(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173653
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】混合物、重合性液晶組成物、位相差フィルム、偏光板及び光学ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
C08F 20/10 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
C08F20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024024491
(22)【出願日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2023091086
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石川 俊
(72)【発明者】
【氏名】古川 達也
(72)【発明者】
【氏名】飛田 憲之
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL08P
4J100BA02P
4J100BA15P
4J100BC43P
4J100BC83P
4J100CA01
4J100CA23
4J100DA66
4J100JA32
(57)【要約】
【課題】生産性が向上した重合性液晶化合物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される重合性液晶化合物であって、式(1)中のMが異なる2種類以上の重合性液晶化合物を有する混合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される重合性液晶化合物であって、前記式(1)中のMが異なる2種類以上の重合性液晶化合物を有する混合物。
【化1】
[式(1)中、
k11、k12およびlは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す;
B
11およびB
12は、それぞれ独立に、-CR
1R
2-、-CH
2-CH
2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR
1-、-NR
2-CO-、-O-CH
2-、-CH
2-O-、-S-CH
2-、-CH
2-S-または単結合を表し、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す;
E
11およびE
12は、それぞれ独立に、-CR
1R
2-、-CH
2-CH
2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR
1-、-NR
2-CO-、-O-CH
2-、-CH
2-O-、-S-CH
2-、-CH
2-S-または単結合を表す;
G
11およびG
12は、それぞれ独立に、炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R
3、-OR
3、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる-CH
2-は、-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよく、R
3は、炭素数1~4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい;
A
11およびA
12は、それぞれ独立に、炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基、または炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基および該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R
3、-OR
3、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよい;
F
11およびF
12は、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、-OR
3またはハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH
2-は、-O-または-CO-で置き換わっていてもよい;
P
11およびP
12は、それぞれ独立に、水素原子または重合性基を表す(ただし、P
11およびP
12のうちの少なくとも1つは重合性基である);
Mは置換基を有していてもよい炭素数3~13の2価の脂肪族炭化水素基を表す;
Ar
11およびAr
12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。]
【請求項2】
式(1)中のMが、置換基を有していてもよい炭素数2n(nは2~4の整数を表す)の2価の脂肪族炭化水素基である、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
式(1)中のAr
11およびAr
12が、それぞれ独立に、下記式(Ar-1)~(Ar-5)のいずれかで表される基である、請求項1又は2に記載の混合物。
【化2】
[式(Ar-1)~(Ar-5)中、
*は、結合部を表す;
Q
1は-S-、-O-または-NR
11-を表し、R
11は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基を表し、
Q
2は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基を表す;
W
1およびW
2は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-CO-、-NR
11-を表し、R
11は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基を表す;
Y
1は炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し、
Y
2はCN基または置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルキル基に含まれる-CH
2-は、-O-、-CO-、-O-CO-または-CO-O-で置換されていてもよい;
Z
1、Z
2およびZ
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の脂肪族炭
化水素基またはアルコキシ基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6~20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR
11R
12または-SR
11を表し、Z
1およびZ
2は、互いに結合して芳香環または芳香族複素環を形成してもよく、R
11およびR
12は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す;
Axは芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香族環を有する、炭素数2~30の有機基を表し、Ayは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、または芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香族環を有する、炭素数2~30の有機基を表し、AxとAyは結合して環を形成してもよい;
Y
3およびY
4は、それぞれ独立して、下記式(Y-1):
【化3】
〔式(Y-1)中、
R
Y1は水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、該アルキル基は、1つ以上の置換基X
3によって置換されていてもよく、置換基X
3は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルフラニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、または、1個の-CH
2-または隣接していない2個以上の-CH
2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-に置き換えられてもよい炭素数1~20の直鎖状または分岐状アルキル基を表し、該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されてもよく、或いは、-B
31-F
31-P
31で表される基であってもよく、B
31、F
31およびP
31は、それぞれ、前記式(1)中のB
11、F
11およびP
11と同様に定義され、それぞれ、式(1)中のB
11、F
11およびP
11と同一であっても異なっていてもよい;
U
1は、芳香族炭化水素基を有する炭素数2~30の有機基を表し、該芳香族炭化水素基の任意の炭素原子はヘテロ原子に置換されていてもよく、芳香族炭化水素基は、1つ以上の前記置換基X
3によって置換されていてもよい;
T
1は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-NU
2-、-N=CU
2-、-CO-NU
2-、-OCO-NU
2-またはO-NU
2-を表し、U
2は水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基、芳香族炭化水素基(該芳香族炭化水素基の任意の炭素原子はヘテロ原子に置換されていてもよい)を有する炭素数2~30の有機基、または(E
31-A
31)
q-B
32-F
32-P
32を表し、該アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基および芳香族炭化水素基はそれぞれ、無置換であるかまたは1つ以上の置換基X
3によって置換されていてもよく、該アルキル基は該シクロアルキル基またはシクロアルケニル基によって置換されていてもよく、該アルキル基中の1個の-CH
2-または隣接していない2個以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-SO
2-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-に置き換えられてもよく、該シクロアルキル基またはシクロアルケニル基中の1個の-CH
2-または隣接していない2個以上の-CH
2-は、それぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-またはO-CO-O-に置き換えられてもよく、E
31、A
31、B
32、F
32およびP
32は、それぞれ、式(1)中のE
11、A
11、B
11、F
11およびP
11と同様に定義され、それぞれ前記E
11、A
11、B
11、F
11およびP
11と同一であっても異なっていてもよく、qは0~4の整数を表し、qが2以上のとき、複数のE
31は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のA
31は互いに同一であっても異なっていてもよく、U
1とU
2とが結合して環を構成していてもよい〕から選ばれる基を表す。]
【請求項4】
請求項1に記載の混合物と、式(2)で表される重合性液晶化合物とを含む、重合性液晶組成物。
【化4】
[式(2)中、
k21およびk22は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す;
B
21およびB
22は、それぞれ独立に、-CR
1R
2-、-CH
2-CH
2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR
1-、-NR
2-CO-、-O-CH
2-、-CH
2-O-、-S-CH
2-、-CH
2-S-または単結合を表し、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
E
21およびE
22は、それぞれ独立に、-CR
1R
2-、-CH
2-CH
2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR
1-、-NR
2-CO-、-O-CH
2-、-CH
2-O-、-S-CH
2-、-CH
2-S-または単結合を表す;
G
21およびG
22は、それぞれ独立に、炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R
3、-OR
3、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる-CH
2-は、-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよく、R
3は、炭素数1~4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい;
A
21およびA
22は、それぞれ独立に、炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基、または炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基および該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R
3、-OR
3、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよい;
F
21およびF
22は、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、-OR
3またはハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH
2-は、-O-または-CO-で置き換わっていてもよい;
P
21およびP
22は、それぞれ独立に、水素原子または重合性基を表す(ただし、P
21およびP
22のうち少なくとも1つは重合性基である);
Ar
21は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。]
【請求項5】
液体クロマトグラフィーによって測定される、式(1)で表される重合性液晶化合物と式(2)で表される重合性液晶化合物との全ピーク面積に対する式(1)で表される重合性液晶化合物のピーク面積の割合が0.1%以上70%以下である、請求項4に記載の重合性液晶組成物。
【請求項6】
式(1)中のA11、A12、B11、B12、E11、E12、F11、F12、G11、G12、P11およびP12で表される基が、それぞれ、式(2)中のA21、A22、B21、B22、E21、E22、F21、F22、G21、G22、P21およびP22で表される基と同一であり、式(1)中のAr11およびAr12で表される基が、それぞれ、式(2)中のAr21で表される基と同一である、請求項4又は5に記載の重合性液晶組成物。
【請求項7】
光重合開始剤および有機溶剤をさらに含む、請求項4又は5に記載の重合性液晶組成物。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の重合性液晶組成物から形成される位相差フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の位相差フィルムを含む偏光板。
【請求項10】
請求項9に記載の偏光板を含む光学ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合物、重合性液晶組成物、位相差フィルム、偏光板及び光学ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)に用いられる位相差フィルムなどの光学フィルムとして、例えば、重合性液晶化合物を溶剤に溶解させて得られる塗工液を、支持基材に塗布後、重合して得られる光学フィルムがある。従来、重合性液晶化合物としては、例えば、6員環が2~4個程度連結された棒状構造のネマチック液晶化合物などが知られている。
【0003】
一方、位相差フィルムとしては、その特性の1つとして全波長領域において偏光変換可能であることが求められており、例えば、ある波長λにおける位相差値Re(λ)を550nmにおける位相差値Re(550)で除した値[Re(λ)/Re(550)]が1に近い波長域や、[Re(450)/Re(550)]<1の逆波長分散性を示す波長域では、理論上、一様の偏光変換が可能であることが知られている。このような位相差フィルムを構成し得る重合性液晶化合物は、例えば特許文献1~3に開示されている。
【0004】
重合性液晶化合物を配向させる際、例えば重合性液晶化合物を含む塗工液を支持基材に塗布した後、重合性液晶化合物の相転移温度より高い温度まで加熱することによって相転移させる必要がある。重合性液晶化合物の相転移温度が高いと支持基材に望ましくない影響を与えたり、使用可能な支持基材が制限されたり、加熱温度が高くなるため製造効率が悪くなる場合がある。
【0005】
特許文献4には、重合性液晶化合物を製造する際に、原料にアルキルジカルボン酸を一種類添加することによって重合性液晶化合物の相転移温度を下げることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-121339号公報
【特許文献2】特開2019-156733号公報
【特許文献3】特開2020-41026号公報
【特許文献4】特開2022-120659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、重合性液晶化合物を製造する際に、原料にアルカリジカルボン酸を一種類添加すると、製造工程の途中で得られる重合性液晶化合物は、溶媒に対する溶解度が小さくなりやすい。溶媒に対する溶解度が小さいと、後工程において重合性液晶化合物の溶液をろ過する際に効率良くろ過することが難しくなる。すなわち、重合性液晶化合物の溶液を濾過する際のろ過性が低下する。そのため、重合性液晶化合物の生産性が低下するという課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の発明を含む。
[発明1]
式(1)で表される重合性液晶化合物であって、前記式(1)中のMが異なる2種類以上の重合性液晶化合物を有する混合物。
【0009】
【0010】
[式(1)中、
k11、k12およびlは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す;
B11およびB12は、それぞれ独立に、-CR1R2-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR1-、-NR2-CO-、-O-CH2-、-CH2-O-、-S-CH2-、-CH2-S-または単結合を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す;
E11およびE12は、それぞれ独立に、-CR1R2-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR1-、-NR2-CO-、-O-CH2-、-CH2-O-、-S-CH2-、-CH2-S-または単結合を表す;
G11およびG12は、それぞれ独立に、炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R3、-OR3、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよく、R3は、炭素数1~4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい;
A11およびA12は、それぞれ独立に、炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基、または炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基および該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R3、-OR3、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよい;
F11およびF12は、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、-OR3またはハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH2-は、-O-または-CO-で置き換わっていてもよい;
P11およびP12は、それぞれ独立に、水素原子または重合性基を表す(ただし、P11およびP12のうちの少なくとも1つは重合性基である);
Mは置換基を有していてもよい炭素数3~13の2価の脂肪族炭化水素基を表す;
Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。]
[発明2]
式(1)中のMが、置換基を有していてもよい炭素数2n(nは2~4の整数を表す)の2価の脂肪族炭化水素基である、[発明1]に記載の混合物。
【0011】
[発明3]
式(1)中のAr11およびAr12が、それぞれ独立に、下記式(Ar-1)~(Ar-5)のいずれかで表される基である、[発明1]又は[発明2]に記載の混合物。
【0012】
【0013】
[式(Ar-1)~(Ar-5)中、
*は、結合部を表す;
Q1は-S-、-O-または-NR11-を表し、R11は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基を表し、
Q2は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基を表す;
W1およびW2は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-CO-、-NR11-を表し、R11は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基を表す;
Y1は炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し、
Y2はCN基または置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルキル基に含まれる-CH2-は、-O-、-CO-、-O-CO-または-CO-O-で置換されていてもよい;
Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の脂肪族炭化水素基またはアルコキシ基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6~20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR11R12または-SR11を表し、Z1およびZ2は、互いに結合して芳香環または芳香族複素環を形成してもよく、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す;
Axは芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香族環を有する、炭素数2~30の有機基を表し、Ayは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、または芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香族環を有する、炭素数2~30の有機基を表し、AxとAyは結合して環を形成してもよい;
Y3およびY4は、それぞれ独立して、下記式(Y-1):
【0014】
【0015】
〔式(Y-1)中、
RY1は水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、該アルキル基は、1つ以上の置換基X3によって置換されていてもよく、置換基X3は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルフラニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、または、1個の-CH2-または隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-に置き換えられてもよい炭素数1~20の直鎖状または分岐状アルキル基を表し、該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されてもよく、或いは、-B31-F31-P31で表される基であってもよく、B31、F31およびP31は、それぞれ、前記式(1)中のB11、F11およびP11と同様に定義され、それぞれ、式(1)中のB11、F11およびP11と同一であっても異なっていてもよい;
U1は、芳香族炭化水素基を有する炭素数2~30の有機基を表し、該芳香族炭化水素基の任意の炭素原子はヘテロ原子に置換されていてもよく、芳香族炭化水素基は、1つ以上の前記置換基X3によって置換されていてもよい;
T1は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-NU2-、-N=CU2-、-CO-NU2-、-OCO-NU2-またはO-NU2-を表し、U2は水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基、芳香族炭化水素基(該芳香族炭化水素基の任意の炭素原子はヘテロ原子に置換されていてもよい)を有する炭素数2~30の有機基、または(E31-A31)q-B32-F32-P32を表し、該アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基および芳香族炭化水素基はそれぞれ、無置換であるかまたは1つ以上の置換基X3によって置換されていてもよく、該アルキル基は該シクロアルキル基またはシクロアルケニル基によって置換されていてもよく、該アルキル基中の1個の-CH2-または隣接していない2個以上の-CH2-は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-SO2-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-に置き換えられてもよく、該シクロアルキル基またはシクロアルケニル基中の1個の-CH2-または隣接していない2個以上の-CH2-は、それぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-またはO-CO-O-に置き換えられてもよく、E31、A31、B32、F32およびP32は、それぞれ、式(1)中のE11、A11、B11、F11およびP11と同様に定義され、それぞれ前記E11、A11、B11、F11およびP11と同一であっても異なっていてもよく、qは0~4の整数を表し、qが2以上のとき、複数のE31は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のA31は互いに同一であっても異なっていてもよく、U1とU2とが結合して環を構成していてもよい〕から選ばれる基を表す。]
[発明4]
[発明1]~[発明3]のいずれか1つに記載の混合物と、式(2)で表される重合性液晶化合物とを含む、重合性液晶組成物。
【0016】
【0017】
[式(2)中、
k21およびk22は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す;
B21およびB22は、それぞれ独立に、-CR1R2-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR1-、-NR2-CO-、-O-CH2-、-CH2-O-、-S-CH2-、-CH2-S-または単結合を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0018】
E21およびE22は、それぞれ独立に、-CR1R2-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR1-、-NR2-CO-、-O-CH2-、-CH2-O-、-S-CH2-、-CH2-S-または単結合を表す;
G21およびG22は、それぞれ独立に、炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R3、-OR3、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよく、R3は、炭素数1~4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい;
A21およびA22は、それぞれ独立に、炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基、または炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基および該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R3、-OR3、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよい;
F21およびF22は、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、-OR3またはハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH2-は、-O-または-CO-で置き換わっていてもよい;
P21およびP22は、それぞれ独立に、水素原子または重合性基を表す(ただし、P21およびP22のうち少なくとも1つは重合性基である);
Ar21は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。]
[発明5]
液体クロマトグラフィーによって測定される、式(1)で表される重合性液晶化合物と式(2)で表される重合性液晶化合物との全ピーク面積に対する式(1)で表される重合性液晶化合物のピーク面積の割合が0.1%以上70%以下である、[発明4]に記載の重合性液晶組成物。
【0019】
[発明6]
式(1)中のA11、A12、B11、B12、E11、E12、F11、F12、G11、G12、P11およびP12で表される基が、それぞれ、式(2)中のA21、A22、B21、B22、E21、E22、F21、F22、G21、G22、P21およびP22で表される基と同一であり、式(1)中のAr11およびAr12で表される基が、それぞれ、式(2)中のAr21で表される基と同一である、[発明4]又は[発明5]に記載の重合性液晶組成物。
【0020】
[発明7]
光重合開始剤および有機溶剤をさらに含む、[発明4]~[発明6]のいずれか1つに記載の重合性液晶組成物。
【0021】
[発明8]
[発明4]~[発明7]のいずれか1つに記載の重合性液晶組成物から形成される位相差フィルム。
【0022】
[発明9]
[発明8]に記載の位相差フィルムを含む偏光板。
[発明10]
[発明9]に記載の偏光板を含む光学ディスプレイ。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、生産性が向上した重合性液晶化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
【0025】
<混合物>
本発明の混合物は、式(1)で表される重合性液晶化合物を有する。
【0026】
【0027】
本発明の混合物は、式(1)中のMが異なる2種類以上の重合性液晶化合物を有する。以下、式(1)で表される2種類以上の重合性液晶化合物を有する本発明の混合物を、「混合物(A)」ともいう。
【0028】
式(1)中、k11およびk12は、それぞれ独立に、1以上の整数を表し、例えば1~5の整数であってよい。k11とk12との和は、好ましくは2~6、より好ましくは2~4である。液晶性に優れる観点から、k11およびk12は、それぞれ独立に、1または2であることが好ましく、重合性液晶化合物(1)の製造のし易さの観点から、k11とk12とが同じ数であることが好ましく、本発明の好適な一実施態様において、k11とk12はともに1である。
【0029】
式(1)中、lは1以上の整数を表し、例えば1~8の整数であってよい。液晶性に優れる観点から、lは1~6であることが好ましい。
式(1)中、B11およびB12は、それぞれ独立に、-CR1R2-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR1-、-NR2-CO-、-O-CH2-、-CH2-O-、-S-CH2-、-CH2-S-または単結合を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。B11およびB12は、それぞれ独立に、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-NR1-、-NR2-CO-、-CH2-O-、-O-CH2-、-CH2-S-、-S-CH2-または単結合であることが好ましく、より好ましくは-O-CO-または-CO-O-である。B11およびB12が複数存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよいが、重合性液晶化合物(1)の製造のし易さの観点から、複数存在するB11は同一の基であることが好ましく、複数存在するB12は同一の基であることが好ましい。また、B11とB12とが全て同一であることがより好ましい。
【0030】
R1およびR2で表される炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1または2のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0031】
式(1)中、E11およびE12は、それぞれ独立に、-CR1R2-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR1-、-NR2-CO-、-O-CH2-、-CH2-O-、-S-CH2-、-CH2-S-または単結合を表す。E11およびE12は、それぞれ独立に、好ましくは-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-NR1-、-NR2-CO-、-CH2-O-、-O-CH2-、-CH2-S-、-S-CH2-または単結合であり、より好ましくは-O-CO-または-CO-O-である。重合性液晶化合物(1)の製造のし易さの観点から、E11およびE12は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一の基であることが好ましい。
【0032】
G11およびG12は、それぞれ独立に、炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R3、-OR3、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。R3は、炭素数1~4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。G11およびG12で表される炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、式(g-1)~式(g-10)で示されるヘテロ原子を含んでもよい2価の脂環式炭化水素基が挙げられ、5員環または6員環の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0033】
【0034】
上記式(g-1)~(g-10)で示される基は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~4のフルオロアルキル基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0035】
G11およびG12としては、それぞれ、式(g-1)~(g-4)のいずれかで表される5員環または6員環の脂環式炭化水素基がより好ましく、式(g-1)で表される6員環からなる脂環式炭化水素基がさらに好ましく、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が特に好ましく、trans-シクロヘキサン-1,4-ジイル基がとりわけ好ましい。
【0036】
G11およびG12は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であると重合性液晶化合物(1)の工業的な製造のし易さや生産性の点で有利である。
式(1)中、A11およびA12は、それぞれ独立に、炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基、または炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基および該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R3、-OR3、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよい。
【0037】
A11およびA12で表される炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基または炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基としては、上記式(g-1)~式(g-10)で表される5員環または6員環などからなる脂環式炭化水素基や、式(a-1)~式(a-8)で表される炭素数6~20程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0038】
【0039】
なお、A11およびA12として、前記例示された基の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、イソプロピル基またはtert-ブチル基などの炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基またはエトキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~4のフルオロアルキル基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0040】
A11およびA12としては、シクロヘキサン-1,4-ジイル基または1,4-フェニレン基が好ましい。k11およびk12が1である場合には、A11およびA12はそれぞれ1,4-フェニレン基であることが好ましく、k11およびk12が2以上である場合には、E11に結合するA11およびE12に結合するA12が互いに同一であることが好ましく、E11に結合するA11およびE12に結合するA12が1,4-フェニレン基であることが好ましい。A11およびA12が複数存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
式(1)中、F11およびF12は、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、-OR3またはハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH2-は、-O-または-CO-で置き換わっていてもよい。F11およびF12としては、それぞれ独立に、炭素数3~10のアルカンジイル基、-(CF2)4-、-(CF2)6-、-(CF2)8-が好ましく、炭素数4または6のアルカンジイル基〔-(CH2)4-または-(CH2)6-〕がより好ましい。E11およびE12は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であると重合性液晶化合物(1)の工業的な製造のし易さや生産性の点で有利である。
【0042】
P11およびP12は、それぞれ独立に、水素原子または重合性基を表す。P11およびP12のうちの少なくとも1つは重合性基であり、P11およびP12がいずれも重合性基であることが、該重合性液晶化合物を用いて得られる液晶硬化膜の膜硬度の観点から好ましい。
【0043】
重合性基は、重合性液晶化合物(1)を重合させることのできる反応性基であればよく、具体的には、ビニル基、ビニルオキシ基、スチリル基、p-(2-フェニルエテニル)フェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、カルボキシ基、アセチル基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、炭素数1~4のN-アルキルアミノ基、アミノ基、オキシラニル基、オキセタニル基、ホルミル基、イソシアナト基、イソチオシアナト基等が例示される。また、重合性基には、上記例示の基とF11またはF12とを結合するエーテル結合またはエステル結合が含まれていてもよく、それぞれ、エーテル結合を介して結合していることが好ましい。P11およびP12としては、例えば、光重合させるのに適したラジカル重合性基またはカチオン重合性基が好ましく、特に取り扱いが容易な上に、製造も容易であることからアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0044】
式(1)中、Mは置換基を有していてもよい炭素数3~13の2価の脂肪族炭化水素基を表す。式(1)におけるMが炭素数3~13の2価の脂肪族炭化水素基であると、分子構造中に該重合性液晶化合物(1)と近似する構造を有するような他の重合性液晶化合物、例えば、後述する式(2)で表される重合性液晶化合物等の溶剤に対する溶解性を向上させやすく、前記重合性液晶化合物等の相転移温度を低下させる効果に優れる。重合性液晶化合物の相転移温度を下げる効果に優れるため、より低い加工温度で重合性液晶化合物から液晶硬化膜を得ることができるので、加熱による液晶硬化膜の光学特性への影響を低減できる点や製造効率の点においても有利である。かかる効果は、特に、式(1)中のMが脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基などの環状構造を有する構造である場合と比較して著しく高くなる傾向にある。この理由は、限定されるものではないが、2価の芳香族基(Ar11および/またはAr12)の間に配置される基Mが剛直である環状構造を有さないために、分子の柔軟性が高くなって溶解性が向上しやすくなり、相転移温度の大幅な低下がもたらされると推測される。
【0045】
本発明の混合物(A)は、式(1)中のMが異なる2種類以上の重合性液晶化合物を有することによって、重合性液晶化合物等の相転移温度を低下させることができるとともに、混合物(A)の製造工程において溶媒への溶解性を向上させることができる。そのため、混合物(A)の生産性を向上させることができる。混合物(A)の生産性を向上させることは、重合性液晶化合物の生産性を向上させることをも意味する。
【0046】
炭素数3~13の2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよいが、飽和炭化水素基であることが好ましく、直鎖状飽和炭化水素基であることがより好ましい。炭素数3~13の2価の脂肪族炭化水素基としては、具体的に、例えば、n-プロパンジイル基、i-プロパンジイル基、n-ブタンジイル基、n-ペンタンジイル基、n-ヘキサンジイル基、n-ヘプタンジイル基、n-オクタンジイル基、n-ノナンジイル基、n-デカンジイル基等の炭素数3~13のアルカンジイル基が挙げられる。Mが複数存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
前記炭素数3~13の2価の脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子は置換基に置き換えられていてもよい。式(1)中のMが置換基を有する3~13の2価の脂肪族炭化水素基である場合、該置換基を含めてM中に環状構造が存在しないことが好ましい。言い換えると、本発明の重合性液晶化合物(1)は、式(1)中の-(Ar11-O-CO-M-CO-O)-で表される構造に基Ar11で表される脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基以外の環状構造を含まない。炭素数3~13の2価の脂肪族炭化水素基が有し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルコキシル基等が挙げられる。なお、置換基に含まれる炭素原子の数は、式(1)におけるMで表される脂肪族炭化水素基が有する炭素原子数に含まない。
【0048】
さらに、式(1)中のMが、置換基を有していてもよい炭素数2n(nは2~4の整数を表す)の2価の脂肪族炭化水素基であると、重合性液晶化合物の相転移温度を低下させる効果および溶解性の向上効果を十分に確保しながら、得られる液晶硬化膜がより優れた逆波長分散性を示し得る。炭素数2nの2価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数2nのアルカンジイル基が好ましく、具体的には、n-ブタンジイル基、n-ヘキサンジイル基、n-オクタンジイル基である。
【0049】
式(1)中のMは、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数3~11の2価のアルカンジイル基、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素数4~10の2価のアルカンジイル基、さらに好ましくは置換基を有していてもよい炭素数4、6または8の2価のアルカンジイル基、特に好ましくはn-ブタンジイル基、n-ヘキサンジイル基およびn-オクタンジイル基である。
【0050】
式(1)中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。置換基を有していてもよい2価の芳香族基は、2価の芳香族複素環基および2価の芳香族複素環基であってよい。本発明において、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基は、芳香族炭化水素環を少なくとも1つ含む2価の連結基を意味し、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基は、芳香族複素環を少なくとも1つ含む2価の連結基を意味する。ここでいう芳香族炭化水素環および芳香族複素環とは、該環構造が有するπ電子数がヒュッケル則に従い[4n+2]個(nは整数を表す)であるもの(芳香族複素環の場合、-N=や-S-等のヘテロ原子上の非共有結合電子対を含めてヒュッケル則を満たす)をいう。Ar11およびAr12は芳香族炭化水素環または芳香族複素環を1つ含むものであってもよく、2つ以上含むものであってもよい。芳香族炭化水素環または芳香族複素環を1つ含む場合、Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基であってもよく、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基であってもよい。芳香族炭化水素環または芳香族複素環を2つ以上含む場合、芳香族炭化水素環のみ、または芳香族複素環のみを複数個含んでいてもよく、芳香族炭化水素環と芳香族複素環とをそれぞれ1つ以上含んでいてもよい。2つ以上の芳香族炭化水素環および/または芳香族複素環は、互いに単結合、-CO-O-、-O-などの2価の結合基で結合していてもよい。
【0051】
Ar11およびAr12は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であると重合性液晶化合物(1)の工業的な製造のし易さや生産性の点で有利である。また、Ar11が複数存在する場合、複数のAr11は同一であっても異なっていてもよいが、同一の基であることが好ましく、複数のAr11とAr12が全て同一であることがより好ましい。
【0052】
Ar11およびAr12に含まれ得る芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、トリアジン環、ピロリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、およびフェナンスロリン環等が挙げられる。Ar11およびAr12に窒素原子が含まれる場合、当該窒素原子はπ電子を有することが好ましい。
【0053】
中でも、Ar11およびAr12は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選択される少なくとも2つのヘテロ原子を含む芳香族複素環を有することが好ましく、チアゾール環、ベンゾチアゾール環またはベンゾフラン環を有することがより好ましく、ベンゾチアゾール環を有することがさらに好ましい。なお、Ar11およびAr12が窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選択される少なくとも2つのヘテロ原子を含む芳香族複素環を有する場合、前記芳香族複素環は、式(1)中のG11、MまたはG12にそれぞれ隣接する-CO-O-または-O-CO-に直接結合して式(1)で表される化合物の主鎖を構成する2価の連結基を構成していてもよく、G11、MまたはG12にそれぞれ隣接する-CO-O-または-O-CO-と直接結合する2価の連結基の置換基として含まれていてもよいが、前記芳香族複素環を含むAr11またはAr12基全体が分子配向方向に対して略直交方向に立体配置していることが好ましい。
【0054】
式(1)中、Ar11およびAr12で表される置換基を有していてもよい2価の芳香族基に含まれるπ電子の合計数Nπは、それぞれ、好ましくは8以上、より好ましくは12以上、特に好ましくは16以上、とりわけ好ましくは20以上である。また、好ましくは36以下、より好ましくは32以下、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは26以下、とりわけ好ましくは24以下である。
【0055】
式(1)中のAr11およびAr12で表される置換基を有していてもよい2価の芳香族基としては、以下の式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基が挙げられる。
【0056】
【0057】
式(Ar-1)~(Ar-5)中、*は結合部を表す。
式(Ar-1)中、Q1は-S-、-O-または-NR11-を表し、R11は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。式(Ar-3)および(Ar-4)中、Q2は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
【0058】
式(Ar-2)中、W1およびW2は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-CO-、-NR11-を表し、R11は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
【0059】
式(Ar-1)中、Y1は炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。式(Ar-2)中、Y2はCN基または置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基を表す。ここで、該アルキル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルキル基に含まれる-CH2-は、-O-、-CO-、-O-CO-または-CO-O-で置換されていてもよい。
【0060】
式(Ar-1)~(Ar-5)中、Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の脂肪族炭化水素基またはアルコキシ基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6~20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR11R12または-SR11を表し、Z1およびZ2は、互いに結合して芳香環または芳香族複素環を形成してもよい。R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
【0061】
式(Ar-3)および(Ar-4)中、Axは芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香族環を有する、炭素数2~30の有機基を表し、Ayは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、または芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香族環を有する、炭素数2~30の有機基を表し、AxとAyは結合して環を形成してもよい。
【0062】
式(Ar-1)中、Y1は、好ましくは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であり、置換基を有していてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基または炭素数3~12の芳香族複素環基がより好ましい。置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または芳香族複素環基は、好ましくは置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基である。本明細書において、「多環系芳香族炭化水素基」は、少なくとも2個の芳香環を有する芳香族炭化水素基を意味し、2個以上の芳香環が縮合して形成される縮合芳香族炭化水素基および2個以上の芳香環が結合して形成される芳香族炭化水素基が挙げられる。「多環系芳香族複素環基」は、少なくとも1個の複素芳香環を有し、芳香環および複素芳香環からなる群から選ばれる少なくとも1個の環を有する芳香族複素環基を意味し、1個以上の芳香族複素環と芳香環および複素芳香環からなる群から選ばれる1個以上の環とが縮合して形成される芳香族複素環基および少なくとも1個の複素芳香環と芳香環および複素芳香環からなる群から選ばれる少なくとも1個の環とが結合して形成される芳香族複素環基が挙げられる。
【0063】
前記芳香族炭化水素基または芳香族複素環基が有し得る置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、炭素数1~6のアルキルスルフィニル基、炭素数1~6のアルキルスルホニル基、カルボキシ基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルスルファニル基、炭素数1~4のN-アルキルアミノ基、炭素数2~8のN,N-ジアルキルアミノ基、スルファモイル基、炭素数1~6のN-アルキルスルファモイル基および炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基が挙げられる。
【0064】
Y1としては、例えば、下記式(Y1-1)~(Y1-7)で表される基が挙げられる。
【0065】
【0066】
式(Y1-1)~式(Y1-7)中、*部は連結部を表す。
式(Y1-1)~式(Y1-7)中、Z4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、または炭素数1~20の有機基を表し、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、シアノ基、ニトロ基、スルホン基、ニトロキシキド基、カルボキシル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、チオメチル基、N,N-ジメチルアミノ基、N-メチルアミノ基が好ましく、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が特に好ましい。
【0067】
式(Y1-1)~式(Y1-7)中、V1およびV2は、それぞれ独立に、-CO-、-S-、-NR13-、-O-、-Se-または-SO2-を表し、-S-、-NR13-または-O-であることが好ましい。R13は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0068】
式(Y1-1)~式(Y1-7)中、W3~W7は、それぞれ独立に、-C=または-N=を表す。
式(Y1-1)~式(Y1-7)中、V1、V2およびW3~W7のうち少なくとも1つは、S、NまたはOを含む基を表すことが好ましい。
【0069】
式(Y1-1)~式(Y1-7)中、aは、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、0または1であることが好ましい。bは、それぞれ独立に、0~2の整数を表し、0であることが好ましい。
【0070】
式(Y1-1)~式(Y1-7)で表されるいずれかの基は、下記式(Y1-8)~式(Y1-13)で表されるいずれかの基であることが好ましく、式(Y1-8)で表される基であることがより好ましい。なお、*部は連結部を表す。
【0071】
【0072】
式(Y1-8)~式(Y1-13)中、Z4、a、b、V1、V2およびW3は、(Y1-1)~式(Y1-7)中のZ4、a、b、V1、V2およびW3と同じ意味を表す。
Y1の具体例としては、例えば、特開2019-003177号公報に記載の式(ar-1)~式(ar-840)で表される基が挙げられる。中でも下記式で表される基が好ましい。
【0073】
【0074】
本発明の一実施形態において、式(Ar-1)で表される基として、具体的には、下記式(Ar1-1)~(Ar1-126)で表される基が挙げられる。式中、*部は連結部を表す。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
本発明の一実施形態において、式(Ar-2)で表される基として、具体的には、下記式(Ar2-1)~(Ar2-13)で表される基が挙げられる。式中、*部は連結部を表す。
【0082】
【0083】
本発明の一実施形態において、式(Ar-3)で表される基として、具体的には、下記式(Ar3-1)~(Ar3-23)で表される基が挙げられる。式中、*部は連結部を表す。
【0084】
【0085】
【0086】
式(Ar-1)~(Ar-4)で表される基は、上記具体的に例示した基の他に、例えば、特開2011-207765号公報、特開2008-107767号公報、WO2014/010325号公報等に記載の基であってもよい。
【0087】
式(Ar-5)中、Y3およびY4は、それぞれ独立して、下記式(Y3-1)で表される基から選択される。
【0088】
【0089】
式(Y3-1)中、RY1は水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。該アルキル基は、1つ以上の置換基X3によって置換されていてもよい。
置換基X3は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルフラニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、または、1個の-CH2-または隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-に置き換えられてもよい炭素数1~20の直鎖状または分岐状アルキル基を表し、該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されてもよく、或いは、-B31-F31-P31で表される基であってもよく、B31、F31およびP31は、それぞれ、前記式(1)中のB11、F11およびP11と同様に定義され、それぞれ、式(1)中のB11、F11およびP11と同一であっても異なっていてもよい。
【0090】
置換基X3としては、好ましくはフッ素原子、塩素原子、-CF3、-OCF3またはシアノ基である。RY1は、無置換であるか、水素原子または1つ以上のフッ素原子で置換された炭素数1~6のアルキル基が好ましく、より好ましくは水素原子である。
【0091】
式(Y3-1)中、U1は、芳香族炭化水素基を有する炭素数2~30の有機基を表す。該芳香族炭化水素基の任意の炭素原子はヘテロ原子に置換されていてもよく、U1は、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基である。該芳香族炭化水素基は、1つ以上の前記置換基X3によって置換されていてもよい。
【0092】
U1は、波長分散性が良好になる点から、炭素原子の1つ以上がヘテロ原子に置換されている、芳香族複素環を有する有機基であることが好ましい。U1は、波長分散性が良好で、高い複屈折を示すようになる点から、5員環と6員環との縮合環である芳香族複素環を有する有機基であることがより好ましい。
【0093】
具体的にU1としては、以下の式で表される基を有するものであることが好ましい。なお、下記式においてこれらの基は任意の位置にT1との結合手を有している。
【0094】
【0095】
式(Y3-1)中、T1は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-NU2-、-N=CU2-、-CO-NU2-、-OCO-NU2-またはO-NU2-を表し、U2は水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基、芳香族炭化水素基(該芳香族炭化水素基の任意の炭素原子はヘテロ原子に置換されていてもよい)を有する炭素数2~30の有機基、または(E31-A31)q-B32-F32-P32を表す。該アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基および芳香族炭化水素基はそれぞれ、無置換であるかまたは1つ以上の置換基X3によって置換されていてもよく、該アルキル基は該シクロアルキル基またはシクロアルケニル基によって置換されていてもよい。該アルキル基中の1個の-CH2-または隣接していない2個以上の-CH2-は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-SO2-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-に置き換えられてもよく、該シクロアルキル基またはシクロアルケニル基中の1個の-CH2-または隣接していない2個以上の-CH2-は、それぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-またはO-CO-O-に置き換えられてもよい。E31、A31、B32、F32およびP32は、それぞれ、式(1)中のE11、A11、B11、F11およびP11と同様に定義され、それぞれ前記E11、A11、B11、F11およびP11と同一であっても異なっていてもよく、qは0~4の整数を表し、E31および/またはA31が複数存在する場合は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0096】
T1は、複屈折が良好で合成が容易な点から、-O-、-S-、-N=CU2-または-NU2-であることが好ましく、波長分散性と複屈折とを向上させやすい点から、-O-、-S-または-NU2-であることがより好ましい。
【0097】
U2は、1つ以上の前記置換基X3によって置換されていてもよく、1個の-CH2-または隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-CO-、-COO-、-OCO-または-O-CO-O-に置き換えられてもよい、炭素数1~20のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素原子数3~12のシクロアルキル基、または炭素数3~12のシクロアルケニル基、或いは、当該シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアリール基によって置換されていてもよい前記アルキル基若しくはアルケニル基であることが好ましい。
【0098】
中でもU2は、複屈折および溶剤溶解性の点から、水素原子がフッ素原子に置換されてもよく、1個の-CH2-または隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-CO-、-COO-または-OCO-に置き換えられてもよい炭素原子数1~20の直鎖状アルキル基であることがより好ましい。
【0099】
U1とU2は結合して環を構成していてもよい。その場合、例えば、-NU1U2で表される環状基、または-N=CU1U2で表される環状基が挙げられる。
原料が入手しやすく、溶解性が良好で高い複屈折率を示す点から、Y3およびY4はそれぞれ、下記の式(Y3'-1)~式(Y3'-47)から選ばれる基を表すことが特に好ましい。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
重合性液晶化合物(1)の配向性が良好になり、工業的に製造しやすく生産性を向上し得る等の観点から、式(Ar-5)で表される基としては、具体的に、以下の基が挙げられる。下記(Ar5-1)~(Ar5-20)中の*は、G11、MまたはG12にそれぞれ隣接する-CO-O-または-O-CO-との結合部を表す。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
式(Ar-1)~(Ar-5)の中でも、式(Ar-1)、(Ar-2)、(Ar-5)が好ましく、式(Ar-1)、(Ar-5)がより好ましく、式(Ar-1)がさらに好ましい。
【0108】
式(1)中の、*-O-CO-G11-E11-(A11-B11)k11-F11-P11、および、*-O-CO-G12-E12-(A12-B12)k12-F12-P12の具体例としては、式(R-1)~(R-100)で表される構造が挙げられる。
【0109】
式中*は、Ar11またはAr12への結合手を表し、nは2~12の整数を表す。なお、シクロヘキサン環はトランス体であってもシス体であってもよいが、トランス体であることが好ましい。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
本発明の重合性液晶組成物は、本発明の重合性液晶化合物(1)の混合物(A)と、式(2):
【0120】
【0121】
[式(2)中、
k21およびk22は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す;
B21およびB22は、それぞれ独立に、-CR1R2-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR1-、-NR2-CO-、-O-CH2-、-CH2-O-、-S-CH2-、-CH2-S-または単結合を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0122】
E21およびE22は、それぞれ独立に、-CR1R2-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR1-、-NR2-CO-、-O-CH2-、-CH2-O-、-S-CH2-、-CH2-S-または単結合を表す;
G21およびG22は、それぞれ独立に、炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R3、-OR3、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよく、R3は、炭素数1~4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい;
A21およびA22は、それぞれ独立に、炭素数3~16の2価の脂環式炭化水素基、または炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基および該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R3、-OR3、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよい;
F21およびF22は、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、-OR3またはハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH2-は、-O-または-CO-で置き換わっていてもよい;
P21およびP22は、それぞれ独立に、水素原子または重合性基を表す(ただし、P21およびP22のうち少なくとも1つは重合性基である);
Ar21は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。]で表される重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(2)」ともいう)を含む。重合性液晶化合物(1)の混合物(A)と重合性液晶化合物(2)とを組み合わせて用いることにより、配向欠陥の発生を抑制しながら、重合性液晶化合物(2)の相転移温度を効果的に低下させることができる。この理由は明らかではないが、本発明の重合性液晶化合物(1)の混合物(A)と、重合性液晶化合物(2)とが互いに類似する構造単位を有している場合、式(1)中のMが脂肪族炭化水素基であって、高い分子の柔軟性を有する重合性液晶化合物(1)の混合物(A)により、互いの相溶性が高まり、このような状態であることによって、含まれる2種の重合性液晶化合物の高い配向秩序を維持しながら相転移温度を大きく低下させることができると考えられる。低い温度で相転移が可能であると、より低い加工温度で重合性液晶化合物から液晶硬化膜を作製することができ、このような液晶硬化膜は加熱による影響を低減できる。特に、配向欠陥の発生を抑制するとともに、光学特性を損なうことなく重合性液晶化合物〔重合性液晶化合物(1)および(2)の混合物として〕の相転移温度を低下させやすい観点からは、本発明の重合性液晶化合物(1)の-O-CO-G11-E11-(A11-B11)k11-F11-P11、および、-O-CO-G12-E12-(A12-B12)k12-F12-P12と、重合性液晶化合物(2)の-O-CO-G21-E21-(A21-B21)k21-F21-P21、および、-O-CO-G22-E22-(A22-B22)k22-F22-P22とが互いに類似する構造単位を有することが好ましい。
【0123】
式(2)中のk21およびk22は、それぞれ独立に、1以上の整数を表し、例えば1~5の整数であってよい。k21とk22との和は、好ましくは2~6、より好ましくは2~4である。液晶性に優れる観点から、k21およびk22は、それぞれ独立に、1または2であることが好ましく、重合性液晶化合物(2)の製造のし易さの観点から、k21とk22とが同じ数であることが好ましく、本発明の好適な一実施態様において、k21とk22はともに1である。また、液晶性に優れる観点から、式(1)中のk11、k12と、式(2)中のk21、k22とが全て同じ数であることが好ましく、全て1であることがより好ましい。
【0124】
式(2)中の、B21、B22、E21、E22、G21、G22、A21、A22、F21、F22、P21およびP22で表される基としては、それぞれ、式(1)中のB11、B12、E11、E12、G11、G12、A11、A12、F11、F12、P11およびP12で表される基として例示したものと同様の基が挙げられ、それぞれの好適な態様についても同様である。また、式(2)中のAr21で表される基としては、式(1)中のAr11、Ar12で表される基として例示したものと同様の基が挙げられ、その好適な態様についても同様にあてはまる。
【0125】
式(1)中のA11、A12、B11、B12、E11、E12、F11、F12、G11、G12、P11およびP12で表される基が、それぞれ、式(2)中のA21、A22、B21、B22、E21、E22、F21、F22、G21、G22、P21およびP22で表される基と同一であり、式(1)中のAr11およびAr12で表される基が、それぞれ、式(2)中のAr21で表される基と同一であることが好ましい。式(1)中の上記基と式(2)中の上記基とがかかる関係にあると、重合性液晶化合物(1)と重合性液晶化合物(2)との相溶性が高まりやすく、配向欠陥を抑制しながら相転移温度が大きく低下しやすくなる。
【0126】
本発明の重合性液晶組成物における、重合性液晶化合物(1)および重合性液晶化合物(2)の含有量は、重合性液晶化合物(1)および/または重合性液晶化合物(2)の種類等に応じて、本発明の効果が得られる範囲において適宜決定すればよいが、液体クロマトグラフィーによって測定される、重合性液晶化合物(1)と重合性液晶化合物(2)との全ピーク面積に対する重合性液晶化合物(1)のピーク面積の割合(以下、「面積百分率値」ともいう)が0.1%以上70%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上である。重合性液晶化合物(1)の含有量が上記下限値以上であると、重合性液晶化合物の溶剤に対する溶解性が向上しやすく、相転移温度が十分に低下しやすくなる。また、重合性液晶化合物(1)の含有量が上記上限値以下であると、該重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物から液晶硬化膜を作製する際の液晶の配向状態を良好に保つことができるため、光学特性に優れる光学フィルムを得ることができる。なお、重合性液晶化合物(1)および/または重合性液晶化合物(2)に相当する重合性液晶化合物が複数含まれる場合、重合性液晶化合物(1)の面積百分率値は、全重合性液晶化合物(1)と、全重合性液晶化合物(2)との全ピーク面積に対して算出される。面積百分率値は、液体クロマトグラフィーによって測定されるピーク面積に基づき算出することができ、詳細には、後述する実施例に記載の方法により測定、算出できる。
【0127】
本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)と重合性液晶化合物(2)とを組み合わせて含むことにより、重合性液晶化合物(2)を単独で用いる場合と比較して相転移温度を大きく低下し得る。例えば、本発明の重合性液晶組成物を構成する重合性液晶化合物(1)の混合物(A)と重合性液晶化合物(2)との液晶混合物としての相転移温度は、好ましくは153℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは145℃以下である。また、本発明の重合性液晶化合物(1)の混合物(A)は、重合性液晶化合物(2)と組み合わせて用いた場合に、重合性液晶化合物(2)を単独で用いる場合と比較して相転移温度を、好ましくは8℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは12℃以上、特に好ましくは15℃以上低下させることができる。
【0128】
なお、本発明において、重合性液晶化合物の相転移温度は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。2種以上の重合性液晶化合物を含む場合、上記相転移温度は、該重合性液晶組成物を構成する重合性液晶化合物と同じ組成からなる重合性液晶化合物(混合物)を用いて測定される。
【0129】
さらに、本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)と重合性液晶化合物(2)とを組み合わせて含むことにより、重合性液晶化合物(2)を単独で用いる場合と比較して、重合性液晶化合物の溶剤に対する溶解性を高める効果に優れる。
【0130】
本発明の重合性液晶組成物を構成する重合性液晶化合物(1)および重合性液晶化合物(2)の製造方法は特に限定されず、それぞれ、Methoden der Organischen Chemie、Organic Reactions、OrganicSyntheses、Comprehensive Organic Synthesis、新実験化学講座等に記載されている公知の有機合成反応(例えば、縮合反応、エステル化反応、ウイリアムソン反応、ウルマン反応、ウイッティヒ反応、シッフ塩基生成反応、ベンジル化反応、薗頭反応、鈴木-宮浦反応、根岸反応、熊田反応、檜山反応、ブッフバルト-ハートウィッグ反応、フリーデルクラフト反応、ヘック反応、アルドール反応等)を、その構造に応じて、適宜組み合わせることにより、製造することができる。
【0131】
例えば、式(1)中のA11とA12、B11とB12、E11とE12、F11とF12、G11とG12、P11とP12、Ar11とAr12とがそれぞれ同一である重合性液晶化合物(1)は、式(1-1)で表される化合物(以下、「化合物(1-1)」ともいう)と、式(1-2)で表される化合物(以下、「化合物(1-2)」ともいう)と、式(1-3)で表される化合物(以下、「化合物(1-3)」ともいう)とをエステル化反応させることにより製造できる。なお、式(1-1)におけるP、F、B、A、EおよびGは、それぞれ、式(1)中のP11とP12、F11とF12、B11とB12、A11とA12、E11とE12、G11とG12として規定されたものと同一である。また前記式(1-2)におけるM、および、式(1-3)におけるArは、それぞれ、式(1)中のM、Ar11、Ar12として規定されたものと同一である。P、F、B、A、E、GおよびArは、所望する重合性液晶化合物(1)および重合性液晶化合物(2)に対応して決定される。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
化合物(1-1)~(1-3)の反応は、縮合剤の存在下に実施することが好ましい。
縮合剤としては、例えば、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリノエチル)カルボジイミドメト-パラ-トルエンスルホネート、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(一部水溶性カルボジイミド:WSCとして市販されている)、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド等のカルボジイミド、2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物、2,2'-カルボニルビス-1H-イミダゾール、1,1'-オキサリルジイミダゾール、ジフェニルホスフォリルアジド、1-(4-ニトロベンゼンスルフォニル)-1H-1、2、4-トリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N',N'-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート、N-(1,2,2,2-テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)スクシンイミド、N-カルボベンゾキシスクシンイミド、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2-ブロモ-1-エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムクロリド、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート、2-クロロ-1-メチルピリジニウムアイオダイド、2-クロロ-1-メチルピリジニウム パラートルエンスルホネート、2-フルオロ-1-メチルピリジニウム パラートルエンスルホネート、トリクロロ酢酸ペンタクロロフェニルエステル等が挙げられる。
【0136】
反応性、コスト、使用できる溶剤の選択肢が多いという点で、縮合剤としてはジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド、2,2'-カルボニルビス-1H-イミダゾールが好ましい。
【0137】
重合性液晶化合物(2)は、例えば、前記化合物(1-1)と化合物(1-3)とを反応させることにより製造し得る。
本発明において、重合性液晶組成物を構成する重合性液晶化合物(1)の混合物(A)および重合性液晶化合物(2)は、それぞれを別々に調製した後、混合することによって液晶混合物として用いてもよい。また、前記化合物(1-1)~化合物(1-3)を適当な比率で反応させることにより、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)および重合性液晶化合物(2)を液晶混合物として得ることもできる。得られた液晶混合物から各重合性液晶化合物を単離することなく、必要に応じて、該液晶混合物と重合性液晶化合物(1)とを混合する、または該液晶混合物と重合性液晶化合物(2)とを混合すること等により、前記液晶混合物中の重合性液晶化合物(1)と重合性液晶化合物(2)の含有量を制御することによって、所望の重合性液晶混合物を調製することができる。
【0138】
前者の方法により調製すると、重合性液晶化合物(1)や重合性液晶化合物(2)の含有量を所望の範囲に調整しやすく、重合性液晶化合物の溶剤溶解性を制御しやすい。一方、後者の方法により重合性液晶混合物を調製すると、合成が簡便であり、重合性液晶組成物をより効率的に製造し得る。
【0139】
重合性液晶化合物(1)の混合物(A)と重合性液晶化合物(2)とを液晶混合物として調製する場合、反応に供する化合物(1-2)の使用量は、化合物(1-1)100質量部に対して0.01質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。また、反応に供する化合物(1-3)の使用量は、化合物(1-1)100質量部に対して1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、10質量部以上65質量部以下であることがより好ましい。前記範囲において化合物(1-1)、化合物(1-2)および化合物(1-3)の量を調整することにより、所望の比率で重合性液晶化合物(1)の混合物(A)と重合性液晶化合物(2)とを含む液晶混合物を調製しやすい。
【0140】
本発明の重合性液晶組成物は、本発明の効果に影響を及ぼさない限りにおいて、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)および重合性液晶化合物(2)以外の重合性液晶化合物を含んでいてもよい。そのような重合性液晶化合物としては、例えば、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物、特開2010-31223号公報に記載された化合物、特開2011-207765号公報、特許第5962760号公報等記載されるような、液晶硬化膜にした場合に逆波長分散性を発現し得る重合性液晶化合物や、正波長分散性を発現し得る重合性液晶化合物などが挙げられる。
【0141】
本発明の重合性液晶組成物が重合性液晶化合物(1)の混合物(A)および重合性液晶化合物(2)以外の重合性液晶化合物を含む場合、その含有量は、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)および重合性液晶化合物(2)の合計100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。特に、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)や重合性液晶化合物(2)と分子構造の大きく異なる液晶化合物の含有量が多くなり過ぎると、相分離を引き起こし、外観を損なうおそれがあるため、本発明の重合性液晶組成物を構成する重合性液晶化合物は、重合性液晶化合物(1)と類似する構造を有する重合性液晶化合物から実質的に構成されることが好ましい。なお、前記「類似する」とは、例えば、重合性液晶化合物(1)の-O-CO-G11-E11-(A11-B11)k11-F11-P11、-O-CO-G12-E12-(A12-B12)k12-F12-P12で表される部分やAr11またはAr12で表される部分と共通する構造を有する場合をいい、前記「実質的に構成される」とは、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)および重合性液晶化合物(2)の含有量が本発明の重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物の総質量に対して90質量%以上であることをいう。本発明の一態様において、重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)および重合性液晶化合物(2)以外の重合性液晶化合物を含まない。
【0142】
本発明の重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量(全ての重合性液晶化合物の総量)は、重合性液晶組成物の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは85~98質量部であり、さらに好ましくは90~95質量部である。重合性液晶化合物の総質量が上記範囲内であれば、得られる液晶硬化膜の配向性の観点から有利である。なお、本明細書において、重合性液晶化合物には、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)、重合性液晶化合物(2)、並びに、含まれる場合にはこれらとは異なる他の重合性液晶化合物が含まれる(以下、これらをあわせて「重合性液晶混合物」ともいう)。重合性液晶組成物の固形分とは、重合性液晶組成物から有機溶剤等の揮発性成分を除いた全ての成分を意味する。
【0143】
本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)および重合性液晶化合物(2)に加えて、有機溶剤、光重合開始剤、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0144】
本発明において重合性液晶混合物は、通常、溶剤に溶解した状態で基材等に塗布されるため溶剤を含むことが好ましい。溶剤としては、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)および重合性液晶化合物(2)等の重合性液晶化合物を溶解し得る溶剤が好ましく、また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)と重合性液晶化合物(2)とを組み合わせて含むことにより、重合性液晶化合物(2)を単独で溶剤に溶解させる場合と比較して重合性液晶化合物(2)の溶剤溶解性を顕著に向上させ得る。このため、種々の溶剤を適用可能となる。溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノールおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートおよび乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサンおよびヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶剤;トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフランおよびジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルムおよびクロロベンゼン等の塩素含有溶剤;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独または2種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、有機溶剤が好ましく、アルコール溶剤、エステル溶剤、ケトン溶剤、塩素含有溶剤、アミド系溶剤および芳香族炭化水素溶剤がより好ましく、生産性の観点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびN-メチルピロリドンからなる群から選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
【0145】
重合性液晶組成物中の溶剤の含有量は、重合性液晶組成物100質量部に対して、好ましくは50~98質量部、より好ましくは50~95質量部である。従って、重合性液晶組成物100質量部に占める固形分は、2~50質量部が好ましく、5~50質量部がより好ましい。固形分が50質量部以下であると、重合性液晶組成物の粘度が低くなることから、膜の厚みが略均一になり、ムラが生じ難くなる傾向がある。上記固形分は、製造しようとする液晶硬化膜の厚みを考慮して適宜定めることができる。本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)と重合性液晶化合物(2)とを組み合わせて含むことにより、溶剤に対する溶解性に優れるため、塗工時および保存時等に使用する有機溶剤の量を減らすことができる点においても有利である。
【0146】
本発明の重合性液晶組成物は光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤は、光の寄与によって反応活性種を生成し、重合性液晶等の重合反応を開始し得る化合物である。反応活性種としては、ラジカル、カチオンまたはアニオン等の活性種が挙げられる。中でも反応制御が容易であるという観点から、光照射によってラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤として、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0147】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンジルケタール化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩等が挙げられる。具体的には、イルガキュア(Irgacure、登録商標)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア127、イルガキュア2959、イルガキュア754、イルガキュア379EG(以上、BASFジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI-6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーN-1717、アデカオプトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930(以上、株式会社ADEKA製)、TAZ-A、TAZ-PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)およびTAZ-104(三和ケミカル社製)が挙げられる。
【0148】
本発明において、重合性液晶混合組成物は少なくとも1種の光重合開始剤を含むことが好ましく、2種以上の光重合開始剤を含んでいてもよい。
光重合開始剤は、光源から発せられるエネルギーを十分に活用でき、生産性に優れるため、極大吸収波長が300nm~400nmであると好ましく、300nm~380nmであるとより好ましく、中でも、α-アセトフェノン系重合開始剤、オキシム系光重合開始剤が好ましい。
【0149】
α-アセトフェノン化合物としては、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オンおよび2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-(4-メチルフェニルメチル)ブタン-1-オン等が挙げられ、より好ましくは2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オンおよび2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オンが挙げられる。α-アセトフェノン化合物の市販品としては、イルガキュア369、379EG、907(以上、BASFジャパン(株)製)およびセイクオールBEE(精工化学社製)等が挙げられる。
【0150】
オキシム系光重合開始剤は、光が照射されることによってメチルラジカルを生成させる。このメチルラジカルにより、形成される液晶硬化膜深部における重合性液晶化合物の重合が好適に進行する。また、形成される液晶硬化膜深部での重合反応をより効率的に進行させるという観点から、波長350nm以上の紫外線を効率的に利用可能な光重合開始剤を使用することが好ましい。波長350nm以上の紫外線を効率的に利用可能な光重合開始剤としては、トリアジン化合物やオキシムエステル型カルバゾール化合物が好ましく、感度の観点からはオキシムエステル型カルバゾール化合物がより好ましい。オキシムエステル型カルバゾール化合物としては、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。オキシムエステル型カルバゾール化合物の市販品としては、イルガキュアOXE-01、イルガキュアOXE-02、イルガキュアOXE-03(以上、BASFジャパン株式会社製)、アデカオプトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831(以上、株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
【0151】
光重合開始剤の添加量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常、0.1質量部~30質量部であり、好ましくは0.5質量部~20質量部であり、より好ましくは1質量部~15質量部である。上記範囲内であれば、重合性基の反応が十分に進行し、かつ、重合性液晶化合物の配向を乱し難い。
【0152】
増感剤を用いることにより、光重合開始剤を高感度化することができる。光増感剤としては、例えば、キサントン、チオキサントン等のキサントン類;アントラセンおよびアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類;フェノチアジン;ルブレンが挙げられる。光増感剤としては、例えば、キサントン、チオキサントン等のキサントン類;アントラセンおよびアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類;フェノチアジン;ルブレンが挙げられる。光増感剤の含有量は、重合性液晶化合物の総量100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.05~5質量部であり、さらに好ましくは0.1~3質量部である。
【0153】
重合禁止剤を配合することにより、重合性液晶化合物の重合反応をコントロールすることができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノンおよびアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類;ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類;ピロガロール類、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補捉剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類およびβ-ナフトール類が挙げられる。配向を乱すことなく重合性液晶化合物(1)を重合するためには、重合禁止剤の含有量は、重合性液晶化合物の総量100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.1~5質量部であり、さらに好ましくは0.1~3質量部である。
【0154】
さらに、本発明の重合性液晶組成物はレベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤は、重合性液晶組成物の流動性を調整し、これを塗布して得られる膜をより平坦にする機能を有する添加剤であり、例えば、シリコーン系、ポリアクリレート系およびパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。具体的には、DC3PA、SH7PA、DC11PA、SH28PA、SH29PA、SH30PA、ST80PA、ST86PA、SH8400、SH8700、FZ2123(以上、全て東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22-161A、KF6001(以上、全て信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF-4446、TSF4452、TSF4460(以上、全てモメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ジャパン合同会社製)、フロリナート(fluorinert)(登録商標)FC-72、同FC-40、同FC-43、同FC-3283(以上、全て住友スリーエム(株)製)、メガファック(登録商標)R-08、同R-30、同R-90、同F-410、同F-411、同F-443、同F-445、同F-470、同F-477、同F-479、同F-482、同F-483(以上、いずれもDIC(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(以上、全て三菱マテリアル電子化成(株)製)、サーフロン(登録商標)S-381、同S-382、同S-383、同S-393、同SC-101、同SC-105、KH-40、SA-100(以上、全てAGCセイミケミカル(株)製)、商品名E1830、同E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM-1000、BM-1100、BYK-352、BYK-353およびBYK-361N(いずれも商品名:BM Chemie社製)等が挙げられる。中でも、ポリアクリレート系レベリング剤およびパーフルオロアルキル系レベリング剤が好ましい。
【0155】
重合性液晶組成物におけるレベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物の総量100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がさらに好ましい。レベリング剤の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物を配向させることが容易であり、かつ得られる液晶硬化膜がより平滑となる傾向があるため好ましい。重合性液晶組成物は、レベリング剤を2種類以上含有していてもよい。
【0156】
本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)および重合性液晶化合物(2)に、必要に応じて、溶剤、光重合開始剤、重合禁止剤、光増感剤またはレベリング剤などの添加剤を加えて、所定温度で撹拌混合すること等により調製することができる。
【0157】
<位相差フィルム>
本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物の相転移温度が低く、より低い加工温度において液晶硬化膜を作製することができるため、加熱による影響を低減して光学特性に優れる液晶硬化膜を得ることができる。また、溶剤に対する溶解性が高く、塗布性および製膜性に優れるため、未溶解の重合性液晶化合物や組成物中の沈殿物や析出物等に起因する配向欠陥の発生を抑制することができる。このため、本発明の重合性液晶組成物を用いることにより、重合性液晶化合物が本来発現し得る光学特性を低下させることなく製膜化することが可能となり、優れた光学特性を有した液晶硬化膜を得ることができる。したがって、本発明は、本発明の重合性液晶組成物の硬化物、特に、該重合性液晶組成物の硬化物であって、該重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物(1)の混合物(A)および重合性液晶化合物(2)が配向した状態で硬化してなる液晶硬化膜を含む位相差フィルムにも関する。前記液晶硬化膜から構成される位相差フィルムは、用いる重合性液晶化合物が本来発揮し得る光学特性を十分に発現することができ、高い光学性能を有する位相差フィルムとなり得る。
【0158】
本発明の位相差フィルムを構成する液晶硬化膜は、配向状態の重合性液晶化合物(1)のホモポリマーと、重合性液晶化合物(2)のホモポリマーとから構成されていてもよく、また、重合性液晶化合物(1)および重合性液晶化合物(2)の混合物の配向状態における共重合体から構成されていてもよい。重合反応が容易であり、均一な液晶硬化膜を得やすいため、本発明の位相差フィルムを構成する液晶硬化膜は、重合性液晶化合物(1)および重合性液晶化合物(2)の混合物の配向状態における共重合体から構成されていることが好ましい。
【0159】
本発明の一態様において、本発明の位相差フィルムは、本発明の重合性液晶組成物の硬化物であり、下記式(i)、(ii)および(iii)で表される光学特性を有する液晶硬化膜を含む。該液晶硬化膜は、通常、重合性液晶化合物が該液晶硬化膜平面に対して水平方向に配向した状態で硬化してなる硬化物(以下、「水平配向液晶硬化膜」ともいう)である。
【0160】
Re(450)/Re(550)≦1.00 (i)
1.00≦Re(650)/Re(550) (ii)
100nm≦Re(550)≦180nm (iii)
〔式中、Re(λ)は液晶硬化膜の波長λnmにおける面内位相差値を表し、Re=(nx(λ)-ny(λ))×dである(dは液晶硬化膜の厚みを表し、nxは、液晶硬化膜が形成する屈折率楕円体において、液晶硬化膜の平面に平行な方向の波長λnmにおける主屈折率を表し、nyは、液晶硬化膜が形成する屈折率楕円体において、液晶硬化膜の平面に対して平行であり、且つ、前記nxの方向に対して直交する方向の波長λnmにおける屈折率を表す)。〕
水平配向液晶硬化膜が式(i)および(ii)を満たす場合、当該水平配向液晶硬化膜は、短波長での面内位相差値が長波長での面内位相差値よりも小さくなる、いわゆる逆波長分散性を示す。逆波長分散性が向上し、位相差フィルムの光学特性がより向上することから、Re(450)/Re(550)は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.78以上であり、また、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.88以下、さらに好ましくは0.86以下、特に好ましくは0.85以下、とりわけ好ましくは0.84以下である。また、Re(650)/Re(550)は、好ましくは1.00以上、より好ましくは1.01以上であり、さらに好ましくは1.02以上である。
【0161】
上記面内位相差値は、水平配向液晶硬化膜の厚みdによって調整することができる。面内位相差値は、上記式Re(λ)=(nx(λ)-ny(λ))×dによって決定されることから、所望の面内位相差値(Re(λ):波長λ(nm)における水平配向液晶硬化膜の面内位相差値)を得るには、3次元屈折率と膜厚dとを調整すればよい。
【0162】
また、水平配向液晶硬化膜が式(iii)を満たす場合、該水平配向液晶硬化膜を含む位相差フィルムを備える楕円偏光板を有機EL表示装置に適用した場合の正面反射色相の向上効果(着色を抑制させる効果)に優れる。面内位相差値のより好ましい範囲は、120nm≦Re(550)≦170nmであり、さらに好ましい範囲は130nm≦Re(550)≦150nmである。
【0163】
本発明の一態様において、本発明の位相差フィルムは、本発明の重合性液晶組成物の硬化物であり、下記式(iv)、(v)および(vi)で表される光学特性を有する液晶硬化膜を含む。該液晶硬化膜は、通常、重合性液晶化合物が該液晶硬化膜平面に対して垂直方向に配向した状態で硬化してなる硬化物(以下、「垂直配向液晶硬化膜」ともいう)である。
【0164】
Rth(450)/Rth(550)≦1.00 (iv)
1.00≦Rth(650)/Rth(550) (v)
-100nm≦Rth(550)≦-40nm (vi)
〔式中、Rth(λ)は液晶硬化膜の波長λnmにおける厚み方向の位相差値を表し、Rth=((nx(λ)+ny(λ))/2-nz)×dである(dは液晶硬化膜の厚みを表し、nxは、液晶硬化膜が形成する屈折率楕円体において、液晶硬化膜の平面に平行な方向の波長λnmにおける主屈折率を表し、nyは、液晶硬化膜が形成する屈折率楕円体において、液晶硬化膜の平面に対して平行であり、且つ、前記nxの方向に対して直交する方向の波長λnmにおける屈折率を表し、nzは、液晶硬化膜が形成する屈折率楕円体において、液晶硬化膜の平面に対して垂直な方向の波長λnmにおける屈折率を表す)。〕
垂直配向液晶硬化膜が式(iv)および(v)を満たす場合、当該垂直配向液晶硬化膜を含む位相差フィルムを備える楕円偏光板において、短波長側で楕円率の低下を抑制することができ、斜方反射色相を向上させることができる。垂直配向液晶硬化膜におけるRth(450)/Rth(550)の値は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.78以上であり、また、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.88以下、さらに好ましくは0.86以下、特に好ましくは0.85以下、とりわけ好ましくは0.84以下である。また、Rth(650)/Rth(550)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.01以上であり、さらに好ましくは1.02以上である。
【0165】
また、垂直配向液晶硬化膜が式(vi)を満たす場合、該垂直配向液晶硬化膜を含む位相差フィルムを備える楕円偏光板を有機EL表示装置に適用した場合の斜方反射色相を向上させることができる。垂直配向液晶硬化膜の膜厚方向の位相差値Rth(550)は、より好ましくは-90nm以上、さらに好ましくは-80nm以上であり、また、より好ましくは-50nm以下である。
【0166】
本発明の位相差フィルムは、例えば、本発明の重合性液晶組成物の塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、かつ、該重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物を配向させる工程、および、配向状態を保持したまま光照射により重合性液晶化合物を重合させ、液晶硬化膜を形成する工程を含む方法により製造することができる。
【0167】
重合性液晶組成物の塗膜は、基材上または後述する配向膜上などに重合性液晶組成物を塗布することにより形成することができる。
基材としては、例えば、ガラス基材やフィルム基材等が挙げられるが、加工性の観点から樹脂フィルム基材が好ましい。フィルム基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびノルボルネン系ポリマーのようなポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、およびセルロースアセテートプロピオネートのようなセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシドのようなプラスチックが挙げられる。このような樹脂を、溶媒キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜して基材とすることができる。基材表面には、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等から形成される保護層を有していてもよく、シリコーン処理のような離型処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0168】
基材として市販の製品を用いてもよい。市販のセルロースエステル基材としては、例えば、フジタックフィルムのような富士写真フィルム株式会社製のセルロースエステル基材;「KC8UX2M」、「KC8UY」、および「KC4UY」のようなコニカミノルタオプト株式会社製のセルロースエステル基材などが挙げられる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、たとえば、「Topas(登録商標)」のようなTicona社(独)製の環状オレフィン系樹脂;「アートン(登録商標)」のようなJSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂;「ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)」、および「ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)」のような日本ゼオン株式会社製の環状オレフィン系樹脂;「アペル」(登録商標)のような三井化学株式会社製の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、「エスシーナ(登録商標)」および「SCA40(登録商標)」のような積水化学工業株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材;「ゼオノアフィルム(登録商標)」のようなオプテス株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材;「アートンフィルム(登録商標)」のようなJSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材が挙げられる。
【0169】
位相差フィルムの薄型化、基材の剥離容易性、基材のハンドリング性等の観点から、基材の厚みは、通常、5~300μmであり、好ましくは10~150μmである。
重合性液晶組成物を基材等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法等の公知の方法が挙げられる。
【0170】
次いで、溶剤を乾燥等により除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。この際、重合性液晶組成物から得られた塗膜を加熱することにより、塗膜から溶剤を乾燥除去させるとともに、重合性液晶化合物を塗膜平面に対して所望の方向(例えば、水平または垂直方向)に配向させることができる。塗膜の加熱温度は、用いる重合性液晶化合物および塗膜を形成する基材等の材質などを考慮して適宜決定し得るが、重合性液晶化合物を液晶相状態へ相転移させるために、通常、液晶相転移温度以上の温度であることが必要である。重合性液晶組成物に含まれる溶剤を除去しながら、重合性液晶化合物を所望の配向状態とするため、例えば、前記重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物の液晶相転移温度(スメクチック相転移温度またはネマチック相転移温度)程度以上の温度まで加熱することができる。
【0171】
本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物(1)の混合物(A)および重合性液晶化合物(2)を含んでおり、通常、それぞれ単独の重合性液晶化合物(1)の混合物(A)および重合性液晶化合物(2)が液晶相へ転移する温度よりも低い温度で液晶相転移することができる。本発明の一態様において、本発明の重合性液晶組成物を構成する重合性液晶混合物の固体-液晶相転移温度は、好ましくは25℃以上153℃以下である。液晶相への相転移温度が前記範囲内であると、より低い加工温度で液晶硬化膜を作製することができ、加熱による光学特性の低下を抑えながら、重合性液晶化合物が本来示し得る高い光学特性を有する液晶硬化膜を得ることができる。また、本発明の重合性液晶組成物を用いた位相差フィルムの製造においては、熱エネルギーの過剰な消費を抑えることができ、生産効率を向上させることができる。さらに、比較的低い温度での加熱により液晶相転移を行えることにより、重合性液晶組成物を塗布する支持基材の選択肢が広がるといった利点もある。本発明において、重合性液晶混合物の固体-液晶相転移温度は、得られる液晶硬化膜が逆波長分散特性を示し得る化合物であるという観点から通常40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、また、本発明のより顕著な効果を達成する観点から、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは145℃以下、特に好ましくは144℃以下である。
【0172】
なお、液晶相転移温度は、例えば、温度調節ステージを備えた偏光顕微鏡や、示差走査熱量計(DSC)、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)等を用いて測定することができる。少なくとも2種の重合性液晶化合物を含む本発明の重合性液晶混合物における上記相転移温度は、重合性液晶混合物を構成する全重合性液晶化合物を重合性液晶混合物における組成と同じ比率で混合した重合性液晶化合物の混合物を用いて測定される温度を意味する。
【0173】
加熱時間は、加熱温度、用いる重合性液晶化合物の種類、溶剤の種類やその沸点およびその量等に応じて適宜決定し得るが、通常、15秒~10分であり、好ましくは0.5~5分である。
【0174】
塗膜からの溶剤の除去は、重合性液晶化合物の液晶相転移温度以上への加熱と同時に行ってもよいし、別途で行ってもよいが、生産性向上の観点から同時に行うことが好ましい。重合性液晶化合物の液晶相転移温度以上への加熱を行う前に、重合性液晶組成物から得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で塗膜中の溶剤を適度に除去させるための予備乾燥工程を設けてもよい。かかる予備乾燥工程における乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられ、該乾燥工程における乾燥温度(加熱温度)は、用いる重合性液晶化合物の種類、溶剤の種類やその沸点およびその量等に応じて適宜決定し得る。
【0175】
次いで、得られた乾燥塗膜において、重合性液晶化合物の配向状態を保持したまま、光照射により重合性液晶化合物を重合させることにより、所望の配向状態で存在する重合性液晶化合物の重合体である液晶硬化膜が形成される。本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物に対する損傷を抑えながら、高強度の紫外線等の光照射により高度に重合させることが可能であるため、重合方法としては、通常、光重合法が用いられる。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、当該乾燥塗膜に含まれる重合開始剤の種類、重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群より選択される1種以上の光や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって、光重合可能なように、重合性液晶組成物に含有される重合性液晶化合物や重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら光照射することで、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても、適切に液晶硬化膜を形成できる。また、光照射時の熱による不具合(基材の熱による変形等)が発生しない範囲で重合温度を高くすることにより重合反応を促進することも可能である。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた硬化膜を得ることもできる。
【0176】
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0177】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cm2である。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは0.1秒~5分、より好ましくは0.1秒~3分、さらに好ましくは0.1秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、10~3,000mJ/cm2、好ましくは50~2,000mJ/cm2、より好ましくは100~1,000mJ/cm2である。
【0178】
液晶硬化膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.2~3μm、より好ましくは0.2~2μmである。
重合性液晶組成物の塗膜は配向膜上に形成されてもよい。配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。例えば、重合性液晶化合物を水平方向に配向させる配向規制力を有する水平配向膜、垂直方向に配向させる配向規制力を有する垂直配向膜がある。配向規制力は、配向膜の種類、表面状態やラビング条件等によって任意に調整することが可能であり、配向膜が光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。
【0179】
配向膜としては、重合性液晶組成物の塗布等により溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や後述する重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜および表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、配向角の精度および品質の観点から光配向膜が好ましい。
【0180】
配向性ポリマーとしては、例えば、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル類が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。配向性ポリマーは単独または2 種以上を組み合わせて使用できる。
【0181】
配向性ポリマーを含む配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、「配向性ポリマー組成物」ということがある)を基材に塗布し、溶剤を除去する、または、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶剤を除去し、ラビングする(ラビング法)ことで得られる。溶剤としては、重合性液晶組成物に用い得る溶剤として先に例示した溶剤と同様のものが挙げられる。
【0182】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が、溶剤に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1~20%が好ましく、0.1~10%程度がさらに好ましい。
【0183】
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)、オプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
【0184】
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、重合性液晶組成物を基材へ塗布する方法として例示したものと同様のものが挙げられる。
配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0185】
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じてラビング処理を行うことができる(ラビング法)。ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を接触させる方法が挙げられる。ラビング処理を行う時に、マスキングを行えば、配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を配向膜に形成することもできる。
【0186】
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーと溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ともいう)を基材に塗布し、溶剤を除去後に偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御することができる点でも有利である。
【0187】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応または光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する基が特に好ましい。
【0188】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、および、アゾキシベンゼン構造を有する基等が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0189】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0190】
光配向膜形成用組成物を基材上に塗布することにより、基材上に光配向誘起層を形成することができる。該組成物に含まれる溶剤としては、重合性液晶組成物に用い得る溶剤として先に例示した溶剤と同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0191】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの含有量は、ポリマーまたはモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、光配向膜形成用組成物の質量に対して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコールやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0192】
光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去する方法としては例えば、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0193】
偏光を照射するには、基材上に塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去したものに直接、偏光UVを照射する形式でも、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レーザーなどが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプが、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラーなどの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0194】
なお、ラビングまたは偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターンまたは複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に重合性液晶化合物を塗布した場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
【0195】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像およびリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、形成された樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、および、基材に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。
【0196】
さらに、重合性液晶化合物を液晶硬化膜平面に対して垂直方向に配向させる配向規制力を示す材料としては、上述した配向性ポリマー等の他にパーフルオロアルキル等のフッ素系ポリマーおよびシラン化合物並びにそれらの縮合反応により得られるポリシロキサン化合物などを用いてもよい。
【0197】
配向膜を形成する材料としてシラン化合物を使用する場合には、表面張力を低下させやすく、配向膜に隣接する層との密着性を高めやすい観点から、構成元素にSi元素とC元素とを含む化合物が好ましく、シラン化合物を好適に使用することができる。シラン化合物としてはシラン含有イオン性化合物等が使用可能であり、このようなシラン化合物を使用することにより垂直配向規制力を高めることができる。シラン化合物としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その他の材料と混合して使用してもよい。シラン化合物が非イオン性シラン化合物である場合には、垂直配向規制力を高めやすい観点から分子末端にアルキル基を有するシラン化合物が好ましく、炭素数3~30のアルキル基を有するシラン化合物がより好ましい。
【0198】
配向膜(配向性ポリマーを含む配向膜または光配向膜)の厚みは、通常10~10000nmの範囲であり、好ましくは10~1000nmの範囲であり、より好ましくは10~500nm以下であり、さらに好ましくは10~300nm、特に好ましい50~250nmの範囲である。
【0199】
本発明は、本発明の位相差フィルムを含む偏光板(楕円偏光板)を包含する。本発明の偏光板は、通常、本発明の位相差フィルムと偏光フィルムとを含む。
偏光フィルムは、偏光機能を有するフィルムであり、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムや吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムを偏光子として含むフィルム等が挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、例えば、二色性色素が挙げられる。
【0200】
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムを偏光子として含むフィルムは通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造された偏光子の少なくとも一方の面に接着剤を介して透明保護フィルムで挟み込むことで作製される。
【0201】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
【0202】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000の範囲である。
【0203】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば、10~150μm程度とすることができる。
【0204】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、または染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。
【0205】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法によって行われる。
【0206】
二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。二色性の有機染料としては、C.I.DIRECT RED 39などのジスアゾ化合物からなる二色性直接染料および、トリスアゾ、テトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理前に、水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0207】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常、0.01~1質量部程度である。またヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常、0.5~20質量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1,800秒程度である。
【0208】
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常、1×10-4~10質量部程度であり、好ましくは1×10-3~1質量部であり、さらに好ましくは1×10-3~1×10-2質量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含んでいてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常、20~80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常、10~1,800秒程度である。
【0209】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。このホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましく、その場合のヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常60~1,200秒程度であり、好ましくは150~600秒、さらに好ましくは200~400秒である。ホウ酸処理の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0210】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法により行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度である。また浸漬時間は、通常1~120秒程度である。
【0211】
水洗後に乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃程度であり、好ましくは50~80℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒程度であり、好ましくは120~600秒である。乾燥処理により、偏光子の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5~20質量%程度であり、好ましくは8~15質量%である。水分率が上記範囲内であると、適度な可撓性を有し、熱安定性に優れる偏光子を得やすい。
【0212】
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理、水洗および乾燥をして得られる偏光子の厚さは好ましくは5~40μmである。
【0213】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、液晶性を有する二色性色素を含む組成物または、二色性色素と重合性液晶とを含む組成物を塗布して得られるフィルム等が挙げられる。当該フィルムは、好ましくは、その片面または両面に保護フィルムを有する。当該保護フィルムとしては、液晶硬化膜の製造に用い得る基材として先に例示した樹脂フィルムと同一のものが挙げられる。
【0214】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムは薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。当該フィルムの厚さは、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5~3μmである。
【0215】
前記吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、具体的には、特開2012-33249号公報等に記載のフィルムが挙げられる。
偏光フィルムは、このようにして得られた偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤を介して透明保護フィルムを積層していてもよい。透明保護フィルムとしては、液晶硬化膜の製造に用い得る基材として先に例示した樹脂フィルムと同様の透明フィルムを好ましく用いることができる。
【0216】
本発明の偏光板は、本発明の位相差フィルムと偏光フィルムとを含んで構成されるものであり、例えば、本発明の位相差フィルムと偏光フィルムとを接着剤層または粘着剤層等を介して積層させることにより本発明の楕円偏光板を得ることができる。
【0217】
本発明の一態様においては、水平配向液晶硬化膜を含む本発明の位相差フィルムと偏光フィルムとが積層される場合、位相差フィルムを構成する水平配向液晶硬化膜の遅相軸(光軸)と偏光フィルムの吸収軸との成す角が45±5°となるように積層することが好ましい。
【0218】
本発明の偏光板は、従来の一般的な楕円偏光板、または偏光フィルムおよび位相差フィルムが備えるような構成を有していてよい。そのような構成としては、例えば、楕円偏光板を有機EL等の表示素子に貼合するための粘着剤層(シート)、偏光フィルムや位相差フィルムの表面を傷や汚れから保護する目的で用いられるプロテクトフィルム等が挙げられる。
【0219】
本発明の偏光板は、さまざまな表示装置、特に光学ディスプレイに用いることができる。
表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)および圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置および投写型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。特に本発明の楕円偏光板は有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置および無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に好適に用いることができる。これらの表示装置(光学ディスプレイ)は、光学特性に優れる本発明の偏光板を備えることにより、良好な画像表示特性を発現することができる。
【実施例0220】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、例中の「%」および「部」は、特記ない限り、それぞれ質量%および質量部を意味する。
<重合性液晶組成物の調製>
実施例1
下記式(2-1)で表される重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(2-1)」という)と、下記式(1-1)で表される重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(1-1)」という)との混合物(以下、混合物(B)という)を以下のスキームに従い合成した。得られた混合物(B)を、重合性液晶組成物ともいうものとする。
【0221】
【0222】
ジムロート冷却管および温度計を設置した300mL-四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とした。この四ツ口フラスコ内に、化合物(E-1)17.60g、化合物(D-1)10.00g、化合物(F-1)(和光純薬工業(株)製)0.80g、化合物(F-2)0.95g、DMAP(和光純薬工業(株)製)0.07g、BHT(和光純薬工業(株)製)0.20g、およびクロロホルム(関東化学(株)製)137gを添加して混合した。その後、滴下漏斗を用いてIPC(和光純薬工業(株)製)9.61gをさらに添加し、これらを0℃で一晩反応させた。反応後、カルボラフィン3.45g、ラヂオライト#900(登録商標)(昭和化学工業(株)社製)3.45gを加え1時間攪拌し懸濁液を得た。ブフナー漏斗にろ紙(No.5A)を敷き、ラヂオライト#900(登録商標)(昭和化学工業(株)社製)1.72g、シリカゲル3.45g、ラヂオライト#900(登録商標)(昭和化学工業(株)社製)1.72gを順番に積層させた。上記のブフナー漏斗に、懸濁液を流し込み、吸引ろ過した。後述のように、吸引ろ過にかかる時間を測定して、ろ過性を評価した。反応で得られた混合物(B)を、後述のHPLCで分析したところ、混合物(B)は重合性液晶化合物(1-1)を、重合性液晶化合物(2-1)との合計値に対してLC面積比で43.3%含んでいた。また、重合性液晶化合物(1-1)は、式(1-1)中のlが異なる重合性液晶化合物(1-1)の混合物(A)であった。なお、HPLCで検出した上記式(1-1)中のlは、l=1~4である。
【0223】
実施例2~6、比較例1~3
化合物(E-1)、化合物(D-1)、化合物(F-1)、化合物(F-2)等の仕込み比率を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ重合性液晶化合物の混合物(B)を調製した。実施例2~6では、重合性液晶化合物(1-1)は、式(1-1)中の1が異なる重合性液晶化合物(1-1)の混合物(A)であった。比較例1~3では、ジカルボン酸を一種類のみ使用しているため、得られる重合性液晶化合物(1-1)は一種類であった。なお、表1において、AG、SB、(F-3)としてのCHDAは、それぞれアジピン酸、スベリン酸、シクロヘキサンジカルボン酸を意味する。F-1~F-3の仕込み比率を表1の「ジカルボン酸の種類」欄に示す。F-1~F-3の仕込み比率は、化合物(D-1)に対するモル比率(MR)を意味する。HPLCでの分析結果を、表1の「(1-1)の面積百分率」欄に示す。
【0224】
【0225】
〔HPLCの測定条件〕
HPLC測定は、重合性液晶化合物(2-1)および重合性液晶化合物(1-1)に由来するピークを分離できる限りいずれの条件で行ってもよい。HPLC測定条件の一例を以下に示す。
【0226】
(測定条件の一例)
測定装置:HPLC LC-10AT(島津製作所製)
カラム:L-Column ODS(内径3.0mm、長さ150mm、粒径3μm)
温度:40℃
移動相A:0.1%(v/v)-TFA/水
移動相B:0.1%(v/v)-TFA/アセトニトリル
グラジエント:0min 70%-B
30min 100%-B
60min 100%-B
60.01min 70%-B
75min 70%-B
流速:0.5mL/min
注入量:5μL
検出波長:254nm
<ろ過性の評価>
実施例1~6、比較例1~3の混合物(B)について、製造工程におけるろ過性を評価した。ろ過性は、上記の混合物(B)の製造工程において、ブフナー漏斗に懸濁液を流し込み、吸引ろ過した際にろ過にかかる時間を測定した。以下の基準でろ過性について評価を行った。結果を表1の「ろ過性」欄に示す。
【0227】
・ろ過性の評価基準
◎◎(特に優れる):ろ過時間が、2分以内である場合
◎(優れる):ろ過時間が、2分を超えて5分以内である場合
○○(良好):ろ過時間が、5分を超えて10分以内である場合
○(可):ろ過時間が、10分を超えて60分以内である場合
×(不可):ろ過時間が、60分を超える場合
表1より、実施例1~6の混合物(B)は、重合性液晶化合物(1-1)の混合物(A)を有するとともに、重合性液晶化合物(1-1)の百分率が、0.1%以上70%以下の数値範囲内であった。そのため、実施例1~6の混合物(B)は、溶剤に対する溶解性が向上しやすくなる。また、実施例1~6の混合物(B)は、ろ過性が「可」以上であるため、生産性が向上していることが確認された。