IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

<>
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図1
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図2
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図3
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図4
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図5
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図6
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図7
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図8
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図9
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図10
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図11
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図12
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図13
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図14
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図15
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図16
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図17
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図18
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図19
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図20
  • 特開-基板洗浄装置及び基板研磨装置 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175319
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】基板洗浄装置及び基板研磨装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
H01L21/304 643Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093012
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(74)【代理人】
【識別番号】100220423
【弁理士】
【氏名又は名称】榊間 城作
(72)【発明者】
【氏名】馬場 枝里奈
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA03
5F157AA15
5F157AA17
5F157AA73
5F157AA96
5F157AB48
5F157AB63
5F157AB90
5F157BA07
5F157BB13
5F157BB23
5F157BB24
5F157BB37
5F157BB52
5F157BB73
5F157CB13
5F157CB15
5F157CC31
5F157DB51
(57)【要約】
【課題】研磨処理後の基板に付着したパーティクルを効率良く除去する
【解決手段】基板研磨を行う研磨面を有する研磨テーブルと、リテーナリングで前記基板の外周部と囲繞しながらメンブレンで基板を保持して研磨面に向けて押圧するトップリングを備えた研磨装置に設けられ、研磨後の基板の表面を洗浄する基板洗浄装置であり、トップリングの洗浄位置に対応して設けられる。基板洗浄装置は、洗浄位置にある基板に向けて洗浄液を噴射する第1噴射ユニットと、洗浄位置にある基板に向けて洗浄液を噴射する第2噴射ユニットを備え、第2噴射ユニットは、洗浄位置にあるトップリングの回転方向に関して、第1噴射ユニットの下流側または上流側に配置され、第2噴射ユニットを構成する噴射ノズルは、第1噴射ユニットに向けて傾けられている。第2噴射ユニットは、第1噴射ユニットから噴射される洗浄液を基板の外周部に向けて付勢する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板研磨を行う研磨面を有する研磨テーブルと、リテーナリングで前記基板の外周部と囲繞しながらメンブレンで前記基板を保持して前記研磨面に向けて押圧するトップリングを備えた研磨装置に設けられ、研磨後の前記基板の表面を洗浄する基板洗浄装置であって、
前記トップリングは、前記研磨テーブルの上方で前記基板研磨を行う研磨位置と前記研磨テーブルの側方で前記基板の受渡しを行う受渡位置との間を移動自在とされており、
前記基板洗浄装置は、前記研磨位置及び前記受渡位置との間の洗浄位置に対応して設けられ、
前記洗浄位置にある前記基板に向けて洗浄液を噴射する第1噴射ユニットと、
前記洗浄位置にある前記基板に向けて洗浄液を噴射する第2噴射ユニットを備え、
前記第2噴射ユニットは、前記洗浄位置にある前記トップリングの回転方向に関して、前記第1噴射ユニットの下流側または上流側に配置され、
前記第2噴射ユニットからの洗浄液は、前記第1噴射ユニットから噴射される洗浄液を前記基板の外周部に向けて付勢することを特徴とする、基板洗浄装置。
【請求項2】
前記第2噴射ユニットを構成する噴射ノズルは、前記第1噴射ユニットに向けて傾けられている、請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記第2噴射ユニットは、前記洗浄位置にある前記トップリングの回転方向に関して、前記第1噴射ユニットの下流側に配置されている、請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記第2噴射ユニットは、前記洗浄位置にある前記トップリングの回転方向に関して、前記第1噴射ユニットの上流側に配置されている、請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記第2噴射ユニットは、前記洗浄位置にある前記トップリングの回転方向に関して、前記第1噴射ユニットの上流側及び下流側に配置されている、請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記第1噴射ユニットは、略楕円形状の洗浄液を噴射するとともに、当該洗浄液の長手方向が、洗浄位置にあるトップリングの径方向に関して、トップリングの回転方向に傾けられることを特徴とする、請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記第1噴射ユニット及び前記第2噴射ユニットは、それぞれ独立して洗浄液を噴射可能とされている、請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
前記メンブレンと前記リテーナリングの間、及び/または前記リテーナリングに向けて洗浄液を噴射する噴射ユニットをさらに備えたことを特徴とする、請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
前記研磨テーブル及び前記トップリングと、
請求項1~8のいずれか記載の基板洗浄装置と、
前記トップリング及び前記基板洗浄装置の動作を制御する制御部とを備えた基板研磨装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第2噴射ユニットから洗浄液を噴射させた後に、前記第1噴射ユニットから洗浄液を噴射させるように制御することを特徴とする、請求項9記載の基板研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板を洗浄する装置及び当該洗浄装置を備えた基板研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板の表面を研磨する研磨装置は、研磨モジュール、洗浄モジュールと基板搬送機構を備えている。研磨モジュールには、研磨パッドを有する研磨テーブルと、基板を保持する研磨ヘッド(トップリング)が備えられる。研磨ヘッドは、基板の受渡しを行う受渡位置と、研磨パッドと重なる研磨位置との間で、基板を搬送する。研磨位置において所定圧力で基板表面を研磨パッドに押圧し、研磨液(スラリー)を供給しつつ、研磨パッドと基板とを相対運動させることにより、基板を研磨パッドに摺接させて基板表面を所定の膜厚に研磨する。
【0003】
洗浄モジュールは、基板表面の粗洗浄(一次洗浄)及び仕上げ洗浄(二次洗浄)を行う複数の洗浄モジュールが備えられており、研磨処理後に基板上に残留した研磨液や研磨かす等の研磨残渣物(パーティクル)を除去する。洗浄モジュールには、複数の基板を洗浄するための複数の洗浄ラインが設けられている(特許文献1参照)。
【0004】
研磨処理後の基板表面にパーティクルが残留すると半導体デバイスの歩留まりに影響するため、洗浄モジュールに引き渡す前にパーティクルを除去することが望ましい。そこで、研磨モジュール内の研磨テーブルの側方に設けられた洗浄位置にて、トップリングにて保持された基板を回転しながら、基板の下方に設けられた洗浄ノズルから洗浄液を噴射することで、研磨処理後の基板に対して洗浄処理を行うようにした研磨装置も開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-50436号公報
【特許文献2】特許第6055648号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板を回転させながら、基板の下方に設けられた洗浄ノズルから洗浄液を噴射して洗浄処理を行う場合、基板の回転に伴う遠心力によりパーティクルを含む洗浄液が基板の外周から外部に排出されるものの、基板の中央付近に噴射された洗浄液に働く遠心力は比較的小さいため、基板外部に排出されにくい。また、洗浄液の一部は基板Wの中央付近に滞留してしまい、その結果、パーティクルが基板に再付着することがあり、パーティクルを含む洗浄液を効率良く外部に排出する必要が生じていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、研磨処理後の基板に付着したパーティクルを効率良く除去する基板洗浄装置及び基板研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、基板研磨を行う研磨面を有する研磨テーブルと、リテーナリングで前記基板の外周部と囲繞しながらメンブレンで前記基板を保持して前記研磨面に向けて押圧するトップリングを備えた研磨装置に設けられ、研磨後の前記基板の表面を洗浄する基板洗浄装置であって、前記トップリングは、前記研磨テーブルの上方で前記基板研磨を行う研磨位置と前記研磨テーブルの側方で前記基板の受渡しを行う受渡位置との間を移動自在とされており、前記基板洗浄装置は、前記研磨位置及び前記受渡位置との間の洗浄位置に対応して設けられ、前記洗浄位置にある前記基板に向けて洗浄液を噴射する第1噴射ユニットと、前記洗浄位置にある前記基板に向けて洗浄液を噴射する第2噴射ユニットを備え、前記第2噴射ユニットは、前記洗浄位置にある前記トップリングの回転方向に関して、前記第1噴射ユニットの下流側または上流側に配置され、前記第2噴射ユニットからの洗浄液は、前記第1噴射ユニットから噴射される洗浄液を前記基板の外周部に向けて付勢する。前記第2噴射ユニットを構成する噴射ノズルは、前記第1噴射ユニットに向けて傾けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、研磨処理後の基板に付着したパーティクルを効率良く除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る基板洗浄装置を備えた基板研磨装置の概略構成を示す平面図である。
図2】研磨ユニットの構成を示す平面図である。
図3図2の研磨ユニットの斜視図である。
図4図2の研磨ユニットのトップリング32の内部構成を示す略断面図である。
図5】受渡位置、洗浄位置及び研磨位置の間で基板が移動する様子を説明する平面図である。
図6】補助洗浄部の構成を示す平面図である。
図7】補助洗浄部の構成を示す平面図であり、基板洗浄ノズル及びアシストノズルから洗浄液が噴射された状態を示したものである。
図8】基板洗浄ノズルとアシストノズルからの洗浄液の噴射位置の一例を示す説明図である。
図9】基板洗浄ノズルとアシストノズルの位置関係を示す説明図である。
図10】基板洗浄ノズルからの液体噴出位置の一例を示す説明図である。
図11】補助洗浄部の側面図である。
図12】アシストノズルの配置の好ましい範囲を示す説明図である。
図13】基板研磨装置の構成を示す機能ブロック図である。
図14】基板研磨及び洗浄処理のフローチャートである。
図15】補助洗浄部の別の例の構成を示す平面図である。
図16図15の補助洗浄部における、基板洗浄ノズルとアシストノズルからの洗浄液の噴射位置の一例を示す説明図である。
図17図15の補助洗浄部における、基板洗浄ノズルとアシストノズルの位置関係を示す説明図である。
図18図16の補助洗浄部における、アシストノズルの配置の好ましい範囲を示す説明図である。
図19】補助洗浄部のさらに別の例における、基板洗浄ノズルとアシストノズルからの洗浄液の噴射位置の一例を示す説明図である。
図20図19の補助洗浄部における、基板洗浄ノズルとアシストノズルの位置関係を示す説明図である。
図21】基板洗浄ノズルとアシストノズルの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る基板洗浄装置を備えた基板研磨装置の構成を概略的に示したものである。基板研磨装置10は、矩形状のハウジング11を備えており、隔壁によって、ロード/アンロード部12、研磨部13及び洗浄部14に区画されている。また、基板研磨装置10は、各部の動作を制御する制御部15を備えている。
【0012】
ロード/アンロード部12は、多数の半導体ウエハ等の基板Wを収容する基板カセット20がセットされる複数のフロントロード部を備えている。ロード/アンロード部12には、基板カセット20の並びに沿って走行機構21が敷設されており、この走行機構21上に基板カセット20の配列方向に沿って移動可能な搬送ロボット22が設置されている。搬送ロボット22は、研磨前の基板Wを基板カセット20から受け取って研磨部13に向けて搬送し、研磨/洗浄処理済みの基板Wを洗浄部14から受け取る。
【0013】
研磨部13は、基板Wの研磨(平坦化)を行うための複数の研磨ユニット13A~13Dを備えている。これら第1研磨ユニット13A~第4研磨ユニット13Dは、基板研磨装置10の長手方向に沿って配列されている。研磨ユニットの構成の詳細については後述する。
【0014】
第1研磨ユニット13A及び第2研磨ユニット13Bに隣接して、第1リニアトランスポータ16が配置されている。この第1リニアトランスポータ16は、研磨ユニット13A、13Bが配列する方向に沿った4つの搬送位置(ロード/アンロード部12側から順に第1搬送位置A1~第4搬送位置A4)の間で、基板Wを搬送する。
【0015】
第3研磨ユニット13C及び第4研磨ユニット13Dに隣接して、第2リニアトランスポータ17が配置されている。この第2リニアトランスポータ17は、研磨ユニット13C、13Dが配列する方向に沿った3つの搬送位置(ロード/アンロード部12側から順に第5搬送位置A5~第7搬送位置A7)の間で、基板Wを搬送する。
【0016】
洗浄部14は、研磨後の基板Wを洗浄する第1洗浄ユニット23及び第2洗浄ユニット24と、洗浄後の基板Wを乾燥させる乾燥ユニット25が収容されている。第1洗浄ユニット23と第2洗浄ユニット24との間には、これらの間で基板Wの受け渡しを行う第1搬送ユニット26が配置されている。また、第2洗浄ユニット24と乾燥ユニット25との間には、これらの間で基板Wの受け渡しを行う第2搬送ユニット27が配置されている。
【0017】
第1洗浄ユニット23内には、複数(例えば2台)の一次洗浄モジュールが上下に配置されている。同様に、第2洗浄ユニット24内には、複数(例えば2台)の二次洗浄モジュールが上下に配置されている。一次洗浄モジュール及び二次洗浄モジュールは、洗浄液を用いて基板を洗浄する洗浄機であり、上下に配置することで、フットプリントを小さくすることができる。
【0018】
一次洗浄モジュール及び二次洗浄モジュールとして、ロールスポンジ型の洗浄機を使用することができる。一次洗浄モジュール及び二次洗浄モジュールは、同一のタイプの洗浄モジュールでもよく、または異なるタイプの洗浄モジュールでもよい。例えば、一次洗浄モジュールを一対のロールスポンジで基板の上下面をスクラブ洗浄するタイプの洗浄機とし、二次洗浄モジュールをペンシルスポンジ型洗浄機または2流体ジェットタイプの洗浄機とすることもできる。
【0019】
乾燥ユニット25内には、複数(例えば2台)の乾燥モジュールが上下に配置されており、回転する基板Wに向けて、図示しないノズルから気体を噴出することにより基板Wを乾燥させる。あるいは、基板Wを高速で回転させて遠心力によって基板Wを乾燥させてもよい。搬送ロボット22は、乾燥ユニット25から洗浄・乾燥処理済みの基板Wを取り出して基板カセット20に戻す。
【0020】
図2及び図3は、本実施形態に係る第1研磨ユニット13Aの概略構成を示したものである。第2研磨ユニット13B~第4研磨ユニット13Dは、第1研磨ユニット13Aと同一の構成を有しているので、以下では、第1研磨ユニット13Aについて説明する。
【0021】
第1研磨ユニット13Aは、研磨面を有する研磨パッド31が取付けられた研磨テーブル30と、基板Wを保持しつつこれを研磨テーブル30上の研磨パッド31に所定の圧力で押圧しながら研磨するためのトップリング32と、研磨パッド31に研磨液やドレッシング液(例えば、純水)を供給するための研磨液供給ノズル33と、研磨パッド31の研磨面のドレッシングを行うためのドレッサ34と、液体(例えば純水)と気体(例えば窒素ガス)の混合流体または液体(例えば純水)を霧状にして研磨面に噴射するアトマイザー35を備えている。トップリング32は、トップリングシャフト36を介して接続されたスイングアーム37により、回動可能とされている。
【0022】
研磨テーブル30の上に貼付された研磨パッド31は、基板Wを研磨する研磨面を構成する。なお、研磨パッド31に代えて固定砥粒を用いることもできる。トップリング32及び研磨テーブル30は、その軸心周りに(図3の矢印参照)回転するように構成されている。基板Wは、トップリング32の下面に真空吸着により保持される。研磨液供給ノズル33から研磨パッド31の上面(研磨面)に研磨液が供給され、基板Wがトップリング32により研磨パッド31に押圧されて研磨される。
【0023】
図4において、トップリング32は、トップリングシャフト36の下端にボールジョイントである自在継手(図示せず)を介して連結されている。トップリング32は、略円盤状のトップリング本体38と、トップリング本体38の下部に配置されたリテーナリング39と、基板Wに当接する円形のメンブレン(弾性パッド)40を備えている。トップリング本体38は、金属やセラミックス等の強度および剛性が高い材料から形成されている。また、リテーナリング39は、剛性の高い樹脂材またはセラミックス等から形成されている。
【0024】
メンブレン40は、トップリング本体38の下面に取付けられている。メンブレン40とトップリング本体38との間には、メンブレン40に形成された複数の隔壁40a~40dにより、複数の圧力室(エアバッグ)P1,P2,P3,P4が形成される。圧力室P1,P2,P3,P4には、それぞれ流体路G1,G2,G3,G4を介して、加圧空気等の加圧流体が供給され、あるいは真空引きがされるようになっている。中央の圧力室P1は円形であり、他の圧力室P2,P3,P4は環状であり、これら圧力室P1,P2,P3,P4は同心上に配列されている。
【0025】
圧力室P1,P2,P3,P4の内部圧力は、図示しない圧力調整部により互いに独立して変化させることが可能であり、これにより、基板Wの4つの領域、すなわち、中央部、内側中間部、外側中間部、および周縁部に対する押圧力を独立に調整することができる。
【0026】
研磨中の基板Wがトップリング32から飛び出すのを防止するために、トップリング32の下面に設けられたリテーナリング39により、基板Wの外周部を囲んだ状態で保持される。メンブレン40の圧力室P3を構成する部位には開口が形成されており、圧力室P3に真空を形成することにより、基板Wがトップリング32に吸着保持される。また、この圧力室P3に窒素ガス、乾燥空気、圧縮空気等を供給することにより、基板Wがトップリング32からリリースされる。
【0027】
リテーナリング39とトップリング本体38との間には、圧力室P5を形成する弾性バッグが配置されている。リテーナリング39は、トップリング本体38に対して相対的に上下動可能となっている。圧力室P5には、流体路G5が連通しており、加圧空気等の加圧流体が流体路G5を通じて圧力室P5に供給される。圧力室P5の内部圧力は、圧力調整部により調整可能とされており、基板Wに対する押圧力とは独立して、リテーナリング39の研磨パッド31に対する押圧力を調整することができる。
【0028】
基板は、第1研磨ユニット13A、第2研磨ユニット13B、第3研磨ユニット13C及び第4研磨ユニット13Dのいずれかで研磨されてもよく、またはこれらの研磨ユニット13A~13Dから予め選択された複数の研磨ユニットで連続的に研磨されてもよい。研磨ユニット13A~13Dのすべての研磨時間を平準化することで、スループットを向上させることができる。
【0029】
図1において、基板Wは、第1リニアトランスポータ16によって、研磨ユニット13A,13Bに搬送される。第1研磨ユニット13Aのトップリング32は、研磨テーブル30(図5では符号省略、研磨パッド31)の上方の研磨位置と、研磨テーブル30の側方の第2搬送位置A2との間を移動する。トップリング32への基板の受渡しは第2搬送位置A2で行われ、この第2搬送位置A2が受渡位置TP2(図5参照)となる。
【0030】
同様に、第2研磨ユニット13B(第3研磨ユニット13C、第4研磨ユニット13D)のトップリングは、研磨テーブル(研磨パッド)の上方の研磨位置と、研磨テーブルの側方の第3搬送位置A3(第3研磨ユニット13Cについては第6搬送位置A6。第4研磨ユニット13Dについては第7搬送位置A7)との間を移動し、トップリングへの基板の受渡しは、基板受渡位置としての第3搬送位置A3(第6搬送位置A6、第7搬送位置A7)で行われる。
【0031】
第1搬送位置A1には、搬送ロボット22から基板を受け取るためのリフタ43が配置されている。基板は、このリフタ43を介して搬送ロボット22から第1リニアトランスポータ16に渡される。また、第1リニアトランスポータ16、第2リニアトランスポータ17及び洗浄部14の間には、反転機能を有するスイングトランスポータ44が配置されており、第1リニアトランスポータ16から第2リニアトランスポータ17への基板の受渡しと、研磨部13から洗浄部14への基板搬送を行う。
【0032】
第1研磨ユニット13Aのトップリング32は、研磨テーブル30(図5では符号省略、研磨パッド31)の上方の研磨位置TP1と、研磨テーブル30の側方の基板受渡位置TP2(図1のA2)との間を移動するように構成されている。第1研磨ユニット13Aのトップリング32は、更に、上記研磨位置TP1と、基板受渡位置TP2(第2搬送位置A2)との間の洗浄位置TP3に停止するように構成されており、このトップリング32の洗浄位置TP3に対応する位置に補助洗浄部50(図6参照)が配置されている。
【0033】
図5は、第1研磨ユニット13Aの研磨テーブル30(図5では符号省略、研磨パッド31)、トップリング32及び補助洗浄部50の位置関係の概略を示したものである。トップリング32は、トップリングシャフト36を介して接続されたスイングアーム37により回動可能とされており、研磨テーブル31の上方にある研磨位置TP1、研磨テーブル30Aの側方の受渡位置TP2(第2搬送位置A2)、研磨位置TP1と受渡位置TP2との間の洗浄位置TP3との間を移動するように構成される。トップリング32の洗浄位置TP3に対応する位置に、補助洗浄部50が配置されている。
【0034】
上記のトップリング32及び補助洗浄部50の構成は、第2研磨ユニット13B~第4研磨ユニット13Dにおいても同様であり、詳細な説明は省略する。なお、補助洗浄部50を、第1研磨ユニット13A~第4研磨ユニット13Dの全てに設けても良く、あるいは、一部の研磨ユニットにおいて補助洗浄部50を省略しても良い。
【0035】
図6及び図7は、補助洗浄部50の構成を示した平面図である。補助洗浄部50は、複数(本実施例では5つ)の基板洗浄ノズル51~55、リテーナリング(RR)側面洗浄ノズル56、RR/メンブレン間洗浄ノズル57と、複数(本実施例では4つ)のアシストノズル61~64を備えている。補助洗浄部50は、洗浄位置TP3にある研磨済みの基板W及びこれ保持するトップリング32に対して洗浄処理を行う。これにより、研磨後の基板Wが洗浄部14に搬送される前に洗浄処理を行うことができ、基板表面に残存するパーティクルを効果的に除去することができる。
【0036】
基板洗浄ノズル51~55は、基板洗浄を行う噴射ユニットを構成し、例えば2流体ノズルであり、液とガスとを混合し、その混合流体(洗浄液)を基板の表面に吹き付ける洗浄機であり、微小な液滴と衝撃エネルギーで基板上の微小なパーティクルを除去することができる。基板洗浄ノズル51~55は、トップリング32が洗浄位置TP3にあるときに、トップリング32の下側で径方向に沿って直線状に並んで配置されている。基板洗浄ノズル51~55は、洗浄位置TP3で図7の矢印方向にトップリング32とともに回転する基板Wの表面に対して、基板Wの下側から上方向に洗浄液を噴射する。
【0037】
基板洗浄ノズル51~55は、液体(純水など)と気体の混合流体(2流体)を加圧噴射ししたもの、高速ジェット噴射したもの、超音波を印加したものから選択可能である。基板洗浄ノズル51~55に供給される液種としては、例えば、純水、酸性、アルカリ性の薬液や界面活性剤、静電気抑制するため微量の二酸化炭素を含む液体、N2ガス飽和水、ファインバブル含有水を用いることができる。
【0038】
図7の例では、第1基板洗浄ノズル51がトップリング32の中心(図8の点O)付近に、第5基板洗浄ノズル55がトップリング32の外周部付近に、それぞれ対応する位置に配置されている。図7に示すように、基板洗浄ノズル51~55のそれぞれから噴射される洗浄液の形状は、それぞれ細長い略楕円形状51a~55aとなっており、その長軸はトップリング32の径方向から若干傾いており、互いに重ならないようにされている。これにより、トップリング32が回転した場合に、洗浄液が基板Wの全面にわたって拡散され易くなる。
【0039】
2流体ノズルである基板洗浄ノズル51~55から基板Wに向けて噴出された洗浄液は、基板Wの表面に当たった後に、一部は自重で落下するが、それ以外の洗浄液は、トップリング32の回転方向に沿ってトップリング32(基板W)の外周部に向かう洗浄液の流れと、トップリング32の回転方向に逆らう方向の洗浄液の流れを形成する(図8の矢印参照)。このうち、トップリング32の回転方向に沿った流れは、トップリング32の回転による遠心力により速い流れとなり、パーティクルを含んだ洗浄液が基板Wの外周縁から外部に排出されやすくなる。このように、トップリング32の回転方向に沿う方向の洗浄液の流れを促進することがパーティクル除去の観点から望ましい。
【0040】
これに対し、トップリング32の回転方向に逆らう方向の洗浄液の流れは、相対的に遅い流れとなり、その後にトップリング32の回転に伴う遠心力により、基板Wの外周に向かう流れとなる。このため、トップリング32の回転方向に逆らう方向の洗浄液の流れは、基板W上での滞留時間が長く、洗浄液内のパーティクルが基板Wに再付着しやすくなる。このため、トップリング32の回転方向に逆らう方向の洗浄液の流れを抑制することが、パーティクル再付着抑制の観点から望ましい。
【0041】
そこで、本実施形態に係る基板洗浄装置では、図9に示すように、基板洗浄ノズル51~55による洗浄液の噴射角度が、トップリングの回転方向に向けて傾けられている。これにより、トップリングに対して下方から垂直に噴射する場合と比べ、トップリングの回転方向に沿った洗浄液の流れの量が増加しトップリングの回転に逆らった洗浄液の流れの量が減少するため、パーティクル除去の促進とパーティクルが基板Wに再付着するのを抑制することができる。
【0042】
ここで、図10(A)に示すように、2流体ノズルである基板洗浄ノズル51~55は、噴射される洗浄液51a~55aの長手方向が、洗浄位置にあるトップリング32(基板W)の径方向に関して、基板表面上でトップリング32(基板W)の回転方向(図10(A)の矢印の方向)に傾けられている。このとき、基板洗浄ノズルから噴射される洗浄液の下流側は基板径方向の外周側に向かって流れる。基板洗浄ノズルから噴射される洗浄液の下流側(径方向の外周側)はトップリング32の回転に沿って液の流れが速いため、パーティクルを含む洗浄液を効率よく外周へ排出することができる。また、基板洗浄ノズルから噴射される洗浄液の上流側は基板径方向の中心側に向かって流れる。基板洗浄ノズルから噴射される洗浄液の上流側(径方向の中心側)はトップリング32の回転に逆らい液の流れが遅くなるため、パーティクルを含む洗浄液の流れは基板洗浄ノズル上流側の狭い範囲に広がるにとどまり、基板中央部分に滞留する液量が減少するため、パーティクルの再付着を抑制することができる。
【0043】
これに対し、図10(B)に示すように、基板洗浄ノズルから噴射される洗浄液(図の斜線部分)の長手方向が、基板表面上でトップリング32(基板W)の径方向に対して回転方向と逆の方向に傾けられている場合には、基板径方向の外周側に向かう液の流れは基板洗浄ノズルから噴射される洗浄液の上流側で生じるため基板径方向の外周側に向かう液の流れが遅くなり、パーティクルを含む洗浄液の排出性が悪くなる。また、液の流れが速い基板洗浄ノズルから噴射される洗浄液の下流側では基板洗浄ノズルから噴射される洗浄液が基板径方向の中心側に向かって流れるため、パーティクルを含む洗浄液が基板の中央部分に滞留しやすくなりパーティクルが再付着しやすくなる。よって、図10(A)のように、基板洗浄ノズル51~55から噴射される洗浄液51a~55aの長手方向を定めることが好ましい。
【0044】
また、図10(A)に示すように、基板洗浄ノズル51~55による洗浄液の噴射位置は、互いに重複することなく、かつ、基板Wの径方向に関してオーバーラップすることが好ましく、これにより、トップリング32の回転に伴い、基板Wの全面に対して基板洗浄ノズル51~55による洗浄液が直接噴射されることになる。これに対し、図10(C)のように、基板Wの径方向に関してカバーされていない領域(隣接する基板洗浄ノズルの噴射エリアの隙間の領域)が存在すると、2流体ノズルによる噴射の効果が得られない領域が発生する。また、図10(D)のように、洗浄液の噴射エリアに重複する部分があると、当該重複する部分において洗浄液が衝突し、ノズルから基板Wに噴射される洗浄液(液滴)の速度が低下してしまい、洗浄効果が低下するおそれがある。
【0045】
図11は、補助洗浄部50の側面図であり、図面の簡略化のため、アシストノズル61~64は省略している。基板洗浄ノズル51~55は、洗浄位置TP3にあるトップリング32の外周方向に傾斜して配置されている。これにより、トップリング32の回転に伴い、基板洗浄ノズル51~55から噴射される洗浄液がトップリング32の外周部に向かって拡散されやすくなり、基板W及びトップリング32に付着したパーティクルを外部に排出しやすくなる。
【0046】
リテーナリング(RR)側面洗浄ノズル56は、洗浄位置TP3に位置するトップリング32の下方に配置されており、洗浄位置TP3でトップリング32が回転する状態で、リテーナリング39の側面及び底面に向けて、斜め上方向に洗浄液56aを噴射する。これにより、研磨処理後にリテーナリング39の側面に付着したパーティクルを除去することができる。
【0047】
また、RR/メンブレン間洗浄ノズル57は、洗浄位置TP3に位置するトップリング32の下方に配置されており、洗浄位置TP3でトップリング32が回転する状態で、リテーナリング39とメンブレン40の境界部分に向けて、鉛直上方向に洗浄液57aを噴射する。これにより、研磨処理後にリテーナリング39とメンブレン40の間の隙間S(図11参照)に付着したパーティクルを除去することができる。
【0048】
リテーナリング(RR)側面洗浄ノズル56及びRR/メンブレン間洗浄ノズル57からの洗浄液の噴射により、リテーナリング39及びメンブレン40に付着していたパーティクルが、トップリング32に保持される基板Wに向けて飛散されてしまうおそれがある。このため、リテーナリング(RR)側面洗浄ノズル56及びRR/メンブレン間洗浄ノズル57からの洗浄液の噴射停止タイミングは、基板洗浄ノズル51~55からの洗浄液の噴射停止タイミングと同時か、それより先になるように制御される。
【0049】
基板洗浄ノズル51~55より後にリテーナリング(RR)側面洗浄ノズル56及びRR/メンブレン間洗浄ノズル57の噴射を停止させた場合、基板Wにパーティクルが飛散する可能性がある。リテーナリング(RR)側面洗浄ノズル56及びRR/メンブレン間洗浄ノズル57からの噴射停止のタイミングを、基板洗浄ノズル51~55からの洗浄液の噴射停止タイミングより同時か先にすることで、基板Wにパーティクルが飛散したとしても、基板洗浄ノズル51~55からの洗浄液の噴射により除去することができる。
【0050】
リテーナリング(RR)側面洗浄ノズル56及びRR/メンブレン間洗浄ノズル57から噴射される洗浄液としては、例えば、純水、酸性、アルカリ性の薬液や界面活性剤、超音波を印加したもの、静電気抑制するため微量の二酸化炭素を含む液体(純水など)と気体の混合流体(2流体)を加圧噴射して発生する高速の液滴や霧、高速ジェット噴射する液を用いることができる。
【0051】
図6及び図7において、アシストノズル61~64は、基板洗浄をアシストする噴射ユニットを構成しており、洗浄液を基板の表面に吹き付ける1流体ノズルであり、トップリング32が洗浄位置TP3にあるときに、トップリング32の下側で、直線状に並んで配置されている。
【0052】
アシストノズル61~64は、スプレーノズル(例えば、扇形に広がる一流体ノズル)、液体(純水など)と気体の混合流体(2流体)を加圧噴射ししたもの、高速ジェット噴射したもの、超音波を印加したものから選択可能である。アシストノズル61~64に供給される液種としては、例えば、純水、酸性、アルカリ性の薬液や界面活性剤、静電気抑制するため微量の二酸化炭素を含む液体、N2ガス飽和水、ファインバブル含有水を用いることができる。
【0053】
アシストノズル61~64は、洗浄位置TP3で図7の矢印方向にトップリング32とともに回転する基板Wの表面に対して、上方向に略楕円形状の洗浄液(例えば純水)61a~64a(図7参照)を噴射する。アシストノズル61~64は、噴射される洗浄液61a~64aが互いに重なるように配置されており、これら全てのアシストノズル61~64から噴出される洗浄液61a~64aは、一体となって一つのライン状の洗浄液65(図8参照)となる。
【0054】
アシストノズル61~64から基板Wに噴射される洗浄液は、トップリング32が回転することで、遠心力により基板Wの外周に向かって移動する。本実施形態では、アシストノズル61~64による洗浄液の基板Wへの噴射位置は、トップリング32の回転方向に関して、基板洗浄ノズル51~55による洗浄液の噴射位置の下流側にある。(図8参照)。これにより、基板洗浄ノズル51~55から基板Wに噴射された洗浄液が、アシストノズル61~64からの洗浄液とともに、基板Wの外周部に向けて移動しやすくなり、パーティクルの排出性が向上する。
【0055】
また、アシストノズル61~64から噴出される洗浄液は、トップリング32の中心付近を含むライン状となっている。このため、トップリング32が回転することで、トップリング32に支持される基板Wの中心部を含む広い範囲にわたり液体を付着させることができ、基板Wの乾燥を効果的に防止することができる。
【0056】
図9に示すように、アシストノズル61~64は、基板洗浄ノズル51~55に向けて傾けられている。このため、アシストノズル61~64からの洗浄液が、基板洗浄ノズル51~55から基板Wに噴射された洗浄液と干渉しやすくなり、基板洗浄ノズル51~55から基板Wに付着した洗浄液を効率よく外部に移動させることができる。アシストノズル61~64の(鉛直方向に対する)噴射角度θ1は、0~15°とするのが好ましい。
【0057】
本実施形態では、アシストノズル61~64は、基板洗浄ノズル51~55に近接した位置に配置されているため、アシストノズルによる洗浄液の排出促進効果及びパーティクル再付着の抑制効果が高くなる。一方、アシストノズル61~64の位置が基板洗浄ノズル51~55から離れるほど、アシストノズルによる液流れ制御による効果は低くなるものの、液流れが遅くなって液量が減ることから、アシストノズルによって液を外周方向に流す確実性が上がるため、ある程度離れていてもアシストノズルによる洗浄液除去効果は認められる。一方、アシストノズル61~64による噴射位置が基板洗浄ノズル51~55の噴射位置と重複してしまうと、基板洗浄ノズル51~55による洗浄効果が阻害されるおそれがある。このため、図12に示すように、基板中心と基板洗浄ノズル55による洗浄液55aの噴射位置の中心を結んだ基準線から角度θ2の範囲内に、アシストノズルの洗浄液65の噴射位置がくるように、アシストノズルを配置する。当該角度θ2は、0°~180°の範囲内で定めるのが好ましいが、特に好ましくは0°~90°である。
【0058】
アシストノズル61~64からの洗浄液の噴射停止のタイミングは、基板洗浄ノズル51~55、リテーナリング(RR)側面洗浄ノズル56及びRR/メンブレン間洗浄ノズル57からの洗浄液の噴射停止後のタイミングとすることが好ましい。これにより、基板洗浄ノズル51~55、リテーナリング(RR)側面洗浄ノズル56及びRR/メンブレン間洗浄ノズル57により基板Wに付着した洗浄液を洗い流すことができる。
【0059】
ハウジング11の内部には、基板研磨装置10の各部の動作を制御する制御部15が配置されている。制御部15は、例えば汎用のコンピュータ装置であり、CPU、制御プログラムを記憶する記憶部(メモリ)70、表示部などを備えている。また、制御部15は、外部入力を受け入れる入力部を備えている。ここで、外部入力には、ユーザによる機械的な操作、並びに有線または無線による外部装置からの信号の入力が含まれ得る。
【0060】
制御部15は、記憶部(メモリ)70に記憶された制御プログラムを起動させることにより、基板研磨装置10の各機器の動きを制御する。基板研磨装置10の動作を制御するための制御プログラムは、予め制御部15を構成するコンピュータにインストールされていても良く、あるいは、DVD,BDやSSD等の記憶媒体に記憶されていても良く、さらには、インターネットを介して制御部15にインストールするようにしても良い。
【0061】
図13は、基板研磨装置10の制御部15の機能ブロック図の一例を示したものでる。制御部15は、記憶部70、研磨制御部71,終点判定部72、搬送制御部73、ノズル制御部74を備えている。研磨制御部71は、研磨テーブル30及びトップリング32の回転を制御するとともに、圧力室P1~P5の圧力を制御する。終点判定部72は、図示しない光学センサ等により、基板Wの研磨量が設定値に達したどうかを判定し、達した場合には基板研磨を終了する。搬送制御部73は、研磨ユニット13A~13Dにおける基板Wの搬送を含め、基板研磨装置10内での基板Wの搬送を制御する。
【0062】
ノズル制御部74は、アトマイザー35、基板洗浄ノズル51~55、RR側面洗浄ノズル56,RR/メンブレン間洗浄ノズル57、アシストノズル61~64に接続され、各ノズルからの洗浄液の噴射を制御する。
【0063】
ここで、洗浄位置においてトップリング32を回転させながら、補助洗浄部50を構成する各種ノズルから洗浄液等を噴射させた場合に、基板W、トップリング32及びリテーナリング39に付着したパーティクルを含む液滴がトップリング32の外周から飛散する。トップリング32から飛散された液滴が研磨テーブル30に達してしまうと、研磨パッド31が汚染されてしまい、その結果、次の基板Wを研磨する際にスクラッチが発生するおそれがある。
【0064】
このため、補助洗浄部50を構成する各種ノズルからの洗浄液等が、受渡位置TP2方向に流れるように、各種ノズルの位置及びトップリングの回転方向が設定されている。図7の例では、補助洗浄部50がトップリング32の中心に対して左側に配置されている場合には、トップリング32を時計回り方向に回転するように制御する。一方、補助洗浄部50がトップリング32の中心に対して右側に配置されている場合には、トップリング32を反時計回り方向に回転するように制御する。これにより、トップリング32の回転に伴い、補助洗浄部50を構成する各種ノズルからの洗浄液及びリンス液が受渡位置方向に向けて流れることになるため、トップリング32から飛散された液滴が研磨テーブル31に達するのを防止できる。
【0065】
また、基板Wへの研磨処理後に、アトマイザー35から研磨テーブル30と一体になって回転を継続している研磨パッド31に対して洗浄液を噴射しつつ、図示しない昇降・揺動機構により研磨パッド31に接触かつその略半径方向に揺動されるドレッサ34により研磨パッド31へのドレッシング(目立て)と洗浄処理が行われる。制御部15は、アトマイザー35からの洗浄液の噴射の終了タイミング(研磨パッド31の洗浄の終了タイミング)を、補助洗浄部50を構成する各種ノズルからの洗浄液等の噴射の終了タイミングと同時または後になるように制御する。
【0066】
アトマイザー35からの洗浄液の噴射終了より後に、補助洗浄部50のノズルからの洗浄液等の噴射を終了させた場合、トップリング32から研磨テーブル30に液滴が飛散されてしまう可能性がある。しかし、アトマイザー35及び補助洗浄部50からの噴射を同時に停止させることにより、研磨テーブル30にパーティクルが飛散するおそれを減らすことができる。また、補助洗浄部50のノズルからの洗浄液等の噴射終了より後に、アトマイザー35からの洗浄液の噴射を終了させることにより、補助洗浄部50による洗浄処理によりトップリング32から研磨テーブル30に液滴が飛散されたとしても、アトマイザー35からの洗浄液の噴射によってこれを除去することができる。
【0067】
以下、上記構成による基板研磨装置10における基板研磨及び研磨後洗浄処理について、図14のフローチャートを用いて説明する。研磨ユニット13Aに基板Wが搬送されると、トップリング32は当該基板Wを真空吸着によりリテーナリング39に囲まれる位置に保持して、これを受渡位置TP2から研磨位置TP1へ搬送する(ステップS10)。研磨ユニット13Aは、研磨位置TP1に達した基板Wを研磨パッド31に押圧することで、基板Wに対して研磨処理を行う(ステップS11)。基板研磨中に当該基板Wの膜厚の測定が行われ、所定の膜厚になったかどうか(研磨終点に達したかどうか)を判定し(ステップS12)、研磨終点に達した場合には基板研磨を終了させる(ステップS13)。
【0068】
その後、トップリング32を洗浄位置TP3へ移動する(ステップS14)。トップリング32が洗浄位置TP3に達すると、トップリング32を回転させながら補助洗浄部50を構成する各種ノズルを駆動して、基板W、トップリング32及びリテーナリング39の洗浄処理を行う(ステップS15)。これにより、基板研磨により基板W、トップリング32及びリテーナリング39に付着したパーティクルを、トップリング32の外部に排出する。
【0069】
ここで、2流体ノズルである基板洗浄ノズル51~55は、噴射される洗浄液51a~55aの長手方向が、基板Wの回転方向に傾けられている。このとき、基板洗浄ノズルから噴射される洗浄液51a~55aの大部分は下流側(径方向の外周方向)に向かって流れ、洗浄液51a~55aの一部は上流側(径方向の中心方向)に向かって流れる。洗浄液51a~55aの下流側(径方向の外周方向)に向かう液の流れは速いため、パーティクルを含む洗浄液を効率よく外周へ排出することができる。また、基板洗浄ノズルから噴射される洗浄液51a~55aの上流側(径方向の中心側)に向かう液の流れは下流側の液流れと比較して遅いため、パーティクルを含む洗浄液が基板の中央部分に滞留することでパーティクルが再付着するおそれがある。
【0070】
基板洗浄ノズル51~55は、基板Wの回転方向の下流側に傾けられているため、トップリングの回転方向に沿った洗浄液51a~55aの流れの量が増加し、回転方向に逆らう洗浄液の流れの量が低減するため、パーティクルが基板Wに滞留して基板Wに再付着するのを抑制することができる。
【0071】
さらに、基板Wの回転方向に関して、アシストノズル61~64が基板洗浄ノズル51~55の下流側に配置されており、かつ、基板洗浄ノズル51~55の方に傾けられている。アシストノズル61~64から噴射される洗浄液により、基板洗浄ノズル51~55による洗浄液が基板Wの外周部に向かって流れやすくなり、よってパーティクルを含む洗浄液を効率良く基板Wの外部に排出することができる。
【0072】
上記のステップS14の開始と同時に、ステップ16にて、アトマイザー35を駆動して洗浄液を研磨パッド30に噴射するとともに、ドレッサ34を駆動して研磨パッド31のドレッシングが開始される。これにより、トップリング32に保持された基板Wへの洗浄処理と研磨パッド31のドレッシング処理が並行して行われる。研磨パッド31のドレッシング処理及び洗浄処理は、補助洗浄部50によるトップリング32及び基板Wの研磨後洗浄処理と並列して行われる。
【0073】
一定時間が経過した後、RR側面洗浄ノズル56とRR/メンブレン間洗浄ノズル57を停止し、リテーナリング39及びメンブレン40に対する洗浄処理を終了する(ステップS17)。その後、基板洗浄ノズル51~55及びアシストノズル61~64を停止する(ステップS18)。これにより、基板Wへの研磨後洗浄処理が終了する。
【0074】
その後、アトマイザー35による洗浄液の噴射及び研磨パッド30のドレッシング処理を終了させる(ステップS19)。これにより、研磨後洗浄処理によりトップリング32からパーティクルを含む液滴が研磨パッド30に残存するおそれを無くすことができる。そして、トップリング32を受渡位置TP2に移動して(ステップS20)、研磨終了後の基板Wを洗浄部14に向けて搬送する。
【0075】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、アシストノズルが基板洗浄ノズルに対して、基板Wの回転方向の上流側に配置されている点で、上記の第1の実施形態と相違する。なお、以下の説明では、上述した第1の実施形態に係る基板研磨装置と同じ構成部材については、同じ符番を付して、詳細な説明は省略する。
【0076】
図15図17において、基板洗浄ノズル51~55は、トップリングの回転方向に逆らう方向に傾けられており、基板洗浄ノズル51~55からの洗浄液51a~55aは、トップリングの回転方向に逆らう方向に基板Wへ噴射される。この場合、トップリングに対して下方から垂直に噴射する場合と比べ、トップリングの回転方向に沿った流れの量が減少し、トップリングの回転方向に逆らう流れの量が増加する。
【0077】
この場合においては、アシストノズル81~84を、基板洗浄ノズル51~55に対して基板Wの回転方向の上流側に配置する。アシストノズル81~84から噴出される洗浄液85が壁となり、基板洗浄ノズル51~55より噴射された洗浄液51a~55aの流れを基板Wの外部へ向けることができる。これにより、洗浄液51a~55aが外部に向かって流れるようになり、パーティクルを基板Wに再付着するのを抑制することができる。
【0078】
また、図17に示すように、アシストノズル81~84は、基板洗浄ノズル51~55に向けて傾けられており、アシストノズル81~84からの洗浄液85が、基板洗浄ノズル51~55から基板Wに噴射された洗浄液と干渉しやすくなる。これにより、基板洗浄ノズル51~55から基板Wに付着した洗浄液を効率よく外部に移動させることができる。なお、アシストノズル81~84の(鉛直方向に対する)噴射角度θ3は、0°~15°とするのが好ましい。
【0079】
この第2の実施形態では、アシストノズル81~84は、基板洗浄ノズル51~55に近接した位置に配置されており、アシストノズルによる洗浄液の排出効果が高くなる。アシストノズル81~84の位置が基板洗浄ノズル51~55から離れるほど、アシストノズルによる洗浄液の排出効果は低くなるものの、トップリングに保持された基板が回転していることから、ある程度離れていてもアシストノズルによる洗浄液除去効果は認められる。一方、アシストノズル81~84による噴射位置が基板洗浄ノズル51~55の噴射位置と重複してしまうと、基板洗浄ノズル51~55による2流体ジェットの噴射効果が阻害されてしまい、洗浄効果が低下するおそれがある。また、アシストノズル81~84による噴射位置が基板洗浄ノズル51~55の噴射位置と近接すると、基板洗浄ノズル噴射位置における液膜の厚さが厚くなり、それによって基板洗浄ノズルが基板表面に与える物理力が低下し、基板洗浄ノズルによるパーティクルの脱離が阻害される懸念がある。このため、図18に示すように、基板中心と基板洗浄ノズル55による洗浄液55aの噴射位置の中心を結んだ基準線から角度θ4の範囲内に、アシストノズルの洗浄液65の噴射位置がくるように、アシストノズルを配置する。当該角度θ4は、0°~180°とすることが好ましいが、特に好ましくは0°~60である。
【0080】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、アシストノズルが基板洗浄ノズルに対して、基板Wの回転方向の上流側及び下流側の両方に配置されている点で、上記の第1の実施形態と相違する。なお、以下の説明では、上述した第1の実施形態に係る基板研磨装置と同じ構成部材については、同じ符番を付して、詳細な説明は省略する。
【0081】
図19及び図20において、基板洗浄ノズル51~55からの基板Wへの洗浄液の噴射角度は、鉛直方向(基板Wの面に対して垂直な方向)とされている。この場合、トップリングの回転方向に沿った流れの量は、洗浄液の噴射がトップリング32の回転方向に沿って傾いている場合より少ないが、洗浄液の噴射がトップリング32の回転方向に逆らっている場合よりも多い。また、トップリング32の回転方向に逆らう向きの洗浄液の流れの量は、洗浄液の噴射がトップリング32の回転方向に沿って傾いている場合より多いが、洗浄液の噴射がトップリングの回転方向に逆らっている場合よりも少ない。
【0082】
この場合において、第1のアシストノズルを61~64、基板洗浄ノズル51~55に対して基板Wの回転方向の下流側に配置することで、第1の実施形態で述べたのと同様に、基板Wの回転方向に沿った流れの洗浄液を効率良く外部に排出することができる。また、第2のアシストノズル81~84を、基板洗浄ノズル51~55に対して基板Wの回転方向の上流側に配置することで、基板洗浄ノズル51~55より噴出され基板Wの中央に向かう流れを基板Wの外部へ向かわせることができ、これにより、パーティクルが基板Wに再付着するのを抑制することができる。
【0083】
さらに、図20に示すように、(下流側の)第1のアシストノズル61~64及び(上流側の)第2のアシストノズル81~84は、基板洗浄ノズル51~55に向けて傾けられている。このため、アシストノズル61~64、81~84からの洗浄液が、基板洗浄ノズル51~55から基板Wに噴射された洗浄液と干渉しやすくなる。これにより、基板洗浄ノズル51~55から基板Wに付着した洗浄液を効率よく外部に移動させることができる。第1のアシストノズル61~64の(鉛直方向に対する)傾斜角度θ1は、及び、第2のアシストノズル81~84の(鉛直方向に対する)傾斜角度θ3は、それぞれ0°~15°とするのが好ましい。なお、両者の傾斜角度θ1及びθ3は同じであっても良く、異なっていても良い。
【0084】
(変形例)
上記実施形態では、5つの基板洗浄ノズル及び4つのアシストノズルを設けた場合を例にして説明したが、本発明はこれに限られることはなく、アシストノズル及び基板洗浄ノズルの数は適宜変更することができる。ただし、基板洗浄ノズルから噴出される洗浄液は、基板Wの径方向の全てにわたっていることが好ましい。また、基板Wの中央付近に滞留する洗浄液を外周部に排出させるため、アシストノズルは基板Wの中央部付近(中心から50mmの範囲内)に配置することが好ましい。
【0085】
基板洗浄ノズル及びアシストノズルのそれぞれにバルブを設置して、アシストノズルと基板洗浄ノズルの駆動タイミングを独立して制御するようにしても良い。図21は、洗浄位置に達した基板Wに対し、アシストノズルを先に駆動し、Delay時間(例えば1秒以内の所定時間)が経過した後に基板洗浄ノズルを駆動することで、基板洗浄ノズルによる研磨後洗浄の前に基板Wが乾燥するのを防止する。また、基板洗浄ノズル及びアシストノズルのそれぞれに流量計を設置して、これらのバルブからの洗浄液の噴出量を独立して制御しても良い。
【0086】
上記実施形態では、基板Wの面に平行及び垂直な方向でのアシストノズルの設置角度は固定されているが、これらの一方又は両方の設置角度を調整可能に構成しても良い。
【0087】
なお、基板Wが洗浄位置に位置していない処理待機時(基板Wに対する研磨後洗浄処理が行われていない状態)に、補助洗浄部50を構成する各ノズルから間欠的に超純水を微量噴出させることが好ましく、これによりバクテリアなどの発生を抑制することができる。
【0088】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0089】
10 基板処理装置
13 研磨部
13A~13D 研磨ユニット
30 研磨テーブル
31 研磨パッド
32 トップリング
50 補助洗浄部
51~55 基板洗浄ノズル
56 RR側面洗浄ノズル
57 RR/メンブレン間洗浄ノズル
61~64,81~84 アシストノズル
W 基板
TP1 研磨位置
TP2 受渡位置
TP3 洗浄位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21