューブに相当する樹脂チューブであり、処置具導入口24と公知の分岐部(図示は省略)を介して処置具導出口44と接続して、処置具導入口24に挿入された処置具を処置具導出口44へ案内する。なお、図3及び図4において、符号WAは挿入部12の中で受動湾曲部31及び湾曲部32の範囲を示す湾曲部範囲であり、符号WBは挿入部12の中で軟性部30の範囲を示す軟性部範囲である。
【0037】
処置具挿通チューブ23は、先端側チューブ50と、先端側チューブ50の外面に巻き付けられた(巻き回された)コイル58と、基端側チューブ60と、接続パイプ70と、により構成される。なお、図3では図面の煩雑化を防止するため、コイル58の図示は省略している。
【0038】
先端側チューブ50は、湾曲部範囲WAに配置、すなわち湾曲部32内及び受動湾曲部31内に配置されている。先端側チューブ50は、例えばPTFE(polytetrafluoroethylene)チューブである。なお、ここでは受動湾曲部31も本発明の「湾曲部」に含まれる。また、先端側チューブ50の全体が湾曲部範囲WA内に配置されている必要はなく、先端側チューブ50の一部(例えば後述の第1チューブ基端部54)が軟性部範囲WB、すなわち軟性部30内に配置されていてもよい。
【0039】
先端側チューブ50は、処置具導出口44に接続される第1チューブ先端部52と、後述の接続パイプ70の先端側に接続される第1チューブ基端部54(本発明のチューブ基端部に相当)と、を有する。
【0040】
先端側チューブ50の外面である第1チューブ外面50a(図4等参照)の全領域(ほぼ全領域を含む)には、コイル58を巻き付けるための螺旋状の溝である螺旋溝56が形成されている。なお、第1チューブ外面50aの全領域に螺旋溝56を形成することなく、螺旋溝56が第1チューブ外面50aの一部に形成されていてもよい。すなわち、螺旋溝56は、第1チューブ外面50aの少なくとも一部に形成されていればよい。
【0041】
コイル58は、第1チューブ先端部52の第1チューブ外面50aに形成された螺旋溝56に巻き付けられている。これにより、先端側チューブ50の第1チューブ外面50aの中で第1チューブ基端部54よりも先端側の全領域(ほぼ全領域を含む)にコイル58が巻き付けられる。換言すると、第1チューブ基端部54は、コイル58の基端よりも先端側チューブ50の基端側に位置する。なお、コイル58を螺旋溝56の全てに巻き付けることなく、コイル58が螺旋溝56の一部に巻き付けられていてもよい。すなわち、コイル58は、第1チューブ基端部54よりも先端側で螺旋溝56の少なくとも一部に巻き付けられていればよい。コイル58は、湾曲部32内及び受動湾曲部31が湾曲した場合に先端側チューブ50の座屈を防止する。なお、第1チューブ基端部54については後述する(後述の図8参照)。
【0042】
コイル58の外径は、第1チューブ基端部54の外径及び後述の基端側チューブ60の第2チューブ先端部62の外径の少なくとも一方よりも小さく形成されている。これにより、コイル58が巻き付けられている先端側チューブ50の太径化が防止される。
【0043】
基端側チューブ60は、軟性部範囲WBに配置、すなわち軟性部30内に配置されている。基端側チューブ60は、例えばPTFE(polytetrafluoroethylene)チューブである。この基端側チューブ60は、接続パイプ70の基端側 に接続される第2チューブ先端部62と、処置具導入口24に接続される不図示の第2チューブ基端部と、を有する。
【0044】
基端側チューブ60の外面である第2チューブ外面60aは平滑面である。ここでいう平滑面とは、コイル58の巻き付け用の螺旋溝56が形成されていない面である。
【0045】
接続パイプ70は、軟性部範囲WBに配置、すなわち軟性部30内に配置されている。さらに本実施形態では、接続パイプ70を、軟性部30内であって且つ挿入部12の先端(先端面34a)から200mmから400mmの間に配置している。この接続パイプ70は、先端側チューブ50と基端側チューブ60とを接続する。
【0046】
図6は、接続パイプ70の拡大図である。図7は、接続パイプ70の断面拡大図である。図5から図7に示すように、接続パイプ70は、第1チューブ基端部54が外嵌接続されるパイプ先端部72と、第2チューブ先端部62が外嵌接続されるパイプ基端部74と、を備える。
【0047】
パイプ先端部72の外径が第1チューブ基端部54の内径よりも僅かに大きいので、第1チューブ基端部54をパイプ先端部72に外嵌接続した場合には、第1チューブ基端部54がパイプ先端部72により拡径される。また同様に、パイプ基端部74の外径が第2チューブ先端部62の内径よりも僅かに大きいので、第2チューブ先端部62をパイプ基端部74に外嵌接続した場合には、第2チューブ先端部62がパイプ基端部74により拡径される。
【0048】
第1チューブ基端部54とパイプ先端部72とは不図示の接着剤(例えばエポキシ樹脂)で固定される。また同様に、第2チューブ先端部62とパイプ基端部74とも接着剤で固定される。
【0049】
接続パイプ70の外面であるパイプ外面70aには、接続パイプ70の径方向外側に突出したフランジ76が設けられている。フランジ76には、パイプ先端部72に外嵌接続した第1チューブ基端部54の基端と、パイプ基端部74に外嵌接続した第2チューブ先端部62の先端と、が当接する。これにより、第1チューブ基端部54の基端及び第2チューブ先端部62の先端を位置決めすることができる。なお、第1チューブ基端部54の基端とフランジ76との間、及び第2チューブ先端部62の先端とフランジ76との間に、それぞれ上述の接着剤の充填用の隙間があってもよい。
【0050】
接続パイプ70の内面であるパイプ内面78には、先端側拡径面78aと基端側拡径面78bとが形成されている(図7参照)。
【0051】
先端側拡径面78aは、パイプ先端部72のパイプ内面78であり、パイプ先端部72の先端側に向かってパイプ先端部72の内径を次第に拡径するテーパ面である。また、基端側拡径面78bは、パイプ基端部74のパイプ内面78であり、パイプ基端部74の基端側に向かってパイプ基端部74の内径を次第に拡径するテーパ面である。
【0052】
先端側拡径面78aを形成することで、第1チューブ基端部54とパイプ先端部72との接続部分において、第1チューブ基端部54の内面とパイプ先端部72の内面(先端側拡径面78a)との間に生じる段差が小さくなる。また、基端側拡径面78bを形成することで、パイプ基端部74と第2チューブ先端部62との接続部分において、パイプ基端部74の内面(基端側拡径面78b)と第2チューブ先端部62の内面との間に生じる段差が小さくなる。これにより、処置具挿通チューブ23内に挿通された処置具の先端部が接続パイプ70内を通過する場合に、処置具の先端部がこれらの段差に引っ掛かることが防止される。その結果、処置具挿通チューブ23内での処置具の先端部のスムーズな移動が可能になる。
【0053】
なお、本実施形態では、パイプ内面78に先端側拡径面78a及び基端側拡径面78bの両方を形成しているが、いずれか一方のみを形成してもよい。また、先端側拡径面78a及び基端側拡径面78bは、処置具の先端部のスムーズな移動を妨げなければ、一部に内径が変化しない部分が含まれていたり或いは曲面状に形成されていたりしてもよい。
【0054】
[第1チューブ基端部]
図8は、第1チューブ基端部54の拡大図である。図8に示すように、第1チューブ基端部54は非巻付領域W1を有する。非巻付領域W1は、第1チューブ外面50aに螺旋溝56が形成されているがこの螺旋溝56にコイル58が巻き付けられていない領域である。この非巻付領域W1は、接続領域W1Aと非接続領域W1Bとを含む。
【0055】
接続領域W1Aは、第1チューブ基端部54の中で最も基端側の領域であり、パイプ先端部72に対して外嵌接続されてこのパイプ先端部72に接触している。
【0056】
非接続領域W1Bは、接続領域W1Aの先端側に連続して設けられており、パイプ先端部72よりも先端側に位置する領域である。この非接続領域W1Bの長さは、例えば40mmから60mmである。なお、非接続領域W1Bの先端側、すなわち第1チューブ基端部54の先端側にはコイル巻付領域W2が連続して設けられている。コイル巻付領域W2は、第1チューブ外面50aに形成された螺旋溝56にコイル58が巻き付けられている領域である。
【0057】
ここで、接続領域W1Aの先端側に非接続領域W1Bを設けない場合、すなわち第1チューブ基端部54の第1チューブ外面50aに対して接続領域W1Aの直近位置までコイル58を巻き付けると、挿入部12の湾曲部32等が湾曲した場合に上述の直近位置に応力が集中して座屈が発生するおそれがある。また、コイル58が接続領域W1Aに乗り上げてしまうことで、この接続領域W1Aの外径が増加するおそれがある。
【0058】
これに対して本実施形態では、接続領域W1Aの先端側にコイル58が巻き付けられていない非接続領域W1Bを設けることで、挿入部12の湾曲部32等が湾曲した場合に、応力が上述の直近位置に集中することなく非接続領域W1Bの全体に分散されるため、第1チューブ基端部54の座屈が防止される。また、座屈防止の効果は非巻付領域W1の配置によっても影響を受ける。ここで、上述の通り、第1チューブ基端部54(非巻付領域W1)は軟性部30内に配置可能であるので、非巻付領域W1を曲率半径が小さい湾曲部32内に配置するよりも、曲率半径が大きい軟性部30内に配置することで座屈の防止効果がより得られる。さらに、挿入部12の湾曲部32等が湾曲した場合にコイル58が接続領域W1Aに乗り上げることが防止されるので、接続領域W1Aの太径化が防止される。その結果、先端側チューブ50の第1チューブ基端部54の座屈及び太径化が防止される。
【0059】
[その他]
上記実施形態では、第1チューブ基端部54の第1チューブ外面50aの全領域に螺旋溝56が形成されているが、この第1チューブ外面50aの一部に螺旋溝56が形成されていない領域が設けられていてもよい。
【0060】
上記実施形態では、先端側チューブ50の第1チューブ外面50aに形成された螺旋溝56にコイル58を巻き付けているが、第1チューブ外面50aにコイル58を巻き付ける方法は螺旋溝56に限定されるものではなく、螺旋溝56以外の他の方法で第1チューブ外面50aにコイル58を巻き付けている場合にも本発明を適用可能である。
【0061】
上記実施形態では、先端側チューブ50の第1チューブ基端部54と、基端側チューブ60の第2チューブ先端部62とをそれぞれ接続パイプ70に外嵌接続させているが、接続パイプ70に対する第1チューブ基端部54及び第2チューブ先端部62の接続方法は特に限定はされない。
【0062】
上記実施形態では挿入部12に受動湾曲部31が設けられているが、挿入部12に受動湾曲部31を設けずに、湾曲部32の基端に軟性部30が直接連設されている場合にも本発明を適用可能である。
【0063】
上記実施形態では、基端側チューブ60の第2チューブ外面60aが平滑面に形成されているが、先端側チューブ50と同様に、第2チューブ外面60aの少なくとも一部に螺旋溝56を形成して、この螺旋溝56の少なくとも一部にコイル58を巻き付けてもよい。さらに、この場合には第2チューブ先端部62を第1チューブ基端部54と同様の構造に形成してもよい。すなわち、第2チューブ先端部62に、その先端側から基端側に向かって、第2チューブ外面60aに螺旋溝56が形成されているがこの螺旋溝56にコイル58が巻き付けられていない基端側接続領域及び基端側非接続領域を設ける(図示は省略)。
【0064】
基端側接続領域は、接続領域W1Aに対応する領域であり、パイプ基端部74に外嵌接続される。基端側非接続領域は、非接続領域W1Bに対応する領域であり、基端側接続領域(パイプ基端部74)よりも基端側に位置する。これにより、先端側チューブ50と同様の理由によって、基端側チューブ60の第2チューブ先端部62の座屈及び太径化が防止される。
【0065】
上記実施形態では、本発明の内視鏡用チューブとして処置具挿通チューブ23を例に挙げて説明したが、挿入部12内に挿通される各種チューブ(チャンネル)に本発明を適用可能である。
【0066】
上記実施形態では、本発明の内視鏡として特に細径が求められる気管支鏡を例に挙げて説明したが、例えば超音波内視鏡及び消化器内視鏡などの各種挿入部内に内視鏡用チューブが挿通されている各種内視鏡に本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…内視鏡
10…操作部
12…挿入部
14…ユニバーサルコード
16…アングルレバー
22…吸引ボタン
23…処置具挿通チューブ
24…処置具導入口
25…処置具導入部
30…軟性部
31…受動湾曲部
32…湾曲部
34…先端部本体
34a…先端面
40…観察窓
42…照明窓
44…処置具導出口
50…先端側チューブ
50a…第1チューブ外面
52…第1チューブ先端部
54…第1チューブ基端部
56…螺旋溝
58…コイル
60…基端側チューブ
60a…第2チューブ外面
62…第2チューブ先端部
70…接続パイプ
70a…パイプ外面
72…パイプ先端部
74…パイプ基端部
76…フランジ
78…パイプ内面
78a…先端側拡径面
78b…基端側拡径面
C…楕円
W1…非巻付領域
W1A…接続領域
W1B…非接続領域
W2…コイル巻付領域
WA…湾曲部範囲
WB…軟性部範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8