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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173822
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20241205BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C08L67/02 ZBP
C08L101/16
C08L67/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024088867
(22)【出願日】2024-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2023091552
(32)【優先日】2023-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 順矢
(72)【発明者】
【氏名】今松 将也
(72)【発明者】
【氏名】佐近 和樹
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓之
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002CF181
4J002CF182
4J002CF18W
4J002CF18X
4J002CF191
4J002CF192
4J002CF19W
4J002CF19X
4J002EH116
4J002EH136
4J002HA09
4J200BA10
4J200EA05
4J200EA10
(57)【要約】
【課題】生分解性、耐熱性、及び透明性のバランスに優れる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ブロック共重合体(I)と、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と、環状エステル化合物(III)とを含有する樹脂組成物であって、前記ブロック共重合体(I)が、ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)に由来する単位を含有するポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)とを含み、前記ブロック共重合体(I)と前記脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と前記環状エステル化合物(III)の合計100質量%に対し、前記環状エステル化合物(III)が0.005~10質量%である、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック共重合体(I)と、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と、環状エステル化合物(III)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ブロック共重合体(I)が、ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)に由来する単位を含有するポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)とを含み、
前記ブロック共重合体(I)と前記脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と前記環状エステル化合物(III)の合計100質量%に対し、前記環状エステル化合物(III)が0.005~10質量%である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂(II)が、バイオマス樹脂及び生分解性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂(II)が、ポリ乳酸系樹脂である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記環状エステル化合物(III)が、脂肪族ジオール(c1)及び脂肪族ジカルボン酸(c2)に由来する構造を含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記脂肪族ジオール(c1)及び前記脂肪族ジオール(b1)は同一であり、前記脂肪族ジカルボン酸(c2)及び前記脂肪族ジカルボン酸(b2)は同一である、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ブロック共重合体(I)の数平均分子量が5,000~400,000である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ブロック構造単位(B)の数平均分子量が1,000~300,000である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ブロック共重合体(I)のガラス転移温度が-80℃以上15℃以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ブロック共重合体(I)のガラス転移温度が-80℃以上-45℃以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記ブロック共重合体(I)の融点が110℃以上180℃未満である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記ブロック構造単位(A)が、ポリL-乳酸に由来する構造単位又はポリD-乳酸に由来する構造単位を含有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記ブロック構造単位(A)と前記ブロック構造単位(B)の合計100質量%に対し、前記ブロック構造単位(A)が5質量%以上95質量%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記脂肪族ジオール(b1)が、アルキル基を分岐鎖として有するジオールである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記脂肪族ジオール(b1)の炭素数が4以上30以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記分岐鎖がメチル基である、請求項13に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
前記脂肪族ジオール(b1)が3-メチル-1,5-ペンタンジオールである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
前記脂肪族ジカルボン酸(b2)の炭素数が4以上12以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護の見地から、バイオプラスチックに関する開発が盛んに行われている。バイオプラスチックであるポリ乳酸は、光合成により生産されるとうもろこし等の植物由来再生可能資源を原料とし、幅広い分野において利用されることが期待されている。
しかし、ポリ乳酸は、石油系プラスチックと比べると脆く、耐衝撃性、及び耐熱性等に劣ることが知られている。そのため、ポリ乳酸は、樹脂材料としての使用が制限されることがある。ポリ乳酸の欠点を改良する試みとして、例えば、特定の可塑剤や結晶核剤を利用する技術が検討されている(例えば特許文献1)。また、特定のポリエステルとポリ乳酸とを共重合したブロック共重合体とポリ乳酸の組成物を利用する技術が検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-62573号公報
【特許文献2】特開2001-335623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイオプラスチック材料からなる最終製品には、汎用性の観点から、生分解性特性を有しつつ、耐衝撃性や耐熱性に優れ、さらに透明性に優れるものが望まれる。しかし、耐熱性の向上を目的としてポリ乳酸の結晶化度を向上させた場合、透明性が低下する傾向があった。
そこで本発明は、生分解性、耐熱性、及び透明性のバランスに優れる樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは下記本発明を想到し、当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0006】
[1] ブロック共重合体(I)と、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と、環状エステル化合物(III)とを含有する樹脂組成物であって、
前記ブロック共重合体(I)が、ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)に由来する単位を含有するポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)とを含み、
前記ブロック共重合体(I)と前記脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と前記環状エステル化合物(III)の合計100質量%に対し、前記環状エステル化合物(III)が0.005~10質量%である、樹脂組成物。
[2] 前記脂肪族ポリエステル系樹脂(II)が、バイオマス樹脂及び生分解性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記脂肪族ポリエステル系樹脂(II)が、ポリ乳酸系樹脂である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 前記環状エステル化合物(III)が、脂肪族ジオール(c1)及び脂肪族ジカルボン酸(c2)に由来する構造を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] 前記脂肪族ジオール(c1)及び前記脂肪族ジオール(b1)は同一であり、前記脂肪族ジカルボン酸(c2)及び前記脂肪族ジカルボン酸(b2)は同一である、上記[4]に記載の樹脂組成物。
[6] 前記ブロック共重合体(I)の数平均分子量が5,000~400,000である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 前記ブロック構造単位(B)の数平均分子量が1,000~300,000である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] 前記ブロック共重合体(I)のガラス転移温度が-80℃以上15℃以下である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] 前記ブロック共重合体(I)のガラス転移温度が-80℃以上-45℃以下である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] 前記ブロック共重合体(I)の融点が110℃以上180℃未満である、上記[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11] 前記ブロック構造単位(A)が、ポリL-乳酸に由来する構造単位又はポリD-乳酸に由来する構造単位を含有する、上記[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12] 前記ブロック構造単位(A)と前記ブロック構造単位(B)の合計100質量%に対し、前記ブロック構造単位(A)が5質量%以上95質量%以下である、上記[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13] 前記脂肪族ジオール(b1)が、アルキル基を分岐鎖として有するジオールである、上記[1]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[14] 前記脂肪族ジオール(b1)の炭素数が4以上30以下である、上記[1]~[13]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[15] 前記分岐鎖がメチル基である、上記[13]に記載の樹脂組成物。
[16] 前記脂肪族ジオール(b1)が3-メチル-1,5-ペンタンジオールである、上記[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[17] 前記脂肪族ジカルボン酸(b2)の炭素数が4以上12以下である、上記[1]~[16]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生分解性、耐熱性、及び透明性のバランスに優れる樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施態様の一例に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施態様は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下の記載に限定されない。
また本明細書において、実施態様の好ましい形態を示すが、個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、好ましい形態である。数値範囲で示した事項について、いくつかの数値範囲がある場合、それらの下限値と上限値とを選択的に組み合わせて好ましい形態とすることができる。
なお、本明細書において、「XX~YY」との数値範囲の記載がある場合、「XX以上YY以下」を意味する。
本明細書において、「~単位」(ここで「~」は重合体を示す)とは「~に由来する構造単位」を意味する。例えば「ポリ乳酸単位」とは「ポリ乳酸に由来する構造単位」を意味し、「ポリエステル単位」とは「ポリエステルに由来する構造単位」を意味する。
本明細書において、「主鎖」とは、分子中において最も長い分子鎖を意味する。また、「分岐鎖」とは、分子中における主鎖以外の分子鎖を意味する。
本明細書において、「L-乳酸単位」とは、ブロック構造単位(A)における、L-乳酸に由来する構造単位を意味する。なお、ブロック構造単位(A)がラクチドに由来する構造単位を含み、かつ該ラクチドに由来する構造単位中に、L-乳酸に由来する構造単位が含まれる場合、該L-乳酸に相当する部分も、L-乳酸単位に含まれる。
本明細書において、「D-乳酸単位」とは、ブロック構造単位(A)における、D-乳酸に由来する構造単位を意味する。なお、ブロック構造単位(A)がラクチドに由来する構造単位を含み、かつ該ラクチドに由来する構造単位中に、D-乳酸に由来する構造単位が含まれる場合、該D-乳酸に相当する部分も、D-乳酸単位に含まれる。
本明細書において、「ポリDL-乳酸」とは、L-乳酸単位及びD-乳酸単位を含有するポリ乳酸を意味する。ポリDL-乳酸としては、ポリL-乳酸ブロック及びポリD-乳酸ブロックを含むブロック共重合体、L-乳酸単位及びD-乳酸単位をランダムに含むランダム共重合体等が挙げられる。
本明細書において、「DL-乳酸」とは、D-乳酸とL-乳酸との混合物を意味する。本明細書において、「DL-ラクチド」とは、D-ラクチドとL-ラクチドとの混合物を意味する。本明細書において、「meso-ラクチド」とは、D-乳酸とL-乳酸のそれぞれ1つずつの単位から形成されるラクチドを意味する。
本明細書において、「融点」とは、融解ピーク温度を意味し、融解ピークが複数ある場合には最も高温側に存在する融点ピークにおける融解ピーク温度を意味する。融点は、示差走査熱量計によって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0009】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、ブロック共重合体(I)と、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と、環状エステル化合物(III)とを含有する樹脂組成物であって、前記ブロック共重合体(I)が、ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)に由来する単位を含有するポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)とを含み、前記ブロック共重合体(I)と前記脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と前記環状エステル化合物(III)の合計100質量%に対し、前記環状エステル化合物(III)が0.005~10質量%である。
本発明者らは、種々検討を行った結果、特定のブロック共重合体(I)と、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と、特定量の環状エステル化合物(III)とを含有する樹脂組成物は、生分解性、耐熱性、及び透明性のバランスに優れることを見出した。
【0010】
本実施形態の樹脂組成物が、生分解性、耐熱性、及び透明性のバランスに優れる理由は定かではなく、様々な要因が複合するが、以下の様に推測される。
環状エステル化合物(III)はエステル構造を含むことから、同様にエステル構造を含むブロック共重合体(I)や脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と相容性が高い。それにより、樹脂組成物の結晶化度が向上した場合においても、透明性低下が抑制される。また、環状エステル化合物(III)は、環状であることから、分子的な自由度は低く結晶核剤的な効果、すなわち結晶化度向上やガラス転移温度向上(耐熱性向上)にも寄与する。上記理由により、本実施形態の樹脂組成物は、生分解性、耐熱性、及び透明性のバランスに優れるもの推測される。
【0011】
<ブロック共重合体(I)>
ブロック共重合体(I)は、ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)に由来する単位を含有するポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)とを含む。
【0012】
≪ブロック構造単位(A)≫
〈ポリ乳酸単位(a)〉
ブロック構造単位(A)は、ポリ乳酸単位(a)を主成分とする。
上記「主成分」とは、ブロック構造単位(A)を構成する単位のうちで最も含有割合の高い単位を意味する。
ブロック構造単位(A)における、ポリ乳酸単位(a)の含有割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%含んでいてもよい。また、ブロック構造単位(A)に含まれるポリ乳酸単位(a)の上限に制限は無く、例えば、100質量%以下である。
【0013】
ポリ乳酸単位(a)を構成するポリ乳酸は、乳酸の直接縮合法によって調整してもよく、ラクチドの開環重合法によって調整してもよい。上記乳酸としては、例えば、L-乳酸、D-乳酸、及びDL-乳酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。上記ラクチドとしては、例えば、L-ラクチド、D-ラクチド、DL-ラクチド、及びmeso-ラクチドからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
また、ポリ乳酸は、ポリL-乳酸、ポリD-乳酸、ポリDL-乳酸、ポリL-乳酸とポリD-乳酸とを混合することによって得られる分子内ステレオコンプレックス、分子間ステレオコンプレックスポリ乳酸を用いることができる。コスト、原料の入手性、及びブロック共重合体(I)の取り扱い易さの観点から、ポリ乳酸は、ポリL-乳酸、ポリD-乳酸、及びポリDL-乳酸が好ましく、ポリL-乳酸及びポリD-乳酸がより好ましい。
一方、合成のコスト、煩雑さ、及びブロック共重合体(I)や樹脂組成物の加工性の観点から、ポリ乳酸は、分子内ステレオコンプレックスポリ乳酸、及び分子間ステレオコンプレックスポリ乳酸ではないことが好ましい。
より一層優れた生分解性及び耐加水分解性の観点から、ブロック構造単位(A)は、ポリL-乳酸に由来する構造単位又はポリD-乳酸に由来する構造単位を含有することが好ましい。
より一層優れた生分解性の観点から、ブロック構造単位(A)は、ポリL-乳酸に由来する構造単位又はポリD-乳酸に由来する構造単位を、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含む。例えば、ブロック構造単位(A)は、ポリL-乳酸に由来する構造単位又はポリD-乳酸に由来する構造単位からなること、すなわちポリL-乳酸に由来する構造単位又はポリD-乳酸に由来する構造単位が100質量%であることが、好ましい実施形態の一例である。
【0014】
〈ポリ乳酸単位(a)以外の単位(a’)〉
ブロック構造単位(A)は、ポリ乳酸単位(a)以外の単位(a’)を含んでもよく、含まなくてもよい。
単位(a’)を構成する単量体としては、本発明の効果を損なわない範囲において特に限定されないが、二分子間環状エステル、ラクトン等が挙げられる。
二分子間環状エステルを形成するα-ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、α-ヒドロキシ吉草酸、α-ヒドロキシカプロン酸、α-ヒドロキシイソカプロン酸、α-ヒドロキシヘプタン酸、α-ヒドロキシオクタン酸、α-ヒドロキシデカン酸、α-ヒドロキシミリスチン酸、α-ヒドロキシステアリン酸、及びこれらのアルキル置換体等を挙げることができる。ラクトンとしては、例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
ブロック構造単位(A)における、単位(a’)の含有割合は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下である。
【0015】
〈ブロック構造単位(A)の数平均分子量〉
ブロック構造単位(A)の数平均分子量は、本発明の効果を損なわない限りに制限されない。一方、生産性、ガラス転移温度、及び結晶融解エンタルピーの観点から、ブロック構造単位(A)の数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは1,500以上、よりさらに好ましくは3,000以上、よりさらに好ましくは5,000以上、よりさらに好ましくは10,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、さらに好ましくは100,000以下、よりさらに好ましくは50,000以下、よりさらに好ましくは30,000以下、よりさらに好ましくは20,000以下である。すなわちブロック構造単位(A)の数平均分子量は、好ましくは500~200,000、より好ましくは1,000~150,000、さらに好ましくは1,500~100,000、より好ましくは3,000~50,000、よりさらに好ましくは5,000~20,000、よりさらに好ましくは10,000~20,000である。上記数値範囲内であれば、ブロック共重合体(I)を合成する際の生産性がよい。なお、ブロック共重合体(I)が複数のブロック構造単位(A)を有する場合、ブロック構造単位(A)の数平均分子量とは、全てのブロックの合計を意味する。
ブロック構造単位(A)の数平均分子量は、後述するブロック共重合体(I)の数平均分子量と、ブロック構造単位(A)の質量含有率から求めることができる。
【0016】
≪ブロック構造単位(B)≫
ブロック構造単位(B)は、ポリエステル単位(b)を主成分とする。
上記「主成分」とは、ブロック構造単位(B)を構成する単位のうちで最も含有割合の高い単位を意味する。
ブロック構造単位(B)における、ポリエステル単位(b)の含有割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%含んでいてもよい。また、ブロック構造単位(B)に含まれるポリエステル単位(b)の上限に制限は無く、例えば、100質量%以下である。
ポリエステル単位(b)は、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)に由来する単位を含有する。具体的には、ポリエステル単位(b)は、脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)とを反応させて得られるポリエステルに由来する単位を含有する。ポリエステル単位(b)は、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)以外の単量体に由来する単位を含んでもよく、含まなくてもよい。
脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)以外の単量体としては、本発明の効果を損なわない範囲において特に限定されない。
ポリエステル単位(b)における、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)の総量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上、100質量%であってもよい。また、ポリエステル単位(b)における、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)の総量の上限に制限は無く、例えば、100質量%以下である。
【0017】
〈脂肪族ジオール(b1)〉
脂肪族ジオール酸(b1)の炭素数は、本発明の効果を損なわない限りに制限されない。なお、上記「炭素数」は、上記アルキル基を成す炭素数を含む脂肪族ジオール(b1)全体の炭素数である。一方、優れた耐衝撃性(特に低温での耐衝撃性)を発揮する観点から、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上であり、より一層優れた生分解性を発揮する観点から、好ましくは30以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは9以下である。すなわち、脂肪族ジオール(b1)の炭素数は、好ましくは4~30、より好ましくは5~18、さらに好ましくは6~9である。
【0018】
脂肪族ジオール(b1)が、アルキル基を分岐鎖として有すると、ブロック構造単位(B)が柔軟になり、ブロック共重合体(I)はより優れた生分解性、耐衝撃性を発揮する。よって、脂肪族ジオール(b1)は、アルキル基を分岐鎖として有することが好ましく、アルキル基を分岐鎖として有する炭素数が4以上の脂肪族ジオールであることがより好ましい。
ここで、脂肪族ジオール(b1)における「分岐鎖」とは、脂肪族ジオール(b1)における「主鎖」から枝分かれしている部分構造を指し、その末端に水酸基は結合していない。
【0019】
また、脂肪族ジオール(b1)が、アルキル基を分岐鎖として有すると、ブロック構造単位(B)が非晶性ポリマーになり易くなるため、ブロック構造単位(B)が生分解する際に、微生物がポリマー構造へ入り込み易くなり、広範囲条件で生分解性を有し易くなると考えられる。一方、ブロック構造単位(B)が非晶性ポリマーでない場合、生分解する際に微生物がポリマー構造に入り込みにくくなると考えられる。しかしながら、非晶性ポリマーであることは生分解性に影響を及ぼす一つの要因でしかない。微生物が非晶性構造を餌として認識するかどうか、酵素や微生物が近づきやすいか、主鎖の立体障害、融点、結晶化度等の様々な要因が複合して生分解及び加水分解すると考えられるためである。よって、非晶性ポリマーを含むブロック共重合体(I)を含む樹脂組成物であれば、良好な生分解性を有するというわけではない。
【0020】
脂肪族ジオール(b1)において、分岐鎖の数は、好ましくは1つ又は2つ、より好ましくは1つである。また、分岐鎖は、好ましくはメチル基、エチル基、及びプロピル基、より好ましくはメチル基及びエチル基、さらに好ましくはメチル基である。また、脂肪族ジオール(b1)が分岐鎖を複数有する場合、それぞれの分岐鎖は同一であってもよく、異なってもよい。
ジカルボン酸と反応しやすく、トリブロック共重合体を容易に製造できる観点、並びに生分解性及び耐加水分解性により一層優れる観点から、脂肪族ジオール(b1)は、主鎖の両末端に水酸基を有することが好ましい。
【0021】
脂肪族ジオール(b1)は、例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,7-ジメチル-1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,9-ノナンジオール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、シクロヘキサンジオール等が挙げられる。脂肪族ジオール(b1)は、好ましくは2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及び2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールであり、より好ましくは3-メチル-1,5-ペンタンジオールである。
脂肪族ジオール(b1)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0022】
〈脂肪族ジカルボン酸(b2)〉
脂肪族ジカルボン酸(b2)の炭素数は、本発明の効果を損なわない限りに制限されない。一方、優れた耐衝撃性(特に低温での耐衝撃性)を発揮する観点から、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上であり、より一層優れた生分解性を発揮する観点から、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。すなわち、脂肪族ジカルボン酸(b2)の炭素数は、好ましくは4~12、より好ましくは5~10、さらに好ましくは6~8である。
【0023】
脂肪族ジカルボン酸(b2)は、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、デカンジカルボン酸等が挙げられる。好ましくはコハク酸、アジピン酸、及びセバシン酸であり、さらに好ましくはアジピン酸である。
脂肪族ジカルボン酸(b2)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
〈ポリエステル単位(b)における芳香族カルボン酸単位の含有割合〉
ポリエステル単位(b)における芳香族カルボン酸単位の含有割合は、好ましくは20質量%以下である。当該含有量が20質量%以下であると、生分解性が向上する。
ここで、芳香族カルボン酸単位は、ヘテロ原子を含有するヘテロ芳香族カルボン酸単位も含まれる。芳香族カルボン酸単位は、ヘテロ原子を含有するヘテロ芳香族カルボン酸単位及びヘテロ原子を含有しないヘテロ芳香族カルボン酸単位の一方又は双方を含んでもよく、ヘテロ原子を含有しないヘテロ芳香族カルボン酸単位のみ含んでもよい。
当該観点から、ポリエステル単位(b)における芳香族カルボン酸単位の含有割合は、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以下であり、ポリエステル単位(b)は芳香族カルボン酸単位を含まなくてもよい。
【0025】
〈脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)の好ましい組み合わせ〉
より一層優れた生分解性、耐衝撃性、及び耐熱性を発揮できる観点から、2-メチル-1,3-プロパンジオールとコハク酸の組合せ、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとコハク酸の組合せ、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールとコハク酸の組合せ、2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸の組合せ、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸の組合せ、及び2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸の組合せが好ましい実施形態の一例であり、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとコハク酸の組合せ、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールとコハク酸の組合せ、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸の組合せ、及び2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸の組合せがより好ましい実施形態の一例であり、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸の組合せがさらに好ましい実施形態の一例である。
【0026】
〈脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)の割合〉
脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)とを反応させる際の仕込みモル比[脂肪族ジオール(b1)/脂肪族ジカルボン酸(b2)]は、好ましくは、1.4/1~1/1.4、より好ましくは1.2/1~1/1.2である。
【0027】
〈ポリエステル単位(b)以外の単位(b’)〉
ブロック構造単位(B)は、ポリエステル単位(b)以外の単位(b’)を含んでもよく、含まなくてもよい。
単位(b’)を構成する単量体としては、本発明の効果を損なわない範囲において特に限定されないが、ポリアミド、ポリウレタン等が挙げられる。
ブロック構造単位(B)における、単位(b’)の含有割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、よりさらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0028】
〈ブロック構造単位(B)の数平均分子量〉
ブロック構造単位(B)の数平均分子量は、生産性の観点から、好ましくは300,000未満、より好ましくは100,000未満、さらに好ましくは80,000未満、よりさらに好ましくは50,000未満である。一方、ガラス転移温度及び結晶融解エンタルピーの観点から、ブロック構造単位(B)の数平均分子量は、好ましくは1,000以上、より好ましくは4,000以上、さらに好ましくは8,000以上、よりさらに好ましくは10,000以上、よりさらに好ましくは20,000以上である。すなわち、ブロック構造単位(B)の数平均分子量は、好ましくは1,000以上300,000未満、より好ましくは4,000以上100,000未満、さらに好ましくは8,000以上80,000未満、よりさらに好ましくは10,000以上50,000未満、よりさらに好ましくは20,000以上50,000未満である。
ブロック構造単位(B)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、後述するブロック共重合体(I)の数平均分子量と、ブロック構造単位(B)の質量含有率から求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0029】
≪ブロック共重合体(I)構造単位割合≫
ブロック構造単位(A)とブロック構造単位(B)の合計100質量%に対し、ブロック構造単位(A)は、好ましくは5質量%以上95質量%以下である。
上記ブロック構造単位(A)の割合が、5質量%以上であれば、樹脂組成物の耐熱性がより一層優れる傾向にある。また、上記ブロック構造単位(A)の割合が、95質量%以下であれば、樹脂組成物の生分解性がより一層優れる傾向にある。
耐熱性の観点から、上記ブロック構造単位(A)の割合は、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、生分解性の観点から、上記ブロック構造単位(A)の割合は、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下、よりさらに好ましくは70質量%以下、よりさらに好ましくは60質量%以下である。
ブロック構造単位(A)の割合は、H-NMRによって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0030】
また、ブロック共重合体(I)における、ブロック構造単位(A)とブロック構造単位(B)の含有割合の合計は、好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。また、ブロック共重合体(I)における、ブロック構造単位(A)とブロック構造単位(B)の含有割合の合計の上限に制限は無く、例えば、100質量%以下である。
【0031】
ブロック共重合体(I)は、ブロック構造単位(A)及びブロック構造単位(B)以外の単位を含んでもよく、含まなくてもよい。
ブロック構造単位(A)及びブロック構造単位(B)以外の単位としては、本発明の効果を損なわない範囲において特に限定されない。
ブロック共重合体(I)における、ブロック構造単位(A)及びブロック構造単位(B)以外の単位の含有割合は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0032】
≪ブロック共重合体(I)の数平均分子量≫
ブロック共重合体(I)の数平均分子量は、耐熱性の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは15,000以上、よりさらに好ましくは20,000以上であり、製造容易性、及び加工性の観点から、ブロック共重合体(I)の数平均分子量は、好ましくは400,000以下、より好ましくは200,000以下、さらに好ましくは100,000以下である。すなわち、ブロック共重合体(I)の数平均分子量は、好ましくは5,000~400,000、より好ましくは10,000~200,000、さらに好ましくは15,000~100,000である。
ブロック共重合体(I)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0033】
≪ブロック共重合体(I)の結合形式≫
ブロック共重合体(I)の結合形式は、トリブロック型及びジブロック型が好ましく、トリブロック型がより好ましい。ブロック共重合体(I)は、トリブロック型とジブロック型の混合物であってもよい。具体的には、結合形式は、[ブロック構造単位(A)]-[ブロック構造単位(B)]-[ブロック構造単位(A)]であることが好ましい。
【0034】
≪ブロック共重合体(I)の融点≫
ブロック共重合体(I)の融点は、110℃以上180℃未満であることが好ましい。
溶融加工がし易くなる等の加工性の観点から、ブロック共重合体(I)の融点は、好ましくは180℃未満、より好ましくは175℃以下、さらに好ましくは170℃以下、よりさらに好ましくは160℃以下である。
実用的な耐熱性の観点から、ブロック共重合体(I)の融点は、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上、よりさらに好ましくは125℃以上である。
良好な加工性及び耐熱性の観点から、ブロック共重合体(I)の融点は、好ましくは110℃以上180℃未満、より好ましくは115℃以上175℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下、よりさらに好ましくは125℃以上160℃以下である。
ブロック共重合体(I)の融点は、示差走査熱量計によって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0035】
≪ブロック共重合体(I)のガラス転移温度≫
ブロック共重合体(I)のガラス転移温度は、好ましくは-80℃以上15℃以下、より好ましくは-80℃以上-10℃以下、さらに好ましくは-80℃以上-15℃以下である。上記数値範囲内であれば、樹脂組成物は、柔軟性や耐衝撃性に優れる傾向にある。
低温での耐衝撃性の観点から、ブロック共重合体(I)のガラス転移温度は、よりさらに好ましくは-20℃以下、よりさらに好ましくは-25℃以下、よりさらに好ましくは-30℃以下であり、-35℃以下であってもよく、-45℃以下であってもよい。
ブロック共重合体(I)のガラス転移温度の下限値は低い方が好ましいが、例えば、-70℃以上であってもよく、-60℃以上であってもよく、-50℃以上であってもよい。
すなわち、ブロック共重合体(I)のガラス転移温度は、よりさらに好ましくは-70℃以上-20℃以下、よりさらに好ましくは-60℃以上-25℃以下、よりさらに好ましくは-50℃以上-30℃以下であり、-50℃以上-35℃以下であってもよく、-50℃以上-45℃以下であってもよい。
ブロック共重合体(I)のガラス転移温度は、示差走査熱量測定によって求めることができる。
【0036】
<ブロック共重合体(I)の製造方法>
ブロック共重合体(I)の製造方法は、公知の製造方法を採用することができる。
(1)ブロック共重合体(I)の公知の製造方法は、例えば、ポリエステル単位(b)を構成するポリエステルを合成し、当該ポリエステルとラクチドとを重合反応させる方法であってもよい。
上記ポリエステルは、公知の方法で合成することができる。例えば、脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)とを、エステル化触媒(例えば、オクチル酸スズ、塩化スズ、酸化スズ)を用いて反応させ、ポリエステルを合成することができる。
ポリエステルとラクチドとを重合反応させる際、開環重合触媒(例えば、オクチル酸スズ、塩化スズ、酸化スズ)を用いることが好ましい。重合反応は、溶液重合、溶融重合、界面重縮合等が挙げられ、いずれも公知の重合反応条件を設定することができる。
【0037】
(2)また、ブロック共重合体(I)の公知の製造方法は、例えば、ポリ乳酸単位(a)を構成するポリ乳酸と、ポリエステル単位(b)を構成するポリエステルとを、それぞれ合成し、当該ポリ乳酸と当該ポリエステルとを反応させる方法であってもよい。
ポリ乳酸は、公知の方法で合成することができる。例えば、乳酸を直接縮合法により反応させてポリ乳酸を合成してもよく、ラクチドを開環重合法より反応させてポリ乳酸を合成してもよい。
ポリ乳酸とポリエステルとを重合反応させる際、エステル化触媒(例えば、オクチル酸スズ、塩化スズ、酸化スズ)を用いることが好ましい。重合反応は、溶液重合、溶融重合、界面重縮合等が挙げられ、いずれも公知の重合反応条件を設定することができる。
【0038】
<脂肪族ポリエステル系樹脂(II)>
本実施形態において、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)は、環境保護の観点から、バイオマス樹脂及び生分解性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(II)としては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)(PCLBS)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)(PBSA)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)(PEC)、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)(PETS)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)(PBAT)、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)(PTMT)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)〔例えば、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシブチレートバリレート(PHBV)等〕、及びこれらを含む共重合体が挙げられる。
脂肪族ポリエステル系樹脂(II)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
脂肪族ポリエステル系樹脂(II)は、より一層優れた耐熱性、引張特性、及び生分解性を発揮する観点から、PLA、PBS、PBSA、PBATが好ましく、PLA及びその共重合体、すなわちポリ乳酸系樹脂がより好ましい。
【0040】
脂肪族ポリエステル系樹脂(II)の融点は、より一層優れた耐熱性を発揮する観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは130℃以上、よりさらに好ましくは140℃以上、よりさらに好ましくは155℃以上、よりさらに好ましくは170℃以上である。また、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)の融点は、成形性の観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは270℃以下、さらに好ましくは240℃以下、よりさらに好ましくは220℃以下、よりさらに好ましくは200℃以下である。
【0041】
脂肪族ポリエステル系樹脂(II)としてポリ乳酸系樹脂を用いる場合、ポリ乳酸系樹脂としては、例えば、L-乳酸のホモポリマー、D-乳酸のホモポリマー、L-乳酸とD-乳酸との共重合体、DL-乳酸のホモポリマー、DL-乳酸とL-乳酸との共重合体、DL-乳酸とD-乳酸との共重合体、及び乳酸の環状2量体であるラクチドの重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
また、ポリ乳酸系樹脂は、乳酸と、乳酸以外の他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、及び芳香族ジカルボン酸等との共重合体であってもよい。上記共重合体は、乳酸に由来する構造単位を、70モル%以上含有することが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
中でも、ポリ乳酸系樹脂としては、L-乳酸のホモポリマー、D-乳酸のホモポリマー、又はL-乳酸とD-乳酸との共重合体が好ましく、L-乳酸のホモポリマーがより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
ポリ乳酸系樹脂は市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ネイチャーワークス社製「商品名INGEOシリーズ」、TOTAL CORBION社製「商品名Luminyシリーズ」、Zhejiang Hisun Biomaterials Co.,Ltd製「Revode」シリーズ、SUPLA Material Technology Co.,Ltd製「商品名SUPLA」が挙げられる。
【0043】
ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、耐熱性の観点から、好ましくは50,000以上、より好ましくは100,000以上、さらに好ましくは150,000以上であり、成形加工性及びブロック共重合体(I)との相容性の観点から、好ましくは600,000以下、より好ましくは550,000以下、さらに好ましくは500,000以下である。すなわち、ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは50,000~600,000、より好ましくは100,000~550,000、さらに好ましくは150,000~500,000である。
ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により標準ポリスチレン換算で求めることができる。また、市販品を用いる場合は、カタログ値を採用してもよい。
【0044】
<環状エステル化合物(III)>
環状エステル化合物(III)は特に限定されるものではなく、α-ヒドロキシカルボン酸、γ-ヒドロキシカルボン酸、3-ヒドロキシカルボン酸等の二分子間環状エステル等のヒドロキシカルボン酸の環化物であってもよく、ラクトン等のアルコールとカルボン酸の縮合環化物であってもよく、その他のエステル構造を有する環状化合物であってもよい。
二分子間環状エステルを形成するα-ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、L-及び/またはD-乳酸、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、α-ヒドロキシ吉草酸、α-ヒドロキシカプロン酸、α-ヒドロキシイソカプロン酸、α-ヒドロキシヘプタン酸、α-ヒドロキシオクタン酸、α-ヒドロキシデカン酸、α-ヒドロキシミリスチン酸、α-ヒドロキシステアリン酸、及びこれらのアルキル置換体等を挙げることができる。
ラクトンとしては、例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
その他のエステル構造を有する環状化合物としては、例えば、トリメチレンカーボネート等のジオキサノン等を挙げることができる。環状エステルは、不斉炭素を有する場合、D体、L体、及びラセミ体のいずれでもよい。
これらの環状エステルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
環状エステル化合物(III)は、生分解性、耐熱性、及び透明性のバランスにより優れる樹脂組成物とする観点から、脂肪族ジオール(c1)と脂肪族ジカルボン酸(c2)に由来する構造を含むことが好ましく、すなわち脂肪族ジオール(c1)と脂肪族ジカルボン酸(c2)とを反応させて得られる環状エステル化合物であることが好ましい。
脂肪族ジオール(c1)は、特に限定されるものではないが、例えば、上記脂肪族ジオール(b1)と同様のものが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸(c2)は、特に限定されるものではないが、例えば、上記脂肪族ジカルボン酸(b2)と同様のものが挙げられる。
脂肪族ジオール(c1)及び脂肪族ジカルボン酸(c2)に由来する構造を含む環状エステル化合物(III)の具体例としては、例えば、前述した脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)とを反応させて得られる環状エステル化合物等が挙げられる。
脂肪族ジオール(c1)と脂肪族ジカルボン酸(c2)の好ましい組み合わせは、上記脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)の好ましい組み合わせと同様である。
脂肪族ジオール(c1)及び脂肪族ジカルボン酸(c2)に由来する構造を含む環状エステル化合物(III)は、結晶化度、引張特性、透明性、及び耐熱性のバランスにより優れる樹脂組成物とする観点から、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びアジピン酸を反応させて得られる環状エステル化合物であることが好ましい。
また、結晶化度、引張特性、透明性、及び耐熱性のバランスにより優れる樹脂組成物とする観点から、脂肪族ジオール(c1)及び脂肪族ジオール(b1)は同一であり、脂肪族ジカルボン酸(c2)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)は同一であることが好ましい。
【0046】
環状エステル化合物(III)の製造方法は特に限定されるものではないが、ヒドロキシカルボン酸やアルコールとカルボン酸を原料とした公知の縮合反応により製造することができる。
【0047】
<含有割合>
本実施態様の樹脂組成物は、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と環状エステル化合物(III)の合計100質量%に対し、ブロック共重合体(I)を、好ましくは0.5~50質量%、より好ましくは1~40質量%、さらに好ましくは1.5~30質量%、よりさらに好ましくは2~20質量%含有する。上記含有割合であれば、生分解性、耐熱性、及び透明性により一層優れた樹脂組成物とすることができる。
【0048】
本実施態様の樹脂組成物は、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル系樹脂(II)の合計100質量%に対し、ブロック共重合体(I)を、好ましくは0.5~50質量%、より好ましくは1~40質量%、さらに好ましくは1.5~30質量%、よりさらに好ましくは2~20質量%含有する。上記含有割合であれば、生分解性、耐熱性、及び透明性により一層優れた樹脂組成物とすることができる。
【0049】
本実施態様の樹脂組成物は、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と環状エステル化合物(III)の合計100質量%に対し、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)を、好ましくは50~99.5質量%、より好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは70~98.5質量%、よりさらに好ましくは80~98質量%含有する。上記含有割合であれば、生分解性、耐熱性及び透明性により一層優れた樹脂組成物とすることができる。
【0050】
本実施態様の樹脂組成物は、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル系樹脂(II)の合計100質量%に対し、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)を、好ましくは50~99.5質量%、より好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは70~98.5質量%、よりさらに好ましくは80~98質量%含有する。上記含有割合であれば、生分解性、耐熱性及び透明性により一層優れた樹脂組成物とすることができる。
【0051】
本実施態様の樹脂組成物は、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と環状エステル化合物(III)の合計100質量%に対し、環状エステル化合物(III)を、0.005~10質量%含有する。生分解性、耐熱性、及び透明性のバランスにより優れる樹脂組成物とする観点から、本実施態様の樹脂組成物中の環状エステル化合物(III)の含有割合は、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と環状エステル化合物(III)の合計100質量%に対し、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.015~5質量%、さらに好ましくは0.025~3質量%、よりさらに好ましくは0.03~2質量%である。
なお、環状エステル化合物(III)の含有割合は、ガスクロマトグラフィーによって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0052】
本実施態様の樹脂組成物は、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と環状エステル化合物(III)の合計100質量%に対し、ブロック構造単位(A)を、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは0.3~30質量%、さらに好ましくは0.5~25質量%、よりさらに好ましくは1~15質量%含有する。上記含有割合であれば、耐熱性及び透明性により一層優れた樹脂組成物とすることができる。
【0053】
本実施態様の樹脂組成物は、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と環状エステル化合物(III)の合計100質量%に対し、ブロック構造単位(B)を、好ましくは0.2~40質量%、より好ましくは0.5~30質量%、さらに好ましくは1~20質量%、よりさらに好ましくは1.5~15質量%含有する。上記含有割合であれば、生分解性及び耐熱性により一層優れた樹脂組成物とすることができる。
【0054】
本実施態様の樹脂組成物における、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と環状エステル化合物(III)の合計含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上、よりさらに好ましくは98質量%以上である。本実施態様の樹脂組成物における、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と環状エステル化合物(III)の合計含有割合は、100質量%以下であってもよい。上記含有割合であれば、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0055】
<その他の成分>
本実施態様の樹脂組成物には、ブロック共重合体(I)、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)及び環状エステル化合物(III)以外に、可塑剤、ブロック共重合体(I)及び脂肪族ポリエステル系樹脂(II)以外の樹脂、添加剤等を含有させてもよい。
【0056】
≪可塑剤≫
樹脂組成物を成形に適した粘度に調整する目的や、所望の硬さを有する成形品を得る等の目的で、可塑剤を含有させてもよい。可塑剤としては特に制限は無いが、産業コンポスト、家庭用コンポスト、土壌及び海洋中のいずれかの環境下で生分解性を有する可塑剤が好ましい。例えば、なたね油やひまし油等の植物エステル、トリアセチン、フタル酸ジエチルやクエン酸トリエチル等の合成エステル、エチレングリコールやトリメチロールプロパン等のポリオール及びその誘導体、ソルビトール等の糖類等が好適な例として挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記可塑剤を用いる場合、樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、樹脂組成物の所望する物性に応じて適宜決めればよい。
【0057】
≪ブロック共重合体(I)及び脂肪族ポリエステル系樹脂(II)以外の樹脂≫
ブロック共重合体(I)及び脂肪族ポリエステル系樹脂(II)以外の樹脂としては特に制限は無いが、産業コンポスト、家庭用コンポスト、土壌及び海洋中のいずれかの環境下で生分解性を有する樹脂が好ましい。例えば、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート等のセルロース樹脂、デンプン及びそのエステル化物、4-ナイロン等が好適な例として挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ブロック共重合体(I)及び脂肪族ポリエステル系樹脂(II)以外の樹脂を用いる場合、樹脂組成物中の該樹脂の含有量は、樹脂組成物の所望する物性に応じて適宜決めればよい。
【0058】
≪添加剤≫
添加剤としては、無機充填材、軟化剤、熱老化防止剤、酸化防止剤、加水分解抑制剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、増白剤、紫外線吸収剤、滑剤等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記添加剤を用いる場合、樹脂組成物中の添加剤の含有量は、樹脂組成物の所望する物性に応じて適宜決めればよい。
【0059】
<樹脂組成物の結晶融解エンタルピー>
本実施態様の樹脂組成物の結晶融解エンタルピーは、耐熱性の観点から、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)の混合物(比較対象である樹脂組成物に含まれるブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)と同じ比率で、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)を混合したもの)の結晶融解エンタルピーより高いことが好ましい。前記混合物の結晶融解エンタルピー(ΔHm1)に対する樹脂組成物の結晶融解エンタルピー(ΔHm2)の上昇率((ΔHm2/ΔHm1)×100-100(%))は、好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、よりさらに好ましくは3.0%以上、よりさらに好ましくは5.0%以上である。前記上昇率の上限は特に制限はなく、300%以下であってもよく、200%以下であってもよく、100%以下であってもよく、50%以下であってもよく、20%以下であってもよく、10%以下であってもよい。
樹脂組成物の結晶融解エンタルピーは、示差走査熱量計によって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0060】
<樹脂組成物のガラス転移温度>
樹脂組成物のガラス転移温度は、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)がポリ乳酸系樹脂である場合、耐熱性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、さらに好ましくは58℃以上、より更に好ましくは59℃以上、より更に好ましくは60℃以上であり、加工性の観点から、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下である。また、耐熱性の観点から、樹脂組成物のガラス転移温度は、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)との混合物(比較対象である樹脂組成物に含まれるブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)と同じ比率で、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)を混合したもの)のガラス転移温度に比べて、好ましくは0.1℃以上、より好ましくは0.3℃以上、さらに好ましくは0.5℃以上、よりさらに好ましくは1.0℃以上高い温度である。
樹脂組成物のガラス転移温度と、前記混合物のガラス転移温度との差の上限は特に制限はなく、50℃以下であってもよく、30℃以下であってもよく、10℃以下であってもよく、5℃以下であってもよく、3℃以下であってもよい。
樹脂組成物の融点は、示差走査熱量計によって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0061】
<樹脂組成物のヘーズ変化率>
ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)との混合物(比較対象である樹脂組成物に含まれるブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)と同じ比率で、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)を混合したもの)のヘーズ(絶対値)に対する樹脂組成物のヘーズ(絶対値)の変化率(%)は、視認性の観点から、好ましくは99%以下、より好ましくは97%以下、さらに好ましくは95%以下、よりさらに好ましくは90%以下、よりさらに好ましくは85%以下である。下限は特に制限はなく、0.1%以上であってもよく、1%以上であってもよく、10%以上であってもよく、50%以上であってもよく、80%以上であってもよい。
なお、本明細書において、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)との混合物のヘーズ(絶対値)に対する樹脂組成物のヘーズ(絶対値)の変化率(%)とは、下記(i)~(iii)の方法により測定及び算出したものである。
(i)樹脂組成物を、減圧熱プレス装置(株式会社井元製作所製「IMC-183B」)を用い、油回転ポンプを使用して0.1MPaGまで減圧し、200℃で5分予熱後、40kNで1分プレスする。その後、水流冷却を備えた冷却プレス装置にて20kgf/cmで1分プレスし、厚みが0.125mmのプレス板を作製する。得られたプレス板から50×50mmの正方形片を切り出し、110℃恒温槽にて3時間結晶化処理して、測定用シート(s2’)を得る。ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)との混合物(比較対象である樹脂組成物に含まれるブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)と同じ比率で、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)を混合したもの)についても、同様の方法により測定用シート(s1’)を得る。
(ii)得られた測定用シート(s1’)及び(s2’)のヘーズを、日本電色工業株式会社製「Spectral Haze Meter SH7000」、光源D65)を使用し、JIS-K7136:2000に準拠してそれぞれ測定する。
(iii)得られた測定用シート(s1’)のヘーズ(測定用シート(S1’))及び測定用シート(s2’)のヘーズ(測定用シート(S2’))を用いて、下記式(1)からブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)との混合物(比較対象である樹脂組成物に含まれるブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)と同じ比率で、ブロック共重合体(I)と脂肪族ポリエステル(II)を混合したもの)のヘーズ(絶対値)(測定用シート(S1’))に対する樹脂組成物のヘーズ(絶対値)(測定用シート(S2’))の変化率(%)を求める。
(測定用シート(S2’)/測定用シート(S1’))×100(%) (1)
ヘーズは、具体的には、実施例に記載の方法により測定できる。
【0062】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施態様の樹脂組成物の製造方法に特に制限はなく、ブロック共重合体(I)、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)、環状エステル化合物(III)、及び必要に応じて添加剤を均一に混合すればよい。
環状エステル化合物(III)は、ブロック共重合体(I)の合成中に同時に合成し、ブロック共重合体(I)と混合してもよい。
混合方法としては、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、ブラベンダー、各種ニーダー等を用いて溶融混練する方法、あるいは、各成分を別々の仕込み口から供給して溶融混練する方法等が挙げられる。
また、溶融混練する前にプレブレンドしてもよい。プレブレンドする方法としては、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダー等の混合機を用いる方法が挙げられる。溶融混練時の温度は、ブロック共重合体(I)、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)、及び環状エステル化合物(III)の融点と分解温度を考慮し、好ましくは140~220℃の範囲で任意に選択することができる。
【実施例0063】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
実施例及び比較例で使用した化合物は以下のとおりである。
3-メチル-1,5-ペンタンジオール(株式会社クラレ製)
アジピン酸(東京化成工業株式会社製)
オクチル酸スズ(東京化成工業株式会社製)
トルエン(キシダ化学株式会社製)
L-ラクチド(東京化成工業株式会社製)
メタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール(東京化成工業株式会社製)
2-メチル-1,3-プロパンジオール(東京化成工業株式会社製)
コハク酸(東京化成工業株式会社製)
1,4-ブタンジオール(東京化成工業株式会社製)
プロピレングリコール(東京化成工業株式会社製)
Di-n-alkyl Adipate [Plasticizer] (東京化成工業株式会社製)
N,N’-Ethylenebisoctadecanamide [mixture of fatty acid ]mides] [consists of C14, C16 and C18] (東京化成工業株式会社製)
【0065】
実施例及び比較例における重合体及び樹脂組成物の物性は、次の方法により測定又は評価した。
(1)数平均分子量(Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、重合体の数平均分子量(Mn)を標準ポリスチレン換算で求めた。また、ブロック構造単位(B)のMnは、ブロック共重合体のMnと、ブロック構造単位(B)の質量含有率から求めた。
〈GPCの測定条件〉
装置:東ソー株式会社製 GPC装置「HLC-8220」
分離カラム:東ソー株式会社製 「TSKgel SuperMultiporeHZ-M(カラム径=4.6mm、カラム長=15cm)」(2本を直列に繋いで使用)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
溶離液流量:0.35mL/分
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率(RI)
注入量:10μL
濃度:1mg/1mL(ブロック共重合体/THF)
【0066】
(2)ハード比率(質量%)(ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)の質量含有率)
H-NMRによってブロック重合体のハード比率を算出した。得られたスペクトルのポリ乳酸単位に由来する5.2ppm付近のシグナルとポリエステル単位(b)を主成分とする構造単位(B)に由来する0.9ppm付近のシグナルとの面積比からブロック構造単位(A)とブロック構造単位(B)のモル比を算出した。当該モル比にブロック構造単位の分子量を乗ずることで質量比とし、その質量比の合計が100になるように調整した際の(A)の質量比をハード比率とした。
H-NMRの測定条件〉
装置:日本電子株式会社製 核磁気共鳴装置「JNM-ECX400」
溶媒:重クロロホルム
測定温度:50℃
積算回数:1024回
測定条件:昇温速度10℃/min
【0067】
(3)生分解性(コンポスト)
ISО 14855-2:2018に準拠して、コンポスト中での生分解性を測定した。15日経過時における分解率が10質量%以上であればA、10質量%未満であればBと評価した。
【0068】
(4)融点(℃)、ガラス転移温度(℃)及び結晶融解エンタルピー(J/g)
ブロック共重合体、樹脂組成物、及びブロック共重合体と脂肪族ポリエステルとの混合物A(比較対象である樹脂組成物に含まれるブロック共重合体と脂肪族ポリエステルと同じ比率で、ブロック共重合体と脂肪族ポリエステルを混合したもの)の融点、ガラス転移温度及び結晶融解エンタルピーを、JIS K7121:2012に記載の方法で、示差走査熱量計により測定した。具体的には、下記の測定条件における2nd runにて、融点(℃)、ガラス転移温度(℃)及び結晶融解エンタルピー(J/g)を測定した。なお、本明細書においては、JIS K7121:2012における中間点ガラス転移温度をガラス転移温度として、2nd run時の融解曲線における融解熱量を結晶融解エンタルピーとして、それぞれ定義する。
また、混合物Aの結晶融解エンタルビー(ΔHm1)に対する、樹脂組成物の結晶融解エンタルビー(ΔHm2)の上昇率((ΔHm2/ΔHm1)×100-100(%))を算出した。
また、混合物Aのガラス転移温度(Tg1)に対する、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg2)の上昇温度(Tg2-Tg1(℃))を算出した。
〈ガラス転移温度(℃)、融点(℃)及び結晶融解エンタルピー(J/g)の測定条件〉
装置:メトラー・トレド株式会社製 示差走査熱量分析装置「DSC822」
25℃の測定試料(ブロック共重合体、重合体、樹脂組成物、又は混合物A)を、10℃/minの昇温速度で200℃になるまで加熱し(1st run)、200℃の状態で5分間保持した後、200℃から10℃/minの降温速度で75℃になるまで冷却し、75℃の状態で30分間保持した(結晶化)。続いて、75℃から10℃/minの降温速度で-50℃になるまで冷却し、-50℃から5℃/minの降温速度で-75℃まで冷却し、-75℃の状態で5分間保持した。続いて、-75℃から10℃/minの昇温速度で250℃になるまで加熱した(2nd run)。
なお、同一組成であれば、結晶融解エンタルピーの値が高いほど、結晶化度が高いと言える。
【0069】
(6)ヘーズ
下記(i)~(iii)の方法によりヘーズを測定し、ヘーズの変化率を算出した。
(i)樹脂組成物を、減圧熱プレス装置(株式会社井元製作所製「IMC-183B」)を用い、油回転ポンプを使用して-0.1MPaGまで減圧し、200℃で5分予熱後、40kNで1分プレスした。その後水流冷却を備えた冷却プレス装置にて20kgf/cmで1分プレスし、厚みが0.125mmのプレス板を作製した。得られたプレス板から50×50mmの正方形片を切り出し、110℃恒温槽にて3時間結晶化処理して、測定用シート(s2)を得た。また、ブロック共重合体と脂肪族ポリエステルとの混合物A(比較対象である樹脂組成物に含まれるブロック共重合体と脂肪族ポリエステルと同じ比率で、ブロック共重合体と脂肪族ポリエステルを混合したもの)についても、同様の方法により測定用シート(s1)を得た。
(ii)得られた測定用シート(s1)及び(s2)のヘーズを、日本電色工業株式会社製「Spectral Haze Meter SH7000」、光源D65)を使用し、JIS-K7136:2000に準拠してそれぞれ測定した。
(iii)得られた測定用シート(s1)のヘーズ(測定用シート(S1))及び測定用シート(s2)のヘーズ(測定用シート(S2))を用いて、下記式(1)から混合物Aのヘーズ(絶対値)(測定用シート(S1))に対する樹脂組成物のヘーズ(絶対値)(測定用シート(S2))の変化率(%)を求めた。
(測定用シート(S2)/測定用シート(S1))×100(%) (1)
【0070】
(7)ガスクロマトグラフィー
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を用いて、下記測定条件にてガスクロマトグラフィー測定を行い、ガスクロマトグラフィー分析により、環状エステル化合物の面積割合(GC%)を求めた後、絶対検量線法により樹脂組成物中の環状エステル化合物の含有率を算出した。
〈ガスクロマトグラフィーの測定条件〉
装置:株式会社島津製作所製 「GC-2014」
カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製「DB-1」(内径0.25mm、長さ30.0m、膜厚1.00μm)
キャリアガス:ヘリウム(120.0kPaG)を流量1.36mL/minで流通させた。
検出器:FID
分析条件:Injection温度;200℃、Detection温度;250℃
昇温条件:50~110℃;10℃/min、110~180℃;40℃/min、180~280℃;10℃/minで昇温
【0071】
[実施例1]
発生する液体を留去できる器具及び真空ポンプを備えたフラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸をモル比で、3-メチル-1,5-ペンタンジオール/アジピン酸=1.1/1となるように仕込み、さらにオクチル酸スズを3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸の合計量に対して0.1質量%となるように加え、窒素雰囲気下、常圧、160℃で3時間加熱し、更に、220℃で3時間加熱して水を留去させながら反応を行った。次に2,000Paに減圧し3時間反応させた後、80Paまで減圧して数平均分子量が9,500になるまで適宜確認しながら反応させることで、ポリエステル単位を主成分とする構造単位(B’)からなるポリマーを合成した。
分液ロートに、留去物とトルエン、水を質量比で、留去物/トルエン/水=1/10/10となるように仕込み、留去物中に含まれる4-methyl-1,7-dioxacyclotridecane-8,13-dioneをトルエン中に抽出した。トルエン層をナスフラスコに加えて、20℃にて一晩風乾することでトルエンを揮発させた後、真空乾燥機にて20℃、100Paの条件で1時間乾燥させて環状エステル化合物(III)である4-methyl-1,7-dioxacyclotridecane-8,13-dioneの結晶を取得した。
反応終了後常圧に戻し、温度を80℃まで冷却した後、トルエンを加え固形分量が40質量%となるように希釈してから溶液全量の2倍量のメタノール中に上述のトルエン溶液を投入した。上澄み液を捨て、投入したトルエン溶液の量と同量のメタノールを再び加え洗浄した。上澄み液を捨て、回収した不溶分を、真空乾燥機を用いて温度40℃の条件で乾燥することにより有機揮発分を除去し、ポリエステル単位(b)を主成分とする構造単位(B’)からなるポリマーを得た。
精製した構造単位(B’)からなるポリマーに再度トルエンを加えて、構造単位(B’)からなるポリマーのトルエン溶液の固形分量が33質量%になるように希釈してから、その温度を140℃まで上げることで加えたトルエンの量の10質量%分を留去して系内の脱水を行った。
その後、構造単位(B’)からなるポリマーのトルエン溶液を80℃に冷却して、構造単位(B’)からなるポリマーとL-ラクチドを、構造単位(B’)からなるポリマー/L-ラクチド=50/50(質量比)となるように加え、さらに上述の留去した量のトルエンを加えて、構造単位(B’)からなるポリマー及びL-ラクチドのトルエン溶液の固形分量が50質量%になるように調整した。その後、前記溶液の温度が100℃に昇温したところで、オクチル酸スズを構造単位(B’)からなるポリマーに対して0.1質量%加え、4時間反応させることでポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)及びポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)からなるブロック共重合体(I-1)を合成し、当該ブロック共重合体(I-1)のトルエン溶液を得た。
この溶液に、更にトルエンを加えて固形分量が40質量%となるように希釈してから、溶液全量の2倍量のメタノール中に上述の固形分量が40質量%のトルエン溶液を投入して固体を析出させた。上澄みのメタノールを捨て、投入したトルエン溶液の量と同量のメタノールを再び加え洗浄した。メタノールを捨て、回収した固体を真空乾燥機で40℃の条件で乾燥することで有機揮発分を除去し、ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)からなるブロック共重合体(I-1)を得た。得られたブロック共重合体について、上述の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
得られたブロック共重合体(I-1)、環状エステル化合物(III)である4-methyl-1,7-dioxacyclotridecane-8,13-dione、並びに脂肪族ポリエステル系樹脂(II)としてポリ乳酸系重合体「INGEO 2500HP」(ネイチャーワークス社製)を、表1に示す質量比となるように混練機ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製、製品名「3S150」、ローラーミキサー型式「R60」)に投入し、シリンダー温度210℃、スクリュー回転数50rpmで5分間溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
[実施例2~6]
環状エステル化合物(III)である4-methyl-1,7-dioxacyclotridecane-8,13-dioneの質量比を表1に記載の量に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例7]
ポリエステル単位(b)を主単位とする構造単位(B’)からなるポリマーの合成時の反応時間を調整することで数平均分子量を調整したこと、使用したL-ラクチドの質量比を変更したこと、及び合成時の希釈濃度を取り扱いしやすい濃度に適宜変更したこと以外は実施例1と同様にして、ブロック共重合体(I-2)を得た。
得られたブロック共重合体(I-2)、環状エステル化合物(III)である4-methyl-1,7-dioxacyclotridecane-8,13-dione、並びに脂肪族ポリエステル系樹脂(II)であるポリ乳酸系重合体「INGEO 2500HP」を、表1に示す質量比となるように、実施例1と同様の手順で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例8]
環状エステル化合物(III)として、4-methyl-1,7-dioxacyclotridecane-8,13-dioneの代わりに2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸の縮合環化物である3-methyl-1,5-dioxacycloundecane-6,11-dioneを使用したこと以外は実施例7と同様の手順で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0075】
[実施例9]
3-メチル-1,5-ペンタンジオールの代わりに2-メチル-1,3-プロパンジオールを使用したこと、ポリエステル単位を主単位とする構造単位(B’)からなるポリマーの合成時の反応時間を調整することで数平均分子量を調整したこと、及び合成時の希釈濃度を取り扱いしやすい濃度に適宜変更したこと以外は実施例7と同様にして、ブロック共重合体(I-3)を得た。
得られたブロック共重合体(I-3)、環状エステル化合物(III)である4-methyl-1,7-dioxacyclotridecane-8,13-dione、並びに脂肪族ポリエステル系樹脂(II)であるポリ乳酸系重合体「INGEO 2500HP」を、表1に示す質量比となるように、実施例7と同様の手順で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0076】
[実施例10]
実施例9で得られたブロック共重合体(I-3)、環状エステル化合物(III)である3-methyl-1,5-dioxacycloundecane-6,11-dione、並びに脂肪族ポリエステル系樹脂(II)であるポリ乳酸系重合体「INGEO 2500HP」を、表1に示す質量比となるように、実施例9と同様の手順で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0077】
[実施例11]
3-メチル-1,5-ペンタンジオールの代わりに2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールを使用したこと、ポリエステル単位を主単位とする構造単位(B’)からなるポリマーの合成時の反応時間を調整することで数平均分子量を調整したこと、及び合成時の希釈濃度を取り扱いしやすい濃度に適宜変更したこと以外は実施例7と同様にして、ブロック共重合体(I-4)を得た。
得られたブロック共重合体(I-4)、環状エステル化合物(III)である2,6-diethyl-1,7-dioxacyclotridecane-8,13-dione(2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸の縮合環化物)、並びに脂肪族ポリエステル系樹脂(II)であるポリ乳酸系重合体「INGEO 2500HP」を、表1に示す質量比となるように、実施例7と同様の手順で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0078】
[実施例12]
3-メチル-1,5-ペンタンジオールの代わりにプロピレングリコールを使用したこと、アジピン酸の代わりにコハク酸を使用したこと、ポリエステル単位を主単位とする構造単位(B’)からなるポリマーの合成時の反応時間を調整することで数平均分子量を調整したこと、及び合成時の希釈濃度を取り扱いしやすい濃度に適宜変更したこと以外は実施例7と同様にして、ブロック共重合体(I-5)を得た。
得られたブロック共重合体(I-5)、環状エステル化合物(III)である2-methyl-1,4-dioxacycyclooctane-5,8-dione(プロピレングリコールとコハク酸の縮合環化物)、並びに脂肪族ポリエステル系樹脂(II)であるポリ乳酸系重合体「INGEO 2500HP」を、表1に示す質量比となるように、実施例7と同様の手順で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0079】
[実施例13]
3-メチル-1,5-ペンタンジオールの代わりに1,4-ブタンジオールを使用したこと、アジピン酸の代わりにコハク酸を使用したこと、ポリエステル単位を主単位とする構造単位(B’)からなるポリマーの合成時の反応時間を調整することで数平均分子量を調整したこと、及び合成時の希釈濃度を取り扱いしやすい濃度に適宜変更したこと以外は実施例7と同様にして、ブロック共重合体(I-6)を得た。
得られたブロック共重合体(I-6)、環状エステル化合物(III)である1,6-dioxacyclodecane-7,10-dione(1,4-ブタンジオールとコハク酸の縮合環化物)、並びに脂肪族ポリエステル系樹脂(II)であるポリ乳酸系重合体「INGEO 2500HP」を、表1に示す質量比となるように、実施例7と同様の手順で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0080】
[比較例1]
環状エステル化合物(III)を使用しなかったこと以外は実施例1と同様の手順で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0081】
[比較例2]
環状エステル化合物(III)の代わりに、環状構造を有さないエステル化合物であるDi-n-alkyl Adipate(Plasticizer)を使用したこと以外は実施例1と同様の手順で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0082】
[比較例3]
環状エステル化合物(III)の代わりに、結晶核剤であるN,N’-Ethylenebisoctadecanamideを使用したこと以外は実施例1と同様の手順で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0083】
[比較例4]
環状エステル化合物(III)を使用しなかったこと以外は実施例7と同様の手順で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0084】
[比較例5]
環状エステル化合物(III)である4-methyl-1,7-dioxacyclotridecane-8,13-dioneの質量比を表1に記載の量に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、上述の測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
表1中の略号が表す化合物は、次のとおりである。
PLLA:ポリL-乳酸
MPD:3-メチル-1,5-ペンタンジオール
AA:アジピン酸
【0089】
実施例で示されるように、特定の構造を有するブロック共重合体(I)と、脂肪族ポリエステル系樹脂(II)と、環状エステル化合物(III)とを含有する本実施形態の樹脂組成物は、生分解性、耐熱性、及び透明性のバランスに優れることが確認された。
一方、比較例1及び比較例4で得られた樹脂組成物は、環状エステル化合物(III)が含まれていないため、耐熱性に劣るものであった。
また、比較例2で得られた樹脂組成物は、環状エステル化合物(III)の代わりに環状構造を有さないエステル化合物が含まれていたため、耐熱性に劣るものであった。
また、比較例3で得られた樹脂組成物は、環状エステル化合物(III)の代わりに結晶核剤が含まれていたため、透明性に劣るものであった。
また、比較例5で得られた樹脂組成物は、環状エステル化合物(III)の含有量が多いため、ガラス転移温度が非常に低く、透明性に劣るものであった。
【0090】
上記実施例の結果のとおり、本実施形態の樹脂組成物は、生分解性、耐熱性、及び透明性のバランスに優れる。したがって、本実施形態の樹脂組成物の工業的な有用性は極めて高い。