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特開2024-173405電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法
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  • 特開-電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173405
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/469 20230101AFI20241205BHJP
   B01D 61/46 20060101ALI20241205BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20241205BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C02F1/469
B01D61/46
C02F1/44 H
G01N27/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091804
(22)【出願日】2023-06-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸也
【テーマコード(参考)】
2G060
4D006
4D061
【Fターム(参考)】
2G060AA06
2G060AC08
2G060AE17
2G060AF08
2G060KA06
4D006GA03
4D006GA07
4D006GA17
4D006JA42Z
4D006JA43Z
4D006JA44Z
4D006JA53Z
4D006KA01
4D006KA16
4D006KB04
4D006KB13
4D006KB14
4D006KE19P
4D006MA03
4D006MA13
4D006MA14
4D006PA01
4D006PB02
4D006PC02
4D061DA01
4D061DB13
4D061EA09
4D061EB02
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB17
4D061EB19
4D061EB37
4D061EB39
4D061FA07
4D061FA09
4D061FA13
4D061GA21
4D061GC11
(57)【要約】
【課題】 電気脱イオン装置の脱塩水の比抵抗値又は導電率を的確に計測することの可能な電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法を提供する。
【解決手段】 電気脱イオン装置8A~8Dには、被処理水W4の給水管21から分岐した電気脱イオン装置8A~8Dの脱塩室に給水W4を供給する分岐菅21A~21Dが接続しているとともに、脱塩室の出口に処理水W5の流出管22A~22Dが連通している。これら流出管22A~22Dは、合流管22において合流し、後段のシステムに処理水W5を供給する。そして、流出管22A~22Dには、比抵抗計23A~23Dがそれぞれ設けられており、採水管24A~24Dの長さは、脱塩水が、脱塩室の出口から比抵抗計23A~23Dの計測部に到達するまで10秒以上、好ましくは30秒以上を要する長さとなっている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極及び陽極と、該陰極と陽極との間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室とを有し、該脱塩室にイオン交換樹脂が充填された電気脱イオン装置の脱塩室を通過して得られる脱塩水の比抵抗値又は導電率を計測する方法であって、前記脱塩室を通過した後10秒以上経過した脱塩水の比抵抗値又は導電率を計測する、電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法。
【請求項2】
前記電気脱イオン装置の脱塩室出口から前記比抵抗値又は導電率の測定箇所までが、PP、PVC、PVDFから選ばれる硬質樹脂材料または金属材料により構成されている、請求項1に記載の電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法。
【請求項3】
前記比抵抗値又は導電率を計測する手段が比抵抗計又は導電率計であり、該比抵抗計又は導電率計の採水管がガスバリア性材料製チューブである、請求項1又は2に記載の電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法に関し、特に電気脱イオン装置の脱塩水の比抵抗値又は導電率を的確に計測することの可能な電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等の電子産業分野で用いられている超純水は、前処理システム、一次純水製造装置及び一次純水を処理するサブシステム(二次純水製造装置)で構成される超純水製造システムで原水を処理することにより製造されている。
【0003】
例えば、図4に示すように超純水製造システム1は、前処理装置2と一次純水製造装置(純水製造装置)3とサブシステム4といった3段の装置で構成されている。このような超純水製造システム1の前処理装置2では、原水Wの濾過、凝集沈殿、精密濾過膜などによる前処理が施され、主に懸濁物質が除去される。
【0004】
一次純水製造装置3は、前処理水W1を処理する逆浸透膜装置5と、紫外線酸化装置6と、電気脱イオン装置8と、この電気脱イオン装置8に給水を供給する給水ポンプ7とを有する。この一次純水製造装置3で前処理水W1中の大半の電解質、微粒子、生菌等の除去を行うとともに有機物を分解して、一次純水(純水)W2を得る。
【0005】
そして、サブシステム4は、サブタンク10と供給ポンプ11と紫外線酸化装置12と非再生型混床式イオン交換装置13と限外ろ過膜(UF膜)14とを有し、限外ろ過膜(UF膜)14からユースポイント15を経由してサブタンク10に還流する構成となっている。このサブシステム4では、一次純水製造装置3で製造された一次純水W2中に含まれる微量の有機物(TOC成分)を酸化分解し、炭酸イオン、有機酸類、アニオン性物質、さらには金属イオンやカチオン性物質を除去し、最後に限外濾過(UF)膜14で微粒子を除去して超純水W3を製造し、これをユースポイント15に供給して、未使用の超純水W3はサブタンク10に還流する。
【0006】
上述したような超純水製造システム1の一次純水製造装置3に用いられる電気脱イオン装置8は、一般に陰極(カソード)及び陽極(アノード)間にカチオン交換膜とアニオン交換膜とを交互に配置し、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画を構成することで脱塩室及び濃縮室を形成し、この脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂を充填したものである。カチオン交換膜やアニオン交換膜などのイオン交換膜としては、粉末状のイオン交換樹脂にポリスチレンなどの結合剤を加えて製膜した不均質膜や、スチレン-ジビニルベンゼン等の重合によって製膜した均質膜などのほか、各種アニオン交換機能あるいはカチオン交換機能を有する単量体をグラフト重合により製膜したものなどが用いられている。
【0007】
また、脱塩室には、イオン交換樹脂、イオン交換繊維もしくはグラフト交換体等からなるイオン交換体(アニオン交換体及びカチオン交換体)が混合もしくは複層状に充填されている。さらに、濃縮室と、陽極室及び陰極室にも、イオン交換体が充填されている。
【0008】
この電気脱イオン装置8には、脱塩室に被処理水(給水)を通水して処理水を取り出す通水手段と、濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段とが設けられていて、通常は脱塩室に被処理水を通水する方向と、濃縮室に濃縮水を通水する方向を同じくすること、もしくは逆方向とすることが行われている。
【0009】
このような電気脱イオン装置8を備えた一次純水製造装置(純水製造装置)3においては、例えば、図5に示すように複数系列(4系列)の電気脱イオン装置8A,8B,8C,8Dが設けられていて、この電気脱イオン装置8A~8Dは、給水(被処理水)W4の給水管21から分岐した電気脱イオン装置8A~8Dの脱塩室に給水W4を供給する分岐菅21A~21Dと、脱塩室に連通した処理水(脱塩水)W5の流出管22A~22Dが接続していて、これら流出管22A~22Dは、合流管22において合流し、後段のシステムに処理水W5を供給する。そして、一次純水W2の水質の管理には、電気脱イオン装置8A~8Dの処理水の水質の把握は重要である。そこで、流出管22A~22Dに、比抵抗計23A~23Dがそれぞれ設け、これら比抵抗計23A~23Dにより電気脱イオン装置8A~8Dの脱塩室から吐出された直後の処理水(脱塩水)W5の比抵抗を測定することで処理水の水質を監視している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この電気脱イオン装置8A~8Dの処理水(脱塩水)W5の比抵抗値が、この電気脱イオン装置8の後段側、例えば、合流管22に比抵抗計23を設けて合流した処理水W5の比抵抗を計測してみると、比抵抗が低下していることがわかった。一次純水W2ひいては超純水W3の水質を安定化させるためには電気脱イオン装置8の処理水の水質を正確に管理することが好ましいが、比抵抗値の計測精度が低いと電気脱イオン装置の運転電流などの運転条件の設定が困難になる、という問題点がある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電気脱イオン装置の脱塩水の比抵抗値又は導電率を的確に計測することの可能な電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、陰極及び陽極と、該陰極と陽極との間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室とを有し、該脱塩室にイオン交換樹脂が充填された電気脱イオン装置の脱塩室を通過して得られる脱塩水の比抵抗値又は導電率を計測する方法であって、前記脱塩室を通過した後10秒以上経過した脱塩水の比抵抗値又は導電率を計測する、電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法を提供する(発明1)。
【0013】
かかる発明(発明1)によれば、電気脱イオン装置の脱塩水の比抵抗値又は導電率を精度よく計測することができる。このような効果が得られる理由は以下のように推測される。すなわち、電気脱イオン装置の後段側で脱塩水が低下する原因について本発明者が種々検討した結果、電気脱イオン装置の脱塩室から吐出された直後の脱塩水は、炭酸が水中で乖離した状態ではなく、時間の経過とともに炭酸が乖離してイオン化することで比抵抗値を低下させていることがわかった。そこで、電気脱イオン装置の処理水(脱塩水)の水質を比抵抗計や導電率計で測定する際に一定時間を経過させた後に測定すれば、脱塩水の水質を的確に計測することができるので、電気脱イオン装置の脱塩水の水質を好適に管理することができる。
【0014】
上記発明(発明1)においては、前記電気脱イオン装置の脱塩室の出口から前記比抵抗値又は導電率の測定箇所までが、PP、PVC、PVDFから選ばれる硬質樹脂材料または金属材料により構成されていることが好ましい(発明2)。
【0015】
かかる発明(発明2)によれば、PP、PVC、PVDFから選ばれる硬質樹脂材料や属材料は、ガスバリア性に優れているので、前記脱塩室出口から吐出した脱塩水が比抵抗値又は導電率の測定箇所までに外部的な要因で水質が低下するのを抑制することができる。
【0016】
上記発明(発明1,2)においては、前記比抵抗値又は導電率を計測する手段が比抵抗計又は導電率計であり、該比抵抗計又は導電率計の採水管がガスバリア性材料製チューブであることが好ましい(発明3)。
【0017】
かかる発明(発明3)によれば、比抵抗計又は導電率計での脱塩水の水質を計測する過程で脱塩水が外部的な要因で水質が低下するのを抑制することができるので、この測定値に基づいて脱塩水の水質を的確に管理することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電気脱イオン装置の電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法によれば、脱塩室を通過した後10秒以上経過した脱塩水の比抵抗値又は導電率に基づいて水質を管理するので、電気脱イオン装置の脱塩室から吐出された直後の脱塩水に残存する未乖離の炭酸が溶解するので、脱塩水の水質を的確に計測することができる。これにより、電気脱イオン装置の脱塩水の水質を好適に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法を示す概略図である。
図2】電気脱イオン装置の脱塩水の測定箇所による比抵抗値の差異を示すグラフである。
図3】電気脱イオン装置の脱塩水の時間の経過による比抵抗値の変化を示すグラフである。
図4】本発明の電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法を適用可能な超純水製造装置を示す概略図である。
図5】従来の電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態による電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法について添付図面を参照して説明する。
【0021】
(水処理システム)
図1は、本実施形態の電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法を適用可能な電気脱イオン装置による水処理システムを示している。図1において、複数系列(4系列)の電気脱イオン装置8A,8B,8C,8Dには、給水(被処理水)W4の給水管21から分岐した電気脱イオン装置8A~8Dの脱塩室に給水W4を供給する分岐菅21A~21Dが接続しているとともに、脱塩室の出口に処理水(脱塩水)W5の流出管22A~22Dが連通している。これら流出管22A~22Dは、合流管22において合流し、後段のシステムに処理水W5を供給する。そして、流出管22A~22Dには、比抵抗計23A~23Dがそれぞれ設けられており、これら比抵抗計23A~23Dにより電気脱イオン装置8A~8Dの脱塩室から吐出された直後の処理水(脱塩水)W5の比抵抗を測定することで処理水の水質を監視している。また、合流官22にも比抵抗計23が設けられている。この電気脱イオン装置8A~8Dは、一次純水装置を構成する逆浸透膜装置、及び必要に応じ紫外線酸化装置の後段に位置することが好ましい。
【0022】
この水処理システムにおいて、流出管22A~22D及び合流管22は、少なくとも比抵抗計23A~23Dの接続箇所まで、このましくは全部がポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVD)などのガスバリア性の硬質樹脂材料からなる管材、または金属製の管材により構成されていることが好ましい。これらの材料は、ガスバリア性に優れているので、このような材料により流出管22A~22D及び合流管22を構成することにより、脱塩室出口から吐出した処理水が比抵抗値又は導電率の測定箇所である比抵抗計23A~23Dに到達するまでに外部的な要因で気体が溶解し水質が低下するのを防止することができる。
【0023】
また、比抵抗計23A~23Dの採水管24A~24Dは、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ナイロンなどのガスバリア性の材料製のチューブであり、その長さは、電気脱イオン装置8A~8Dの脱塩室の出口から吐出された脱塩水(処理水)が、比抵抗計23A~23Dの計測部に到達するまで10秒以上、好ましくは30秒以上を要する長さとする。計測部に到達するまで10秒未満の長さでは、脱塩水(処理水)の炭酸イオン濃度を精度よく計測することができないため好ましくない。この採水管24A~24Dの長さは、採水管のチューブ径と処理水の流量とに応じて、所望とする到達時間となるように設定すればよい。具体的には、1~30mの範囲内で到達時間に応じて適宜設定すればよい。
【0024】
(電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法)
次に上述したような水処理システムによる電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法について説明する。
【0025】
被処理水(給水)W4を電気脱イオン装置8A~8Dの脱塩室に供給すると、イオン性の不純物が除去され、処理水(脱塩水)W5が吐出される。このとき、被処理水(給水)W4中の乖離していない炭酸は、脱塩室で除去されていないため、脱塩室から出た直後にはイオン化していないので比抵抗値には影響しないが、時間の経過とともに炭酸が乖離してイオン化することで処理水(脱塩水)W5の比抵抗値が低下する。そこで、採水管24A~24Dの長さを、脱塩水(処理水)が脱塩室の出口から比抵抗計23A~23Dの計測部に到達するまで10秒以上、好ましくは30秒以上を要する長さとすることで、脱塩水(処理水)の炭酸イオン濃度を精度よく計測することができる。計測部に到達するまで10秒未満の長さでは、脱塩水(処理水)の炭酸イオン濃度を精度よく計測することができないため好ましくない。また、合流官22において合流した処理水W5の比抵抗を比抵抗計23で計測することで、比抵抗値を確認することができる。
【0026】
上述したような本実施形態の電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法によれば、電気脱イオン装置の性能を正確に把握し、電気脱イオン装置の運転条件の適否のみならず、劣化・寿命を判断することもできる。また、後段設備への負荷も的確に把握して設計に反映させることも可能となる。
【0027】
以上、本発明の電気脱イオン装置の脱塩水の水質測定方法について添付図面を参照して説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、前記実施形態においては、比抵抗計の採水管の長さを調節したり、比抵抗計の設置位置を調節したりしているが、これに限らず、流出管22A~22Dに脱塩水の滞留部を設けて、10秒以上、好ましくは30秒以上滞留させた後、比抵抗計により脱塩水の比抵抗を計測するようにしてもよい。また、比抵抗計の代わりに導電率計を設けて、比抵抗値でなく導電率により同様に、電気脱イオン装置の脱塩水の水質を管理してもよい。
【実施例0028】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0029】
〔実施例1〕(電気脱イオン装置の処理水の比抵抗の低下要因についての検討)
電気脱イオン装置として、evoqua社製「VNX-55EX-2」を用いて図5に示すシステムを用いた一次純水装置において、電気脱イオン装置8A,8Bの処理水(脱塩水)の比抵抗を比抵抗計23A,23Bで測定した。また、合流管22における比抵抗値を比抵抗計23で測定した。結果を図2に示す。なお、比抵抗計23A,23Bへの処理水の到達時間は5秒以下であり、合流後の比抵抗計23への処理水の到達時間は約30秒に設定した。
【0030】
図2から明らかなとおり、比抵抗計までの到達時間が異なることで、電気脱イオン装置の処理水の比抵抗値には大きな差が生じ、時間が経過すると比抵抗値が低下することがわかる。
【0031】
次に、この比抵抗の低下要因を確認するため、十分に時間が経過した後の電気脱イオン装置8A,8Bの処理水の水質を測定した。結果を表1に示す(炭酸成分は分析できないため対象外)。
【0032】
【表1】
【0033】
表1から明らかなとおり、炭酸イオンを除き、その他の成分は理論計算上17MΩ・cm以上と推測されるレベルであった。
【0034】
そこで、この十分に時間が経過した後の電気脱イオン装置8A,8Bの処理水の比抵抗値、処理水をカチオン交換樹脂カラムに通水した後の比抵抗値及びアニオン交換樹脂カラムに通水した後の比抵抗値を測定した。結果を表2に示す。なお、比較のためにカチオン交換樹脂カラム、またはアニオン交換樹脂カラムのいずれにも通水しない処理水の比抵抗値を測定した結果をあわせて表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2から明らかなとおり、カチオン交換樹脂カラムに通水した後は、いずれにも通水しない処理水と比抵抗値に大きな変化はなかったのに対し、アニオン交換樹脂カラムに通水した後は、比抵抗値が大きく上昇していた。この結果から、比抵抗値の低下要因はアニオン成分であり、表1の水質分析の結果と合わせてこのアニオン成分は炭酸イオンであり、電気脱イオン装置8A,8Bの出口直後は水中で乖離していなかった炭酸が、時間経過と共にイオンとなり水中に乖離するために一定時間経過後に比抵抗計で測定できるようになると考えられる。
【0037】
〔実施例2〕
電気脱イオン装置としてevoqua社製「VNX-55EX-2」に、給水W4を10.5m/hで供給し、濃縮水0.5m/h、負荷電流値10Aで処理を行った。なお、給水W4としては、超純水にIC(無機炭素)が160~200ppb程度となるようにNaHCO試薬で調整したものを用いた。
【0038】
1ケ月の通水期間の経過し、電気脱イオン装置の処理水の比抵抗値が安定したことを確認したら、ナイロン製のチューブ(採水管24A)の長さを種々調整するとともに通水流量を変化させて、処理水の比抵抗計23Aまでの到達時間を調整して、比抵抗値を測定した。結果を図3及び表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
表3及び図3から明らかなとおり、脱塩室出口からの到達時間を10秒以上とすれば、比抵抗値がある程度低下し、30秒以上とすることで、4分以上経過した処理水の比抵抗値に近似した比抵抗値を計測することができることがわかる。
【符号の説明】
【0041】
1 超純水製造システム
2 前処理装置
3 一次純水製造装置(純水製造装置)
4 サブシステム
5 逆浸透膜装置
6 紫外線酸化装置
7 給水ポンプ
8、8A,8B,8C,8D 電気脱イオン装置
10 サブタンク
11 供給ポンプ
12 紫外線酸化装置
13 非再生型混床式イオン交換装置
14 限外ろ過膜(UF膜)
15 ユースポイント
21 給水管
21A~21D 分岐菅
22 合流管
22A~22D 流出管
23,23A~23D 比抵抗計
23A~23D 採水チューブ
W 原水
W1 前処理水
W2 一次純水(純水)
W3 超純水
W4 被処理水(給水)
W5 脱塩水(処理水)
図1
図2
図3
図4
図5