(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173237
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】表面欠陥の光学的検査方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20241205BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G01N21/84 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091528
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山縣 正意
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AB02
2G051AB07
2G051BA01
2G051BA20
2G051BB03
2G051BC01
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB01
2G051CD06
2G051EA12
(57)【要約】
【課題】拡散照明だけでは見えにくかった疵まで見えるようにして、表面の汚れと疵の両方を同時に検出可能とする。
【解決手段】検査対象12を拡散光(ドーム照明装置30)で照明し、その反射光によって検査対象12表面の欠陥を光学的に検査する際に、拡散照明(ドーム照明装置30)をオンとした時の第1のカメラ画像Aと、拡散照明(ドーム照明装置30)をオフとした時の第2のカメラ画像Bを両方取得し、前記第1のカメラ画像Aと第2のカメラ画像Bの差分画像Cを生成し、該差分画像Cのコントラストを平坦化して疵強調画像Dを作成し、該疵強調画像Dを用いて検査対象12表面の欠陥を検出する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象を拡散光で照明し、その反射光によって検査対象表面の欠陥を光学的に検査する際に、
拡散照明をオンとした時の第1のカメラ画像と、拡散照明をオフとした時の第2のカメラ画像を両方取得し、
前記第1のカメラ画像と第2のカメラ画像の差分画像を生成し、
該差分画像のコントラストを平坦化して疵強調画像を作成し、
該疵強調画像を用いて検査対象表面の欠陥を検出することを特徴とする表面欠陥の光学的検査方法。
【請求項2】
前記拡散照明による前記第1及び第2のカメラ画像を取得する際に、落射照明を併用することを特徴とする請求項1に記載の表面欠陥の光学的検査方法。
【請求項3】
前記拡散照明が、光源からの出射光をドーム状反射体の内面で拡散反射させて検査対象に照射するドーム照明であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面欠陥の光学的検査方法。
【請求項4】
検査対象を拡散光で照明して、検査対象表面の欠陥を光学的に検査する表面欠陥の光学的検査装置であって、
拡散照明をオンとした時の第1のカメラ画像を取得する手段と、
拡散照明をオフとした時の第2のカメラ画像を取得する手段と、
前記第1のカメラ画像と第2のカメラ画像の差分画像を生成する手段と、
該差分画像のコントラストを平坦化して疵強調画像を作成する手段とを備え、
該疵強調画像を用いて検査対象表面の欠陥を検出するようにされていることを特徴とする表面欠陥の光学的検査装置。
【請求項5】
前記拡散照明による前記第1及び第2のカメラ画像を取得する際に、検査対象を落射照明するための手段を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の表面欠陥の光学的検査装置。
【請求項6】
前記拡散照明を行う手段が、光源からの出射光をドーム状反射体の内面で拡散反射させて検査対象に照射するドーム照明装置であることを特徴とする請求項4又は5に記載の表面欠陥の光学的検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面欠陥の光学的検査方法及び装置に係り、特に、拡散光による照明(以下、拡散照明と称する)だけでは見えにくかった疵まで見えるようにして、表面の汚れと疵の両方を同時に検出することが可能な、表面欠陥の光学的検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象を照明し、その反射光によって検査対象表面の欠陥を光学的に検査する際に、検査対象を照明する方法としては、例えば特許文献1に記載されたような同軸落射照明(以下単に落射照明と称する)を用いる方法、特許文献2に記載されたような拡散光によるドーム照明(以下単にドーム照明と称する)を用いる方法、特許文献3及び4に記載されたような落射照明とドーム照明を併用する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-198208号公報
【特許文献2】特開2017-207380号公報
【特許文献3】WO2019/064810号公報
【特許文献4】特開2015-137921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本願発明が主な対象とするセラミック製又はスチール製のゲージブロックのような場合、落射照明による明視野観察では、
図1に例示する如く、検査対象12の表面の汚れ12Aは見えやすいが、疵12Bは見えにくい。
【0005】
一方、ドーム照明による暗視野観察では、
図2に例示する如く、表面の疵12Bは見えやすいが、汚れ12Aは見えにくい。
【0006】
更に、特許文献4に記載されたような落射照明とドーム照明を同時に行う明暗視野観察においても、
図3に例示する如く、表面の汚れ12Aは見えやすくなるが、疵12Bは必ずしも見えやすくない等の問題点を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、拡散照明と画像処理を組み合わせることにより、拡散照明だけでは見えにくかった疵まで見えるようにして、表面の汚れと疵の両方を同時に検出可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、検査対象を拡散光で照明し、その反射光によって検査対象表面の欠陥を光学的に検査する際に、拡散照明をオンとした時の第1のカメラ画像と、拡散照明をオフとした時の第2のカメラ画像を両方取得し、前記第1のカメラ画像と第2のカメラ画像の差分画像を生成し、該差分画像のコントラストを平坦化して疵強調画像を作成し、該疵強調画像を用いて検査対象表面の欠陥を検出することを特徴とする表面欠陥の光学的検査方法により、前記課題を解決するものである。
【0009】
ここで、前記拡散照明による前記第1及び第2のカメラ画像を取得する際に、落射照明を併用することができる。
【0010】
又、前記拡散照明を、光源からの出射光をドーム状反射体の内面で拡散反射させて検査対象に照射するドーム照明とすることができる。
【0011】
本発明は、又、検査対象を拡散光で照明して、検査対象表面の欠陥を光学的に検査する表面欠陥の光学的検査装置であって、拡散照明をオンとした時の第1のカメラ画像を取得する手段と、拡散照明をオフとした時の第2のカメラ画像を取得する手段と、前記第1のカメラ画像と第2のカメラ画像の差分画像を生成する手段と、該差分画像のコントラストを平坦化して疵強調画像を作成する手段とを備え、該疵強調画像を用いて検査対象表面の欠陥を検出するようにされていることを特徴とする表面欠陥の光学的検査装置を提供するものである。
【0012】
ここで、前記拡散照明による前記第1及び第2のカメラ画像を取得する際に、検査対象を落射照明するための手段を更に備えることができる。
【0013】
又、前記拡散照明を行う手段を、光源からの出射光をドーム状反射体の内面で拡散反射させて検査対象に照射するドーム照明装置とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、拡散照明と画像処理を組み合わせることにより、
図4に例示する如く、拡散照明だけでは見えにくかった疵まで見えるようになり、表面の汚れと疵の両方を同時に検出可能となる。更に、複雑な演算処理を必要としない極めて簡単な演算で疵強調画像を得ることができるので、廉価なパソコンでもライブ表示による目視観察が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来の落射照明による明視野観察時の検査用画像の例を示す図
【
図2】従来のドーム照明による暗視野観察時の検査用画像の例を示す図
【
図3】従来の落射照明とドーム照明を組み合わせた明暗視野観察時の検査用画像の例を示す図
【
図4】本発明によるドーム照明と画像処理を組み合わせた場合の検査用画像の例を示す図
【
図5】ドーム照明のみを用いた本発明の第1実施形態の構成を示す図
【
図6】第1実施形態における画像処理回路の構成と各部画像の例を示す図
【
図7】本発明で用いるコントラスト平均化処理の処理前後のヒストグラムを比較して示す図
【
図8】第1実施形態におけるデータ処理手順を示す流れ図
【
図9】(A)ドーム照明OFFと(B)ドーム照明ONの場合の照明状態を比較して示す斜視図
【
図10】(A)本発明の実施形態による疵強調画像と(B)従来の落射照明による生画像を比較して示す図
【
図11】落射照明を併用した本発明の第2実施形態の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0017】
本発明の第1実施形態は、
図5に示す如く、載置台10上に載置された検査対象12をドーム照明するための、例えばリング状に上向きに配置されたLED32、ドーム状の下向きの反射板34、及びドーム照明制御装置36を備えたドーム照明装置30と、該ドーム照明装置30の反射板34の中央に空けられた開口34Aから検査対象12の表面を観察するためのレンズ20を備えたカメラ22と、該カメラ22の出力を本発明に従って処理するための画像処理装置24とを備えている。
【0018】
前記画像処理装置24は、
図6に示す如く、ドーム照明がONの画像とOFFの画像の差分を取る減算部26と、該減算部26の出力画像のコントラストを平坦化するイコライゼーション処理部28を備えている。
【0019】
前記イコライゼーション処理部28は、
図7に例示する如く、ヒストグラムの累積度数(輝度値0から画素数を累積したもの)のグラフの傾きが一定になるように変換してヒストグラムを均一化する。これにより、コントラストが悪かったり、明るさが偏っている画像の全体的なバランスを改善することができる。
【0020】
図7から、変換後に累積ヒストグラムが直線状に補正されることがわかる。
【0021】
【0022】
まず、ステップ100で、ドーム照明制御装置36により、ドーム照明装置30のLED32をオンとする。
【0023】
そしてステップ110で、その時のカメラ22によって得られるカメラ画像A(第1のカメラ画像と称する)を取得する。
【0024】
次いでステップ120に進み、前記ドーム照明制御装置36により、ドーム照明装置30のLED32をオフとする。
【0025】
そしてステップ130で、その時のカメラ22によって得られる画像B(第2のカメラ画像と称する)を取得する。
【0026】
次いでステップ140に進み、画像処理装置24で、
図6に示したような、第1のカメラ画像Aと第2のカメラ画像Bの背景差分画像(単に差分画像と称する)Cを生成する。
【0027】
次いでステップ150に進み、
図6に示したような、前記差分画像Cのコントラストを平坦化した画像(疵強調画像と称する)Dを得て検査用画像として出力する。
【0028】
ドーム照明をオンオフするときの載置台10に置かれた検査対象12の見え方の例を
図9に示す。
【0029】
このような処理を行うことにより、
図10(B)に例示するような、落射照明の生画像では、普通に観察しても良く見えない疵(検査対象を特定の角度に傾けると漸く目視確認できるような疵)も、
図10(A)に示すように、疵の向きに依存することなく観察可能となる。
【0030】
なお、第1実施形態では、ドーム照明のみであったたため、ドーム照明をオフとする時に、検査対象12が暗くなり過ぎて画像が取得できなくなる恐れがある。そのような場合に備えて、
図11に示す第2実施形態のように、落射照明を併用することができる。
【0031】
第2実施形態は、第1実施形態に加えて、ドーム照明装置30とカメラ22のレンズ20の間に挿入されたハーフミラー40と、該ハーフミラー40を介して落射照明装置42から例えばLED44により落射照明を行うための落射照明装置42と、該落射照明装置42を制御するための落射照明制御装置46とを備えている。
【0032】
この第2実施形態によれば、ドーム照明をオフとしたときの検査対象12の表面の明るさが不足するときに、必要な量を落射照明装置42から補うことができ、本発明を実施することが可能となる。
【0033】
なお、前記実施形態においては拡散照明がドーム照明とされていたが、リング照明であってもよい。又、検査対象がセラミック製又はスチール製のゲージブロックとされていたが、検査対象も、これらに限定されない。
【符号の説明】
【0034】
10…載置台
12…検査対象
20…レンズ
22…カメラ
24…画像処理装置
26…減算部
28…イコライゼーション処理部
30…ドーム照明装置
32、44…LED
34…反射板
36…ドーム照明制御装置
40…ハーフミラー
42…落射照明装置
46…落射照明制御装置
A…第1のカメラ画像(ドーム照明ON)
B…第2のカメラ画像(ドーム照明OFF)
C…背景差分画像
D…疵強調画像