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  • 特開-接着性ポリマーの洗浄方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173330
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】接着性ポリマーの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241205BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20241205BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/304 622J
H01L21/304 622Q
H01L21/304 621D
C11D7/32
C11D7/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091678
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100210697
【弁理士】
【氏名又は名称】日浅 里美
(72)【発明者】
【氏名】中崎 晋
(72)【発明者】
【氏名】宮原 邦明
【テーマコード(参考)】
4H003
5F057
5F157
【Fターム(参考)】
4H003DA09
4H003DA12
4H003DA15
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB19
4H003FA04
5F057AA21
5F057CA14
5F057DA38
5F057EC30
5F057FA37
5F157AA42
5F157AA76
5F157AA99
5F157BC04
5F157BC12
5F157BC13
5F157BF32
5F157BF39
5F157BF49
5F157BF54
5F157BF55
5F157BF59
5F157BF72
5F157BF93
5F157DB03
(57)【要約】
【課題】改善されたエッチング速度で基材上の接着性ポリマーを洗浄することができる洗浄方法を提供する。
【解決手段】第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物、及び有機溶媒を含有する分解洗浄組成物を用いて、基材上の接着性ポリマーを洗浄する洗浄方法であって、前記洗浄の温度を27℃以上に制御する、洗浄方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物、及び有機溶媒を含有する分解洗浄組成物を用いて、基材上の接着性ポリマーを洗浄する洗浄方法であって、前記洗浄の温度を27℃以上に制御する、洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄の温度を30℃以上に制御する、請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記有機溶媒が非プロトン性溶媒である、請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記非プロトン性溶媒の少なくとも1種が(A)窒素原子に水素原子が直接結合していないN-置換アミド化合物である、請求項3に記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記(A)窒素原子に水素原子が直接結合していないN-置換アミド化合物が式(1):
【化1】
(式(1)において、Rは炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)
で表される2-ピロリドン誘導体化合物である、請求項4に記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記非プロトン性溶媒の少なくとも1種が(B)エーテル化合物である、請求項3~5のいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記(B)エーテル化合物が、式(2):
O(C2nO) (2)
(式(2)において、R及びRはそれぞれ独立してメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びt-ブチル基からなる群より選択されるアルキル基を表し、nは2又は3であり、xは1~4の整数である。)
で表されるグリコールのジアルキルエーテルを含む、請求項6に記載の洗浄方法。
【請求項8】
前記(B)エーテル化合物が、式(3):
OR (3)
(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数4~8のアルキル基を表す。)
で表されるジアルキルエーテルを含む、請求項6に記載の洗浄方法。
【請求項9】
前記第四級フッ化アルキルアンモニウムが、Rで表されるフッ化テトラアルキルアンモニウムであり、R~Rがそれぞれ独立してメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、及びn-ブチル基からなる群より選択されるアルキル基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項10】
前記分解洗浄組成物100質量%に対する前記第四級フッ化アルキルアンモニウムの含有量が、0.01~10質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項11】
前記接着性ポリマーがポリオルガノシロキサン化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の洗浄方法により、デバイスウェハ上の接着性ポリマーを洗浄することを含む、デバイスウェハの製造方法。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか一項に記載の洗浄方法により、支持ウェハ上の接着性ポリマーを洗浄することを含む、支持ウェハの再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着性ポリマーの洗浄方法に関する。特に、本開示は、半導体ウェハの薄型化プロセスにおいて、デバイスウェハ上に残留した、デバイスウェハと支持ウェハ(キャリアウェハ)との仮接着に使用される接着性ポリマーを含む接着剤を分解洗浄するための接着性ポリマーの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の高密度化のための三次元実装技術においては、半導体ウェハの1枚当たりの厚さが薄くされ、シリコン貫通電極(TSV)により結線された複数の半導体ウェハが積層されている。具体的には、半導体デバイスを形成したデバイスウェハのデバイスを形成させていない面(裏面)を研磨によって薄型化した後、その裏面にTSVを含む電極形成が行われる。
【0003】
デバイスウェハの裏面の研磨工程においては、デバイスウェハに機械的強度を付与するために、キャリアウェハとも呼ばれる支持ウェハがデバイスウェハの半導体デバイス形成面に接着剤を用いて仮接着される。支持ウェハとして例えばガラスウェハ又はシリコンウェハが使用される。研磨工程後、必要に応じてデバイスウェハの研磨面(裏面)に、Al、Cu、Ni、Au等を含む金属配線若しくは電極パッド、酸化膜、窒化膜等の無機膜、又はポリイミド等を含む樹脂層が形成される。その後、デバイスウェハの裏面を、リングフレームにより固定された、アクリル粘着層を有するテープに貼り合わせることにより、デバイスウェハがテープに固定される。その後、デバイスウェハは支持ウェハから分離され(デボンディング)、デバイスウェハ上の接着剤は剥離され、デバイスウェハ上の接着剤の残留物は洗浄剤を用いて洗浄除去される。
【0004】
デバイスウェハの仮接着用途には、耐熱性の良好なポリオルガノシロキサン化合物を接着性ポリマーとして含む接着剤が使用される。特に、接着剤が架橋されたポリオルガノシロキサン化合物である場合、Si-O結合の切断及び溶剤による分解生成物の溶解の2つの作用が洗浄剤に求められる。そのような洗浄剤として、例えばテトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)などのフッ素系化合物を極性の非プロトン性溶媒に溶解させたものが挙げられる。TBAFのフッ化物イオンはSi-F結合生成を介したSi-O結合の切断に関与することから、洗浄剤にエッチング性能を付与することができる。極性非プロトン性溶媒は、TBAFを溶解することができ、かつフッ化物イオンに対して水素結合を介した溶媒和を形成しないことから、フッ化物イオンの反応性を高めることができる。
【0005】
非特許文献1(Advanced Materials, 11, 6, 492 (1999))では、溶媒として非プロトン性のTHFを用いた1.0M TBAF溶液がポリジメチルシロキサン(PDMS)の分解及び溶解除去に使用されている。
【0006】
非特許文献2(Advanced Materials, 13, 8, 570 (2001))では、TBAFの溶媒として、THFと同様に非プロトン性溶媒のNMP、DMF及びDMSOが使用されている。
【0007】
非特許文献3(Macromolecular Chemistry and Physics, 217, 284-291 (2016))には、PDMSのTBAF/有機溶媒によるエッチング速度を溶媒毎に調べた結果が記載されており、エッチング速度が高いTHF及びDMFについては、THF/DMFの比率を変えた混合溶媒を用いたTBAF溶液のエッチング速度の比較も記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Advanced Materials, 11, 6, 492 (1999)
【非特許文献2】Advanced Materials, 13, 8, 570 (2001)
【非特許文献3】Macromolecular Chemistry and Physics, 217, 284-291 (2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、改善されたエッチング速度で基材上の接着性ポリマーを洗浄することができる洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、接着性ポリマーの洗浄の温度を制御することにより、改善されたエッチング速度が得られることを見出した。
【0011】
即ち本開示は、次の[1]~[13]に関する。
[1]
第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物、及び有機溶媒を含有する分解洗浄組成物を用いて、基材上の接着性ポリマーを洗浄する洗浄方法であって、前記洗浄の温度を27℃以上に制御する、洗浄方法。
[2]
前記洗浄の温度を30℃以上に制御する、[1]に記載の洗浄方法。
[3]
前記有機溶媒が非プロトン性溶媒である、[1]又は[2]に記載の洗浄方法。
[4]
前記非プロトン性溶媒の少なくとも1種が(A)窒素原子に水素原子が直接結合していないN-置換アミド化合物である、[3]に記載の洗浄方法。
[5]
前記(A)窒素原子に水素原子が直接結合していないN-置換アミド化合物が式(1):
【化1】
(式(1)において、Rは炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)
で表される2-ピロリドン誘導体化合物である、[4]に記載の洗浄方法。
[6]
前記非プロトン性溶媒の少なくとも1種が(B)エーテル化合物である、[3]~[5]のいずれかに記載の洗浄方法。
[7]
前記(B)エーテル化合物が、式(2):
O(C2nO) (2)
(式(2)において、R及びRはそれぞれ独立してメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びt-ブチル基からなる群より選択されるアルキル基を表し、nは2又は3であり、xは1~4の整数である。)
で表されるグリコールのジアルキルエーテルを含む、[6]に記載の洗浄方法。
[8]
前記(B)エーテル化合物が、式(3):
OR (3)
(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数4~8のアルキル基を表す。)
で表されるジアルキルエーテルを含む、[6]又は[7]に記載の洗浄方法。
[9]
前記第四級フッ化アルキルアンモニウムが、Rで表されるフッ化テトラアルキルアンモニウムであり、R~Rがそれぞれ独立してメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、及びn-ブチル基からなる群より選択されるアルキル基である、[1]~[8]のいずれかに記載の洗浄方法。
[10]
前記分解洗浄組成物100質量%に対する前記第四級フッ化アルキルアンモニウムの含有量が、0.01~10質量%である、[1]~[9]のいずれかに記載の洗浄方法。
[11]
前記接着性ポリマーがポリオルガノシロキサン化合物である、[1]~[10]のいずれかに記載の洗浄方法。
[12]
[1]~[11]のいずれかに記載の洗浄方法により、デバイスウェハ上の接着性ポリマーを洗浄することを含む、デバイスウェハの製造方法。
[13]
[1]~[11]のいずれかに記載の洗浄方法により、支持ウェハ上の接着性ポリマーを洗浄することを含む、支持ウェハの再生方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示の洗浄方法によれば、改善されたエッチング速度で基材上の接着性ポリマーを洗浄することができる。
【0013】
上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1~2及び比較例1~2の評価結果に基づき、洗浄の温度に対して、エッチング速度(ER)をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。
【0016】
本明細書では、数値範囲について「~」を使用する場合には、両端の数値は、それぞれ上限値及び下限値であり、数値範囲に含まれる。
【0017】
〈基材上の接着性ポリマーを洗浄する洗浄方法〉
一実施態様の基材上の接着性ポリマーを洗浄する洗浄方法は、第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物、及び有機溶媒を含有する分解洗浄組成物を用いて、洗浄の温度を27℃以上に制御しつつ、洗浄を行う方法である。
【0018】
接着性ポリマーの洗浄は、従来知られた様々な方法で行うことができる。接着性ポリマーの洗浄方法として、例えば、スピンコータ等を用いて所定の速度で基材を回転させながら、接着性ポリマーと接触するように基材上に分解洗浄組成物を吐出する方法(スピンエッチ)、基材上の接着性ポリマーに対して分解洗浄組成物を噴霧する方法(スプレー)、分解洗浄組成物を入れた容器に接着性ポリマーを有する基材を浸漬する方法(ディッピング)などが挙げられる。
【0019】
洗浄の温度は、27℃以上であり、30℃以上であることが好ましく、32℃以上であることがより好ましく、34℃以上であることがさらに好ましい。洗浄の温度の上限は、分解洗浄組成物に用いる有機溶媒の引火点以下であることが好ましく、有機溶媒の種類に応じて適宜設定することができる。引火点は、タグ密閉法(JIS K 2265-1:2007)により測定される。洗浄の温度は、例えば50℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましく、40℃以下がさらに好ましい。一実施態様において、洗浄の温度は37℃以下であることが特に好ましい。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
【0020】
洗浄は、空気雰囲気下で行ってもよく、不活性ガス雰囲気下で行ってもよいが、好ましくは不活性ガス雰囲気下で行う。不活性ガスとしては、アルゴンガス又は窒素ガスが好ましく、窒素ガスがより好ましい。
【0021】
洗浄の温度を27℃以上に制御して洗浄を行う方法としては、例えば、調製した分解洗浄組成物を充填した容器を恒温槽に入れて、所定の温度で保持した後、恒温槽から容器を取り出して、分解洗浄組成物を洗浄に用いる方法が挙げられる。ディッピングにより洗浄を行う場合は、分解洗浄組成物と、接着性ポリマーを有する基材とを入れた容器を、所定の温度で保持した状態で洗浄を行ってもよい。具体的には、分解洗浄組成物と、接着性ポリマーを有する基材と、攪拌子とを入れた容器を、スターラー付きオイルバスに入れて、攪拌しながら所定の温度で洗浄を行うことができる。
【0022】
洗浄の時間は、基材上の接着性ポリマーの種類及び付着量によって様々であってよく、一般に5秒~10時間、好ましくは10秒~2時間である。洗浄時に、分解洗浄組成物の浴又は基材に超音波を適用してもよい。
【0023】
洗浄後に、基材をイソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール、イオン交換水(DIW)などを用いてリンスしてもよく、基材を窒素ガス、空気等の吹付け、常圧下又は減圧下での加熱などにより乾燥してもよい。
【0024】
[分解洗浄組成物]
一実施態様の分解洗浄組成物は、第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物、及び有機溶媒を含有する。
【0025】
<第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物>
第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物は、Si-O結合の切断に関与するフッ化物イオンを放出する。第四級アルキルアンモニウム部分により、塩である第四級フッ化アルキルアンモニウムは有機溶媒中に溶解することができる。第四級フッ化アルキルアンモニウムとしては、特に制限なく様々な化合物を使用することができる。第四級フッ化アルキルアンモニウムの水和物として、例えば三水和物、四水和物及び五水和物が挙げられる。第四級フッ化アルキルアンモニウムは、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。第四級フッ化アルキルアンモニウムの非水和物と水和物は、任意の比率で使用することができる。
【0026】
一実施態様では、第四級フッ化アルキルアンモニウムは、Rで表されるフッ化テトラアルキルアンモニウムであり、R~Rはそれぞれ独立してメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、及びn-ブチル基からなる群より選択されるアルキル基である。入手容易性の観点から、R~Rはすべて同一のアルキル基であることが好ましい。そのような第四級フッ化アルキルアンモニウムとして、テトラメチルアンモニウムフルオライド、テトラエチルアンモニウムフルオライド、テトラプロピルアンモニウムフルオライド、テトラブチルアンモニウムフルオライドなどが挙げられる。分解洗浄性能、入手容易性、価格などの観点から、第四級フッ化アルキルアンモニウムは、テトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)であることが好ましい。
【0027】
一実施態様では、分解洗浄組成物中の第四級フッ化アルキルアンモニウムの含有量は0.01~10質量%である。ここで「第四級フッ化アルキルアンモニウムの含有量」は、組成物中に第四級フッ化アルキルアンモニウムの水和物が含まれる場合には、水和水の質量を除いた、第四級フッ化アルキルアンモニウムのみの質量として換算した値である。分解洗浄組成物中の第四級フッ化アルキルアンモニウムの含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。分解洗浄組成物中の第四級フッ化アルキルアンモニウムの含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。別の実施態様では、分解洗浄組成物中の第四級フッ化アルキルアンモニウムの含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。この実施態様では、分解洗浄組成物中の第四級フッ化アルキルアンモニウムの含有量は、9質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。第四級フッ化アルキルアンモニウムの含有量を0.01質量%以上とすることで、接着性ポリマーを効果的に分解及び洗浄することができる。10質量%以下とすることで、デバイスウェハのデバイス形成面に含まれる金属部分の腐食を防止又は抑制することができる。
【0028】
金属部分の腐食の防止若しくは抑制、又は第四級フッ化アルキルアンモニウムの使用に伴うコストの低減が特に要求される場合、分解洗浄組成物中の第四級フッ化アルキルアンモニウムの含有量を、4質量%以下、又は3質量%以下としてもよい。より高いエッチング速度が要求される場合、分解洗浄組成物中の第四級フッ化アルキルアンモニウムの含有量を、5質量%以上、6質量%以上、又は7質量%以上としてもよい。
【0029】
<有機溶媒>
有機溶媒は、第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物を溶解又は分散させることができれば特に制限されない。有機溶媒としては、非プロトン性溶媒が好ましい。非プロトン性溶媒は、第四級フッ化アルキルアンモニウムのフッ化物イオンに対して水素結合を介した溶媒和を形成しないことから、フッ化物イオンの反応性を高めることができる。非プロトン性溶媒としては、例えばN-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の窒素原子に水素原子が直接結合していないN-置換アミド化合物;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル化合物;ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の有機硫黄酸化物などが挙げられる。
【0030】
分解洗浄組成物100質量%に対する有機溶媒の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。分解洗浄組成物100質量%に対する有機溶媒の含有量は、99.99質量%以下であることが好ましく、99.95質量%以下であることがより好ましく、99.90質量%以下であることがさらに好ましい。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
【0031】
分解洗浄組成物100質量%に対する非プロトン性溶媒の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。分解洗浄組成物100質量%に対する非プロトン性溶媒の含有量は、99.99質量%以下であることが好ましく、99.95質量%以下であることがより好ましく、99.90質量%以下であることがさらに好ましい。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
【0032】
有機溶媒100質量%に対する非プロトン性溶媒の含有量は、95~100質量%であることが好ましく、98~100質量%であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。
【0033】
有機溶媒は、(A)窒素原子に水素原子が直接結合していないN-置換アミド化合物、及び(B)エーテル化合物からなる群から選択される少なくとも1種の非プロトン性溶媒を含むことが好ましい。
【0034】
一実施態様では、有機溶媒は、ケトン及びエステルから選択される非プロトン性溶媒を実質的に含まない、又は含まない。例えば、分解洗浄組成物中のケトン及びエステルから選択される非プロトン性溶媒の含有量を、1質量%以下、0.5質量%以下、又は0.1質量%以下とすることができる。
((A)窒素原子に水素原子が直接結合していないN-置換アミド化合物)
【0035】
有機溶媒は、非プロトン性溶媒として、窒素原子に水素原子が直接結合していないN-置換アミド化合物(本開示において単に「N-置換アミド化合物」ともいう。)を含有することが好ましい。N-置換アミド化合物は、比較的極性が高い非プロトン性溶媒であり、組成物中に第四級フッ化アルキルアンモニウム及びその水和物を均一に溶解又は分散することができる。本開示において「N-置換アミド化合物」は、窒素原子に水素原子が直接結合していない尿素化合物(カルバミド化合物)も包含する。N-置換アミド化合物として、特に制限なく様々な化合物を使用することができ、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、テトラメチル尿素等の非環式N-置換アミド、及び2-ピロリドン誘導体、2-ピペリドン誘導体、ε-カプロラクタム誘導体、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(N,N’-ジメチルプロピレン尿素)等の環式N-置換アミドが挙げられる。これらの中でも、環式N-置換アミドを用いることが好ましい。N-置換アミド化合物は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0036】
一実施態様では、N-置換アミド化合物は、式(1):
【化2】
(式(1)において、Rは炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)
で表される2-ピロリドン誘導体化合物である。炭素原子数1~4のアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基などが挙げられる。式(1)で表される2-ピロリドン誘導体化合物として、例えば、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-プロピルピロリドン、N-ブチルピロリドンなどが挙げられる。
【0037】
極性が比較的高く、第四級フッ化アルキルアンモニウムの溶解能力に優れており、入手が容易であることから、N-置換アミド化合物は、式(1)においてRがメチル基又はエチル基である2-ピロリドン誘導体化合物であることが好ましく、式(1)においてRがメチル基である2-ピロリドン誘導体化合物、すなわちN-メチルピロリドンであることがより好ましい。
【0038】
N-置換アミド化合物の含有量は、有機溶媒を100質量%としたときに、20~100質量%であることが好ましく、30~90質量%であることがより好ましく、35~85質量%であることがさらに好ましく、40~80質量%であることが特に好ましい。
【0039】
((B)エーテル化合物)
有機溶媒は、非プロトン性溶媒として、エーテル化合物を含有することが好ましく、エーテル化合物とN-置換アミド化合物を含有することがより好ましい。エーテル化合物をN-置換アミド化合物と組み合わせることで、接着剤表面に対して高い親和性を示す混合溶媒系を形成することができる。そのような混合溶媒系を用いた組成物は、第四級フッ化アルキルアンモニウムの反応活性が有効に利用された高いエッチング速度を達成することができる。エーテル化合物として、非プロトン性溶媒であれば、特に制限なく様々な化合物を使用することができる。エーテル化合物は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。エーテル化合物は、エステル構造又はアミド構造を含まないものが好ましい。
【0040】
一実施態様では、エーテル化合物は、式(2):
O(C2nO) (2)
(式(2)において、R及びRはそれぞれ独立してメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びt-ブチル基からなる群より選択されるアルキル基を表し、nは2又は3であり、xは1~4の整数である。)
で表されるグリコールのジアルキルエーテルを含む。
【0041】
式(2)で表されるグリコールのジアルキルエーテルとして、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジn-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。式(2)で表されるグリコールのジアルキルエーテルは、分解洗浄性能、入手容易性、価格などの観点から、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はジプロピレングリコールジメチルエーテルであることが好ましく、幅広い組成で高いエッチング速度が得られることからジプロピレングリコールジメチルエーテルであることがより好ましい。
【0042】
式(2)で表されるグリコールのジアルキルエーテルの含有量は、有機溶媒を100質量%としたときに、10~80質量%とすることが好ましく、15~70質量%とすることがより好ましく、20~60質量%とすることがさらに好ましい。別の実施態様では、式(2)で表されるグリコールのジアルキルエーテルの含有量は、有機溶媒を100質量%としたときに、0~60質量%とすることが好ましく、3~50質量%とすることがより好ましく、5~40質量%とすることがさらに好ましい。
【0043】
一実施態様では、エーテル化合物は、式(3):
OR (3)
(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数4~8のアルキル基を表す。)
で表されるジアルキルエーテルを含む。
【0044】
エーテル化合物は、式(2)で表されるグリコールのジアルキルエーテルと、式(3)で表されるジアルキルエーテルとを含んでもよい。このように極性の異なる2種類以上のエーテル化合物を組み合わせて用いることにより、様々な接着剤表面に対する親和性を効果的に高めて、適用範囲の広い組成物を得ることができる。
【0045】
式(3)で表されるジアルキルエーテルとして、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ブチルヘキシルエーテル、ブチルオクチルエーテルなどが挙げられる。式(3)で表されるジアルキルエーテルは、分解洗浄性能、入手容易性、価格などの観点から、ジブチルエーテルであることが好ましい。
【0046】
式(3)で表されるジアルキルエーテルの含有量は、有機溶媒を100質量%としたときに、0~50質量%とすることが好ましく、1~35質量%とすることがより好ましく、2~30質量%とすることがさらに好ましい。式(3)で表されるジアルキルエーテルの含有量を0質量%以上、50質量%以下とすることにより、より高いエッチング速度を得ることができる。別の実施態様では、式(3)で表されるジアルキルエーテルの含有量は、有機溶媒を100質量%としたときに、30~70質量%とすることが好ましく、35~65質量%とすることがより好ましく、40~60質量%とすることがさらに好ましい。
【0047】
一実施態様では、エーテル化合物の引火点は21℃以上である。引火点が21℃以上、すなわち危険物第4類第1石油類に非該当であるエーテル化合物を用いることで、テトラヒドロフラン(THF、引火点-17℃、危険物第4類第1石油類)などを用いた場合と比較して、組成物の製造及び使用における設備、作業環境等の要件を軽減することができる。例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、及びジブチルエーテルの引火点はそれぞれ51℃、60℃、及び25℃である。引火点は、タグ密閉法(JIS K 2265-1:2007)により測定される。
【0048】
(N-置換アミド化合物とエーテル化合物の組成比)
一実施態様では、有機溶媒を100質量%としたときに、N-置換アミド化合物の含有量は10~90質量%であり、エーテル化合物の含有量は90~10質量%である。有機溶媒を100質量%としたときに、N-置換アミド化合物の含有量を15~85質量%、エーテル化合物の含有量を85~15質量%とすることが好ましく、N-置換アミド化合物の含有量を25~65質量%、エーテル化合物の含有量を75~35質量%とすることがより好ましい。別の実施態様では、有機溶媒を100質量%としたときに、N-置換アミド化合物の含有量を40~80質量%、エーテル化合物の含有量を60~20質量%とすることが好ましい。N-置換アミド化合物及びエーテル化合物の含有量を上記範囲とすることで、第四級フッ化アルキルアンモニウム及びその水和物を組成物中に均一に溶解又は分散することができ、様々な接着剤表面に対して高いエッチング速度を得ることができる。
【0049】
一実施態様では、有機溶媒を100質量%としたときに、N-置換アミド化合物の含有量が20~90質量%、かつ式(2)で表されるグリコールのジアルキルエーテルの含有量が10~80質量%、かつ式(3)で表されるジアルキルエーテルの含有量が0~30質量%である。好ましくは、N-置換アミド化合物の含有量が25~80質量%、かつ式(2)で表されるグリコールのジアルキルエーテルの含有量が20~60質量%、かつ式(3)で表されるジアルキルエーテルの含有量が0~30質量%である。別の実施態様では、有機溶媒を100質量%としたときに、N-置換アミド化合物の含有量が20~90質量%、かつ式(2)で表されるグリコールのジアルキルエーテルの含有量が0~70質量%、かつ式(3)で表されるジアルキルエーテルの含有量が0~30質量%である。好ましくは、N-置換アミド化合物の含有量が30~85質量%、かつ式(2)で表されるグリコールのジアルキルエーテルの含有量が3~50質量%、かつ式(3)で表されるジアルキルエーテルの含有量が0~30質量%である。さらに別の実施態様では、有機溶媒を100質量%としたときに、N-置換アミド化合物の含有量が20~80質量%、かつ式(2)で表されるグリコールのジアルキルエーテルの含有量が10~50質量%、かつ式(3)で表されるジアルキルエーテルの含有量が30~60質量%である。
【0050】
<添加剤及びその他の成分>
分解洗浄組成物は、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、任意成分として、酸化防止剤、界面活性剤、防腐剤、発泡防止剤などの添加剤を含んでもよい。
【0051】
一実施態様では、分解洗浄組成物は、プロトン性溶媒を実質的に含まない、又は含まない。例えば、組成物中のプロトン性溶媒の含有量を、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下とすることができる。組成物に含まれうるプロトン性溶媒は、第四級フッ化アルキルアンモニウムの水和物に由来する水であってもよい。
【0052】
[分解洗浄組成物の製造方法]
分解洗浄組成物の製造方法は特に限定されない。分解洗浄組成物は、例えば第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物、有機溶媒、及びその他の任意成分を混合することにより調製することができる。
【0053】
分解洗浄組成物は、第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物、有機溶媒、及びその他の任意成分を、不活性ガス雰囲気下で混合することにより調製することが好ましい。例えば、不活性ガスを封入したグローブボックス内において、第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物、有機溶媒、及びその他の任意成分を、撹拌機等を用いて撹拌混合して、第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物を溶媒に溶解させる方法が挙げられる。不活性ガスは、好ましくはアルゴンガス又は窒素ガスであり、より好ましくは窒素ガスである。
【0054】
[基材]
基材は、特に制限されないが、例えばシリコンウェハを用いることができる。
【0055】
[接着性ポリマー]
【0056】
接着性ポリマーは、分解洗浄組成物を用いて洗浄することができるものであれば特に制限されない。例えば、様々な接着剤に含まれる接着性ポリマーが挙げられる。接着剤は接着性ポリマーに加えて、任意成分として、硬化剤、硬化促進剤、架橋剤、界面活性剤、レベリング剤、充填材などを含んでもよい。
【0057】
一実施態様では、接着性ポリマーはSi-O結合を含む。接着性ポリマーは、第四級フッ化アルキルアンモニウムのフッ化物イオンによるSi-O結合の切断により低分子化し又は架橋構造を失い、溶媒に溶解可能となり、その結果、デバイスウェハなどの表面から接着性ポリマーを除去することができる。
【0058】
Si-O結合を含む接着性ポリマーは、ポリオルガノシロキサン化合物であることが好ましい。ポリオルガノシロキサン化合物は多数のシロキサン結合(Si-O-Si)を含むことから、分解洗浄組成物を用いて効果的に分解及び洗浄することができる。ポリオルガノシロキサン化合物として、例えばシリコーンエラストマー、シリコーンゲル、及びMQ樹脂などのシリコーンレジン、並びにそれらのエポキシ変性体、アクリル変性体、メタクリル変性体、アミノ変性体、メルカプト変性体などの変性体が挙げられる。ポリオルガノシロキサン化合物は、シリコーン変性ポリウレタン、シリコーン変性アクリル樹脂などのシリコーン変性ポリマーであってもよい。
【0059】
一実施態様では、接着性ポリマーは、付加硬化型のシリコーンエラストマー、シリコーンゲル、又はシリコーンレジンである。これらの付加硬化型シリコーンは、エチレン性不飽和基含有ポリオルガノシロキサン、例えばビニル末端ポリジメチルシロキサン又はビニル末端MQ樹脂と、架橋剤としてポリオルガノハイドロジェンシロキサン、例えばポリメチルハイドロジェンシロキサンとを含み、白金触媒などのヒドロシリル化触媒を用いて硬化される。
【0060】
別の実施態様では、接着性ポリマーは、メチル基含有ポリオルガノシロキサン、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、及びフェニル基含有ポリオルガノシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。これらのポリオルガノシロキサンは、ポリジメチルシロキサン、エポキシ基含有ポリジメチルシロキサン、及びフェニル基含有ポリジメチルシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0061】
付加硬化型シリコーンと、メチル基含有ポリオルガノシロキサン、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、及びフェニル基含有ポリオルガノシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種とを組み合わせてもよい。
【0062】
[デバイスウェハの製造方法]
一実施態様では、デバイスウェハの製造方法は、第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物、及び有機溶媒を含有する分解洗浄組成物を用いて、洗浄の温度を27℃以上に制御しつつ、デバイスウェハ上の接着性ポリマーを洗浄することを含む。洗浄後、必要に応じてデバイスウェハをリンス又は乾燥してもよい。
【0063】
デバイスウェハの製造方法は、さらに以下の工程:シリコンウェハなどの基材上に半導体デバイスを形成してデバイスウェハを得ること、デバイスウェハの半導体デバイス形成面と支持ウェハとを対向させて、デバイスウェハと支持ウェハとを、接着性ポリマーを含む接着剤を介して仮接着すること、デバイスウェハのデバイス形成面の反対面(裏面)を研磨することによりデバイスウェハを薄型化すること、及びデバイスウェハから支持ウェハを分離すること、を含んでもよい。半導体デバイスの形成、デバイスウェハと支持ウェハの仮接着、デバイスウェハの裏面の研磨、及びデバイスウェハの支持ウェハからの分離は、従来知られた方法で行うことができ、特に制限されない。
【0064】
[支持ウェハの再生方法]
一実施態様では、支持ウェハの再生方法は、第四級フッ化アルキルアンモニウム又はその水和物、及び有機溶媒を含有する分解洗浄組成物を用いて、洗浄の温度を27℃以上に制御しつつ、支持ウェハ上の接着性ポリマーを洗浄することを含む。洗浄後、必要に応じて支持ウェハをリンス又は乾燥してもよい。
【実施例0065】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、実施例により制限されるものではない。
【0066】
[実施例1]
<分解洗浄組成物の調製>
窒素ガスを封入したグローブボックス内において、容量25Lのステンレス製容器(SUS304製)に、12,610gのN-メチルピロリドン(NMP)と、1,700gのTBAF・3HO(98%)と、1,251gのジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPGDME)と、2,372gのジブチルエーテル(DBE)とを投入し、混合することでTBAF・3HOを溶解させた。このようにして、NMP:DPGDME:DBEの質量比が0.777:0.077:0.146である混合溶媒の分解洗浄組成物(TBAF含有量:7.7質量%)を調製した。この分解洗浄組成物15mLを50mLのガラスサンプル瓶に移し、窒素ガスを吹き付けながら蓋をした。この操作を繰り返すことにより、気相部が十分に窒素ガスシールされた分解洗浄組成物入りのサンプル瓶3本を得た。これらの分解洗浄組成物入りサンプル瓶をグローブボックスから取り出し、30℃のウォーターバス(ヤマト科学株式会社製、シェイキングインキュベータ BT100)に入れて30分間保持することで、分解洗浄組成物の温度を30℃とした。
【0067】
<ポリオルガノシロキサン化合物を含む接着剤層を有するシリコンウェハ試験片の作製>
12インチ(300mm)シリコンウェハ(厚さ770μm)上に、付加硬化型シリコーン樹脂をスピンコートにより乾燥膜厚が110μmとなるように塗布した。その後、ホットプレート上で、140℃で15分間、190℃で10分間加熱して、シリコンウェハ上に接着剤層を形成した。接着剤層を有するシリコンウェハを1cm×1cmのサイズに分割して試験片とし、試験片の中心部の厚さをマイクロメーターを用いて測定した。
【0068】
<洗浄試験>
分解洗浄組成物入りの50mLのガラスサンプル瓶1本をウォーターバスから取り出し、直ちにマグネチックスターラーの上に置き、サンプル瓶の蓋を開けてすぐに撹拌子を投入した。分解洗浄組成物中にシリコンウェハ試験片1枚を浸漬し、3分間、900rpmの回転数で撹拌子を回転させた。なお、ガラスサンプル瓶をウォーターバスから取り出してから洗浄を終了するまでの時間は3分10秒以内という短時間であったため、ウォーターバスの設定温度と、洗浄の温度は同等であるとみなす。浸漬後、試験片をピンセットで取り出し、イソプロピルアルコール(IPA)の洗瓶を用いて十分にリンスした。試験片に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた後、試験片の中心部の厚さを、マイクロメーターを用いて測定した。
【0069】
下記の式のように、浸漬前後での試験片の厚さの差を分解洗浄組成物への浸漬時間(3分)で割ることにより、分解洗浄組成物のエッチング速度(ER)を算出した。
エッチング速度(ER)(μm/分)=[(浸漬前の試験片の厚さ-浸漬・洗浄・乾燥後の試験片の厚さ)(μm)]/浸漬時間(分)
【0070】
ウォーターバスに入れていた残り2本のガラスサンプル瓶についても、同様の手順で洗浄試験を行い、分解洗浄組成物のERを算出した。3回の洗浄試験で算出したERのうち、中央値を表1に示す。
【0071】
[実施例2、比較例1~2]
洗浄の温度(ウォーターバスの設定温度)を表1に記載のとおりに変えた以外は実施例1と同様の手順で、分解洗浄組成物の調製、シリコンウェハ試験片の作製、及び洗浄試験を行った。なお、ガラスサンプル瓶をウォーターバスから取り出してから洗浄を終了するまでの時間は3分10秒以内という短時間であったため、ウォーターバスの設定温度と、洗浄の温度は同等であるとみなす。それぞれの実施例及び比較例について、3回の洗浄試験で算出したERのうち、中央値を表1に示す。
【0072】
図1は、洗浄の温度(ウォーターバスの設定温度)に対して、ERをプロットしたグラフである。図1に示されるように、洗浄の温度を27℃以上に制御して洗浄を行うことにより、ERが大きく改善することが確認できた。
【0073】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示の洗浄方法は、特にポリオルガノシロキサン化合物を接着性ポリマーとして含む接着剤の残留物をデバイスウェハ上から分解洗浄する用途に好適に使用することができる。
図1