(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174366
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241210BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G15/16
G03G21/00 312
G03G21/00 370
G03G21/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092163
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】星 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一彦
(72)【発明者】
【氏名】多和田 高明
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕文
【テーマコード(参考)】
2H134
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H134GA01
2H134GA06
2H134GB02
2H134GB05
2H134GB07
2H134GB08
2H134HD17
2H134HD18
2H134HF14
2H134HF16
2H134JB01
2H134KA16
2H134KA40
2H134KB02
2H134KB13
2H134KB14
2H134KB20
2H134KG04
2H134KG07
2H134KG08
2H134KH16
2H200FA12
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA47
2H200GB12
2H200HB12
2H200JA02
2H200JA29
2H200JC03
2H200JC12
2H200JC19
2H200JC20
2H200LB03
2H200LB18
2H200LB20
2H200LB39
2H200LB40
2H200NA01
2H200PA02
2H200PA10
2H200PA17
2H200PB18
2H200PB39
2H270KA38
2H270LA14
2H270LD03
2H270MA24
2H270MA28
2H270MA31
2H270MA40
2H270MA41
2H270MB16
2H270RA11
2H270RA12
2H270RA13
2H270RA15
2H270RC10
2H270RC14
2H270RC17
2H270RC18
2H270ZC03
2H270ZC06
(57)【要約】
【課題】裏汚れの発生およびクリーニング不良の発生を抑制することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、像担持体と、像担持体に接触して転写ニップを形成する転写部材と、像担持体上のトナー像を記録媒体に転写するための転写バイアスを転写ニップに印加するバイアス印加手段と、像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材とを備えている。画像形成装置は、転写ニップに少なくとも転写バイアスの極性とは逆極性の逆極性バイアスなどのプラスバイアスを印加し、転写部材に付着した付着物を像担持体へ移動させて転写部材をクリーニングするクリーニング動作を有する。そして、記録媒体に転写しないトナー像パターンなどの掻き取りパターンKpを、所定の間隔を開けて複数形成し、複数のトナー像パターンを、クリーニング動作における逆極性バイアス印加時に転写ニップを通過させる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体に接触して転写ニップを形成する転写部材と、
前記像担持体上のトナー像を記録媒体に転写するための転写バイアスを前記転写ニップに印加するバイアス印加手段と、
前記像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材とを備えた画像形成装置において、
前記転写ニップに少なくとも前記転写バイアスの極性とは逆極性の逆極性バイアスを印加し、前記転写部材に付着した付着物を前記像担持体へ移動させて前記転写部材をクリーニングするクリーニング動作を有し、
前記記録媒体に転写しないトナー像パターンを、所定の間隔を開けて複数形成し、
前記トナー像パターンの前記像担持体の表面移動方向の長さは、前記転写部材の周長よりも短く、前記トナー像パターンの間隔は、前記転写部材の周長以上であり、
複数の前記トナー像パターンを、前記クリーニング動作における前記逆極性バイアス印加時に前記転写ニップを通過させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記像担持体の主走査方向の両端に配置され、前記トナー像のトナー付着量を検知する付着量検知手段を有し、
前記トナー像パターンは、主走査方向一端の前記付着量検知手段から主走査方向他端の前記付着量検知手段までの主走査方向の長さ以上の帯状パターンであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記クリーニング動作は、前記転写ニップに交番バイアスを印加して、前記転写部材に付着した前記付着物を前記像担持体へ移動させるものであり、
前記交番バイアス印加時の逆極性バイアス印加中に一つの掻き取りパターンが前記転写ニップを通過することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、像担持体と、像担持体に接触して転写ニップを形成する転写部材と、転写ニップに像担持体上のトナー像を記録媒体に転写するための転写バイアスを印加するバイアス印加手段と、像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材とを備えた画像形成装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記画像形成装置として、像担持体たる中間転写ベルトのフィルミングを除去するためのトナー像パターンを形成し、このトナー像パターンを、転写ニップを通過させて中間転写ベルトの移動によりクリーニング部材の像担持体との当接箇所に入力するものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記録媒体の裏面が汚れる裏汚れの発生や、クリーニング不良が発生するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、像担持体と、前記像担持体に接触して転写ニップを形成する転写部材と、前記像担持体上のトナー像を記録媒体に転写するための転写バイアスを前記転写ニップに印加するバイアス印加手段と、前記像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材とを備えた画像形成装置において、前記転写ニップに少なくとも前記転写バイアスの極性とは逆極性の逆極性バイアスを印加し、前記転写部材に付着した付着物を前記像担持体へ移動させて前記転写部材をクリーニングするクリーニング動作を有し、前記記録媒体に転写しないトナー像パターンを、所定の間隔を開けて複数形成し、前記トナー像パターンの前記像担持体の表面移動方向の長さは、前記転写部材の周長よりも短く、前記トナー像パターンの間隔は、前記転写部材の周長以上であり、複数の前記トナー像パターンを、前記クリーニング動作における前記逆極性バイアス印加時に前記転写ニップを通過させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、裏汚れの発生およびクリーニング不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置であるタンデム型カラー複写機(以下、単に複写機という)の概略構成図。
【
図2】中間転写ベルト上の階調パターンを説明する模式図。
【
図3】印刷動作と平行して画像調整を行う場合の中間転写ベルトに形成される画像調整パターンの一例を示す模式図。
【
図4】中間転写ベルト上の掻き取りパターンの形成位置について説明する図。
【
図5】上記掻き取りパターンの形成のフローチャートの一例を示す図。
【
図6】クリーニング動作のタイミングチャートの一例を示す図。
【
図7】本実施形態の掻き取りパターンの形成について説明する図。
【
図8】検証実験における条件(1)~(3)の掻き取りパターンについて説明する図。
【
図9】検証実験における条件(4)~(6)の掻き取りパターンについて説明する図。
【
図10】クリーニング動作中における複数の掻き取りパターンの二次転写ニップの通過について説明するタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものである。以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。また、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置であるタンデム型カラー複写機(以下、単に複写機という)の概略構成図である。
図1において、画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機1(以下、単に複写機という)は、原稿を原稿読込部に搬送する原稿搬送部3、原稿の画像情報を読み込む原稿読込部4を備えている。また、複写機は、出力画像が積載される排紙トレイ5、記録媒体たる用紙Pが収容される給紙部7を備えている。
【0010】
また、複写機1は、用紙Pの搬送タイミングを調整するレジストローラ9(タイミングローラ)、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像を形成する作像部10を備えている。作像部10は、例えば、トナー像が形成される潜像担持体たる感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK、書き込み部(露光部)6を備えている。また、作像部10は、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの周囲にそれぞれ配置した帯電装置12、現像装置13およびクリーニング部15等を備えている。
【0011】
帯電装置12は、感光体ドラムの表面を一様帯電するものであり、書き込み部(露光部)6は、入力画像情報に基づいたレーザー光を発し、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に静電潜像を書き込むものである。現像装置13は、感光体ドラム上に書き込まれた静電潜像を現像するものである。クリーニング部15は、感光体ドラムに残存する未転写トナーを除去するものである。
【0012】
また、複写機1は、複数色のトナー像が重ねて転写される像担持体としての中間転写ベルト17、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成されたトナー像を中間転写ベルト上に重ねて転写する一次転写バイアスローラ14を備えている。また、複写機1は、中間転写ベルト17上のカラートナー像を用紙P上に転写するための転写部材としての二次転写ローラ18を備えている。また、複写機1は、用紙P上の未定着画像を定着する定着装置20、現像装置13に供給するための各色(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)のトナーが収容されたトナー容器28を備えている。また、複写機1は、中間転写ベルト17の表面に付着したトナー(未転写トナー)を除去するベルトクリーニング装置30を備えている。さらに、複写機1は、ベルトクリーニング装置30などにより除去された未転写トナーが廃トナーとして回収される廃トナー回収容器80を備えている。さらに、複写機1は、例えばRAMやROMを備えたCPU等を含む制御部90(プロセッサ)を備えている。
【0013】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿は、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス上に載置された原稿の画像情報が光学的に読み取られる。
【0014】
詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス上の原稿の画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させ、原稿にて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿のカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0015】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部6に送信される。そして、書込み部6からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光Lが、それぞれ、対応する感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に向けて発せられる。
【0016】
一方、4つの感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKは、それぞれ、
図1の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、帯電装置12との対向部で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
【0017】
書込み部6において、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0018】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目の感光体ドラム11Yの表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11Yの回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電装置12にて帯電された後の感光体ドラム11Yの表面には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0019】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から2番目の感光体ドラム11Mの表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、紙面左から3番目の感光体ドラム11Cの表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目の感光体ドラム11BKの表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0020】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、現像装置13との対向位置に達する。そして、各現像装置13から感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の潜像が現像される(現像工程である。)。
【0021】
現像工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、像担持体としての中間転写ベルト17との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように一次転写バイアスローラ14が設置されている。そして、一次転写バイアスローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて一次転写される(一次転写工程である。)。
【0022】
転写工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に残存する未転写トナーが除去され回収される(クリーニング工程である。)。なお、クリーニング部15によって除去され回収された未転写トナーは、搬送経路を介して、廃トナーとして廃トナー回収容器80に搬送され回収される。その後、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、除電部を通過して、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKにおける一連の作像プロセスが終了する。
【0023】
他方、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の各色のトナーが重ねて一次転写されたカラーのトナー像を担持した中間転写ベルト17(像担持体)は、
図1の反時計方向に走行して、二次転写ローラ18との対向位置に達する。二次転写ローラ18は、中間転写ベルト17当接して、転写ニップたる二次転写ニップを形成している。この二次転写ニップにおいて、用紙P上に中間転写ベルト17上に担持されたカラーのトナー像が二次転写される(二次転写工程である。)。
【0024】
二次転写ローラ18に中間転写ベルト17を介して対向する対向ローラ18Aに二次転写バイアスが印加され、二次転写ローラ18は、電気的に接地されている。中間転写ベルト17のカラーのトナー像を用紙Pに二次転写するときは、トナーの正規帯電極性であるマイナス極性の転写バイアスを対向ローラ18Aに印加し、中間転写ベルト上のマイナス極性の正規帯電トナーを用紙Pの斥力転写する。
【0025】
二次転写工程後の中間転写ベルト17の表面は、ベルトクリーニング装置30の位置に達する。ベルトクリーニング装置30は、クリーニング部材たるクリーニングブレード31を有している。このクリーニングブレード31により中間転写ベルト17上に付着したトナー(未転写トナー)が除去される。クリーニングブレードにより除去されたトナーは、搬送経路を介して、廃トナーとして廃トナー回収容器80に搬送され回収される。
【0026】
ここで、中間転写ベルト17と二次転写ローラ18との間(二次転写ニップである。)に搬送される用紙Pは、給紙部7からレジストローラ9等を経由して搬送されるものである。
詳しくは、用紙Pを収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送された用紙Pが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ9に導かれる。レジストローラ9に達した用紙Pは、タイミングを合わせて、二次転写ニップに向けて搬送される。
【0027】
二次転写工程でフルカラー画像が転写された用紙Pは、その後に定着装置20に導かれる。定着装置20では、定着ローラと加圧ローラとのニップにて、カラー画像が用紙P上に定着される。そして、定着工程後の用紙Pは、排紙ローラによって装置本体外に出力画像として排出されて、排紙トレイ5上にスタックされて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0028】
本複写機においては、環境変動や経時における画像品質の安定化を図るために、所定のタイミングでプロセスコントロールと呼ばれる制御を実施する。
図2は、中間転写ベルト上の階調パターンを説明する模式図である。
【0029】
階調パターンは、画像濃度が互いに異なる複数のトナーパッチからなり、これら階調パターンは、中間転写ベルト17の光学センサとの対向位置(幅方向中央と、両端)に形成される。
図2に示す例では、上からブラック、シアン、マゼンタ、イエローの階調パターンが形成されている。
【0030】
光学センサユニット40は、中間転写ベルト17のベルト幅方向に所定の間隔をおいて並ぶ複数の付着量検知手段としての光学センサ40R,40C,40Fを有している。それぞれの光学センサは、中間転写ベルト17や中間転写ベルト17上の階調パターンPK,PC,PM,PYの光反射率に応じた信号を出力し、トナー付着量を検出する。複写機1は、検出したトナー付着量に基づいて現像バイアスVbなどの作像条件を調整する。
【0031】
中間転写ベルト17の幅方向端部領域に対向するように配置された光学センサ40R,40Fは、通紙領域よりも外側に配置されている。そのため、
図3に示すように、用紙に転写するトナー像形成中において、通紙領域よりも外側に画像調整パターンを形成し、その画像調整パターンのトナー付着量を光学センサ40R,40Fにて検知する。そして、光学センサ40R,40Fで検知したトナー付着量に基づいて、現像バイアス等を調整して画像濃度等を調整することができる。
【0032】
トナーの母体成分や、トナーに添加されたシリカや酸化チタン、その他、いわゆるトナーの外添剤が感光体ドラム11から中間転写ベルト17へ転移する。この中間転写ベルト17へ転移したトナーの外添剤が中間転写ベルト17に固着して、中間転写ベルト17にフィルミングが発生することがある。また、感光体ドラム11の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部を有する場合は、トナーの外添剤に加えて、潤滑剤に含まれる窒化ホウ素やステアリン酸亜鉛等の各種成分も感光体ドラム11から中間転写ベルト17へ転移する。そして、トナーの外添剤と潤滑剤とがお互いに相互作用して、中間転写ベルト17のフィルミングが悪化する場合がある。さらに、二次転写ニップにおいて、用紙Pから紙紛が中間転写ベルト17に転移し、中間転写ベルト17に固着して紙紛フィルミングが発生することがある。
【0033】
このような中間転写ベルト17のフィルミングは、中間転写ベルト17への外部からの圧力(主に感光体ドラムとの接触圧)によって、シリカなどのトナー外添剤および潤滑剤に含まれる各種成分などのフィルミング物質が固着して発生する。中間転写ベルト17にフィルミングが発生すると、全ベタ画像やハーフトーン画像を出力するとフィルミングに対応する部分にトナーが載らず、白く抜ける所謂白抜けなどの異常画像が発生してしまう。
【0034】
また、フィルミングが発生すると、ベルトの光沢度が低下する。そのため、中間転写ベルト17の光学センサ40R,40C,40Fとの対向領域にフィルミングが発生すると、出力信号が変化し、中間転写ベルト上の階調パターンの付着量を良好に検知することができなくなる。また、フィルミング状態のムラにより、光学センサの出力が安定せず正しく画像調整できないという問題もある。
【0035】
さらに、フィルミングによりクリーニングブレード31のクリーニング性が低下するおそれがある。ベルト幅方向において、クリーニングブレード31の光学センサ40R,40C,40Fの配置位置に対応する位置には、単位面積当たりの付着量が多い階調パターンが入力される機会が多い。そのため、中間転写ベルト17の光学センサ40R,40C,40Fとの対向領域にフィルミングが発生すると、階調パターンがクリーニングブレード31に入力されたときに、クリーニング不良(トナーのすり抜け)が発生するリスクが高くなる。
【0036】
上記フィルミングは、クリーニングブレード31と中間転写ベルト17の表面との当接箇所(以下「クリーニング箇所」という。)に滞留するトナーによって掻き取られ、中間転写ベルト17表面上から除去することができる。具体的には、クリーニング箇所に滞留するトナー表面の凹凸とトナーにかかるクリーニングブレード31の圧により中間転写ベルト表面のフィルミングが掻き取られる。
【0037】
そのため、本複写機1は、中間転写ベルト17のフィルミングを抑制するために、所定のタイミングで中間転写ベルト17上に掻き取りパターンを形成する。そして、この掻き取りパターンをクリーニングブレード31に入力することで、クリーニング箇所に十分な量のトナーが滞留するようにしている。
【0038】
図4は、中間転写ベルト上の掻き取りパターンの形成位置について説明する図である。
図4は、通常の画像形成動作で3枚連続印刷した場合である。
図4に示すように、掻き取りパターンの形成位置としては、
1.二次転写ニップへの1枚目の用紙よりも前の位置
2.二次転写ニップに通紙される用紙幅よりも外側の位置
3.二次転写ニップに通紙される用紙後端の非画像形成領域の位置
4.紙間の位置
5.最終紙が二次転写ニップを通過した後の位置
などを挙げることができる。
上記2.については、中間転写ベルトの幅が、二次転写ローラの軸方向長さよりも広く、上記2.の位置では二次転写ローラが中間転写ベルト17に接触しない構成において採用できる。これは、上記2.の位置において、二次転写ローラ18が中間転写ベルト17に接触する構成の場合は、上記2.の位置に形成した掻き取りパターンが二次転写ローラ18に転写されるからである。また、上記2.の位置だけでは、中間転写ベルトの幅方向の端部のみしかフィルミングを除去できないため、上記1、3~5の中間転写ベルトの幅方向に長い帯状の掻き取りパターンと組み合わせる必要がある。
【0039】
上記3.については、二次転写ニップに通紙される用紙先端の非画像形成領域の位置でもよい。上記1、3~5については、中間転写ベルト上の掻き取りパターンが二次転写ニップを抜けるときは、対向ローラ18Aにプラス極性のバイアスを印加する。対向ローラ18Aにプラス極性のバイアスを印加することで、掻き取りパターンを中間転写ベルト17に静電的に引き付け、掻き取りパターンが二次転写ローラ18や用紙Pに転写されないようにしている。
【0040】
図5は、上記掻き取りパターンの形成のフローチャートの一例を示す図である。
制御部90は、印刷指令を受けて中間転写ベルト17の駆動を開始したら、中間転写ベルト17の走行距離の計測を開始する(S1)。中間転写ベルト17の駆動が停止したら、計測した中間転写ベルト17の走行距離に基づいて、中間転写ベルト17の表面上のフィルミング状況に基づくクリーニングブレード31への必要トナー入力量を算出する。具体的には、中間転写ベルト17の走行距離に係数を乗算して必要トナー入力量を算出する。そして、算出した必要トナー入力量を加算して、必要トナー入力量の積算値を算出する(S2)。次に、制御部は、必要トナー入力量の積算値が閾値をこえているかどうか判断する(S3)。積算値が閾値を超えていない場合(S3のNo)、
図5のフローは終了する。一方、積算値が閾値を超えた場合(S3のYes)は、後述するように、クリーニング動作時に掻き取りパターンを形成する。そして、形成した掻き取りパターンのトナー量(クリーニングブレードへの入力トナー量)を、上記積算値から減算する(S4)。こうして
図5のフローは終了する。
【0041】
光学センサでフィルミングの有無を検知して掻き取りパターンを形成するものは、光学センサの検知範囲以外でフィルミングが発生していても、中間転写ベルトの光学センサと対向領域にフィルミングが発生するまで、中間転写ベルトの光学センサと対向領域以外のフィルミングが除去されない。その結果、フィルミングによる白抜けなどの異常画像の発生を良好に抑制できないおそれがある。
【0042】
これに対し、本実施形態では、中間転写ベルト17の走行距離に基づいて、掻き取りパターンを形成している。これにより、中間転写ベルト17の光学センサとの対向領域でフィルミングが発生しなくても、それ以外の領域でフィルミングが発生している可能性がある場合は、掻き取りパターンが形成される。よって、光学センサの検知結果に基づいて、掻き取りパターンを形成するものに比べて、中間転写ベルト17のフィルミングを良好に除去することができる。
【0043】
上記係数は、一定の値でもよいし、例えば、カラー画像モードとモノクロ画像モードとで、係数を変えてもよい。これは、カラー画像モードの方がモノクロ画像モードよりもフィルミングが悪化する場合があるからである。カラー画像モードの方がモノクロ画像モードより定着設定温度が高いことやモーター稼働台数が増加することにより機内温度が高くなる傾向にある。機内温度が高くなることで、クリーニングブレード31のスティックスリップ量が増加し、フィルミングが悪化するおそれがある。また、感光体ドラム11の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部を有する場合、カラー画像モードでは、中間転写ベルト17に付着するフィルミング物質の成分となる潤滑剤量がモノクロモードより増加する。そのため、カラー画像モードの方がモノクロ画像モードよりもフィルミングは悪化するおそれがある。
【0044】
そのため、例えば、カラー画像モードの係数Bを、モノクロ画像モードの係数Aよりも高い値(A<B)とする。そして、画像形成時(中間転写ベルト駆動時)に、モノクロ画像モードかカラー画像モードかを判定する。モノクロ画像モードの時は、係数Aを用いて必要トナー入力量を算出し、カラー画像モードのときは、係数Bを用いて必要トナー入力量を算出する。
【0045】
例えば、カラー画像モードが多い場合は、上述したようにフィルミングの悪化するおそれがモノクロ画像モードよりも高い。しかし、カラー画像モードが多い場合は、短い中間転写ベルト17の走行距離で必要トナー入力量の積算値が閾値を超えるため、早いタイミングで掻き取りパターンの形成が行われる。一方、モノクロ画像モードが多い場合は、カラー画像モードに比べてフィルミングが悪化し難い。そのため、モノクロ画像モードが多い場合は、必要トナー入力量の積算値が閾値を超える走行距離が長くなり、遅いタイミングで掻き取りパターンの形成が行われる。
【0046】
このように、画像モードに基づいて、掻き取りパターンの形成が行われることで、適切なタイミングで、掻き取りパターンの形成を行うことができ、無駄なトナー消費や、フィルミングの悪化を良好に抑制することができる。
【0047】
複写機1の稼働時に継続的に地肌汚れトナーが現像装置13から供給され、この地肌汚れトナーは、中間転写ベルト17の紙間に付着する場合がある。紙間に付着した地汚れトナーは、二次転写ニップで二次転写ローラに付着し、二次転写ローラ18がトナーで汚れてしまう。このように二次転写ローラ18がトナーで汚れてしまうと、用紙Pにトナー像を転写するときに、用紙Pの裏面に二次転写ローラ18のトナーが付着し、裏汚れが発生するおそれがあった。
【0048】
そこで、本複写機1は、二次転写ローラ18をクリーニングするクリーニング動作を実行するようにした。このクリーニング動作を実行し、二次転写ローラ18に付着したトナーを中間転写ベルト17に移動させる。
【0049】
図6は、クリーニング動作のタイミングチャートの一例を示す図である。
図6に示すように、クリーニング動作が実行されると、対向ローラ18Aにマイナス極性バイアスとプラス極性のバイアスとを交互に印加し、二次転写ニップに交番電界を形成する。交番電界を形成することで、二次転写ローラ18に付着したトナーをホッピング効果で効率的にクリーニングすることができる。ここで、ホッピング効果とは、二次転写ローラ18と中間転写ベルト17との間でトナーが往復移動することで、二次転写ローラ18のトナーを中間転写ベルト17に移動しやすくする効果のことである。このように、交番電界を形成することで、二次転写ローラ18に付着した両極性のトナーを中間転写ベルト17へ移動させることができ、良好に二次転写ローラ18の表面をクリーニングすることができる。これにより、用紙の裏汚れを抑制することができる。
【0050】
交番電界を形成するマイナス印加およびプラス印加の期間は、二次転写ローラ18が一回転以上する期間である。
図5の二次転写ニップへ1枚目の用紙が通過する前に実施されるクリーニング動作は、マイナス印加→プラス印加を3回実施した後、一旦バイアスをゼロにして再度プラスバイアスを印加している。再度印加されたプラスバイアスの長さは給紙のタイミングによって調整される。一旦バイアスをゼロにしなくてもよい。
【0051】
図6の最終紙が二次転写ニップを通過した後に実施しているクリーニング動作のように、マイナス印加→プラス印加を1回としてもよいし、マイナス印加→プラス印加を4回以上行ってもよい。また、マイナス印加→プラス印加の1回目と2回目のバイアス値は一定でなくてよい(段階的にバイアスを増幅させる、または減衰させる挙動を示してもよい)。また、紙間が広い場合は、紙間でクリーニング動作を実行してもよい。
【0052】
上述したように、クリーニング箇所に十分な量のトナーが滞留することで、中間転写ベルト17表面上のフィルミングを良好に除去でき好ましい。しかし、上記掻き取りパターンのトナー量を多くして、クリーニング箇所に一度に大量のトナー量を入力すると、トナーのすり抜けが発生し、クリーニング不良が発生するおそれがある。
【0053】
そこで、本実施形態では、
図7に示すように、掻き取りパターンKpを短い間隔を開けて複数形成するようにした。
図7(b)に示すように、各掻き取りパターンKpは、主走査方向に長い帯状のパターンであり、本装置が搬送可能な最大通紙幅よりも長く、中間転写ベルト17の両端部に対向配置された光学センサ40R、40Fの対向領域まで主走査方向に延びている。これにより、用紙Pに転写するトナー像が形成される中間転写ベルト17の最大通紙幅領域のフィルミングを良好抑制でき、白抜けなどの異常画像の発生を良好に抑制できる。また、中間転写ベルト17の両端部に対向配置された光学センサ40R、40Fの対向領域まで掻き取りパターンKpが延びている。よって、中間転写ベルト17の光学センサ40R、40Fの対向部分のフィルミングを良好に抑制でき、付着量を良好に検知することができる。
【0054】
上記間隔Spは、先行の掻き取りパターンを形成するトナーが、クリーニング箇所から完全に除去される前に、次の掻き取りパターンが入力されるように設定されている。また、上記間隔Spは、クリーニング箇所に滞留するトナー量が、クリーニング不良が発生するトナー量以下となるように設定される。これにより、クリーニング不良を抑制し、かつ、良好にフィルミングが抑制される。
【0055】
以下に、本発明者らが行った検証実験について説明する。
図8、
図9に示すように、掻き取りパターンの表面移動方向長さおよび掻き取りパターンの個数が互いに異なる条件(1)~(6)で検証実験を行った。
【0056】
条件(1)は、移動方向長さが32.5mmの掻き取りパターンKpを一つ形成した条件であり、条件(2)は、移動方向長さが97.5mmの掻き取りパターンKpを一つ形成した条件である。条件(3)は、移動方向長さが32.5mmの掻き取りパターンKpを間隔13mmで3つ形成した条件であり、条件(4)は、移動方向長さが80mmの掻き取りパターンKpを一つ形成した条件である。条件(5)は、移動方向長さが200mmの掻き取りパターンKpを一つ形成した条件である。条件(6)は、移動方向長さが70mm,60mm,70mmの掻き取りパターンKpを間隔80mmで3つ形成した条件である。そして、条件(1)~(6)において、それぞれ、クリーニング性と、フィルミング性を評価した。
【0057】
<クリーニング性評価>
クリーニング性の評価は、以下の条件にて行った。
・クリーニングブレード当接圧:20N/m
・中間転写ベルトの線速:300mm/s
また、クリーニング性の評価は、掻き取りパターンKpを形成後に印刷した画像に基づいて評価した。印刷画像にスジ状の異常画像が確認されなかった場合は、クリーニング性「○」と評価し、印刷画像にスジ状の異常画像が確認された場合は、クリーニング性「×」と評価した。
【0058】
<フィルミング性評価>
フィルミング性の評価は、画像面積率5%のランニングチャートを150,000枚印刷後に、中間転写ベルト上にテストパターンを形成する。そして、光学センサ40R,40C,40Fによりテストパターンの付着量を検知した際にエラーが発生しないときは、フィルミング性評価を「〇」と評価した。一方、光学センサ40R,40C,40Fによりテストパターンの付着量を検知した際にエラーが発生したときは、フィルミング性評価を「×」とした。掻き取りパターンKpは、
図4に示したフローに示すように、中間転写ベルト17の走行距離に基づきトナー入力量を算出し、トナー入力量の積載値が閾値を超えたら、画像印刷を一時停止して、掻き取りパターンを形成した。
【0059】
【0060】
表1に示すように、条件(1)、条件(4)では、クリーニング性の評価は、「〇」評価であったが、フィルミング性は、「×」評価であった。これは、条件(1)、(4)の掻き取りパターンにおいては、クリーニング箇所に一度に入力されるトナー量が少ないため、トナーのすり抜けが発生することなく、クリーニング性の評価が「〇」となったと考えられる。一方、条件(1)や条件(4)では、フィルミング評価は、「×」であった。
【0061】
先の
図5を用いて説明したように、本実施形態では、形成した掻き取りパターンのトナー量(クリーニングブレードへの入力トナー量)を、トナー入力量の積算値から減算し、トナー入力量の積算値が閾値を超えたら、掻き取りパターンを形成する。条件(1)では、クリーニングブレード31への入力トナー量が少ないため、減算値が少なく、他の条件(2)~(6)に比べて、トナー掻き取りパターンの形成動作の頻度は高い。しかし、一回の掻き取りパターンの形成動作でクリーニングブレードに入力されるトナー量が少ないことから、一回の掻き取りパターンの形成動作でのフィルミングの掻き取りが不十分である。その結果、トナー掻き取りパターンの形成動作の頻度が高くても、中間転写ベルト17のフィルミングが良好に除去できず、経時で中間転写ベルト17のフィルミングが悪化していき、フィルミング評価が「×」となったと考えられる。
【0062】
表1に示すように、移動方向長さが97.5mm以上の掻き取りパターンKpを一つ形成した条件(2)、(5)では、クリーニング性の評価は、「×」評価であった。これは、一度に大量のトナーがクリーニング箇所に入力されたことで、クリーニングブレードの先端がクリーニング箇所に入力されたトナーの圧力に耐えることができず、トナーのすり抜けが発生し、スジ状の異常画像が生じたと考えられる。
【0063】
一方、条件(2)、条件(5)ではフィルミング評価は、「〇」であった。クリーニングブレード31に入力されるトナー量が多いことから、長い時間トナーをクリーニング箇所に留まらせることができる。これにより、ある程度長い時間継続してクリーニング箇所に留まったトナーによりフィルミングを除去できる。よって、条件(1)のように、断続的にクリーニング箇所に留まったトナーによりフィルミングを除去する場合に比べて、中間転写ベルト17のフィルミングを良好に除去できたと考えられる。その結果、経時にわたり中間転写ベルト17のフィルミングを抑制でき、フィルミング評価が「〇」となったと考えられる。
【0064】
条件(1)、(2)、(4)、(5)から、少なくとも、掻き取りパターンKpの移動方向長さを80mm以下とすることで、クリーニング不良を抑制できることが分かった。また、少なくとも、掻き取りパターンKpの移動方向長さを97.5mm以上とすることで、経時にわたり中間転写ベルト17のフィルミングを抑制できることがわかった。
【0065】
表1に示すように、条件(3)、条件(6)では、クリーニング性、フィルミング性ともに評価が「〇」であった。これは、各掻き取りパターンKpの移動方向長さが80mm以下である。よって、クリーニング箇所に一度に入力されるトナー量を、クリーニング不良が発生するトナー量以下に抑えることができ、クリーニングブレードによってクリーニング箇所のトナーを良好に堰き止めることができたと考えられる。
【0066】
また、条件(3)、(6)では、所定の間隔で3つの掻き取りパターンが形成され、クリーニング箇所のトナーがクリーニングブレード31により完全に除去される前に、次の掻き取りパターンKpがクリーニング箇所に入力される。これにより、クリーニング箇所のトナーによるフィルミングの掻き取りが継続される。また、条件(3)では、3つの掻き取りパターンのトータルの移動方向長さが条件(2)と同じ97.5mmである。これにより、条件(2)と同量のトナー量がクリーニング箇所に入力される。よって、条件(2)と同様にある程度長い時間継続してクリーニング箇所に滞留したトナーにより中間転写ベルト17のフィルミングを除去することができ、フィルミング評価が「〇」となったと考えられる。
【0067】
なお、条件(6)は、条件(3)よりも各掻き取りパターンの移動方向長さが長い。そのため、クリーニング箇所に一度に入力されるトナー量が、条件(3)よりも多い。よって、条件(3)よりも掻き取りパターンの間隔が長くても、クリーニング箇所のトナーがクリーニングブレード31により完全に除去される前に、次に掻き取りパターンをクリーニング箇所に入力することができる。そのため、条件(6)についても、ある程度長い時間継続してクリーニング箇所に滞留したトナーにより中間転写ベルト17のフィルミングを除去することができ、フィルミング評価が「〇」となったと考えられる。
【0068】
一方で、条件(6)において、掻き取りパターンの間隔を条件(3)と同様に、13mmとすると、クリーニング箇所に滞留するトナーが多くなりすぎ、クリーニング不良が発生するおそれがある。よって、各掻き取りパターンの移動方向長さ(掻き取りパターンのトナー量)に応じて、掻き取りパターンの間隔を設定する必要がある。
【0069】
条件(3)は、条件(6)よりも、最初の掻き取りパターンから最後の掻き取りパターンまでの距離が短く、掻き取りパターン形成動作の期間が条件(6)よりも短くなり、装置のダウンタイムを短くできる。一方、条件(6)の方が、条件(3)よりも一回の掻き取りパターンの形成動作でクリーニング箇所に入力されるトータルのトナー量が多く、および、トナーがクリーニング箇所に滞留する時間も長い。従って、条件(6)の方が、条件(3)よりもフィルミング除去効果は高い。
【0070】
また、条件(2)、(3)について、BN指標を測定したところ、BN指標は、0.2程度であり、条件(1)については、0.45であった。なお、BN指標は、中間転写ベルト17上の潤滑剤の成分である窒化ホウ素の付着量を示す指標値である。BN指標値は、ATR(Attenuated Total Reflection)法赤外吸収スペクトルを利用して求めることができる。詳しくは、検証実験前の中間転写ベルト17のATR法赤外吸収スペクトルと、検証実験後の中間転写ベルト17のATR法赤外吸収スペクトルとの間の差分スペクトルをとる。この差分スペクトルにおける、中間転写ベルト由来のピーク面積に対する窒化ホウ素由来のピーク面積の比率を、BN指標として用いる。
【0071】
各掻き取りパターンKpの移動方向長さは、二次転写ローラ18の周長よりも短く、掻き取りパターンKpの間隔Spは、二次転写ローラ18の周長よりも長くするのが好ましい。
【0072】
上述したように、掻き取りパターンKpが二次転写ニップを通過するときは、対向ローラ18Aにプラス極性のバイアスを印加し、マイナス極性トナーを静電的に中間転写ベルト17に静電的に引き付けて、二次転写ローラ18へのトナー移動を抑制している。しかし、このときプラス極性の掻き取りパターンの逆帯電化トナーが、二次転写ローラ18に静電的に移動するおそれがある。また、二次転写ローラ18の表面層は、スポンジなどの発泡剤で構成され、微小のセルが多く混在している。そのため、掻き取りパターンのマイナス極性の正規帯電化トナーも、二次転写ニップにおいて、二次転写ローラ18に掻き取られるなどして、二次転写ローラ18に付着するおそれがある。
【0073】
掻き取りパターンKpの移動方向長さが、二次転写ローラ18の周長以上の場合は、二次転写ニップで掻き取りパターンKpに接触した二次転写ローラ18の部分が、二次転写ローラ一回転後に再度、掻き取りパターンに接触する。このように、掻き取りパターンKpの移動方向長さが、二次転写ローラ18の周長以上の場合は、二次転写ローラ18に連続で掻き取りパターンに接触する部分が生じ、その部分のトナー汚れが、他の部分に比べて悪化するおそれがある。
【0074】
掻き取りパターンKpの移動方向長さを二次転写ローラ18の周長よりも短くしても、掻き取りパターンKpの間隔Spが、二次転写ローラ18の周長よりも短いと、二次転写ローラ18に連続で掻き取りパターンに接触する部分が生じる。従って、その部分のトナー汚れが他の部分よりも悪化するおそれがある。
【0075】
各掻き取りパターンKpの移動方向長さを二次転写ローラ18の周長よりも短くし、掻き取りパターンKpの間隔Spを二次転写ローラ18の周長よりも長くすることで、二次転写ローラ18に連続で掻き取りパターンKpに接触する部分が生じるのを防止できる。これにより、二次転写ニップで掻き取りパターンKpに接触した部分は、一回転後は中間転写ベルト17に接触し、掻き取りパターンKp接触時に二次転写ローラ18に付着したトナーの一部を、中間転写ベルト17に移すことができる。よって、掻き取りパターンKpの移動方向長さを二次転写ローラ18の周長以上とした場合や、掻き取りパターンKpの間隔Spを二次転写ローラ18の周長以下とした場合に比べて、二次転写ローラのトナー汚れを抑制することができる。
【0076】
本実施形態では、所定の間隔(クリーニング箇所の滞留トナーが所定量以下とならないような間隔)で複数の掻き取りパターンKpを形成するため、掻き取りパターン形成動作の期間が長くなる。そのため、クリーニング動作と掻き取りパターン形成動作とを互いに異なるタイミングで行うと、中間転写ベルト17の走行距離が延び中間転写ベルト17の寿命が早まるおそれがある。また、装置のダウンタイムの発生回数が多くなってしまう。
【0077】
そこで、本実施形態では、
図10に示すように、クリーニング動作におけるプラスバイアス印加時に二次転写ニップを通過させるようにした。
本実施形態では、上述したように、二次転写ニップに交番電界を形成して二次転写ローラ18に付着したトナーをホッピング効果でクリーニングしている。そして、
図10に示すように、二次転写ニップにおける紙有り区間よりも短いタイミングで、交番電界の極性が切り替わっている。よって、この交番電界におけるプラスバイアス印加中に掻き取りパターンを通過させることで、クリーニング箇所の滞留トナーが完全になくなる前に、次の掻き取りパターンをクリーニング箇所に入力することができる。これにより、ある程度長い時間継続してクリーニング箇所に滞留したトナーにより中間転写ベルトのフィルミングを除去することができ、経時にわたりフィルミングを抑制できる。
【0078】
また、
図10に示すように、プラスバイアスおよびマイナスバイアスの印加は、二次転写ローラの1周分以上である。よって、各掻き取りパターンKpの移動方向長さを二次転写ローラ18の周長よりも短く、掻き取りパターンKpの間隔Spを二次転写ローラ18の周長よりも長くすることができ、二次転写ローラのトナー汚れを抑制でき、用紙の裏汚れを抑制できる。なお、プラスバイアス印加時に掻き取りパターンが二次転写ニップを通過するようにした場合でも、二次転写ローラに付着したマイナス極性のトナーを中間転写ベルト(掻き取りパターン)へ静電的に付着させることができる。従って、掻き取りパターンによる二次転写ローラのクリーニングへの影響は、ほとんどない。
【0079】
なお、クリーニング動作におけるゼロバイアス時に掻き取りパターンを通過させても、掻き取りパターンKpが二次転写ローラ18に転写されない。しかし、プラスバイアス印加時と異なり、掻き取りパターンのトナーが中間転写ベルト17に静電的に引き付けられていない。そのため、二次転写ニップにおいて、二次転写ローラ18に掻き取られるなどして、二次転写ローラ18に付着するトナーが多くなり、二次転写ローラ18のトナー汚れが悪化するおそれがある。そのため、クリーニング動作におけるゼロバイアス時に掻き取りパターンを通過させるのは好ましくない。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0081】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
中間転写ベルト17などの像担持体と、像担持体に接触して二次転写ニップなどの転写ニップを形成する二次転写ローラ18などの転写部材と、転写ニップに像担持体上のトナー像を用紙Pなどの記録媒体に転写するための転写バイアスを印加するバイアス印加手段と、像担持体の表面をクリーニングするクリーニングブレード31などのクリーニング部材とを備えた画像形成装置において、転写ニップに少なくとも転写バイアスの極性(マイナス)とは逆極性(プラス)のプラスバイアスなどの逆極性バイアス印加し、転写部材に付着した付着物を像担持体へ移動させて転写部材をクリーニングするクリーニング動作を有し、記録媒体に転写しない掻き取りパターンKpなどのトナー像パターンを、所定の間隔を開けて複数形成し、トナー像パターンの像担持体の表面移動方向の長さは、転写部材の周長よりも短く、トナー像パターンの間隔は、前記転写部材の周長以上であり、複数のトナー像パターンを、クリーニング動作における逆極性バイアス印加時に転写ニップを通過させる。
フィルミングを防止するには、トナー像パターンのトナー量を多くしてクリーニング部に入力するトナー量を増やすのが好ましいが、一度に大量のトナーをクリーニング部に入力すると、クリーニング不良が発生するおそれがある。また、トナー像パターンが転写ニップを通過する際に、このトナー像パターンを構成するトナーが、転写部材に付着することがあった。この転写部材に付着したトナーが、転写ニップで記録媒体にトナー像を転写するときに記録媒体の裏面に付着し、記録媒体の裏面を汚す裏汚れが発生するおそれがある。
態様1では、記録媒体に転写しないトナー像パターンを、所定の間隔を開けて複数形成し、複数のトナー像パターンを、クリーニング動作中の転写バイアスの極性とは逆極性の逆極性バイアス印加中に転写ニップを通過させるようにした。これにより、一度にクリーニング部材に入力されるトナー量を抑え、かつ、クリーニング動作中に、フィルミングを防止可能なトナー量をクリーニング部材に入力することができる。これにより、クリーニング不良の発生を抑制してフィルミングを抑制できる。また、複数のトナー像パターンは、クリーニング動作における逆極性バイアス印加中に転写ニップを通過するので、トナー像パターンのトナーが転写部材へ移動するのが抑制され、裏面汚れも抑制することができる。
さらに、クリーニング動作とは別のタイミングで所定の間隔を開けて複数のトナー像パターンを形成する場合に比べて、装置のダウンタイムの発生回数を低減できる。
また、トナー像パターンの像担持体の表面移動方向の長さを、二次転写ローラ18などの転写部材の周長よりも短くし、トナー像パターンの間隔Spを、転写部材の周長以上としているので、転写ニップで転写部材のトナー像パターンに接触した箇所を、一回転後、像担持体に接触させることができる。これにより、転写ニップで転写部材へ付着したトナー像パターンのトナーを、転写部材一回転後に、像担持体の表面へ移動させることができ、転写部材の汚れを抑制できる。これにより、裏面汚れをより一層抑制できる。
【0082】
(態様2)
態様1において、中間転写ベルト17などの像担持体の主走査方向の両端に配置され、トナー像のトナー付着量を検知する光学センサ40R,40Fなどの付着量検知手段を有し、掻き取りパターンKpなどのトナー像パターンは、主走査方向一端の付着量検知手段から主走査方向他端の付着量検知手段までの主走査方向の長さ以上の帯状パターンである。
これによれば、実施形態で説明したように、用紙Pなどの記録媒体に転写するトナー像が形成される中間転写ベルトなどの像担持体の最大通紙幅領域のフィルミングを良好抑制でき、白抜けなどの異常画像の発生を良好に抑制できる。また、像担持体の両端部に対向配置された光学センサ40R、40Fなどの付着量検知手段の対向領域のフィルミングを良好に抑制でき、付着量を良好に検知することができる。
【0083】
(態様3)
態様1または2において、クリーニング動作は、前記転写ニップに交番バイアスを形成して、二次転写ローラ18などの転写部材に付着した付着物を前記像担持体へ移動させるものであり、交番バイアス印加時の逆極性バイアス印加中に一つの掻き取りパターンが転写ニップを通過する。
これによれば、実施形態で説明したように、所定の間隔で複数の掻き取りパターンを形成できるとともに、クリーニング動作における逆極性バイアス印加中に掻き取りパターンが、転写ニップを通過することができる。
また、転写部材に付着した付着物をホッピング効果で効率的にクリーニングすることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 :複写機(画像形成装置)
17 :中間転写ベルト(像担持体)
18 :二次転写ローラ(転写部材)
18A :対向ローラ
30 :ベルトクリーニング装置
31 :クリーニングブレード(クリーニング部材)
40 :光学センサユニット
40C :光学センサ
40F :光学センサ
40R :光学センサ
Kp :掻き取りパターン
P :用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】