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特開2024-173658シート排出装置、画像形成装置及びシート積載方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173658
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】シート排出装置、画像形成装置及びシート積載方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/02 20060101AFI20241205BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B65H31/02
G03G15/00 440
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035670
(22)【出願日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2023091164
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】田中 美奈
【テーマコード(参考)】
2H072
3F054
【Fターム(参考)】
2H072AA17
2H072AA24
2H072FB01
3F054AA01
3F054AC02
3F054BA01
3F054BG11
3F054CA11
3F054CA21
3F054DA14
3F054DA15
(57)【要約】
【課題】生産性の高い装置でも、良好にブロッキングの発生を抑制できるシート排出装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナーが定着されたシートたる用紙が排出される排出トレイたる排紙トレイ14は、画像形成装置の本体に固定されているトレイ固定部14bと、排紙トレイ14の幅方向中央を支点として、所定角度回動可能に設けられたトレイ可動部14aとを有している。トレイ可動部14aが回動することで、載置面140が幅方向で真っ直ぐ延びる状態の初期位置と、載置面140が幅方向中央を基点として折れ曲がった状態の変形位置とを取り得るようになっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーが定着されたシートが排出される排出トレイを備えたシート排出装置において、
前記排出トレイの排出された前記シートが載置される載置面の一部を移動させる移動手段を設けたことを特徴とするシート排出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート排出装置において、
前記載置面に複数枚のシートが排出されたら、前記移動手段は、前記載置面の一部を移動させることを特徴とするシート排出装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシート排出装置において、
前記移動手段は、前記載置面のシート幅方向の端部を、前記シート幅方向の中央よりも上方または下方に移動させることを特徴とするシート排出装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシート排出装置において、
前記移動手段は、前記載置面の前記シートの前記排出トレイへの排出方向に直交する方向であるシート幅方向の一端部を、前記シート幅方向の中央よりも上方または下方に移動させることを特徴とするシート排出装置。
【請求項5】
請求項3に記載のシート排出装置において、
前記移動手段は、前記載置面の前記シート幅方向の両端部を、前記シート幅方向の中央よりも上方または下方に移動させることを特徴とするシート排出装置。
【請求項6】
シートにトナー画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段により画像が形成されたシートを装置本体外へ排出するシート排出装置とを備えた画像形成装置において、
前記シート排出装置として、請求項1に記載のシート排出装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
トナーが定着されたシートを積載するシート積載方法において、
前記シートが載置される載置面に複数枚のシートが積載されたら、前記載置面の一部を移動させることを特徴とするシート積載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート排出装置、画像形成装置及びシート積載方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トナーが定着されたシートが排出される排出トレイを備えたシート排出装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記シート排出装置を備える画像形成装置が記載されている。特許文献1の画像形成装置では、シート上にトナー像を形成し、定着装置によって、トナー像が形成されたシートを加熱及び加圧を行うことでシート上のトナー像を定着させて、シートに画像を形成している。特許文献1では、排紙トレイに排出されて積み重ねられた時に、冷え固まっていない軟化したトナーによってシート同士が貼り付く所謂ブロッキングの発生を抑制する目的で、排紙トレイに積載されたシートに送風ファンにより風をあててシートを冷却することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ブロッキングを十分に抑制できないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、トナーが定着されたシートが排出される排出トレイを備えたシート排出装置において、前記排出トレイの排出された前記シートが載置される載置面の一部を移動させる移動手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ブロッキングをより抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の画像形成装置の構成を示す模式図。
図2】画像形成装置のハードウェアブロック構成の一例を示す図
図3】本実施形態の排紙トレイの概略構成図。
図4】トレイ可動部を回動させる回動機構の一例について説明する概略構成図。
図5】用紙ずらし動作のフローチャート。
図6】排紙トレイの載置面を折り曲げたときの排紙トレイ上の複数の用紙の状態を説明する図。
図7】排紙トレイの幅方向両端にサイドフェンスを設けた例を示す概略平面図。
図8】載置面の幅方向一端を、載置面の幅方向中央よりも下方に位置するようにトレイ可動部を回転させた例を示す概略構成図。
図9】載置面の幅方向両端を、載置面の幅方向中央よりも下方に位置するようにトレイ可動部を回転させた例を示す概略構成図。
図10】載置面の幅方向両端を、載置面の幅方向中央よりも上方に位置するようにトレイ可動部を回転させた例を示す概略構成図。
図11】排紙トレイの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものである。以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0009】
図1は、本実施形態の画像形成装置1の構成を示す模式図である。
なお、以下においては、画像形成装置の前後方向ないし用紙の幅方向をX方向、画像形成装置の左右方向ないし用紙排出方向をY方向、上下方向(鉛直方向でもある)をZ方向とする。
同図において、画像形成装置1は、電子写真方式を用いる複写機であり、次に挙げる装置を備えている。すなわち、画像形成装置は、画像形成部としての作像装置(感光体11、帯電装置32、現像装置12、転写装置31、クリーニング装置33等を含む)5を備えている。また、画像形成装置は、反転排出装置6、読み取り装置7、書き込み装置8、給紙装置9、定着装置10、および、移動手段たる回動機構40も備えている。
【0010】
画像形成装置1では、読み取り装置7の原稿載置台上に載置された原稿が読み取られる。読み取られた原稿画像は、画像情報に変換され、この画像情報に応じた作像装置5での画像形成処理に用いられる。作像装置5では、帯電装置32より感光体11の表面を一様帯電した後、画像情報に基づき書き込み装置8により感光体11に対して露光光Lを照射して感光体11に静電潜像を形成する。静電潜像が現像装置12により可視像処理されてトナー像を形成される。トナー像となるトナーは、転写装置31により給紙装置9から供給されるシートたる用紙に静電転写され、転写された用紙上のトナーが定着装置10により用紙に定着される。
【0011】
給紙ローラ9aによって給紙装置9から供給される用紙は、矢印13で示すように、搬送ローラ対13aにより作像装置5に向け搬送され、レジストローラ対13bで感光体11に対するレジストタイミングを設定されたうえで転写装置31によりトナー像が転写される。転写後の用紙は、定着装置10に搬送され、トナー像が形成された用紙を加熱及び加圧を行うことで用紙上のトナー像を構成するトナーを軟化・溶融させて、トナー像を用紙に定着させる。定着装置10にてトナー像が定着された用紙は、排紙トレイ14または反転排出装置6に向け搬送される。
【0012】
反転排出装置6では、用紙を反転させて排紙トレイ14へ排出するか、もしくは、用紙を反転させて再度作像装置5側の像担持体である感光体11に向け循環搬送することが可能である。用紙は、定着装置10を抜けた後、画像形成装置外へストレート(通常)に排出される場合は、排紙ローラ15を通って排紙トレイ14へ排出される。
【0013】
また、用紙が反転排出装置6へ搬送される場合は、矢印16で示す経路に沿って搬送される。この場合、矢印16で示す経路で搬送された用紙は、搬送ローラ対19を介して反転ローラ29へ搬送される。反転ローラ29は、正逆転可能なローラであり、矢印16で示す経路で搬送された、片面に画像が形成された用紙を反転させてスイッチバックさせる。反転ローラ29でスイッチバックされた用紙が装置外へ排出される際には、再搬送ローラ対20を介して矢印17で示す経路に沿って排紙ローラ15へ搬送され、排紙トレイ14へ排出される。
【0014】
また、用紙を反転させてその両面に画像形成するために作像装置5へ再循環搬送する場合は、反転ローラ29でスイッチバックされた用紙が、再搬送ローラ対20及び搬送ローラ対21を介して、矢印18で示す経路に沿って搬送される。この時、用紙は、再搬送ローラ対20と搬送ローラ対21の間に設けられた湾曲形状を有する反転搬送路を通過して搬送ローラ対21へ案内される。搬送ローラ対21を通過して面を反転された用紙は、搬送ローラ対22a,22b,22c,22dにより搬送され、再度、作像装置5における像担持体である感光体11に向けて再循環搬送され、排紙ローラ15を通って排紙トレイ14へ排出される。
【0015】
定着装置10で加熱された用紙は、温度が高い状態で排紙トレイ14へ排出され、排紙トレイ14に排出された用紙上のトナーは、冷え固まっておらず、軟化状態である。この軟化状態のトナーの上に次の用紙が排出されることで、軟化状態のトナーによるシート同士の貼り付き(ブロッキング)が発生するおそれがある。このようなブロッキングを抑制するため、定着装置10から排紙ローラ15の間に冷却ファンを設け、この冷却ファンにより画像形成装置外へストレートに排出される用紙に風を当てて用紙を冷やしていた。これにより、排紙トレイ14上にトナーが冷え固まった状態の用紙が排出され、ブロッキングの発生を抑制できる。
【0016】
しかしながら、生産性を高めるために用紙搬送速度が速い装置においては、冷却ファンによる用紙冷却領域を用紙が短時間で通過する。その結果、用紙冷却領域を用紙が通過する間に十分に用紙を冷却できず、トナーが冷え固まった状態で排紙トレイ14に用紙を排紙することができず、ブロッキングを抑制できないおそれがある。そこで、用紙冷却領域を短時間で通過しても、用紙を良好に冷却するために、冷却ファンの回転数を大きくして用紙に当てる風量を多くして用紙冷却効率を高める必要がある。しかし、冷却ファンの回転数を大きくすることで、電力を過大に消費してしまい、冷却ファンの風切り音が大きくなり、装置の騒音が大きくなるという不具合がある。また、用紙に当てる風量を多くすることで、用紙が冷却ファンの風で暴れ、ジャムが発生するおそれがある。
【0017】
また、排紙トレイに排出された用紙に風を当てて用紙を冷やす場合においても、生産性が高い装置では、排紙トレイに用紙が排出される間隔が短く、次の用紙が排紙されるまでの間に、トナーを冷え固まらせることができず、ブロッキングを抑制できないおそれがある。そのため、冷却ファンの回転数を大きくして用紙に当てる風量を多くして用紙冷却効率を高める必要がある。よって、電力を過大に消費してしまい、冷却ファンの風切り音が大きくなり、装置の騒音が大きくなる。また、用紙に当てる風量を多くすることで、用紙が排紙トレイ上で暴れてしまい、排紙トレイから用紙が落下するおそれがある。
【0018】
上記ブロッキングは、軟化状態のトナーが冷え固まっていく過程で、排紙トレイ14に排紙されて積み重なった用紙が動かないことで発生する。また、ブロッキングが発生しても、トナーと上に排出された用紙との貼り付きを剥がせば、再度貼り付くことは防止できる。そこで、本実施形態では、移動手段たる回動機構40で排紙トレイ14の排紙された用紙が載置される載置面の一部を回転移動することで、載置面を折り曲げ、載置面を折り曲げることで、排紙トレイに積み重なった用紙を変形させて用紙を動かすようにした。これにより、軟化状態トナー上に用紙が積み重なっても、ブロッキングの発生が抑制される。また、仮に、ブロッキングが発生しても、用紙が動くことで、トナーとの貼り付きを剥がすことができる。以下、図面を用いて、本実施形態の特徴部について、説明する。
【0019】
図2は、画像形成装置1のハードウェアブロック構成の一例を示す図である。
画像形成装置1は、コントローラ90を備えている。コントローラ90は、CPU90a、ROM90b、RAM90c、プリンタ制御部90d(、画像読取制御部90e、ストレージ制御部90f、入力制御部90g、出力制御部90hを備えており、コントローラ90を構成する各部はバス90iで接続されている。
【0020】
コントローラ90のプリンタ制御部90dは、CPU90aが、作像装置5、給紙装置9、書き込み装置8、反転排出装置6、定着装置10、回動機構40等のプリンタに関する各ハードウェアを制御するためのインタフェースとして機能する。画像読取制御部90eは、CPU90aが読み取り装置7を制御するためのインタフェースとして機能する。
【0021】
ストレージ制御部90fは、CPU90aが、画像形成装置1が備えるストレージ(記憶装置)93を制御するためのインタフェースとして機能する。入力制御部90gは、CPU90aが入力部94を制御するためのインタフェースとして機能する。出力制御部90hは、CPU90aが出力部95を制御するためのインタフェースとして機能する。
【0022】
CPU90aを含むコントローラ90は、画像形成装置1全体を制御する。CPU90aはROM90bに格納されているブートプログラムにより、OSを起動する。そして、CPU90aは、OSの上でストレージ93やROM90bに記憶されている制御プログラムを実行する。
【0023】
RAM90cは、CPU90aの主メモリやワークエリア等の一時記憶領域として使用される。ストレージ93は、HDDなどの読み書き可能な不揮発性記憶装置である。このストレージ93には、画像形成装置1全体を制御するためのプログラムや各種アプリケーションプログラム、消耗部品を管理するためのデータ、及びメンテナンスイベントを解消するために必要な一連の作業内容を示す動画など様々なデータが記憶される。CPU90aは、ストレージ制御部90fを介してストレージ93へアクセスする。
【0024】
CPU90aは、制御プログラムやアプリケーションプログラムをストレージ93やROM90bから読み出し、RAM90cに展開されたプログラムを実行することで画像形成装置1を制御する。
【0025】
なお、本実施形態の画像形成装置1では、1つのCPUが1つのメモリ(RAM)に展開されたプログラムを用いて後述するフローチャートに示す各処理を実行するものとするが、他の様態であっても構わない。例えば、複数のプロセッサ、RAM、ROM、及びストレージを協働させて後述するフローチャートに示す各処理を実行するようにしても良い。また、ASICやFPGA等のハードウェア回路を用いて一部の処理を実行するようにしてもよい。
【0026】
CPU90aは、画像読取制御部90eを介して読み取り装置を制御して原稿上の画像を読み取り、画像データを生成する。CPU90aは、プリンタ制御部90dの各ハードウェアと協働して用紙上に画像を形成する。また、CPU90aは、プリンタ制御部90dの回動機構40、排紙上限検知センサ35、ホームポジションセンサ44と協働して後述する排紙トレイに排出された用紙をずらす用紙ずらし動作を実行する。
【0027】
入力制御部90gは、入力部94とコントローラ90を接続し、タッチパネルやハードキーなどの入力部94からユーザの操作指示を受け付ける。出力制御部90hは、出力部95とコントローラ90を接続し、LCDやCRTなどの表示部を備える出力部95を制御して、操作画面や動画をユーザに対して表示させる。なお、本実施形態では、出力部95は表示出力を行う表示部として説明するが、出力部95は、表示出力の他、音声出力を行うスピーカを備えていても良い。また、入力部94は、タッチパネルやハードキー等の入力の他、音声入力を行うマイクを備えていても良い。
【0028】
図3は、本実施形態の排紙トレイ14の概略構成図であり、図3(a)は、斜視図であり、図3(b)は、側面図である。
図3に示すように、本実施形態の画像形成装置1の側面に有する排紙トレイ14は、トレイ固定部14bとトレイ可動部14aとを有している。用紙の排出方向と直交する用紙幅方向中央を基点として、図中左側、すなわち画像形成装置1の正面から遠い側(後側)が、トレイ固定部14bであり、図中右側、すなわち画像形成装置1の正面から近い側(前側)がトレイ可動部14aである。画像形成装置1の正面から近い側をトレイ可動部14aとすることで、正面側から可動を確認しやすくなるという利点がある。
【0029】
トレイ固定部14bは、画像形成装置の本体に固定されている。トレイ可動部14aは、排紙トレイ14の用紙幅方向中央を支点として、所定角度回動可能(回転移動可能)に設けられている。そして、図中破線に示すように、載置面140が用紙幅方向で真っ直ぐ延びるトレイ固定部14bの載置面とトレイ可動部14aの載置面とが面一の状態の初期位置と、図中実線で示すように、載置面140が用紙幅方向中央を基点として初期位置よりも上方に折れ曲がった状態の変形位置とを取り得るようになっている。なお、図2に示す符号30は、用紙が排紙される排紙口であり、排紙トレイ14の載置面140は排紙口30の開口長よりも用紙の排出方向と直交する用紙幅方向で長い。
【0030】
なお、本実施形態では、トレイ可動部14aが初期位置に位置するとき、載置面140は水平方向に平行であるが、用紙排出方向下流側が、上流側よりも上方または下方に位置するように、用紙排出方向に傾斜した傾斜面でもよく、用紙が載置面から落下しない状態にあればよい。また、トレイ可動部14aが初期位置に位置することを検知するホームポジションセンサ44を有している。
【0031】
図4は、トレイ可動部14aを回動させる回動機構40の一例について説明する概略構成図である。
トレイ可動部14aは、トレイ固定部14bまたは画像形成装置の本体に設けられた用紙の排紙方向に延びる枢軸34に回動自在に支持されている。回動機構40は、駆動源としてのモータ43と、トレイ可動部14aの用紙幅方向端部に設けられた枢軸34の中心を中心とする円弧状のラックギヤ42と、このラックギヤ42に噛み合うピニオンギヤ41とを備えている。ピニオンギヤ41は、モータ43の駆動軸43aに取り付けられている。なお、複数のギヤを介してモータ43の駆動力をピニオンギヤ41に伝達するようにしてもよい。
【0032】
図5は、トレイ可動部14aを回動させる動作である用紙ずらし動作のフローチャートである。
印刷開始時においては、トレイ可動部14aは、図4の実線の初期位置に位置している。印刷ジョブが終了したタイミング、または、図4に示す排紙口30の下方で排紙トレイ14の上方に備えた排紙上限検知センサ35が排紙トレイ14の積載上限を検知したタイミングで、トレイ可動部14aを回動させる用紙ずらし動作を実行する(S1のYes,S2のYes)。用紙ずらし動作が実行されると、モータ43を駆動させて、ピニオンギヤ41を回転させ、その回転方向に応じてラックギヤ42とともにトレイ可動部14aを、枢軸34を中心として図中反時計回りに回動させる(S3)。そして、トレイ可動部14aは上方に回転し、図中破線の変形位置に到達したら(S4Yes)、モータ43の駆動を停止する(S5)。
【0033】
トレイ可動部14aが変形位置に到達したか否かは、モータ43がステッピングモータであれば、ステップ数から判断できる。また、モータ43が直流モータの場合は、モータ43の駆動時間から判断できる。なお、トレイ可動部14aを検知する検知センサを設け、検知センサにより、トレイ可動部14aが変形位置に到達したか否かを検知してもよい。
【0034】
トレイ可動部14aの変形位置(初期位置からのトレイ可動部14aの回動角度、載置面140の折り曲げ角度)は、排紙トレイ14に積載上限の用紙が積載された時、排紙トレイ14に積載させた用紙により排紙口30をふさがない位置とする。
【0035】
図6に示すように、トレイ可動部14aが初期位置から変形位置へ移動することで、排紙トレイの載置面140の用紙幅方向一端である図中右側端部(画像形成装置の正面側端部)が、用紙幅方向中央よりも上方に位置するように載置面140が用紙幅方向中央を基点に折れ曲がる。このように、載置面140が折れ曲がることで、載置面140に載置されている複数の用紙が載置面140の折れ曲がりに倣って変形し、重なった用紙同士のトレイ可動部14a側である図中右側端部を用紙幅方向にずらすことができる。なお用紙のトレイ固定部14b側である図中左側端部は重なった用紙の自重により正面側と反対側(図中左側)にずれるがトレイ可動部14a側である図中右側端部よりもずれが少ない。このため重なった用紙の図中右側端部は上方用紙の方が下方用紙よりも画像形成装置の正面側(図中右側)にずれる。これにより、ブロッキングの発生を抑制することができる。また、重なった用紙同士が用紙幅方向にずれることで、トナーとの貼り付きを剥がすことができ、ブロッキングを解除することができる。このように、本実施形態では、軟化状態トナー上に用紙が積み重なっても、ブロッキングの発生を抑制できる。さらに冷却ファンを画像形成装置内の定着以降の搬送路に向けて設ける、または、排紙トレイ向けて設け、用紙を冷却ファンで冷却して、ブロッキングを抑制してもよい。
【0036】
載置面140を折り曲げて所定の時間経過したら(S6のYes)、モータ43を逆転させ、トレイ可動部14aを変形位置から初期位置へと戻す。初期位置へ戻すことで重なった用紙のトレイ可動部14a側である図中右側端部(正面側)のずれが戻る方向に移動する。ホームポジションセンサ44が、トレイ可動部14aの初期位置到達を検知したら(S8のYes)、モータ43の駆動を停止し、用紙ずらし動作を終了する(S9)。
【0037】
上述では、印刷ジョブが終了したタイミング、または、排紙上限検知センサ35が排紙トレイ14の積載上限を検知したタイミングで、用紙ずらし動作を実行しているが、用紙ずらし動作は、排紙トレイ上の用紙のトナーが完全に冷え切る前に実行する必要がある。これは、トナーが完全に冷え切ると強力に用紙が貼り付いてしまうため、上記用紙ずらし動作では、トナーの貼り付きを剥がすことができず、ブロッキングを解除できないおそれがあるからである。
【0038】
そのため、印刷ジョブが終了したタイミングや排紙上限検知センサ35が排紙トレイ14の積載上限を検知したタイミングでは、最初に排出した用紙のトナーが完全に冷え固まっているおそれがある場合は、上述のタイミングより早いタイミングで用紙ずらし動作を実行する。例えば、最初の用紙が排紙トレイ14に排出されてから複数枚の用紙が積載する所定時間経過したら、印刷ジョブが終了していなくともまたは排紙上限検知センサ35が排紙トレイ14の積載上限を検知していなくとも用紙ずらし動作を実行する。これにより、トナーが完全に冷え切る前に用紙を変形させて用紙同士をずらすことができ、良好にトナーとの貼り付きを剥がすことができ、ブロッキングを解除することができる。
なお、トレイ可動部14aが変形位置にあると、用紙が良好に排出されたないおそれがある。そのため、用紙ずらし動作を実行するときは、用紙の搬送を停止し、用紙ずらし動作が終了してから用紙の搬送を再開するのが好ましい。
【0039】
また、用紙の紙間が広い生産性が高くない場合、例えば両面印刷など片面印刷よりも生産性が高くない場合や、厚紙印刷時などに設定される低速印刷モードなど高速印刷モードより用紙の搬送速度を遅くした生産性が高くない場合は、排紙トレイ14に用紙が積み重ねられる度、すなわち、排紙トレイ14に用紙が積み重ねられてから次の用紙が重ねられる前に用紙ずらし動作を実行してもよい。これにより、ブロッキングの発生を良好に抑制できる。
【0040】
なお、上述では、ラックアンドピニオンを用いてトレイ可動部14aを回動させているが、例えば、アクチュエータによりトレイ可動部14aの枢軸34と反対側の端部(正面側端部)を昇降することで、トレイ可動部14aを回動させるようにしてもよい。また、トレイ可動部14aと連結している枢軸34につながるギヤやモータを画像形成装置1の内部に取り付けてトレイ可動部14aを回動させてもよい。
【0041】
本実施形態の排紙トレイ14にはエンドフェンスは設けている。しかし、排出方向長さが、画像形成装置が搬送可能最大用紙サイズの搬送方向長さよりも短く、用紙によって、排紙トレイ14の排出方向下流側端部からはみ出す場合がある。そのため、このような場合、排紙トレイ14に設けたエンドフェンスは取外しまたは退避可能となっている。排紙トレイ14の用紙幅方向長さは、最大用紙サイズの幅よりも長いので、図7に示すように、排紙トレイ14の用紙幅方向両端にサイドフェンス141は、設けることが可能である。
【0042】
サイドフェンス141を設けることで、例えば、表面が平滑で滑り易い用紙の場合でトレイ可動部14aを上方の変形位置に位置させたときに、トレイ固定部14b側の用紙の左側端部が用紙幅方向に滑っても、サイドフェンス141で受け止めることができる。これにより、用紙が排紙トレイ14の用紙幅方向端部から落下するのを防止できる。なお、以降で説明するようにトレイ可動部14aを下方の変形位置に位置させたときは、重なった用紙の上方用紙の方が下方用紙よりも画像形成装置の正面側にずれた状態となり、ブロッキングが抑制されるが、用紙の自重でトレイ可動部14a側の用紙の右側端部(正面側)が用紙幅方向に滑ってトレイ可動部14aの可動ととともに移動するおそれがある。しかし、サイドフェンス141で受け止めて、用紙が排紙トレイ14の画像形成装置の正面側端部から落下するのを防止できる。
【0043】
また、図8に示すように、載置面140の用紙幅方向一端が、載置面140の用紙幅方向中央よりも下方に位置するようにトレイ可動部14aを回転させてもよい。かかる構成でも、図8(b)に示すように、排紙トレイ14の載置面140が、用紙幅方向中央を基点にして折れ曲がり、載置面140に載置された用紙Pを載置面140の折れ曲がりに沿って変形させることができる。これにより、トナーに接触している用紙の面を動かすことができ、ブロッキングの発生や、ブロッキングを解除することができる。
【0044】
また、図9に示すように、排紙トレイを2つのトレイ可動部14a1,14a2と、各トレイ可動部14a1,14a2を回動する2つの回動機構とで構成し、排紙トレイ14の用紙幅方向両端が中央に対して下方に位置するように載置面140を折り曲げてもよい。さらに、図108に示すように、排紙トレイの用紙幅方向両端が中央に対して上方に位置するように載置面140を折り曲げてもよい。
【0045】
排紙トレイ14の一方がトレイ固定部の場合は、用紙のトレイ固定部14bに載置されている部分は、用紙幅方向への移動が少ないが、ブロッキングの抑制効果は得られる。さらに、図9図10に示すように、図中左右両方を、各回動機構により用紙幅方向中央を支点にして回動するトレイ可動部とすることで、図9(b)、図10(b)に示すように用紙の図中左右両方をトナーに対して用紙幅方向に大きく動かすことができる。これにより、ブロッキングの発生をさらに良好に抑制できる。
【0046】
上述では、載置面140の用紙幅方向端部を用紙幅方向中央よりも上方または下方の一方にトレイ可動部14aを移動(回動)させているが、載置面140の用紙幅方向端部を用紙幅方向中央よりも上方と下方の両方にして移動幅を大きくするように移動させてもよい。これによれば、載置面140の用紙幅方向端部の上方への移動時と、下方への移動時の2回、用紙をトナーに対して動かすことができ、トナーの貼り付きを剥がす効果を高めることができる。これにより、ブロッキングの発生をさらに良好に抑制できる。
【0047】
上述では、排紙トレイ14を用紙幅方向で2分割し、用紙幅方向中央を基点にして、排紙トレイ14の載置面140を折り曲げているが、これに限られない。例えば、図11(a)に示すように、排紙トレイ14を用紙幅方向に3分割とし、用紙幅方向中央部分をトレイ固定部14b、用紙幅方向両側をトレイ可動部14aとして、用紙幅方向の2箇所を基点として載置面140を折り曲げてもよい。また、図11(b)に示すように、用紙排出方向に排紙トレイを2分割して、用紙排出方向の中央を基点にして載置面140を折り曲げてもよい。
【0048】
また、上述では、トレイ可動部14aの載置面140およびトレイ可動部14aの下側面の全体が回動するが、図11(c)に示すようにトレイ可動部14aの載置面140が回動しトレイ可動部14aの下側面が回動しないで不動となる構成でもよい。また、トレイ可動部14aは枢軸34を中心に回動させたが、図11(d)に示すように、トレイ可動部14aを上下方向に水平状態で移動させ、トレイ固定部14bの載置面と、トレイ可動部14aの載置面との間に段差を生じさせる構成でもよい。かかる構成でも、載置面に載置された用紙同士がずれてブロッキングを抑制することができる。また、トレイ可動部14aがトレイ固定部14bに対して撓むことで移動して、載置面を湾曲させる構成であってもよい。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0050】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
トナーが定着された用紙Pなどのシートが排出される排紙トレイ14などの排出トレイを備えたシート排出装置において、排出トレイの排出されたシートが載置される載置面140の一部を移動させる回動機構40などの移動手段を設けた。
特許文献1では、送風ファンにより排出トレイに積載されたシートに風をあててシートを冷却することで、次のシートが排出トレイに排出される前にトナーを冷え固まらせてブロッキングを抑制している。しかし、生産性が高い装置においては、排出トレイへのシートの排出間隔が短く、次のシートが排出されるまでの間に十分にトナーを冷え固まらせることができず、ブロッキングが発生するおそれがある。
上記ブロッキングは、軟化状態のトナーが冷え固まっていく過程で、排出トレイに排出されて積み重なったシートが動かないことで発生する。態様1では、載置面の一部を回動機構40などの移動手段により移動させることで、排紙トレイに複数枚のシートが積載されたときに、載置面の一部を移動させて、載置面に積載されたシートを変形させて重なったシート同士をずらす(シートを動かす)ことができる。これにより、シート上の画像を構成する冷え固まっていない軟化トナー上に次のシートが排出された場合でも、ブロッキングが抑制される。これにより、生産性の高い装置でも、良好にブロッキングを抑制できる。
【0051】
(態様2)
態様1において、回動機構40などの移動手段は、載置面140に複数枚のシートが排出されたら、載置面140の一部を移動させる。
これによれば、実施形態で説明したように、載置面140に積み重ねられた複数の用紙が、載置面140の一部の移動に伴って変形し、シート同士をずらすことができる。これにより、ブロッキングの発生を抑制できる。
【0052】
(態様3)
態様1または2において、回動機構40などの移動手段は、載置面140のシート幅方向端部を、シート幅方向中央よりも上方または下方に移動させる。
これによれば、実施形態で説明したように、載置面140がシート幅方向を中央を基点にして折れ曲がった状態となり、載置面140に積み重ねられた複数の用紙が、載置面140の折り曲げに沿って変形し、シート同士をシート幅方向にずらすことができ、ブロッキングの発生を良好に抑制できる。
【0053】
(態様4)
態様3において、回動機構40などの移動手段は、載置面140のシート幅方向一端部が、シート幅方向中央よりも上方または下方に移動させる。
載置面140がシート幅方向を中央を基点にして折れ曲がった状態となり、載置面140に積み重ねられた複数の用紙が、載置面140の折り曲げに沿って変形し、シート同士をシート幅方向にずらすことができ、ブロッキングの発生を良好に抑制できる。
【0054】
(態様5)
態様3において、回動機構40などの移動手段は、載置面140のシート幅方向両端部を、シート幅方向中央よりも上方または下方に移動させる。
これによれば、図7図8を用いて説明したように、載置面140のシート幅方向一端部のみをシート幅方向中央よりも上方または下方に位置する移動する場合に比べて、シート同士をシート幅方向に大きく動かすことができ、ブロッキングの発生を良好に抑制できる。
【0055】
(態様6)
用紙などのシートにトナー画像を形成する画像形成手段と、画像形成手段により画像が形成されたシートを装置本体外へ排出するシート排出装置とを備えた画像形成装置において、シート排出装置として、態様1乃至6いずれかのシート排出装置を用いた。
これによれば、装置の騒音や、ジャムの発生を抑制して、ブロッキングを抑制できる。
【0056】
(態様7)
トナーが定着されたシートを積載するシート積載方法において、シートが載置される載置面に複数枚のシートが積載されたら、載置面の一部を移動させる。
これによれば、装置の騒音や、ジャムの発生を抑制して、ブロッキングを抑制できる。
【符号の説明】
【0057】
1 :画像形成装置
10 :定着装置
14 :排紙トレイ
14a :トレイ可動部
14b :トレイ固定部
15 :排紙ローラ
30 :排紙口
34 :枢軸
35 :排紙上限検知センサ
40 :回動機構
41 :ピニオンギヤ
42 :ラックギヤ
43 :モータ
43a :駆動軸
140 :載置面
141 :サイドフェンス
P :用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2019-139160号公報
図1
図2
図3
図4
図5
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図11