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特開2024-173513印刷システム、印刷方法およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173513
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】印刷システム、印刷方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/387 20060101AFI20241205BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241205BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H04N1/387 110
H04N1/387 200
G03G21/00 386
G03G15/01 R
G03G15/01 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091985
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】国見 敬二
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮
【テーマコード(参考)】
2H270
2H300
【Fターム(参考)】
2H270QA13
2H270QA23
2H270QA31
2H270QA33
2H270ZC03
2H270ZC04
2H300EA05
2H300EA12
2H300EA13
2H300FF05
2H300GG01
2H300GG02
2H300GG04
2H300GG05
2H300GG11
2H300GG16
2H300SS09
2H300SS11
2H300TT03
2H300TT04
(57)【要約】
【課題】画像データを作成するアプリケーション側で隠す対象となる対象画像を隠すための特別な機能を実装する必要がなく、対象画像を簡易な処理で隠すことができ、かつ、対象画像を赤外線読取装置で読み取ることができる印刷システム、印刷方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】電子写真方式に関する印刷システムであって、画像データを表示装置に表示させる表示制御部と、入力部に対する操作に応じて、表示装置に表示された画像データのうち、複数のカラートナーの組み合わせにより黒を表現する第1トナーで構成されるマスクパターンを重ねる対象画像の画像領域を指定する指定部と、指定された画像領域の対象画像に応じて、複数のマスクパターンから画像領域に重ねるマスクパターンを判別する判別部と、入力部に対する操作に応じて、複数のマスクパターンから画像領域に重ねるマスクパターンを選択する選択部と、の少なくとも一方と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式に関する印刷システムであって、
画像データを表示装置に表示させる表示制御部と、
入力部に対する操作に応じて、前記表示装置に表示された前記画像データのうち、複数のカラートナーの組み合わせにより黒を表現する第1トナーで構成されるマスクパターンを重ねる対象画像の画像領域を指定する指定部と、
前記指定部により指定された前記画像領域の前記対象画像に応じて、複数のマスクパターンから該画像領域に重ねるマスクパターンを判別する判別部と、前記入力部に対する操作に応じて、複数の前記マスクパターンから前記画像領域に重ねるマスクパターンを選択する選択部と、の少なくとも一方と、
を有する印刷システム。
【請求項2】
前記画像データに基づいて、前記マスクパターンを前記画像領域に重ねて印刷するための印刷データを生成する生成部を、さらに有する請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記画像領域の前記対象画像を構成するトナーを、赤外線について吸収性を示す黒トナーである第2トナーに変換する変換部を、さらに有し、
前記生成部は、前記変換部により前記第2トナーに変換された前記対象画像の前記画像領域に、前記マスクパターンを重ねて印刷するための前記印刷データを生成する請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記判別部は、前記指定部により指定された前記画像領域の前記対象画像に対してOCR(Optical Character Recognition)処理を実行し、OCR処理の結果に基づいて、前記複数のマスクパターンから前記画像領域に重ねるマスクパターンを判別する請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記マスクパターンを、前記指定部により指定された前記画像領域に前記マスクパターンを重ねた前記画像データを前記表示装置に表示させる請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記生成部は、任意に作成されたマスクパターンを前記画像領域に重ねる請求項2に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記画像領域の前記マスクパターンを印刷するための前記第1トナーの印字率と、前記画像領域の前記対象画像を印刷する前記第2トナーの印字率との合計が、250[%]以下である請求項3に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記指定部は、前記入力部に対する操作に応じて、複数の前記画像領域を指定する請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記複数のカラートナーの組み合わせは、シアントナー、マゼンタトナーおよびイエロートナーの組み合わせである請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項10】
電子写真方式に関する印刷システムの印刷方法であって、
画像データを表示装置に表示させる表示制御部ステップと、
入力部に対する操作に応じて、前記表示装置に表示された前記画像データのうち、複数のカラートナーの組み合わせにより黒を表現する第1トナーで構成されるマスクパターンを重ねる対象画像の画像領域を指定する指定ステップと、
指定した前記画像領域の前記対象画像に応じて、複数のマスクパターンから該画像領域に重ねるマスクパターンを判別する判別ステップと、前記入力部に対する操作に応じて、複数の前記マスクパターンから前記画像領域に重ねるマスクパターンを選択する選択ステップと、の少なくとも一方のステップと、
を有する印刷方法。
【請求項11】
電子写真方式に関する印刷システムのコンピュータに、
画像データを表示装置に表示させる表示制御部ステップと、
入力部に対する操作に応じて、前記表示装置に表示された前記画像データのうち、複数のカラートナーの組み合わせにより黒を表現する第1トナーで構成されるマスクパターンを重ねる対象画像の画像領域を指定する指定ステップと、
指定した前記画像領域の前記対象画像に応じて、複数のマスクパターンから該画像領域に重ねるマスクパターンを判別する判別ステップと、前記入力部に対する操作に応じて、複数の前記マスクパターンから前記画像領域に重ねるマスクパターンを選択する選択ステップと、の少なくとも一方のステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム、印刷方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイナンバー、銀行口座、住所等の個人情報を記載して各種申請・手続をすることが多々あり、個人情報の漏洩は社会問題になっている。個人情報の有用性に配慮しながら、個人の権利および利益を守ることを目的とした「個人情報保護法」は、国の行政機関、独立行政法人および地方公共団体等はもちろん、個人情報を取り扱うすべての事業者や組織が守らなければならない共通のルールを規定したものである。
【0003】
各種申請・手続をするための書面等は、パソコン等でデータとして作成し、印刷した上で提出することも多い。このような書面等には、多くの個人情報および秘密情報等が記載されているが、第三者がその書面をのぞき込むことにより当該情報を簡単に見ることが可能であるため、個人情報の保護の観点から好ましいことではない。また、個人情報が記載された書面等をコピー機でコピーしたり、カメラで撮影することにより当該個人情報を盗んだりすることができるという問題もあった。
【0004】
そのため、可視では判別できないような個人情報等を隠すための技術として、背景情報を潜像情報に合成して潜像埋込画像を生成する潜像合成部と、印刷用データ中に潜像埋込画像を追加する潜像埋込画像追加部と、を備える画像処理装置であって、印刷用データより潜像情報を抽出する潜像情報抽出部と、印刷用データより背景情報を抽出する背景情報抽出部と、のうち少なくとも一つを有することを特徴し、潜像画像(隠す対象となる画像)と背景画像(隠すために用いる画像)を処理して隠す方法が開示されている(例えば特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、背景画像を潜像画像に合成して潜像埋込画像を生成する処理、および、印刷データより潜像画像または背景画像を抽出する処理等、隠す対象となる潜像画像および背景画像に対する複雑な演算処理を行う必要があり、かつ、潜像画像が当該演算処理前よりも色が薄くなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、画像データを作成するアプリケーション側で隠す対象となる対象画像を隠すための特別な機能を実装する必要がなく、対象画像を簡易な処理で隠すことができ、かつ、対象画像を赤外線読取装置で読み取ることができる印刷システム、印刷方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、電子写真方式に関する印刷システムであって、画像データを表示装置に表示させる表示制御部と、入力部に対する操作に応じて、前記表示装置に表示された前記画像データのうち、複数のカラートナーの組み合わせにより黒を表現する第1トナーで構成されるマスクパターンを重ねる対象画像の画像領域を指定する指定部と、前記指定部により指定された前記画像領域の前記対象画像に応じて、複数のマスクパターンから該画像領域に重ねるマスクパターンを判別する判別部と、前記入力部に対する操作に応じて、複数の前記マスクパターンから前記画像領域に重ねるマスクパターンを選択する選択部と、の少なくとも一方と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像データを作成するアプリケーション側で隠す対象となる対象画像を隠すための特別な機能を実装する必要がなく、対象画像を簡易な処理で隠すことができ、かつ、対象画像を赤外線読取装置で読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る画像形成システムの全体構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、対象画像に対してマスクパターンを重ねて印刷した例を示す図である。
図5図5は、印刷したもの、コピーしたものおよびIR画像についての比較例を説明する図である。
図6図6は、実施形態に係る画像形成システムの機能ブロックの構成の一例を示す図である。
図7図7は、エリア情報データの一例を示す図である。
図8図8は、印刷ドライバが出力する印刷データの一例を示す図である。
図9図9は、マスクパターンの色構成を説明する図である。
図10図10は、登録ドライバ、エリア指定アプリケーションおよび印刷ドライバ13の関係を示す図である。
図11図11は、マスクパターンで対象画像を隠す対象となるが画像データの表示例を示す図である。
図12図12は、実施形態に係る情報処理装置での印刷設定画面の一例を示す図である。
図13図13は、実施形態に係る情報処理装置でのエリア指定アプリケーションにおいて隠しエリアを指定する動作を説明する図である。
図14図14は、実施形態に係る情報処理装置での印刷設定画面の一例を示す図である。
図15図15は、実施形態に係る情報処理装置での印刷ドライバ設定画面の一例を示す図である。
図16図16は、ドットのマスクパターンの一例を示す図である。
図17図17は、文字のマスクパターンの一例を示す図である。
図18図18は、印字率の異なるマスクパターンの一例を示す図である。
図19図19は、文字をドットのマスクパターンで隠す例を示す図である。
図20図20は、文字を文字のマスクパターンで隠す例を示す図である。
図21図21は、数字を数字のマスクパターンで隠す例を示す図である。
図22図22は、文字を数字のマスクパターンで隠す例を示す図である。
図23図23は、マスクパターンを判別するためのルールの一例を示す図である。
図24図24は、実施形態に係る画像形成システムの全体動作の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら、本発明に係る印刷システム、印刷方法およびプログラム
の実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0011】
(画像形成システムの全体構成)
図1は、実施形態に係る画像形成システムの全体構成の一例を示す図である。図1を参照しながら、本実施形態に係る画像形成システムの全体構成について説明する。
【0012】
図1に示す画像形成システム1は、情報処理装置10のアプリケーションで作成された文書、画像を含むデータ(以下、画像データと称する)に含まれる秘匿する必要がある画像部分にマスクパターンにより隠した状態で印刷(画像形成)を行うシステムである。図1に示すように、画像形成システム1は、情報処理装置10と、画像形成装置20a、20bとを含む。これらの装置は、ネットワークNを介して互いに通信可能となっている。ネットワークNは、例えば、LAN(Local Area Network)またはインターネット等であり、有線ネットワークまたは無線ネットワークのいずれを含んでいてもよい。
【0013】
情報処理装置10は、アプリケーションにより作成された画像データに対して、印刷ドライバ等の機能により指定した画像領域(隠しエリア)の画像部分に対してマスクパターンで隠す設定を行うためのPC(Personal Computer)、ワークステーション、スマートフォンまたはタブレット端末等の情報処理装置である。
【0014】
なお、図1に示す例では、1台の情報処理装置10が示されているが、台数に制限はない。
【0015】
画像形成装置20a、20bは、情報処理装置10で設定されたマスクパターンを、指定した隠しエリアの画像部分に重ねて印刷する隠し印刷を実行する電子写真方式のMFP(Multifunction Peripheral:複合機)等の装置である。また、画像形成装置20a、20bは、赤外線吸収性を示すカーボンブラック等のK(ブラック)のトナー色材、および、高い赤外線透過性または赤外線反射特性を示すC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のカラーのトナー色材を用いて、印刷媒体に印刷を行う。
【0016】
なお、図1に示す例では、画像形成装置20a、20bの2台の画像形成装置が示されているが、台数に制限はない。また、画像形成装置20a、20bについて、任意の画像形成装置を示す場合、または総称する場合、単に「画像形成装置20」と称するものとする。
【0017】
(情報処理装置のハードウェア構成)
図2は、実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図2を参照しながら、本実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成について説明する。
【0018】
図2に示すように、情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)401と、ROM(Read Only Memory)402と、RAM(Random Access Memory)403と、補助記憶装置405と、メディアドライブ407と、ディスプレイ408(表示装置の一例)と、ネットワークI/F409と、キーボード411と、マウス412と、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ414と、を備えている。
【0019】
CPU401は、情報処理装置10全体の動作を制御する演算装置である。ROM402は、情報処理装置10用のプログラムを記憶している不揮発性記憶装置である。RAM403は、CPU401のワークエリアとして使用される揮発性記憶装置である。
【0020】
補助記憶装置405は、各種データおよびプログラム等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。メディアドライブ407は、CPU401の制御に従って、フラッシュメモリ等の記録メディア406に対するデータの読み出しおよび書き込みを制御する装置である。
【0021】
ディスプレイ408は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字または画像等の各種情報を表示する液晶または有機EL(Electro-Luminescence)等によって構成された表示装置である。
【0022】
ネットワークI/F409は、ネットワークNを介して画像形成装置20等の外部装置とデータ通信するためのインターフェースである。ネットワークI/F409は、例えば、Ethernet(登録商標)に対応し、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)等に準拠した有線通信または無線通信が可能なNIC(Network Interface Card)等である。
【0023】
キーボード411は、文字、数字、各種指示の選択、およびカーソルの移動等を行う入力装置である。マウス412は、各種指示の選択および実行、処理対象の選択、ならびにカーソルの移動等を行うための入力装置である。
【0024】
DVDドライブ414は、着脱自在な記憶媒体の一例としてのDVD-ROMまたはDVD-R(Digital Versatile Disk Recordable)等のDVD413に対するデータの読み出しおよび書き込みを制御する装置である。
【0025】
上述のCPU401、ROM402、RAM403、補助記憶装置405、メディアドライブ407、ディスプレイ408、ネットワークI/F409、キーボード411、マウス412およびDVDドライブ414は、アドレスバスおよびデータバス等のバスライン410によって互いに通信可能に接続されている。
【0026】
なお、図2に示した情報処理装置10のハードウェア構成は一例を示すものであり、図2に示した構成要素をすべて含む必要はなく、または、その他の構成要素を含むものとしてもよい。
【0027】
(画像形成装置のハードウェア構成)
図3は、実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図3を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置20のハードウェア構成について説明する。
【0028】
図3に示すように、画像形成装置20は、コントローラ910と、近距離通信回路920と、エンジン制御部930と、操作パネル940と、ネットワークI/F950と、を備えている。
【0029】
コントローラ910は、コンピュータの主要部であるCPU901と、MEM-P(システムメモリ)902と、NB(ノースブリッジ)903と、SB(サウスブリッジ)904と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)906と、MEM-C(ローカルメモリ)907と、HDDコントローラ908と、HD909と、を有する。このうち、NB903とASIC906とは、AGP(Accelerated Graphics Port)バス921で接続されている。
【0030】
CPU901は、画像形成装置20の全体制御を行う演算装置である。NB903は、CPU901と、MEM-P902、SB904およびAGPバス921とを接続するためのブリッジであり、MEM-P902に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタおよびAGPターゲットと、を有する。
【0031】
MEM-P902は、コントローラ910の各機能を実現させるプログラムおよびデータの格納用メモリであるROM902aと、プログラムおよびデータの展開、ならびにメモリ印刷時の描画用メモリ等として用いるRAM902bと、を含む。なお、RAM902bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD-R(Compact Disc Recordable)、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0032】
SB904は、NB903と、PCIデバイスおよび周辺デバイス等と、を接続するためのブリッジである。ASIC906は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス921、PCIバス922、HDDコントローラ908およびMEM-C907をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。ASIC906は、PCIターゲットおよびAGPマスタ、ASIC906の中核をなすアービタ(ARB)、MEM-C907を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジック等により画像データの回転等を行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、ならびに、スキャナ部931およびプリンタ部932との間でPCIバス922を介したデータ転送を行うPCIユニットを含む。なお、ASIC906には、USB(Universal Serial Bus)インターフェース、またはIEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインターフェースが接続されるようにしてもよい。
【0033】
MEM-C907は、コピー用画像バッファおよび符号バッファとして用いるローカルメモリである。HD909は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、およびフォームの蓄積を行うためのストレージである。HDDコントローラ908は、CPU901の制御に従って、HD909に対するデータの読み出しまたは書き込みを制御するコントローラである。なお、HDDコントローラ908およびHD909は、SSDであってもよい。
【0034】
AGPバス921は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインターフェースであり、MEM-P902に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレータカードを高速にすることができる。
【0035】
近距離通信回路920は、NFC(Near Field Communication)またはBluetooth(登録商標)等の通信回路である。近距離通信回路920は、PCIバス922を介して、ASIC906に電気的に接続されている。近距離通信回路920には、無線通信用のアンテナ920aが接続されている。
【0036】
エンジン制御部930は、スキャナ部931およびプリンタ部932を含む。スキャナ部931およびプリンタ部932は、誤差拡散またはガンマ変換等の画像処理機能を含む。
【0037】
操作パネル940は、現在の設定値または選択画面等を表示させ、ユーザからの入力を受け付けるタッチパネル等のパネル表示部940a(表示装置の一例)と、濃度の設定条件等の画像形成に関する条件の設定値を受け付けるテンキーおよびコピー開始指示を受け付けるスタートキー等からなるハードキー940bと、を備えている。
【0038】
なお、画像形成装置20は、操作パネル940のアプリケーションの切り替えキーにより、ドキュメントボックス機能、コピー機能、プリンタ機能、およびファックス機能を順次に切り替えて選択することが可能となる。ドキュメントボックス機能の選択時にはドキュメントボックスモードとなり、コピー機能の選択時にはコピーモードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファックス機能の選択時にはファックスモードとなる。
【0039】
ネットワークI/F950は、ネットワークを介してデータ通信をするためのインターフェースであり、例えば、イーサネット、およびTCP/IP等に準拠した通信が可能なインターフェースである。ネットワークI/F950は、PCIバス922を介して、ASIC906に電気的に接続されている。
【0040】
なお、図3に示した画像形成装置20を構成する情報処理装置のハードウェア構成は一例を示すものであり、図3に示した構成要素をすべて含む必要はなく、または、その他の構成要素を含むものとしてもよい。
【0041】
(画像形成システムの動作概要)
図4は、対象画像に対してマスクパターンを重ねて印刷した例を示す図である。図5は、印刷したもの、コピーしたものおよびIR画像についての比較例を説明する図である。図4および図5を参照しながら、本実施形態に係る画像形成システム1の動作の概要について説明する。
【0042】
電子写真方式の画像形成装置(例えばレーザプリンタ)では色材としてトナーを使用している。このうち、カーボンブラック等のブラック(K)のトナー色材(以下、黒トナーと称する場合がある)は、赤外線(IR:Infrared)を吸収する性質がある。したがって、印刷媒体において黒トナーで描画された印刷領域は、外部から入射した赤外線が吸収されるため、赤外線カメラまたは赤外線スキャナ等の赤外線読取装置では当該印刷領域からの赤外線は黒く検出(認識)される。一方、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のカラーのトナー色材(以下、カラートナーと称する場合がある)は、赤外線を透過または反射する性質がある。したがって、印刷媒体においてカラートナーで描画された印刷領域は、外部から入射した赤外線が当該カラートナーを透過または反射することによって、赤外線読取装置では当該印刷領域からの赤外線が白く検出されることになる。その結果、黒トナーで描画された領域と、C、M、Yのカラートナーの重ね合わせにより形成された黒で描画された領域とが混在している場合、赤外線読取装置により、赤外線を吸収する黒トナーで描画された領域を画像として読み取ることができることになる。この原理を利用して、QRコード(登録商標)等の二次元コード、または氏名・住所等の個人情報に関する文字等の画像を黒トナー(第2トナー)で描画し、その描画領域にC、M、Yのカラートナー(シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー)の重ね合わせ(組み合わせ)により形成される黒を重ねて描画することにより画像を形成することによって、人間の目では黒トナーの画像を見ることができず、赤外線読取装置でのみ読み取れる画像を形成することができる。
【0043】
ここで、図4に、本実施形態に係る画像形成システム1の機能によりマスクパターンを重ねて印刷した画像データの一例を示す。このうち、図4(a)にはマスクパターンを重ねていない画像データの一例を示し、図4(b)には当該画像データに含まれる、隠す(秘匿する)対象となる画像(以下、対象画像と称する場合がある)に対してマスクパターンを重ねて印刷した例を示す。図4(b)に示す例では、図4(a)に示す画像データにおいて、氏名、住所および電話番号の画像部分を隠す対象とする対象画像とし、それぞれマスクパターン1001~1003を重ねて印刷した状態を示す。
【0044】
次に、図5に示すように、QRコードのみを黒トナーで印刷したもの(以下、QRコード画像と称する)と、QRコードを黒トナーで印刷し、かつQRコード全体を含む矩形領域をC、M、Yのカラートナーの重ね合わせにより形成された黒(べた)で印刷したもの(以下、べた画像と称する)と、QRコードを黒トナーで印刷し、かつQRコード全体を含む矩形領域をC、M、Yのカラートナーの重ね合わせにより形成された黒のドットパターンで印刷したもの(以下、パターン画像と称する)を比較する。
【0045】
例えば、QRコード画像をコピーした場合、可視光線で検出して処理され、図5のように、QRコードそのものを印刷したものが出力される。また、QRコード画像、およびそれをコピーした画像のいずれも、QRコード部分は黒トナーで描画されるため、図4に示すように、いずれの画像を赤外線読取装置で読み取った画像(IR画像)もQRコードとして読み取ることができる。
【0046】
また、べた画像をコピーした場合、可視光線で検出して処理されるため、図5に示すように、全体が黒で印刷したものが出力される。しかし、当該印刷したものは、全体が黒トナーで描画されているため、図5に示すように、赤外線読取装置で読み取ってもQRコードを読み取ることができない(「コピーしたもののIR画像」)。一方、QRコード画像を赤外線読取装置で読み取った場合は、図5に示すように、上述の原理に基づきQRコードを読み取ることができる(「印刷したもののIR画像」)。
【0047】
最後に、パターン画像をコピーした場合、可視光線で検出して処理されるため、図5に示すように、パターン画像と同様の画像が出力される。また、当該出力したものは、全体が黒トナーで描画されているため、図5に示すように、赤外線読取装置で読み取っても、ドットパターンによりQRコードを読み取ることができない(「コピーしたもののIR画像」)。一方、パターン画像を赤外線読取装置で読み取った場合は、図5に示すように、上述の原理に基づきQRコードを読み取ることができる(「印刷したもののIR画像」)。
【0048】
以上のことから、べた画像およびパターン画像、ならびにこれらをコピーしたものは、人間が可視画像としてQRコードを認識することができず、さらに、コピーしたものを赤外線読取装置で読み取ってもQRコードを読み取ることはできない。したがって、印刷原本としてのべた画像およびパターン画像は、人間の目でQRコードを見ることができず、これらをコピーしたものは、人間の目でも赤外線読取装置でもQRコードを読み取ることができないため、QRコードの情報が漏洩することを抑制できる。
【0049】
ただし、べた画像の場合、印刷領域全体に亘ってべたでトナーを印刷するため、トナーの定着性が損なわれるという問題、および、黒トナーによる黒と、C、M、Yのカラートナーの重ね合わせにより形成された黒との微妙な特性の相違により、黒トナーで形成されたQRコードがうっすらと見えてしまう可能性があるという問題がある。そこで、本実施形態では、図5に示した上述のパターン画像のように、QRコード等の二次元コード、または氏名・住所等の個人情報に関する文字等のような画像を、C、M、Yのカラートナー(第1トナーの一例)の重ね合わせにより形成された黒のドットパターン等のマスクパターンを重ねることにより秘匿することができ、かつ赤外線読取装置で読み取ることができることを実現する。
【0050】
なお、マスクパターンについては、C、M、Yのカラートナーの重ね合わせにより形成されることに限定されるものではなく、少なくとも、赤外線の透過性または反射性を示し、黒を表現できるカラートナー(第1トナー)の組み合わせであれば、どのようなカラートナーの組み合わせであってもよい。
【0051】
(画像形成システムの機能ブロックの構成および動作)
図6は、実施形態に係る画像形成システムの機能ブロックの構成の一例を示す図である。図7は、エリア情報データの一例を示す図である。図8は、印刷ドライバが出力する印刷データの一例を示す図である。図9は、マスクパターンの色構成を説明する図である。図6図9を参照しながら、本実施形態に係る画像形成システム1の機能ブロックの構成および動作について説明する。
【0052】
画像形成システム1の情報処理装置10は、図6に示すように、入力部101と、記憶部102と、エリア指定起動部111と、プレビュー表示制御部121(表示制御部)と、エリア指定部122(指定部)と、パターン選択部123(選択部)と、K変換選択部131と、K変換部132(変換部)と、自動判別部133(判別部)と、生成部134と、送信部135と、を有する。
【0053】
入力部101は、ユーザの操作入力を受け付ける機能部である。入力部101は、図2に示したキーボード411およびマウス412によって実現される。
【0054】
記憶部102は、アプリケーションにより作成された画像データ、図6に示す登録ドライバ11、エリア指定アプリケーション12および印刷ドライバ13、ならびに、指定エリアおよび選択されたマスクパターンの情報を含むエリア情報データ等の各種データを記憶する機能部である。記憶部102は、図2に示した補助記憶装置405によって実現される。
【0055】
エリア指定起動部111は、入力部101に対する操作入力に応じて、エリア指定アプリケーション12を起動する機能部である。エリア指定起動部111は、図2に示したCPU401によりプログラム(登録ドライバ11)が実行されることによって実現される。
【0056】
プレビュー表示制御部121は、後述する図13に示すエリア指定アプリケーション画面1300での表示動作を制御する機能部である。プレビュー表示制御部121は、図2に示したCPU401によりプログラム(エリア指定アプリケーション12)が実行されることによって実現される。
【0057】
エリア指定部122は、入力部101に対する操作入力に応じて、エリア指定アプリケーション画面1300に表示された画像データにおいて、マスクパターンを重ねる隠しエリア(隠す対象となる画像のエリア)を指定する機能部である。すなわち、当該画像データが印刷媒体に印刷された場合、エリア指定部122で指定された隠しエリアには、C、M、Yのカラートナーの重ね合わせにより形成された黒のマスクパターンが重ねて印刷される。よって、QRコード等の二次元コード、または氏名・住所等の個人情報に関する文字等のような画像の隠しエリアを、C、M、Yのカラートナーの重ね合わせにより形成された黒のマスクパターンを重ねることにより秘匿することができ、かつ赤外線読取装置でのみ読み取ることができる状態にすることができる。エリア指定部122は、どの位置および範囲で隠しエリアを指定したのかを示す情報を図7に示すエリア情報データに含めて、記憶部102に記憶させる。
【0058】
エリア指定部122は、図2に示したCPU401によりプログラム(エリア指定アプリケーション12)が実行されることによって実現される。
【0059】
なお、エリア指定部122による隠しエリアの指定は、1つのエリアだけでなく、複数のエリアについて可能であってもよい。また、エリア指定部122により指定された隠しエリアを、以下、「指定エリア」と称する場合がある。
【0060】
パターン選択部123は、入力部101に対する操作入力に応じて、エリア指定部122により指定された隠しエリアに重ねるマスクパターンを選択する機能部である。なお、後述するエリア指定アプリケーション画面1300において、指定エリアに対応するマスクパターンとして「自動」が選択された場合には、対象画像に適したマスクパターンが自動判別部133により判別されたマスクパターンが適用される。パターン選択部123は、図2に示したCPU401によりプログラム(エリア指定アプリケーション12)が実行されることによって実現される。そして、パターン選択部123は、どのマスクパターンを選択したのかを示す識別情報(番号)を図7に示すエリア情報データに含めて、記憶部102に記憶させる。図7に示すエリア情報データの例では、2つの指定エリアの位置および範囲、ならびに各指定エリアについて選択されたマスクパターンの識別情報が登録されている。
【0061】
K変換選択部131は、入力部101に対する操作入力に応じて、画像データにおける対象画像の印刷に用いるトナーの種類を黒トナーに変換(以下、K変換と称する場合がある)するか否かを選択する機能部である。具体的には、後述する図15に示す印刷ドライバ設定画面1400における選択操作に応じて、K変換選択部131は、対象画像をK変換するか否かを選択する。K変換選択部131は、図2に示したCPU401によりプログラム(印刷ドライバ13)が実行されることによって実現される。
【0062】
K変換部132は、K変換選択部131により対象画像をK変換することが選択された場合、記憶部102に記憶されたエリア情報データを読み出し、画像データにおいて、当該エリア情報データで示される指定エリアの対象画像をK変換する機能部である。なお、K変換部132は、K変換選択部131による選択にかかわらず、画像データの指定エリアの対象画像に対してK変換を実行するものとしてもよい。これによって、対象画像の印刷で用いるトナーが必ず黒トナーとなるため、マスクパターンによる対象画像の秘匿性を高めることができる。
【0063】
K変換部132は、図2に示したCPU401によりプログラム(印刷ドライバ13)が実行されることによって実現される。なお、K変換部132は情報処理装置でなく、画像形成装置20で行ってもよい。
【0064】
自動判別部133は、記憶部102に記憶されたエリア情報データを読み出し、当該エリア情報データにおいて指定エリアについて選択されたマスクパターンとして「自動」が選択されている場合、複数のマスクパターンから、当該指定エリアの対象画像に応じたマスクパターンを判別する機能部である。具体的は、自動判別部133は、例えば、対象画像に対してOCR(Optical Character Recognition)処理を実行し、当該処理結果により得られた文字等の状態に応じて、複数のマスクパターンから画像領域に重ねるマスクパターンを判別する。なお、自動判別部133によるマスクパターンの判別方法の具体例については、図23で後述する。自動判別部133は、図2に示したCPU401によりプログラム(印刷ドライバ13)が実行されることによって実現される。
【0065】
生成部134は、記憶部102に記憶されたエリア情報データを読み出し、指定エリアについてパターン選択部123により選択された、または自動判別部133により判別されたマスクパターン、および画像データに基づいて、画像形成装置20へ送信するための印刷データを生成する機能部である。この場合、生成部134は、図8に示す印刷データの例のように、上述のエリア情報データをコマンドに変換して、当該コマンドを含めた形式で印刷データを生成する。すなわち、生成部134は、画像データにおける指定エリアに、パターン選択部123により選択された、または自動判別部133により判別されたマスクパターンを重ねて印刷するための印刷データを生成する。また、生成部134は、印刷データのデータ形式として、例えば、RPCS(Refined Printing Command Stream)またはPCL6(Printer Command Language 6)等の形式を採用する。生成部134は、図2に示したCPU401によりプログラム(印刷ドライバ13)が実行されることによって実現される。
【0066】
送信部135は、生成部134により生成された印刷データを、ネットワークI/F409を介して画像形成装置20へ送信する機能部である。送信部135は、図2に示したCPU401によりプログラム(印刷ドライバ13)が実行されることによって実現される。
【0067】
なお、図6に示す情報処理装置10の各機能部は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、図6に示す情報処理装置10で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、図6に示す情報処理装置10で1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
【0068】
画像形成システム1の画像形成装置20は、図6に示すように、描画処理部201と、印刷部202と、を有する。
【0069】
描画処理部201は、情報処理装置10からネットワークI/F950を介して印刷データを受信し、当該印刷データを画像形成装置20で印刷する形式の描画データに変換する機能部である。このとき、描画処理部201は、当該印刷データのコマンドが示す指定エリアに対して、当該コマンドが示すマスクパターンをC、M、Yの重ね合わせにより形成された黒で重ねて印刷するための描画データに変換する。この場合、マスクパターンは、図9(a)のCプレーンのパターン、図9(b)のMプレーン、および図9(c)のYプレーンのパターンを重ね合わせることよって黒のパターンとして構成される。なお、マスクパターンの印刷のために図9(d)に示すKプレーンは用いられない。
【0070】
描画処理部201は、図3に示したCPU901によりプログラムが実行されることによって実現される。
【0071】
印刷部202は、描画処理部201により変換された描画データに基づいて、印刷媒体に印刷(画像形成)する機能部である。印刷部202は、図3に示したプリンタ部932によって実現される。
【0072】
なお、図6に示す画像形成装置20の各機能部は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、図6に示す画像形成装置20で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、図6に示す画像形成装置20で1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
【0073】
また、上述する情報処理装置10に含まれる登録ドライバ11、エリア指定アプリケーション12および印刷ドライバ13に含まれる各機能部のうち少なくともいずれかは、画像形成装置20に含まれるものとしてもよい。また、上述の情報処理装置10、画像形成装置20、または、情報処理装置10および画像形成装置20を含む画像形成システム1のいずれも、本発明の「印刷システム」に含まれる概念とする。
【0074】
(各種設定画面での隠しエリアの指定、マスクパターンの選択およびK変換について)
図10は、登録ドライバ、エリア指定アプリケーションおよび印刷ドライバ13の関係を示す図である。図11は、マスクパターンで対象画像を隠す対象となるが画像データの表示例を示す図である。図12は、実施形態に係る情報処理装置での印刷設定画面の一例を示す図である。図13は、実施形態に係る情報処理装置でのエリア指定アプリケーションにおいて隠しエリアを指定する動作を説明する図である。図14は、実施形態に係る情報処理装置での印刷設定画面の一例を示す図である。図15は、実施形態に係る情報処理装置での印刷ドライバ設定画面の一例を示す図である。図10図15を参照しながら、各種設定画面での隠しエリアの指定、マスクパターンの選択およびK変換について説明する。
【0075】
図10では、情報処理装置10のドライバおよびアプリケーションの関係について示されている。アプリケーション15で作成される文書、画像を含む画像データのファイルは、例えば、図11に示すアプリケーション画面1100に表示される。ユーザは、アプリケーション画面1100において、表示されている画像データの印刷操作をした場合に、図12に示す印刷設定画面1200を起動する。
【0076】
印刷設定画面1200は、図12に示すように、ドライバ選択領域1201と、一般設定領域1202と、印刷ボタン1211と、キャンセルボタン1212と、を含む。
【0077】
ドライバ選択領域1201は、印刷に関するドライバを選択するための選択領域である。図12では、画像データにおいてマスクパターンを重ねるための隠しエリアの指定と、マスクパターンの選択とを行うために、「TOUROKU Driver」(登録ドライバ11)が選択された状態が示されている。
【0078】
一般設定領域1202は、印刷に関する一般的な設定を行うための設定領域である。
【0079】
印刷ボタン1211は、印刷を実行するためのボタンである。ただし、図12の例では、印刷に関するドライバとして登録ドライバ11が選択された状態であるため、後述するように、印刷ボタン1211の押下によりエリア指定アプリケーション12が起動される。
【0080】
キャンセルボタン1212は、印刷をキャンセルするためのボタンである。
【0081】
印刷設定画面1200において、ドライバ選択領域1201で登録ドライバ11が選択された状態で、ユーザにより印刷ボタン1211が押下されると、図10に示すように、登録ドライバ11により実現される機能であるエリア指定起動部111によって、エリア指定アプリケーション12が起動され、図13に示すエリア指定アプリケーション画面1300が表示される。
【0082】
エリア指定アプリケーション画面1300は、図13に示すように、プレビュー表示領域1301と、エリア指定完了ボタン1311と、エリア指定登録ボタン1312と、キャンセルボタン1313と、を含む。
【0083】
プレビュー表示領域1301は、プレビュー表示制御部121によって、隠しエリアを指定するために画像データがプレビュー表示される表示領域である。エリア指定部122は、ユーザの入力部101に対する操作(例えばドラッグ操作等)により、画像データにおいて隠す(秘匿する)対象とする所望の画像領域を指定する。図13に示す例では、番号の表示領域、住所の表示領域および電話番号の表示領域が、それぞれ指定エリア1321~1323として指定された状態を示している。さらに、パターン選択部123は、各指定エリアについてのユーザの入力部101に対する操作(例えば右クリック等)により表示されるパターン選択ウィンドウから、入力部101に対する操作に応じて、当該各指定エリアに重ねるマスクパターンを選択する。図13に示す例では、指定エリア1322についてのユーザの入力部101に対する操作により、パターン選択ウィンドウ1322aが表示される例を示している。ユーザは、指定エリアの対象画像に応じて、所望のマスクパターンを選択することができる。なお、指定エリアに対応するマスクパターンとして「自動」が選択された場合には、対象画像に適したマスクパターンが自動判別部133により判別されたマスクパターンが適用される。
【0084】
エリア指定完了ボタン1311は、プレビュー表示領域1301において入力部101に対する操作により指定された隠しエリア、および選択されたマスクパターンを仮決定するためのボタンである。
【0085】
エリア指定登録ボタン1312は、エリア指定完了ボタン1311の押下により仮決定された隠しエリアおよびマスクパターンを登録するためのボタンである。具体的には、図10に示すように、エリア指定登録ボタン1312が押下されると、エリア指定部122は、どの位置および範囲で隠しエリアを指定したのかを示す情報をエリア情報データに含めて、記憶部102に記憶させる。また、パターン選択部123は、どのマスクパターンを選択したのかを示す識別情報(番号)を図7に示すエリア情報データに含めて、記憶部102に記憶させる。なお、マスクパターンとして「自動」が選択された場合、その旨、または「自動」を示す識別情報がエリア情報データに含められる。
【0086】
キャンセルボタン1313は、プレビュー表示領域1301で行われた隠しエリアの指定、およびマスクパターンの選択をキャンセルするためのボタンである。
【0087】
なお、図13に示す例では、画像データで指定された隠しエリアの周縁部のみを表示させているが、これに限定されるものではなく、パターン選択ウィンドウで選択されたマスクパターンを当該隠しエリアに重ねた状態をプレビュー表示させてもよい。
【0088】
ユーザは、エリア情報データが記憶部102に記憶(登録)された後、アプリケーション画面1100において、表示されている画像データについての印刷操作を再び行い、図14に示す印刷設定画面1200を起動する。図14では、実際に画像データについての印刷を実行するために、「INSATSU Driver」(印刷ドライバ13)が選択された状態が示されている。
【0089】
印刷設定画面1200において、ドライバ選択領域1201で印刷ドライバ13が選択された状態でユーザにより印刷ボタン1211が押下されると、図10に示すように、印刷ドライバ13が起動され、図15に示す印刷ドライバ設定画面1400が表示される。
【0090】
印刷ドライバ設定画面1400は、図15に示すように、隠し印刷選択チェックボックス1401と、両面印刷選択設定領域1402と、隠しエリアK変換選択設定領域1403と、OKボタン1411と、キャンセルボタン1412と、を含む。
【0091】
隠し印刷選択チェックボックス1401は、指定エリアの画像領域にマスクパターンを重ねて印刷するか否かを選択するためのチェックボックスである。本実施形態では、隠し印刷選択チェックボックス1401により、指定エリアの画像領域にマスクパターンを重ねて印刷することが選択されていることを前提として説明する。
【0092】
両面印刷選択設定領域1402は、両面印刷をするか否かを選択するための設定領域である。
【0093】
隠しエリアK変換選択設定領域1403は、画像データにおける指定エリアの対象画像の印刷に用いるトナーの種類を黒トナーにK変換するか否かを選択する設定領域である。
【0094】
OKボタン1411は、隠し印刷選択チェックボックス1401、両面印刷選択設定領域1402および隠しエリアK変換選択設定領域1403で設定された内容で印刷を実行するためのボタンである。K変換選択部131は、隠しエリアK変換選択設定領域1403で「隠しエリアK変換」が選択された状態で、OKボタン1411が押下されると、画像データにおける対象画像の印刷に用いるトナーの種類を黒トナーにK変換することを選択する。
【0095】
キャンセルボタン1412は、隠し印刷選択チェックボックス1401、両面印刷選択設定領域1402および隠しエリアK変換選択設定領域1403で設定された内容をキャンセルするボタンである。
【0096】
なお、図10に示した登録ドライバ11、エリア指定アプリケーション12および印刷ドライバ13のソフトウェア構成は一例を示すものであり、これに限定されるものではない。例えば、エリア指定アプリケーション12のプレビュー表示、隠しエリアの指定、およびマスクパターンの選択等の機能は、アプリケーションとして提供しているが、これに限定されるものではなく、ドライバの機能として提供してもよい。すなわち、例えばエリア指定アプリケーション12の機能が登録ドライバ11に含まれるものとしてもよい。また、登録ドライバ11、エリア指定アプリケーション12および印刷ドライバ13が、単一のドライバとして統合されているものとしてもよい。
【0097】
(マスクパターンについて)
図16は、ドットのマスクパターンの一例を示す図である。図17は、文字のマスクパターンの一例を示す図である。図18は、印字率の異なるマスクパターンの一例を示す図である。図19は、文字をドットのマスクパターンで隠す例を示す図である。図20は、文字を文字のマスクパターンで隠す例を示す図である。図21は、数字を数字のマスクパターンで隠す例を示す図である。図22は、文字を数字のマスクパターンで隠す例を示す図である。図23は、マスクパターンを判別するためのルールの一例を示す図である。図16図23を参照しながら、画像データで指定された隠しエリアに重ねて印刷されるマスクパターンについて説明する。
【0098】
上述のように、べた画像の場合、印刷領域全体に亘ってべたでトナーを印刷するため、トナーの定着性が損なわれるという問題、および、黒トナーによる黒と、C、M、Yのカラートナーの重ね合わせにより形成された黒との微妙な特性の相違により、黒トナーで形成された隠す対象となる画像がうっすらと見えてしまう可能性があるという問題がある。そこで、本実施形態では、図5に示した上述のパターン画像のように、QRコード等の二次元コード、または氏名・住所等の個人情報に関する文字等のような隠す対象となる画像(対象画像)に、C、M、Yのカラートナーの重ね合わせにより形成された黒のドットパターン等のマスクパターンを重ねる。これにより、隠す(秘匿する)対象となる画像(対象画像)を秘匿することができ、かつ赤外線読取装置で読み取ることができる。
【0099】
まず、トナーの定着性が損なわれない程度のマスクパターンを印刷するためには、例えば指定エリアの全体の印字率を250[%]以下とすることが望ましい。ここで、全体の印字率とは、印刷する際に用いる各トナーの所定面積に占めるトナー部分の割合の合計を示す。例えば、マスクパターンを印刷する際にCトナーの所定面積に占めるCトナー部分の割合が20[%]の場合、他のカラートナーであるMトナーおよびYトナーの各トナー部分の割合もそれぞれ20[%]となる。さらに、隠す対象となるKトナー(黒トナー)で印刷された画像部分の所定面積に占める割合が35[%]とする。この場合、全体の印字率は、各カラートナーの20[%]の合計の60[%]と、隠す対象となる画像のKトナーの35[%]との合計の95[%]となる。ここで、図18にカラートナーの各印字率に応じたマスクパターンの例を示す。このうち、図18(a)に印字率が60[%](各カラートナーの単色の印字率が20[%])の場合のドットで構成されたマスクパターンを示す。図18(b)に印字率が120[%](各カラートナーの単色の印字率が40[%])の場合のドットで構成されたマスクパターンを示す。図18(c)に印字率が180[%](各カラートナーの単色の印字率が60[%])の場合のドットで構成されたマスクパターンを示す。図18(d)に印字率が240[%](各カラートナーの単色の印字率が80[%])の場合のドットで構成されたマスクパターンを示す。このようなマスクパターンの場合、印字率が高い方が対象画像を見にくくすることができる一方で、印字率が高過ぎると上述のべた画像の性質に近くなり、対象画像が見えやすくなる。
【0100】
なお、印字率ついては、ドットのマスクパターンだけでなく、文字または数字で構成されたマスクパターンで、文字または数字の大きさ、重ねる回数または間隔等によって調整することが可能である。例えば、図17では文字の大きさを変えたマスクパターンの例を示している。図17(a)は、10ポイントのフォントで構成された文字のマスクパターンを示し、図17(b)は、14ポイントのフォントで構成された文字のマスクパターンを示し、図17(c)は、16ポイントのフォントで構成された文字のマスクパターンを示し、図17(d)は、10ポイント、14ポイントおよび16ポイントのフォントの文字を重ねて合成して構成された文字のマスクパターンを示している。
【0101】
なお、マスクパターンを印刷する際に指定エリアの全体の印字率を250[%]以下とすることが望ましいのは、図18に示したドットのマスクパターンだけでなく、図17および図20図22に示すように文字のマスクパターンおよび数字のマスクパターン等においても同様である。
【0102】
また、図16に示すドットのマスクパターンのうち、図16(a)は6ドットの大きさを単位として構成されたマスクパターンを示し、図16(b)は12ドットの大きさを単位として構成されたマスクパターンを示し、図16(c)は24ドットの大きさを単位として構成されたマスクパターンを示し、図16(d)は6ドット、12ドットおよび24ドットの大きさを混在させて構成されたマスクパターンを示している。マスクパターンを構成するドットが規則的に並んでいると、対象画像が見えやすくなるため、図16に示すように、ドットをランダム(例えば誤差拡散またはFMスクリーン等)に配置したマスクパターンを用いることが望ましい。また、マスクパターンを構成するドットが細か過ぎると、大きな文字を含む対象画像が見えやすくなるため、大きな文字を含む対象画像を隠す(秘匿する)ためには大きいドットのマスクパターンを用いること望ましい。一方、マスクパターンを構成するドットが大き過ぎると、細かい文字を含む対象画像が見やすくなるため、細かい文字を含む対象画像を秘匿するためには小さいドットのマスクパターンを用いることが望ましい。
【0103】
また、図19においては、図19(a)に示す文字を含む対象画像に対して、図19(b)では6ドットの大きさを単位として構成されたドットのマスクパターンで隠した場合を示し、図19(c)では12ドットの大きさを単位として構成されたドットのマスクパターンで隠した場合を示し、図19(d)では24ドットの大きさを単位として構成されたドットのマスクパターンで隠した場合を示し、図19(e)では6ドット、12ドットおよび24ドットの大きさを混在させて構成されたドットのマスクパターンで隠した場合を示している。また、図20においては、図20(a)に示す文字を含む対象画像に対して、図20(b)では10ポイントのフォントで構成された文字のマスクパターンで隠した場合を示し、図20(c)では14ポイントのフォントで構成された文字のマスクパターンで隠した場合を示し、図20(d)では16ポイントのフォントで構成された文字のマスクパターンで隠した場合を示し、図20(e)では10ポイント、14ポイントおよび16ポイントのフォントの文字を重ねて合成して構成された文字のマスクパターンで隠した場合を示している。この図19および図20で示すように、文字を含む対象画像を隠す(秘匿する)ためには、当該文字のサイズおよびフォントの種類に応じて、マスクパターンを構成するドットの大きさ、またはマスクパターンを構成する文字のサイズもしくはフォントの種類を変更することが効果的である。
【0104】
また、図21においては、図21(a)に示す数字を含む対象画像に対して、図21(b)では10ポイントのフォントで構成された数字のマスクパターンで隠した場合を示し、図21(c)では14ポイントのフォントで構成された数字のマスクパターンで隠した場合を示し、図21(d)では16ポイントのフォントで構成された数字のマスクパターンで隠した場合を示し、図21(e)では10ポイント、14ポイントおよび16ポイントのフォントの数字を重ねて合成して構成された数字のマスクパターンで隠した場合を示している。また、図22においては、図22(a)に示す文字を含む対象画像に対して、図22(b)では10ポイントのフォントで構成された数字のマスクパターンで隠した場合を示し、図22(c)では14ポイントのフォントで構成された数字のマスクパターンで隠した場合を示し、図22(d)では16ポイントのフォントで構成された数字のマスクパターンで隠した場合を示し、図22(e)では10ポイント、14ポイントおよび16ポイントのフォントの数字を重ねて合成して構成された数字のマスクパターンで隠した場合を示している。以上の図20図22に示すように、文字を含む対象画像を隠す(秘匿する)ためには、文字のマスクパターンで隠すことが望ましく、数字を含む対象画像を隠す(秘匿する)ためには、数字のマスクパターンで隠すことが望ましい。
【0105】
また、図20(e)、図21(e)および図22(e)に示すように、大きさの異なる文字または数字を重ねたマスクパターンで隠す(秘匿する)ことが望ましい。また、対象画像に含まれる文字または数字と、マスクパターンを構成する文字または数字とについて、大きさ、フォントの種類、向き、配置、間隔および行間のうち少なくとも2つ以上について共通にすることが望ましい。
【0106】
また、マスクパターンを構成するドット、文字および数字は、ハーフトーンを用いずに、C、M、Yのカラートナーの重ね合わせにより形成された黒(べた)で形成するものとすることが望ましい。
【0107】
なお、上述では文字および数字のマスクパターンについて説明しているが、記号、図形、および記号等を用いたマスクパターンでも同様である。また、上述では、文字と数字との表現を区別して説明したが、数字および記号についても「文字」の概念に含まれる。
【0108】
ユーザは、対象画像を効果的に隠す(秘匿する)ために、上述のような対象画像とマスクパターンとの相関に応じてマスクパターンを自由に選択する。また、上述のように、自動判別部133は、記憶部102に記憶されたエリア情報データを読み出し、当該エリア情報データにおいて指定エリアについて選択されたマスクパターンとして「自動」が選択されている場合、複数のマスクパターンから、当該指定エリアの対象画像に応じたマスクパターンを判別する。この際、自動判別部133は、上述のように、対象画像に対するOCR処理を実行することによって、当該対象画像に含まる文字等の大きさ、フォントの種類、向き、配置、間隔および行間等を認識する。そして、自動判別部133は、OCR処理により得られた文字等の状態に応じて、例えば図23に示すマスクパターンを判別するための所定のルールに従って、複数のマスクパターンから、対象画像に応じたマスクパターンを判別する。図23に示す「背景」は、OCR処理の結果により認識された対象画像に含まれる文字等の種類を示している。図23の例では、対象画像にQRコードまたはバーコード等のコードが含まれる場合、対象画像に重ねるマスクパターンとしてドットパターンが適切である旨が規定されている。また、図23に示すように、所定のルールで規定されていない対象画像の内容が認識された場合(図23における「その他」の場合)、例えば、ユーザにより新規登録(任意に作成)されたパターンを、対象画像に重ねるマスクパターンとして適切である旨を規定してもよい。
【0109】
なお、対象画像に例えば文字と数字とが両方含まれる場合、自動判別部133は、文字のマスクパターン、または数字のマスクパターンのいずれかを、当該対象画像に重ねるマスクパターンとして優先的に判別するものとしてもよい。
【0110】
(画像形成システムの全体動作の流れ)
図24は、実施形態に係る画像形成システムの全体動作の流れの一例を示すシーケンス図である。図24を参照しながら、本実施形態に係る画像形成システム1の全体動作の流れについて説明する。
【0111】
<ステップS11>
ユーザは、アプリケーション画面1100において、表示されている画像データの印刷操作をした場合に、上述の図12に示した印刷設定画面1200を起動する。そして、ユーザは、印刷設定画面1200において、ドライバ選択領域1201で登録ドライバ11を選択した状態で、印刷ボタン1211を押下する。
【0112】
<ステップS12>
ユーザにより印刷ボタン1211が押下されると、登録ドライバ11により実現される機能である情報処理装置10のエリア指定起動部111が、エリア指定アプリケーション12を起動する。
【0113】
<ステップS13>
エリア指定アプリケーション12が起動されると、上述の図13に示したエリア指定アプリケーション画面1300が表示される。
【0114】
<ステップS14>
情報処理装置10のエリア指定部122は、ユーザの入力部101に対する操作(例えばドラッグ操作等)により、エリア指定アプリケーション画面1300に表示された画像データにおいて隠す(秘匿する)対象とする所望の画像領域を指定する。また、情報処理装置10のパターン選択部123は、各指定エリアについてのユーザの入力部101に対する操作(例えば右クリック等)により表示されるパターン選択ウィンドウから、入力部101に対する操作に応じて、当該各指定エリアに重ねるマスクパターンを選択する。この場合、指定エリアに対応するマスクパターンとして「自動」が選択された場合には、対象画像に適したマスクパターンが自動判別部133により判別されたマスクパターンが適用される。
【0115】
<ステップS15~S17>
エリア指定アプリケーション画面1300のエリア指定登録ボタン1312が押下されると、エリア指定部122は、どの位置および範囲で隠しエリアを指定したのかを示す情報をエリア情報データに含めて、記憶部102に記憶(登録)させる。また、パターン選択部123は、どのマスクパターンを選択したのかを示す識別情報(番号)を図7に示すエリア情報データに含めて、記憶部102に記憶(登録)させる。なお、マスクパターンとして「自動」が選択された場合、その旨、または「自動」を示す識別情報がエリア情報データに含められる。
【0116】
<ステップS18、S19>
ユーザは、エリア情報データが記憶部102に記憶(登録)された後、アプリケーション画面1100において、表示されている画像データについての印刷操作を再び行い、上述の図14に示した印刷設定画面1200を起動する。印刷設定画面1200において、ドライバ選択領域1201で印刷ドライバ13が選択された状態でユーザにより印刷ボタン1211が押下されると、印刷ドライバ13が起動され、上述の図15に示した印刷ドライバ設定画面1400が表示される。
【0117】
<ステップS20>
ユーザは、隠し印刷選択チェックボックス1401にチェック操作し、隠し印刷の設定をする。
【0118】
<ステップS21>
ユーザによってOKボタン1411が押下されると、隠し印刷選択チェックボックス1401、両面印刷選択設定領域1402および隠しエリアK変換選択設定領域1403で設定された内容で印刷が実行される。情報処理装置10のK変換選択部131は、隠しエリアK変換選択設定領域1403で「隠しエリアK変換」が選択された状態で、OKボタン1411が押下された場合、画像データにおける対象画像の印刷に用いるトナーの種類を黒トナーにK変換することを選択する。
【0119】
<ステップS22、S23>
情報処理装置10のK変換部132は、K変換選択部131により対象画像をK変換することが選択された場合、記憶部102に記憶されたエリア情報データを読み出す。また、情報処理装置10の自動判別部133は、記憶部102に記憶されたエリア情報データを読み出す。
【0120】
<ステップS24>
K変換部132は、K変換選択部131により対象画像をK変換することが選択された場合、画像データにおいて、読み出したエリア情報データで示される指定エリアの対象画像をK変換する。
【0121】
<ステップS25>
自動判別部133は、読み出したエリア情報データにおいて指定エリアについて選択されたマスクパターンとして「自動」が選択されている場合、複数のマスクパターンから、当該指定エリアの対象画像に応じたマスクパターンを判別する。
【0122】
<ステップS26、S27>
情報処理装置10の生成部134は、記憶部102に記憶されたエリア情報データを読み出し、指定エリアについてパターン選択部123により選択された、または自動判別部133により判別されたマスクパターン、および画像データに基づいて、画像形成装置20へ送信するための印刷データを生成する。この場合、生成部134は、エリア情報データをコマンドに変換して、当該コマンドを含めた形式で印刷データを生成する。すなわち、生成部134は、画像データにおける指定エリアに、パターン選択部123により選択された、または自動判別部133により判別されたマスクパターンを重ねて印刷するための印刷データを生成する。
【0123】
<ステップS28>
情報処理装置10の送信部135は、生成部134により生成された印刷データを、ネットワークI/F409を介して画像形成装置20へ送信する。
【0124】
<ステップS29>
画像形成装置20の描画処理部201は、情報処理装置10からネットワークI/F950を介して印刷データを受信し、当該印刷データを画像形成装置20で印刷する形式の描画データに変換する。このとき、描画処理部201は、当該印刷データのコマンドが示す隠しエリア(指定エリア)に対して、当該コマンドが示すマスクパターンをC、M、Yの重ね合わせにより形成された黒で重ねて印刷するための描画データを生成する。
【0125】
<ステップS30>
画像形成装置20の印刷部202は、描画処理部201により生成された描画データに基づいて、印刷媒体に印刷(画像形成)する。
【0126】
以上のステップS11~S30の流れによって、画像形成システム1の全体動作が実行される。
【0127】
以上のように、電子写真方式の画像形成装置20に対して印刷処理を実行する本実施形態に係る情報処理装置10では、プレビュー表示制御部121は、画像データをディスプレイ408に表示させ、エリア指定部122は、入力部101に対する操作に応じて、ディスプレイ408に表示された画像データのうち、複数のカラートナーの組み合わせ(例えば、シアントナー、マゼンタトナーおよびイエロートナーの組み合わせ)により黒を表現するもので構成されるマスクパターンを重ねて秘匿する対象となる対象画像の隠しエリアを指定し、自動判別部133は、エリア指定部122により指定された画像領域の対象画像に応じて、複数のマスクパターンから画像領域に重ねるマスクパターンを判別するものとしている。これによって、画像データを作成するアプリケーション側で隠す対象となる対象画像を隠すための特別な機能を実装する必要がなく、対象画像を簡易な処理で隠すことができ、かつ、対象画像を赤外線読取装置で読み取ることができる。
【0128】
また、本実施形態に係る情報処理装置10では、K変換部132は、画像領域の対象画像を構成するトナーを、赤外線について吸収性を示す黒トナーに変換し、生成部134は、K変換部132により黒トナーに変換された対象画像の画像領域に、自動判別部133により判別されたマスクパターンを重ねて印刷するための印刷データを生成するものとしている。これによって、指定された隠しエリア(画像領域)を構成するトナーを、赤外線を吸収する黒トナーに変換するため、対象画像の秘匿性を高めることが可能となる。
【0129】
また、本実施形態に係る情報処理装置10では、自動判別部133は、エリア指定部122により指定された画像領域の対象画像に対してOCR処理を実行し、OCR処理の結果に基づいて、複数のマスクパターンから画像領域に重ねるマスクパターンを判別するものとしている。これによって、対象画像に適切なマスクパターンを、より確実に判別することができるため、対象画像の秘匿性を高めることが可能となる。
【0130】
また、本実施形態に係る情報処理装置10では、プレビュー表示制御部121は、自動判別部133により判別されたマスクパターンを、エリア指定部122により指定された画像領域にマスクパターンを重ねた画像データをディスプレイ408に表示させることも可能としている。これによって、印刷前に、対象画像に対するマスクパターンの重ね具合をプレビュー表示として確認することができる。
【0131】
また、本実施形態に係る情報処理装置10では、画像領域のマスクパターンを印刷するためのカラートナーの印字率と、画像領域の対象画像を印刷する黒トナーの印字率との合計が、250[%]以下であるものとしている。これによって、トナーの定着性が損なわれるという問題を解消し、かつ、黒トナーによる黒と、C、M、Yのカラートナーの重ね合わせにより形成された黒との微妙な特性の相違により、黒トナーで形成された隠す対象となる画像がうっすらと見えてしまう現象を抑制することができる。
【0132】
なお、上述の実施形態において、情報処理装置10および画像形成装置20の各機能部の少なくともいずれかがプログラムの実行によって実現される場合、そのプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。また、上述の実施形態において、実施形態において、情報処理装置10および画像形成装置20で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk-Recordable)、またはDVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態において、情報処理装置10および画像形成装置20で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態において、情報処理装置10および画像形成装置20で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、上述の実施形態において、情報処理装置10および画像形成装置20で実行されるプログラムは、上述した各機能部のうち少なくともいずれかを含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU901が上述の記憶装置(例えば、補助記憶装置405、MEM-P902、MEM-C907、HD909等)からプログラムを読み出して実行することにより、上述の各機能部が主記憶装置上にロードされて生成されるようになっている。
【0133】
本発明の態様は、以下の通りである。
<1>電子写真方式に関する印刷システムであって、
画像データを表示装置に表示させる表示制御部と、
入力部に対する操作に応じて、前記表示装置に表示された前記画像データのうち、複数のカラートナーの組み合わせにより黒を表現する第1トナーで構成されるマスクパターンを重ねる対象画像の画像領域を指定する指定部と、
前記指定部により指定された前記画像領域の前記対象画像に応じて、複数のマスクパターンから該画像領域に重ねるマスクパターンを判別する判別部と、前記入力部に対する操作に応じて、複数の前記マスクパターンから前記画像領域に重ねるマスクパターンを選択する選択部と、の少なくとも一方と、
を有する印刷システムである。
<2>前記画像データに基づいて、前記マスクパターンを前記画像領域に重ねて印刷するための印刷データを生成する生成部を、さらに有する前記<1>に記載の印刷システムである。
<3>前記画像領域の前記対象画像を構成するトナーを、赤外線について吸収性を示す黒トナーである第2トナーに変換する変換部を、さらに有し、
前記生成部は、前記変換部により前記第2トナーに変換された前記対象画像の前記画像領域に、前記マスクパターンを重ねて印刷するための前記印刷データを生成する前記<2>に記載の印刷システムである。
<4>前記判別部は、前記指定部により指定された前記画像領域の前記対象画像に対してOCR(Optical Character Recognition)処理を実行し、OCR処理の結果に基づいて、前記複数のマスクパターンから前記画像領域に重ねるマスクパターンを判別する前記<1>~<3>のいずれか一項に記載の印刷システムである。
<5>前記表示制御部は、前記マスクパターンを、前記指定部により指定された前記画像領域に前記マスクパターンを重ねた前記画像データを前記表示装置に表示させる前記<1>~<4>のいずれか一項に記載の印刷システムである。
<6>前記生成部は、任意に作成されたマスクパターンを前記画像領域に重ねる前記<2>に記載の印刷システムである。
<7>前記画像領域の前記マスクパターンを印刷するための前記第1トナーの印字率と、前記画像領域の前記対象画像を印刷する前記第2トナーの印字率との合計が、250[%]以下である前記<3>に記載の印刷システムである。
<8>前記指定部は、前記入力部に対する操作に応じて、複数の前記画像領域を指定する前記<1>~<7>のいずれか一項に記載の印刷システムである。
<9>前記複数のカラートナーの組み合わせは、シアントナー、マゼンタトナーおよびイエロートナーの組み合わせである前記<1>~<8>のいずれか一項に記載の印刷システムである。
<10>電子写真方式に関する印刷システムの印刷方法であって、
画像データを表示装置に表示させる表示制御部ステップと、
入力部に対する操作に応じて、前記表示装置に表示された前記画像データのうち、複数のカラートナーの組み合わせにより黒を表現する第1トナーで構成されるマスクパターンを重ねる対象画像の画像領域を指定する指定ステップと、
指定した前記画像領域の前記対象画像に応じて、複数のマスクパターンから該画像領域に重ねるマスクパターンを判別する判別ステップと、前記入力部に対する操作に応じて、複数の前記マスクパターンから前記画像領域に重ねるマスクパターンを選択する選択ステップと、の少なくとも一方のステップと、
を有する印刷方法である。
<11>電子写真方式に関する印刷システムのコンピュータに、
画像データを表示装置に表示させる表示制御部ステップと、
入力部に対する操作に応じて、前記表示装置に表示された前記画像データのうち、複数のカラートナーの組み合わせにより黒を表現する第1トナーで構成されるマスクパターンを重ねる対象画像の画像領域を指定する指定ステップと、
指定した前記画像領域の前記対象画像に応じて、複数のマスクパターンから該画像領域に重ねるマスクパターンを判別する判別ステップと、前記入力部に対する操作に応じて、複数の前記マスクパターンから前記画像領域に重ねるマスクパターンを選択する選択ステップと、の少なくとも一方のステップと、
を実行させるためのプログラムである。
【符号の説明】
【0134】
1 画像形成システム
10 情報処理装置
11 登録ドライバ
12 エリア指定アプリケーション
13 印刷ドライバ
15 アプリケーション
20、20a、20b 画像形成装置
101 入力部
102 記憶部
111 エリア指定起動部
121 プレビュー表示制御部
122 エリア指定部
123 パターン選択部
131 K変換選択部
132 K変換部
133 自動判別部
134 生成部
135 送信部
201 描画処理部
202 印刷部
401 CPU
402 ROM
403 RAM
405 補助記憶装置
406 記録メディア
407 メディアドライブ
408 ディスプレイ
409 ネットワークI/F
410 バス
411 キーボード
412 マウス
413 DVD
414 DVDドライブ
901 CPU
902 MEM-P
902a ROM
902b RAM
903 NB
904 SB
906 ASIC
907 MEM-C
908 HDDコントローラ
909 HD
910 コントローラ
920 近距離通信回路
920a アンテナ
921 AGPバス
922 PCIバス
930 エンジン制御部
931 スキャナ部
932 プリンタ部
940 操作パネル
940a パネル表示部
940b ハードキー
950 ネットワークI/F
1001~1003 マスクパターン
1100 アプリケーション画面
1200 印刷設定画面
1201 ドライバ選択領域
1202 一般設定領域
1211 印刷ボタン
1212 キャンセルボタン
1300 エリア指定アプリケーション画面
1301 プレビュー表示領域
1311 エリア指定完了ボタン
1312 エリア指定登録ボタン
1313 キャンセルボタン
1321~1323 指定エリア
1322a パターン選択ウィンドウ
1400 印刷ドライバ設定画面
1401 隠し印刷選択チェックボックス
1402 両面印刷選択設定領域
1403 隠しエリアK変換選択設定領域
1411 OKボタン
1412 キャンセルボタン
N ネットワーク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0135】
【特許文献1】特開2021-005365号公報
図1
図2
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図6
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図24