(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174855
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】全固体二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20241210BHJP
H01M 10/056 20100101ALI20241210BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20241210BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241210BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20241210BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20241210BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20241210BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241210BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20241210BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241210BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20241210BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20241210BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20241210BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20241210BHJP
H01M 50/586 20210101ALN20241210BHJP
H01M 50/583 20210101ALN20241210BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/056
H01M10/0565
H01M10/0562
H01M10/058
H01M4/58
H01M4/136
H01M4/36 A
H01M4/133
H01M4/38 Z
H01M4/134
H01M4/36 E
H01M4/40
H01M4/66 A
H01M50/591 101
H01M50/586
H01M50/583
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024091631
(22)【出願日】2024-06-05
(31)【優先権主張番号】10-2023-0072378
(32)【優先日】2023-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0113180
(32)【優先日】2023-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2024-0027556
(32)【優先日】2024-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,インヒョク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ギュソン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ソンニム
(72)【発明者】
【氏名】シン,ギュウン
(72)【発明者】
【氏名】パク,テヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジウン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジナン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE07
5H017HH03
5H029AJ05
5H029AJ12
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5H029HJ07
5H029HJ19
5H043AA04
5H043BA20
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5H043GA02
5H043GA22
5H043GA25
5H050AA07
5H050AA15
5H050BA16
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5H050CB12
5H050DA04
5H050DA06
5H050DA07
5H050DA08
5H050FA17
5H050HA19
(57)【要約】
【課題】全固体二次電池を提供する。
【解決手段】正極層、負極層、及び正極層と負極層との間に配置された固体電解質層を含み、正極層が正極集電体及び正極集電体の一面または両面上に配置された正極活物質層を含み、正極活物質層がリチウム含有硫化物系正極活物質を含み、リチウム含有硫化物系正極活物質がLi
2S、Li
2S含有複合体またはそれらの組合わせを含み、正極層の一側面上に配置された第1不活性部材(inactive member)を含み、負極層が負極集電体及び負極集電体の一面上に配置された第1負極活物質層を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層、負極層、及び前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含み、
前記正極層が正極集電体及び前記正極集電体の一面または両面上に配置された正極活物質層を含み、
前記正極活物質層がリチウム含有硫化物系正極活物質を含み、前記リチウム含有硫化物系正極活物質がLi2S、Li2S含有複合体またはそれらの組合わせを含み、
前記正極層の一側面上に配置された第1不活性部材を含み、
前記負極層が負極集電体及び前記負極集電体の一面上に配置された第1負極活物質層を含み、
前記第1負極活物質層の初期充電容量(B)と前記正極活物質層の初期充電容量(A)との比率(B/A)が0.005~0.45であり、
前記正極活物質層の初期充電容量は、第1開放回路電圧から、 Li/Li+に対して最大充電電圧までの充電によって決定され、
前記第1負極活物質層の初期充電容量は、第2開放回路電圧から、 Li/Li+に対して0.01Vまでの充電によって決定される、全固体二次電池。
【請求項2】
前記Li2S含有複合体が、Li2Sと導電性材料との複合体、Li2Sと固体電解質と導電性材料との複合体、Li2Sと固体電解質との複合体、Li2Sとリチウム塩と導電性材料との複合体、Li2Sとリチウム塩との複合体、Li2Sと金属カーバイドとの複合体、Li2Sと金属カーバイドと導電性材料との複合体、Li2Sと金属窒化物との複合体、Li2Sと金属窒化物と導電性材料との複合体またはそれらの組合わせを含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項3】
Li2S含有複合体がLi2Sとリチウム塩との複合体、Li2Sとリチウム塩と導電性材料との複合体、Li2Sと金属ハライドとの複合体、Li2Sと金属ハライドと導電性材料との複合体、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドとの複合体、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体またはそれらの組合わせを含み、
前記Li2Sとリチウム塩との複合体が Li2S-LiaX1b(1≦a≦5、1≦b≦5)で表示され、
前記Li2Sとリチウム塩と導電性材料との複合体が Li2S-LiaX1b-C(1≦a≦5、1≦b≦5)で表示され、
前記Li2Sと金属ハライドとの複合体がLi2S-McX2d(1≦c≦5、1≦d≦5)で表示され、
前記Li2Sと金属ハライドと導電性材料との複合体が Li2S-McX2d-C (1≦c≦5、1≦d≦5)で表示され、
前記Li2Sとリチウム塩と金属ハライドとの複合体が Li2S-LiaX1b-McX2d(1≦a≦5、1≦b≦5、1≦c≦5、1≦d≦5)で表示され、
前記Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体がLi2S-LiaX1b-McX2d-C(1≦a≦5、1≦b≦5、1≦c≦5、1≦d≦5)で表示され、
前記X1は、I、Br、Cl、F、H、O、Se、Te、N、P、As、Sb、Al、B、OCl、 PF6、BF4、SbF6、AsF6、ClO4、AlO2、AlCl4、NO3、CO3、BH4、SO4、BO3、PO4、NCl、NCl2、BN2またはそれらの組合わせであり、
前記Mは、元素周期表の第2族ないし第15族のうちから選択された1つ以上の金属であり、
前記X2は、I、Br、Cl、F、またはそれらの組合わせである、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項4】
前記Li2S含有複合体がLi2Sとリチウム塩の固溶体、Li2Sと金属ハライドの固溶体、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドの固溶体またはそれらの組合わせを含む、請求項3に記載の全固体二次電池。
【請求項5】
前記リチウム塩が二元系化合物(binary compound)または三元系化合物(ternary compound)であり、
前記二元系化合物がLiI、LiBr、LiCl、LiF、LiH、Li2O、Li2Se、Li2Te、Li3N、Li3P、Li3As、Li3Sb、Li3Al2、LiB3またはそれらの組合わせを含み、
前記三元系化合物がLi3OCl、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiNO3、Li2CO3、LiBH4、Li2SO4、Li3BO3、Li3PO4、Li4NCl、Li5NCl2、Li3BN2またはそれらの組合わせを含む、請求項3に記載の全固体二次電池。
【請求項6】
前記金属ハライドがAl、Mg、Ti、Sn、As、Sb、Nb、Sc、Zr、V、W、Mn、Fe、Co、Pd、Cu、Ag、Zn、及びSeのうちから選択された1つ以上の金属を含み、
前記金属ハライドがAlF3、AlCl3、AlBr3、AlI3、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、TiF4、TiCl4、TiBr4、TiI4、SnF4、SnCl4、SnBr4、SnI4、AsF4、AsCl4、AsBr4、AsI4、SbF4、SbCl4、SbBr4、SbI4、またはそれらの組合わせを含む、請求項3に記載の全固体二次電池。
【請求項7】
前記Li2S含有複合体がLi2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体を含み、
前記Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体100重量部に対してLi2S40~80重量部、リチウム塩と金属ハライドの組合わせ1~40重量部及び導電性材料1~20重量部を含み、
前記リチウム塩と前記金属ハライドのモル比が3:1~1:3であり、
前記正極活物質層においてLi2S含量が40wt%以上である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項8】
前記第1不活性部材が前記正極層の側面を取り囲み、前記固体電解質層と接触し、
前記第1不活性部材が前記正極層の一側面から前記固体電解質層の表面に沿って固体電解質層の末端部まで延び、
前記正極層の面積が前記正極層と接触する前記固体電解質層の面積よりも小さく、
前記第1不活性部材が、前記正極層の側面を取り囲み、前記正極層と前記固体電解質層との面積差を補償し、
前記第1不活性部材の厚さが前記第1負極活物質層の厚さに比べてさらに大きく、
前記第1負極活物質層の厚さが前記第1不活性部材の厚さの50%以下であり、
前記負極集電体の他面上に負極活物質層が不在である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項9】
前記第1不活性部材が難燃性不活性部材を含み、前記難燃性不活性部材がマトリックス及びフィラーを含み、
前記マトリックスが基材及び補強材を含み、
前記基材が第1繊維状材料を含み、前記第1繊維状材料が絶縁性材料であり、前記第1繊維状材料がパルプ繊維、絶縁性高分子繊維、及びイオン伝導性高分子繊維のうちから選択された1つ以上を含み、
前記補強材が第2繊維状材料を含み、前記第2繊維状材料が難燃性材料であり、前記第2繊維状材料がガラス繊維、及びセラミック繊維のうちから選択された1つ以上を含み、
前記フィラーが水分吸着剤であり、前記フィラーが金属水酸化物を含み、
前記金属水酸化物がMg(OH)2、Fe(OH)3、Sb(OH)3、Sn(OH)4、TI(OH)3、Zr(OH)4、及びAl(OH)3のうちから選択された1つ以上を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項10】
前記第1負極活物質層が負極活物質及びバインダを含み、
前記負極活物質が粒子状を有し、前記負極活物質の平均粒径が4μm以下である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項11】
前記負極活物質が炭素系負極活物質及び金属または半金属負極活物質のうちから選択された1つ以上を含み、
前記炭素系負極活物質は、非晶質炭素、結晶質炭素、多孔性炭素またはそれらの組合わせを含み、
前記金属または半金属負極活物質が金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)またはそれらの組合わせを含む、請求項10に記載の全固体二次電池。
【請求項12】
前記負極活物質が非晶質炭素からなる第1粒子及び金属または半金属からなる第2粒子の混合物を含み、
前記第2粒子の含量は、前記混合物の総重量を基準に1~60wt%である、請求項10に記載の全固体二次電池。
【請求項13】
前記第1負極活物質層が固体電解質をさらに含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項14】
前記負極活物質が、炭素系支持体及び前記炭素系支持体上に担持された金属系負極活物質を含み、
前記金属系負極活物質が、金属、金属酸化物、金属と金属酸化物との複合体、またはそれらの組合わせを含み、
前記金属系負極活物質が粒子状を有し、前記金属系負極活物質の粒径が1nm~200nmであり、
前記炭素系支持体が粒子状を有し、前記炭素系支持体の粒径が10nm~2μmであり、前記全固体二次電池が充電された後、前記負極集電体と前記第1負極活物質層との間に配置された第2負極活物質層をさらに含み、
前記第2負極活物質層は、金属層であり、前記金属層がリチウムまたはリチウム合金を含む、請求項10に記載の全固体二次電池。
【請求項15】
前記負極集電体の他面上に配置される第2不活性部材をさらに含み、
前記第2不活性部材が伝導性難燃性不活性部材を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項16】
前記第2不活性部材のヤング率が前記負極集電体のヤング率に比べてさらに小さく、
前記第2不活性部材のヤング率が100MPa以下であり、
前記第2不活性部材の厚さが前記第1負極活物質層の厚さに比べてさらに大きく、
前記第1負極活物質層の厚さが前記第2不活性部材の厚さの50%以下である、請求項15に記載の全固体二次電池。
【請求項17】
前記全固体二次電池の充電後の体積膨張率が15%以下であり、
全固体二次電池のエネルギー密度が500~900Wh/Lまたは350~600Wh/kgである、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項18】
前記固体電解質層が電解質を含み、
前記電解質が固体電解質、ゲル電解質またはそれらの組合わせを含み、
前記固体電解質が硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、高分子固体電解質、またはそれらの組合わせを含み、
前記ゲル電解質が高分子ゲル電解質を含み、
前記固体電解質層がリチウムポリスルフィドに対して不浸透性(impermeable)である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項19】
前記硫化物系固体電解質が Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiX、Xは、ハロゲン元素、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S- SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn、m、nは、正の数、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち1つ、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LipMOq、p、qは、正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち1つ、Li7-xPS6-xClx、0≦x≦2、Li7-xPS6-xBrx、0≦x≦2、及びLi7-xPS6-xIx、0≦x≦2のうちから選択された1つ以上である、請求項18に記載の全固体二次電池。
【請求項20】
前記硫化物系固体電解質がLi6PS5Cl、Li6PS5Br及びLi6PS5Iのうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型固体電解質であり、
前記アルジロダイト型固体電解質の密度が1.5~2.0g/ccである、請求項18に記載の全固体二次電池。
【請求項21】
前記正極集電体及び負極集電体のうち1以上が、ベースフィルム及び前記ベースフィルムの一面または両面上に配置される金属層を含み、
前記ベースフィルムが高分子を含み、前記高分子がポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)またはそれらの組合わせを含み、
前記金属層がインジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはそれらの合金を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノート型パソコン、電気自動車など電池を使用する電子機器の急速な普及に伴い、エネルギー密度が高く、大容量である二次電池の需要が急増している。これにより、リチウム二次電池の性能向上のための研究開発が活発に進められている。リチウム二次電池は、リチウムイオンの吸蔵(intercalation)及び放出(deintercalation)が可能な活物質を含む正極及び負極と電解液とを含む電池である。リチウム二次電池は、リチウムイオンが正極及び負極に/から吸蔵/放出されるときの酸化及び還元反応によって電気エネルギーを生産する。
【0003】
近年、産業上の要求によってエネルギー密度と安全性の高い電池の開発が活発になされている。例えば、リチウム電池は、情報関連機器、通信機器分野だけでなく、自動車分野でも実用化されている。自動車分野においては、生命に係わるために、特に安全が重要視されている。
【0004】
リチウム電池は、電解質として可燃性有機溶媒を含んだ電解液を用いているので、短絡が発生した場合、過熱及び火災の恐れがある。
【0005】
電解液の代わりに、固体電解質を用いた全固体電池が提案されている。
【0006】
全固体電池は、可燃性有機溶媒を使用しないことにより、短絡が発生しても、火災や爆発の発生する可能性を大きく減らすことができる。そのような全固体電池は、電解液を使用するリチウム電池に比べて安全性を大きく高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
二次電池は、容量を増加させるために、正極活物質として硫黄系材料(例えば、S)を使用する。二次電池の充放電過程で硫黄系材料からポリスルフィドが生成され、生成されたポリスルフィドが負極に移動して負極と反応する。そのような副反応によって二次電池の寿命特性が低下する。ポリスルフィドとリチウム金属の副反応を抑制することができる二次電池が要求される。
【0008】
硫黄系材料(例えば、S)を含む二次電池は、初期放電時に硫黄系材料の体積が増加し、充電過程で体積が再び減少するので、硫黄系材料の体積が増加する過程で電極内のイオン及び/または電子の伝達経路が断絶されることがある。そのようなイオン及び/または電子の伝達経路の断絶が二次電池の劣化を引き起こす。そのようなイオン及び/または電子の伝達経路の断絶を抑制することができる二次電池が要求される。
【0009】
二次電池の製造過程及び/または充放電過程で固体電解質層内に欠陥が発生し、そのような欠陥から固体電解質層内にクラックが発生及び成長する。そのようなクラックを通じてリチウムが成長することにより、短絡が発生する。二次電池の製造過程及び/または充放電過程において、そのような欠陥の発生を抑制することができる二次電池が要求される。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、充放電時、電解質層とリチウム金属の副反応を防止し、イオン及び/または電子の伝達経路の断絶を抑制し、充放電時におけるポリスルフィドによる副反応を防止し、製造及び/または充放電時における二次電池内の欠陥の発生を抑制する新規な構造の二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態によって、正極層、負極層、及び前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含み、前記正極層が正極集電体及び前記正極集電体の一面または両面上に配置された正極活物質層を含み、前記正極活物質層がリチウム含有硫化物系正極活物質を含み、前記リチウム含有硫化物系正極活物質がLi2S、Li2S含有複合体またはそれらの組合わせを含み、前記正極層の一側面上に配置された第1不活性部材(inactive member)を含み、前記負極層が負極集電体及び前記負極集電体の一面上に配置された第1負極活物質層を含み、前記第1負極活物質層の初期充電容量(B)と前記正極活物質層の初期充電容量(A)との比率(B/A)が0.005~0.45であり、前記正極活物質層の初期充電容量は、第1開放回路電圧(1st open circuit voltage)から、Li/Li+に対して最大充電電圧(maximum charging voltage)までの充電によって決定され、前記負極活物質層の初期充電容量は、第2開放回路電圧(2nd open circuit voltage)から、Li/Li+に対して0.01Vまでの充電によって決定される、全固体二次電池が提供される。
【0012】
正極層、負極層、及び前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含み、前記正極層が正極集電体及び前記正極集電体の一面または両面上に配置された正極活物質層を含み、前記正極活物質層がリチウム含有硫化物系正極活物質を含み、前記リチウム含有硫化物系正極活物質がLi2S含有複合体を含み、前記Li2S含有複合体がLi2Sとリチウム塩の複合体、Li2Sとリチウム塩と導電性材料の複合体、Li2Sと金属ハライドの複合体、Li2Sと金属ハライドと導電性材料の複合体、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドの複合体、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料の複合体またはそれらの組合わせを含み、前記負極層が負極集電体及び前記負極集電体の一面上に配置された第1負極活物質層を含む、全固体二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の新規な構造を有する全固体二次電池によれば、短絡が抑制され、サイクル特性が向上した全固体二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】例示的な一実施形態による全固体二次電池の断面図である。
【
図2】例示的な一実施形態による全固体二次電池の断面図である。
【
図3】例示的な一実施形態によるバイセル(bi-cell)全固体二次電池の断面図である。
【
図4】例示的な一実施形態による全固体二次電池正極層の概略図である。
【
図5】例示的な一実施形態による全固体二次電池の内部を部分的に示す概略図である。
【
図6】例示的な一実施形態による全固体二次電池の断面図である。
【
図7】例示的な一実施形態による全固体二次電池の断面図である。
【
図8】例示的な一実施形態によるバイセル(bi-cell)全固体二次電池の断面図である。
【
図9】例示的な一実施形態による積層されたバイセル(bi-cell)全固体二次電池スタックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
多様な実施形態が添付図面に図示される。しかし、本発明の思想は、様々な他の形態に具体化され、本明細書に説明された実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。むしろ、これら実形態は、本開示が徹底したモノであり、かつ完全になされるように提供され、技術分野で通常の知識を有する者に本創意的思想の範囲を十分に伝達するであろう。同じ図面符号は、同じ構成要素を指称する。
【0016】
ある構成要素が他の構成要素の「上に」あると言及されるとき、他の構成要素の真上にあるか、その間に他の構成要素が介在される可能性があるということを理解することができるであろう。対照的に、構成要素が他の構成要素の「直接上に」あると言及されるとき、その間に構成要素が介在されない。
【0017】
「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、本明細書において多様な構成要素、成分、領域、層及び/または区域を説明するために使用することができるが、これら構成要素、成分、領域、層及び/または区域は、それらの用語によって制限されてはならない。これら用語は、1つの構成要素、成分、領域、層または区域を、他の要素、成分、領域、層または区域と区別するためにのみ使用される。したがって、以下で説明される第1構成要素、成分、領域、層または区域は、本明細書の教示を外れずに、第2構成要素、成分、領域、層または区域と指称することができる。
【0018】
本明細書で使用された用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明の創意的思想を制限しようとするものではない。本願で使用された単数形態は、内容上、明確に異なって指示しない限り、「少なくとも1つ」を含む複数形態を含む。「少なくとも1つ」は、単数に制限するものと解釈されてはならない。本明細書で使用されたように、「及び/または」という用語は、リスト項目のうち1つ以上の任意の全ての組合わせを含む。詳細な説明で使用された「含む」及び/または「含んでいる」という用語は、明示された特徴、領域、整数、段階、動作、構成要素及び/または成分の存在を特定し、1つ以上の他の特徴、領域、整数、段階、動作、構成要素、成分及び/またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。
【0019】
ここで、「下」、「下側」、「下部」、「上」、「上側」、「上部」のような空間的に相対的な用語は、1つの構成要素または特徴の、他の構成要素または特徴に対する関係を容易に記述するために使用することができる。空間的に相対的な用語は、図示された方向に付け加えて使用または作動するとき、装置の互いに異なる方向を含むように意図されたと理解されるであろう。例えば、図面の装置が逆さまになっているならば、他の構成要素または特徴の「下」または「下方」と記述された構成要素は、他の構成要素または特徴の「上」に配向されるであろう。したがって、例示的な用語「下方」は、上下方向をいずれも包括することができる。前記装置は、他の方向に配置され(90°回転、または他の方向に回転)、本明細書で使用される空間的に相対的な用語は、それに応じて解釈することができる。
【0020】
取り立てて定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術及び科学用語含む)は、本開示が属する技術分野の通常の知識を有する者によって一般に理解されるところと同じ意味を有する。また、一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術及び本開示の文脈におけるその意味と一致する意味を有すると解釈されねばならず、理想化されるか、過度に形式的な意味に解釈されないこともさらに理解されるであろう。
【0021】
本明細書では、理想的な実施形態の概略図である断面図を参照して実施形態を説明する。したがって、例えば、製造技術及び/または許容誤差などの結果として、図示の形状からの変形が予想されなければならない。したがって、本明細書に記述された実施例は、本明細書に図示されたような領域の特定形状に制限されると解釈されてはならず、例えば、製造によってもたされる形状の偏差を含まなければならない。例えば、平坦であると図示されているか、記述された領域は、典型的に粗く、及び/または非線形特徴を有することができる。さらに、鋭く図示された角は、丸くてもよい。したがって、図示された領域は、本質的に概略的であり、その形状は、領域の正確な形状を図示するためのものではなく、本請求項の範囲を制限しようとするものではない。
【0022】
「族」は、国際純正応用化学連合(「IUPAC」)1-18族分類システムによる元素周期表のグループを意味する。
【0023】
本明細書において別途の定義がない限り、粒径は平均粒径であってもよい。また、粒径は、粒度分布で累積体積が50体積%である粒径を意味する平均粒径(D50)を意味する。平均粒径(D50)の測定は、当業者に広く公知された方法によって測定され、例えば、粒度分析機(Particle size analyzer)で測定するか、または透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)写真または走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)写真で測定してもよい。他の方法としては、動的光散乱法(dynamic light-scattering)を用いた測定装置を用いて測定し、データ分析を実施してそれぞれの粒子サイズ範囲に対して粒子数をカウンティングした後、それをもって計算して平均粒径(D50)値が得られる。または、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。レーザ回折法による測定時、さらに具体的には、測定しようとする粒子を分散媒中に分散させた後、市販されるレーザ回折粒径測定装置(例えば、Microtrac社のMT3000)に導入して約28kHzの超音波を60Wの出力で照射した後、測定装置における粒径分布の50%基準での平均粒径(D50)を算出することができる。「平均粒径」は、例えば、メジアン粒径であるD50である。
【0024】
D50は、レーザ回折法で測定される粒子サイズ分布において小粒子サイズを有する粒子側から計算して50%累積体積に該当する粒子サイズである。
【0025】
D90は、レーザ回折法で測定される粒子サイズ分布において小粒子サイズを有する粒子側から計算して90%累積体積に該当する粒子サイズである。
【0026】
D10は、レーザ回折法で測定される粒子サイズ分布において小粒子サイズを有する粒子側から計算して10%累積体積に該当する粒子サイズである。
【0027】
本開示において「金属」は、元素状態または、イオン状態において、金属とケイ素及びゲルマニウムのような半金属(metalloid)をいずれも含む。
【0028】
本開示において「合金」は、2以上の金属混合物を意味する。
【0029】
本開示において「電極活物質」は、リチウム化及び脱リチウム化を経ることができる電極材料を意味する。
【0030】
本開示において「正極活物質」は、リチウム化及び脱リチウム化を経ることができる正極材料を意味する。
【0031】
本開示において「負極活物質」は、リチウム化及び脱リチウム化を経ることができる負極材料を意味する。
【0032】
本開示において「リチウム化」及び「リチウム化する」は、リチウムを電極活物質に付け加える過程を意味する。
【0033】
本開示において「脱リチウム化」及び「脱リチウム化する」は、電極活物質からリチウムを除去する過程を意味する。
【0034】
本開示において「充電」及び「充電する」は、電池に電気化学的エネルギーを提供する過程を意味する。
【0035】
本開示において「放電」及び「放電する」は、電池から電気化学的エネルギーを除去する過程を意味する。
【0036】
本開示において「正極」及び「カソード」は、放電過程の間に電気化学的還元及びリチウム化が起こる電極を意味する。
【0037】
本開示において「負極」及び「アノード」は、放電過程の間に電気化学的酸化及び脱リチウム化が起こる電極を意味する。
【0038】
以上、特定の実施形態が記述されたが、現在予想されない、または予想できない代案、修正、変形、改善及び実質的な均等物が出願人または当業者に発生する可能性がある。したがって、出願され、修正される可能性のある添付の特許請求の範囲は、そのような全ての代案、修正、変形、改善及び実質的な均等物を含むことを意図する。
【0039】
以下、例示的な実施形態による全固体二次電池についてさらに詳細に説明する。
【0040】
[全固体二次電池]
一実施形態による全固体二次電池は、正極層、負極層、及び前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含み、前記正極層が正極集電体及び前記正極集電体の一面または両面上に配置された正極活物質層を含み、前記正極活物質層がリチウム含有硫化物系正極活物質を含み、前記リチウム含有硫化物系正極活物質がLi2S、Li2S含有複合体またはそれらの組合わせを含み、前記正極層の一側面上に配置された第1不活性部材(inactive member)を含み、前記負極層が負極集電体及び前記負極集電体の一面上に配置された第1負極活物質層を含み、前記第1負極活物質層の初期充電容量(B)と前記正極活物質層の初期充電容量(A)との比率(B/A)が0.005~0.45であり、前記正極活物質層の初期充電容量は、第1開放回路電圧(1st open circuit voltage)から、Li/Li+に対して最大充電電圧(maximum charging voltage)までの充電によって決定され、前記負極活物質層の初期充電容量は、第2開放回路電圧(2nd open circuit voltage)から、 Li/Li+に対して0.01Vまでの充電によって決定される。
【0041】
全固体二次電池がリチウムソースとしてリチウム金属の代わりに、リチウム含有硫化物系正極活物質を含む。これにより、負極層においてリチウム金属のようなリチウムソースの省略が可能になる。負極層の体積が減少するので、全固体二次電池のエネルギー密度が向上する。
【0042】
全固体二次電池が正極活物質としてリチウム含有硫化物系正極活物質を含む。したがって、リチウム非含有硫化物系正極活物質、例えば、硫黄(S)の初期放電時の体積増加によるイオン及び/または電子の伝達経路の断絶が防止される。そのようなイオン及び/または電子の伝達経路の断絶を防止することにより、全固体二次電池のサイクル特性が向上する。
【0043】
全固体二次電池が、正極活物質層の初期充電容量に比べて0.005~0.45の範囲の初期充電容量を有する第1負極活物質層を含む。第1負極活物質層がそのような範囲の小さな初期充電容量を有することにより、充放電時に正極層の体積変化を負極層が効果的に補償することができる。結果として、充放電時に全固体二次電池の全体としての体積変化が抑制される。全固体二次電池の充放電時に急激な体積変化によるクラック生成などの劣化が防止されるので、全固体二次電池の短絡が防止され、サイクル特性が向上する。
【0044】
全固体二次電池が固体電解質層を含むことにより、リチウム含有硫化物系正極活物質の充放電時に発生するポリスルフィドの負極層への移動が遮断される。したがって、ポリスルフィドと負極活物質との副反応が抑制される。
【0045】
正極層の一側面上に不活性部材が配置されることにより、全固体二次電池の加圧時及び/または充放電時に発生する固体電解質層のクラックが抑制される。したがって、全固体二次電池の製造時及び/または充放電時に固体電解質層のクラックが抑制され、これにより、全固体二次電池の短絡が抑制される。結果として、全固体二次電池の短絡が防止されて寿命特性が向上する。
【0046】
図1ないし
図9を参照すれば、全固体二次電池1は、正極層10、負極層20、及び正極層10と負極層20との間に配置された固体電解質層30を含む。正極層10は、正極集電体11及び正極集電体の一面または両面上に配置された正極活物質層12を含む。正極活物質層12は硫化物系正極活物質を含み、硫化物系正極活物質はLi
2S、Li
2S含有複合体またはそれらの組合わせを含む。正極層10の一側面上に配置された第1不活性部材(inactive member)40を含む。負極層20が負極集電体21及び負極集電体の一面上に配置された第1負極活物質層22を含む。第1負極活物質層22の初期充電容量(B)と正極活物質層12の初期充電容量(A)との比率(B/A)が0.005~0.45である。正極活物質層12の初期充電容量は、第1開放回路電圧(1st open circuit voltage)から、 Li/Li
+に対して最大充電電圧(maximum charging voltage)までの充電によって決定される。第1負極活物質層22の初期充電容量は、第2開放回路電圧(2
nd open circuit voltage)から、 Li/Li
+に対して0.01Vまでの充電によって決定される。第1負極活物質層22の初期充電容量(B)と正極活物質層12の初期充電容量(A)との比率(B/A)は、例えば、0.01~0.4、0.01~0.3、0.01~0.2または0.01~0.1である。
【0047】
[正極層]
[正極層:正極活物質]
図1ないし
図9を参照すれば、正極活物質層12は、例えば、正極活物質及び固体電解質を含む。正極活物質層12に含まれた固体電解質は、固体電解質層30に含まれる固体電解質と類似しても、異なってもいる。固体電解質についての詳細な内容は、固体電解質層30の部分を参照する。
【0048】
正極活物質は、リチウム含有硫化物系正極活物質を含む。リチウム含有硫化物系正極活物質は、例えば、硫黄系正極活物質にリチウムが追加された電極材料である。硫黄系正極活物質は、例えば、硫黄系材料、硫黄系材料含有複合体、またはそれらの組合わせを含む。硫黄系材料は、例えば、無機硫黄、Li2Sn(n>1)、ジスルフィド化合物、有機硫黄化合物、炭素-硫黄ポリマー、またはそれらの組合わせであってもよい。硫黄系材料含有複合体は、無機硫黄、Li2Sn(n>1)、ジスルフィド化合物、有機硫黄化合物、炭素-硫黄ポリマー、またはそれらの組合わせを含む複合体であってもよい。硫黄系材料含有複合体は、例えば、硫黄系材料と炭素との複合体、硫黄系材料と炭素と固体電解質との複合体、硫黄系材料と炭素とリチウム塩の複合体、硫黄系材料とリチウム塩の複合体、硫黄系材料と固体電解質との複合体、硫黄系材料と金属カーバイドとの複合体、硫黄系材料と炭素と金属カーバイドとの複合体、硫黄系材料と金属窒化物との複合体、硫黄系材料と炭素と金属窒化物との複合体、またはそれらの組合わせを含むことができる。リチウム含有硫化物系正極活物質は、酸化物系正極活物質に比べて単位重量当たりの高い放電容量を提供するので、リチウム含有硫化物系正極活物質を含む全固体二次電池の単位重量当たりのエネルギー密度を向上させることができる。
【0049】
リチウム含有硫化物系正極活物質は、例えば、Li2S、Li2S含有複合体またはそれらの組合わせを含む。リチウム含有硫化物系正極活物質として高い容量を有するLi2S、Li2S含有複合体またはそれらの組合わせを含むことにより、全固体二次電池製造時にリチウム金属の使用を省略することができる。リチウム金属は、高い反応性及び大きい延性(ductility)を有するので、電池製造時に量産性を低下させる可能性がある。したがって、全固体二次電池の量産性を向上することができる。負極層でリチウム金属が省略されて負極層の体積が減少することにより、全固体二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が向上し、さらに簡単な構造の全固体二次電池を構成することができる。
【0050】
リチウム含有硫化物系正極活物質(例えば、Li2S)は、例えば、初期充電時に脱リチウム化を経つつ体積が減少し、後続の放電時に再びリチウム化によって体積が増加する。したがって、リチウム含有硫化物系正極活物質の周りに配置される導電材などによるイオン及び/または電子の伝達経路が保持された状態でリチウム含有硫化物系正極活物質の体積が変化するので、イオン及び/または電子の伝達経路が断絶される可能性が低い。これに対して、硫黄系正極活物質(例えば、S)は、例えば、初期放電時にリチウム化を経つつ体積が増加し、後続の充電時に再び脱リチウム化によって体積が減少する。したがって、硫黄系正極活物質の周りに配置される導電材などによる初期イオン及び/または電子の伝達経路が硫黄系正極活物質の初期体積増加によって崩壊する可能性があるので、イオン及び/または電子の伝達経路が断絶される可能性が高い。
【0051】
リチウム含有硫化物系正極活物質の粒径は、例えば、1nm~50μm、10nm~50μm、50nm~40μm、100nm~30μm、500nm~30μm、または1μm~20μmであってもよい。リチウム含有硫化物系正極活物質がそのような範囲の粒径を有することにより、リチウム硫化物系正極活物質を含む全固体二次電池のサイクル特性をさらに向上することができる。Li2S含有複合体は、例えば、Li2Sと伝導性材料との複合体である。
【0052】
伝導性材料は、例えば、イオン伝導性材料、電子伝導性材料またはそれらの組合わせである。
【0053】
電子伝導性材料の電子伝導度は、例えば、1.0×103S/m、1.0×104S/m、または1.0×105S/m以上である。電子伝導性材料の形態は、例えば、粒子状電子伝導性材料、板状電子伝導性材料、棒状電子伝導性材料またはそれらの組合わせであるが、必ずしもそれらに限定されない。電子伝導性材料は、例えば、炭素、金属粉末、金属化合物などであってもよい。電子伝導性材料として炭素を含む場合、炭素は、電子伝導度が高く、軽いために、単位質量当たりの高いエネルギー密度を有する全固体二次電池を具現することができる。電子伝導性材料は、細孔を有することができる。
【0054】
電子伝導性材料が細孔を有することにより、Li2Sを細孔内に含み、Li2Sと電子伝導性物質との接触面積を増加させ、Li2Sの比表面積を増加させることができる。細孔容量は、例えば、0.1cc/g~20.0cc/g、0.5cc/g~10cc/g、または0.5cc/g~5cc/gである。平均細孔径は、例えば、1nm~100nm、1nm~50nm、または1nm~20nmである。細孔を有する電子伝導性材料のBET比表面積は、平均細孔径が15nm以下である場合には、200m2/g~4500m2/gであり、平均細孔径が15nm超である場合には、100m2/g~2500m2/gである。BET比表面積、細孔径、細孔容量及び平均細孔径は、例えば、ASTM D6556、ASTM D4567、ISO 9277:2022などの窒素吸着法を使用して求めることができる。
【0055】
イオン伝導性材料のイオン伝導度は、例えば、1.0×10-5S/m、1.0×10-4S/m、または1.0×10-3S/m以上である。イオン伝導性材料は、細孔を有することができる。細孔を有することにより、Li2Sを細孔内に含み、Li2Sとイオン伝導性物質との接触面積を増加させ、Li2Sの比表面積を増加させることができる。イオン伝導性材料の形態は、例えば、粒子状イオン伝導性材料、板状電子伝導性材料、棒状電子伝導性材料またはそれらの組合わせであるが、必ずしもそれらに限定されない。イオン伝導性材料は、例えば、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質などであってもよい。イオン伝導性材料として硫化物系固体電解質を含む場合、硫化物系固体電解質は、イオン伝導度が高く、多様な形状に成形が可能なので、大容量を有する全固体二次電池を具現することができる。
【0056】
Li2S含有複合体は、例えば、Li2Sと導電性材料との複合体、Li2Sと固体電解質と導電性材料との複合体、Li2Sと固体電解質との複合体、Li2Sとリチウム塩と導電性材料との複合体、Li2Sとリチウム塩との複合体、Li2Sとリチウム塩と導電性材料との複合体、Li2Sとリチウム塩との複合体、Li2Sと金属カーバイドとの複合体、Li2Sと金属カーバイドと導電性材料との複合体、Li2Sと金属窒化物との複合体、Li2Sと金属窒化物と導電性材料との複合体またはそれらの組合わせを含む。Li2S含有複合体は、Li2Sと導電性材料固体電解質、リチウム塩、金属カーバイド、金属窒化物などの単純混合物と区別される。Li2Sと導電性材料、固体電解質、リチウム塩、金属カーバイド、金属窒化物などの単純混合物は、Li2Sとその他成分との間に緻密な界面を維持しないことにより、高い界面抵抗を提供し、結果として、全固体二次電池の寿命特性を低下させることができる。
【0057】
Li2S含有複合体は、Li2S含有複合体は、例えば、Li2Sとリチウム塩との複合体、Li2Sとリチウム塩と導電性材料との複合体、Li2Sと金属ハライドとの複合体、Li2Sと金属ハライドと導電性材料との複合体、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドとの複合体、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体、またはそれらの組合わせを含むことができる。Li2S含有複合体は、Li2Sとリチウム塩、金属ハライド、導電性材料などの単純混合物と区別される。Li2Sと金属ハライド、リチウム塩、導電性材料などの単純混合物は、Li2Sとそれらその他成分の間に緻密な界面を保持し得ないことにより、高い界面抵抗を提供して結果として全固体二次電池の寿命特性を低下させる可能性がある。Li2S含有複合体はLi2Sを含む。
【0058】
Li2Sは、高い理論容量を有するので、高いエネルギー密度を有する二次電池を提供することができる。但し、Li2Sが低いイオン伝導度及び/または電子伝導度を有するので、このような短所を解消するために、リチウム塩、金属ハライド、導電性材料などと複合体を形成する。Li2S含有複合体においてLi2Sの含量は、例えば、Li2S含有複合体の総重量の10~80wt%、20~80wt%、30~80wt%または40~80wt%であってもよい。Li2S含有複合体においてLi2Sの含量が過度に増加すれば、Li2S含有複合体のイオン伝導度及び/または電子伝導度の改善が容易ではない。Li2S含有複合体においてLi2Sの含量が過度に低ければ、全固体二次電池のエネルギー密度が低下する可能性がある。
【0059】
Li2Sと導電性材料との複合体は、導電性材料を含む。導電性材料は、例えば、炭素系材料を含む。炭素系材料は、例えば、炭素原子を含む材料として当該技術分野において伝導性材料として使用するものであれば、いずれも使用可能である。炭素系材料は、例えば、結晶質炭素系材料、非晶質炭素系材料またはそれらの組合わせであってもよい。炭素系材料は、例えば、炭素前駆体の焼成物であってもよい。炭素系材料は、例えば、炭素ナノ構造体であってもよい。炭素ナノ構造体は、例えば、1次元炭素ナノ構造体、2次元炭素ナノ構造体、3次元炭素ナノ構造体またはそれらの組合わせであってもよい。炭素ナノ構造体は、例えば、炭素ナノチューブ、炭素ナノファイバ、炭素ナノベルト、炭素ナノロッド、グラフェン、またはそれらの組合わせであってもよい。炭素系材料は、例えば、多孔性炭素系材料または非多孔性炭素系材料であってもよい。多孔性炭素系材料は、例えば、周期的かつ規則的な2次元または3次元気孔を含んでもよい。多孔性炭素系材料は、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、活性炭、またはそれらの組合わせであってもよい。炭素系材料の形態は、例えば、粒子状、シート状、フレーク状などであるが、それらに限定されず、当該技術分野で炭素系材料として使用するものであれば、いずれも使用可能である。Li2Sと炭素系材料との複合体の製造方法は、乾式方法、湿式方法またはそれらの組合わせであってもよいが、それらに限定されず、当該技術分野でLi2Sと炭素系材料との複合体製造方法は、例えば、ミーリング、熱処理、蒸着などであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野で使用する方法であれば、いずれも使用可能である。
【0060】
Li2Sと固体電解質と導電性材料との複合体は、導電性材料及び固体電解質を含む。導電性材料は、例えば、炭素系材料を含む。炭素系材料は、上述したLi2Sと炭素系材料の複合体に使用される炭素系材料を参照する。固体電解質は、例えば、当該技術分野でイオン伝導性材料として使用するものであれば、いずれも使用可能である。固体電解質は、例えば、無機固体電解質である。固体電解質は、例えば、結晶質固体電解質、非晶質固体電解質またはそれらの組合わせである。固体電解質は、例えば、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質またはそれらの組合わせである。硫化物系固体電解質は、例えば、Li、S及びPを含み、ハロゲン元素を選択的にさらに含んでもよい。硫化物系固体電解質は、固体電解質層に使用される硫化物系固体電解質のうちから選択することができる。硫化物系固体電解質は、例えば、常温で1×10-5S/cm以上のイオン伝導度を有する。酸化物系固体電解質は、例えば、Li、O及び遷移金属元素を含み、他の元素を選択的にさらに含んでもよい。酸化物系固体電解質は、例えば、常温で1×10-5S/cm以上のイオン伝導度を有する固体電解質であってもよい。酸化物系固体電解質は、固体電解質層に使用される酸化物系固体電解質のうちから選択することができる。
【0061】
Li2Sと固体電解質との複合体は、固体電解質を含む。固体電解質は、上述したLi2Sと導電性材料と固体電解質との複合体に使用される固体電解質を参照する。Li2Sとリチウム塩と導電性材料の複合体は、Li2とリチウム塩と導電性材料を含む。導電性材料は、例えば、炭素系材料を含む。炭素系材料は、上述したLi2Sと導電性材料の複合体に使用される炭素系材料を参照する。リチウム塩は、硫黄(S)を含まない化合物である。リチウム塩は、例えば、二元系化合物(binary compound)または三元系化合物(ternary compound)であってもよい。リチウム塩は、例えば、リチウムと元素周期表の第13族ないし第17族から選択された1種の元素からなる二元系化合物であってもよい。二元系化合物は、例えば、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiH、Li2O、Li2Se、Li2Te、Li3N、Li3P、Li3As、Li3Sb、Li3Al2及びLiB3のうちから選択された1つ以上を含むことができる。リチウム塩は、例えば、リチウムと元素周期表の第13族ないし第17族から選択された2種の元素からなる3成分化合物であってもよい。三元系化合物は、例えば、Li3OCl、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiNO3、Li2CO3、LiBH4、Li3BO3、Li3PO4、Li4NCl、Li5NCl2及びLi3BN2のうちから選択された1つ以上を含む。リチウム塩は、特にLiF、LiCl、LiBr、及びLiIのうちから選択された1つ以上のリチウムハライド化合物である。Li2Sとリチウム塩と導電性材料の複合体は、例えば、Li2Sとリチウムハライドと炭素系材料との複合体であってもよい。Li2Sとリチウム塩と炭素系材料との複合体がリチウムハライド化合物をさらに含むことにより、さらに向上したイオン伝導度を提供することができる。Li2Sとリチウム塩と炭素系材料との複合体は、Li2Sとリチウム塩と炭素系材料との単純混合物と区別される。Li2Sとリチウム塩と炭素系材料との単純混合物は、Li2Sとリチウム塩と炭素系材料との間に緻密な界面を保持することができないことから、高い界面抵抗を提供し、結果として全固体二次電池の寿命特性を低下さる可能性がある。
【0062】
Li2Sとリチウム塩との複合体は、リチウム塩を含む。リチウム塩は、上述したLi2Sとリチウム塩と導電性材料との複合体に使用されるリチウム塩を参照する。
【0063】
Li2Sと金属カーバイドとの複合体は、金属カーバイドを含む。金属カーバイドは、例えば、2次元金属カーバイドである。2次元金属カーバイドは、例えば、Mn+1CnTx(Mは、遷移金属であり、Tは、末端基であり、Tは、O、OH及び/またはFであり、n=1、2、または3であり、xは、末端基の数)として表現される。2次元金属カーバイドは、例えば、Ti2CTx、(Ti0.5、Nb0.5)2CTx、Nb2CTx、V2CTx、Ti3C2Tx、(V0.5、Cr0.5)3C2Tx、Ti3CNTx、Ta4C3Tx、Nb4C3Txまたはそれらの組合わせである。2次元金属カーバイドの表面は、O、OH及び/またはFで終結される。表面のO、OH、F基の総数は末端基数である。
【0064】
Li2Sと金属カーバイドと導電性材料との複合体は、Li2Sと金属カーバイドと導電性材料とを含む。導電性材料は、例えば、炭素系材料を含む。炭素系材料は、上述したLi2Sと導電性材料の複合体に使用される炭素系材料を参照する。金属カーバイドは、上述したLi2Sと金属カーバイドとの複合体に思料される金属カーバイドを参照する。
【0065】
Li2Sと金属窒化物との複合体は、Li2Sと金属窒化物を含む。金属窒化物は、例えば、2次元金属窒化物である。2次元金属窒化物は、例えば、Mn+1NnTx(Mは、遷移金属であり、Tは、末端基であり、Tは、O、OH及び/またはFであり、n=1、2、または3であり、xは、末端基の数)として表現される。2次元金属窒化物の表面は、O、OH及び/またはFで終結される。表面のO、OH、F基の総数は末端基数である。
【0066】
Li2Sと金属窒化物と導電性材料との複合体は、Li2Sと金属窒化物と導電性材料とを含む。導電性材料は、例えば、炭素系材料を含む。炭素系材料は、上述したLi2Sと導電性材料との複合体に使用される炭素系材料を参照する。金属窒化物は、上述したLi2Sと金属窒化物との複合体に使用される金属窒化物を参照する。
【0067】
Li2Sとリチウム塩(LiaX1b)との複合体は、例えば、Li2S-LiaX1b(1≦a≦5、1≦b≦5)で表示され、前記X1は、I、Br、Cl、F、H、O、Se、Te、N、P、As、Sb、Al、B、OCl、PF6、BF4、SbF6、AsF6、ClO4、AlO2、AlCl4、NO3、CO3、BH4、SO4、BO3、PO4、NCl、NCl2、BN2またはそれらの組合わせである。
【0068】
Li2Sとリチウム塩(LiaX1b)と導電性材料(C)との複合体は、例えば、Li2S-LiaX1b-C(1≦a≦5、1≦b≦5)で表示され、前記X1は、I、Br、Cl、F、H、O、Se、Te、N、P、As、Sb、Al、B、OCl、PF6、BF4、SbF6、AsF6、ClO4、AlO2、AlCl4、NO3、CO3、BH4、SO4、BO3、PO4、NCl、NCl2、BN2またはそれらの組合わせである。導電性材料は、例えば、炭素系材料である。
【0069】
Li2Sと金属ハライド(McX2d)の複合体は、例えば、Li2S-McX2d-C(1≦c≦5、1≦d≦5)で表示され、前記Mは、元素周期表の第2族ないし第15族のうちから選択された1つ以上の金属であり、前記X2は、I、Br、Cl、F、またはそれらの組合わせである。導電性材料は、例えば、炭素系材料である。
【0070】
Li2Sと金属ハライド(McX2d)と導電性材料(C)との複合体は、例えば、Li2S-McX2d-C(1≦c≦5、1≦d≦5)で表示され、前記Mは、元素周期表の第2族ないし第15族のうちから選択された1つ以上の金属であり、前記X2は、I、Br、Cl、F、またはそれらの組合わせである。導電性材料は、例えば、炭素系材料である。
【0071】
Li2Sとリチウム塩(LiaX1b)と金属ハライド(MaX2b)との複合体がLi2S-LiaX1b-McX2d(1≦a≦5、1≦b≦5、1≦c≦5、1≦d≦5)で表示され、X1は、I、Br、Cl、F、H、O、Se、Te、N、P、As、Sb、Al、B、OCl、 PF6、BF4、SbF6、AsF6、ClO4、AlO2、AlCl4、NO3、CO3、BH4、SO4、BO3、PO4、NCl、NCl2、BN2またはそれらの組合わせであり、前記Mは、元素周期表の第2族ないし第15族のうちから選択された1つ以上の金属であり、前記X2は、I、Br、Cl、F、またはそれらの組合わせである。導電性材料は、例えば、炭素系材料である。
【0072】
Li2Sとリチウム塩(LiaX1b)と金属ハライド(MaX2b)と導電性材料(C)の複合体がLi2S-LiaX1b-McX2d-C(1≦a≦5、1≦b≦5、1≦c≦5、1≦d≦5)で表示され、X1は、I、Br、Cl、F、H、O、Se、Te、N、P、As、Sb、Al、B、OCl、 PF6、BF4、SbF6、AsF6、ClO4、AlO2、AlCl4、NO3、CO3、BH4、SO4、BO3、PO4、NCl、NCl2、BN2またはそれらの組合わせであり、前記Mは、元素周期表の第2族ないし第15族のうちから選択された1つ以上の金属であり、前記X2は、I、Br、Cl、F、またはそれらの組合わせである。導電性材料は、例えば、炭素系材料である。
【0073】
Li2S含有複合体において、例えば、1≦a≦4、1≦b≦4、1≦c≦4、1≦d≦4、1≦a≦3、1≦b≦3、1≦c≦3、1≦d≦3、または1≦a≦2、1≦b≦2、1≦c≦2、1≦d≦2である。
【0074】
Li2S含有複合体が金属ハライドを含み、金属ハライドは、例えば、Al、Mg、Ti、Sn、As、Sb、Nb、Sc、Zr、V、W、Mn、Fe、Co、Pd、Cu、Ag、Zn、及びSeのうちから選択された1つ以上の金属を含むことができる。金属ハライドがそのような金属を含むことにより、Li2S含有複合体を含む全固体二次電池のサイクル特性がさらに向上することができる。
【0075】
Li2S含有複合体が金属ハライドを含み、金属ハライドは、例えば、AlF3、AlCl3、AlBr3、AlI3、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、TiF4、TiCl4、TiBr4、TiI4、SnF4、SnCl4、SnBr4、SnI4、AsF4、AsCl4、AsBr4、AsI4、SbF4、SbCl4、SbBr4、SbI4、またはそれらの組合わせを含むことができる。Li2S含有複合体がそのような金属ハライドを含むことにより、Li2S含有複合体を含む全固体二次電池のサイクル特性がさらに向上することができる。
【0076】
Li2S含有複合体は、例えば、Li2Sとリチウム塩の固溶体(solid solution)、Li2Sと金属ハライドの固溶体、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドの固溶体またはそれらの組合わせを含むことができる。例えば、Li2Sとリチウム塩(LiaX1b)との複合体及び/または、Li2Sとリチウム塩(LiaX1b)と導電性材料(C)との複合体は、Li2Sとリチウム塩の固溶体を含むことができる。例えば、Li2Sと金属ハライド(McX2d)との複合体及び/またはLi2Sと金属ハライド(McX2d)と導電性材料(C)との複合体は、Li2Sと金属ハライドの固溶体(solid solution)を含むことができる。例えば、Li2Sとリチウム塩(LiaX1b)と金属ハライド(MaX2b)との複合体及び/またはLi2Sとリチウム塩(LiaX1b)と金属ハライド(MaX2b)と導電性材料(C)との複合体は、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドの固溶体を含むことができる。
【0077】
Li2S含有複合体がLi2Sとリチウム塩の固溶体、Li2Sと金属ハライドの固溶体、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドの固溶体またはそれらの組合わせを含むことにより、Li2S含有複合体のイオン伝導度が増加することができる。例えば、Li2Sとリチウム塩の固溶体、Li2Sと金属ハライドの固溶体、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドの固溶体またはそれらの組合わせがLi2S結晶子(crystallite)内に配置されたリチウムイオン、金属イオン及び/またはハライドイオンを含むので、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドの固溶体のイオン伝導度がLi2Sのイオン伝導度に比べて向上することができる。結果として、Li2S含有複合体のイオン伝導度が向上し、Li2S含有複合体の内部抵抗が減少することができる。リチウム含有硫化物系正極活物質がそのようなLi2S含有複合体を含むことにより、リチウム含有硫化物系正極活物質を含む全固体二次電池のサイクル特性をさらに向上させることができる。例えば、そのようなリチウム含有硫化物系正極活物質を含む全固体二次電池の高率特性がさらに向上させることができる。
【0078】
Li2Sとリチウム塩と導電性材料との複合体、Li2Sと金属ハライドと導電性材料との複合体、及びLi2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体は、導電性材料を含む。導電性材料は、例えば、炭素系材料、金属系材料またはそれらの組合わせを含むことができる。
【0079】
炭素系材料は、例えば、繊維状炭素系材料を含むことができる。金属系材料は、例えば、繊維状金属系材料を含むことができる。
【0080】
Li2Sと金属ハライドと導電性材料との複合体が繊維状炭素系材料及び/または繊維状金属系材料を含むことにより、Li2Sと金属ハライドと導電性材料との複合体の電子伝導度がさらに向上することができる。Li2Sと金属ハライドと導電性材料との複合体が繊維状炭素系材料及び/または繊維状金属系材料を含むことにより、Li2Sと金属ハライドと導電性材料との複合体の表面から内部まで電子伝導がさらに容易に遂行することができる。Li2Sと金属ハライドと導電性材料との複合体を含む正極活物質層の内部抵抗が減少し、正極活物質層を含む全固体二次電池のサイクル特性がさらに向上させることができる。
【0081】
繊維状炭素系材料及び/または繊維状金属系材料の縦横比は、例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上または20以上であってもよい。繊維状炭素系材料及び/または繊維状金属系材料の縦横比は、例えば、2~30、3~30、4~30、5~30、10~30または20~30であってもよい。繊維状炭素系材料及び/または繊維状金属系材料の縦横比は、例えば、2~30、2~20、2~10、2~8、2~5または2~4であってもよい。繊維状炭素系材料及び/または繊維状金属系材料がそのような範囲の縦横比を有することにより、Li2Sとリチウム塩と導電性材料との複合体の全体としての電子伝導度が向上し、Li2Sとリチウム塩と導電性材料との複合体内で局所的な電子伝導度の不均衡がさらに緩和される。
【0082】
繊維状炭素系材料は、例えば、炭素ナノ構造体を含むことができる。炭素ナノ構造体は、例えば、炭素ナノ繊維(CNF)、炭素ナノチューブ(CNT)、炭素ナノベルト、炭素ナノロッドまたはそれらの組合わせを含むことができる。繊維状金属系材料は、例えば、金属ナノ構造体を含むことができる。金属ナノ構造体は、例えば、金属ナノ繊維(MNF)、金属ナノチューブ(MNT)、金属ナノベルト、金属ナノロッドまたはそれらの組合わせを含むことができる。
【0083】
炭素ナノ構造体は、例えば、1つの炭素ナノ構造体からなる1次炭素ナノ構造体、複数の1次炭素ナノ構造体が凝集された2次炭素ナノ構造体、またはそれらの組合わせを含むことができる。
【0084】
1次炭素ナノ構造体の直径は、例えば、1nm~200nm、1nm~150nm、1nm~100nm、1nm~50nm、1nm~30nmまたは1nm~20nmであってもよい。1次炭素ナノ構造体の長さは、例えば、10nm~2um、10nm~1.5um、10nm~1um、10nm~500nm、10nm~400nm、10nm~300nm、10nm~200nmまたは10nm~100nmであってもよい。1次炭素ナノ構造体の直径及び長さは、走査電子顕微鏡(SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)イメージから測定することができる。一方、1次炭素ナノ構造体の直径及び/または長さは、レーザ回折法で測定することができる。
【0085】
2次炭素ナノ構造体は、例えば、1次炭素ナノ構造体が全体的にまたは部分的にバンドル型または束型をなすように集合されて形成された構造体である。2次炭素ナノ構造体は、例えば、バンドル型(bundle-type)炭素ナノ構造体、束型(rope-type)炭素ナノ構造体またはそれらの組合わせを含むことができる。2次炭素ナノ構造体の直径は、例えば、2nm~200nm、3nm~150nm、5nm~100nm、5nm~50nm、5nm~30nmまたは5nm~20nmであってもよい。2次炭素ナノチューブ構造体の長さは、例えば、20nm~2μm、30nm~1.5μm、50nm~1μm、50nm~500nm、50nm~400nm、50nm~300nm、50nm~200nmまたは50nm~100nm以上であってもよい。2次炭素ナノ構造体の直径及び長さは、走査電子顕微鏡(SEM)イメージまたは光学顕微鏡から測定することができる。一方、2次炭素ナノ構造体の直径及び/または長さは、レーザ回折法で測定することができる。2次炭素ナノ構造体は、例えば、溶媒などに分散させて1次炭素ナノ構造体で転換させた後、Li2Sと金属ハライドと導電性材料との複合体製造に使用することができる。
【0086】
硫化物系正極活物質の粒子サイズ、例えば、Li2S含有複合体の粒子サイズは、例えば、10μm以下、8μm以下、5μm以下、4μm以下、2μm以下、1.5μm以下または1μm以下であってもよい。Li2S含有複合体の粒子サイズは、例えば、1~10μm、2~10μm、2~8μmまたは、3~8μmであってもよい。Li2S含有複合体の粒子サイズは、例えば、0.1~10μm、0.1~8μm、0.1~5μm、0.1~4μm、0.1~2μm、0.1~1.5μmまたは0.1~1μmであってもよい。Li2S含有複合体粒子がそのような範囲の粒子サイズを有することにより、充放電時の硫化物系正極活物質の体積変化が抑制され、硫化物系正極活物質の充放電時の劣化がさらに効果的に抑制することができる。Li2S含有複合体の粒子サイズが過度に増加すれば、充放電時、Li2S含有複合体の体積変化が増加することにより、硫化物系正極活物質の劣化が促進される可能性がある。したがって、そのような硫化物系正極活物質を含む全固体二次電池のサイクル特性が低下する可能性がある。Li2S含有複合体の粒子サイズは、例えば、レーザ回折法、走査電子顕微鏡などを使用して測定することができる。Li2S含有複合体の大きさは、例えば、走査電子顕微鏡イメージにおいてソフトウェアを使用して測定された複数の粒子の粒径の算術平均値である。
【0087】
Li2S含有複合体に含まれるLi2S粒子サイズは、例えば、2μm以下、1.5μm以下、または1μm以下であってもよい。Li2S粒子のサイズは、例えば、0.1~2μm、0.1~1.5μmまたは0.1~1μm以下であってもよい。Li2S粒子がそのような範囲のサイズを有することにより、充放電時のLi2S含有複合体の体積変化が抑制されることにより、Li2S含有複合体を含む硫化物系正極活物質の充放電時の劣化を抑制することができる。Li2S粒子のサイズが過度に大きくなると、充放電時、Li2S含有複合体の体積変化が増加することにより、Li2S含有複合体を含む硫化物系正極活物質の劣化を促進されることがある。結果として、そのような硫化物系正極活物質を含む二次電池のサイクル特性が低下する可能性がある。
【0088】
Li2S含有複合体のイオン伝導度は、例えば、1気圧、25℃において1×10-5S/cm以上、2×10-5S/cm以上、4×10-5S/cm以上、6×10-5S/cm以上、8×10-5S/cm以上または1×10-4S/cm以上であってもよい。イオン伝導度は、例えば、インピーダンス分光法(Electrochemcial Impedance spetrscopy)、直流分極法(DC polarization method)などを使用して測定することができる。Li2S含有複合体がそのような範囲のイオン伝導度を有することにより、Li2S含有複合体を含む正極活物質層の内部抵抗がさらに減少することができる。正極活物質層を含む全固体二次電池のサイクル特性が向上させることができる。
【0089】
Li2S含有複合体の電子伝導度は、例えば、1気圧、25℃において1×10-5S/cm以上、2×10-5S/cm以上、4×10-5S/cm以上、6×10-5S/cm以上、8×10-5S/cm以上または1×10-4S/cm以上であってもよい。電子伝導度は、例えば、インピーダンス分光法(Electrochemcial Impedance spetrscopy)、直流分極法(DC polarization method)などを使用して測定することができる。Li2S含有複合体がそのような範囲の電子伝導度を有することにより、Li2S含有複合体を含む正極活物質層の内部抵抗がさらに減少することができる。正極活物質層を含む全固体二次電池のサイクル特性が向上することができる。Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体100重量部に対して、例えば、Li2S 40~80重量部、リチウム塩と金属ハライドとの組合わせ1~40重量部及び導電性材料1~20重量部を含むことができる。導電性材料は、例えば、炭素系材料である。リチウム塩と金属ハライドとの組合わせにおいて、リチウム塩と金属ハライドとのモル比は、例えば、3:1~1:3、2:1~1:2、または1.5:1~1:1.5であってもよい。
【0090】
Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体が含むLi2S含量は、例えば、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体100重量部に対してLi2S 10~80重量部、20~70重量部、30~60重量部または40~60重量部であってもよい。導電性材料は、例えば、炭素系材料である。
【0091】
Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体が含むリチウム塩と金属ハライドの含量は、例えば、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体100重量部に対してリチウム塩と金属ハライドとの組合わせ10~40重量部、15~40重量部、20~40重量部または25~35重量部であってもよい。導電性材料は、例えば、炭素系材料である。リチウム塩と金属ハライドのモル比は、3:1~1:3であってもよい。
【0092】
Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体が含む導電性材料含量は、例えば、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体100重量部に対して導電性材料1~20重量部、5~20重量部または5~15重量部であってもよい。導電性材料は、例えば、炭素系材料である。
【0093】
Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体がそのような範囲のLi2S、リチウム塩、金属ハライド及び導電性材料組成を有することにより、Li2Sとリチウム塩と金属ハライドと導電性材料との複合体を含む硫化物系正極活物質がさらに優秀なイオン伝導度及び/または電子伝導度を提供することができる。
【0094】
正極活物質層12が含むLi2Sの含量は、例えば、正極活物質層12の総重量の30wt%~90wt%、35wt%~90wt%、40wt%~90wt%、45wt%~80wt%、または50wt%~70wt%であってもよい。
【0095】
正極活物質層12が含む硫化物系正極活物質の含量は、例えば、正極活物質層12の総重量の10wt%~90wt%、10wt%~80wt%、10wt%~70wt%、10wt%~60wt%、または10wt%~50wt%であってもよい。一方、正極活物質層12が含む硫化物系正極活物質の含量は、例えば、正極活物質層12の総重量の10wt%~90wt%、20wt%~90wt%、30wt%~90wt%、30wt%~90wt%、または、30wt%~90wt%であってもよい。
【0096】
正極活物質層12は、例えば、Li2Sと区分される硫化物系化合物をさらに含んでもよい。硫化物系化合物は、例えば、Li以外の金属元素及び硫黄元素を含む化合物であってもよい。硫化物系化合物は、例えば、原子量10以上の元素周期表の第1族ないし第14族に属する金属元素と硫黄元素とを含む化合物であってもよい。硫化物系化合物は、例えば、FeS2、VS2、NaS、MnS、FeS、NiS、CuSまたはそれらの組合わせであってもよい。正極活物質層が硫化物系化合物をさらに含むことにより、全固体二次電池のサイクル特性をさらに向上することができる。正極活物質層12が含むLi2Sと区分される硫化物系化合物の含量は、正極活物質層12の総重量の10wt%以下、5wt%以下、3wt%以下、または1wt%以下であってもよい。
【0097】
[正極層:固体電解質]
正極活物質層12は、例えば、固体電解質をさらに含んでもよい。固体電解質は、例えば、硫化物系固体電解質であってもよい。正極層10が含む固体電解質は、固体電解質層30が含む固体電解質と同一でも、異なってもいる。固体電解質についての詳細な内容は、固体電解質層30の部分を参照する。
【0098】
正極活物質層12が含む固体電解質は、固体電解質層30が含む固体電解質に比べてD50平均粒径が小さい。例えば、正極活物質層12が含む固体電解質のD50平均粒径は、固体電解質層30が含む固体電解質のD50平均粒径の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または20%以下でもあるD50平均粒径は、例えば、メジアン粒径(D50)である。メジアン粒径(D50)は、例えば、レーザ回折法で測定される粒子サイズ分布において小粒子サイズを有する粒子側から計算して50%累積体積に該当する粒子サイズである。
【0099】
正極活物質層12が含む固体電解質含量は、例えば、正極活物質層12の総重量の1wt%~40wt%、1wt%~30wt%、1wt%~20wt%、または1wt%~10wt%であってもよい。
【0100】
[正極層:導電材]
正極活物質層12は、導電材をさらに含んでもよい。導電材は、例えば、炭素系導電材、金属系導電材またはそれらの組合わせであってもよい。炭素系導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェン(Ketjen)ブラック、炭素繊維、またはそれらの組合わせであってもよいが、それらに限定されず、当該技術分野で炭素系導電材として使用するものであれば、いずれも使用可能である。金属系導電材は、金属粉末、金属繊維、またはそれらの組合わせであってもよいが、それらに限定されず、当該技術分野で金属系導電材として使用するものであれば、いずれも使用可能である。正極活物質層12が含む導電材含量は、例えば、正極活物質層12の総重量の1wt%~30wt%、1wt%~20wt%、または1wt%~10wt%であってもよい。
【0101】
[正極層:バインダ]
正極活物質層12は、バインダをさらに含んでもよい。バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)などであるが、それらに限定されず、当該技術分野においてバインダとして使用するものであれば、いずれも使用可能である。正極活物質層12が含むバインダ含量は、例えば、正極活物質層12の総重量の1wt%~10wt%であってもよい。バインダは、省略可能である。
【0102】
[正極層:その他添加剤]
正極活物質層12は、上述した正極活物質、固体電解質、バインダ、導電材以外に、例えば、フィラー(filler)、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0103】
正極活物質層12が含むフィラー、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などとしては、一般に全固体二次電池の電極に使用される公知の材料を使用することができる。
【0104】
[正極層:正極集電体]
正極集電体11は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはそれらの合金からなる板状体(plate)またはホイル(foil)などを使用する。正極集電体11は、省略可能である。正極集電体11の厚さは、例えば、1μm~100μm、1μm~50μm、5μm~25μm、または10μm~20μmである。
【0105】
正極集電体11は、例えば、ベースフィルム及び前記ベースフィルムの一面または両面上に配置される金属層を含む。ベースフィルムは、例えば、高分子を含んでもよい。高分子は、例えば、熱可塑性高分子であってもよい。高分子は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)またはそれらの組合わせを含んでもよい。ベースフィルムは、例えば、絶縁体であってもよい。ベースフィルムが絶縁性熱可塑性高分子を含むことにより、短絡発生時、ベースフィルムが軟化または液化され、電池作動を遮断し、急激な電流増加を抑制することができる。金属層は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)またはそれらの合金を含んでもよい。金属層が電気化学的ヒューズ(electrochemical fuse)として作用し、過電流時に切断され、短絡防止機能を行うことができる。金属層の厚さを調節し、限界電流及び最大電流を調節することができる。金属層は、ベースフィルム上に電着されたり(plated)、蒸着(deposited)されたりする。金属層の厚さが小さくなれば、正極集電体11の限界電流及び/または最大電流が減少するので、短絡時のリチウム電池の安定性が向上することができる。金属層上に、外部との連結のためにリードタブ(lead tab)が追加することができる。リードタブは、超音波溶接(ultrasonic welding)、レーザ溶接(laser welding)、スポット溶接(spot welding)などにより、金属層または金属層/ベースフィルム積層体に溶接される。溶接時に、ベースフィルム及び/または金属層が溶けながら、金属層がリードタブに電気的に連結される。金属層とリードタブとの溶接をより堅固にするために、金属層とリードタブとの間に金属片(metal chip)を追加することができる。金属片は、金属層の金属と同一材料の薄片であってもよい。金属片は、例えば、金属ホイル、金属メッシュなどであってもよい。金属片は、例えば、アルミニウムホイル、銅ホイル、SUSホイルなどであってもよい。金属層上に金属片を配置した後にリードタブと溶接することにより、リードタブが金属片/金属層の積層体または金属片/金属層/ベースフィルムの積層体にも溶接される。溶接時に、ベースフィルム、金属層及び/または金属片が溶けながら、金属層または金属層/金属片の積層体がリードタブに電気的に連結される。金属層上の一部に、金属片及び/またはリードタブが追加することができる。ベースフィルムの厚さは、例えば、1~50μm、1.5~50μm、1.5~40μm、または1~30μmであってもよい。ベースフィルムがそのような範囲の厚さを有することにより、電極組立体の重量をより効果的に減少させることができる。ベースフィルムの融点は、例えば、100~300℃、100~250℃、または100~200℃であってもよい。ベースフィルムがそのような範囲の融点を有することにより、リードタブを溶接する過程においてベースフィルムが溶融され、リードタブに容易に結合することができる。ベースフィルムと金属層との接着力向上のために、ベースフィルム上にコロナ処理のような表面処理を行うことができる。金属層の厚さは、例えば、0.01~3μm、0.1~3μm、0.1~2μm、または0.1~μmであってもよい。金属層がそのような範囲の厚さを有することにより、伝導性を維持しながら、電極組立体の安定性を確保することができる。金属片の厚さは、例えば、2~10μm、2~7μm、または4~6μmであってもよい。金属片がそのような範囲の厚さを有することにより、金属層とリードタブとの連結がより容易に行われる。正極集電体11がそのような構造を有することにより、正極の重量を減少させ、結果として、正極及びリチウム電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0106】
[正極層:第1不活性部材]
図1を参照すれば、正極層10は、正極集電体11、正極集電体の一面上に配置された正極活物質層12を含む。正極層10の一側面上に第1不活性部材(inactive member)40が配置される。第1不活性部材40は、正極活物質層12及び正極集電体11の一側面上に配置される。
図2を参照すれば、第1不活性部材40は、正極活物質層12の一側面上に配置され、固体電解質層30と固体電解質層30に対向する正極集電体11との間に配置される。正極集電体11の一側面上には、第1不活性部材40が配置されていない。
【0107】
第1不活性部材40を含むことにより、全固体二次電池1の製造時、及び/または充放電時に固体電解質層30のクラックを防止し、結果として全固体二次電池1のサイクル特性が向上する。第1不活性部材40を含まない全固体二次電池1では、全固体二次電池1の製造時、及び/または充放電時に正極層10と接触する固体電解質層30に不均一な圧力が加えられることにより、固体電解質層30にクラックが発生し、これを介したリチウム金属の成長による短絡の発生可能性が高くなる。
【0108】
全固体二次電池1において、第1不活性部材40の厚さT2は、正極活物質層12の厚さT1よりも薄いか、正極活物質層12の厚さT1と同一である。全固体二次電池1において、第1不活性部材40の厚さT2は、正極層10の厚さT3と実質的に同一である。第1不活性部材40の厚さT2は、正極層10の厚さT3と同一なので、正極層10と固体電解質層30との間に均一な圧力が加えられ、正極層10と固体電解質層30とが十分に密着され、正極層10と固体電解質層30との界面抵抗が減少する。また、全固体二次電池1の加圧製造過程で固体電解質層30が十分に焼結されることにより、固体電解質層30及びそれを含む全固体二次電池1の内部抵抗が減少する。
【0109】
第1不活性部材40は、正極層10の側面を取り囲み、固体電解質層30と接触する。第1不活性部材40が正極層10の側面を取り囲み、固体電解質層30と接触することにより、正極層10と接触しない固体電解質層30で加圧(press)過程中の圧力差によって発生する固体電解質層30のクラックを効果的に抑制することができる。第1不活性部材40は、正極層10の側面を取り囲み、負極層20、さらに具体的には、第1負極活物質層22と分離される。第1不活性部材40が正極層10の側面を取り囲みつつ固体電解質層30と接触し、負極層20と分離される。したがって、正極層10と第1負極活物質層22が物理的に接触することにより、短絡が発生するか、リチウムの過充電などによる短絡の発生可能性が抑制される。例えば、不活性部材40が正極活物質層12の一側面上に配置されると共に、正極集電体11の一側面上にも配置されることにより、正極集電体11と負極層20との接触による短絡の発生可能性をさらに効果的に抑制する。
【0110】
図1ないし
図5を参照すれば、第1不活性部材40、40a、40bは、正極層10の一側面から固体電解質層30の末端部まで延びる。第1不活性部材40が固体電解質層30の末端部まで延びることにより、固体電解質層30の末端部でのクラックの発生を抑制することができる。固体電解質層30の末端部は、固体電解質層30の側面と接する最外郭部である。第1不活性部材40は、固体電解質層30の側面と接する最外郭部まで延びる。第1不活性部材40は、負極層20、さらに具体的には、第1負極活物質層22と分離される。第1不活性部材40は、固体電解質層30の末端部まで延びるが、負極層20と接触しない。第1不活性部材40は、例えば、正極層10の一側面で固体電解質層30の末端部まで延びる空間を充填する。
【0111】
図1及び
図2を参照すれば、正極層10の一側面から固体電解質層30の末端部まで延びる第1不活性部材40の幅(width)W2は、例えば、正極層10の一側面と前記一側面に対向する他の側面との間の幅(width)W1の1~30%、1~25%、1~20%、1~15%、1~10%、または1~5%である。
図1及び
図2を参照すれば、正極層10の一側面から固体電解質層30の末端部まで延びる第1不活性部材40の幅(width)W2は、例えば、正極層10の一側面と前記一側面に対向する他の側面との間の幅(width)W1の1~30%、3~30%、5~30%、5~20%、5~15%、または5~10%である。第1不活性部材40の幅(width)W2が過度に大きければ、全固体二次電池1のエネルギー密度が減少する。第1不活性部材40の幅(width)W2が過度に小さければ、第1不活性部材40を配置する効果が微々たるものである。
【0112】
正極層10の面積S1 例えば正極活物質層12の面積S1(例えば、全固体二次電池1の積層方向または厚さ方向に対する正極層10の断面積S1、または正極活物質層12の断面積S1)は、正極層10(または正極活物質層12)と接触する固体電解質層30の面積S3(例えば、全固体二次電池1の積層方向または厚さ方向に対する固体電解質層30の断面積S3)に比べて小さい。難燃性不活性部材40が、正極層10(または正極活物質層12)の側面を取り囲み、正極層10と固体電解質層30との面積差を補償する。難燃性不活性部材40の面積S2が正極層10(または正極活物質層12)の面積S1と固体電解質層30の面積S3との差を補償することにより、加圧(press)過程中の圧力差によって発生する固体電解質層30のクラックを効果的に抑制する。例えば、正極層10の面積S1と不活性部材40の面積S2との和は、固体電解質層30の面積S3と同一である。
【0113】
正極層10(または正極活物質層12)の面積S1は、例えば、固体電解質層30の面積S3の100%未満、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、または95%以下である。正極層10(または正極活物質層12)の面積S1は、例えば、固体電解質層30の面積S3の50%~100%未満、50%~99%、55%~98%、60%~97%、70%~96%、80%~95%、または85%~95%である。
【0114】
正極層10(または正極活物質層12)の面積S1が固体電解質層30の面積S3と同一であるか、さらに大きければ、正極層10と第1負極活物質層22との物理的な接触によって短絡が発生するか、リチウムの過充電などによる短絡の発生可能性が増加する。正極層10(または正極活物質層12)の面積S1は、例えば、正極活物質層12の面積と同一である。正極層10の面積S1は、例えば、正極集電体11の面積と同一である。
【0115】
第1不活性部材40の面積S2は、例えば、正極層10(または正極活物質層12)の面積S1の50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、または10%以下である。第1不活性部材40の面積S2は、例えば、正極層10の面積S1の1%~50%、5%~40%、5%~30%、5%~20%、または5%~15%である。
【0116】
正極層10(または正極活物質層12)の面積S1は、負極集電体21の面積S4(例えば、全固体二次電池1の積層方向または厚さ方向に対する負極集電体21の断面積S4)に比べて小さい。正極層10(または正極活物質層12)の面積S1は、例えば、負極集電体21の面積S4の100%未満、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、または95%以下である。正極層10(または正極活物質層12)の面積S1は、例えば、負極集電体21の面積S4の50%~100%未満、50%~99%、55%~98%、60%~97%、70%~96%、80%~95%、または85%~95%である。負極集電体21の面積S4は、例えば、負極層20の面積(例えば、全固体二次電池1の積層方向または厚さ方向に対する負極層20の断面積)と同一である。負極集電体21の面積S4は、例えば、第1負極活物質層22の面積(例えば、全固体二次電池1の積層方向または厚さ方向に対する第1負極活物質層22の断面積)と同一である。
【0117】
本明細書において「同一」である面積、長さ、幅、厚さ及び/または形態は、意図的に面積、長さ、幅、厚さ及び/または形態を互いに異ならせる場合を除き、「実質的に同一」である面積、長さ、幅、厚さ及び/または形態を有する全ての場合を含む。「同一」である面積、長さ、幅及び/または厚さは、比較される対象の面積、長さ、幅及び/または厚さの意図せぬ差が、例えば、1%未満、0.5%未満、または0.1%未満である範囲を含む。
【0118】
第1不活性部材40の厚さは、例えば、第1負極活物質層22の厚さに比べてさらに大きい。第1負極活物質層22の厚さは、例えば、第1不活性部材40の厚さの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、または10%以下である。第1負極活物質層22の厚さは、例えば、第1不活性部材40の厚さの1%~50%、1%~40%、1%~30%、1%~20%、または1%~10%である。
【0119】
負極層20は、負極集電体21及び前記負極集電体21の一面上に配置される第1負極活物質層22を含む。負極集電体21の一面に対向する他面上に、例えば、第1負極活物質層22が不在(free)である。例えば、負極集電体21の一面にのみ第1負極活物質層22が配置され、他面には、第1負極活物質層22が配置されない。
【0120】
第1不活性部材40は、ガスケット(gasket)であってもよい。不活性部材40としてガスケットが使用されることにより、加圧(press)過程中の圧力差によって発生する固体電解質層30のクラックを効果的に抑制することができる。
【0121】
第1不活性部材40は、例えば、単層構造を有する。それと異なって、図示されていないが、第1不活性部材40は、多層構造を有することができる。多層構造を有する第1不活性部材40でそれぞれの層は、互いに異なる組成を有する。多層構造を有する第1不活性部材は、例えば、2層構造、3層構造、4層構造、または5層構造を有する。多層構造を有する第1不活性部材40は、例えば、1層以上の接着層及び1層以上の支持層を含んでもよい。接着層は、例えば、全固体二次電池1の充放電過程で発生する正極層10の体積変化による正極層10と固体電解質層30との離隔などを効果的に防止し、支持層と他層との間に結着力を提供することにより、第1不活性部材40のフィルム強度を向上させる。支持層は、第1不活性部材40に支持力を提供し、加圧過程または充放電過程で固体電解質層30上に加えられる圧力の不均一性を防止し、製造される全固体二次電池1の形態変形を防止する。
【0122】
図3を参照すれば、全固体二次電池1は、正極層10、負極層20、20a、20b及びこれらの間に配置される固体電解質層30、30a、30bを含み、正極層10が正極集電体11及び正極集電体11の両面上に配置される第1正極活物質層12a及び第2正極活物質層12bをそれぞれ含み、固体電解質層30が、第1正極活物質層12aと接触する第1固体電解質層30a、及び第2正極活物質層12bと接触する第2固体電解質層30bをそれぞれ含み、負極層20が、第1固体電解質層30aと接触する第1負極層20a、及び第2固体電解質層30bと接触する第2負極層20bをそれぞれ含み、第1不活性部材40が、互いに対向する第1固体電解質層30a及び第2固体電解質層30bの間で正極層10の側面を取り囲んで配置される。第1不活性部材40は、例えば、第1固体電解質層30aと接触する第1a不活性部材40a、及び第2固体電解質層30bと接触する第1b不活性部材40bを含む。したがって、全固体二次電池1がバイセル(bi-cell)構造を有する。全固体二次電池1がそのようなバイセル(bi-cell)構造を有することにより、正極層10を中心に固体電解質層30と負極層20が互いに対向して対称に配置されるので、全固体二次電池1の製造時に加えられる圧力による構造変形などがさらに効率よく抑制される。したがって、全固体二次電池1の製造過程及び/または充放電過程で固体電解質層30のクラックが抑制され、それによる全固体二次電池1の短絡が防止され、結果として全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。また、複数の正極活物質層12a、12bに対して1つの正極集電体11のみが使用されるので、全固体二次電池1のエネルギー密度が増加する。
【0123】
図1ないし
図5を参照すれば、第1不活性部材40は、例えば、難燃性不活性部材である。難燃性不活性部材が難燃性を提供することにより、全固体二次電池1の熱暴走及び発火の可能性を防止することができる。結果として、全固体二次電池1の安全性をさらに向上させる。難燃性不活性部材が全固体二次電池1内の残留水分を吸収することにより、全固体二次電池1の劣化を防止し、全固体二次電池1の寿命特性が向上する。
【0124】
難燃性不活性部材は、例えば、マトリックス及びフィラーを含む。マトリックスは、例えば、基材及び補強材を含む。マトリックスは、例えば、繊維状基材及び繊維状補強材を含む。マトリックスが基材を含むことにより、弾性を有することができる。したがって、マトリックスが全固体二次電池1の充放電時の体積変化を効果的に収容し、多様な位置に配置することができる。マトリックスが含む基材は、例えば、第1繊維状材料を含む。基材が第1繊維状材料を含むことにより、全固体二次電池1の充放電過程で発生する正極層10の体積変化を効果的に収容し、正極層10の体積変化による第1不活性部材40の変形を効果的に抑制することができる。第1繊維状材料は、例えば、縦横比が5以上、20以上、または50以上の材料である。第1繊維状材料は、例えば、縦横比が5~1000、20~1000、または50~1000である材料である。第1繊維状材料は、例えば、絶縁性材料である。第1繊維状材料が絶縁性材料によって全固体二次電池1の充放電過程で発生するリチウムデンドライトなどによる正極層10と負極層20との短絡を効果的に防止することができる。第1繊維状材料は、例えば、パルプ繊維(pulp fiber)、絶縁性高分子繊維、及びイオン伝導性高分子繊維のうちから選択された1つ以上を含む。マトリックスが補強材を含むことにより、マトリックスの強度が向上する。したがって、マトリックスが全固体二次電池1の充放電時の過度な体積変化を防止し、全固体二次電池の変形を防止することができる。マトリックスが含む補強材は、例えば、第2繊維状材料を含む。補強材が第2繊維状材料を含むことにより、マトリックスの強度をさらに均一に増加させることができる。第2繊維状材料は、例えば、縦横比が3以上、5以上、または10以上の材料である。第1繊維状材料は、例えば、縦横比が3~100、5~100、または10~100である材料である。第2繊維状材料は、例えば、難燃性材料である。第2繊維状材料が難燃性材料によって全固体二次電池1の充放電過程または外部衝撃によって発生する熱暴走による発火を効果的に抑制することができる。第2繊維状材料は、例えば、ガラス繊維(glass fiber)、金属酸化物繊維、セラミック繊維などである。
【0125】
難燃性不活性部材は、マトリックス以外にフィラーを含む。フィラーは、マトリックスの内部に配置されるか、マトリックスの表面に配置されるか、内部及び表面の両方ともに配置することができる。フィラーは、例えば、無機材料である。難燃性不活性部材が含むフィラーは、例えば、水分吸着剤(moisture getter)である。フィラーは、例えば、100℃未満の温度で水分を吸着することにより、全固体二次電池1内に残留する水分を除去して全固体二次電池1の劣化を防止する。また、フィラーは、全固体二次電池1の充放電過程または外部衝撃によって発生する熱暴走によって全固体二次電池1の温度が150℃以上に増加すれば、吸着した水分を放出して全固体二次電池1の発火を効果的に抑制することができる。すなわち、フィラーは、例えば、難燃剤(flame retardant)である。フィラーは、例えば、水分吸着性を有する金属水酸化物である。フィラーが含む金属水酸化物は、例えば、Mg(OH)2、Fe(OH)3、Sb(OH)3、Sn(OH)4、TI(OH)3、Zr(OH)4、Al(OH)3またはそれらの組合わせである。難燃性不活性部材が含むフィラーの含量は、例えば、難燃性不活性部材40の100重量部に対して10~80重量部、20~80重量部、30~80重量部、40~80重量部、50~80重量部、60~80重量部、または65~80重量部である。
【0126】
難燃性不活性部材は、例えば、バインダをさらに含んでもよい。バインダは、例えば、硬化性高分子または非硬化性高分子を含んでもよい。硬化性高分子は、熱及び/または圧力によって硬化される高分子である。硬化性高分子は、例えば、常温で固体である。難燃性不活性部材40は、例えば、熱加圧硬化性フィルム及び/またはその硬化生成物を含む。熱加圧硬化性高分子は、例えば、Toray社のTSA-66である。
【0127】
難燃性不活性部材は、上述した基材、補強材、フィラー及びバインダ以外に他の材料をさらに含んでもよい。難燃性不活性部材は、例えば、紙(paper)、絶縁性高分子、イオン伝導性高分子、絶縁性無機物、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質のうちから選択された1つ以上をさらに含んでもよい。絶縁性高分子は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのオレフイン系重合体であってもよい。
【0128】
難燃性不活性部材が含む基材の密度または補強材の密度は、例えば、正極活物質層12が含む正極活物質密度の10%~300%、10%~150%、10%~140%、10%~130%、または10%~120%であってもよい。
【0129】
第1不活性部材40は、電気化学的活性を有する物質、例えば、電極活物質(electrode active material)を含まない部材である。電極活物質は、リチウムを吸蔵/放出する物質である。第1不活性部材40は、電極活物質以外の物質であって、当該技術分野で使用する物質からなる部材である。
【0130】
[負極層]
[負極層:負極活物質]
図1ないし
図5を参照すれば、負極層20は、第1負極活物質層22を含む。第1負極活物質層22は、例えば、負極活物質及びバインダを含む。第1負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、リチウムと合金または化合物を形成することができる負極材料である。
【0131】
第1負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、粒子状を有する。粒子状を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、500nm以下、300nm以下、または100nm以下である。粒子状を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、10nm~4μm、10nm~3μm、10nm~2μm、10nm~1μm、10nm~500nm、10nm~300nmまたは10nm~100nmである。負極活物質がそのような範囲の平均粒径を有することにより、充放電時にリチウムの可逆的な吸蔵(absorbing)及び/または放出(desorbing)がさらに容易である。負極活物質の平均粒径は、例えば、レーザ式粒度分布計を使用して測定したメジアン(median)径(D50)である。
【0132】
第1負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、炭素系負極活物質及び金属または半金属負極活物質のうちから選択された1つ以上を含む。
【0133】
炭素系負極活物質は、例えば、非晶質炭素(amorphous carbon)、結晶質炭素(crystalline carbon)、多孔性炭素またはそれらの組合わせを含む。
【0134】
炭素系負極活物質は、特に非晶質炭素(amorphous carbon)である。非晶質炭素は、例えば、カーボンブラック(carbon black)(CB)、アセチレンブラック(acetylene black)(AB)、ファーネスブラック(furnace black)(FB)、ケッチェンブラック(ketjen black)(KB)、グラフェン(graphene)などであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野において非晶質炭素に分類されるものであれば、いずれも使用可能である。非晶質炭素は、結晶性を有していないか、結晶性の非常に低い炭素であって、結晶質炭素または黒鉛系炭素と区分される。
【0135】
炭素系負極活物質は、例えば、多孔性炭素であってもよい。多孔性炭素が含む気孔体積は、例えば、0.1cc/g~10.0cc/g、0.5cc/g~5cc/g、または0.1cc/g~1cc/gである。多孔性炭素が含む平均気孔径は、例えば、1nm~50nm、1nm~30nm、または1nm~10nmである。多孔性炭素のBET比表面積は、例えば、100m2/g~3000m2/gである。多孔質炭素のBET比表面積は、例えばISO 9277:2022に従って測定することができる。
【0136】
金属または半金属負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含むが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野でリチウムと合金または化合物を形成する金属負極活物質または半金属負極活物質として使用するものであれば、いずれも使用可能である。例えば、ニッケル(Ni)は、リチウムと合金を形成しないので、ニッケル(Ni)は、金属負極活物質ではない。
【0137】
第1負極活物質層22は、そのような負極活物質のうち一種の負極活物質を含むか、複数の互いに異なる負極活物質の混合物を含む。例えば、第1負極活物質層22は、非晶質炭素のみを含むか、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含む。それと異なって、第1負極活物質層22は、非晶質炭素と金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上との混合物を含む。非晶質炭素と金などの混合物の混合比は、重量比で、例えば、99:1~1:99、10:1~1:2、5:1~1:1、または4:1~2:1であるが、必ずしもそのような範囲に限定されず、要求される全固体二次電池1の特性によって選択される。負極活物質がそのような組成を有することにより、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0138】
第1負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、非晶質炭素からなる第1粒子、及び金属または半金属からなる第2粒子の混合物を含む。金属または半金属は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)などを含む。または、半金属は、半導体である。第2粒子の含量は、混合物の総重量を基準に1~99重量%、1~60重量%、8~60重量%、10~50重量%、15~40重量%、または20~30重量%である。第2粒子がそのような範囲の含量を有することにより、例えば、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0139】
あるいは、第1負極活物質層22が複合負極活物質を含む。複合負極活物質は、例えば、炭素系支持体及び前記炭素系支持体上に担持された金属系負極活物質を含む。複合負極活物質がそのような構造を有することにより、第1負極活物質層内で金属系負極活物質の偏在化が防止され、均一な分布が得られる。結果として、第1負極活物質層22を含む全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0140】
炭素系支持体上に担持された金属系負極活物質は、例えば、金属、金属酸化物、金属と金属酸化物との複合体、またはそれらの組合わせを含む。金属は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)、テルル(Te)及び亜鉛(Zn)などを含む。金属酸化物は、例えば、金(Au)酸化物、白金(Pt)酸化物、パラジウム(Pd)酸化物、シリコン(Si)酸化物、銀(Ag)酸化物、アルミニウム(Al)酸化物、ビスマス(Bi)酸化物、錫(Sn)酸化物、テルル(Te)酸化物及び亜鉛(Zn)酸化物などを含む。金属酸化物は、例えば、AuxOy(0<x≦2、0<y≦3)、PtxOy(0<x≦1、0<y≦2)、PdxOy(0<x≦1、0<y≦1)、SixOy(0<x≦1、0<y≦2)、AgxOy(0<x≦2、0<y≦1)、AlxOy(0<x≦2、0<y≦3)、BixOy(0<x≦2、0<y≦3)、SnxOy(0<x≦1、0<y≦2)、TexOy(0<x≦1、0<y≦3)、ZnxOy(0<x≦1、0<y≦1)またはそれらの組合わせを含む。金属と金属酸化物との複合体は、例えば、AuとAuxOy(0<x≦2、0<y≦3)との複合体、PtとPtxOy(0<x≦1、0<y≦2)との複合体、PdとPdxOy(0<x≦1、0<y≦1)との複合体、SiとSixOy(0<x≦1、0<y≦2)との複合体、AgとAgxOy(0<x≦2、0<y≦1)との複合体、AlとAlxOy(0<x≦2、0<y≦3)との複合体、BiとBixOy(0<x≦2、0<y≦3)との複合体、SnとSnxOy(0<x≦1、0<y≦2)との複合体、TeとTexOy(0<x≦1、0<y≦3)との複合体、ZnとZnxOy(0<x≦1、0<y≦1)との複合体、またはそれらの組合わせを含む。
【0141】
炭素系支持体は、例えば、非晶質炭素(amorphous carbon)である。非晶質炭素は、例えば、カーボンブラック(carbon black、 CB)、アセチレンブラック(acetylene black、 AB)、ファーネスブラック(furnace black、 FB)、ケッチェンブラック(ketjen black、 KB)、グラフェン(graphene)、活性炭(activated carbon)、炭素ナノ繊維(CNF)、炭素ナノチューブ(CNT)などであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野において非晶質炭素として分類されるものであれば、いずれも使用可能である。非晶質炭素は、結晶性を有しないか、あるいは結晶性が非常に低い炭素であって、結晶性炭素または黒鉛系炭素と区分される。炭素質材料は、例えば、炭素系負極活物質である。
【0142】
複合負極活物質は、例えば、粒子状を有する。粒子状を有する複合負極活物質の粒径は、例えば、10nm~4μm、10nm~1μm、10nm~500nm、10nm~200nm、または10nm~100nmである。複合負極活物質がそのような範囲の粒径を有することにより、充放電時にリチウムの可逆的な吸収(absorbing)及び/または放出(desorbing)がさらに容易である。支持体上に担持された金属系負極活物質は、例えば、粒子状を有することができる。金属系負極活物質の粒径は、例えば、1nm~200nm、1nm~150nm、5nm~100nm、または10nm~50nmであってもよい。炭素系支持体は、例えば、粒子状を有することができる。炭素系支持体の粒径は、例えば、10nm~2μm、10nm~1μm、10nm~500nm、10nm~200nm、または10nm~100nmであってもよい。炭素系支持体がそのような範囲の粒径を有することにより、第1負極活物質層内により均一に配置することができる。炭素系支持体は、例えば、粒径500nm以下のナノ粒子であってもよい。複合負極活物質の粒径、金属系負極活物質の粒径及び炭素系支持体の粒径は、例えば、平均粒径である。平均粒径は、例えば、レーザ式粒度分布計を使用して測定したメジアン(median)直径(D50)である。あるいは、平均粒径は、例えば、電子顕微鏡イメージからソフトウェアを使用して自動的に決定されてもよく、マニュアルによって受動的に決定されてもよい。
【0143】
[負極層:バインダ]
第1負極活物質層22が含むバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野においてバインダとして使用するものであれば、いずれも使用可能である。バインダは、単独または複数の互いに異なるバインダから構成することができる。
【0144】
第1負極活物質層22がバインダを含むことにより、第1負極活物質層22が負極集電体21上に安定化される。また、充放電過程で第1負極活物質層22の体積変化及び/または相対的な位置変更にもかかわらず、第1負極活物質層22のクラックが抑制される。例えば、第1負極活物質層22がバインダを含まない場合、第1負極活物質層22が負極集電体21から容易に分離することができる。負極集電体21から第1負極活物質層22が離脱することにより、負極集電体21が露出された部分で、負極集電体21が固体電解質層30と接触することにより、短絡の発生可能性が増加する。第1負極活物質層22は、例えば、第1負極活物質層22を構成する材料が分散されたスラリーを負極集電体21上に塗布し、乾燥して作製される。バインダを第1負極活物質層22に含めることにより、スラリー中に負極活物質の安定した分散が可能である。例えば、スクリーン印刷法でスラリーを負極集電体21上に塗布する場合、スクリーンの目詰まり(例えば、負極活物質の凝集体による目詰まり)を抑制することができる。
【0145】
[負極層:その他添加剤]
第1負極活物質層22は、従来の全固体二次電池1に使用される添加剤、例えば、フィラー、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などをさらに含むことができる。
【0146】
[負極層:固体電解質]
第1負極活物質層22が固体電解質をさらに含んでもよい。固体電解質は、例えば、固体電解質層30に含まれた固体電解質のうちから選択された材料であってもよい。第1負極活物質層22に含まれる固体電解質は、第1負極活物質層22内でリチウム金属の形成が始まる反応地点として作用するか、形成されたリチウム金属が保存される空間として作用するか、リチウムイオンを伝達する経路として作用する。固体電解質は、省略可能である。
【0147】
第1負極活物質層22において、固体電解質の含量が、例えば、固体電解質層30に隣接した領域で高く、負極集電体21に隣接した領域で低い。第1負極活物質層22で固体電解質が、例えば、固体電解質層30に隣接した領域から負極集電体21に隣接した領域まで濃度が減少する濃度勾配を有することができる。
【0148】
[負極層:第1負極活物質層]
第1負極活物質層22の初期充電容量(B)と正極活物質層の初期充電容量(A)との比率(B/A)が0.005~0.45である。正極活物質層12の初期充電容量は、第1開放回路電圧(1st open circuit voltage)から、 Li/Li+に対して最大充電電圧(maximum charging voltage)までの充電によって決定される。第1負極活物質層22の初期充電容量は、第2開放回路電圧(2nd open circuit voltage)から、 Li/Li+に対して0.01Vまでの充電によって決定される。
【0149】
最大充電電圧は、正極活物質の種類によって決定される。最大充電電圧は、例えば、1.5V、2.0V、2.5V、3.0V、3.5V、4.0V、4.2V、または4.3Vであってもよい。例えば、Li2Sまたは、Li2S含有複合体の最大充電電圧は、 Li/Li+に対して2.5Vであってもよい。例えば、Li2SまたはLi2S含有複合体の最大充電電圧は、 Li/Li+に対して3.0Vであってもよい。第1負極活物質層22の初期充電容量(B)と正極活物質層の初期充電容量(A)との比率(B/A)は、例えば、0.01~0.3、0.01~0.2または0.05~0.1である。
【0150】
正極活物質層12の初期充電容量(mAh)は、正極活物質の充電容量密度(charge specific capacity)(mAh/g)に正極活物質層12のうち、正極活物質の質量(g)を乗算して得られる。正極活物質が複数種使用される場合、正極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、その値の総和が正極活物質層12の初期充電容量である。第1負極活物質層22の初期充電容量も同様の方法で計算される。第1負極活物質層22の初期充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に第1負極活物質層22のうち、負極活物質の質量を乗算して得られる。負極活物質が複数種使用される場合、負極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、その値の総和が第1負極活物質層22の初期充電容量である。正極活物質及び負極活物質それぞれの充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体半電池(half-cell)を用いて測定することができる。正極活物質層12と第1負極活物質層22それぞれの初期充電容量が一定の電流密度、例えば、0.1mA/cm2で全固体半電池(half-cell)を利用して直接測定することができる。正極に対して、前記測定は、第1開放回路電圧(OCV)から最大充電電圧、例えば、3.0V(vs. Li/Li+)までの作動電圧(operating voltage)に対して遂行することができる。負極に対して、前記測定は、第2開放回路電圧(OCV)から負極、例えば、リチウム金属に対して0.01Vまでの作動電圧に対して遂行することができる。例えば、正極活物質層を有する全固体半電池は、第1開放回路電圧から3.0Vまで0.1mA/cm2の定電流で充電され、第1負極活物質層を有する全固体半電池は、第2開放回路電圧から0.01Vまで0.1mA/cm2の定電流で充電することができる。定電流充電時の電流密度は、例えば、0.2mA/cm2、または0.5mA/cm2であってもよい。正極活物質層を有する全固体半電池は、例えば、第1開放電圧から2.5V、3.0V、3.5V、または4.0Vまで充電することができる。正極活物質層の最大充電電圧は、日本標準協会のJISC8712:2015による安全条件を満足する電池の最大電圧によって決定することができる。
【0151】
第1負極活物質層22の初期充電容量が過度に小さければ、第1負極活物質層22の厚さが非常に薄くなり、繰り返される充放電過程で第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが第1負極活物質層22を崩壊させて全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22の充電容量が過度に増加すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22による全固体二次電池1の内部抵抗が増加し、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0152】
第1負極活物質層22の厚さは、例えば、正極活物質層12の厚さの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下である。第1負極活物質層22の厚さは、例えば、正極活物質層12の厚さの1~50%、1~40%、1~30%、1~20%、1~10%、または1~5%である。第1負極活物質層22の厚さは、例えば、1μm~20μm、2μm~15μm、または3μm~10μmである。第1負極活物質層22の厚さが過度に薄ければ、第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが第1負極活物質層22を崩壊させ、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22の厚さが過度に増加すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22による全固体二次電池1の内部抵抗が増加し、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22の厚さが減少すれば、例えば、第1負極活物質層22の初期充電容量も減少する。
【0153】
[負極層:第2負極活物質層]
図示されていないが、全固体二次電池1は、充電後、例えば、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置される第2負極活物質層をさらに含む。第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。金属層は、リチウムまたはリチウム合金を含む。したがって、第2負極活物質層は、リチウムを含む金属層なので、例えば、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などであるが、それらに限定されず、当該技術分野においてリチウム合金として使用するものであれば、いずれも使用可能である。第2負極活物質層は、そのような合金のうち1つまたはリチウムからなるか、複数種の合金からなる。第2負極活物質層は、例えば、析出層(plated layer)である。第2負極活物質層は、例えば、全固体二次電池1の充電過程で第1負極活物質層22と負極集電体21との間に析出される。
【0154】
第2負極活物質層の厚さは、特に制限されないが、例えば、1μm~500μm、1μm~200μm、1μm~150μm、1μm~100μm、または1μm~50μmである。第2負極活物質層の厚さが過度に薄ければ、第2負極活物質層によるリチウム貯蔵庫(reservoir)の役割を遂行することが難しくなる。第2負極活物質層の厚さが過度に厚ければ、全固体二次電池1の質量及び体積が増加し、むしろ全固体二次電池1のサイクル特性の低下可能性がある。
【0155】
また、全固体二次電池1において第2負極活物質層は、例えば、全固体二次電池1の組立前に負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置することができる。全固体二次電池1の組立前に負極集電体21と第1負極活物質層22との間に第2負極活物質層が配置される場合、第2負極活物質層がリチウムを含む金属層なので、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。例えば、全固体二次電池1の組立前に負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウムホイルが配置することができる。
【0156】
全固体二次電池1の組立後に充電によって第2負極活物質層が析出される場合、全固体二次電池1の組立時に第2負極活物質層を含まないので、全固体二次電池1のエネルギー密度が増加する。全固体二次電池1の充電時、第1負極活物質層22の充電容量を超過して充電する。すなわち、第1負極活物質層22を過充電する。充電初期には、第1負極活物質層22にリチウムが吸蔵される。第1負極活物質層22が含む負極活物質は、正極層10から移動してきたリチウムイオンと合金または化合物を形成する。第1負極活物質層22の容量を超過して充電すれば、例えば、第1負極活物質層22の背面、すなわち、負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウムが析出され、析出されたリチウムによって第2負極活物質層に該当する金属層が形成される。第2負極活物質層は、主にリチウム(すなわち、金属リチウム)で構成される金属層である。そのような結果は、例えば、第1負極活物質層22に含まれる負極活物質がリチウムと合金または化合物を形成する物質を含むことで得られる。放電時には、第1負極活物質層22及び第2負極活物質層、すなわち、金属層のリチウムがイオン化されて正極層10方向に移動する。したがって、全固体二次電池1においてリチウムを負極活物質として使用可能である。また、第1負極活物質層22が第2負極活物質層を被覆するので、第2負極活物質層、すなわち、金属層の保護層の役割を行うと共に、リチウムデンドライト(dendrite)の析出成長を抑制する役割を遂行する。したがって、全固体二次電池1の短絡及び容量低下を抑制し、結果として、全固体二次電池1のサイクル特性を向上させる。また、全固体二次電池1の組立後、充電によって第2負極活物質層が配置される場合、負極層20、すなわち、負極集電体21と第1負極活物質層22、及びそれらの間の領域は、全固体二次電池1の初期状態または完全放電後状態でリチウム(Li)を含まないLiフリー(free)領域である。
【0157】
[負極層:負極集電体]
負極集電体21、21a、21bは、例えば、リチウムと反応しない、すなわち、リチウムと合金及び化合物をいずれも形成しない材料からなる。負極集電体21を構成する材料は、例えば、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)などであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野で電極集電体として使用するものであれば、いずれも使用可能である。負極集電体21は、上述した金属のうち1種からなるか、2種以上の金属の合金または被覆材料から構成することができる。負極集電体21は、例えば、板状または箔状(foil)である。
【0158】
全固体二次電池1は、例えば、図示されていないが、負極集電体21の一面上にリチウムと合金を形成する元素を含む薄膜(thin film)をさらに含んでもよい。薄膜は、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置される。薄膜は、例えば、リチウムと合金を形成する元素を含む。リチウムと合金を形成する元素は、例えば、金、銀、亜鉛、錫、インジウム、ケイ素、アルミニウム、ビスマスなどであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野でリチウムと合金を形成する元素であれば、いずれも使用可能である。薄膜は、それらの金属のうち1つからなるか、複数種の金属の合金からなる。薄膜が負極集電体21の一面上に配置されることにより、例えば、薄膜24と第1負極活物質層22との間に析出される第2負極活物質層の析出形態がさらに平坦化され、全固体二次電池1のサイクル特性をさらに向上することができる。
【0159】
薄膜の厚さは、例えば、1nm~800nm、10nm~700nm、50nm~600nm、または100nm~500nmである。薄膜の厚さが1nm未満になる場合、薄膜による機能を発揮することが難しい。薄膜の厚さが過度に厚ければ、薄膜自体がリチウムを吸蔵し、負極でリチウムの析出量が減少し、全固体電池のエネルギー密度が低下し、全固体二次電池1のサイクル特性が低下する可能性がある。薄膜は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などによって負極集電体21上に配置することができるが、必ずしもそのような方法に限定されず、当該技術分野で薄膜を形成する方法であれば、いずれも使用可能である。
【0160】
図示していないが、負極集電体21は、例えば、ベースフィルム及び前記ベースフィルムの一面または両面上に配置される金属層を含む。ベースフィルムは、例えば、高分子を含んでもよい。高分子は、例えば、熱可塑性高分子であってもよい。高分子は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)またはそれらの組合わせを含んでもよい。高分子は、絶縁性高分子であってもよい。ベースフィルムが絶縁性熱可塑性高分子を含むことにより、短絡発生時、ベースフィルムが軟化または液化され、電池作動を遮断し、急激な電流増加を抑制することができる。金属層は、例えば、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)またはそれらの合金を含んでもよい。負極集電体21は、金属片及び/またはリードタブをさらに含んでもよい。負極集電体21のベースフィルム、金属層、金属片及びリードタブについてのより具体的な内容は、上述した正極集電体11を参照する。負極集電体21がそのような構造を有することにより、負極の重量を減少させ、結果として、負極及びリチウム電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0161】
[負極層:第2不活性部材]
図6ないし
図9を参照すれば、全固体二次電池1、1a、1bは、負極集電体21、21a、21bの他面上に配置される第2不活性部材50、50a、50b、50cをさらに含む。
【0162】
第2不活性部材50は、導電材をさらに含むことにより、導電性を有するという点で第1不活性部材40と区分される。第2不活性部材50は、例えば、伝導性難燃性不活性部材である。
【0163】
導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェン(Ketjen)ブラック、デンカブラック、炭素繊維、炭素ナノチューブ(CNT)、グラフェン(graphene)、金属繊維、金属粉末などである。第2不活性部材50の25℃電子伝導度は、例えば、第1不活性部材40の25℃電子伝導度の100倍以上、1000倍以上または10000倍以上である。
【0164】
第2不活性部材50は、例えば、マトリックス、フィラー及び導電材を含む。マトリックスは、例えば、基材及び補強材を含む。第2不活性部材50は、フィラー、バインダなどをさらに含んでもよい。第2不活性部材50が含む導電材の含量は、例えば、第2不活性部材50の100重量部に対して1~30重量部、1~20重量部、1~15重量部、1~10重量部、5~40重量部、5~30重量部、または5~35重量部である。
【0165】
第2不活性部材50のヤング率(Young’s modulus)は、例えば、負極集電体21のヤング率に比べてさらに小さい。第2不活性部材50のヤング率(Young’s modulus)は、例えば、負極集電体21のヤング率の50%以下、30%以下、10%以下、5%以下である。第2不活性部材50のヤング率(Young’s modulus)は、例えば、負極集電体21のヤング率の0.01%~50%、0.1%~30%、0.1~10%、1~5%である。第2不活性部材50のヤング率は、例えば、100MPa以下、50MPa以下、30MPa以下、10MPa以下、または5MPa以下である。第2不活性部材50のヤング率は、例えば、0.01~100MPa、0.1~50MPa、0.1~30MPa、0.1~10MPa、または1~5MPaである。第2不活性部材50のヤング率は、DMA(動的機械分析装置)またはUTM(万能試験機)を使用して測定することができる。第2不活性部材50のヤング率は、ASTM D638に従って測定することができる。
【0166】
第2不活性部材50、50a、50bが伝導性を有するので、負極集電体21としての役割を遂行することができる。また、第2不活性部材50、50a、50bが負極集電体21に比べて低いヤング率を有するので、全固体二次電池1の充放電時に負極層20の体積変化をさらに効果的に収容することができる。結果として、第2不活性部材50、50a、50bが全固体二次電池1の充放電時の全固体二次電池1の体積変化による内部応力を効果的に緩和し、全固体二次電池1のサイクル特性を向上させることができる。
【0167】
第2不活性部材50の厚さは、例えば、第1負極活物質層22の厚さに比べてさらに大きい。第2不活性部材50が第1負極活物質層22に比べてさらに大きい厚さを有することにより、充放電時の負極層20の体積変化をさらに効果的に収容することができる。第1負極活物質層22の厚さが第2不活性部材50の厚さの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、または10%以下である。第1負極活物質層22の厚さは、例えば、第2不活性部材50の厚さの1%~50%、1%~40%、1%~30%、1%~20%、または1%~10%である。第2不活性部材50の厚さは、例えば、1μm~300μm、10μm~300μm、50μm~300μm、または100μm~200μmである。第2不活性部材50の厚さが過度に薄ければ、意図した効果を提供することが難しく、第2不活性部材50の厚さが過度に厚ければ、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下する可能性がある。第2不活性部材50の形態は、特に限定されず、全固体二次電池1の形態によって選択することができる。第2不活性部材50は、例えば、シート状、棒状、ガスケット状であってもよい。
【0168】
第2不活性部材50は、例えば、1つの全固体二次電池1の一面または両面上に配置することができる。第2不活性部材50は、例えば、積層された複数の全固体二次電池1の間に配置することができる。第2不活性部材50は、例えば、積層された複数の全固体二次電池1のそれぞれの間、最上面及び/または最下面に配置することができる。
【0169】
全固体二次電池1の充電後の体積に対する全固体二次電池1の充電前の体積比、体積膨張率は、例えば、15%以下、10%以下、5%以下であってもよい。 充電前の全固体二次電池1の体積は、化成工程前に25℃で全固体電池の厚さを測定することにより測定することができる。また、化成工程において、第1充電工程を終了した後、25℃で全固体電池の厚さを測定することにより、充電後の全固体二次電池1の体積を測定することができる。
【0170】
全固体二次電池1の充電時の負極層20の体積増加が正極層10の体積減少によって相殺され、第2不活性部材50が負極層20の体積変化を収容することにより、充電前後の全固体二次電池1の体積変化が緩和される。
【0171】
全固体二次電池1の単位体積当たりのエネルギー密度は、例えば、500~900Wh/L、500~800Wh/L、または500~700Wh/Lであってもよい。全固体二次電池1の単位重量当たりのエネルギー密度は、例えば、350~600Wh/g、350~580Wh/g、350~570Wh/g、または350~550Wh/gであってもよい。全固体二次電池1がそのような範囲のエネルギー密度を有することにより、従来の二次電池に比べて向上したエネルギー密度を提供することができる。
【0172】
[固体電解質層]
[固体電解質層:固体電解質]
図1ないし
図5を参照すれば、固体電解質層30(30a,30b)は、正極層10及び負極層20の間に配置された電解質を含む。電解質は、例えば、固体電解質、ゲル電解質またはそれらの組合わせを含んでもよい。
【0173】
固体電解質は、例えば、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、高分子固体電解質、またはそれらの組合わせを含むことができる。
【0174】
固体電解質は、例えば、硫化物系固体電解質である。硫化物系固体電解質は、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiX(Xは、ハロゲン元素)、Li2SP2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn(m、nは、正の数、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち1つ)、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LipMOq(p、qは、正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのうち1つ)、Li7-xPS6-xClx(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBrx(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-xIx(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上である。硫化物系固体電解質は、例えば、Li2S、P2S5などの出発原料を溶融急冷法や機械的ミーリング(mechanical milling)法などによって処理して作製される。また、そのような処理後、熱処理を遂行することができる。固体電解質は、非晶質、結晶質、またはそれらが混合された状態であってもよい。また、固体電解質は、例えば、上述した硫化物系固体電解質材料のうち少なくとも構成元素として、硫黄(S)、リン(P)及びリチウム(Li)を含むことができる。例えば、固体電解質は、Li2S-P2S5を含む材料であってもよい。固体電解質を形成する硫化物系固体電解質材料としてLi2S-P2S5を含むものを利用する場合、Li2S とP2S5との混合モル比は、例えば、Li2S:P2S5=20:80~90:10、25:75~90:10、30:70~70:30、40:60~60:40程度の範囲である。
【0175】
硫化物系固体電解質は、例えば、下記化学式1で表示されるアルジロダイト型(Argyrodite type)固体電解質を含むことができる。
【0176】
【0177】
前記式において、Aは、P、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、NbまたはTaであり、Xは、S、SeまたはTeであり、Yは、Cl、Br、I、F、CN、OCN、SCN、またはN3であり、1≦n≦5、0≦x≦2である。硫化物系固体電解質は、例えば、Li7-xPS6-xClx(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBrx(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-xIx(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型の化合物であってもよい。硫化物系固体電解質は、例えば、Li6PS5Cl、Li6PS5Br及びLi6PS5Iのうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型化合物であってもよい。
【0178】
アルジロダイト型の固体電解質の密度が1.5~2.0g/ccであってもよい。アルジロダイト型の固体電解質が1.5g/cc以上の密度を有することにより、全固体二次電池の内部抵抗が減少し、Liによる固体電解質層の貫通(penetration)を効果的に抑制することができる。
【0179】
酸化物系固体電解質は、例えば、Li1+x+yAlxTi2-xSiyP3-yO12(0<x<2、0≦y<3)、BaTiO3、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT)(0≦x<1、0≦y<1)、Pb(Mg3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、HfO2、SrTiO3、SnO2、CeO2、Na2O、MgO、NiO、CaO、BaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、Al2O3、TiO2、SiO2、Li3PO4、LixTiy(PO4)3(0<x<2、0<y<3)、LixAlyTiz(PO4)3(0<x<2、0<y<1、0<z<3)、Li1+x+y(Al、Ga)x(Ti、Ge)2-xSiyP3-yO12(0≦x≦1 0≦y≦1)、LixLayTiO3(0<x<2、0<y<3)、Li2O、LiOH、Li2CO3、LiAlO2、Li2O-Al2O3-SiO2-P2O5-TiO2-GeO2、Li3+xLa3M2O12(M=Te、Nb、またはZr、0≦x≦10)、またはそれらの組合わせであってもよい。酸化物系固体電解質は、例えば、焼結法などによって作製される。
【0180】
酸化物系固体電解質は、例えば、Li7La3Zr2O12(LLZO)及びLi3+xLa3Zr2-aMaO12(M doped LLZO、M=Ga、W、Nb、Ta、またはAl、0<a<2、0≦x≦10)のうちから選択されたガーネット系(Garnet-type)固体電解質である。
【0181】
高分子固体電解質は、例えば、リチウム塩と高分子との混合物を含んでもよく、イオン伝導性作用基を有する高分子を含んでもよい。高分子固体電解質は、例えば、25℃及び1atmで固体状態である高分子電解質であってもよい。高分子固体電解質は、例えば、液体を含まないのである。高分子固体電解質が高分子を含み、前記高分子は、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(スチレン-b-エチレンオキシド)ブロック共重合体(PS-PEO)、ポリ(スチレン-ブタジエン)、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)、ポリ(スチレン-b-ジビニルベンゼン)ブロック共重合体、ポリ(スチレン-エチレンオキシド-スチレン)ブロック共重合体、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリピロール(PPY)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアニリン、ポリアセチレン、ナフィオン(Nafion)、アクイビオン(Aquivion)、フレミオン(Flemion)、ゴア(Gore)、アシプレックス(Aciplex)、モルガンADP(Morgane ADP)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)(SPEEK)、スルホン化ポリ(アリーレンエーテルケトンケトンスルホン)(SPAEKKS)、スルホン化ポリ(アリールエーテルケトン)(SPAEK)、ポリ[ビス(ベンズイミダゾベンズイソキノリノン)](SPBIBI)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、リチウム9,10-ジフェニルアントラセン-2-スルホナート(DPASLi+)またはそれらの組合わせであってもよいが、それらに限定されず、当該技術分野において高分子電解質として使用するものであれば、いずれも使用可能である。リチウム塩は、当該技術分野においてリチウム塩として使用するものであれば、いずれも使用可能である。リチウム塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiC4F9SO3、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(x及びyは、それぞれ1~20である)、LiCl、LiIまたはそれらの混合物などである。高分子固体電解質に含まれる高分子は、例えば、反復単位を10個以上、20個以上、50個以上、または100個以上含む化合物であってもよい。高分子固体電解質に含まれる高分子の重量平均分子量は、例えば、1000Dalton以上、10,000Dalton以上、100,000Dalton以上、または1,000,000Dalton以上であってもよい。
【0182】
ゲル電解質は、例えば、高分子ゲル(gel)電解質を含む。ゲル電解質は、例えば、高分子を含まず、かつゲル状態を有することができる。
【0183】
高分子ゲル電解質は、例えば、液体電解質と高分子とを含んでもよく、有機溶媒とイオン伝導性作用基を有する高分子とを含んでもよい。高分子ゲル電解質は、例えば、25℃及び1atmでゲル状態である高分子電解質であってもよい。高分子ゲル電解質は、例えば、液体を含まず、かつゲル状態を有することができる。高分子ゲル電解質に使用される液体電解質は、例えば、イオン性液体、リチウム塩と有機溶媒との混合物、リチウム塩と有機溶媒との混合物、イオン性液体と有機溶媒との混合物、またはリチウム塩とイオン性液体と有機溶媒との混合物であってもよい。高分子ゲル電解質に使用される高分子は、固体高分子電解質に使用される高分子のうちから選択することができる。有機溶媒は、液体電解質に使用される有機溶媒のうちから選択することができる。リチウム塩は、高分子固体電解質に使用されるリチウム塩のうちから選択することができる。イオン性液体は、常温以下の融点を有しており、イオンのみから構成され、常温で液体状態の塩または常温溶融塩をいう。イオン性液体は、例えば、a)アンモニウム系、ピロリジニウム系、ピリジニウム系、ピリミジニウム系、イミダゾリウム系、ピペリジニウム系、ピラゾリウム系、オキサゾリウム系、ピリダジニウム系、ホスホニウム系、スルホニウム系、トリアゾリウム系及びその混合物のうちから選択された1以上の陽イオンと、b) BF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、AlCl4
-、HSO4
-、ClO4
-、CH3SO3
-、CF3CO2
-、Cl-、Br-、I-、SO4
-、CF3SO3
-、(FSO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(C2F5SO2)(CF3SO2)N-、及び(CF3SO2)2Nのうちから選択された1以上の陰イオンとを含む化合物のうちから選択された1以上を含んでもよい。高分子固体電解質は、例えば、二次電池内で液体電解質に含浸されることにより、高分子ゲル電解質を形成することができる。高分子ゲル電解質は、無機粒子をさらに含んでもよい。高分子ゲル電解質に含まれる高分子は、例えば、反復単位を10個以上、20個以上、50個以上、または100個以上含む化合物であってもよい。高分子ゲル電解質に含まれる高分子の重量平均分子量は、例えば、500Dalton以上、1000Dalton以上、10,000Dalton以上、100,000Dalton以上、または1,000,000Dalton以上であってもよい。
【0184】
固体電解質層30は、リチウムポリスルフィド(lithium polysulfide)に対して不浸透性(impermeable)であってもよい。
したがって、硫化物系正極活物質の充放電時に生成されるリチウムポリスルフィドと負極層との副反応を遮断することができる。したがって、固体電解質層30を含む全固体二次電池1のサイクル特性を向上することができる。
【0185】
[固体電解質層:バインダ]
固体電解質層30は、例えば、バインダを含んでもよい。固体電解質層30に含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)などであるが、それらに限定されず、当該技術分野においてバインダとして使用するものであれば、いずれも使用可能である。固体電解質層30のバインダは、正極活物質層12と第1負極活物質層22が含むバインダと同一でも、異なってもいる。バインダは、省略可能である。
【0186】
固体電解質層30が含むバインダ含量は、固体電解質層30の総重量に対して0.1~10wt%、0.1~5wt%、0.1~3wt%、0.1~1wt%、0~0.5wt%、または0~0.1wt%である。
【実施例0187】
以下、実施例及び比較例を通じて本創意的思想をさらに具体的に説明する。但し、実施例は、本創意的思想を例示するためのものであって、これらによって本発明の思想の範囲が限定されるものではない。
【0188】
製造例1:Li
2
S-LiI-AlI
3
-CNF複合体
(第1段階)
LiIとAlI3の1:1モル比で混合して第1混合物を準備した。
【0189】
Li2Sと第1混合物とを40:20の重量比で混合して第2混合物を準備した。第2混合物をボールミルを使用して機械的にミーリングしてLi2S-LiI-AlI3複合体を製造した。ミーリング条件は、25℃、600rpmで10時間であった。ミーリング時に試料に加えられるミーリングエネルギーは、28Gであった。
【0190】
(第2段階)
Li2S-LiI-AlI3複合体と炭素ナノファイバ(CNF)を60:10の重量比で混合して第3混合物を準備した。第3混合物をボールミルを使用して機械的にミーリングしてLi2S-LiI-AlI3-CNF複合体を製造した。ミーリング条件は、25℃、600rpmで10時間であった。ミーリング時に試料に加えられるミーリングエネルギーは、28Gであった。Li2S-LiI-AlI3-CNF複合体を硫化物系正極活物質として使用した。
【0191】
参考製造例1:Li
2
SとLiIとAlI
3
とCNFとの混合物
LiIとAlI3の1:1モル比で混合して第1混合物を準備した。
【0192】
Li2Sと第1混合物を40:20の重量比で混合し、そのようなLi2SとLiIとAlI3の混合物と炭素ナノファイバ(CNF)を60:10の重量比で追加混合して硫化物系正極活物質として使用した。
【0193】
実施例1:モノセル(mono-cell)全固体二次電池、硫化物系正極活物質(Li2S-CNF複合体)、難燃性第1不活性部材(member)
(負極層の製造)
負極集電体として厚さ10μmのSUS箔を準備した。また、負極活物質として、一次粒径が30nm程度であるカーボンブラック(CB)及び平均粒子直径が約60nmである銀(Ag)粒子を準備した。
【0194】
カーボンブラック(CB)と銀(Ag)粒子を3:1の重量比で混合した混合粉末4gを容器に入れ、そこにPVDFバインダ(クレハ社の#9300)が7重量%含まれたNMP溶液4gを追加して混合溶液を準備した。次いで、該混合溶液にNMPを少しずつ添加しながら混合溶液を撹拌してスラリーを製造した。製造されたスラリーをSUSシートにバーコータ(bar coater)を利用して塗布し、空気中、80℃で10分間乾燥させた。これによって得られた積層体を40℃で10時間真空乾燥した。乾燥した積層体を5ton・f/cm2の圧力で5m/secの速度で冷間ロールプレス(cold roll press)して積層体の第1負極活物質層表面を平坦化させた。以上の工程によって負極層を作製した。負極層が含む第1負極活物質層の厚さは、約15μmであった。第1負極活物質層と負極集電体の面積は、同一であった。負極の初期充電容量は、上述した半電池(half-cell)によって測定した。第1負極活物質層の初期充填容量は2.3mAhであった。
【0195】
(正極層の製造)
正極活物質としてLi2S-CNF複合体を準備した。Li2S-CNF複合体は、VGCF(vapor grown carbon fiber)をCNF(carbon nanofiber)に変更したことを除いては、Electrochimica Acta 230 (2017) 279-284に開示された方法によって製造した。固体電解質としてアルジロダイト型結晶体であるLi6PS5Clを(D50=3.0μm、結晶質)準備した。導電剤としてケッチェンブラック(Ketjen black)を準備した。そのような材料を正極活物質:固体電解質:導電剤=40:50:10の重量比で混合して正極合剤を準備した。正極合剤は、ボールミルを使用して乾式混合することで得られた。ボールミリングによって得られる正極合剤は、イオン伝導性及び電子伝導性ネットワークを形成した。
【0196】
正極合剤を一面にカーボンコーティングされたアルミニウム箔あるいはSUSからなる正極集電体の一面上に配置し、200MPaの圧力で10分間平板プレス(plate press)して正極層を製造した。正極層の厚さは、約120μmであった。正極活物質層の厚さは、約100μmであり、カーボンコーティングされたアルミニウム箔の厚さは、約20μmであった。正極活物質層と正極集電体の面積は、同一であった。
【0197】
正極の初期充電容量は、上述した半電池(half-cell)によって測定した。正極活物質層の初期充填容量は25mAhであった。
【0198】
実施例1で第1負極活物質層の初期充電容量(B)と前記正極活物質層の初期充電容量(A)との比率(B/A)が0.09である。正極活物質層の初期充電容量は、第1開放回路電圧から、 Li/Li+に対して2.8Vまでの充電によって決定された。第1負極活物質層の初期充電容量は、第2開放回路電圧から、 Li/Li+に対して0.01Vまでの充電によって決定された。実施例2~8及び比較例1において、実施例1と同じ条件で測定した、第1負極活物質層の初期充電容量(B)と前記正極活物質層の初期充電容量(A)との比率(B/A)はそれぞれ0.07~0.09であった。実施例7および8では両面正極を用いたので、正極初期充填容量の半分を上記比(B/A)計算に用いた。
【0199】
(固体電解質層の製造)
アルジロダイト型結晶体であるLi6PS5Cl固体電解質(D50=3.0(m、結晶質)に、固体電解質の98.5重量部に対して1.5重量部のアクリル系バインダを追加して混合物を作製した。設けられた混合物にオクチルアセテート(octyl acetate)を添加しながら撹拌してスラリーを製造した。製造されたスラリーを75μm厚さのPET基材上に載置されている15μm厚さの不織布上にバーコータ(bar coater)を利用して塗布し、空気中、80℃温度で10分間乾燥させて積層体を得た。得られた積層体を80℃で2時間真空乾燥した。以上の工程によって固体電解質層を製造した。
【0200】
(難燃性不活性部材)
パルプ繊維(cellulose fiber)、ガラス繊維(glass fiber)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、アクリル系バインダ及び溶媒を混合したスラリーをガスケット状に成形した後、溶媒を除去して難燃性不活性部材を製造した。
【0201】
パルプ繊維(cellulose fiber)、ガラス繊維(glass fiber)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、アクリル系バインダの重量比は、20:8:70:2であった。不活性部材の厚さは、120μmであった。
【0202】
製造された難燃性不活性部材を固体電解質層上に配置する前に、80℃で5時間、真空熱処理して難燃性不活性部材の水分などを除去した。
【0203】
(全固体二次電池の製造)
図1を参照すれば、負極層上に第1負極活物質層が固体電解質層と接触するように固体電解質層を配置し、固体電解質層上に正極層を配置した。正極層周囲に正極層を取り囲み、固体電解質層と接触するガスケットを配置して積層体を作製した。ガスケットの厚さは、約120μmであった。ガスケットとして難燃性不活性部材を使用した。ガスケットが正極層の側面及び固体電解質層と接触するように配置された。正極層は、固体電解質層の中心部に配置され、ガスケットが正極層を取り囲み、固体電解質層の末端部まで延びて配置された。正極層の面積は、固体電解質層面積の約90%であり、正極層が配置されていない固体電解質層の残り10%の面積全体にガスケットが配置された。
【0204】
準備された積層体を85℃で500MPaの圧力で30分間平板加圧(plate press)処理した。そのような加圧処理によって固体電解質層が焼結されて電池特性が向上する。焼結された固体電解質層の厚さは、約45μmであった。焼結された固体電解質層が含むアルジロダイト型結晶体であるLi6PS5Cl固体電解質の密度は、1.6g/ccであった。固体電解質層の面積は、負極層の面積と同一であった。
【0205】
加圧された積層体をパウチに入れて真空密封して全固体二次電池を製造した。正極集電体と負極集電体の一部を密封された電池外部に延出して正極層端子及び負極層端子として使用した。
【0206】
実施例2:硫化物系正極活物質(Li
2
S-CNF複合体)、難燃性第1不活性部材、伝導性難燃性第2不活性部材
加圧された積層体をパウチに入れる前に、加圧された積層体の負極集電体上に積層体と同一面積及び形態を有するシート状の伝導性難燃性部材を追加的に配置し、真空密封して全固体二次電池を製造したことを除いては、実施例1と同様の方法で全固体二次電池を製造した。伝導性難燃性不活性部材シートは、下記方法で準備した。
【0207】
伝導性難燃性不活性部材シートは、弾性シートとして作用することができる。
【0208】
(伝導性難燃性不活性部材)
パルプ繊維(cellulose fiber)、ガラス繊維(glass fiber)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、アクリル系バインダ、導電材(Denka Black)及び溶媒を混合したスラリーをシート状に成形した後、乾燥させて難燃性不活性部材を製造した。パルプ繊維(cellulose fiber)、ガラス繊維(glass fiber)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、アクリル系バインダ、及び導電材の重量比は、20:8:50:2:20であった。伝導性難燃性不活性部材の厚さは、120μmであった。製造された伝導性難燃性不活性部材は、負極集電体上に配置する前に、80℃で5時間、真空熱処理して伝導性難燃性不活性部材の水分などを除去した。
【0209】
実施例3:硫化物系正極活物質(Li
2
S-CNF複合体)、非難燃性第1不活性部材
難燃性不活性部材を非難燃性不活性部材に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で全固体二次電池を製造した。
【0210】
非難燃性不活性部材は、パルプ繊維及びアクリル系バインダを98:2の重量比で含み、ガラス繊維及びAl(OH)3を含まない。非難燃性不活性部材の厚さは、120μmであった。
【0211】
実施例4:硫化物系正極活物質(Li
2
S-C-Li6PS5Cl複合体)、難燃性第1不活性部材
正極活物質としてLi2S-VGCF複合体の代わりに、Li2S-C-Li6PS5Cl複合体を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で全固体二次電池を製造した。
【0212】
Li2S-C-Li6PS5Cl複合体は、Nano Lett. 2016、16、7、4521-4527に開示された方法によって製造した。
【0213】
実施例5:硫化物系正極活物質(Li
2
S-C複合体)、第1負極活物質層(Ag担持カーボン)、難燃性第1不活性部材、伝導性難燃性第2不活性部材
負極活物質としてカーボンブラックとシルバー粒子との混合物の代わりに、下記のシルバー粒子担持のカーボンブラックを使用したことを除いては、実施例2と同様の方法で全固体二次電池を製造した。
【0214】
(シルバー粒子担持のカーボンブラックの製造)
カーボンブラックを硫酸1.0M溶液に分散させた後、2時間撹拌した後、濾過及び乾燥させ、酸処理されたカーボンブラックを準備した。
【0215】
蒸留水1500g、エタノール1500g及びグリセロール30gの混合溶媒に、酸処理されたカーボンブラック10gを投入して撹拌した後、AgNO3 2gを投入して撹拌し、混合溶液を準備した。カーボンブラックの粒径は、80nmであった。混合溶液に還元剤を投入し、シルバーイオンをカーボンブラック上に還元させて担持した。シルバー含有粒子が担持されたカーボンブラックを濾過、洗浄及び乾燥し、複合負極活物質を準備した。走査電子顕微鏡及びXPS測定結果、カーボンブラック粒子上に複数のシルバー含有粒子が担持されることを確認した。シルバー含有粒子は、シルバー粒子、酸化銀(Ag2O)粒子、及びシルバー(Ag)と酸化銀(Ag2O)との複合体粒子であった。複合負極活物質が含むシルバー含有粒子の含量は、5wt%であった。シルバー粒子の平均粒径は、10nmであった。
【0216】
実施例6:硫化物系正極活物質(Li
2
S-CNF-LiI複合体)、難燃性第1不活性部材
正極活物質としてLi2S-CNF複合体の代わりに、Li2S-C-LiI複合体を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で全固体二次電池を製造した。
【0217】
Li2S-C-LiI複合体は、Li6PS5ClをLiIに変更したことを除いては、Nano Lett. 2016、16、7、4521-4527に開示された方法によって製造した。
【0218】
比較例1:硫化物系正極活物質、不活性部材不使用(free)
全固体二次電池の製造時、難燃性不活性部材(すなわち、ガスケット)を使用しないことを除いては、実施例1と同様の方法で全固体二次電池を製造した。
【0219】
比較例2:酸化物系正極活物質、難燃性第1不活性部材
Li2S正極活物質を含む正極の代わりに、リチウム遷移金属酸化物を含む正極を使用したことを除き、実施例1と同様の方法で全固体二次電池を製造した。
【0220】
比較例2で第1負極活物質層の初期充電容量(B)と前記正極活物質層の初期充電容量(A)との比率(B/A)が0.09である。正極活物質層の初期充電容量は、第1開放回路電圧から、 Li/Li+に対して4.25までの充電によって決定された。第1負極活物質層の初期充電容量は、第2開放回路電圧から、 Li/Li+に対して0.01Vまでの充電によって決定された。
【0221】
リチウム遷移金属酸化物を含む正極は、下記方法で準備された。
【0222】
(正極層の製造)
正極活物質としてLi2O-ZrO2(LZO)コーティングされた LiNi0.8Co0.15Al0.05O2(NCA)を準備した。LZOコーティングされた正極活物質は、大韓民国公開特許第10-2016-0064942号公報に開示された方法によって製造した。固体電解質としてアルジロダイト型結晶体であるLi6PS5Cl(D50=0.5μm、結晶質)を準備した。バインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダ(デュポン社のテフロンバインダ)を準備した。導電剤として炭素ナノ繊維(CNF)を準備した。そのような材料を正極活物質:固体電解質:導電剤:バインダ=84:11.5:3:1.5の重量比でキシレン(xylene)溶媒と混合した混合物をシート状に成形した後、40℃で8時間、真空乾燥させて正極シートを製造した。正極シートを、一面にカーボンコーティングされたアルミニウム箔からなる正極集電体の一面上に配置し、200MPaの圧力で10分間平板プレス(plate press)して正極層を製造した。正極層の厚さは、約120μmであった。正極活物質層の厚さは、約100μmであり、カーボンコーティングされたアルミニウム箔の厚さは、約20μmであった。正極活物質層と正極集電体の面積は、同一であった。
【0223】
実施例7:バイセル(bi-cell)全固体二次電池1個、硫化物系正極活物質(Li
2
S-CNF複合体)、難燃性第1不活性部材
(バイセル(bi-cell)全固体二次電池の製造)
正極層は、正極集電体の両面上に正極活物質層が配置されるように準備したことを除き、実施例1と同様の方法で正極層を準備した。
【0224】
正極層の全体厚さは、約220μmであった。正極活物質層の厚さは、それぞれ約100μmであり、カーボンコーティングされたアルミニウム箔の厚さは、約20μmであった。
【0225】
負極層、固体電解質層、難燃性不活性部材は、実施例1と同様の方法でそれぞれ2つ準備した。
【0226】
図3を参照すれば、負極層上に第1負極活物質層が固体電解質層と接触するように固体電解質層を配置し、固体電解質層上に正極層を配置した。正極層は、正極集電体の両面上にそれぞれ正極活物質層が配置された構造からなっている。正極層の周囲に正極層を取り囲み、固体電解質層と接触するガスケットを配置した。ガスケットの厚さは、約220μmであった。ガスケットは、例えば、厚さ110μmのガスケット2枚が積層された構造であるか、厚さ220μm1枚であってもよい。ガスケットとして難燃性不活性部材を使用した。
【0227】
ガスケットが正極層の側面及び固体電解質層と接触するように配置された。正極層は、固体電解質層の中心部に配置され、ガスケットが正極層を取り囲み、固体電解質層の末端部まで延びて配置された。正極層の面積は、固体電解質層面積の約90%であり、正極層が配置されていない固体電解質層の残り10%の面積全体にガスケットが配置された。正極層及びガスケット上に固体電解質層を配置し、固体電解質層上に負極層を配置して積層体を作製した。
【0228】
準備された積層体を85℃で500MPaの圧力で30分間平板加圧(plate press)処理した。そのような加圧処理によって固体電解質層が焼結されて電池特性が向上する。焼結された1つの固体電解質層の厚さは、約45μmであった。焼結された固体電解質層が含むアージャイロダイト型結晶体であるLi6PS5Cl固体電解質の密度は、1.6g/ccであった。固体電解質層の面積は、負極層の面積と同一であった。
【0229】
加圧された積層体をパウチに入れ、真空密封して全固体二次電池を製造した。正極集電体と負極集電体の一部を、密封された電池外部に延出して正極層端子及び負極層端子として使用した。
【0230】
実施例8:バイセル(bi-cell)全固体二次電池、硫化物系正極活物質(Li2S-CNF複合体)、難燃性第1不活性部材、伝導性難燃性第2不活性部材
加圧された積層体をパウチに入れる前に、加圧された積層体の一面、及び前記一面に対向する他面上に積層体と同一面積及び形態を有するシート状の伝導性難燃性不活性部材を追加的に配置し、真空密封して全固体二次電池を製造したことを除き、実施例7と同様の方法で全固体二次電池を製造した。伝導性難燃性不活性部材は、実施例2と同様の方法で準備した。
【0231】
実施例9:モノセル(mono-cell)全固体二次電池、硫化物系正極活物質(Li
2
S-LiI-AlI
3
-CNF複合体)、難燃性第1不活性部材
正極活物質としてLi2S-CNF複合体の代わりに、製造例1で製造されたLi2S-LiI-AlI3-CNF複合体を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で全固体二次電池を製造した。
【0232】
参考例1:モノセル(mono-cell)全固体二次電池、硫化物系正極活物質(Li
2
S-LiI-AlI
3
-CNF混合物)、難燃性第1不活性部材
正極活物質としてLi2S-CNF複合体の代わりに、参考製造例1で製造されたLi2SとLiIとAlI3とCNFとの単純混合物を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で全固体二次電池を製造した。
【0233】
評価例1:全固体二次電池の充電時の体積変化率計算
[Al集電体(10μm)/LiNi0.8Co0.15Al0.05O2 (NCA)正極活物質層(100μm)/Li6PS5Cl固体電解質層(32μm)/第1負極活物質層(7μm)/SUS集電体(10μm)]構造の第1全固体二次電池の初期第1体積と、充電によって第1負極活物質層とSUS集電体との間に厚さ30μmのリチウム金属層が析出された第1全固体二次電池の充電後、第2体積から、充電時の第1全固体二次電池の体積変化を計算して下記表1に示した。充電前後のNCA正極活物質層の厚さ変化はないと仮定した。
【0234】
[Al集電体(10μm)/Li2S(60wt%)-炭素(40wt%)正極活物質層(50μm)/Li6PS5Cl固体電解質層(32μm)/第1負極活物質層(7μm)/SUS集電体(10μm)]構造の第2全固体二次電池の初期第1体積と、充電によって第1負極活物質層とSUS集電体との間に厚さ30μmのリチウム金属層が析出された第2全固体二次電池の充電後の第2体積から、充電時の第2全固体二次電池の体積変化を計算して下記表1に示した。充電後のLi2S(60wt%)-炭素(40wt%)の厚さが50μmから35μmまで15μm減少したと仮定した。Li2Sが含む全てのリチウムが負極に移動すると仮定した。第2全固体二次電池の正極活物質層は、Li2Sと炭素のみからなっていると仮定した。第1全固体二次電池の正極活物質層は、NCAからなっていると仮定した。
【0235】
【0236】
表1に示されたように、Li2Sを含む正極活物質層を備えた第2全固体二次電池は、リチウム金属層の析出によって負極層の体積が増加するが、正極活物質層の体積が減少することにより、全固体二次電池の全体としての体積増加が抑制された。これに対して、リチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質層を備えた第1全固体二次電池は、正極活物質層の体積変化が微々たるので、リチウム金属層の析出による全固体二次電池の全体としての体積増加が顕著であった。
【0237】
したがって、第2全固体二次電池は、第1全固体二次電池によって全固体二次電池の充放電時に発生する体積変化が緩和されることにより、全固体二次電池のクラックなどの劣化を効果的に防止することを確認した。
【0238】
評価例2: 評価例2:XRD分析及び走査電子顕微鏡分析
製造例1に使用された原料(bare)Li2S、粉砕されたLi2S、及び製造例1で製造されたLi2S-LiI-AlI3-CNF複合体に対してCuKα放射線を使用してXRDスペクトルを測定した。測定結果を下記表1に示した。XRDスペクトルで示されるLi2Sの(111)結晶面に対する第1ピークからLi2S結晶子(crystallite)の大きさ、格子定数を導出した。
【0239】
粉砕されたLi2Sは、実施例1の第1段階でLi2Sと第1混合物(LiIとAlI3の1:1モル比混合物)40:20重量比混合物をLi2S 50重量部に変更したことを除いては、同じ条件でミーリングして準備した。第2段階は、遂行していない。
【0240】
製造例1に使用される原料Li2S、粉砕されたLi2S、及び製造例1で製造されたLi2S-LiI-AlI3-CNF複合体に対してレーザを利用した粒子サイズ分析機(particle sizean alyzer(PSA))及び走査電子顕微鏡を使用して複合体の粒子サイズ(すなわち、D50粒径)及び複合体のLi2S粒子サイズを測定した。測定結果を下記表2に示した。
【0241】
【0242】
表2に示されたように製造例1のLi2S-LiI-AlI3-CNF複合体でLi2S粒子サイズ及びLi2S結晶子サイズは、bare Li2Sに比べて顕著に減少した。
【0243】
表2には示されていないが、製造例1のLi2S-LiI-AlI3-CNF複合体のLi2S格子定数は、bare Li2Sの格子定数に比べてさらに大きかった。
【0244】
bare Li2Sの格子定数に比べてLi2S-LiI-AlI3-CNF複合体のLi2S格子定数の増加は、Li2S結晶内にLiI及び/またはAlI3が溶解されたからであると判断された。したがって、Li2S-LiI-AlI3-CNF複合体においてLi2SとLiI及び/またはAlI3が固溶体を形成することを確認した。表2に示されていないが、製造例1で製造されたLi2S-LiI-AlI3-CNF複合体の粒子サイズは、約5μmであった。
【0245】
評価例3:充放電試験
実施例1ないし9及び比較例1で製造された全固体二次電池の充放電特性を次の充放電試験によって評価した。充放電試験は、全固体二次電池を45℃の恒温槽に入れて遂行した。
【0246】
第1サイクルは、電池電圧が2.5V~2.8Vになるまで0.1Cの定電流で12.5時間充電した。次いで、電池電圧が0.5Vになるまで0.1Cの定電流で12.5時間放電を実施した。
【0247】
第2サイクルは、電池電圧が2.5V~2.8Vになるまで0.33Cの定電流で12.5時間充電した。次いで、電池電圧が0.5Vになるまで0.33Cの定電流で12.5時間放電を実施した。
【0248】
第3サイクルは、電池電圧が2.5V~2.8Vになるまで1.0Cの定電流で12.5時間充電した。次いで、電池電圧が0.5Vになるまで1.0Cの定電流で12.5時間放電を実施した。
【0249】
比較例2で製造された全固体二次電池の充放電特性を次の充放電試験によって評価した。充放電試験は、全固体二次電池を45℃の恒温槽に入れて遂行した。
【0250】
第1サイクルは、電池電圧が3.9V~4.25Vになるまで0.1Cの定電流で12.5時間充電した。次いで、電池電圧が2.5Vになるまで0.1Cの定電流で12.5時間放電を実施した。
【0251】
第2サイクルは、電池電圧が3.9V~4.25Vになるまで0.33Cの定電流で12.5時間充電した。次いで、電池電圧が2.5Vになるまで0.33Cの定電流で12.5時間放電を実施した。
【0252】
第3サイクルは、電池電圧が3.9V~4.25Vになるまで1.0Cの定電流で12.5時間充電した。次いで、電池電圧が2.5Vになるまで1.0Cの定電流で12.5時間放電を実施した。
【0253】
第3サイクルまでの充放電過程での短絡の有無、初期放電容量及び高率特性を下記表3に示した。
【0254】
短絡の有無は、第1サイクルが完了する前に短絡が発生する場合には○、第2サイクルで短絡が発生する場合には△、第3サイクルが完了する時点まで短絡が発生しない場合には×である。
【0255】
【0256】
表3に示されたように、実施例1ないし9の全固体二次電池は、比較例1の全固体二次電池に比べて向上したサイクル特性を示した。
【0257】
評価例4:高温寿命特性試験
実施例1ないし9及び比較例1及び参考例1で製造された全固体二次電池の充放電特性を次の充放電試験によって評価した。
【0258】
充放電試験は、全固体二次電池を45℃の恒温槽に入れて遂行した。
【0259】
第1サイクルは、電池電圧が2.5V~2.8Vになるまで0.6mA/cm2の定電流で12.5時間充電した。次いで、電池電圧が0.5Vになるまで0.6mA/cm2の定電流で12.5時間放電を実施した。
【0260】
比較例2で製造された全固体二次電池の充放電特性を次の充放電試験によって評価した。充放電試験は、全固体二次電池を45℃の恒温槽に入れて遂行した。
【0261】
第1サイクルは、電池電圧が3.9V~4.25Vになるまで0.6mA/cm2の定電流で12.5時間充電した。次いで、電池電圧が2.5Vになるまで0.6mA/cm2の定電流で12.5時間放電を実施した。
【0262】
第1サイクルの放電容量を標準容量とした。第2サイクルからは、第1サイクルと同じ条件で充電及び放電を150サイクルまで実施した。測定結果を下記表3に示した。
【0263】
第2サイクルから放電容量が標準容量の95%に減少するのに必要なサイクル回数が増加するほど優秀な寿命特性を有すると見なした。
【0264】
比較例1の全固体二次電池は、第1サイクルが完了する前に短絡が発生して寿命特性の測定が不可能であった。
【0265】
【0266】
表4に示されたように、実施例1ないし8の全固体二次電池は、比較例2の全固体二次電池に比べて寿命特性が向上した。
【0267】
実施例6の全固体二次電池は、Li2S-C-LiI複合体を正極活物質として含むことにより、Li2S-C複合体を含む実施例1、及びLi2S-C-Li6PS5Cl複合体を含む実施例4に比べて寿命特性がさらに向上した。
【0268】
Li2Sを含む実施例1ないし6の全固体二次電池は、酸化物系正極活物質を含む比較例2の全固体二次電池に比べて充放電時の体積変化が緩和されて向上した寿命特性を有すると判断された。
【0269】
実施例7及び8の全固体二次電池は、構成要素が対称に配置されるバイセル構造を有することにより、モノセル構造を有する実施例1ないし4の全固体二次電池に比べて、充放電時の体積変化を効果的に緩和して向上した寿命特性を有すると判断された。
【0270】
実施例1、2及び4の全固体二次電池は、難燃性不活性部材を含むことにより、非難燃性不活性部材を含む実施例3に比べて、向上した寿命特性を有すると判断された。
【0271】
実施例8の全固体二次電池は、第2不活性部材が負極集電体上に追加的に配置されることにより、体積変化が集中される負極層の応力を効果的に緩和するので、実施例7の全固体二次電池に比べて向上した寿命特性を有すると判断された。実施例2の全固体二次電池も同じ理由で実施例1、3及び4に比べて向上した寿命特性を有すると判断された。実施例5の全固体二次電池は、シルバー粒子担持のカーボンを使用することにより、シルバー粒子とカーボン粒子との単純混合物である実施例2に比べて向上した寿命特性を有すると判断された。
【0272】
表4に示されていないが、参考例1の全固体二次電池の寿命特性は、実施例9の全固体二次電池に比べて劣っていた。
【0273】
前述したように、本実施例に係わる全固体二次電池は、様々な携帯機器や車両などに適用することができる。
【0274】
以上、添付された図面を参照し、例示的な一実施形態について詳細に説明したが、本発明の思想は、そのような例に限定されない。本発明の思想が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で各種の変更例または修正例を導出可能であるということは自明であり、これらも本発明の思想の技術的範囲に属するということは言うまでもない。