(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174939
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ペプチド化合物の製造方法、保護基形成用試薬、及び、芳香族複素環化合物
(51)【国際特許分類】
C07K 1/06 20060101AFI20241210BHJP
C07D 209/12 20060101ALI20241210BHJP
C07D 209/14 20060101ALI20241210BHJP
C07D 405/12 20060101ALI20241210BHJP
C07D 209/86 20060101ALI20241210BHJP
C07D 333/16 20060101ALI20241210BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20241210BHJP
C07D 209/08 20060101ALI20241210BHJP
C07D 209/04 20060101ALI20241210BHJP
C07D 307/80 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C07K1/06
C07D209/12
C07D209/14
C07D405/12
C07D209/86
C07D333/16
A61K38/08
C07D209/08
C07D209/04
C07D307/80
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024152735
(22)【出願日】2024-09-04
(62)【分割の表示】P 2023026563の分割
【原出願日】2020-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2019035775
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019122489
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 陽介
(72)【発明者】
【氏名】金子 和平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 基将
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真
(72)【発明者】
【氏名】今村 弥佳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛敬
(72)【発明者】
【氏名】大村 浩文
(72)【発明者】
【氏名】吉光 佑二
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓太
(72)【発明者】
【氏名】中川 大輔
(57)【要約】 (修正有)
【課題】脱保護速度に優れるペプチド化合物の製造方法、脱保護速度に優れる保護基形成用試薬、及び新規な芳香族複素環化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表される芳香族複素環化合物を用いる工程を含むペプチド化合物の製造方法、上記化合物を含む保護基形成用試薬、及び、上記化合物。式(1)中、環Aは芳香族複素環を表し、Y
Aはそれぞれ独立に、-OH、-NHR、-SH、又は、-X
0を表し、X
0はCl、Br又はIを表し、R
A及びR
Cはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、R
Bはそれぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素基、(1+c)価の芳香族基又は(1+c)価のヘテロ芳香族基を表し、a及びcともに0である場合、R
Bは1価の脂肪族炭化水素基であり、R
A、R
B及びR
Cの少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される芳香族複素環化合物を用いる工程を含む
ペプチド化合物の製造方法。
【化1】
式(1)中、
環Aは、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、又は、ベンゾチオフェン環である芳香族複素環を表し、
Y
Aは、-OH、-NHR、SH、又は、-X
0を表し、Rは水素原子、アルキル基、芳香族基置換アルキル基又はヘテロ芳香族基置換アルキル基又は9-フルオレニルメトキシカルボニル基を表し、X
0はCl、Br又はIを表し、
R
Aはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、環Aは、R
Aに加えて更に置換基を有していてもよく、
R
Bはそれぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素、(1+c)価の芳香族基又は(1+c)価のヘテロ芳香族基を表し、
R
Cはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、
mは0~2の整数を表し、aは1~5の整数を表し、cは0~5の整数を表し、
R
Aの少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上である。
【請求項2】
前記式(1)で表される芳香族複素環化合物を用いる工程が、前記式(1)で表される芳香族複素環化合物によりアミノ酸化合物又はペプチド化合物のカルボキシ基又はアミド基を保護するC末端保護工程である、請求項1に記載のペプチド化合物の製造方法。
【請求項3】
前記C末端保護工程におけるアミノ酸化合物又はペプチド化合物が、N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物である、請求項2に記載のペプチド化合物の製造方法。
【請求項4】
前記C末端保護工程で得られたN末端保護C末端保護アミノ酸化合物又はN末端保護C末端保護ペプチド化合物のN末端を脱保護するN末端脱保護工程、及び、
前記N末端脱保護工程で得られたC末端保護アミノ酸化合物又はC末端保護ペプチド化合物のN末端に、N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物を縮合させるペプチド鎖延長工程
を更に含む、請求項3に記載のペプチド化合物の製造方法。
【請求項5】
前記ペプチド鎖延長工程で得られたN末端保護C末端保護ペプチド化合物を沈殿させる沈殿工程を更に含む、請求項4に記載のペプチド化合物の製造方法。
【請求項6】
前記沈殿工程の後に、
得られたN末端保護C末端保護ペプチド化合物のN末端を脱保護する工程、
得られたC末端保護ペプチド化合物のN末端に、N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物を縮合させる工程、及び、
得られたN末端保護C末端保護ペプチド化合物を沈殿する工程
をこの順で1回以上更に含む、請求項5に記載のペプチド化合物の製造方法。
【請求項7】
C末端保護基を脱保護するC末端脱保護工程を更に含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のペプチド化合物の製造方法。
【請求項8】
前記環Aが、下記式(10)、式(20)、又は、式(30)のいずれかで表される、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のペプチド化合物の製造方法。
【化2】
式(10)中、R
r10~R
r14のいずれかが式(1)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結し、R
r10は、置換基、又は、R
Aを表し、R
r11~R
r14は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、R
Aを表し、ただし、R
r10~R
r14の少なくとも1つはR
Aであり、R
Aは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上であり、R
r11とR
r12、又は、R
r13とR
r14はそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
式(20)中、R
r20~R
r23のいずれかが式(1)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結し、R
r20は、置換基、又は、R
Aを表し、R
r21~R
r23は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、R
Aを表し、ただし、R
r20~R
r23の少なくとも1つはR
Aであり、R
Aは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上であり、R
r22とR
r23は、互いに連結して環を形成してもよい。
式(30)中、R
r31~R
r34のいずれかが式(1)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結し、X
30は、酸素原子、又は硫黄原子を表し、R
r31~R
r34は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、R
Aを表し、ただし、R
r31~R
r34の少なくとも1つはR
Aであり、R
Aは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上であり、R
r31とR
r32、又は、R
r33とR
r34はそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
【請求項9】
前記少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のペプチド化合物の製造方法。
【請求項10】
前記式(10)で表される環Aが式(11)で表され、前記式(20)で表される化合物が式(21)で表され、前記式(30)で表される化合物が式(31)で表される、請
求項9に記載のペプチド化合物の製造方法。
【化3】
式(11)中、R
r15~R
r18のいずれかが式(1)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結し、R
r15~R
r18はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表し、R
Aは脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、R
r15とR
r16、又は、R
r17とR
r18は、それぞれに独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
式(21)中、R
r24~R
r26のいずれかが式(1)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結し、R
r24~R
r26はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表し、R
Aは脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、R
r25とR
r26は、互いに連結して環を形成してもよい。
式(31)中、波線部分は、式(1)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結する位置を表し、X
r31は、酸素原子、又は、硫黄原子を表し、R
r35~R
r37はそれぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、R
Aを表し、R
Aは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が14以上であり、ただし、R
r35~R
r37の少なくとも1つはR
Aであり、R
r36とR
r37は、互いに連結して環を形成してもよい。
【請求項11】
全てのRAが有する全ての脂肪族炭化水素基の合計炭素数が、40以上である、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のペプチド化合物の製造方法。
【請求項12】
前記R
Aが、下記式(f1)で表される基、又は、式(a1)で表される基である、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載のペプチド化合物の製造方法。
【化4】
式(f1)中、波線部分は芳香族複素環との結合位置を表し、m9は0~3の整数を表し、X
9はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R
9はそれぞれ独立に、二価の脂肪族炭化水素基を表し、Ar
1は(m10+1)価の芳香族基、又は、(m10+1)価の複素芳香族基を表し、m10は、1~3の整数を表し、X
10はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R
10はそれぞれ独立に、一価の脂肪族炭化水素基を表し、R
10の少なくとも1つは、炭素数5以上の一価の脂肪族炭化水素基である。
【化5】
式(a1)中、波線部分は芳香族複素環との結合位置を表し、m20は、1~10の整数を表し、X
20はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R
20の少なくとも1つは、炭素数5以上の二価の脂肪族炭化水素基である。
【請求項13】
前記式(f1)で表される基が、下記式(f2)で表される基である、請求項12に記載のペプチド化合物の製造方法。
【化6】
式(f2)中、波線部分は芳香族複素環との結合位置を表し、m10は、1~3の整数を表し、m11は、0~3の整数を表し、X
10はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R
10はそれぞれ独立に、炭素数5以上の一価の脂肪族炭化水素基を表す。
【請求項14】
下記式(1)で表される芳香族複素環化合物を含む、
保護基形成用試薬。
【化7】
式(1)中、
環Aは、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、又は、ベンゾチオフェン環である芳香族複素環を表し、
Y
Aは、-OH、-NHR、SH、又は、-X
0を表し、Rは水素原子、アルキル基、芳香族基置換アルキル基又はヘテロ芳香族基置換アルキル基又は9-フルオレニルメトキシカルボニル基を表し、X
0はCl、Br又はIを表し、
R
Aはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、環Aは、R
Aに加えて更に置換基を有していてもよく、
R
Bはそれぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素、(1+c)価の芳香族基又は(1+c)価のヘテロ芳香族基を表し、
R
Cはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、
mは0~2の整数を表し、aは1~5の整数を表し、cは0~5の整数を表し、
R
Aの少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上である。
【請求項15】
前記保護基形成用試薬が、カルボキシ基又はアミド基の保護基形成用試薬である、請求項14に記載の保護基形成用試薬。
【請求項16】
前記保護基形成用試薬が、アミノ酸化合物又はペプチド化合物のC末端保護基形成用試薬である、請求項14又は請求項15に記載の保護基形成用試薬。
【請求項17】
下記式(1a)で表される芳香族複素環化合物。
【化8】
式(1a)中、
環Aは、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、又は、ベンゾチオフェン環である芳香族複素環を表し、
Y
Aは、-OH、-NHR、SH、又は、-X
0を表し、Rは水素原子、アルキル基、芳香族基置換アルキル基又はヘテロ芳香族基置換アルキル基又は9-フルオレニルメトキシカルボニル基を表し、X
0はCl、Br又はIを表し、
R
Aはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、環Aは、R
Aに加えて更に置換基を有していてもよく、
R
Bはそれぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素、(1+c)価の芳香族基又は(1+c)価のヘテロ芳香族基を表し、
R
Cはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、
mは0~2の整数を表し、aは1~5の整数を表し、cは0~5の整数を表し、
R
Aの少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上であり、
全てのR
A、R
B及びR
Cが有する全ての脂肪族炭化水素基の合計炭素数が、40以上である。
【請求項18】
環Aが下記式(10a)、式(20a)、又は、式(30a)のいずれかで表される、請求項17に記載の芳香族複素環化合物。
【化9】
式(10a)中、R
r10~R
r14のいずれかが式(1a)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結し、R
r10は、置換基、又は、R
Aを表し、R
r10~R
r14は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、R
Aを表し、ただし、R
r11~R
r14の少なくとも1つはR
Aであり、R
Aは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、R
r11とR
r12、又は、R
r13とR
r14はそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
式(20a)中、R
r20~R
r23のいずれかが式(1a)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結し、R
r20は、置換基、又は、R
Aを表し、R
r21~R
r23は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、R
Aを表し、ただし、R
r20~R
r23の少なくとも1つはR
Aであり、R
Aは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、全てのR
Aが有するそれぞれの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、R
r22とR
r23は、互いに連結して環を形成してもよい。
式(30a)中、R
r31~R
r34のいずれかが式(1a)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結し、X
r30は、酸素原子、又は硫黄原子を表し、R
r31~R
r34は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、R
Aを表し、ただし、R
r31~R
r34の少なくとも1つはR
Aであり、R
Aは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、R
r31とR
r32、又は、R
r33とR
r34はそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
【請求項19】
前記式(10a)が式(11a)で表され、前記式(20)が式(21a)で表され、前記式(30a)が式(31a)で表される、請求項17又は請求項18に記載の芳香族複素環化合物。
【化10】
式(11a)中、R
r15~R
r18のいずれかが式(1a)におけるY
Aを有する炭
素原子を含む基と連結し、R
r15~R
r18はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表し、R
Aは、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、R
r15とR
r16、又は、R
r17とR
r18は、それぞれに独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
式(21a)中、R
r24~R
r26のいずれかが式(1a)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結し、R
r24~R
r26はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表し、R
Aは、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、R
r25とR
r26は、互いに連結して環を形成してもよい。
式(31a)中、波線部分は、式(1)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結する位置を表し、X
r31は、酸素原子、又は、硫黄原子を表し、R
r35~R
r37はそれぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、R
Aを表し、R
Aは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、ただし、R
r35~R
r37の少なくとも1つはR
Aであり、R
r36とは互いに連結して環を形成してもよい。
【請求項20】
全てのRA、RB及びRCが有する全ての脂肪族炭化水素基の合計炭素数が、40~80である、請求項17~請求項19のいずれか1項に記載の芳香族複素環化合物。
【請求項21】
前記R
Aが、下記式(f1)で表される基、又は、式(a1)で表される基である、請求項17~請求項20のいずれか1項に記載の芳香族複素環化合物。
【化11】
式(f1)中、波線部分は芳香族複素環との結合位置を表し、m9は0~3の整数を表し、X
9はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R
9はそれぞれ独立に、二価の脂肪族炭化水素基を表し、Ar
1は(m10+1)価の芳香族基、又は、(m10+1)価の複素芳香族基を表し、m10は、1~3の整数を表し、X
10はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R
10はそれぞれ独立に、一価の脂肪族炭化水素基を表し、R
10の少なくとも1つは、炭素数5以上の一価の脂肪族炭化水素基である。
【化12】
式(a1)中、波線部分は芳香族複素環との結合位置を表し、m20は、1~10の整数を表し、X
20はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R
20の少なくとも1つは、炭素数5以上の二価の脂肪族炭化水素基である。
【請求項22】
前記式(f1)で表される基が、下記式(f2)で表される基である、請求項21に記載の芳香族複素環化合物。
【化13】
式(f2)中、波線部分は芳香族複素環との結合位置を表し、m10は、1~3の整数を表し、m11は、0~3の整数を表し、X
10はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R
10はそれぞれ独立に、炭素数5以上の一価の脂肪族炭化水素基を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ペプチド化合物の製造方法、保護基形成用試薬、及び、芳香族複素環化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドの製造方法としては、これまで概ね固相法と液相法に大別されてきた。
固相法は、反応後の単離及び精製をレジンの洗浄だけで行える点で有利ではある。しかし、固相法は、本質的に不均一相の反応であり、低い反応性を補うために反応試剤又は試薬を過剰量用いる必要があった。また、反応の追跡、及び、担体に担持された状態での反応生成物の解析が困難であるという問題があった。
一方、液相法は、反応性も良好で、縮合反応の後に抽出洗浄、単離等により中間体ペプチドの精製を行えるという利点を有している。しかし、液相法は、カップリング反応及び脱保護の各工程において、残留試薬及び副生成物を除去するため、非極性有機溶媒、及び、酸性又は塩基性水溶液による抽出洗浄工程、又は、結晶化などの単離精製工程が必要であるなど、製造工程が複雑化する問題があった。
【0003】
また、従来の保護基形成用試薬としては、特許文献1又は特許文献2に記載されたジ又はトリアルコキシベンジルアルコール化合物が知られている。
【0004】
特許文献1:特開2000-44493号公報
特許文献2:特開2009-185063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、脱保護速度に優れるペプチド化合物の製造方法を提供することである。
また、本発明の他の一実施形態が解決しようとする課題は、脱保護速度に優れる保護基形成用試薬を提供することである。
また、本発明の更に他の一実施形態が解決しようとする課題は、新規な芳香族複素環化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記式(1)で表される芳香族複素環化合物を用いる工程を含む
ペプチド化合物の製造方法。
【0007】
【0008】
式(1)中、
環Aは芳香族複素環を表し、
YAは、-OH、-NHR、SH、又は、-X0を表し、Rは水素原子、アルキル基、芳香族基置換アルキル基又はヘテロ芳香族基置換アルキル基又は9-フルオレニルメトキシカルボニル基を表し、X0はCl、Br又はIを表し、
RAはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、環Aは、RAに加えて更に置換基を有していてもよく、
RBはそれぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素、(1+c)価の芳香族基又は(1+c)価のヘテロ芳香族基を表し、
RCはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、
mは0~2の整数を表し、aは0~5の整数を表し、cは0~5の整数を表し、
a及びcともに0である場合、RBは1価の脂肪族炭化水素基であり、
RA、RB及びRCの少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上である。
【0009】
<2> 上記式(1)で表される芳香族複素環化合物を用いる工程が、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物によりアミノ酸化合物又はペプチド化合物のカルボキシ基又はアミド基を保護するC末端保護工程である、<1>に記載のペプチド化合物の製造方法。<3> 上記C末端保護工程におけるアミノ酸化合物又はペプチド化合物が、N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物である、<2>に記載のペプチド化合物の製造方法。
<4> 上記C末端保護工程で得られたN末端保護C末端保護アミノ酸化合物又はN末端保護C末端保護ペプチド化合物のN末端を脱保護するN末端脱保護工程、及び、
上記N末端脱保護工程で得られたC末端保護アミノ酸化合物又はC末端保護ペプチド化合物のN末端に、N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物を縮合させるペプチド鎖延長工程
を更に含む、<3>に記載のペプチド化合物の製造方法。
<5> 上記ペプチド鎖延長工程で得られたN末端保護C末端保護ペプチド化合物を沈殿させる沈殿工程を更に含む、<4>に記載のペプチド化合物の製造方法。
<6> 上記沈殿工程の後に、
得られたN末端保護C末端保護ペプチド化合物のN末端を脱保護する工程、
得られたC末端保護ペプチド化合物のN末端に、N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物を縮合させる工程、及び、
得られたN末端保護C末端保護ペプチド化合物を沈殿する工程
をこの順で1回以上更に含む、<5>に記載のペプチド化合物の製造方法。
<7> C末端保護基を脱保護するC末端脱保護工程を更に含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載のペプチド化合物の製造方法。
<8> 上記環Aが、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、又は、ベンゾチオフェン環である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のペプチド化合物の製造方法。
<9> 上記環Aが、下記式(10)、式(20)、又は、式(30)のいずれかで表される、<1>~<8>のいずれか1つに記載のペプチド化合物の製造方法。
【0010】
【0011】
式(10)中、Rr10~Rr14のいずれかが式(1)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結し、Rr10は、置換基、又は、RAを表し、Rr11~Rr14は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、ただし、Rr10~Rr14の少なくとも1つはRAであり、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上であり、Rr11とRr12、又は、Rr13とRr14はそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
式(20)中、Rr20~Rr23のいずれかが式(1)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結し、Rr20は、置換基、又は、RAを表し、Rr21~Rr23は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、ただし、Rr20~Rr23の少なくとも1つはRAであり、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上であり、Rr22とRr23は、互いに連結して環を形成してもよい。
式(30)中、Rr31~Rr34のいずれかが式(1)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結し、X30は、酸素原子、又は硫黄原子を表し、Rr31~Rr34は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、ただし、Rr31~Rr34の少なくとも1つはRAであり、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上であり、Rr31とRr32、又は、Rr33とRr34はそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
【0012】
<10> 上記少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上である、<1>~<9>のいずれか1つに記載のペプチド化合物の製造方法。
<11> 上記式(10)で表される環Aが式(11)で表され、上記式(20)で表される化合物が式(21)で表され、上記式(30)で表される化合物が式(31)で表される、<9>に記載のペプチド化合物の製造方法。
【0013】
【化3】
式(11)中、R
r15~R
r18のいずれかが式(1)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結し、R
r15~R
r18はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表し、R
Aは脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、R
r15とR
r16、又は、R
r17とR
r18は、それぞれに独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
式(21)中、R
r24~R
r26のいずれかが式(1)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結し、R
r24~R
r26はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表し、R
Aは脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、R
r25とR
r26は、互いに連結して環を形成してもよい。
式(31)中、波線部分は、式(1)におけるY
Aを有する炭素原子を含む基と連結する位置を表し、X
r31は、酸素原子、又は、硫黄原子を表し、R
r35~R
r37はそれぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、R
Aを表し、R
Aは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのR
Aが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が14以上であり、ただし、R
r35~R
r37の少なくとも1つはR
Aであり、R
r36とR
r37は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0014】
<12> 全てのRAが有する全ての脂肪族炭化水素基の合計炭素数が、40以上である、<1>~<9>のいずれか1つに記載のペプチド化合物の製造方法。
<13> 上記RAが、下記式(f1)で表される基、又は、式(a1)で表される基である、<1>~<10>のいずれか1つに記載のペプチド化合物の製造方法。
【0015】
【0016】
式(f1)中、波線部分は芳香族複素環との結合位置を表し、m9は0~3の整数を表し、X9はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R9はそれぞれ独立に、二価の脂肪族炭化水素基を表し、Ar1は(m10+1)価の芳香族基、又は、(m10+1)価の複素芳香族基を表し、m10は、1~3の整数を表し、X10はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R10はそれぞれ独立に、一価の脂肪族炭化水素基を表し、R10の少なくとも1つは、炭素数5以上の一価の脂肪族炭化水素基である。
【0017】
【0018】
式(a1)中、波線部分は芳香族複素環との結合位置を表し、m20は、1~10の整数を表し、X20はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R20の少なくとも1つは、炭素数5以上の二価の脂肪族炭化水素基である。
【0019】
<14> 上記式(f1)で表される基が、下記式(f2)で表される基である、<13>に記載のペプチド化合物の製造方法。
【0020】
【0021】
式(f2)中、波線部分は芳香族複素環との結合位置を表し、m10は、1~3の整数を表し、m11は、0~3の整数を表し、X10はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R10はそれぞれ独立に、炭素数5以上の一価の脂肪族炭化水素基を表す。
【0022】
<15> 下記式(1)で表される芳香族複素環化合物を含む、
保護基形成用試薬。
【0023】
【0024】
式(1)中、
環Aは芳香族複素環を表し、
YAは、-OH、-NHR、SH、又は、-X0を表し、Rは水素原子、アルキル基、芳香族基置換アルキル基又はヘテロ芳香族基置換アルキル基又は9-フルオレニルメトキシカルボニル基を表し、X0はCl、Br又はIを表し、
RAはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、環Aは、RAに加えて更に置換基を有していてもよく、
RBはそれぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素、(1+c)価の芳香族基又は(1+c)価のヘテロ芳香族基を表し、
RCはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、
mは0~2の整数を表し、aは0~5の整数を表し、cは0~5の整数を表し、
a及びcともに0である場合、RBは1価の脂肪族炭化水素基であり、
RA、RB及びRCの少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上である。
【0025】
<16> 上記保護基形成用試薬が、カルボキシ基又はアミド基の保護基形成用試薬である、<15>に記載の保護基形成用試薬。
<17> 上記保護基形成用試薬が、アミノ酸化合物又はペプチド化合物のC末端保護基形成用試薬である、<15>又は<16>に記載の保護基形成用試薬。
<18> 下記式(1a)で表される芳香族複素環化合物。
【0026】
【0027】
式(1a)中、
環Aは芳香族複素環を表し、
YAは、-OH、-NHR、SH、又は、-X0を表し、Rは水素原子、アルキル基、芳香族基置換アルキル基又はヘテロ芳香族基置換アルキル基又は9-フルオレニルメトキシカルボニル基を表し、X0はCl、Br又はIを表し、
RAはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、環Aは、RAに加えて更に置換基を有していてもよく、
RBはそれぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素、(1+c)価の芳香族基又は(1+c)価のヘテロ芳香族基を表し、
RCはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、
mは0~2の整数を表し、aは0~5の整数を表し、cは0~5の整数を表し、
a及びcともに0である場合、RBは1価の脂肪族炭化水素基であり、
RA、RB及びRCの少なくとも1つが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上であり、
全てのRA、RB及びRCが有する全ての脂肪族炭化水素基の合計炭素数が、40以上である。
【0028】
<19> 環Aが下記式(10a)、式(20a)、又は、式(30a)のいずれかで表される、<18>に記載の芳香族複素環化合物。
【0029】
【0030】
式(10a)中、Rr10~Rr14のいずれかが式(1a)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結し、Rr10は、置換基、又は、RAを表し、Rr10~Rr14は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、ただし、Rr11~Rr14の少なくとも1つはRAであり、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つ
の脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、Rr11とRr12、又は、Rr13とRr14はそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
式(20a)中、Rr20~Rr23のいずれかが式(1a)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結し、Rr20は、置換基、又は、RAを表し、Rr21~Rr23は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、ただし、Rr20~Rr23の少なくとも1つはRAであり、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、全てのRAが有するそれぞれの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、Rr22とRr23は、互いに連結して環を形成してもよい。
式(30a)中、Rr31~Rr34のいずれかが式(1a)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結し、Xr30は、酸素原子、又は硫黄原子を表し、Rr31~Rr34は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、ただし、Rr31~Rr34の少なくとも1つはRAであり、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、Rr31とRr32、又は、Rr33とRr34はそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
【0031】
<20> 上記式(10a)が式(11a)で表され、上記式(20)が式(21a)で表され、上記式(30a)が式(31a)で表される、<18>又は<19>に記載の芳香族複素環化合物。
【0032】
【0033】
式(11a)中、Rr15~Rr18のいずれかが式(1a)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結し、Rr15~Rr18はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表し、RAは、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、Rr15とRr16、又は、Rr17とRr18は、それぞれに独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
式(21a)中、Rr24~Rr26のいずれかが式(1a)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結し、Rr24~Rr26はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表し、RAは、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、Rr25とRr26は、互いに連結して環を形成してもよい。
式(31a)中、波線部分は、式(1)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結する位置を表し、Xr31は、酸素原子、又は、硫黄原子を表し、Rr35~Rr37はそれぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、ただし、Rr35~Rr37の少なくとも1つはRAであり、Rr36とは互いに連結して環を形成してもよい。
【0034】
<21> 全てのRA、RB及びRCが有する全ての脂肪族炭化水素基の合計炭素数が、40~80である、<18>~<20>のいずれか1つに記載の芳香族複素環化合物。
<22> 上記RAが、下記式(f1)で表される基、又は、式(a1)で表される基である、<18>~<21>のいずれか1つに記載の芳香族複素環化合物。
【0035】
【0036】
式(f1)中、波線部分は芳香族複素環との結合位置を表し、m9は0~3の整数を表し、X9はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R9はそれぞれ独立に、二価の脂肪族炭化水素基を表し、Ar1は(m10+1)価の芳香族基、又は、(m10+1)価の複素芳香族基を表し、m10は、1~3の整数を表し、X10はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R10はそれぞれ独立に、一価の脂肪族炭化水素基を表し、R10の少なくとも1つは、炭素数5以上の一価の脂肪族炭化水素基である。
【0037】
【0038】
式(a1)中、波線部分は芳香族複素環との結合位置を表し、m20は、1~10の整数を表し、X20はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R20の少なくとも1つは、炭素数5以上の二価の脂肪族炭化水素基である。
【0039】
<23> 上記式(f1)で表される基が、下記式(f2)で表される基である、<22>に記載の芳香族複素環化合物。
【0040】
【0041】
式(f2)中、波線部分は芳香族複素環との結合位置を表し、m10は、1~3の整数を表し、m11は、0~3の整数を表し、X10はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R10はそれぞれ独立に、炭素数5以上の一価の脂肪族炭化水素基を表す。
【発明の効果】
【0042】
本発明の一実施形態によれば、脱保護速度に優れるペプチド化合物の製造方法を提供することができる。
また、本発明の他の一実施形態によれば、脱保護速度に優れる保護基形成用試薬を提供することができる。
また、本発明の更に他の一実施形態によれば、新規な芳香族複素環化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、芳香族基とアリール基は同義であり、ヘテロ芳香族基とヘテロアリール基とは同義である。すなわち、芳香族基置換アルキル基とアリール基置換アルキル基とは同義であり、ヘテロ芳香族基置換アルキル基とヘテロアリール基置換アルキル基とは同義である。
【0044】
(ペプチド化合物の製造方法)
本開示に係るペプチド化合物の製造方法は、下記式(1)で表される芳香族複素環化合物(以下、式(1)で表される化合物ともいう。)を用いる工程を含む。
【0045】
【0046】
式(1)中、
環Aは芳香族複素環を表し、
YAは、-OH、-NHR、SH、又は、-X0を表し、Rは水素原子、アルキル基、芳香族基置換アルキル基又はヘテロ芳香族基置換アルキル基又は9-フルオレニルメトキシカルボニル基(以下、Fmoc基ともいう)を表し、X0はCl、Br又はIを表し、
RAはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、環Aは、RAに加えて更に置換基を有していてもよく、
RBはそれぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素、(1+c)価の芳香族基又は(1+c)価のヘテロ芳香族基を表し、
RCはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、
mは0~2の整数を表し、aは0~5の整数を表し、cは0~5の整数を表し、
a及びcともに0である場合、RBは1価の脂肪族炭化水素基であり、
RA、RB及びRCの少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上である。
【0047】
本開示に係るペプチド化合物の製造方法が上記式(1)で表される化合物を用いる工程を含むことにより、収率に優れるペプチド化合物が得られる詳細なメカニズムは明らかではないが、以下のように推測される。
本開示に係る式(1)で表される化合物は、従来のベンジルアルコール型の保護基形成用試薬よりも、脱保護速度が速いため、得られるペプチド化合物等の収率に優れると推定している。脱保護速度に優れる理由は、ベンジルアルコールよりも芳香族複素環が電子供与性に優れるためであると考えている。なお、本明細書において、脱保護速度が速いことを脱保護速度に優れるという。
また、式(1)で表される化合物をペプチドのC末端保護基として用いた場合、従来のベンジルアルコール型の保護基形成用試薬を用いた場合よりも、脱保護速度に優れる。例えば、アミノ酸側鎖の保護基は残したまま、C末端保護基のみを選択的に脱保護すること、すなわち、各アミノ酸の側鎖保護基との切り分けが可能となる。脱保護されたC末端に、長鎖ペプチドのフラグメントを縮合反応させる等の、後続反応にも利用できる。また、強酸に不安定なペプチドの場合は、ペプチド鎖の分解を抑制することができ、収率向上にも繋がる。また、酸での脱保護速度に優れることで、酸に不安定なペプチドの合成に好適である。
式(1)で表される化合物は、RA、RB及びRCにおける少なくとも1つが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上であることから、式(1)で表される化合物により保護された化合物において、疎水性溶剤に対する溶解性に優れる。さらに、親水性溶剤に対しては、各RA、RB及びRC中の脂肪族炭化水素基が分子内及び分子間で凝集すること、及び、式(1)で表される化合物が芳香族複素環を有することにより、芳香族複素環同士によるπ-π相互作用(π-πスタッキング)が生じることにより、晶析性に優れ、精製及び分離性にも優れる。言い換えれば、式(1)で表される化合物で保護された化合物は、反応溶剤である疎水性溶剤に対する溶剤溶解性に優れるため、反応が速やかに進行し、かつ、精製時には貧溶媒である極性溶媒を添加することで目的物が効率よく晶析精製されるため、得られる化合物(ペプチド化合物等)の収率に優れると推定している。
上記の効果は、RA、RB及びRCの少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、好ましくは14以上でより優れた効果を発揮する。その理由は明らかではないが式(1)におけるRA、RB及びRCのいずれかの炭素数が増加することで、式(1)で表される分子全体に占める疎水性の寄与率が大きくなり、疎水性溶剤に溶解しやすくなり、また、親水性溶媒に対しては、炭素数が増加することで凝集力がより増加し、晶析しやすくなるためと推定している。
更に、本開示に係る式(1)で表される芳香族複素環化合物は、上記構造であることにより、ペプチド合成反応中は安定であるが、脱保護(除去)は容易である。
更にまた、本開示に係る式(1)で表される芳香族複素環化合物を用いることにより、副反応が生じ易い非天然アミノ酸を含む非天然ペプチドのような難合成ペプチドでも、副反応を抑制し高純度で合成できる。
本開示においては、弱酸条件でもC末端保護基の脱保護が可能であり、得られるペプチドの副反応を抑制することが可能である。
弱酸条件下でのC末端保護基の脱保護が好適なペプチド(すなわち、酸に弱いペプチド)としては、例えば、N-アルキルアミド構造を有するペプチドが挙げられる。
得られるペプチドの副反応を抑制し、かつ、経時安定性の観点から、本開示に係るペプチド化合物の製造方法は、酸に弱いペプチド化合物の製造方法が好ましく、N-アルキルアミド構造を有するペプチド化合物の製造方法がより好ましい。
【0048】
以下、本開示に係るペプチド化合物の製造方法に用いられる上記式(1)で表される芳香族複素環化合物について、詳細に説明する。
本開示に係るペプチド化合物の製造方法において、式(1)で表される芳香族複素環化合物は、保護基の形成だけでなく、ペプチド化合物の変性、水又は有機溶媒等への溶解度の調整、結晶化性の改良、多量体化等に用いることができる。
中でも、式(1)で表される芳香族複素環化合物は、保護基の形成に用いることが好ましく、アミノ酸化合物又はペプチド化合物におけるC末端保護基の形成に用いることがより好ましい。
【0049】
<式(1)で表される芳香族複素環化合物>
本開示に係る式(1)で表される芳香族複素環化合物を、以下に示す。
【0050】
【0051】
式(1)中、環A、YA、RA、RB、RC、m、a及びcは、上記と同義である。
【0052】
式(1)における環Aは芳香族複素環を表し、また、環Aは、YA及びRBが連結したメチレン基、並びに、RAに加えて更に置換基を有していてもよい。
芳香族複素環化合物は、脱保護速度、晶析性、及び、収率の観点から、YA以外に、SH基、アミノ基、OH基、又は、COOH基を有さない芳香族複素環化合物であることが好ましい。
環Aは、単環及び多環のいずれの複素環でもあってもよい。
環Aが多環である場合、芳香族複素環が縮合した2以上の環を有する縮合多環芳香族複素環であることが好ましく、2環~4環の縮合多環芳香族複素環であることがより好ましく、2環又は3環の縮合多環芳香族複素環であることが更に好ましい。
【0053】
また、環Aは、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の複素原子を、少なくとも1つ有する複素環が好ましく、窒素原子及び硫黄原子からなるより選ばれる少なくとも1種の複素原子を有することがより好ましく、窒素原子又は硫黄原子を含むことが更に好ましく、窒素原子を含むことが特に好ましい。
【0054】
環Aは、脱保護速度、晶析性、及び、収率の観点から、複素原子が窒素原子である場合、その窒素原子は置換基を更に有することが好ましい。置換基としては、上述の式(1)におけるRAが好適に挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0055】
環Aの環員数は、特に制限はないが、5員環~8員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがより好ましい。
【0056】
環Aは、脱保護速度、晶析性、及び、収率の観点から、5員環~8員環の芳香族複素環であることが好ましく、5員環又は6員環の芳香族複素環であることがより好ましく、窒素原子及び硫黄原子からなるより選ばれる少なくとも1種の複素原子を有する5員環又は6員環を含む、2環若しくは3環の縮合多環芳香族複素環であることが更に好ましく、窒素原子又は硫黄原子を有する5員環又は6員環を含む、2環若しくは3環の縮合多環芳香族複素環であることが特に好ましい。
【0057】
中でも、環Aは、脱保護速度、晶析性、及び、収率の観点から、ベンゾチオフェン環、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、又は、チオフェン環であることが好ましく、ベンゾチオフェン環、フラン環、ベンゾフラン環、インドール環、カルバゾール環、インダゾール環、又は、チオフェン環であることがより好ましく、ベンゾフラン環、インドール環、カルバゾール環、又は、チオフェン環であることが更に好ましく、ベンゾフラン環、インドール環、又は、カルバゾール環であることが特に好ましい。
なお、保護するペプチドのC末端がアミドの場合はインドール環が好ましく、保護するペプチドのC末端がカルボン酸の場合は、ベンゾフラン環が好ましい。
【0058】
脱保護速度、晶析性、及び、収率の観点から、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、ピラゾール環、又は、インダゾール環上の1位の窒素原子は、上記窒素原子上に置換基を有することが好ましい。置換基としては、上述の式(1)におけるRAが好適に挙げられ、好ましい態様も同様である。
また、環Aは、収率の観点から、窒素原子を有する5員環を含む、2環又は3環の縮合多環芳香族複素環であることが好ましく、インドール環、又は、カルバゾール環であることがより好ましい。
更に、環Aは、置換基を有していてもよく、後述するように、2以上の置換基が結合して環構造を形成していてもよく、環Aに脂肪族炭化水素環、多環芳香族炭化水素環、脂肪族複素環等が更に縮環した構造であってもよい。
【0059】
〔YA〕
式(1)におけるYAは、脱保護速度、溶剤溶解性、及び、収率の観点から、-OH、-NHR、又は、-SHであることが好ましく、-OH、又は、-NHRであることがより好ましい。
Rにおけるアルキル基としては、炭素数(「炭素原子数」ともいう。)1~30のアルキル基が挙げられ、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましい。好適な具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基、及び、エチル基がより好ましく挙げられる。
Rにおける芳香族基置換アルキル基としては、炭素数7~30の芳香族基置換アルキル基が挙げられ、炭素数7~20の芳香族基置換アルキル基であることが好ましく、炭素数7~16のアラルキル基(例えば、炭素数6~10の芳香族基に炭素数1~6のアルキレン基が結合した基)がより好ましく挙げられる。好適な具体例としては、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、1-ナフチルプロピル基等が挙げられ、ベンジル基がより好ましく挙げられる。
Rにおけるヘテロ芳香族基置換アルキル基としては、炭素数5~30のヘテロ芳香族基置換アルキル基が挙げられ、炭素数5~20のヘテロ芳香族基置換アルキル基であることが好ましく、炭素数5~16のヘテロ芳香族基置換アルキル基(例えば、炭素数4~10のヘテロ芳香族基に炭素数1~6のアルキレン基が結合した基)がより好ましく挙げられる。好適な具体例としては、インドリルメチル基、フルフリル基、ベンゾフラニルメチル基、チオフェニルメチル基、ベンゾチオフェニルメチル基等が挙げられる。
中でも、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数7~16の芳香族基置換アルキル基、又は、Fmoc基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、ベンジル基、又は、Fmoc基であることがより好ましく、水素原子、又は、Fmoc基であることが更に好ましい。
RがFmoc基の場合、後述する1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)等の塩基でFmoc基を脱保護することで、YAが-NH2になることから、RがFmoc基のときと、Rが水素原子のときと、は等価であると見なすことができる。
【0060】
また、式(1)で表される化合物は、環A上に有する上記置換基、RB上に有する置換基又はRAとして、YA及びRBが連結したメチレン基を有する環Aを有する基、又は、YA及びRBが連結したメチレン基を有する環A及びYAを有する基を有していてもよい。すなわち、式(1)で表される化合物は、2量体等の多量体であってもよい。多量体としては、合成のし易さの観点から2量体~6量体であることが好ましく、2量体~4量体であることがより好ましく、2量体であることが特に好ましい。
【0061】
式(1)における環A上のRAの置換数である。aは、脱保護速度、溶剤溶解性、及び、収率の観点から、1~4の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましく、1又は2であることが特に好ましい。
【0062】
また、式(1)におけるRB上のRCの置換数であるcは、脱保護速度、溶剤溶解性、及び、収率の観点から、0~4の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましく、0であることが特に好ましい。
更に、式(1)におけるa+cの値は、0以上であることが好ましく、脱保護速度、溶剤溶解性、及び、収率の観点から、1~6の整数であることがより好ましく、1~4の整数であることが更に好ましく、1~3であることが特に好ましく、1であることが最も好ましい。
【0063】
〔RA及びRC〕
RAはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表す。
また、RCはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表す。
「脂肪族炭化水素基」とは、直鎖、分岐状、若しくは、環状の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、炭素数5以上の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数5~60の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数5~30の脂肪族炭化水素基が更に好ましく、炭素数10~30の脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
また、「脂肪族炭化水素基」は、溶剤溶解性、晶析性、及び、収率の観点から、炭素数12以上であることが好ましく、炭素数14以上であることがより好ましく、炭素数16以上であることが更に好ましく、炭素数18以上であることが特に好ましい。
「脂肪族炭化水素基を有する有機基」における「脂肪族炭化水素基」の部位は、特に限定されず、末端に存在しても(1価基)、それ以外の部位に存在してもよい(例えば二価基)。
本明細書中、「脂肪族炭化水素基を有する有機基」とは、その分子構造中に脂肪族炭化水素基を有する一価(環Aに結合する結合手が1つ)の有機基である。
「脂肪族炭化水素基を有する有機基」における「脂肪族炭化水素基」の部位は、特に限定されず、末端に存在しても(1価基)、それ以外の部位に存在してもよい(例えば二価基)。
「脂肪族炭化水素基」としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、
具体的には、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、オレイル基、イソステアリル基等の一価の基、及び、それらから誘導される二価の基(上記一価の基から水素原子を1つ除いた二価の基)や、各種ステロイド基からヒドロキシ基などを除外した基などが挙げられる。
「アルキル基」としては、炭素数5~30のアルキル基が好ましく、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、イソステアリル基等が挙げられ、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、又は、テトラコシル基が好ましく、イコシル基、ドコシル基、又は、テトラコシル基がより好ましい。
「シクロアルキル基」としては、炭素数5~30のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基等が挙げられる。また、これらが繰り返し連結してもよく、2環以上の縮環構造であってもよい。
「アルケニル基」としては、炭素数5~30のアルケニル基が好ましく、例えば、ペンテニル基、ヘキセニル基、オレイル基等が挙げられる。
「アルキニル基」としては、炭素数5~30のアルキニル基が好ましく、例えば、4-ペンチニル基、5-ヘキセニル基等が挙げられる。
「ステロイド基」としては、例えば、コレストロール構造を有する基やエストラジオール構造を有する基等が好ましい。
上記有機基は更にシリル基、シリルオキシ構造を有する炭化水素基、パーフルオロアルキル構造を有する有機基で置換されてもよい。
【0064】
上記シリル基としては、トリアルキルシリル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基を3つ有するシリル基であることがより好ましい。
上記シリルオキシ構造を有する炭化水素基におけるシリルオキシ構造としては、トリアルキルシリルオキシ構造であることが好ましく、炭素数1~3のアルキル基を3つ有するシリルオキシ構造であることがより好ましい。
また、上記シリルオキシ構造を有する炭化水素基は、シリルオキシ構造を1~3個有することが好ましい。
更に、上記シリルオキシ構造を有する炭化水素基の炭素数は、10以上であることが好ましく、10~100であることがより好ましく、16~50であることが特に好ましい。
【0065】
上記シリルオキシ構造を有する炭化水素基としては、下記式(Si)で表される基が好ましく挙げられる。
【0066】
【0067】
式(Si)中、Rsi1は、単結合、又は、炭素数1~3のアルキレン基を表し、Rsi2は、炭素数1~3のアルキレン基を表し、Rsi3及びRsi4はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は、-OSiRsi5Rsi6Rsi7を表し、Rsi5~Rsi7はそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、又は、アリール基を表す。
【0068】
式(Si)におけるRsi5~Rsi7はそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基であることが特に好ましい。
【0069】
上記パーフルオロアルキル構造を有する有機基におけるパーフルオロアルキル構造は、炭素数1~20のパーフルオロアルキル構造であることが好ましく、炭素数5~20のパーフルオロアルキル構造であることがより好ましく、炭素数7~16のパーフルオロアルキル構造であることが特に好ましい。また、上記パーフルオロアルキル構造は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
上記パーフルオロアルキル構造を有する有機基は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキル構造を有するアルキル基、又は、パーフルオロアルキル構造及びアルキル鎖中にアミド結合を有するアルキル基であることが好ましい。
上記パーフルオロアルキル構造を有する有機基の炭素数は、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、10~100であることが更に好ましく、16~50であることが特に好ましい。
上記パーフルオロアルキル構造を有する有機基としては、例えば、下記に示す基が好ましく挙げられる。
【0070】
【0071】
「脂肪族炭化水素基を有する有機基」中の「脂肪族炭化水素基」以外の部位は任意に設定することができる。例えば-O-、-S-、-COO-、-OCONH-、-CONH-、「脂肪族炭化水素基」以外の炭化水素基(一価の基又は二価の基)等の部位を有していてもよい。
「脂肪族炭化水素基」以外の「炭化水素基」としては、例えば、芳香族炭化水素基等が挙げられ、具体的には、例えば、アリール基等の一価の基、及び、それらから誘導される二価の基が用いられる。
「アリール基」は、炭素数6~14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ビフェニリル基、2-アンスリル基等が挙げられる。中でも、炭素数6~10のアリール基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
また、上記脂肪族炭化水素基、上記脂肪族炭化水素基以外の炭化水素基は、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子)、オキソ基等から選択される置換基で置換されていてもよい。
【0072】
上記RAにおいて、脂肪族炭化水素基を有する有機基の環Aへの結合(置換)は、上記RA中に存在する脂肪族炭化水素基又は上記炭化水素基を介するもの、すなわち、直接炭素-炭素で結合しているものであってもよいし、又は、炭素-窒素で結合しているものであってもよいし、上記RA中に存在する-O-、-S-、-COO-、-OCONH-、-CONH-等の部位を介するものであってもよい。
好ましくは、化合物の合成のし易さの点から、炭素-炭素で結合しているもの、若しくは、炭素-窒素で結合しているもの、-O-、-S-、-COO-又は-CONH-を介するものであることが好ましく、炭素-炭素で結合しているもの、炭素-窒素で結合しているもの、又は、-O-を介するものであることがより好ましい。
環Aが、酸素原子又は硫黄原子を有する環である場合、脂肪族炭化水素基を有する有機基の環Aへの結合(置換)は、-O-を介するものであることが好ましい。
環Aが、窒素原子を有する環である場合、脂肪族炭化水素基を有する有機基の環Aへの結合(置換)は、直接、炭素-窒素で結合するものであることが好ましい。
【0073】
本開示に係る式(1)で表される化合物において、全てのRA、RB及びRCが有する全ての脂肪族炭化水素基の合計炭素数が、溶剤溶解性、晶析性、及び、収率の観点から、24以上であることが好ましく、24~200であることがより好ましく、32~100であることが更に好ましく、34~80であることが特に好ましく、36~80であることが最も好ましい。
また、本開示に係る式(1)で表される化合物において、全てのRAが有する全ての脂肪族炭化水素基の合計炭素数が、溶剤溶解性、晶析性、及び、収率の観点から、24以上であることが好ましく、24~200であることがより好ましく、32~100であることが更に好ましく、34~80であることが特に好ましく、36~80であることが最も好ましい。
また、本開示に係る式(1)で表される化合物は、RA、RB及びRCの少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が炭素数12以上である化合物であり、溶剤溶解性、晶析性、及び、収率の観点から、少なくとも1つのRA又はRCにおいて炭素数12以上の脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有する化合物であることが好ましく、少なくとも1つのRAにおいて、炭素数12~100の脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有する化合物であることがより好ましく、炭素数18~40の脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有する化合物であることが更に好ましく、炭素数20~36の脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有する化合物であることが特に好ましい。
本開示に係る式(1)で表される化合物は、RA、RB及びRCの少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、好ましくは14以上、より好ましくは16以上、更に好ましくは18以上、特に好ましくは20以上であると、より優れた効果を発揮する。その理由は炭素数が増加することで分子全体に占める疎水性の寄与率が大きくなり、疎水性溶剤に溶解しやすくなり、また、親水性溶媒に対しては、炭素数が増加することで凝集力がより増加し、晶析しやすくなるためと考えられる。
更に、上記脂肪族炭化水素基は、晶析性、及び、収率の観点から、アルキル基であることが好ましく、直鎖アルキル基であることがより好ましい。
また、1つのRA、RB、又はRCの炭素数はそれぞれ独立に、溶剤溶解性、晶析性、及び、収率の観点から、12~200であることが好ましく、18~150であることがより好ましく、18~100であることが更に好ましく、20~80であることが特に好ましい。
【0074】
本開示に係る式(1)で表される化合物において、RA、RB、又はRCが有する全ての脂肪族炭化水素基の合計炭素数が、溶剤溶解性、晶析性、及び、収率の観点から、24以上であることが好ましく、32~200であることがより好ましく、38~100であることが更に好ましく、40~80であることが特に好ましい。
【0075】
更にまた、本開示に係る式(1)で表される化合物が有する炭素数12以上の脂肪族炭化水素基は、RA、RB及びRCの少なくとも1つに含まれており、溶剤溶解性、晶析性、及び、収率の観点から、RA及びRCの少なくとも1つに含まれていることが好ましく、RAの少なくとも1つに含まれていることがより好ましい。
【0076】
式(1)におけるmは、0~2の整数を表す。mは、収率及びペプチド縮合物の化合物安定性の観点からは、0又は1であることが好ましい。また、式(1)におけるmは、脱保護速度の観点からは、1又は2であることが好ましい。
また、式(1)におけるYAが-NHRであり、Rが水素原子の場合、式(1)におけるmは、脱保護速度の観点からは、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
また、式(1)におけるYAが-NHRであり、Rが水素原子以外の置換基の場合、式(1)におけるmは、脱保護速度の観点からは、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
また、式(1)におけるYAが-OHである場合、式(1)におけるmは、脱保護速度の観点からは、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0077】
〔RB〕
式(1)におけるRBはそれぞれ独立に、溶剤溶解性、晶析性、及び、収率の観点から、一価の脂肪族炭化水素基、又は、(1+c)価の芳香族基であることが好ましく、炭素数1~30の一価のアルキル基、又は、炭素数6~30の(1+c)価の芳香族基であることがより好ましく、炭素数1~26の一価のアルキル基、又は、炭素数6~20の(1+c)価の芳香族基であることが更に好ましく、炭素数1~22の一価のアルキル基、又は、炭素数6~10の(1+c)価の芳香族基であることが特に好ましい。
RBにおける一価のアルキル基、(1+c)価の芳香族基及び(1+c)価のヘテロ芳香族基は、置換基を有していてもよい。上記置換基としては、特に制限はないが、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、Rst-CO-NRst-、-CON(Rst)2、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、及び、これらを2以上組み合わせた基等が挙げられる。なお、Rstは、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
【0078】
RBにおける一価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、イソステアリル基等が挙げられる。
RBにおける(1+c)価の芳香族基としては、例えば、フェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、トリメトキシフェニル基、フェニレン基、ベンゼントリイル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ナフチレン基、ナフタレントリイル基等が挙げられる。
中でも、m=1又は2かつYAが-OHのときは、ペプチド縮合物の化合物安定性の観点から、フェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、又は、トリクロロフェニル基が好ましく、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、又は、トリクロロフェニル基がより好ましい。
m=1かつYAが-NHRのときは、脱保護速度の観点から、フェニル基、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、トリメトキシフェニル基、が好ましく、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、又は、トリメトキシフェニル基がより好ましい。
m=2かつYAが-NHRのときは、ペプチド縮合物の化合物安定性の観点から、フェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、又は、トリクロロフェニル基が好ましく、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、又は、トリクロロフェニル基がより好ましい。
RBにおける(1+c)価のヘテロ芳香族基としては、(1+c)価の、単環の含窒素ヘテロ芳香族基、単環の含酸素ヘテロ芳香族基、単環の含硫黄ヘテロ芳香族基、単環の含窒素含酸素ヘテロ芳香族基、単環の含窒素含硫黄ヘテロ芳香族基、二環式の含窒素ヘテロ芳香族基、二環式の含酸素ヘテロ芳香族基、二環式の含硫黄ヘテロ芳香族基、二環式の含窒素含酸素ヘテロ芳香族基又は二環式の含窒素含硫黄ヘテロ芳香族基等が挙げられる。具体的には、例えば、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジンジイル基、ピリジントリイル基、フランジイル基、チオフェンジイル基、ピロールジイル基、ベンゾフランジイル基、ベンゾチオフェンジイル基、インドールジイル基等が挙げられる。
【0079】
式(1)において、少なくとも1つのRA又はRCが、溶剤溶解性、晶析性、及び、収
率の観点から、下記式(f1)、式(a1)、式(b1)又は式(e1)のいずれかで表される基であることが好ましく、下記式(f1)又は式(a1)のいずれかで表される基であることがより好ましく、下記式(f1)で表される基であることが特に好ましい。
【0080】
【0081】
式(f1)中、波線部分は環Aとの結合位置を表し、m9は0~3の整数を表し、X9はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R9はそれぞれ独立に、二価の脂肪族炭化水素基を表し、Ar1は、(m10+1)価の芳香族基、又は、(m10+1)価の複素芳香族基を表し、m10は、1~3の整数を表し、X10はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R10はそれぞれ独立に、一価の脂肪族炭化水素基を表し、R10の少なくとも1つは、炭素数5以上の一価の脂肪族炭化水素基である。
【0082】
【0083】
式(a1)中、波線部分は環Aとの結合位置を表し、m20は、1~10の整数を表し、X20はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R20の少なくとも1つは、炭素数5以上の二価の脂肪族炭化水素基である。
【0084】
【0085】
式(b1)中、波線部分は環Aとの結合位置を表し、mbは、1又は2を表し、b1~b4はそれぞれ独立に、0~2の整数を表し、Xb1~Xb4はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCONH-、又は、-CONH-を表し、Rb2及びRb4はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は、炭素数5以上の脂肪族炭化水素基を表し、Rb3は、炭素数5以上の脂肪族炭化水素基を表す。
【0086】
【0087】
式(e1)中、波線部分は環Aとの結合位置を表し、Xe1は、単結合、-O-、-S-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、meは0~15の整数を表し、e1は0~11の整数を表し、e2は0~5の整数を表し、Xe2はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、Re2はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、炭素数5以上の脂肪族炭化水素基を有する有機基を表す。
【0088】
式(f1)におけるm9は、0又は1であることが好ましく、1であることがより好ましい。
式(f1)におけるX9及びX10はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCONH-、又は、-CONH-であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
式(f1)におけるR9はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。
式(f1)におけるR10はそれぞれ独立に、炭素数5~60の一価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数12~50の一価の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数18~40の一価の脂肪族炭化水素基が更に好ましく、炭素数20~32の一価の脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。また、R10はそれぞれ独立に、直鎖アルキル基、又は、分岐アルキル基であることが好ましく、直鎖アルキル基であることがより好ましい。
式(f1)におけるm10は、2又は3であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(f1)におけるAr1は、(m10+1)価の芳香族基であることが好ましく、ベンゼンから(m10+1)個の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
【0089】
また、上記式(f1)で表される基は、溶剤溶解性、晶析性、及び、収率の観点から、下記式(f2)で表される基であることが好ましい。
【0090】
【0091】
式(f2)中、波線部分は環Aとの結合位置を表し、m10は、1~3の整数を表し、m11は、0~3の整数を表し、X10はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCONH-、-NHCONH-、-NHCO-、又は、-CONH-を表し、R10はそれぞれ独立に、炭素数5以上の一価の脂肪族炭化水素基を表す。
【0092】
式(f2)におけるm10、X10及びR10はそれぞれ、式(f1)におけるm10、X10及びR10と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(f2)におけるm11は、0又は1であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0093】
式(a1)におけるm20は、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
式(a1)におけるX20はそれぞれ独立に、-O-、-S-、-COO-、-OCONH-、又は、-CONH-であることが好ましく、-O-であることがより好ましい。
式(a1)におけるR20は、炭素数5以上の二価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数5~60の二価の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数8~40の二価の脂肪族炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数12~32の二価の脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。また、R20は、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
【0094】
式(b1)におけるmbは、1であることが好ましい。
式(b1)におけるb1~b4はそれぞれ独立に、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
式(b1)におけるXb1~Xb4はそれぞれ独立に、-O-、-S-、-COO-、-OCONH-、又は、-CONH-であることが好ましく、-O-であることがより好ましい。
式(b1)におけるRb2及びRb4はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は、炭素数5~60の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、水素原子、メチル基、又は、炭素数8~40のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、又は、炭素数12~32のアルキル基であることが特に好ましい。
式(b1)におけるRb3は、炭素数5~60の、一価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数5~60の一価の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数8~40の一価の脂肪族炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数12~32の一価の脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。また、Rb3は、直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0095】
また、本開示に係る式(1)で表される化合物は、溶剤溶解性の観点からは、RAにおける脂肪族炭化水素基として、分岐を有する脂肪族炭化水素基が好ましく挙げられ、以下に示す基がより好ましく挙げられる。なお、波線部分は他の構造との結合位置を表し、nt2は3以上の整数を表し、nt3は、下記基の総炭素数が14~300となるように設定される整数を表す。
【0096】
【0097】
式(1)で表される化合物が環A上に有していてもよい置換基としては、特に制限はないが、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、Rst-CO-NRst-、-CON(Rst)2、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、及び、これらを2以上組み合わせた基等が挙げられる。なお、Rstは、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
また、式(1)で表される化合物が多量体である場合、環A上に有していてもよい置換基としては、下記式(M)で表される基が好ましく挙げられる。
【0098】
【0099】
式(M)中、環A、YA、X0、RA、RB、RC、m、a、及び、cは、式(1)中における環A、YA、X0、RA、RB、RC、m、a、及び、cと同義であり、好ましい態様も同様である。
また、置換基として式(M)で表される基を有する場合、式(1)で表される化合物は、後述する式(20)で表される化合物であることが好ましい。
【0100】
上記式(1)中の環Aは、脱保護速度、晶析性、溶剤溶解性、及び、収率の観点から、下記式(10)、式(20)、又は、式(30)のいずれかで表される構造であることが好ましく、式(10)又は式(20)で表される構造であることがより好ましく、下記式(10)で表される構造であることが更に好ましい。
【0101】
【0102】
式(10)中、Rr10~Rr14のいずれかが式(1)におけるYAを有する炭素原子を含む基(好ましくはYAと連結した炭素原子)と連結し、Rr10は、置換基、又は、RAを表し、Rr11~Rr14は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、ただし、Rr10~Rr14の少なくとも1つはRAであり、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上であり、Rr11とRr12、又は、Rr13とRr14はそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよく、置換基を介して互いに連結して環を形成してもよい。
【0103】
式(20)中、Rr20~Rr23のいずれかが式(1)におけるYAを有する炭素原子を含む基(好ましくはYAと連結した炭素原子)と連結し、Rr20は、置換基、又は、RAを表し、Rr21~Rr23は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、ただし、Rr20~Rr23の少なくとも1つはRAであり、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上であり、Rr22とRr23は、互いに連結して環を形成してもよく、置換基を介して互いに連結して環を形成してもよい。
【0104】
式(30)中、Rr31~Rr34のいずれかが式(1)におけるYAを有する炭素原子を含む基(好ましくはYAと連結した炭素原子)と連結し、X30は、酸素原子、又は硫黄原子を表し、Rr31~Rr34は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、ただし、Rr31~Rr34の少なくとも1つはRAであり、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上であり、Rr31とRr32、又は、Rr33とRr34はそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよく、置換基を介して互いに連結して環を形成してもよい。
【0105】
上記式(10)が式(11)で表される構造であることが好ましい。式(20)が式(21)で表される構造であることが好ましい。式(30)が式(31)で表される構造であることが好ましい。
【0106】
【0107】
式(11)中、Rr15~Rr18のいずれかが式(1)におけるYAを有する炭素原子を含む基(好ましくはYAと連結した炭素原子)と連結し、Rr15~Rr18はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表し、RAは、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、Rr15とRr16、又は、Rr17とRr18は、それぞれに独立に、互いに連結して環を形成してもよく、置換基を介して互いに連結して環を形成してもよい。
【0108】
晶析性、及び、収率の観点から、式(11)中、Rr15とRr16、又は、Rr17とRr18は、それぞれに独立に、互いに連結して環を形成することが好ましい。なお、Rr15とRr16、又は、Rr17とRr18が互いに連結して環を形成している場合、式(11)は、インドール環を有し、Rr15とRr16、及び、Rr17とRr18が互いに連結して環を形成している場合、式(11)は、カルバゾール環を有する。
【0109】
式(21)中、Rr24~Rr26のいずれかが式(1)におけるYAを有する炭素原子を含む基(好ましくはYAと連結した炭素原子)と連結し、Rr24~Rr26はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表し、RAは、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上(好ましくは16以上)であり、Rr25とRr26は、互いに連結して環を形成してもよく、置換基を介して互いに連結して環を形成してもよい。
式(21)中、Rr25とRr26が、互いに連結して環を形成している場合、式(21)は、インダゾール環を有する。
【0110】
式(31)中、波線部分は、式(1)におけるYAを有する炭素原子を含む基(好ましくはYAと連結した炭素原子)と連結する位置を表し、Xr31は、酸素原子、又は、硫
黄原子を表し、Rr35~Rr37はそれぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が14以上(好ましくは16以上)であり、ただし、Rr35~Rr37の少なくとも1つはRAであり、Rr36とRr37は、互いに連結して環を形成してもよく、置換基を介して互いに連結して環を形成してもよい。
式(31)中、Rr36とRr37が、互いに連結して環を形成しており、かつXr31が硫黄原子の場合、式(31)は、ベンゾチオフェン環を有し、
式(31)中、Rr36とRr37が、互いに連結して環を形成しており、かつXr31が酸素原子の場合、式(31)は、ベンゾフラン環を有する。
収率の観点から、式(31)中、Rr36とRr37は置換基を介して互いに連結して環を形成しないことが好ましい。
【0111】
式(10)、式(20)、式(30)、式(11)、式(21)、又は、式(31)におけるRAはそれぞれ、式(1)におけるRAと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0112】
式(10)、式(20)、式(30)、式(11)、式(21)、又は、式(31)における置換基は、それぞれ独立に、結合手、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、Rst-CO-NRst-、-CON(Rst)2、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、又は、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、又は、アリール基であることがより好ましく、結合手、アルコキシ基、又は、アルキル基であることが更に好ましい。
【0113】
式(10)、式(20)、式(30)、式(11)、式(21)、又は、式(31)におけるRAは、溶剤溶解性、晶析性、及び、収率の観点から、上記式(f1)、式(a1)、式(b1)又は式(e1)のいずれかで表される基であることが好ましく、上記式(f1)又は式(a1)のいずれかで表される基であることがより好ましく、上記式(f1)で表される基であることが更に好ましく、上記式(f2)で表される基であることが特に好ましい。
【0114】
溶剤溶解性、晶析性、及び、収率の観点から、式(1)中の環Aとしては、式(11)、又は、式(31)で表される構造であることが好ましく、式(11)で表される構造ことがより好ましい。
溶剤溶解性、晶析性、及び、収率の観点から、式(11)で表される構造が、カルバゾール環、又は、インドール環であることが好ましく、式(10)で表される化合物が、下記式(111)~式(114)のいずれかで表される化合物であることがより好ましい。
【0115】
【0116】
式(111)~式(114)中、RAは、炭素数12以上の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数12以上の脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、
YBは、-OH、-NHR、-SH、又は、-X0を表し、Rは水素原子、アルキル基、芳香族基置換アルキル基又はヘテロ芳香族基置換アルキル基又はFmoc基を表し、X0はCl、Br又はIを表し、
RDは水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、REは水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
式(111)~式(114)中におけるYB、RA、R及びX0は、式(1)におけるYA、RA、R及びX0と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0117】
式(111)~式(114)におけるRDは、脱保護速度、晶析性、溶剤溶解性、及び、収率の観点から、水素原子、アリール基、又はヘテロアリール基であることが好ましく、水素原子又はアリール基であることがより好ましい。
特にREが水素原子かつYBが-OHの場合、RDは、水素原子、フェニル基、ハロゲン原子で置換されたフェニル基が好ましく、水素原子がより好ましい。REが水素原子かつYBが-NHRの場合、RDは、水素原子、フェニル基、アルコキシフェニル基、ジアルコキシフェニル基、又は、トリアルコキシフェニル基が好ましく、水素原子、フェニル基、又は、ジアルコキシフェニル基がより好ましい。
また、RDの炭素数は、1~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、6~24であることが特に好ましい。
【0118】
式(1)で表される化合物の分子量は、特に制限はないが、脱保護速度、晶析性、溶剤溶解性、及び、収率の観点から、340~3,000であることが好ましく、400~2,000であることがより好ましく、500~1,500であることが更に好ましく、800~1,300であることが特に好ましい。また、分子量が3,000以下であると、
目的物に占める式(1)の割合が適度であり、式(1)を脱保護して得られる化合物の割合が少なくならないため、生産性に優れる。
【0119】
式(1)で表される化合物の具体例としては、下記に示す化合物が好ましく挙げられるが、これらに限定されない。
なお、Rgは、炭素数12以上の脂肪族炭化水素基を表し、炭素数12~100の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数18~40の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数20~32の脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。また、上記脂肪族炭化水素基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、又は、環状アルキル基であることが好ましく、直鎖アルキル基であることがより好ましい。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
<<式(1)で表される芳香族複素環化合物の製造方法>>
本開示に係る式(1)で表される芳香族複素環化合物の製造方法としては、特に限定されないが、公知の方法を参照して製造することができる。
式(1)で表される芳香族複素環化合物の製造に用いる原料化合物は、特に述べない限り、市販されているものを用いてもよいし、自体公知の方法、又は、これらに準ずる方法に従って製造することもできる。
また、必要に応じ、製造した式(1)で表される芳香族複素環化合物を公知の精製方法により、精製してもよい。例えば、再結晶、カラムクロマトグラフィー等によって単離及び精製する方法、及び、溶液温度を変化させる手段や溶液組成を変化させる手段等によって再沈殿により精製する方法等を行うことができる。
【0127】
本開示に係る式(1)で表される芳香族複素環化合物の合成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下のスキーム1、又はスキーム2に従って合成することができる。また、国際公開第2010/113939号に記載の合成方法を参考に合成することもできる。
【0128】
【0129】
【0130】
R100は水素原子またはOR101を表し、R101はアルキル基を表す。X100はCl、Br、Iを表す。R102は水素原子、アルキル基、又はFmoc基を表す。R103はアルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を表す。nは1又は2を表し、kは1~5の整数を表し、mは1又は2を表す。
【0131】
<<ペプチド化合物の製造方法>>
本開示に係るペプチド化合物の製造方法において、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物を用いる工程が、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物によりアミノ酸化合物又はペプチド化合物のカルボキシ基又はアミド基を保護するC末端保護工程であることが好ましい。
また、本開示に係るペプチド化合物の製造方法は、ペプチド化合物の合成容易性、及び、収率の観点から、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物によりアミノ酸化合物又はペプチド化合物のカルボキシ基又はアミド基を保護するC末端保護工程に加え、上記C末端保護工程で得られたN末端保護C末端保護アミノ酸化合物又はN末端保護C末端保護ペプチド化合物のN末端を脱保護するN末端脱保護工程、及び、上記N末端脱保護工程で得られたC末端保護アミノ酸化合物又はC末端保護ペプチド化合物のN末端に、N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物を縮合させるペプチド鎖延長工程を更に含むことがより好ましく、上記ペプチド鎖延長工程で得られたN末端保護C末端保護ペプチド化合物を沈殿させる沈殿工程を更に含むことが更に好ましく、上記沈殿工程の後に、得られたN末端保護C末端保護ペプチド化合物のN末端を脱保護する工程、得られたC末端保護ペプチド化合物のN末端に、N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物を縮合させる工程、及び、得られたN末端保護C末端保護ペプチド化合物を沈殿する工程をこの順で1回以上更に含むことが特に好ましい。
また、本開示に係るペプチド化合物の製造方法は、C末端保護基を脱保護するC末端脱保護工程を更に含むことが好ましい。
更に、本開示に係るペプチド化合物の製造方法は、上記C末端保護工程の前に、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物を溶媒に溶解する溶解工程を更に含むことが好ましい。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0132】
<<溶解工程>>
本開示に係るペプチド化合物の製造方法は、上記C末端保護工程の前に、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物を溶媒に溶解する溶解工程を含むことが好ましい。
溶媒としては、一般的な有機溶媒を反応に用いることができるが、上記溶媒における溶解度が高い程、優れた反応性が期待できるため、式(1)で表される芳香族複素環化合物の溶解度の高い溶媒を選択することが好ましい。具体的にはクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等の非極性有機溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、上記ハロゲン化炭素類や非極性有機溶媒に、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類を、式(1)で表される芳香族複素環化合物が溶解し得る限り、適宜の割合で混合して用いてもよい。
また、Organic Process Research & Development、2017、21、3、365-369に記載の溶剤を使用してもよい。
【0133】
<C末端保護工程>
本開示に係るペプチド化合物の製造方法は、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物によりアミノ酸化合物又はペプチド化合物のカルボキシ基又はアミド基を保護するC末端保護工程を含む。
上記C末端保護工程に用いられるアミノ酸化合物、又は、ペプチド化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物であることが好ましく、Fmoc保護アミノ酸化合物、又は、Fmoc保護ペプチド化合物であることがより好ましい。
また、上記C末端保護工程に用いられるアミノ酸化合物、又は、ペプチド化合物におけるC末端部分以外のヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、アミド基、イミダゾール基、インドール基、グアニジル基、メルカプト基等は後述する保護基等の公知の保護基により保護されていることが好ましい。
反応基質であるアミノ酸化合物又はペプチド化合物の使用量は、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物1モル当量に対し、1モル当量~10モル当量であることが好ましく、1モル当量~5モル当量であることがより好ましく、1モル当量~2モル当量であることが更に好ましく、1モル当量~1.5モル当量であることが特に好ましい。
【0134】
式(1)におけるYAが-OH又は-SHである上記式(1)で表される芳香族複素環化合物を用いる場合は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、縮合添加剤(縮合活性化剤)存在下、縮合剤を添加するか、酸触媒中で反応させることが好ましく挙げられる。
式(1)におけるYAが-NHRである上記式(1)で表される芳香族複素環化合物を用いる場合は、縮合添加剤(縮合活性化剤)存在下、縮合剤を添加するか、縮合剤と塩基と反応させることが好ましく挙げられる。
縮合添加剤の使用量は、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物1モル当量に対して、0.05モル当量~1.5モル当量であることが好ましい。
【0135】
縮合剤としては、ペプチド合成において一般的に用いられる縮合剤が、本開示においても制限なく用いることができ、これに限定されないが、例えば、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホニウムクロリド(DMTMM)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU(6-Cl))、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TCTU)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、その塩酸塩(EDC・HCl)、及び、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBop)等を挙げることができる。
中でも、DIC、EDC、EDC・HCl、DMT-MM、HBTU、HATU、又は、COMUが好ましい。
縮合剤の使用量は、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物1モル当量に対して、1モル当量~10モル当量であることが好ましく、1モル当量~5モル当量であることがより好ましい。
【0136】
縮合反応に用いる酸触媒としては、ペプチド合成において一般的に用いられる酸触媒を制限なく用いることができ、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等を挙げることができる。
中でもメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸が好ましい。
酸触媒の使用量は、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物1モル当量に対して、0モル当量を超え4.0モル当量であることが好ましく、0.05モル当量~1.5モル当量であることがより好ましく、0.1モル当量~0.3モル当量であることが更に好ましい。
【0137】
上記C末端保護工程において、反応を促進する、又はラセミ化などの副反応を抑制するため、縮合活性化剤を添加することが好ましい。
本開示における縮合活性化剤とは、縮合剤との共存化で、アミノ酸を、対応する活性エステル、対称酸無水物などに導いて、ペプチド結合(アミド結合)を形成させやすくする試薬である。
縮合活性化剤としては、ペプチド合成において一般的に用いられる縮合活性化剤を制限なく用いることができ、例えば、4-ジメチルアミノピリジン、N-メチルイミダゾール、ボロン酸誘導体、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、エチル 1-ヒドロキシトリアゾール-4-カルボキシレート(HOCt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、3-ヒドロキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾジン-4(3H)-オン(HOOBt)、N-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、N-ヒドロキシフタルイミド(HOPht)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(HONb)、ペンタフルオロフェノール、エチル(ヒドロキシイミノ)シアノアセタート(Oxyma)等を挙げることができる。中でも、4-ジメチルアミノピリジン、HOBt、HOCt、HOAt、HOOBt、HOSu、HONb、又は、Oxymaが好ましい。
活性化剤の使用量は、アミノ酸化合物又はペプチド化合物に対して、0モル当量を超え4.0モル当量であることが好ましく、0.1モル当量~1.5モル当量であることがより好ましい。
【0138】
塩基としては、ペプチド合成において一般的に用いられる塩基を制限なく用いることができ、例えば、ジイソプロピルエチルアミンなどの第三級アミン等が挙げられる。
溶媒としては、上記溶解工程で挙げた溶剤を好適に用いることができる。
反応温度は、特に制限はないが、-10℃~80℃であることが好ましく、0℃~40℃であることがより好ましい。反応時間は、特に制限はないが、1時間~30時間であることが好ましい。
反応の進行の確認は、一般的な液相有機合成反応と同様の方法を適用できる。すなわち、薄層シリカゲルクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、NMR等を用いて反応を追跡することができる。
【0139】
また、上記C末端保護工程により得られたN末端保護C末端保護アミノ酸化合物又はN末端保護C末端保護ペプチド化合物は、精製を行ってもよい。
例えば、得られたN末端保護C末端保護アミノ酸化合物又はN末端保護C末端保護ペプチド化合物を溶媒に溶解させ、所望の有機合成反応を行った後に得られる生成物を単離するために、N末端保護C末端保護アミノ酸化合物又はN末端保護C末端保護ペプチド化合物が溶解している溶媒を変化させ(例、溶媒組成の変更、溶媒の種類の変更)、再沈殿させる方法が好ましく挙げられる。
具体的には例えば、N末端保護C末端保護アミノ酸化合物又はN末端保護C末端保護ペプチド化合物が溶解するような条件下にて反応を行い、反応後、溶媒を留去後、溶媒置換するか、反応後、溶媒を留去せずに、反応系へ極性溶媒を添加することによって凝集物を沈殿化し不純物を淘汰する。置換溶媒としては、メタノール、アセトニトリル、水等の極性有機溶媒を単独または混合して用いる。すなわち、N末端保護C末端保護アミノ酸化合物又はN末端保護C末端保護ペプチド化合物が溶解するような条件下にて反応を行い、反応後、溶媒置換としては、例えば溶解にはハロゲン化溶媒、THF等を用いて、沈殿化にはメタノール、アセトニトリルや水等の極性有機溶媒を用いる。
【0140】
<N末端脱保護工程>
本開示に係るペプチド化合物の製造方法は、上記C末端保護工程で得られたN末端保護C末端保護アミノ酸化合物又はN末端保護C末端保護ペプチド化合物のN末端を脱保護するN末端脱保護工程を含むことが好ましい。
N末端の保護基としては、ペプチド化学等の技術分野で一般的に用いられる後述のアミノ基の保護基が使用可能であるが、本開示においては、tert-ブトキシカルボニル基(以下、Boc基ともいう。)、ベンジルオキシカルボニル基(以下、Cbz基、又は、Z基ともいう。)、又は、9-フルオレニルメトキシカルボニル基(以下、Fmoc基ともいう。)が好適に用いられる。
【0141】
脱保護条件は、当該一時保護基の種類により適宜選択されるが、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物由来の保護基の除去とは異なる条件により脱保護できる基が好ましい。例えば、Fmoc基の場合は、塩基で処理することにより行われ、Boc基の場合は、酸で処理することにより行われる。当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。
【0142】
塩基としては、ジメチルアミン、ジエチルアミンなどの第二級アミンや、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)などの求核性のない有機塩基等が挙げられる。
溶媒としては、上記溶解工程において挙げた溶剤を好適に用いることができる。
【0143】
<ペプチド鎖延長工程>
本開示に係るペプチド化合物の製造方法は、上記N末端脱保護工程で得られたC末端保護アミノ酸化合物又はC末端保護ペプチド化合物のN末端に、N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物を縮合させるペプチド鎖延長工程を含むことが好ましい。
上記ペプチド鎖延長工程は、上述した縮合剤、縮合添加剤等を使用し、ペプチド化学の分野において一般的に用いられるペプチド合成条件下で好適に行われる。
N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物としては、特に制限はなく、所望のものを用いることができるが、Fmoc保護アミノ酸化合物、又は、Fmoc保護ペプチド化合物を好適に用いることができる。
また、N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物におけるC末端部分以外のヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、アミド基、イミダゾール基、インドール基、グアニジル基、メルカプト基等は後述する保護基等の公知の保護基により保護されていることが好ましい。
【0144】
<<沈殿工程>>
本開示に係るペプチド化合物の製造方法は、上記ペプチド鎖延長工程で得られたN末端保護C末端保護ペプチド化合物を沈殿させる沈殿工程を更に含むことが好ましい。
上記沈殿工程は、上述した上記C末端保護工程の後に行ってもよい精製における沈殿方法と同様にして行うことができる。
【0145】
<<鎖延長>>
本開示に係るペプチド化合物の製造方法は、上記沈殿工程の後に、得られたN末端保護C末端保護ペプチド化合物のN末端を脱保護する工程、得られたC末端保護ペプチド化合物のN末端に、N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物を縮合させる工程、及び、得られたN末端保護C末端保護ペプチド化合物を沈殿する工程をこの順で1回以上更に含むことが好ましい。
上記3工程を繰り返し行うことにより、得られるペプチド化合物の鎖延長を容易に行うことができる。
上記3工程における各工程は、上述した対応する各工程と同様に行うことができる。
【0146】
<C末端脱保護工程>
本開示に係るペプチド化合物の製造方法は、C末端保護基を脱保護するC末端脱保護工程を更に含むことが好ましい。
上記C末端脱保護工程において、所望のアミノ酸残基数を有するC末端保護ペプチド化合物における上記式(1)で表される芳香族複素環化合物により形成されたC末端保護基を除去することによって、最終目的物であるペプチド化合物を得ることができる。
C末端保護基の除去方法としては、酸性化合物を用いた脱保護方法が好ましく挙げられる。
例えば、酸触媒を用いた方法や金属触媒を用いて水素添加する方法が挙げられる。酸触媒としては、トリフルオロ酢酸(TFA)、塩酸、トリフルオロエタノール(TFE)、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、酢酸などが挙げられる。強酸で分解しないペプチドに対しては、TFAが好ましく、強酸で分解するペプチドに対しては、TFE、HFIP、又は、酢酸が好ましい。酸の濃度は、保護基及び脱保護条件に応じ、適宜選択することができ、使用する溶媒の全質量に対し、0.01質量%~100質量%が好ましく、1質量%~100質量%がより好ましい。
また、TFAの濃度は、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、10質量%以下がより更に好ましく、1質量%以下が特に好ましい。本開示においては、弱酸条件でもC末端保護基の脱保護が可能であり、得られるペプチドの副反応を抑制することが可能である。
脱保護時間は、5時間以下が好ましく、3時間以下がより好ましく、1時間以下がさらに好ましい。
【0147】
本開示に係るペプチド化合物の製造方法により得られた最終目的物であるペプチド化合物は、ペプチド化学で常用される方法に従って、単離精製することができる。例えば、反応混合物を抽出洗浄、晶析、クロマトグラフィーなどによって、最終目的物であるペプチド化合物を単離精製することができる。
【0148】
本開示に係るペプチド化合物の製造方法により製造されるペプチドの種類は特に限定されないが、ペプチド化合物のアミノ酸残基数が、例えば、数十以下程度であることが好ましい。本開示に係るペプチド化合物の製造方法によって得られるペプチドは、既存の又は未知の合成ペプチドや天然ペプチドと同様に、様々な分野、医薬、食品、化粧品、電子材料、バイオセンサー等の分野に利用できる。
【0149】
本開示に係るペプチド化合物の製造方法は、次工程の反応に影響を及ぼさない範囲で上記沈殿工程を適宜省略することも可能である。
【0150】
本開示に係るペプチド化合物の製造方法に用いられるアミノ酸化合物、及び、ペプチド化合物がヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、カルボニル基、グアジニル基、メルカプト基等を有する場合、これらの基にペプチド化学等で一般的に用いられるような保護基が導入されていてもよく、反応後に必要に応じて保護基を除去することにより目的化合物を得ることができる。
【0151】
ヒドロキシ基の保護基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル)、フェニル基、トリチル基、炭素数7~10のアラルキル基(例、ベンジル)、ホルミル基、炭素数1~6のアシル基(例、アセチル、プロピオニル)、ベンゾイル基、炭素数7~10のアラルキル-カルボニル基(例、ベンジルカルボニル)、2-テトラヒドロピラニル基、2-テトラヒドロフラニル基、シリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジエチルシリル)、炭素数2~6のアルケニル基(例、1-プロぺニル)等が挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1~6のアルキル基(例、メチル、エチル、プロピル)、炭素数1~6のアルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ)、及び、ニトロ基よりなる群から選ばれる1個~3個の置換基で置換されていてもよい。
【0152】
アミノ基の保護基としては、例えば、ホルミル基、炭素数1~6のアシル基(例、アセチル、プロピオニル)、炭素数1~6のアルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、Boc基)、ベンゾイル基、炭素数7~10のアラルキル-カルボニル基(例、ベンジルカルボニル)、炭素数7~14のアラルキルオキシカルボニル基(例、ベンジルオキシカルボニル、Fmoc基)、トリチル基、モノメトキシトリチル基、1-(4,4-Dimethyl-2,6-dioxocyclohex-1-ylidene)-3-methylbutyl基、フタロイル基、N,N-ジメチルアミノメチレン基、シリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリ
ル、ジメチルフェニルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジエチルシリル)、炭素数2~6のアルケニル基(例、1-プロペニル)等が挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1~6のアルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ)、及び、ニトロ基よりなる群から選ばれる1個~3個の置換基で置換されていてもよい。
【0153】
カルボキシ基の保護基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル)、炭素数7~10のアラルキル基(例、ベンジル)、フェニル基、トリチル基、シリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジエチルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル)、炭素数2~6のアルケニル基(例、1-アリル)等が挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1~6のアルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ)、及び、ニトロ基よりなる群から選ばれる1個~3個の置換基で置換されていてもよい。
【0154】
カルボニル基の保護基としては、例えば、環状アセタール(例、1,3-ジオキサン)、非環状アセタール(例、ジ(炭素数1~6のアルキル)アセタール)等が挙げられる。
【0155】
グアニジル基の保護基としては、例えば、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル基、2,3,4,5,6-ペンタメチルベンゼンスルホニル基、トシル基、ニトロ基等が挙げられる。
【0156】
メルカプト基(スルフヒドリル基)の保護基としては、例えば、トリチル基、4-メチルベンジル基、アセチルアミノメチル基、t-ブチル基、t-ブチルチオ基等が挙げられる。
【0157】
また、これらの保護基の除去方法は、自体公知の方法、例えば、ProtectiveGroups in Organic Synthesis,John Wiley andSons刊(1980)に記載の方法等に準じて行えばよい。例えば、酸、塩基、紫外光、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、N-メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド、酢酸パラジウム、トリアルキルシリルハライド(例えば、トリメチルシリルヨージド、トリメチルシリルブロミド等)等を使用する方法、還元法等が用いられる。
【0158】
本開示に係るペプチド化合物の製造方法において、式(1)で表される芳香族複素環化合物は、保護基の形成だけでなく、ペプチド化合物の変性、水又は有機溶媒等への溶解度の調整、結晶化性の改良、多量体化等に用いることができる。
中でも、式(1)で表される芳香族複素環化合物は、保護基の形成に用いることが好ましく、アミノ酸化合物又はペプチド化合物におけるC末端保護基の形成に用いることがより好ましい。
【0159】
(保護基形成用試薬)
本開示に係る保護基形成用試薬は、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物を含む。
【0160】
本開示に係る保護基形成用試薬は、カルボキシ基又はアミド基の保護基形成用試薬であることが好ましく、アミノ酸化合物又はペプチド化合物のC末端保護基形成用試薬であることがより好ましい。
【0161】
本開示に係る保護基形成用試薬における式(1)で表される芳香族複素環化合物の好ましい態様は、上述したペプチド化合物の製造方法で使用される式(1)で表される芳香族複素環化合物の好ましい態様と同様である。
本開示に係る保護基形成用試薬は、固体状の試薬であっても、液体状の試薬であってもよい。
【0162】
本開示に係る保護基形成用試薬における式(1)で表される芳香族複素環化合物の含有量は、特に制限はないが、保護基形成用試薬の全質量に対し、0.1質量%~100質量%であることが好ましく、1質量%~100質量%であることがより好ましく、3質量%~100質量%であることが更に好ましい。
【0163】
本開示に係る保護基形成用試薬は、式(1)で表される芳香族複素環化合物以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、公知の成分を含むことができる。例えば、水、有機溶媒、酸化防止剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0164】
(式(1a)で表される芳香族複素環化合物)
本開示に係る化合物は、下記式(1a)で表される芳香族複素環化合物である。
【0165】
【0166】
式(1a)中、
環Aは芳香族複素環を表し、
YAは、-OH、-NHR、SH、又は、-X0を表し、Rは水素原子、アルキル基、芳香族基置換アルキル基又はヘテロ芳香族基置換アルキル基又はFmoc基を表し、X0はCl、Br又はIを表し、
RAはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、RA、RB及びRCの少なくとも1つが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、12以上であり、環Aは、RAに加えて更に置換基を有していてもよく、
RBはそれぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素、(1+c)価の芳香族基又は(1+c)価のヘテロ芳香族基を表し、
RCはそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基を表し、
mは0~2の整数を表し、aは0~5の整数を表し、cは0~5の整数を表し、
a及びcともに0である場合、RBは1価の脂肪族炭化水素基であり、
RA、RB及びRCが有する全ての脂肪族炭化水素基の合計炭素数が、40以上である。
【0167】
本開示に係る式(1a)で表される芳香族複素環化合物、及び、後述する本開示に係る式(10a)~(30a)のいずれかで表される芳香族複素環化合物は、新規な化合物であり、ペプチド化合物の製造に好適に用いることができる。中でも、本開示に係る式(1a)で表される芳香族複素環化合物、及び、後述の式(10a)~(30a)のいずれかで表される芳香族複素環化合物は、保護基形成用試薬として好適に用いることができ、カルボキシ基又はアミド基の保護基形成用試薬としてより好適に用いることができ、アミノ酸化合物又はペプチド化合物のC末端保護基形成用試薬として特に好適に用いることができる。
【0168】
本開示に係る化合物における式(1a)で表される芳香族複素環化合物はRA、RB及びRCが有する全ての脂肪族炭化水素基の合計炭素数が、40以上であること以外は、上述した本開示に係るペプチド化合物の製造方法において上述した式(1)で表される芳香族複素環化合物と同様であり、後述する好ましい態様以外の好ましい態様も同様である。
また、上記式(1a)で表される芳香族複素環化合物は、上記式(1)で表される芳香族複素環化合物と同様にして、合成することができる。
【0169】
本開示に係る化合物は、下記式(10a)~式(30a)のいずれかで表される芳香族複素環化合物である。
【0170】
【0171】
式(10a)中、Rr10~Rr14のいずれかが式(1a)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結し、Rr10は、置換基、又は、RAを表し、Rr11~Rr14は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、ただし、Rr10~Rr14の少なくとも1つはRAであり、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、Rr11とRr12、又は、Rr13とRr14はそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよく、置換基を介して互いに連結して環を形成してもよい。
【0172】
式(20a)中、Rr20~Rr23のいずれかが式(1a)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結し、Rr20は、置換基、又は、RAを表し、Rr21~Rr23は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、ただし、Rr20~Rr23の少なくとも1つはRAであり、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、全てのRAが有するそれぞれの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、Rr22とRr23は、互いに連結して環を形成してもよく、置換基を介し互いに連結して環を形成してもよい。
【0173】
式(30a)中、Rr31~Rr34のいずれかが式(1a)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結し、Xr30は、酸素原子、又は硫黄原子を表し、Rr31~Rr34は、それぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、ただし、Rr31~Rr34の少なくとも1つはRAであり、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、Rr31とRr32、又は、Rr33とRr34はそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成してもよく、置換基を介して
互いに連結して環を形成してもよい。
【0174】
本開示に係る式(10a)~式(30a)のいずれかで表される芳香族複素環化合物は、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が14以上であること以外は、上述した式(1)で表される芳香族複素環化合物と同様であり、後述する好ましい態様以外の好ましい態様も同様である。また、RA、RB及びRCが有する全ての脂肪族炭化水素基の合計炭素数は、40以上であることが好ましい。
【0175】
上記式(10a)~式(30a)のいずれかで表される化合物におけるRAは、上記式(1a)で表される芳香族複素環化合物におけるRAと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0176】
上記式(1a)で表される芳香族複素環化合物は、脱保護速度、晶析性、溶剤溶解性、及び、収率の観点から、上記式(10a)~式(30a)のいずれかで表される化合物であることが好ましく、上記式(10a)又は式(20a)で表される化合物であることがより好ましく、上記式(10a)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0177】
脱保護速度、晶析性、溶剤溶解性、及び、収率の観点から、上記式(10a)で表される化合物が式(11a)で表される化合物であることが好ましく、上記式(20)で表される化合物が式(21a)で表される化合物であることが好ましく、上記式(30a)で表される化合物が式(31a)で表される化合物であることが好ましい。
【0178】
【0179】
式(11a)中、Rr15~Rr18のいずれかが式(1a)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結し、Rr15~Rr18はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表し、RAは、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、Rr15とRr16、又は、Rr17とRr18は、それぞれに独立に、置換基を介して互いに連結して環を形成してもよい。
【0180】
式(21a)中、Rr24~Rr26のいずれかが式(1a)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結し、Rr24~Rr26はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基、を表し、RAは、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、Rr25とRr26は、置換基を介して互いに連結して環を形成してもよい。
【0181】
式(31a)中、波線部分は、式(1)におけるYAを有する炭素原子を含む基と連結する位置を表し、Xr31は、酸素原子、又は、硫黄原子を表し、Rr35~Rr37はそれぞれ独立に、水素原子、置換基、又は、RAを表し、RAは、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基を有する有機基であり、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が、14以上であり、ただし、Rr35~Rr37の少なくとも1つはRAであり、Rr36とは置換基を介して互いに連結して環を形成してもよい。
【0182】
上記式(11a)~式(31a)のいずれかで表される化合物は、少なくとも1つのRAが有する少なくとも1つの脂肪族炭化水素基の炭素数が14以上であること以外は、上述した本開示に係るペプチド化合物の製造方法において上述した式(10)~式(30)のいずれかで表される化合物と同様であり、後述する好ましい態様以外の好ましい態様も同様である。
【0183】
上記式(1a)で表される芳香族複素環化合物は、脱保護速度、晶析性、溶剤溶解性、及び、収率の観点から、上記式(11a)又は式(31a)で表される化合物であることが好ましく、上記式(11a)で表される化合物であることがより好ましい。
【0184】
上記式(1a)、上記式(10a)~(30a)、及び、式(11a)~(31a)において、脱保護速度、晶析性、溶剤溶解性、及び、収率の観点から、RA、RB及びRCが有する全ての脂肪族炭化水素基の合計炭素数が、40~200であることが好ましく、40~100であることがより好ましく、40~80であることが更に好ましい。
【0185】
上記式(11a)~式(31a)のいずれかで表される化合物におけるRAは、上記式(1a)で表される芳香族複素環化合物におけるRAと同義であり、好ましい態様も同様である。
【実施例0186】
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の実施形態の範囲は以下に示す具体例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0187】
特に記載のない場合、カラムクロマトグラフィーによる精製は、自動精製装置ISOLERA(Biotage社製)または中圧液体クロマトグラフYFLC-Wprep2XY.N(山善株式会社製)を使用した。
特に記載のない場合、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにおける担体は、SNAPKP-Sil Cartridge(Biotage社製)、ハイフラッシュカラムW001、W002、W003、W004、又は、W005(山善(株)製)を使用した。
カラムクロマトグラフィーに用いる溶離液における混合比は、体積比である。例えば、「ヘキサン:酢酸エチルの勾配溶離=50:50~0:100」は、50%ヘキサン/50%酢酸エチルの溶離液を最終的に0%ヘキサン/100%酢酸エチルの溶離液へ変化させたことを意味する。
また、例えば、「ヘキサン:酢酸エチルの勾配溶離=50:50~0:100、メタノール:酢酸エチルの勾配溶離=0:100~20:80」は、50%ヘキサン/50%酢酸エチルの溶離液を0%ヘキサン/100%酢酸エチルの溶離液へ変化させた後、溶離液を0%メタノール/100%酢酸エチルの溶離液へ切り替え、最終的に20%メタノール/80%酢酸エチルの溶離液へ変化させたことを意味する。
【0188】
MSスペクトルは、ACQUITY SQD LC/MS System(Waters社製、イオン化法:ESI(ElectroSpray Ionization、エレクトロスプレーイオン化)法)を用いて測定した。
【0189】
NMRスペクトルは、内部基準としてテトラメチルシランを用い、Bruker AV300(Bruker社製、300MHz)、又は、Bruker AV400(Bruker社製、400MHz)を用いて測定し、全δ値をppmで示した。
【0190】
<保護基形成用試薬:化合物(1-1)の合成>
【0191】
【0192】
上記中間体(1-1)は、欧州特許第2518041号明細書に記載の方法により合成した。
中間体(1-1)(8.00g、10.3mmol)、インドール-5-カルボキシアルデヒド(2.99g、20.6mmol)、カリウムtert-ブトキシド(2.20g、19.6mmol)、及び、テトラヒドロフラン(THF、100mL)を混合し、窒素雰囲気下、40℃で3時間撹拌した。反応溶液を室温まで降温し、シクロペンチルメチルエーテル、及び、水で抽出し、有機層を減圧濃縮した。得られた粗生成物をジクロロメタンに溶解させ、メタノールを添加することで析出した固体をろ過、乾燥させることで中間体(1-2)(8.70g)を得た(収率:95%)。
窒素雰囲気下、中間体(1-2)(5.00g、5.65mmol)、水素化ホウ素ナトリウム(0.43g、11.3mmol)、テトラヒドロフラン/メタノール(20/1(vol%/vol%)、63mL)を混合し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を0℃まで降温し、水(10mL)をゆっくり滴下し、反応を終了させた(クエンチした)。ジクロロメタンで抽出し、得られた有機層を水、飽和食塩水の順に洗浄し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をジクロロメタンに溶解させ、メタノールを添加することで析出した固体をろ過及び乾燥させることで化合物(1-1)(4.62g)を得た(収率:92%)。
なお、r.tは、室温を意味し、t-BuOKはカリウムtert-ブトキシド、THFはテトラヒドロフラン、MeOHはメタノールを表す。
【0193】
1H NMR(CDCl3:400MHz) δ:0.82-1.76(86H,m),3.83(4H,t),4.76(2H,d),5.22(2H,s),6.24(2H,d),6.33(1H,t),6.53(1H,t),7.14(1H,d),7.20(1H,dd),7.29(1H,d),7.63(1H,d)
【0194】
<保護基形成用試薬(化合物(1-2)~化合物(1-6))の合成>
上記化合物(1-1)と同様に合成することで下記化合物(1-2)~化合物(1-6)を得た。
【0195】
【0196】
化合物(1-2)の1H NMR結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3:400MHz) δ:0.88(6H,t),1.20-1.74(80H,m),3.81(4H,t),4.74(2H,d),5.39(2H,s),6.14(2H,d),6.30(1H,t),6.53(1H,s),7.10(1H,t),7.16(1H,t),7.25-7.30(1H,d),7.61(1H,d)
【0197】
化合物(1-3)の1H NMR結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3:400MHz) δ:0.88(6H,t),1.20-1.74(80H,m),3.84(4H,t),4.88(2H,d),5.18(2H,s),6.28(2H,d),6.35(1H,t),6.53(1H,s),7.13-7.28(3H,m),7.31(1H,d),7.75(1H,d)
【0198】
化合物(1-4)の1H NMR結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3:400MHz) δ:0.88(6H,t),1.19-1.47(76H,m),1.66-1.76(4H,m),3.84(4H,t),4.83(2H,d),5.15(2H,s),6.23(2H,d),6.35(1H,t),7.12-7.16(2H,m),7.17-7.21(1H,m),7.69-7.72(1H,m)
【0199】
化合物(1-5)の1H NMR結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:0.88(6H,t),1.18-1.47(76H,m),1.66-1.77(4H,m),3.86(4H,t),4.84(2H,d),5.13(2H,s),6.24(2H,d),6.36(1H,t),7.08-7.13(2H,m),7.28(1H,d),7.64(1H,d)
【0200】
化合物(1-6)の1H NMR結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:0.88(6H,t),1.18-1.45(76H,m),1.48(1H, t),1.67-1.77(4H,m),3.86(4H,t),4.82(2H,d),5.12(2H,s),6.21(2H,d),6.36(1H,t),7.12(1H,s),7.37(1H,s),7.81(1H,s)
【0201】
<保護基形成用試薬(化合物(1-N-1)の合成>
下記スキームに従い、化合物(1-N-1)を合成した。
【0202】
【0203】
上記で合成した中間体(1-2)(2.00g、2.26mmol)、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(0.96g、4.52mmol)、エチルアミンテトラヒドロフラン溶液(2M)(3.39mL、6.78mmol)、酢酸(0.34mL、6.78mmol)、テトラヒドロフラン(25mL)を混合し、窒素雰囲気下、90℃7時間撹拌した。反応溶液を0℃まで降温し、水(10mL)をゆっくり滴下し、クエンチした。ジクロロメタンで抽出し、得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をジクロロメタンに溶解させ、メタノールを添加することで析出した固体をろ過、乾燥させることで化合物(1-N-1)(1.90g、収率:94%)を得た。
なお、NaBH(OAc)3はナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、EtNH2はエチルアミンを表す。
【0204】
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:0.88(6H,t),1.15(3H,t),1.20-1.76(80H,m),2.72(2H,q),3.83(4H,t),3.89(2H,s),5.19(2H,s),6.24(2H,d),6.32(1H,t),6.49(1H,dd),7.11(1H,d),7.15(1H,dd),7.25(2H,d),7.57(1H,d)
【0205】
<保護基形成用試薬(化合物(1-N-2)~化合物(1-N-4))の合成>
上記化合物(1-1)と同様に合成することで下記化合物(1-N-2)~化合物(1-N-4)を得た。
【0206】
【0207】
化合物(1-N-2)の1H NMR結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3:400MHz) δ:0.88(6H,t),1.14(3H,t),1.18-1.44(76H,m),1.66-1.74(4H,m),2.75(2H,q),3.83(4H,t),3.99(2H,s),5.17(2H,s),6.26(2H,d),6.33(1H,t),7.07(1H,s),7.11(1H,t),7.17(1H,t),7.25-7.29(1H,m),7.65(1H,d)
【0208】
化合物(1-N-3)の1H NMR結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3:400MHz) δ:0.88(6H,t),1.22-1.43(76H,m),1.64-1.72(4H,m),3.74(6H,s),3.82(4H,d),3.82(3H,s),3.95(4H,d),5.16(2H,s),6.13(2H,s),6.26(2H,d),6.31(1H,t),7.07(1H,td),7.15(1H,td),7.15(1H,s),7.24-7.28(1H,m),7.50(1H,d)
【0209】
化合物(1-N-4)の1H NMR結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3:400MHz) δ:0.88(6H,t),1.21-1.44(76H,m),1.65-1.74(4H,m),2.28(3H,s),3.78(2H,s),3.83(4H,t),3.99(2H,s),5.17(2H,s),5.87-5.90(1H,m),6.05(1H,d),6.26(2H,d),6.33(1H,t),7.07(1H,s),7.10(1H,td),7.18(1H,td),7.24-7.29(1H,m),7.63(1H,d)
【0210】
<保護基形成用試薬(化合物(1-N-5)の合成>
下記スキームに従い、化合物(1-N-5)を合成した。
【0211】
【0212】
中間体(1-1)(10.0g、12.9mmol)、インドール-3-カルボアルデヒド(7.48g、51.6mmol)、テトラヒドロフラン(129mL)の混合物にターシャーリーブトキシカリウム(5.79g、51.6mmol)を加え、60℃で2.5時間攪拌した。反応溶液にシクロペンチルメチルエーテル(250mL)、水(250mL)を加え、分液後、有機層にメタノール(1L)を加え、生じた沈殿物をろ取、乾燥し、中間体(1-3)(11.1g、収率:96.9%)を得た。
中間体(1-3)(20.0g、22.6mmol)、塩化メチレン(302mL)の混合物を30℃で溶解した後、ヒドロキシルアミン塩酸塩(9.43g、136mmol)、トリエチルアミン(31.5mL、226mmol)を加え、2時間30℃で撹拌した。反応溶液を室温まで降温し、メタノール(2L)を加え、生じた沈殿物をろ取、乾燥し、中間体(1-4)(19.6g、収率:96.6%)を得た。
中間体(1-4)(2.00g、2.22mmol)、テトラヒドロフラン(37mL)、酢酸(10mL)を室温で混合した後、亜鉛ダスト(1.75g、26.7mmol)を加えた。1時間還流した後、セライトで亜鉛ダストを除去し、得られたろ液を濃縮した。得られた粗生成物にメタノール(750mL)を加え、生じた沈殿物をろ取、乾燥させた。得られた固体をカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=4:1~1:9)により精製し、化合物(1-N-2)(1.01g、収率51.3%)を得た。
【0213】
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:0.88(6H,t),1.20-1.44(76H,m),1.66-1.75(4H,m),3.84(4H,t),4.06(2H,d),5.17(2H,s),6.27(2H,d),6.33(1H,t),7.04(1H,s),7.12(1H,dt),7.19(1H,dt),7.29(1H,d),7.65(1H,d)
【0214】
<保護基形成用試薬(化合物(1-N-2-1)の合成>
下記スキームに従い、化合物(1-N-2-1)を合成した。
【0215】
【0216】
窒素雰囲気下、中間体(1-3)(1.00g、1.13mmol)を、テトラヒドロフラン(5.7mL)中に溶解させ、フェニルマグネシウムブロミド(1.0mMテトラヒドロフラン溶液、1.70mL、1.70mmol)を加えて室温で30分間撹拌した。反応液に2-Me-THF(8mL)と飽和塩化アンモニウム水溶液(8mL)とを加え、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液と飽和食塩水とで洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物にメタノールを添加することで析出した固体をろ過、乾燥させることで中間体(1-4)(1.04g、収率:96%)を得た。
中間体(1-4)(200mg、0.21mmol)とカルバミン酸9-フルオレニルメチル(199mg、0.83mmol)とを、テトラヒドロフラン(2.0mL)中に溶解させ、ピリジニウムp-トルエンスルホナート(5.2mg、21μmol)を加えて30℃で5時間撹拌した。反応液にメタノールを添加することで析出した固体を、メタノールとヘキサンで洗浄し、ろ過、乾燥させることで中間体(1-5)(286mg、カルバミン酸9-フルオレニルメチルを含む)を得た。
中間体(1-5)(286mg、カルバミン酸9-フルオレニルメチルを含む)を、テトラヒドロフラン(2.9mL)中に溶解させ、DBU(0.14mL、0.96mmol)を加えて室温で20分間撹拌した。反応液にメタノールを添加することで析出した固体を、メタノールとヘキサンで洗浄し、ろ過、乾燥させることで化合物(1-N-2-1)(105mg、2工程収率:53%)を得た。
【0217】
化合物(1-N-2-1)の1H NMR結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:0.88(6H,t),1.20-1.46(76H,m),1.66-1.75(4H,m),1.86(2H,br),3.83(4H,t),5.17(2H,s),5.49(1H,br),6.24(2H,d),6.32(1H,t),7.01(1H,t),7.04(1H,s),7.13(1H,t),7.20-7.34(4H,m),7.44-7.48(3H,m)
【0218】
<保護基形成用試薬(化合物(1-N-2-2)及び(1-N-2-3)の合成>
上記化合物(1-N-2-1)と同様に合成することで下記化合物(1-N-2-2)と化合物(1-N-2-3)を得た。
【0219】
【0220】
化合物(1-N-2-2)の1H NMR結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:0.88(6H,t),1.22-1.45(76H,m),1.66-1.75(4H,m),3.79(3H,s),3.83(4H,t),5.17(2H,s),5.45(1H,s),6.25(2H,d),6.33(1H,t),6.83-6.86(2H,m),7.00(1H,t),7.04(1H,s),7.13(1H,t),7.22-7.28(1H,m),7.35-7.39(2H,m),7.43(1H,d)
【0221】
化合物(1-N-2-3)の1H NMR結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:0.88(6H,t),1.23-1.45(76H,m),1.66-1.75(4H,m),3.77(3H,s),3.83(4H,t),3.85(3H,s),5.19(2H,s),5.74(1H,br),6.26(2H,d),6.32(1H,t),6.34(1H,dd),6.48(1H,d),6.99(1H,t),7.06-7.15(3H,m),7.23-7.27(1H,m),7.41(1H,d)
【0222】
<保護基形成用試薬(化合物(2-1))の合成>
下記スキームに従い、化合物(2-1)を合成した。
【0223】
【0224】
中間体(2-1)はTetrahedron Lett.,2018,59,2145-2149記載の方法で合成した。
中間体(1-1)(473mg、0.61mmol)、中間体(2-1)(149mg、0.76mmol)、カリウムtert-ブトキシド(86.5mg、0.77mmol)、及び、テトラヒドロフラン/N,N-ジメチルホルムアミド(2/3(vol%/vol%)、25mL)を混合し、4時間加熱還流させた。反応溶液を室温まで降温し、シクロペンチルメチルエーテル及び水で抽出し、有機層を減圧濃縮した。得られた粗生成物をジクロロメタンに溶解させ、メタノールを添加することで析出した固体をろ過、乾燥させることで中間体(2-2)(503mg)を得た(収率:88%)。
窒素雰囲気下、中間体(2-2)(149mg、0.16mmol)、水素化ホウ素ナトリウム(12.1mg、0.32mmol)、及び、テトラヒドロフラン/メタノール(20/1(vol%/vol%)、2mL)を混合し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を0℃まで降温し、水(10mL)をゆっくり滴下し、クエンチした。ジクロロメタンで抽出し、得られた有機層を水と飽和食塩水で洗浄し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をジクロロメタンに溶解させ、メタノールを添加することで析出した固体をろ過・乾燥させることで化合物(2-1)(115mg)を得た(収率:77%)。
なお、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを示す。
【0225】
1H NMR(CDCl3:400MHz) δ:0.84-1.72(86H,m),3.80(4H,t),4.86(2H,d),5.42(2H,s),6.27(2H,d),6.31(1H,t),7.22-7.29(2H,m),7.33-7.39(2H,m),7.41-7.47(2H,m),8.10-8.14(2H,m)
【0226】
<保護基形成用試薬(化合物(3-1))の合成>
下記スキームに従い、化合物(3-1)を合成した。
【0227】
【0228】
5-ブロモレソルシノール(1.89g、10.0mmol)、1-ブロモドコサン(7.78g、20.0mmol)、炭酸カリウム(8.98g、65.0mmol)、及び、N,N-ジメチルホルムアミド(300mL)を混合し、窒素雰囲気下、80℃で5時間撹拌した。反応溶液を室温まで降温し、クロロホルム、及び、水で抽出し、有機層を減圧濃縮した。得られた粗生成物をクロロホルムに溶解させ、メタノールを添加することで析出した固体をろ過、乾燥させることで中間体(3-1)(5.20g、収率:65%)を得た。
窒素雰囲気下、中間体(3-1)(1.61g、2.00mmol)、5-ホルミル-2-チオフェンボロン酸(0.94g、6。00mmol)、炭酸ナトリウム(0.76g、7.2mmol)、及び、テトラヒドロフラン/水(15/1(vol%/vol%)、64mL)とを混合し、室温で撹拌しながら減圧脱気をした。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.23g、0.20mmol)を添加し、14時間加熱還流させた。反応液を室温まで降温し、セライトろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=95:5~ヘキサン/酢酸エチル=50:50)に供することで精製した。得られた固体をメタノールで再結晶し、ろ過、乾燥させることで中間体(3-2)(0.93g、収率:55%)を得た。
窒素雰囲気下、中間体(3-2)(586mg、0.70mmol)、水素化ホウ素ナトリウム(53.0mg、1.40mmol)、テトラヒドロフラン/メタノール(20/1(vol%/vol%)、7.4mL)を混合し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を0℃まで降温し、水(10mL)をゆっくり滴下し、クエンチした。ジクロロメタンで抽出し、得られた有機層を水と飽和食塩水で洗浄し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をジクロロメタンに溶解させ、メタノールを添加することで析出した固体をろ過・乾燥させることで化合物(3-1)(528mg、収率:90%)を得た。
【0229】
1H NMR(CDCl3:400MHz) δ:0.82-1.84(86H,m),3.96(4H,t),4.82(2H,s),6.39(1H,t),6.71(2H,d),6.96(1H,d),7.14(1H,d)
【0230】
<保護基形成用試薬(化合物(4-1))の合成>
下記スキームに従い、化合物(4-1)を合成した。
【0231】
【0232】
2,4-ジヒドロキシアセトフェノン(3.92g、25.8mmol)、炭酸水素ナトリウム(3.92g、25.8mmol)、中間体(1-1)(3.92g、12.9mmol)、およびジメチルホルムアミド(100mL)とを混合し、100℃で6時間攪拌した。反応液を室温まで高温し、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、蒸留水100mLを加えて、分液後、上層をメタノールに添加した。生じた固体をろ過・乾燥させることで中間体(4-1)(11.0g)を得た(収率:95%)。
中間体(4-1)(8.75g,9.25mmol)、炭酸カリウム(2.28g,16.5mmol)、ブロモ酢酸メチル(1.56mL,16.5mmol)、ジメチルホルムアミド(100mL)とを混合し、外温100℃で30分攪拌した。生じた反応液にジアザビシクロウンデセン(4.96ml,33.0mmol)を添加し、更に外温100℃で4時間撹拌した。反応液を冷却後、テトラヒドロフラン(200mL)、飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)を加えて分液後、有機層をメタノール(300mL)に添加して生じた固体をろ過・乾燥させることで、中間体(4-2)を主成分とする混合物(8.75g)を得た。この中間体(4-2)(8.00g、8.46mmol)をテトラヒドロフラン(80mL)に溶解させて、窒素気流化、45℃で撹拌させたところに、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムトルエン溶液(3.6M(=3.6mol/L))(5.9mL、21.2mmol)を滴下した。反応溶液を45℃で30分間撹拌し、アセトン(8mL)を滴下後、酒石酸カリウムナトリウム飽和水溶液(80mL)を緩やかに滴下した後、分液し、得られた有機層にメタノールを添加することで析出した固体をろ過・乾燥させることにより化合物(4-1)の粗体を得た。この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=89:11~ヘキサン/酢酸エチル=69:31)で精製し、化合物(4-1)(2.43g、収率31%)を得た。
【0233】
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:0.88(6H,t),1.19-1.82(80H,m),2.12(3H,s),3.94(4H,t),4.69(2H,d),5.12(2H,s),6.38(1H,t),6.57(2H,d),6.92(1H,dd),7.00(1H,s),7.33(1H,d)
【0234】
<保護アミノ酸化合物(N末端保護C末端保護アミノ酸(1-1))の合成>
下記スキームに従い、N末端保護C末端保護アミノ酸(1-1)を合成した。
【0235】
【0236】
化合物(1-1)(886mg、1.00mmol)、N-[(9H-フルオレン―9-イルメトキシ)カルボニル]-L-ロイシン(530mg、1.50mmol)、テトラヒドロフラン(10mL)を室温で混合し、4-ジメチルアミノピリジン(24.4mg、0.20mmol)と、ジイソプロピルカルボジイミド(232μL、1.50mmol)を添加した。窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌した後、メタノール(50mL)を添加することで析出した固体をろ過、減圧乾燥させることでN-保護C-保護アミノ酸(1-1)(1160mg、収率:97%)を得た。
【0237】
なお、Fmocは、9-フルオレニルメトキシカルボニル基を表し、Leuはロイシン残基を表す。
【0238】
<保護アミノ酸化合物(N末端保護C末端保護アミノ酸(1-2)~(1-6)、(2-1)、(3-1)、(4-1)並びに、N末端保護C末端保護アミノ酸比較例化合物(1)及び(2))の合成>
化合物(1-1)の替わりに、化合物(1-2)、化合物(1-3)、化合物(1-4)、化合物(1-5)、化合物(1-6)、化合物(2-1)、化合物(3-1)、化合物(4-1)、後述の比較例化合物(1)又は(2)を用いた以外は、N-保護C-保護アミノ酸(1-1)の合成方法と同様にして、N-[(9H-フルオレン―9-イルメトキシ)カルボニル]-L-ロイシンと縮合させることで、N-保護C-保護アミノ酸(1-2)~(1-6)、(2-1)、(3-1)、(4-1)、並びに、N末端保護C末端保護アミノ酸比較例化合物(1)及び(2)を合成した。
【0239】
<保護アミノ酸化合物(N末端保護C末端保護アミノ酸(1-N-1))の合成>
下記スキームに従い、N末端保護C末端保護アミノ酸(1-N-1)を合成した。
【0240】
【0241】
化合物(1-N-1)(94.4mg、0.10mmol)、N-[(9H-フルオレン―9-イルメトキシ)カルボニル]-L-ロイシン(53.0mg、0.15mmol)、ジクロロメタン(1mL)を混合し、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、2.2モル当量)と(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU、1.5モル当量)を添加した。窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌した後、メタノール(5mL)を添加することで析出した固体をろ過、乾燥させることでN末端保護C末端保護アミノ酸(1-N-1)(116mg、収率:93%)を得た。
【0242】
<保護アミノ酸化合物(N末端保護C末端保護アミノ酸(1-N-2)、(1-N-3)、(1-N-5)、(1-N-2-1)、(1-N-2-2)及び(1-N-2-3)並びに、N末端保護C末端保護アミノ酸比較例化合物(3)及び(4))の合成>
化合物(1-N-1)の替わりに、化合物(1-N-2)、化合物(1-N-3)、化合物(1-N-5)、化合物(1-N-2-1)、化合物(1-N-2-2)、化合物(1-N-2-3)、後述の比較例化合物(3)又は(4)を用いた以外は、N-保護C-保護アミノ酸(1-N-1)の合成方法と同様にして、N-[(9H-フルオレン―9-イルメトキシ)カルボニル]-L-ロイシンと縮合させることで、N-保護C-保護アミノ酸(1-N-2)、(1-N-3)、(1-N-5)、(1-N-2-1)、(1-N-2-2)及び(1-N-2-3)並びに、N末端保護C末端保護アミノ酸比較例化合物(3)及び(4)を合成した。
【0243】
(実施例1~9、並びに、比較例1及び2)
(評価1)
<脱保護速度>
上記で合成した表1に記載の実施例及び比較例の化合物について、保護したカルボン酸部位の脱保護率(C末端の脱保護率)を以下のように求めた。
Fmoc-Leu-OTag(N末端保護C末端保護アミノ酸(1-1)~(1-5)、(2-1)及び(3-1)並びに、比較例の化合物(1)及び(2)を用いたN末端保護C末端保護アミノ酸)100mgと、Fmoc-Leu-OTagと等モル量のFmoc-Gly-OH(内部標準)とを混合したところに、ジクロロメタン/トリフルオロエタノール/トリフルオロ酢酸(100/10/1:vol%)をFmoc-Leu-OTag基準で基質濃度が0.026Mとなるように添加し、30℃60分撹拌した。
反応液20μLをMeOH(メタノール):400μLに溶解し、Ultra Performance LC(ウルトラパフォーマンス液体クロマトグラフィー、Waters社製、型番:ACQUITY)を用いて、Fmoc-Leu-OTagを脱保護して生成するFmoc-Leu-OHとFmoc-Gly-OHとの比率を定量することで脱保護率(%)を求め、下記基準に基づいて評価を行った。
ウルトラパフォーマンス液体クロマトグラフィーに用いたカラム及び測定条件について以下に示す。
カラム:Waters社製、型番:BEH C18 1.7μm、2.1mm×30mm
流量:0.5mL/min
溶媒:A液:0.1%ギ酸-水、B液:0.1%ギ酸-アセトニトリル
グラジエントサイクル:0.00min(A液/B液=95/5)、2.00min(A液/B液=5/95)、3.00min(A液/B液=95/5)
検出波長:254nm
【0244】
脱保護速度の評価については、「B」以上の場合を合格とした。結果を表1に示す。
なお、脱保護率が高いほど、脱保護速度が速く、脱保護速度に優れるといえる。
【0245】
-評価基準-
「A」:脱保護率が80%以上である。
「B」:脱保護率が50%以上80%未満である。
「C」:脱保護率が20%以上50%未満である。
「D」:脱保護率が20%未満である。
【0246】
【0247】
表1中の化合物の詳細は以下のとおりである。
・比較化合物(1):3,4,5-トリス-(n-オクタデシロキシ)ベンジルアルコール、特開2000-44493号公報の段落0015~0016に記載の方法により合成した。
・比較例化合物(2):3,5-ビス(ドコシロキシ)ベンジルアルコール、特開2009-185063号公報の段落0104に記載の方法により合成した。
【0248】
表1に示すように、実施例1~9で使用した式(1)で表される芳香族複素環化合物は、比較例1及び2で使用した化合物に比べ、脱保護速度に優れるため、ペプチド化合物の収率に優れる。
【0249】
(実施例10~15、並びに、比較例3及び4)
(評価2)
<脱保護速度>
上記で合成した表2に記載のN末端保護C末端保護アミノ酸化合物について、保護したカルボキサミド部位の脱保護率(C末端の脱保護率)を以下のように求めた。
Fmoc-Leu-NR-Tag(実施例の化合物を用いたN末端保護C末端保護アミノ酸、及び、比較例の化合物を用いたN末端保護C末端保護アミノ酸)100mgと、Fmoc-Leu-NR-Tagと等モル量のFmoc-Gly-OH(内部標準)とを混合したところに、クロロホルム/トリイソプロピルシラン/3、6-ジオキサ-1、8-オクタンジチオール/水/トリフルオロ酢酸(42.5/2.5/2.5/2.5/50:vol%)をFmoc-Leu-NR-Tag基準で基質濃度が0.025Mとなるように添加し、30℃60分撹拌した。
反応液5μLをMeOH(メタノール):400μLに溶解し、Ultra Performance LC(ウルトラパフォーマンス液体クロマトグラフィー、Waters社製、型番:ACQUITY)を用いて、Fmoc-Leu-NR-Tagを脱保護して生成するFmoc-Leu-NH2とFmoc-Gly-OHとの比率を定量することで脱保護率(%)を求め、下記基準に基づいて評価を行った。
ウルトラパフォーマンス液体クロマトグラフィーに用いたカラム及び測定条件について以下に示す。
カラム:Waters社製、型番:BEH C18 1.7μm、2.1mm×30mm
流量:0.5mL/min
溶媒:A液:0.1%ギ酸-水、B液:0.1%ギ酸-アセトニトリル
グラジエントサイクル:0.00min(A液/B液=95/5)、2.00min(A液/B液=5/95)、3.00min(A液/B液=95/5)
検出波長:254nm
【0250】
脱保護速度の評価については、「B」以上の場合を合格とした。結果を表2に示す。
なお、脱保護率が高いほど、脱保護速度が速く、脱保護速度に優れるといえる。
【0251】
-評価基準-
「A」:脱保護率が90%以上である。
「B」:脱保護率が80%以上90%未満である。
「C」:脱保護率が50%以上70%未満である。
「D」:脱保護率が50%未満である。
【0252】
【0253】
表2中の化合物の詳細は以下のとおりである。
【0254】
・比較化合物(3)は、特開2009-185063号公報の段落0094~段落0097の記載の方法に従って合成した。
【0255】
【0256】
・比較化合物(4)は、国際公報第2010/113939号の段落0147~段落0155の記載の方法に従って合成した。
【0257】
【0258】
表2に示すように、実施例10~15で使用した式(1)で表される芳香族複素環化合物は、比較例3及び4で使用した化合物に比べ、脱保護速度に優れるため、ペプチド化合物の収率に優れる。
【0259】
(評価3)
本開示に係る式(1)で表される化合物を用いたN末端保護C末端保護ペプチド化合物(7残基ペプチド化合物)を下記の方法に従って合成した後、C末端保護基の脱保護を行い、脱保護速度について評価した。
なお、上述した以外の各略称の詳細を、以下に示す。
Gly:グリシン残基
Asn(Trt):Trt(トリフェニルメチル)保護アスパラギン残基
Trt:トリチル基
Asp(tBu):tBu保護アスパラギン酸残基
tBu:t-ブチル基
Phe:フェニルアラニン残基
Glu(tBu):tBu保護グルタミン酸残基
【0260】
<N末端保護C末端保護ペプチド(7残基ペプチド:Fmoc-Gly-Gly-Asn(Trt)-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-保護基)の合成>
〔合成例1:Fmoc-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)の合成〕
1-(3,5-ビス(ドコサシルオキシ)ベンジルオキシ)-1H-インドール-5-イルメタノール(化合物(1-1)に相当する。以下、「5-IndoTAG(1)」とも表記する。)(1.00g、1.13mmol)とFmoc-Glu(tBu)-OH(1.5モル当量)とをジクロロメタン(23mL)中に溶解させ、4-ジメチルアミノピリジン(0.2モル当量)とジイソプロピルカルボジイミド(1.5モル当量)とを添加して撹拌した。縮合反応完結後、アセトニトリル(MeCN、100mL)を加えて撹拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)(1.46g、収率100%)を得た。
Fmoc-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)は、N末端がFmoc基で保護され、C末端が本開示に係る式(1)で表される芳香族複素環化合物で保護されたペプチド化合物である。
【0261】
〔合成例2:Fmoc-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)の合成〕
Fmoc-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)(1.34g、1.04mmol)をクロロホルム(2.6mL)中に溶解させ、ジアザビシクロウンデセン(DBU、2.0モル当量)を加えて撹拌した。脱保護反応完結後、メタンスルホン酸(2.1モル当量)とN-メチルモルホリン(2.1モル当量)とを含むクロロホルム溶液を加えた後、Fmoc-Phe-OH(1.2モル当量)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU、1.2モル当量)を添加して攪拌した。縮合反応完結後、MeCN(50mL)を加えて撹拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)(1.49g、収率100%)を得た。
【0262】
〔合成例3:Fmoc-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)の合成〕
Fmoc-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)(1.49g、1.03mmol)をクロロホルム(5.0mL)中に溶解させ、DBU(2.0モル当量)を加えて撹拌した。脱保護反応完結後、メタンスルホン酸(2.1モル当量)とN-メチルモルホリン(2.1モル当量)とを含むクロロホルム溶液を加えた後、Fmoc-Asp(tBu)-OH(1.2モル当量)、COMU(1.2モル当量)を添加して撹拌した。縮合反応完結後、MeCN(50mL)を加えて撹拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)(1.46g、収率87.6%)を得た。
【0263】
〔合成例4:Fmoc-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)の合成〕
Fmoc-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)(1.31g、0.812mmol)をクロロホルム(4.0mL)中に溶解させ、DBU(2.0モル当量)を加えて撹拌した。脱保護反応完結後、メタンスルホン酸(2.1モル当量)とN-メチルモルホリン(2.1モル当量)とを含むクロロホルム溶液を加えた後、Fmoc-Gly-OH(1.2モル当量)、COMU(1.2モル当量)を添加して撹拌した。縮合反応完結後、MeOH(50mL)を加えて撹拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)(1.36g、収率100%)を得た。
【0264】
〔合成例5:Fmoc-Asn(Trt)-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)の合成〕
Fmoc-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)(1.36g、0.815mmol)をクロロホルム(3.8mL)中に溶解させ、DBU(2.0モル当量)を加えて撹拌した。脱保護反応完結後、メタンスルホン酸(2.1モル当量)とN-メチルモルホリン(2.1モル当量)とを含むクロロホルム溶液を加えた後、Fmoc-Asn(Trt)-OH(1.2モル当量)、COMU(1.2モル当量)を添加して撹拌した。縮合反応完結後、MeCN(50mL)を加えて攪拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-Asn(Trt)-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)(1.35g、収率81.8%)を得た。
【0265】
〔合成例6:Fmoc-Gly-Gly-Asn(Trt)-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)の合成〕
Fmoc-Asn(Trt)-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)(1.00g、0.494mmol)をクロロホルム(6.0mL)中に溶解させ、DBU(2.0モル当量)を加えて撹拌した。脱保護反応完結後、メタンスルホン酸(2.1モル当量)とN-メチルモルホリン(2.1モル当量)とを含むクロロホルム溶液を加えた後、Fmoc-Gly-Gly-OH(1.2モル当量)、COMU(1.2モル当量)を添加して攪拌した。縮合反応完結後、MeCN(50mL)を加えて撹拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-Gly-Gly-Asn(Trt)-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)(1.02g、収率96.6%)を得た。
【0266】
<C末端保護基の脱保護>
〔合成例7:Fmoc-Gly-Gly-Asn(Trt)-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-OHの合成〕
Fmoc-Gly-Gly-Asn(Trt)-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-5-IndoTAG(1)(500mg、0.234mmol)に、冷却したジクロロメタンと2,2,2-トリフルオロエタノールとトリフルオロ酢酸の混合溶媒(9.0mL、体積比で100:10:2)を添加し、室温で2時間撹拌した。反応溶液をろ過し、ろ液にジイソプロピルエーテル(80mL)を加えることで生じた沈殿物を遠心分離し、回収した。その後、回収した沈殿物をジイソプロピルエーテル(80mL)に再度懸濁させ、遠心分離にかける操作を2度繰り返した後、減圧乾燥させることにより、C末端保護基(5-IndoTAG(1))のみが脱保護された、Fmoc-Gly-Gly-Asn(Trt)-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-OH(X)(297mg、収率100%)を得た。
エレクトロンスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)(+)=1,271.5
【0267】
〔合成例8:Fmoc-Gly-Gly-Asn(Trt)-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-OHの合成〕
合成例1における化合物(1-1)の代わりに、化合物(4-1)(以下、「BfTAG(2)」とも表記する。)を用いて、合成例1-6と同様にして、Fmoc-Gly-Gly-Asn(Trt)-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-O-BfTAG(2)を合成した(総収率81%)。合成例7と同様にして、C末端保護基(BfTAG(2))のみを選択的に脱保護し、Fmoc-Gly-Gly-Asn(Trt)-Gly-Asp(tBu)-Phe-Glu(tBu)-OHを得た。
【0268】
上記C末端保護基が脱保護された7残基ペプチドにおいて、Asnの保護基のTrt基、Aspの保護基のtBu基、及び、Gluの保護基のtBu基は残存しており、C末端保護基のみが脱保護されていた。上記に示されるとおり、本開示に係るペプチド化合物の製造方法では、アミノ酸側鎖の保護基を残したまま、C末端保護基のみを選択的に脱保護することができるので、本開示に係るペプチド化合物の製造方法は脱保護速度に優れる。また、得られるペプチド化合物の収率にも優れる。
【0269】
<9残基ペプチド:Pyr-His-Trp-Ser-Tyr-dLeu-Leu-Arg-Pro-NHEtの合成>
なお、上述した以外の各略称の詳細を、以下に示す。
Pyr(Boc):Boc保護ピログルタミン酸残基
His(Boc):Boc保護ヒスタミン残基
Trp(Boc):Boc保護トリプトファン残基
Boc:t-ブトキシカルボニル基
Ser(tBu):tBu保護セリン残基
tBu:t-ブチル基
Tyr(tBu):tBu保護チロシン残基
dLeu:D-ロイシン残基
Arg(pbf):pbf保護アルギニン残基
pbf:2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル基
Pro:プロリン残基
Et:エチル基
【0270】
(合成例9:Fmoc-Pro-NEtTAG(3)の合成)
N-(1-(3,5-ビス(ドコサノイルオキシベンジルオキシ))-1H-インドール-3-イルメチル)エタンアミン(上記化合物(1-N-2)に相当する。「NEtTAG(3)」とも表記する。)(2.00g、2.19mmol)とFmoc-Pro-OH(1.5モル当量)をテトラヒドロフラン(11mL)中に溶解させ、ジイソプロピルエチルアミン(2.2モル当量)と(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU、1.5モル当量)とを添加して撹拌した。縮合反応完結後、アセトニトリル(60mL)を加えて撹拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-Pro-NEtTAG(3)(2.62g、収率96.9%)を得た。
【0271】
(合成例10:Fmoc-Arg(pbf)-Pro-NEtTAG(3)の合成)
Fmoc-Pro-NEtTAG(3)(2.60g、2.11mmol)をテトラヒドロフラン(11mL)中に溶解させ、ジアザビシクロウンデセン(DBU、2.0モル当量)を加えて撹拌した。脱保護反応完結後、N-メチルモルホリン(2.05モル当量)とメタンスルホン酸(2.0モル当量)とを加えた後、Fmoc-Arg(pbf)-OH(1.25モル当量)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU、1.25モル当量)を添加して攪拌した。縮合反応完結後、アセトニトリル(55mL)を加えて撹拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)(3.43g、収率99.1%)を得た。
【0272】
(合成例11:Fmoc-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)の合成)
Fmoc-Arg(pbf)-Pro-NEtTAG(3)(3.41g、2.08mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)中に溶解させ、ジアザビシクロウンデセン(DBU、2.0モル当量)を加えて撹拌した。脱保護反応完結後、N-メチルモルホリン(2.05モル当量)とメタンスルホン酸(2.0モル当量)とを加えた後、Fmoc-Leu-OH(1.25モル当量)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU、1.25モル当量)を添加して攪拌した。縮合反応完結後、アセトニトリル(55mL)を加えて撹拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-Leu-Arg(pbf)-Pro-NEtTAG(3)(3.45g、収率94.6%)を得た。
【0273】
(合成例12:Fmoc-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)の合成)
Fmoc-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)(3.42g、1.95mmol)をテトラヒドロフラン(9.7mL)中に溶解させ、DBU(2.0モル当量)を加えて撹拌した。脱保護反応完結後、N-メチルモルホリン(2.05モル当量)とメタンスルホン酸(2.0モル当量)とを加えた後、Fmoc-dLeu-OH(1.25モル当量)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU、1.25モル当量)を添加して撹拌した。縮合反応完結後、アセトニトリル(50mL)を加えて撹拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-NEtTAG(3)(3.45g、収率94.8%)を得た。
【0274】
(合成例13:Fmoc-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)の合成)
Fmoc-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)(3.48g、1.86mmol)をテトラヒドロフラン(9.3mL)中に溶解させ、DBU(2.0モル当量)を加えて撹拌した。脱保護反応完結後、N-メチルモルホリン(2.05モル当量)とメタンスルホン酸(2.0モル当量)とを加えた後、Fmoc-Tyr(tBu)-OH(1.25モル当量)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU、1.25モル当量)を添加して撹拌した。縮合反応完結後、アセトニトリル(95mL)を加えて撹拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-NEtTAG(3)(3.74g、収率96.2%)を得た。
【0275】
(合成例14:Fmoc-Ser(tBu)-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)の合成)
Fmoc-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)(3.67g、1.76mmol)をテトラヒドロフラン(8.8mL)中に溶解させ、DBU(2.0モル当量)を加えて撹拌した。脱保護反応完結後、N-メチルモルホリン(2.05モル当量)とメタンスルホン酸(2.0モル当量)とを加えた後、Fmoc-Ser(tBu)-OH(1.25モル当量)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU、1.25モル当量)を添加して撹拌した。縮合反応完結後、アセトニトリル(90mL)を加えて撹拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-Ser(tBu)-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)(3.72g、収率94.9%)を得た。
【0276】
(合成例15:Fmoc-Trp(Boc)-Ser(tBu)-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)の合成)
Fmoc-Ser(tBu)-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)(3.67g、1.65mmol)をテトラヒドロフラン(8.2mL)中に溶解させ、DBU(2.0モル当量)を加えて撹拌した。脱保護反応完結後、N-メチルモルホリン(2.05モル当量)とメタンスルホン酸(2.0モル当量)とを加えた後、Fmoc-Trp(Boc)-OH(1.25モル当量)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU、1.25モル当量)を添加して攪拌した。縮合反応完結後、アセトニトリル(80mL)を加えて撹拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-Trp(Boc)-Ser(tBu)-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-NEtTAG(3)(3.79g、収率91.5%)を得た。
【0277】
(合成例16:Fmoc-His(Boc)-Trp(Boc)-Ser(tBu)-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)の合成)
Fmoc-Trp(Boc)-Ser(tBu)-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)(3.78g、1.50mmol)をテトラヒドロフラン(7.5mL)中に溶解させ、DBU(2.0モル当量)を加えて撹拌した。脱保護反応完結後、N-メチルモルホリン(2.05モル当量)とメタンスルホン酸(2.0モル当量)とを加えた後、Fmoc-His(Boc)-OH(1.25モル当量)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU、1.25モル当量)を添加して攪拌した。縮合反応完結後、アセトニトリル(75mL)を加えて撹拌し、沈殿物をろ過してアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥させることにより、Fmoc-His(Boc)-Trp(Boc)-Ser(tBu)-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-NEtTAG(3)(3.45g、収率83.4%)を得た。
【0278】
(合成例17:Pyr(Boc)-His(Boc)-Trp(Boc)-Ser(tBu)-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)の合成)
Fmoc-His(Boc)-Trp(Boc)-Ser(tBu)-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)(1.96g、0.71mmol)をテトラヒドロフラン(4.7mL)中に溶解させ、DBU(2.0モル当量)を加えて撹拌した。脱保護反応完結後、N-メチルモルホリン(2.05モル当量)とメタンスルホン酸(2.0モル当量)とを加えた後、Fmoc-Pyr(Boc)-OH(1.25モル当量)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU、1.25モル当量)を添加して撹拌した。縮合反応完結後、2-Me-THF(10mL)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)とを加え分液した後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水とで洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、得られた固体をヘキサンで洗浄することで、Pyr(Boc)-His(Boc)-Trp(Boc)-Ser(tBu)-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-NEtTAG(3)(1.94g、収率99.4%)を得た。
【0279】
(合成例18:Pyr-His-Trp-Ser-Tyr-dLeu-Leu-Arg-Pro-NHEtの合成)
Pyr(Boc)-His(Boc)-Trp(Boc)-Ser(tBu)-Tyr(tBu)-dLeu-Leu-Arg(pbf)-Pro-O-NEtTAG(3)(1.90g、0.87mmol)にトリフルオロ酢酸(TFA、26.6mL)とトリイソプロピルシラン(TIPS、0.72mL)と3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール(DODT、0.72mL)と水(0.72mL)との混合溶液を加えて90分攪拌した。脱保護反応が完結した後、メチル-t-ブチルエーテル(MTBE、60mL)を加えて撹拌し、遠心分離によって上澄みを除去した。MTBEの添加、遠心分離、上澄みの除去を3回繰り返し、Pyr-His-Trp-Ser-Tyr-dLeu-Leu-Arg-Pro-NHEt(0.812g、収率93.4%)を得た。
エレクトロンスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)(+)=1,209.8
【0280】
<5残基ペプチド:Fmoc-MeNle-MeNle-Arg(Pbf)-Cys(Trt)-Gly-NH2の合成>
なお、上述した以外の各略称の詳細を、以下に示す。
MeNle:N-メチルノルロイシン残基
Cys(Trt):Trt保護システイン残基
Gly:グリシン残基
【0281】
[合成例19:Fmoc-Gly-NH-DMPIndoTAG(4)の合成]
合成例9における化合物(1-N-2)の代わりに、化合物(1-N-2-3)(以下、「DMPIndoTAG(4)」とも表記する。)を、Fmoc-Pro-OHの代わりに、Fmoc-Gly-OH用いて、合成例9と同様にして、Fmoc-Gly-NH-DMPIndoTAG(4)を合成した。
【0282】
[合成例20:Fmoc-MeNle-MeNle-Arg(Pbf)-Cys(Trt)-Gly-NH2-DMPIndoTAG(4))の合成]
合成例19で得られたFmoc-Gly-NH-DMPIndoTAG(4)を用いて、合成例10と同様の方法で、Fmoc基の除去とアミノ酸の縮合反応を繰り返し、Fmoc-MeNle-MeNle-Arg(Pbf)-Cys(Trt)-Gly-NH2-DMPIndoTAG(4))を合成した(総収率75%)。
【0283】
上記合成例20で得られたFmoc-MeNle-MeNle-Arg(Pbf)-Cys(Trt)-Gly-NH2-DMPIndoTAG(4)のC末端保護基DMPIndoTAG(4)は低濃度のTFAで脱保護可能であるため、酸に不安定なペプチドの合成に好適と言える。
【0284】
合成例19-20で使用した式(1)で表される芳香族複素環化合物は、脱保護速度、及び、得られるペプチド化合物の収率に優れる。
【0285】
2019年2月28日に出願された日本国特許出願第2019-035775号の開示、及び、2019年6月28日に出願された日本国特許出願第2019-122489号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
前記式(1)で表される芳香族複素環化合物を用いる工程が、前記式(1)で表される芳香族複素環化合物によりアミノ酸化合物又はペプチド化合物のカルボキシ基又はアミド基を保護するC末端保護工程である、請求項1に記載のペプチド化合物の製造方法。
前記C末端保護工程におけるアミノ酸化合物又はペプチド化合物が、N末端保護アミノ酸化合物、又は、N末端保護ペプチド化合物である、請求項2に記載のペプチド化合物の製造方法。