(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173750
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】測色装置及びこれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20241205BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H04N1/00 567Q
H04N1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084444
(22)【出願日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2023090105
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川添 修
(72)【発明者】
【氏名】小篠 団
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 陽平
(72)【発明者】
【氏名】新保 晃平
【テーマコード(参考)】
5C072
【Fターム(参考)】
5C072AA01
5C072BA04
5C072CA02
5C072DA02
5C072DA12
5C072EA04
5C072NA01
(57)【要約】
【課題】厚さが異なる記録媒体の測色精度を高くする。
【解決手段】記録媒体に記録された色情報を読み取る読取部と、前記読取部にて読み取られた色情報について、基準板が具備する基準読取面上の白色基準を用いて演算を行う演算部と、を有し、前記読取部は、前記基準読取面が複数の高さを有する基準板の前記基準読取面のうち、前記記録媒体の厚さに応じた高さの読み取り領域から白色基準を読み取り可能である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録された色情報を読み取る読取部と、
前記読取部にて読み取られた色情報について、基準板が具備する基準読取面上の白色基準を用いて演算を行う演算部と、を有し、
前記読取部は、前記基準読取面が複数の高さを有する基準板の前記基準読取面のうち、前記記録媒体の厚さに応じた高さの読み取り領域から白色基準を読み取り可能である、測色装置。
【請求項2】
前記読取部は、階段状となった基準読取面上の白色基準を読み取り可能である、請求項1に記載の測色装置。
【請求項3】
前記読取部は、傾斜した基準読取面上の白色基準を読み取り可能である、請求項1に記載の測色装置。
【請求項4】
前記読取部を前記読み取り領域に対向する位置に移動させる移動手段を有する、請求項1に記載の測色装置。
【請求項5】
前記記録媒体の厚さを検知する検知手段を有し、
前記読取部は、前記検知手段にて検知された前記記録媒体の厚さに応じた高さの読み取り領域から白色基準を読み取り可能である、請求項1に記載の測色装置。
【請求項6】
前記検知手段は、前記記録媒体が搬送される搬送経路上に配置されている、請求項5に記載の測色装置。
【請求項7】
前記記録媒体の厚さが入力される入力手段を有し、
前記読取部は、前記入力手段に入力された前記記録媒体の厚さに応じた高さの読み取り領域から白色基準を読み取り可能である、請求項1に記載の測色装置。
【請求項8】
前記入力手段は、外部から操作可能な操作パネルである、請求項7に記載の測色装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の測色装置と、
前記記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、を有する、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測色装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測色装置では、紙等の記録媒体上に形成された画像を読み取った後、基準板に表示された白色基準を読み取り、色情報の補正を行うことが知られている。
【0003】
特許文献1には、画像を読み取る読取部を備えた画像読取装置において、画像が形成された原稿を、読取部に対してその原稿の厚さに対応した位置を通過するように移動させる構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構成では、色情報が読み取られる記録媒体の厚さが異なると、測色精度が低下する場合がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、厚さが異なる記録媒体の測色精度を高くすることができる測色装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、
記録媒体に記録された色情報を読み取る読取部と、
前記読取部にて読み取られた色情報について、基準板が具備する基準読取面上の白色基準を用いて演算を行う演算部と、を有し、
前記読取部は、前記基準読取面が複数の高さを有する基準板の前記基準読取面のうち、前記記録媒体の厚さに応じた高さの読み取り領域から白色基準を読み取り可能である、測色装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、厚さが異なる記録媒体の測色精度を高くすることができる測色装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】測色装置の基本的な構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1に示した制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】測色装置の基本的な動作を説明するためのフローチャートである。
【
図4】用紙の厚さが異なる場合の作用を説明するための図である。
【
図5】用紙の厚さが異なる場合の作用を説明するための図である。
【
図6】本発明の測色装置の第1の実施形態に用いられる基準板の構成を示す図である。
【
図7】第1の実施形態における測色装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図8】第1の実施形態における白色基準の読み取り位置の一例を示す図である。
【
図9】本発明の測色装置の第2の実施形態に用いられる基準板の構成を示す図である。
【
図10】第2の実施形態における白色基準の読み取り位置の一例を示す図である。
【
図11】本発明の測色装置の第3の実施形態を示す図である。
【
図12】
図11に示した測色装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図13】
図8に示した測色装置を有する画像形成装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための測色装置及びこれを備えた画像形成装置を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。
【0010】
〈測色装置の基本的な構成〉
図1は、測色装置の基本的な構成の一例を示す図である。
図1(a)は、用紙の搬送方向と直交する方向から見た図、
図1(b)は、
図1(a)に示したA-A断面を示す図である。
【0011】
本例は
図1に示すように、読取部10と、給紙部41と、排紙部42と、バッキングプレート43と、読取部搬送機構30と、給紙ローラ51と、排紙ローラ52と、制御装置20とを有する測色装置1である。
【0012】
読取部10は、記録媒体の一例となる用紙2に記録された色情報を読み取るものである。例えば、読取部10は、用紙2からの画像の読み取りを行うことで、用紙2に記録された色情報を読み取る。読取部10は、測色センサ11と、レンズ12と、照明部13とを有する。照明部13は、2つの光源14a,14bと、2つのレンズ15a,15bとを有する。
【0013】
光源14a,14bは、互いに異なる角度から読み取り対象となる用紙2に対して読み取り用の光を照射する。例えば、光源14a,14bは、用紙2に対してそれぞれ45°傾斜した角度から光を照射する。光源14a,14bのそれぞれは、用紙2に対してライン状に光を照射してもよい。その場合、光源14a,14bは、例えば、白色のLEDアレイを備えていてもよい。LEDは、「Light Emitting Diode」(発光ダイオード)の略称である。白色のLEDアレイは、例えば可視光の略全域において強度を有する。なお、光源14a,14bは、LEDを備えるものに限定されず、冷陰極管等の蛍光灯やランプ光源等を備えるものでもよい。光源14a,14bは、分光に必要な波長領域の光を発するものであって、用紙2からの読み取り領域の全体にわたって均質に照明可能なものでもよい。
【0014】
レンズ15a,15bは、光源14a,14bから照射された光の光路に設けられている。レンズ15a,15bは、光源14a,14bから照射された光を集光し、用紙2に対して平行光または収束光を照射することができる。
【0015】
レンズ12は、光軸が用紙2の読み取り面の法線方向に沿うように配置されている。レンズ12は、用紙2からの反射光、すなわち反射光束を、測色センサ11の入射面に所定倍率で結像させることができる。ここで、レンズ12は、像側テレセントリック特性が付加されたものでもよい。レンズ12に像側テレセントリック特性を付加することにより、像面に入射する光束の主光線を光軸と平行にすることができる。レンズ12は、複数枚のレンズから構成されたものでもよい。コリメートレンズとして、ロッドレンズを採用することができる。なお、レンズ12は、像側テレセントリック特性が付加されたものでなくてもよい。例えば、像面の各位置での主光線の傾きに合わせて、ピンホールアレイの各ピンホールとレンズアレイの各レンズの位置関係を調整することで、像面に入射する光束の主光線を簡易に光軸と略平行にできる。
【0016】
測色センサ11は、用紙2に照射された光の拡散反射光を分光する機能と、分光した光を受光し、受光した光に応じた信号を出力する機能とを有する。
【0017】
給紙部41は、読み取り対象となる用紙2が載置され、載置された用紙2を一対の給紙ローラ51によって、読取部10における読み取り領域に供給する。一対の給紙ローラ51は、給紙部41に載置された用紙2を1枚ずつ挟み込んで回転することで、読取部10における読み取り領域に供給する。
【0018】
排紙部42は、読取部10にて読み取り動作が行われた用紙2を一対の排紙ローラ52によって受け取る。一対の排紙ローラ52は、読取部10にて読み取り動作が行われた用紙2を1枚ずつ挟み込んで回転することで、排紙部42上に供給する。
【0019】
バッキングプレート43は、給紙部41と排紙部42との間にて読取部10における読み取り領域を含むように設けられている。給紙部41上に載置された用紙2は、一対の給紙ローラ51によって1枚ずつバッキングプレート43上に供給される。バッキングプレート43上には、読取部10における読み取り領域とは異なる領域に基準板3が設けられている。
【0020】
基準板3は、読取部10に対向する面が基準読取面となる。基準板3は、少なくとも基準読取面が、読取部10にて用紙2から読み取られた色情報についての演算に用いる白色基準を示す白色となっている。なお、基準板3の基準読取面に白色基準を示す白色が表示されていてもよい。
【0021】
これにより、読み取り対象となる用紙2は、給紙部41からバッキングプレート43上を介して排紙部42に向かって搬送方向Bに搬送されることになる。
【0022】
読取部搬送機構30は、本発明にて移動手段の一例となるものである。読取部搬送機構30は、読取部10を、用紙2の読み取り面に沿う方向であって、用紙2の搬送方向Bに直交する方向に移動させる。具体的には、読取部搬送機構30は、読取部10を、バッキングプレート43上に供給された用紙2に対向する領域と、基準板3に対向する領域との間を移動方向Cに移動させる。読取部搬送機構30は、例えば、読取部10を保持するベルトが内蔵されており、このベルトが回転することで読取部10を移動させてもよい。
【0023】
なお、バッキングプレート43の用紙2の搬送方向Bの上流側の端部近傍に、用紙2を検知するセンサを設けてもよい。
【0024】
図2は、
図1に示した制御装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
本例における制御装置20は
図2に示すように、紙厚取得部21と、移動制御部22と、読取制御部23と、演算部24と、出力部25とを有する。
【0026】
紙厚取得部21は、給紙部41からバッキングプレート43上に供給された用紙2の紙厚を取得する。紙厚取得部21は、測色装置1または後述する画像形成装置7に操作パネル70(
図11参照)等の入力手段が設けられている場合に、入力手段が受け付けた紙厚を示す情報を取得することができる。また、測色装置1に検知センサや変位センサ60(
図11参照)等の検知手段が設けられている場合に、検知手段が検知した紙厚を示す情報を取得することができる。なお、用紙2の紙厚を検知する手段の詳細については後述する。
【0027】
移動制御部22は、読取部搬送機構30による読取部10の移動を制御する。具体的には、移動制御部22は、読取部10が用紙2から色情報を読み取る際は、読取部10を、バッキングプレート43上に供給された用紙2に対向する領域に移動させる。また、読取部10が基準板3から白色基準を読み取る際は、移動制御部22は、読取部10を、基準板3に対向する領域に移動させる。その際、移動制御部22は、基準板3に対向する領域のうち、紙厚取得部21にて取得された用紙2の紙厚に応じた領域に読取部10を移動させる。
【0028】
読取制御部23は、読取部10における用紙2からの色情報の読み取りと、基準板3からの白色基準の読み取りとを制御し、これらの読取結果を演算部24に出力する。
【0029】
演算部24は、読取部10にて用紙2から読み取られた色情報について、読取部10にて基準板3から読み取られた白色基準を用いて演算を行う。
【0030】
出力部25は、演算部24における演算結果を出力する。
【0031】
〈測色装置の基本的な動作〉
次に、測色装置1の基本的な動作について説明する。
【0032】
図3は、測色装置1の基本的な動作を説明するためのフローチャートである。
【0033】
図1に示した測色装置1においては、まず、給紙部41に載置された用紙2がバッキングプレート43上に供給された状態で、移動制御部22の制御によって読取部10が用紙2に対向する領域に移動する。そして、読取制御部23の制御によって、読取部10が用紙2に形成された画像を読み取る(ステップS1)。
【0034】
また、ステップS1における処理と前後して、移動制御部22の制御によって読取部10が基準板3に対向する領域に移動する。そして、読取制御部23の制御によって、読取部10が基準板3の基準読取面上の白色基準を読み取る(ステップS2)。
【0035】
これにより、読取部10は、用紙2に形成された画像と、基準板3による白色基準の分光強度を測定する。
【0036】
次に、演算部24が、基準板3による白色基準の分光強度を基準100として、用紙2に形成された画像の分光強度から画像の分校反射率を計算する(ステップS3)。
【0037】
次に、演算部24が、ステップS3にて計算された分校反射率を、明度、色相及び彩度を示すLab値に変換する(ステップS4)。
【0038】
このようにして、演算部24は、読取部10にて用紙2から読み取られた色情報について、読取部10にて基準板3から読み取られた白色基準を用いて演算を行う。
【0039】
その後、出力部25が、ステップS4にて変換されたLab値による読取結果を出力する(ステップS5)。
【0040】
ここで、読取部10が用紙2に形成された画像を読み取る際と、読取部10が基準板3の基準読取面上の白色基準を読み取る際とで、読取部10の光源14a,14bからの光の照射条件を合わせておく必要がある。これらの照射条件が合っていないと、分光反射率を計算する際、誤差が大きくなり、測定精度が低下してしまう。
【0041】
〈画像読取時と白色基準読取時とで光の照射条件が合っていない場合の作用〉
図4及び
図5は、用紙2の厚さが異なる場合の作用を説明するための図である。
【0042】
図1に示した測色装置1においては、
図4(a)に示すように、光源14aから照射された光と光源14bから照射された光とが、角度αを45°として2方向から用紙2に照射され、用紙2の下方近傍で交わるようになっている。その場合、用紙2の厚さが基準板3と同一の設計狙いのものであれば、読み取り領域の設計位置からの距離に対して用紙2が受光する光量は
図5の実線で示すような特性を有するものとなる。
【0043】
一方、例えば、用紙2の厚さが基準板3よりも厚い場合は、
図4(b)に示すように、基準板3と同一の厚さとした設計中央位置4に対して、その用紙2の読み取り面2aが光源14a,14bに近くなる。それにより、
図5の破線で示すように、用紙2が受光するピーク光量が低下するとともに左右に分離するため全体的に照明光量が低下する。
【0044】
また、用紙2の厚さが基準板3よりも薄い場合は、
図4(c)に示すように、基準板3と同一の厚さとした設計中央位置4に対して、その用紙2の読み取り面2aが光源14a,14bから遠ざかる。それにより、
図5の一点鎖線で示すように、用紙2が受光するピーク光量が増加しつつ、2つの光源14a,14bから照射された光が重なることで全体的に照明光量が増加する。
【0045】
このように、用紙2の読み取り面と光源14a,14bとの距離が変化した場合、画像読取時と白色基準読取時とで光の照射条件が異なってしまうこととなり、
図3に示したフロー中の分校反射率の計算において誤差が生じてしまう。
【0046】
そこで、画像を読み取る位置で、用紙をその厚さに応じて上下に移動させて、読取部と用紙との距離を一定に保つとともに、白色の基準板の高さを読取部が用紙から画像を読み取る際の距離と併せて一定としておくことで条件を一致させることが知られている。また、読取部が有する基準に、白色の基準板や用紙を押し当て、読取部と用紙との距離を一定に保つことが知られている。
【0047】
しかしながら、用紙をその厚さに応じて上下に移動させる場合、用紙を移動させるための複雑かつ高価な構成が必要となる場合がある。
【0048】
そこで、下記実施形態では、白色基準が読み取られる基準読取面が複数の高さを有する基準板を用い、画像の読み取り対象となる用紙の厚さに応じた高さを選択し、その高さにて白色基準を読み取って色情報についての演算を行う。
【0049】
(第1の実施形態)
図6は、本発明の測色装置の第1の実施形態に用いられる基準板の構成を示す図である。
【0050】
図6に示すように、本実施形態に用いられる基準板103は、白色基準が読み取られる基準読取面103a~103cが階段状となっている。それにより、基準読取面103a~103cはその高さが互いに異なり、基準読取面103aの高さが最も低く、基準読取面103cの高さが最も高くなっている。このような構成であることで、本実施形態に用いられる基準板103は、基準読取面103a~103cが複数の高さを有するものとなっている。なお、基準板103は、基準板103自体が白色基準を示す色で構成されていてもよいし、基準読取面103a~103cのそれぞれに白色基準が表示されていてもよい。
【0051】
図7は、第1の実施形態における測色装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図8は、第1の実施形態における白色基準の読み取り位置の一例を示す図である。
【0052】
本実施形態の測色装置101は、
図1に示した測色装置1に対して基準板3の代わりに
図6に示した基準板103が設けられたものである。本形態においては、給紙部41に載置された用紙2がバッキングプレート43上に供給された状態で、移動制御部22の制御によって読取部10が用紙2に対向する領域に移動する。そして、読取制御部23の制御によって、読取部10が用紙2に形成された画像を読み取る(ステップS11)。
【0053】
また、ステップS11における処理と前後して、まず、給紙部41からバッキングプレート43上に供給された用紙2の読み取り面の高さを測定する(ステップS12)。この測定は、バッキングプレート43の用紙2の搬送方向上流側の端部近傍に設けられた検知センサによって行ってもよい。測定された読み取り面の高さによる用紙2の紙厚は、紙厚取得部21にて取得される。
【0054】
次に、移動制御部22が、読取部搬送機構30を駆動させて読取部10を基準板103に対向する位置に移動させる。ここで、移動制御部22は、読取部10にて読み取り対象となる用紙2の厚さと、それに応じた読取部搬送機構30による読取部10の移動量とが対応づけられたテーブルを有している。例えば、
図6に示したように厚さが3段階となる基準板103を用いる場合、テーブルには用紙2の紙厚として、大小2つのしきい値が設定されていてもよい。その場合、用紙2の紙厚が大きなしきい値よりも厚い場合の読取部10の移動量として、読取部10を基準板103の基準読取面103cに対向する領域に移動させるための量が設定されている。また、用紙2の紙厚が小さなしきい値よりも薄い場合の読取部10の移動量として、読取部10を基準板103の基準読取面103aに対向する領域に移動させるための量が設定されている。また、用紙2の紙厚が小さなしきい値以上でかつ大きなしきい値以下の場合の読取部10の移動量として、読取部10を基準板103の基準読取面103bに対向する領域に移動させるための量が設定されている。そのため、移動制御部22は、このテーブルを参照し、紙厚取得部21にて取得された用紙2の紙厚に応じた領域に読取部10を移動させる。なお、上述した大小2つのしきい値は、測色装置101にて画像が読み取られる用紙2として想定される厚さに基づいて予め設定されている。
【0055】
例えば、紙厚取得部21にて取得された用紙2の紙厚が、テーブルに設定された紙厚の平均的な紙厚である場合は、
図8(a)に示すように、読取部搬送機構30は、読取部10を基準板103の基準読取面103bに対向する領域に移動させる。基準読取面103bは、上述したように、基準板103の基準読取面103a~103cのうち、その高さが中間となるものである。
【0056】
また、紙厚取得部21にて取得された用紙2の紙厚が、テーブルに設定された大きなしきい値よりも厚い場合は、
図8(b)に示すように、読取部搬送機構30は、読取部10を基準板103の基準読取面103cに対向する領域に移動させる。基準読取面103cは、上述したように、基準板103の基準読取面103a~103cのうち、その高さが最も高くなっている。
【0057】
また、紙厚取得部21にて取得された用紙2の紙厚が、テーブルに設定された小さなしきい値よりも薄い場合は、
図8(c)に示すように、読取部搬送機構30は、読取部10を基準板103の基準読取面103aに対向する領域に移動させる。基準読取面103aは、上述したように、基準板103の基準読取面103a~103cのうち、その高さが最も低くなっている。
【0058】
このようにして、読取部10は、基準板103の基準読取面103a~103cのうち用紙2の紙厚に近い高さの基準読取面に対向する領域に移動する。そして、読取制御部23の制御によって読取部10が対向する基準読取面を読み取り領域として白色基準を読み取る(ステップS13)。
【0059】
なお、3つの基準読取面103a~103cの白色基準を予め読み取っておき、画像の読み取り対象となる用紙2の厚さが取得された時点で、それに対応づけられた白色基準による情報を用いてもよい。
【0060】
これにより、読取部10は、用紙2に形成された画像と、基準板103による白色基準の分光強度を測定する。
【0061】
次に、演算部24が、基準板103による白色基準の分光強度を基準100として、用紙2に形成された画像の分光強度から画像の分校反射率を計算する(ステップS14)。
【0062】
次に、演算部24が、ステップS14にて計算された分校反射率を、明度、色相及び彩度を示すLab値に変換する(ステップS15)。
【0063】
その後、出力部25が、ステップS15にて変換されたLab値による読取結果を出力する(ステップS16)。
【0064】
このように本実施形態においては、画像の読み取り対象となる用紙2の厚さを測定し、基準板103の高さが異なる基準読取面103a~103cのうち、用紙2の厚さに応じた高さの基準読取面から白色基準を読み取っている。すなわち、読取部10が、基準板103の高さが異なる基準読取面103a~103cのうち、用紙2の厚さに応じた高さの基準読取面から白色基準を読み取り可能となっている。それにより、用紙2の画像読取時と白色基準読取時の光の照射条件が近いものとなり、分光反射率を計算する際に生じる誤差が減少し、精度のよい測定を行うことができる。そしてその際、用紙2を上下に移動させる機構を必要としない。
【0065】
また、読取部搬送機構30によって基準板103の対応する基準読取面に読取部10を移動させるので、用紙2の厚さに対応する基準板103の基準読取面を選択し、選択した基準読取面に読取部10を手作業で移動させる必要がない。この読取部搬送機構30は、上述したように、読取部10を、バッキングプレート43上に供給された用紙2に対向する領域と、基準板3に対向する領域との間を移動方向Cに移動させるものである。すなわち、従来からある測色装置が有する構成であるため、新たな機構を追加する必要がなく、簡単かつ安価な装置の提供が可能となる。
【0066】
また、測色装置101にて画像が読み取られる用紙2として想定される厚さがいくつか決められている場合、階段状の基準読取面のそれぞれの高さをその厚さに応じたものとしてもよい。それにより、簡易な構成で、用紙2の読み取り面と同一の高さの基準読取面から白色基準を読み取ることができる。なお、本実施形態では、厚さが3段階となる基準板103を例に挙げて説明した。しかしながら、段階数は3段階に限らない。段階数が多くなるほど、測定精度を向上させることができる。
【0067】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の測色装置の第2の実施形態に用いられる基準板の構成を示す図である。
【0068】
図9に示すように、本実施形態に用いられる基準板203は、白色基準が読み取られる基準読取面203aが傾斜している。それにより、基準読取面203aはその高さが連続的に変化しており、基準板203は、基準読取面203aが複数の高さを有するものとなっている。なお、基準板203は、基準板203自体が白色基準を示す色で構成されていてもよいし、基準読取面203aに白色基準が表示されていてもよい。
【0069】
図10は、第2の実施形態における白色基準の読み取り位置の一例を示す図である。
【0070】
本実施形態の測色装置201は、
図1に示した測色装置1に対して基準板3の代わりに
図9に示した基準板203が設けられたものである。そのため、基準板203の基準読取面203aの高さが連続的に変化している。そして、移動制御部22においては、用紙2の厚さと、基準読取面203aのうち用紙2の厚さと同一の高さの領域までの読取部10の移動量とが対応づけられている。移動制御部22は、基準読取面203aの高さが紙厚取得部21にて取得された用紙2の紙厚と同一となる領域に読取部搬送機構30によって読取部10を移動させる。
【0071】
例えば、紙厚取得部21にて取得された用紙2の紙厚が、テーブルに設定された紙厚の平均的な紙厚である場合は、
図10(a)に示すように、読取部搬送機構30は、読取部10を基準板203の基準読取面203aの中央部分に対向する領域に移動させる。
【0072】
また、紙厚取得部21にて取得された用紙2の紙厚が厚い場合は、
図10(b)に示すように、読取部搬送機構30は、読取部10を基準板203の基準読取面203aの高い部分に対向する領域に移動させる。
【0073】
また、紙厚取得部21にて取得された用紙2の紙厚が薄い場合は、
図10(c)に示すように、読取部搬送機構30は、読取部10を基準板203の基準読取面203aの低い部分に対向する領域に移動させる。
【0074】
このようにして、読取部10は、基準板203の基準読取面203aのうち用紙2の紙厚と同一の高さの部分に対向する領域に移動する。そして、読取制御部23の制御によって読取部10が対向する基準読取面を読み取り領域として白色基準を読み取る。
【0075】
なお、基準読取面203aの白色基準をその基準読取面203aを高さと対応づけて予め読み取っておき、画像の読み取り対象となる用紙2の厚さが取得された時点で、それに対応づけられた白色基準による情報を用いてもよい。
【0076】
このように本実施形態においては、画像の読み取り対象となる用紙2の厚さを測定し、高さが連続的に変化する基準読取面203aを有する基準板203の基準読取面203aのうち、用紙2の厚さと同一の高さの領域から白色基準を読み取っている。それにより、用紙2の画像読取時と白色基準読取時の光の照射条件が同一となり、分光反射率を計算する際に生じる誤差が減少し、精度のよい測定を行うことができる。そしてその際、用紙2を上下に移動させる機構を必要としない。
【0077】
ここで、
図9に示した基準板203にて実際に測定精度を担保できるかどうかについて説明する。
【0078】
図1に示した測色装置1にて対応する用紙の厚さを0.8mmとする。また、光源14a,14bからの光の照射角度α(
図4参照)は、精度確保のためには45°±1°であることが要求されている。
【0079】
そこで、
図9に示した基準板203の最も厚さが厚い部分の基準読取面203aの高さH=0.8mm、基準読取面の傾斜を形成するための角度Θ=0.5°(1°の1/2)として計算すると、基準板203の長さLは約92mmとなる。
【0080】
基準板203の長さLが92mmであれば、測色装置1内に十分設置可能なサイズであり、実現可能である。
【0081】
また、厚さが0.05mmの用紙に対応した基準板の測定が可能かという点については、基準読取面が0.5°傾斜した基準板の場合、0.05mmの高さの変化をさせるには、水平方向に、5.7mmの移動が必要となる。そのため、読取部搬送機構30による読取部10の停止精度に対して十分に余裕があり、実現可能である。
【0082】
(第3の実施形態)
図11は、本発明の測色装置の第3の実施形態を示す図である。
図11(a)は、用紙の搬送方向と直交する方向から見た図、
図11(b)は、給紙部41側から見た図である。
【0083】
図11に示すように、本実施形態の測色装置301は、
図1に示した測色装置1に対して、基準板3の代わりに
図6に示した基準板103を有し、さらに、変位センサ60及び操作パネル70を有するものである。
【0084】
変位センサ60は、本発明にて検知手段の一例となるものである。変位センサ60は、バッキングプレート43上において、用紙2の搬送経路上にて読取部10の移動と干渉しない領域に設けられている。変位センサ60は、バッキングプレート43に対向する面にコロを有している。給紙部41から用紙2がバッキングプレート43に供給されると、変位センサ60のコロが浮き上がり、この浮き上がり量を変位センサ60が検出することで用紙2の厚さを検知することができる。このようにコロを有する変位センサ60による検出は数mmであるため、測定分解能はサブミクロン単位となる。
【0085】
操作パネル70は、本発明にて入力手段の一例となるものであって、外部から操作可能に構成されている。
【0086】
図12は、
図11に示した測色装置301の動作を説明するためのフローチャートである。
【0087】
本実施形態においては、給紙部41に載置された用紙2がバッキングプレート43上に供給された状態で、移動制御部22の制御によって読取部10が用紙2に対向する領域に移動する。そして、読取制御部23の制御によって、読取部10が用紙2に形成された画像を読み取る(ステップS21)。
【0088】
また、ステップS21における処理と前後して、まず、給紙部41からバッキングプレート43上に供給された用紙2の読み取り面の高さを変位センサ60によって測定する(ステップS22)。
【0089】
測定された読み取り面の高さによる用紙2の紙厚は、紙厚取得部21にて取得される(ステップS23)。
【0090】
次に、移動制御部22が、読取部搬送機構30を駆動させて読取部10を基準板103に対向する位置に移動させる。それにより、読取部10は、基準板103の基準読取面103a~103cのうち用紙2の紙厚に近い高さの基準読取面に対向する領域に移動する。そして、読取制御部23の制御によって読取部10が対向する基準読取面を読み取り領域として白色基準を読み取る(ステップS24)。
【0091】
これにより、読取部10は、用紙2に形成された画像と、基準板103による白色基準の分光強度を測定する。
【0092】
次に、演算部24が、基準板103による白色基準の分光強度を基準100として、用紙2に形成された画像の分光強度から画像の分校反射率を計算する(ステップS25)。
【0093】
次に、演算部24が、ステップS14にて計算された分校反射率を、明度、色相及び彩度を示すLab値に変換する(ステップS26)。
【0094】
その後、出力部25が、ステップS15にて変換されたLab値による読取結果を出力する(ステップS27)。
【0095】
このように本実施形態においては、用紙2の厚さを検知する変位センサ60を有し、変位センサ60にて検知された用紙2の厚さに応じた高さの読み取り領域から読取部10が読み取った白色基準を用いて演算部24が色情報についての演算を行っている。そのため、測色装置における処理とは別個に用紙2の厚さを測定しておく必要がない。また、変位センサ60が用紙2の搬送経路上に設けられていることで、用紙2が搬送される過程において用紙2の厚さが測定されることとなり、処理効率が向上する。
【0096】
なお、給紙部41からバッキングプレート43上に供給された用紙2の紙厚を、操作パネル70を用いて操作者が入力する構成としてもよい。その場合、操作者が用紙2の紙厚を確認しながら入力することができる。
【0097】
〈画像形成装置〉
以下に、上述した測色装置101,201,301を有する画像形成装置について、測色装置101を有する画像形成装置を例に挙げて説明する。
【0098】
図13は、
図8に示した測色装置101を有する画像形成装置の一例を示す図である。
【0099】
図13に示す画像形成装置7は、例えばインクジェット方式の画像形成装置である。画像形成装置7は、
図8に示した測色装置101と、それに用いた給紙部41及び排紙部42に加えて、画像形成部5と、乾燥部6とを備える。画像形成装置7は、測色装置101を備えることにより、インラインにおいて分光特性の取得、及び作像条件の調整を行うことができる。
【0100】
画像形成部5は、複数の印字ヘッド5a~5gを有する。例えば、印字ヘッド5aは、グリーンのインクを吐出する。印字ヘッド5bは、オレンジのインクを吐出する。印字ヘッド5cは、イエローのインクを吐出する。印字ヘッド5dは、マゼンダのインクを吐出する。印字ヘッド5eは、シアンのインクを吐出する。印字ヘッド5fは、ブラックのインクを吐出する。画像形成部5は、画像情報に基づいて対応する色のインクを用紙2に吐出する。インクジェットから吐出されたインクは、用紙2に付着して、可視像を形成する。画像形成部5は、インクが塗布された用紙2を乾燥部6に供給する。
【0101】
乾燥部6は、用紙2を搬送しながらインクを乾燥する。
【0102】
本例の画像形成装置7は、給紙部41に載置された用紙2が画像形成部5に供給され、画像形成部5にて用紙2に画像を形成する。
【0103】
画像が形成された用紙2は乾燥部6に供給され、乾燥部6にてインクを乾燥させる。
【0104】
その後、測色装置101において、用紙2の画像データの色情報を読み取ることで分光特性を取得する。なお、測色装置101にて用紙2から色情報を読み取る面は、画像形成部5にてインクが付着した面である。測色装置101は、画像形成装置7の起動時、用紙2の紙種の変更時、及び定期検査時等に動作する。定期検査は、例えば、一定時間の稼働後に実施される。測色装置101は、取得した分光特性に関するデータに基づいて、用紙2の画像面内の色むらや色変動を監視することができる。
【0105】
測色装置101により取得されたデータは、画像形成装置7の制御装置に出力される。画像形成装置7の制御装置は、測色装置101による監視結果に基づいて、印字ヘッド5a~5fから吐出されるインクの吐出量を調整することができる。画像形成装置7の制御装置は、測色装置101による監視結果に基づいて、画像形成条件を調整することができる。画像形成装置7の制御装置は、画像評価装置として機能し、色再現性を向上させることができる。
【0106】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
(付記1)
記録媒体に記録された色情報を読み取る読取部と、
前記読取部にて読み取られた色情報について、基準板が具備する基準読取面上の白色基準を用いて演算を行う演算部と、を有し、
前記読取部は、前記基準読取面が複数の高さを有する基準板の前記基準読取面のうち、前記記録媒体の厚さに応じた高さの読み取り領域から白色基準を読み取り可能である、測色装置。
(付記2)
前記読取部は、階段状となった基準読取面上の白色基準を読み取り可能である、付記1に記載の測色装置。
(付記3)
前記読取部は、傾斜した基準読取面上の白色基準を読み取り可能である、請求項1に記載の測色装置。
(付記4)
前記読取部を前記読み取り領域に対向する位置に移動させる移動手段を有する、付記1乃至3のいずれかに記載の測色装置。
(付記5)
前記記録媒体の厚さを検知する検知手段を有し、
前記読取部は、前記検知手段にて検知された前記記録媒体の厚さに応じた高さの読み取り領域から白色基準を読み取り可能である、付記1乃至4のいずれかに記載の測色装置。
(付記6)
前記検知手段は、前記記録媒体が搬送される搬送経路上に配置されている、付記5に記載の測色装置。
(付記7)
前記記録媒体の厚さが入力される入力手段を有し、
前記読取部は、前記入力手段に入力された前記記録媒体の厚さに応じた高さの読み取り領域から白色基準を読み取り可能である、付記1乃至4のいずれかに記載の測色装置。
(付記8)
前記入力手段は、外部から操作可能な操作パネルである、付記7に記載の測色装置。
(付記9)
付記1乃至8のいずれかに記載の測色装置と、
前記記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、を有する、画像形成装置。
【符号の説明】
【0107】
1,101,201,301 測色装置
2 用紙
3,103,203 基準板
4 設計中央位置
5 画像形成部
5a~5f 印字ヘッド
6 乾燥部
7 画像形成装置
10 読取部
11 測色センサ
12,15a,15b レンズ
13 照明部
14a,14b 光源
20 制御装置
21 紙厚取得部
22 移動制御部
23 読取制御部
24 演算部
25 出力部
30 読取部搬送機構
41 給紙部
42 排紙部
43 バッキングプレート
51 給紙ローラ
52 排紙ローラ
60 変位センサ
103a~103c,203a 基準読取面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0108】