(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174329
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】砥石
(51)【国際特許分類】
B24D 3/02 20060101AFI20241210BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B24D3/02 310C
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092088
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】赤星 祐樹
【テーマコード(参考)】
3C063
5F063
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB03
3C063AB05
3C063BA02
3C063BB02
3C063BD04
3C063BD20
3C063EE10
3C063EE31
3C063FF21
3C063FF23
3C063FF30
5F063AA22
5F063DD02
(57)【要約】
【課題】加工不良の発生を抑制することが可能な砥石を提供する。
【解決手段】被加工物を加工する砥石であって、砥粒と、砥粒を固定する結合材と、を含み、結合材には、被加工物の加工中に体積が膨張する体積膨張粒子が含有されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する砥石であって、
砥粒と、該砥粒を固定する結合材と、を含み、
該結合材には、該被加工物の加工中に体積が膨張する体積膨張粒子が含有されていることを特徴とする砥石。
【請求項2】
該体積膨張粒子の含有率は、3.0vol%以上14.0vol%以下であることを特徴とする請求項1に記載の砥石。
【請求項3】
該体積膨張粒子の平均粒径は、該砥粒の平均粒径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の砥石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工する砥石に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のデバイスが形成されたウェーハを分割して個片化することにより、デバイスを備えるデバイスチップが製造される。また、複数のデバイスチップを所定の基板上に実装し、実装されたデバイスチップを樹脂層(モールド樹脂)で被覆して封止することにより、パッケージ基板が形成される。このパッケージ基板を分割して個片化することにより、パッケージ化された複数のデバイスチップを備えるパッケージデバイスが製造される。デバイスチップやパッケージデバイスは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
ウェーハ、パッケージ基板等の被加工物の分割には、切削装置が用いられる。切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、被加工物に切削加工を施す切削ユニットとを備える。切削ユニットには、被加工物に接触して被加工物を切削する砥石(切り刃)を有する環状の切削ブレードが装着される。被加工物をチャックテーブルで保持し、切削ブレードを回転させつつ砥石を被加工物に切り込ませることにより、被加工物が切削、分割される(特許文献1参照)。
【0004】
また、近年では、電子機器の小型化に伴い、デバイスチップやパッケージデバイスの薄型化が求められている。そこで、研削装置を用いて分割前のウェーハやパッケージ基板を研削して薄化する処理が実施されることがある。研削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、被加工物に研削加工を施す研削ユニットとを備える。研削ユニットには、被加工物に接触して被加工物を研削する複数の砥石(研削砥石)を有する環状の研削ホイールが装着される。被加工物をチャックテーブルで保持し、チャックテーブル及び研削ホイールを回転させつつ砥石を被加工物に接触させることにより、被加工物が研削、薄化される(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-87282号公報
【特許文献2】特開2006-1007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
切削ブレードや研削ホイールが備える砥石は、ダイヤモンド等でなる砥粒を結合材で固定することによって形成される。そして、結合材から露出した砥粒が被加工物に衝突することにより、被加工物に切削、研削等の破砕加工が施される。また、砥石による被加工物の加工を継続すると、砥石の結合材が摩耗し、結合材から露出している砥粒が脱落するとともに結合材の内部に埋め込まれている砥粒が新たに露出する自生発刃と称される現象が発生する。この自生発刃によって、砥石のコンディションが整えられ、砥石の加工能力が維持される。
【0007】
しかしながら、被加工物の材質、砥石の結合材の材質、加工条件等によっては、結合材の摩耗による砥粒の脱落が生じにくく、自生発刃が滞ることがある。自生発刃が適度な頻度で生じないまま被加工物の加工が継続されると、結合材から露出している砥粒が被加工物との接触によって摩耗して平滑化される目つぶれや、加工によって発生した屑(加工屑)が砥粒又は砥粒間の隙間に固着して砥粒の露出が妨げられる目詰まり等の不具合が生じやすくなる。これにより、砥石のコンディションが悪化し、加工能力が低下する。
【0008】
砥石の加工能力が低下した状態で被加工物の加工が続行されると、砥石による被加工物の加工中に被加工物にかかる圧力(加工負荷)が増大し、加工不良が発生しやすくなる。特に、切削や研削によって加工しにくい難削材でなる被加工物(SiCウェーハ、GaNウェーハ、サファイアウェーハ等)を砥石で加工する場合には、加工負荷の増大による加工不良がより生じやすい。
【0009】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、加工不良の発生を抑制することが可能な砥石の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、被加工物を加工する砥石であって、砥粒と、該砥粒を固定する結合材と、を含み、該結合材には、該被加工物の加工中に体積が膨張する体積膨張粒子が含有されている砥石が提供される。
【0011】
なお、好ましくは、該体積膨張粒子の含有率は、3.0vol%以上14.0vol%以下である。また、好ましくは、該体積膨張粒子の平均粒径は、該砥粒の平均粒径よりも小さい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る砥石は、被加工物の加工中に体積が膨張する体積膨張粒子が含有された結合材を備える。これにより、被加工物の加工中において自生発刃が促進されて砥石のコンディションが良好に維持され、加工不良の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(A)はワッシャータイプの切削ブレードを示す斜視図であり、
図1(B)はハブタイプの切削ブレードを示す斜視図である。
【
図7】被加工物の加工中におけるスピンドルモータの電流値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る砥石の構成例について説明する。本実施形態に係る砥石は、被加工物を切削する加工工具である切削ブレードの切り刃として用いられる。
【0015】
図1(A)は、切削ブレード10を示す斜視図である。切削ブレード10は、その全体が環状の切り刃として機能するワッシャータイプの切削ブレード(ワッシャーブレード)である。
【0016】
切削ブレード10は、環状の砥石(切り刃)12のみによって構成される。砥石12は、互いに概ね平行な第1面(表面)12a及び第2面(裏面)12bを含む。また、砥石12の中央部には、第1面12aから第2面12bに至る円形の貫通孔12cが、砥石12を厚さ方向に貫通するように設けられている。
【0017】
図1(B)は、切削ブレード20を示す斜視図である。切削ブレード20は、環状のハブ基台22と、ハブ基台22の外周縁に沿って設けられた環状の砥石(切り刃)24とを備える、ハブタイプの切削ブレード(ハブブレード)である。
【0018】
例えばハブ基台22は、アルミニウム合金等の金属でなり、第1面(表面)22a及び第2面(裏面)22bを含む。ハブ基台22の中央部には、ハブ基台22の第1面22aから第2面22bに至る円形の貫通孔22cが、ハブ基台22を厚さ方向に貫通するように設けられている。また、貫通孔22cの周囲には、ハブ基台22の第1面22aからハブ基台22の厚さ方向に突出する環状の凸部22dが設けられている。
【0019】
ハブ基台22の第2面22b側には、環状の砥石24がハブ基台22の外周縁に沿って環状に形成されている。なお、砥石24の外径はハブ基台22の外径よりも大きく、砥石24はハブ基台22の外周縁からハブ基台22の半径方向外側に突出するように配置されている。
【0020】
図2は、被加工物11を切削する切削装置30を示す斜視図である。
図2において、X
1軸方向(加工送り方向、第1水平方向)とY
1軸方向(割り出し送り方向、第2水平方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z
1軸方向(高さ方向、上下方向、鉛直方向)は、X
1軸方向及びY
1軸方向と垂直な方向である。切削ブレード10(
図1(A)参照)及び切削ブレード20(
図1(B)参照)は、切削装置30に装着され、被加工物11を切削する。
【0021】
例えば被加工物11は、Si、GaAs、InP、GaN、SiC等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面11a及び裏面11bを備える。また、被加工物11は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)13によって、複数の矩形状の領域に区画されている。
【0022】
ストリート13によって区画された領域の表面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス15が形成されている。切削ブレード10又は切削ブレード20で被加工物11をストリート13に沿って切削して分割することにより、デバイス15をそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。
【0023】
ただし、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物11は、ガラス、サファイア、セラミックス、樹脂、金属等でなる基板(ウェーハ)であってもよい。また、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、被加工物11にはデバイス15が形成されていなくてもよい。
【0024】
さらに、被加工物11は、CSP(Chip Size Package)基板、QFN(Quad Flat Non-leaded package)基板等のパッケージ基板であってもよい。例えばパッケージ基板は、所定の基板上に複数のデバイスチップを実装し、実装されたデバイスチップを樹脂層(モールド樹脂)で被覆して封止することによって形成される。切削ブレード10又は切削ブレード20でパッケージ基板を切削して分割することにより、パッケージ化された複数のデバイスチップをそれぞれ備える複数のパッケージデバイスが製造される。
【0025】
切削装置30で被加工物11を処理する際には、被加工物11の取り扱い(搬送、保持等)の便宜のため、被加工物11を環状のフレーム17で支持してもよい。フレーム17は、SUS(ステンレス鋼)等の金属でなる環状の部材であり、フレーム17の中央部にはフレーム17を厚さ方向に貫通する円形の開口17aが設けられている。なお、開口17aの直径は被加工物11の直径よりも大きい。
【0026】
被加工物11及びフレーム17には、円形のシート19が固定される。例えばシート19として、円形に形成されたフィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを備えるテープが用いられる。また、シート19として、粘着層を備えず被加工物11及びフレーム17に熱圧着可能な熱圧着シートを用いることもできる。
【0027】
被加工物11がフレーム17の開口17aの内側に配置された状態で、シート19の中央部が被加工物11の裏面11b側に貼付され、シート19の外周部がフレーム17に貼付される。これにより、被加工物11がシート19を介してフレーム17によって支持される。
【0028】
被加工物11は、フレーム17によって支持された状態で切削装置30に搬入され、切削ブレード10又は切削ブレード20によって切削される。切削装置30は、被加工物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)32と、チャックテーブル32によって保持された被加工物11に切削加工を施す切削ユニット34とを備える。
【0029】
チャックテーブル32の上面は、水平面(X1Y1平面)と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する円形の保持面を構成している。チャックテーブル32の保持面は、チャックテーブル32の内部に設けられた流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。また、チャックテーブル32には、チャックテーブル32をX1軸方向に沿って移動させるボールねじ式の移動機構(不図示)と、チャックテーブル32をZ1軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)とが連結されている。
【0030】
チャックテーブル32の上方には、切削ユニット34が配置されている。切削ユニット34は筒状のハウジング36を備え、ハウジング36にはY1軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル(不図示)が収容されている。スピンドルの先端部(一端部)はハウジング36の外部に露出しており、スピンドルの基端部(他端部)にはスピンドルモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0031】
スピンドルの先端部に、切削ブレード10(
図1(A)参照)又は切削ブレード20(
図1(B)参照)が装着される。本実施形態では代表例として、切削ユニット34に切削ブレード10が装着される場合について説明する。スピンドルの先端部に切削ブレード10が装着された状態で回転駆動源を作動させると、回転駆動源からスピンドルを介して伝達される動力によって切削ブレード10がY
1軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0032】
スピンドルの先端部に装着された切削ブレード10は、ハウジング36に固定されているブレードカバー38に覆われる。ブレードカバー38は、純水等の液体(加工液)が供給されるチューブ(不図示)に接続される一対の接続部40と、接続部40に接続され切削ブレード10の両面側にそれぞれ配置される一対のノズル42とを備える。一対のノズル42にはそれぞれ、切削ブレード10に向かって開口する噴射口(不図示)が設けられている。
【0033】
接続部40に加工液が供給されると、一対のノズル42の噴射口から切削ブレード10の両面に向かって加工液が噴射される。この加工液によって、被加工物11及び切削ブレード10が冷却されるとともに、切削加工によって生じた屑(加工屑)が洗い流される。
【0034】
また、切削ユニット34には、切削ユニット34を移動させるボールねじ式の移動機構(不図示)が連結されている。この移動機構は、切削ユニット34をY1軸方向に沿って移動させるとともに、Z1軸方向に沿って昇降させる。移動機構によって、切削ブレード10のY1軸方向及びZ1軸方向における位置が調節される。
【0035】
切削装置30を用いて被加工物11を加工する際は、まず、被加工物11がチャックテーブル32によって保持される。例えば被加工物11は、表面11a側が上方を向き裏面11b側(シート19側)が保持面と対面するように、チャックテーブル32上に配置される。この状態で保持面に吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11がシート19を介してチャックテーブル32によって吸引保持される。
【0036】
次に、チャックテーブル32を回転させ、所定のストリート13の長さ方向をX1軸方向に合わせる。また、切削ブレード10が所定のストリート13の延長線上に配置されるように、切削ユニット34のY1軸方向における位置が調節される。さらに、切削ブレード10の下端が被加工物11の裏面11b(シート19の上面)よりも下方に配置されるように、切削ユニット34の高さが調節される。このときの被加工物11の表面11aと切削ブレード10の下端との高さの差が、切削ブレード10の被加工物11への切り込み深さに相当する。
【0037】
そして、切削ブレード10を回転させつつ、チャックテーブル32をX1軸方向に沿って移動させる。これにより、チャックテーブル32と切削ブレード10とがX1軸方向に沿って相対的に移動し(加工送り)、切削ブレード10が所定のストリート13に沿って被加工物11に切り込む。その結果、被加工物11が所定のストリート13に沿って切断、分割される。その後、同様の手順を繰り返すことにより、被加工物11が全てのストリート13に沿って分割される。これにより、デバイス15をそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。
【0038】
ただし、被加工物11に施される切削加工の内容は、加工の目的に応じて適宜設定される。例えば、切り込み深さを被加工物11の厚さ未満に設定することにより、深さが被加工物11の厚さ未満の切削溝を被加工物11の表面11a側に形成することができる(ハーフカット)。また、切削ブレード10に代えて切削ブレード20(
図1(B)参照)を切削ユニット34に装着し、切削ブレード20で被加工物11を切削してもよい。この場合には、切削ブレード20の砥石24を被加工物11に切り込ませることにより、被加工物11を切削する。
【0039】
図3は、切削ブレード10を構成する砥石12の一部を示す断面図である。砥石12は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN:cubic Boron Nitride)等でなる砥粒14と、砥粒14を固定するレジンボンド、メタルボンド、ビトリファイドボンド等の結合材(ボンド剤)16とを含む。
【0040】
切削ブレード10を回転させつつ被加工物11に切り込ませると(
図2参照)、結合材16から露出している砥粒14が被加工物11に衝突し、被加工物11が切削される。また、砥石12による被加工物11の切削を継続すると、結合材16が被加工物11との接触によって徐々に摩耗する。その結果、結合材16から露出している砥粒14が脱落するとともに結合材16の内部に埋め込まれている砥粒14が新たに露出する自生発刃と称される現象が発生する。この自生発刃によって、砥石12のコンディションが整えられ、砥石12の切削能力(切れ味)が維持される。
【0041】
しかしながら、被加工物11の材質、結合材16の材質、加工条件等によっては、結合材16の摩耗による砥粒14の脱落が生じにくく、自生発刃が滞ることがある。自生発刃が適度な頻度で生じないまま被加工物11の加工が継続されると、結合材16から露出している砥粒14が被加工物11との接触によって摩耗して平滑化される目つぶれや、加工屑が砥粒14又は砥粒14間の隙間に固着して砥粒14の露出が妨げられる目詰まり等の不具合が生じやすくなる。その結果、砥石12の切削能力が低下して加工負荷が増大し、加工不良が発生するおそれがある。
【0042】
そこで、本実施形態においては、
図3に示すように、被加工物11の加工中に体積が膨張する体積膨張粒子18を砥石12の結合材16に含有させる。これにより、被加工物11の加工中に結合材16の摩耗が生じやすくなって自生発刃が促進され、加工不良の発生が抑制される。
【0043】
具体的には、体積膨張粒子18は、被加工物11の加工中における砥石12の発熱に起因して体積が膨張する性質を有する。砥石12で被加工物11を切削すると、高速で回転する砥石12と被加工物11との接触により摩擦熱が発生し、砥石12が発熱する。そして、砥石12の温度の上昇によって体積膨張粒子18が加熱されて膨張する。
【0044】
体積膨張粒子18が膨張すると、体積膨張粒子18の周囲において結合材16に応力が作用し、結合材16に微小なクラックが発生する。そして、クラックを起点とする結合材16の摩耗が誘発され、砥石12の自生発刃が促進される。これにより、目つぶれ及び目詰まりが予防又は解消されて砥石12のコンディションが良好な状態に維持され、砥石12の切削能力の低下が抑制される。
【0045】
体積膨張粒子18としては、加熱によって膨張する粒子(熱膨張粒子)を用いることができる。例えば、加熱によって膨張するマイクロカプセル(熱膨張性マイクロカプセル)が体積膨張粒子18として用いられる。熱膨張性マイクロカプセルの市販品の例としては、株式会社クレハ社製のクレハマイクロスフェアー(登録商標)が挙げられる。
【0046】
ただし、体積膨張粒子18は、被加工物11の加工時に膨張する性質を有していればよい。例えば体積膨張粒子18は、被加工物11と砥石12との間の摩擦熱によって酸化が促進され、酸化によって体積が膨張する金属粉末等の粒子(酸化膨張粒子)であってもよい。この場合、体積膨張粒子18のPilling-Bedworth比(PB比)は、2.0以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましい。なお、PB比は、金属原子1個あたりの金属の体積をVm、金属イオン1個あたりの酸化物の体積をV0とした場合に、V0/Vmで表される値である。例えば、体積膨張粒子18としてNbの粒子(粉末)を用いることができる。
【0047】
体積膨張粒子18が酸化膨張粒子である場合には、砥石12で被加工物11を切削する際に、結合材16から露出した体積膨張粒子18が酸化する。また、被加工物11と砥石12との間の摩擦熱によって体積膨張粒子18が加熱され、体積膨張粒子18の酸化が促進される。その結果、体積膨張粒子18の体積が増大して結合材16に応力が作用し、結合材16の摩耗が促進される。
【0048】
上記の体積膨張粒子18は、加工中における砥石12の発熱に起因して結合材16の摩耗を促進させる程度に膨張可能な物質が選択される。例えば、砥石12で被加工物11を切削する際には、被加工物11と砥石12との接触領域における温度が摩擦熱によって常温(15~25℃)から100~300℃程度まで上昇する。そのため、体積膨張粒子18としては、温度が常温から100~300℃に上昇した際に体積が増加(好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上)する物質を用いることが好ましい。
【0049】
体積膨張粒子18の含有率は、被加工物11の切削に必要な砥石12の全体の強度を確保しつつ自生発刃が促進されるように適宜設定される。特に、体積膨張粒子18の含有率は、3.0vol%以上14.0vol%以下であることが好ましく、4.0vol%以上8.0vol%以下であることがより好ましい。これにより、被加工物11の加工中における砥石12の破損を回避しつつ、結合材16の摩耗による自生発刃を効果的に発生させることができる。なお、上記の体積膨張粒子18の含有率(vol%)は、砥石12の全体の体積(砥粒14、結合材16及び体積膨張粒子18の体積の総和)に対する体積膨張粒子18の体積の比率に相当する。
【0050】
また、体積膨張粒子18の平均粒径は、砥粒14の平均粒径よりも小さいことが好ましい。これにより、体積膨張粒子18の被加工物11への過度な接触が防止され、砥粒14による被加工物11の切削が体積膨張粒子18によって阻害されることを回避できる。具体的には、体積膨張粒子18の平均粒径は、砥粒14の平均粒径の80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。例えば、砥粒14の平均粒径は、10μm以上60μm以下、好ましくは20μm以上50μm以下である。また、体積膨張粒子18の平均粒径は、例えば5μm以上45μm以下の範囲内で、砥粒14の平均粒径よりも小さくなるように設定される。
【0051】
なお、砥粒14と体積膨張粒子18との平均粒径の大小関係は、砥粒14の平均粒径と体積膨張粒子18の平均粒径とを同一の測定方法で測定し、両者の測定結果を比較することによって確認できる。例えば、上記の砥粒14及び体積膨張粒子18の平均粒径の値は、レーザー回折・散乱法によって測定される粒子径分布の積算50%における粒径(メディアン径、d50、50%径)に相当する。
【0052】
上記のように、結合材16に体積膨張粒子18を含有させることにより、被加工物11の切削加工中に結合材16の摩耗が促進され、砥石12の自生発刃が生じやすくなる。これにより、砥石12のコンディションが良好に維持され、加工不良の発生が抑制される。
【0053】
なお、体積膨張粒子18を含有する砥石12は、従来の切削ブレードの製造方法において、砥粒とともに体積膨張粒子を結合材に含有させることによって製造できる。例えば、砥石12及び体積膨張粒子18をフェノール等の樹脂に混合し、ホットプレス法等を用いて樹脂を焼成して熱硬化させることにより、結合材16(レジンボンド)に砥石12及び体積膨張粒子18が含有された砥石12を製造することができる。
【0054】
また、砥石12は、電解めっきを用いて製造することもできる。この場合には、まず、砥粒14及び体積膨張粒子18が添加されためっき液をめっき浴槽に貯留する。めっき液としては、例えばNiを含む電解液が用いられる。そして、めっき層を電着させる基台と、Niでなる板状の電極とがめっき液に浸漬される。なお、基台には、切削ブレード10(
図1(A)参照)の形状に対応する環状の開口部を備えるマスクが予め形成される。
【0055】
次に、めっき液を攪拌しつつ、基台を直流電源のマイナス端子(負極)に接続し、電極を直流電源のプラス端子(正極)に接続する。これにより、基台が陰極、電極が陽極として機能し、めっき液に直流電流が流れる。そして、基台のうちマスクに覆われていない環状の領域に、砥粒14及び体積膨張粒子18を含むニッケルめっき層が電着される。その結果、結合材16(ニッケルめっき層)に砥粒14及び体積膨張粒子18が含有された砥石12が製造される。
【0056】
以上の通り、本実施形態に係る切削ブレード10,20の砥石12,24は、被加工物11の加工中に体積が膨張する体積膨張粒子18が含有された結合材16を備える。これにより、被加工物11の加工中において自生発刃が促進されて砥石12,24のコンディションが良好に維持され、加工不良の発生が抑制される。
【0057】
なお、上記では、代表例として切削ブレード10の砥石12(
図1(A)及び
図3参照)について説明した。ただし、切削ブレード20の砥石24の構成及び機能も、切削ブレード10の砥石12(
図3参照)と同様である。例えば、砥粒14及び体積膨張粒子18を含有する結合材16(ニッケルめっき層)が、電解めっきによってハブ基台22の外周縁に沿って環状に電着される。
【0058】
その他、本実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【0059】
(実施形態2)
上記の実施形態1では、本発明に係る砥石が切削ブレードの切り刃として用いられる場合について説明した。ただし、本発明に係る砥石は他の加工工具に用いることもできる。本実施形態では、本発明に係る砥石が被加工物11を研削する研削ホイールに用いられる場合について説明する。
【0060】
図4は、被加工物11を研削する研削装置50を示す斜視図である。
図4において、X
2軸方向(第1水平方向)とY
2軸方向(第2水平方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z
2軸方向(上下方向、高さ方向、鉛直方向)は、X
2軸方向及びY
2軸方向と垂直な方向である。
【0061】
研削装置50は、研削ホイール60で被加工物11を研削して薄化する。例えば、切削装置30(
図2参照)で被加工物11をストリート13に沿って分割する前に、被加工物11の裏面11b側を研削して被加工物11を薄化しておくことにより、薄型化されたデバイスチップを製造することができる。
【0062】
研削装置50は、被加工物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)52を備える。チャックテーブル52の上面は、水平面(X2Y2平面)と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する保持面52aを構成している。保持面52aは、チャックテーブル52の内部に設けられた流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。また、チャックテーブル52には、チャックテーブル52を水平方向(X2Y2平面方向)に沿って移動させる移動機構(不図示)と、チャックテーブル52をZ2軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)とが連結されている。
【0063】
チャックテーブル52の上方には、被加工物11に研削加工を施す研削ユニット54が設けられている。研削ユニット54は、Z2軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル56を備える。スピンドル56の基端部(上端部)には、スピンドル56を回転させるスピンドルモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0064】
スピンドル56の先端部(下端部)には、金属等でなる円盤状のホイールマウント58が固定されている。ホイールマウント58の下面側には、被加工物11を研削する環状の研削ホイール60が着脱可能に装着される。例えば研削ホイール60は、ボルト等の固定具によってホイールマウント58に固定される。
【0065】
研削ホイール60は、環状のホイール基台62を備える。ホイール基台62は、アルミニウム、ステンレス等の金属でなり、ホイールマウント58と概ね同径に形成されている。ホイール基台62の上面側が、ホイールマウント58の下面側に固定される。また、ホイール基台62の下面側には、複数の砥石(研削砥石)64が固定されている。例えば砥石64は、直方体状に形成され、ホイール基台62の周方向に沿って概ね等間隔で環状に配列される。ただし、砥石64の形状、構造、大きさ等に制限はなく、砥石64の数も任意に設定できる。
【0066】
研削ホイール60は、回転駆動源(不図示)からスピンドル56及びホイールマウント58を介して伝達される動力により、Z2軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。そして、研削ホイール60が回転すると、複数の砥石64がそれぞれ研削ホイール60の回転軸を中心として水平面(X2Y2平面)と概ね平行な環状の旋回軌道(旋回経路)に沿って旋回する。
【0067】
研削ユニット54には、研削ユニット54をZ2軸方向に沿って移動(昇降)させるボールねじ式の移動機構(不図示)が連結されている。移動機構で研削ユニット54を昇降させると、研削ホイール60がチャックテーブル52に対して相対的に移動し、保持面52aと研削ホイール60とが互いに接近又は離隔する。
【0068】
研削ユニット54の内部又は近傍には、純水等の液体(加工液)を供給するための加工液供給路(不図示)が設けられている。そして、研削ホイール60で被加工物11を研削する際には、加工液が被加工物11及び砥石64に供給される。これにより、被加工物11及び砥石64が冷却されるとともに、研削加工によって発生した屑(加工屑)が洗い流される。
【0069】
研削装置50で被加工物11を研削する際は、まず、被加工物11がチャックテーブル52によって保持される。例えば被加工物11は、表面11a側が保持面52aに対面して裏面11b(被研削面)側が上方に露出するように、チャックテーブル52上に配置される。この状態で保持面52aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11がチャックテーブル52によって吸引保持される。なお、被加工物11の表面11a側には、被加工物を保護する保護シートが固定されていてもよい。
【0070】
次に、チャックテーブル52と研削ホイール60との位置関係が調節される。例えば、砥石64の旋回軌道が被加工物11の中心とZ2軸方向において重なるように、チャックテーブル52が研削ホイール60の下方に位置付けられる。そして、チャックテーブル52及びスピンドル56を回転させつつ、研削ユニット54を所定の速度で下降させて研削ホイール60を被加工物11に接近させる。砥石64が被加工物11の裏面11bに接触すると、被加工物11の裏面11b側が削り取られ、被加工物11が研削、薄化される。
【0071】
図5は、研削ホイール60の砥石64の一部を示す断面図である。砥石64は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素等でなる砥粒66と、砥粒66を固定するレジンボンド、ビトリファイドボンド等の結合材(ボンド剤)68とを含む。
【0072】
研削ホイール60を回転させつつ砥石64を被加工物11に接触させると(
図4参照)、結合材68から露出している砥粒66が被加工物11に衝突し、被加工物11が研削される。また、砥石64による被加工物11の研削を継続すると、結合材68が被加工物11との接触によって徐々に摩耗し、砥石64の自生発刃が発生する。これにより、砥石64のコンディションが整えられ、砥石64の研削能力が維持される。
【0073】
また、砥石64の結合材68には、被加工物11の加工中に体積が膨張する体積膨張粒子70が含有されている。体積膨張粒子70の種類、材質、特性(PB比等)、含有率、平均粒径等は、砥石12,24(
図1(A)及び
図1(B)参照)の結合材16に含有される体積膨張粒子18(
図3参照)と同様である。また、砥粒66の平均粒径と体積膨張粒子70の平均粒径との大小関係も、砥粒14及び体積膨張粒子18(
図3参照)と同様に設定できる。
【0074】
砥石64で被加工物11を研削すると、高速で旋回する砥石64と被加工物11との接触により摩擦熱が発生し、砥石64が発熱する。そして、砥石64の温度の上昇によって、体積膨張粒子70が加熱されて膨張する。体積膨張粒子70が膨張すると、体積膨張粒子70の周囲において結合材68に応力が作用し、結合材68に微小なクラックが発生する。そして、クラックを起点とする結合材68の摩耗が誘発され、砥石64の自生発刃が促進される。これにより、砥石64のコンディションが良好な状態に維持され、砥石64の研削能力の低下が抑制される。
【0075】
体積膨張粒子70を含有する砥石64は、従来の研削砥石の製造方法において、砥粒とともに体積膨張粒子を結合材に含有させることによって製造できる。例えば、砥石64及び体積膨張粒子70をフェノール等の樹脂に混合し、ホットプレス法等を用いて樹脂を焼成して熱硬化させることにより、結合材68(レジンボンド)に砥石64及び体積膨張粒子70が含有された砥石64を製造することができる。
【0076】
以上の通り、本実施形態に係る研削ホイール60の砥石64は、被加工物11の加工中に体積が膨張する体積膨張粒子70が含有された結合材68を備える。これにより、被加工物11の加工中において自生発刃が促進されて砥石64のコンディションが良好に維持され、加工不良の発生が抑制される。
【0077】
なお、本実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。また、本実施形態において説明を省略した事項については、実施形態1と同様である。
【0078】
(実施例)
次に、本発明に係る砥石を用いて被加工物を加工した結果について説明する。本試験では、結合材に体積膨張粒子が含有された砥石(
図3)によって構成されるワッシャータイプの切削ブレードで被加工物を切削し、自生発刃の頻度と加工負荷とを評価した。
【0079】
被加工物としては、矩形状のガラスエポキシ銅張積層板(長さ150mm、幅150mm、厚さ1mm)を用いた。また、比較例(従来例)に係る切削ブレードAと実施例に係る切削ブレードBとを準備した。切削ブレードA,Bとしては、環状の砥石(外径59mm、厚さ0.25mm)によって構成されるワッシャータイプの切削ブレード(
図1(A)参照)を用いた。
【0080】
切削ブレードA,Bは、砥粒を結合材で固定することによって形成した。砥粒としてはダイヤモンド(平均粒径40μm)を用い、結合材としてはフェノール樹脂を主成分とするレジンボンドを用いた。
【0081】
なお、比較例に係る切削ブレードAの砥石は、結合材に体積膨張粒子を含有させずに形成した。一方、実施例に係る切削ブレードBの砥石は、結合材に体積膨張粒子を含有させて形成した。体積膨張粒子としては、熱膨張性マイクロカプセルの市販品(株式会社クレハ社製クレハマイクロスフェアー(登録商標)、粒径12μm)を用いた。また、体積膨張粒子の含有率は、6.0vol%に設定した。
【0082】
そして、切削装置(
図2参照)を用いて、比較例に係る切削ブレードAと実施例に係る切削ブレードBとでそれぞれ被加工物を切削した。具体的には、スピンドル回転数(切削ブレードの回転数)を25000rpm、加工送り速度を30mm/s、切削ブレードの被加工物への切り込み深さを1mm(フルカット)に設定し、切削ブレードを被加工物に切り込ませることによって被加工物を線状の加工ラインに沿って切削、分割する手順を繰り返した。そして、被加工物の切削中における切削ブレードA,Bの摩耗率とスピンドルモータの電流値とを測定した。
【0083】
図6は、切削ブレードの摩耗率を示すグラフである。切削ブレードの摩耗率は、被加工物の切削距離(加工ラインの長さ)1mあたりにおける、砥石の外径の減少量の平均値に相当する。
図6に示すように、実施例に係る切削ブレードBの摩耗率は0.203μm/mであり、比較例に係る切削ブレードAの摩耗率(0.158μm/m)よりも約30%程度高くなった。この結果より、結合材に体積膨張粒子を含有させることにより、砥石の結合材が摩耗しやすくなり、自生発刃が促進されることが確認された。
【0084】
図7は、被加工物の加工中におけるスピンドルモータの電流値を示すグラフである。切削装置のスピンドルには、スピンドルを回転させるスピンドルモータが接続されている。本試験では、スピンドルモータでスピンドルを回転させて切削ブレードA,Bを被加工物に切り込ませつつ、スピンドルモータの電流値を測定した。
【0085】
回転する切削ブレードA,Bが被加工物に接触すると、切削ブレードA,Bに負荷がかかる。その結果、切削ブレードA,Bの回転を維持するために必要なスピンドルのトルクが増大し、スピンドルモータの電流値も増大する。また、被加工物の切削中に切削ブレードA,Bのコンディションが目つぶれ、目詰まり等によって悪化すると、切削ブレードA,Bの切削能力(切れ味)が低下し、切削加工中に被加工物及び切削ブレードA,Bにかかる負荷(加工負荷)が増大し、スピンドルモータの電流値も増大する。すなわち、スピンドルモータの電流値には、切削加工中における加工負荷の変化が反映される。
【0086】
図7に示すように、実施例に係る切削ブレードBを用いると、比較例に係る切削ブレードAを用いる場合と比較して、スピンドルモータの電流値が低く抑えられることが確認された。これは、結合材に体積膨張粒子を含有させることによって自生発刃が促進され、被加工物の切削中における切削ブレードの切削能力が良好に維持されたことに起因すると推察される。
【0087】
以上の試験結果より、本発明に係る砥石を用いることにより、自生発刃が促進されて加工負荷が低減し、加工不良の発生が効果的に抑制されることが確認された。
【符号の説明】
【0088】
11 被加工物
11a 表面
11b 裏面
13 ストリート(分割予定ライン)
15 デバイス
17 フレーム
17a 開口
19 シート
10 切削ブレード
12 砥石(切り刃)
12a 第1面(表面)
12b 第2面(裏面)
12c 貫通孔
14 砥粒
16 結合材(ボンド剤)
18 体積膨張粒子
20 切削ブレード
22 ハブ基台
22a 第1面(表面)
22b 第2面(裏面)
22c 貫通孔
22d 凸部
24 砥石(切り刃)
30 切削装置
32 チャックテーブル(保持テーブル)
34 切削ユニット
36 ハウジング
38 ブレードカバー
40 接続部
42 ノズル
50 研削装置
52 チャックテーブル(保持テーブル)
52a 保持面
54 研削ユニット
56 スピンドル
58 ホイールマウント
60 研削ホイール
62 ホイール基台
64 砥石(研削砥石)
66 砥粒
68 結合材(ボンド剤)
70 体積膨張粒子