(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173453
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】試料ホルダ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20241205BHJP
G01N 21/73 20060101ALI20241205BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01N27/62 F
G01N21/73
G01N1/28 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091884
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】593230855
【氏名又は名称】株式会社エス・テイ・ジャパン
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】槇納 好岐
(72)【発明者】
【氏名】中川 孝郎
(72)【発明者】
【氏名】安田 憲生
(72)【発明者】
【氏名】森 雄治
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一輝
【テーマコード(参考)】
2G041
2G043
2G052
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA14
2G041EA03
2G041GA19
2G041GA23
2G041JA06
2G041JA16
2G043CA03
2G043DA06
2G043EA08
2G043GA07
2G043GB01
2G043GB16
2G043KA09
2G052AD26
2G052DA33
2G052GA15
2G052GA24
2G052JA09
(57)【要約】
【課題】液体状の試料をアブレーションして分析する場合に、従来の構成に比べて、分析精度を向上させること。
【解決手段】液体状の試料(S)が含侵されて保持されたシート状の保持材(106)に対してレーザー光(22)が照射される側とは反対側に配置された板状の板材(101)と、板材(101)と保持材(106)とを間隔をあけて支持する支持材(102,104)と、を備えたことを特徴とする試料ホルダ(11a)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状の試料が含侵されて保持されたシート状の保持材に対してレーザー光が照射される側とは反対側に配置された板状の板材と、
前記板材と前記保持材とを間隔をあけて支持する支持材と、
を備えたことを特徴とする試料ホルダ。
【請求項2】
前記保持材と前記板材との間に配置され、前記保持材と同一材料で構成された中間材であって、前記保持材との間に間隔をあけて配置され且つ前記支持材との間にも間隔をあけて配置された前記中間材、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の試料ホルダ。
【請求項3】
紙製の前記保持材と、
樹脂製の前記支持材と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の試料ホルダ。
【請求項4】
液体状の試料が含侵されて保持されたシート状の保持材に対してレーザー光が照射される側とは反対側を支持する板状の板材であって、前記保持材よりもアブレーションされにくいガラスの前記板材を備えたことを特徴とする試料ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象の試料を保持する試料ホルダに関し、特に、液体状の試料を保持する試料ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる測定対象元素を高周波プラズマによって励起し放出される光、もしくはイオン化し、生成したイオン量を計測することで元素の定性、定量を行う技術として誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)方式の分析技術が知られている。ICP方式の分析手法に関して、以下の特許文献1、非特許文献1,2に記載の技術が公知である。
【0003】
特許文献1(特開2007-114063号公報)には、液体状のサンプル(溶媒にサンプルが溶かされたもの)を噴霧して霧状にし、高周波誘導結合プラズマ・質量分析装置(ICP-MS)に導入して、分析を行う技術が記載されている。
非特許文献1には、濾紙(filter paper)上にサンプルとしての血液を滴下して乾燥させることで、複数の乾燥した血液のスポットを有する濾紙に対して、レーザーアブレーションでエアロゾル化してICP-MSで分析する技術が記載されている。
非特許文献2には、液体状のサンプルをペーパー上に滴下し、乾燥させ、サンプルが滴下されたペーパーにもう1枚ペーパーを重ねて、2枚のペーパーに対してレーザーを照射して、サンプルが滴下されたペーパーを貫通させ且つ2枚目のペーパーの一部をアブレーションする技術が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M. Aramendia、他5名、“Direct Analysis of dried blood spots by femtosecond-laser ablation-inductively coupled plasma-mass spectrometry. Feasibility of split-flow laser ablation for simultaneous trace element and isotopic analysis“、 J.Anal. At. Spectrom.,2015,30,296-309
【非特許文献2】Y. Makino、他4名、“Rapid and sensitive determination of leached platinum group elements in organic reaction solution of metal-catalyzed reactions by laser ablation-ICP-MS with spot-drying on paper“、 J.Anal. At. Spectrom.,2022,37,1787-1792
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(従来技術の問題点)
特許文献1に記載の技術では、噴霧器(ネブライザ)で噴霧を行う場合、ビーカー等の容器から噴霧器が吸い上げる形となるため、ビーカーに収容される液体サンプルの量がある程度必要になる。したがって、微量の液体サンプルの分析が困難であるという問題がある。また、噴霧器から噴霧を行う場合、粘度が高い液体では噴霧ができないため、粘度が低い液体サンプルでないと使用できない問題もある。さらに、溶媒中に溶けず分散した状態の粒子の場合も噴霧が困難である問題がある。さらに、有機溶媒を使用した場合は、揮発して成分が析出することもあり、噴霧が困難である問題がある。
【0007】
非特許文献1,2に記載の技術では、濾紙に液体試料を滴下するため、特許文献1のようにネブライザを使用する場合に比べて、必要なサンプルの量は少なくて済み、粘度や粒子、揮発等の問題にも対応可能である。ここで、非特許文献1の技術では、変形したり撓みやすい紙(濾紙)にそのままレーザー光を照射することは困難であり、プラスチックで構成された板材の上に置かれた状態、いわば、底板が下敷きされた状態でレーザーアブレーションが行われることが一般的である。しかしながら、この構成では、サンプルが紙と共にアブレーションされるだけでなく、プラスチック製の板材の表面の一部もレーザーでアブレーションされる場合がある。板材がアブレーションされると分析結果に不純物として検出されてしまう悪影響がある。また、紙へ滴下した液体が不均一に広がる可能性があるため、滴下した液体は全量アブレーションして分析する必要があり、試料が滴下されたペーパーは試料の滴下部分を貫通させるようにアブレーションする必要がある。
非特許文献2では、乾燥と2枚目のペーパーを重ねる前処理が必要になり手間が増える。手間が増えると、操作ミスやコンタミ(不純物)の恐れがあり、分析精度が低下する恐れがあった。また、非特許文献2では、乾燥が不十分であると、2枚目に液体が染み込み、全量の分析ができなくなる恐れもある。
【0008】
本発明は、液体状の試料をアブレーションして分析する場合に、従来の構成に比べて、分析精度を向上させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の試料ホルダは、
液体状の試料が含侵されて保持されたシート状の保持材に対してレーザー光が照射される側とは反対側に配置された板状の板材と、
前記板材と前記保持材とを間隔をあけて支持する支持材と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の試料ホルダにおいて、
前記保持材と前記板材との間に配置され、前記保持材と同一材料で構成された中間材であって、前記保持材との間に間隔をあけて配置され且つ前記支持材との間にも間隔をあけて配置された前記中間材、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の試料ホルダにおいて、
紙製の前記保持材と、
樹脂製の前記支持材と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記技術的課題を解決するために、請求項4に記載の発明の試料ホルダは、
液体状の試料が含侵されて保持されたシート状の保持材に対してレーザー光が照射される側とは反対側を支持する板状の板材であって、前記保持材よりもアブレーションされにくいガラスの前記板材
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1,4に記載の発明によれば、液体状の試料をアブレーションして分析する場合に、従来の構成に比べて、分析精度を向上させることができる。
請求項2に記載の発明によれば、中間材を有しない場合に比べて、板材がアブレーションされることがさらに抑制される。
請求項3に記載の発明によれば、紙製の保持材で液体状の試料を保持できると共に、樹脂製の支持材を使用して低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明の実施例1の分析装置の全体説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例0016】
図1は本発明の実施例1の分析装置の全体説明図である。
図1において、実施例1の分析装置1は、分析部の一例としての質量分析計2を有する。実施例1の質量分析計2は、誘導結合プラズマ方式の質量分析計(ICP-MS:Inductively Coupled Plasma - Mass Spectrometer)で構成されている。なお、分析部は、ICP-MSに限定されず、例えば、誘導結合プラズマ方式の発光分析計(ICP-OES:Inductively Coupled Plasma - Optical Emission Spectroscopy)やマイクロ波誘導結合プラズマ(MIP)を使用することも可能である。なお、ICP-MSやICP-OESは、従来公知のものを使用可能であり、例えば、特開2013-130492号公報等に記載されており、公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0017】
質量分析計2には、接続部の一例としての接続チューブ3の下流端が接続されている。接続チューブ3の上流端には、合流ジョイント4が接続されている。合流ジョイント4には、付加ガス供給部の一例としての付加ガスチューブ6の下流端が接続されている。実施例1では、付加ガスチューブ6には、付加ガス(メイクアップガス)の一例としてのアルゴン(Ar)ガスが供給される。なお、実施例1では、アルゴンガスは、一例として、0.5~1.2L/min程度の流量で供給される。
【0018】
合流ジョイント4には、セル接続部の一例としてセル接続チューブ7の下流端が接続されている。セル接続チューブ7の上流端には、セル11が接続されている。セル11は、内部に試料Sを保持する試料ホルダ11aが収容可能に構成されている。
【0019】
セル11には、搬送ガス供給部の一例としての搬送ガスチューブ12が接続されている。実施例1では、搬送ガスチューブ12には、搬送ガス(キャリアガス)の一例としてのヘリウム(He)ガスが供給される。なお、実施例1では、キャリアガスは、一例として、0.2 ~ 1L/min程度の流量で供給される。
【0020】
また、セル11の上方には、レーザーアブレーション部の一例としてのレーザーアブレーション装置21が配置されている。レーザーアブレーション装置21は、レーザー光22を、図示しない光学系で反射して、目的の照射位置にレーザー光22の照射位置を調整する。そして、レーザーアブレーション装置21は、セル11の試料Sにレーザー光22を照射し、試料Sをアブレーションする。
実施例1の分析装置1は、情報処理装置の一例としてのコンピュータ装置31を有する。コンピュータ装置31は、コンピュータ本体32と、表示部の一例としてのディスプレイ33と、入力部の一例としてのキーボード34およびマウス35を有する。コンピュータ本体32は、レーザーアブレーション装置21の駆動を制御する信号を出力すると共に、質量分析計2から検出結果を受信して、ディスプレイ33に表示可能である。
【0021】
図2は実施例1の試料ホルダの説明図であり、
図2Aは平面図、
図2Bは
図2AのIIB-IIB線断面図である。
図3は
図2Aの試料ホルダの分解図である。
図2、
図3において、実施例1の試料ホルダ11aは、板材の一例としての底板101を有する。底板101の上側には、支持材の一例として、底板101の外周に沿った枠状の第1のフレーム102が配置されている。第1のフレーム102の中央部には、レーザー光22が通過可能な開口102aが形成されている。
第1のフレーム102の上側には、シート状の中間材の一例としての中間シート103が支持されている。中間シート103は、第1のフレーム102により底板101との間に隙間、間隔を空けて配置されている。
中間シート103の上側には、支持材の一例として、第1のフレーム102と同様に構成された第2のフレーム104が支持されている。
第2のフレーム104の上側には、シート状の保持材の一例としての保持シート106が支持されている。保持シート106は、第2のフレーム104により中間シート103との間に隙間、間隔を空けて配置されている。
保持シート106の上側には、板材の一例としての上カバー107が支持されている。上カバー107の中央部にはレーザー光22が通過可能な開口107aが形成されている。
【0022】
保持シート106には、血液等の液体状の試料(サンプル)Sがピペット等で予め定められた所定量、滴下されたものが含侵されている。なお、実施例1では、試料Sを含浸後に乾燥させて溶媒を除去し元素を濃縮することが可能である。また、実施例1の保持シート106において、試料Sは1箇所だけでなく、試料Sどうしで間隔を空けて複数箇所に含侵させることが可能である。
保持シート106は、レーザー光22の照射時に試料Sと共にアブレーションされる材料で構成されており、一例として、紙で構成されている。紙製の保持シート106としては、濾紙等の試料Sを保持可能な材料を使用可能であるが、特に、組成が既知の純セルロース製の液体クロマトグラフィー用のペーパーを好適に利用可能である。他にも、保持シート106としては、液体を保持でき、金属を含まない材料を使用可能であり、例えば、吸水性のポリマーも使用可能である。保持シートの材料としては、測定対象の試料Sに含まれる元素に応じて、適切な組成のものを選択可能である。なお、実施例1では、底板101や第1のフレーム102、第2のフレーム104、上カバー107は、一例として、低コストなプラスチック製(樹脂製)である。底板101等は強度が十分で分析で使用可能な任意のプラスチックを採用可能である。
【0023】
また、実施例1では、中間シート103は、保持シート106と同一の材料で構成されている。このように構成することで、保持された試料Sと中間シート103の一部までアブレーションすることで、試料Sの全量アブレーションと、底材等からの異材料の混入を抑制できる。
なお、保持シート106と中間シート103との隙間や、中間シート103と底板101との隙間について、隙間の大きさは、設計や仕様に応じて変更可能であるが、数十μm程度に設定可能である。保持シート106と中間シート103との隙間と、中間シート103と底板101との隙間は、実施例1では、同一に設定されているが、隙間の大きさが異なる構成とすることも可能である。
【0024】
図4は実施例1の変形例の説明図である。
また、実施例1では、第1のフレーム102や第2のフレーム104が独立した部材の構成の場合を例示したが、これに限定されない。第1のフレーム102と底板101とを一体的に形成することも可能である。他にも、
図4の試料ホルダ11a′に示すように、底板101や第1のフレーム102、第2のフレーム104、上カバー107を一体的に構成し、中間シート103や保持シート106を出し入れ可能な開口108,109を有する構成とすることも可能である。
【0025】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の分析装置1では、レーザー光22が保持シート106の試料Sに照射されて、試料Sがアブレーションされ、エアロゾル化する。そして、エアロゾル化された試料Sは、質量分析計2に送られてイオン化されて分析される。
実施例1の分析装置1では、保持シート106に照射されるレーザー光22は焦点の位置が保持シート106の高さにあわされるが、個体差や設置誤差、振動、外乱等で保持シート106から微小にずれる可能性がある。試料を保持する濾紙がプラスチック製の板材で支持された従来構成では、この焦点位置のずれで板材がアブレーションされて分析結果に悪影響を及ぼすことがある。これに対して、実施例1では、保持シート106が底板101に対して隙間を空けて配置されている。したがって、レーザー光22の焦点位置のズレがあっても底板101がアブレーションされることが低減されている。したがって、底板101がアブレーションされる場合に比べて、試料Sの分析の精度が向上する。
【0026】
また、実施例1では、保持シート106と底板101との間に中間シート103が配置されており、保持シート106からレーザー光22の焦点位置がずれても、底板101より前に中間シート103までしかアブレーションされない。ここで、中間シート103は、試料Sと共にアブレーションされる保持シート106と同一の材料であるため、検出結果に底材などに含まれる元素が検出されることはない。したがって、試料Sの分析時の異物混入による精度の低下が抑制される。
【0027】
なお、非特許文献1のような試料ホルダ11aに底板101を設けない構成も考えられるが、底板101を設けない構成では、レーザーの焦点位置に保持シート106を設置し、試料ホルダ11aの下側が大きく開放された状態となる。したがって、レーザー光22でアブレーションされる際に、エアロゾルが、レーザー光22が照射される側(上側)だけでなく、反対側(下側)の開放空間に拡散されやすくなる。したがって、セル11からエアロゾルが送り出されるまでの時間が長くなりやすく、質量分析計2に送られるエアロゾルの体積当たりの量(濃度)も低下しやすくなる。したがって、試料Sの分析に時間がかかりやすくなると共に、分析時の試料Sの強度が低くなって精度が低下しやすい。これに対して、実施例1では試料ホルダ11aに底板101が設けられており、レーザー光22が照射される側の反対側が閉塞された状態となっている。したがって、底板101がない場合に比べて、エアロゾルが拡散されにくく、レーザーアブレーション後にエアロゾルが送り出されるまでの時間が短縮されると共に、エアロゾルの濃度低下も抑制される。したがって、分析時間の短縮と、分析時の強度上昇が可能である。特に、実施例1では、底板101と保持シート106との間に中間シート103が配置されており、中間シート103が配置されない場合に比べて、保持シート106の下側の空間の容積がさらに小さくなっている。したがって、エアロゾルの拡散がさらに抑制され、分析時間のさらなる短縮や強度上昇が期待される。
【0028】
また、実施例1の試料ホルダ11aでは、保持シート106と中間シート103との間に隙間が確保されており、保持シート106や中間シート103が接触しない構成となっている。したがって、保持シート106の試料Sが中間シート103に浸み込むことが抑制され、非特許文献2に記載の技術のような2枚目への浸み込みによる試料が全量分析できなくなる恐れはなくなる。
なお、保持シート106や中間シート103が撓んでも接触しないように、第2のフレーム104は、保持シート106と中間シート103との間を仕切る網状の構成とすることも可能である。この時、網の穴の部分に、試料Sが滴下されるようにすることで、試料Sのアブレーション時に第2のフレーム104の網の部分にレーザー光22が照射されることを抑制可能である。すなわち、いわゆる網の目はそれほど密である必要はない。また、網の穴の部分に試料Sを滴下する場合、網が試料Sを滴下する位置の目印にもなり、作業者の作業性の向上にも資する。
(H02)前記実施例において、例示した具体的な数値や形状については、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。例えば、中間シート103は1枚(1層)のみ有する構成を例示したが、これに限定されず、2枚(2層)以上とすることも可能である。また、中間シート103を設けず、例えば、保持シート106と底板101、第1のフレーム102、上カバー107の構成とすることも可能である。
(H03)前記実施例において、レーザー光22の光源としてはフェムト秒レーザーを使用することが望ましいが、測定対象物等によっては、フェムト秒レーザー以外のレーザー、例えば、ナノ秒レーザー等を使用することも可能である。
(H04)前記実施例において、キャリアガスとしてHeガスを使用することが好ましいが、これに限定されない。分析対象の試料の種類や要求される精度等に応じて、例えば、水素ガスやネオンガス、アルゴンガス等に変更可能である。
(H05)前記実施例において、単位時間あたりに放出される微粒子(エアロゾル)の数を所定の量以上となるように、高速で多点に照射する構成を例示したがこれに限定されない。例えば、ビームスプリッタでレーザー光を分岐させたり、回折光学素子を使用してレーザー光の干渉縞を生成して、ほぼ同時に多点に照射する構成とすることも可能である。他にも、例えば、高速多点照射が可能な別の例としては、回転多面鏡(ポリゴンミラー)を使用することも可能である。また、同時多点照射が可能な別の例としてはLCOS(Liquid Crystal on Silicon)を使用することも可能である。LCOSは、レーザー光を液晶などの素子で変調し、その波面形状を自由に制御する空間位相変調器を有し、レーザー光を2つ以上に分岐することで試料表面に対し、複数の位置にレーザーを照射させる光学系である。