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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173208
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】円筒研削機および円筒研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 5/02 20060101AFI20241205BHJP
   B24B 5/35 20060101ALI20241205BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241205BHJP
   B24B 51/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B24B5/02
B24B5/35
B24B41/06 J
B24B51/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091461
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】中川 和也
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C034AA02
3C034BB74
3C034BB81
3C034DD20
3C043AA03
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD05
3C043DD11
(57)【要約】
【課題】結晶棒のトラバース研削において、効率良く低コストで、かつ、結晶棒の位置ズレや折れの発生を防いで安定した品質で研削加工を行うことができる円筒研削機および円筒研削方法を提供する。
【解決手段】円筒研削機であって、結晶棒の両端の円錐状のコーン部およびテール部の有無に関わらずに結晶棒を支持可能なものであり、さらに、コーン部等の有無を自動判別可能な判別器と、トラバース研削における、一対の支持ユニットによる結晶棒を挟む挟力と、研削ユニットによる1回あたりの最大削り代とについて、コーン部等の有無別に設定値が登録されている制御器とを有しており、判別器により自動判別されたコーン部等の有無に対応する挟力と1回あたりの最大削り代の設定値を有する研削レシピが制御器により自動選択されて、該研削レシピに基づいてトラバース研削の自動実施が可能な円筒研削機。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶棒の端部を支持する支持装置が各々の先端に取り付けられている主軸と副軸とにより前記結晶棒を軸方向に挟んで軸周りに回転可能にする一対の支持ユニットと、該一対の支持ユニットに支持された結晶棒の軸方向に沿って移動しつつ該結晶棒の外周をトラバース研削する研削ユニットとを有する円筒研削機であって、
前記支持装置は、円錐状の結晶端部を支持可能な凹形状の第1支持部と、平坦な結晶端部を支持可能な第2支持部とを有しており、前記結晶棒の両端の円錐状のコーン部およびテール部の有無に関わらずに前記結晶棒を支持可能なものであり、
さらに、前記コーン部およびテール部の有無を自動判別可能な判別器と、
前記トラバース研削における、前記一対の支持ユニットによる前記結晶棒を挟む挟力と、前記研削ユニットによる1回あたりの最大削り代とについて、前記コーン部およびテール部の有無別に設定値が登録されている制御器とを有しており、
前記判別器により自動判別された前記コーン部およびテール部の有無に対応する前記挟力と前記1回あたりの最大削り代の設定値を有する研削レシピが前記制御器により自動選択されて、該研削レシピに基づいてトラバース研削の自動実施が可能なものであることを特徴とする円筒研削機。
【請求項2】
結晶棒の端部を支持する支持装置が各々の先端に取り付けられている主軸と副軸とにより前記結晶棒を軸方向に挟んで軸周りに回転可能にする一対の支持ユニットと、該一対の支持ユニットに支持された結晶棒の軸方向に沿って移動しつつ該結晶棒の外周をトラバース研削する研削ユニットとを有する円筒研削機を用い、前記結晶棒を円筒研削する方法であって、
前記支持装置として、円錐状の結晶端部を支持可能な凹形状の第1支持部と、平坦な結晶端部を支持可能な第2支持部とを有しており、前記結晶棒の両端の円錐状のコーン部およびテール部の有無に関わらずに前記結晶棒を支持可能なものを用意し、
さらに、前記コーン部およびテール部の有無を自動判別可能な判別器と、
前記トラバース研削における、前記一対の支持ユニットによる前記結晶棒を挟む挟力と、前記研削ユニットによる1回あたりの最大削り代とについて、前記コーン部およびテール部の有無別に設定値が登録されている制御器とを用意し、
前記一対の支持ユニットにより前記結晶棒を挟んで固定するとき、該結晶棒の前記コーン部およびテール部の有無を前記判別器により自動判別し、該自動判別した前記コーン部およびテール部の有無に対応する前記挟力と前記1回あたりの最大削り代の設定値を有する研削レシピを前記制御器により自動選択し、該研削レシピに基づいてトラバース研削を自動実施することを特徴とする円筒研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持装置が取り付けられている主軸及び副軸とによって結晶棒(シリコン単結晶インゴットなど)を軸方向に挟んで軸周りに回転可能に支持(固定)する支持ユニットと、結晶棒の軸方向に沿って移動しつつ結晶棒の外周をトラバース研削する研削ユニットを有する円筒研削機および円筒研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスはその性能向上と製造コストの低減のため、半導体デバイス製造に使用されるウェーハの大直径化が進んでいる。この半導体デバイス製造に使用されているウェーハは、チョクラルスキー法等により円柱状の直胴部の前後に円錐状のコーン部とテール部を有する結晶棒を作製し、円筒研削機にて結晶棒の外周を円筒研削後、軸方向に対して垂直にスライスして板状に切り出し、研磨工程を経て製造されている。近年1本の結晶棒から得るウェーハの枚数の増加やウェーハの大直径化に伴い、作製される結晶棒も長尺化・大直径化し、高重量化している。
【0003】
このような結晶棒を円筒研削する際、図5のような円筒研削機101を用いる。一般的な従来の円筒研削機101は、結晶棒7を機内外に搬送するための搬送ユニット116、結晶棒7を保持するための一対の支持ユニット104、結晶棒7の外周をトラバース研削するための研削ユニット105から構成されている。一対の支持ユニット104は、支持装置が各々の先端に取り付けられている主軸103aと副軸103bとを有しており、結晶棒7を軸方向に挟んで軸周りに回転可能にさせることができる。
【0004】
ここで図6図9を用いて円筒研削する結晶棒7の形態の例(7a~7d)について説明する。
図6は無転位結晶の結晶棒7aを表しており、結晶棒7aの両端(直胴部8の両側)のコーン部9及びテール部10の形状は円錐状となっている
また、育成途中に有転位化した図7にある結晶棒7bの場合、図5の主軸103a及び副軸103bの先端にある支持装置102a、102bによってこの結晶棒7bを軸方向に挟んで固定すると有転位部Dが崩壊し、正常に固定できないという問題がある。そのため、前処理として有転位部Dをバンドソー切断機などによって結晶軸方向に対して垂直に切断している。このようにして有転位部Dを切断した形態の結晶棒7cが図8である。
更には、何らかの理由により無転位の結晶棒7a、あるいは有転位化した結晶棒7b等から切り出された図9に示す円柱形状の結晶棒7dを円筒研削機にてトラバース研削することもある。
【0005】
以下では、便宜上、円錐状コーン部を「コーン有り9a」、円錐状テール部を「テール有り10a」、コーン部が垂直(平坦)に切断された平坦面を「コーン無し9b」、テール部が垂直(平坦)に切断された平坦面を「テール無し10b」と称する場合がある。
【0006】
円筒研削機にてトラバース研削するときの準備工程(ローディング工程)では、結晶棒を搬送ユニットにて円筒研削機内に搬送し、支持ユニットにより結晶棒を結晶軸方向に挟む。
ところで支持装置は、特許文献1のような図10、11に示す円錐孔を有する固定支持部114、垂直に切断された端面を支持する浮動支持部115にて構成されている。
コーン有り9a、及びテール有り10aは、図10に示すように円錐孔が設けられた固定支持部114にて支持される。
一方、コーン無し9b、及びテール無し10bは、図11に示すように垂直に切断された面を浮動支持部115にて支持される。なお、浮動支持部115は若干可動な構造となっている。前記前処理として結晶軸方向に対して垂直に切断する際、円筒外周の凸凹により正確に垂直に切断することが困難であるが、そのような切断面を有する結晶棒であっても、図11のように可動な浮動支持部115によって保持可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-207505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
準備工程(ローディング工程)にて、円筒研削機101内に搬送・支持された結晶棒7は、円筒研削する前の直径測定などを行い円筒研削される。ここでコーン(テール)有りの結晶棒の円筒研削時の様子を図12に示す。また、コーン(テール)無しの結晶棒の場合を図13に示す。研削ユニット105の砥石106によって結晶棒7はその外周を円筒研削されるが、結晶棒を仕上げ直径(最終目標の直径)にまで研削する時の削り代SRが1回あたりの最大削り代SRmを超える場合は、複数回に分けて円筒研削される。円筒研削中には砥石106の研削負荷により、砥石106の反対方向に外力EFが作用する。
図13に示すコーン無し9b、テール無し10bの場合では、垂直に切断された面と浮動支持部115で生じる摩擦力(支持摩擦力とも言う)よりも外力EF(あるいは研削負荷、1回あたりの最大削り代SRm)が大きくなると、円筒研削中に結晶棒7が動いてしまい(結晶棒の位置ズレ)、円筒研削面の研削不良や、直径精度不良が発生してしまう。一方、図12に示すコーン有り9a、テール有り10aの場合では、円錐孔にコーン部9、テール部10が入り込んだ状態での保持となるため、円筒研削中に結晶棒7が動いてしまうことはない。
【0009】
結晶棒7を結晶軸方向に挟み込み支持する摩擦力は、一対の支持ユニット104を結晶軸方向へ移動させて結晶棒7へ挟力CF(押付力とも言う)を与えることで得られる。一般的には円筒研削中に結晶棒7が動かぬようにコーン(テール)無しの場合の挟力を強くするが、同じ挟力でコーン(テール)有りを支持すると、コーン部9(テール部10)が円錐孔との接触部付近で折れてしまい、円筒研削面の研削不良や、直径精度不良が発生することがあった。また、コーン部9及びテール部10の円錐形状によるが、一般的に細い形状のテール側が折れやすかった。
【0010】
そこでコーン(テール)有り/無しのそれぞれ専用のセッティングをした円筒研削機を準備する方法もあるが、それぞれ加工する結晶棒の数と機械の数のバランスが悪いと機械の稼働率が低下するので現実的ではなかった。
またコーン(テール)有り/無しに合わせてその都度最適な研削レシピに手動で設定を変更する方法もあるが、その都度オペレーターが介在する作業となり、工数が増えてコストアップにつながっていた。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、結晶棒のトラバース研削において、効率良く低コストで、かつ、結晶棒の位置ズレや折れの発生を防いで安定した品質で研削加工を行うことができる円筒研削機および円筒研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、結晶棒の端部を支持する支持装置が各々の先端に取り付けられている主軸と副軸とにより前記結晶棒を軸方向に挟んで軸周りに回転可能にする一対の支持ユニットと、該一対の支持ユニットに支持された結晶棒の軸方向に沿って移動しつつ該結晶棒の外周をトラバース研削する研削ユニットとを有する円筒研削機であって、
前記支持装置は、円錐状の結晶端部を支持可能な凹形状の第1支持部と、平坦な結晶端部を支持可能な第2支持部とを有しており、前記結晶棒の両端の円錐状のコーン部およびテール部の有無に関わらずに前記結晶棒を支持可能なものであり、
さらに、前記コーン部およびテール部の有無を自動判別可能な判別器と、
前記トラバース研削における、前記一対の支持ユニットによる前記結晶棒を挟む挟力と、前記研削ユニットによる1回あたりの最大削り代とについて、前記コーン部およびテール部の有無別に設定値が登録されている制御器とを有しており、
前記判別器により自動判別された前記コーン部およびテール部の有無に対応する前記挟力と前記1回あたりの最大削り代の設定値を有する研削レシピが前記制御器により自動選択されて、該研削レシピに基づいてトラバース研削の自動実施が可能なものであることを特徴とする円筒研削機を提供する。
【0013】
このような本発明の円筒研削機は、コーン部およびテール部(以下、コーン部等とも言う)の有無に対応して登録されている設定値の挟力で結晶棒を支持固定したり、その設定値の1回あたりの最大削り代でトラバース研削が可能なものである。そしてコーン部等の有無に応じて、挟力や1回当たりの最大削り代について適切な設定値を設けることができる。これにより、挟力が大きすぎるためにコーン部等が折れたり、コーン部等が無い場合に1回あたりの最大削り代が支持摩擦力に比べて大きすぎて結晶棒の位置ズレが生じるのを防ぐことができる。その結果、円筒研削面の研削不良や直径精度不良が生じることもなく、安定した品質で研削可能である。
【0014】
また、コーン部等の有無の判別、研削レシピの選択、トラバース研削が自動的であるため、オペレーターを介する必要がなく低コストで研削可能なものとなる。
さらにはコーン部等の有り/無しの両方のパターンに対応しているので効率的に研削を行うことができ、従来のようなコーン部等の有り/無しの専用機の場合に生じる稼働率低下も防ぐことができる。
【0015】
また本発明は、結晶棒の端部を支持する支持装置が各々の先端に取り付けられている主軸と副軸とにより前記結晶棒を軸方向に挟んで軸周りに回転可能にする一対の支持ユニットと、該一対の支持ユニットに支持された結晶棒の軸方向に沿って移動しつつ該結晶棒の外周をトラバース研削する研削ユニットとを有する円筒研削機を用い、前記結晶棒を円筒研削する方法であって、
前記支持装置として、円錐状の結晶端部を支持可能な凹形状の第1支持部と、平坦な結晶端部を支持可能な第2支持部とを有しており、前記結晶棒の両端の円錐状のコーン部およびテール部の有無に関わらずに前記結晶棒を支持可能なものを用意し、
さらに、前記コーン部およびテール部の有無を自動判別可能な判別器と、
前記トラバース研削における、前記一対の支持ユニットによる前記結晶棒を挟む挟力と、前記研削ユニットによる1回あたりの最大削り代とについて、前記コーン部およびテール部の有無別に設定値が登録されている制御器とを用意し、
前記一対の支持ユニットにより前記結晶棒を挟んで固定するとき、該結晶棒の前記コーン部およびテール部の有無を前記判別器により自動判別し、該自動判別した前記コーン部およびテール部の有無に対応する前記挟力と前記1回あたりの最大削り代の設定値を有する研削レシピを前記制御器により自動選択し、該研削レシピに基づいてトラバース研削を自動実施することを特徴とする円筒研削方法を提供する。
【0016】
このような本発明の円筒研削方法であれば、過度の挟力や1回あたりの最大削り代を起因とするコーン部等の折れや結晶棒の位置ズレの発生を防止することができ、安定した品質で研削可能である。
また、コーン部等の有無の判別などを自動的に行うことで人の手を介することが不要でありコストの削減を図ることができる。さらには、コーン部等の有り/無しの両方のパターンに対応しているので効率的に研削を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の円筒研削機および円筒研削方法であれば、コーン部等の折れや結晶棒の位置ズレの発生を防止して安定した品質で結晶棒のトラバース研削が可能であるとともに、各種自動化による低コスト化や、コーン部等の有り/無しへの両対応による効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の円筒研削機の一例を示す説明図である。
図2】本発明における支持装置の一例を示す説明図である。
図3】判別器(接触式)の一例を示す説明図である。
図4】判別器(非接触式)の一例を示す説明図である。
図5】従来の円筒研削機の一例を示す説明図である。
図6】無転位結晶の結晶棒の一例を示す説明図である。
図7】有転位化した結晶棒の一例を示す説明図である。
図8】有転位部を切断した結晶棒の一例を示す説明図である。
図9】円柱形状の結晶棒の一例を示す説明図である。
図10】支持装置によるコーン(テール)有りの結晶棒の保持の一例を示す説明図である。
図11】支持装置によるコーン(テール)無しの結晶棒の保持の一例を示す説明図である。
図12】コーン(テール)有りの結晶棒の円筒研削時の様子の一例を示す説明図である。
図13】コーン(テール)無しの結晶棒の円筒研削時の様子の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に結晶棒7をトラバース研削するための本発明の円筒研削機1の全体図を示す。図1に示すように円筒研削機1は、まず、搬送ユニット16と、一対の支持ユニット4と、研削ユニット5を有している。さらには判別器11と制御器12とを有している。
まず搬送ユニット16は結晶棒7を保持して搬送することができるものであればよい。また研削ユニット5は砥石6を有しており、一対の支持ユニット4に支持された結晶棒7の軸方向に沿って移動しつつ結晶棒7の外周をトラバース研削することができるものであればよい。これらの搬送ユニット16や研削ユニット5は不図示の駆動機構を備えていて移動可能なものであり、例えば従来と同様のものとすることができる。
【0020】
次に一対の支持ユニット4について説明する。一対の支持ユニット4は、搬送ユニット16で搬入された結晶棒7を軸方向に挟んで軸周りに回転可能にするものであり、第1支持ユニット4a、第2支持ユニット4bを有している。第1支持ユニット4aは主軸3aを有しており、第2支持ユニット4bは副軸3bを有している。また主軸3aは先端に支持装置2a、副軸3bは先端に支持装置2bを有している。このため結晶棒7は主軸3aの支持装置2aと副軸3bの支持装置2bとの間に挟まれて支持される。
なお、ここでは結晶棒7のテール部10が副軸3b側、コーン部9が主軸3a側で支持されている例を示すがこれに限定されず、結晶棒7の向きは逆であっても良い。
【0021】
ここで支持装置2a、2bの例を図2に示す。支持装置2a、2bは結晶部7の円錐状の結晶端部(コーン部9やテール部10)を支持可能な円錐孔を有する凹形状の第1支持部14と、平坦な結晶端部を支持可能な第2支持部15とを有している。第1支持部14、第2支持部15は例えば図10における固定支持部114、浮動支持部115と同様のものとすることができる。
したがって、支持装置2a、2bは共に、結晶棒7の両端の円錐状のコーン部9およびテール部10の有無に関わらずに結晶棒7を支持可能である。
【0022】
また一対の支持ユニット4は駆動機構13を有している。この駆動機構13は、例えばモーター(サーボモーター等)を有しており、第2支持ユニット4bを第1支持ユニット4aに向かって移動させることができる。もちろん、第1支持ユニット4aと反対方向に移動させることもできる。モーターの回転数や回転方向の調整により、第2支持ユニット4bの移動速度や移動方向を自在に変更調整可能である。
【0023】
次に判別器11について説明する。判別器11はコーン部9とテール部10の有無を自動判別可能な手段であり、コーン部9等に接触する接触式と非接触式が挙げられる。以下では判別器11の具体的な構成例と、準備工程(以下、ローディング工程という場合がある)での判別の仕組みの例を説明するが、以下の構成例・仕組みに限定されるものではなく、適宜決定することができる。なお、支持装置2b側(テール部10側)を例に挙げて説明するが、支持装置2a側(コーン部9側)でも同様とすることができる。
【0024】
図3に接触式の判別器11を示す。図3の上段に示すように、このタイプではインゴット検知棒20、摺動部21、検出ドグ22、第1センサー23a、第2センサー23b、インゴット検知棒可動装置24を備えている。インゴット検知棒20は支持装置2bの第1支持部における円錐孔を通して摺動部21に保持されており、インゴット検知棒可動装置24により軸方向にスライド可能である。また、第1センサー23a、第2センサー23bは、インゴット検知棒20に設けられた検出ドグ22を検出するためのものである。
【0025】
ローディング工程に於いて、結晶棒7を支持装置2bが先端に取り付けられている副軸3bにより、結晶棒7を軸方向に挟んで支持固定する際に、テール部10が直接インゴット検知棒20に接触する。インゴット検知棒20は摺動部21に沿って移動するが、インゴット検知棒20に設置された検出ドグ22も同時に移動する。
ここで、当初(ローディング前)は検出ドグ22を検出する位置に第1センサー23aを設置しておき、また、結晶棒7(テール無し10b)を支持装置2bにより支持したときに(ローディング後に)検出ドグ22を検出する位置に第2センサー23bを設置しておくと、容易にテール部の有無を検出可能となる。つまり、テール有り10aの場合には、図3の中段に示すように第1センサー23a、及び第2センサー23bは検出ドグ22を検出しない。一方でテール無し10bの場合には、図3の下段に示すように第1センサー23aは検出ドグ22を検出しないが、第2センサー23bは検出ドグ22を検出する。
このような仕組みによってテール部10(およびコーン部9)の有無の自動判別が可能である。なお、表1にコーン部等の有無と第1、第2センサーによる検出との関係を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
図4に非接触式の判別器11を示す。図4の上段に示すように、支持装置2bにセンサー設置孔30が設けられており、その中に円錐部検出センサー31が配置されていて、該円錐部検出センサー31による検出ライン32が設けられている。
上述した接触式と同様にローディング工程に於いて結晶棒7を軸方向に支持固定する際に、図4の中段に示すようにテール有り10aの場合は、支持装置2bのセンサー設置孔30に設けられた円錐部検出センサー31の検出ライン32を遮るため検出可能となる。一方、図4の下段に示すようにテール無し10bの場合は、結晶棒7を軸方向に固定しても円錐部検出センサー31の検出ライン32を遮ることはないため検出はされない。この検出の有無により、テール部10の有無を自動判別可能である。
近年では、画像センサーの機能が高性能となり、円錐状のテール部10(コーン部9)を画像にて検出することが容易になったため、非接触式でのテール部10(コーン部9)の有無の自動判別に使用することができる。
【0028】
次に制御器12について説明する。制御器12は例えばコンピュータとすることができる。この制御器12には、トラバース研削における、一対の支持ユニット4による結晶棒7を挟む挟力CFと、研削ユニット5による1回あたりの最大削り代SRm(1研削あたりの最大削り代)とについて、コーン部9およびテール部10の有無別に設定値が登録されている。
これらの設定値は特に限定されず、結晶棒7の種類、長さ、直径、あるいはコーン部9やテール部10の長短など、種々の条件に応じて適宜決定することができる。
【0029】
特には、挟力CF(押付力)は、コーン無し9b、テール無し10bの場合はその垂直(平坦)に切断された面と第2支持部15との間で生じる摩擦力が大きく生じるように相対的に強い設定値が好ましい。一方で、コーン有り9a、テール有り10aの場合はコーン部9やテール部10と第1支持部14との接触部付近で折れが発生するのを防止するために相対的に弱い設定値が好ましい。
また、1回あたりの最大削り代SRm(外力EF)は、コーン無し9b、テール無し10bの場合、円筒研削中に結晶棒7が動いてしまうことを抑制するために、コーン有り9a、テール有り10bの場合に比べて相対的に少ない設定値が好ましい。
【0030】
また制御器12は一対の支持ユニット4(駆動機構13など)、研削ユニット5、判別器11、搬送ユニット16などと接続されており、これらを自動操作できるようになっている。加えて、判別器11によって自動判別されたコーン部9等の有無に対応して、例えば上記のように登録されている挟力CFと1回あたりの最大削り代SRmの設定値を有する研削レシピを自動的に選択するようにプログラムが組まれている。そして、自動選択した適切な研削レシピに基づいてトラバース研削を自動的に実施するように各部の操作のためのプログラムが組まれている。
【0031】
以上のような本発明の円筒研削機1により、コーン部9等の有無に応じた、適切な挟力CFや1回あたりの最大削り代SRmでトラバース研削を行うことができる。そのため、従来問題となっていたコーン部9等の折れや結晶棒7の位置ズレの発生を抑制することができる。したがって円筒研削面の不良や直径精度不良などの発生を防ぎ、安定した品質の円筒研削後の結晶棒を提供することができる。しかも、コーン部9等の有無に関わらず、コーン部9等の有無の判別を含む一連のトラバース研削の工程を自動的に行うことができるので、実に効率的に、かつ、低コストで結晶棒の研削加工をすることができる。
【0032】
次に本発明の円筒研削方法について説明する。
まず図1等に示す本発明の円筒研削機1(一対の支持ユニット4、研削ユニット5、判別器11、制御器12、搬送ユニット16等)と研削対象の結晶棒7を用意する。
【0033】
そして準備工程(ローディング工程)では、まず搬送ユニット16を用いて、主軸3aと副軸3bの回転中心に結晶軸中心を合わせるために結晶棒7を移動する。
次いで結晶棒7を第1支持ユニット4aと第2支持ユニット4bで挟むため、第2支持ユニット4bを駆動機構13により第1支持ユニット4aに向かって移動させる。これらの一対の支持ユニット4により結晶棒7を挟んで支持固定する。
【0034】
このとき、結晶棒7のコーン部9等の有無を判別器11により自動判別する。図3のような接触式のものを用いても良いし、図4のような非接触式のものを用いても良い。
ここで制御器12では、コーン部9等を有する場合とコーン部9等が無い場合のそれぞれについて予め設定値(挟力CFの設定値、1回あたりの最大削り代SRmの設定値)が登録されているので、判別器11により自動判別した結果に基づいて適切な設定値を含む研削レシピが自動選択される。
なお、結晶棒7が一対の支持ユニット4により結晶軸方向に挟み込まれた後、搬送ユニット16は結晶棒7を離して退避する。
【0035】
そして、上記の自動選択された研削レシピに基づいてトラバース研削を自動実施する。すなわち、自動選択された挟力CFで結晶棒7を挟んで支持しつつその軸周りに回転させながら、研削ユニット5の砥石6を用いて結晶棒を仕上げ直径(最終目標の直径)にまで研削する時の削り代SRが1回あたりの最大削り代SRmを超える場合には、削り代がSRmとなるように、研削負荷を掛けながら結晶棒7の外周を自動的に研削する。
そして最終目標の直径までに必要な残りの削り代がSRmを超えない場合は、最後の研削としてその残りの削り代の分だけ研削を自動的に行い終了する。なお残りの削り代は、SRからSRmを研削回数分だけ差し引いた値とすることができ、これは例えば制御器12などにより自動計算させることができる。
【実施例0036】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、直径200mm、コーン部の長さが150mm、テール部の長さが250mm、直胴部の長さが1,000mmの結晶棒を50本用意した。そのうちの25本はそのままコーン有りかつテール有りの結晶棒とした(Aセット)。残りの25本はコーン部およびテール部を結晶軸方向に対して垂直に切断して平坦な端部とし、コーン無しかつテール無しの結晶棒とした(Bセット)。
そして、このような50本一組の結晶棒を4組用意した。
【0037】
(実施例)
図1に示す本発明の円筒研削機1を用意し、上記の4組のうち1組の結晶棒に対して、本発明の円筒研削方法によってコーン部およびテール部の自動判別、該自動判別に応じた研削レシピの自動選択、該自動選択された研削レシピに基づくトラバース研削の自動実施を行った。コーン部とテール部の有無の自動判別は図4の非接触式の判別器を用いた。
使用した円筒研削機の支持ユニットの駆動機構による挟力は、ロードセル測定の結果、出力100%で16kNである。
【0038】
なお、制御器に登録した、コーン部およびテール部の有無と、研削レシピ(挟力(押付力)CFの設定値・1回あたりの最大削り代SRmの設定値)との関係は以下の通りである。
[コーン有りかつテール有りの場合の選択性研削レシピ]
CF:出力90%
SRm:10mm
[コーン無しかつテール無しの場合の選択性研削レシピ]
CF:出力98%
SRm:6mm
【0039】
そして、Aセット(25本)でのコーン部やテール部の折れによる品質不良発生状況、Bセット(25本)での円筒研削中の結晶棒の位置ズレによる品質不良発生状況について調べたところ、結果は以下の通りであった。
Aセットでの品質不良発生(折れ):0本(品質不良発生率:0%)
Bセットでの品質不良発生(位置ズレ):0本(品質不良発生率:0%)
【0040】
(比較例1-3)
実施例とは異なり、コーン部およびテール部の自動判別、該自動判別に応じた研削レシピの自動選択、該自動選択された研削レシピに基づくトラバース研削の自動実施の機能のない円筒研削機を用意した。この円筒研削機は、図1の本発明の円筒研削機1における判別器や制御器を有しておらず、常に、予めオペレーターにより手動調整した一定の研削レシピ(一定のCF、一定のSRm)しか実行できないようになっている。それ以外は実施例の円筒研削機1と同様であり、支持ユニットの駆動機構の最大出力も同様である。
この円筒研削機を用いて、上記の4組のうち3組の結晶棒に対して、常に一定の研削レシピでトラバース研削を行った。
【0041】
なお、比較例1-3の研削レシピは以下の通りである。
[比較例1の研削レシピ]
CF:常に出力90%
SRm:常に10mm
[比較例2の研削レシピ]
CF:常に出力98%
SRm:常に10mm
[比較例3の研削レシピ]
CF:常に出力98%
SRm:常に6mm
【0042】
そして、実施例と同様に、Aセット(25本)でのコーン部やテール部の折れによる品質不良発生状況、Bセット(25本)での円筒研削中の結晶棒の位置ズレによる品質不良発生状況について調べたところ、結果は以下の通りであった。
なお、Aセットで生じた折れはいずれもテール部に関するものであり、コーン部に折れは生じなかった。
[比較例1の結果]
Aセットでの品質不良発生(折れ):0本(品質不良発生率:0%)
Bセットでの品質不良発生(位置ズレ):5本(品質不良発生率:20%)
[比較例2の結果]
Aセットでの品質不良発生(折れ):3本(品質不良発生率:12%)
Bセットでの品質不良発生(位置ズレ):2本(品質不良発生率:8%)
[比較例3の結果]
Aセットでの品質不良発生(折れ):3本(品質不良発生率:12%)
Bセットでの品質不良発生(位置ズレ):0本(品質不良発生率:0%)
【0043】
実施例および比較例2、3の結果から分かるように、折れによる品質不良発生率を最大12%低減できた。また、実施例および比較例1の結果から分かるように、位置ズレによる品質不良発生率を最大20%低減できた。双方の品質不良発生率を0%に抑えられたのは実施例だけであった。
このように本発明であれば、コーン(テール)有り/無しのそれぞれに調整した専用の円筒研削機を準備することなく、また、コーン(テール)有り/無しに合わせてその都度オペレーターが最適なレシピを手動で設定することなく、低コストで安定した品質で効率が良い円筒研削を行うことができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0045】
1…本発明の円筒研削機、 2a、2b…支持装置、 3a…主軸、 3b…副軸、
4…一対の支持ユニット、 4a…第1支持ユニット、 4b…第2支持ユニット、
5…研削ユニット、 6…砥石、
7…結晶棒、 7a…無転位の結晶棒、 7b…有転位化した結晶棒、
7c…有転位部を切断した結晶棒、 7d…切り出された結晶棒、
8…直胴部、 9、9a…コーン部、 9b…コーン部が切断された平坦面、
10、10a…テール部、 10b…テール部が切断された平坦面、
11…判別器、 12…制御器、
13…駆動機構、 14…第1支持部、 15…第2支持部、 16…搬送ユニット、
20…インゴット検知棒、 21…摺動部、 22…検出ドグ、
23a…第1センサー、 23b…第2センサー、
24…インゴット検知棒可動装置、
30…センサー設置孔、 31…円錐部検出センサー、 32…検出ライン、
D…有転位部、 CF…挟力、 EF…外力、
SR…削り代、 SRm…1回あたりの最大削り代。
図1
図2
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