(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175158
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】光学積層シート、光学物品、レンズ、及び眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02C 7/10 20060101AFI20241211BHJP
G02B 5/23 20060101ALI20241211BHJP
G02C 7/12 20060101ALI20241211BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20241211BHJP
G02B 5/30 20060101ALN20241211BHJP
【FI】
G02C7/10
G02B5/23
G02C7/12
G02C7/02
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203477
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】森 力宏
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
2H149
【Fターム(参考)】
2H006BA01
2H006BE02
2H148DA01
2H148DA04
2H148DA12
2H148DA13
2H148DA24
2H149AA23
2H149AB26
2H149BA02
2H149FA03W
2H149FA69
2H149FC08
2H149FC10
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、歩留まりが高い光学物品を実現可能な光学積層シートと、この光学積層シートを含む光学物品、レンズ及び眼鏡とを提供することにある。
【解決手段】 実施形態によると、光学積層シート1が提供される。光学積層シート1は、第1光学シート3及び第2光学シート2と、透明支持体5と、第1接着層4と、第2接着層6とを含む。透明支持体5は、第1光学シート3及び第2光学シート2の間に位置する。第1接着層4は、第1光学シート3と透明支持体5とを接着させ、フォトクロミック化合物を含む。第2接着層6は、透明支持体5と第2光学シート2とを接着させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光学シート及び第2光学シートと、
前記第1光学シート及び前記第2光学シートの間に位置する透明支持体と、
前記第1光学シートと前記透明支持体とを接着させ、フォトクロミック化合物を含む第1接着層と、
前記透明支持体と前記第2光学シートとを接着させる第2接着層と
を含む光学積層シート。
【請求項2】
前記第1接着層は、ウレタン樹脂、ウレタンウレア樹脂、チオウレタン樹脂、及びチオウレタンウレア樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む請求項1に記載の光学積層シート。
【請求項3】
前記第1接着層の厚みは、0.1μm以上100μm以下である請求項1又は2に記載の光学積層シート。
【請求項4】
前記透明支持体の少なくとも一方の主面は、表面改質領域を有する請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学積層シート。
【請求項5】
前記透明支持体は、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリアミド、及びポリカーボネートシートからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学積層シート。
【請求項6】
前記透明支持体の厚みは、50μm以上1000μm以下である請求項1乃至5の何れか1項に記載の光学積層シート。
【請求項7】
前記第1光学シート及び前記第2光学シートの少なくとも一方は、ポリビニルアルコールを含む請求項1乃至6の何れか1項に記載の光学積層シート。
【請求項8】
前記第1光学シート及び前記第2光学シートの厚みは、100μm以下である請求項1乃至7の何れか1項に記載の光学積層シート。
【請求項9】
前記第2接着層は、ウレタン樹脂、ウレタンウレア樹脂、チオウレタン樹脂、及びチオウレタンウレア樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む請求項1乃至8の何れか1項に記載の光学積層シート。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の光学積層シートと、
前記第1光学シート及び前記第2光学シートの少なくとも一方の表面を被覆し、樹脂を含む光学素子基材と
を含む光学物品。
【請求項11】
前記光学素子基材は、前記第1光学シート及び前記第2光学シートの両方の表面を被覆する請求項10に記載の光学物品。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の光学物品を含むレンズ。
【請求項13】
請求項12に記載のレンズを含む眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層シート、光学物品、レンズ、及び眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック眼鏡は、プラスチック製のレンズを用いた眼鏡である。プラスチックレンズは、例えば、半完成品であるセミフィニッシュドレンズに様々な加工を施すことにより製造される。セミフィニッシュドレンズの凸面である表面には、ハードコート層や反射防止膜等の機能層が設けられる。また、セミフィニッシュドレンズの凹面である裏面には、切削及び研磨加工が施される。
【0003】
近年、紫外線の量により色調が変化するフォトクロミック性を有する調光レンズが注目を集めている。調光レンズは、フォトクロミック化合物をプラスチックレンズに付与することにより得られる。フォトクロミック化合物は、光の作用により、互いに異なる光吸収スペクトルを有する2以上の異性体を可逆的に生成可能な化合物である。
【0004】
フォトクロミックレンズの製造方法としては、従来、セミフィニッシュドレンズのマトリックスにフォトクロミック化合物を分散させる練り込み法、及び、セミフィニッシュドレンズの表面にフォトクロミック化合物を含む層を設ける積層法等が用いられてきた。
【0005】
バインダーシート法は、フォトクロミック化合物を含む樹脂層を2枚の光学シートで挟んだバインダーシートをレンズ基材と一体化させてセミフィニッシュドレンズを製造する方法である。バインダーシート法によると、フォトクロミック化合物を含む自立した物品を用いてセミフィニッシュドレンズを製造できるため、練り込み法及び積層法と比較して、生産効率が高まり、大量生産が容易となる傾向にある。
【0006】
2枚の光学シートの間に、偏光フィルムを更に挟み、偏光機能及びフォトクロミック機能の両方を備えたバインダーシートも検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2019/163728号
【特許文献2】国際公開第2017/115874号
【特許文献3】特表2018-514817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、歩留まりが高い光学物品を実現可能な光学積層シートと、この光学積層シートを含む光学物品、レンズ及び眼鏡とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によると、光学積層シートが提供される。光学積層シートは、第1光学シート及び第2光学シートと、透明支持体と、第1接着層と、第2接着層とを含む。透明支持体は、第1光学シート及び第2光学シートの間に位置する。第1接着層は、第1光学シートと透明支持体とを接着させ、フォトクロミック化合物を含む。第2接着層は、透明支持体と第2光学シートとを接着させる。
【0010】
実施形態によると、光学物品が提供される。光学物品は、実施形態に係る光学積層シートと、光学素子基材とを含む。光学素子基材は、第1光学シート及び第2光学シートの少なくとも一方の表面を被覆し、樹脂を含む。
【0011】
実施形態によると、他の実施形態に係る光学物品を含むレンズが提供される。
【0012】
実施形態によると、他の実施形態に係るレンズを含む眼鏡が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、歩留まりが高い光学物品を実現可能な光学積層シートと、この光学積層シートを含む光学物品、レンズ及び眼鏡とが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る光学積層シートの一例を概略的に示す断面図。
【
図2】実施形態に係る光学物品の一例を概略的に示す断面図。
【
図3】実施形態に係る眼鏡の一例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態によると、光学積層シートが提供される。光学積層シートは、第1光学シート及び第2光学シートと、透明支持体と、第1接着層と、第2接着層とを含む。透明支持体は、第1光学シート及び第2光学シートの間に位置する。第1接着層は、第1光学シートと透明支持体とを接着させ、フォトクロミック化合物を含む。第2接着層は、透明支持体と第2光学シートとを接着させる。
【0016】
光学積層シートを用いたフォトクロミックレンズの製造工程においては、光学積層シートの少なくとも一方の主面とレンズ基材とを一体化させる工程を有する。この工程において、目的のレンズ形状に沿った曲面形状に加工された光学積層シートを用いて、曲面状のフォトクロミックレンズを製造することがある。
【0017】
光学積層シートの曲面加工は、例えば、加熱した光学積層シートの一方の主面側を減圧し、曲面形状を有する金型に光学積層シートを沿わせた後、光学積層シートを冷却することにより行われる。この際、光学積層シートの厚みが薄く、強度が十分ではない場合、金型に沿わせた光学積層シートの縁部に変形が生じ得る。縁部に変形が生じた光学積層シートは、フォトクロミックレンズの製造に適さないため、このような光学積層シートが製造されると、フォトクロミックレンズの製造効率が低下する。
【0018】
実施形態に係る光学積層シートは、第1光学シート及び第2光学シートの間に、透明支持体が存在する。透明支持体は、光学積層シートの強度を高め、自立性を高める。したがって、実施形態に係る光学積層シートは、曲面加工時に変形が生じにくい。それゆえ、実施形態に係る光学積層シートを用いると、光学物品の歩留まりを高められる。
【0019】
[光学積層シート]
実施形態に係る光学積層シートは、第1光学シート及び第2光学シートと透明支持体と第1接着層及び第2接着層とを含む。第1光学シート及び透明支持体は、第1接着層により接着されている。透明支持体及び第2光学シートは、第2接着層により接着されている。
【0020】
実施形態に係る光学積層シートは、第1光学シート、第1接着層、透明支持体、第2接着層、及び第2光学シートを、この順に積層させた5層構造を有することが好ましい。すなわち、実施形態に係る光学積層シートは、透明支持体を含むため、この5層構造で十分な強度を得られる。
【0021】
光学積層シートの厚みは、200μm以上であることが好ましく、250μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることが更に好ましい。光学積層シートの厚みが厚いと、光学積層シートの強度が高まり、歩留まりが高まる傾向にある。光学積層シートの厚みに上限は特にないが、一例によると、1000μm以下であり、他の例によると、500μm以下である。
【0022】
図1は、実施形態に係る光学積層シートの一例を概略的に示す断面図である。
図1に示す光学積層シート1は、第1光学シート3と、第2光学シート2と、第1接着層4と、透明支持体5と、第2接着層6とを含む。透明支持体5の一方の主面の少なくとも一部は、第1接着層4により被覆されている。透明支持体5の他方の主面の少なくとも一部は、第2接着層6により被覆されている。透明支持体5は、第1接着層4を介して第1光学シート3と接着され、また、第2接着層6を介して第2光学シート2と接着されている。
【0023】
(第1及び第2光学シート)
第1及び第2光学シートの少なくとも一方は、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂を含むPVAシートであることが好ましい。第1及び第2光学シートのうち、第2光学シートがPVAシートであることが好ましい。PVAシートを用いると、第2接着層と第2光学シートとの密着性及び光学物品の密着性が高まる傾向にある。また、PVAシートは後述するように偏光フィルムとしても使用できるため、フォトクロミック性及び偏光性の両機能を備えた多機能光学積層シートを実現できる。第1及び第2光学シートの両方がPVAシートであってもよい。
【0024】
PVAシートは、PVA樹脂のみから構成されていてもよく、その他の樹脂を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0025】
PVAシートは、未延伸、1軸延伸、又は2軸延伸のいずれであってもよい。延伸方向は、未延伸フィルムの機械流れ方向(MD)、これに直交する方向(TD)、機械流れ方向に斜交する方向の何れでもよい。ここで、未延伸シートとは、延伸されていない状態のシートのことである。1軸延伸シートとは、上記方向のうちいずれかの一方向に未延伸シートを延伸したものである。2軸延伸シートは、上述の延伸方向のうち2方向に延伸したものであり、同時に延伸する同時二軸延伸シートであっても、所定の方向に延伸した後で他の方向に延伸する逐次2軸延伸シートであってもよい。2軸延伸シートの場合、通常、MD及びTDに延伸したものが好ましい。延伸倍率は、2~8倍であることが好ましい。
【0026】
PVA樹脂の平均重合度は、例えば、100以上10000以下であり、好ましくは、1500以上8000以下であり、より好ましくは、2000以上5000以下である。PVA樹脂の平均重合度は、日本工業規格(JIS)K6726;1994に準拠した方法で求められる
PVA樹脂は、ホウ酸を含んでいてもよい。ホウ酸は、PVA同士を架橋させる架橋剤として用いられる。PVA樹脂のホウ酸含有量は、例えば、1質量%以上20質量%以下であり、好ましくは、3質量%以上18質量%以下であり、より好ましくは、5質量%以上15質量%以下である。このホウ酸含有量は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma;IPC)発光分析により算出できる。具体的には、先ず、PVAシートを硝酸水溶液に溶解させて溶液を得る。この溶液を用いてIPC分析を行い、ホウ素含有量を算出する。このホウ素含有量からホウ酸含有量に換算する。
【0027】
PVAシートは、偏光性を有する偏光PVAフィルムであってもよい。第1及び第2光学シートのうち、一方が偏光PVAフィルムであることが好ましい。このような構成の光学積層シートを用いると、フォトクロミック性と偏光性との双方に優れたレンズを実現できる。第1及び第2光学シートの双方が偏光PVAフィルムであってもよい。
【0028】
偏光PVAフィルムの視感透過率は、10%以上80%以下であることが好ましい。視感透過率は、例えば、紫外可視(Ultra violet-visible:UV-Vis)分光光度計により測定できる。偏光PVAフィルムの偏光度は30%以上99.9%以下であることが好ましい。偏光度は、例えば、UV-Vis分光光度計により得られる単体透過率(Ts)、平行透過率(Tp)及び直交透過率(Tc)から算出できる。
【0029】
偏光PVAフィルムは、2色性物質を含む。2色性物質は、ヨウ素及び2色性染料を含む。2色性染料は、アゾ系であってもよく、アントラキノン系であってもよい。2色性染料に具体例は、クロランチンファストレッド(C.I.28160)、コンゴーレッド(C.I.22120)、ブリリアントブルーB(C.I.24410)、ベンゾパープリン(C.I.23500)、クロラゾールブラックBH(C.I.22590)、ダイレクトブルー2B(C.I.22610)、ジアミングリーン(C.I.30295)、クリソフェニン(C.I.24895)、シリウスイエロー(C.I.29000)、ダイレクトファーストレッド(C.I.23630)、アシドブラック(C.I.20470)、ダイレクトスカイブルー(C.I.24400)、ソロフェニルブルー4GL(C.I.34200)、ダイレクトコッパーブルー2B(C.I.24185)、及び、ニッポンブリリアントヴァイオレットBKconc(C.I.27885)を含む。
【0030】
PVAシートの厚みは、例えば、10μm以上100μm以下である。第2光学シートの厚みは、第1光学シートの厚みと同一でもよく、異なっていてもよい。PVAシートの厚みは、例えば、以下の方法で測定できる。先ず、光学積層シート若しくはレンズを主面に対して垂直方向にカッターや、ダイヤモンドカッターなどを用いて切断して、切断面を得る。この際、光学積層シート若しくはレンズの長辺方向の中央部を、長辺方向と平行に切断する。切断面を光学顕微鏡により観察し、PVAシートの厚みを測定する。切断面に等間隔に設けた10箇所でこの測定を行い、その算術平均値をPVAシートの厚みとする。
【0031】
第1及び第2光学シートは、ポリビニルアルコール(PVA)以外の樹脂シートであってもよい。その他の樹脂シートとしては、光透過性を有する様々な樹脂シートを使用できる。樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、及びポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。ポリアミド樹脂としては、脂環族ポリアミド樹脂を用いてもよく、半芳香族ポリアミド樹脂を用いてもよく、芳香族ポリアミド樹脂を用いてもよい。セルロース樹脂としては、例えばトリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等のアセチルセルロースを用いてもよく、トリプロピルセルロース、ジプロピルセルロース等のプロピルセルロース等を用いてもよい。
【0032】
PVA以外の樹脂シートは、その表面に表面改質領域を備えることが好ましい。表面改質領域は、反応性官能基を有する。反応性官能基は、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、イソ(チオ)シアネート基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、オキセタン基、チオエポキシ基、及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。表面改質領域を有する樹脂シートを用いると、第1及び第2接着層と第1及び第2光学シートとの密着性及び光学物品の光学素子基材との密着性が高まる傾向にある。表面改質領域は、シランカップリング剤の塗布、プラズマ処理、コロナ放電処理、及びエッチング処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法により設けられる。PVAシートは、その表面に水酸基を有している。表面改質層に含まれる反応性官能基の種類及び量は、例えば、X線光電子分光(XPS)分析、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)分析、及びラマン分光分析等を組み合わせることにより確認できる。
【0033】
PVA以外の樹脂シートの厚みは、例えば、10μm以上400μm以下であり、好ましくは、50μm以上200μm以下である。樹脂シートの厚みは、PVAシートの厚みよりも厚いことが好ましい。このような構成を採用すると、光学積層シートの機械的強度がより高まる傾向にある。PVA樹脂以外の樹脂シートの厚みは、例えば、PVAシートの厚みと同様の方法で測定できる。
【0034】
(第1接着層)
第1接着層は、第1光学シート及び透明支持体の間に介在し、これらを接着させる。第1接着層は、フォトクロミック化合物を含む。第1接着層は、フォトクロミック化合物及び樹脂を含むことが好ましい。第1接着層は、着色剤等の添加剤を更に含んでいてもよい。第1接着層は、例えば、第1接着剤組成物の硬化体である。第1接着剤組成物の詳細は後述する。
【0035】
樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリチオウレタン樹脂、及びポリチオウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。このようなウレタン系樹脂を含むと、光学積層シートのフォトクロミック性を高められる。すなわち、フォトクロミック化合物は、異性体間の可逆的な構造変化を繰り返すことによりフォトクロミック性を示す。フォトクロミック化合物を含む接着層のマトリックスは、この構造変化を妨げにくい性質が求められる。(チオ)ウレタン樹脂、(チオ)ウレア樹脂、又は(チオ)ウレタンウレア樹脂は、イソ(チオ)シアネートと、活性水素基を含有する化合物との反応生成物であるため、各成分を適宜選択することにより、所望の特性を有する樹脂を得られる。更には、活性水素基を有する鎖延長剤を用いることにより、上記反応生成物を更に結合させることも可能であるため、所望の特性を発揮できる構成をより詳細に設計できる。また、第1光学シートがPVAシートである場合、PVAシートと透明支持体との密着性を更に向上できる。すなわち、ウレタン系接着性組成物は、PVAシートの表面に存在する水酸基と反応するイソ(チオ)シアネート基を含むため、第1接着層とPVAシートとの密着性が強固になる。
【0036】
ここで、(チオ)ウレタン樹脂とは、ウレタン樹脂及びチオウレタン樹脂の少なくとも一方を意味する。(チオ)ウレア樹脂とは、ウレア樹脂及びチオウレア樹脂の少なくとも一方を意味する。(チオ)ウレタンウレア樹脂とは、ウレタンウレア樹脂及びチオウレタンウレア樹脂の少なくとも一方を意味する。イソ(チオ)シアネート基とは、イソシアネート基(-C=N=O)及びイソチオシアネート基(-C=N=S)の少なくとも一方を意味する。(チオ)ウレタンウレア樹脂は、(チオ)ウレタン結合及び(チオ)ウレア結合の双方を有する樹脂である。(チオ)ウレタン結合は、イソ(チオ)シアネート基を有する化合物と、水酸基(-OH)を有する化合物との反応により生じ得る。(チオ)ウレア結合は、イソ(チオ)シアネート基を有する化合物と、アミン基(-NH2)を有する化合物との反応により生じ得る。(チオ)ウレタンウレア樹脂は、(チオ)ウレタン結合及びイソシアネート基を有する化合物と、アミンとを反応させることにより得られ得る。
【0037】
第1接着層の厚みは、例えば、0.1μm以上100μm以下であり、好ましくは、10μm以上50μm以下である。第1接着層の厚みは、第1及び第2光学シートの厚みよりも薄くてもよく、より厚くてもよい。第1接着層の厚みは、例えば、PVAシートの厚みと同様の方法で測定できる。
【0038】
(透明支持体)
透明支持体は、例えば、光学積層シートの強度を向上可能な自立膜である。透明支持体は、光学的に透明であればよい。透明支持体は、無色透明であってもよく、白色透明であってもよく、有色透明であってもよい。透明支持体の視感透過率は、30%以上であることが好ましい。透明支持体の視感透過率は、UV-Vis分光光度計により測定できる。
【0039】
透明支持体の材質は特に限定されない。透明支持体は、例えば、樹脂フィルム、又は、セラミックフィルムである。透明支持体は、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリアミド、ポリカーボネートシート、セルロースアセテートブチレート、及び、(メタ)アクリルからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリアミド、及びポリカーボネートシートからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことがより好ましい。
【0040】
透明支持体の厚みは、第1及び第2光学シートの厚みよりも厚いことが好ましい。透明支持体の厚みは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましい。透明支持体の厚みが厚いと、光学積層シートの強度がより高まる傾向にある。透明支持体の厚みに上限は特にないが、一例によると、1000μm以下であり、他の例によると、500μm以下である。透明支持体の厚みは、例えば、PVAシートの厚みと同様の方法で測定できる。
【0041】
透明支持体は、上述したその他の樹脂シートと同様に、その表面に表面改質領域を備えることが好ましい。表面改質領域を有する透明支持体を用いると、第1及び第2接着層との密着性が高まる傾向にある。表面改質領域は、透明支持体の両方の主面上に設けられていることが好ましい。
【0042】
(第2接着層)
第2接着層は、第2光学シート及び透明支持体の間に介在し、これらを接着させる。第2接着層は、樹脂を含むことが好ましい。第2接着層は、例えば、第2接着剤組成物の硬化体である。第2接着剤組成物の詳細は後述する。
【0043】
樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリチオウレタン樹脂、及びポリチオウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0044】
第2接着層は、フォトクロミック化合物を含んでもよく、含まなくてもよい。第2接着層がフォトクロミック化合物を含む場合、その構造は、第1接着層に含まれるフォトクロミック化合物と同一であってもよく、異なっていてもよい。また、第2接着層は、染料、顔料等の着色剤を含んでいてもよい。第2接着層が着色剤を含む場合、その種類は、第1接着層に含まれる着色剤と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0045】
第2接着層の厚みは、第1接着層と同一でもよく、厚くてもよく、薄くてもよい。第2接着層がフォトクロミック化合物を含む場合、その厚みは、第1接着層と同一程度に厚いことが好ましい。第2接着層がフォトクロミック化合物を含まない場合、その厚みは、第1接着層よりも薄いことが好ましい。第2接着層の厚みは、例えば、0.1μm以上100μm以下であり、好ましくは、10μm以上50μm以下である。第2接着層の厚みは、第1及び第2光学シートの厚みよりも薄くてもよく、厚くてもよい。第2接着層の厚みは、例えば、PVAシートの厚みと同様の方法で測定できる。
【0046】
[接着性組成物]
第1接着性組成物の硬化体は、第1接着層に含まれることが好ましい。第1接着性組成物は、フォトクロミック化合物と、重合成分とを含む。重合成分は、第1接着層のマトリックスとなる。重合成分は、イソ(チオ)シアネート基を有する化合物、イソ(チオ)シアネート基と反応する活性水素基を有する化合物、これらの反応物であって末端にイソ(チオ)シアネート基を有するプレポリマー、及び、上記反応物であって末端にイソ(チオ)シアネート基を有さないポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。イソ(チオ)シアネート基を有する化合物、イソ(チオ)シアネート基と反応する活性水素基を有する化合物とは、第1接着性組成物に両方含まれることが好ましい。上記ポリマーを含む場合、イソ(チオ)シアネート基を有する化合物及び上記プレポリマーの少なくとも一方を更に含むことが好ましい。このような組み合わせを用いると、第1光学シートと透明支持体との密着性が高まる傾向にある。重合成分は、上記プレポリマーを含むことがより好ましい。プレポリマーを含む接着剤組成物を用いると、第1光学シートと透明支持体との密着性が高まる傾向にある。また、第1光学シートがPVAシートである場合、その表面の水酸基と反応するため、密着性をより高められる。
【0047】
第2接着性組成物の硬化体は、第2接着層に含まれることが好ましい。第2接着性組成物は、重合成分を含む。第2接着性組成物としては、第1接着性組成物と同様のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0048】
(フォトクロミック化合物)
フォトクロミック化合物は、フォトクロミック部位を少なくとも1つ有する化合物である。フォトクロミック化合物としては、例えば、クロメン化合物、フルギド化合物、及びスピロオキサジン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。フォトクロミック化合物としては、クロメン化合物を用いることがより好ましい。クロメン化合物は、1-ベンゾピラン骨格を有する化合物を含む。下記式(I)に、2H-1-ベンゾピラン骨格を示す。
【0049】
【0050】
クロメン化合物は、スピロピラン骨格を含むスピロピラン化合物、及び、ナフトピラン骨格を有するナフトピラン化合物を含む。スピロピラン骨格は、スピロ原子を含む1-ベンゾピラン骨格である。下記式(II)に、ナフトピラン骨格を示す。
【0051】
【0052】
ナフトピラン化合物には、インデノナフトピラン骨格を有するインデノナフトピラン化合物が含まれる。クロメン化合物は、インデノ〔2,1-f〕ナフト〔1,2-b〕ピラン骨格を有するインデノナフトピラン化合物を含むことが好ましい。インデノ〔2,1-f〕ナフト〔1,2-b〕ピラン骨格を有するクロメン化合物を含む樹脂組成物は、耐久性により優れる傾向にある。下記式(III)に、インデノ〔2,1-f〕ナフト〔1,2-b〕ピラン骨格を示す。
【0053】
【0054】
インデノナフトピラン化合物は、下記式(IIIa)に示す化合物を含むことが好ましい。
【0055】
【0056】
式(IIIa)において、Z環は、13位の炭素原子をスピロ原子とする置換若しくは非置換のスピロ環である。Z環は、13位の炭素原子と共に、脂肪族環を形成していてもよく、縮合多環を形成していてもよく、複素環を形成していてもよく、複素環式芳香族環を形成していてもよい。
【0057】
脂肪族環の環員炭素数は、3以上20以下であることが好ましく、5以上16以下であることがより好ましく、6以上10以下であることが更に好ましい。脂肪族環の具体例には、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロヘプタン環、ノルボルナン環、ビシクロノナン環、アダマンタン環、およびスピロジシクロヘキサン環が挙げられる。脂肪族環は、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、シクロウンデカン環、シクロドデカン環、又は、スピロジシクロヘキサン環であることが好ましい。
【0058】
縮合多環の環員炭素数は、3以上20以下であることが好ましく、5以上10以下であることがより好ましい。縮合多環の具体例には、フェナントレン環が挙げられる。
【0059】
複素環の環員原子数は、3以上20以下であることが好ましい。複素環の具体例には、チオフェン環、フラン環、ピリジン環が挙げられる。
【0060】
複素環式芳香族環の環員原子数は、3以上20以下であることが好ましい。複素環式芳香族環の具体例には、フェニルフラン環、ビフェニルチオフェン環が挙げられる。
【0061】
これら脂肪族環、縮合多環、複素環、又は複素環式芳香族環は、置換基を有してもよい。この置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基が挙げられる。置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、シクロアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、及び炭素数1~6のアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基が好ましい。Z環が有する置換基の数は、例えば、0以上10以下であり、好ましくは、2以上4以下である。
【0062】
Z環は、環員炭素数が5~16の脂肪族環であることが好ましい。このような構造を有する第1クロメン化合物は、退色速度が高い傾向にある。脂肪族環は、置換基として、炭素数1~3のアルキル基を有することが更に好ましい。なお、脂肪族環は、環同士が2原子間で結合した脂肪族縮環も含まれる。
【0063】
Z環は、下記式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)、(Ig)、又は(Ih)に表される構造を有することが好ましい。より好ましくは(Ib)、(Ig)又は(Ih)に表される構造である。なお、式中、破線の結合手を有する炭素原子が13位の炭素原子である。
【0064】
【0065】
式(IIIa)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、置換基を有してもよい複素環基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアラルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、チオール基、アルコキシアルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、又は置換基を有してもよいシクロアルキルチオ基である。
【0066】
アルキル基の炭素数は1~10であることが好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基が挙げられる。
【0067】
ハロアルキル基の炭素数は1~10であることが好ましい。ハロアルキル基としては、フッ素原子、塩素原子もしくは臭素原子で置換されたアルキル基が好ましい。好適なハロアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基、クロロメチル基、2-クロロエチル基、及びブロモメチル基が挙げられる。
【0068】
シクロアルキル基の環員炭素数は、3~8であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基は、置換基を有してもよいが、炭素数の数(炭素数3~8)には、置換基の炭素数は含まれないものとする。
【0069】
アルコキシ基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。好適なアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が挙げられる。
【0070】
アミノ基は、1級アミノ基(-NH2)であり、置換アミノ基は、1つまたは2つの水素原子が置換された2級または3級アミノ基である。置換アミノ基が有する置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基等が挙げられる。好適なアミノ基の例としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を挙げることできる。
【0071】
複素環基の原子数は3~10であることが好ましい。複素環基は、脂肪族複素環基であってもよく、芳香族複素環基であってもよい。脂肪族複素環基の具体例には、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N-メチルピペラジノ基が挙げられる。芳香族複素環基の具体例にはインドリニル基が挙げられる。複素環基は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。置換基を有する好適な複素環基としては、例えば2,6-ジメチルモルホリノ基、2,6-ジメチルピペリジノ基および2,2,6,6-テトラメチルピペリジノ基等が挙げられる。
【0072】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0073】
アルキルチオ基の炭素数は1~10であることが好ましい。アルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、及びt-ブチルチオ基が挙げられる。
【0074】
アリールチオ基の炭素数は6~10であることが好ましい。アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、及び2-ナフチルチオ基が挙げられる。
【0075】
アルキルカルボニル基の炭素数は2~10であることが好ましい。アルキルカルボニル基の例としては、アセチル基及びエチルカルボニル基が挙げられる。
【0076】
アルコキシカルボニル基の炭素数は2~10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられる。
【0077】
アラルキル基の炭素数は7~11であることが好ましい。アラルキル基の例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、及びナフチルメチル基が挙げられる。
【0078】
アラルコキシ基の炭素数は7~11であることが好ましい。アラルコキシ基の例としては、ベンジロキシ基及びナフチルメトキシ基が挙げられる。
【0079】
アリール基の炭素数は6~12であることが好ましい。アリール基の例としては、フェニル基、1-ナフチル基、及び2-ナフチル基が挙げられる。
【0080】
アリールオキシ基の炭素数は6~12であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、フェニルオキシ基及びナフチルオキシ基が挙げられる。
【0081】
ヘテロアリール基の炭素数は3~12であることが好ましい。ヘテロアリール基の例には、チエニル基、フリル基、ピロリニル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、及びベンゾピロリニル基が挙げられる。
【0082】
アルコキシアルキルチオ基の炭素数は2~10であることが好ましい。アルコキシアルキルチオ基の例としては、メトキシメチルチオ基、メトキシエチルチオ基、メトキシn-プロピルチオ基、メトキシn-ブチルチオ基、エトキシエチルチオ基、及びn-プロポキシプロピルチオ基等が挙げられる。
【0083】
ハロアルキルチオ基の炭素数は1~10であることが好ましい。ハロアルキルチオ基の例としては、トリフルオロメチルチオ基、テトラフルオロエチルチオ基、クロロメチルチオ基、2-クロロエチルチオ基、及びブロモメチルチオ基が挙げられる。
【0084】
シクロアルキルチオ基の炭素数は3~8であることが好ましい。シクロアルキルチオ基の例としては、シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、及びシクロヘキシルチオ基が挙げられる。なお、シクロアルキルチオ基は、置換基を有してもよいが、炭素数の数(炭素数3~8)には、置換基の炭素数は含まれないものとする。
【0085】
上述したシクロアルキル基、アリールチオ基、アラルキル基、アラルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、およびシクロアルキルチオ基は、非置換であってもよく、置換基を有していてもよい。
【0086】
シクロアルキル基、アリールチオ基、アラルキル基、アラルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、およびシクロアルキルチオ基が有し得る置換基は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のハロアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、炭素数1以上20以下のアルキルアリール基、1以上5以下のヘテロ原子を含む炭素数1以上8以下のヘテロシクロアルキル基、1以上5以下のヘテロ原子を含む、炭素数1以上8以下のヘテロアリール基、炭素数6以上12以下のアリールオキシ基、炭素数6以上12以下のアリールチオ基、シアノ基、ニトロ基、及び、ハロゲン原子からなる置換基群から選択され得る。置換基の数は、1つであってもよく、2以上であってもよい。
【0087】
R3及びR4、R4及びR5、並びにR5及びR6は、互いに結合して、炭素数2以上5以下の脂肪族環、1以上3以下のヘテロ原子を含む炭素数1以上4以下の脂肪族複素環、炭素数4以上12以下の芳香族環、又は、1以上6以下のヘテロ原子を含む炭素数3以上11以下の芳香族複素環を形成していてもよい。脂肪族環、脂肪族複素環、芳香族環、及び、芳香族複素環は、非置換でもよく、上記の置換基群から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい。
【0088】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれ独立に、下記式(IB)に表されるオリゴマー基、下記式(IC)に表されるオリゴマー基、下記式(ID)に表されるオリゴマー基、下記式(IE)に表されるオリゴマー基、又は、下記式(X)に表されるオリゴマー基であってもよい。また、R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7が有し得る置換基は、下記式(IB)に表されるオリゴマー基、下記式(IC)に表されるオリゴマー基、下記式(ID)に表されるオリゴマー基、下記式(IE)に表されるオリゴマー基、及び、下記式(X)に表されるオリゴマー基からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴマー基であってもよい。
【0089】
【0090】
式(IB)において、X1は、酸素原子、硫黄原子、アミノ基、置換アミノ基、(チオ)アミド基、(チオ)エステル基、又は、炭素数1以上10以下のアルキレン基である。Y1及びY2は、それぞれ、炭素数1以上20以下のアルキレン基である。W1は、水素原子、又は、炭素数1以上20以下のアルキル基である。cは、0又は1である。d及びeは、それぞれ、0又は1以上10以下の整数である。mは、3以上200以下の整数である。
【0091】
【0092】
式(IC)において、X1、Y1、Y2、c、d、e、及びmは、それぞれ、式(IB)におけるものと同義である。X2は酸素原子、硫黄原子、アミノ基、置換アミノ基、(チオ)アミド基、(チオ)エステル基、又は、炭素数1以上10以下のアルキレン基である。W2は、水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、又は、フォトクロミック部位である。fは、0又は1である。
【0093】
【0094】
式(ID)において、W3は、炭素数1以上20以下のアルキル基である。gは、0又は1である。nは、3以上200以下の整数である。
【0095】
【0096】
式(IE)において、W4は、炭素数1以上20以下のアルキル基、又は、フォトクロミック部位である。g及びnは、式(ID)におけるものと同義である。hは、0又は1である。
【0097】
【0098】
式(X)において、Eは酸素原子、又はNR101である。Fは酸素原子又は硫黄原子である。Gは酸素原子、硫黄原子、又はNR202である。jは0または1の整数である。R101は水素原子又は炭素数1~10のアルキル基である。
【0099】
R201及びR202は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、又は1以上5以下のヘテロ原子を含む炭素数1以上8以下のヘテロアリール基であり、Gが酸素原子、又は硫黄原子となる場合には、R201は水素原子以外の基である。
【0100】
ナフトピラン化合物は、下記式(IIa)に表される化合物を含むことが好ましい。
【0101】
【0102】
式(IIa)において、Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6、Q7、及びQ8は、それぞれ、R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7と同様の基を用い得る。
【0103】
接着性組成物の固形分において、フォトクロミック化合物が占める割合は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは、1質量%以上5質量%以下である。
【0104】
(イソ(チオ)シアネート基を有する化合物)
イソ(チオ)シアネート化合物は、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有することが好ましい。イソ(チオ)シアネート化合物は、2つのイソ(チオ)シアネート基を有するジイソシアネート化合物であることがより好ましい。
【0105】
イソ(チオ)シアネート化合物のモル質量は、好ましくは、100以上500以下である。イソ(チオ)シアネート化合物のモル質量は、より好ましくは、150以上300以下である。
【0106】
イソ(チオ)シアネート化合物は、脂肪族イソ(チオ)シアネート化合物、脂環族イソ(チオ)シアネート化合物、及び芳香族イソ(チオ)シアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。イソ(チオ)シアネート化合物は、脂環族イソ(チオ)シアネート化合物であることが好ましい。イソ(チオ)シアネート化合物としては、単一種類を用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0107】
脂肪族イソシアネート化合物の例には、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,4,4,-トリメチルヘキサンメチレンジイソシアネート、1,2-ビス(2-イソシアナトエチルチオ)エタン等が挙げられる。
【0108】
脂環族イソシアネート化合物の例には、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン等が挙げられる。
【0109】
芳香族イソシアネート化合物の例には、キシレンジイソシアネート(o-,m-,p-)、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0110】
脂肪族イソチオシアネート化合物の例としては、ヘキサメチレンジイソチアシネート、1,2-ジイソチオシアネートエタン、1,3-ジイソチオシアネートプロパン、1,4-ジイソチオシアネートブタン、1,6-ジイソチオシアネートヘキサン、2,4,4,-トリメチルヘキサンメチレンジイソチアシネート、チオビス(3-イソチオシアネートプロパン)、チオビス(2-イソチオシアネートエタン)、ジチオビス(2-イソチオシアネートエタン)等が挙げられる。
【0111】
脂環族イソチオシアネート化合物の例には、イソホロンジイソチオシアネート、シクロヘキサンジイソチオシアネート、2,4-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、2,5-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、2,6-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、3,5-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、ノルボルナンジイソチアネート等が挙げられる。
【0112】
芳香族イソチオシアネート化合物の例には、p-フェニレンジイソプロピリデンジイソチオシアネート、1,2-ジイソチオシアネートベンゼン、1,3-ジイソチオシアネートベンゼン、1,4-ジイソチオシアネートベンゼン、2,4-ジイソチオシアネートトルエン、キシレンジイソチオシアネート(o-,m-,p-)、2,4-トリレンジイソチオシアネート、2,6-トリレンジイソチオシアネート、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネート2-メチルベンゼン)、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネート3-メチルベンゼン)等が挙げられる。
【0113】
(活性水素基を有する化合物)
活性水素基を有する化合物、すなわち、活性水素化合物は、2以上の活性水素基を有する化合物、すなわち、多官能活性水素化合物と、1つの活性水素基を有する化合物、すなわち、単官能活性水素化合物とを含む。活性水素基は、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0114】
水酸基は、イソ(チオ)シアネート化合物のイソ(チオ)シアネート基と結合して、(チオ)ウレタン結合を形成する。アミノ基は、イソ(チオ)シアネート化合物のイソ(チオ)シアネート基と結合して、(チオ)ウレア結合を形成する。
【0115】
(多官能活性水素化合物)
多官能活性水素化合物は、2以上の活性水素基を有し、2つの活性水素基を有することが好ましい。多官能活性水素化合物は、例えば、2以上の水酸基を含むポリオール化合物、2以上のアミノ基を含むポリアミン化合物、2つのカルボキシ基を含むジカルボン酸、及び2以上のチオール基を含むポリチオール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。多官能活性水素化合物としては、単一種類を用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0116】
多官能活性水素化合物は、ポリオール化合物を含むことが好ましい。ポリオール化合物を用いると、(チオ)ウレタン結合を有するプレポリマーが得られる。ポリオール化合物の繰り返し構造部分は、第1接着層において、フォトクロミック化合物の構造変化を妨げにくいマトリックスを提供することに寄与し得る。ポリオール化合物を用いると、光学積層シートのフォトクロミック性が高まる傾向にある。
【0117】
ポリオール化合物の数平均分子量は、500以上3000以下であることが好ましい。ポリオール化合物の数平均分子量は、800以上2000以下であることがより好ましい。
【0118】
ポリオール化合物は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み得る。ポリオール化合物は、ポリカーボネートポリオールを含むことが好ましい。ポリカーボネートポリオールを用いると、光学積層シートの密着性が高まる傾向にある。
【0119】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、低分子ポリオール類の1ホスゲン化、あるいは、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネート等のエステル交換法により得られる。低分子ポリオールの例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-4-ブチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0120】
ポリカーボネートポリオールとしては、旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノール(登録商標)」シリーズ、株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標)」シリーズ、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社製「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどを用い得る。
【0121】
ポリカプロラクトンポリオールは、例えば、ε-カプロラクトンの開環重合により得られる。ポリカプロラクトンポリオールとしては、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズなどを用い得る。
【0122】
ポリエーテルポリオールは、例えば、分子中に活性水素基を2個以上有する化合物とアルキレンオキサイドとの反応により得られる。活性水素含有基を2個以上有する化合物としては、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物が挙げられる。
【0123】
ポリエーテルポリオールとしては、旭硝子株式会社製「エクセノール(登録商標)」シリーズ及び「エマルスター(登録商標)」シリーズ、株式会社ADEKA製「アデカポリエーテル」シリーズなどが挙げられる。
【0124】
ポリエステルポリオールは、例えば、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応により得られる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3-ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。多塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0125】
ポリエステルポリオールとしては、DIC株式会社製「ポリライト(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、川崎化成工業株式会社製「マキシモール(登録商標)」シリーズなどを用い得る。
【0126】
ポリチオール化合物は、脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオール、及びメルカプト基以外に硫黄原子を含有するポリチオールからなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0127】
脂肪族ポリチオールの例には、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1-シクロヘキサンジチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2-メチルシクロヘキサン-2,3-ジチオール、1,1-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、2,3-ジメルカプトコハク酸(2-メルカプトエチルエステル)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(2-メルカプトアセテート)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(3-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール等が含まれる。
【0128】
芳香族ポリチオールの例には、1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3-トリメルカプトベンゼン、1,2,4-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3,4-テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5-テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5-テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン等が含まれる。
【0129】
メルカプト基以外に硫黄原子を含有するポリチオールの例には、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,3-ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、2-メルカプトエチルチオ-1,3-プロパンジチオール、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン等が含まれる。
【0130】
多官能活性水素化合物の量は、多官能活性水素化合物に含まれる活性水素基のモル量M1と、イソ(チオ)シアネート化合物に含まれるイソ(チオ)シアネート基のモル量M2との比M1/M2が、0.1以上0.5以下となるように調整されることが好ましい。比M1/M2が上記の範囲内にあると、十分な量のウレタン結合及びウレア結合の少なくとも一方が形成され、かつ、フォトクロミック化合物の構造変化を阻害しにくい柔軟な第1接着層を形成できる。比M1/M2は、0.30以上0.50以下であることが好ましく、0.5であることがより好ましい。
【0131】
多官能活性水素化合物の質量S1と、イソ(チオ)シアネート化合物の質量S2との比S1/S2は、0.1以上10以下であることが好ましい。比S1/S2が上記の範囲内にあると、単位質量当たりに十分な量のイソシアネート基を有するプレポリマーが得られる。比S1/S2は、0.8以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。
【0132】
(単官能活性水素化合物)
単官能活性水素化合物は、1つの活性水素基を有する。単官能活性水素化合物は、イソ(チオ)シアネート化合物若しくはプレポリマーのイソシアネート基と反応し、更なる反応を停止させてポリマーを生成する。活性水素基は、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0133】
単官能活性水素化合物は、例えば、1つの水酸基を含むモノオール化合物、1つのアミノ基を含むモノアミン化合物、1つのカルボキシル基を含むカルボン酸、及び1つのチオール基を含むモノチオール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。単官能活性水素化合物としては、単一種類を用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0134】
単官能活性水素化合物は、モノアミン化合物であることが好ましい。モノアミン化合物を用いると、(チオ)ウレア結合を有するポリマーが得られる。
【0135】
単官能活性水素化合物は、下記式(3)に表されるように、2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル部位を有するアミンを含むことが好ましい。2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル部位を有するアミンは、ヒンダードアミンとして機能し得るため、光学積層シートの光安定性を高められる。
【0136】
【0137】
式(3)において、R21は、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。R22は、炭素数1以上3以下のアルキレン基である。aは、0又は1である。
【0138】
単官能活性水素化合物は、R21がメチル基であり、aが0である1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-アミノピペリジンであることが好ましい。
【0139】
単官能活性水素化合物の質量S5と、プレポリマーの質量S6との比S5/S6は、0.001以上0.100以下であることが好ましい。比S5/S6が上記の範囲内にあると、単位質量当たりに十分な量のイソシアネート基を有するポリマーが得られる。比S5/S6は、0.010以上0.030以下であることがより好ましい。
【0140】
(プレポリマー)
プレポリマーは、多官能活性水素化合物とイソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて得られる第1プレポリマーと、第1プレポリマーと鎖延長剤とを反応させて得られる第2プレポリマーとを含む。第2プレポリマーにおいては、2以上の第1プレポリマーが、鎖延長剤を介して接続されている。接着剤組成物は、第2プレポリマーを含むことが好ましい。
【0141】
(第2プレポリマー)
第2プレポリマーは、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する。第2プレポリマーは、主鎖の両末端にイソ(チオ)シアネート基を有することが好ましい。第2プレポリマーは、ウレタンプレポリマー、ウレアプレポリマー、ウレタンウレアプレポリマー、チオウレタンプレポリマー、チオウレアプレポリマー、及びチオウレタンウレアプレポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。第2プレポリマーは、大気中の水及PVAシートの表面上の水酸基と化学結合して、(チオ)ウレタン樹脂、(チオ)ウレア樹脂、及び(チオ)ウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を生成する。
【0142】
第2プレポリマーの数平均分子量は、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、13000以上であることが更に好ましい。数平均分子量が大きい第2プレポリマーを用いると、光学積層シートの剥離強度が高まる傾向にある。すなわち、数平均分子量が大きい第2プレポリマーは、互いに絡み合い易いため、凝集力が高まり、それゆえ、接着力が高まると考えられる。
【0143】
第2プレポリマーの数平均分子量は、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。第2プレポリマーの数平均分子量が過剰に大きいと、光学積層シートの剥離強度が低まる傾向にある。すなわち、数平均分子量が大きい第2プレポリマーは、単位質量当たりに含まれるイソ(チオ)シアネート基の量が少なく、それゆえ、接着力が弱まる傾向にある。
【0144】
第2プレポリマーの数平均分子量は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)により測定できる。測定に際しては、カラム:Shodex KD-806M(昭和電工株式会社製)を2本直列接続、溶離液:LiBr(10mmol/L)/DMF溶液、流速:1ml/min、検出器:RI検出器、第2プレポリマー試料溶液:1.0%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の条件にて測定する。解析ソフトとしては、日本ウォーターズ株式会社製GPC解析ソフト『Empower Personal GPC Option』を用いる。
【0145】
第2プレポリマーの軟化点は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。第2プレポリマーの軟化点が高いと、光学積層シートの耐熱性が向上し、密着性がより高まる傾向にある。第2プレポリマーの軟化点に上限は特にないが、一例によると、200℃以下であり、他の例によると、160℃以下である。
【0146】
第2プレポリマーの軟化点は、例えば、以下の方法で測定する。先ず、第2プレポリマーを有機溶剤に溶解させて溶液を得る。溶液中の第2プレポリマーの濃度は、例えば、34質量%とする。この溶液をステンレスの容器に流し込み、40℃で10時間、60℃で10時間、さらに真空乾燥機にて60℃で12時間にわたって乾燥させて、厚み1mmの試験片を作製する。得られた試験片について、熱機械測定装置(セイコーインスツルメント社製、TMA120C)を用いて分析を行い、軟化点を得る。測定条件は、昇温速度を10℃/分とし、測定温度範囲を30~200℃とし、先端径0.5mmの針入プローブを用いる。
【0147】
接着性組成物の固形分において、第2プレポリマーは主成分を占め得る。接着性組成物の固形分において第2プレポリマーが占める割合は、例えば、90質量%以上99質量%以下である。なお、接着性組成物が、第1ポリマー及び第2プレポリマーを含む重合成分とフォトクロミック化合物との混合物の場合、接着性組成物の固形分において第2プレポリマーが占める割合は、例えば、5質量%以上50質量%以下であり、好ましくは、10質量%以上40質量%以下である。
【0148】
(第1プレポリマー)
第1プレポリマーは、多官能活性水素化合物とイソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて得られる。第1プレポリマーは、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する。第1プレポリマーは、主鎖の両末端にイソ(チオ)シアネート基を有することが好ましい。第1プレポリマーは、ウレタンプレポリマー、ウレアプレポリマー、チオウレタンプレポリマー、及びチオウレアプレポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。第1プレポリマーは、第2プレポリマーの原料となる。
【0149】
第1プレポリマーの数平均分子量は、500以上10000以下であることが好ましく、1000以上5000以下であることがより好ましい。第1プレポリマーの数平均分子量は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0150】
(鎖延長剤)
上述した多官能活性水素化合物は、鎖延長剤としても機能する。鎖延長剤は、例えば、第1プレポリマーと反応し、第2プレポリマーを生成する。鎖延長剤は、2つの活性水素基を有することが好ましい。
【0151】
鎖延長剤は、ポリアミンを含むことが好ましい。ポリアミンを用いると、(チオ)ウレタンウレア結合を有する第2プレポリマーが得られる。このような第2プレポリマーを用いると、光学積層シートの密着性が高まる傾向にある。ポリアミンのモル質量は、50以上500以下であることが好ましい。モル質量がこの範囲内にあるポリアミンを用いると、所望の数平均分子量の第2プレポリマーを得られる傾向にある。ポリアミンのモル質量は、50以上300以下であることがより好ましい。ポリアミンは、ジアミン及びトリアミンを含み、ジアミンを含むことが好ましい。
【0152】
ポリアミンとしては、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N-ビス-(2-アミノエチル)ピペラジン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス-(4-アミノ-3-ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2-、1,3-及び1,4-ジアミノシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジン、フェニレンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジプロピルエチレンジアミン、N,N’-ジブチルエチレンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,2,5-ペンタントリアミン等が挙げられる。
【0153】
ポリアミンは、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、及び1,6-ジアミノヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0154】
鎖延長剤の量は、鎖延長剤に含まれる活性水素基のモル量M3と、第1プレポリマーに含まれるイソ(チオ)シアネート基のモル量M4との比M3/M4が、0.21以上0.50以下となるように調整されることが好ましい。比M1/M2が上記の範囲内にあると、十分な量の第2プレポリマーが生成される。
【0155】
鎖延長剤の質量S3と、第1プレポリマーの質量S4との比S3/S4は、0.01以上0.5以下であることが好ましい。比S3/S4が上記の範囲内にあると、単位質量当たりに十分な量のイソシアネート基を有する第2プレポリマーが得られる。比S3/S4は、0.08以上0.3以下であることがより好ましい。
【0156】
(ポリマー)
ポリマーは、第1プレポリマー及び第2プレポリマーの少なくとも一方と単官能活性水素化合物とを反応させて得られる。ポリマーは、典型的には、イソ(チオ)シアネート基を有さない。ポリマーの末端は、非反応性の官能基で修飾されている。ポリマーは、ウレタンポリマー、ウレアポリマー、ウレタンウレアポリマー、チオウレタンポリマー、チオウレアポリマー、及びチオウレタンウレアポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0157】
ポリマーと第1プレポリマー及び第2プレポリマーの少なくとも一方とを含む接着剤組成物を用いると、高温下で、第2プレポリマー及び第1プレポリマーの少なくとも一方と、PVAシートの表面上の水酸基と化学結合して、(チオ)ウレタン樹脂、(チオ)ウレア樹脂、及び(チオ)ウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を生成できる。
【0158】
ポリマーの数平均分子量は、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、13000以上であることが更に好ましい。数平均分子量が大きいポリマーを用いると、光学積層シートの剥離強度が高まる傾向にある。ポリマーの数平均分子量は、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。ポリマーの数平均分子量が過剰に大きいと、光学積層シートの剥離強度が低まる傾向にある。この数平均分子量は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0159】
ポリマーの軟化点は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。ポリマーの軟化点が高いと、光学積層シートの耐熱性が向上し、密着性がより高まる傾向にある。ポリマーの軟化点に上限は特にないが、一例によると、200℃以下であり、他の例によると、160℃以下である。混合物の軟化点は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0160】
ポリマーは、第2プレポリマーとの混合物として存在し得る。ポリマーと第2プレポリマーとの混合物は、単官能活性水素化合物の量を調整することにより得られる。すなわち、第2プレポリマーに含まれるイソ(チオ)シアネート基のモル量M5と、単官能活性水素化合物に含まれる活性水素基のモル量M6との比M5/M6が、1を下回るように調整されることにより、第2プレポリマーと、第2プレポリマーのイソ(チオ)シアネート基が単官能活性水素化合物で保護されたポリマーとの混合物が生成される。比M5/M6は、0.75以上0.95以下であることが好ましい。
【0161】
この混合物の数平均分子量は、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、13000以上であることが更に好ましい。数平均分子量が大きい混合物を用いると、光学積層シートの剥離強度が高まる傾向にある。混合物の数平均分子量は、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。混合物の数平均分子量が過剰に大きいと、光学積層シートの剥離強度が低まる傾向にある。この数平均分子量は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0162】
この混合物の軟化点は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。混合物の軟化点が高いと、光学積層シートの耐熱性が向上し、密着性がより高まる傾向にある。混合物の軟化点に上限は特にないが、一例によると、200℃以下であり、他の例によると、160℃以下である。混合物の軟化点は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0163】
接着性組成物の固形分において、ポリマーが占める割合は、例えば、75質量%以上95質量%以下である。
【0164】
ポリマーと第2プレポリマーとの混合物は、第4プレポリマーを含み得る。第4プレポリマーは、第2プレポリマーのイソ(チオ)シアネート基の一部が単官能活性水素化合物で保護され、残部が保護されていない化合物である。第4プレポリマーは、1つのイソ(チオ)シアネート基と、1つの単官能活性水素化合物保護基とを含み得る。第4プレポリマーは、イソ(チオ)シアネート基を有しているため、第2プレポリマーと同様に光学積層シートの密着性を高め得る。
【0165】
ポリマー、第2プレポリマー、及び第4プレポリマーの混合物において、ポリマーが占める割合は、一例によると、1質量%以上40質量%以下であり、他の例によると、10質量%以上30質量%以下である。上記混合物において、第2プレポリマーが占める割合は、一例によると、1質量%以上40質量%以下であり、他の例によると、10質量%以上30質量%以下である。上記混合物において、第4プレポリマーが占める割合は、一例によると、1質量%以上80質量%以下であり、他の例によると、40質量%以上80質量%以下である。
【0166】
第1接着層は、フォトクロミック化合物、ポリマー、第2プレポリマー、及び第4プレポリマーを含む接着性組成物の硬化体であってもよく、フォトクロミック化合物、ポリマー、及び第4プレポリマーを含む接着性組成物の硬化体であってもよい。
【0167】
(添加剤)
接着性組成物は、例えば、重合触媒、重合開始剤、帯電防止剤、内部離型剤、酸化防止剤、光安定剤、着色防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、溶剤、レベリング剤、樹脂改質剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、及び可視光吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含んでいてもよい。接着性組成物は、酸化防止剤及びレベリング剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0168】
酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル-フェノール、チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トルイル]プロピオネート]、チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のIRGANOX1035、1075、104、3790、5057、565等を用い得る。
【0169】
レベリング剤としては、シリコーン界面活性剤、フッ素含有界面活性剤等を用い得る。具体的には、東レ・ダウコーニング株式会社製L-7001、L-7002、L-7604、FZ-2123、大日本インキ化学工業株式会社製メガファックF-470、メガファックF-1405、メガファックF-479、住友スリーエム社製フローラッドFC-430等を用い得る。
【0170】
染料、可視光吸収剤としては、ニトロ系化合物、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、スレン系化合物、ポルフィリン系化合物、希土類金属化合物などが挙げられる。その中でも、防眩性と視認性の兼ね合いから、ポルフィリン系化合物、希土類系化合物が好ましい。更には、プラスチック材料中への分散安定性の観点から、ポルフィリン系化合物が最も好ましい。
【0171】
希土類金属化合物としては、アクアヒドロキシ(1-フェニル1,3-ブタンジオナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(フェナシルフェニルケトナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(1-フェニル-2-メチル-1,3-ブタンジオナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(1-チオフェニル-1,3-ブタンジオナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(1-フェニル1,3-ブタンジオナト)エルビウム、アクアヒドロキシ(1-フェニル1,3-ブタンジオナト)ホロニウムなどの錯体を挙げることが出来る。
【0172】
ポルフィリン系化合物は、下記式(1)に示すポルフィリン骨格を有する化合物である。
【0173】
【0174】
ポルフィリン系化合物は、下記式(2)で示されるテトラアザポルフィリン化合物を含むことが好ましい。
【0175】
【0176】
式中、Y1、Y3、Y5、およびY7は、水素原子である。Y2、Y4、Y6、およびY8は、それぞれ、炭素数1~6の直鎖、または分岐のアルキル基である。Mは、2価の金属原子または酸化金属原子である。
【0177】
炭素数1~6の直鎖、または分岐アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基が挙げられる。
【0178】
2価の金属原子としては、例えば、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Pd、Pt、Mn、Mg、Ti、Ba、Cd、Hg、Pd、Snなどを挙げることができる。酸化金属原子としては、例えば、VO、MnO、TiOなどを挙げることができる。金属原子(M)は、2価のCu(銅)であることが好ましい。
【0179】
光安定剤としては、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル骨格を有するヒンダートアミン系の化合物を使用することが好ましく、市販のものを使用できる。例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-4-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレート、2-[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-2-ブチルプロパン二酸[1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル]、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート等が挙げられる。商品名としては、株式会社ADEKA社製アデカスタブ(登録商標)LAシリーズ(LA-52,LA-57,LA-63P,LA-68,LA-72,LA-77Y,LA-81,LA-82など)、BASFジャパン株式会社製のTINUVIN(登録商標)シリーズ(TINUVIN123,TINUVIN171,TINUVIN249,TINUVIN292,TINUVIN765,TINUVIN622SFなど)、Chimassorb(登録商標)シリーズ(Chimassorb2020FDL,Chimassorb944FDL)等が挙げられる。
【0180】
接着性組成物の固形分において、添加剤が占める割合は、例えば、0.1質量%以上1質量%以下である。
【0181】
(有機溶媒)
接着性組成物は、その粘度を調整するために、有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルケトン、t-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、及びシクロヘキサノンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み得る。
【0182】
接着性組成物において、有機溶媒が占める割合は、例えば、30質量%以上80質量%以下である。
【0183】
(接着性組成物の製造方法)
接着性組成物は、例えば、下記第1乃至第4の製造方法により得られる。
【0184】
接着性組成物の第1の製造方法は、多官能活性水素化合物とイソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと鎖延長剤とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーとフォトクロミック化合物と任意の添加剤とを混合することとを含む。
【0185】
接着性組成物の第2の製造方法は、多官能活性水素化合物とイソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと鎖延長剤とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーと単官能活性水素化合物とを反応させて第1ポリマー及び第2プレポリマーの混合物を得ることと、第1ポリマー、第2プレポリマー、フォトクロミック化合物及び任意の添加剤を混合することとを含む。
【0186】
接着性組成物の第3の製造方法は、多官能活性水素化合物とイソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと鎖延長剤とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーと単官能活性水素化合物とを反応させて第1ポリマーを得ることと、第1ポリマー、第1プレポリマー、フォトクロミック化合物及び任意の添加剤を混合することとを含む。
【0187】
接着性組成物の第4の製造方法は、多官能活性水素化合物とイソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと鎖延長剤とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーと単官能活性水素化合物とを反応させて第1ポリマー、第2プレポリマー及び第4プレポリマーの混合物を得ることと、第1ポリマー、第2プレポリマー、第4プレポリマー、フォトクロミック化合物及び任意の添加剤を混合することとを含む。
【0188】
多官能活性水素化合物とイソ(チオ)シアネート化合物との反応は、有機溶媒存在下で行われることが好ましい。有機溶媒としては上述したものを用い得る。この反応は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。また、この反応は、例えば、60℃以上150℃以下の反応温度で、3時間以上10時間以下にわたって行われる。この反応は、イソシアネート基の逆滴定法により、終点が確認されるまで行われることが好ましい。
【0189】
第1プレポリマーと鎖延長剤との反応は、有機溶媒存在下で行われることが好ましい。有機溶媒としては上述したものを用い得る。この反応は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。また、この反応は、例えば、10℃以上30℃以下の反応温度で、0.1時間以上5時間にわたって行われる。
【0190】
第2プレポリマーと単官能活性水素化合物との反応は、有機溶媒存在下で行われることが好ましい。有機溶媒としては上述したものを用い得る。この反応は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。また、この反応は、例えば、-10℃以上10℃以下の反応温度で、0.1時間以上5時間以下にわたって行われる。
【0191】
[光学積層シートの製造方法]
実施形態に係る光学積層シートの製造方法は、上述した第1接着性組成物を第1光学シートの少なくとも一方の主面上に塗布して第1塗膜を得ることと、第2接着性組成物を第2光学シートの少なくとも一方の主面上に塗布して第2塗膜を得ることと、第1塗膜と第2塗膜との間に透明支持体が位置し、これらと接するように、第1光学シート、透明支持体、及び第2光学シートを積層させることとを含む。
光学積層シートの製造方法について、以下、詳細に説明する。
【0192】
先ず、第1及び第2光学シートを準備する。第1及び第2光学シートとしては、市販の樹脂シートを用いることができる。樹脂シートは、無延伸シートを用いてもよく、これに延伸処理及び染色処理を施したものを用いてもよい。第1及び第2光学シートの各主面上には、上述した方法により表面改質領域を設けてもよい。
【0193】
次に、第1光学シートの少なくとも一方の主面上に第1接着性組成物を、例えば、バーコータを用いて塗布して第1塗膜を形成する。この塗膜を、例えば、60℃以上150℃の温度で1分間以上1時間以下にわたって乾燥させる。
【0194】
次に、第2光学シートの少なくとも一方の主面上に第2接着性組成物を、例えば、バーコータを用いて塗布して第2塗膜を形成する。この塗膜を、例えば、60℃以上150℃の温度で1分間以上1時間以下にわたって乾燥させる。
【0195】
次に、第1塗膜と第2塗膜との間に、これらと接するように透明支持体を設置して積層体を得る。この積層体を、例えば、ラミネートロールを用いて張り合わせて構造体を得る。透明支持体の少なくとも一方の主面上には、上述した方法により表面改質領域を設けてもよい。
【0196】
次に、得られた構造体を脱気処理に供する。脱気処理に際しては、構造体を、例えば、500Paの真空下、40℃以上80℃以下の温度で、5時間以上20時間以下にわたって静置する。脱気処理後の構造体を加熱処理に供する。加熱処理に際しては、例えば、60℃以上150℃以下の温度で、0.5時間以上5時間以下にわたって構造体を加熱する。加熱処理後の構造体を、室温で一週間以上静置してもよい。以上の方法により、実施形態に係る光学積層シートを得る。
【0197】
[光学物品]
実施形態に係る光学物品は、実施形態に係る光学積層シートを含む。実施形態に係る光学物品は、実施形態に係る光学積層シートと、第1光学シート及び第2光学シートの少なくとも一方の表面を被覆し、樹脂を含む光学素子基材とを含み得る。光学素子基材は、第1光学シート及び第2光学シートの第1接着層及び第2接着層と接しない表面を被覆していてもよい。光学積層シートは、光学素子基材内部に収容されていてもよい。
【0198】
光学物品としては、レンズ、家屋や自動車の窓ガラス、液晶ディスプレイ、サンバイザー、時計等が挙げられる。レンズは、セミフィニッシュドレンズ及びフィニッシュドレンズを含む。
【0199】
図2は、実施形態に係る光学物品の一例を概略的に示す断面図である。
図2に示す光学物品10は、第1光学素子基材11と、第2光学素子基材12と、これらの間に介在する
図1に示す光学積層シート1とを含む。光学物品10は、凹凸レンズ形状を有している。光学積層シート1は、レンズの形状に沿った曲面を有している。第1光学素子基材11は凹面側に位置し、第2光学素子基材12は凸面側に位置している。第1光学素子基材11は、光学基材シート1の図示しない第2光学シートの表面全体を被覆している。第2光学素子基材12は、光学基材シート1の図示しない第1光学シートの表面全体を被覆している。光学基材シート1の側面は、第1及び第2光学素子基材により被覆されていない。光学基材シート1の側面は、第1及び第2光学素子基材により被覆されていてもよい。
【0200】
図3は、実施形態に係る眼鏡の一例を概略的に示す断面図。
図3に示す眼鏡100は、レンズ101と、このレンズ101を支持するフレーム102とを含む。レンズ101は、実施形態に係る光学物品を含む。
【0201】
(光学素子基材)
光学素子基材は、樹脂を含み得る。樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アリル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリチオウレタン樹脂、ポリチオウレタンウレア樹脂、ポリチオエポキシ樹脂、及びポリカーボネート樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み得る。
【0202】
樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリチオウレタン樹脂、ポリチオウレタンウレア樹脂、及びポリチオエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの樹脂は、第1及び第2光学シートの少なくとも一方がPVAシートである場合、構成するモノマーが第1及び第2光学シートの表面の水酸基と化学結合し得るため、光学基材シートとの密着性が高い傾向にある。より好ましくは、ポリチオウレタン樹脂、ポリチオエポキシ樹脂、及びポリウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0203】
(光学物品の製造方法)
実施形態に係る光学物品は、例えば、以下の方法で製造される。
先ず、実施形態に係る光学積層シートの曲面加工を行う。具体的には、曲面加工装置の金型内に、光学積層シートを設置する。金型は、例えば、半球形等のレンズ形状を有している。金型の底面には、空孔が設けられている。空孔には、管を介して真空ポンプ等の圧力調整装置が接続されている。圧力調整装置を起動し、金型と光学積層シートとの間の空間の圧力を低下させる。これにより、光学積層シートの第2光学シートが金型の底面部に張り付くように変形する。この際、光学積層シートが変形し易いように、環境温度を70℃以上160℃以下に設定してもよい。一定時間経過後、圧力調整装置の動作を停止して、変形した光学積層シートを金型から取り外す。取り外した光学積層シートを、例えば、0℃以上40℃以下の温度下で冷却する。このようにして、曲面加工された光学積層シートを得る。
【0204】
次に、光学素子基材を形成するための硬化性組成物を準備する。硬化性組成物は、各樹脂に対応した公知の組成物を使用し得る。次に、鋳型及びガスケットを準備する。鋳型は、上型と下型とを含む。上型と下型とを組み合わせることにより、内部に中空部が形成される。ガスケットは、この上型と下型との境界面に設置される。ガスケットの内側には、実施形態に係る光学積層シートを固定するための切込みが設けられている。ガスケットの内側には、切込みの代わりに、凸部又は凹部が設けられていてもよい。鋳型及びガスケットは、例えば、公知のプラスチックレンズ成型用のものである。
【0205】
次に、ガスケットの切込みに実施形態に係る光学積層シートの端部を差し込み固定する。このガスケットを、鋳型の境界面に設置する。これにより、鋳型の中空部内にまたがるように光学積層シートが設置される。次に、この鋳型の中空部内に、硬化性組成物を充填する。硬化性組成物充填後の鋳型を、熱処理して、硬化性組成物を硬化させる。熱処理に際しては、例えば、常温から硬化温度まで徐々に昇温し、硬化温度に達した後、一定時間保持する。硬化温度は、光学素子基材の樹脂の種類により異なるが、例えば、60℃以上200℃以下である。昇温速度は、例えば、1℃/時間以上10℃/時間以下である。硬化温度での保持時間は、例えば、0.1時間以上10時間以下である。
【0206】
熱処理終了後、鋳型から硬化体を取り出す。取り出した硬化体を、上記硬化温度の範囲内で更に上記保持時間にわたって加熱する。このようにして、光学積層シートの第1及び第2光学シートの表面が、光学素子基材により被覆された実施形態に係る光学物品が得られる。
【0207】
実施形態に係る光学物品は、以下の方法により得てもよい。先ず、上記の鋳型の下型に、硬化性組成物の一部を充填する。充填後の硬化性組成物の表面に、光学積層シートを設置する。次に、下型と向き合うように上型を設置して中空部を形成する。この中空部内に硬化性組成物の残りを充填する。得られた鋳型を上記と同様の方法で加熱し、硬化体を得る。このようにして、光学積層シートの主面及び側面の全面が、光学素子基材により被覆された実施形態に係る光学物品が得られる。
【0208】
また、実施形態に係る光学物品は、以下の方法により得てもよい。先ず、鋳型の上面に沿うように光学積層シートを設置する。光学積層シートの鋳型の上面と接しない面、すなわち、裏面側に向けて硬化性組成物を充填し、上記と同様の条件で熱処理し、第1硬化体を得る。第1硬化体は、第1光学素子基材の一方の主面上に光学積層シートが積層された積層体である。この第1硬化体を、鋳型内に設置する。第1硬化体の第2光学シートの表面に向けて硬化性組成物を充填し、上記と同様の条件で熱処理し、第2硬化体を得る。第2硬化体は、第1光学素子基材の一方の主面上に光学積層シートが積層され、この光学積層シート上に第2光学素子基材が積層された積層体である。このようにして、光学積層シートの主面と任意に側面とが、光学素子基材により被覆された実施形態に係る光学物品が得られる。
【0209】
また、実施形態に係る光学物品は、以下の射出成型法により得てもよい。先ず、鋳型の上面に沿うように光学積層シートを設置する。光学積層シートの鋳型の上面と接しない面、すなわち、裏面側に向けて加熱後の液状樹脂を充填する。液状樹脂を冷却し、固化させる。このようにして、光学積層シートの第2光学シート面が、光学素子基材により被覆された実施形態に係る光学物品が得られる。液状樹脂としては、例えば、ポリカーボネートを用いる。
【0210】
以下、光学素子基材の各樹脂用の硬化性組成物について詳細に記述する。
アリル系樹脂用の硬化性組成物は、アリル基を有するアリルモノマーと重合開始剤とを含む。アリルモノマーは、例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルイソフタレート、及びジアリルテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。重合開始剤は、例えば、ジイソプロピルパーオキシカーボネートを含む。
【0211】
(メタ)アクリル系樹脂用の硬化性組成物は、(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリルモノマーと重合開始剤とを含む。(メタ)アクリルモノマーは、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンオリゴマーテトラ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、平均分子量776の2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量475のメチルエーテルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、平均分子量522のポリエチレングリコールジアクリレート、メチル(メタ)アクリレート等の少なくとも一つの(メタ)アクリレート基を分子中に有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。重合開始剤は、例えば、t-ブチルパーオキシネオデカネートを含む。
【0212】
ウレタンウレア系樹脂用の硬化性組成物は、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とのプレポリマー、及び、ジアミン化合物とを含む。ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及びジアミン化合物としては、それぞれ、接着性組成物において上述したものを用い得る。ポリイソシアネート化合物は、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物を含むことが好ましい。ポリオール化合物は、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸と反応させて得られるポリエステルポリオールを含むことが好ましい。ジアミン化合物は、2,4-ジアミノ-3,5-ジエチル-トルエン、2,6-ジアミノ-3,5-ジエチル-トルエン、4,4’-メチレンビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、ビス-4-(4-アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、ビス-4-(3-アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、及び4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0213】
チオウレタン系樹脂用の硬化性組成物は、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物と重合触媒とを含む。ポリイソシアネート化合物としては、接着性組成物において上述したものを用い得る。ポリイソシアネート化合物は、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,5-ジイソシアナートメチル-1,4-ジチアン、2,5-ビス(4-イソシアナート-2-チアブチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(3-イソシアナートメチル-4-イソシアナート-2-チアブチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(3-イソシアナート-2-チアプロピル)-1,4-ジチアン、1,3,5-トリイソシアナートシクロヘキサン、1,3,5-トリス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアネートメチルチオ)メタン、1,5-ジイソシアネート-2-イソシアネートメチル-3-チアペンタン、1,2,3-トリス(イソシアネートエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(イソシアネートメチルチオ)プロパン、1,1,6,6-テトラキス(イソシアネートメチル)-2,5-ジチアヘキサン、1,1,5,5 -テトラキス(イソシアネートメチル)-2,4-ジチアペンタン、1,2-ビス(イソシアネートメチルチオ)エタン、1,5-ジイソシアネート-3-イソシアネートメチル-2,4-ジチアペンタンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0214】
ポリチオール化合物は、例えば、1,2-ジメルカプトエタン、1,2-ジメルカプトプロパン、2,2-ジメルカプトプロパン、1,3-ジメルカプトプロパン、1,2,3-トリメルカプトプロパン、1,4-ジメルカプトブタン、1,6-ジメルカプトヘキサン、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,5-ジメルカプト-3-オキサペンタン、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2-メルカプトメチル-1,3-ジメルカプトプロパン、2-メルカプトメチル-1,4-ジメルカプトブタン、2-(2-メルカプトエチルチオ)-1,3-ジメルカプトプロパン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、2,4-ビス(メルカプトメチル)-1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン、4,8-ビス(メルカプトメチル)-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ビス(メルカプトメチル)-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ビス(メルカプトメチル)-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,2,7-トリメルカプト-4,6-ジチアヘプタン、1,2,9-トリメルカプト-4,6,8-トリチアノナン、1,2,8,9-テトラメルカプト-4,6-ジチアノナン、1,2,10,11-テトラメルカプト-4,6,8-トリチアウンデカン、1,2,12,13-テトラメルカプト- 4,6,8,10-テトラチアトリデカン、1,1,1-トリス(メルカプトメチル)プロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、テトラキス(4-メルカプト-2-チアブチル)メタン、テトラキス(7-メルカプト-2,5-ジチアヘプチル)メタン、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,1-ジメルカプトシクロヘキサン、1,4-ジメルカプトシクロヘキサン、1,3-ジメルカプトシクロヘキサン、1,2-ジメルカプトシクロヘキサン、1,4-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(2-メルカプトエチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1-チアン、2,5-ビス(2-メルカプトエチル)-1-チアン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ビス(4-メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4-メルカプトフェニル)エーテル、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-メルカプトフェニル)プロパン、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)エーテル、2,2-ビス(4-メルカプトメチルフェニル)プロパン、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、3,4-チオフェンジチオール、1,2 -ジメルカプト-3-プロパノール、1,3-ジメルカプト-2-プロパノール、グリセリルジチオグリコーレート、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ) エタン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、及び3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0215】
重合触媒は、例えば、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N,N′,N′-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、4,4′-トリメチレンビス(1-メチルピペリジン)、1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-7-ウンデセン、ジメチルスズジクロライド、ジメチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチルスズジクロライド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズマレエートポリマー、ジブチルスズジリシノレート、ジブチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジブチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチルスズジクロライド、ジオクチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエートポリマー、ジオクチルスズビス(ブチルマレエート)、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジリシノレート、ジオクチルスズジオレエート、ジオクチルスズジ(6-ヒドロキシ)カプロエート、ジオクチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、及びジドデシルスズジリシノレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0216】
チオエポキシ系樹脂用の硬化性組成物は、チオエポキシ基を有するモノマーと硬化剤と重合触媒とを含む。チオエポキシ基を有するモノマーは、例えば、2以上のβ-エピチオプロピルチオ基を有する化合物を含み、好ましくは、ビス(β-エピチオプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(β-エピチオプロピルチオ)エタン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2-ビス(β-エピチオプロピルチオ)プロパン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-2-(β-エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ブタン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-3-(β-エピチオプロピルチオメチル)ブタン、1,5-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ペンタン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-4-(β-エピチオプロピルチオメチル)ペンタン、1,6-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-5-(β-エピチオプロピルチオメチル)ヘキサン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-2-〔(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオ〕エタン、及び1-(β-エピチオプロピルチオ)-2-[〔2-(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオエチル〕チオ]エタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。硬化剤は、例えば、チオール基を有する化合物を含み、好ましくは、2-メルカプトエタノールを含む。重合触媒は、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミドを含む。
【実施例0217】
以下に例示するいくつかの実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に、本発明を説明するためのものであり、本発明の精神及び範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
【0218】
<例1>
(第1プレポリマーFPP1の製造)
2Lの反応容器に、225gの第1イソシアネート化合物FI1、100gの第1多官能活性水素化合物FA1、及び200gの有機溶媒OS1を投入して混合物を得た。第1イソシアネート化合物FI1としては、イソホロンジイソシアネートを用いた。第1多官能活性水素化合物FA1としては、数平均分子量1000のポリエーテルジオール(旭硝子株式会社製エクセノール)を用いた。有機溶媒OS1としては、トルエンを用いた。窒素雰囲気下、100℃で7時間にわたってこの混合物を1000rpmで攪拌して、第1プレポリマーを含む反応液を得た。以下、この第1プレポリマーを、第1プレポリマーFPP1とも称する。反応の終点は、イソシアネート基の逆滴定法により確認した。
【0219】
(第2プレポリマーSPP1の製造)
第1プレポリマーFPP1を含む10℃の反応液に、500gの有機溶媒OS2を加えた後、液温を15℃に保持した。有機溶媒OS2としては、ジエチルケトンを用いた。この反応液に、34gの第2多官能活性水素化合物SA1を滴下し、15℃で1時間反応させることにより、第2プレポリマーを含む反応液を得た。第2多官能活性水素化合物SA1としては、イソホロンジアミンを用いた。以下、この第2プレポリマーを、第2プレポリマーSPP1とも称する。なお、第2プレポリマーSPP1を含む反応液において、固形分濃度は33.9質量%であった。第2プレポリマーの数平均分子量は16000であり、軟化点は140℃であった。
【0220】
(第1接着性組成物AC1の調製)
第2プレポリマーSPP1を含む100gの反応液、1.02gのフォトクロミック化合物PC1、0.34gのエチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、及び0.05gのDOW CORNING TORAY L-7001を混合し、室温で攪拌して接着剤組成物を得た。以下、この接着剤組成物を第1接着性組成物AC1とも称する。
【0221】
PC1としては、下記の化合物を用いた。
【0222】
【0223】
(第2接着性組成物AC2の調製)
フォトクロミック化合物PC1を使用しないこと以外は、第1接着性組成物AC1と同様の方法で、接着剤組成物を得た。以下、この接着剤組成物を第2接着性組成物AC2とも称する。
【0224】
(光学積層シートOL1の作製)
第1接着性組成物AC1を、バーコーターを用いて、第1のポリビニルアルコールフィルムPVF1の片面上に塗工して第1塗膜を形成した。ポリビニルアルコールフィルムPVF1の厚みは75μmであった。この第1塗膜を100℃の温度で5分間乾燥させた。乾燥後の第1塗膜の膜厚は、30μmであった。
【0225】
また、第2接着性組成物AC2を、バーコーターを用いて、第2のポリビニルアルコールフィルムPVF1の片面上に塗工して第2塗膜を形成した。この第2塗膜を100℃の温度で5分間乾燥させた。乾燥後の第2塗膜の膜厚は、30μmであった。
【0226】
次いで、ポリエチレンテレフタレート製シートPETの一方の主面に、第1塗膜が接し、シートPETの他方の主面に第2塗膜が接する様にラミネートロールを用いて貼り合わせて構造体を得た。なお、構造体は15cm×20cm程度の長方形であった。構造体の長辺方向の一方の端部には、接着性組成物を塗工せず、未塗工部分とした。
【0227】
この構造体を、60℃、500Paの真空下で12時間静置して脱気した。脱気後の構造体を、90℃で2時間加熱した。加熱後の構造体を室温で約1週間放置して、光学積層シートを得た。以下、この光学積層シートを光学積層シートOL1とも称する。光学積層シートOL1は、10枚作製した。
【0228】
なお、ポリエチレンテレフタレート製シートPETは、使用前に両表面をナビタス社製マルチダインを用いて、コロナ放電処理を実施した。
【0229】
(レンズLS1の製造)
先ず、光学積層シートOL1を、80℃、13Torrの条件下で15時間真空乾燥させた。真空乾燥後の光学積層シートOL1を、曲面加工装置に設置して、曲面加工を施した。具体的には、得られた光学積層シートの型抜きを行い、径が80mmの円板状シートを取得した。得られた円板状シートを、減圧吸引加工(熱曲げ加工)により、球面形状へ加工した。この減圧吸引加工は、直径90mmの凹型4カーブの金型を140℃雰囲気中に設置し、凹型の金型の中心部の穴から、真空ポンプにて減圧吸引を行うことにより実施した。加工時間は、1枚当たり約2分間とした。
【0230】
曲面加工後の光学積層シートOL1を、ガスケットの内側の切込み部に設置した。このガスケットを、中空部内に光学積層シートOL1が位置するようにガラスモールド内に設置した。ガラスモールドは、レンズの度数Dは0.00となり、レンズ径は70mmとなり、レンズ厚みは3.0mmとなるように設定した。このガラスモールドの中空部内に、チオウレタン系硬化性組成物を注入した。チオウレタン系硬化性組成物を注入後のガラスモールドを、空気炉を用いて、35℃から110℃まで12時間かけて徐々に昇温した後、110℃で1時間保持して、硬化性組成物を硬化させた。加熱後、ガスケット及びガラスモールド内から硬化体を取り出し、これを110℃のオーブンに入れ3時間加熱した。加熱後の硬化体の外周を玉摺機にて研磨して、直径60mmの
図2に示すレンズを得た。この操作を繰り返し、合計10枚のレンズを得た。以下、このレンズをレンズLS1とも称する。
【0231】
チオウレタン系硬化性組成物としては、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート43.5質量部、イソホロンジイソシアネート43.5質量部、1,2-ビス〔(2-メルカプトエチル)チオ〕-3-メルカプトプロパン63.0質量部、及びジブチルチンジラウレート0.1質量部の混合物を用いた。
【0232】
<例2~例11>
第1及び第2光学シート、又は、透明支持体を表1に記載のように変更したこと以外は、例1と同様の方法で、光学積層シート及びレンズを得た。なお、表1の略称の詳細は下記のとおりである。
【0233】
PVF1:ポリビニルアルコールフィルム(厚み75μm)。
PVF2:延伸倍率4倍であり、ホウ酸架橋を実施したポリビニルアルコールフィルム(厚み30μm)
PVF3:視感透過率は44%、偏光度は94.4%、であり色調がグレーである2色性染料を含むポリビニルアルコール性偏光フィルム(厚み27μm)。
PET:厚み300μmのポリエチレンテレフタレート製シート。
TAC:厚み300μmのトリアセチルセルロース製シート。
APA1:厚み300μmの脂環族ポリアミドシート(4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンと1,10-デカンジカルボン酸からなる脂環族ポリアミドを主成分とするシート)。
APA2:厚み200μmの延伸した脂環族ポリアミドシート(4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンと1,10-デカンジカルボン酸からなる脂環族ポリアミドを主成分とするシート)。
PC1:厚み200μmのポリカーボネートシート。
PC2:厚み125μmの延伸ポリカーボネートシート。
【0234】
<評価試験>
(光学積層シート及びレンズのフォトクロミック性の測定)
以下の方法で、例1~例11で得られた光学積層シートの最大吸収波長、発色濃度、及び退色速度を測定した。
【0235】
具体的には、先ず、23℃の温度下で、株式会社浜松ホトニクス製のキセノンランプL-2480(300W)SHL-100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して、光学積層シートの一方の光学シート側に、120秒間照射して、フォトクロミック化合物を発色させた。ビーム強度は、365nm=2.4mW/cm2、245nm=24μW/cm2とした。
【0236】
発色後の最大吸収波長(λmax)を、株式会社大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により求めた。
【0237】
キセノンランプ未照射時の光学積層シートの最大吸収波長の吸光度ε(0)を測定した。次に、上記ビーム強度で120秒間にわたって光学積層シートにキセノンランプを照射して、光学積層シートの最大吸収波長の吸光度ε(120)を測定した。吸光度ε(120)からε(0)を差し引いた値を、発色濃度とした。この値が高いほどフォトクロミック性が優れていると言える。
【0238】
発色濃度が1/2まで低下するのに要する時間を測定し、これを退色速度〔t1/2(sec.)とした。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0239】
例1~例11で得られたレンズの最大吸収波長、発色濃度、及び退色速度を、上記と同様の条件で測定した。その結果は、光学積層シートの値とそれぞれ同一であった。
【0240】
(光学積層シートの剥離強度の測定)
例1~例11で得られた光学積層シートを、25mm×100mmの短冊状となるように切り出して試験片を得た。この際、接着剤組成物の塗膜を含まない、一方の長辺端部を含むように切り出した。この試験片の第1光学シート及び第2光学シートの接着剤組成物が塗工されていない部分を、それぞれ上部治具及び下部治具に挟み、試験機:オートグラフAGS-500NX、島津製作所製に設置した。クロスヘッドスピード100mm/minで、上部治具を引張り、最大剥離力を測定した。この最大剥離力を剥離強度として、表1に記載した。
【0241】
(光学積層シートの外観評価)
以下の方法により、例1~例11に係る光学積層シートについて、外観評価を行った。先ず、光学積層シートを、蛍光灯を設置したブラックボックス内で目視により観察し、光学積層シートに気泡が存在するかどうか確認した。評価基準は以下のとおりとした。この結果を表1に示す。
【0242】
0:フォトクロミック積層体中に、気泡が観察されない。
【0243】
1:フォトクロミック積層体中に、気泡が1~3個観察される。
【0244】
2:フォトクロミック積層体中に、4個以上の気泡が観察される。
【0245】
(曲面加工後の光学積層シートの歩留まり評価)
例1~例11に係る光学積層シートについて、曲面加工後の歩留まり評価を行った。評価は、10枚の加工した光学積層シートのうち、縁部に変形が生じず、4カーブの曲率を有する光学積層シートの枚数を数え、その割合を歩留まり(%)として算出した。この値を表1に示す。
【0246】
(レンズの密着性評価)
以下の方法により、例1~例11に係るレンズについて、光学積層シートと光学素子基材との密着性を評価した。先ず、レンズを目視により確認し、光学積層シートの剥がれが見られるかどうかを確認した。次に、レンズを蒸留水により3時間にわたって煮沸し、目視により光学積層シートの剥がれが見られるかどうか確認した。評価基準は以下のとおりとした。この結果を表1に示す。
【0247】
0:各層間で全くハガレが見られない。
1:フォトクロミック積層体と樹脂層間で、5%未満の部位でハガレが見られる。
2:フォトクロミック積層体と樹脂層間で、10%未満の部位でハガレが見られる。
3:フォトクロミック積層体と樹脂層間で、10%以上の部位でハガレが見られる。
【0248】
(レンズの外観評価)
以下の方法により、例1~例11に係るレンズについて、外観を評価した。具体的には、レンズ内にみられる気泡の数を目視により測定した。この測定を10枚のレンズで行い、下記の評価基準にしたがい評価した。この結果を表1に示す。
【0249】
0:10枚全てで、気泡が発生していない。
1:10枚中1~2枚に、3個以下の気泡が発生している。
2:10枚中3~5枚以上で、3個以下の気泡が発生している。
3:10枚中5枚以上で、3個以上の気泡が発生している。
【0250】
【0251】
表1から明らかなとおり、透明支持体を用いた例1~例6、例8、及び例10に係る光学積層シートの歩留まりは、透明支持体を用いない例7、例9、及び例11に係る光学積層シートの歩留まりよりも高かった。