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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175014
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】照射装置および照射方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
A01M1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158586
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2023089100の分割
【原出願日】2023-05-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター、ムーンショット型農林水産研究開発事業委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 由雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 和久
(72)【発明者】
【氏名】藤 寛
(57)【要約】
【課題】照射範囲を広範囲にしつつ、照射対象物に対して適切に光線を照射できる照射装
置を提供する。
【解決手段】照射装置(100)は、複数の光源(LE)を有する光源ユニット(33)
と、照射対象物の位置を特定する特定部(22)と、前記照射対象物の位置に応じて前記
光源ユニットを機械的に駆動する駆動モータ(32)と、前記複数の光源から、前記照射
対象物に対応する少なくとも1つの光源を選択して光線を出射させる駆動回路(31)と
、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源を有する光源ユニットと、
照射対象物の位置を特定する特定部と、
前記照射対象物の位置に応じて前記光源ユニットを機械的に駆動する機械的駆動部と、
前記複数の光源から、前記照射対象物に対応する少なくとも1つの光源を選択して光線
を出射させる電気的駆動部と、を備える照射装置。
【請求項2】
前記複数の光源は、二次元に配列されており、
前記電気的駆動部は、前記複数の光源からライン状に光源を選択する、請求項1に記載
の照射装置。
【請求項3】
前記電気的駆動部は、前記照射対象物に対応して、ライン状に選択した光源から時間的
にずらして光線を出射させる、請求項2に記載の照射装置。
【請求項4】
前記電気的駆動部は、ライン状に配列した第1光源群を選択して光線を出射させた後、
ライン状に配列した第2光源群を選択して光線を出射させ、
前記第2光源群は、少なくとも前記第1光源群に含まれない光源を含む、請求項2に記
載の照射装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記照射対象物の向きを特定し、
前記電気的駆動部は、前記複数の光源から、前記照射対象物の向きに応じてライン状に
光源を選択する、請求項2に記載の照射装置。
【請求項6】
前記電気的駆動部は、前記複数の光源から、前記照射対象物の特定の部位に対応する少
なくとも1つの光源を選択する、請求項1に記載の照射装置。
【請求項7】
前記特定部は、光線を出射させる時刻における照射対象物の位置を予測する、請求項1
に記載の照射装置。
【請求項8】
前記光源ユニットは、前記複数の光源から出射される光線をそれぞれ集光する複数の集
光素子をさらに備え、
前記複数の集光素子は、焦点位置を変更可能である、請求項1に記載の照射装置。
【請求項9】
前記光源ユニットは、前記複数の光源から出射される光線をそれぞれ集光する複数の集
光素子をさらに備え、
前記電気的駆動部は、奥行きの焦点位置の異なる複数の集光素子に対応する複数の光源
から、前記照射対象物の奥行き位置に対応する少なくとも1つの光源を選択する、請求項
1に記載の照射装置。
【請求項10】
複数の光源を有する光源ユニットを備える照射装置による照射方法であって、
照射対象物の位置を特定する特定ステップと、
前記照射対象物の位置に応じて前記光源ユニットを機械的に駆動する機械的駆動ステッ
プと、
前記複数の光源から、前記照射対象物に対応する少なくとも1つの光源を選択して光線
を出射させる電気的駆動ステップと、を含む照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射対象物に光線を照射する照射装置および照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、害虫による農作物の損失が社会問題になっている。害虫防除の手段としては農薬
散布による駆除または誘因防除などが挙げられる。しかしながら、農薬散布は、残留農薬
による環境汚染および害虫の薬剤耐性の獲得などを引き起こすといった問題がある。また
、誘因防除は、局所的な領域のみに有効であり、持続可能ではないといった問題がある。
そのため、このような農薬散布による駆除および誘因防除に代わり、光線(例えばレーザ
光)を使用した物理手段により、害虫を防除する技術が求められている。
【0003】
従来、ガルバノミラーまたはMEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)ミラー等
の回転ミラーを制御し、照射対象物を狙って光線を照射する技術が知られている。例えば
、特許文献1には、レンズシステムにより非平行化したレーザ光を回転ミラーにより照射
対象物において集束させて照射させる病害虫防除・除草・殺菌用装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-275541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
典型的には、害虫などの照射対象物は常に停止していない。そのため、上述の技術にお
いて、照射対象物に光線を集束させるためには、照射対象物の移動位置を予測して、光線
の光路が当該移動位置を通るように回転ミラーを機械的に駆動させる必要がある。しかし
ながら、回転ミラーの機械的な駆動には時間を要するため、予測した照射対象物の移動位
置に対して実際の照射対象物の移動位置がずれる可能性があり、照射対象物への命中度が
低下するといった問題がある。
【0006】
また、遠方の照射対象物に光線を集光させるためには、大型の回転ミラーを有した装置
が必要である。そのため、回転ミラーの機械的な駆動にはさらに時間を要することとなる
【0007】
一方、照射装置から出射される光線の向きを固定させて、回転ミラーの機械的な駆動を
不要とする構成では、照射範囲に限界があるといった問題がある。
【0008】
本発明の一態様は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、照射範囲
を広範囲にしつつ、照射対象物に対して適切に光線を照射できる照射装置を提供すること
にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係る照射装置は、複数の光源を有する
光源ユニットと、照射対象物の位置を特定する特定部と、前記照射対象物の位置に応じて
前記光源ユニットを機械的に駆動する機械的駆動部と、前記複数の光源から、前記照射対
象物に対応する少なくとも1つの光源を選択して光線を出射させる電気的駆動部と、を備
える。
【0010】
本発明の態様2に係る照射装置では、上記態様1において、前記複数の光源は、二次元
に配列されており、前記電気的駆動部は、前記複数の光源からライン状に光源を選択して
もよい。
【0011】
本発明の態様3に係る照射装置では、上記態様2において、前記電気的駆動部は、前記
照射対象物に対応して、ライン状に選択した光源から時間的にずらして光線を出射させて
もよい。
【0012】
本発明の態様4に係る照射装置では、上記態様2において、前記電気的駆動部は、ライ
ン状に配列した第1光源群を選択して光線を出射させた後、ライン状に配列した第2光源
群を選択して光線を出射させ、前記第2光源群は、少なくとも前記第1光源群に含まれな
い光源を含む、構成であってもよい。
【0013】
本発明の態様5に係る照射装置では、上記態様2において、前記特定部は、前記照射対
象物の向きを特定し、前記電気的駆動部は、前記複数の光源から、前記照射対象物の向き
に応じてライン状に光源を選択してもよい。
【0014】
本発明の態様6に係る照射装置では、上記態様1から5において、前記電気的駆動部は
、前記複数の光源から、前記照射対象物の特定の部位に対応する少なくとも1つの光源を
選択してもよい。
【0015】
本発明の態様7に係る照射装置では、上記態様1から6において、前記特定部は、光線
を出射させる時刻における照射対象物の位置を予測してもよい。
【0016】
本発明の態様8に係る照射装置では、上記態様1から7において、前記光源ユニットは
、前記複数の光源から出射される光線をそれぞれ集光する複数の集光素子をさらに備え、
前記複数の集光素子は、焦点位置を変更可能であってもよい。
【0017】
本発明の態様9に係る照射装置では、上記態様1から7において、前記光源ユニットは
、前記複数の光源から出射される光線をそれぞれ集光する複数の集光素子をさらに備え、
前記電気的駆動部は、奥行きの焦点位置の異なる複数の集光素子に対応する複数の光源か
ら、前記照射対象物の奥行き位置に対応する少なくとも1つの光源を選択してもよい。
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明の態様10に係る照射方法は、複数の光源を有す
る光源ユニットを備える照射装置による照射方法であって、照射対象物の位置を特定する
特定ステップと、前記照射対象物の位置に応じて前記光源ユニットを機械的に駆動する機
械的駆動ステップと、前記複数の光源から、前記照射対象物に対応する少なくとも1つの
光源を選択して光線を出射させる電気的駆動ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、照射範囲を広範囲にしつつ、照射対象物に対して適切に光線
を照射できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る照射装置の構成を示すブロック図である。
図2】上記照射装置が備える光源ユニットの概略構成を示す模式図である。
図3】上記光源ユニットが備える発光装置の構成の一例を示す斜視図である。
図4】上記光源ユニットの駆動の流れの一例を示す模式図である。
図5】制御部が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】複数の光源から照射対象物に対応する少なくとも1つの光源を選択する一例を示す模式図である。
図7】複数の光源から照射対象物に対応する少なくとも1つの光源を選択する他の例を示す模式図である。
図8】複数の光源から照射対象物に対応する少なくとも1つの光源を選択するさらに他の例を示す模式図である。
図9】複数の光源から、時間的にずらしてライン状に配列した光源群を選択する例を示す模式図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る照射装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔実施形態1〕
(照射装置の概略構成)
図1は、実施形態1に係る照射装置100の構成を示すブロック図である。図1に示す
ように、照射装置100は、撮像部1と、制御部2と、照射部3とを備える。照射装置1
00は、照射対象物を検出し、照射対象物に光線を照射する装置である。照射対象物は、
例えばハスモンヨトウ、オオタバコガ、サバクトビバッタ、あるいはイナゴ等の全長20
~60mmの大型の害虫である。害虫とは人間の生産活動あるいは日常生活に対して害を
与える昆虫を指し、同じ昆虫でも場合によっては害虫となることも益虫となることもある
。したがって、上記の農業生産に害をもたらす昆虫に限らず、スズメバチ、カミキリムシ
など日常生活で害を与える昆虫も照射対象物となる。また、照射対象物は、シカ、イノシ
シ等の害獣であってもよい。また、照射対象物は、雑草等の植物であってもよい。照射装
置100は、例えばドローン、移動ロボット等の移動可能なロボットに設けられてもよい
。あるいは、照射装置100は、所定の範囲内の照射対象物を狙撃できるように、固定さ
れて設けられてもよい。
【0022】
撮像部1は、所定の範囲の画像データを撮像する。撮像部1は、検出部21が照射対象
物を識別可能な画像データを取得する。撮像部1は、例えば、CCD(Charge Coupled D
evice)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を受光素子とし
て備えるカメラである。撮像部1は、2次元カメラであってもよく、ステレオカメラ等の
ように複数のカメラを備える3次元カメラであってもよい。
【0023】
制御部2は、検出部21と、特定部22と、駆動回路制御部23と、駆動モータ制御部
24とを備える。制御部2は、照射装置100の各部を統括して制御する。
【0024】
検出部21は、照射対象物を検出する。具体的には、検出部21は、撮像部1から被検
出体の画像、または被検出体の飛行軌跡を取得する。検出部21は、被検出体の画像、ま
たは飛行軌跡から、被検出体が照射対象物であるか否かを判定する。被検出体が照射対象
物であった場合(すなわち、検出部21が照射対象物を検出した場合)、検出部21は照
射対象物を含む画像データを特定部22に送信する。
【0025】
特定部22は、照射対象物の位置を特定する。具体的には、特定部22は、検出部21
から照射対象物を含む画像データを取得する。特定部22は、当該画像データに基づき、
照射対象物の位置座標を算出する。照射対象物の位置座標としては、絶対座標であっても
よく、後述の回転駆動する光源ユニット33に対する相対座標(後述のXYZ座標)であ
ってもよい。
【0026】
また、特定部22は、検出部21から照射対象物の画像を取得してもよい。特定部22
は、照射対象物の画像から、照射対象物の各部位のうち光線を照射することが可能な部位
を特定してもよい。特定部22は、光線を照射することが可能な部位のうち、照射対象物
の特定の部位を決定してもよい。特定の部位は、例えば、照射対象物に応じて、光線を照
射することで照射対象物にダメージを与えることができる(すなわち、照射対象物の駆除
が可能な)部位である。また、特定の部位は、光線を照射することで照射対象物にその場
所から退避させることができる(すなわち、照射対象物の防除が可能な)部位であっても
よい。また、特定部22は、照射対象物の画像から、(後述の出射面331aと平行なX
Y平面上における)照射対象物の向きを特定してもよい。
【0027】
また、特定部22は、撮像部1から所定の周期で照射対象物を含む画像データを取得し
てもよい。特定部22は、一連の画像データから、光線を出射させる時刻における照射対
象物の位置を予測してもよい。例えば、照射対象物が飛翔している場合、照射対象物の飛
翔パターンを考慮した未来の照射対象物の位置座標を予測する。これにより、特定部22
は、光線を出射させる時刻における照射対象物の位置を特定する。
【0028】
駆動回路制御部23は、特定部22から照射対象物の位置座標を取得したとき、当該位
置座標に基づき駆動回路31の駆動電圧を制御する。
【0029】
駆動モータ制御部24は、特定部22から照射対象物の位置座標を取得したとき、当該
位置座標に基づき光源ユニット33を所定の軸周りに回転させる駆動モータ32を制御す
る。
【0030】
照射部3は、駆動回路31(電気的駆動部)と、駆動モータ32(機械的駆動部)と、
光源ユニット33とを備える。照射部3は、特定部22で特定された照射対象物の位置座
標に基づき、照射対象物に向けて光線を照射する。
【0031】
駆動回路31は、駆動回路制御部23に制御されて、光源ユニット33を電気的に駆動
する。具体的には、駆動回路31は、複数の光源LEのうちの少なくとも1つに駆動電流
を印加し、光線を照射させる。また、駆動回路31は、複数の集光素子FEのうち駆動電
流を印加した光源LEに対応する集光素子FEに駆動電圧を印加し、光線の焦点位置Fを
調整する。
【0032】
駆動モータ32は、駆動モータ制御部24に制御されて、光源ユニット33を機械的に
駆動する。駆動モータ32は、光源ユニット33の向きを変更する。具体的には、駆動モ
ータ32は、駆動電流を印加した光源LEから照射される光線が照射対象物に向かうよう
に、光源ユニット33を所定の軸周りに回転させる。
【0033】
光源ユニット33は、複数の光源LE等を有し、駆動モータ32により一体的に回転駆
動する。光源ユニット33の詳細な構成については、図2,3を参照して後述する。
【0034】
(光源ユニットの構成)
図2は、光源ユニット33の概略構成を示す模式図である。図2に示すように、光源ユ
ニット33は、発光装置331と、コリメートレンズ群332と、集光素子群333とを
備える。
【0035】
発光装置331は、複数の光源LEを備える。また、発光装置331は、少なくとも1
つの光源LEに選択的に駆動電圧を印加するための回路構成を有する。複数の光源LEは
、駆動回路31によって駆動電圧が印加されたとき、光線を生成して出射する光源である
。複数の光源LEは、駆動回路31によって印加される駆動電圧に対応する強度の光線を
出射する。複数の光源LEは、例えば、照射対象物に効果的に吸収される青色光を出射す
る青色LDである。複数の光源LEは、例えば、発光装置331の一側面(出射面331
a)において設けられる。複数の光源LEは、例えば、二次元の配列を形成する(図3
参照)。
【0036】
コリメートレンズ群332は、複数のコリメートレンズCLが2次元に配列して一体化
したものである。複数のコリメートレンズCLはそれぞれ、各光源LEから出射される光
線を平行化する。
【0037】
集光素子群333は、複数の集光素子FEが2次元に配列して一体化したものである。
複数の集光素子FEはそれぞれ、各光源LEから出射され、各コリメートレンズCLによ
り平行化された光線を、各光源LEに対応する所定の位置(焦点位置F)に集光する。複
数の集光素子FEは、例えば回折光学素子、または駆動回路31により印加される駆動電
圧により焦点位置を変更可能な電気光学素子である。電気光学素子としては、強誘電体薄
膜または液晶レンズ等が挙げられる。複数の集光素子FEを上述の電気光学素子とするこ
とにより、照射対象物の奥行き位置(後述のZ座標)に応じて光線の焦点位置を変更でき
る。
【0038】
複数の光源LEの発光時間は、例えば1ms以上である。照射対象物に集光される光線
のスポット径は、例えば1mm以上である。照射対象物に集光される光線の光密度は、例
えば0.1~5W/mmである。光線の波長は、例えば350nm~900nmである
【0039】
なお、コリメートレンズ群332は省略してもよい。すなわち、集光素子群333が、
複数の光源LEから出射される光線を直接的に所定の位置に集光してもよい。また、集光
素子群333は省略してもよい。この場合、レンズ群(コリメートレンズ群332の代わ
りに配置される)が光線の集光を兼ね、複数の光源LEから出射される光線の焦点は固定
される。
【0040】
図3は、発光装置331の構成の一例を示す斜視図である。図3に示すように、発光装
置331の出射面331aは平面であり、複数の光源LEは、出射面331aにおいて二
次元に配列されていてもよい。図3に示す一例では、複数の光源LEは、4行6列の配列
を形成している。以下、当該配列の行方向をX方向、当該配列の列方向をY方向、XY平
面に直交する方向をZ方向とする。すなわち、光源ユニット33におけるXYZ座標系を
設定する。
【0041】
発光装置331は、X方向に沿って並ぶ6組の光源LEそれぞれにY方向の駆動電流を
流す6つの第1選択配線と、Y方向に沿って並ぶ4組の光源LEそれぞれにX方向の駆動
電流を流す4つの第2選択配線とを備えてもよい。発光装置331は、ある光源LEに対
応する第1選択配線および第2選択配線の組み合わせに駆動電流を流すことにより、当該
光源LEに選択的に駆動電圧を印加できるような公知の回路構成を有する。
【0042】
複数の光源LEが図3に示すような二次元の配列を形成する場合、複数のコリメートレ
ンズCLおよび複数の集光素子FEも、複数の光源LEに対応して二次元の配列を形成す
る。複数のコリメートレンズCLは、複数の光源LEから出射される光線をZ方向に沿う
ように平行化する。
【0043】
(照射装置の動作例)
図4は、複数の光源LEが図3に示すような二次元の配列を形成する場合における、光
源ユニット33の駆動の流れの一例を示す模式図である。図4の符号4001は、光源ユ
ニット33の機械的な駆動を示す。図4の符号4002は、光源ユニット33の電気的な
駆動を示す。
【0044】
図5は、複数の光源LEが図3に示すような二次元の配列を形成する場合における、制
御部2が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4図5を参照し、
照射装置100が照射対象物に照準を合わせて照射する際の制御部2の動作例を以下に説
明する。
【0045】
まず、図4の符号4001に示すように、撮像部1が撮像する所定の範囲に照射対象物
が入ったとき、検出部21は照射対象物を検出する(図5のS1)。具体的には、検出部
21は、撮像部1から取得した被検出体の画像、または飛行軌跡から、被検出体が照射対
象物であるか否かを判定する。被検出体が照射対象物であった場合、検出部21は、照射
対象物を含む画像データを特定部22に送信する。
【0046】
次に、特定部22は、照射対象物の位置を特定する(図5の特定ステップS2)。具体
的には、特定部22は、検出部21から取得した画像データに基づき、検出部21が照射
対象物を検出したときの照射対象物の位置座標(第1位置座標と称する)を算出する。
【0047】
次に、駆動モータ制御部24は、照射対象物の位置に応じて光源ユニット33の向きを
調整する(図5の機械的駆動ステップS3)。具体的には、駆動モータ制御部24は、第
1位置座標に基づき、照射対象物が光源ユニット33の照射範囲(複数の光源LEにより
照射される光線のスポットがカバー可能な範囲)内に入るように、駆動モータ32を制御
する。これにより、照射対象物に対する光線の照射の凡その位置合わせが完了する。
【0048】
図4の符号4002に示すように、光源ユニット33の向きの調整(機械的な駆動)に
は、典型的には125~250ms程度の時間を要するため、その間に照射対象物が光線
のスポット径に対して無視できない程度に移動する可能性がある。そのため、次に、特定
部22は、照射対象物の位置を更新する(図5のS4)。具体的には、特定部22は、光
源ユニット33の向きが調整された直後に撮像部1が撮像した画像データを取得する。特
定部22は、当該画像データに基づき、光源ユニット33の向きが調整された直後の照射
対象物の位置座標(第2位置座標と称する)を算出する。
【0049】
次に、駆動回路制御部23は、複数の光源LEから、照射対象物に対応する少なくとも
1つの光源LEを選択する(図5のS5)。具体的には、駆動回路制御部23は、第2位
置座標に基づき、複数の光源LEから、出射される光線の光路が照射対象物を通る光源L
Eを選択する。
【0050】
次に、駆動回路制御部23は、選択した光源LEから光線を出射させる(図5の電気的
駆動ステップS6)。具体的には、駆動回路制御部23は、選択した光源LEに駆動電圧
を印加するように駆動回路31を制御する。
【0051】
以上の構成によれば、照射装置100は、照射対象物が光源ユニット33の照射範囲内
に入るように、光源ユニット33を機械的に駆動する。これにより、照射装置100は、
広範囲にわたって照射対象物を走査できる。また、照射装置100は、複数の光源LEか
ら出射される光線の光路が照射対象物を通る光源LEを選択して、選択した光源LEに駆
動電圧を印加するように、光源ユニット33を電気的に駆動する。すなわち、複数の光源
LEから適切な光源LEを選択するだけで照射対象物に光線を照射できる。そのため、従
来の反射ミラーの調整により光線の光路を調整して照射対象物に光線を照射していた照射
装置と比較し、照射対象物の撮像から短時間で光線の光路を調整できる。したがって、照
射装置100は、照射範囲を広範囲にしつつ、照射対象物に対して適切に光線を照射でき
る。
【0052】
また、照射装置100は、照射対象物に対応する少なくとも1つの光源LEに選択的に
駆動電圧を印加している。これにより、より少ないエネルギーの光線により照射対象物に
ダメージを与えることができる。
【0053】
(変形例)
図5のS5において、駆動回路制御部23は、複数の光源LEからライン状に光源を選
択してもよい。例えば、駆動回路制御部23は、複数の光源LEから、照射対象物の位置
に対応する、X方向に並設された6つの光源LEを選択してもよい。これにより、X方向
に向く(所定の方向に向く)照射対象物に効果的にダメージを与えることができる。
【0054】
加えて、図5のS5~S6において、駆動回路制御部23は、照射対象物に対応して、
ライン状に選択した光源LEから時間的にずらして光線を出射させてもよい。例えば、駆
動回路制御部23は、X方向に進行する照射対象物に合わせて、X方向に並設された6つ
の光源LEから順に光線を出射させてもよい。例えば、特定部22は、照射対象物の進行
速度を特定し、駆動回路制御部23は、特定部22が特定した照射対象物の進行速度に合
わせて、ライン状に選択した光源LEから光線を出射させる時刻を制御してもよい。これ
により、X方向に進行する(所定の方向に進行する)照射対象物に光線のスポットを追従
させ、照射対象物に長期間かつ効率的に複数の光線を照射できる。それゆえ、移動する照
射対象物に対して、より効率的に大きなダメージを与えることができる。また、移動する
小型の照射対象物に対する光線の命中率も向上させることができる。
【0055】
また、図5のS2において、特定部22は、照射対象物の向きを特定してもよい。そし
て、図5のS5において、駆動回路制御部23は、複数の光源LEから、照射対象物の向
きに応じてライン状に光源を選択してもよい。
【0056】
図6図8は、複数の光源LEから照射対象物に対応する少なくとも1つの光源LEを
選択するいくつかの例を示す模式図である。図6図8を参照し、照射対象物の向きに応
じてライン状に光源を選択するいくつかの例について説明する。
【0057】
図6に示すように、照射対象物の向きがX方向である場合、駆動回路制御部23は、複
数の光源LEから、X方向に並設された(符号Aで囲まれた)4つの光源LEを選択する
。駆動回路制御部23は、照射対象物に対応して、これら4つの光源LEから時間的にず
らして光線を出射させてもよい。例えば、駆動回路制御部23は、照射対象物の進行方向
に合わせて4つの光源LEから順に光線を出射させてもよい。これにより、空間的に重ね
られた複数の光線を照射対象物に照射できる。駆動回路制御部23は、これら4つの光源
LEから同時に光線を出射させてもよい。
【0058】
同様に、図7に示すように、照射対象物の向きがY方向である場合、駆動回路制御部2
3は、複数の光源LEから、Y方向に並設された(符号Bで囲まれた)4つの光源LEを
選択する。また、図8に示すように、照射対象物の向きが斜め方向である場合、駆動回路
制御部23は、複数の光源LEから、斜め方向に並設された(符号Cで囲まれた)4つの
光源LEを選択する。
【0059】
以上の構成によれば、照射対象物の向きに応じてライン状に光源を選択することができ
る。したがって、照射対象物に効果的にダメージを与えることができる。
【0060】
図9は、複数の光源LEから、時間的にずらしてライン状に配列した光源群を選択する
例を示す模式図である。ここでは、照射対象物の向き(長手方向)と、照射対象物の進行
方向とが異なる場合を考える。特定部22は、照射対象物の位置、照射対象物の向き(X
方向)、照射対象物の進行方向(Y方向)、および照射対象物の進行速度を特定してもよ
い。駆動回路制御部23は、照射対象物の位置および向きに応じてライン状に配列した第
1光源群D1を選択して光線を出射させる。その後、照射対象物の進行方向および進行速
度に応じて、ライン状に配列した第2光源群D2、および第3光源群D3を順次選択して
光線を出射させる。第1光源群D1、第2光源群D2、および第3光源群D3は、互いに
異なる複数の光源を含んでよい。例えば、第2光源群D2は、少なくとも第1光源群D1
に含まれない光源を含む。第1光源群D1は、少なくとも第2光源群D2に含まれない光
源を含む。第1光源群D1と第2光源群D2とは、一部に共通の光源を含んでもよい。第
2光源群D2は、第1光源群D1に含まれる光源を含まなくてもよい。ここでは、第2光
源群D2および第3光源群D3は、第1光源群D1に対して、第1光源群が配列する方向
(X方向)とは異なる方向(Y方向)に位置している。これにより、照射対象物が、向い
ている方向とは異なる方向に移動する場合でも、効果的にダメージを与えることができる
。なお、第2光源群D2および第3光源群D3は、第1光源群D1に対して、第1光源群
が配列する方向(X方向)に位置してもよい。
【0061】
また、図5のS2において、特定部22は、照射対象物の特定の部位を決定してもよい
。そして、図5のS5において、駆動回路制御部23は、複数の光源LEから、照射対象
物の特定の部位に対応する少なくとも1つの光源LEを選択してもよい。具体的には、駆
動回路制御部23は、照射対象物の特定の部位の第2位置座標に基づき、複数の光源LE
から、出射される光線の光路が照射対象物の特定の部位を通る光源LEを選択する。これ
により、照射対象物の特定の部位を狙わない場合と比較し、光線のスポット径を小さくで
きるため、照射対象物に照射するエネルギーを少なくすることができる。
【0062】
照射対象物が害虫である場合、特定の部位は、例えば、移動のための脚の付け根が位置
する胸、食餌のための口が位置する顔、あるいは生殖器官が位置する尻等の、光線を照射
することで照射対象物にダメージを与えることができる部位である。照射対象物が害虫で
ある場合、特定の部位は、上述の光線を照射することで照射対象物にダメージを与えるこ
とができる部位の近傍である、光線を照射することで照射対象物にその場所から退避させ
ることができる部位であってもよい。照射対象物が害獣である場合、特定の部位は、例え
ば、目である。照射対象物が雑草である場合、特定の部位は、例えば、成長点である。な
お、植物の特定の部位も風等によって動き得る。
【0063】
また、図5のS4において、特定部22は、光線を出射させる時刻における照射対象物
の位置を予測してもよい。具体的には、特定部22は、撮像部1から所定の周期で照射対
象物を含む画像データを取得する。特定部22は、一連の画像データから、光線を出射さ
せる時刻における照射対象物の位置を予測する。これにより、照射対象物の撮像から光線
の出射までの時間(例えばカメラの露光時間など)による照射対象物の移動も考慮した照
射対象物の位置を特定できる。したがって、照射装置100は、照射対象物に対してより
適切に光線を照射できる。
【0064】
また、複数の集光素子FEは、駆動回路31により印加される駆動電圧により焦点位置
を変更可能な電気光学素子であってもよい。そして、図5のS6において、駆動回路制御
部23は、選択した光源LEに対応する集光素子FEに印加する電圧を制御することによ
り、選択した光源LEから出射される光線の焦点位置を変更してもよい。例えば、駆動回
路制御部23は、照射対象物の奥行き位置に基づいて、選択した集光素子FEの焦点位置
を変更してもよい。これにより、照射対象物に照射する光線のエネルギー密度を照射対象
物に効果的にダメージを与え得る所定値以上とすることができる。また、照射対象物の奥
行き位置に基づいて、所望のエネルギー密度を有する光線を照射対象物に照射できる。ま
た、駆動回路制御部23は、照射対象物のXY座標に基づいて、集光素子FEにおける光
線の屈折角を変更してもよい。これにより、光線の照射位置の詳細な制御が可能である。
【0065】
また、図5のS6において、駆動回路制御部23は、奥行きの焦点位置Fの異なる複数
の集光素子FEに対応する複数の光源LEから、照射対象物の奥行き位置に対応する少な
くとも1つの光源LEを選択してもよい。これにより、焦点位置を変更可能な電気光学素
子を使用しなくても、照射対象物の奥行き位置に応じて光線の焦点位置を変更できる。
【0066】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態
にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰
り返さない。
【0067】
図10は、実施形態2に係る照射装置100Aの構成を示す模式図である。図10に示
すように、照射装置100Aは、撮像部1と、制御部2と、複数の照射部3A~3Cとを
備える。すなわち、照射装置100Aは、照射部3に代えて、複数の照射部3A~3Cを
備える点で、実施形態1に係る照射装置100と異なる。各照射部3A~3Cの構成は、
実施形態1に係る照射部3と同様である。
【0068】
制御部2は、複数の照射部3A~3Cから光線を照射する照射部を選択する。例えば、
制御部2は、複数の照射部3A~3Cのうち照射対象物の位置に最も近い照射範囲を有す
る照射部を選択する。
【0069】
制御部2は、選択した照射部の照射範囲内に照射対象物が入るように、選択した照射部
の駆動モータ32を制御する。また、制御部2は、選択した照射部が備える複数の光源L
Eから、照射対象物に対応する少なくとも1つの光源LEを選択する。制御部2は、選択
した光源LEに駆動電圧を印加するように、選択した照射部の駆動回路31を制御する。
【0070】
以上の構成によれば、照射装置100Aは、複数の照射部3A~3Cをまとめて制御す
ることにより、照射範囲をより広範囲にすることができる。そのため、農場等の広大な領
域の照射対象物に対して適切に光線を照射できる。
【0071】
これらの構成によれば、物理的な手法によって害虫等の照射対象物が減少し、農作物の
生産量が増加して農業生産性の向上を促進することができる。これにより、化学農薬の使
用量や遺伝子組み換え操作等のバイオ処理を低減し、持続可能な開発目標(SDGs)の
達成に貢献できる。SDGsの具体的な項目として、農業生産性の向上:目標2(飢餓)
、農薬不使用:目標3(保健)、害虫駆除産業:目標9(イノベーション)害虫被害削減
:目標12(持続可能な生産)、植物の生態系保全:目標15(陸上資源)を挙げること
ができる。
【0072】
〔ソフトウェアによる実現例〕
照射装置100,100A(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピ
ュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部
2に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現するこ
とができる。
【0073】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なく
とも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)
を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実
行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0074】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記
録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備え
ていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を
介して上記装置に供給されてもよい。
【0075】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも
可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路
も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロ
ックの機能を実現することも可能である。
【0076】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知
能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよい
し、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであ
ってもよい。
【0077】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の
変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて
得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
22 特定部
31 駆動回路(電気的駆動部)
32 駆動モータ(機械的駆動部)
33 光源ユニット
100、100A 照射装置
LE 複数の光源
FE 複数の集光素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10