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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174475
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】医用機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
A61B8/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092317
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】服部 慎太郎
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE11
4C601FE01
4C601GA01
4C601GA13
4C601GA14
(57)【要約】
【課題】湾曲部の固定及び固定解除操作に関して使い勝手を向上させることができる医用機器を提供する。
【解決手段】外周面に鋸歯部102に設けられたディスク52をスプロケット50と一体に回転可能に設け、係止部106が鋸歯部102に係止する係止位置と鋸歯部102に係止しない非係止位置との間で遷移可能なプランジャ104を設け、切替操作部26を操作部12の長手軸B周りに回転操作することにより、プランジャ104を係止位置と非係止位置との間で選択的に切り替える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲可能な湾曲部を有する挿入部と、
前記挿入部の基端側に連設され、湾曲操作部材を有する操作部と、
前記操作部の内部に配置され、前記湾曲操作部材により回転駆動される回転駆動体と、
前記挿入部及び前記操作部の内部に挿通され、前記回転駆動体に連動して進退することにより前記湾曲部を湾曲させる湾曲操作ワイヤと、
前記回転駆動体と一体に回転可能であり、外周面に凹凸部が設けられた回転部材と、
前記凹凸部に係止可能な係止部を有し、前記係止部が前記凹凸部に係止する係止位置と、前記係止部が前記凹凸部に係止しない非係止位置との間で遷移可能な係止部本体と、
前記操作部の長手軸周りに回転可能に設けられ、前記係止部本体を前記係止位置と前記非係止位置との間で選択的に切り替える切替操作部と、
を備える医用機器。
【請求項2】
前記切替操作部は、前記長手軸周りに回転する切替板を有し、
前記切替板は、前記切替板の前記回転部材の側の面において異なる周方向の位置にそれぞれ配置された第1当接面及び第2当接面を有し、
前記第1当接面は、前記第2当接面よりも前記回転部材との距離が短い位置に設けられ、
前記係止部本体が前記第1当接面に当接した場合には前記係止部本体が前記係止位置に配置され、且つ、前記係止部本体が前記第2当接面に当接した場合には前記係止部本体が前記非係止位置に配置される、
請求項1に記載の医用機器。
【請求項3】
前記切替板は、前記切替板の前記回転部材の側の面において前記第1当接面及び前記第2当接面とは異なる周方向の位置に第3当接面を有し、
前記第3当接面は、前記第1当接面よりも前記回転部材との距離が短い位置に設けられ、
前記係止部本体が前記第3当接面に当接した場合には前記回転部材が回転不能な状態となる、
請求項2に記載の医用機器。
【請求項4】
前記係止部本体は、
前記回転部材の側に設けられたボール状の前記係止部と、
前記係止部を前記回転部材の側に向けて付勢する第1付勢部材と、
を有する、
請求項2に記載の医用機器。
【請求項5】
前記係止部本体は、前記係止部本体を前記切替板の側に向けて付勢する第2付勢部材を有する、
請求項4に記載の医用機器。
【請求項6】
前記係止部本体は、前記切替板の前記回転部材の側の面に接して回転するコロ体を有する、
請求項5に記載の医用機器。
【請求項7】
前記第1付勢部材は、前記係止部本体が前記係止位置に位置した状態において、前記回転部材が回転した場合に前記係止部が前記凹凸部を乗り越え可能な付勢力を有する、
請求項4に記載の医用機器。
【請求項8】
前記回転駆動体がスプロケットである、
請求項1に記載の医用機器。
【請求項9】
前記回転駆動体がプーリーである、
請求項1に記載の医用機器。
【請求項10】
前記回転駆動体がピニオンである、
請求項1に記載の医用機器。
【請求項11】
前記回転駆動体と前記回転部材とが一体である、
請求項1に記載の医用機器。
【請求項12】
前記凹凸部は、前記回転部材の外周面に一定のピッチで設けられる、
請求項1に記載の医用機器。
【請求項13】
前記回転駆動体、前記回転部材、前記係止部本体は、それぞれ一対備えられ、
前記切替操作部は、一対の前記係止部本体のうち少なくとも一方の係止部本体を前記係止位置と前記非係止位置とに選択的に切り替える、
請求項1から12のいずれか1項に記載の医用機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用機器に係り、特に、挿入部に設けられた湾曲部を操作部の湾曲操作部材によって湾曲操作する医用機器に関する。
【背景技術】
【0002】
医用機器の1つである内視鏡は、操作部に設けられた湾曲操作レバーを操作して挿入部の湾曲部を湾曲操作する。これにより、挿入部の先端部を所望の方向に向けることができる。また、内視鏡では、湾曲部を所望の湾曲状態で固定及び固定解除するために、湾曲操作レバーの操作をロック及びロック解除するロック機構が設けられているものがある(特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1には、湾曲操作用のワイヤが巻回されたプーリーを回転させる湾曲操作レバーと、湾曲操作レバーの操作をロックするロック機構と、を備える内視鏡が開示されている。上記のロック機構は、ロックレバーと、ロックレバーと共に回転する偏心したロック板と、プーリー回転軸に設けられロック板が当接される係止用テーパリングと、を有している。
【0004】
特許文献1によれば、ロックレバーの一方向の操作によってロック板を係止用テーパリングに押圧した場合に、湾曲操作レバーの操作がロック状態となる。また、ロックレバーの他方向の操作によってロック板を係止用テーパリングから退避させた場合に、ロック解除されて湾曲操作レバーの操作がフリーな状態になる。
【0005】
特許文献2には、湾曲部を湾曲操作する操作ノブと、操作ノブの操作をロックするロック機構(手段)と、を備える内視鏡が開示されている。上記のロック機構は、ラチェットギアと、ラチェットギアに噛み合い一方が右回転を許し他方が左回転を許す一対の爪部材と、一方向の操作ノブの回転により一方の爪部材をラチェットギアから引き離し他方向の操作ノブの回転により他方の爪部材をラチェットギアから引き離す解除部材と、を有している。
【0006】
特許文献2によれば、操作中止時には一対の爪部材とラチェットギアとが噛み合うことで、操作ノブの操作が自動的にロック状態となる。また、操作中には解除部材により操作ノブの操作が可能となる。また、操作ノブを降下すると、一対の爪部材とラチェットギアとの噛み合いが完全に解除されて、操作ノブの操作がフリーな状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-23064号公報
【特許文献2】実開昭62-54702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、湾曲操作レバーの操作をロックする場合にもフリーにする場合にもその都度ロックレバーを操作しなければならないので、施術者にとって使い勝手が悪いという問題がある。
【0009】
これに対し、特許文献2に開示された技術は、操作ノブの操作中止時には操作ノブの操作が自動的にロック状態となるので、上記の特許文献1と比較して使い易いというメリットがある。
【0010】
しかしながら、特許文献2によれば、操作ノブの操作をフリーにする場合には、操作ノブを降下させるという複雑な操作が必要となるので、やはり特許文献1と同様に施術者にとって使い勝手が悪いという問題がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、湾曲部の固定及び固定解除操作に関して使い勝手を向上させることができる医用機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1形態に係る医用機器は、上記の目的を達成するために、湾曲可能な湾曲部を有する挿入部と、挿入部の基端側に連設され、湾曲操作部材を有する操作部と、操作部の内部に配置され、湾曲操作部材により回転駆動される回転駆動体と、挿入部及び操作部の内部に挿通され、回転駆動体に連動して進退することにより湾曲部を湾曲させる湾曲操作ワイヤと、回転駆動体と一体に回転可能であり、外周面に凹凸部が設けられた回転部材と、凹凸部に係止可能な係止部を有し、係止部が凹凸部に係止する係止位置と、係止部が凹凸部に係止しない非係止位置との間で遷移可能な係止部本体と、操作部の長手軸周りに回転可能に設けられ、係止部本体を係止位置と非係止位置との間で選択的に切り替える切替操作部と、を備える。
【0013】
本発明の第2形態に係る医用機器は、第1形態において、切替操作部は、長手軸周りに回転する切替板を有し、切替板は、切替板の回転部材の側の面において異なる周方向の位置にそれぞれ配置された第1当接面及び第2当接面を有し、第1当接面は、第2当接面よりも回転部材との距離が短い位置に設けられ、係止部本体が第1当接面に当接した場合には係止部本体が係止位置に配置され、且つ、係止部本体が第2当接面に当接した場合には係止部本体が非係止位置に配置されることが好ましい。
【0014】
本発明の第3形態に係る医用機器は、第2形態において、切替板は、切替板の回転部材の側の面において第1当接面及び第2当接面とは異なる周方向の位置に第3当接面を有し、第3当接面は、第1当接面よりも回転部材との距離が短い位置に設けられ、係止部本体が第3当接面に当接した場合には回転部材が回転不能な状態となることが好ましい。
【0015】
本発明の第4形態に係る医用機器は、第2形態又は第3形態において、係止部本体は、係止部本体を切替板の側に向けて付勢する第2付勢部材を有することが好ましい。
【0016】
本発明の第5形態に係る医用機器は、第2形態から第4形態のいずれかにおいて、係止部本体は、切替板の回転部材の側の面に接して回転するコロ体を有することが好ましい。
【0017】
本発明の第6形態に係る医用機器は、第1形態から第5形態のいずれかにおいて、係止部本体は、回転部材の側に設けられたボール状の係止部と、係止部を回転部材の側に向けて付勢する第1付勢部材と、を有することが好ましい。
【0018】
本発明の第7形態に係る医用機器は、第6形態において、第1付勢部材は、係止部本体が係止位置に位置した状態において、回転部材が回転した場合に係止部が凹凸部を乗り越え可能な付勢力を有することが好ましい。
【0019】
本発明の第8形態に係る医用機器は、第1形態から第7形態のいずれかにおいて、回転駆動体がスプロケットであることが好ましい。
【0020】
本発明の第9形態に係る医用機器は、第1形態から第7形態のいずれかにおいて、回転駆動体がプーリーであることが好ましい。
【0021】
本発明の第10形態に係る医用機器は、第1形態から第7形態のいずれかにおいて、回転駆動体がピニオンであることが好ましい。
【0022】
本発明の第11形態に係る医用機器は、第1形態から第10形態のいずれかにおいて、回転駆動体と回転部材とが一体であることが好ましい。
【0023】
本発明の第12形態に係る医用機器は、第1形態から第11形態のいずれかにおいて、凹凸部は、回転部材の外周面に一定のピッチで設けられることが好ましい。
【0024】
本発明の第13形態に係る医用機器は、第1形態から第12形態のいずれかにおいて、回転駆動体、回転部材、係止部本体は、それぞれ一対備えられ、切替操作部は、一対の係止部本体のうち少なくとも一方の係止部本体を係止位置と非係止位置とに選択的に切り替えることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、湾曲部の固定及び固定解除操作に関して使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る超音波プローブの全体斜視図である。
図2】超音波プローブの操作部を上方から見た上面図である。
図3】湾曲操作機構の構成を示した斜視図である。
図4】湾曲操作機構の一部をZ方向に垂直なXY面で切断した場合の断面図である。
図5】湾曲操作機構の一部をY方向に垂直なXZ面で切断した場合の断面図である。
図6】スプロケットとディスクの連結構造を示した斜視図である。
図7】操作リングと切替板との連結構造を示した斜視図である。
図8】切替板をY(+)方向側から見た斜視図である。
図9】プランジャの3つの位置を示した説明図である。
図10】別形態の切替板の構成を示した斜視図である。
図11】別形態の切替板の構成を示した斜視図である。
図12】切替操作部の操作例を示した説明図である。
図13】回転駆動体としてプーリーを採用した場合の概略説明図である。
図14】回転駆動体としてピニオンを採用した場合の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に従って本発明に係る医用機器の実施形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の医用機器が適用された実施形態に係る超音波プローブ10の全体斜視図である。
【0029】
以下、超音波プローブ10の各部の構成を説明するに当たっては、説明の便宜上X、Y、Zの三次元直交座標系を用いて説明する。図中のZ方向は上下方向を指し、Z(+)方向側が上側方向、Z(-)方向側が下側方向を指す。また、図中のX方向は、Z方向に垂直な左右方向を指し、X(+)方向側が右側方向、X(-)方向側が左側方向を指す。また、図中のY方向は、Z方向及びX方向の双方に垂直な方向を指し、Y(+)方向側が先端側方向、Y(-)方向側が基端側方向を指す。なお、上記の各方向は、超音波プローブ10の操作部12を施術者が把持した場合において、施術者が超音波プローブ10を上方側から見たときの方向をそれぞれ指している。
【0030】
図1に示すように、超音波プローブ10は、Y方向に沿った長手軸Aを有する管状の挿入部14と、挿入部14の基端側(Y(-)方向側)に連設された筒状の操作部12と、を備えている。
【0031】
挿入部14は、挿入部本体16と、挿入部本体16の先端側(Y(+)方向側)に設けられた湾曲部18と、湾曲部18の先端側に設けられた探触子20と、を有している。本例の挿入部本体16は硬性である。なお、挿入部14及び操作部12は、本発明の挿入部及び操作部の一例である。
【0032】
湾曲部18は、例えば複数のリング状の湾曲駒を長手軸Aに沿って連設することにより湾曲可能に構成されており、後述の湾曲操作ワイヤの進退動作によって左右方向(X方向)及び上下方向(Z方向)に湾曲操作される。
【0033】
探触子20は、超音波射出面20Aが平坦に形成されたリニア型のものであり、被検体の撮像部位(臓器、例えば肝臓)との間で超音波を送受する複数の振動子を有している。この探触子20は、挿入部14及び操作部12内に挿通された配線を介して超音波撮像装置(不図示)に接続されている。なお、探触子20としてはリニア型のものに限定されず、コンベックス型又はラジアル型の探触子であってもよい。
【0034】
図2は、超音波プローブ10の操作部12を上方側(Z(+)方向側)から見た場合の上面図である。図1及び図2に示すように、操作部12は、挿入部14の長手軸Aに沿った長手軸Bを有し、長手軸Bの先端側(Y(+)方向側)から基端側(Y(-)方向側)に向けて連結部22と、レバー取付部24と、切替操作部26と、把持部28と、を有している。
【0035】
連結部22には、挿入部本体16の基端部が連結される。レバー取付部24には、湾曲操作部材である左右湾曲レバー30及び上下湾曲レバー32が揺動可能に取り付けられている。
【0036】
切替操作部26は、リング状に構成されており、回転不能な連結部22、レバー取付部24及び把持部28に対し長手軸B周りに回転可能に設けられている。また、切替操作部26は、切替操作部26の先端側及び基端側がそれぞれ気密シール(例えばOリング:不図示)を介してレバー取付部24及び把持部28に回転可能に連結されている。また、切替操作部26は、その外周面の一部にY方向に沿った凸条の指掛かり部34が設けられている。
【0037】
把持部28は、施術者の右手又は左手の掌によって把持される部分である。施術者は、把持部28を把持した状態で、挿入部14を被検体の体内に対し挿抜操作可能であり、また、左右湾曲レバー30、上下湾曲レバー32及び切替操作部26を例えば親指で操作可能である。
【0038】
左右湾曲レバー30と上下湾曲レバー32は、レバー取付部24の周方向において互いに180度ずれた位置に配置されており、長手軸Bに関して線対称なL字型に形成されている。なお、左右湾曲レバー30と上下湾曲レバー32をZ(+)方向側から見た場合、左右湾曲レバー30と上下湾曲レバー32のそれぞれの上端部30A、32Aは、X方向に沿って配置されている。施術者は、上端部30A、32Aに親指の腹を当てた状態で左右湾曲レバー30及び上下湾曲レバー32を揺動操作可能である。
【0039】
[湾曲操作機構]
次に、湾曲部18を湾曲操作する湾曲操作機構について説明する。
【0040】
図3は、湾曲操作機構の構成を示した斜視図である。図4は、湾曲操作機構の一部をZ方向に垂直なXY面で切断した場合の断面図である。また、図5は、湾曲操作機構の一部をY方向に垂直なXZ面で切断した場合の断面図である。
【0041】
図3乃至図5に示すように、操作部12の内部には、長手軸Bに沿って管状体40が設けられており、この管状体40のX方向の両側に一対の操作領域42、44が備えられている。
【0042】
管状体40の基端開口部40Aには、長手軸Bに沿って配置された軸支持部46(図4参照)が着脱可能に取り付けられている。この軸支持部46には、後述のスプロケット50、70の支軸となる軸48が貫通して固定されている。この軸48は、X方向に沿って配置されており、一端部48Aが操作領域42側に配置され、他端部48Bが操作領域44側に配置されている。
【0043】
軸48の一端部48A及び他端部48Bには、それぞれ上記のスプロケット50、70が装着されており、これらのスプロケット50、70は、軸48に対し回転可能に取り付けられている。以下、詳しく説明する。
【0044】
スプロケット50(図4及び図5参照)は、軸48の一端部48Aにスプロケット50の軸受孔50Aを装着することにより軸48に対し回転可能に装着される。また、スプロケット50のX(-)方向側には、ディスク52が配置されている。このディスク52は、軸受孔50Aを貫通した一端部48Aにディスク52の軸受孔52Aを装着することにより軸48に対し回転可能に装着される。
【0045】
図6は、スプロケット50とディスク52とを互いに離間させて示した組立図である。図6に示すように、スプロケット50とディスク52とは、互いの対向面50B、52Bに形成されたそれぞれ一対の円弧状凹部54と一対の円弧状凸部56とを互いに係合させることにより連結される。これにより、スプロケット50とディスク52とが、軸48に対し一体的に回転される。
【0046】
図5に示すように、ディスク52のX(-)方向側には、左右湾曲レバー30が配置されている。左右湾曲レバー30とディスク52とは、ディスク52のX(-)方向側に突出した凸部58に、左右湾曲レバー30の円形基部30Bに形成された穴部60を嵌合することにより連結される。このような連結構成によって左右湾曲レバー30は、軸48を揺動軸として揺動操作可能に構成される。そして、左右湾曲レバー30が施術者によって揺動操作されると、スプロケット50とディスク52とが左右湾曲レバー30により同方向に一体に回転駆動される。
【0047】
スプロケット50には、チェーン62(図3参照)が巻き掛けられている。チェーン62の一端部62A及び他端部62Bには、それぞれ連結具64A、64Bを介して一対のワイヤ66A、66Bの各基端部が連結されている。一対のワイヤ68A、66Bは、図1の操作部12及び挿入部14の内部に挿通され、各先端部が湾曲部18に設けられた左右湾曲用の一対の固定端(不図示)に固定される。これらの固定端は、湾曲部18の内面の周方向において180度ずれた位置に設けられている。
【0048】
スプロケット70(図4及び図5参照)は、軸48の他端部48Bにスプロケット70の軸受孔70Aを装着することにより軸48に対し回転可能に装着される。また、スプロケット70のX(+)方向側には、ディスク72が配置されている。このディスク72は、軸受孔70Aを貫通した他端部48Bにディスク72の軸受孔72Aを装着することにより軸48に対し回転可能に装着される。
【0049】
スプロケット70とディスク72とは、図6に示した係合構造と同様の係合構造(それぞれ一対の円弧状凹部54と一対の円弧状凸部56とによる係合構造)によって連結されている。これにより、スプロケット70とディスク72とが、軸48に対し一体的に回転される。なお、スプロケット70とディスク72との係合構造については、上記の通り図6と同様なので図示は省略する。
【0050】
図5に示すように、ディスク72のX(+)方向側には、上下湾曲レバー32が配置されている。上下湾曲レバー32とディスク72とは、ディスク72のX(+)方向側に突出した凸部78に、上下湾曲レバー32の円形基部32Bに形成された穴部80を嵌合することにより連結される。このような連結構成によって上下湾曲レバー32は、軸48を揺動軸として揺動操作可能に構成される。そして、上下湾曲レバー32が施術者によって揺動操作されると、スプロケット70とディスク72とが上下湾曲レバー32により同方向に一体に回転駆動される。
【0051】
スプロケット70には、チェーン82(図3参照)が巻き掛けられている。このチェーン82の一端部82A及び他端部82Bには、それぞれ連結具84A、84Bを介して一対のワイヤ86A、86Bの各基端部が連結されている。一対のワイヤ86A、86Bは、図1の操作部12及び挿入部14の内部に挿通され、各先端部が湾曲部18に設けられた上下湾曲用の一対の固定端(不図示)に固定されている。これらの固定端は、湾曲部18の内面の周方向において180度ずれた位置に固定され、且つ上記の左右湾曲用の一対の固定端に対し周方向において90度ずれた位置に設けられている。
【0052】
上記の如く構成された湾曲操作機構によれば、左右湾曲レバー30を揺動操作すると、スプロケット50が回転駆動され、スプロケット50の回転に連動して一対のワイヤ66A、66Bのうち一方のワイヤがチェーン62を介してY(-)方向側に牽引され、他方のワイヤが繰り出される。これによって、湾曲部18が左右方向に湾曲する。
【0053】
同様に、上下湾曲レバー32を揺動操作すると、スプロケット70が回転駆動され、スプロケット70の回転に連動して一対のワイヤ86A、86Bのうち一方のワイヤがチェーン82を介してY(-)方向側に牽引され、他方のワイヤが繰り出される。これによって、湾曲部18が上下方向に湾曲する。
【0054】
なお、スプロケット50、70は、本発明の回転駆動体の一例である。また、一対のワイヤ66A、66Bと一対のワイヤ86A、86Bは、本発明の湾曲操作ワイヤの一例である。
【0055】
[ロック機構]
次に、湾曲部18を所望の湾曲状態で固定及び固定解除するロック機構について説明する。実施形態では、ロック機構として、図4に示すように、左右湾曲用と上下湾曲用の一対のロック機構100、200を備えている。ロック機構100は操作領域42側に、ロック機構200は操作領域44側にそれぞれ配置されている。
【0056】
本例のロック機構100、200は、同一の構成を有しているので、ここでは主に左右湾曲用のロック機構100について説明する。なお、上下湾曲用のロック機構200については、ロック機構100と同一又は類似の部材について同一の符号を付すことで説明を省略する場合がある。
【0057】
ロック機構100は、ディスク52と、プランジャ104と、切替操作部26(図1参照)と、を備えている。なお、切替操作部26は、ロック機構200と共用される。
【0058】
ディスク52は、前述したようにスプロケット50と一体に回転可能である。このディスク52の外周面には、図6に示すように、歯先102Aと歯溝102Bを有する凹凸部が一定のピッチで形成された鋸歯部102が設けられている。
【0059】
ここで、凹凸部とは、ディスク52の外周面に盛り上がり部(歯先102A)と盛り下がり部(歯溝102B)とが周方向に連続して形成されているものを指す。この場合、凸部である歯先102Aと凹部である歯溝102Bとの高さの差(歯先102Bの外接円の半径-歯溝102Bの内接円の半径)及び凹凸部のピッチは、後述するラッチ状態に対する要求精度に応じて、後述の係止部106の大きさ(直径)及びスプリング112の付勢力との関係で適宜定められる。なお、凹凸部の一定のピッチとは、厳密な一定のピッチに限らず略一定のピッチを含んでいる。すなわち、一定のピッチとは、例えば鋸歯部102の歯先102A及び歯溝102Bを加工する際に生じる加工誤差を含むものである。なお、ディスク52は、本発明の回転部材の一例である。
【0060】
図4に示すように、プランジャ104は、鋸歯部102(歯溝102B側)に係止可能な係止部106を有する。また、プランジャ104は、係止部106が鋸歯部102に係止する係止位置(図9のIXA参照)と、係止部106が鋸歯部102に係止しない非係止位置(図9のIXB参照)と、プランジャ104が係止位置よりも更に鋸歯部102に押し付けられるロック位置(図9のIXC参照)との間の3段階に遷移可能に構成されている。プランジャ104の係止位置と非係止位置とロック位置との間の切り替えは、切替操作部26によって選択的に行われる。まず、プランジャ104について説明する。なお、図9の説明については後述する。
【0061】
プランジャ104は、プランジャ支持部108に装着されている。プランジャ104は、Y方向に沿って配置されたロックピン110と、ロックピン110のディスク52の側(Y(+)方向側)に設けられた係止部106と、ロックピン110に対し係止部106をディスク52の側に向けて付勢するスプリング112と、ロックピン110を保持し且つロックピン110と共にY方向に沿って移動可能な筒状のスリーブ114と、スリーブ114と共にロックピン110を後述の切替板122の側(Y(-)方向側)に向けて付勢するスプリング116と、スリーブ114の基端開口部115に回転可能に設けられた転動体118と、を有している。
【0062】
ここで、一対のロック機構100、200の各プランジャ104は、プランジャ支持部108の周方向において互いに180度ずれた位置に配置されている。なお、プランジャ支持部108は、先端側に既述の軸支持部46を有している。すなわち、プランジャ支持部108は、軸支持部46を介して管状体40に着脱可能に取り付けられている。
【0063】
係止部106は、ボール状に構成されている。また、ロックピン100の内部にはロックピン110の軸方向(Y方向)に沿ってスプリング112を収容可能なスプリング収容溝111が設けられている。このスプリング収容溝111は、ロックピン110の先端側に開口しており、スプリング収容溝111の開口部分(ロックピン110の先端部)に係止部106が配置されている。スプリング収容溝111には、係止部106をディスク52の側に向かって付勢するスプリング112が配置されている。なお、プランジャ104及び係止部106は、本発明の係止部本体及び係止部に相当する。
【0064】
ロックピン110は、スリーブ114の内部に固定されている。スリーブ114は、プランジャ支持部108にY方向に沿って装着されたスプリング116に挿通して配置されており、このスプリング116の付勢力により切替板122の側に向かって付勢されている。
【0065】
転動体118は、X方向に沿って配置された軸120(図4及び図9参照)を介してスリーブ114の基端開口部115に回転可能に取り付けられている。転動体118は、転動体118の全体が基端開口部115の内部に収容されておらず、転動体118のうち基端側の一部分(軸120よりもY(-)方向側の部分)がスリーブ114の基端面115AからY(-)方向側に突出配置されている。この一部分(以下、当接部118Aと言う)は、スプリング116の付勢力によって切替板122のディスク52の側の面122A(図9参照。以下、前面122Aと言う。)に押し付けられている。
【0066】
当接部118Aが前面122Aに押し付けられた状態で、後述するように切替板122が長手軸B周りに回転された場合、転動体118は当接部118Aと前面122Aとの間の摩擦抵抗により軸120周りに回転する。これにより、切替板122の回転が円滑に行われる。なお、転動体118は、本発明のコロ体の一例であり、例えばミニチュアベアリングによって構成されている。
【0067】
図1及び図2に示すように、切替操作部26は、プランジャ104の位置を上記の3つの位置(係止位置、非係止位置、ロック位置)に選択的に切り替えるための切替操作を受け付ける部分である。
【0068】
切替操作部26は、操作部12の長手軸B周りに回転可能に設けられる。具体的には、切替操作部26は、操作部12の外周部を構成するリング状の操作リング121(図7参照)を有しており、この操作リング121が上記切替操作を受け付け、且つ、操作部12の長手軸B周りに回転可能に設けられる。また、切替操作部26は、長手軸B周りに回転する切替板122を有している(図4参照)。なお、切替操作部26及び切替板122は、本発明の切替操作部及び切替板の一例である。
【0069】
図4に示すように、切替板122は、プランジャ支持部108の基端側(Y(-)方向側)に配置される。また、切替板122の軸受孔122Bにブッシュ124が装着されており、このブッシュ124がプランジャ支持部108のネジ穴108Aに固定されている。これにより、切替板122は、ブッシュ124を介してプランジャ支持部108に回転可能に取り付けられている。また、ネジ穴108Aは、長手軸Bに沿って形成されている。よって、切替板122は、プランジャ支持部108に対し長手軸B周りに回転可能である。更に、切替板122は、ブッシュ124を介してネジ穴108Aに螺入されたボルト126によってプランジャ支持部108からの脱落が防止されている。
【0070】
図7は、操作リング121と切替板122との連結構造を示した斜視図であって、Y(-)方向側から見た場合の斜視図である。図7に示すように、操作リング121の内周面には凸部27が形成され、切替板122の外周部には凹部123が形成されており、凸部27と凹部123とが互いに係合されて操作リング121と切替板122とが一体に連結されている。これにより、切替操作部26の操作リング121が長手軸B周りに回転操作された場合、切替板122が操作リング121と一体的に同方向に回転駆動される。
【0071】
図8は、切替板122の斜視図であって、Y(+)方向側から見た場合の斜視図である。図8に示すように、切替板122は、円板状に構成されている。切替板122の前面112Aは、転動体118の当接部118Aがスプリング116の付勢力により押し付けられる面であり、この前面122Aには、プランジャ104の位置を3つの位置(係止位置、非係止位置、ロック位置)に選択的に切り替えるための3つの当接面が配置されている。これらの3つの当接面の高さ位置(Y方向位置)は互いに異なっている。以下、詳しく説明する。
【0072】
切替板122の前面122Aには、3つの当接面である係止用当接面130、非係止用当接面132及びロック用当接面134が配置されている。そして、これらの係止用当接面130、非係止用当接面132及びロック用当接面134は、前面122Aにおいて異なる周方向の位置にそれぞれ配置されている。切替操作部26の操作リング121に対する切替操作(回転操作)に応じて切替板122を回転させることによって、切替板122上の3つの当接面(係止用当接面130、非係止用当接面132及びロック用当接面134)の中から、プランジャ104(具体的には、転動体118の当接部118A)に対向する位置に配置される当接面を切り替えることができる。
【0073】
係止用当接面130は、前面122Aの領域のうち大部分を占める面であり、XZ面に沿った平面状に形成されている。非係止用当接面132は、係止用当接面130に対しY(-)方向側に窪んだ凹状面として形成されている。ロック用当接面134は、係止用当接面130に対しY(+)方向側に突出した凸状面として形成されている。なお、係止用当接面130及び非係止用当接面132は、本発明の第1当接面及び第2当接面の一例である。また、ロック用当接面134は、本発明の第3当接面の一例である。
【0074】
図9は、プランジャ104の3つの位置を示した説明図である。なお、図9は、切替板122の回転位置に応じてプランジャ104の位置が3段階に変化することによって、後述するラッチ状態、フリー状態、及びロック状態にそれぞれ切り替えられる様子を示している。
【0075】
まず、図9のIXAに示すように、転動体118の当接部118Aに対向する位置に係止用当接面130が位置する場合には、スプリング116の付勢力に抗して転動体118の当接部118Aが係止用当接面130に当接する。これによって、プランジャ104が係止位置に配置される。この場合、係止用当接面130は、非係止用当接面132よりもディスク52との距離(Y方向における距離)が短い位置に設けられているので、係止位置に配置されたプランジャ104は、後述する非係止位置に配置されたプランジャ104よりもディスク52に近づいた状態となる。また、プランジャ104が係止位置に配置された場合、係止部106が鋸歯部102に係止された状態となる。以下、この状態をラッチ状態とも言う。
【0076】
ラッチ状態では、係止部106が鋸歯部102に係止されているため、左右湾曲レバー30に対して所定の操作力(操作トルク)が付与されない状態においては、ディスク52及びスプロケット50は回転不能な状態となる。その結果、湾曲部18を所望の湾曲状態で固定することが可能となる。
【0077】
その一方で、ラッチ状態では、所定の操作力以上で左右湾曲レバー30が揺動操作された場合には、ディスク52とスプロケット50はスプリング112の付勢力に抗して左右湾曲レバー30の揺動方向と同方向に回転駆動される。
【0078】
ラッチ状態でディスク52が回転し始めると、係止部106は、スプリング112の付勢力に抗して歯溝102B側から歯先102A側に向けてY(-)方向側に移動されていく。そして、係止部106が歯先102Aを乗り越えると、係止部106は、スプリング116の付勢力によりY(+)方向側に移動されて再び鋸歯部102に係止する。
【0079】
すなわち、スプリング112は、ラッチ状態(プランジャ104が係止位置に遷移した状態)において、ディスク52が回転した場合に係止部106が歯先102Aを乗り越え可能な付勢力を有している。
【0080】
このような付勢力をスプリング112が有することにより、左右湾曲レバー30は、凹凸部(歯先102Aと歯溝102B)のピッチ毎に停止と揺動とを繰り返すラッチ操作(「カチカチ」というクリック音が鳴る動作)が可能となる。その結果、湾曲部18は、上記のピッチに対応した角度毎に湾曲操作され、且つそのときの湾曲状態で固定される。なお、スプリング112は、本発明の第1付勢部材に相当する。
【0081】
次に、図9のIXBに示すように、転動体118の当接部118Aに対向する位置に非係止用当接面132が位置する場合には、プランジャ104がスプリング116の付勢力に抗して転動体118の当接部118Aが非係止用当接面132に当接する。これによって、プランジャ104が非係止位置に配置される。この場合、非係止用当接面132は、係止用当接面130よりもディスク52との距離(Y方向における距離)が長い位置に設けられているので、非係止位置に配置されたプランジャ104は、係止位置に配置されたプランジャ104よりもディスク52から離された状態となる。また、プランジャ104が非係止位置に配置された場合、係止部106が鋸歯部102から退避した状態となる。以下、この状態をフリー状態とも言う。
【0082】
フリー状態では、係止部106は鋸歯部102に対しY(-)方向側に退避し、鋸歯部102との係止が解除されているため、ディスク52とスプロケット50はフリーに回転可能な状態となる。これにより、左右湾曲レバー30は、湾曲部18を連続的に湾曲操作可能な状態となる。なお、スプリング116は、本発明の第2付勢部材の一例である。
【0083】
次に、図9のIXCに示すように、転動体118の当接部118Aに対向する位置にロック用当接面134が位置する場合には、プランジャ104がスプリング116の付勢力に抗して転動体118の当接部118Aがロック用当接面134に当接する。これによって、プランジャ104がロック位置に配置される。この場合、ロック用当接面134は、係止用当接面130よりもディスク52との距離(Y方向における距離)が短い位置に設けられているので、ロック位置に配置されたプランジャ104は、係止位置に配置されたプランジャ104よりもディスク52に近づいた状態となる。また、プランジャ104がロック位置に配置された場合、ロックピン110の先端部110Aが鋸歯部102に押し付けられた状態となる。以下、この状態をロック状態とも言う。
【0084】
ロック状態では、係止部106がスプリング112の付勢力よりも強い力で鋸歯部102に押し付けられ、且つロックピン110の先端部110Aが鋸歯部102に押し付けられるため、ディスク52とスプロケット50は完全に回転不能な状態となる。これにより、左右湾曲レバー30は、湾曲操作不能なロック状態となる。この場合、湾曲部18は所望の湾曲状態で確実に固定される。
【0085】
また、本例の切替板122は、一対のプランジャ104に対応して非係止用当接面132及びロック用当接面134がそれぞれ一対配置されている(図8参照)。一対の非係止用当接面132及び一対のロック用当接面134は、それぞれ切替板122の周方向において互い180度ずれた位置に配置されている。
【0086】
このように構成された切替板122が切替操作部26によって回転駆動されると、一対のプランジャ104の各転動体118は、例えば、第1回転位置で係止用当接面130に同時に当接され、第1回転位置とは異なる第2回転位置で一対の非係止用当接面132に同時に当接され、第1及び第2回転位置とは異なる第3回転位置で一対のロック用当接面134に同時に当接される。これにより、一対のプランジャ104がそれぞれ同時に係止位置、非係止位置及びロック位置に選択的に切り替えられる。その結果、左右湾曲レバー30と上下湾曲レバー32がそれぞれ同時にラッチ状態、フリー状態及びロック状態に選択的に切り替えられる。なお、係止用当接面130は、前面122Aの大部分を占めているため、非係止用当接面132及びロック用当接面134のようにそれぞれ一対配置する必要はない。
【0087】
[超音波プローブ10の使用例]
次に、上記の如く構成された超音波プローブ10の使用例の一例について説明する。
【0088】
まず、施術者は、超音波プローブ10の操作部12の把持部28を把持し、挿入部14を例えばトラカールを介して被検体の内部に挿入する。このとき、一対のプランジャ104は、切替操作部26の長手軸B周りの回転操作によって予め非係止位置(フリー状態)に遷移している。これにより、左右湾曲レバー30及び上下湾曲レバー32の揺動操作がフリー(連続的)に行われる状態となっている。
【0089】
その後、施術者は左右湾曲レバー30及び上下湾曲レバー32を適宜揺動操作して、挿入部14の湾曲部18を左右方向(X方向)及び上下方向(Z方向)に湾曲させることにより、探触子20の超音波射出面20Aを撮像部位(臓器、例えば肝臓)の表面に接触又は近接させる。
【0090】
次に、施術者は、湾曲部18の湾曲状態を固定するために、把持部28を把持した手の親指で操作リング121を長手軸B周りに回転操作することにより、切替板122を回転させて一対のプランジャ104を係止位置(ラッチ状態)又はロック位置(ロック状態)に遷移させる。これによって、湾曲部18を所望の湾曲状態で固定することができる。
【0091】
なお、切替操作部26によって一対のプランジャ104を係止位置に遷移させた場合には、左右湾曲レバー30及び上下湾曲レバー32によるラッチ操作が可能となる。また、切替操作部26によって一対のプランジャ104をロック位置に遷移させた場合には、左右湾曲レバー30及び上下湾曲レバー32の揺動操作が完全に不能になる。このとき、不用意な力が左右湾曲レバー30及び上下湾曲レバー32に加わっても、左右湾曲レバー30及び上下湾曲レバー32は動かない。
【0092】
次に、超音波撮像装置の送信部から探触子20に駆動信号を供給し、探触子20から超音波を撮像部位に対し送波する。撮像部位から発生した超音波は、反射エコー信号として探触子20により受波される。探触子20から出力される反射エコー信号は、超音波撮像装置の受信部により増幅等の処理が施された後、超音波撮像装置の画像処理部によって画像処理されて超音波像が表示部に表示される。表示された超音波像を参照しながら、例えば別の施術者が生検針を体腔内に刺入して撮像部位の組織を採取する。
【0093】
この後、超音波プローブ10を操作する施術者は、湾曲部18の湾曲状態の固定を解除するために、把持部28を把持した手の親指で切替操作部26を長手軸B周りに回転操作(切替板122を回転駆動)して、一対のプランジャ104を非係止位置に遷移させる。これによって、左右湾曲レバー30及び上下湾曲レバー32の揺動操作がフリーに行われる状態となる。その後、左右湾曲レバー30及び上下湾曲レバー32を揺動操作して、例えば湾曲部18を真っ直ぐな状態に戻した後、挿入部14を被検体から引き抜く。以上が超音波プローブ10の使用例の一例である。
【0094】
以上説明したように、実施形態の超音波プローブ10によれば、切替操作部26と一体に回転する切替板122の前面122Aに高さ位置(Y方向位置)が互い異なる少なくとも2つの当接面(係止用当接面130及び非係止用当接面132)を設けている。そして、切替操作部26の回転操作により切替板122を回転させて2つの当接面とプランジャ104との位置関係を変化させることで、スプリング116の付勢力を利用して2つの当接面に当接するプランジャ104の位置を2つの位置(係止位置と非係止位置)に切り替えることにより、湾曲レバー(左右湾曲レバー30と上下湾曲レバー32)の状態を2つの状態(ラッチ状態とフリー状態)に選択的に切り替えることを可能としている。これにより、湾曲部18の固定及び固定解除操作に関して使い勝手を向上させることができる。
【0095】
また、実施形態では、切替板122の前面122Aに、上記2つの当接面に加え、さらにロック用当接面134を設けている。そして、切替操作部26の回転操作により切替板122を回転させて、スプリング116の付勢力によりロック用当接面134に当接するプランジャ104の位置をロック位置に切り替えることにより、湾曲レバー(左右湾曲レバー30と上下湾曲レバー32)をロック状態に切り替えることを可能としている。これにより、湾曲部18の固定及び固定解除操作に関してさらに使い勝手を向上させることができる。
【0096】
[変形例]
以下、変形例について幾つか説明する。
【0097】
[第1変形例]
実施形態では、切替板122の前面122Aに3つの当接面(係止用当接面130、非係止用当接面132、ロック用当接面134)を配置した形態について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図10及び図11に示す別形態の切替板140及び切替板150のように、3つの当接面のうち、係止用当接面130と非係止用当接面132を配置した形態であっても適用可能である。
【0098】
図10に示す切替板140は、一対の非係止用当接面132が切替板122の周方向において互い180度ずれた位置に配置されたものであるが、図9に示した一対の非係止用当接面132に対し切替板122の周方向においてずれた位置に配置されたものである。
【0099】
この切替板140によれば、図12のXIIAに示す位置に切替操作部26を回転操作した場合、一対の転動体118が一対の非係止用当接面132にそれぞれ当接し、一対のプランジャ104がそれぞれ非係止位置に位置する。これにより、左右湾曲レバー30と上下湾曲レバー32の双方がフリー状態となる。
【0100】
また、図12のXIIBに示す位置に切替操作部26を回転操作した場合、一対の転動体118が係止用当接面130にそれぞれ当接し、一対のプランジャ104がそれぞれ係止位置に位置する。これにより、左右湾曲レバー30と上下湾曲レバー32の双方がラッチ状態となる。
【0101】
一方、図11に示す切替板150は、一対の非係止用当接面132が切替板122の周方向において互いに180度ずれた位置よりも互い近づいた位置に配置されたものである。
【0102】
この切替板150によれば、図12のXIIAに示す位置に切替操作部26を回転操作した場合、ロック機構100側の転動体118が非係止用当接面132に当接し、ロック機構200側の転動体118が係止用当接面130に当接する。これにより、ロック機構100側のプランジャ104が非係止位置に位置し、ロック機構200側のプランジャ104が係止位置に位置するので、左右湾曲レバー30がフリー状態となり、上下湾曲レバー32がラッチ状態となる。
【0103】
また、図12のXIIBに示す位置に切替操作部26を回転操作した場合、ロック機構100側の転動体118が係止用当接面130に当接し、ロック機構200側の転動体118が非係止用当接面132に当接する。これにより、ロック機構100側のプランジャ104が係止位置に位置し、ロック機構200側のプランジャ104が非係止位置に位置するので、左右湾曲レバー30がラッチ状態となり、上下湾曲レバー32がフリー状態となる。
【0104】
このように切替板122における係止用当接面130及び非係止用当接面132の配置位置を変更することにより、切替操作部26は、一対のプランジャ104のうち少なくとも一方のプランジャ104を係止位置と非係止位置とに選択的に切り替えることが可能となる。
【0105】
なお、図10及び図11に示した上記の形態は、2つの当接面(係止用当接面130と非係止用当接面132)を配置した形態であるが、湾曲部18を所望の湾曲状態で確実に固定する観点からみれば、実施形態の如くロック用当接面134も配置しておくことが好ましい。
【0106】
[第2変形例]
実施形態では、回転駆動体としてスプロケット50、70を採用した形態について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、スプロケット50、70に代えて、図13に示すプーリー160を採用してもよい。プーリー160を採用した場合、プーリー160に2本のワイヤ等の線状部材162A、162Bを巻き掛けて、線状部材162A、162Bの各端部に湾曲操作ワイヤをそれぞれ連結すればよい。なお、線状部材162A、162Bのプーリー160側の各端部には係止部材164A、164Bが取り付けられている。これらの係止部材164A、164Bがプーリー160に形成された係止孔(不図示)にそれぞれ係止されることにより線状部材162A、162Bがプーリー160に連結されている。
【0107】
[第3変形例]
また、回転駆動体として、図14に示すピニオン170を採用してもよい。ピニオン170を採用した場合、ピニオン170の外周面に設けられた歯170Aに噛み合う一対のラック172A、172Bの各端部に湾曲操作ワイヤをそれぞれ連結すればよい。また、ピニオン170を採用した場合、ピニオン172の歯170Aを、係止部106が係止する凹凸部として兼用することが可能となる。その結果、ピニオン170を採用することにより、回転駆動体と回転部材とを一体化することが可能となる。
【0108】
[第4変形例]
実施形態では、回転部材の外周面に設けられる凹凸部として、歯先102Aと歯溝102Bとが一定のピッチで形成された鋸歯部102を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、凹部と凸部とが不定のピッチで形成された凹凸部であってもよい。但し、規則的なラッチ操作を行う観点からみれば、凹凸部は一定のピッチであることが好ましい。
【0109】
[第5変形例]
実施形態では、湾曲操作部材として一対の湾曲操作部材(左右湾曲レバー30と上下湾曲レバー32)を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、左右湾曲レバー30及び上下湾曲レバー32のうち、1つの湾曲レバーを有するものであってよい。
【0110】
[第6変形例]
実施形態では、係止部としてボール状の係止部106を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、係止部の形状は円柱状であってよく、また、X方向から見た外表面が鋸歯部102の歯溝102Bの形状に対応した円弧状であってもよい。
【0111】
実施形態では、切替板122の前面122Aに凹部と凸部とを形成することで、各当接面(係止用当接面130、非係止用当接面132及びロック用当接面134)を配置した構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、切替板122の前面122Aに、凹部を設けることなく、高さ位置(Y方向位置)が互いに異なる2つの凸部を設けることで各当接面を配置してもよい。また、切替板122の前面122Aに、凸部を設けることなく、高さ位置(Y方向位置)が互いに異なる2つの凹部を設けることで各当接面を配置してもよい。
【0112】
[第7変形例]
実施形態では、本発明の医用機器を適用したものとして、超音波プローブ10を例示したが、超音波プローブ10に限定されず様々な医用機器に本発明を適用することができる。すなわち、挿入部に湾曲部を有する医用機器であれば、例えば腹腔鏡、及び軟性の挿入部を備えた内視鏡にも本発明を適用することができる。
【0113】
以上、本発明に係る医用機器の実施形態について説明したが、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0114】
10 超音波プローブ
12 操作部
14 挿入部
16 挿入部本体
18 湾曲部
20 探触子
20A 超音波射出面
22 連結部
24 レバー取付部
26 切替操作部
27 凸部
28 把持部
30 左右湾曲レバー
30A 上端部
30B 円形基部
32 上下湾曲レバー
32A 上端部
32B 円形基部
34 指掛かり部
40 管状体
40A 基端開口部
42 操作領域
44 操作領域
46 軸支持部
48 軸
48A 一端部
48B 他端部
50 スプロケット
50A 軸受孔
50B 対向面
52 ディスク
52A 軸受孔
52B 対向面
54 円弧状凹部
56 円弧状凸部
58 凸部
60 穴部
62 チェーン
62A 一端部
62B 他端部
64A 連結具
64B 連結具
66A ワイヤ
66B ワイヤ
70 スプロケット
70A 軸受孔
72 ディスク
72A 軸受孔
78 凸部
80 穴部
82 チェーン
82A 一端部
82B 他端部
84A 連結具
84B 連結具
86A ワイヤ
86B ワイヤ
100 ロック機構
102 鋸歯部
102A 歯先
102B 歯溝
104 プランジャ
106 係止部
108 プランジャ支持部
108A ネジ穴
110 ロックピン
111 スプリング収容溝
110A 先端部
112 スプリング
114 スリーブ
115 基端開口部
115A 基端面
116 スプリング
118 転動体
118A 当接部
120 軸
121 操作リング
122 切替板
122A 前面
122B 軸受孔
123 凹部
124 ブッシュ
126 ボルト
130 係止用当接面
132 非係止用当接面
134 ロック用当接面
140 切替板
150 切替板
160 プーリー
162A 線状部材
162B 線状部材
164A 係止部材
164B 係止部材
170 ピニオン
170A 歯
172A ラック
172B ラック
200 ロック機構
A 長手軸
B 長手軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14