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特開2024-173660含ホウ素縮合環化合物の製造方法、及び、発光素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173660
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】含ホウ素縮合環化合物の製造方法、及び、発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20241205BHJP
   H10K 50/11 20230101ALI20241205BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20241205BHJP
   H10K 71/40 20230101ALI20241205BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20241205BHJP
【FI】
C07F5/02 A
H10K50/11
H10K85/30
H10K71/40
H10K71/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037657
(22)【出願日】2024-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2023091963
(32)【優先日】2023-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖中 有香子
【テーマコード(参考)】
3K107
4H048
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC45
3K107DD59
3K107DD69
3K107FF14
3K107FF17
3K107GG02
3K107GG26
4H048AA02
4H048AC90
4H048BC10
4H048BE56
4H048VB10
(57)【要約】
【課題】ホウ素原子を含有する多環芳香族化合物に導入されている、第3級アルキル基の反応中での脱離を抑制できる含ホウ素縮合環化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物と、BX3で表されるホウ素化合物(式中、Xは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数のXは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。)と、式(2)で表される化合物と、を140℃以下の反応温度で反応させて、式(3)で表される構造を有する含ホウ素縮合環化合物を得る環化工程を含む、含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物と、BX3で表されるホウ素化合物(式中、Xは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数のXは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。)と、式(2)で表される化合物と、を140℃以下の反応温度で反応させて、式(3)で表される構造を有する含ホウ素縮合環化合物を得る環化工程を含む、含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【化1】

[式(1)中、
環A、環B、及び環Cはそれぞれ独立に、芳香環を表し、
、H及びHは、水素原子を表し、
、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基M1を表し、R、R及びRで表される置換基M1は更に置換基M2を有していてもよく、前記置換基M2は更に置換基M3を有していてもよく、
m1は、Rが環Aと結合可能な数の最大値であり、
m2は、Rが環Bと結合可能な数の最大値であり、
m3は、Rが環Cと結合可能な数の最大値であり、
1及びX2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又は-N(R)-で表される基を表し、
Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基N1を有していてもよく、前記置換基N1は更に置換基N2を有していてもよく、Rは環A、環B又は環Cと結合して環を形成していてもよく、
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよく、
前記置換基M1、前記置換基M2、前記置換基M3、前記R、前記置換基N1、及び前記置換基N2のうち少なくとも1つは、第3級アルキル基として環A、環B、環C、X、又はXに結合している。]
【化2】

[式(2)中、Mは、窒素原子又はホウ素原子であり、RA1、RA2及びRA3はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【化3】

[式(3)中、環A、環B、環C、X1及びX2の定義は、式(1)における環A、環B、環C、X1及びX2の定義と同じである。]
【請求項2】
前記式(2)で表される化合物の使用量は、前記BX3で表されるホウ素化合物の使用量に対して50モル%以上である、請求項1に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【請求項3】
前記BX3で表されるホウ素化合物の使用量は、前記式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物に対して500モル%以上である、請求項1又は2に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【請求項4】
前記式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物と前記BX3で表されるホウ素化合物とを反応させた後に、前記式(2)で表される化合物を反応させる、請求項1又は2に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【請求項5】
前記式(2)で表される化合物が式(2-A)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【化4】

[式(2-A)中、
A2及びRA3は、前記と同じ意味を表す。
A4は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
m4は1~5の整数である。
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよい。]
【請求項6】
前記反応温度が120℃以下である、請求項1又は2に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【請求項7】
前記多環芳香族化合物が、式(1A)で表される化合物であり、前記含ホウ素縮合環化合物が、式(3A)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【化5】

[式(1A)中、
、H、H、X及びXは、前記と同じ意味を表す。
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルフェニル基、シクロアルキルスルフェニル基、アリールスルフェニル基、1価の複素環基、アミノ基又はハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11は、隣接する炭素原子に結合する基同士で結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。]
【化6】

[式(3A)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、X及びXは、前記と同じ意味を表す。]
【請求項8】
陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に設けられた有機層とを含む、発光素子の製造方法であって、
請求項1又は2に記載の製造方法により含ホウ素縮合環化合物を製造する工程と、
前記含ホウ素縮合環化合物を用いて前記有機層を形成する工程と、を含む発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含ホウ素縮合環化合物の製造方法、及び、発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子などの有機エレクトロニクス素子に用いるための多環芳香族化合物として、例えば、式(BN)で表されるホウ素原子を含有する縮合環化合物が検討されている。
【化1】
【0003】
前記式(BN)で表される縮合環化合物の合成方法として、例えば、特許文献1には、式(i)で表される製造方法が記載されている。特許文献1に記載されている製造方法では、反応容器に、ブロモ体、ジイソプロピルエチルアミン、三ヨウ化ホウ素、及びo-ジクロロベンゼンを加え、120℃で2時間、170℃で5時間撹拌することによって、目的物が得られている。
【化2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-020877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、多環芳香族化合物の需要増加に伴い、基質選択性、収率改善等の観点から、新たな製造方法の開発が望まれている。
しかし、前記製造方法は、可溶性置換基として導入している第3級アルキル基の反応中での脱離が進行し、収率が必ずしも高くない。
そこで、本開示は、ホウ素原子を含有する多環芳香族化合物に導入されている、第3級アルキル基の反応中での脱離を抑制できる含ホウ素縮合環化合物の製造方法を提供することを目的とする。
また、本開示は、上記含ホウ素縮合環化合物の製造方法を用いた発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
【0007】
[1]
式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物と、BX3で表されるホウ素化合物(式中、Xは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数のXは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。)と、式(2)で表される化合物と、を140℃以下の反応温度で反応させて、式(3)で表される構造を有する含ホウ素縮合環化合物を得る環化工程を含む、含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【化3】

[式(1)中、
環A、環B、及び環Cはそれぞれ独立に、芳香環を表し、
、H及びHは、水素原子を表し、
、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基M1を表し、R、R及びRで表される置換基M1は更に置換基M2を有していてもよく、前記置換基M2は更に置換基M3を有していてもよく、
m1は、Rが環Aと結合可能な数の最大値であり、
m2は、Rが環Bと結合可能な数の最大値であり、
m3は、Rが環Cと結合可能な数の最大値であり、
1及びX2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又は-N(R)-で表される基を表し、
Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基N1を有していてもよく、前記置換基N1は更に置換基N2を有していてもよく、前記置換基N2は更に置換基N3を有していてもよく、Rは環A、環B又は環Cと結合して環を形成していてもよく、
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよく、
前記置換基M1、前記置換基M2、前記置換基M3、前記置換基N1、前記置換基N2、及び前記置換基N3のうち少なくとも1つは、第3級アルキル基として環A、環B、環C、X、又はXに結合している。]
【化4】

[式(2)中、Mは、窒素原子又はホウ素原子であり、RA1、RA2及びRA3はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【化5】

[式(3)中、環A、環B、環C、X1及びX2の定義は、式(1)における環A、環B、環C、X及びX2の定義と同じである。]
[2]
前記式(2)で表される化合物の使用量は、前記BX3で表されるホウ素化合物の使用量に対して50モル%以上である、[1]に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
[3]
前記BX3で表されるホウ素化合物の使用量は、前記式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物に対して500モル%以上である、[1]又は[2]に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
[4]
前記式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物と前記BX3で表されるホウ素化合物とを反応させた後に、前記式(2)で表される化合物を反応させる、[1]~[3]のいずれか1つに記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
[5]
前記式(2)で表される化合物が式(2-A)で表される化合物である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【化6】

[式(2-A)中、
A2及びRA3は、前記と同じ意味を表す。
A4は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
m4は1~5の整数である。
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよい。]
[6]
前記反応温度が120℃以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
[7]
前記多環芳香族化合物が、式(1A)で表される化合物であり、前記含ホウ素縮合環化合物が、式(3A)で表される化合物である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の製造方法。
【化7】

[式(1A)中、
、H、H、X及びXは、前記と同じ意味を表す。
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルフェニル基、シクロアルキルスルフェニル基、アリールスルフェニル基、1価の複素環基、アミノ基又はハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11は、隣接する炭素原子に結合する基同士で結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。]
【化8】

[式(3A)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、X及びXは、前記と同じ意味を表す。]
[8]
陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に設けられた有機層とを含む、発光素子の製造方法であって、
[1]~[7]のいずれか1つに記載の製造方法により含ホウ素縮合環化合物を製造する工程と、
前記含ホウ素縮合環化合物を用いて前記有機層を形成する工程と、を含む発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ホウ素原子を含有する多環芳香族化合物に導入されている、第3級アルキル基の反応中での脱離を抑制できる含ホウ素縮合環化合物の製造方法が提供される。
また、本開示によれば、上記含ホウ素縮合環化合物の製造方法を用いた発光素子の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0010】
<共通する用語の説明>
本開示で共通して用いられる用語は、特記しない限り、以下の意味である。
【0011】
「室温」とは、25℃を意味する。
Meはメチル基、Etはエチル基、Buはブチル基、i-Prはイソプロピル基、t-Buはtert-ブチル基を表す。
【0012】
水素原子は、重水素原子であっても、軽水素原子であってもよい。
「低分子化合物」とは、分子量分布を有さず、分子量が1×10以下の化合物を意味する。
「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が1×10以上(例えば、1×10~1×10)である重合体を意味する。
「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。高分子化合物中に2個以上存在する構成単位は、一般に、「繰り返し単位」とも呼ばれる。
高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよいし、その他の態様であってもよい。
高分子化合物の末端基は、発光特性等の観点から、好ましくは安定な基である。高分子化合物の末端基としては、好ましくは、高分子化合物の主鎖と共役結合している基であり、例えば、炭素-炭素結合を介して高分子化合物の主鎖と結合するアリール基又は1価の複素環基が挙げられる。
【0013】
「アルキル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~50であり、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~5である。分岐のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20であり、更に好ましくは5~10である。
アルキル基は、置換基を有していてもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-プロピルヘプチル基、デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-ヘキシルデシル基、ドデシル基等が挙げられる。また、アルキル基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジ-ヘキシルフェニル)プロピル基、6-エチルオキシヘキシル基が挙げられる。
【0014】
「シクロアルキル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基が挙げられる。また、シクロアルキル基は、このような基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい(例えば、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基等)。
【0015】
「アリール基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~20であり、より好ましくは6~10である。
アリール基としては、例えば、単環式の芳香族炭化水素(例えば、ベンゼンが挙げられる。)、又は、多環式の芳香族炭化水素(例えば、ナフタレン及びインデン等の2環式の芳香族炭化水素;アントラセン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン及びフルオレン等の3環式の芳香族炭化水素;ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレン、ベンゾフルオレン、ピレン及びフルオランテン等の4環式の芳香族炭化水素;ジベンゾアントラセン、ジベンゾフェナントレン、ジベンゾフルオレン、ペリレン及びベンゾフルオランテン等の5環式の芳香族炭化水素;スピロビフルオレン等の6環式の芳香族炭化水素;並びに、ベンゾスピロビフルオレン及びアセナフトフルオランテン等の7環式の芳香族炭化水素が挙げられる。)から、環を構成する原子に直接結合する水素原子1個を除いた基が挙げられる。また、アリール基は、これらの基が複数結合した基を含む。
アリール基は、置換基を有していてもよい。アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基等が挙げられる。また、アリール基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0016】
「アルコキシ基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは4~10である。分岐のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
アルコキシ基は、置換基を有していてもよい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられる。また、アルコキシ基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0017】
「シクロアルコキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。シクロアルコキシ基は、置換基を有していてもよい。
シクロアルコキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。また、シクロアルコキシ基は、このような基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0018】
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよい。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基等が挙げられる。また、アリールオキシ基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0019】
「アルキルスルフェニル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルキルスルフェニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは4~10である。分岐のアルキルスルフェニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
アルキルスルフェニル基は、置換基を有していてもよい。アルキルスルフェニル基としては、例えば、メチルスルフェニル基、エチルスルフェニル基、プロピルスルフェニル基、イソプロピルスルフェニル基、ブチルスルフェニル基、イソブチルスルフェニル基、tert-ブチルスルフェニル基、ペンチルスルフェニル基、ヘキシルスルフェニル基、ヘプチルスルフェニル基、オクチルスルフェニル基、2-エチルヘキシルスルフェニル基、ノニルスルフェニル基、デシルスルフェニル基、3,7-ジメチルオクチルスルフェニル基、ラウリルスルフェニル基等が挙げられる。また、アルキルスルフェニル基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0020】
「シクロアルキルスルフェニル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
シクロアルキルスルフェニル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルスルフェニル基としては、例えば、シクロヘキシルスルフェニル基が挙げられる。また、シクロアルキルスルフェニル基は、このような基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0021】
「アリールスルフェニル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
アリールスルフェニル基は、置換基を有していてもよい。アリールスルフェニル基としては、例えば、フェニルスルフェニル基、1-ナフチルスルフェニル基、2-ナフチルスルフェニル基、1-アントラセニルスルフェニル基、9-アントラセニルスルフェニル基、1-ピレニルスルフェニル基等が挙げられる。また、アリールスルフェニル基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0022】
「1価の複素環基」とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち1個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。1価の複素環基の中でも、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち1個の水素原子を除いた残りの原子団である「1価の芳香族複素環基」が好ましい。
「芳香族複素環式化合物」は、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ジベンゾホスホール等の複素環自体が芳香族性を示す化合物、及び、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ベンゾピラン等の複素環自体は芳香族性を示さなくとも複素環に芳香環が縮環されている化合物を意味する。
1価の複素環基としては、例えば、単環式の複素環式化合物(例えば、フラン、チオフェン、オキサジアゾール、ピロール、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ジアザベンゼン及びトリアジンが挙げられる。)、又は、多環式の複素環式化合物(例えば、アザナフタレン、ジアザナフタレン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、ベンゾジアゾール及びベンゾチアジアゾール等の2環式の複素環式化合物;ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ジベンゾホスホール、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、アザカルバゾール、ジアザカルバゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、9,10-ジヒドロアクリジン、5,10-ジヒドロフェナジン、フェナザボリン、フェノホスファジン、フェノセレナジン、フェナザシリン、アザアントラセン、ジアザアントラセン、アザフェナントレン及びジアザフェナントレン等の3環式の複素環式化合物;ヘキサアザトリフェニレン、ベンゾカルバゾール、ベンゾナフトフラン及びベンゾナフトチオフェン等の4環式の複素環式化合物;ジベンゾカルバゾール、インドロカルバゾール及びインデノカルバゾール等の5環式の複素環式化合物;カルバゾロカルバゾール、ベンゾインドロカルバゾール及びベンゾインデノカルバゾール等の6環式の複素環式化合物;並びに、ジベンゾインドロカルバゾール等の7環式の複素環式化合物が挙げられる。)から、環を構成する原子に直接結合する水素原子1個を除いた基が挙げられる。また、1価の複素環基は、これらの基が複数結合した基を含む。
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~60であり、好ましくは3~20であり、より好ましくは4~20である。
1価の複素環基は、置換基を有していてもよい。1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジニル基、ピペリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基等が挙げられる。また、1価の複素環基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0023】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。
【0024】
「アミノ基」は、置換基を有していてもよく、置換アミノ基が好ましい。アミノ基が有する置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基が好ましい。アミノ基が有する置換基が複数存在する場合、それらは同一で異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する窒素原子とともに環を形成していてもよい。
置換アミノ基としては、二置換アミノ基が好ましい。二置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ジシクロアルキルアミノ基及びジアリールアミノ基が挙げられる。
二置換アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基が挙げられる。また、二置換アミノ基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0025】
「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルフェニル基、シクロアルキルスルフェニル基、アリールスルフェニル基及びアミノ基が挙げられ、これらの基は、更に置換基(即ち、二次置換基)を有していてもよい。
【0026】
<含ホウ素縮合環化合物の製造方法>
本開示に係る製造方法は、式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物と、BX3で表されるホウ素化合物(式中、Xは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数のXは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。)と、式(2)で表される化合物と、を140℃以下で反応させて、式(3)で表される構造を有する含ホウ素縮合環化合物を得る環化工程を含む。本開示にかかる製造方法において、原料、試薬などは一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0027】
本開示に係る製造方法によれば、副生物(例えば、ハロゲン化水素)を捕捉して原料がプロトン化されることを防止することで、反応温度を低温化でき、第3級アルキル基の脱離を抑制することができると推測している。
【0028】
[式(1)で表される構造を有する化合物]
環A、環B、及び環Cで表される芳香環は、芳香族性を示す環(例えば、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環)であればよく、例えば、芳香族性を示す単環(例えば、単環式の芳香族炭化水素環又は単環式の芳香族複素環)、芳香族性を示す縮合環(例えば、多環式の芳香族炭化水素環又は多環式の芳香族複素環)等であってよい。
単環式の芳香族炭化水素環としては、例えば、上述のアリール基の項で説明した単環式の芳香族炭化水素を構成する環が挙げられる。単環式の芳香族複素環としては、例えば、上述の1価の複素環基の項で説明した単環式の複素環式化合物を構成する環が挙げられる。多環式の芳香族炭化水素環としては、例えば、上述のアリール基の項で説明した多環式の芳香族炭化水素を構成する環が挙げられる。多環式の芳香族複素環としては、例えば、上述の1価の複素環基の項で説明した多環式の複素環式化合物を構成する環が挙げられる。
【0029】
環A、環B及び環Cは、好ましくは芳香族炭化水素環(例えば、上述の単環式の芳香族炭化水素又は縮合した芳香族炭化水素)である。
【0030】
環A、環B及び環Cにおける芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、インデン環、フルオレン環、スピロビフルオレン環、フェナントレン環、ジヒドロフェナントレン環、ピレン環、クリセン環及びトリフェニレン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、スピロビフルオレン環、フェナントレン環又はジヒドロフェナントレン環であり、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環又はスピロビフルオレン環であり、更に好ましくはベンゼン環であり、これらの環は置換基を有していてもよい。
【0031】
、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基M1を表す。
m1は、Rが環Aと結合可能な数の最大値であり、m2は、Rが環Bと結合可能な数の最大値であり、m3は、Rが環Cと結合可能な数の最大値である。環A、環B、及び環Cがそれぞれベンゼン環である場合、m1、m2、及びm3はそれぞれ4である。
【0032】
、R及びRで表される置換基M1は、ホウ素化合物との反応において脱離しない置換基であれば特に限定されないが、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルフェニル基、シクロアルキルスルフェニル基、アリールスルフェニル基、1価の複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子(好ましくは、塩素原子、臭素原子又はフッ素原子)であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基又は塩素原子であり、これらの基は更に置換基M2を有していてもよい。
【0033】
、R及びRで表される置換基M1における、アリール基としては、好ましくは、単環式又は2環式~6環式の芳香族炭化水素から、環を構成する原子に直接結合する水素原子1個を除いた基であり、より好ましくは、単環式、2環式又は3環式の芳香族炭化水素から、環を構成する原子に直接結合する水素原子1個を除いた基であり、更に好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン又はフルオレンから環を構成する原子に直接結合する水素原子1個を除いた基であり、特に好ましくは、フェニル基であり、これらの基は置換基M2を有していてもよい。
【0034】
、R及びRで表される置換基M1における、1価の複素環基としては、好ましくは、単環式又は2環式~6環式の複素環式化合物から、環を構成する原子に直接結合する水素原子1個を除いた基であり、単環式、2環式又は3環式の複素環式化合物から、環を構成する原子に直接結合する水素原子1個を除いた基であり、更に好ましくは、ピリジン、ジアザベンゼン、トリアジン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、フェノキサジン又はフェノチアジンから環を構成する原子に直接結合する水素原子1個を除いた基であり、これらの基は置換基M2を有していてもよい。
【0035】
、R及びRで表される置換基M1におけるアミノ基において、アミノ基が有する置換基としては、アリール基又は1価の複素環基が好ましく、アリール基がより好ましく、これらの基は更に置換基M2を有していてもよい。アミノ基が有する置換基M2におけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、R、R及びRが有していてもよい置換基M1におけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0036】
、R及びRで表される置換基M1が更に有していてもよい置換基M2としては、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、1価の複素環基又はアミノ基が好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基又はアミノ基がより好ましく、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基が更に好ましく、アルキル基又はシクロアルキル基が特に好ましい。置換基M2は更に置換基M3を有していてもよいが、更に置換基M3を有さないことが好ましい。
【0037】
、R及びRが有していてもよい置換基M2が更に有していてもよい置換基M3におけるアリール基、1価の複素環基及びアミノ基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、R、R及びRで表される置換基M1におけるアリール基、1価の複素環基及びアミノ基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0038】
1及びX2は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくは酸素原子、硫黄原子又は-N(R)-で表される基であり、より好ましくは酸素原子又は-N(R)-で表される基であり、更に好ましくは-N(R)-で表される基である。
【0039】
Rは、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくはアルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアルキル基又はアリール基であり、更に好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基N1を有していてもよい。
【0040】
Rが有していてもよい置換基N1は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基又はアミノ基であり、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアミノ基であり、更に好ましくはアルキル基又はアリール基であり、これらの基は更に置換基N2を有していてもよい。
【0041】
Rが有していてもよい置換基N1が更に有していてもよい置換基N2としては、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、1価の複素環基又はアミノ基が好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基又はアミノ基がより好ましく、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基が更に好ましい。置換基N2は更に置換基N3を有していてもよいが、更に置換基N3を有さないことが好ましい。
【0042】
Rが有していてもよい置換基N1が更に有していてもよい置換基N2におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、R、R及びRで表される置換基M1におけるアリール基、1価の複素環基及びアミノ基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0043】
置換基M1、置換基M2、置換基M3、R、置換基N1、及び置換基N2のうち少なくとも1つは、第3級アルキル基として環A、環B、環C、X、又はXに結合している。
すなわち、環A、環B、環C、X、Xに対して直接的又は間接的に結合する置換基が存在し、その置換基のうち少なくとも1つは、第3級アルキル基である。
【0044】
第3級アルキル基としては、例えば、t-ブチル基、t-アミル基、t-オクチル基、アダマンチル基、1-メチルシクロプロピル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-ベンジルシクロプロピル等が挙げられる。中でも、第3級アルキル基は、t-ブチル基であることが好ましい。
【0045】
第3級アルキル基は、環A、環B、環C、X、Xのうち1つに対して、直接的又は間接的に結合していてもよく、2つ以上に対して直接的又は間接的に結合していてもよい。また、第3級アルキル基は、1つの環に対して1つのみ結合していてもよく、1つの環に対して2つ以上結合していてもよい。同様に、第3級アルキル基は、X及びXそれぞれに対して1つのみ結合していてもよく、X及びXそれぞれに対して2つ以上結合していてもよい。
中でも、第3級アルキル基は、環B及び環Cに結合しているか、環A,環B、及び環Cそれぞれに結合していることが好ましい。また、第3級アルキル基は、1つの環に1つのみ結合していることが好ましい。
さらに、第3級アルキル基は、環A、環B、及び環Cの少なくとも1つに対して直接結合していることが好ましい。すなわち、置換基M1のうち少なくとも1つは、第3級アルキル基であることが好ましい。
【0046】
式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物は、低分子化合物であってもよく、高分子化合物であってもよい。また、式(1)で表される構造を1つのみ有する化合物であってもよく、式(1)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。式(1)で表される構造を複数有する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
上記多環芳香族化合物が高分子化合物である場合、該高分子化合物としては、例えば式(1)で表される構造を構成単位として含む高分子化合物及び式(1)で表される構造を繰り返し単位として含む高分子化合物が挙げられる。高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、5×10~1×10であってもよく、1×10~5×10であってもよく、2×10~2×10であってもよい。
【0047】
式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくは低分子化合物である。上記多環芳香族化合物の分子量は、好ましくは200以上5,000以下であり、より好ましくは400以上3,000以下である。
【0048】
[式(2)で表される化合物]
本開示に係る製造方法によれば、式(2)で表される化合物を用いることで、反応中に副生する副生物(例えば、ハロゲン化水素)を捕捉する効果が向上し、第3級アルキル基の脱離を抑制することができると推測している。
【0049】
Mは、窒素原子又はホウ素原子であり、第3級アルキル基の脱離をより抑制できるので、好ましくは窒素原子である。
【0050】
Mが窒素原子である場合、RA1は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、より好ましくはアルキル基又はアリール基であり、更に好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0051】
Mが窒素原子である場合、RA2及びRA3はそれぞれ独立に、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、より好ましくはアルキル基又はアリール基であり、更に好ましくはアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0052】
Mが窒ホウ素原子である場合、RA1、RA2及びRA3は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、より好ましくはアルキル基又はアリール基であり、更に好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0053】
式(2)で表される化合物は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくは式(2-A)で表される化合物である。
【0054】
A4は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、より好ましくはアルキル基又はアリール基であり、更に好ましくはアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0055】
式(2-A)で表される化合物は、好ましくは式(2-A1)で表される化合物である。
【化9】

[式(2-A1)中、RA2、RA3及びRA4は、前記と同じ意味を表す。]
【0056】
Mが窒素原子である場合、式(2)で表される化合物としては、例えば、式(A-101)~式(A-110)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
これらの中でも好ましい化合物には、式(A-101)、式(A-102)及び式(A-103)で表される化合物が挙げられる
【化10】
【0058】
Mがホウ素原子である場合、式(2)で表される化合物としては、例えば、式(B-101)~式(B-110)で表される化合物が挙げられる。
【化11】
【0059】
[式(3)で表される構造を有する含ホウ素縮合環化合物]
本開示に係る製造方法では、式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物を用いた環化反応によって、式(3)で表される構造を有する含ホウ素縮合環化合物が得られる。
【0060】
式(3)中、環A、環B、環C、X1及びX2の定義は、式(1)における環A、環B、環C、X及びX2の定義と同じであるため、説明を省略する。
【0061】
式(3)中、置換基M1、置換基M2、置換基M3、R、置換基N1、及び置換基N2のうち少なくとも1つは、第3級アルキル基として環A、環B、環C、X、又はXに結合している。式(3)で表される構造を有する含ホウ素縮合環化合物における第3級アルキル基の結合位置は、式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物における第3級アルキル基の結合位置と同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0062】
上記含ホウ素縮合環化合物は、低分子化合物であってもよく、高分子化合物であってもよい。また、式(3)で表される構造を1つのみ有する化合物であってもよく、式(3)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。式(3)で表される構造を複数有する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
上記含ホウ素縮合環化合物が高分子化合物である場合、該高分子化合物としては、例えば、式(3)で表される構造を構成単位として含む高分子化合物及び式(3)で表される構造を繰り返し単位として含む高分子化合物が挙げられる。高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、5×10~1×10であってもよく、1×10~5×10であってもよく、2×10~2×10であってもよい。
【0063】
上記含ホウ素縮合環化合物は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくは低分子化合物である。上記含ホウ素縮合環化合物の分子量は、好ましくは200以上5,000以下であり、より好ましくは400以上3,000以下である。
【0064】
多環芳香族化合物としては、得られる含ホウ素縮合環化合物の安定性、合成のし易さの観点から、式(1A)で表される化合物が好ましい。式(1A)で表される化合物を用いることで、含ホウ素縮合環化合物として、式(3A)で表される化合物が合成される。
【0065】
式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物がハロゲン原子を有する場合、当該ハロゲン原子は、フッ素原子又は塩素原子が好ましい。例えば、R~R11におけるハロゲン原子は、フッ素原子又は塩素原子が好ましい。また、R~R11が有していてもよい置換基としてのハロゲン原子は、フッ素原子又は塩素原子が好ましい。
【0066】
BX3で表されるホウ素化合物におけるXは、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくは臭素原子又はヨウ素原子であり、更に好ましくはヨウ素原子である。
【0067】
式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物を、ホウ素化合物と反応させる場合、式(1)で表される化合物とホウ素化合物との反応(環化反応)は、通常、溶媒中で行われる。環化反応に用いられる溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、及びこれらの混合物が挙げられる。また、環化反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0068】
BX3で表されるホウ素化合物の使用量は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物に対して、好ましくは250モル%以上であり、より好ましくは500モル%以上である。上記使用量の上限値は、例えば、1000モル%である。
【0069】
式(2)で表される化合物の使用量は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、BX3で表されるホウ素化合物の使用量に対して、好ましくは25モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上である。上記使用量の上限値は、式(2)で表される化合物とBX3で表されるホウ素化合物とが錯体を形成しないようにする観点から、50モル%であることが好ましい。
【0070】
式(2)で表される化合物の使用量は、式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物1モルに対して、通常0.05~10モルであり、好ましくは0.15~5モルである。
【0071】
環化反応の反応温度は、140℃以下であり、好ましくは120℃以下である。反応温度の下限値は特に限定されず、例えば、20℃である。
環化反応の反応時間は、通常0.1時間~100時間、好ましくは0.5時間~48時間である。
本開示に係る製造方法では、反応温度を140℃以下とすることで、第3級アルキル基の脱離が抑制される。
【0072】
式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物と、BX3で表されるホウ素化合物と、式(2)で表される化合物と、を反応させる順番は特に限定されず、全ての成分を同時に混合して反応させてもよく、各成分を順次添加することで反応させてもよい。
中でも、転化率を向上させる観点から、式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物と、BX3で表されるホウ素化合物とを反応させた後に、式(2)で表される化合物を反応させることが好ましい。式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物と、BX3で表されるホウ素化合物とを先に反応させると、式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物と式(2)で表される化合物との相互作用が抑制されるため、目的物である含ホウ素縮合環化合物を生成する反応が促進すると考えられる。
【0073】
環化反応の反応終了後は、公知の精製方法等を行うことで、含ホウ素縮合環化合物を得ることができる。例えば、環化反応の反応終了後、反応混合物に水を加え、有機溶媒で抽出して、有機相を乾燥させ又は濃縮し、必要に応じて昇華、抽出、晶析、クロマトグラフィー、吸着剤処理等の精製を行うことで、含ホウ素縮合環化合物を得ることができる。
【0074】
本開示に係る製造方法として、下記の合成ルートによる製造方法が例示できる。
【化12】


[式中、RTは第三級アルキル基を表す。]
【0075】
本開示の製造方法において環化工程を行う場合に、式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物として、下記の化合物が例示できる。
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】
【0076】
本開示に係る製造方法において環化工程を行う場合に、式(1)で表される構造を有する多環芳香族化合物として、下記の構成単位を含む化合物が例示できる。
【化21】
【0077】
本開示に係る製造方法により製造される含ホウ素縮合環化合物として、下記の化合物が例示できる。
【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】
【0078】
本開示に係る製造方法により製造される含ホウ素縮合環化合物として、下記の構成単位を含む化合物が例示できる。
【化33】
【0079】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
例えば、本開示の一側面は、上述した各化合物(例えば、上述の含ホウ素縮合環化合物、上述の多環芳香族化合物)に関するものであってもよい。一態様において、本開示二かかかる含ホウ素縮合環化合物は、本開示に係る製造方法により製造された含ホウ素縮合環化合物であってもよい。
【0081】
本開示の他の一側面は、材料(例えば、発光材料)及び該材料の製造方法に関するものであってもよい。一態様において、本開示の材料(例えば、発光材料)は、本開示に係る製造方法により製造された含ホウ素縮合環化合物を用いて形成された材料(例えば、発光材料)であってもよい。他の一態様において、本開示の材料(例えば、発光材料)の製造方法は、本開示の製造方法により製造された含ホウ素縮合環化合物を用いて形成された材料(例えば、発光材料)の製造方法であってもよい。
【0082】
本開示の他の一側面は、膜及び該膜の製造方法に関するものであってもよい。一態様において、本開示の膜は、本開示に係る製造方法により、製造された含ホウ素縮合環化合物を用いて形成された膜であってもよい。他の一態様において、本開示の膜の製造方法は、本開示の製造方法により製造された含ホウ素縮合環化合物を用いて形成された膜の製造方法であってもよい。本開示の膜は、例えば、乾式法又は湿式法により作製することができる。本開示の膜は、発光素子における発光層として好適に用いることができる。
【0083】
本開示の他の一側面は、発光素子及び該発光素子の製造方法に関するものであってよい。一態様において、本開示の発光素子は、例えば、陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた有機層(例えば、発光層)と、を備える発光素子であってもよい。本開示の発光素子において、有機層(例えば、発光層)は、本開示に係る製造方法により製造された含ホウ素縮合環化合物を用いて形成された層であってもよい。他の一態様において、本開示の発光素子は、例えば、陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた有機層(例えば、発光層)と、を備える発光素子の製造方法であってよい。本開示の発光素子の製造方法において、有機層(例えば、発光層)は、本開示の製造方法により製造された含ホウ素縮合環化合物を用いて形成された層であってもよい。本開示の発光素子において、有機層(例えば、発光層)は、例えば、乾式法又は湿式法により作製することができる。
【0084】
[発光素子の製造方法]
本開示の発光素子の製造方法は、陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた有機層とを含む、発光素子の製造方法であって、上記製造方法により含ホウ素縮合環化合物を製造する工程と、含ホウ素縮合環化合物を用いて有機層を形成する工程と、を含むことが好ましい。
【0085】
有機層としては、例えば、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層等が挙げられる。これらの少なくとも1つの層が上記含ホウ素縮合環化合物を用いて形成される。
【0086】
発光素子は、具体的には、上記含ホウ素縮合環化合物と、上記含ホウ素縮合環化合物とは異なる、発光材料、電荷輸送材料及び電荷注入材料からなる群から選ばれる少なくとも1種と、溶媒とを含む組成物を用いて陽極と陰極の間に有機層を形成することにより製造することができる。
【0087】
<層構成>
有機層は、通常、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層及び電子注入層からなる群から選ばれる1種以上の層であり、好ましくは、正孔輸送層である。これらの層は、各々、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料を含む。これらの層は、各々、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料を、溶媒に溶解させた組成物(インク)を調製して用い、湿式法を用いて形成することができる。
【0088】
発光素子は、陽極と陰極の間に発光層を有する。発光素子は、正孔注入性及び正孔輸送性の観点からは、陽極と発光層との間に、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも1層を有することが好ましく、電子注入性及び電子輸送性の観点からは、陰極と発光層の間に、電子注入層及び電子輸送層の少なくとも1層を有することが好ましい。
【0089】
正孔輸送層、電子輸送層、発光層、正孔注入層及び電子注入層の材料としては、上記含ホウ素縮合環化合物の他、各々、正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、正孔注入材料及び電子注入材料等が挙げられる。
【0090】
正孔輸送層の材料、電子輸送層の材料及び発光層の材料は、発光素子の作製において、各々、正孔輸送層、電子輸送層及び発光層に隣接する層の形成時に使用される溶媒に溶解する場合、該溶媒に該材料が溶解することを回避するために、該材料が架橋基を有することが好ましい。架橋基を有する材料を用いて各層を形成した後、該架橋基を架橋させることにより、該層を不溶化させることができる。
【0091】
発光素子において、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層等の各層の形成方法としては、高分子化合物を用いる場合、例えば、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられ、低分子化合物を用いる場合、例えば、粉末からの真空蒸着法、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられる。積層する層の順番、数及び厚さは、発光効率及び輝度寿命を勘案して調整する。
【0092】
<基板/電極>
発光素子における基板は、電極を形成することができ、かつ、有機層を形成する際に化学的に変化しない基板であればよく、例えば、ガラス、プラスチック、シリコン等の材料からなる基板である。不透明な基板の場合には、基板から最も遠くにある電極が透明又は半透明であることが好ましい。
陽極の材料としては、例えば、導電性の金属酸化物、半透明の金属が挙げられ、好ましくは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ;インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等の導電性化合物;銀とパラジウムと銅との複合体(APC);NESA、金、白金、銀、銅である。
陰極の材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム等の金属;それらのうち2種以上の合金;それらのうち1種以上と、銀、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1種以上との合金;並びに、グラファイト及びグラファイト層間化合物が挙げられる。合金としては、例えば、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、インジウム-銀合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、カルシウム-アルミニウム合金が挙げられる。
陽極及び陰極は、各々、2層以上の積層構造としてもよい。
【0093】
発光素子は、例えば、コンピュータ、テレビ、携帯端末等のディスプレイ、照明に用いることができる。
【実施例0094】
以下、実施例によって本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0095】
TLC-MSは、下記の方法で測定した。
測定試料をトルエン、テトラヒドロフラン又はクロロホルムのいずれかの溶媒に任意の濃度で溶解させ、DART用TLCプレート(テクノアプリケーションズ社製、商品名:YSK5-100)上に塗布し、TLC-MS(日本電子製、商品名:JMS-T100TD(The AccuTOF TLC))を用いて測定した。測定時のヘリウムガス温度は、200℃~400℃の範囲で調節した。
【0096】
化合物の純度の指標として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)面積百分率の値(以下、「LC面積百分率値」という)を用いた。この値は、特に記載がない限り、HPLC(島津製作所製、商品名:LC-20A)でのUV=254nmにおける値とする。この際、測定する化合物は、0.01~0.2質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン又はクロロホルムに溶解させ、濃度に応じてHPLCに1~10μL注入した。HPLCの移動相には、アセトニトリル/テトラヒドロフランの比率を100/0~0/100(容積比)まで変化させながら用い、1.0mL/分の流量で流した。カラムは、SUMIPAX ODS Z-CLUE(住化分析センター製、内径:4.6mm、長さ:250mm、粒径3μm)又は同等の性能を有するODSカラムを用いた。検出器には、フォトダイオードアレイ検出器(島津製作所製、商品名:SPD-M20A)を用いた。
【0097】
以下実施例における環化工程において、加熱反応が完了した時点でのLC面積百分率値を反応収率とした。
【0098】
<合成例1> 化合物A-2の合成
【化34】
【0099】
(化合物A-1の合成)
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、2-ブロモ-5-クロロトルエン(35.32g)、tert-ブチルアニリン(25.42g)、ナトリウム-tert-ブトキシド(24.78g)、トルエン(777ml)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.63g)、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン(0.32g)を加え、50℃で7時間撹拌した。反応液を冷却後、イオン交換水を滴下し、分液した。有機層をイオン交換水で分液洗浄した後、有機層に硫酸マグネシウムを加えて1時間攪拌した。セライトを敷いたフィルターを通して濾過し、得られた溶液を減圧濃縮した。n-ヘプタンと活性炭を加えて30分撹拌した後、シリカゲルを敷いたフィルターを通して濾過し、得られた溶液を減圧濃縮し粗生成物を得た。メタノール及びイオン交換水の混合溶媒から再結晶し、44.85gの化合物A-1を得た。
【0100】
(化合物A-2の合成)
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物A-1(49.06g)、トルエン(255ml)を加え、85℃まで加熱して共沸脱水した。その後、1,3-ジブロモ-5-tert-ブチルベンゼン(25.52g)、ナトリウム-tert-ブトキシド(21.00g)、トルエン(255ml)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.80g)、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン(0.40g)を加え、40℃で3時間撹拌した。反応液を冷却後、イオン交換水を滴下し、分液した。有機層をイオン交換水で分液洗浄した後、有機層に硫酸マグネシウムを加えて1時間攪拌した。セライトを敷いたフィルターを通して濾過し、得られた溶液を減圧濃縮した。n-ヘプタンと活性炭を加えて30分撹拌した後、シリカゲルを敷いたフィルターを通して濾過し、得られた溶液を減圧濃縮し粗生成物を得た。トルエン、酢酸エチル及びアセトニトリルの混合溶媒から再結晶し、59.20gの化合物A-2を得た。
【0101】
<実施例M1> 化合物A-3の合成
【化35】
【0102】
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物A-2(1.11g)、モノクロロベンゼン(22ml)を加えた後、三ヨウ化ホウ素(3.20g)を加えた。ジメチル-o-トルイジン(0.55g)を滴下し、120℃で6時間撹拌した。前記6時間撹拌の時点で、脱t-Bu化合物のLC面積百分率値は0.2%、化合物A-3のLC面積百分率値は95%であった。
TLC-MS(positive):m/z=685[M+H]
脱t-Bu化合物とは、化合物A-3から少なくとも1つのt-ブチル基が脱離した化合物を意味する。
【0103】
<実施例M2>
反応温度を120℃から20℃に変更し、反応時間を6時間から7時間に変更したこと以外は、実施例M1と同様の方法で化合物A-3を得た。7時間撹拌の時点で、脱t-Bu化合物のLC面積百分率値は0.0%、化合物A-3のLC面積百分率値は89%であった。
【0104】
<実施例M3>
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物A-2(0.30g)、モノクロロベンゼン(6ml)を加えた後、三ヨウ化ホウ素(0.7g)を加えた。2,6-ルチジン(0.11ml)を滴下し、90℃で5時間攪拌した。前記5時間攪拌の時点で、脱t-Bu化合物のLC面積百分率値は0.1%、化合物A-3のLC面積百分率値は67%であった。
【0105】
<実施例M4>
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物A-2(0.30g)、モノクロロベンゼン(6ml)を加えた後、三ヨウ化ホウ素(0.7g)を加えた。ジメチル-o-トルイジン(0.13ml)を滴下し、トリフェニルボラン(0.32g)を加えた後、90℃で3時間攪拌した。前記3時間攪拌の時点で、脱t-Bu化合物のLC面積百分率値は0.0%、化合物A-3のLC面積百分率値は60%であった。
【0106】
<比較例MC1>
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物A-2(1.03g)、モノクロロベンゼン(21ml)を加えた後、三ヨウ化ホウ素(2.38g)を加えた。ジメチル-o-トルイジン(0.37g)を滴下し、150℃で3時間攪拌した。前記3時間攪拌の時点で、脱t-Bu化合物のLC面積百分率値は15%、化合物A-3のLC面積百分率値は54%であった。
【0107】
<比較例MC2>
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物A-2(1.22g)、モノクロロベンゼン(24ml)を加えた後、三ヨウ化ホウ素(2.82g)を加え、120℃で9時間攪拌した。前記9時間攪拌の時点で、脱t-Bu化合物のLC面積百分率値は13%、化合物A-3のLC面積百分率値は54%であった。
【0108】
実施例M1~M4及び比較例MC1~MC2における脱t-Bu化合物のLC面積百分率値の結果を、表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1に示すとおり、本開示に係る製造方法では、第3級アルキル基の脱離が抑制できることが分かった。