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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174712
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】画像読取装置および画像読取方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20241210BHJP
   H04N 1/12 20060101ALI20241210BHJP
   H04N 1/10 20060101ALI20241210BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H04N1/04 101
H04N1/12
H04N1/10
H04N1/00 L
H04N1/00 567H
H04N1/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092692
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】橋本 歩
【テーマコード(参考)】
5C062
5C072
【Fターム(参考)】
5C062AA05
5C062AB02
5C062AB32
5C062AB33
5C062AB35
5C062AC09
5C062AC11
5C062AC15
5C062AC61
5C062AC66
5C062AD02
5C062AE03
5C062AE15
5C072AA01
5C072BA04
5C072CA02
5C072CA12
5C072DA04
5C072DA21
5C072EA05
5C072EA06
5C072FA02
5C072FB18
5C072LA02
5C072LA08
5C072LA15
5C072LA18
5C072MA02
5C072MB01
5C072NA01
5C072NA07
5C072QA01
5C072RA03
5C072RA16
5C072UA02
5C072WA01
5C072WA02
5C072XA01
5C072XA04
(57)【要約】
【課題】可視画像と不可視画像との少なくとも何れか一方からの被写体または背景部の特徴量の抽出に際して、画像に悪影響が出ることを防止する。
【解決手段】被写体に対して可視光と不可視光とを照射する照明部と、前記被写体により反射された可視光及び不可視光を受光し、可視画像と不可視画像とを撮像する撮像部と、前記撮像部の撮像範囲に設けられる背景部と、前記可視画像と前記不可視画像との少なくとも何れか一方から、前記被写体または前記背景部の特徴量を検出する画像処理部と、を備え、前記背景部は、可視光の特定波長の反射率を、可視光の反射率の下限を規定する可視光下限反射率以上とし、不可視光の特定波長の反射率を、不可視光の反射率の上限を規定する不可視光上限反射率以下とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に対して可視光と不可視光とを照射する照明部と、
前記被写体により反射された可視光及び不可視光を受光し、可視画像と不可視画像とを撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像範囲に設けられる背景部と、
前記可視画像と前記不可視画像との少なくとも何れか一方から、前記被写体または前記背景部の特徴量を検出する画像処理部と、
を備え、
前記背景部は、可視光の特定波長の反射率を、可視光の反射率の下限を規定する可視光下限反射率以上とし、不可視光の特定波長の反射率を、不可視光の反射率の上限を規定する不可視光上限反射率以下とする、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記背景部は、可視光の特定波長の反射率を、可視光の反射率の上限を規定する可視光上限反射率以下とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記背景部は、不可視光の特定波長の反射率を、不可視光の反射率の下限を規定する不可視光下限反射率以上とする、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記背景部は、可視光の複数の特定波長の反射率の最大値と最小値との差分を、当該差分の上限を規定する可視光反射率差分上限以下とする、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記照明部は、前記不可視光として赤外光を照射し、
前記撮像部は、前記不可視画像として赤外画像を撮像する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記可視画像と前記不可視画像との少なくとも何れか一方の特徴量として、前記被写体と前記背景部との間のエッジを検出し、
前記背景部は、前記特定波長が850nmの場合における前記不可視光上限反射率を、55%以下とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記可視画像の特徴量として、前記被写体の輝度を検出し、
前記背景部は、前記特定波長が550nmの場合における前記可視光下限反射率を、55%以上とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記可視画像と前記不可視画像との少なくとも何れか一方の特徴量として、前記被写体と前記背景部との間のエッジを検出し、
前記背景部は、前記特定波長が550nmの場合における前記可視光上限反射率を、99%以下とする、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記画像処理部は、前記不可視画像の特徴量として、前記背景部の輝度を検出し、
前記背景部は、前記特定波長が850nmの場合における前記不可視光下限反射率を、1%以上とする、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記画像処理部は、前記可視画像の特徴量として、前記被写体の彩度を検出し、
前記背景部は、複数の前記特定波長が450,550,600nmの場合における前記可視光反射率差分上限を、44%以下とする、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項11】
被写体に対して可視光と不可視光とを照射する照明部と、
前記被写体により反射された可視光及び不可視光を受光し、可視画像と不可視画像とを撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像範囲に設けられる背景部と、
前記可視画像と前記不可視画像との少なくとも何れか一方から、前記被写体または前記背景部の特徴量を検出する画像処理部と、
を備える画像読取装置における画像読取方法であって、
前記背景部は、可視光の特定波長の反射率を、可視光の反射率の下限を規定する可視光下限反射率以上とし、不可視光の特定波長の反射率を、不可視光の反射率の上限を規定する不可視光上限反射率以下とする、
ことを特徴とする画像読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置および画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像読取装置では、読み取った画像から検出した原稿と背景との間のエッジを基に、原稿の傾きおよび位置を補正したり、原稿サイズに切り出したりする画像処理技術が考えられている。
【0003】
また、特許文献1には、原稿の重送検知をするために、可視画像と不可視画像から特徴量を抽出する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の画像読取装置では、上記画像処理のために、背景部に不可視光に対して低反射な不可視光低反射部を設けることで、原稿と背景との間のエッジ検出を可能としていた。
【0005】
しかしながら、不可視光低反射部における不可視光に対する反射率を小さくすると、一般的に、可視光に対する反射率も小さくなってしまう。このように可視光に対する反射率が小さくなってしまうと、原稿地肌が暗くなることで白紙検知等の画像処理機能に影響が出たり、画像内に背景が残る場合には違和感のある画像になったりする、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、可視画像と不可視画像との少なくとも何れか一方からの被写体または背景部の特徴量の抽出に際して、画像に悪影響が出ることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、被写体に対して可視光と不可視光とを照射する照明部と、前記被写体により反射された可視光及び不可視光を受光し、可視画像と不可視画像とを撮像する撮像部と、前記撮像部の撮像範囲に設けられる背景部と、前記可視画像と前記不可視画像との少なくとも何れか一方から、前記被写体または前記背景部の特徴量を検出する画像処理部と、を備え、前記背景部は、可視光の特定波長の反射率を、可視光の反射率の下限を規定する可視光下限反射率以上とし、不可視光の特定波長の反射率を、不可視光の反射率の上限を規定する不可視光上限反射率以下とする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可視画像と不可視画像との少なくとも何れか一方からの被写体または背景部の特徴量の抽出に際して、画像に悪影響が出ることを防止することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施の形態にかかる画像読取装置の装置構成の一例を示す図である。
図2図2は、読取部の構成の一例を説明する図である。
図3図3は、画像読取装置を構成する各部の電気的接続を示すブロック図である。
図4図4は、撮像部における媒質による分光反射特性の違いを示す図である。
図5図5は、可視画像と不可視画像の違いを例示的に示す図である。
図6図6は、画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
図7図7は、背景部の反射率の規定を示す図である。
図8図8は、背景部の反射率による読取画像の違いを示す図である。
図9図9は、被写体のエッジ検出例を示す図である。
図10図10は、原稿の傾きと位置の補正例を示す図である。
図11図11は、第2の実施の形態にかかる背景部の反射率の規定を示す図である。
図12図12は、不可視光イメージセンサへの可視光の混入例を示す図である。
図13図13は、第3の実施の形態にかかる背景部の反射率の規定を示す図である。
図14図14は、自動レベル補正(ALC)の一例を示す図である。
図15図15は、不可視光に対する背景部の反射率による読取画像の違いを示す図である。
図16図16は、第4の実施の形態にかかる背景部の反射率の規定を示す図である。
図17図17は、背景部の可視光反射率差分による読取画像の違いを示す図である。
図18図18は、第5の実施の形態にかかる背景部の反射率の規定を示す図である。
図19図19は、第6の実施の形態にかかる背景部の反射率の規定を示す図である。
図20図20は、第7の実施の形態にかかる背景部の反射率の規定を示す図である。
図21図21は、第8の実施の形態にかかる背景部の反射率の規定を示す図である。
図22図22は、第9の実施の形態にかかる背景部の反射率の規定を示す図である。
図23図23は、画像読取装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、画像読取装置および画像読取方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下において可視光線の波長域(可視波長域)を対象とする場合に可視、可視光線以外の赤外線や紫外線などの波長域を対象とする場合に不可視などと呼ぶ。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる画像読取装置の装置構成の一例を示す図である。図1は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する一般に複合機(MFP:Multifunction Peripheral/Printer/Product)と称される画像形成装置に設けられる画像読取装置1の構成を示している。ここでは読取部を備える画像読取装置の構成を示すが、読取部と別体にして読取デバイスと画像読取装置とを別々に提供してもよい。
【0012】
画像読取装置1の読取装置本体10は、上面にコンタクトガラス11を有する。画像読取装置1は、読取装置本体10の内部に、光源13、第1キャリッジ14、第2キャリッジ15、レンズユニット16、センサボード17などを有する。図1において、第1キャリッジ14は光源13と反射ミラー14-1とを有し、第2キャリッジ15は反射ミラー15-1、15-2を有する。
【0013】
光源13の光は読取対象に照射され、読取対象からの反射光が第1キャリッジ14のミラー14-1や第2キャリッジ15のミラー15-1、15-2で折り返されてレンズユニット16に入射し、読取対象の像がレンズユニット16からセンサボード17上の受光面上に結像する。センサボード17は、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary MOS)などのラインセンサである撮像部40を有し、撮像部40において受光面に結像した読取対象の像を順次電気信号に変換する。基準白板12は光源13の光量変化や撮像部40の画素(画素回路)のばらつきなどの補正のために読み取られる白色の濃度基準部材である。
【0014】
画像読取装置1は読取装置本体10に制御ボードを備え、読取装置本体10の各部やADF20の各部を制御して所定の読取方式で読取対象の読取を行う。読取対象は、例えば文字や絵柄等が形成されている記録媒体である。以下では、この記録媒体のことを原稿と呼ぶ。原稿は、「被写体」に相当し、一例として紙や透明シート(OHPシートなど)として説明するが、これらに限定されるものではない。
【0015】
画像読取装置1は,読取装置本体10の上部にADF(Automatic Document Feeder)20を搭載する。画像読取装置1は、ADF20を使用してシートスルー方式で原稿100の読み取りを行う。ADF20は「搬送部」の一例である。図1に示す構成では、画像読取装置1は、ADF20のトレイ21の原稿束からピックアップローラ22により1枚ずつに分離して原稿100を搬送路23に搬送し、原稿100の読取対象の面を読取部の読取位置で読み取って原稿100を排紙トレイ25に排出する。原稿100の搬送は各種搬送ローラ24の回転により行う。
【0016】
画像読取装置1は、例えば第1キャリッジ14および第2キャリッジ15を所定のホームポジションに移動して固定した状態で、読取部の、読取窓19と背景部26との間を原稿100を通過させる。読取窓19はコンタクトガラス11の一部に設けたスリット状の読取窓である。背景部26は、読取窓19に対向する位置にある部材である。読取部は、原稿100が読取窓19を通過する間に読取窓19側に向けられている原稿100の第一面(表面または裏面)に光源13の光を照射し、反射光をセンサボード17上の撮像部40で受光して画像を読み取る。
【0017】
ここで、光源13、背景部26、原稿100からの反射光をセンサボード17の撮像部40へ導く光学系(ミラー14-1、ミラー15-1、15-2、レンズユニット16など)、および撮像部40などを読取部(第1の読取部)として説明する。読取部の構成については図3で改めて説明することとする。
【0018】
なお、原稿100の両面読取を行う場合には、例えば表裏を反転させる反転機構を設けるなどして実施する。画像読取装置1は、反転機構を設けることにより原稿100を反転させて原稿100の第二面を読取部の読取位置(読取窓19)で読み取らせる。また、反転機構に限らず、その他の構成、一例として第2の読取部を設けるなどして第二面を読み取らせるようにしてもよい。例えば読取窓19の通過後において、原稿100の背面側に読取センサを設けた読取部(第2の読取部)で原稿100の第二面を読み取らせる。この場合は、読取センサの対向位置にある部材が背景部26(図2参照)に相当する。
【0019】
本例の画像読取装置1の構成では、フラットベット方式の読取も可能である。具体的には、ADF20を持ち上げてコンタクトガラス11を露出し、コンタクトガラス11上に原稿100を直接配置する。そして、ADF20を元の位置に下ろしてADF20の下部で原稿100の背面を押さえる。フラットベット方式では原稿100が固定されるため、原稿100に対しキャリッジ(第1キャリッジ14、第2キャリッジ15)側を移動して走査を行う。第1キャリッジ14および第2キャリッジ15はスキャナモータ18によって駆動され、原稿100の副走査方向を走査する。例えば、第1キャリッジ14が速度Vで移動し、同時にそれと連動して第2キャリッジ15が、第1キャリッジ14の半分の速度1/2Vで移動して、原稿100のコンタクトガラス11側の第一面を読み取る。この場合、ADF20の下部(原稿100を背面から抑える部材)が背景部26(図2参照)に相当する。
【0020】
なお、この例では、第1キャリッジ14、第2キャリッジ15、レンズユニット16、センサボード17等を別々に示しているが、これらは、個別に設けてもよいし、一体となった一体型センサモジュールとして設けてもよい。
【0021】
図2は、読取部30の構成の一例を説明する図である。一例として原稿100の第一面を読み取る読取部30(第1の読取部)の構成と搬送機構とを示している。図2に示すように、原稿100は、各種搬送ローラ24により送られ、コンタクトガラス11の読取位置(読取窓19)と背景部26との間を通過する。
【0022】
読取部30は、背景部26をセットで有し、光源13の点灯により、原稿100が読取窓19を通過する間、読取窓19に向けられている原稿100の第一面からの光源13の光の反射光を図2に点線で示す経路を経てセンサボード17上の撮像部40で受光して画像を読み取る。
【0023】
なお、読取部の構成は、この第1の読取部の構成に限るものではない。第2の読取部のように密着型イメージセンサで読み取る方式や、その他画像読取装置の構成に応じて適宜変形してよい。
【0024】
図2に示すように、本実施形態の光源13は、可視光光源13aおよび不可視光光源13bで構成され、被写体に対して可視光と不可視光とを照射する照明部である。可視光光源13aは、被写体や背景部26に対して可視光を照射する。不可視光光源13bは、被写体や背景部26に不可視光を照射する。不可視光光源13bとして、赤外光を使用することが有効である。一般的に、可視光波長域は380~750nm、また750nm以降は赤外波長域とされ、不可視光の波長域である。
【0025】
図3は、画像読取装置1を構成する各部の電気的接続を示すブロック図である。図3に示すように、画像読取装置1は、上述した撮像部40、光源13に加え制御部41、光源駆動部42、画像処理部43、を備えている。制御部41は、撮像部40、光源駆動部42、画像処理部43を制御する。光源駆動部42は、制御部41の制御に従い、光源13を駆動する。撮像部40は、信号を後段に配置される画像処理部43へと転送する。
【0026】
撮像部40は、不可視画像読み取り部として機能する不可視光イメージセンサ40bと、可視画像読み取り部として機能する可視光イメージセンサ40aと、を備える。撮像部40は、被写体により反射された可視光及び不可視光を受光し、可視画像と不可視画像とを撮像する。より詳細には、不可視光イメージセンサ40bは、不可視光の一部である被写体からの不可視反射光を読み取ることで不可視画像(不可視光波長領域の画像)を取得する。可視光イメージセンサ40aは、可視光の一部である被写体からの可視反射光を読み取ることで可視画像(可視光波長領域での画像)を取得する。不可視光イメージセンサ40bおよび可視光イメージセンサ40aは、縮小光学系用センサであり、例えばCMOSイメージセンサなどである。
【0027】
なお、可視光イメージセンサ40aと不可視光イメージセンサ40bとは、一体型の構成であってもよい。これにより、より小型な構成で、かつ可視光と赤外光の読み取り位置がより近くなるため、高精度な消失情報の抽出及び復元が可能となる。すなわち、複数回読み取ることによる画像のずれが無く、位置精度よく補正可能である。
【0028】
画像処理部43は、画像データの使用目的に合わせた各種の画像処理を実行する。なお、画像処理部43は、ハードウェア、ソフトウェアのどちらで実現されても良い。
【0029】
ここで、図6は画像処理部43の機能構成を示すブロック図である。図6に示すように、画像処理部43は、特徴量検出部431を備える。画像処理部43は、読取装置本体10で得られた可視画像と不可視画像との少なくとも何れか一方から、特徴量検出部431にて、被写体または背景部26の特徴量を検出する。特徴量としては、例えば背景部26と原稿100との間のエッジなどが挙げられる。
【0030】
ここで、撮像部40における媒質による分光反射特性の違いについて説明する。
【0031】
図4は、媒質による分光反射特性の違いを示す図である。図4は、画像読取装置1の読取対象である、原稿として一般的に用いられる2種類の普通紙である紙種A、紙種Bと、背景部26との分光反射特性を示す図である。図4中、一点鎖線のグラフが普通紙(紙種A)の分光反射特性のグラフであり、点線のグラフが普通紙(紙種B)の分光反射特性のグラフであり、実線のグラフが背景部26の分光反射特性のグラフである。
【0032】
図4からわかるように、可視波長域においては、白色背景である背景部26の反射率は普通紙より高いが、近赤外(NIR)波長域においては、背景部26の反射率は普通紙(紙種A、紙種B)より低いことがわかる。
【0033】
ここで、図5は可視画像と不可視画像の違いを例示的に示す図である。図5に示すように、可視光と不可視光では、異なった特徴量をもつ画像が得られることになる。したがって、被写体の種類や背景部26の種類に応じて、検出対象の画像を可視画像と不可視画像とのいずれかから事前に設定しておくと狙いの特徴量が取りやすい。
【0034】
例えば、図5に示す例の場合、紙種Aは可視画像より不可視画像の方が背景部26と分光反射特性差が大きいため特徴量の検出対象を不可視画像とし、逆に紙種Bは可視画像とするように設定しておくことができる。
【0035】
続いて、本実施形態の特徴である背景部26の反射率の規定について説明する。
【0036】
図7は、背景部26の反射率の規定を示す図である。従来は、不可視光に対して低反射な背景部が提案されている。しかしながら、従来においては、可視光に対して必要な反射率が規定されておらず、通常の可視画像に副作用を与える可能性がある。そこで、本実施形態においては、図7に示すように、背景部26について、可視光の特定波長の反射率が可視光下限反射率以上であり、不可視光の特定波長の反射率が不可視光上限反射率以下であることとする。以下において詳述する。
【0037】
ここで、図8は背景部26の反射率による違いを示す図である。図8(a)は背景部26の反射率が大きい場合の読取画像を示し、図8(b)は背景部26の反射率が小さい場合の読取画像を示す。本実施形態においては、可視光特定波長に対して可視光の反射率の下限を示す可視光下限反射率、不可視光特定波長に対してに対して不可視光の反射率の上限を示す不可視光上限反射率を規定する。可視光の反射率を高く、不可視光の反射率を低くすることで、可視光では図8(a)に示すような画像となる。一方、不可視光では、原稿100と背景部26の色差が大きくなり背景が目立つとともに、透過率の高い白原稿の場合に背景の影響を受けて暗くなるため、図8(b)に示すような画像となる。
【0038】
可視画像の場合は、ユーザへの出力画像とするケースが多く、通常の用紙は白色であることから、原稿および背景は白く見えることが求められることが多い。そのことから、図8(b)のように全体が暗くなることは一般に好ましくない。また、白紙検知機能や自動カラー判定(ACS:Auto Color Selection)機能等にも影響を与えてしまうことになる。
【0039】
逆に不可視画像の場合は、可視画像との違いを利用した機能を実現するため、図8(b)のように背景部の反射率が小さくできるとよい。
【0040】
図9は被写体のエッジ検出例を示す図、図10は原稿の傾きと位置の補正例を示す図である。例えば、図9に示すように、画像から背景部26と原稿100との間のエッジを抽出する場合には、背景部26の反射率を小さくするとともに、不可視画像を用いるのがよい。また、図10に示すように、原稿の傾きおよび位置の補正、原稿画像の切り出しを行う場合にも、背景部26の反射率を小さくするとともに、不可視画像を用いるのがよい。
【0041】
このように本実施形態によれば、可視画像と不可視画像との少なくとも何れか一方からの被写体または背景部の特徴量の抽出に際して、狙いの光学特性を得るため、ある可視光特定波長および不可視光特定波長に対して、背景部反射率の上限と下限を定めることにより、画像に悪影響が出ることを防止することができる。具体的には、可視画像は従来の明るさをある程度保った状態で、不可視画像は暗くして原稿100と背景部26との間のエッジ検出をすることができるので、画像処理機能等への副作用を防止することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0043】
第2の実施の形態は、背景部26について可視光上限反射率を設けるようにした点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0044】
ここで、図11は第2の実施の形態にかかる背景部26の反射率の規定を示す図である。図11に示すように、本実施形態においては、背景部26について、可視光の特定波長の反射率が可視光下限反射率以上であり、不可視光の特定波長の反射率が不可視光上限反射率以下であることに加え、可視光の特定波長の反射率が可視光上限反射率以下であることを規定する。背景部26について、可視光上限反射率を設ける理由は以下の通りである。
【0045】
フラットベット方式での原稿読取のように原稿が固定されている状況であれば、可視光と不可視光とを別のタイミングで照射して、スキャンすることができる。一方、ADF20を使用したシートスルー方式での原稿読取のように原稿が動く場合、可視光と不可視光とを同時に照射して原稿をスキャンしないと、原稿を同じ姿勢でスキャンすることができない。
【0046】
ここで、図12は不可視光イメージセンサ40bへの可視光の混入例を示す図である。ADF20を使用したシートスルー方式での原稿読取のように原稿が動く場合、図12に示すように、不可視画像には可視光の成分が一部混入する可能性がある。背景部26について、可視光の反射率が高すぎる場合、可視光の成分の混入量が大きくなることで、不可視画像であっても図8(b)より図8(a)に示した画像に近づく可能性がある。
【0047】
そこで、本実施形態においては、背景部26の可視光上限反射率を設けることで、不可視画像への可視光混入量を減らすようにしたものである。これにより、不可視画像の輝度を低く維持することができる。
【0048】
このように本実施形態によれば、読取生産性を上げるために、可視光と不可視光を同時点灯させて、可視成分と不可視成分を読み取る際、不可視成分に可視光が一定量混じってしまう場合において、可視光に対する反射率が高すぎると、不可視画像での原稿100と背景部26の読取差が付きにくくなってしまうという可能性を、排除することができる。
【0049】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0050】
第3の実施の形態は、背景部26について不可視光下限反射率を設けるようにした点が、第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なる。以下、第3の実施の形態の説明では、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0051】
ここで、図13は第3の実施の形態にかかる背景部26の反射率の規定を示す図である。図13に示すように、本実施形態においては、背景部26について、可視光の特定波長の反射率が可視光下限反射率以上であり、不可視光の特定波長の反射率が不可視光上限反射率以下であり、可視光の特定波長の反射率が可視光上限反射率以下であることに加え、不可視光の特定波長の反射率が不可視光下限反射率以上であることを規定する。背景部26について、不可視光下限反射率を設ける理由は以下の通りである。
【0052】
一般的な画像読取装置では、撮像部40の読取値の基準データを取得するために、基準白板12を読み取る。
【0053】
図14は、自動レベル補正(ALC:Automatic Level Control)の一例を示す図である。図14に示すように、ADF20での読み取りの場合、読取生産性向上のため、直接基準白板12を読み取りにいかず、背景部26を読み取って基準白板12の読取値を予測するケースがある。このとき、背景部26の読取値が小さすぎると分解能が粗くなるので、分解能が粗くなる分だけ基準白板12の実際の読取値と予測値の誤差も大きくなりやすい。
【0054】
ここで、図15は不可視光に対する背景部26の反射率による読取画像の違いを示す図である。図15(a)は背景部26の反射率が大きい場合の読取画像を示し、図15(b)は背景部26の反射率が小さい場合の読取画像を示す。図15(b)に示すように、不可視光に対する背景部26の反射率が低くすぎる場合、図15(a)と比べて、特に透過性の高い原稿に対しては原稿地肌が暗くなり、文字が認識しづらくなる。例えば、可視画像では見えず不可視光にしか反応しない文字を不可視画像で読み取って、最終画像として出力するケースの場合に問題となる。
【0055】
そこで、本実施形態においては、背景部26の不可視光下限反射率を設けることで、読み取り誤差を抑制することによる画像品質の向上、および文字の判読性の向上を図ることができるようにしたものである。
【0056】
このように本実施形態によれば、読み取り誤差を抑制することによる画像品質の向上、および文字の判読性の向上を図ることができる。
【0057】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0058】
第4の実施の形態は、背景部26について可視光の複数の波長の反射率の最大値と最小値との差分を、当該差分の上限を規定する可視光反射率差分上限以下とする点が、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる。以下、第4の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0059】
ここで、図16は第4の実施の形態にかかる背景部26の反射率の規定を示す図である。図16に示すように、本実施形態においては、背景部26について、可視域(波長が約380~750nm)に対して、複数の波長を選択し、可視光の複数の波長の反射率の最大値と最小値との差を可視光反射率差分とする。この可視光反射率差分を可視光の複数の特定波長の反射率の最大値と最小値との差分を、当該差分の上限を規定する可視光反射率差分上限以下にすることで、彩度の小さい背景部画像となる。
【0060】
ここで、図17は背景部26の可視光反射率差分による読取画像の違いを示す図である。図17(a)は背景部26の可視光反射率差分が小さい場合の読取画像を示し、図17(b)は背景部26の可視光反射率差分が大きい場合の読取画像を示す。背景部26の可視光反射率差分が小さい場合、図17(a)に示すように、背景部26には色味が表出しづらい。一方で、背景部26の可視光反射率差分が大きい場合、例えば図17(b)に示すように、原稿100と背景部26の色差が大きくなり背景が目立つことになり、黄ばんだような背景部26となる。また、透過率の高い白原稿の場合は、背景の影響を受けて原稿地肌も色づいてしまう。
【0061】
そこで、本実施形態においては、背景部26の可視光反射率差分上限を設けることで、原稿および背景部の色づきを防ぎ、白紙検知機能や自動カラー判定(ACS:Auto Color Selection)機能等にも影響を与えないようにすることができる。
【0062】
このように本実施形態によれば、可視画像の色味に対しても副作用を防止することができる。
【0063】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について説明する。
【0064】
第5の実施の形態は、背景部26について不可視光上限反射率を850nmに対して規定し、不可視光上限反射率を55%以下とする点が、第1の実施の形態ないし第4の実施の形態と異なる。以下、第5の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第4の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第4の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0065】
ここで、図18は第5の実施の形態にかかる背景部26の反射率の規定を示す図である。図18に示すように、本実施形態においては、背景部26の不可視光上限反射率を近赤外センサの代表波長である850nmに対して規定し、不可視光上限反射率が55%以下であることとする。
【0066】
不可視光上限反射率を55%以下とするのは、上限を超える場合、被写体と背景部26の間のエッジが取れず、被写体の位置傾き補正、サイズ切り出しが正常に機能しない可能性が高いためである。
【0067】
なお、不可視光上限反射率はシステムによって変えてよく、特定の原稿100と背景部26のエッジが十分に取れる値として規定する。具体的な値は、どのような原稿で規定するか、取得される画像のS/N、MTF等の画像特性にもよる。原稿については、想定される原稿の坪量・連量やISO不透明度で規定するとよい。
【0068】
このように本実施形態によれば、原稿100と背景部26との間のエッジを検出することで、原稿の位置傾き補正、サイズ切り出しに活用することができる。
【0069】
(第6の実施の形態)
次に、第6の実施の形態について説明する。
【0070】
第6の実施の形態は、背景部26について可視光下限反射率を550nmに対して規定し、可視光下限反射率を55%以上とする点が、第1の実施の形態ないし第5の実施の形態と異なる。以下、第6の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第5の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第5の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0071】
ここで、図19は第6の実施の形態にかかる背景部26の反射率の規定を示す図である。図19に示すように、本実施形態においては、背景部26の可視光下限反射率を可視域G成分のセンサの代表波長である550nmに対して規定し、可視光下限反射率が55%以上であることとする。
【0072】
可視光下限反射率を55%以上とするのは、下限を下回る場合、白紙検知機能、ACS機能等の画像処理機能が正常に動作せず、例えば白い原稿を白紙でないと誤検知してしまう可能性があるためである。
【0073】
なお、可視光下限反射率はシステムによって変えてよく、特定の原稿にて白紙検知機能、ACS機能等の画像処理機能が正常に動作する値として規定する。具体的な値は、どのような原稿で規定するか、取得される画像のS/N、MTF等の画像特性、画像処理機能の判定閾値にもよる。原稿については、想定される原稿の坪量・連量やISO不透明度で規定するとよい。
【0074】
このように本実施形態によれば、可視画像の原稿・背景地汚れ防止、白紙検知機能、ACS機能等への副作用を防止することができる。
【0075】
(第7の実施の形態)
次に、第7の実施の形態について説明する。
【0076】
第7の実施の形態は、背景部26について可視光上限反射率を550nmに対して規定し、可視光上限反射率を99%以下とする点が、第1の実施の形態ないし第6の実施の形態と異なる。以下、第7の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第6の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第6の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0077】
ここで、図20は第7の実施の形態にかかる背景部26の反射率の規定を示す図である。図20に示すように、本実施形態においては、背景部26の可視光上限反射率を可視域G成分のセンサの代表波長である550nmに対して規定し、可視光上限反射率が99%以下であることとする。
【0078】
可視光上限反射率を99%以上とするのは、上限を超える場合、可視光と不可視光を同時に照射してセンシングする場合に、被写体と背景部26の間のエッジが取れず、被写体の位置傾き補正、サイズ切り出しが正常に機能しない可能性がある。
【0079】
なお、可視光上限反射率はシステムによって変えてよく、可視光と不可視光を同時に照射してセンシングする場合でも、特定の原稿100と背景部26のエッジが十分に取れる値として規定する。具体的な値は、どのような原稿で規定するか、不可視光イメージセンサ40bへの可視光の混入量、取得される画像のS/N、MTF等の画像特性にもよる。原稿については、想定される原稿の坪量・連量やISO不透明度で規定するとよい。
【0080】
このように本実施形態によれば、原稿100と背景部26との間のエッジを検出することで、原稿の位置傾き補正、サイズ切り出しに活用することができる。
【0081】
(第8の実施の形態)
次に、第8の実施の形態について説明する。
【0082】
第8の実施の形態は、背景部26について不可視光下限反射率を850nmに対して規定し、不可視光下限反射率を1%以上とする点が、第1の実施の形態ないし第7の実施の形態と異なる。以下、第8の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第7の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第7の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0083】
ここで、図21は第8の実施の形態にかかる背景部26の反射率の規定を示す図である。図21に示すように、本実施形態においては、背景部26の不可視光下限反射率を近赤外センサの代表波長である850nmに対して規定し、不可視光下限反射率が1%以上であることとする。
【0084】
不可視光下限反射率を1%以上とするのは、下限を下回る場合、ADF20にて基準白板12の読取推定誤差が大きくなることで出力画像の輝度が異常になったり、不可視画像の原稿内文字が判読できなかったりする可能性があるためである。
【0085】
なお、不可視光下限反射率はシステムによって変えてよく、基準白板12の読取推定誤差が十分に小さく、不可視画像の原稿内文字が十分に識別できる値として規定する。具体的な値は、基準白板12の読取推定誤差の許容値、どのような原稿(文字)で規定するかにもよる。原稿については、想定される原稿の坪量・連量やISO不透明度、文字のフォント・大きさで規定するとよい。
【0086】
このように本実施形態によれば、ALC(Automatic Level Control)への副作用を防止することができる。また、本実施形態によれば、不可視画像を出力するときに、地肌と文字とが判別できるようになり、地肌と文字との判別を用いた機能に影響が出ないようにすることができる。
【0087】
(第9の実施の形態)
次に、第9の実施の形態について説明する。
【0088】
第9の実施の形態は、背景部26について可視光反射率差分上限を450/550/600nmに対して規定し、可視光反射率差分上限を44%以下とする点が、第1の実施の形態ないし第8の実施の形態と異なる。以下、第9の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第8の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第8の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0089】
ここで、図22は第9の実施の形態にかかる背景部26の反射率の規定を示す図である。図22に示すように、本実施形態においては、背景部26の可視光反射率差分上限を可視域RGB成分のセンサの代表波長である450/550/600nmに対して規定し、可視光反射率差分上限を44%以下であることとする。この範囲は、上述した可視光反射率上限(99%以下)と可視光反射率下限(55%以上)の差から決めている。
【0090】
可視光反射率差分上限を44%以下とするのは、上限を超える場合、白紙検知機能、ACS機能等の画像処理機能が正常に動作せず、例えば白黒の原稿画像をカラー画像と誤検知してしまう可能性があるためである。
【0091】
なお、可視光反射率差分上限はシステムによって変えてよく、特定の原稿にて白紙検知機能、ACS機能等の画像処理機能が正常に動作する値として規定する。具体的な値は、どのような原稿で規定するか、取得される画像のS/N、MTF等の画像特性、画像処理機能の判定閾値にもよる。原稿については、想定される原稿の坪量・連量やISO不透明度で規定するとよい。
【0092】
このように本実施形態によれば、可視画像の原稿・背景地汚れ防止、白紙検知機能、ACS機能等への副作用を防止することができる。
【0093】
なお、上記実施の形態では、本発明の画像読取装置を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等に設けられる画像読取装置であればいずれにも適用することができる。
【0094】
なお、上記各実施の形態においては、画像読取装置として画像読取装置1を適用したが、これに限るものではない。画像読取装置の定義としては、画像として読み取らなくても、図23(a)に示す等倍光学系(密着光学系:CIS方式)のラインセンサのように、読み取りレベルが取得できる装置であればよい。図23(a)に示す装置は、ラインセンサあるいは原稿を移動させて、複数ラインの情報を読み取るものである。
【0095】
さらに画像読取装置としては、図23(b)に示す紙幣搬送装置、図23(c)に示す無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)の白線検知装置などにも適用することができる。
【0096】
図23(b)に示す紙幣搬送装置の被写体は紙幣である。紙幣搬送装置で検出された特徴量は、画像自体の補正処理などに用いられる。すなわち、図23(b)に示す紙幣搬送装置は、エッジ検出により紙幣の傾きを認識し、認識した傾きを用いてスキュー補正を行う。
【0097】
図23(c)に示す無人搬送車の白線検知装置の被写体は白線である。無人搬送車の白線検知装置で出された特徴量は、無人搬送車の移動方向の決定などに用いることができる。すなわち、無人搬送車の白線検知装置は、エッジ検出により白線領域の傾きを認識し、認識した傾きを用いて無人搬送車の移動方向を決定する。また、無人搬送車の白線検知装置においては、無人搬送車の位置・向きに応じた移動方向補正を後の処理で行うこともできる。例えば、無人搬送車の例では、既知の白線の太さと異なる太さが検知されたら駆動を停止する、などの処理も実行可能である。
【0098】
以上、本発明の実施の形態および変形例をいくつか説明したが、本実施の形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの各実施の形態および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0099】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 被写体に対して可視光と不可視光とを照射する照明部と、
前記被写体により反射された可視光及び不可視光を受光し、可視画像と不可視画像とを撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像範囲に設けられる背景部と、
前記可視画像と前記不可視画像との少なくとも何れか一方から、前記被写体または前記背景部の特徴量を検出する画像処理部と、
を備え、
前記背景部は、可視光の特定波長の反射率を、可視光の反射率の下限を規定する可視光下限反射率以上とし、不可視光の特定波長の反射率を、不可視光の反射率の上限を規定する不可視光上限反射率以下とする、
ことを特徴とする画像読取装置。
<2> 前記背景部は、可視光の特定波長の反射率を、可視光の反射率の上限を規定する可視光上限反射率以下とする、
ことを特徴とする<1>に記載の画像読取装置。
<3> 前記背景部は、不可視光の特定波長の反射率を、不可視光の反射率の下限を規定する不可視光下限反射率以上である、
ことを特徴とする<1>または<2>に記載の画像読取装置。
<4> 前記背景部は、可視光の複数の特定波長の反射率の最大値と最小値との差分を、当該差分の上限を規定する可視光反射率差分上限以下とする、
ことを特徴とする<1>ないし<3>の何れか一に記載の画像読取装置。
<5> 前記照明部は、前記不可視光として赤外光を照射し、
前記撮像部は、前記不可視画像として赤外画像を撮像する、
ことを特徴とする<1>ないし<4>の何れか一に記載の画像読取装置。
<6> 前記画像処理部は、前記可視画像と前記不可視画像との少なくとも何れか一方の特徴量として、前記被写体と前記背景部との間のエッジを検出し、
前記背景部は、前記特定波長が850nmの場合における前記不可視光上限反射率を、55%以下とする、
ことを特徴とする<1>ないし<5>の何れか一に記載の画像読取装置。
<7> 前記画像処理部は、前記可視画像の特徴量として、前記被写体の輝度を検出し、
前記背景部は、前記特定波長が550nmの場合における前記可視光下限反射率を、55%以上とする、
ことを特徴とする<1>ないし<6>の何れか一に記載の画像読取装置。
<8> 前記画像処理部は、前記可視画像と前記不可視画像との少なくとも何れか一方の特徴量として、前記被写体と前記背景部との間のエッジを検出し、
前記背景部は、前記特定波長が550nmの場合における前記可視光上限反射率を、99%以下とする、
ことを特徴とする<2>ないし<7>の何れか一に記載の画像読取装置。
<9> 前記画像処理部は、前記不可視画像の特徴量として、前記背景部の輝度を検出し、
前記背景部は、前記特定波長が850nmの場合における前記不可視光下限反射率を、1%以上とする、
ことを特徴とする<3>に記載の画像読取装置。
<10> 前記画像処理部は、前記可視画像の特徴量として、前記被写体の彩度を検出し、
前記背景部は、複数の前記特定波長が450,550,600nmの場合における前記可視光反射率差分上限を、44%以下とする、
ことを特徴とする<4>に記載の画像読取装置。
<11> 被写体に対して可視光と不可視光とを照射する照明部と、
前記被写体により反射された可視光及び不可視光を受光し、可視画像と不可視画像とを撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像範囲に設けられる背景部と、
前記可視画像と前記不可視画像との少なくとも何れか一方から、前記被写体または前記背景部の特徴量を検出する画像処理部と、
を備える画像読取装置における画像読取方法であって、
前記背景部は、可視光の特定波長の反射率を、可視光の反射率の下限を規定する可視光下限反射率以上とし、不可視光の特定波長の反射率を、不可視光の反射率の上限を規定する不可視光上限反射率以下とする、
ことを特徴とする画像読取方法。
【符号の説明】
【0100】
1 画像読取装置
13 照明部
40 撮像部
26 背景部
43 画像処理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】
【特許文献1】特開2022-059526号公報
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
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図11
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