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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173709
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】プロピオン酸産生増強用組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20241205BHJP
   A23K 50/10 20160101ALI20241205BHJP
   A23K 10/18 20160101ALN20241205BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23K50/10
C12N1/20 A
A23K10/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076930
(22)【出願日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2023088897
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、ムーンショット型農林水産研究開発事業委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 修平
(72)【発明者】
【氏名】真貝 拓三
(72)【発明者】
【氏名】藤森 美帆
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
4B065
【Fターム(参考)】
2B005BA02
2B005BA03
2B005MB02
2B150AA02
2B150AB20
2B150AC01
2B150AD03
2B150AD04
2B150AD19
4B065AA01X
4B065AC14
4B065BB06
4B065BB08
4B065CA10
4B065CA43
(57)【要約】
【課題】 Prevotella lacticifexが産生するプロピオン酸前駆物質を高効率でプロピオン酸に変換する手段を提供する。
【解決手段】 Dialister succinatiphilus、Selenomonas bovis、Selenomonas ruminantium、Megasphaera elsdenii、Kandleria vitulina、Intestinibaculum porci、Schwartzia属細菌、Mitsuokella属細菌、Succinivibrio属細菌、Lachnospira属細菌、及びOlsenella属細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の菌を含有することを特徴とするプロピオン酸産生増強用組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Dialister succinatiphilus、Selenomonas bovis、Selenomonas ruminantium、Megasphaera elsdenii、Kandleria vitulina、Intestinibaculum porci、Schwartzia属細菌、Mitsuokella属細菌、Succinivibrio属細菌、Lachnospira属細菌、及びOlsenella属細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の菌を含有することを特徴とするプロピオン酸産生増強用組成物。
【請求項2】
Prevotella lacticifexを更に含有することを特徴とする請求項1に記載のプロピオン酸産生増強用組成物。
【請求項3】
Selenomonas bovis又はSelenomonas ruminantiumを含有し、Prevotella lacticifexを更に含有することを特徴とする請求項2に記載のプロピオン酸産生増強用組成物。
【請求項4】
Selenomonas bovisを含有し、Prevotella lacticifexを更に含有することを特徴とする請求項2に記載のプロピオン酸産生増強用組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプロピオン酸産生増強用組成物を含むことを特徴とする反芻動物用飼料。
【請求項6】
反芻動物が、ウシであることを特徴とする請求項5に記載の反芻動物用飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピオン酸産生増強用組成物、及びこれを利用した反芻動物用飼料に関する。本発明の組成物を反芻動物に飼料として与えることにより、その動物のルーメン内のプロピオン酸産生を増強させることができる。
【背景技術】
【0002】
反芻家畜が摂取した牧草などの飼料成分は、第一胃内に生息する微生物群によって分解、発酵され、酢酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸となって反芻家畜に利用される。プロピオン酸は反芻家畜体内でグルコースに変換され、反芻家畜の主要なエネルギー源になることから、家畜の飼料効率の改善の鍵となる発酵産物である。また、第一胃内でのプロピオン酸産生は、水素利用の観点からメタン(温室効果ガス) 産生と競合関係にあることが知られており、反芻家畜から放出されるメタン削減技術としてのプロピオン酸産生増強への期待も大きい。
【0003】
これまで、プロピオン酸増強やメタン低減は、主に穀物飼料などの高エネルギー飼料への変更やモネンシンなどの抗菌物質給与により行われてきた。一方、プロピオン酸増強につながるルーメン微生物の生菌材はない。本発明者は、低メタン産生で、かつ高プロピオン酸産生を示す乳用牛に特徴的に多く存在し、プロピオン酸前駆物質を多く産生する新規細菌種Prevotella lacticifex(以下、「P. lacticifex」と記載する場合がある。)菌を分離し、生菌剤利用に関する特許を出願している(特許文献1)。
【0004】
プロピオン酸の増強技術としては、穀物飼料などの高エネルギー飼料の利用量増加やモネンシンなどの抗菌物質給与により行われてきた。また、メタンの削減技術としては、高エネルギー飼料への変更や生産性向上に伴う頭数の削減、3-ニトロオキシプロパノール(3-NOP)などの化学物質による低減方法も開発されてきているが、いずれの技術においてもルーメン微生物相の改変につながる生菌材については後述する通りない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/265014号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
穀物飼料の給与は既に一般的な使用技術として定着しており、更なる増給はアシドーシスなどの生産病の発生につながるため、利用量の上積みは限定的である。抗菌物質利用については、薬剤耐性菌出現への懸念から世界的に使用が制限されてきている。反芻家畜のルーメン発酵や腸内微生物相を改善するための生菌剤として、バチルス属細菌を利用したカルスポリン(アサヒカルピスウェルネス社)、ボバクチン(ミリリサン製薬社)、ルミサン(日産合成工業社)などがあるが、いずれも生産性を高めるための微生物相のバランス改善を目的とした生菌剤であり、高プロピオン酸産生又は低メタン産生という特定発酵への改変を目的としたものではないことから、プロピオン酸産生の増強やメタン産生の低減効果は期待できない。一方、子牛ルーメンから分離されたプロピオン酸産生のPropionibacteriumを成牛に生菌剤として利用した報告もあるが、成牛での効果が見られていない。成牛においては、前述したように、本発明者が低メタン産生で、かつ高プロピオン酸産生を示す乳用牛に特徴的に多く存在し、プロピオン酸前駆物質を多く産生する新規細菌種P. lacticifex菌を分離し、特許出願している(特許文献1)。しかし、P. lacticifex菌が産生する乳酸、コハク酸、リンゴ酸などのプロピオン酸前駆物質のうち乳酸などは、これを二次代謝する細菌によって、プロピオン酸のほかにも、酪酸や酢酸などの有機酸に変換される可能性があり、P. lacticifex菌が産生する乳酸などの中間代謝産物を高効率でプロピオン酸に変換しうる協働細菌の組み合わせが重要となる。
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、P. lacticifex菌などが産生するプロピオン酸前駆物質を高効率でプロピオン酸に変換する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、P. lacticifex菌及びプロピオン酸産生と正の関係を示す細菌がルーメン内に存在することを見出した。また、本発明者は、Selenomonas bovis及びSelenomonas ruminantiumが、P. lacticifex菌と協働して、ルーメン内のプロピオン酸産生を増強し得ることも見出した。本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
【0009】
即ち、本発明は、以下の(1)~(6)を提供するものである。
(1)Dialister succinatiphilus、Selenomonas bovis、Selenomonas ruminantium、Megasphaera elsdenii、Kandleria vitulina、Intestinibaculum porci、Schwartzia属細菌、Mitsuokella属細菌、Succinivibrio属細菌、Lachnospira属細菌、及びOlsenella属細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の菌を含有することを特徴とするプロピオン酸産生増強用組成物。
【0010】
(2)Prevotella lacticifexを更に含有することを特徴とする(1)に記載のプロピオン酸産生増強用組成物。
【0011】
(3)Selenomonas bovis又はSelenomonas ruminantiumを含有し、Prevotella lacticifexを更に含有することを特徴とする(2)に記載のプロピオン酸産生増強用組成物。
【0012】
(4)Selenomonas bovisを含有し、Prevotella lacticifexを更に含有することを特徴とする(2)に記載のプロピオン酸産生増強用組成物。
【0013】
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載のプロピオン酸産生増強用組成物を含むことを特徴とする反芻動物用飼料。
【0014】
(6)反芻動物が、ウシであることを特徴とする(5)に記載の反芻動物用飼料。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、プロピオン酸の産生増強に用いられる新規な組成物を提供する。この組成物を反芻動物に飼料として与えることにより、その動物のルーメン内のプロピオン酸産生を増強させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】Prevotella lacticifexと群Aから形成される微生物ネットワークを示す図。スピアマンの相関係数r>|0.6|のエッジのみを示している。線の太さは相関の強さを示し、太い線は強い相関を、細い線は弱い相関を表す。線の種類は相関の正負を示し、実線は正の相関を、点線は負の相関を表す。
図2】乳酸を含む培地で培養した各種細菌の増殖曲線を示す図。
図3】グルコースを含む培地で培養した各種細菌の増殖曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のプロピオン酸産生増強用組成物は、Dialister succinatiphilus、Selenomonas bovis、Selenomonas ruminantium、Megasphaera elsdenii、Kandleria vitulina、Intestinibaculum porci、Schwartzia属細菌、Mitsuokella属細菌、Succinivibrio属細菌、Lachnospira属細菌、及びOlsenella属細菌からなる群(この細菌の群を「協働細菌群」と記載する場合がある。)から選ばれる少なくとも1種の菌を含有することを特徴とするものである。ここで、「プロピオン酸産生増強用組成物」とは、反芻動物のルーメン内などにおけるプロピオン酸の産生を増強させるために用いられる組成物を意味する。
【0018】
本発明の組成物は、反芻動物用飼料に利用することができる。本発明者によって分離されたP. lacticifexは、乳酸、コハク酸、リンゴ酸などのプロピオン酸前駆物質を産生し、ルーメン内のプロピオン酸産生を増強することが期待される。しかし、プロピオン酸前駆物質のうち乳酸などは、これを二次代謝する細菌によって、プロピオン酸のほかにも、酪酸や酢酸などの有機酸に変換される可能性があり、プロピオン酸産生の増強のためには、乳酸など中間代謝産物を高効率でプロピオン酸に変換しうる協働細菌も必要である。上記協働細菌群の11種類の細菌は、P. lacticifex菌及びプロピオン酸産生と正の関係を示す。従って、本発明の組成物を含む飼料を、P. lacticifexをルーメン内に有する動物に給与することにより、その動物のルーメン内におけるプロピオン酸産生を増強できると考えられる。対象とする反芻動物は、主にウシであるが、ウシ以外の反芻動物、例えば、ヤギ、ヒツジ、シカなどを対象としてもよい。また、ウシは、乳牛でも、肉牛でもよい。
【0019】
協働細菌群としては、微生物保存機関(例えば、NBRC、ATCC、DSM、JCM)から入手した菌株を使用することができる。例えば、Dialister succinatiphilusについてはDSM 21274、Selenomonas bovisについてはDSM 23594、JCM 15470、Selenomonas ruminantiumについてはSelenomonas ruminantium sub. lactilytica JCM 7528、Megasphaera elsdeniiについてはDSM 20460、JCM 1772、Kandleria vitulinaについてはDSM 20405、Intestinibaculum porciについてはNBRC 113396、Schwartzia属細菌についてはSchwartzia succinivorans DSM 10502、Mitsuokella属細菌についてはMitsuokella multacida JCM2054、Succinivibrio属細菌についてはSuccinivibrio dextrinosolvens DSM3072、Lachnospira属細菌についてはLachnospira multipara DSM3073、Olsenella属細菌についてはOlsenella uli ATCC 49627を使用することができる。
【0020】
本発明の組成物は、P. lacticifexを含んでいてもよい。協働細菌群の細菌はP. lacticifexと協働して、プロピオン酸を産生するので、ルーメン内にこの細菌を持たない反芻動物に与える場合はP. lacticifexも含む組成物を使用することが好ましい。使用するP. lacticifexは特に限定されず、例えば、P. lacticifex R5019、P. lacticifex R6014、P. lacticifex R6025などを使用することができる。なお、P. lacticifex R6014は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に受託番号FERM BP-03463として寄託されている。
【0021】
本発明の組成物は、協働細菌群の細菌、P. lacticifex以外の成分を含んでいてもよい。
【0022】
本発明の組成物を含む飼料を反動動物に給与する場合、その飼料中の協働細菌群の細菌の含有量(飼料中の協働細菌群のすべての細菌の含有量)はプロピオン酸産生を増強できる量であれば特に限定されないが、例えば、102~106 cell/g(湿重)とすることができ、また、106~109 cell/g(湿重)とすることができ、109~1012 cell/g(湿重)とすることができる。また、本発明の組成物がP. lacticifexを含む場合、飼料中のP. lacticifexの含有量はプロピオン酸産生を増強できる量であれば特に限定されないが、例えば、102~106 cell/g(湿重)とすることができ、また、106~109 cell/g(湿重)とすることができ、更に109~1012 cell/g(湿重)とすることできる。
【実施例0023】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
〔実施例1〕
〔材料と方法〕
家畜改良センター新冠牧場が管理するホルスタイン種泌乳牛77頭及び農研機構畜産研究部門が管理するホルスタイン種泌乳牛13頭(のべ90頭)から第一胃内容液採取用ゾンデ(ルミナー、三紳工業)を用いて経口で第一胃内容液を採取した。第一胃内容液は三重にした滅菌ガーゼで濾過後、微生物群集からDNAを抽出し5 ng/μL に希釈した。16S rRNA遺伝子V3-V4領域を増幅するプライマーセット(341F, 5′-CCTACGGGNGGCWGCAG-3′;(配列番号1) 805R, 5′-GACTACHVGGGTATCTAATCC-3′(配列番号2))を用いた2-step tailed PCR法によってライブラリーを調製し、MiSeq(Illumina)を用いて300塩基配列のペアエンドシーケンスを行った。得られたリードはQIIME2を用いてトリミング、クオリティチェック、アセンブルを行い、相同性97%でOperational taxonomic unit(OTU)を形成した。全リード数に対する各OTUの存在割合ならびに泌乳牛の生理特性についてスピアマンの相関係数を総当たりで算出し、微生物ネットワークを解析した。Prevotella lacticifexとネットワークを形成するOTUについて、BLAST検索又はSILVA(ver. 138)をデータベースにした属レベルの系統分類を行い、コハク酸や乳酸の資化性が予想されるものを群Aとした。
【0025】
次に群Aを種レベルで推定するため、上述のDNA抽出液の中から群Aの存在割合が高いものについて16S rRNA遺伝子全長配列を解析した。Shoreline WaveTM V1-V9 Kits(SHORELINE BIOME)を用いて16S rRNA遺伝子全長を増幅後、2-step tailed PCR法によってライブラリーを調製し、SequelIIe(PacBio)を用いてシーケンスを行った。得られたリードはクオリティフィルタリング後、DADA2を用いてAmplicon sequence variant(ASV)を形成した。16S rRNA遺伝子V3-V4領域の解析で得られた群Aの塩基配列と相同性100%で一致するASVについて、NCBI rRNA/ITS databaseを用いたBALST検索で種を推定した。
【0026】
〔結果〕
Prevotella lacticifexと0.6以上の正の相関係数で微生物ネットワークを形成する10種類の菌(Dialister succinatiphilus (代表株DSM 21274)、Selenomonas bovis (代表株DSM 23594)、Megasphaera elsdenii(代表株DSM 20460)、Kandleria vitulina(代表株DSM 20405)、Intestinibaculum porci (代表株NBRC 113396)、Schwartzia属(代表株Schwartzia succinivorans DSM 10502)、Mitsuokella属(代表株Mitsuokella multacida JCM2054)、Succinivibrio属(代表株Succinivibrio dextrinosolvens DSM3072)、Lachnospira属(代表株Lachnospira multipara DSM3073)、Olsenella属(代表株Olsenella uli ATCC 49627))を群Aとして特定した。また、群AとP. lacticifexの微生物ネットワークにより、牛第一胃内プロピオン酸割合と関連することが示された(図1)。
【0027】
〔実施例2〕
〔材料と方法〕
菌株
実験には、Megasphaera elsdenii JCM 1772、Selenomonas ruminantium sub. lactilytica JCM 7528、Selenomonas bovis JCM 15470、 及びSelenomonas bovis R5072の4菌株を使用した。
【0028】
Selenomonas ruminantium sub. lactilytica及びMegasphaera elsdeniiは、乳酸からのプロピオン酸産生が知られていたが、Selenomonas bovis基準株であるSelenomonas bovis JCM 15470は乳酸利用性がないと報告されていた(Kegui Zhang and Xiuzhu Dong (2009) Selenomonas bovis sp. nov., isolated from yak rumen contents. Int J Syst Evol Microbiol. 59:2080-3. doi: 10.1099/ijs.0.007641-0.)。Selenomonas bovis R5072は、Prevotella lacticifexが多く存在し、プロピオン酸産生率の高い牛から新たに分離された菌株である。
【0029】
培養
各菌株の培養には、ドイツの細胞・菌株寄託機関であるDSMZが公開している培地番号666の培地(Succiniclasticum medium)からNa2-succinate及びNa2S・9H20を除いたものに乳酸又はグルコースを添加した培地を使用した。乳酸は濃度が5 w/v %になるように添加し、グルコースは濃度が0.5 w/v %になるように添加した。各菌株の増殖性は、上記培地で培養し、細胞濁度(OD660、OD-MonitorC&T、TAITEC)を測定することにより評価した。
【0030】
有機酸の定量
培養開始から72時間後に培養液を回収し、HPLCによる有機酸分析システム(SHIMADZU Co. Ltd.)を用いて、培養開始前、および培養後の培養液中の有機酸を網羅的に定量した。また、以下の式により、乳酸利用率を算出した。
(乳酸利用率)=(培養後の残留乳酸濃度)÷(培養開始前の乳酸濃度)×100
【0031】
〔結果〕
各菌株の乳酸利用率及び発酵産物中の有機酸量を表1に示す。また、乳酸及びグルコースを添加した培地における各菌株の増殖曲線をそれぞれ図2及び3に示す。
【表1】
【0032】
表1に示すように、特にSelenomonas bovisは乳酸利用率が高く、高い割合(発酵産物の60%(mol%)以上)でプロピオン酸に変換することが明らかになった。また、Selenomonas bovisは乳酸を基質利用して、グルコースを基質とした時と同等の増殖が可能と判明した(図2及び3)。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、畜産業などの産業において利用可能である。
図1
図2
図3
【配列表】
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