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特開2024-175156光学積層シート、光学物品、レンズ、眼鏡、及び光学積層シートの製造方法
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  • 特開-光学積層シート、光学物品、レンズ、眼鏡、及び光学積層シートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175156
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】光学積層シート、光学物品、レンズ、眼鏡、及び光学積層シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/23 20060101AFI20241211BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20241211BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20241211BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20241211BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20241211BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20241211BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G02B5/23
G02C7/10
G02B3/00
G02B5/30
C09J175/04
B32B7/12
B32B27/30 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183702
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】森 力宏
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
2H149
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
2H006BE02
2H006BE05
2H148DA04
2H148DA09
2H148DA12
2H148DA24
2H149AA23
2H149AB16
2H149BA02
2H149FA03W
2H149FA61
2H149FC08
2H149FD22
2H149FD25
4F100AH04B
4F100AK21A
4F100AK21C
4F100AK36B
4F100AK51B
4F100BA03
4F100BA06
4F100CA13B
4F100CB00B
4F100EH46
4F100EJ86
4F100JN10A
4F100JN10C
4J040EF061
4J040EF111
4J040EF121
4J040EF281
4J040KA35
4J040LA01
4J040LA10
4J040MA10
4J040NA18
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、密着性及び外観性に優れた光学積層シート及びその製造方法と、この光学積層シートを含む光学物品、レンズ及び眼鏡とを提供することにある。
【解決手段】実施形態によると、光学積層シート1が提供される。光学積層シート1は、第1光学シート2及び第2光学シート3とフォトクロミック接着層4とを含む。第1及び第2光学シートは、ポリビニルアルコール樹脂を含む。フォトクロミック接着層4は、第1光学シート2及び第2光学シート3間に介在し、これらを接着させる。フォトクロミック接着層4は、フォトクロミック化合物、並びに、第2プレポリマー又は第1ポリマー及び第2プレポリマー若しくは第3プレポリマーを含む接着性組成物の硬化体を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール樹脂を含む第1光学シート及び第2光学シートと、
前記第1光学シート及び前記第2光学シート間に介在し、これらを接着させるフォトクロミック接着層とを含み、
前記フォトクロミック接着層は、フォトクロミック化合物、並びに、第2プレポリマー、又は、第1ポリマー及び第2プレポリマー若しくは第3プレポリマーを含む接着性組成物の硬化体を含み、
前記第2プレポリマーは、第1プレポリマーと2以上の活性水素基を有する第2多官能活性水素化合物とを反応させて得られる2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物であり、前記第1プレポリマーは、2以上の活性水素基を有する第1多官能活性水素化合物と、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて得られる2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物であり、
前記第1ポリマーは、前記第2プレポリマーと1つの活性水素基を有する単官能活性水素化合物とを反応させて得られる化合物であり、前記第3プレポリマーは、前記第1多官能活性水素化合物と前記第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて得られる2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物である、
光学積層シート。
【請求項2】
前記接着性組成物は、前記第2プレポリマーを含む請求項1に記載の光学積層シート。
【請求項3】
前記第1多官能活性水素化合物は、数平均分子量500以上3000以下のポリオール化合物を含む請求項1又は2に記載の光学積層シート。
【請求項4】
前記第1イソ(チオ)シアネート化合物は、モル質量100以上500以下のイソ(チオ)シアネートを含む請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学積層シート。
【請求項5】
前記第2多官能活性水素化合物は、モル質量50以上500以下のポリアミンを含む請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学積層シート。
【請求項6】
前記単官能活性水素化合物は、2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル部位を有するアミンを含む請求項1乃至5の何れか1項に記載の光学積層シート。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の光学積層シートと、
前記第1光学シート及び前記第2光学シートの少なくとも一方の表面を被覆し、樹脂を含む光学素子基材と
を含む光学物品。
【請求項8】
前記光学素子基材は、前記第1光学シート及び前記第2光学シートの両方の表面を被覆する請求項7に記載の光学物品。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の光学物品を含むレンズ。
【請求項10】
請求項9に記載のレンズを含む眼鏡。
【請求項11】
前記第1多官能活性水素化合物と前記第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて前記第1プレポリマーを得ることと、
前記第1プレポリマーと前記第2多官能活性水素化合物とを反応させて前記第2プレポリマーを得ることと、
前記第2プレポリマーと前記フォトクロミック化合物とを混合して前記接着性組成物を得ることと、
前記接着性組成物を前記第1光学シートの少なくとも一方の主面上に塗布して塗膜を得ることと、
前記塗膜上に前記第2光学シートを積層させることと
を含む請求項1乃至5に記載の光学積層シートの製造方法。
【請求項12】
前記第1多官能活性水素化合物と前記第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて前記第1プレポリマーを得ることと、
前記第1プレポリマーと前記第2多官能活性水素化合物とを反応させて前記第2プレポリマーを得ることと、
前記第2プレポリマーと前記単官能活性水素化合物とを反応させて前記第1ポリマーを得ることと、
前記第1ポリマー、前記第2プレポリマー、及び前記フォトクロミック化合物を混合して前記接着性組成物を得ることと、
前記接着性組成物を前記第1光学シートの少なくとも一方の主面上に塗布して塗膜を得ることと、
前記塗膜上に前記第2光学シートを積層させることと
を含む請求項1乃至6に記載の光学積層シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層シート、光学物品、レンズ、眼鏡、及び光学積層シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック眼鏡は、レンズにプラスチック製のレンズを用いた眼鏡である。プラスチックレンズは、例えば、半完成品であるセミフィニッシュドレンズに様々な加工を施すことにより製造される。セミフィニッシュドレンズの凸面である表面には、ハードコート層や反射防止膜等の機能層が設けられる。また、セミフィニッシュドレンズの凹面である裏面には、切削及び研磨加工が施される。
【0003】
近年、紫外線の量により色調が変化するフォトクロミック性を有する調光レンズが注目を集めている。調光レンズは、フォトクロミック化合物をプラスチックレンズに付与することにより得られる。フォトクロミック化合物は、光の作用により、互いに異なる光吸収スペクトルを有する2以上の異性体を可逆的に生成可能な化合物である。
【0004】
フォトクロミックレンズの製造方法としては、従来、セミフィニッシュドレンズのマトリックスにフォトクロミック化合物を分散させる練り込み法、及び、セミフィニッシュドレンズの表面にフォトクロミック化合物を含む層を設ける積層法等が用いられてきた。
【0005】
バインダーシート法は、フォトクロミック化合物を含む樹脂層を2枚の光学シートで挟んだバインダーシートをレンズ基材と一体化させてセミフィニッシュドレンズを製造する方法である。バインダーシート法によると、フォトクロミック化合物を含む自立した物品を用いてセミフィニッシュドレンズを製造できるため、練り込み法及び積層法と比較して、生産効率が高まり、大量生産が容易となる傾向にある。
【0006】
フォトクロミック化合物を含む樹脂層のマトリックスとして、ポリウレタン樹脂又はポリウレタウレア樹脂を用いることが検討されている。また、光学シートとして、ポリビニルアルコール樹脂を用いることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-033131号公報
【特許文献2】国際公開第2019/163728号
【特許文献3】国際公開第2019/194281号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、密着性及び外観性に優れた光学積層シート及びその製造方法と、この光学積層シートを含む光学物品、レンズ及び眼鏡とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によると、光学積層シートが提供される。光学積層シートは、第1光学シート及び第2光学シートとフォトクロミック接着層とを含む。第1及び第2光学シートは、ポリビニルアルコール樹脂を含む。フォトクロミック接着層は、第1光学シート及び第2光学シート間に介在し、これらを接着させる。フォトクロミック接着層は、フォトクロミック化合物、並びに、第2プレポリマー又は第1ポリマー及び第2プレポリマー若しくは第3プレポリマーを含む接着性組成物の硬化体を含む。第2プレポリマーは、第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物とを反応させて得られる。第2プレポリマーは、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物である。第2多官能活性水素化合物は、2以上の活性水素基を有する。第1プレポリマーは、第1多官能活性水素化合物と、第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて得られる。第1プレポリマーは、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物である。第1多官能活性水素化合物は、2以上の活性水素基を有する。第1イソ(チオ)シアネート化合物は、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する。第1ポリマーは、第2プレポリマーと単官能活性水素化合物とを反応させて得られる化合物である。単官能活性水素化合物は、1つの活性水素基を有する。第3プレポリマーは、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて得られる。第3プレポリマーは、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する。
【0010】
実施形態によると、光学物品が提供される。光学物品は、実施形態に係る光学積層シートと、光学素子基材とを含む。光学素子基材は、第1光学シート及び第2光学シートの少なくとも一方の表面を被覆し、樹脂を含む。
【0011】
実施形態によると、他の実施形態に係る光学物品を含むレンズが提供される。
【0012】
実施形態によると、他の実施形態に係るレンズを含む眼鏡が提供される。
【0013】
実施形態によると、光学積層シートの第1の製造方法が提供される。この製造方法は、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーとフォトクロミック化合物とを混合して接着性組成物を得ることと、接着性組成物を第1光学シートの少なくとも一方の主面上に塗布して塗膜を得ることと、塗膜上に第2光学シートを積層させることとを含む。
【0014】
実施形態によると、光学積層シートの第2の製造方法が提供される。この製造方法は、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーと単官能活性水素化合物とを反応させて第1ポリマーを得ることと、第1ポリマー、第2プレポリマー、及びフォトクロミック化合物を混合して接着性組成物を得ることと、接着性組成物を第1光学シートの少なくとも一方の主面上に塗布して塗膜を得ることと、塗膜上に第2光学シートを積層させることとを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、密着性及び外観性に優れた光学積層シート及びその製造方法と、この光学積層シートを含む光学物品、レンズ及び眼鏡とが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る光学積層シートの一例を概略的に示す断面図。
図2】実施形態に係る光学物品の一例を概略的に示す断面図。
図3】実施形態に係る眼鏡の一例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
光学積層シートのフォトクロミック接着層には、2枚の光学シートを接着させる接着能に加えて、高いフォトクロミック性が要求されることがある。すなわち、フォトクロミック化合物は、異性体間の構造変化を繰り返すことによりフォトクロミック性を示す。フォトクロミック化合物を含む接着層のマトリックスは、この構造変化を妨げにくい性質が求められる。このようなマトリックスを提供するために、(チオ)ウレタン樹脂、(チオ)ウレア樹脂、又は(チオ)ウレタンウレア樹脂が用いられることがある。これらの樹脂は、イソ(チオ)シアネートと、活性水素基を含有する化合物との反応生成物であるため、各成分を適宜選択することにより、所望の特性を有する樹脂を得られる。更には、活性水素基を有する鎖延長剤を用いることにより、上記反応生成物を更に結合させることも可能であるため、所望の特性を発揮できる構成をより詳細に設計できる。
【0018】
ここで、(チオ)ウレタン樹脂とは、ウレタン樹脂及びチオウレタン樹脂の少なくとも一方を意味する。(チオ)ウレア樹脂とは、ウレア樹脂及びチオウレア樹脂の少なくとも一方を意味する。(チオ)ウレタンウレア樹脂とは、ウレタンウレア樹脂及びチオウレタンウレア樹脂の少なくとも一方を意味する。イソ(チオ)シアネート基とは、イソシアネート基(-C=N=O)及びイソチオシアネート基(-C=N=S)の少なくとも一方を意味する。(チオ)ウレタンウレア樹脂は、(チオ)ウレタン結合及び(チオ)ウレア結合の双方を有する樹脂である。(チオ)ウレタン結合は、イソ(チオ)シアネート基を有する化合物と、水酸基(-OH)を有する化合物との反応により生じ得る。(チオ)ウレア結合は、イソ(チオ)シアネート基を有する化合物と、アミン基(-NH)を有する化合物との反応により生じ得る。(チオ)ウレタンウレア樹脂は、(チオ)ウレタン結合及びイソシアネート基を有する化合物と、アミンとを反応させることにより得られ得る。
【0019】
実施形態に係る光学積層シートにおいて、フォトクロミック接着層は、フォトクロミック化合物と、第2プレポリマー又は第1ポリマー及び第2プレポリマー若しくは第3プレポリマーとを含む接着性組成物の硬化体である。
【0020】
第2プレポリマーは、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて得られる第1プレポリマーと、鎖延長剤である第2多官能活性水素化合物とを反応させて得られるイソ(チオ)シアネート化合物である。第1多官能活性水素化合物と第2多官能活性水素化合物とは、同一の化合物であってもよく、異なる化合物であってもよい。第2プレポリマーは、少なくとも2種以上の成分により構成されているため、フォトクロミック化合物が構造変化し易い硬化体を生じ得る。
【0021】
また、第1ポリマーは、第1プレポリマーのイソ(チオ)シアネート基が、単官能活性水素基を有する化合物と結合した構造を有している。そして、第1ポリマーは、常温常圧下ではイソ(チオ)シアネート基と反応しないが、高温下において第2若しくは第3プレポリマーと反応して、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物を形成し、これらが重合して硬化体を生じると考えられる。第1ポリマーは、少なくとも3種以上の成分により構成されており、更に、第2若しくは第3プレポリマーとも反応するため、フォトクロミック化合物が構造変化し易い硬化体を生じると考えられる。
【0022】
また、実施形態に係る光学積層シートにおいては、ポリビニルアルコール(PVA)を含む2枚の光学シートが、フォトクロミック化合物を含む接着層により接着されている。PVAは、-CHCH(OH)-を繰り返し単位とする親水性が高い樹脂であり、その表面に水酸基(-OH)を有している。実施形態に係る光学積層シートの製造方法においては、例えば、第1光学シートの表面上に第2プレポリマー若しくは第1ポリマー及び第2若しくは第3プレポリマーを含む接着性組成物を塗布した後、得られた塗膜上に第2光学シートを積層させることにより得られる。この際、第2プレポリマーのイソ(チオ)シアネート基は、第1及び第2光学シートに含まれるPVA表面の水酸基と化学反応する。また、第1ポリマー及び第2若しくは第3プレポリマーの反応物に含まれるイソ(チオ)シアネート基は、第1及び第2光学シートに含まれるPVA表面の水酸基と化学反応する。これにより、フォトクロミック接着層と第1及び第2光学シートとの接合強度が高められる。すなわち、実施形態に係る光学積層シートにおいては、第1及び第2シートの表面に水酸基等を付与する処理を行ったり、他の接着剤等を用いたりすることなく、高い密着性を実現できる。
【0023】
更に、第2プレポリマー若しくは第1ポリマー及び第2若しくは第3プレポリマーを含む接着性組成物の硬化体をフォトクロミック接着層として用いると、外観性に優れた光学積層シートが得られることを、本発明者は見出している。すなわち、実施形態に係る光学積層シートには、接着性組成物を塗布及び硬化させた際に発生し得る気泡が含まれにくい。この理由は定かではないが、第1プレポリマー若しくは第2若しくは第3プレポリマーとして、第1イソ(チオ)シアネート化合物よりも分子量の大きいイソ(チオ)シアネート化合物を用いること、光学積層シートの密着性が高いこと、及び、第1及び第2光学シートがPVAを含むため、ガスバリア性が高いことに起因していると考えられる。
【0024】
以上のことから、実施形態に係る光学積層シートは、優れたフォトクロミック性とともに、第1及び第2光学シート間の密着性が高く、かつ、外観に優れている。このような光学積層シートは、例えば、サングラス等の光学物品用途に好適である。
[光学積層シート]
実施形態に係る光学積層シートは、第1光学シート及び第2光学シートとフォトクロミック接着層とを含む。第1光学シート及び第2光学シートは、フォトクロミック接着層により接着されている。フォトクロミック接着層は、第1及び第2光学シートの少なくとも一方の主面上に直に接している。
【0025】
図1は、実施形態に係る光学積層シートの一例を概略的に示す断面図である。図1に示す光学積層シート1は、第1光学シート2と、第2光学シート3と、これらの間に介在するフォトクロミック接着層4とを含む。フォトクロミック接着層4は、第1光学シート2の一方の主面全体と、第2光学シート3の一方の主面全体とを被覆している。フォトクロミック接着層4は、第1光学シート2の両方の主面全体と、第2光学シート3の両方の主面全体とを被覆していてもよく、各主面の一部のみを被覆していてもよい。
【0026】
(第1及び第2光学シート)
第1及び第2光学シートは、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂を含む。第1及び第2光学シートは、PVA樹脂のみから構成されていてもよく、その他の樹脂を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0027】
第1及び第2光学シートは、未延伸、1軸延伸、又は2軸延伸のいずれであってもよい。延伸方向は、未延伸フィルムの機械流れ方向(MD)、これに直交する方向(TD)、機械流れ方向に斜交する方向の何れでもよい。ここで、未延伸シートとは、延伸されていない状態のシートのことであり、1軸延伸シートとは、上記方向のうちいずれかの一方向に未延伸シートを延伸したものである。2軸延伸シートは、上述の延伸方向のうち2方向に延伸したものであり、同時に延伸する同時二軸延伸シートであっても、所定の方向に延伸した後で他の方向に延伸する逐次2軸延伸シートであってもよい。2軸延伸シートの場合、通常、MD、TDに延伸したものが好ましい。延伸倍率は、2~8倍であることが好ましい。
【0028】
PVA樹脂の平均重合度は、例えば、100以上10000以下であり、好ましくは、1500以上8000以下であり、より好ましくは、2000以上5000以下である。PVA樹脂の平均重合度は、日本工業規格(JIS)K6726;1994に準拠した方法で求められる
PVA樹脂は、ホウ酸を含んでいてもよい。ホウ酸は、PVA同士を架橋させる架橋剤として用いられる。PVA樹脂のホウ酸含有量は、例えば、1質量%以上20質量%以下であり、好ましくは、3質量%以上18質量%以下であり、より好ましくは、5質量%以上15質量%以下である。このホウ酸含有量は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma;IPC)発光分析により算出できる。具体的には、先ず、第1又は第2光学シートを硝酸水溶液に溶解させて溶液を得る。この溶液を用いてIPC分析を行い、ホウ素含有量を算出する。このホウ素含有量からホウ酸含有量に換算する。
【0029】
第1及び第2光学シートの少なくとも一方は、偏光性を有する偏光フィルムであってもよい。偏光性を有する第1及び第2光学シートは、視感透過率が10%以上80%以下であり、偏光度が30%以上99.9%以下であることが好ましい。
【0030】
偏光性を有する第1及び第2光学シートは、2色性物質を含む。2色性物質は、ヨウ素及び2色性染料を含む。2色性染料は、アゾ系であってもよく、アントラキノン系であってもよい。2色性染料に具体例は、クロランチンファストレッド(C.I.28160)、コンゴーレッド(C.I.22120)、ブリリアントブルーB(C.I.24410)、ベンゾパープリン(C.I.23500)、クロラゾールブラックBH(C.I.22590)、ダイレクトブルー2B(C.I.22610)、ジアミングリーン(C.I.30295)、クリソフェニン(C.I.24895)、シリウスイエロー(C.I.29000)、ダイレクトファーストレッド(C.I.23630)、アシドブラック(C.I.20470)、ダイレクトスカイブルー(C.I.24400)、ソロフェニルブルー4GL(C.I.34200)、ダイレクトコッパーブルー2B(C.I.24185)、及び、ニッポンブリリアントヴァイオレットBKconc(C.I.27885)を含む。
【0031】
第1光学シートの厚みは、例えば、10μm以上100μm以下である。第2光学シートの厚みは、第1光学シートの厚みと同一でもよく、異なっていてもよい。
【0032】
(フォトクロミック接着層)
フォトクロミック接着層は、第1光学シート及び第2光学シート間に介在し、これらを接着させる。フォトクロミック接着層は、後述する接着性組成物の硬化体を含む。硬化体は、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリチオウレタン樹脂、及びポリチオウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種と、フォトクロミック化合物とを含む。
【0033】
フォトクロミック接着層の厚みは、例えば、0.1μm以上100μm以下である。フォトクロミック接着層の厚みは、第1及び第2光学シートの厚みよりも薄くてもよく、より厚くてもよい。
【0034】
(接着性組成物)
接着性組成物は、フォトクロミック化合物と重合成分とを含む。重合成分は、フォトクロミック接着層のマトリックスとなる。重合成分は、第2プレポリマー又は第1ポリマー及び第2プレポリマー若しくは第3プレポリマーを含む。言い換えると、接着性組成物は、第2プレポリマーを含む重合成分とフォトクロミック化合物との第1の組み合わせ、第1ポリマー及び第2プレポリマーを含む重合成分とフォトクロミック化合物との第2の組み合わせ、第1ポリマー及び第3プレポリマーを含む重合成分とフォトクロミック化合物との第3の組み合わせ、並びに、第1ポリマー、第2プレポリマー、及び第3プレポリマーを含む重合成分とフォトクロミック化合物との第4の組み合わせを含み得る。
【0035】
(フォトクロミック化合物)
フォトクロミック化合物としては、例えば、クロメン化合物、フルギド化合物、及びスピロオキサジン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。フォトクロミック化合物としては、クロメン化合物を用いることが好ましい。クロメン化合物は、1-ベンゾピラン骨格を有する化合物を含む。下記式(I)に、2H-1-ベンゾピラン骨格を示す。
【0036】
【化1】
【0037】
クロメン化合物は、スピロピラン骨格を含むスピロピラン化合物、及び、ナフトピラン骨格を有するナフトピラン化合物を含む。スピロピラン骨格は、スピロ原子を含む1-ベンゾピラン骨格である。下記式(II)に、ナフトピラン骨格を示す。
【0038】
【化2】
【0039】
ナフトピラン化合物には、インデノナフトピラン骨格を有するインデノナフトピラン化合物が含まれる。クロメン化合物は、インデノ〔2,1-f〕ナフト〔1,2-b〕ピラン骨格を有するインデノナフトピラン化合物を含むことが好ましい。インデノ〔2,1-f〕ナフト〔1,2-b〕ピラン骨格を有するクロメン化合物を含む樹脂組成物は、耐久性により優れる傾向にある。下記式(III)に、インデノ〔2,1-f〕ナフト〔1,2-b〕ピラン骨格を示す。
【0040】
【化3】
【0041】
インデノナフトピラン化合物は、下記式(IIIa)に示す化合物を含むことが好ましい。
【0042】
【化4】
【0043】
式(IIIa)において、Z環は、13位の炭素原子をスピロ原子とする置換若しくは非置換のスピロ環である。Z環は、13位の炭素原子と共に、脂肪族環を形成していてもよく、縮合多環を形成していてもよく、複素環を形成していてもよく、複素環式芳香族環を形成していてもよい。
【0044】
脂肪族環の環員炭素数は、3以上20以下であることが好ましく、5以上16以下であることがより好ましく、6以上10以下であることが更に好ましい。脂肪族環の具体例には、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロヘプタン環、ノルボルナン環、ビシクロノナン環、アダマンタン環、およびスピロジシクロヘキサン環が挙げられる。脂肪族環は、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、シクロウンデカン環、シクロドデカン環、又は、スピロジシクロヘキサン環であることが好ましい。
【0045】
縮合多環の環員炭素数は、3以上20以下であることが好ましく、5以上10以下であることがより好ましい。縮合多環の具体例には、フェナントレン環が挙げられる。
【0046】
複素環の環員原子数は、3以上20以下であることが好ましい。複素環の具体例には、チオフェン環、フラン環、ピリジン環が挙げられる。
【0047】
複素環式芳香族環の環員原子数は、3以上20以下であることが好ましい。複素環式芳香族環の具体例には、フェニルフラン環、ビフェニルチオフェン環が挙げられる。
【0048】
これら脂肪族環、縮合多環、複素環、又は複素環式芳香族環は、置換基を有してもよい。この置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基が挙げられる。置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、シクロアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、及び炭素数1~6のアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基が好ましい。Z環が有する置換基の数は、例えば、0以上10以下であり、好ましくは、2以上4以下である。
【0049】
Z環は、環員炭素数が5~16の脂肪族環であることが好ましい。このような構造を有する第1クロメン化合物は、退色速度が高い傾向にある。脂肪族環は、置換基として、炭素数1~3のアルキル基を有することが更に好ましい。なお、脂肪族環は、環同士が2原子間で結合した脂肪族縮環も含まれる。
【0050】
Z環は、下記式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)、(Ig)、又は(Ih)に表される構造を有することが好ましい。より好ましくは(Ib)、(Ig)又は(Ih)に表される構造である。なお、式中、破線の結合手を有する炭素原子が13位の炭素原子である。
【0051】
【化5】
【0052】
式(IIIa)において、R、R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、置換基を有してもよい複素環基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアラルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、チオール基、アルコキシアルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、又は置換基を有してもよいシクロアルキルチオ基である。
【0053】
アルキル基の炭素数は1~10であることが好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基が挙げられる。
【0054】
ハロアルキル基の炭素数は1~10であることが好ましい。ハロアルキル基としては、フッ素原子、塩素原子もしくは臭素原子で置換されたアルキル基が好ましい。好適なハロアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基、クロロメチル基、2-クロロエチル基、及びブロモメチル基が挙げられる。
【0055】
シクロアルキル基の環員炭素数は、3~8であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基は、置換基を有してもよいが、炭素数の数(炭素数3~8)には、置換基の炭素数は含まれないものとする。
【0056】
アルコキシ基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。好適なアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が挙げられる。
【0057】
アミノ基は、1級アミノ基(-NH)であり、置換アミノ基は、1つまたは2つの水素原子が置換された2級または3級アミノ基である。置換アミノ基が有する置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基等が挙げられる。好適なアミノ基の例としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を挙げることできる。
【0058】
複素環基の原子数は3~10であることが好ましい。複素環基は、脂肪族複素環基であってもよく、芳香族複素環基であってもよい。脂肪族複素環基の具体例には、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N-メチルピペラジノ基が挙げられる。芳香族複素環基の具体例にはインドリニル基が挙げられる。複素環基は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。置換基を有する好適な複素環基としては、例えば2,6-ジメチルモルホリノ基、2,6-ジメチルピペリジノ基および2,2,6,6-テトラメチルピペリジノ基等が挙げられる。
【0059】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0060】
アルキルチオ基の炭素数は1~10であることが好ましい。アルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、及びt-ブチルチオ基が挙げられる。
【0061】
アリールチオ基の炭素数は6~10であることが好ましい。アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、及び2-ナフチルチオ基が挙げられる。
【0062】
アルキルカルボニル基の炭素数は2~10であることが好ましい。アルキルカルボニル基の例としては、アセチル基及びエチルカルボニル基が挙げられる。
【0063】
アルコキシカルボニル基の炭素数は2~10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられる。
【0064】
アラルキル基の炭素数は7~11であることが好ましい。アラルキル基の例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、及びナフチルメチル基が挙げられる。
【0065】
アラルコキシ基の炭素数は7~11であることが好ましい。アラルコキシ基の例としては、ベンジロキシ基及びナフチルメトキシ基が挙げられる。
【0066】
アリール基の炭素数は6~12であることが好ましい。アリール基の例としては、フェニル基、1-ナフチル基、及び2-ナフチル基が挙げられる。
【0067】
アリールオキシ基の炭素数は6~12であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、フェニルオキシ基及びナフチルオキシ基が挙げられる。
【0068】
ヘテロアリール基の炭素数は3~12であることが好ましい。ヘテロアリール基の例には、チエニル基、フリル基、ピロリニル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、及びベンゾピロリニル基が挙げられる。
【0069】
アルコキシアルキルチオ基の炭素数は2~10であることが好ましい。アルコキシアルキルチオ基の例としては、メトキシメチルチオ基、メトキシエチルチオ基、メトキシn-プロピルチオ基、メトキシn-ブチルチオ基、エトキシエチルチオ基、及びn-プロポキシプロピルチオ基等が挙げられる。
【0070】
ハロアルキルチオ基の炭素数は1~10であることが好ましい。ハロアルキルチオ基の例としては、トリフルオロメチルチオ基、テトラフルオロエチルチオ基、クロロメチルチオ基、2-クロロエチルチオ基、及びブロモメチルチオ基が挙げられる。
【0071】
シクロアルキルチオ基の炭素数は3~8であることが好ましい。シクロアルキルチオ基の例としては、シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、及びシクロヘキシルチオ基が挙げられる。なお、シクロアルキルチオ基は、置換基を有してもよいが、炭素数の数(炭素数3~8)には、置換基の炭素数は含まれないものとする。
【0072】
上述したシクロアルキル基、アリールチオ基、アラルキル基、アラルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、およびシクロアルキルチオ基は、非置換であってもよく、置換基を有していてもよい。
【0073】
シクロアルキル基、アリールチオ基、アラルキル基、アラルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、およびシクロアルキルチオ基が有し得る置換基は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のハロアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、炭素数1以上20以下のアルキルアリール基、1以上5以下のヘテロ原子を含む炭素数1以上8以下のヘテロシクロアルキル基、1以上5以下のヘテロ原子を含む、炭素数1以上8以下のヘテロアリール基、炭素数6以上12以下のアリールオキシ基、炭素数6以上12以下のアリールチオ基、シアノ基、ニトロ基、及び、ハロゲン原子からなる置換基群から選択され得る。置換基の数は、1つであってもよく、2以上であってもよい。
【0074】
及びR、R及びR、並びにR及びRは、互いに結合して、炭素数2以上5以下の脂肪族環、1以上3以下のヘテロ原子を含む炭素数1以上4以下の脂肪族複素環、炭素数4以上12以下の芳香族環、又は、1以上6以下のヘテロ原子を含む炭素数3以上11以下の芳香族複素環を形成していてもよい。脂肪族環、脂肪族複素環、芳香族環、及び、芳香族複素環は、非置換でもよく、上記の置換基群から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい。
【0075】
、R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、下記式(IB)に表されるオリゴマー基、下記式(IC)に表されるオリゴマー基、下記式(ID)に表されるオリゴマー基、下記式(IE)に表されるオリゴマー基、又は、下記式(X)に表されるオリゴマー基であってもよい。また、R、R、R、R、R、R、及びRが有し得る置換基は、下記式(IB)に表されるオリゴマー基、下記式(IC)に表されるオリゴマー基、下記式(ID)に表されるオリゴマー基、下記式(IE)に表されるオリゴマー基、及び、下記式(X)に表されるオリゴマー基からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴマー基であってもよい。
【0076】
【化6】
【0077】
式(IB)において、Xは、酸素原子、硫黄原子、アミノ基、置換アミノ基、(チオ)アミド基、(チオ)エステル基、又は、炭素数1以上10以下のアルキレン基である。Y及びYは、それぞれ、炭素数1以上20以下のアルキレン基である。Wは、水素原子、又は、炭素数1以上20以下のアルキル基である。cは、0又は1である。d及びeは、それぞれ、0又は1以上10以下の整数である。mは、3以上200以下の整数である。
【0078】
【化7】
【0079】
式(IC)において、X、Y、Y、c、d、e、及びmは、それぞれ、式(IB)におけるものと同義である。Xは酸素原子、硫黄原子、アミノ基、置換アミノ基、(チオ)アミド基、(チオ)エステル基、又は、炭素数1以上10以下のアルキレン基である。Wは、水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、又は、フォトクロミック部位である。fは、0又は1である。
【0080】
【化8】
【0081】
式(ID)において、Wは、炭素数1以上20以下のアルキル基である。gは、0又は1である。nは、3以上200以下の整数である。
【0082】
【化9】
【0083】
式(IE)において、Wは、炭素数1以上20以下のアルキル基、又は、フォトクロミック部位である。g及びnは、式(ID)におけるものと同義である。hは、0又は1である。
【0084】
【化10】
【0085】
式(X)において、Eは酸素原子、又はNR101である。Fは酸素原子又は硫黄原子である。Gは酸素原子、硫黄原子、又はNR202である。jは0または1の整数である。R101は水素原子又は炭素数1~10のアルキル基である。
【0086】
201及びR202は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、又は1以上5以下のヘテロ原子を含む炭素数1以上8以下のヘテロアリール基であり、Gが酸素原子、又は硫黄原子となる場合には、R201は水素原子以外の基である。
【0087】
ナフトピラン化合物は、下記式(IIa)に表される化合物を含むことが好ましい。
【0088】
【化11】
【0089】
式(IIa)において、Q、Q、Q、Q、Q、Q、Q、及びQは、それぞれ、R、R、R、R、R、R、及びRと同様の基を用い得る。
【0090】
接着性組成物の固形分において、フォトクロミック化合物が占める割合は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは、1質量%以上5質量%以下である。
【0091】
(第2プレポリマー)
第2プレポリマーは、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて得られる第1プレポリマーと、鎖延長剤である第2多官能活性水素化合物とを反応させて得られる。第2プレポリマーは、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する。第2プレポリマーは、主鎖の両末端にイソ(チオ)シアネート基を有することが好ましい。第2プレポリマーは、ウレタンプレポリマー、ウレアプレポリマー、ウレタンウレアプレポリマー、チオウレタンプレポリマー、チオウレアプレポリマー、及びチオウレタンウレアプレポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。第2プレポリマーは、大気中の水及び第1及び第2光学シートの表面上の水酸基と化学結合して、(チオ)ウレタン樹脂、(チオ)ウレア樹脂、及び(チオ)ウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を生成する。
【0092】
第2プレポリマーは、下記式(1)に表される構造を含み得る。
【0093】
【化12】
【0094】
式(1)において、I1は、第1イソ(チオ)シアネート化合物の末端以外の部分を表す。FA1は、第1多官能活性水素化合物の末端以外の部分を表す。SA1は、第2多官能活性水素化合物の末端以外の部分を表す。X及びYは、それぞれ、ウレタン結合、ウレア結合、チオウレタン結合、又はチオウレア結合を表す。Xはウレタン結合であることが好ましく、Yはウレア結合であることが好ましい。
【0095】
第2プレポリマーの数平均分子量は、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、13000以上であることが更に好ましい。数平均分子量が大きい第2プレポリマーを用いると、光学積層シートの剥離強度が高まる傾向にある。すなわち、数平均分子量が大きい第2プレポリマーは、互いに絡み合い易いため、凝集力が高まり、それゆえ、接着力が高まると考えられる。
【0096】
第2プレポリマーの数平均分子量は、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。第2プレポリマーの数平均分子量が過剰に大きいと、光学積層シートの剥離強度が低まる傾向にある。すなわち、数平均分子量が大きい第2プレポリマーは、単位質量当たりに含まれるイソ(チオ)シアネート基の量が少なく、それゆえ、接着力が弱まる傾向にある。
【0097】
第2プレポリマーの数平均分子量は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)により測定できる。測定に際しては、カラム:Shodex KD-806M(昭和電工株式会社製)を2本直列接続、溶離液:LiBr(10mmol/L)/DMF溶液、流速:1ml/min、検出器:RI検出器、第2プレポリマー試料溶液:1.0%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の条件にて測定する。解析ソフトとしては、日本ウォーターズ株式会社製GPC解析ソフト『Empower Personal GPC Option』を用いる。
【0098】
第2プレポリマーの軟化点は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。第2プレポリマーの軟化点が高いと、光学積層シートの耐熱性が向上し、密着性がより高まる傾向にある。第2プレポリマーの軟化点に上限は特にないが、一例によると、200℃以下であり、他の例によると、160℃以下である。
【0099】
第2プレポリマーの軟化点は、例えば、以下の方法で測定する。先ず、第2プレポリマーを有機溶剤に溶解させて溶液を得る。溶液中の第2プレポリマーの濃度は、例えば、34質量%とする。この溶液をステンレスの容器に流し込み、40℃で10時間、60℃で10時間、さらに真空乾燥機にて60℃で12時間にわたって乾燥させて、厚み1mmの試験片を作製する。得られた試験片について、熱機械測定装置(セイコーインスツルメント社製、TMA120C)を用いて分析を行い、軟化点を得る。測定条件は、昇温速度を10℃/分とし、測定温度範囲を30~200℃とし、先端径0.5mmの針入プローブを用いる。
【0100】
接着性組成物の固形分において、第2プレポリマーは主成分を占め得る。接着性組成物の固形分において第2プレポリマーが占める割合は、例えば、90質量%以上99質量%以下である。なお、接着性組成物が、第1ポリマー及び第2プレポリマーを含む重合成分とフォトクロミック化合物との第2若しくは第4の組み合わせの場合、接着性組成物の固形分において第2プレポリマーが占める割合は、例えば、5質量%以上50質量%以下であり、好ましくは、10質量%以上40質量%以下である。
【0101】
(第1プレポリマー)
第1プレポリマーは、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて得られる。第1プレポリマーは、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する。第1プレポリマーは、主鎖の両末端にイソ(チオ)シアネート基を有することが好ましい。第1プレポリマーは、ウレタンプレポリマー、ウレアプレポリマー、チオウレタンプレポリマー、及びチオウレアプレポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。第1プレポリマーは、第2プレポリマーの原料となる。
【0102】
第1プレポリマーは、下記式(2)に表される構造を含み得る。
【0103】
【化13】
【0104】
式(2)において、I1、FA1、及びXは、式(1)におけるものと同義である。
【0105】
第1プレポリマーの数平均分子量は、500以上10000以下であることが好ましく、1000以上5000以下であることがより好ましい。第1プレポリマーの数平均分子量は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0106】
(第1イソ(チオ)シアネート化合物)
第1イソ(チオ)シアネート化合物は、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する。第1イソ(チオ)シアネート化合物は、2つのイソ(チオ)シアネート基を有することが好ましい。第1イソ(チオ)シアネート化合物は、2つのイソシアネート基を含むジイソシアネート化合物であることがより好ましい。
【0107】
第1イソ(チオ)シアネート化合物のモル質量は、好ましくは、100以上500以下である。この範囲内の第1イソ(チオ)シアネート化合物を用いると、所望の数平均分子量の第2プレポリマー及び第1ポリマーを得られる傾向にある。第1イソ(チオ)シアネート化合物のモル質量は、より好ましくは、150以上300以下である。
【0108】
第1イソ(チオ)シアネート化合物は、脂肪族イソ(チオ)シアネート化合物、脂環族イソ(チオ)シアネート化合物、及び芳香族イソ(チオ)シアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。第1イソ(チオ)シアネート化合物は、脂環族イソ(チオ)シアネート化合物であることが好ましい。第1イソ(チオ)シアネート化合物としては、単一種類を用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0109】
脂肪族イソシアネート化合物の例には、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,4,4,-トリメチルヘキサンメチレンジイソシアネート、1,2-ビス(2-イソシアナトエチルチオ)エタン等が挙げられる。
【0110】
脂環族イソシアネート化合物の例には、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン等が挙げられる。
【0111】
芳香族イソシアネート化合物の例には、キシレンジイソシアネート(o-,m-,p-)、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0112】
脂肪族イソチオシアネート化合物の例としては、ヘキサメチレンジイソチアシネート、1,2-ジイソチオシアネートエタン、1,3-ジイソチオシアネートプロパン、1,4-ジイソチオシアネートブタン、1,6-ジイソチオシアネートヘキサン、2,4,4,-トリメチルヘキサンメチレンジイソチアシネート、チオビス(3-イソチオシアネートプロパン)、チオビス(2-イソチオシアネートエタン)、ジチオビス(2-イソチオシアネートエタン)等が挙げられる。
【0113】
脂環族イソチオシアネート化合物の例には、イソホロンジイソチオシアネート、シクロヘキサンジイソチオシアネート、2,4-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、2,5-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、2,6-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、3,5-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、ノルボルナンジイソチアネート等が挙げられる。
【0114】
芳香族イソチオシアネート化合物の例には、p-フェニレンジイソプロピリデンジイソチオシアネート、1,2-ジイソチオシアネートベンゼン、1,3-ジイソチオシアネートベンゼン、1,4-ジイソチオシアネートベンゼン、2,4-ジイソチオシアネートトルエン、キシレンジイソチオシアネート(o-,m-,p-)、2,4-トリレンジイソチオシアネート、2,6-トリレンジイソチオシアネート、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネート2-メチルベンゼン)、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネート3-メチルベンゼン)等が挙げられる。
【0115】
(第1多官能活性水素化合物)
第1多官能活性水素化合物は、2以上の活性水素基を有する。第1多官能活性水素化合物は、2つの活性水素基を有することが好ましい。活性水素基は、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。第1多官能活性水素化合物は、例えば、2以上の水酸基を含むポリオール化合物、2以上のアミノ基を含むポリアミン化合物、2つのカルボキシ基を含むジカルボン酸、及び2以上のチオール基を含むポリチオール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。第1多官能活性水素化合物としては、単一種類を用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0116】
第1多官能活性水素化合物は、ポリオール化合物を含むことが好ましい。ポリオール化合物を用いると、(チオ)ウレタン結合を有する第1プレポリマーが得られる。ポリオール化合物の繰り返し構造部分は、フォトクロミック接着層において、フォトクロミック化合物の構造変化を妨げにくいマトリックスを提供することに寄与し得る。ポリオール化合物を用いると、光学積層シートのフォトクロミック性が高まる傾向にある。
【0117】
ポリオール化合物の数平均分子量は、500以上3000以下であることが好ましい。この範囲内の数平均分子量を含むポリオール化合物を用いると、所望の数平均分子量の第2プレポリマー及び第1ポリマーを得られる傾向にある。ポリオール化合物の数平均分子量は、800以上2000以下であることがより好ましい。
【0118】
ポリオール化合物は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み得る。ポリオール化合物は、ポリカーボネートポリオールを含むことが好ましい。ポリカーボネートポリオールを用いると、光学積層シートの密着性が高まる傾向にある。
【0119】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、低分子ポリオール類の1ホスゲン化、あるいは、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネート等のエステル交換法により得られる。低分子ポリオールの例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-4-ブチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0120】
ポリカーボネートポリオールとしては、旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノール(登録商標)」シリーズ、株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標)」シリーズ、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社製「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどを用い得る。
【0121】
ポリカプロラクトンポリオールは、例えば、ε-カプロラクトンの開環重合により得られる。ポリカプロラクトンポリオールとしては、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズなどを用い得る。
【0122】
ポリエーテルポリオールは、例えば、分子中に活性水素基を2個以上有する化合物とアルキレンオキサイドとの反応により得られる。活性水素含有基を2個以上有する化合物としては、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物が挙げられる。
【0123】
ポリエーテルポリオールとしては、旭硝子株式会社製「エクセノール(登録商標)」シリーズ及び「エマルスター(登録商標)」シリーズ、株式会社ADEKA製「アデカポリエーテル」シリーズなどが挙げられる。
【0124】
ポリエステルポリオールは、例えば、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応により得られる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3-ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。多塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0125】
ポリエステルポリオールとしては、DIC株式会社製「ポリライト(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、川崎化成工業株式会社製「マキシモール(登録商標)」シリーズなどを用い得る。
【0126】
ポリチオール化合物は、脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオール、及びメルカプト基以外に硫黄原子を含有するポリチオールからなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0127】
脂肪族ポリチオールの例には、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1-シクロヘキサンジチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2-メチルシクロヘキサン-2,3-ジチオール、1,1-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、2,3-ジメルカプトコハク酸(2-メルカプトエチルエステル)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(2-メルカプトアセテート)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(3-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール等が含まれる。
【0128】
芳香族ポリチオールの例には、1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3-トリメルカプトベンゼン、1,2,4-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3,4-テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5-テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5-テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン等が含まれる。
【0129】
メルカプト基以外に硫黄原子を含有するポリチオールの例には、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,3-ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、2-メルカプトエチルチオ-1,3-プロパンジチオール、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン等が含まれる。
【0130】
第1多官能活性水素化合物の量は、第1多官能活性水素化合物に含まれる活性水素基のモル量M1と、第1イソ(チオ)シアネート化合物に含まれるイソ(チオ)シアネート基のモル量M2との比M1/M2が、0.1以上0.5以下となるように調整されることが好ましい。比M1/M2が上記の範囲内にあると、第1プレポリマーに十分な量のウレタン結合及びウレア結合の少なくとも一方が形成され、かつ、フォトクロミック化合物の構造変化を阻害しにくい柔軟なフォトクロミック接着層を形成できる。比M1/M2は、0.30以上0.50以下であることが好ましく、0.5であることがより好ましい。
【0131】
第1多官能活性水素化合物の質量S1と、第1イソ(チオ)シアネート化合物の質量S2との比S1/S2は、0.1以上10以下であることが好ましい。比S1/S2が上記の範囲内にあると、単位質量当たりに十分な量のイソシアネート基を有する第2プレポリマーが得られる。比S1/S2は、0.8以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。
【0132】
(第2多官能活性水素化合物)
第2多官能活性水素化合物は、2以上の活性水素基を有する。第2多官能活性水素化合物は、第1プレポリマーと反応し、第2プレポリマーを生成する。第2多官能活性水素化合物は、第1プレポリマー同士を連結する鎖延長剤として機能する。第2多官能活性水素化合物は、2つの活性水素基を有することが好ましい。第2多官能活性水素化合物としては、第1多官能活性水素化合物で挙げた化合物を用い得る。
【0133】
第2多官能活性水素化合物は、ポリアミンを含むことが好ましい。ポリアミンを用いると、(チオ)ウレタンウレア結合を有する第2プレポリマーが得られる。このような第2プレポリマーを用いると、光学積層シートの密着性が高まる傾向にある。ポリアミンのモル質量は、50以上500以下であることが好ましい。モル質量がこの範囲内にあるポリアミンを用いると、所望の数平均分子量の第2プレポリマーを得られる傾向にある。ポリアミンのモル質量は、50以上300以下であることがより好ましい。ポリアミンは、ジアミン及びトリアミンを含み、ジアミンを含むことが好ましい。
【0134】
ポリアミンとしては、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N-ビス-(2-アミノエチル)ピペラジン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス-(4-アミノ-3-ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2-、1,3-及び1,4-ジアミノシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジン、フェニレンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジプロピルエチレンジアミン、N,N’-ジブチルエチレンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,2,5-ペンタントリアミン等が挙げられる。
【0135】
ポリアミンは、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、及び1,6-ジアミノヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0136】
第2多官能活性水素化合物の量は、第2多官能活性水素化合物に含まれる活性水素基のモル量M3と、第1プレポリマーに含まれるイソ(チオ)シアネート基のモル量M4との比M3/M4が、0.21以上0.50以下となるように調整されることが好ましい。比M1/M2が上記の範囲内にあると、十分な量の第2プレポリマーが生成される。
【0137】
第2多官能活性水素化合物の質量S3と、第1プレポリマーの質量S4との比S3/S4は、0.01以上0.5以下であることが好ましい。比S3/S4が上記の範囲内にあると、単位質量当たりに十分な量のイソシアネート基を有する第2プレポリマーが得られる。比S3/S4は、0.08以上0.3以下であることがより好ましい。
【0138】
(第1ポリマー)
第1ポリマーは、第2プレポリマーと1つの活性水素基を有する単官能活性水素化合物とを反応させて得られる。第1ポリマーは、典型的には、イソ(チオ)シアネート基を有さない。第1ポリマーの末端は、非反応性の官能基で修飾されている。第1ポリマーは、ウレタンポリマー、ウレアポリマー、ウレタンウレアポリマー、チオウレタンポリマー、チオウレアポリマー、及びチオウレタンウレアポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0139】
第1ポリマーは、高温下で、第2プレポリマー若しくは第3プレポリマー及び第1及び第2光学シートの表面上の水酸基と化学結合して、(チオ)ウレタン樹脂、(チオ)ウレア樹脂、及び(チオ)ウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を生成する。
【0140】
第1ポリマーの数平均分子量は、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、13000以上であることが更に好ましい。数平均分子量が大きい第1ポリマーを用いると、光学積層シートの剥離強度が高まる傾向にある。第1ポリマーの数平均分子量は、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。第1ポリマーの数平均分子量が過剰に大きいと、光学積層シートの剥離強度が低まる傾向にある。この数平均分子量は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0141】
第1ポリマーの軟化点は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。第1ポリマーの軟化点が高いと、光学積層シートの耐熱性が向上し、密着性がより高まる傾向にある。第1ポリマーの軟化点に上限は特にないが、一例によると、200℃以下であり、他の例によると、160℃以下である。混合物の軟化点は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0142】
第1ポリマーは、第2プレポリマーとの混合物として存在し得る。第1ポリマーと第2プレポリマーとの混合物は、単官能活性水素化合物の量を調整することにより得られる。すなわち、第2プレポリマーに含まれるイソ(チオ)シアネート基のモル量M5と、単官能活性水素化合物に含まれる活性水素基のモル量M6との比M5/M6が、1を下回るように調整されることにより、第2プレポリマーと、第2プレポリマーのイソ(チオ)シアネート基が単官能活性水素化合物で保護された第1ポリマーとの混合物が生成される。比M5/M6は、0.75以上0.95以下であることが好ましい。
【0143】
この混合物の数平均分子量は、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、13000以上であることが更に好ましい。数平均分子量が大きい混合物を用いると、光学積層シートの剥離強度が高まる傾向にある。混合物の数平均分子量は、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。混合物の数平均分子量が過剰に大きいと、光学積層シートの剥離強度が低まる傾向にある。この数平均分子量は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0144】
この混合物の軟化点は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。混合物の軟化点が高いと、光学積層シートの耐熱性が向上し、密着性がより高まる傾向にある。混合物の軟化点に上限は特にないが、一例によると、200℃以下であり、他の例によると、160℃以下である。混合物の軟化点は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0145】
接着性組成物の固形分において、第1ポリマーが占める割合は、例えば、75質量%以上95質量%以下である。
【0146】
第1ポリマーと第2プレポリマーとの混合物は、第4プレポリマーを含み得る。第4プレポリマーは、第2プレポリマーのイソ(チオ)シアネート基の一部が単官能活性水素化合物で保護され、残部が保護されていない化合物である。第4プレポリマーは、1つのイソ(チオ)シアネート基と、1つの単官能活性水素化合物保護基とを含み得る。第4プレポリマーは、イソ(チオ)シアネート基を有しているため、第2プレポリマーと同様に光学積層シートの密着性を高め得る。
【0147】
第1ポリマー、第2プレポリマー、及び第4プレポリマーの混合物において、第1ポリマーが占める割合は、一例によると、1質量%以上40質量%以下であり、他の例によると、10質量%以上30質量%以下である。上記混合物において、第2プレポリマーが占める割合は、一例によると、1質量%以上40質量%以下であり、他の例によると、10質量%以上30質量%以下である。上記混合物において、第4プレポリマーが占める割合は、一例によると、1質量%以上80質量%以下であり、他の例によると、40質量%以上80質量%以下である。
【0148】
フォトクロミック接着層は、フォトクロミック化合物、第1ポリマー、第2プレポリマー、及び第4プレポリマーを含む接着性組成物の硬化体であってもよく、フォトクロミック化合物、第1ポリマー、及び第4プレポリマーを含む接着性組成物の硬化体であってもよい。
【0149】
(単官能活性水素化合物)
単官能活性水素化合物は、1つの活性水素基を有する。単官能活性水素化合物は、第2プレポリマーのイソ(チオ)シアネート基と反応し、第1ポリマーを生成して、更なる反応を停止させる。活性水素基は、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0150】
単官能活性水素化合物は、例えば、1つの水酸基を含むモノオール化合物、1つのアミノ基を含むモノアミン化合物、1つのカルボキシル基を含むカルボン酸、及び1つのチオール基を含むモノチオール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。単官能活性水素化合物としては、単一種類を用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0151】
単官能活性水素化合物は、モノアミン化合物であることが好ましい。モノアミン化合物を用いると、(チオ)ウレア結合を有する第1ポリマーが得られる。
【0152】
単官能活性水素化合物は、下記式(3)に表されるように、2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル部位を有するアミンを含むことが好ましい。2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル部位を有するアミンは、ヒンダードアミンとして機能し得るため、光学積層シートの光安定性を高められる。
【0153】
【化14】
【0154】
式(3)において、R21は、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。R22は、炭素数1以上3以下のアルキレン基である。aは、0又は1である。
【0155】
単官能活性水素化合物は、R21がメチル基であり、aが0である1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-アミノピペリジンであることが好ましい。
【0156】
単官能活性水素化合物の質量S5と、第2プレポリマーの質量S6との比S5/S6は、0.001以上0.100以下であることが好ましい。比S5/S6が上記の範囲内にあると、単位質量当たりに十分な量のイソシアネート基を有する第1プレポリマーが得られる。比S5/S6は、0.010以上0.030以下であることがより好ましい。
【0157】
(第3プレポリマー)
第3プレポリマーは、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて得られる2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物である。すなわち、第3プレポリマーは、第1プレポリマーと同様の化合物である。第3プレポリマーは、高温下で、第1プレポリマー及び第1及び第2光学シートの表面上の水酸基と化学結合して、(チオ)ウレタン樹脂、(チオ)ウレア樹脂、及び(チオ)ウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を生成する。
【0158】
接着性組成物が、第1ポリマー及び第3プレポリマーを含む重合成分とフォトクロミック化合物との第3若しくは第4の組み合わせの場合、接着性組成物の固形分において第3プレポリマーが占める割合は、例えば、5質量%以上20質量%以下である。
【0159】
(添加剤)
接着性組成物は、例えば、重合触媒、重合開始剤、帯電防止剤、内部離型剤、酸化防止剤、光安定剤、着色防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、溶剤、レベリング剤、樹脂改質剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、及び可視光吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含んでいてもよい。接着性組成物は、酸化防止剤及びレベリング剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0160】
酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル-フェノール、チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トルイル]プロピオネート]、チバ ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のIRGANOX1035、1075、104、3790、5057、565等を用い得る。
【0161】
レベリング剤としては、シリコーン界面活性剤、フッ素含有界面活性剤等を用い得る。具体的には、東レ・ダウコーニング株式会社製L-7001、L-7002、L-7604、FZ-2123、大日本インキ化学工業株式会社製メガファックF-470、メガファックF-1405、メガファックF-479、住友スリーエム社製フローラッドFC-430等を用い得る。
【0162】
染料、可視光吸収剤としては、ニトロ系化合物、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、スレン系化合物、ポルフィリン系化合物、希土類金属化合物などが挙げられる。その中でも、防眩性と視認性の兼ね合いから、ポルフィリン系化合物、希土類系化合物が好ましい。更には、プラスチック材料中への分散安定性の観点から、ポルフィリン系化合物が最も好ましい。
【0163】
前記希土類金属化合物としては、アクアヒドロキシ(1-フェニル1,3-ブタンジオナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(フェナシルフェニルケトナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(1-フェニル-2-メチル-1,3-ブタンジオナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(1-チオフェニル-1,3-ブタンジオナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(1-フェニル1,3-ブタンジオナト)エルビウム、アクアヒドロキシ(1-フェニル1,3-ブタンジオナト)ホロニウムなどの錯体を挙げることが出来る。
【0164】
前記ポルフィリン系化合物としては、ポルフィリン骨格に種々の置換基を有していても良い化合物である。例えば、特開平5-194616号公報、特開平5-195446号公報、特開2003-105218号公報、特開2008-134618号公報、特開2013-61653号公報、特開2015-180942号公報、WO2012/020570号パンフレット、日本国特許第5626081号、日本国特許第5619472号、日本国特許第第5778109号等に記載されている化合物を好適に使用することができる。
【0165】
光安定剤としては、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル骨格を有するヒンダートアミン系の化合物を使用することが好ましく、市販のものを使用できる。例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-4-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレート、2-[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-2-ブチルプロパン二酸[1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル]、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート等が挙げられる。商品名としては、株式会社ADEKA社製アデカスタブ(登録商標)LAシリーズ(LA-52,LA-57,LA-63P,LA-68,LA-72,LA-77Y,LA-81,LA-82など)、BASFジャパン株式会社製のTINUVIN(登録商標)シリーズ(TINUVIN123,TINUVIN171,TINUVIN249,TINUVIN292,TINUVIN765,TINUVIN622SFなど)、Chimassorb(登録商標)シリーズ(Chimassorb2020FDL,Chimassorb944FDL)等が挙げられる。
【0166】
接着性組成物の固形分において、添加剤が占める割合は、例えば、0.1質量%以上1質量%以下である。
【0167】
(有機溶媒)
接着性組成物は、その粘度を調整するために、有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルケトン、t-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、及びシクロヘキサノンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み得る。
【0168】
接着性組成物において、有機溶媒が占める割合は、例えば、30質量%以上80質量%以下である。
【0169】
(接着性組成物の製造方法)
接着性組成物は、例えば、下記第1乃至第4の製造方法により得られる。
【0170】
接着性組成物の第1の製造方法は、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーとフォトクロミック化合物と任意の添加剤とを混合することとを含む。
【0171】
接着性組成物の第2の製造方法は、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーと単官能活性水素化合物とを反応させて第1ポリマー及び第2プレポリマーの混合物を得ることと、第1ポリマー、第2プレポリマー、フォトクロミック化合物及び任意の添加剤を混合することとを含む。
【0172】
接着性組成物の第3の製造方法は、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマー及び第3プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーと単官能活性水素化合物とを反応させて第1ポリマーを得ることと、第1ポリマー、第3プレポリマー、フォトクロミック化合物及び任意の添加剤を混合することとを含む。
【0173】
接着性組成物の第4の製造方法は、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーと単官能活性水素化合物とを反応させて第1ポリマー、第2プレポリマー及び第4プレポリマーの混合物を得ることと、第1ポリマー、第2プレポリマー、第4プレポリマー、フォトクロミック化合物及び任意の添加剤を混合することとを含む。
【0174】
第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物との反応は、有機溶媒存在下で行われることが好ましい。有機溶媒としては上述したものを用い得る。この反応は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。また、この反応は、例えば、60℃以上150℃以下の反応温度で、3時間以上10時間以下にわたって行われる。この反応は、イソシアネート基の逆滴定法により、終点が確認されるまで行われることが好ましい。
【0175】
第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物との反応は、有機溶媒存在下で行われることが好ましい。有機溶媒としては上述したものを用い得る。この反応は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。また、この反応は、例えば、10℃以上30℃以下の反応温度で、0.1時間以上5時間にわたって行われる。
【0176】
第2プレポリマーと単官能活性水素化合物との反応は、有機溶媒存在下で行われることが好ましい。有機溶媒としては上述したものを用い得る。この反応は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。また、この反応は、例えば、-10℃以上10℃以下の反応温度で、0.1時間以上5時間以下にわたって行われる。
【0177】
(光学積層シートの製造方法)
実施形態に係る光学積層シートの製造方法は、上述した接着性組成物を第1光学シートの少なくとも一方の主面上に塗布して塗膜を得ることと、塗膜上に第2光学シートを積層させることとを含む。
光学積層シートの製造方法について、以下、詳細に説明する。
【0178】
先ず、第1及び第2光学シートを準備する。第1及び第2光学シートとしては、市販のポリビニルアルコール樹脂の無延伸シートを用いてもよく、これに延伸処理及び染色処理を施したものを用いてもよい。
【0179】
次に、第1光学シートの少なくとも一方の主面上に接着性組成物を、例えば、バーコータを用いて塗布して塗膜を形成する。この塗膜を、例えば、60℃以上150℃の温度で1分間以上1時間以下にわたって乾燥させる。乾燥後の塗膜上に正対するように第2光学シートを積層し、例えば、ラミネートロールを用いて張り合わせて、構造体を得る。
【0180】
次に、得られた構造体を脱気処理に供する。脱気処理に際しては、構造体を、例えば、500Paの真空下、40℃以上80℃以下の温度で、5時間以上20時間以下にわたって静置する。脱気処理後の構造体を加熱処理に供する。加熱処理に際しては、例えば、60℃以上150℃以下の温度で、0.5時間以上5時間以下にわたって構造体を加熱する。接着性組成物が第1ポリマー及び第2プレポリマー若しくは第3ポリマーを含む場合、この加熱処理によりイソ(チオ)シアネート基を有する複合体が形成され、第1及び第2光学積層シートと架橋すると考えられる。加熱処理後の構造体を、室温で一週間以上静置してもよい。
【0181】
このようにして得られた実施形態に係る光学積層シートは、フォトクロミック接着層が、第2プレポリマー又は第1ポリマー及び第2プレポリマー若しくは第3ポリマーを含む接着性組成物の硬化体を含むため、フォトクロミック性に優れ、かつ、密着性及び外観に優れている。
[光学物品]
実施形態に係る光学物品は、実施形態に係る光学積層シートを含む。実施形態に係る光学物品は、実施形態に係る光学積層シートと、第1光学シート及び第2光学シートの少なくとも一方の表面を被覆し、樹脂を含む光学素子基材とを含み得る。光学素子基材は、第1光学シート及び第2光学シートの両方のフォトクロミック接着層と接しない表面を被覆していてもよい。光学積層シートは、光学素子基材内部に収容されていてもよい。
【0182】
光学物品としては、レンズ、家屋や自動車の窓ガラス、液晶ディスプレイ、サンバイザー、時計等が挙げられる。レンズは、セミフィニッシュドレンズ及びフィニッシュドレンズを含む。
【0183】
図2は、実施形態に係る光学物品の一例を概略的に示す断面図である。図2に示す光学物品10は、第1光学素子基材11と、第2光学素子基材12と、これらの間に介在する光学積層シート1とを含む。光学物品10は、凹凸レンズ形状を有している。光学積層シート1は、レンズの形状に沿った曲面を有している。第1光学素子基材11は凹面側に位置し、第2光学素子基材12は凸面側に位置している。第1光学素子基材11は、光学基材シート1の図示しない第1光学シートの表面全体を被覆している。第2光学素子基材12は、光学基材シート1の図示しない第2光学シートの表面全体を被覆している。光学基材シート1の側面は、第1及び第2光学基材により被覆されていない。光学基材シート1の側面は、第1及び第2光学基材により被覆されていてもよい。
【0184】
図3は、実施形態に係る眼鏡の一例を概略的に示す断面図。図3に示す眼鏡100は、レンズ101と、このレンズ101を支持するフレーム102とを含む。レンズ101は、実施形態に係る光学物品を含む。
【0185】
(光学素子基材)
光学素子基材は、樹脂を含み得る。樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アリル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリチオウレタン樹脂、ポリチオウレタンウレア樹脂、ポリチオエポキシ樹脂、及びポリカーボネート樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み得る。
【0186】
樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリチオウレタン樹脂、ポリチオウレタンウレア樹脂、及びポリチオエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの樹脂は、構成するモノマーが光学基材シートの第1及び第2光学シートの表面の水酸基と化学結合し得るため、光学基材シートとの密着性が高い傾向にある。より好ましくは、ポリチオウレタン樹脂、ポリチオエポキシ樹脂、及びポリウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0187】
(光学物品の製造方法)
実施形態に係る光学物品は、例えば、以下の方法で製造される。
先ず、光学素子基材を形成するための硬化性組成物を準備する。硬化性組成物は、各樹脂に対応した公知の組成物を使用し得る。次に、鋳型及びガスケットを準備する。鋳型は、上型と下型とを含む。上型と下型とを組み合わせることにより、内部に中空部が形成される。ガスケットは、この上型と下型との境界面に設置される。ガスケットの内側には、実施形態に係る光学積層シートを固定するための切込みが設けられている。ガスケットの内側には、切込みの代わりに、凸部又は凹部が設けられていてもよい。鋳型及びガスケットは、例えば、公知のプラスチックレンズ成型用のものである。
【0188】
次に、ガスケットの切込みに実施形態に係る光学積層シートの端部を差し込み固定する。このガスケットを、鋳型の境界面に設置する。これにより、鋳型の中空部内にまたがるように光学積層シートが設置される。次に、この鋳型の中空部内に、硬化性組成物を充填する。硬化性組成物充填後の鋳型を、熱処理して、硬化性組成物を硬化させる。熱処理に際しては、例えば、常温から硬化温度まで徐々に昇温し、硬化温度に達した後、一定時間保持する。硬化温度は、光学素子基材の樹脂の種類により異なるが、例えば、60℃以上200℃以下である。昇温速度は、例えば、1℃/時間以上10℃/時間以下である。硬化温度での保持時間は、例えば、0.1時間以上10時間以下である。
【0189】
熱処理終了後、鋳型から硬化体を取り出す。取り出した硬化体を、上記硬化温度の範囲内で更に上記保持時間にわたって加熱する。このようにして、光学積層シートの第1及び第2光学シートの表面が、光学素子基材により被覆された実施形態に係る光学物品が得られる。
【0190】
実施形態に係る光学物品は、以下の方法により得てもよい。先ず、上記の鋳型の下型に、硬化性組成物の一部を充填する。充填後の硬化性組成物の表面に、光学積層シートを設置する。次に、下型と向き合うように上型を設置して中空部を形成する。この中空部内に硬化性組成物の残りを充填する。得られた鋳型を上記と同様の方法で加熱し、硬化体を得る。このようにして、光学積層シートの主面及び側面の全面が、光学素子基材により被覆された実施形態に係る光学物品が得られる。
【0191】
また、実施形態に係る光学物品は、以下の方法により得てもよい。先ず、鋳型の上面に沿うように光学積層シートを設置する。光学積層シートの鋳型の上面と接しない面、すなわち、裏面側に向けて硬化性組成物を充填し、上記と同様の条件で熱処理し、第1硬化体を得る。第1硬化体は、第1光学素子基材の一方の主面上に光学積層シートが積層された積層体である。この第1硬化体を、鋳型内に設置する。第1硬化体の第2光学シートの表面に向けて硬化性組成物を充填し、上記と同様の条件で熱処理し、第2硬化体を得る。第2硬化体は、第1光学素子基材の一方の主面上に光学積層シートが積層され、この光学積層シート状に第2光学素子基材が積層された積層体である。このようにして、光学積層シートの主面と任意に側面とが、光学素子基材により被覆された実施形態に係る光学物品が得られる。
【0192】
以下、光学素子基材の各樹脂用の硬化性組成物について詳細に記述する。
アリル系樹脂用の硬化性組成物は、アリル基を有するアリルモノマーと重合開始剤とを含む。アリルモノマーは、例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルイソフタレート、及びジアリルテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。重合開始剤は、例えば、ジイソプロピルパーオキシカーボネートを含む。
【0193】
(メタ)アクリル系樹脂用の硬化性組成物は、(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリルモノマーと重合開始剤とを含む。(メタ)アクリルモノマーは、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンオリゴマーテトラ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、平均分子量776の2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量475のメチルエーテルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、平均分子量522のポリエチレングリコールジアクリレート、メチル(メタ)アクリレート等の少なくとも一つの(メタ)アクリレート基を分子中に有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。重合開始剤は、例えば、t-ブチルパーオキシネオデカネートを含む。
【0194】
ウレタンウレア系樹脂用の硬化性組成物は、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とのプレポリマー、及び、ジアミン化合物とを含む。ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及びジアミン化合物としては、それぞれ、接着性組成物において上述したものを用い得る。ポリイソシアネート化合物は、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物を含むことが好ましい。ポリオール化合物は、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸と反応させて得られるポリエステルポリオールを含むことが好ましい。ジアミン化合物は、2,4-ジアミノ-3,5-ジエチル-トルエン、2,6-ジアミノ-3,5-ジエチル-トルエン、4,4’-メチレンビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、ビス-4-(4-アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、ビス-4-(3-アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、及び4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0195】
チオウレタン系樹脂用の硬化性組成物は、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物と重合触媒とを含む。ポリイソシアネート化合物としては、接着性組成物において上述したものを用い得る。ポリイソシアネート化合物は、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,5-ジイソシアナートメチル-1,4-ジチアン、2,5-ビス(4-イソシアナート-2-チアブチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(3-イソシアナートメチル-4-イソシアナート-2-チアブチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(3-イソシアナート-2-チアプロピル)-1,4-ジチアン、1,3,5-トリイソシアナートシクロヘキサン、1,3,5-トリス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアネートメチルチオ)メタン、1,5-ジイソシアネート-2-イソシアネートメチル-3-チアペンタン、1,2,3-トリス(イソシアネートエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(イソシアネートメチルチオ)プロパン、1,1,6,6-テトラキス(イソシアネートメチル)-2,5-ジチアヘキサン、1,1,5,5 -テトラキス(イソシアネートメチル)-2,4-ジチアペンタン、1,2-ビス(イソシアネートメチルチオ)エタン、1,5-ジイソシアネート-3-イソシアネートメチル-2,4-ジチアペンタンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0196】
ポリチオール化合物は、例えば、1,2-ジメルカプトエタン、1,2-ジメルカプトプロパン、2,2-ジメルカプトプロパン、1,3-ジメルカプトプロパン、1,2,3-トリメルカプトプロパン、1,4-ジメルカプトブタン、1,6-ジメルカプトヘキサン、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,5-ジメルカプト-3-オキサペンタン、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2-メルカプトメチル-1,3-ジメルカプトプロパン、2-メルカプトメチル-1,4-ジメルカプトブタン、2-(2-メルカプトエチルチオ)-1,3-ジメルカプトプロパン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、2,4-ビス(メルカプトメチル)-1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン、4,8-ビス(メルカプトメチル)-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ビス(メルカプトメチル)-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ビス(メルカプトメチル)-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,2,7-トリメルカプト-4,6-ジチアヘプタン、1,2,9-トリメルカプト-4,6,8-トリチアノナン、1,2,8,9-テトラメルカプト-4,6-ジチアノナン、1,2,10,11-テトラメルカプト-4,6,8-トリチアウンデカン、1,2,12,13-テトラメルカプト- 4,6,8,10-テトラチアトリデカン、1,1,1-トリス(メルカプトメチル)プロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、テトラキス(4-メルカプト-2-チアブチル)メタン、テトラキス(7-メルカプト-2,5-ジチアヘプチル)メタン、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,1-ジメルカプトシクロヘキサン、1,4-ジメルカプトシクロヘキサン、1,3-ジメルカプトシクロヘキサン、1,2-ジメルカプトシクロヘキサン、1,4-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(2-メルカプトエチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1-チアン、2,5-ビス(2-メルカプトエチル)-1-チアン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ビス(4-メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4-メルカプトフェニル)エーテル、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-メルカプトフェニル)プロパン、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)エーテル、2,2-ビス(4-メルカプトメチルフェニル)プロパン、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、3,4-チオフェンジチオール、1,2 -ジメルカプト-3-プロパノール、1,3-ジメルカプト-2-プロパノール、グリセリルジチオグリコーレート、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ) エタン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、及び3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0197】
重合触媒は、例えば、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N,N′,N′-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、4,4′-トリメチレンビス(1-メチルピペリジン)、1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-7-ウンデセン、ジメチルスズジクロライド、ジメチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチルスズジクロライド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズマレエートポリマー、ジブチルスズジリシノレート、ジブチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジブチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチルスズジクロライド、ジオクチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエートポリマー、ジオクチルスズビス(ブチルマレエート)、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジリシノレート、ジオクチルスズジオレエート、ジオクチルスズジ(6-ヒドロキシ)カプロエート、ジオクチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、及びジドデシルスズジリシノレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0198】
チオエポキシ系樹脂用の硬化性組成物は、チオエポキシ基を有するモノマーと硬化剤と重合触媒とを含む。チオエポキシ基を有するモノマーは、例えば、2以上のβ-エピチオプロピルチオ基を有する化合物を含み、好ましくは、ビス(β-エピチオプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(β-エピチオプロピルチオ)エタン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2-ビス(β-エピチオプロピルチオ)プロパン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-2-(β-エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ブタン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-3-(β-エピチオプロピルチオメチル)ブタン、1,5-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ペンタン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-4-(β-エピチオプロピルチオメチル)ペンタン、1,6-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-5-(β-エピチオプロピルチオメチル)ヘキサン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-2-〔(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオ〕エタン、及び1-(β-エピチオプロピルチオ)-2-[〔2-(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオエチル〕チオ]エタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。硬化剤は、例えば、チオール基を有する化合物を含み、好ましくは、2-メルカプトエタノールを含む。重合触媒は、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミドを含む。
【実施例0199】
以下に例示するいくつかの実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に、本発明を説明するためのものであり、本発明の精神及び範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
【0200】
<例1>
(第1プレポリマーFPP1の製造)
2Lの反応容器に、225gの第1イソシアネート化合物FI1、100gの第1多官能活性水素化合物FA1、及び200gの有機溶媒OS1を投入して混合物を得た。第1イソシアネート化合物FI1としては、数平均分子量1000のポリエーテルジオールを用いた。第1多官能活性水素化合物FA1としては、イソホロンジイソシアネートを用いた。有機溶媒OS1としては、トルエンを用いた。窒素雰囲気下、100℃で7時間にわたってこの混合物を1000rpmで攪拌して、第1プレポリマーを含む反応液を得た。以下、この第1プレポリマーを、第1プレポリマーFPP1とも称する。反応の終点は、イソシアネート基の逆滴定法により確認した。
【0201】
(第2プレポリマーSPP1の製造)
第1プレポリマーFPP1を含む10℃の反応液に、500gの有機溶媒OS2を加えた後、液温を15℃に保持した。有機溶媒OS2としては、ジエチルケトンを用いた。この反応液に、34gの第2多官能活性水素化合物SA1を滴下し、15℃で1時間反応させることにより、第2プレポリマーを含む反応液を得た。第2多官能活性水素化合物SA1としては、イソホロンジアミンを用いた。以下、この第2プレポリマーを、第2プレポリマーSPP1とも称する。なお、第2プレポリマーSPP1を含む反応液において、固形分濃度は33.9質量%であった。
【0202】
(接着性組成物AC1の調製)
第2プレポリマーSPP1を含む100gの反応液、1.02gのフォトクロミック化合物PC1、0.34gのエチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、及び0.05gのDOW CORNING TORAY L-7001を混合し、室温で攪拌して接着剤組成物を得た。以下、この接着剤組成物を接着性組成物AC1とも称する。
【0203】
(光学積層シートOL1の作製)
接着性組成物AC1を、バーコーターを用いて、ポリビニルアルコールフィルムPVF1上に塗工して塗膜を形成した。ポリビニルアルコールフィルムPVF1の厚みは、75μであった。この塗膜を100℃の温度で5分間乾燥させた。乾燥後の塗膜の膜厚は、30μmであった。乾燥後の塗膜上にポリビニルアルコールフィルムPVF1をラミネートロールを用いて貼り合わせて構造体を得た。なお、構造体は長方形の短冊状であった。構造体の長辺方向の一方の端部には、接着性組成物を塗工せず、未塗工部分とした。
【0204】
この構造体を、60℃、500Paの真空下で12時間静置して脱気した。脱気後の構造体を、90℃で2時間加熱した。加熱後の構造体を室温で約1週間放置して、光学積層シートを得た。以下、この光学積層シートを光学積層シートOL1とも称する。
【0205】
(レンズLS1の製造)
先ず、光学積層シートOL1を、80℃、13Torrの条件下で15時間真空乾燥させた。真空乾燥後の光学積層シートOL1を、ガスケットの内側の切込み部に設置した。このガスケットを、中空部内に光学積層シートOL1が位置するようにガラスモールド内に設置した。ガラスモールドは、レンズの度数Dは0.00となり、レンズ径は70mmとなり、レンズ厚みは3.0mmとなるように設定した。このガラスモールドの中空部内に、チオウレタン系硬化性組成物を注入した。チオウレタン系硬化性組成物を注入後のガラスモールドを、空気炉を用いて、35℃から110℃まで12時間かけて徐々に昇温した後、110℃で1時間保持して、硬化性組成物を硬化させた。加熱後、ガスケット及びガラスモールド内から硬化体を取り出し、これを110℃のオーブンに入れ3時間加熱した。加熱後の硬化体の外周を玉摺機にて研磨して、直径60mmの図2に示すレンズを得た。この操作を繰り返し、合計10枚のレンズを得た。以下、このレンズをレンズLS1とも称する。
【0206】
チオウレタン系硬化性組成物としては、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート43.5質量部、イソホロンジイソシアネート43.5質量部、1,2-ビス〔(2-メルカプトエチル)チオ〕-3-メルカプトプロパン63.0質量部、及びジブチルチンジラウレート0.1質量部の混合物を用いた。
【0207】
<例2~例11、及び例14~19>
各成分を表1及び2に記載のように変更したこと以外は、例1と同様の方法で、接着性組成物、光学積層シート及びレンズを得た。
【0208】
<例12>
(第1ポリマーFP1及び第2プレポリマーSPP12の混合物の製造)
先ず、第2多官能活性水素化合物SA1の添加量を、34gから31gに変更したこと以外は、例1に記載したのと同様の方法で、第2プレポリマーSPP12を含む反応液を得た。この反応液に、5gの単官能活性水素化合物MA1を添加して攪拌し、第1ポリマー及び第2プレポリマーの混合物を得た。以下、第1ポリマーを第1ポリマーFP1とも称し、第2プレポリマーを第2プレポリマーSPP12とも称する。
【0209】
第2プレポリマーSPP1の反応液の代わりに、第1ポリマーFP1及び第2プレポリマーSPP12の混合物を用いたこと以外は、例1と同様の方法で、接着性組成物、光学積層シート及びレンズを得た。
【0210】
<例13>
(第1ポリマーFP2の製造)
先ず、有機溶媒OS1の量を500gから520gに変更したこと以外は、例1に記載したのと同様の方法で、第2プレポリマーSPP13を含む反応液を得た。この反応液に、8.5gの単官能活性水素化合物MA1を添加して攪拌し、第1ポリマーを含む反応液を得た。以下、この第1ポリマーを第1ポリマーFP2とも称する。
【0211】
第2プレポリマーSPP1の反応液の代わりに、第1ポリマーFP2の反応液を用いたこと以外は、例1と同様の方法で、接着性組成物、光学積層シート及びレンズを得た。
【0212】
<例15>
第2プレポリマーSPP1の200gの反応液の代わりに、例13に記載したのと同一の方法で得られた第1ポリマーFP2の反応液、及び、例14に記載したのと同一の方法で得られた第2プレポリマーSPP13の反応液の混合液を用いたこと以外は、例1と同様の方法で、接着性組成物、光学積層シート及びレンズを得た。なお、混合液における第1ポリマーFP2の反応液の量は70gであり、第2プレポリマーSPP13の反応液の量は30gとした。
【0213】
<例20>
硬化性組成物として、アリル系硬化性組成物を用いたこと及び加熱条件を変更したこと以外は、例1と同様の方法で、レンズを得た。
【0214】
アリル系硬化性組成物としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(重合開始剤)3質量部及びジエチレングリコールビスアリルカーボネート100質量部の混合物を用いた。
【0215】
アリル系硬化性組成物を注入後のガラスモールドを、空気炉を用いて、30℃から90℃まで20時間かけて徐々に昇温した後、90℃で1時間保持して、硬化性組成物を硬化させた。加熱後、ガスケット及びガラスモールド内から硬化体を取り出し、これを100℃のオーブンに入れ2時間加熱した。
【0216】
<例21>
硬化性組成物として、アクリル系硬化性組成物を用いたこと及び加熱条件を変更したこと以外は、例1と同様の方法で、レンズを得た。
【0217】
アクリル系硬化性組成物としては、先ず、トリメチロールプロパントリメタクリレート 20質量部、平均分子量522のポリエチレングリコールジアクリレート 40質量部、ウレタンアクリレート(ダイセル化学工業製EBECRYL4858) 40質量部を混合して、ラジカル重合性単量体を得た。このラジカル重合性単量体100質量部に対し、t-ブチルパーオキシネオデカネート1.0質量部を混合して、アクリル系硬化性組成物を得た。
【0218】
アクリル系硬化性組成物を注入後のガラスモールドを、空気炉を用いて、33℃から90℃まで17時間かけて徐々に昇温した後、90℃で2時間保持して、硬化性組成物を硬化させた。加熱後、ガスケット及びガラスモールド内から硬化体を取り出し、これを110℃のオーブンに入れ3時間加熱した。
【0219】
<例22>
硬化性組成物として、チオエポキシ系硬化性組成物を用いたこと及び加熱条件を変更したこと以外は、例1と同様の方法で、レンズを得た。
【0220】
チオエポキシ系硬化性組成物としては、ビス(β-エピチオプロピルチオ)エタン95質量部、2-メルカプトエタノール5質量部、及び重合触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド0.1重量部の混合物を用いた。
【0221】
チオエポキシ系硬化性組成物を注入後のガラスモールドを、空気炉を用いて、20℃から90℃まで20時間かけて徐々に昇温した後、90℃で1時間保持して、硬化性組成物を硬化させた。加熱後、ガスケット及びガラスモールド内から硬化体を取り出し、これを90℃のオーブンに入れ1時間加熱した。
【0222】
<例23>
硬化性組成物として、ウレタンウレア系硬化性組成物を用いたこと及び加熱条件を変更したこと以外は、例1と同様の方法で、レンズを得た。
【0223】
ウレタンウレア系硬化性組成物の調製に際しては、先ず、アジピン酸と1,6-ヘキサンジオールからなる数平均分子量1000のポリエステルポリオール 100質量部と、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物78質量部とを、乾燥窒素下で140℃で10分間加熱してプレポリマーを得た。このプレポリマーを70℃まで冷却して24時間静置した。静置後のプレポリマーに、2,4-ジアミノ-3,5-ジエチル-トルエン及び2,6-ジアミノ-3,5-ジエチル-トルエンの混合物17質量部を混合して、ウレタンウレア系硬化性組成物を得た。
【0224】
ウレタンウレア系硬化性組成物を注入後のガラスモールドを、120℃で10時間保持して、硬化性組成物を硬化させた。加熱後、ガスケット及びガラスモールド内から硬化体を取り出し、これを110℃のオーブンに入れ1時間加熱した。
【0225】
<原料>
(第1多官能活性水素化合)
FA1:旭硝子株式会社製エクセノール(ポリエーテルジオール、数平均分子量1000)
FA2:旭硝子株式会社製エクセノール(ポリエーテルジオール、数平均分子量2000)
FA3:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(ポリカーボネートジオール、数平均分子量500)
FA4:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(ポリカーボネートジオール、数平均分子量800)
FA5:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(ポリカーボネートジオール、数平均分子量1000)
FA6:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(ポリカーボネートジオール、数平均分子量3000)
FA7:DIC株式会社製ポリライト(ポリエステルジオール、数平均分子量1000)
FA8:宇部興産株式会社製ETERNACOLL(1,4-シクロヘキサンジメタノールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量1000)。
【0226】
(第1イソシアネート化合物)
FI1:イソホロンジイソシアネート
FI2:水添ジフェニルメタンジイソシアネート
FI4:トルエン-2,4-ジイソシアネート
FI5:ノルボルナンジイソシアネート。
【0227】
(第2多官能活性水素化合物:鎖延長剤)
SA1:イソホロンジアミン
SA2:エチレンジアミン
SA3:1,6-ジアミノヘキサン
SA4:ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン。
【0228】
(単官能活性水素化合物)
HA1;1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-アミノピペリジン。
【0229】
(フォトクロミック化合物)
PC1:下記式で示される化合物。
【0230】
【化15】
【0231】
PC2:下記式で示される化合物。
【0232】
【化16】
【0233】
PC3:下記式で示される化合物。
【0234】
【化17】
【0235】
(有機溶媒)
OS1:トルエン
OS2:ジエチルケトン
OS3:イソプロピルアルコール
OS4:酢酸エチル
OS5:シクロヘキサノン
OS6:テトラヒドロフラン。
【0236】
(その他添加剤)
HP:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]
CF:DOW CORNING TORAY L-7001
HA: ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート
DY;テトラアザポルフィリン化合物(山田化学工業社製:FDG-007)。クロロホルム中で測定した結果、吸収ピーク(極大吸収波長)は594nmであり、594nmにおける吸収強度は1.5×10ml/g・cm。
【0237】
(ポリビニルアルコールフィルム)
PVF1:ポリビニルアルコールフィルム(厚み75μm)。
【0238】
PVF2:延伸倍率4倍であり、ホウ酸架橋を実施したポリビニルアルコールフィルム(厚み30μm)
PVF3:視感透過率は44%、偏光度は94.4%、であり色調がグレーである2色性染料を含むポリビニルアルコール性偏光フィルム(厚み27μm)。
【0239】
<評価試験>
(第2プレポリマー及び第1ポリマーの数平均分子量の測定)
上述した方法で、例1~例14で得られた第2プレポリマー、第1ポリマー、及び第2プレポリマーと第1ポリマーとの混合物の数平均分子量を測定した。その結果を表2に示す。
【0240】
(第2プレポリマー及び第1ポリマーの軟化点の測定)
上述した方法で、例1~例14で得られた第2プレポリマー、第1ポリマー、及び第2プレポリマーと第1ポリマーとの混合物の軟化点を測定した。その結果を表2に示す。
【0241】
(光学積層シート及びレンズのフォトクロミック性の測定)
以下の方法で、例1~例19で得られた光学積層シートの最大吸収波長、発色濃度、及び退色速度を測定した。
【0242】
具体的には、先ず、23℃の温度下で、株式会社浜松ホトニクス製のキセノンランプL-2480(300W)SHL-100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して、光学積層シートの一方の光学シート側に、120秒間照射して、フォトクロミック化合物を発色させた。ビーム強度は、365nm=2.4mW/cm、245nm=24μW/cmとした。
【0243】
発色後の最大吸収波長(λmax)を、株式会社大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により求めた。
【0244】
キセノンランプ未照射時の光学積層シートの最大吸収波長の吸光度ε(0)を測定した。次に、上記ビーム強度で120秒間にわたって光学積層シートにキセノンランプを照射して、光学積層シートの最大吸収波長の吸光度ε(120)を測定した。吸光度ε(120)からε(0)を差し引いた値を、発色濃度とした。この値が高いほどフォトクロミック性が優れていると言える。
【0245】
発色濃度が1/2まで低下するのに要する時間を測定し、これを退色速度〔t1/2(sec.)とした。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0246】
例1~例19で得られたレンズの最大吸収波長、発色濃度、及び退色速度を、上記と同様の条件で測定した。その結果は、光学積層シートの値とそれぞれ同一であった。
【0247】
(光学積層シートの剥離強度の測定)
例1~例19で得られた光学積層シートを、25mm×100mmの短冊状となるように切り出して試験片を得た。この際、接着剤組成物の塗膜を含まない、一方の長辺端部を含むように切り出した。この試験片の第1光学シート及び第2光学シートの接着剤組成物が塗工されていない部分を、それぞれ上部治具及び下部治具に挟み、試験機:オートグラフAGS-500NX、島津製作所製に設置した。クロスヘッドスピード100mm/minで、上部治具を引張り、最大剥離力を測定した。この最大剥離力を剥離強度として、表4に記載した。
【0248】
(光学積層シートの外観評価)
以下の方法により、例1~例19に係る光学積層シートについて、外観評価を行った。先ず、光学積層シートを、蛍光灯を設置したブラックボックス内で目視により観察し、光学積層シートに気泡が存在するかどうか確認した。評価基準は以下のとおりとした。この結果を表4に示す。
【0249】
0:フォトクロミック積層体中に、気泡が観察されない。
【0250】
1:フォトクロミック積層体中に、気泡が1~3個観察される。
【0251】
2:フォトクロミック積層体中に、4個以上の気泡が観察される。
【0252】
(レンズの密着性評価)
以下の方法により、例1~例23に係るレンズについて、光学積層シートと光学素子基材との密着性を評価した。先ず、レンズを目視により確認し、光学積層シートの剥がれが見られるかどうかを確認した。次に、レンズを蒸留水により3時間にわたって煮沸し、目視により光学積層シートの剥がれが見られるかどうか確認した。評価基準は以下のとおりとした。この結果を表4に示す。
【0253】
0:各層間で全くハガレが見られない。
【0254】
1:フォトクロミック積層体と樹脂層間で、5%未満の部位でハガレが見られる。
【0255】
2:フォトクロミック積層体と樹脂層間で、10%未満の部位でハガレが見られる。
【0256】
3:フォトクロミック積層体と樹脂層間で、10%以上の部位でハガレが見られる。
【0257】
(レンズの外観評価)
以下の方法により、例1~例23に係るレンズについて、外観を評価した。具体的には、レンズ内にみられる気泡の数を目視により測定した。この測定を10枚のレンズで行い、下記の評価基準にしたがい評価した。この結果を表4に示す。
【0258】
0:10枚全てで、気泡が発生していない。
【0259】
1:10枚中1~2枚に、3個以下の気泡が発生している。
【0260】
2:10枚中3~5枚以上で、3個以下の気泡が発生している。
【0261】
3:10枚中5枚以上で、3個以上の気泡が発生している。
【0262】
【表1】
【0263】
【表2】
【0264】
表2において、「n1/n2/n3」と表記した列には、第1イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総モル量(n2)を1としたときの第1多官能活性水素化合物に含まれる活性水素基の総モル量(n1)の比と、第2多官能活性水素化合物に含まれる活性水素基の総モル量(n3)の比とを記載している。
【0265】
【表3】
【0266】
【表4】
【0267】
表1~表4から明らかなとおり、第2プレポリマー若しくは第2プレポリマー及び第1ポリマーを含む接着性組成物を用いた例1~例12及び例14~例19に係る光学積層シートの剥離強度及び外観は、第1ポリマーのみを含む接着性組成物を用いた例13に係る光学積層シートの剥離強度及び外観よりも優れていた。
図1
図2
図3