(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174330
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】半導体処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20241210BHJP
H01J 37/18 20060101ALI20241210BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20241210BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01J37/18
H01J37/09 Z
H01L21/66 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092089
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上柿 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宗大
(72)【発明者】
【氏名】水落 真樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真志
(72)【発明者】
【氏名】長山 巧
【テーマコード(参考)】
4M106
5C101
5F131
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA02
4M106CA39
4M106DB05
4M106DH24
4M106DH33
5C101AA03
5C101BB01
5C101BB03
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5C101CC14
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5F131DD33
5F131DD82
5F131DD85
5F131JA07
5F131JA08
5F131JA09
(57)【要約】
【課題】
ロードロック室のバルブ装置が稼働する際の振動の影響で発生する待ち時間を最小化し、装置が単位時間あたりに処理可能なウェハの枚数を向上させることが可能な半導体処理装置を提供する。
【解決手段】
複数のロードロック室を備え、ウェハの処理中に所定のバルブ装置を動作させないようにバルブ装置を制御し、ウェハ処理が終了したタイミングで前記所定のバルブ装置の動作を許可する信号を送信し、前記信号に基づいてバルブ装置を動作させることで、一方のロードロック室と処理室内で処理済みウェハと未処理ウェハを交換する間に、他方のロードロック室内の所定のバルブ装置を動作させるように半導体処理装置全体の稼働シーケンスを制御することで、電子光学系の稼働中に振動が発生しないようにして、待ち時間を削減する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハを処理する処理機構を内部に備えた試料室と、
前記試料室に半導体ウェハを搬入する、複数のロードロック室と、
前記試料室と前記複数のロードロック室のそれぞれとの間で半導体ウェハの交換を行う試料交換機構と、
を備えた半導体処理装置であって、
前記複数のロードロック室のうちのいずれかが前記試料室との間で半導体ウェハの交換を行っているタイミングで、
前記複数のロードロック室のうちの半導体ウェハの交換を行っていないロードロック室での、振動が発生する動作を伴う機構の動作が行われるように、
前記複数のロードロック室の機構の動作を制御する制御機構を備えたことを特徴とする半導体処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体処理装置において、
前記振動が発生する動作を伴う機構は、前記ロードロック室へ半導体ウェハを出し入れするためのゲートバルブ、該ロードロック室内の気圧を調整するための調整機構に接続される配管の開閉バルブ、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする半導体処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体処理装置において、
前記処理機構は、半導体を荷電粒子線を用いて観察及び/または加工する機構、光を用いて露光する機構、の少なくともいずれかであることを特徴とする半導体処理装置。
【請求項4】
請求項2記載の半導体処理装置において、
前記調整機構に接続される配管は、
ロードロック室へ所定の気体を流入させる配管、
粗引きポンプに繋がる配管、
ターボ分子ポンプに繋がる配管の少なくともいずれかを含むことを特徴とする半導体処理装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体処理装置において、
前記試料交換機構は、前記ロードロック室から前記試料室へ半導体ウェハを搬入するタイミングで、該試料室内の試料を該ロードロック室へ搬送することを特徴とする半導体処理装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体処理装置において、
前記振動が発生する動作を伴う機構の動作が行われるタイミングは、前記半導体ウェハの処理に要する時間、前記ロードロック室の真空排気に必要な時間の少なくともいずれかに基づいて変更することができる変更手段を備えたことを特徴とする半導体処理装置。
【請求項7】
請求項6記載の半導体処理装置において、
前記半導体ウェハの処理は該半導体ウェハに荷電粒子線を照射する処理であって、
該処理に要する時間は、該半導体ウェハ上の1点に荷電粒子線を照射する時間と、該1点へ荷電粒子線が照射されるよう該半導体ウェハを移動する時間の合計、および該半導体ウェハへの荷電粒子線の照射点の数から計算されることを特徴とする半導体処理装置。
【請求項8】
請求項1記載の半導体処理装置において、
振動が発生する動作を伴う前記機構の動作を制御する第一の制御装置、
半導体ウェハを搬送する搬送装置を制御する第二の制御装置、
半導体ウェハを処理する前記処理機構を制御する第三の制御装置、
前記第一から第三の制御装置へ制御信号を送信することで装置全体の動作を制御する第四の制御装置、
を備えることを特徴とする半導体処理装置。
【請求項9】
請求項8記載の半導体処理装置において、
半導体ウェハを処理する前記処理機構での処理を行う間は、振動が発生する動作を伴う前記機構のうちの予め指定された機構の動作を禁止する信号を前記第四の制御装置から前記第一の制御装置へ送信し、
半導体ウェハを処理する前記処理機構での処理が終了した際に、前記第二、第三の制御装置が、半導体ウェハを処理する前記処理機構での処理の終了を前記第四の制御装置へ送信し、
動作を禁止されていた振動が発生する動作を伴う前記機構の動作を許可する信号を該第四の制御装置が該第一の制御装置へ送信すること、
を特徴とする半導体処理装置。
【請求項10】
請求項1記載の半導体処理装置において、
半導体ウェハを搬送する前記搬送装置は搬送ロボットを備えることを特徴とする半導体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウェハの荷電粒子線を用いた観察や、加工(スパッタリング等)、光を用いたパターン露光を行う半導体処理装置に係り、特に従来装置に比してスループットが高い半導体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細なパターン計測や欠陥の検査などを行うために、荷電粒子線装置が用いられている。荷電粒子線装置では、パターン計測や検査の高精度化と同時に、1時間あたりに処理可能なウェハ枚数(以下、スループット)の向上が強く求められている。
【0003】
荷電粒子線装置は高真空環境下で試料の観察を行う必要があるため、装置外の大気圧環境と高真空環境の試料室(以下、SC)を接続するためのロードロック室(以下、LC)が必要である。スループット向上のため、SC内で荷電粒子線を試料へ照射する処理と並行して、次に処理する試料をSCに搬入するために、LCへ大気圧環境にあるウェハを搬入し、真空排気を行う動作が行われる。
【0004】
スループットを上げるためには、装置内で計測や検査などを行わない時間(待ち時間)を最小化することが有効である。一方、近年の半導体デバイスの微細化に対応するため、パターン計測や検査に対する分解能や再現性への要求は非常に高くなっており、装置内の可動部分の動作に伴って発生した振動が電子光学系に伝わると、その振動が発生している間や振動が収束するまでの間は、走査型電子顕微鏡(SEM)の電子ビームもしくは試料の振動により電子ビームと試料間に相対的な変位が発生し、画像へ振動的なノイズが重畳することで、パターン計測や検査に要求される仕様を満たせない懸念がある。
【0005】
パターン計測や検査などの精度と、スループットを両立する方法として、特許文献1では、機械振動・外乱磁場の発生が好ましくないタイミングにおいてロボット動作やバルブ動作などの搬送動作を停止させることで、露光動作とウェハ搬送を並行に行いスループットを向上させた露光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された技術によれば、パターン計測や検査に求められる性能を満たしつつ、電子光学系の動作とウェハ搬送動作を並行に行うことが可能になるが、例えばLCの真空排気用の配管開閉弁などの、振動が発生する機構の動作中はSEMを稼働させることができずに待ち時間が発生し、スループットが低下するという課題がある。
【0008】
この待ち時間は、例えばLCの圧力を制御するための真空ポンプへ繋がる配管の開閉弁や、LCへの試料の搬入出口を開閉するシャッター(ゲートバルブ)の動作に伴う振動により発生しており、その待ち時間の削減がスループット向上のために求められている。
【0009】
本発明の目的は、半導体ウェハの処理中に発生する振動回数を減らし、待ち時間を削減することが可能な半導体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0011】
半導体ウェハを処理する処理機構を内部に備えた試料室と、前記試料室に半導体ウェハを搬入する、複数のロードロック室と、前記試料室と前記複数のロードロック室のそれぞれとの間で半導体ウェハの交換を行う試料交換機構と、を備えた半導体処理装置であって、前記複数のロードロック室のうちのいずれかが前記試料室との間で半導体ウェハの交換を行っているタイミングで、前記複数のロードロック室のうちの半導体ウェハの交換を行っていないロードロック室での、振動が発生する動作を伴う機構の動作が行われるように、前記複数のロードロック室の機構の動作を制御する制御機構を備えた半導体処理装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、半導体ウェハの処理中に発生する振動回数を減らし、待ち時間を削減することが可能な半導体処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1に係る荷電粒子線装置の構成図である。
【
図3】従来の荷電粒子線装置におけるウェハ搬送の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図3の方法を用いて従来の荷電粒子線装置を制御した場合の、装置動作を表すタイミングチャートである。
【
図5】実施形態1に係る荷電粒子線装置のウェハ搬送の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図5の方法を用いて実施形態1に係る荷電粒子線装置を制御した場合の装置動作を表すタイミングチャートである。
【
図7】
図5の方法を用いて実施形態1に係る荷電粒子線装置を制御した時、LCの真空排気に必要な時間が長い場合の装置動作を表すタイミングチャートである。
【
図8】
図5の方法を用いて実施形態1に係る荷電粒子線装置を制御した時、ウェハ処理に必要な時間が長い場合の装置動作を表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0015】
図1および
図5~8を用いて本発明を適用した半導体処理装置の一例として荷電粒子線装置での実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本開示の実施形態に係る半導体計測装置を表す構成図である。
【0017】
本開示に係る荷電粒子線装置の一実施形態である半導体計測装置100は、ウェハに対して荷電粒子線を照射し、ウェハ上に形成されたパターンの計測を行う装置である。半導体計測装置100は、試料室1(以下、SC1)とロードロック室A:LC 2A(以下、LC-A)、ロードロック室B:LC 2B(以下、LC-B)、ミニエン3およびコンピューターシステム4を備える。
【0018】
SC1はウェハを搬送するロボット11、SC内部でウェハの位置決めを行うステージ装置12、ウェハへ荷電粒子線を照射する電子銃を備えたカラム13を備える。
【0019】
LC-A、LC-BはそれぞれLCとSC間の開口部を開閉するゲートバルブ21A、22BやLCとミニエン間の開口部を開閉するゲートバルブ22A、22B、粗引きポンプへ繋がる配管を開閉するバルブ23A、23B、ターボ分子ポンプ(以下、TMPと呼称する)へ繋がる配管を開閉するバルブ24A、24Bを備える。
【0020】
コンピューターシステム4は装置全体の動作シーケンスを制御する制御部41や、41の指令を受け取り荷電粒子線の照射を制御する電子光学系制御部43や、ウェハの搬送に関連するロボット11、31やステージ12を制御する搬送装置制御部44、LC-A、LC-Bの圧力を制御するバルブ装置制御部45を備える。
図1ではロボット11は1台であるが、2台以上のロボットを用いてもよい。
【0021】
ミニエン3はミニエン内でウェハを搬送するロボット31を備える。
【0022】
図5は、本発明を適用した半導体計測装置100のウェハ搬送の流れの一例を示すフローチャートである。
図5のフローチャートに基づく動作は以下の通りである。
【0023】
ステップ600:LC-A、LC-B内部の圧力が大気圧付近であることを確認し、ゲートバルブ22Aおよび22Bを開き、LC-AおよびLC-Bへロボット31を用いて第一のウェハおよび第二のウェハを搬入する。
【0024】
ステップ601:ステップ600が終了後、ゲートバルブ22Aを閉じてLC 2Aの真空排気を行う。真空排気を行う際には、粗引きポンプへ繋がる配管を開閉するバルブ23A、TMPへ繋がる配管を開閉するバルブ24Aが適切なタイミングで動作する。
【0025】
ステップ604:ゲートバルブ22Bを閉じてLC-Bの真空排気を行う。この時、バルブ23B、24Bが適切なタイミングで動作する。ここで、適切なタイミングの設定方法として、例えば、LC-B内部の圧力を計測し予め設定された所定の圧力以下になったタイミングや、予め設定した所定の時間が経過したタイミングでバルブ動作を行う方法が有効である。ここで、設定する圧力もしくは時間は、LC-B内部の気体の流れに伴う異物飛散などの影響がない範囲で設定することが望ましい。
【0026】
ステップ602:LC-Aの真空排気が終了したら、ゲートバルブ21Aを開き、SC1のステージ装置12上へ、ロボット11を用いてLC-A内の第一のウェハを搬送する。
【0027】
ステップ603:ステップ602が終了したら、
図3のステップ203と同様に第一のウェハに対してウェハ処理が行われる。
【0028】
このウェハ処理中は、ステップ605、606,607で動作するLC-Aの所定のバルブ動作(例えば、ゲートバルブ22Aを閉じる動作、および/またはバルブ23Aを開く動作)を禁止する信号を、装置シーケンス制御部41からバルブ装置制御部45へ送信する。
【0029】
動作を禁止する所定のバルブは、例えばウェハ上の測定点などの処理内容を定義した測定レシピファイル内に情報として記憶させておき、前記測定レシピファイルを読み込むタイミングでコンピューターシステム4に格納する方法が有効である。その他の方法として、装置利用者が装置グラフィックインタフェース(GUI)上でウェハ処理中に動作を禁止するバルブを選択し、その情報をコンピューターシステム4に読み込む方法も有効である。
【0030】
ステップ605:ステップ602が終了したら、ゲートバルブ21Aを閉じ、ステップ603と並行してLCへ所定の気体、例えば窒素を給気することでLCの圧力を大気圧付近まで上昇させる。
【0031】
ステップ608:ステップ603のウェハ処理とステップ604が両方終了したら、搬送装置制御部44は装置シーケンス制御部41へ、ステップ603で禁止していたLC-Aのバルブ動作を許可する信号を送信する。
【0032】
ステップ606:LC-A内の圧力が大気圧付近まで上昇したら、ゲートバルブ22Aを開き、ロボット31を用いて第三のウェハをLC-A内へ搬送する。この時、バルブ装置制御部45からゲートバルブ22Aの動作が禁止されている場合、ステップ608で動作許可信号が出るまで動作を待つ。
【0033】
ステップ607:ゲートバルブ22Aを閉じ、LC-Aの真空排気を行う。LC-Aの真空排気を行う際は、バルブ23A、24Aを適切なタイミングで動作させる。ここで、適切なタイミングの設定方法として、例えばステップ604に記載されているものと同様の方法が有効である。この時、バルブ装置制御部45からゲートバルブ22Aもしくはバルブ23A、24Aの動作が禁止されている場合、ステップ608で動作許可信号が出るまで該当するバルブの動作を待つ。
【0034】
ステップ609:ゲートバルブ21Bを開き、SC1のステージ装置12上にある第一のウェハとLC-B内の第二のウェハを、ロボット11を用いて交換する。
【0035】
ステップ610:ステップ603と同様に第二のウェハに対してウェハ処理を行う。この時、ステップ612、613、614で動作するLC-Bの所定のバルブ(例えば、ゲートバルブ22Bを閉じる動作およびバルブ23Bを開く動作)を禁止する信号を、装置シーケンス制御部41からバルブ装置制御部45へ送信する。
【0036】
ステップ612:ステップ609が終了したらゲートバルブ21Bを閉じ、ステップ610と並行してLC-Bの圧力を大気圧付近まで上昇させる。
【0037】
ステップ611:ステップ608と同様に、ステップ610のウェハ処理およびステップ607が終了したら、搬送装置制御部43は装置シーケンス制御部41へ、ステップ610で禁止していたLC-Bの所定のバルブ動作を許可する信号を送信する。
【0038】
ステップ613:LC-Bの圧力が大気圧付近まで上昇したら、ゲートバルブ22Bを開き、LC-B内の第一のウェハ(計測済みウェハ)を装置外部へロボット31を用いて搬出すると同時に、第四のウェハ(未計測ウェハ)をLC-B内部へロボット31を用いて搬入する。この時、ゲートバルブ22Bの動作が禁止されている場合、ステップ611で動作許可信号が出るまで該当するバルブの動作を待つ。
【0039】
ステップ614:ゲートバルブ22Bを閉じ、LC-Bの真空排気を行う。
【0040】
ステップ615:ゲートバルブ21Aを開き、SC1のステージ装置12上にある第二のウェハとLC-A内の第三のウェハを、ロボット11を用いて交換する。
【0041】
ステップ616:ステップ603と同様の処理を行う。
【0042】
ステップ617:ステップ605と同様にLCの圧力を大気圧付近まで上昇させる。
【0043】
ステップ618:LC-Aの圧力が大気圧付近まで上昇したら、ゲートバルブ22Aを開き、LC-A内の第二のウェハ(計測済みウェハ)を装置外部へロボット31を用いて搬出すると同時に、第五のウェハ(未計測ウェハ)をLC-A内部へロボット31を用いて搬入する。この時、ゲートバルブ22Aの動作が禁止されている場合、ステップ620で動作許可信号が出るまで該当するバルブの動作を待つ。
【0044】
ステップ619:ステップ607と同様にLC-Aの真空排気を行う。
【0045】
ステップ620:ステップ608と同様の処理を行う。
【0046】
ステップ621:ステップ609と同様の処理を行う。
【0047】
ステップ622:ステップ610と同様の処理を行う。
【0048】
以降は、ステップ622およびステップ619の動作が両方終了次第ステップ611へ戻ることで、次々とウェハの処理を行うことが可能である。
【0049】
図6は、半導体計測装置100のSC1およびLC 2A、LC 2Bの装置動作を表すタイミングチャートの一例である。このタイミングチャートはウェハ2枚を処理する動作を示している。横軸は時間を表しており、SCおよびLC-A、LC―Bは
図1のSC1およびLC 2A、LC 2Bをそれぞれ指す。3つの時間軸はそれぞれ同期して表示されている。
【0050】
このタイミングチャートは、ステップ603、ステップ610およびステップ616において、ウェハ処理中にゲートバルブ22A、22Bを閉じる動作およびバルブ23A、23Bを開く動作を禁止した場合の例である。
【0051】
LC 2Aの真空排気、給気、ミニエンとのウェハ交換に必要な時間700、701、702はそれぞれステップ619、617、618を行うのにかかる時間を表す。700は、バルブ23Aおよび24Aの動作時間VA3、VA4を含む。702は、ゲートバルブ22Aの開閉動作時間VA1、VA2を含む。
【0052】
LC 2Bの給気、ミニエンとのウェハ交換、真空排気に必要な時間703、704、705はそれぞれステップ612、613、614を行うのにかかる時間を表す。705は、バルブ23Bおよび24Bの動作時間VB3、VB4を含む。704は、ゲートバルブ22Bの開閉動作時間VB1、VB2を含む。
【0053】
LC 2Bとウェハ交換を行う時間706、ウェハ処理時間707、709、LC 2Aとウェハ交換を行う時間708はそれぞれステップ621、622、616、615にかかる時間を表す。
【0054】
ウェハ処理と並行して動作するバルブの動作時間VA4、VB1、VB4、VA1に伴い、それぞれウェハ処理に待ち時間W71、W72、W73、W74が発生している。
【0055】
後述する
図4と比較すると、ウェハ処理中にバルブ装置が動作する回数が減少し、待ち時間を削減できているため、スループットが向上していることが分かる。
【0056】
図7は、本発明を適用した半導体計測装置100において、LCの真空排気に多くの時間が必要な場合のタイミングチャートの一例を表す。
【0057】
例えば、装置周辺に備えられる真空ポンプの性能が低い場合や、処理するウェハが多くのアウトガスを発生させる場合、真空排気に多くの時間が必要になる。
【0058】
次のウェハ処理は前のウェハ処理と次に処理するウェハの入っているLCの真空排気の両方が終わっていなければ開始できないため、真空排気の終了がウェハ処理の終了より遅くなると、スループットが低下する。
【0059】
この場合、ウェハ処理中に動作を禁止するバルブの動作を、例えばバルブ24A、24Bの動作とすることでスループット低下を回避可能である。
図7はバルブ24A、24Bの動作をウェハ交換中に行わないこととした場合のタイミングチャートである。
【0060】
ウェハ処理時間707および709において、VB1、VB2、VB3、VA1、VA2、VA3のバルブ動作に伴い待ち時間W75、W76、W77、W78、W79、W710がそれぞれ発生しているが、ウェハ処理時間707および709の後にLC-AおよびLC-Bの真空排気終了を待つ時間が発生していないため、真空排気の遅れによるスループット低下を回避できている。また、後述する
図4の従来の荷電粒子線装置のタイミングチャートと比較すると、ウェハ処理中の待ち時間発生回数が削減でき、スループットが向上していることが分かる。
【0061】
図8は、半導体計測装置100において、ウェハ処理に必要な時間が短い場合のタイミングチャートを表す。
【0062】
例えば、半導体計測装置においてパターン計測が必要な箇所が少ない場合、ウェハ処理に必要な時間は多くの箇所を計測する場合と比較して短くなる。この場合、
図7で説明した場合と同様に、次にSCへ搬入されるウェハが入っているLCの真空排気が遅くなるとスループットが低下する。
【0063】
ウェハ処理時間が短い場合においても、例えば
図6と同様のバルブの動作をウェハ処理中に禁止することで、ウェハ処理中の待ち時間発生回数を従来より削減でき、スループットが向上する。
【0064】
LCを複数設けた本発明の効果として、ウェハ処理時間が短い場合においても、次にSCへ搬入するウェハが入っているLCの真空排気を終了させることが可能であるため、スループットを向上させることができる。
【0065】
図5のステップ603や610などで、SCでのウェハ処理中に特定バルブの動作を禁止する方法について述べたが、ここまで説明したように、ウェハの種類によってLCの真空排気に必要な時間が変化したり、ウェハ処理に必要な時間が変化する場合がある。
【0066】
そうした場合でもスループットを最大化する方法として、LCの真空排気およびウェハ処理に必要な時間からバルブ装置の動作タイミングを決定する方法について述べる。
【0067】
・LCの給気に必要な時間Ta、ミニエンとLC間でウェハを入れ替える動作に必要な時間Tm、LCとSCの間でウェハを入れ替えるのに必要な時間Tcをパラメータとして与える。これらの時間はウェハの種類によって大きく変化しないため、例えば事前に測定して決定し、パラメータとしてコンピューターシステム4に格納する。また、実際の装置利用時に前記パラメータを随時測定し、それらの平均時間をパラメータとして与える方法も有効である。
【0068】
・LC 2AからSC1へウェハを搬入する。
【0069】
・SC1へ搬入されたウェハのウェハ処理に必要な時間Twをパラメータとして与える。例えば、ウェハ上のパターンを1箇所測定するのに必要な時間と、その箇所へステージ装置が移動するのに必要な時間の合計(MAM時間)と、パターンを何か所計測するかの情報から、MAM時間×計測箇所=Twとして予測してもよい。また、ウェハ上の測定点などの処理内容を定義した測定レシピファイルを作成する際に、ウェハ上の測定点数とステージ装置12の移動距離からMAM時間を予測してコンピューターシステム4内でTwを計算して予測する方法も有効である。
【0070】
・LC 2Aに次に搬入されるウェハの真空排気時間Teをパラメータとして与える。例えば、バルブ23Aを開いてから24Aを開くまでの時間Te1とバルブ24Aを開いてから所定の圧力まで低下するまでの時間Te2を事前の実験から計測して、Te=Te1+Te2として与えてもよい。ここで、前記所定の圧力の設定方法として、例えばLC 2A内部とSC1内部の圧力を計測し、その差が所定の値(例えば0.0001Pa)以下になる圧力に設定する方法が有効である。
【0071】
・ここまでに与えられた時間パラメータから、LCとSC間のウェハ交換中に動作させたいバルブ、すなわちウェハ処理中に動作を禁止するバルブを決定する。以下、その方法の一例について説明する。
【0072】
・Ta+Tm+Te>2Tw+Tcの場合:ウェハ処理より真空排気の終了が遅いため、ウェハ処理中に動作を禁止するバルブを設定せずに、LCの真空排気を優先して行う。
【0073】
・Te>Tc+Twの場合:バルブ23Aを開く動作をウェハ処理中に禁止すると、ウェハ処理より真空排気の終了が遅くなるため、バルブ24Aを開く動作をウェハ処理中に禁止する。
【0074】
・Tm+Te>Tc+Twの場合:ウェハ処理中にゲートバルブ22Aを開く動作を禁止すると、真空排気の終了がウェハ処理より遅くなるため、それ以外のバルブ動作を禁止する。例えば、ゲートバルブ22Aを閉じる動作およびバルブ23Aを開く動作を禁止する。
【0075】
LC 2BからSC1へウェハを搬入し、ウェハ処理を行う場合も上記の方法で適切なバルブ動作タイミングを選択可能となる。
【0076】
LCの真空排気に必要な時間Teや、ウェハ処理に必要な時間Twは、装置稼働の実データを基に逐次修正されてもよいし、ウェハの種類に応じて事前にパラメータとして与えてもよい。
【0077】
上記のように、ウェハ処理の終了より真空排気の終了が遅くならないようにバルブ動作タイミングを設定することで、バルブ動作に伴う待ち時間を最大限減らしながらスループットを向上させることが可能である。
【0078】
上記のバルブ装置の動作タイミングを決定する処理は、LC 2AもしくはLC 2BとSC1間でウェハを入れ替える処理を行う際に、装置シーケンス制御部41で行われることが有効である。また、LC 2AもしくはLC 2Bとミニエン3間でウェハを入れ替える処理を行う際に、LCへ搬送されるウェハの種類に基づいて上記処理を行うことも可能である。
【0079】
上記処理を自動で行うことで、スループットをウェハの種類に応じて最大化可能であるが、装置利用者が上記処理を実行するかを装置GUI上で選択可能にしてもよい。
【0080】
次に本発明の実施例との効果上の差異を比較できるよう、本発明を適用していない場合(以下、従来と称する)での荷電粒子線装置での動作を
図2~4を用いて半導体計測装置を比較例として説明する。
【0081】
図2は、従来の半導体計測装置を表す構成図である。従来の半導体計測装置800は、SC81と、LC82、ミニエン83、およびコンピューターシステム84を備える。
【0082】
SC81は、ウェハを搬送するロボット811、試料室内部でウェハの位置決めを行うステージ装置812、ウェハへ荷電粒子線を照射するカラム813を備える。
【0083】
LC82は、SC81との開口部を開閉するゲートバルブ821、ミニエンとの開口部を開閉するゲートバルブ822、粗引きポンプへの配管を開閉するバルブ823、ターボ分子ポンプ(TMP)への配管を開閉するバルブ824を備える。
【0084】
コンピューターシステム84は装置全体の動作シーケンスを制御する装置制御シーケンス制御部841と、841の指令を受け取り荷電粒子線の照射を制御する電子光学系制御部843と、ウェハの搬送に関連するロボット811、831とステージ装置812を制御する搬送装置制御部844、LC82の圧力を制御するバルブ装置制御部845を備える。
【0085】
ミニエン83内部にはウェハを搬送するロボット831を備える。
【0086】
図3は、従来の半導体計測装置800のウェハ搬送の流れの一例を示すフローチャートである。
図3のフローチャートに基づく動作は以下のとおりである。
【0087】
ステップ200:ゲートバルブ822を開き、ミニエン83からLC82内へ第一のウェハをロボット831を用いて搬送する。
【0088】
ステップ201:ゲートバルブ822を閉じ、LC82へ搬送された第一のウェハを真空環境のSC81へ搬送するためにLC82の真空排気を行う。真空排気を行う際には、粗引きポンプへ繋がる配管を開閉するバルブ823、TMPへ繋がる配管を開閉するバルブ824がLC82内部の圧力に応じて適切なタイミングで動作する。
【0089】
ここで、適切なタイミングの設定方法として、例えば、LC82内部の圧力を計測し予め設定された所定の圧力以下になったタイミングや、予め設定した所定の時間が経過したタイミングでバルブ動作を行う方法が有効である。ここで、設定する圧力もしくは時間は、LC82内部の気体の流れに伴う異物飛散などの影響がない範囲で設定することが望ましい。
【0090】
ステップ202:SC81との開口部を開閉するゲートバルブ821を開くことのできる値までLC82の圧力が低下したら、ゲートバルブ821を開き、ロボット811を用いて第一のウェハをSC81内のステージ装置812上へ搬送する。
【0091】
ここで、ゲートバルブ821を開くことのできるLC82の圧力の設定方法として、例えばLC82内部とSC81内部の圧力を計測し、その差が所定の値(例えば0.0001Pa)以下になる圧力に設定する方法が有効である。この際、ゲートバルブ821を開いた際にSC81内部の圧力が大きく上昇しないような範囲で設定することが望ましい。
【0092】
ステップ203:ステップ202が終了したら、ステージ装置812を動作させて第一のウェハを位置決めしながら第一のウェハ上のパターン計測が逐次行われる。以下、この一連の動作をウェハ処理と表現する。
【0093】
ステップ204:ステップ202が終了したら、ゲートバルブ821を閉じ、ステップ203と並行してLC82へ所定の気体、例えば窒素を給気することでLC82の圧力を大気圧付近まで上昇させる。
【0094】
ステップ205:LC82の圧力が大気圧付近まで上昇したら、ゲートバルブ822を開き、ミニエン83からLC82内へ第二のウェハをロボット831を用いて搬送する。
【0095】
ステップ206:ステップ201と同様に、LC82の真空排気を行う。
【0096】
ステップ207:ステップ203で開始したウェハ処理と、ステップ206で行ったLC82の真空排気が両方終了したら、ゲートバルブ821を開き、LC82内の第二のウェハ(未計測ウェハ)とSC81内の第一のウェハ(計測済みウェハ)をロボット811を用いて交換する。
【0097】
ステップ208:ステップ203と同様に、第二のウェハに対してウェハ処理を行う。
【0098】
ステップ209:ステップ204と同様にLC82へ給気を行う。
【0099】
ステップ210:LC82の圧力が大気圧付近まで上昇したらゲートバルブ822を開き、LC82内の第二のウェハ(計測済みウェハ)を装置外部へロボット831を用いて搬出すると同時に、第三のウェハ(未計測ウェハ)をLC82内部へロボット831を用いて搬入する。
【0100】
ステップ211:ステップ201と同様に、LC82の真空排気を行う。
【0101】
この後、ステップ208とステップ211の動作が両方終了次第ステップ207へ戻ることで、次々とウェハ処理を行うことが可能である。
【0102】
図4は、
図3の方法を用いて従来の荷電粒子線装置を制御した場合の、従来の荷電粒子線装置のSC81内およびLC82の装置動作を表すタイミングチャートの一例である。
【0103】
このタイミングチャートはウェハ2枚を処理する動作を示している。横軸は時間を示しており、上側がLC82での装置動作、下側がSC81での装置動作を表しており、双方の時間軸を同期して表示している。
【0104】
LCとウェハ交換を行う時間500、ウェハ処理を行う時間501はそれぞれ
図2のステップ207およびステップ208の動作を行うのにかかる時間を表す。
【0105】
LC82の給気にかかる時間400、LC82とミニエン83間でのウェハ交換を行うのにかかる時間401、LC82の真空排気を行うのにかかる時間402はそれぞれ
図2のステップ209、ステップ210、ステップ211にかかる時間である。401にはゲートバルブ822を開くのにかかる時間V1と閉じるのにかかる時間V2が含まれており、このゲートバルブ822の開閉動作に伴う振動により、ウェハ処理に待ち時間W1とW2が発生している。また、402には、真空ポンプへ繋がる配管を開閉するバルブ823および824の動作時間V3とV4が含まれている。これらのバルブの動作に伴う振動により、同様にウェハ処理に待ち時間W3、W4が発生している。
【0106】
図4に示す例では、待ち時間W1、W2、W3、W4が1枚のウェハ処理をしている間に発生しており、スループットが低下する要因となっている。
【符号の説明】
【0107】
1 処理室
11 ウェハ搬送ロボット
12 ステージ装置
13 カラム
2A、2B ロードロック室
21A、21B LCとSC間の開口部を開閉するゲートバルブ
22A、22B LCとミニエン間の開口部を開閉するゲートバルブ
23A、23B 粗引きポンプへ繋がる配管を開閉するバルブ
24A、24B ターボ分子ポンプへ繋がる配管を開閉するバルブ
3 ミニエン
31 ウェハ搬送ロボット
4 コンピューターシステム
41 装置シーケンス制御部
43 電子光学系制御部
44 搬送装置制御部
45 バルブ装置制御部
100 半導体計測装置
800 従来の半導体計測装置