(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174434
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】導電性接合材料及び導電性接合材料の製造方法並びに接合部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20241210BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20241210BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20241210BHJP
B22F 7/08 20060101ALI20241210BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241210BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L21/52 A
B22F1/00 K
B22F1/05
B22F7/08 C
H01L21/60 311Q
H01L21/52 E
B22F9/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092252
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】オリジネイト弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤野 晶仁
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5F044
5F047
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017AA08
4K017BB02
4K017CA07
4K017DA01
4K017DA07
4K018BA01
4K018BB04
4K018BD04
4K018JA36
4K018KA32
5F044LL01
5F047BA12
5F047BA15
(57)【要約】
【課題】金属粉末成形体からなる導電性接合材料であって、大面積化が可能で膜状に近似可能な導電性接合材料とその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、基材上に形成された所定面積を有する金属粉末の成形体からなる導電性接合材料に関する。前記金属粉末は、純度99.9質量%以上の金等の金属からなり、平均粒径が0.005μm以上1.0μm以下の粉末である。そして、本発明の導電性接合材料は、平面視において、第1領域と残余の領域である第2領域とに分割されており、第1領域の最小寸法L1及び第2領域の最小寸法L2のいずれもが5μm以上であり、且つ、L1とL2との比が0.25以上4以下である。また、本発明の導電性接合材料は、断面視において、第1領域と第2領域との間の隙間が1μm未満であり、膜状に近似できる態様となっている。第1領域の具体的形状の例としては、雷文模様、波形模様、同心円模様、青海波模様が挙げられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された所定面積を有する金属粉末の成形体からなる導電性接合材料において、
前記成形体を構成する前記金属粉末は、純度99.9質量%以上の金、銀、白金、パラジウムの群から選択される一種以上の金属からなる、平均粒径が0.005μm以上1.0μm以下の粉末であり、
前記導電性接合材料は、平面視において、第1領域と残余の領域である第2領域とに分割されており、
前記第1領域の最小寸法L1及び前記第2領域の最小寸法L2のいずれもが5μm以上であり、且つ、L1とL2との比L1/L2が0.25以上4以下であり、
更に、前記導電性接合材料は、断面視において、前記第1領域と前記第2領域との間の隙間が1μm未満であることを特徴とする導電性接合材料。
【請求項2】
第1領域の最小寸法L1及び第2領域の最小寸法L2は、140μm以下である請求項1記載の導電性接合材料。
【請求項3】
第1領域は、最小寸法L1を辺長とする単位正方形が2以上連続した規則的な模様状に形成されている請求項1又は請求項2記載の導電性接合材料。
【請求項4】
第1領域は、最小寸法L1を線幅とする曲線が連続した規則的な模様状に形成されている請求項1又は請求項2記載の導電性接合材料。
【請求項5】
基材と、請求項1又は請求項2記載の導電性接合材料とを備える接合部材。
【請求項6】
基材と導電性接合材料との間に、金属又は金属酸化物からなる下地膜及び/又は金属又は金属酸化物からなる中間膜を備える請求項5記載の接合部材。
【請求項7】
純度99.9質量%以上の金、銀、白金、パラジウムの群から選択される一種以上の金属からなり、平均粒径が0.005μm以上1.0μm以下の金属粉末を含む金属ペーストを用いる請求項1又は請求項2記載の導電性接合材料の製造方法であって、
基材表面をレジストで被覆する工程と、
前記レジストの第1領域に対応する領域に第1の貫通孔を形成し、前記第1の貫通孔に前記金属ペーストを充填した後、前記金属ペーストに含有される前記金属粉末の成形体を形成する第1工程と、
前記第1工程の後、前記レジストの第2領域に対応する領域に第2の貫通孔を形成し、前記第2の貫通孔に前記金属ペーストを充填した後、前記金属ペーストに含有される前記金属粉末の成形体を形成する第2工程と、
残余のレジストを除去する工程と、
を備える導電性接合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ等のダイボンディングやフリップチップ実装等の接合プロセスに適用される導電性接合材料及びその製造方法と、当該導電性接合材料を備える接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から本願出願人は、金属粉末の成形体からなる導電性接合材料をダイボンディングやフリップチップ実装等に適用した各種デバイスの製造方法を提案している(特許文献1~4)。この導電性接合材料は、所定の粒径範囲の高純度の金属からなる金属粉末の焼結体又は乾燥体である。また、導電性接合材料の形成には、上記した金属粉末を溶剤に分散させた金属ペーストが前駆体として使用される。そして、本願出願人の導電性接合材料による接合プロセスでは、金属ペーストをデバイス等の基板・基材に塗布した後、乾燥又は焼成して導電性接合材料を形成し、その後、半導体素子等の被接合部材を導電性接合材料上に載置し、加圧と共に加熱して金属粉末を焼結して接合を完了させる。
【0003】
本願出願人の金属粉末成形体からなる導電性接合材料には多くのメリットがある。即ち、金属粉末からなる導電性接合材料によれば、接合温度を300℃以下とすることができる。これにより、古くから接合材料として使用されてきた金属ろう材(金ろう、銀ろう等)に対して低温での接合が可能である。このような低温接合性は、基板や半導体素子等の熱損傷の抑制に有用である。そして、金属粉末成形体による接合は、接合部の接合強度を確保する観点からも有効である。接合工程において、加熱及び加圧された金属粉末焼結体の内部では、ネッキングの進行と金属粒子自体の塑性変形が生じ、内部の空隙を減少させながら緻密化される。緻密化した導電性接合材料は、半導体素子等と基板とを強固に接合することができる。更に、導電性接合材料の前駆体である金属ペーストは、溶剤等を適切な構成とすることで塗布性・印刷性が良好であることから、所望の形状の接合材料を容易に形成することができる。
【0004】
こうしたメリットにより、金属粉末成形体からなる導電性接合材料の適用範囲は、Si系半導体(単結晶Si、SiC等)からなる各種半導体素子に加えて、Ga系半導体(GaAs、GaN、GaP)等の化合物半導体からなるパワーデバイス等の接合プロセスへの適用も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-324523号公報
【特許文献2】特開2014-067917号公報
【特許文献3】特開2021-125522号公報
【特許文献4】特許第5202714号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような適用範囲の拡大により、金属粉末成形体からなる導電性接合材料には、これまで知られている低温接合性等以外の特性についての向上が求められている。例えば、今後期待されるパワーデバイス等の接合には、搭載される化合物半導体が比較的脆いことから、接合時の加圧力の低下が要求される。上記の特許文献3は、所定のパラメータを具備する変形抵抗が調整された金属粉末成形体を適用することで、低加圧でも接合可能な導電性接合材料を開示している。
【0007】
そして、大容量化に伴いチップサイズが増大するパワーデバイス等の接合には、接合材料の大面積化が必要とされる。この点、金属ペーストを前駆体とする導電性接合材料は、本来的には大面積化が困難である。基材上への導電性接合材料の製造では、通常、基材上にレジストを塗布した後、露光・現像してレジストに貫通孔を空け、ここに金属ペーストを塗布・充填してから乾燥・焼成して所望のパターンの導電性接合材料を形成する。このとき、金属ペーストには金属粉末の他に溶剤が含まれているので、乾燥・焼成後の溶剤の揮発による体積減を考慮し、貫通孔の深さに対して余剰の金属ペーストが充填される。そして、貫通孔からはみ出した金属粉末をスキージ等で掻き取り除去するが、掻き取りの際のせん断応力の作用により導電性接合材料の表面が抉られて平坦性を損なうことがある。平坦性の低下は、掻き取りの距離が大きくなる程に顕著になることから、導電性接合材料の大面積化が困難となる。
【0008】
上記特許文献3では、大面積化と平坦性との両立を考慮した導電性接合材料も提案されている。この先行文献では、複数の導電性接合材料を設定し、それらの間隔が1μmとなるまで近接させている。このようにすることで、複数の導電性接合材料で構成される疑似的に一体的な膜状の接合材料とすることができる。
【0009】
しかし、特許文献3の導電性接合材料は、膜状に近似されるといっても隙間が存在していることに変わりはない。そして、その隙間は、1μm程度の微細なものであってもデバイスの接合部における導電性や放熱性に影響を及ぼし得る。
【0010】
本発明は、以上のような背景のもとなされたものである。その目的は、本願出願人による所定の金属粉末の成形体からなる導電性接合材料について、金属粉末成形体を形成する領域を大面積化することができ、かつ当該領域内での隙間を極小化し、従来以上に膜状に近い態様の導電性接合材料及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、金属粉末成形体からなる導電性接合材料の大面積化を図るためには、金属ペーストを塗布し金属粉末成形体を形成するプロセスを2段階で行うことが好ましいと考察した。金属ペーストを前駆体とする金属粉末の成形体を製造する際、1μm以上の間隔を形成することが不可避であるとすれば、1段階目で敢えて間隔がある状態で成形体を製造し、2段階目にその間隔に金属ペーストを充填し乾燥等すれば一体的な成形体とすることができると考えられる。
【0012】
但し、本発明者等の検討によれば、このような2段階の製造プロセスであっても、1段階目で形成する成形体の間隔の幅によっては、2段階目で当該間隔に十分に金属ペーストの金属粉末を充填できないことが確認されている。例えば、本発明者等は、上記特許文献3を参照し、1μm以上(4μm)の隙間を空けつつ導電性接合材料を形成し、更に金属ペーストを塗布して当該隙間を充填したとき、金属粉末が隙間の上部(開口部付近)に止まり、隙間の底部(基板付近)まで充填できないことを確認している。金属ペースト中の金属粉末の寸法(粒径)自体は、隙間よりも小さいものの、金属ペーストの粘性や表面張力等の影響で隙間底部に行き渡らないためと考えられる。
【0013】
そこで本発明者等は、金属粉末成形体の2段階で形成するプロセスを基礎にしつつ、好適な形状及び寸法の条件を見出すべく検討を行った結果、本発明に係る導電性接合材料に想到した。
【0014】
即ち、本発明は、基材上に形成された所定面積を有する金属粉末の成形体からなる導電性接合材料において、前記成形体を構成する前記金属粉末は、純度99.9質量%以上の金、銀、白金、パラジウムの群から選択される一種以上の金属からなる、平均粒径が0.005μm以上1.0μm以下の粉末であり、前記導電性接合材料は、平面視において、第1領域と残余の領域である第2領域とに分割されており、前記第1領域の最小寸法L1及び前記第2領域の最小寸法L2のいずれもが5μm以上であり、且つ、L1とL2との比L1/L2が0.25以上4以下であり、更に、前記導電性接合材料は、断面視において、前記第1領域と前記第2領域との間の隙間が1μm未満であることを特徴とする導電性接合材料である。
【0015】
ここで、第1領域及び第2領域の最小寸法L1、L2は、140μm以下であるものが好ましい。
【0016】
また、第1領域の形態としては、最小寸法L1を辺長とする単位正方形が2以上連続した規則的な模様状に形成されているものが挙げられる。更に、第1領域の形態として、最小寸法L1を線幅とする曲線が連続した規則的な模様状に形成することもできる。
【0017】
そして、本発明に係る接合部材は、基材及び上記した導電性接合材料を少なくとも1つ備える。
【0018】
本発明に係る導電性接合材料は、所定の金属ペーストの塗布及び乾燥・焼結を2段階行うことで形成される。即ち、本発明に係る導電性接合材料の製造方法は、99.9質量%以上の金、銀、白金、パラジウムの群から選択される一種以上の金属からなり、平均粒径が0.005μm以上1.0μm以下の金属粉末を含む金属ペーストを用いる導電性接合材料の製造方法であって、基材表面をレジストで被覆する工程と、前記レジストの第1領域に対応する領域に第1の貫通孔を形成し、前記第1の貫通孔に前記金属ペーストを充填した後、前記金属ペーストに含有される前記金属粉末の成形体を形成する第1工程と、前記第1工程の後、前記レジストの第2対応する領域に第2の貫通孔を形成し、前記第2の貫通孔に前記金属ペーストを充填した後、前記金属ペーストに含有される前記金属粉末の成形体を形成する第2工程と、残余のレジストを除去する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る導電性接合材料は、適切な寸法が規定された第1領域と第2領域に分割・区分されたものである。これにより、金属粉末成型体の大面積化を図りつつ、隙間を従来以上に狭小化することができる。そして、本発明に係る導電性接合材料は、従来よりも有効な放熱性・導電性を発揮することができる。更に、本発明は、これまで困難であった導電性接合材料の大面積化と平坦性確保の両立を容易なものとする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る導電性接合材料の一態様の平面形状及び断面構造と最小寸法を説明する図。
【
図2】本発明の導電性接合材料の平面形状について単位正方形で構成されるものの具体例を示す図。
【
図3】本発明の導電性接合材料の平面形状について曲線で構成されるものの具体例を示す図。
【
図4】本発明の導電性接合材料の全体形状の例を示す図。
【
図5a】本発明の導電性接合材料の形成工程を説明する図(第1領域)。
【
図5b】本発明の導電性接合材料の形成工程を説明する図(第2領域)。
【
図6】本発明の導電性接合材料を適用する接合部材の利用態様を説明する図。
【
図8】実施例で製造した導電性接合材料の外観写真及び断面写真。
【
図9】参考例で製造した導電性接合材料の外観写真及び断面写真。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(A)導電性接合材料の第1領域と第2領域
以下、本発明の構成と実施形態について、具体例を用いつつ説明する。
図1に、本発明に係る導電性接合材料の具体的態様の一例を示す。
図1(a)で示すように、この導電性接合材料は、平面視において、全体として矩形を有し、第1の領域として複数の雷文模様が整列配置した状態で形成されている。そして、残余の領域である雷文模様の間隙が第2領域となる。この導電性接合材料において、第1領域及び第2領域はいずれも同じ金属種及び粒径の金属粉末の成形体からなる。
【0022】
図1(b)は、この導電性接合材料の断面構造を示す図である。第1領域の金属粉末成形体と第2領域の金属粉末成形体との間には微細な隙間があり、この隙間により第1領域と第2領域とが分割されている。この隙間の要因については、後述する2段階で行われる金属粉末成形体の形成方法に由来するものである。但し、隙間といっても、本発明における第1領域と第2領域との間隔は1μm未満となる。従って、従来技術(特許文献3)における隙間(1μm以上)に対して狭小化されており、従来以上に連続した膜状の導電性接合材料として作用し得る。尚、本発明における第1領域と第2領域との隙間は、0.8μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
【0023】
第1及び第2領域における最小寸法であるL1及びL2は、各領域の金属粉末の成形体の任意の位置で測定される寸法の内、最小となる寸法である。例えば、
図1(c)で示すように、この実施形態の導電性接合材料では、第1領域は同一幅の直線により雷文模様が形成されており、第1領域の最小寸法L1はその線幅となる。一方、
図1で第2領域の最小寸法L2は、整列配置された雷文模様の間隔の最小値が対応する。
【0024】
本発明においては、第1領域の最小寸法L1及び前記第2領域の最小寸法L2のいずれもが5μm以上であることを要する。金属ペーストによる金属粉末成形体の形成プロセスにおいて、最小寸法L1及びL2は、金属粉末を充填する孔の最小幅となる。本発明者等の検討では、この孔の幅が5μm未満であると、孔の底部にまで金属粉末を充填することが困難となる。そのため、導電性接合材料の基材に対する接触面積が減少し、放熱性や導電性を低下させることとなる。
【0025】
最小寸法L1及びL2は、いずれも10μm以上とすることが好ましい。また、最小寸法L1及びL2が大きくなる程、各段階における金属粉末の充填は容易になる。但し、最小寸法が過度に大きくなると、余剰の金属粉末の掻き取りの際、金属粉末の表面が大きく抉られて平坦性を損なう可能性がある。この観点から、最小寸法L1及びL2は、140μm以下とするのが好ましく、80μm以下とするのがより好ましい。
【0026】
また、第1領域とその残余の領域である第2領域との関係性を考慮し、第1領域の最小寸法L1及び前記第2領域の最小寸法L2については、L1とL2との比であるL1/L2を0.25以上4以下とする。この寸法差が小さくなる程、同程度の幅のパターンが形成されることとなり、金属粉末の充填が確実なものとなる傾向がある。L1/L2は、0.5以上2以下が好ましく、0.8以上1.25以下がより好ましい。
【0027】
本発明に係る導電性接合材料において、分割区分された第1領域及び第2領域の平面形状については、それらの最小寸法L1及びL2が上述した関係を具備することを前提として定めることができる。従って、第1領域を単純な矩形が配列した形状とし、残余を第2領域としても良い。
【0028】
但し、双方の領域の金属粉末成形体を安定的に形成する上で、第1領域の平面形状は、屈曲部を有する模様状とすることが好ましい。後述する第1工程・第2工程の段階的工程を経て製造される本発明の導電性接合材料においては、第2領域の金属粉末成形体の形成の際、既に第1領域の金属粉末成形体が形成されている。金属粉末成形体の形成では、余剰の金属粉末の除去のための掻き取り加工が必要であるので、その際に第1領域の金属粉末成形体が剪断力を受けて変形・破損するおそれがある。そこで、第1領域を屈曲した模様状にすることで、第1領域の金属粉末成形体の剪断強度を縦横方向・斜め方向に確保する。これにより変形等のおそれの少ない金属粉末成形体を安定的に形成することができる。
【0029】
具体的には、第1領域について、最小寸法L1を辺長とする単位正方形が2以上連続した規則的な模様状とする。単位正方形が2以上連続するとは、単位正方形が縦・横・斜めの何れかの方向で結合した状態である。また、第1領域は、最小寸法L1を線幅とする曲線が連続した規則的な模様状に形成されていてもよい。曲線が連続するとは、曲線端部同士が結合している場合に限られず、曲線の一部が他の曲線と一部と結合する場合を含む。また、連続した曲線には円や渦巻模様も含まれる。
【0030】
第1領域と残余の領域である第2領域からなる導電性接合材料の平面形状についてのより具体的な例を挙げると、
図2と
図3に示した模様状の形態が挙げられる。
図2で示した具体例は、L1を辺長とする単位正方形が連続した模様であり、市松模様、直線の波形模様である。
図1の雷文模様もこの類型に該当する。
図2の雷文模様や波形模様は、最小寸法L1の単位正方形が連続し、L1を線幅とする線により形成される模様である。また、
図2の市松模様は最小寸法L1の単位正方形が斜め方向に連続した模様といえる。一方、
図3は、曲線を主体する第1領域の具体例であり、同心円模様や青海波模様が挙げられる。
【0031】
尚、第1領域と第2領域とを合わせたときの形状及び寸法、即ち、本発明の導電性接合材料の全体形状及びその寸法については、特に制限はない。
図4で示すように、導電性接合材料の全体形状は、矩形であっても良いし円形であっても良い。寸法に関しても、接合される素子等の被接合部材を考慮しつつ任意に設定される。
【0032】
(B)金属粉末成形体の構成
本発明に係る導電性接合材料の第1領域と第2領域は、いずれも、純度99.9質量%以上、平均粒径0.005μm~1.0μmである金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)の群から選択される一種以上の金属からなる金属粉末である。
【0033】
金属粉末を構成する金属の純度を99.9質量%以上と高純度とするのは、接合材料として要求される塑性変形能を金属粉末に付与するためである。本発明の導電性接合材料は、成形体の状態からバルク金属に近い緻密化して接合部を形成する。金属粉末の高純度化は、接合工程における加圧での塑性変形を生じさせる上で必須の条件である。金属粉末の純度が99.9質量%未満と低くなるとき、金属粉末の硬度が上昇し、接合工程で金属粒子自体の塑性変形が生じ難くなり、成形体の圧縮変形が妨げられる。特に、接合時の加圧力を低圧とする場面において、好適な接合部を形成することが困難となる。
【0034】
また、金属粉末の平均粒径を1.0μm以下とするのは、1.0μmを超える粒径の金属粉末では、導電性接合材料としたときの粒子間の間隙が大きくなり過ぎる傾向がある。導電性接合材料内の空隙が大きいと、接合工程で緻密化が阻害され、好適な接合強度が得難くなる。一方、金属粉末の平均粒径の下限を0.005μmとするのは、この粒径未満では、ペースト化したときに凝集しやすくなるからである。そして、その構成金属を金、白金、銀、パラジウムのいずれかとするのは、これらの金属は導電性が良好であると共に、純金属としたときの変形性も良好だからである。尚、本発明は平均粒径0.005μm~1.0μmの範囲であれば、平均粒径の異なる複数の粉末を混合して使用することを妨げない。
【0035】
金属粉末の成形体とは、金属粉末の焼結体に限定されず、金属粉末を積層・乾燥させた未焼結の状態(以下、乾燥体とする)を含む。金属粉末の焼結体は、金属粉末同士のネッキングや熱拡散による強い結合によって形成された成形体である。金属粉末の乾燥体は、金属粉末同士は接触しているが、ネッキングや熱拡散は生じておらず比較的弱い結合で形成された成形体である。そのため、乾燥体における個々の金属粉末の硬度は、成形体になる前後で略同じである。尚、弱い結合といっても、接合工程等での使用に際して成形体が崩れる程に弱い結合ではない。本発明において、金属粉末の成形体を焼結体又は乾燥体のいずれかで形成するかは、その後の接合工程で要求される加圧力等を考慮して決められる。例えば、低圧での接合が要求される場合には、乾燥体の適用が好ましい。乾燥により形成された、熱変化の少ない金属粉末からなる成形体は、低圧力での緻密化が可能となるからである。
【0036】
尚、第1領域及び第2領域の金属粉末成形体は、双方を焼結体又は乾燥体としても良いし、いずれか一方を焼結体とし他方を乾燥体としても良い。
【0037】
本発明の導電性接合材料を構成する金属粉末の成形体は、バルク材料に対する相対密度が50%以上95%以下あるものが好ましい。相対密度とは、金属の真密度を導電性接合材料の測定密度で除し、百分率(%)で示した値である(相対密度(%)=[(導電性接合材料の測定密度)/(金属の真密度)]×100)。相対密度は、焼結体が高くなる傾向にあり、乾燥体は焼結体よりも相対密度が低くなる傾向がある。
【0038】
また、本発明の導電性接合材料では、金属粉末の成形体を第1領域と第2領域とに分割しつつ、それらの最小寸法L1、L2を規定することで大面積としつつも平坦性に優れる。平坦性については、金属粉末の成形体の平均厚さに対する最大抉れ量の比率で50%以下とする。この基準は第1、第2領域のいずれにもおいて適用される。尚、成形体の平均厚さとは、任意の断面で複数箇所の厚さを観察・測定したときの平均値である。また、最大抉れ量は、厚さが最小となった部位における平均厚さとの偏差である。尚、本発明に係る導電性接合材料の厚さについては、特に制限されることはない。
【0039】
以上説明した金属粉末の成形体からなる導電性接合材料は、接合後の加熱によって金属粒子間に熱拡散が生じて緻密質の焼結体へ変化して半導体チップと基板とを強固に接合することができる。また、本発明に係る導電性接合材料は、加圧時の変形抵抗を抑えながら適度な硬さを有する接合部材である。半導体チップ等の接合時の位置決めも正確に高精度で行うことができる。
【0040】
(C)導電性接合材料を備える接合部材
本発明に係る導電性接合材料は、適宜の基材の表面上に形成され、接合部材として利用される。基材は、導電性接合材料の取扱いを効率的にするため、導電性接合材料を支持するための部材である。基材は、半導体デバイス等の基板であっても良い。この場合、本発明の導電性接合材料を基板上に形成し、その後素子等を接合してデバイスとすることができる。また、本発明の導電性接合材料は、転写基板(特許文献4)に適用することができる。この場合には、一旦転写基板に導電性接合材料し、その後、デバイスの基板等に転写されて素子等との接合材料として機能する。
【0041】
基材の材質に関しては、導電性接合材料を保持可能であるものであれば、どのような材質でも良い。例えば、ガラス、石英、シリコンもしくはセラミックス等の材質が例示される。また、基材の形状及び寸法は、特に限定されず、矩形状、円形状、多角形状等の平板が適用される。尚、基材は、前記したガラスやシリコンのみであっても良いし、それらの表面上に金属又はこれらの金属の酸化物からなる薄膜が形成されていても良い。この薄膜は、基材と導電性接合材料との密着性を向上させる下地膜となる。下地膜は、Ti、Cr、Cu、Ni等の金属又は金属酸化物で構成され、少なくとも1層以上の薄膜で構成することができる。下地膜の厚さは、5nm以上300nm以下とするのが好ましい。
【0042】
本発明の接合部材は、基材上に導電性接合材料が1つのみ形成されていても良いし、複数の導電性接合材料が形成されていても良い。
【0043】
本発明に係る接合部材は、導電性接合材料と基材との間に、金属又はこれらの金属の酸化物からなる中間膜が形成されても良い。中間膜は、上記した下地膜と同様に、導電性接合材料と基材との密着性を調整することができ、これにより導電性接合材料の取扱い性と接合品質を確保する。即ち、中間膜により、接合部材の取扱い時に導電性接合材料の脱落を防止する一方、接合工程で導電性接合材料を基材から剥離する際には導電性接合材料の基材への残留を抑制することができる。
【0044】
中間膜の材質は、Au、Ag、Pt、Pdの群から選択される一種以上の金属が好ましく、導電性接合材料と同種の金属がより好ましい。これらの材質を選択する理由は、中間膜と導電性接合材料を構成する金属との間の親和性を高くしつつ、低抵抗化を行うことを目的とする。この目的を妨げない限りで、前記金属の純金属及び合金が適用できる。中間膜も、少なくとも1層以上の薄膜で構成することができる。また、基板と導電性接合材料との間には、上記した下地膜と共に中間膜が形成されていても良いし、中間膜のみが形成されていても良い。
【0045】
中間膜は単層又は複数層で構成することができる。中間膜を複数層形成するとき、同じ金属の組み合わせでも良いし、異なる金属を組み合わせても良い。但し、導電性接合材料と接触する層の中間膜は、導電性接合材料と同種の金属がより好ましい。
【0046】
中間膜の厚さは、5nm以上300nm以下が好ましい。5nm未満では上記効果が薄く、300nmを超えても効果に差異はなく、材料コストの上昇になるだけである。中間膜を複数層形成するとき、合計の厚さが上記範囲にあることが好ましい。
【0047】
中間膜は、少なくとも導電性接合材料と基材との間に設けられる。導電性接合材料の底面のみに中間膜が有っても良いし、基材表面の全面に中間膜を形成しても良い。また、隣接する導電性接合材料の間隔部分に中間膜が存在していても良い。更に、中間膜は、少なくとも導電性接合材料の底面にあれば良いが、導電性接合材料の側面に中間膜が形成されていても良い。
【0048】
(D)導電性接合材料の製造方法
次に、本発明の導電性接合材料の製造方法の実施態様について説明する。本発明の導電性接合材料は、所定の金属粉末を含む金属ペーストを基材上に塗布し、乾燥又は焼結して成形体を形成する工程を基本的な工程とする。そして、上述したように、本発明においては、狭小化された隙間を有する金属粉末の成形体を形成すべく、成形体を第1、第2領域に分割し、前記した金属粉末の成形体を形成する工程を各領域について段階的に第1工程、第2工程として2回実施する。以下の本発明に係る導電性接合材料の製造方法についての説明では、基材に対する準備的工程である(I)レジストの被覆工程と貫通孔の形成工程と、第1工程と第2工程で共通する(II)金属ペーストの塗布による貫通孔への充填工程、(III)金属粉末を成形体とする工程、について説明し、その上で全体工程を説明する。
【0049】
(I)レジストの被覆工程と貫通孔の形成工程
本発明の導電性接合材料の第1領域及び第2領域の金属粉末成形体は、
図2等のように模様状に形成されることが想定されている。それらは矩形等の単純形状の成形体よりも複雑な形状となるので、レジスト(保護膜)を用いたパターンニングで形成されることが好ましい。レジストについては、通常のデバイス製造使用されるフォトレジストが好ましいが、感光波長やポジ型・ネガ型等の種類に制限はない。レジストの塗布方法についても制限はなく、従来と同様の方法が適用できる。そして、レジストによる被覆膜を形成した後、第1領域の形状に沿ってパターンニングされた貫通孔を形成する。貫通孔とは、レジスト膜を貫通する孔であり、レジスト表面から底面(基材表面)に到達する孔である。貫通孔の形成工程は、レジストの露光とエッチングであるが、これらの方法も一般的なものが適用される。
【0050】
(II)金属ペーストの塗布による貫通孔への充填工程
レジストによる被覆と貫通孔を形成する上記の準備工程後は、基材に金属ペーストを塗布する。金属ペーストは、純度99.9質量%以上で平均粒径0.005μm~1.0μmである金粉、銀粉、白金粉及びパラジウム粉の群から選択される一種以上の金属粉末を有機溶剤に分散させたスラリーとして構成される。有機溶剤としては、その沸点が250℃以下のものが好ましい。有機溶剤の沸点を250℃以下とした理由は、乾燥に高温かつ長時間を要するため、成形体の金属粒子間にネッキングが形成され、接合時の押圧による金属粒子の移動が阻害されて接合強度が低下するためである。
【0051】
本発明で利用可能な有機溶剤としては、分岐鎖状飽和脂肪族2価アルコール類、モノテルペンアルコール類、ハロカーボン類等が適用できる。より具体的には、分岐鎖状飽和脂肪族2価アルコールとしては、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールといったこれらの誘導体等が用いられる。また、モノテルペンアルコールとしては、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、メントール、テルピネオール(α、β)、カルベオール、ツイルアルコール、ピノカンフェオール、β-フェンチルアルコール、ジメチルオクタノール、ヒドロキシシトロネロール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、及び、これらの誘導体等が用いられる。また、鎖状飽和炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、及び、これらの誘導体等が用いられる。また、一価のカルボン酸と多価アルコールとの縮合反応より得られる化合物も有効であり、例えば、トリエチレングリコール・ジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール・ジ-2-エチルプタノエートがある。ハロカーボン類の有機溶剤としては、テトラクロロエチレン、テトラブロモエチレン、テトラヨードエチレン、トリクロロメタンが適用できる。尚、有機溶剤の沸点は、その炭素数に依存する傾向があるため、適用する溶剤はそれぞれ炭素数5~20であるものが好ましい。この観点から、芳香族炭化水素でも良く、例えば厚膜ペースト用溶剤に用いられるテルピネオール、メンタノール、アルキルベンゼンも機能的に問題ない。有機溶剤は、1種類の有機溶剤を適用しても良いが、沸点の相違する2種以上の有機溶剤を混合したものを適用しても良い。有機溶剤を低沸点と高沸点の溶剤で構成することで、金属粒子の含有率調整の処理において、低沸点側の有機溶剤を揮発除去させて、調整を容易なものとすることができるからである。
【0052】
金属ペーストの基板への塗布方法は特に限定されるものではなく、例えば、スピンコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、ブレードコーティング等、基材のサイズに対応させて種々の方法を用いることができる。金属ペーストの塗布は、常温・常圧で行うことができる。但し、減圧雰囲気で塗布しても良い。特に、レジストによるパターン形成された基材に金属ペーストを塗布する場合には、金属ペーストを細孔に十分に充填するため、減圧雰囲気下で塗布することが好ましい。
【0053】
(III)金属粉末成形体の形成工程
金属ペーストの塗布により貫通孔に充填された金属粉末は、乾燥又は焼結されることで金属粉末の成形体となる。この工程における処理を乾燥とするか焼結とするかは、成形体に対する要求強度や接合材料として使用する際の加圧力の要求を考慮して設定される。
【0054】
金属粉末の成形体を乾燥体とするとき、乾燥処理は、無加圧で金属ペーストを加熱し、ペースト中の有機溶剤を揮発・除去しつつ成形体を形成する。乾燥処理の処理条件としては、乾燥温度としては100℃未満とする。この温度を超える高温で処理すると、無加圧であっても金属粉末の焼結が生じて成形体の一部又は全体が焼結体となる。乾燥温度は、65℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。乾燥温度の下限に関しては、有機溶剤が揮発可能な温度以上であれば良い。但し、接合時の加圧で好適な変形を示す乾燥体を形成するためには、20℃以上とすることが好ましい。乾燥処理の雰囲気は、大気圧下でも良いが、0.01Pa以上40kPa以下の真空雰囲気としても良い。真空乾燥は乾燥温度の低温化に寄与し、その場合の温度は10℃以上30℃以下とするのが好ましい。これらの乾燥処理条件での乾燥時間は、0.1時間以上1時間以下とするのが好ましい。これらの乾燥処理は、熱的に比較的マイルドな条件によるものであり、通常は金属ペースト中の金属粉末の配列を崩さずに溶剤を除去することができる。
【0055】
金属粉末の成形体を焼結体とする場合の焼結条件は、加熱温度を80℃以上300℃以下とするが好ましい。80℃未満では焼結状態を得ることが困難である。また、300℃を超える温度で焼結すると、焼結が過度に進行して金属粉末間のネッキングが進行して強固に結合してしまい、接合工程に供したとき緻密な接合部を形成し難くなる。また、そもそも本発明は、接合部材を保護する観点から300℃以下での接合を目指すものだからである。尚、焼結の際の加熱時間は、5分以上120分以下とするのが好ましい。また、焼結体の形成に際しては、焼結前に上記した乾燥処理を予備的に行っても良い。
【0056】
上記の乾燥又は焼結の処理により、本発明に係る導電性接合材料及び接合部材を製造することができる。また、上記したように、本発明の導電性接合材料を備える接合部材は、導電性接合材料と基材との間に、少なくとも1層以上の中間膜を備えていても良い。このとき中間膜の形成は、レジストの塗布と貫通孔を形成した後で金属ペーストを塗布する前に行うことが好ましい。これにより、導電性接合材料と基材との間に選択的に中間膜を形成できる。また、レジストの塗布後に中間膜を形成してレジストを金属で被覆することで、金属ペーストの溶剤がレジストに直接接触することを抑制することができ、溶剤によるレジストのダメージを低減することができる。尚、中間膜の形成については、スパッタリング、真空蒸着、化学蒸着等の通常の薄膜成形プロセスが適用できる。
【0057】
上記した(I)~(III)の基本的な工程を有する本発明の導電性接合材料の製造方法について、その具体的態様を
図5aと
図5bを用いて説明する。この具体的態様は、導電性接合材料と基材との間に中間膜を形成することを含むプロセスである。
図5aは第1領域の金属粉末の成形体を形成する第1工程の説明であり、
図5bは第2領域の金属粉末の成形体を形成し、本発明に係る導電性接合材料の製造を完了させる第2工程の説明である。
【0058】
図5aを参照すると、まず、基材1を用意してレジスト2を基材1に塗布する(
図5a(i))。基材1には、予め下地膜としてTi膜等を形成していても良い。その後、第1領域となる模様状のパターンを有するフォトマスク3を使用して、第1領域となる部位のレジストを露光及びエッチングして貫通孔4を形成する(
図5a(ii))。次いで、貫通孔の底面及びレジスト表面に金等の中間膜5を成膜する(
図5a(iii))。
【0059】
次に、基材1のレジスト2の上に金属ペースト6を塗布して第1領域の貫通孔4に金属粉末を充填する(
図5a(iv))。そして、乾燥処理を行って金属粉末の成形体を形成し(
図5a(v))、余剰の金属粉末をスキージ等で除去することで第1領域に対応する金属粉末成形体が形成される(
図5a(vi))。
【0060】
以上の第1工程で第1領域を形成した後、第2工程で第2領域に金属粉末成形体を形成する。第2工程では、第2領域に対応する部位のレジストを露光・エッチングして除去する必要がある。ここでは、一旦レジスト表面全体に残留している中間膜をエッチング除去した後、マスキング3により第1及び第2領域以外のレジスト表面に金属膜8を形成する(
図5b(i))。そして、露光及びエッチングして第2の領域となる貫通孔9を形成し(
図5b(ii))、更に、当該貫通孔の底面に中間膜5を成膜する(
図5b(iii))。尚、この実施形態の他、レジスト表面全体の中間膜をエッチング除去した後、フォトマスクで第2領域のレジストのみを露光・エッチングしても良い。
【0061】
第2領域に対応する貫通孔の形成後は、第1工程と同様に金属ペースト6を塗布して貫通孔に金属粉末を充填し、乾燥処理をして第2領域の金属粉末成形体を形成する((
図5b(iv))。その後、余剰の金属粉末を除去する(
図5b(v))。最後にレジストを除去することで、第2領域の金属粉末成形体10が形成され、本発明の導電性接合材料11が製造される(
図5b(vi))。
【0062】
(E)導電性接合材料による接合方法の態様
本発明に係る金属粉末成形体からなる導電性接合材料は、半導体デバイス等の基板と素子・チップ等の被接合材との接合に好適に使用される。この導電性接合材料を適用する接合方法の態様について、3つの具体例を
図6(a)、(b)、(c)により説明する。
【0063】
図6(a)で示す態様では、本発明の接合部材の基材としてデバイス等の基板を適用し、基板上に導電性接合材料を形成した接合部材に被接合部材を接合する。このときの接合工程では、被接合部材を導電性接合材料上に載置した後、加圧及び加熱することで導電性接合材料の金属粉末を焼結して緻密化された接合部を形成する。
【0064】
接合工程における加圧力は、加圧される半導体チップが耐え得る圧力を考慮して設定される。Si系半導体チップのように、比較的強度が高い半導体チップであれば、加圧力30MPa以下での接合が可能である。一方、強度が低く脆いものが多い化合物半導体チップの接合については、加圧力を10MPa以下とするのが好ましく、5MPa以下が特に好ましい。加圧力の下限は、半導体チップの種類によらず、1MPa以上とすることが好ましい。1MPa未満では、金属粉末の変形が進行し難く、接合部の緻密化を図ることができない。
【0065】
接合工程における加熱は、金属粉末の塑性変形能を高めて加圧による緻密化をアシストすることを主目的とする。また、この加熱は、導電性接合材料の一部又は全体において金属粉末の焼結の進行も期待される。加熱温度は、80℃以上300℃以下が好ましい。80℃未満では、金属粒子の塑性変形能を高めることができず強固な接合が得られない。また、300℃を超えると半導体チップや基板の損傷が懸念される。
【0066】
尚、加熱温度は、半導体チップや基板の耐熱温度を考慮して設定される。例えば、樹脂系の有機基板では、ガラス転移温度(Tg)を超えると、機械的強度や誘電率などの物性が大きく変化してしまう恐れがある。このような耐熱性が低い基板に対する加熱温度は、230℃以下が好ましく、200℃以下とすることが更に好ましい。本発明は、接合工程における加圧力の低下と共に、加熱温度の低減にも寄与することができる。尚、導電性接合材料は、半導体チップ側から又は基板側からの一方又は双方から加熱される。いずれからの加熱も上記の範囲内とすることが好ましい。
【0067】
接合工程における加熱時間(加圧時間)は、導電性接合材料と被接合部材との接合強度や導電性接合材料の緻密性に影響を与え、時間の増大と共に結合力と緻密性が高くなる。加熱時間については、0.5秒以上120秒以下と比較的短時間であっても、導電性接合材料を圧縮変形させることは可能であり、半導体チップと基板とを接合することができる。また、加熱時間を10分以上120分以下とすることで、より強固な接合を図ることもできる。
【0068】
また、上記の接合工程を行った後、導電性接合材料を加熱しても良い。かかる後熱処理を行うことで、金属粉末を焼結(ポストシンタリング)させ、導電性接合材料内部の空隙を縮小又は低減させて更なる緻密化を図ることができる。例えば、接合工程の加熱時間を0.5秒以上120秒以下として接合した後に、ポストシンタリングのための加熱処理を行っても良い。
【0069】
導電性接合材料をポストシンタリングするための加熱温度は、100℃以上300℃以下が好ましい。100℃未満では目的とする焼結及び緻密化の進行が期待できない。300℃を超えると焼結が過度に進行し、接合部のみが硬すぎる状態となるからである。この加熱温度も、半導体チップや基板の耐熱温度を考慮して設定される。よって、樹脂系の有機基板等の耐熱性が低い基板に対する加熱温度は、230℃以下が好ましく、200℃以下とすることが更に好ましい。
【0070】
ポストシンタリングの加熱時間は、10分以上120分以下とすることが好ましい。10分未満では目的とする焼結を完了させることができず、120分を超えて加熱してもそれ以上の緻密化は期待できない。尚、この焼結のための熱処理は、無加圧で行っても良いが、加圧しても良い。加圧する場合は、10MPa以下とすることが好ましい。
【0071】
図6(b)で示す接合工程の態様では、接合部材の基材は導電性接合材料を形成・支持するための支持材として機能し、導電性接合材料が被接合部材と共に基材とは別のデバイスの基板に接合される。この態様では、素子等の被接合部材に導電性接合材料を加圧及び加熱してマウント(固定)した後、被接合部材と導電性接合材料を基材からピックアップする。そして、ピックアップされた導電性接合材料と被接合部材をデバイス等の基板に載置して加圧・加熱して接合する。
【0072】
被接合部材に導電性接合材料をマウントするときの固定条件としては、加圧力を1MPa以上5MPa以下とすることが好ましい。また、加熱温度については、100℃以上200℃以下とすることが好ましい。被接合部材のマウント後、半導体チップを基材からピックアップすることで、導電性接合材料が固定された半導体チップが得られる。
【0073】
そして、導電性接合材料が固定された被接合部材を、デバイス等の基板上に載置し、加圧及び加熱することで、被接合部材と基板とが接合される。この接合工程における加圧力・加熱・加圧加熱時間については、加圧1MPa以上30MPa以下、加熱80℃以上300℃以下とすることが好ましい。好適条件の詳細は、上記した
図6(a)の態様の接合工程と同様である。
【0074】
また、この接合工程の態様でも、上記した
図6(a)の態様と同様の条件で導電性接合材料を加熱するポストシンタリングを行っても良い。
【0075】
尚、この態様で被接合部材を接合するデバイス等の基板の材質及び形状・寸法に制限はない。樹脂系の有機基板にも対応できるし、Si系材料からなる基板(ウエハー)やセラミック基板等にも有用である。
【0076】
図6(c)の接合工程の態様は、基材上の導電性接合材料をデバイス等の基板に転写し、その後、素子等の被接合部材を基板に接合する。この態様は、接合部材の基材が導電性接合材料の支持材として使用される点で
図6(b)の態様と同じである。この態様では、導電性接合材料が形成された接合材に、デバイス等の基板を載置し加熱して導電性接合材料を基板に転写した後、基板をピックアップする。そして、基板上に転写された導電性接合材料に素子等の被接合部材を載置して加圧・加熱して接合する。
【0077】
接合部材の導電性接合材料を基板へ転写するときの加熱は、転写される導電性接合材料が100~200℃となるように加熱することが好ましい。接合部材の基材から導電性接合材料を基板へ容易に転写できるようにするためである。この加熱は、接合部材の基材と共に導電性接合材料を加熱しても良い。また、加熱と共に導電性接合材料の降伏強度以下の応力で加圧することが好ましい。
【0078】
導電性接合材料が転写された基板に被接合部材を接合する接合工程における加圧力・加熱・加圧加熱時間については、加圧1MPa以上30MPa以下、加熱80℃以上300℃以下とすることが好ましい。好適条件の詳細は、上記した
図6(a)の態様の接合工程と同様である。また、この接合工程でもポストシンタリングのための加熱を行っても良い。
【0079】
以上説明した
図6(a)~(c)の接合工程の具体的態様においては、デバイス等の基板と素子等の被接合部材との接合面には金属膜を形成することが好ましい。基板と被接合部材との密着性向上を図るためである。金属膜の形成は、被接合部材の接合面及び基板のいずれか一方又は双方に行うことができる。金属膜としては、Au、Ag、Pt、Pdのいずれか一種以上の金属よりなるものが好ましく、単層構造でも良いし多層構造でも良い。また、導電性接合材料と接触する面(層)においては、導電性接合材料と同種の金属であるものがより好ましい。
【実施例0080】
本発明の具体的な実施例について説明する。本実施例では、金属粉末として金粉末を用いた金属ペースト(金ペースト)を作製し、導電性接合材料及び接合部材を製造した。そして、この接合部材を用いた半導体チップの接合試験を実施した。
【0081】
[金ペーストの作製]
湿式還元法により製造された純度99.9質量%の金粉(平均粒径:0.3μm)を、有機溶剤としてテトラクロロエチレン(製品名:アサヒパークロール)に混合して金属ペースト(金ペースト)を調整した。金ペーストの金粉末の含有量は、90質量%とした。また、金粉末の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)
による観察像(30000倍)を画像解析し、100個の金粒子の粒径を測定して平均粒径を算出した。
【0082】
[第1領域の形成(第1工程)]
上記した
図5a、bと同様の工程に従って、第1、第2領域からなる導電性接合材料を製造した。基材には、シリコンウエハ(直径150mmφ、板厚0.6mm)を使用した。基材には予め全面に下地膜であるTi膜(厚さ50nm)が成膜されている。まず、基材全面にレジストを厚さ10μmで塗布した後、
図1と同様の雷文模様のパターンを有するCr金属製のフォトマスクを被せて露光し、エッチング液で第1領域となる部分のレジストを除去し貫通孔を形成した。そして、金属膜として膜厚200nmの金をスパッタリングにより成膜した。
【0083】
次に、上記で作製した金ペーストを基材上に滴下し、ヘラで広げるブレードコーティング方式にて塗布し貫通孔に金粉末を充填した。金ペースト塗布後、真空乾燥にて貫通孔内の金粉末を成形体とした。真空乾燥の条件は、雰囲気10
-1Paで室温にて1時間とした。その後、余剰の金粉末をスキージで掻き取り除去し、第1領域の金属粉末成形体を形成した。
図7(a)は、この段階における第1領域の金属粉末成形体を上方から撮影した写真である。この図において、濃色部分が金属粉末成形体であり、淡色部分はレジストである。
【0084】
[第2領域の形成(第2工程)]
レジスト表面上の金膜をエッチング除去した後、第1及び第2領域をマスクして再度金膜(200nm)を成膜し、上記と同様の条件で露光及びエッチングして第2領域のレジストを除去して第2領域となる貫通孔を形成した。この貫通孔の底部に金膜(200nm)をスパッタリングした。
図7(b)は、この段階における第1領域の金属粉末成形体を上方から撮影した写真である。この図において、濃色部分が金属粉末成形体であり、淡色部分は貫通孔である。
【0085】
そして、第2領域に対応する貫通孔に上記の金ペーストを塗布して乾燥後、上記の金粉末を除去した。金ペーストの塗布方法、乾燥条件は、第1工程と同じとした。
【0086】
最後に、残ったレジストの表面の金膜をエッチング除去し、レジストを剥離除去した。これにより、第1領域及び第2領域に金属粉末成形体を有する導電性接合材料が製造された。
図8は、本実施例で製造した導電性接合材料の上方からの外観写真(
図8(a))と、模様の中心付近における断面写真(
図8(b))である。第1領域と第2領域は極めて近接しており、その隙間は0.5μm程度である。実質的に連続した膜状の導電性接合材料となっている。この実施例においては、第1領域である雷文模様部分の最小寸法L1は模様の線幅であり20μmである。また、第2領域は模様と模様との間隙部分であり、その最小寸法L2は、20μmであった(L1/L2=1)。導電性接合材料の平坦性についてみると、厚さ平均が11μmであり、最大抉れ量は3μmであった。平均厚さに対する最大抉れ量の比率は27%であるので、本実施例の導電性接合材料の平坦性は良好であることが確認された。
【0087】
[参考例]
参考例として、従来技術(特許文献3)を参照したパターンに基づき、金属ペーストの塗布・乾燥を2段階で行った。この参考例では、
図9(a)のように、実施例と同じ基材と金ペーストを用いて、矩形(20μm×20μm)の金属粉末成形体を4μmの間隔で形成した。そして、形成した金属粉末成形体の隙間を充填するように同じ金ペーストを塗布して乾燥させた。このときの金属粉末成形体の形成方法は、基本的に実施例と同じとした。
【0088】
図9(b)は、2回目の金ペーストの塗布・乾燥後に得られた、参考例の導電性接合材料の断面写真である。図に示すように、金属粉末成形体の表面付近では金粉末が充填されているので、表面上は隙間のない平坦な導電性接合材料であるといえる。しかし、金属粉末は隙間の底面にまで充填されていないので、基板との界面における隙間はそのまま残っていた。この参考例の導電性接合材料の隙間は、4μmとさほど大きくないともいえるが、導電性接合材料の大面積化を図ると隙間の割合も大きくなり、その分、放熱性の低下が懸念される。金属ペーストによる金属粉末成形体の形成を2段階で行う場合には適切な間隔(5μm以上)を形成することが必要であると考えられる。
【0089】
[接合試験]
上記した実施例で製造した接合部材を用いて、半導体チップの接合試験を行った。ここでは、上記で
図6(b)と共に説明した態様に基づき、接合部材の導電性接合材料を半導体チップに接合・転写した後、これを基板に接合した。まず、接合部材の導電性接合材料に半導体チップとしてSiチップ(板厚0.525mm×2mm□)を転写した。Siチップの接合面には、金属膜として、Ti(厚さ50nm)、Pt(厚さ50nm)、Au(厚さ200nm)が予め成膜されている。
【0090】
Siチップを導電性接合材料の上に載置した後、押圧及び加熱して導電性接合材料をSiチップに転写した。この転写工程の加熱条件は、基板側温度を200℃、半導体チップ側温度を200℃とした。加圧条件は1.7MPaとして10分間加圧した。加熱・加圧後にSiチップと転写された導電性接合材料をピックアップした。
【0091】
そして、このSiチップを基板に載置し、押圧及び加熱することで導電性接合材料を介してSiチップを基材に接合した。この接合工程の加熱条件は、基板側温度を250℃、半導体チップ側温度を250℃とした。加圧条件は1.7MPaとして60分間加圧した。
【0092】
以上の工程で半導体チップを接合した後、接合部のせん断強度を測定した。せん断強度の測定は、ダイシェア測定機を用いて、シェア速度100μm/s、ステップバック間隔100μmでせん断荷重を測定し、半導体チップ(2mm□)の面積で除した値とした。その結果、実施例の接合部のせん断強度は約10MPaであり、十分な接合強度が得られていることを確認した。
以上説明したように、本発明に係る導電性接合材料は、金属ペーストの塗布と成形を2段階で行うことで形成される第1領域及び第2領域に分割されるが、それらの隙間が極めて狭小であり、実質的に連続した膜状の導電性接合材料となる。そして、本発明に係る導電性接合材料は、金属ペーストを前駆体としつつも、大面積化も可能である。本発明は、は半導体素子の基板へのダイボンディングやフリップチップ実装に適用される導電性接合材料として優れた放熱性・導電性を発揮する。