(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174759
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電子機器、画像形成装置、および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 9/4401 20180101AFI20241210BHJP
【FI】
G06F9/4401
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092767
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 智広
【テーマコード(参考)】
5B376
【Fターム(参考)】
5B376AE25
5B376AE29
5B376AE47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】起動処理と稼働中の処理で各プロセスのCPUの割り当てを変えることで、起動時間の短縮と機器全体の性能向上の両方を実現する電子機器、画像形成装置および情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】電子機器である画像形成装置は、複数のCPUコアと、電子機器で実行される機能(コピー、プリンタ、スキャナ、FAX等)に関わるプロセスを実行するCPUコアを指定する実行コア指定手段と、を備え、実行コア指定部は、電子機器の起動時および再起動時の少なくとも一方に優先して起動処理を行う第1機能に関わる起動処理を行うCPUコアと、第1機能以外の第2機能に関わる起動処理を行うCPUコアと、を指定し、第1機能および第2機能の起動処理終了後に、全てのCPUコアを、プロセスを実行するCPUコアに指定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のCPUコアと、
電子機器で実行される機能に関わるプロセスを実行する前記CPUコアを指定する実行コア指定部と、
を備え、
前記実行コア指定部は、前記電子機器の起動時および再起動時の少なくとも一方に優先して起動処理を行う第1機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、前記第1機能以外の第2機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、を指定し、前記第1機能および前記第2機能の起動処理終了後に、全ての前記CPUコアを、前記プロセスを実行するCPUコアに指定する、電子機器。
【請求項2】
前記実行コア指定部は、前記各CPUコアの用途を、優先機能用と、その他の機能用と、に指定し、前記第1機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアに前記優先機能用の前記CPUコアを割り当て、前記第2機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアに前記その他の機能用の前記CPUコアを割り当てる、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記実行コア指定部は、前記機能に関わるプログラムに対する前記CPUコアの指定を、前記機能の起動処理と、前記機能の起動処理後における機能実行時と、のそれぞれに設定する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電子機器の起動時および再起動時の少なくとも一方、および前記電子機器の稼働中のそれぞれにおける前記CPUコアの指定を有効化または無効化に切り替える切替部をさらに備える請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
複数のCPUコアと、
電子機器で実行される機能に関わるプロセスを実行する前記CPUコアを指定する実行コア指定部と、
を備え、
前記実行コア指定部は、前記電子機器の起動時および再起動時の少なくとも一方に優先して起動処理を行う第1機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、前記第1機能以外の第2機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、を指定し、前記第1機能および前記第2機能の起動処理終了後に、全ての前記CPUコアを、前記プロセスを実行するCPUコアに指定する、画像形成装置。
【請求項6】
コンピュータを、
複数のCPUコアのうち電子機器で実行される機能に関わるプロセスを実行する前記CPUコアを指定する実行コア指定部、として機能させ、
前記実行コア指定部は、前記電子機器の起動時および再起動時の少なくとも一方に優先して起動処理を行う第1機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、前記第1機能以外の第2機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、を指定し、前記第1機能および前記第2機能の起動処理終了後に、全ての前記CPUコアを、前記プロセスを実行するCPUコアに指定する、情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、画像形成装置、および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置等の電子機器における起動時間の短縮方法および処理性能の向上に関する技術が開発されている。特許文献1には、起動時または省エネ復帰時に優先で使用したい機能にかかわるプログラムを起動するCPUコアと、それ以外の機能用のプログラムを起動するCPUコアと、を分けて起動することで、優先して使いたい機能の起動を速める技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1記載の技術では、起動時または省エネ復帰時にCPUコアの割り当てを変えることでユーザが使用したい機能の立ち上がりを短縮する構成が開示されているが、起動処理に限定されており起動時の初期化処理後の動作にも影響してしまう。例えば、仮に、優先して起動した機能以外をユーザが使用した場合に機能利用時の性能低下が発生する。また、例えば、起動処理に時間がかかるプログラムと機能使用時にCPUをよく使うプログラムが一致するとは限らないため起動だけを優先すると機器性能が落ちる。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、起動処理と稼働中の処理で各プロセスのCPUの割り当てを変えることで、起動時間の短縮と機器全体の性能向上の両方を実現することができる、電子機器、画像形成装置、および情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数のCPUコアと、電子機器で実行される機能に関わるプロセスを実行する前記CPUコアを指定する実行コア指定部と、を備え、前記実行コア指定部は、前記電子機器の起動時および再起動時の少なくとも一方に優先して起動処理を行う第1機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、前記第1機能以外の第2機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、を指定し、前記第1機能および前記第2機能の起動処理終了後に、全ての前記CPUコアを、前記プロセスを実行するCPUコアに指定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、起動処理と稼働中の処理で各プロセスのCPUの割り当てを変えることで、起動時間の短縮と機器全体の性能向上の両方を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施の形態にかかる電子機器を適用した画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態にかかる画像形成装置が有するCPUのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態にかかる画像形成装置のコントローラボード上で実行されるソフトウェア構成の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態にかかる画像形成装置の機能と関連するプログラムのリストの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態にかかる画像形成装置においてCPUコアを指定してプログラムを起動する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本実施の形態にかかる画像形成装置におけるCPUコアの指定処理の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本実施の形態にかかる画像形成装置において起動処理後にCPUコアの割り当てを再度設定し直す処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、電子機器、画像形成装置、および情報処理プログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施の形態にかかる電子機器を適用した画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2は、本実施の形態にかかる画像形成装置が有するCPUのハードウェア構成の一例を示す図である。本実施の形態にかかる画像形成装置100は、
図1に示すように、画像形成手段111、およびコントローラボード101を有する電子機器の一例である。
【0010】
コントローラボード101は、CPU(Central Processing Unit)102、ROM(Read Only Memory)104、RAM(Random Access Memory)105、画像処理手段106、FCU(Facsimile Control Unit)107、操作部108、HDD(Hard Disk Drive)109、ネットワーク制御手段110等を備えている。
【0011】
CPU102は、OS(Operating System)および制御プログラムを実行することで、画像形成装置100の動作を制御する機能を有する。そして、このCPU102は、
図2に示すように、同種の複数のコア102Ca、コア102Cb、コア102Cc、コア102Cd、コア102Ca用のL1キャッシュ102L1a、コア102Cb用のL1キャッシュ102L1b、コア102Cc用のL1キャッシュ102L1c、コア102Cd用のL1キャッシュ102L1d、コア102Ca用のL2キャッシュ102L2a、コア102Cb用のL2キャッシュ102L2b、コア102Cc用のL2キャッシュ102L2c、コア102Cd用のL2キャッシュ102L2d、各コア共通のL3キャッシュ102L3を備えて構成されたマルチコアCPUである。
【0012】
本実施の形態では、コア102Ca、コア102Cb、コア102Cc、およびコア102Cdが、複数のCPUコアの一例である。以下の説明では、コア102Ca、コア102Cb、コア102Cc、およびコア102Cdを区別しない場合には、CPUコアCと記載する。本実施の形態では、CPU102が、4つのCPUコアCを有する例を示したがこの限りではない。
【0013】
RAM105は、CPU102の作業用領域として使用される揮発性メモリである。ROM104は、CPU102が実行するプログラムが格納される不揮発性メモリであり、RAM105上に展開してCPU102によって実行される。
【0014】
操作部108は、ユーザの操作情報の入力受け付けと、ユーザへの情報表示の機能と、を果たす。HDD109は、画像データ、文書データ、本実施の形態にかかるプログラムを含む複合機等の画像形成装置100上で動作させる各種のプログラム、フォントデータ、システム情報、ユーザ情報等を含む各種のデータを蓄積する大容量の記憶装置である。
【0015】
プロッタ112は、コントローラボード101からの画像処理結果の画像データに基づく画像を印刷出力する機能を果たす。スキャナ113は、紙等の媒体に記録された画像をスキャンし、画像データをコントローラボード101に転送する画像読取装置である。外部装置114は、印刷指示および画像形成装置の制御を行う機能を果たす。ネットワーク制御手段110は、外部装置114とネットワーク経由でのデータ通信を制御する機能を果たす。
【0016】
図3は、本実施の形態にかかる画像形成装置のコントローラボード上で実行されるソフトウェア構成の一例を説明するための図である。
図4は、本実施の形態にかかる画像形成装置の機能と関連するプログラムのリストの一例を示す図である。
【0017】
コントローラボード101上では、BIOSまたはモニタプログラム200がOS201を起動させる。また、OS201上では、コピーアプリ202、プリンタアプリ203、スキャナアプリ204、FAXアプリ205、HDD消去アプリ206等の複数のアプリケーションが並列に実行される。また、それらのプログラムが共通して使用するサービスを提供する各種デーモンプログラム(デーモンA207、デーモンB208、デーモンC209)がバックグラウンドで実行される。
【0018】
本実施の形態では、上記の各プログラムの起動処理を行うプログラム(例えば、OS:Operating System)が以下の特徴(実行コア指定手段210、優先機能判定部211)を持つ。実行コア指定手段210は、画像形成装置100の起動時および再起動時の少なくとも一方に優先して起動処理を行う機能の判定を行う機能と、プログラムを実行するCPUコアを指定する機能を有する。本実施の形態では、実行コア指定手段210および優先機能判定部211を、画像形成装置100に適用した例について説明するが、複数のCPUコアを有する電子機器であれば、画像形成装置100以外の電子機器である、カーナビゲーション、PC(Personal Computer)、携帯端末等にも適用可能である。
【0019】
具体的には、実行コア指定手段210は、画像形成装置100で実行される機能に関わるプロセスを実行するCPUコアを指定する実行コア指定部の一例である。また、実行コア指定手段210は、画像形成装置100の起動時および再起動時の少なくとも一方に優先して起動処理を行う第1機能にかかわる起動処理を行うCPUコアと、第1機能以外の第2機能にかかわる起動処理を行うCPUコアと、を指定する。また、実行コア指定手段210は、第1機能および第2機能の起動処理終了後に、全てのCPUコアを、プロセスを実行するCPUコアに指定する実行コア指定部の一例である。
【0020】
これにより、画像形成装置100の起動時または再起動時には優先して起動させたい機能にかかわるプログラムの処理を特定のCPUコアで実行させることで、優先して起動させたい機能の起動時間を短縮し、当該機能の起動後は全てのCPUコアで各機能を動作させることで、MFP(Multi Function Peripheral)等の画像形成装置100全体の処理性能を向上させることができる。
【0021】
また、実行コア指定手段210は、各CPUコアの用途を、優先機能用と、その他の機能用と、に指定する。そして、実行コア指定手段210は、第1機能に関わる起動処理を行うCPUコアに優先機能用のCPUコアを割り当て、第2機能に関わる起動処理を行うCPUコアにその他の機能用のCPUコアを割り当てる。これにより、CPUコアの性能を多く使う機能にかかわるプログラムには多くのCPUコアを割り当てられるようにすることができるので、処理性能を向上させることができる。
【0022】
例えば、CPUコアの性能を使う機能は、コア1~3(コア102Ca~コア102Cc)の用途を優先機能用に指定し、コア4(コア102Cd)の用途をその他機能用に指定する。また、例えば、CPUコアの性能をそれほど必要としない機能は、コア1(コア102Ca)の用途のみ優先機能用に指定し、コア2~4(コア102Cb~コア102Cd)の用途はその他機能用に指定する。
【0023】
本実施の形態では、実行コア指定手段210は、上記の機能(コピー、プリンタ、スキャナ、FAX等)のために、不揮発メモリ上に、
図4に示すような表(リスト)を作成し、以下の情報を保持しておく。
各機能の実行に必要なプログラム(例えば、コピーアプリ202、プリンタアプリ203、スキャナアプリ204、FAXアプリ205、HDD消去アプリ206)
どの機能を優先して起動するかの情報(例えば、優先機能用を表す「優先」、またはその他の機能用を表す「その他」)
【0024】
図4に示すリストでは、コピー機能を使用するにはコピーアプリ202が必要なため、コピーアプリ202、デーモンA207、およびデーモンB208が優先機能用(「優先」)に指定され、他のアプリケーション(例えば、プリンタアプリ203、スキャナアプリ204、FAXアプリ205)がその他の機能用(「その他」)に指定されている。同様に、各機能に対して優先する必要があるプログラムを予め指定しておく、そして、各機能の使用時に必要なプログラムを特定のCPUコアで処理させることで、処理性能の向上を図る。
【0025】
優先機能判定部211は、実行中のプログラムを処理するCPUコアの指定を切り替える機能を有する。具体的には、優先機能判定部211は、画像形成装置100の機能に関わるプログラムに対するCPUコアの指定を、機能の起動処理と、機能の起動処理後における機能実行時と、のそれぞれに設定しても良い。これにより、機能の起動処理後、ユーザがよく使う機能にかかわるプログラム、またはCPU102の性能を多く必要とするプログラムに特定のCPUコアを専用で割り当てることができるので、CPU102の処理性能を向上させることができる。
【0026】
また、優先機能判定部211は、画像形成装置100の起動時および再起動時の少なくとも一方、および、画像形成装置100の稼働中のそれぞれにおけるCPUコアの指定を有効化または無効化に切り替える切替部の一例である。ここで、CPUコアの指定の有効化とは、プログラムを特定のCPUコアで実行させること、CPUコアの指定の無効化とは、CPUコアの指定をしないこと、つまり、CPUコアの空き状況によりOSが動的にプログラムを実行するCPUコアを決定することである。これにより、画像形成装置100の起動時または再起動時のみ、および稼働中のみ、CPUコアの固定化を行えるように切り替えることができるので、必要な場面でのみ機能を有効化できる。
【0027】
図5は、本実施の形態にかかる画像形成装置においてCPUコアを指定してプログラムを起動する処理の流れの一例を示すフローチャートである。画像形成装置100のユーザは、事前準備として、画像形成装置100を一度起動して操作部108から、優先して起動処理を行う機能(第1機能)の設定を行い、NV-RAM等の不揮発のメモリに、その設定情報を記録しておいても良い。または、実行コア指定手段210は、画像形成装置100等の電子機器の過去の利用状況に基づいて、自動で優先して起動処理を行う機能(第1機能)を判定しても良い。
【0028】
2回目以降の画像形成装置100の起動時、実行コア指定手段210は、事前準備で保存した設定情報に基づいて、優先して起動処理を行う機能(第1機能)を特定する(ステップS501)。次に、実行コア指定手段210は、予め機器(画像形成装置100)内に作成しておいた、各機能とそれに関わるプログラムの対応表(
図4に示すリスト)に基づいて、優先して起動したい機能に関わるプログラムを特定する。次に、実行コア指定手段210は、各プログラムの起動処理を開始する(ステップS502)。
【0029】
まず、実行コア指定手段210は、各プログラムの起動処理を行う際、各プログラムが、優先して起動処理を行う機能に関わるプログラムであるか否かを判定する(ステップS503)。そして、優先して起動処理を行う機能に関わるプログラムである場合(ステップS503:Yes)、実行コア指定手段210は、当該プログラムを実行するCPUコアとしてコア102Ca(CPUコア0)を指定して起動処理を行う(ステップS504)。一方、優先して起動処理を行う機能に関わるプログラムでない場合(ステップS503:No)、実行コア指定手段210は、当該プログラムを実行するCPUコアとしてコア102Cb(CPUコア1)を指定して起動処理を行う(ステップS505)。
【0030】
例えば、起動処理にsystemd(Linux(登録商標)の起動処理やサービスの管理を行うソフトウェア)を使用している場合は、実行コア指定手段210は、起動処理を行うプログラムの設定ファイルに、CPUAffinity=の機能で、実行するCPUコアを指定する。コピー機能を優先する場合は、実行コア指定手段210は、コピーアプリ、デーモンA、デーモンBのsystemd起動用の設定ファイルにはCPUAffinity=1と指定し、それ以外のプログラムの設定ファイルにはCPUAffinity=0と指定する。
【0031】
起動処理が終わると(ステップS506)、実行コア指定手段210は、全体的な性能向上のため、プログラムを実行するCPUコアの指定を解除し、どのCPUコアでも動作できるように設定を変更する(ステップS507)。CPUコアの指定の解除は、OSのシステムコールにより行う。例えば、Linux(登録商標)OSであれば、実行コア指定手段210は、sched_setaffinity()の関数を呼び出すことで、CPUコアの指定を解除する。CPUコアの指定の解除後は、プログラムの実行にあたって処理されるCPUは、OSのスケジューラにより随時選択または変更されるようになる。
【0032】
これにより、優先して起動処理を行う機能に関わるプログラム、および、それ以外の機能に関わるプログラムのそれぞれの起動処理を行うCPUコアを分けることができるため、優先して動作させたいプログラムがそれ以外のプログラムの起動処理に邪魔されることなくCPU102の処理性能不足による起動時間の遅延を防ぐことができる。例えば、
図4に示す例では、コピーアプリ202の起動をコア102Cbで行い、それ以外のプログラムの処理をすべてコア102Caで行う指定とすることで、コア102Cbはコピー機能の処理に専念できるようになる。
【0033】
図6は、本実施の形態にかかる画像形成装置におけるCPUコアの指定処理の一例を説明するための図である。
図5の例は、CPUコアが2つの場合だが、CPUコアが4つまたはそれ以上の場合は、実行コア指定手段210は、
図6に示すように、各CPUコアの用途(例えば、「優先機能用」、「その他機能用」)と、当該用途のCPUコアと、を対応付ける対応表を予め作成しておき、当該対応表に従って、起動処理を行う機能に関わるプログラムを実行するCPUコアを指定しても良い。この場合は、
図5に示すステップS505の処理において、実行コア指定手段210は、CPUFAffinity=012を優先して起動処理を行うプログラムの設定ファイルに設定し、CPUAffinity=3をその他のプログラムの設定ファイルに設定する。
【0034】
これにより、例えば、コピー機能を優先する場合は、コピーアプリ202、デーモンA207、およびデーモンB208は、OS201のスケジューラにより、コア102Ca,102Cb,102Ccのいずれかが割り当てられ、それ以外のプログラムはコア102Cdのみで動作するようになる。コピー機能にかかわるプログラムに多くCPUコアが割当たるためコピー機能の起動処理の速度を向上させることができる。
【0035】
図7は、本実施の形態にかかる画像形成装置において起動処理後にCPUコアの割り当てを再度設定し直す処理の一例を説明するための図である。
図5のステップS507に示す、CPUコアの指定を解除する処理において、優先機能判定部211は、稼働中におけるプログラムを実行するCPUコアを固定化する処理を行う。すなわち、優先機能判定部211は、画像形成装置100の機能に関わるプログラムに対するCPUコアの指定を、画像形成装置100の起動処理(起動中)と、画像形成装置100の起動処理後における機能実行時(稼働中)と、のそれぞれに設定する。これにより、ユーザが頻繁に使用する機能の処理性能を向上させることができる。
【0036】
例えば、
図7に示す例では、優先機能判定部211は、プリンタ機能はCPU102を使用する処理が多いため優先的に動作させる。具体的には、優先機能判定部211は、プリンタアプリ203およびデーモンA207を、
図6における優先機能用のCPUコアに固定する設定を行い、それ以外のプログラムにはその他機能用のCPUコアに固定する設定を行う。CPUコアをプログラムに固定する方法は、
図5のステップS505と同様に、例えば、Linux(登録商標)OSの場合はsched_setaffinity()を呼び出すことで固定化しても良い。
【0037】
このように、本実施の形態にかかる画像形成装置100によれば、当該画像形成装置100の起動時または再起動時には優先して起動させたい機能に関わるプログラムの処理を特定のCPUコアで実行させることで、優先して起動させたい機能の起動時間を短縮し、当該機能の起動後は全てのCPUコアで各機能を動作させることで、画像形成装置100全体の処理性能を向上させることができる。
【0038】
なお、本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムは、ROM104等に予め組み込まれて提供される。本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良い。
【0039】
さらに、本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0040】
本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムは、上述した各部(実行コア指定手段210、優先機能判定部211)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU102等のプロセッサの一例が上記ROM104からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、実行コア指定手段210、優先機能判定部211が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0041】
なお、上記実施の形態では、本発明の画像形成装置を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【0042】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 複数のCPUコアと、
電子機器で実行される機能に関わるプロセスを実行する前記CPUコアを指定する実行コア指定部と、
を備え、
前記実行コア指定部は、前記電子機器の起動時および再起動時の少なくとも一方に優先して起動処理を行う第1機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、前記第1機能以外の第2機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、を指定し、前記第1機能および前記第2機能の起動処理終了後に、全ての前記CPUコアを、前記プロセスを実行するCPUコアに指定する、電子機器。
<2> 前記実行コア指定部は、前記各CPUコアの用途を、優先機能用と、その他の機能用と、に指定し、前記第1機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアに前記優先機能用の前記CPUコアを割り当て、前記第2機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアに前記その他の機能用の前記CPUコアを割り当てる、<1>に記載の電子機器。
<3> 前記実行コア指定部は、前記機能に関わるプログラムに対する前記CPUコアの指定を、前記機能の起動処理と、前記機能の起動処理後における機能実行時と、のそれぞれに設定する、<1>に記載の電子機器。
<4> 前記電子機器の起動時および再起動時の少なくとも一方、および前記電子機器の稼働中のそれぞれにおける前記CPUコアの指定を有効化または無効化に切り替える切替部をさらに備える<1>から<3>のいずれか一つに記載の電子機器。
<5> 複数のCPUコアと、
電子機器で実行される機能に関わるプロセスを実行する前記CPUコアを指定する実行コア指定部と、
を備え、
前記実行コア指定部は、前記電子機器の起動時および再起動時の少なくとも一方に優先して起動処理を行う第1機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、前記第1機能以外の第2機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、を指定し、前記第1機能および前記第2機能の起動処理終了後に、全ての前記CPUコアを、前記プロセスを実行するCPUコアに指定する、画像形成装置。
<6> コンピュータを、
複数のCPUコアのうち電子機器で実行される機能に関わるプロセスを実行する前記CPUコアを指定する実行コア指定部、として機能させ、
前記実行コア指定部は、前記電子機器の起動時および再起動時の少なくとも一方に優先して起動処理を行う第1機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、前記第1機能以外の第2機能に関わる起動処理を行う前記CPUコアと、を指定し、前記第1機能および前記第2機能の起動処理終了後に、全ての前記CPUコアを、前記プロセスを実行するCPUコアに指定する、情報処理プログラム。
【符号の説明】
【0043】
100 画像形成装置
101 コントローラボード
102 CPU
102Ca,102Cb,102Cc,102Cd コア
104 ROM
105 RAM
106 画像処理手段
107 FCU
108 操作部
109 HDD
110 ネットワーク制御手段
111 画像形成手段
112 プロッタ
113 スキャナ
201 OS
202 コピーアプリ
203 プリンタアプリ
204 スキャナアプリ
205 FAXアプリ
206 HDD消去アプリ
207 デーモンA
208 デーモンB
209 デーモンC
210 実行コア指定手段
211 優先機能判定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】