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特開2024-173687現像装置、基板処理システム及び現像方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173687
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】現像装置、基板処理システム及び現像方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20241205BHJP
   G03F 7/36 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/30 569E
G03F7/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064700
(22)【出願日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2023090750
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 建次
(72)【発明者】
【氏名】牛丸 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大島 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 圭
(72)【発明者】
【氏名】寺下 裕一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 幸信
(72)【発明者】
【氏名】池田 克広
(72)【発明者】
【氏名】藤瀬 遼平
【テーマコード(参考)】
2H196
5F146
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196BA13
2H196GA36
5F146LA12
5F146LA19
(57)【要約】
【課題】金属含有レジストの良好なパターンを得る。
【解決手段】金属含有レジストの被膜が形成された基板を現像する現像装置であって、前記基板を支持して加熱する加熱部と、前記加熱部を覆い前記加熱部上に処理空間を形成するチャンバと、酸を含む現像ガスが供給されるガス供給部と、前記ガス供給部に供給された前記現像ガスを分散させて、前記加熱部の上方の位置に形成された複数の吐出孔から、前記処理空間に吐出する分散機構と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有レジストの被膜が形成された基板を現像する現像装置であって、
前記基板を支持して加熱する加熱部と、
前記加熱部を覆い前記加熱部上に処理空間を形成するチャンバと、
酸を含む現像ガスが供給されるガス供給部と、
前記ガス供給部に供給された前記現像ガスを分散させて、前記加熱部の上方の位置に形成された複数の吐出孔から、前記処理空間に吐出する分散機構と、を備える、現像装置。
【請求項2】
前記分散機構は、
前記複数の吐出孔が形成された下流分散板と、
前記下流分散板の上方に設けられ、前記下流分散板との間に拡散空間を形成すると共に、複数の中継孔が形成された上流分散板と、を有し、
前記ガス供給部に供給され、前記複数の前記中継孔から前記拡散空間に吐出された前記現像ガスを、前記複数の吐出孔から、前記処理空間に吐出する、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記加熱部は、前記基板が載置される載置面とヒータパターンとを有する熱板を有し、
前記熱板は、
前記ヒータパターンを上下から挟み一方が前記載置面を有するセラミック製の板状部材と、
前記ヒータパターンの外周の前記板状部材間の隙間を封止する封止部材と、をさらに有する、請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
平面視における、前記加熱部に支持された前記基板の周縁部側から前記処理空間を排気する周縁排気部をさらに備え、
前記周縁排気部は、
前記処理空間に開口する排気口と、
前記排気口から延びる周縁排気路と、を有し、
前記分散機構は、前記下流分散板と前記上流分散板との間に位置し、前記下流分散板及び前記上流分散板と共に前記拡散空間を形成する中間部材をさらに有し、
前記中間部材は、前記周縁排気路の一部を成す、請求項2に記載の現像装置。
【請求項5】
平面視における、前記加熱部に支持された前記基板の周縁部側から前記処理空間を排気する周縁排気部をさらに備え、
前記周縁排気部は、前記処理空間に開口する排気口を有し、
前記チャンバは、
前記分散機構を有する上チャンバと、
前記上チャンバと共に前記処理空間を形成する下チャンバと、を有し、
前記処理空間の外周における、前記上チャンバと前記下チャンバとの継ぎ目の内周端は、前記周縁排気部の前記排気口よりも下側に位置する、請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項6】
平面視における、前記加熱部に支持された前記基板の周縁部側から前記処理空間を排気する周縁排気部をさらに備え、
前記周縁排気部は、
前記処理空間に開口する排気口と、
前記排気口から延びる周縁排気路と、を有し、
前記チャンバは、
前記上流分散板の上方に位置する天板部と、
前記天板部を加熱するヒータと、を有し、
前記天板部は、前記ガス供給部及び前記周縁排気路に接する、請求項2に記載の現像装置。
【請求項7】
前記チャンバは、
前記分散機構を有する上チャンバと、
前記上チャンバと共に前記処理空間を形成する下チャンバと、を有し、
前記上チャンバは、前記下流分散板及び前記上流分散板の外周部を支持する支持部が設けられ前記支持部の内周面が前記処理空間に露出する上側側壁部を有し、
前記下チャンバは、前記加熱部の外周部を覆うと共に前記上側側壁部に対向する下側側壁部を有し、
前記下流分散板、前記上流分散板、前記上側側壁部及び前記下側側壁部は、ケイ素、ケイ素化合物またはニッケルクロム合金で形成されている、請求項2、4または6に記載の現像装置。
【請求項8】
前記ガス供給部に一端が接続され他端に気化器が接続された供給路と、
前記供給路に接続された分岐路と、
制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記基板を現像前に事前に加熱させる工程と、前記加熱部に支持された前記基板を加熱させると共に、前記気化器から前記供給路を介して供給された前記現像ガスを前記処理空間に吐出させ、前記基板を現像する工程と、を実行するように制御を行い、
前記事前に加熱させる工程において、前記気化器からの前記現像ガスの供給を行わせるが、前記気化器から供給された前記現像ガスを、前記ガス供給部に流させずに、前記分岐路に流させる、請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項9】
前記ガス供給部に一端が接続され他端に気化器が接続された供給路をさらに備え、
前記気化器内において、前記酸または前記酸の蒸気の流路の内壁面が、ケイ素、ケイ素化合物またはニッケルクロム合金で形成されている、請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項10】
処理装置を含む層が鉛直方向に複数積層され、
複数積層された前記層は、
請求項1または2に記載の現像装置を含む層を複数有すると共に
高さが2.8メートル以下である、基板処理システム。
【請求項11】
前記加熱部は、
前記基板が載置される載置面を有する熱板と、
前記載置面に載置された前記基板の中央部に向けて前記載置面から不活性ガスを吐出する吐出孔と、を有し、
前記熱板の前記載置面から突出するように設けられ、前記基板を支持する凸部を複数有し、
前記基板を支持可能に構成され、前記載置面に対し昇降し、前記複数の前記凸部との間で前記基板を受け渡す昇降部材をさらに有し、
前記複数の前記凸部に支持された前記基板の前記熱板による加熱を、当該基板に前記昇降部材に接触させた状態で行う、請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項12】
前記加熱部は、
前記基板が載置される載置面を有する熱板と、
前記熱板の前記載置面から突出する凸部と、
前記載置面に載置された前記基板の中央部に向けて前記載置面から不活性ガスを吐出する吐出孔と、を有し、
前記載置面は、当該載置面の径方向に沿って複数の領域に区画され、
前記領域それぞれに前記凸部が設けられ、
最外周の前記領域は、それより内側の前記領域より、前記凸部の高さが低い、請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項13】
平面視における、前記加熱部に支持された前記基板の周縁部側から前記処理空間を排気する周縁排気部をさらに備え、
前記周縁排気部は、前記処理空間に開口する排気口を、前記加熱部に支持された前記基板の周方向に沿うように複数有し、
前記チャンバは、
前記分散機構を有する上チャンバと、
前記上チャンバと共に前記処理空間を形成する下チャンバと、を有し、
前記下チャンバは、前記加熱部の外周部を覆うと共に前記上チャンバの外周部と対向する下側側壁部と、
前記上チャンバの前記外周部と前記下側側壁部との間の隙間を封止する封止部材と、を有し、
前記下側側壁部は、平面視における前記封止部材より内側に、前記隙間に向けて開口する給気孔を、前記加熱部に支持された前記基板の周方向に沿うように複数有する、請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項14】
前記ガス供給部に接続された気化器をさらに備え、
前記気化器は、
前記現像ガスの原料としての、前記酸と他の薬液との混合溶液を収容する収容室と、
前記収容室を加熱する別の加熱部と、
前記収容室に隣接して設けられ、当該収容室と共に前記別の加熱部により加熱される、前記収容室より体積が大きい熱マス部と、を有する、請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項15】
金属含有レジストの被膜が形成された基板を現像する現像方法であって、
加熱部に支持された前記基板を加熱すると共に、前記加熱部の上方の処理空間に、酸を含む現像ガスを吐出し、前記基板を現像する工程を含み、
前記現像する工程において、ガス供給部に供給された前記現像ガスを分散させて、前記加熱部の上方の位置に形成された複数の吐出孔から、前記処理空間に吐出する、現像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、現像装置、基板処理システム及び現像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板の現像処理を行う現像方法であって、金属含有塗布膜が所定のパターンに露光された前記基板に有機溶剤を含む現像液を供給する工程を含む方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-96081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、金属含有レジストの良好なパターンを得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、金属含有レジストの被膜が形成された基板を現像する現像装置であって、前記基板を支持して加熱する加熱部と、前記加熱部を覆い前記加熱部上に処理空間を形成するチャンバと、酸を含む現像ガスが供給されるガス供給部と、前記ガス供給部に供給された前記現像ガスを分散させて、前記加熱部の上方の位置に形成された複数の吐出孔から、前記処理空間に吐出する分散機構と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、金属含有レジストの良好なパターンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかる現像装置を備える、基板処理システムとしての塗布現像システムの内部構成の概略を示す説明図である。
図2図1の塗布現像システムの正面側の内部構成の概略を示す図である。
図3図1の塗布現像システムの背面側の内部構成の概略を示す図である。
図4】現像装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
図5】上チャンバの下面図である。
図6】ガス供給機構の構成を説明するための図である。
図7】処理シーケンスの例の主な工程を示すフローチャートである。
図8】加熱部の他の例を説明するための図である。
図9】昇降ピンの一例を説明するための図である。
図10】下チャンバの他の例を説明するための図である。
図11】気化器の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイス等の製造プロセスにおけるフォトリソグラフィでは、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)等の基板上に所望のレジストのパターンを形成するために一連の処理が行われる。上記一連の処理には、例えば、基板上にレジスト液を供給しレジストの被膜(以下、レジスト膜)を形成するレジスト塗布処理、レジスト膜を所定のパターンで露光する露光処理、露光されたレジスト膜内の化学反応を促進させること等を目的として露光後に基板を加熱するPEB(Post Exposure Bake)処理、露光処理後の基板を現像しレジストのパターンを形成する現像処理等が含まれる。
【0009】
上述の現像処理では、例えば基板上に現像液が供給され、基板表面上に現像液の液膜が形成されて、基板が現像される。また、この場合、その後に基板上に純水等の洗浄液が供給され、基板が高速回転されて洗浄されることもある。
【0010】
ところで、近年、露光技術等の進歩により半導体デバイスの微細化すなわちレジストパターンの微細化が一層進行している。微細なレジストパターンでは、上述の現像処理の際に現像液や洗浄液が基板上に残ると問題が生じることがある。例えば、パターン間に現像液や洗浄液が残ったときに、この残った現像液や洗浄液の表面張力により、いわゆるパターン倒れが発生することがある。
【0011】
また、従来、レジストとして、化学増幅型レジストが多く用いられていたが、近年では、非化学増幅型の金属含有レジストが用いられることがある。この金属含有レジストは、微細なパターンを形成する場合により適したレジストとして期待されている。ただし、無機レジストを用いた場合でも、現像液等の処理液を用いて基板を現像し微細なレジストパターンをしようとすると、パターンが倒れること、すなわち、欠陥の一種であるパターン倒れが生じることがある。
【0012】
そこで、本開示にかかる技術は、パターン倒れ等の欠陥の発生を抑制し、金属含有レジストの良好なパターンを得る。
【0013】
以下、本実施形態にかかる現像装置、基板処理システム及び現像方法を、図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<塗布現像システム>
図1は、本実施形態にかかる現像装置を備える、基板処理システムとしての塗布現像システムの内部構成の概略を示す説明図である。図2及び図3はそれぞれ、塗布現像システムの正面側と背面側の内部構成の概略を示す図である。
【0015】
図1の塗布現像システム1は、基板としてのウェハWに、金属含有レジストのパターンを形成する。塗布現像システム1が用いる金属含有レジストは例えばネガ型である。なお、金属含有レジストに含まれる金属は任意であるが、例えばスズである。
【0016】
塗布現像システム1は、図1~3に示すように、例えば外部との間でカセットCが搬入出されるカセットステーション2と、現像処理等の予め定められた処理を施す各種処理装置を複数備えた処理ステーション3と、を有する。塗布現像システム1は、処理ステーション3のY方向正側(図1の右側)に隣接して設けられ露光装置4との間でウェハWを受け渡すインターフェイスステーション5を有する。上述のカセットステーション2と処理ステーション3とインターフェイスステーション5とは一体に接続されている。
【0017】
カセットステーション2は、例えばカセット搬入出部10とウェハ搬送部11に分かれている。例えばカセット搬入出部10は、塗布現像システム1のY方向負側(図1の左側)の端部に設けられている。カセット搬入出部10には、カセット載置台12が設けられている。カセット載置台12上には、複数、例えば4つの載置板13が設けられている。載置板13は、水平方向のX方向(図1の上下方向)に一列に並べて設けられている。これらの載置板13には、塗布現像システム1の外部に対してカセットCを搬入出する際に、カセットCを載置することができる。
【0018】
ウェハ搬送部11には、X方向(図1の上下方向)に延びる搬送路20上を移動自在な搬送装置21が設けられている。搬送装置21は、上下方向及び鉛直軸周り(θ方向)にも移動自在であり、各載置板13上のカセットCと、後述する処理ステーション3の第3のブロックG3の受け渡し装置との間でウェハWを搬送できる。
【0019】
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数例えば4つのブロックG1、G2、G3、G4が設けられている。例えば処理ステーション3の正面側(図1のX方向負側)には、第1のブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(図1のX方向正側)には、第2のブロックG2が設けられている。また、処理ステーション3のカセットステーション2側(図1のY方向負側)には、第3のブロックG3が設けられ、処理ステーション3のインターフェイスステーション5側(図1のY方向正側)には、第4のブロックG4が設けられている。
【0020】
第1のブロックG1には、図2に示すように、処理装置を含む層Lが、上下方向すなわち鉛直方向に、複数積層されている。複数積層された層Lは、現像装置30を含む層L1を複数有する。層L1に含まれる現像装置30の数は1であってもよいし、層L1内に現像装置30が水平方向に複数並べられていてもよい。複数積層された層Lにおける層L1以外の層L2には、例えば、反射防止膜形成装置やレジスト塗布装置が含まれる。
また、複数積層された層Lの床面からの高さは、SEMI規格で設定されている値以下であり、具体的には、2.8メートル以下である。
【0021】
現像装置30は、ウェハWに現像処理を施す。すなわち、現像装置30は、ウェハWを現像する。具体的には、現像装置30は、金属含有レジストの被膜が形成され露光処理及び露光後の加熱処理すなわちPEB処理が施されたウェハWを現像する。より具体的には、現像装置30は、後述するように、酸を含む現像ガスへのウェハWの暴露により、金属含有レジストの被膜が形成され露光処理及びPEB処理が施されたウェハWを現像する。さらに具体的には、現像装置30は、その内部において、後述の下流分散板311等から構成される分散機構によって分散された酸の蒸気を含む現像ガスに、ウェハWを晒すことで、当該ウェハWを現像する。
反射防止膜形成装置は、ウェハWの金属含有レジストの被膜の下層に反射防止膜を形成する。
レジスト塗布装置は、ウェハWに金属含有レジストを塗布して金属含有レジストの被膜すなわち金属含有レジスト膜を形成する。
【0022】
反射防止膜形成装置及びレジスト塗布装置では、例えばスピン塗布法でウェハW上に所定の処理液を塗布する。スピン塗布法では、例えば吐出ノズルからウェハW上に処理液を吐出すると共に、ウェハWを回転させて、処理液をウェハWの表面に拡散させる。
【0023】
第2のブロックG2には、図3に示すように、ウェハWの加熱処理や冷却処理を行う熱処理装置40が上下方向と水平方向に並べて設けられている。なお、熱処理装置40の数や配置についても、任意に選択できる。
【0024】
第3のブロックG3には、複数の受け渡し装置50、51、52、53、54、55、56が下から順に設けられている。また、第4のブロックG4には、複数の受け渡し装置60、61、62が下から順に設けられている。
【0025】
図1に示すように、第1のブロックG1~第4のブロックG4に囲まれた領域には、ウェハ搬送領域Dが形成されている。ウェハ搬送領域Dには、例えば搬送装置70が配置されている。
【0026】
搬送装置70は、例えばY方向、前後方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム70aを有している。搬送装置70は、ウェハ搬送領域D内を移動し、周囲の第1のブロックG1、第2のブロックG2、第3のブロックG3及び第4のブロックG4内の所定の装置にウェハWを搬送できる。搬送装置70は、例えば、図3に示すように上下に複数台配置され、各ブロックG1~G4の同程度の高さの所定の装置にウェハWを搬送できる。
【0027】
また、ウェハ搬送領域Dには、第3のブロックG3と第4のブロックG4との間で直線的にウェハWを搬送するシャトル搬送装置80が設けられている。
【0028】
シャトル搬送装置80は、例えば図3のY方向に直線的に移動自在になっている。シャトル搬送装置80は、ウェハWを支持した状態でY方向に移動し、第3のブロックG3の受け渡し装置52と第4のブロックG4の受け渡し装置62との間でウェハWを搬送できる。
【0029】
図1に示すように、第3のブロックG3のX方向正側には、搬送装置90が設けられている。搬送装置90は、例えば前後方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム90aを有している。搬送装置90は、ウェハWを支持した状態で上下に移動して、第3のブロックG3内の各受け渡し装置にウェハWを搬送できる。
【0030】
インターフェイスステーション5には、搬送装置100が設けられている。搬送装置100は、例えば前後方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム100aを有している。搬送装置100は、例えば搬送アーム100aにウェハWを支持して、第4のブロックG4内の各受け渡し装置、露光装置4にウェハWを搬送できる。
【0031】
以上の塗布現像システム1には、図1に示すように、少なくとも1つの制御装置200が設けられている。制御装置200は、本開示において述べられる種々の工程を塗布現像システム1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御装置200は、ここで述べられる種々の工程を実行するように塗布現像システム1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御装置200の一部又は全てが塗布現像システム1に含まれてもよい。制御装置200は、処理部、記憶部及び通信インターフェースを含んでもよい。制御装置200は、例えばコンピュータにより実現される。処理部は、記憶部から種々の制御動作を行うことを可能にするロジック又はルーチンを提供するプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部に格納され、処理部によって記憶部から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータに読み取り可能な種々の記憶媒体Hであってもよく、通信インターフェースに接続されている通信回線であってもよい。記憶媒体Hは、一時的なものであっても非一時的なものであってもよい。処理部は、CPU(Central Processing Unit)であってもよく、1つ又は複数の回路であってもよい。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェースは、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介して塗布現像システム1との間で通信してもよい。
【0032】
<現像装置30>
次に、現像装置30について説明する。図4は、現像装置30の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。図5は、後述の上チャンバ301の下面図である。
【0033】
図4の現像装置30は、酸を含む現像ガスへのウェハWの暴露(具体的には上記暴露及びウェハWの加熱)により、金属含有レジストの被膜が形成され露光処理及びPEB処理が施されたウェハWを現像する。この現像装置30は、後述の加熱部400を覆い当該加熱部400上に処理空間K1を形成するチャンバ300を備える。チャンバ300は、後述の下流分散板311等から構成される分散機構を有し上側に位置する上チャンバ301と、下側に位置して上チャンバ301と共に処理空間K1を形成する下チャンバ302と、を有している。
【0034】
上チャンバ301と下チャンバ302のうち、例えば、上チャンバ301は、昇降機構(図示せず)によって昇降自在に構成されている。昇降機構は、上チャンバ301の昇降のための駆動力を発生するモータ等の駆動源(図示せず)を有する。この昇降機構は制御装置200により制御される。
【0035】
上チャンバ301は、例えば、ガス供給部310、下流分散板311、上流分散板312、中間部材313、接続部314、側壁部315及び天板部316を有する。
【0036】
ガス供給部310は、酸を含む現像ガスが供給される部材である。具体的には、現像ガスは例えば酸の蒸気を含む。上述の酸は、具体的には弱酸であり、より具体的には酢酸等の弱酸のカルボン酸である。本開示において「弱酸」は、常温(20℃~30℃)で金属含有レジストの現像が進行しない酸の強さを有し、具体的には、酸解離定数(pka)の値が4以上(例えば約5)である酸を意味する。また、現像ガスは、有機溶媒の蒸気を含んでもよい。すなわち、現像ガスは、酸と有機溶媒の混合溶液の気化物を含んでもよい。上述の有機溶媒は例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)である。さらに、現像ガスは、キャリアガスを含んでもよい。キャリアガスは例えば窒素ガスやアルゴン(Ar)等の不活性ガスである。有機溶媒を用いずに、酢酸等の酸単体とキャリアガスのみから現像ガスを生成してもよい。現像ガスの原料となる酸含有液体には添加物(例えば酸が気化しやすくなるような機能を持つ成分等)が混合されていてもよい。この場合の添加物の種類は特に限定されない。
ガス供給部310は、例えば、腐食性を有する酸に対する耐食性を有するフッ素樹脂製である。
【0037】
ガス供給部310の内部には、供給された現像ガスが通る流路320が形成されている。また、ガス供給部310の内部には、処理空間K1から後述の貫通孔341を介して排気されたガスが通る排気路321が形成されていてもよい。
このガス供給部310は、例えば、天板部316の後述の開口353を上方から塞ぐように設けられる。
また、ガス供給部310には、現像ガスを供給するガス供給機構330が接続されている。
【0038】
下流分散板311及び上流分散板312は、分散機構を構成する。具体的には、下流分散板311、上流分散板312及び中間部材313は、分散機構を構成し、より具体的には、下流分散板311、上流分散板312、中間部材313及び接続部314は、分散機構を構成する。分散機構は、ガス供給部310に供給された現像ガスを、水平方向に分散させ、後述の加熱部400の上方の位置に形成された複数の吐出孔340から、処理空間K1に吐出する機構である。
【0039】
下流分散板311は、複数の吐出孔340が形成された部材である。吐出孔340は下流分散板311を上下方向すなわち鉛直方向に貫通するように形成されている。また、吐出孔340は、図4及び図5に示すように、下流分散板311における外周部を除いた部分に、略均一に配置されている。なお、本明細書において、外周部は周縁部を含み、周縁部は少なくとも周縁を含む。下流分散板311は、板状に形成されており、具体的には、円板状に形成されており、より具体的には、ウェハWより大径の円板状に形成されている。
さらに、下流分散板311は、吐出孔340が形成された領域より外側の領域に、上下方向に貫通する貫通孔341を有する。貫通孔341は、後述の加熱部400に支持されたウェハWの周方向(以下、ウェハ周方向という。)に対応する下流分散板311の周方向に沿って複数設けられている。
【0040】
上流分散板312は、図4に示すように、下流分散板311の上方に設けられ、下流分散板311との間に拡散空間K2を形成する。また、上流分散板312には中継孔342が複数形成されている。中継孔342は上流分散板312を上下方向に貫通するように形成されている。また、中継孔342は、上流分散板312における中央部に略均一に形成されている。なお、中継孔342は、平面視において、吐出孔340と重ならない位置に形成されている。
ガス供給部310に供給された現像ガスは、複数の中継孔342から拡散空間K2に吐出される。拡散空間K2に吐出された現像ガスは、複数の吐出孔340から、処理空間K1に吐出される。
【0041】
上流分散板312は、板状に形成されており、具体的には、円板状に形成されており、より具体的には、下流分散板311と略同径の円板状に形成されている。
さらに、上流分散板312は、下流分散板311の貫通孔341に対応する位置に、貫通孔343を有する。
【0042】
中間部材313は、下流分散板311と上流分散板312との間に位置する。具体的には、中間部材313は、下流分散板311の周縁部と上流分散板312の周縁部との間に位置する。また、中間部材313は、下流分散板311及び上流分散板312と共に拡散空間K2を形成する。
【0043】
中間部材313は、平面視環状且つ板状に形成されており、具体的には、円環板状に形成されており、より具体的には、外径が下流分散板311と略同径であり内径がウェハWと略同径の円環板状に形成されている。
さらに、中間部材313は、下流分散板311の貫通孔341及び上流分散板312の貫通孔343に対応する位置に、貫通孔344を有する。貫通孔344は、貫通孔341と貫通孔343とを連通させる。
【0044】
接続部314は、ガス供給部310と中継孔342とを接続する。具体的には、接続部314は、ガス供給部310の流路320と中継孔342とが連通するように、ガス供給部310と中継孔342とを接続する。接続部314は、例えば、上下方向に延びる管状(具体的には円管状)の部材である。
【0045】
側壁部315は、下流分散板311、上流分散板312及び中間部材313の外周面を覆う部材である。また、側壁部315は、下流分散板311及び上流分散板312の外周部を支持する支持部345が設けられている。支持部345の内周面は処理空間K1に露出する。
【0046】
天板部316は、上流分散板312の上方に位置する部材であり、例えば、上下に2つ分割されており、上方の第1分割部材351と下方の第2分割部材352とを有する。
【0047】
また、上チャンバ301には、天板部316を加熱するヒータ317が設けられている。ヒータ317は、例えば天板部316の第1分割部材351と第2分割部材352との間に設けられている。第1分割部材351及び第2分割部材352は、例えば、酸に対する耐食性を有するニッケルクロム合金製である。また、ヒータ317は例えばマイカヒータである。ヒータ317を設けることにより、上チャンバ301全体が加熱されるため、現像ガス中の酸等の蒸気が、ガス供給部310に供給されてから処理空間K1へ吐出されるまでの間に再液化するのを、抑制することができる。また、ヒータ317を設けることにより、下流分散板311等も加熱されるため、現像中に金属含有レジスト膜から生じた昇華物が冷却されて下流分散板311等に付着するのを抑制することができる。
【0048】
天板部316の平面視中央には開口353が形成されている。開口353は、例えば、第1分割部材351及び第2分割部材352を貫通するように形成されている。
【0049】
さらに、天板部316はガス供給部310に接する。例えば、天板部316の第1分割部材351がガス供給部310に接する。
また、天板部316は、後述の周縁排気路361に接する。例えば、天板部316の第2分割部材352は、上流分散板312との間で、処理空間K1から排気されたガスを水平に流す水平排気路354を形成し、この水平排気路354が周縁排気路の一部を成す。
【0050】
また、上チャンバ301には周縁排気部360が設けられている。周縁排気部360は、平面視における、後述の加熱部400に支持されたウェハWの周縁部側から、処理空間K1を排気する。周縁排気部360は処理空間K1に開口する排気口を有する。例えば、前述の下流分散板311の貫通孔341の下端が上記排気口を構成する。周縁排気部360は、上記排気口を介して、処理空間K1内を排気する。
【0051】
周縁排気部360は、上記排気口から延びる周縁排気路361を有する。周縁排気路361は、例えば、貫通孔341、貫通孔344、貫通孔343、水平排気路354及び排気路321等により構成される。すなわち、貫通孔341、貫通孔344、貫通孔343、水平排気路354及び排気路321それぞれが周縁排気路361の一部を成す。周縁排気路361には、排気管362を介して、真空ポンプ等の排気装置363が接続されている。排気管362には、排気量を調整するバルブ等を有する排気機器群364が設けられている。排気装置363及び排気機器群364は制御装置200により制御される。なお、排気管362には気液分離用のタンクが設けられていてもよい。
【0052】
下チャンバ302は、側壁部(下側側壁部ともいう。)370を有する。側壁部370は、後述の加熱部400の外周部を覆うと共に、上チャンバ301の側壁部(上側側壁部ともいう。)315と対向する。
下チャンバ302と加熱部400との間の隙間は樹脂製のOリング371で封止されている。具体的には、下チャンバ302の側壁部370は、内周側に突出する環状部372を有し、環状部372の下面と、加熱部400が有する後述の板状部材411の周縁部の上面と、の間の隙間が、Oリング371で封止されている。
【0053】
上述の上チャンバ301の下流分散板311、上流分散板312、中間部材313、接続部314及び側壁部315と、下チャンバ302の側壁部370は、例えば、酸に対する耐食性を有するニッケルクロム合金、ケイ素またはケイ素化合物で形成されている。酸に対する耐食性を有するニッケルクロム合金は例えばハステロイである。また、酸に対する耐食性を有するケイ素化合物は、例えばセラミックがあり、金属(元素)を含まないものが好ましく、具体的には例えば炭化ケイ素(SiC)、二酸化ケイ素(SiO)等である。さらに、酸に対する耐食性を有するセラミックは熱伝導率がステンレス(具体的にはSUS304)より高いことが好ましい。例えばSiCの熱伝導率はSUS304より高い。下流分散板311、上流分散板312及び中間部材313と、これらの外周面と接する(または接し得る)側壁部315とは、同じ材料からなることが好ましい。これにより、下流分散板311、上流分散板312及び中間部材313と側壁部315との熱膨張差によって、下流分散板311、上流分散板312、中間部材313及び側壁部315の少なくともいずれか1つが破損するのを抑制することができる。加えて、貫通孔344を介した貫通孔341と貫通孔343との連通が上記熱膨張差によって妨げられるのを抑制することができ、すなわち、周縁排気路361が上記熱膨張差によって遮蔽されるのを抑制することができる。
【0054】
また、処理空間K1の外周すなわち外方における上チャンバ301と下チャンバ302の継ぎ目の内周端は、周縁排気部360の排気口を成す貫通孔341の下端よりも下側に位置する。上記継ぎ目は、具体的には、上チャンバ301の側壁部315の下面と下チャンバ302の側壁部370の上面との間に形成される。上記継ぎ目を封止するOリング380が設けられていてもよい。
なお、Oリング371及びOリング380は、例えば、樹脂製であり、具体的には、酸に対する耐食性を有するフッ素樹脂製である。
【0055】
さらに、現像装置30は、ウェハWを支持して加熱する加熱部400を備える。
加熱部400は、熱板401を有する。熱板401は、ウェハWが載置される載置面401aと、ヒータパターン401bとを有する。ヒータパターン401bは例えば金属製である。
【0056】
熱板401は、ヒータパターン401bを上下から挟む板状部材411、412をさらに有する。板状部材411、412は例えば円板状に形成されている。上方の板状部材411が載置面401aを有する。具体的には、板状部材411の中央部の上面が載置面401aを構成する。一実施形態において、板状部材411は、上面の位置が、周縁部より中央部が高くなるよう形成されている。また、板状部材411、412は、セラミック製であり、具体的には、SiC製である。
【0057】
さらに、熱板401は、ヒータパターン401bの外周すなわち外方の、板状部材411、412間の隙間を封止する封止部材として、弾性を有するOリング413を有する。Oリング413は、例えば、樹脂製であり、具体的にはフッ素樹脂製である。Oリング413を間に挟んだ状態で板状部材411、412は固定される。
【0058】
熱板401の温度は、例えば制御装置200によるヒータパターン401bへの通電量の制御により調整され、これにより、例えば、熱板401上に載置されたウェハWが所定の温度に加熱される。
熱板401は、ウェハWの径方向でウェハWの温度が異なるよう、加熱可能に構成されていてもよい。
【0059】
また、加熱部400は、載置面401aから突出するように設けられウェハWを支持する凸部(後述の図8の符号420参照)を複数有し、載置面401aとウェハWの間に凸部を介在させ、載置面401aに直接ウェハWが触れないようにしてもよい。これにより、ウェハWと接触した載置面401aに異物が付着したり、載置面401a上の異物によりウェハWが汚染されたりするのを抑制することができる。複数の凸部は例えば以下の位置に設けられる。
【0060】
載置面401aの径方向(すなわち載置面401aに載置されたウェハWの径方向)に沿って、当該載置面401aが複数の領域(図8の符号R1、R2参照)に区画され、各領域に凸部は設けられる。具体的には、各領域における載置面401aの周方向(すなわちウェハ周方向)に係る位置が互いに異なる複数(3以上)の部分それぞれに、凸部は設けられる。
【0061】
<ガス供給機構330>
続いて、ガス供給機構330について説明する。図6は、ガス供給機構330の構成を説明するための図である。
【0062】
ガス供給機構330は、例えば、図6に示すように、酸と有機溶媒の混合溶液を気化させ現像ガスを生成する気化器501を有する。気化器501には供給路502の一端が接続されている。供給路502の他端は、ガス供給部310に接続され、具体的には、ガス供給部310の流路320に接続されている。供給路502は、酸に対する耐食性を有するフッ素樹脂製である。また、供給路502には、当該供給路502を加熱するヒータ503が設けられている。ヒータ503は、例えばテープ状に形成されており、すなわちテープヒータであり、供給路502に巻き付けられて用いられる。
【0063】
ヒータ503は少なくとも供給路502の下流側に設けられる。供給路502におけるヒータ503が設けられた部分の上流には、供給路502内の現像ガスの流通を制御する開閉弁504が介設されている。開閉弁504は制御装置200により制御される。
【0064】
気化器501には、不活性ガスの供給源511がガス供給路512を介して接続されている。ガス供給路512には、ガス供給路512内の不活性ガスの流通を制御する開閉弁や不活性ガスの流量を調節する流量調節弁等を含む供給機器群513が設けられている。供給機器群513は制御装置200により制御される。
また、気化器501には、酸と有機溶媒の混合溶液を貯留するタンク521が液供給路522を介して接続されている。液供給路522には、液供給路522の上記混合溶液の流通を制御する開閉弁や混合溶液の流量を調節する流量調節弁等を含む供給機器群523が設けられている。供給機器群523は制御装置200により制御される。なお、酸と有機溶媒の混合溶液の供給は、タンク521によるものには限定されず、例えば現像装置30が設けられた工場内の設備からの混合溶液の供給管が液供給路522に接続された構成によるものであってもよい。
【0065】
さらに、供給路502には分岐路505が接続されている。具体的には、供給路502における気化器501と開閉弁504との間に、分岐路505の一端が接続されている。分岐路505の他端はドレインタンク530に接続されている。分岐路505には、分岐路505内の現像ガスの流通を制御する開閉弁506が介設されている。開閉弁506は制御装置200により制御される。
【0066】
後述するように、気化器501が生成した現像ガスは、ガス供給部310に供給されずに、分岐路505に向けて流される場合がある。分岐路505に向けて流された現像ガスに含まれている蒸気は、冷却され再液化され、ドレインタンク530に溜められる。
【0067】
また、気化器501は、不活性ガスが流れる流路541と、上記混合溶液が流れる流路542と、不活性ガスと上記混合溶液が混合された混合流体が流れると共に上記混合流体が加熱され上記混合溶液が気化される流路543とを有する。
さらに、気化器501は、酸(の液体)または酸の蒸気が流れる流路の内壁面が、酸に対する耐食性を有するニッケルクロム合金、ケイ素またはケイ素化合物で形成されている。具体的には、気化器501において、例えば、流路541、542、543を形成する部材がニッケルクロム合金製、ケイ素またはケイ素化合物である。
【0068】
<処理シーケンスの例>
次に、塗布現像システム1により実行される処理シーケンスの一例について説明する。図7は、処理シーケンスの一例の主な工程を示すフローチャートである。なお、以下の各工程は、前述のプログラム格納部(図示せず)に格納されたプログラムに基づく制御装置200の制御の下、実行される。
【0069】
(ステップS7)
まず、塗布現像システム1内にウェハWが搬入される。
具体的には、複数のウェハWを収納したカセットCが、塗布現像システム1のカセットステーション2に搬入され、載置板13に載置される。その後、搬送装置21によりカセットC内の各ウェハWが順次取り出され、ウェハ搬送部11内に搬入され、処理ステーション3の第3のブロックG3の受け渡し装置53に搬送される。
【0070】
(ステップS2)
次に、ウェハWに反射防止膜形成処理が施され、ウェハW上に反射防止膜が形成される。
具体的には、例えば、ウェハWが、搬送装置70によって層L2内の反射防止膜形成装置に搬送され、反射防止膜材料が、ウェハWの表面に回転塗布され、ウェハWの表面を覆うように、金属含有レジストの下地膜として、反射防止膜が形成される。
【0071】
(ステップS3)
次いで、ウェハWにレジスト塗布処理が施され、ウェハW上に金属含有レジスト膜が形成される。
具体的には、ウェハWが、搬送装置70によって層L2内のレジスト塗布装置に搬送され、金属含有レジストが、ウェハWの表面に回転塗布され、下地膜としての反射防止膜を覆うように、ネガ型の金属含有レジスト膜が形成される。
【0072】
(ステップS4)
続いて、ウェハWにPAB処理が施される。
具体的には、ウェハWが、搬送装置70によって、PAB処理用の熱処理装置40に搬送されて、PAB処理が施される。次いで、ウェハWが、搬送装置70によって第3のブロックG3の受け渡し装置56に搬送された後、搬送装置90によって受け渡し装置52に搬送され、シャトル搬送装置80によって第4のブロックG4の受け渡し装置62に搬送される。
【0073】
(ステップS5)
次に、ウェハWに露光処理が施される。
具体的には、ウェハWが、インターフェイスステーション5の搬送装置100によって露光装置4に搬送され、ウェハW上のレジスト膜がEUV光を用いて所定のパターンで露光される。その後、ウェハWは、搬送装置100によって第4のブロックG4の受け渡し装置60に搬送される。
【0074】
(ステップS6)
次いで、ウェハWに、PEB処理が施される。
具体的には、ウェハWが、搬送装置70によって、PEB処理用の熱処理装置40に搬送されて、PEB処理が施される。
【0075】
(ステップS7)
続いて、ウェハWが現像される。
具体的には、以下のステップS7a、S7b、S7cが行われる。
【0076】
(ステップS7a)
本工程では、ウェハWが現像前に事前に加熱される。
具体的には、まず、上昇された状態の上チャンバ301と加熱部400との間に、ウェハWが搬送装置70によって移動される。その後、昇降ピン(図示せず)を介して、ウェハWが熱板401の載置面401aに載置され、支持される。加熱部400に前述の凸部が設けられている場合は、ウェハWが、複数の凸部で支持され、すなわち、複数の凸部を介して、載置面401aに支持される。なお、この段階で、熱板401は所定の温度に調整されている。また、上チャンバ301が下降され、上チャンバ301及び下チャンバ302により処理空間K1が画成される。
ウェハWの熱板401への載置後、所定時間が経過すると、本ステップS7aは終了となる。
【0077】
本ステップS7aのウェハWの事前加熱中においても、後述のステップS7bのウェハWの現像中と同様、気化器501からの現像ガスの供給が行われる。
具体的には、本ステップS7aのウェハWの事前加熱中においても、供給源511から気化器501への不活性ガスの供給、タンク521から気化器501への上記混合溶液の供給、気化器501内での上記混合溶液の気化及び気化器501から供給路502への上記混合溶液の気化物を含む現像ガスの供給が行われる。
ただし、本ステップS7aのウェハWの事前加熱中は、気化器501から供給された現像ガスは、ガス供給部310へ流されず、分岐路505へ流される。
具体的には、供給路502に介設された開閉弁504が閉状態とされ、分岐路505に介設された開閉弁506が開状態とされ、気化器501から供給された現像ガスは、ドレインタンク530に向けて分岐路505を流される。
【0078】
なお、本ステップS7a中、不活性ガスがガス供給部310に供給され、処理空間K1に不活性ガスが吐出されてもよい。
具体的には、本ステップS7aにおいて、上チャンバ301が下降され処理空間K1が画成された後から、不活性ガスがガス供給部310に供給され、処理空間K1に不活性ガスが吐出されてもよい。これにより、処理空間K1内の水分等とウェハW上の金属含有レジスト膜が不要に反応するのを抑制することができる。また、ガス供給部310に供給される不活性ガスは、ヒータ503により加熱されたものであってもよい。これにより、事前加熱中に供給される不活性ガスにより、ウェハWが冷却されるのを抑制することができ、その結果、ウェハWを所定の温度まで加熱するのに要する時間を短縮することができる。
【0079】
また、本ステップS7a中、周縁排気部360による排気が行われる。
具体的には、本ステップS7aにおいて、上チャンバ301が下降され処理空間K1が画成された後から、周縁排気部360による排気が行われる。このとき、処理空間K1内の圧力が、チャンバ300外の圧力に対して負圧となるように、周縁排気部360による排気が行われる。不活性ガスが処理空間K1に供給される場合でも同様である。これにより、ウェハWの事前加熱中に、金属含有レジスト膜からの昇華物がチャンバ300外に漏れるのを抑制することができる。
【0080】
本ステップS7aのウェハWの事前加熱を行う場合、ウェハWの事前加熱を行わずにウェハWが低温の状態から現像ガスを用いた現像を行う場合に比べて、現像をウェハWの面内均一且つ安定に行うことができる。
【0081】
(ステップS7b)
ステップS7a後、加熱部400に支持されたウェハWが加熱されると共に、現像ガスが処理空間K1に吐出され、ウェハWが現像される。
具体的には、加熱部400に支持されたウェハWが加熱されると共に、気化器501から供給路502を介してガス供給部310に供給された現像ガスが処理空間K1に吐出され、ウェハWが現像される。
より具体的には、ウェハWが熱板401に載置された状態が継続される。また、ステップS7a中に、ガス供給部310への不活性ガスの供給が行われていた場合は、当該供給が停止される。さらに、供給路502に介設された開閉弁504が開状態とされると共に、分岐路505に介設された開閉弁506が閉状態とされ、分岐路505へ流されていた気化器501からの現像ガスがガス供給部310に向けて供給路502を流される。このように、ステップS7aとステップS7bとの間で、気化器501からの現像ガスの供給は途絶えることなく継続される。ガス供給部310に到達した気化器501からの現像ガスは、吐出孔340から処理空間K1中のウェハWに向けて吐出される。これにより、ウェハWが、処理空間K1内において、酸を含む現像ガスの雰囲気に暴露される。ウェハW上のネガ型の金属含有レジスト膜は、上記雰囲気に暴露されると、未露光部が例えば現像ガス中の酸の蒸気と反応し、低分子化する。そして、ウェハW上のネガ型の金属含有レジスト膜のうち、酸の蒸気との反応により低分子化した未露光部が熱により昇華し、金属含有レジストのパターンが形成される。例えば、酸が酢酸であり、金属含有レジスト膜が金属としてスズを含有する場合、酢酸スズが昇華する。
【0082】
また、本ステップS7b中、本ステップS7aに引き続いて、周縁排気部360による排気が行われる。具体的には、本ステップS7aに引き続いて、処理空間K1内の圧力が、チャンバ300外の圧力に対して負圧となるように、周縁排気部360による排気が行われる。これにより、本ステップS7bの現像中に、金属含有レジスト膜からの昇華物がチャンバ300外に漏れるのを抑制することができる。
【0083】
なお、現像ガスの処理空間K1への吐出が開始されてから所定時間が経過すると、処理空間K1への現像ガスの供給が停止され、具体的には、供給路502に介設された開閉弁504が閉状態とされ、本ステップS7bは終了となる。
【0084】
(ステップS7c)
ステップS7a後、処理空間K1内の現像ガスの雰囲気が、不活性ガスで置換される。
具体的には、例えば、供給源511からの不活性ガスが、バイパス路(図示せず)を介してガス供給部310に供給され、処理空間K1に不活性ガスが吐出される。この不活性ガスによる置換中も、周縁排気部360による排気が行われる。具体的には、上記置換中も、処理空間K1内の圧力が、チャンバ300外の圧力に対して負圧となるように、周縁排気部360による排気が行われる。これにより、上記置換中に、金属含有レジスト膜からの昇華物がチャンバ300外に漏れるのを抑制することができる。
不活性ガスの吐出開始後、所定時間が経過し不活性ガスによる置換が完了すると、処理空間K1への不活性ガスの吐出の停止、周縁排気部360による排気の停止及び上チャンバ301の上昇が行われると共に、ウェハWが、昇降ピン(図示せず)を介して、搬送装置70に受け渡される。そして、ウェハWは、搬送装置70によって現像装置30の外部へ搬出される。
【0085】
ステップS7cにより、ウェハWのチャンバ300外への搬出時に、チャンバ300が開放された時に、すなわち、上チャンバ301が上昇された時に、現像ガスがチャンバ300外へ漏れ出すのを抑制することができる。
なお、本ステップS7cにおける処理空間K1への不活性ガスの吐出は、現像ガスと金属含有レジスト膜との反応を完了させる目的を兼ねてもよい。また、本ステップS7cにおいて処理空間K1へ吐出される不活性ガスも、ヒータ503により加熱されたものであってもよい。
【0086】
(ステップS8)
現像後、ウェハWに、POST処理が施される。
具体的には、ウェハWが、POST処理用の熱処理装置40に搬送されて、POST処理が施される。このステップS8は省略されてもよい。
【0087】
(ステップS9)
そして、ウェハWが塗布現像システム1から搬出される。
具体的には、ウェハWが、ステップS1と逆の手順でカセットCに戻される。
【0088】
これで一連の処理シーケンスが完了する。
【0089】
<本実施形態の主な作用効果>
以上のように、本実施形態では、加熱部400に支持された、金属含有レジスト膜が形成されたウェハWを加熱させると共に、酸を含む現像ガスを処理空間に吐出させ、上記ウェハWを現像する。すなわち、本実施形態では、金属含有レジスト膜の現像により除去すべき部分を、現像液や洗浄液等の処理液を用いずに、酸を含む現像ガスにより除去し、金属含有レジストのパターンを形成している。そのため、処理液の表面張力によるパターン倒れが発生することがない。したがって、本実施形態によれば、金属含有レジストのパターン倒れを抑制することができるため、金属含有レジストの良好なパターンを得ることができる。
【0090】
また、本実施形態では、ガス供給部310に供給された現像ガスを、分散させた後(具体的には水平方向に分散させた後)、加熱部400の上方の位置に形成された複数の吐出孔340から、処理空間K1に吐出している。そのため、現像ガスを分散させずに供給した場合に比べて、処理空間K1内における現像ガスの密度等の現像ガスの状態を、ウェハWの近傍において、ウェハ面内で均一にすることができる。したがって、現像ガスを用いた現像結果をウェハ面内でより均一にすることができる。
【0091】
さらに、本実施形態では、現像時にプラズマを用いておらず、すなわち、金属含有レジスト膜の現像により除去すべき部分を、プラズマレスで除去している。処理空間の上方から下方のウェハに向けてプラズマを供給する場合、プラズマ中のイオンやラジカル中の状態を調整するために、処理空間を上下方向すなわち鉛直方向に大きくする必要がある。それに対し、本実施形態では、現像時にプラズマを用いていないため、処理空間K1を上下方向に大きくする必要がない。そのため、本実施形態によれば、現像装置30を含む層を、安全に作業が可能な高さ内で多数積層させることができる。したがって、本実施形態によれば、現像のスループットを向上させやすい。
具体的には、以下の通りである。生産性及び安全性の向上等の観点から、統一規格として、SEMI規格が設定されており、SEMI規格では、装置高さ等の装置サイズについて推奨値が設定されている。具体的には、SEMI E72では、床面からの高さ2.8mが装置高さの推奨値となっている。この装置高さの推奨値の範囲内で多くの処理装置を搭載することがスループットすなわち生産性を向上させる一要因になる。また、生産性及び安全性を考慮すると、処理を行い且つ作業の対象となる現像装置30がSEMI E72で示される床面からの高さ2.8m内に搭載されることが望まれる。本実施形態にかかる現像装置30であれば、SEMI規格で設定された装置高さ(塗布現像システム1の高さ)内に、複数積層して搭載可能である。具体的には、例えば、1つの塗布現像システム1内に、2、3台ではなく4~8台(現像装置30の高さが熱処理装置40の1台分の高さに相当する場合。)といった多数を積層して搭載可能である。なお、現像装置30を含む層L1の上方または下方に、塗布膜形成装置等の別の処理装置を含む層が設けられていても、SEMI E72で設定された高さの範囲内で、現像装置30は上記と同等数積層して搭載され得る。
【0092】
また、本実施形態では、熱板401を構成する、ヒータパターン401bを上下から挟む板状部材411、412が、酸に対する耐食性を有するセラミック製である。そのため、酸の蒸気を含む現像ガスにより板状部材411、412が損傷するのを抑制することができる。具体的には、上記現像ガスにより板状部材411、412の構成材料が溶出し、チャンバ300内やウェハWが汚染されるのを抑制することができる。なお、板状部材411、412の構成材料が金属を含む場合、当該金属がデバイス特性に影響を与えるおそれがあるため、板状部材411、412を構成するセラミックにはSiC等の金属(元素)を含まないものが好ましい。
さらに、ヒータパターン401bの外周すなわち外方の、板状部材411、412間の隙間をOリング413で封止しているため、酸の蒸気を含む現像ガスが、板状部材411を回り込んでヒータパターン401bに到達するのを抑制することができる。したがって、上記現像ガスによりヒータパターン401bが損傷するのを抑制することができる。
さらにまた、板状部材411と下チャンバ302の環状部372との間の隙間がOリング371で封止されている。そのため、酸の蒸気を含む現像ガスが、板状部材411を回り込んでヒータパターン401bに到達するのをより確実に抑制することができる。したがって、上記現像ガスによりヒータパターン401bが損傷するのをより確実に抑制することができる。
また、互いに固定される板状部材411、412が同じ材料で形成されているため、板状部材411、412の熱膨張差により当該板状部材411、412が破損するのを抑制することができる。
さらに、Oリング413、371が酸に対する耐食性を有するフッ素樹脂製であるため、酸の蒸気を含む現像ガスによりOリング413、371が損傷するのを抑制することができる。
【0093】
前述のように、本実施形態において、中間部材313の貫通孔344が周縁排気路361の一部を成す。すなわち、拡散空間K2を形成する中間部材313が周縁排気路361の一部を成している。そのため、周縁排気路361を所望の位置に精度よく形成しながら、拡散空間K2を含む現像ガスの供給路と周縁排気路361とを近接させることができるので、現像装置30を小型化することができ、具体的には、上チャンバ301を小型化することができる。
【0094】
また、本実施形態では、上チャンバ301と下チャンバ302の継ぎ目の内周端は、周縁排気部360の排気口を成す貫通孔341の下端よりも下側に位置する。そのため、酸の蒸気を含む現像ガスが上記継ぎ目の方に流れにくい。したがって、現像ガス(特に酸の蒸気)が上記継ぎ目を介してチャンバ300の外に漏れ出すのを抑制することができる。
【0095】
さらに、本実施形態では、ヒータ317により加熱される天板部316がガス供給部310に接する。そのため、ガス供給部310を流れる現像ガスを保温しやすい。したがって、現像ガス中の酸及び溶媒の蒸気が、ガス供給部310に供給されてから処理空間K1へ吐出されるまでの間に再液化するのを、効率的に抑制することができる。
さらにまた、本実施形態では、天板部316が周縁排気路361にも接する。そのため、周縁排気路361を流れる、処理空間K1からの排気ガスを保温しやすい。したがって、排気ガス中に含まれる現像中に生じた生成物が冷却されて周縁排気路361の内壁面等に付着するのを効率的に抑制することができる。
【0096】
本実施形態では、上チャンバ301の下流分散板311、上流分散板312、中間部材313、接続部314及び側壁部315と、下チャンバ302の側壁部370は、例えば、酸に対する耐食性を有するニッケルクロム合金またはセラミックで形成されている。そのため、酸の蒸気を含む現像ガスにより、下流分散板311、上流分散板312、中間部材313、接続部314、側壁部315及び側壁部370が損傷するのを抑制することができる。具体的には、上記現像ガスにより上流分散板312、中間部材313、接続部314、側壁部315及び側壁部370の構成材料が溶出し、チャンバ300内やウェハWが汚染されるのを抑制することができる。
【0097】
また、本実施形態では、気化器501における、酸または酸の蒸気が流れる流路の内壁面が、酸に対する耐食性を有するニッケルクロム合金またはセラミックで形成されている。そのため、酸の蒸気を含む現像ガスにより、上記内壁面が損傷するのを抑制することができる。具体的には、上記内壁面の構成材料が溶出し、チャンバ300内やウェハWが汚染されるのを抑制することができる。
【0098】
さらに、本実施形態では、ステップS7bが続いて行われる、ステップS7aのウェハWの事前加熱工程において、気化器501から現像ガスの供給が行われるが、気化器501からの現像ガスは、ガス供給部310に流されずに、分岐路505に流される。そのため、ステップS7bの現像開始直後から、気化器501から供給され処理空間K1へ吐出される現像ガスの状態が安定する。したがって、現像結果がウェハW間やウェハWの面内でばらつくのを抑制することができる。
【0099】
また、本実施形態では、供給路502が、酸に対する耐食性を有するフッ素樹脂製である。そのため、酸の蒸気を含む現像ガスにより供給路502が損傷するのを抑制することができる。具体的には、上記現像ガスにより供給路502の構成材料が溶出し、チャンバ300内やウェハWが汚染されるのを抑制することができる。さらに、供給路502がヒータ503により加熱されるため、現像ガス中の酸及び溶媒の蒸気が、処理空間K1へ吐出されるまでの間に再液化するのを、抑制することができる。
【0100】
<現像ガスが酢酸と有機溶媒の蒸気(ガス)を含む場合の要件>
(1.自然発火点の要件)
酢酸と有機溶媒の混合ガスによる現像は、処理空間K1の温度すなわち処理温度が、酢酸または有機溶媒の自然発火温度を超える条件では、安全上行うことができない。また、有機溶媒の自然発火温度は、一般的に酢酸の自然発火温度(485℃)より低い。例えば、PGMEAの自然発火温度は272℃である。そのため、酢酸と有機溶媒の混合ガスによる現像時の処理温度が、有機溶媒の自然発火温度に制限される。したがって、酢酸と有機溶媒の混合ガスによる現像時の処理温度が現像性能上好ましい場合、有機溶媒としては、自然発火温度が高く、酢酸に近いものが好ましい。
【0101】
(2.気化のし易さの要件)
現像ガスとしての酢酸と有機溶媒の混合ガスを、酢酸と有機溶媒の混合溶液を気化器で気化させて生成する場合、酢酸と有機溶媒の気化のし易さが異なっていると、気化器中の混合溶液の濃度が変化していき、結果的に、生成される現像ガス中の酢酸ガス濃度も変化してしまう。そうすると、処理空間K1に供給する現像ガス中の酢酸ガス濃度を一定にすることが困難となる。そのため、酢酸と有機溶媒で、気化のし易さが近いことが好ましい。液体の気化のし易さの目安として、沸点と蒸気圧がある。液体は、沸点が高いほど気化しにくく、沸点が低いほど気化し易い。また、液体は、蒸気圧が高いほど気化し易く、蒸気圧が低いほど気化しにくい。また、混合流体の場合は、気化のし易さはモル分率に比例し、モル分率は分子量から決まる。すなわち、分子量も、気化のし易さの関連パラメータである。
【0102】
上記の2つの要件から、酢酸と有機溶媒の混合液から生成する場合は、有機溶剤として、以下の(A)、(B)のうちの少なくともいずれか一方を満たすものを用いることが好ましい。
(A)自然発火温度が、基板処理に汎用されるPGMEAと同等、または、PGMEAより酢酸に近い。
(B)同一処理圧力下での沸点、同一処理温度化での蒸気圧、及び、分子量のうちの少なくともいずれか一方が、PGMEAと同等、または、PGMEAより酢酸に近いものを、用いることが好ましい。
【0103】
このような有機溶剤は、多数あり得るが、一部を例として挙げると、PGMEAの他、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸ブチル(nBA)、γ-ブチロラクトンがある。また、スルホキシド類や、スルホン類、ラクタム類、多価アルコール類、ジアルキルグリコールエーテル類、アルキレングリコールモノアルキ
ルエーテル類、アルキ レングリコールエステル類、アルキレングリ コールモノアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、乳酸アルキルエステル類、他のエーテル類やエステル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、テルペン類といったものの中で上述の要件に合う有機溶剤を用いてもよい。
【0104】
<変形例>
以上の例では、ウェハWに対するPEB処理が、熱処理装置40により施されていた。これに代えて、PEB処理時のウェハWの温度と現像時のウェハWの温度が略同一であれば、PEB処理が、現像装置30により施されてもよい。具体的には、例えば、ステップS7aの事前加熱処理がPEB処理を兼ねてもよい。
【0105】
また、以上の例では、現像装置30を含む層L1は、レジスト塗布装置等の塗布膜形成装置を含む層L2に積層されていた。すなわち、現像装置30が、平面視において、塗布膜装置が設けられた正面側の領域に設けられていた。これに代えて、現像装置は、平面視で、熱処理装置40が設けられた背面側の領域に設けられていてもよい。この場合、現像装置30は、熱処理装置40が搭載される区画と同等の大きさの区画に搭載されてもよい。また、現像装置30を含む層L1は、レジスト塗布装置等の塗布膜形成装置を含む層L2に対して上または下のいずれの方向に積層されてもよい。
【0106】
以上の例では、塗布現像システムがインターフェイスステーション5と露光装置4との間でウェハWを受け渡すことを説明したが、塗布現像システムが露光装置と直接的に接続されていなくともよい。その場合は、例えば、ウェハWがカセットステーション2から処理ステーション3に搬送されて必要な処理がなされた後、外部に搬出するために再度カセットステーション2に搬送される。また、各種処理装置のうち必要としないものについては設けられない、あるいはその装置における処理が行われなくともよい。
【0107】
以上の例において、酸に対する耐食性を有するニッケルクロム合金またはセラミックで形成されていた部分は、上記耐食性を付与する表面処理が難しくなければ、ステンレス製の母材における酸または酸の蒸気が接する面に、上記表面処理が施されたものであってもよい。例えば、下チャンバ302の側壁部370や、天板部316の第1分割部材351、第2分割部材352、気化器501における流路541、542、543を形成する部材が、ステンレス製の母材における酸または酸の蒸気が接する面に、上記表面処理が施されたものであってもよい。
酸に対する耐食性を付与する表面処理は、例えば、酸に対する耐食性を有するフッ素樹脂で表面を覆う処理であり、不動態化処理であってもよい。
なお、天板部316の第2分割部材352やガス供給部310の形状によっては、天板部316の第1分割部材351は、酸の蒸気が接しない場合がある。この場合、第1分割部材351は、酸に対する耐食性を有しない材料で形成されていてもよい。
【0108】
また、チャンバ300及び熱板401をまとめて収容する筐体(図示せず)を設け、筐体内に、上チャンバ301と下チャンバ302との間の隙間をチャンバ300の外側から覆うカバー(図示せず)を設け、カバー内を排気するようにしてもよい。これにより、金属含有レジスト膜からの昇華物により、上記筐体の内壁面等が汚染されるのを抑制することができる。
【0109】
図8に示すように、加熱部400は、熱板401の載置面401aに載置されたウェハWの裏面中央部に向けて不活性ガスを吐出する吐出孔430を有していてもよい。そして、熱板401によりウェハWを加熱しながら現像ガスにより現像する間(具体的には前述のステップS7bの間)、吐出孔430からウェハWの裏面中央部に向けた不活性ガスの吐出が行われてもよい。これにより、金属含有レジスト膜からの昇華物がウェハWの裏面に回り込むのを抑制することができる。したがって、上記昇華物によりウェハWの裏面が汚染されるのを抑制することができる。なお、吐出孔430から吐出される不活性ガスは、チャンバ300外且つ熱板401外で加熱されたものであってもよい。
【0110】
なお、吐出孔430には不活性ガスのガス供給機構(図示せず)が接続されている。このガス供給機構は、例えば、不活性ガスの供給源や、不活性ガスの流通を制御する開閉弁及び流量調節弁を含む供給機器群を有する。
吐出孔430は、例えば、板状部材411の中央部を貫通する貫通孔431、板状部材412の中央部を貫通する貫通孔432等から構成される。貫通孔431、432の周囲における、板状部材411、412間の隙間を封止するように、封止部材として、弾性を有するOリング440を設けてもよい。Oリング440は、例えば、樹脂製であり、具体的にはフッ素樹脂製である。
【0111】
また、上述のように吐出孔430から不活性ガスを吐出する場合は、吐出中、前述した載置面401aから突出する複数の凸部420でウェハWが支持されてもよい。これにより、ウェハWの裏面と載置面401aとの間に、ウェハWの中央から周縁に向けた不活性ガスの気流を、ウェハ周方向により均一に形成することができる。その結果、金属含有レジスト膜からの昇華物がウェハWの裏面に回り込むのをより適切に抑制することができる。
【0112】
さらに、複数の凸部420で支持したウェハWを熱板401で加熱しながら現像ガスにより現像する間に、吐出孔430から不活性ガスを吐出する場合、載置面401aにおける最外周の領域(図の例では領域R2)が、それより内側の領域(図の例では領域R1)より、凸部420の高さが低くてもよい。これにより、ウェハWの中央から周縁に向けた不活性ガスの気流が、最外周の領域に設けられた凸部420により遮られるのを抑制することができる。その結果、金属含有レジスト膜からの昇華物がウェハWの裏面に回り込むのを上記気流によって抑制することを、より確実に行うことができる。
【0113】
なお、現像装置30に設けられた熱板401上の凸部420のうち、少なくとも最外周の領域より内側の領域(図の例では領域R1)に設けられたものは、塗布現像システム1内の他の処理装置が有する熱板に設けられた凸部より高くてもよい。このように高くすることにより、吐出孔430からの不活性ガスの流量が高くても、ウェハWが熱板401から浮き上がったりすること等を抑制することができ、ウェハWの中央から周縁に向けた不活性ガスの気流を適切に形成することができる。
【0114】
複数の凸部420で支持したウェハWを熱板401で加熱しながら現像ガスにより現像する間に、吐出孔430から不活性ガスを吐出する場合、当該加熱が、ウェハWに昇降部材としての昇降ピン450を接触させた状態で、行われてもよい。これにより以下の効果がある。すなわち、吐出孔430から吐出された不活性ガスによりウェハWが熱板401でずれること等を、昇降ピン450とウェハWの間の摩擦力により、抑制することができる。
【0115】
昇降ピン450は、現像装置30の外部の搬送装置と熱板401との間でのウェハWの受け渡しの際に、ウェハWを中継するものであり、載置面401aに対し昇降し、複数の凸部420との間でウェハWを受け渡すものである。昇降ピン450は、ウェハ周方向と一致する載置面401aの周方向に沿って、3以上設けられる。各昇降ピン450は、熱板401を貫通するように設けられた挿通孔460に挿通されて用いられる。挿通孔460は、例えば、板状部材411の中央部を貫通する貫通孔461、板状部材412の中央部を貫通する貫通孔462等から構成される。貫通孔461、462の周囲における、板状部材411、412間の隙間を封止するように、封止部材として、弾性を有するOリング441を設けてもよい。Oリング441は、例えば、樹脂製であり、具体的にはフッ素樹脂製である。
【0116】
昇降ピン450のウェハWとの接触部は、フッ素樹脂製であってもよい。フッ素樹脂製であれば、上記接触部が現像ガス中の酸により腐食するのを抑制することができると共に、昇降ピン450とウェハWの間の摩擦力を大きくすることができる。
昇降ピン450は、図9に示すように、例えば、鉛直方向に延びる柱状(具体的には円柱状)に形成された本体部451と、本体部451の先端を覆いウェハWの裏面と接触する接触部452と、を有する。接触部452がフッ素樹脂製であるのに対し、本体部451は、当該本体部451が剛性を有し且つ酸に対する耐腐食性を有するように、例えばセラミック製とされる。
【0117】
昇降ピン450は、当該昇降ピン450に対し上方への付勢力が加わるよう弾性部材470に支持されていてもよい。具体的には、昇降ピン450は、弾性部材470を介して、当該昇降ピン450を昇降させる昇降機構480に支持されていてもよい。
この場合、弾性部材470の弾性係数や、現像ガスによる現像時の昇降ピン450の高さは、例えば以下のように設定される。すなわち、上記高さの昇降ピン450と凸部420の両方でウェハWが支持するが、その状態における弾性部材470からウェハWに作用する反発力が、凸部420で支持せず昇降ピン450のみでウェハWを支持した時より弱いくなるよう、上記弾性係数や上記高さは設定される。すなわち、上記高さの昇降ピン450と凸部420の両方でウェハWが支持する現像時に全ての昇降ピン450を介してウェハWに作用する弾性部材470からの反発力が、ウェハWに作用する重力よりも小さくなるよう、上記弾性係数や上記高さは設定される。
【0118】
昇降機構480は、例えば、複数の昇降ピン450を支持する支持部材481と、支持部材481を昇降させるための駆動力を発生する駆動部(図示せず)と、を有する。駆動部による駆動力により支持部材481が昇降することにより、昇降ピン450が昇降する。
【0119】
支持部材481は、例えば、昇降ピン450毎に設けられた第1支持部材482と、第2支持部材483をまとめて支持する第2支持部材483と、を有する。
第1支持部材482は、有底の筒状に形成され、昇降ピン450の下部が収容される。第1支持部材482の底部には、上端が昇降ピン450の下端に接続された弾性部材470の下端が接続されている。また、第1支持部材482の側壁は、昇降ピン450の昇降をガイドする。
【0120】
図10は、下チャンバ302の他の例を説明するための図である。
上チャンバ301の側壁部315すなわち外周部と下チャンバ302の側壁部370との間を封止するOリング380を設けると、処理空間K1への現像ガスの導入直後等、処理空間K1内の圧力が、チャンバ300外の圧力より高くなった際にも、金属含有レジスト膜からの昇華物がチャンバ300外に漏れるのを抑制することができる。
ただし、Oリング380の潰れ方がウェハ周方向で均一にならず、上チャンバ301及び下チャンバ302の内の少なくともいずれか一方とOリング380との間で若干隙間が生じることがある。また、Oリング380の製造公差により同様に若干隙間が生じることがある。そして、この隙間はウェハ周方向で均一に形成されるわけではない。したがって、周縁排気部360による排気量等の処理条件によっては、現像の際に、処理空間K1が負圧となるよう行われる周縁排気部360による排気によって加熱部400上のウェハWに周縁部周辺に形成される気流が、上記隙間から処理空間K1内に入り込んだガスの影響で、ウェハ周方向で不均一となってしまう。その結果、現像がウェハ周方向で不均一となってしまうことがある。
【0121】
これを抑制するため、図10に示すように、下チャンバ302の側壁部370の、平面視におけるOリング380より内側に、上記隙間に向けて開口する給気孔390が、ウェハ周方向に沿うように複数設けられていてもよい。具体的には、側壁部370の環状部372に、上記隙間に向けて開口する給気孔390が、ウェハ周方向に沿うように複数設けられていてもよい。これにより、周縁排気部360による排気が行われたときに、環状部372の下方の空間内の雰囲気が給気孔390に吸い込まれ、給気孔390から上記隙間に向けて吐出され、吐出されたガスは周縁排気部360の排気口としての貫通孔341に向かう。その結果、給気孔390から上記排気口に向かう気流が、ウェハ周方向全体に亘って形成される。すなわち、加熱部400に載置されたウェハWの周囲にエアカーテンが形成される。そのため、上記隙間からガスが流入してもエアカーテンにより遮蔽されるので、上記隙間からチャンバ300内に入り込んだガスの影響で、現像結果がウェハ周方向で不均一となるのを抑制することができる。また、処理空間K1外のガスが給気孔390から積極的に吸い込まれるため、処理空間K1外のガスが上記隙間を介して処理空間K1に向かう量を減らすことができる。そのため、上記隙間から処理空間K1内に入り込んだガスの影響で、ウェハ周方向で不均一となるのを抑制することができる。
【0122】
給気孔390を設ける場合、上チャンバ301の側壁部315すなわち外周部の内周端部を、給気孔390からのガスを貫通孔341に向かわせる整流部391としてもよい。整流部391の内周端面392が、断面視で、給気孔390と貫通孔341とを結ぶ直線または上に凸の曲線となるよう、整流部391は形成されていてもよい。これにより、より遮蔽性の高いエアカーテンを形成することができる。
【0123】
また、給気孔390を設ける場合、下チャンバ302の側壁部370における環状部372より下方の部分の内周壁と、熱板401とは、壁(具体的には熱板401の熱を当該熱板401に反射する反射板415)により隔てられ、上記壁と熱板401との間には隙間が設けられていてもよい。そして、上記内周壁と上記壁とによって形成される空間を、給気孔390に繋がる給気路393としてもよい。すなわち、給気路393と熱板401とが、上記壁により隔てられていてもよい。これにより、給気路393を流れるガスにより、熱板401が冷却されるのを抑制することができ、熱板401を効率的に加熱することができる。なお、反射板415は金属製である。
【0124】
改めて言えば、Oリング380は、側壁部370と、上チャンバ301の側壁部315との間の隙間を狭く、或いは塞ぐためのものであり、つまりシール用部材である。本実施形態では、例えば、側壁部370におけるOリング380に接する部分と環状部372とが、同じ材料で一体的に設けられる。なお、ここでいう材料とは、金属や樹脂、あるいはセラミックなど様々な固体材料から選定されうる。このように一体的に設けられる場合、環状部372が加熱部400から受ける熱が効率的に上記接する部分及びOリング380に伝わることで、熱膨張によりOリング380のシール性が向上して、外気が処理空間内に入り込みにくくなることも考えられる。
【0125】
図11は、気化器501の他の例を示す図である。図11の気化器501は、図5の気化器501と同様、ガス供給部310に接続され、具体的には、供給路502を介してガス供給部310に接続される。
【0126】
図11の気化器501は、収容室550と、加熱部551と、熱マス部552と、を有する。
【0127】
収容室550は、現像ガスの原料としての、酸と他の薬液(例えば有機溶媒)との混合溶液を収容する。収容室550には、当該収容室550に混合溶液を供給する液供給路560と、当該収容室550にキャリアガスとしての不活性ガスを供給するキャリアガス供給路561と、が接続されている。キャリアガス供給路561から供給される不活性ガスは、混合溶液のバブリング用に用いてもよい。また、収容室550には、当該収容室550内で上記原料の液を気化させることにより生成した現像ガスを供給する供給路502が接続されている。
収容室550に一度に収容される混合溶液の量は、現像ガスによる現像一回分である。
【0128】
加熱部551は、少なくとも収容室550を加熱する。
【0129】
熱マス部552は、収容室550に隣接して設けられ、当該収容室550と共に、加熱部551により加熱される。熱マス部552は、加熱部551により加熱される部分全体の熱容量を増大させるものである。この熱マス部552は、収容室550より(具体的には収容室550内の収容空間より)、体積が大きい。
現像ガスの原料の混合溶液が気化して生成される現像ガス中の酸ガスの濃度は、混合溶液の温度に依存する場合がある。この場合、上述のような熱マス部552を設けることにより、収容室550が、キャリアガスにより冷却されるのを抑制することができ、その結果、収容室550内に収容された現像ガスの原料の混合溶液の温度を安定させることができる。したがって、気化器501から供給する現像ガス中の酸の濃度を安定させることができる。
【0130】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0131】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0132】
なお、以下のような構成例も本開示の技術的範囲に属する。
(1)金属含有レジストの被膜が形成された基板を現像する現像装置であって、
前記基板を支持して加熱する加熱部と、
前記加熱部を覆い前記加熱部上に処理空間を形成するチャンバと、
酸を含む現像ガスが供給されるガス供給部と、
前記ガス供給部に供給された前記現像ガスを分散させて、前記加熱部の上方の位置に形成された複数の吐出孔から、前記処理空間に吐出する分散機構と、を備える、現像装置。
(2)前記分散機構は、
前記複数の吐出孔が形成された下流分散板と、
前記下流分散板の上方に設けられ、前記下流分散板との間に拡散空間を形成すると共に、複数の中継孔が形成された上流分散板と、を有し、
前記ガス供給部に供給され、前記複数の前記中継孔から前記拡散空間に吐出された前記現像ガスを、前記複数の吐出孔から、前記処理空間に吐出する、前記(1)に記載の現像装置。
(3)前記加熱部は、前記基板が載置される載置面とヒータパターンとを有する熱板を有し、
前記熱板は、
前記ヒータパターンを上下から挟み一方が前記載置面を有するセラミック製の板状部材と、
前記ヒータパターンの外周の前記板状部材間の隙間を封止する封止部材と、をさらに有する、前記(1)または(2)に記載の現像装置。
(4)平面視における、前記加熱部に支持された前記基板の周縁部側から前記処理空間を排気する周縁排気部をさらに備え、
前記周縁排気部は、
前記処理空間に開口する排気口と、
前記排気口から延びる周縁排気路と、を有し、
前記分散機構は、前記下流分散板と前記上流分散板との間に位置し、前記下流分散板及び前記上流分散板と共に前記拡散空間を形成する中間部材をさらに有し、
前記中間部材は、前記周縁排気路の一部を成す、前記(2)に記載の現像装置。
(5)平面視における、前記加熱部に支持された前記基板の周縁部側から前記処理空間を排気する周縁排気部をさらに備え、
前記周縁排気部は、前記処理空間に開口する排気口を有し、
前記チャンバは、
前記分散機構を有する上チャンバと、
前記上チャンバと共に前記処理空間を形成する下チャンバと、を有し、
前記処理空間の外周における、前記上チャンバと前記下チャンバとの継ぎ目の内周端は、前記周縁排気部の前記排気口よりも下側に位置する、前記(1)~(3)のいずれか1に記載の現像装置。
(6)平面視における、前記加熱部に支持された前記基板の周縁部側から前記処理空間を排気する周縁排気部をさらに備え、
前記周縁排気部は、
前記処理空間に開口する排気口と、
前記排気口から延びる周縁排気路と、を有し、
前記チャンバは、
前記上流分散板の上方に位置する天板部と、
前記天板部を加熱するヒータと、を有し、
前記天板部は、前記ガス供給部及び前記周縁排気路に接する、前記(2)に記載の現像装置。
(7)前記チャンバは、
前記分散機構を有する上チャンバと、
前記上チャンバと共に前記処理空間を形成する下チャンバと、を有し、
前記上チャンバは、前記下流分散板及び前記上流分散板の外周部を支持する支持部が設けられ前記支持部の内周面が前記処理空間に露出する上側側壁部を有し、
前記下チャンバは、前記加熱部の外周部を覆うと共に前記上側側壁部に対向する下側側壁部を有し、
前記下流分散板、前記上流分散板、前記上側側壁部及び前記下側側壁部は、セラミックまたはニッケルクロム合金で形成されている、前記(2)、(4)または(6)に記載の現像装置。
(8)前記ガス供給部に一端が接続され他端に気化器が接続された供給路と、
前記供給路に接続された分岐路と、
制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記基板を現像前に事前に加熱させる工程と、前記加熱部に支持された前記基板を加熱させると共に、前記気化器から前記供給路を介して供給された前記現像ガスを前記処理空間に吐出させ、前記基板を現像する工程と、を実行するように制御を行い、
前記事前に加熱させる工程において、前記気化器からの前記現像ガスの供給を行わせるが、前記気化器から供給された前記現像ガスを、前記ガス供給部に流させずに、前記分岐路に流させる、前記(1)~(7)のいずれか1に記載の現像装置。
(9)前記ガス供給部に一端が接続され他端に気化器が接続された供給路をさらに備え、
前記気化器内において、前記酸または前記酸の蒸気の流路の内壁面が、セラミックまたはニッケルクロム合金で形成されている、前記(1)~(8)のいずれか1に記載の現像装置。
(10)処理装置を含む層が鉛直方向に複数積層され、
複数積層された前記層は、
前記(1)~(9)のいずれか1に記載の現像装置を含む層を複数有すると共に
高さが2.8メートル以下である、基板処理システム。
(11)前記加熱部は、
前記基板が載置される載置面を有する熱板と、
前記載置面に載置された前記基板の中央部に向けて前記載置面から不活性ガスを吐出する吐出孔と、を有し、
前記熱板の前記載置面から突出するように設けられ、前記基板を支持する凸部を複数有し、
前記基板を支持可能に構成され、前記載置面に対し昇降し、前記複数の前記凸部との間で前記基板を受け渡す昇降部材をさらに有し、
前記複数の前記凸部に支持された前記基板の前記熱板による加熱を、当該基板に前記昇降部材に接触させた状態で行う、前記(1)~(10)のいずれか1に記載の現像装置。
(12)前記加熱部は、
前記基板が載置される載置面を有する熱板と、
前記熱板の前記載置面から突出する凸部と、
前記載置面に載置された前記基板の中央部に向けて前記載置面から不活性ガスを吐出する吐出孔と、を有し、
前記載置面は、当該載置面の径方向に沿って複数の領域に区画され、
前記領域それぞれに前記凸部が設けられ、
最外周の前記領域は、それより内側の前記領域より、前記凸部の高さが低い、前記(1)~(11)のいずれか1に記載の現像装置。
(13)平面視における、前記加熱部に支持された前記基板の周縁部側から前記処理空間を排気する周縁排気部をさらに備え、
前記周縁排気部は、前記処理空間に開口する排気口を、前記加熱部に支持された前記基板の周方向に沿うように複数有し、
前記チャンバは、
前記分散機構を有する上チャンバと、
前記上チャンバと共に前記処理空間を形成する下チャンバと、を有し、
前記下チャンバは、前記加熱部の外周部を覆うと共に前記上チャンバの外周部と対向する下側側壁部と、
前記上チャンバの前記外周部と前記下側側壁部との間の隙間を封止する封止部材と、を有し、
前記下側側壁部は、平面視における前記封止部材より内側に、前記隙間に向けて開口する給気孔を、前記加熱部に支持された前記基板の周方向に沿うように複数有する、前記(1)~(12)のいずれか1に記載の現像装置。
(14)前記ガス供給部に接続された気化器をさらに備え、
前記気化器は、
前記現像ガスの原料としての、前記酸と他の薬液との混合溶液を収容する収容室と、
前記収容室を加熱する別の加熱部と、
前記収容室に隣接して設けられ、当該収容室と共に前記別の加熱部により加熱される、前記収容室より体積が大きい熱マス部と、を有する、前記(1)~(13)のいずれか1に記載の現像装置。
(15)金属含有レジストの被膜が形成された基板を現像する現像方法であって、
加熱部に支持された前記基板を加熱すると共に、前記加熱部の上方の処理空間に、酸を含む現像ガスを吐出し、前記基板を現像する工程を含み、
前記現像する工程において、ガス供給部に供給された前記現像ガスを分散させて、前記加熱部の上方の位置に形成された複数の吐出孔から、前記処理空間に吐出する、現像方法。
【符号の説明】
【0133】
30 現像装置
300 チャンバ
310 ガス供給部
311 下流分散板
312 上流分散板
313 中間部材
314 接続部
400 加熱部
K1 処理空間
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11