(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174677
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】セラミックス基板及びその製造方法、静電チャック、基板固定装置、半導体装置用パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241210BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20241210BHJP
H01L 23/15 20060101ALI20241210BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241210BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L23/12 C
H01L23/14 C
H01L23/12 D
H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092635
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】堀 凌輔
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131BA01
5F131BA19
5F131CA68
5F131EB12
5F131EB15
5F131EB16
5F131EB18
5F131EB22
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】タングステンを含む導電体パターンを従来とは異なる焼結助剤を用いて焼結したセラミックス基板の提供。
【解決手段】本セラミックス基板は、基体と、前記基体に内蔵された導電体パターンと、を有し、前記基体は、セラミックスであり、前記導電体パターンは、ニッケルとマンガンがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体、ニッケルとニオブがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体、又はニッケルとインジウムがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体に内蔵された導電体パターンと、を有し、
前記基体は、セラミックスであり、
前記導電体パターンは、ニッケルとマンガンがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体、ニッケルとニオブがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体、又はニッケルとインジウムがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分とする、セラミックス基板。
【請求項2】
前記導電体パターンは、ニッケルとマンガンと所定の元素がタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分とし、
前記所定の元素は、ホウ素、マグネシウム、スカンジウム、バナジウム、クロム、鉄、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、又はバリウムである、請求項1に記載のセラミックス基板。
【請求項3】
前記導電体パターンは、ニッケルとニオブと所定の元素がタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分とし、
前記所定の元素は、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、又はバリウムである、請求項1に記載のセラミックス基板。
【請求項4】
前記導電体パターンは、ニッケルとインジウムと所定の元素がタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分とし、
前記所定の元素は、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、又はバリウムである、請求項1に記載のセラミックス基板。
【請求項5】
前記基体は、イットリウム・アルミニウム・ガーネット相を含有する酸化アルミニウムセラミックスである、請求項1乃至4の何れか一項に記載のセラミックス基板。
【請求項6】
前記基体は、酸化アルミニウムの純度が99重量パーセント以上の酸化アルミニウムセラミックスである、請求項1乃至4の何れか一項に記載のセラミックス基板。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のセラミックス基板を有する半導体装置用パッケージ。
【請求項8】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のセラミックス基板において、前記導電体パターンが静電電極である静電チャック。
【請求項9】
ベースプレートと、
前記ベースプレートの一方の面に搭載された請求項8に記載の静電チャックと、を有する基板固定装置。
【請求項10】
基体と、前記基体に内蔵された導電体パターンと、を有するセラミックス基板の製造方法であって、
グリーンシートの上面に、酸化ニッケルと酸化マンガンをタングステンに添加した導電性ペースト、酸化ニッケルと酸化ニオブをタングステンに添加した導電性ペースト、又は酸化ニッケルと酸化インジウムをタングステンに添加した導電性ペースト、により導電体パターンを形成する工程と、
前記グリーンシート及び前記導電体パターンを焼成して、前記基体及び前記導電体パターンを形成する工程と、を有するセラミックス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス基板及びその製造方法、静電チャック、基板固定装置、半導体装置用パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置を製造する際に使用される成膜装置やプラズマエッチング装置は、ウェハを真空の処理室内に精度良く保持するためのステージを有する。このようなステージとして、例えば、ベースプレートに搭載された静電チャックによりウェハを吸着保持する基板固定装置が提案されている。
【0003】
静電チャックは、基体、基体に内蔵された静電電極等を有するセラミックス基板からなる。静電電極は、例えば、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、及び二酸化ケイ素を含む焼結体である。
【0004】
上記の焼結体では、セラミックスとタングステンを同一条件で焼結させるが、タングステンは高融点(3300℃以上)のため焼結するのが難しく、適切な焼結助剤の添加が必要である。上記の焼結体では、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、及び二酸化ケイ素が焼結助剤として機能する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、タングステンを焼結するための焼結助剤として機能する材料の中には、比較的入手が困難な材料もある。そのため、焼結助剤として機能する材料の選択肢は多い方が好ましく、タングステンを焼結するための新たな焼結助剤が求められている。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、タングステンを含む導電体パターンを従来とは異なる焼結助剤を用いて焼結したセラミックス基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本セラミックス基板は、基体と、前記基体に内蔵された導電体パターンと、を有し、前記基体は、セラミックスであり、前記導電体パターンは、ニッケルとマンガンがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体、ニッケルとニオブがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体、又はニッケルとインジウムがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分とする。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、タングステンを含む導電体パターンを従来とは異なる焼結助剤を用いて焼結したセラミックス基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る静電チャックの製造工程について例示する斜視図(その1)である。
【
図4】第1実施形態に係る静電チャックの製造工程について例示する斜視図(その2)である。
【
図9】第2実施形態に係る半導体装置用パッケージを例示する断面図である。
【
図10】第2実施形態に係る半導体装置用パッケージを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
〈第1実施形態〉
[基板固定装置の構造]
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図1を参照すると、基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、静電チャック20とを有している。基板固定装置1は、静電チャック20により吸着対象物である基板W(例えば、半導体ウェハ等)を吸着保持する装置である。
【0013】
ベースプレート10は、静電チャック20を搭載するための部材である。ベースプレート10の厚さは、例えば、20~40mm程度である。ベースプレート10は、例えば、アルミニウムや超硬合金等の金属材料や、その金属材料とセラミックス材との複合材料等から形成され、プラズマを制御するための電極等として利用できる。例えば、入手のし易さ、加工のし易さ、熱伝導性が良好である等の点から、アルミニウム又はその合金を使用し、その表面にアルマイト処理(絶縁層形成)を施したものが好適に使用できる。
【0014】
例えば、ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電チャック20上に吸着された基板Wに衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0015】
ベースプレート10の内部に、静電チャック20上に吸着された基板Wを冷却する不活性ガスを導入するガス供給路が設けられてもよい。基板固定装置1の外部からガス供給路に、例えば、HeやAr等の不活性ガスが導入され、静電チャック20上に吸着された基板Wの裏面に不活性ガスが供給されると、基板Wを冷却できる。
【0016】
ベースプレート10の内部に、冷媒流路が設けられてもよい。冷媒流路は、例えば、ベースプレート10の内部に環状に形成された孔である。基板固定装置1の外部から冷媒流路に、例えば、冷却水やガルデン等の冷媒が導入される。冷媒流路に冷媒を循環させベースプレート10を冷却することで、静電チャック20上に吸着された基板Wを冷却できる。
【0017】
静電チャック20は、吸着対象物である基板Wを吸着保持する部分である。静電チャック20の平面形状は、基板Wの形状に応じて形成されるが、例えば、円形である。静電チャック20の吸着対象物であるウェハの直径は、例えば、8、12、又は18インチである。
【0018】
なお、平面視とは対象物をベースプレート10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物をベースプレート10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0019】
静電チャック20は、接着層を介して、ベースプレート10の上面10aに設けられている。接着層は、例えば、シリコーン系接着剤である。接着層の厚さは、例えば、0.1~2.0mm程度である。接着層は、ベースプレート10と静電チャック20を接着すると共に、セラミックス製の静電チャック20とアルミニウム製のベースプレート10との熱膨張率の差から生じるストレスを低減させる効果を有する。なお、ベースプレート10に対して静電チャック20をネジにより固定してもよい。
【0020】
静電チャック20は、主要な構成要素として、基体21と、静電電極22と、発熱体24とを有するセラミックス基板である。基体21の上面は、吸着対象物が載置される載置面21aである。静電チャック20は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック20は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
【0021】
基体21は、誘電体である。基体21の厚さは、例えば、5~10mm程度、基体21の比誘電率(1kHz)は、例えば、9~10程度である。基体21は、300℃における絶縁抵抗率が1014Ωcm以上であることが好ましい。
【0022】
基体21は、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)を主成分とするセラミックスである。
【0023】
基体21は、イットリウム・アルミニウム・ガーネット相(YAG相)を10モルパーセント以上80モルパーセント以下含有する酸化アルミニウムセラミックスであることが好ましい。これにより、300℃における基体21の絶縁抵抗率を1014Ωcm以上とすることができる。
【0024】
基体21は、酸化アルミニウムの純度が99重量パーセント以上の酸化アルミニウムセラミックスであってもよい。これにより、300℃における基体21の絶縁抵抗率を1014Ωcm以上とすることができる。なお、純度が99%以上であることは、焼結助剤を添加することなく形成されることを示す。又、純度が99%以上であることは、製造工程等において意図しない不純物を含む場合もあることを意味している。基体21は、酸化アルミニウムに対する相対密度が97%以上であることが好ましい。基体21において、酸化アルミニウムの平均粒径は、1.0μm以下であることが、焼結性を高めるうえで好ましい。
【0025】
静電電極22は、導電体パターンにより形成された薄膜電極であり、基体21に内蔵されている。本実施形態では、静電電極22は双極タイプであり、第1静電電極22aと第2静電電極22bを有している。なお、静電電極22として、1つの静電電極からなる単極タイプが使用されてもよい。
【0026】
静電電極22は、例えば、ニッケルとマンガンがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分とする。静電電極22は、ニッケルとニオブがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分としてもよい。静電電極22は、ニッケルとインジウムがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分としてもよい。
【0027】
静電電極22は、ニッケルとマンガンと所定の元素がタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分としてもよい。この場合の所定の元素は、ホウ素、マグネシウム、スカンジウム、バナジウム、クロム、鉄、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、又はバリウムである。
【0028】
静電電極22は、ニッケルとニオブと所定の元素がタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分としてもよい。この場合の所定の元素は、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、又はバリウムである。
【0029】
静電電極22は、ニッケルとインジウムと所定の元素がタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分としてもよい。この場合の所定の元素は、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、又はバリウムである。
【0030】
ここで主成分とは、静電電極22を構成する全物質の50wt%以上を占める成分のことを意味する。静電電極22において、タングステンに対するニッケルとマンガンの割合が0.05wt%以上10wt%以下であることが好ましい。ニッケルとニオブ、又はニッケルとインジウムの場合も同様であり、タングステンに対する各々の割合が0.05wt%以上10wt%以下であることが好ましい。また、上記の所定の元素についても、タングステンに対する割合が0.05wt%以上10wt%以下であることが好ましい。
【0031】
第1静電電極22aは、基板固定装置1の外部に設けられた電源40aの正極側に接続されている。又、第2静電電極22bは、基板固定装置1の外部に設けられた電源40bの負極側に接続されている。電源40aの負極側と電源40bの正極側が基板固定装置1の外部で接続されており、接続点が接地電位となる。
【0032】
第1静電電極22aに電源40aからプラス(+)の電圧が印加され、第2静電電極22bに電源40bからマイナス(-)の電圧が印加される。これにより、第1静電電極22aにプラス(+)電荷が帯電し、第2静電電極22bにマイナス(-)電荷が帯電する。これに伴って、第1静電電極22aに対応する基板Wの部分Waにマイナス(-)電荷が誘起され、第2静電電極22bに対応する基板Wの部分Wbにプラス(+)電荷が誘起される。
【0033】
基板Wと静電電極22とその間に配置される静電チャック20(基体21)のセラミックス部25とをコンデンサとみなした場合、セラミックス部25が誘電層に相当する。そして、セラミックス部25を介して静電電極22と基板Wとの間に発生したクーロン力によって基板Wが静電チャック20の上に静電吸着される。吸着保持力は、静電電極22に印加される電圧が高いほど強くなる。
【0034】
発熱体24は、基体21に内蔵されており、電流が流れると発熱して基体21の載置面21aが所定の温度となるように加熱するヒータである。発熱体24は、第1静電電極22a及び第2静電電極22bの下側(ベースプレート10側)に配置されている。発熱体24は、膜状に形成された導電体である。発熱体24は、基体21を平面的に複数の領域(ヒータゾーン)を独立して加熱制御することが可能な複数のヒータ電極として設けられる。なお、発熱体24が1つのヒータ電極として設けられてもよい。発熱体24は、例えば、静電電極22と同様の材料から形成することができる。
【0035】
基板固定装置1の外部に設けられた電源から発熱体24に電流が供給されると、発熱体24が発熱して静電チャック20が加熱される。静電チャック20の温度により、基板Wが所定の温度に制御される。静電チャック20の加熱温度は、50℃~200℃の範囲内で、例えば150℃に設定される。
【0036】
図2は、第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する平面図である。
図2を参照すると、基板固定装置1では、円盤状のベースプレート10の上に静電チャック20が配置され、静電チャック20の周囲においてベースプレート10の周縁部が露出している。ベースプレート10の周縁部には、半導体製造装置のチャンバに取り付けるための取付孔11が周縁部に沿って配列されている。
【0037】
又、静電チャック20及びベースプレート10は、中央部に複数(
図2では3つ)のリフトピン用開口部12を有している。リフトピン用開口部12には、基板Wを上下方向に移動するリフトピンが挿通される。リフトピンで基板Wを載置面21aより上昇させることにより、搬送装置による基板Wの自動搬送が可能になる。
【0038】
[静電チャックの製造方法]
次に、静電チャック20の製造方法について説明する。
図3及び
図4は、第1実施形態に係る静電チャックの製造工程について例示する斜視図である。
【0039】
まず、
図3(a)に示すように、セラミックス材料と有機材料からなるグリーンシート51を準備する。グリーンシート51は、例えば、矩形板状に形成されている。グリーンシート51のセラミックス材料は酸化アルミニウムからなり、焼結助剤を含まない。グリーンシート51は、有機成分が除去されセラミックス材料が焼結し、緻密化することにより、
図1に示す基板Wが搭載される部分の基体21となるものである。
【0040】
次に、
図3(b)に示すように、グリーンシート51と同様の材料及び同様の形状からなるグリーンシート52を準備し、グリーンシート52の上面に、例えば印刷法(スクリーン印刷)により導電性ペーストを印刷して導電体パターン55を形成する。導電体パターン55は、後述する工程において焼成されることにより、
図1に示す静電電極22となるものである。なお、導電体パターン55は、グリーンシート51の下面に形成されてもよい。
【0041】
導電体パターン55の形成には、酸化ニッケルと酸化マンガンをタングステンに添加した導電性ペースト、酸化ニッケルと酸化ニオブをタングステンに添加した導電性ペースト、又は酸化ニッケルと酸化インジウムをタングステンに添加した導電性ペーストを用いる。導電体パターン55の形成に用いられる導電性ペーストは、さらに上記の所定の元素を含んでもよい。また、導電体パターン55の形成に用いられる導電性ペーストは、さらに有機材料等を含んでもよい。
【0042】
酸化ニッケルと酸化マンガンの添加量は、例えば、タングステン100gに対して、0.1g以上10g以下であることが好ましい。すなわち、導電性ぺーストにおいて、タングステンに対する酸化ニッケルと酸化マンガンの割合が0.1wt%以上10wt%以下であることが好ましい。タングステンに対する酸化ニッケルと酸化マンガンの割合が0.1wt%以上であると、導電性ペーストの液相化温度を1450℃以下とすることができる。酸化ニッケルと酸化ニオブ、及び酸化ニッケルと酸化インジウムの場合も同様であり、タングステンに対する各々の割合が0.1wt%以上10wt%以下であることが好ましい。
【0043】
タングステンに対する酸化ニッケルと酸化マンガン、酸化ニッケルと酸化ニオブ、又は酸化ニッケルと酸化インジウムの割合が10wt%より多くても、導電性ペーストの液相化温度が1450℃以下となることに変わりはない。しかし、タングステンに対する酸化ニッケルと酸化マンガン、酸化ニッケルと酸化ニオブ、又は酸化ニッケルと酸化インジウムの割合が10wt%より多くなると、導電性ペーストを焼結して作製されるタングステンを含む固溶体において、タングステンの電気的特徴が出にくくなる。そのため、タングステンに対する酸化ニッケルと酸化マンガン、酸化ニッケルと酸化ニオブ、又は酸化ニッケルと酸化インジウムの割合が10wt%以下であることが好ましい。なお、導電性ペーストとグリーンシートとを同時焼成する上で、タングステンの平均粒径は、0.5μm以上3.0μm以下であることが好ましい。
【0044】
次に、
図3(c)に示すように、グリーンシート51と同様の材料及び同様の形状からなるグリーンシート53を準備し、グリーンシート53の上面に、例えば印刷法(スクリーン印刷)により、導電性ペーストを印刷して導電体パターン57を形成する。導電体パターン57を形成する導電性ペーストは、上述の導電体パターン55を形成する導電性ペーストと同じ材料の導電性ペーストを用いることができる。グリーンシート53は、焼成されることにより、
図1に示す発熱体24を形成するためのものであり、ベースプレート10に接着される部分の基体21となるものである。導電体パターン57は、後述する工程において焼成されることにより、発熱体24となるものである。なお、導電体パターン57は、上述のグリーンシート52の下面に形成されてもよい。
【0045】
次に、
図4(a)に示すように、各グリーンシート51~53が積層されて構造体71aが形成される。各グリーンシート51~53は、加熱しながら加圧することにより、互いに接着される。次に、
図4(b)に示すように、構造体71aの周囲を切断して円盤状の構造体71bが形成される。
【0046】
次に、
図4(b)に示す構造体71bを焼成して、
図4(c)に示すセラミックス基板72aが得られる。焼成する際の温度は、例えば、1600℃である。この工程では、導電体パターン55を焼結することで静電電極22が得られ、導電体パターン57を焼結することで発熱体24が得られる。酸化ニッケルと酸化マンガン、酸化ニッケルと酸化ニオブ、又は酸化ニッケルと酸化インジウムをタングステンに添加した導電性ペーストの液相化温度は1450℃以下であるため、セラミックス基板72aを焼成する際の温度(例えば、1600℃)で容易に焼結する。これにより、ニッケルとマンガン、ニッケルとニオブ、又はニッケルとインジウムがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分とする静電電極22及び発熱体24が形成される。
【0047】
なお、タングステンは、導電性ペーストの液相化温度からセラミックス基板72aを焼成する際の温度(例えば、1600℃)までの間で焼結するが、この温度範囲が狭いとタングステンが十分に焼結することができない。そこで、液相化温度は1450℃以下であると好ましい。液相化温度が1450℃以下であれば、タングステンが十分に焼結することができる。
【0048】
一方、導電性ペーストの液相化温度は低すぎてもよくない。液相化温度からセラミックス基板72aを焼成する際の温度(例えば、1600℃)までの温度範囲が広くなると、タングステンが焼けすぎて過焼結となるおそれが高くなる。タングステンが過焼結となるとセラミックスとの密着性が低下する。そこで、液相化温度は1390℃以上であると好ましい。液相化温度が1390℃以上であれば、タングステンが過焼結となるおそれを低減することができる。
【0049】
次に、セラミックス基板72aに対して各種の加工が施され、静電チャック20が完成する。例えば、セラミックス基板72aの上下両面が研磨されて載置面と接着面とが形成される。又、セラミックス基板72aに、
図1に示すリフトピン用開口部12が形成される。
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0051】
[液相化温度の検討]
実施例1として、タングステン100gに、酸化ニッケル1gと酸化マンガン1gを添加し、窒素及び水素の雰囲気中で調整を行った場合の液相化温度について、Fact Sage(株式会社計算力学研究センター製)により計算した。なお、Fact Sageは、多成分系の熱力学的平衡状態を定量的に予測するソフトウェアである。
【0052】
実施例1の計算結果を
図5に示す。
図5に示すように、実施例1に係る材料を焼結することで、ニッケルとマンガンがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体が形成されることが計算により確認された。また、実施例1において、液相化温度は、約1440℃であった。
【0053】
次に、実施例2として、タングステン100gに、酸化ニッケル1gと酸化ニオブ1gを添加し、窒素及び水素の雰囲気中で調整を行った場合の液相化温度について、Fact Sageにより計算した。
【0054】
実施例2の計算結果を
図6に示す。
図6に示すように、実施例2に係る材料を焼結することで、ニッケルとニオブがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体が形成されることが計算により確認された。また、実施例2において、液相化温度は、約1450℃であった。
【0055】
次に、実施例3として、タングステン100gに、酸化ニッケル1gと酸化インジウム1gを添加し、窒素及び水素の雰囲気中で調整を行った場合の液相化温度について、Fact Sageにより計算した。
【0056】
実施例3の計算結果を
図7に示す。
図7に示すように、実施例3に係る材料を焼結することで、ニッケルとインジウムがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体が形成されることが計算により確認された。また、実施例3において、液相化温度は、約1430℃であった。
【0057】
このように、酸化ニッケルと酸化マンガン、酸化ニッケルと酸化ニオブ、又は酸化ニッケルと酸化インジウムをタングステンに添加して焼成すると、液相化温度を約1430℃~1450℃にできる。この温度は、タングステンの融点(3300℃以上)よりも十分に低く、基体の焼結温度(例えば、1500℃~1600℃程度)よりも低いため、タングステンを容易に焼結することができる。
【0058】
すなわち、酸化ニッケルと酸化マンガン、酸化ニッケルと酸化ニオブ、及び酸化ニッケルと酸化インジウムは、セラミックス基板において、タングステンを含む導電体パターンを焼結する際に用いる従来とは異なる焼結助剤として有用である。
【0059】
次に、実施例4として、実施例1~3において、さらに所定の元素を添加し、窒素及び水素の雰囲気中で調整を行った場合の液相化温度について、Fact Sageにより計算した。
【0060】
例えば、タングステン100gに、酸化ニッケル1gと酸化マンガン1gと酸化ホウ素1gを添加し、窒素及び水素の雰囲気中で調整を行った場合の液相化温度について、Fact Sageにより計算したところ、液相化温度は、約1410℃であった。
【0061】
また、タングステン100gに、酸化ニッケル1gと酸化ニオブ1gと酸化鉄1gを添加し、窒素及び水素の雰囲気中で調整を行った場合の液相化温度について、Fact Sageにより計算したところ、液相化温度は、約1420℃であった。
【0062】
また、タングステン100gに、酸化ニッケル1gと酸化インジウム1gと酸化ガリウム1gを添加し、窒素及び水素の雰囲気中で調整を行った場合の液相化温度について、Fact Sageにより計算したところ、液相化温度は、約1410℃であった。
【0063】
また、タングステン100gに、酸化ニッケル1gと酸化ニオブ1gと酸化インジウム1gを添加し、窒素及び水素の雰囲気中で調整を行った場合の液相化温度について、Fact Sageにより計算したところ、液相化温度は、約1390℃であった。
【0064】
これらの結果を含め、発明者らがFact Sageにより計算した液相化温度を
図8にまとめた。
図8では、縦方向及び横方向に示した元素の酸化物を酸化ニッケルと共にタングステンに添加した場合の液相化温度を示している。
図8より、例えば、酸化ニッケルと酸化マンガンと酸化ホウ素をタングステンに添加することにより、液相化温度を約1410℃にできることが読み取れる。
【0065】
図8の粗い破線で囲んだ領域に示すように、酸化ニッケルと酸化マンガンと所定の元素をタングステンに添加することにより、液相化温度を約1410℃~1450℃の範囲で調整できる。そして、焼成により、ニッケルとマンガンと所定の元素がタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分とする導電体パターンの形成が可能である。この場合の所定の元素は、ホウ素、マグネシウム、スカンジウム、バナジウム、クロム、鉄、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、又はバリウムである。
【0066】
また、
図8の実線で囲んだ領域に示すように、酸化ニッケルと酸化ニオブと所定の元素をタングステンに添加することにより、液相化温度を約1390℃~1450℃の範囲で調整できる。そして、焼成により、ニッケルとニオブと所定の元素がタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分とする導電体パターンの形成が可能である。この場合の所定の元素は、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、又はバリウムである。
【0067】
また、
図8の細かい破線で囲んだ領域に示すように、酸化ニッケルと酸化インジウムと所定の元素をタングステンに添加することにより、液相化温度を約1390℃~1450℃の範囲で調整できる。そして、焼成により、ニッケルとインジウムと所定の元素がタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分とする導電体パターンの形成が可能である。この場合の所定の元素は、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、又はバリウムである。
【0068】
特に、酸化ニッケルと酸化ニオブと酸化インジウムをタングステンに添加する場合、液相化温度を約1390℃にできるため、液相化温度を下げたい場合に有効である。
【0069】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、第1実施形態で説明したセラミックス基板を有する半導体装置用パッケージの例を示す。
図9は、第2実施形態に係る半導体装置用パッケージを例示する断面図である。
図10は、第2実施形態に係る半導体装置用パッケージを例示する平面図である。
【0070】
図9に示すように、半導体装置用パッケージ100は、セラミックス基板110と、放熱板150と、外部接続端子160とを有し、放熱板150はセラミックス基板110にろう付けされている。
【0071】
セラミックス基板110は、積層された複数(本実施形態では4つ)のセラミックス基材111,112,113,114と、導電体パターンの一例である配線パターン121,122,123、124と、セラミックス基材112,113,114を貫通するビア132,133,134とを有している。ビア132は、配線パターン121,122を互いに接続し、ビア133は、配線パターン122,123を互いに接続し、ビア134は配線パターン123,124を互いに接続する。セラミックス基板110において、セラミックス基材111~114は基体を構成している。
【0072】
図8及び
図9に示すように、セラミックス基板110には、セラミックス基材112,113,114の中央部を貫通して半導体素子200を搭載するキャビティ170が設けられている。配線パターン121は、キャビティ170を囲むように、セラミックス基材112の上面に配設されている。セラミックス基材111には、配線パターン121を露出する開口部111Xが形成されている。
【0073】
セラミックス基材111~114は、酸化アルミニウムからなるセラミックスであり、配線パターン121~124は、ニッケルとマンガンがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体、ニッケルとニオブがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体、又はニッケルとインジウムがタングステンに固溶した体心立方格子構造の固溶体を主成分とする。配線パターン121~124は、さらに上記の所定の元素を含んでもよい。又、ビア132~134は、例えば、モリブデンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼結体である。そして、セラミックス基板110は、第1実施形態の静電チャック20と同様の製造方法により製造することができる。
【0074】
半導体装置用パッケージ100において、半導体素子200は放熱板150に搭載される。半導体素子200のパッドは、ボンディングワイヤ等によってセラミックス基板110の配線パターン121と電気的に接続される。これにより、半導体素子200は、配線パターン121~124とビア132~134とを介して外部接続端子160に接続される。
【0075】
半導体装置用パッケージ100において、配線パターン121~124は、酸化ニッケルと酸化マンガンをタングステンに添加した導電性ペースト、酸化ニッケルと酸化ニオブをタングステンに添加した導電性ペースト、又は酸化ニッケルと酸化インジウムをタングステンに添加した導電性ペーストを焼結して形成することができる。導電性ペーストは、さらに上記の所定の元素を含んでもよい。これにより、第1実施形態と同様に、タングステンを容易に焼結することができる。
【0076】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0077】
例えば、第1実施形態において、基板固定装置に含まれる部材や配置を適宜変更してもよい。
【0078】
又、第1実施形態において、発熱体24は、静電チャック20とベースプレート10との間に配設されてもよい。又、発熱体24は、ベースプレート10に内設されてもよい。又、発熱体24は、静電チャックの下に外付けされてもよい。
【0079】
又、第1実施形態に係る基板固定装置は、半導体製造装置、例えばドライエッチング装置(例えば平行平板型の反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)装置)に適用される。
【0080】
又、第1実施形態に係る基板固定装置の吸着対象物としては、半導体ウェハ(シリコンウエハ等)以外に、液晶パネル等の製造工程で使用されるガラス基板等を例示できる。
【符号の説明】
【0081】
1 基板固定装置
10 ベースプレート
11 取付孔
12 リフトピン用開口部
20 静電チャック
21 基体
22 静電電極
22a 第1静電電極
22b 第2静電電極
24 発熱体
25 セラミックス部
40a、40b 電源
51、52、53 グリーンシート
55、57 導電体パターン
71a、71b 構造体
72a セラミックス基板
100 半導体装置用パッケージ
110 セラミックス基板
111~114 セラミックス基材
121~124 配線パターン
132~134 ビア