IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新光電気工業株式会社の特許一覧

特開2024-173293配線基板、半導体装置及び配線基板の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173293
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】配線基板、半導体装置及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20241205BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241205BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20241205BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K1/02 J
H05K1/02 A
H05K3/34 504B
H05K1/18 J
H05K3/46 N
H05K3/46 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091620
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 優哉
【テーマコード(参考)】
5E316
5E319
5E336
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA16
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC32
5E316CC37
5E316CC38
5E316DD23
5E316DD24
5E316EE33
5E316FF01
5E316FF07
5E316FF13
5E316FF14
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG22
5E316GG28
5E316HH11
5E316HH40
5E316JJ02
5E319AA03
5E319AA07
5E319AB05
5E319AC02
5E319BB01
5E319CC22
5E319CD15
5E319GG20
5E336AA04
5E336BB03
5E336BB15
5E336BC25
5E336BC40
5E336CC31
5E336CC55
5E336CC58
5E336EE01
5E336GG16
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB25
5E338BB75
5E338CD05
5E338EE26
(57)【要約】
【課題】絶縁層に対するアンダーフィル材の密着性を向上させること。
【解決手段】配線基板は、絶縁層と、接続端子と、配線構造体とを有する。絶縁層は、第1面と第1面の反対側の第2面とを有し、第1面及び第2面を貫通する開口部が形成される。接続端子は、開口部に配置される。配線構造体は、絶縁層の第2面に積層されて接続端子と接続する。接続端子は、開口部内に形成され、絶縁層の第2面と同一面上に底面が位置するパッドと、パッドの上面及び側面を被覆する表面処理層とを有する。パッドは、開口部の位置において絶縁層の第1面から突出し、表面処理層は、開口部の内壁面との間に空隙を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有し、前記第1面及び前記第2面を貫通する開口部が形成された絶縁層と、
前記開口部に配置された接続端子と、
前記絶縁層の前記第2面に形成されて前記接続端子と接続する配線構造体と
を有し、
前記接続端子は、
前記開口部内に形成され、前記絶縁層の前記第2面と同一面上に底面が位置するパッドと、
前記パッドの上面及び側面を被覆する表面処理層と
を有し、
前記パッドは、前記開口部の位置において前記絶縁層の前記第1面から突出し、
前記表面処理層は、前記開口部の内壁面との間に空隙を形成する
ことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記パッドは、
前記上面から前記底面に向かうにつれて径が大きくなるテーパ形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記開口部は、
断面形状において、内壁面が前記パッドのテーパ形状に対応して傾くテーパ面である
ことを特徴とする請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記表面処理層は、
前記開口部の内壁面との間に、前記表面処理層の厚みよりも幅が小さい前記空隙を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
前記絶縁層は、
前記第1面の表面粗度が前記第2面の表面粗度よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
配線基板と、
前記配線基板に搭載される半導体チップと、
前記配線基板と前記半導体チップとの間に充填されるアンダーフィル材と
を有し、
前記配線基板は、
前記アンダーフィル材と接する第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有し、前記第1面及び前記第2面を貫通する開口部が形成された絶縁層と、
前記開口部内に配置された接続端子と、
前記絶縁層の前記第2面に積層されて前記接続端子と接続する配線構造体と
を有し、
前記接続端子は、
前記開口部内に形成され、前記絶縁層の前記第2面と同一面上に底面が位置するパッドと、
前記パッドの上面及び側面を被覆する表面処理層と
を有し、
前記パッドは、前記開口部の位置において前記絶縁層の前記第1面から突出し、
前記表面処理層は、前記開口部の内壁面との間に空隙を形成し、
前記空隙には前記アンダーフィル材が充填されている
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
基体上に第1金属層及び第2金属層が順に形成された支持体を準備し、
前記第2金属層上に、前記第2金属層に接する第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有する絶縁層を形成し、
前記絶縁層の前記第2面に、前記第2金属層まで到達しない凹部を形成し、
前記凹部周囲の前記絶縁層の前記第2面と、前記凹部の内壁面とを被覆するシード層を形成し、
前記シード層に重ねて表面処理層を形成し、
前記絶縁層の前記凹部の位置に対応して前記表面処理層に形成される凹部を充填する金属膜を形成し、
前記金属膜とともに前記絶縁層の前記第2面上の前記シード層及び前記表面処理層を研磨して、前記表面処理層の前記凹部内に残留する前記金属膜によって、前記絶縁層の前記第2面と同一面上に底面が位置するパッドを形成し、
前記絶縁層の前記第2面に、前記パッドと接続する配線構造体を形成し、
前記第1金属層から前記第2金属層を剥離し、
前記第2金属層を除去して、前記絶縁層の前記第1面を露出させ、
前記絶縁層を前記第1面からエッチングして、前記絶縁層の前記凹部の位置に前記絶縁層の前記第1面及び前記第2面を貫通する開口部を形成するとともに、前記開口部の位置において前記絶縁層の前記第1面から前記パッドを突出させ、
前記パッドの上面及び側面を被覆する前記表面処理層から前記シード層を除去して、前記表面処理層と前記開口部の内壁面との間に空隙を形成する
工程を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板、半導体装置及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体チップが搭載される配線基板には、半導体チップとの接続端子が形成される。接続端子は、配線基板の配線構造体と電気的に接続する突起であり、配線基板の最上層である絶縁層に形成される開口部から外方へ突出する。
【0003】
配線基板に半導体チップが搭載される際には、半導体チップの電極がたとえばはんだによって接続端子に接続される。そして、配線基板と半導体チップとの間に、半導体チップと下面と配線基板の最上層を形成する絶縁層の上面とに接するようにアンダーフィル材が充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-150114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、絶縁層に対するアンダーフィル材の密着性を向上させる点で改善の余地がある。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、絶縁層に対するアンダーフィル材の密着性を向上させることができる配線基板、半導体装置及び配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する配線基板は、一つの態様において、絶縁層と、接続端子と、配線構造体とを有する。絶縁層は、第1面と第1面の反対側の第2面とを有し、第1面及び第2面を貫通する開口部が形成される。接続端子は、開口部に配置される。配線構造体は、絶縁層の第2面に積層されて接続端子と接続する。接続端子は、開口部内に形成され、絶縁層の第2面と同一面上に底面が位置するパッドと、パッドの上面及び側面を被覆する表面処理層とを有する。パッドは、開口部の位置において絶縁層の第1面から突出し、表面処理層は、開口部の内壁面との間に空隙を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する配線基板の一つの態様によれば、絶縁層に対するアンダーフィル材の密着性を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る配線基板の構成を示す図である。
図2図2は、接続端子周辺を拡大して示す図である。
図3図3は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図4図4は、支持体の具体例を示す図である。
図5図5は、レジスト層形成工程の具体例を示す図である。
図6図6は、外周部エッチング工程の具体例を示す図である。
図7図7は、レジスト層剥離工程の具体例を示す図である。
図8図8は、絶縁層形成工程の具体例を示す図である。
図9図9は、凹部形成工程の具体例を示す図である。
図10図10は、シード層形成工程の具体例を示す図である。
図11図11は、表面処理層形成工程の具体例を示す図である。
図12図12は、電解めっき工程の具体例を示す図である。
図13図13は、化学機械研磨工程の具体例を示す図である。
図14図14は、ビルドアップ工程の具体例を示す図である。
図15図15は、ソルダーレジスト層形成工程の具体例を示す図である。
図16図16は、ダイシング工程の具体例を示す図である。
図17図17は、デボンド工程の具体例を示す図である。
図18図18は、保護フィルム積層工程の具体例を示す図である。
図19図19は、上下反転工程の具体例を示す図である。
図20図20は、金属層除去工程の具体例を示す図である。
図21図21は、絶縁層エッチング工程の具体例を示す図である。
図22図22は、シード層除去工程の具体例を示す図である。
図23図23は、保護フィルム剥離工程の具体例を示す図である。
図24図24は、半導体チップ搭載工程の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示する配線基板、半導体装置及び配線基板の製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0011】
図1は、実施形態に係る配線基板100の構成を示す図である。図1においては、配線基板100の断面を模式的に示している。図1に示す配線基板100は、例えば半導体チップを搭載する半導体装置の基板として利用することが可能である。
【0012】
配線基板100は、積層構造となっており、絶縁層110、多層配線構造(配線構造体の一例)120及びソルダーレジスト層130を有する。以下においては、図1に示すように、ソルダーレジスト層130が最下層であり、絶縁層110が最上層であるものとして説明するが、配線基板100は、例えば上下反転して用いられても良く、任意の姿勢で用いられて良い。
【0013】
絶縁層110は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びシアネート樹脂等の耐熱性を有し、非感光性及び熱硬化性の絶縁樹脂を用いて形成される。絶縁層110の厚さは、例えば1~10μm程度とすることができる。絶縁層110は、シリカ(SiO2)などのフィラーを含んでいても良い。
【0014】
配線基板100の絶縁層110側は、例えば半導体チップなどの電子部品が搭載される面である。半導体チップが搭載される位置においては、絶縁層110に、絶縁層110の上面110a及び下面110bを貫通する開口部111が形成される。すなわち、半導体チップの電極と多層配線構造120とを接続するために、絶縁層110に開口部111が設けられる。絶縁層110が非感光性の熱硬化性樹脂を用いて形成されるため、開口部111は、例えばレーザ加工により形成することが可能である。そして、開口部111には、半導体チップの電極と多層配線構造120とを接続する接続端子140が配置される。接続端子140の構成については、後述する。
【0015】
多層配線構造120は、絶縁性の絶縁層121と導電性の配線層122とを備える層が絶縁層110の下面110bに積層されたものである。絶縁層121は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びシアネート樹脂等の耐熱性を有し、非感光性及び熱硬化性の絶縁樹脂を用いて形成される。また、配線層122は、例えば銅や銅合金などの金属を用いて形成される。図1においては、多層配線構造120内に3つの層が積層されているが、積層される層の数は2層以下又は4層以上であっても良い。絶縁層121を介して隣接する配線層122どうしは、必要に応じて絶縁層121を貫通するビア123によって接続される。同様に、絶縁層121を介して隣接する配線層122及び接続端子140は、必要に応じて絶縁層121を貫通するビア123によって接続される。
【0016】
ソルダーレジスト層130は、多層配線構造120の最下層の配線層122を被覆し、配線を保護する層である。ソルダーレジスト層130は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びシアネート樹脂等の耐熱性を有し、非感光性及び熱硬化性の絶縁樹脂からなる層であり、絶縁層の1つである。
【0017】
配線基板100のソルダーレジスト層130側は、外部の部品や機器などに接続される面である。外部の部品や機器と電気的に接続する外部接続端子が形成される位置においては、ソルダーレジスト層130に開口部131が形成され、開口部131から多層配線構造120の最下層の配線層122が露出する。開口部131には、例えばはんだボールなどの外部接続端子が形成される。ソルダーレジスト層130は、非感光性の熱硬化性樹脂を用いて形成されるため、レーザ加工により開口部131を形成することが可能である。
【0018】
図2を参照して、接続端子140の構成について、具体的に説明する。図2は、接続端子140周辺を拡大して示す図である。接続端子140は、絶縁層110の開口部111の位置において絶縁層110の上面110aから突起するように形成された突起電極であり、パッド141及び表面処理層142を有する。
【0019】
パッド141は、接続端子140の本体となる電極であり、例えば銅(Cu)の電解めっきにより絶縁層110の開口部111内に形成される。パッド141の底面は、絶縁層110の下面110bと同一面上に位置する。パッド141の高さ(開口部111内は含まず、絶縁層110の上面110aよりも上側の部分の高さ)は、例えば5~20μm程度とすることができる。また、パッド141のピッチは、例えば20~150μm程度とすることができる。
【0020】
表面処理層142は、パッド141の上面及び側面を被覆する金属層である。表面処理層142は、パッド141に近い側から順に、ニッケル(Ni)層、パラジウム(Pd)層及び金(Au)層を有する。Ni層、Pd層及びAu層は、それぞれ例えば電解めっき法により形成することができる。なお、表面処理層142としては、Ni/Pd/Au層の代わりに、Ni/Au層又はAu層を用いても良い。
【0021】
ここで、絶縁層110の開口部111周辺における接続端子140の構成について説明する。パッド141は、開口部111の位置において絶縁層110の上面110aから突出している。パッド141は、開口部111よりも径が小さく、開口部111の内壁面から離れて位置している。このため、パッド141の上面及び側面を被覆する表面処理層142は、開口部111の内壁面に接触せず、表面処理層142と開口部111の内壁面との間に空隙143が形成されている。すなわち、パッド141の側面が開口部111の内壁面よりも開口部111の中心側に位置するため、パッド141の側面下部では、表面処理層142の最外層であるAu層と開口部111の内壁面とに挟まれ且つ絶縁層110の上面110aに繋がる空隙143が形成される。この空隙143の幅(つまり、表面処理層142のAu層から開口部111の内壁面までの距離)は、例えば100~1500nm程度である。
【0022】
実施形態では、空隙143が形成されることにより、絶縁層110の上面110aから開口部111への流路が形成される。このため、例えば配線基板100と半導体チップとの間にアンダーフィル材が充填される際に、絶縁層110の上面110aに接するアンダーフィル材の一部が空隙143内に流入する。結果として、絶縁層110とアンダーフィル材との間にアンカー効果を発現させることができることから、絶縁層110に対するアンダーフィル材の密着性を向上させることができる。また、隣り合う接続端子140の間において、絶縁層110とアンダーフィル材との界面に沿う経路の長さを長くすることができることから、イオンマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0023】
また、実施形態では、パッド141が、上面から底面に向かうつれて径が大きくなるテーパ形状を有する。パッド141がテーパ形状を有することにより、パッド141が矩形状を有する場合と比べて、パッド141の側面上の表面処理層142とアンダーフィル材との接触面積が増大し、接続端子140に対するアンダーフィル材の密着性を向上させることができる。
【0024】
また、実施形態では、開口部111の内壁面が、断面形状において、パッド141のテーパ形状に対応して傾くテーパ面である。開口部111の内壁面がテーパ面であることにより、空隙143内に流入済みのアンダーフィル材が空隙143から流出することを抑制することができ、絶縁層110に対するアンダーフィル材の密着性をより向上させることができる。
【0025】
また、実施形態では、空隙143の幅(つまり、表面処理層142のAu層から開口部111の内壁面までの距離)が表面処理層142の厚みよりも小さい。これにより、空隙143内に流入するアンダーフィル材に対して毛細管現象を発生させることができることから、空隙143に対するアンダーフィル材の充填効率を高めることができる。
【0026】
次いで、上記のように構成された配線基板100を有する半導体装置の製造方法について、具体的に例を挙げながら、図3を参照して説明する。図3は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0027】
まず、配線基板100を製造する支持体300が準備される(ステップS101)。具体的には、例えば図4に示すように、基体301上に第1金属層302、第2金属層303が順に形成された支持体300が準備される。図4は、支持体300の具体例を示す図である。基体301としては、例えば、ガラス板等が用いられる。第1金属層302及び第2金属層303は、例えば銅又は銅合金を用いて形成される。第2金属層303は、第1金属層302よりも厚みが薄い金属層であり、第1金属層302上に不図示の剥離層を介して剥離可能に形成される。
【0028】
続いて、第2金属層303上に、レジスト層が形成される(ステップS102)。すなわち、例えば図5に示すように、第2金属層303の外周部を除く部分を被覆するレジスト層150が形成される。図5は、レジスト層形成工程の具体例を示す図である。レジスト層150は、例えばドライフィルムレジストを用いて形成されており、第2金属層303の外周部に対応するレジスト層150の一部がフォトリソグラフィ又はレーザ加工によって除去される。
【0029】
続いて、第2金属層303及び第1金属層302の外周部が、エッチングにより除去される(ステップS103)。具体的には、例えば図6に示すように、レジスト層150に被覆されていない第2金属層303及び第1金属層302の外周部が除去される。すなわち、第2金属層303及び第1金属層302の側方端部が基体301の側方端部よりも内側に位置するように第2金属層303及び第1金属層302の外周部が除去される。これにより、後の工程で第2金属層303及び第1金属層302の側方端部が絶縁層110によって被覆されて保護され、配線基板100の製造途中において薬液の侵入等に起因した第2金属層303及び第1金属層302の剥離を防止することができる。図6は、外周部エッチング工程の具体例を示す図である。
【0030】
続いて、レジスト層150が剥離される(ステップS104)。レジスト層150の剥離には、例えば苛性ソーダやアミン系のアルカリ剥離液が用いられる。DFR210の剥離により、例えば図7に示すように、第2金属層303が露出される。図7は、レジスト層剥離工程の具体例を示す図である。
【0031】
第2金属層303が露出されると、第2金属層303上に、絶縁層110が形成される(ステップS105)。すなわち、例えば、図8に示すように、第2金属層303上に、半硬化状態の絶縁層110が積層される。このとき、第2金属層303及び第1金属層302の側方端部が絶縁層110によって被覆される。第2金属層303上に積層された絶縁層110は、熱硬化される。図8は、絶縁層形成工程の具体例を示す図である。図8において、第2金属層303の上面に接する絶縁層110の面が上面110aとなり、第2金属層303とは反対側に位置する絶縁層110の面が下面110bとなる。
【0032】
第2金属層303上に絶縁層110が形成されると、絶縁層110の下面110bに凹部が形成される(ステップS106)。具体的には、例えば図9に示すように、絶縁層110の下面110bに、第2金属層303に到達しない凹部110cが形成される。図9は、凹部形成工程の具体例を示す図である。凹部110cは、開口面(頂部)から底部に向かうにつれて径が小さくなるテーパ形状を有する。凹部110cは、例えばCO2レーザ、UVレーザ又はエキシマレーザを用いたレーザ加工法などにより形成することができる。
【0033】
凹部110cが形成されると、絶縁層110の下面110bにシード層144が形成される(ステップS107)。具体的には、例えば図10に示すように、凹部110c周囲の絶縁層110の下面110bと、凹部110cの内壁面とを連続的に被覆するシード層144が、例えば無電解めっき法により形成される。図10は、シード層形成工程の具体例を示す図である。シード層144の材料としては、例えば銅(Cu)などを用いることが可能である。シード層144の厚さは、空隙143の幅を規定するものであり、例えば100~1500nm程度とすることができる。
【0034】
シード層144が形成されると、シード層144に重ねて表面処理層142が形成される(ステップS108)。具体的には、例えば図11に示すように、シード層144の表面を連続的に被覆する表面処理層142が、例えば電解めっき法により形成される。図11は、表面処理層形成工程の具体例を示す図である。電解めっき法による表面処理層142の形成の際には、Au層、Pd層及びNi層が、この順番にシード層144の表面に積層される。表面処理層142が電解めっき法を用いて形成されることにより、シード層144の表面に表面処理層142の欠けが発生する欠け不良を回避することができる。
【0035】
表面処理層142の形成では、凹部110cにおいて均一の厚さの電解めっきが施される。このため、表面処理層142の上面は、凹部110cに対応する凹部142cを有する。
【0036】
表面処理層142が形成された後、例えば図12に示すように、例えば電解めっき法により表面処理層142全体の表面に金属膜141Aが形成される(ステップS109)。図12は、電解めっき工程の具体例を示す図である。金属膜141Aは、表面処理層142の凹部142cにも充填される。
【0037】
続いて、金属膜141Aの表面から全体が、例えば化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により研磨され(ステップS110)、例えば図13に示すように、絶縁層110の下面110bが露出する。図13は、化学機械研磨工程の具体例を示す図である。研磨の工程では、表面処理層142の凹部142c内に金属膜141Aが残留し、残留する金属膜141Aによって、絶縁層110の下面110bと同一面上に底面が位置するパッド141が形成される。パッド141の底面は、絶縁層110の凹部110cにおける開口面(頂部)側に形成され、パッド141の上面は、凹部110cにおける底部側に形成される。
【0038】
また、研磨の工程では、金属膜141Aとともに、絶縁層110の下面110b上のシード層144及び表面処理層142が研磨されて除去される。そして、研磨により除去されずに残留するシード層144及び表面処理層142によって、パッド141の上面及び側面が被覆される。これにより、パッド141と、パッド141の上面及び側面を被覆する表面処理層142とを有する接続端子140が得られる。この段階では、接続端子140は、絶縁層110に埋設された状態となっている。
【0039】
CMPによる研磨は、絶縁層110の凹部110cの深さが適切な深さとなる時点で完了する。例えば、絶縁層110の凹部110cの深さが初期の深さから1~5μm程度小さくなるまで、金属膜141A、表面処理層142、シード層144及び絶縁層110の下面110bが凹部110cの深さ方向に研磨される。例えば、初期の凹部110cにおいて底部の径が13μmであり且つ頂部の径が20μmである場合、凹部110cの深さ方向に5μm程度の研磨が行われると、研磨後の凹部110cにおいて頂部の径が18μm程度となる。かかる凹部110cにおける頂部側にパッド141の底面が形成されるため、パッド141の底面の面積を十分に確保することができ、後の工程で積層される多層配線構造120のビアとパッド141の底面との接続信頼性が向上する。
【0040】
絶縁層110の下面110bは研磨によって平坦になっているため、この下面110bにビルドアップ法によって多層配線構造120が形成される(ステップS111)。具体的には、例えば図14に示すように、絶縁層110の下面110bに絶縁層121が形成され、絶縁層121の表面に配線層122が形成される。図14は、ビルドアップ工程の具体例を示す図である。絶縁層121は、例えばエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂等の絶縁樹脂を用いて形成される。また、配線層122は、例えば銅などの金属のめっきによって形成される。
【0041】
絶縁層110に埋設された接続端子140(パッド141)と配線層122との間、又は隣接する層の配線層122の間は、必要に応じて、例えば銅などの金属のめっきによって形成されたビア123によって接続される。絶縁層121及び配線層122は、絶縁層110の下面110bに複数積層されても良い。
【0042】
多層配線構造120が形成されると、多層配線構造120の表面の配線層122がソルダーレジスト層130によって被覆される(ステップS112)。ソルダーレジスト層130は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びシアネート樹脂等の耐熱性を有し、非感光性及び熱硬化性の樹脂を材料として形成される。
【0043】
そして、例えば図15に示すように、外部の部品や機器などに接続される側のソルダーレジスト層130には、外部接続端子が設けられる位置に開口部131が形成される。図15は、ソルダーレジスト層形成工程の具体例を示す図である。開口部131の底面には、多層配線構造120の最表層の配線層122が露出する。ソルダーレジスト層130が非感光性樹脂によって形成されているため、開口部131は、レーザ加工によって形成される。レーザ加工には、例えばCO2レーザ又はUVレーザなどが用いられる。
【0044】
続いて、支持体300の基体301及びソルダーレジスト層130の外周部が、例えばダイシング加工により除去される(ステップS113)。具体的には、例えば図16に示すように、基体301の側方端部の外周が、ソルダーレジスト層130、多層配線構造120、絶縁層110とともに切削されて除去される。これにより、第2金属層303及び第1金属層302の側方端部が露出する。図16は、ダイシング工程の具体例を示す図である。
【0045】
支持体300の基体301及びソルダーレジスト層130の外周部が除去されると、配線基板100の中間構造体が得られる。すなわち、支持体300上に絶縁層110、多層配線構造120及びソルダーレジスト層130が積層された中間構造体が形成される。絶縁層110、多層配線構造120及びソルダーレジスト層130は、配線基板100を構成する。
【0046】
続いて、中間構造体から、絶縁層110、多層配線構造120及びソルダーレジスト層130を含む部分がデボンドされる(ステップS114)。具体的には、例えば図17に示すように、中間構造体の第1金属層302から第2金属層303及び第2金属層303よりも上層が剥離されることにより、絶縁層110、多層配線構造120及びソルダーレジスト層130を含む第2中間構造体が得られる。図17は、デボンド工程の具体例を示す図である。第2中間構造体における絶縁層110の上面110aには、第2金属層303が残留する。
【0047】
続いて、ソルダーレジスト層130側を保護するために、例えば図18に示すように、ソルダーレジスト層130の表面に保護フィルム160が積層される(ステップS115)。図18は、保護フィルム積層工程の具体例を示す図である。
【0048】
続いて、第2中間構造体が、例えば図19に示すように、上下反転される(ステップS116)。これにより、ソルダーレジスト層130が最下層となり、絶縁層110が最上層となる。図19は、上下反転工程の具体例を示す図である。
【0049】
続いて、絶縁層110の上面110aに残留している第2金属層303が、ウェットエッチングにより除去され(ステップS117)、例えば図20に示すように、絶縁層110の上面110aが露出される。図20は、金属層除去工程の具体例を示す図である。
【0050】
絶縁層110の上面110aが露出された後、絶縁層110が上面110aからエッチングされる(ステップS118)。これにより、例えば図21に示すように、絶縁層110の凹部110cの位置に開口部111が形成されるとともに、開口部111の位置において絶縁層110の上面110aからパッド141が突出する。図21は、絶縁層エッチング工程の具体例を示す図である。絶縁層110のエッチングは、例えばプラズマ又はエキシマレーザ等を用いたドライエッチングにより実現される。絶縁層110のエッチングは、残留する絶縁層110の厚みが適切な厚みとなる時点で完了する。例えばパッド141の高さ(開口部111内は含まず、絶縁層110の上面110aよりも上側の部分の高さ)が例えば5~20μm程度となるまで、絶縁層110がエッチングされる。
【0051】
絶縁層110が上面110aからエッチングされるため、上面110aが粗化される。これにより、絶縁層110においては、上面110aの表面粗度が下面110bの表面粗度よりも大きくなる。上面110aの表面粗度が下面110bと比べて大きくなることにより、後の工程で半導体チップとの間に充填されるアンダーフィル材と絶縁層110との接触面積が増大し、絶縁層110に対するアンダーフィル材の密着性がより向上する。
【0052】
絶縁層110のエッチングにより開口部111の位置において絶縁層110の上面110aからパッド141が突出した段階では、接続端子140の表面処理層142上にシード層144が残留している。そこで、例えば、図22に示すように、表面処理層142からシード層144がエッチングにより除去される(ステップS119)。すなわち、例えば硫酸-過酸化水素や過硫酸塩などのエッチング液を用いたウェットエッチングにより、銅(Cu)からなるシード層144が除去される。これにより、表面処理層142と開口部111の内壁面との間には、シード層144と同じ厚みを有する空隙143が形成される。図22は、シード層除去工程の具体例を示す図である。
【0053】
シード層144の除去後に、例えば図23に示すように、ソルダーレジスト層130の表面から保護フィルム160が剥離される(ステップS120)。図23は、保護フィルム剥離工程の具体例を示す図である。
【0054】
ソルダーレジスト層130側から保護フィルム160が剥離されると、絶縁層110側には半導体チップが搭載され(ステップS121)、接続端子140と半導体チップの電極とが接続される。具体的には、例えば図24に示すように、半導体チップ170が接続端子140の上方に搭載され、半導体チップ170の電極171が例えばはんだなどによって接続端子140に接合される。図24は、半導体チップ搭載工程の具体例を示す図である。
【0055】
そして、電極171と接続端子140との接合後に、配線基板100と半導体チップ170との間には、アンダーフィル材172が充填される。電極171と接続端子140との接合部は、アンダーフィル材172によって封止され、配線基板100に半導体チップ170が実装された半導体装置となる。
【0056】
アンダーフィル材172が充填される際には、絶縁層110の上面110aがアンダーフィル材172と接する。本実施形態においては、接続端子140の下部外周(表面処理層142)と、絶縁層110における開口部111の内壁面との間に空隙143が形成されているため、絶縁層110の上面110aに接するアンダーフィル材172の一部が空隙143内に流入する。結果として、絶縁層110とアンダーフィル材172との間にアンカー効果を発現させることができることから、絶縁層110に対するアンダーフィル材172の密着性を向上させることができる。
【0057】
以上のように、実施形態に係る配線基板(一例として、配線基板100)は、絶縁層(一例として、絶縁層110)と、接続端子(一例として、接続端子140)と、配線構造体(一例として、多層配線構造120)とを有する。絶縁層は、第1面(一例として、上面110a)と第1面の反対側の第2面(一例として、下面110b)とを有し、第1面及び第2面を貫通する開口部(一例として、開口部111)が形成される。接続端子は、開口部に配置される。配線構造体は、絶縁層の第2面に積層されて接続端子と接続する。接続端子は、開口部内に形成され、絶縁層の第2面と同一面上に底面が位置するパッド(一例として、パッド141)と、パッドの上面及び側面を被覆する表面処理層(一例として、表面処理層142)とを有する。パッドは、開口部の位置において絶縁層の第1面から突出し、表面処理層は、開口部の内壁面との間に空隙(一例として、空隙143)を形成する。これにより、絶縁層に対するアンダーフィル材(一例として、アンダーフィル材172)の密着性を向上させることができる。
【0058】
また、パッドは、上面から底面に向かうにつれて径が大きくなるテーパ形状を有していても良い。これにより、接続端子に対するアンダーフィル材の密着性を向上させることができる。
【0059】
また、開口部は、断面形状において、内壁面がパッドのテーパ形状に対応して傾くテーパ面であっても良い。これにより、絶縁層に対するアンダーフィル材の密着性をより向上させることができる。
【0060】
また、表面処理層は、開口部の内壁面との間に、表面処理層の厚みよりも幅が小さい空隙を形成しても良い。これにより、空隙に対するアンダーフィル材の充填効率を高めることができる。
【0061】
また、絶縁層は、第1面の表面粗度が第2面の表面粗度よりも大きくてもよい。これにより、絶縁層に対するアンダーフィル材の密着性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0062】
100 配線基板
110 絶縁層
110a 上面
110b 下面
110c 凹部
111 開口部
120 多層配線構造
121 絶縁層
122 配線層
123 ビア
130 ソルダーレジスト層
131 開口部
140 接続端子
141 パッド
141A 金属膜
142 表面処理層
142c 凹部
143 空隙
144 シード層
170 半導体チップ
172 アンダーフィル材
300 支持体
301 基体
302 第1金属層
303 第2金属層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24