(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175431
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】回転電機のロータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/2783 20220101AFI20241211BHJP
【FI】
H02K1/2783
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093221
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 芳永
(72)【発明者】
【氏名】相馬 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】八釼 学
(72)【発明者】
【氏名】大矢 聡義
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 一
(72)【発明者】
【氏名】林 翔吾
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CB02
(57)【要約】
【課題】永久磁石の磁束を有効に活用することにより、トルク密度を向上させることができ、エネルギーの効率化に寄与できる回転電機のロータを提供することを目的とする。
【解決手段】回転電機のロータ101において、永久磁石6は、ロータコア5のd軸方向に配向されたd軸配向磁石9と、d軸配向磁石9と周方向に隣接して配置され、d軸及び周方向に対して傾斜した方向に配向された斜め配向磁石11と、を備え、d軸配向磁石9のロータコア5とは反対側の端部9aの位置は、斜め配向磁石11のロータコア5とは反対側の端部11aの位置よりもロータコア5側に位置されており、d軸配向磁石9の外側端部9aに、軟磁性体7が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアと、
前記ロータコアの周面に配置された永久磁石と、
前記永久磁石の前記ロータコアとは径方向の反対側の端部に設けられ、前記永久磁石の飽和磁束密度よりも大きい飽和磁束密度を有する軟磁性体と、
を備え、
前記永久磁石は、
前記ロータコアの磁極中心と前記ロータコアの回転軸線とを通るd軸上に配置され、前記d軸方向に配向されたd軸配向磁石と、
前記d軸配向磁石と周方向に隣接して配置され、前記d軸及び周方向に対して傾斜した方向に配向された斜め配向磁石と、
を備え、
前記d軸配向磁石の前記ロータコアとは反対側の端部の位置は、前記斜め配向磁石の前記ロータコアとは反対側の端部の位置よりも前記ロータコア側に位置されており、
前記d軸配向磁石の前記端部に、前記軟磁性体が設けられている、
ことを特徴とする回転電機のロータ。
【請求項2】
前記永久磁石は、周方向に隣り合う磁極の間の極境界と前記回転軸線とを通るq軸と直交するように周方向に配向された周方向配向磁石を備え、
前記周方向配向磁石は、前記q軸と重なる箇所に配置されており、
前記d軸配向磁石と前記周方向配向磁石との間に、前記斜め配向磁石が配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機のロータ。
【請求項3】
前記斜め配向磁石は、周方向に並ぶ複数の分割磁石を有し、
各前記分割磁石の配向は、前記d軸に向かうに従って徐々に前記d軸に沿うように変化する、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機のロータ。
【請求項4】
周方向に隣り合う磁極の間の極境界と前記回転軸線とを通るq軸と重なる箇所において、少なくとも1つの前記永久磁石と前記ロータコアとの間に、磁束を通しにくいフラックスバリアを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機のロータ。
【請求項5】
前記軟磁性体は、前記ロータコアの径方向において、前記ロータコアに向かうに従って、前記ロータコアの周方向の幅が小さくなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機のロータ。
【請求項6】
前記フラックスバリアの前記永久磁石側の側面は、前記q軸上で凹となるように凹凸形状で形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の回転電機のロータ。
【請求項7】
前記ロータコアの前記永久磁石に接する周面は、軟磁性材で構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機のロータ。
【請求項8】
前記軟磁性体と前記フラックスバリアとの両方に接する前記永久磁石は、前記軟磁性体と前記フラックスバリアとの間の厚さが一定である、
ことを特徴とする請求項4に記載の回転電機のロータ。
【請求項9】
前記フラックスバリアは、前記ロータコアと前記永久磁石とにより取り囲まれて形成された空隙と前記空隙に充填された接着剤と、を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の回転電機のロータ。
【請求項10】
前記フラックスバリアは、前記空隙に収納された非磁性体を含み、
前記接着剤は、前記空隙と前記非磁性体との間に充填されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の回転電機のロータ。
【請求項11】
前記永久磁石の前記ロータコアと反対側の周面を覆うリング部材を設け、前記リング部材によって前記永久磁石を固定した、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のロータに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石を有するロータを備えた回転電機は、コイルが巻回されたステータに給電を行うと、ステータに鎖交磁束が形成される。この鎖交磁束と永久磁石との間で、磁気的な吸引力や反発力が生じ、ロータが継続的に回転される。ロータのトルクを増大させるためには、各磁極の周方向中央(各磁極の磁束の方向、以下、d軸と称する)に磁束を集中させることが効果的である。この磁束を集中させることを目的として、例えば複数の永久磁石の配列構造をハルバッハ配列構造とする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものは、例えばバックヨークとなるロータコアの主面と直交する方向に磁化され、磁化方向が交互となるように配列される複数の主磁極永久磁石と、主磁極永久磁石の磁化方向と異なる方向に磁化され、磁化方向が交互となるように配列されるとともに、主磁極永久磁石の配列方向と同方向に、主磁極永久磁石と互い違いに設けられる複数の副磁極永久磁石と、副磁極永久磁石と隣接するほかの副磁極永久磁石との間に軟磁性材料の磁性体と、主磁極永久磁石と他の主磁極永久磁石との間に設けられる非磁性領域である非磁性層と、を備える。ここで、副磁極永久磁石は、非磁性層よりも長く、副磁極永久磁石の両端は主磁極永久磁石に接している。磁性体は、主磁極永久磁石側の2つ角についてC面取りされている。このように構成することで、d軸に磁束を集中させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、主磁極永久磁石と副磁極永久磁石とが接触する構成は、接触部において、磁束が反発してしまう。このため、トルク密度が低下してしまうという課題があった。
磁性体の主磁極永久磁石側の2つ角についてC面取りをする構成は、磁性体の下部に空隙を設けることができ、C面取りをしない構成の場合に磁性体の角部で発生していた磁束の逆流による漏れ磁束を低減させることができるという点では優れている。しかしながら、磁性体の下部に空隙を設けてしまうと、トルク密度を大幅に減少させてしまうという課題があった。この結果、効率的にエネルギーを利用できない可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、永久磁石の磁束を有効に活用することにより、トルク密度を向上させることができ、エネルギーの効率化に寄与できる回転電機のロータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る回転電機(例えば、実施形態の回転電機100)のロータ(例えば、実施形態のロータ101)は、ロータコア(例えば、実施形態のロータコア5)と、前記ロータコアの周面に配置された永久磁石(例えば、実施形態の永久磁石6)と、前記永久磁石の前記ロータコアとは径方向の反対側の端部(例えば、実施形態の第1磁石9の外側端部9a)に設けられ、前記永久磁石の飽和磁束密度よりも大きい飽和磁束密度を有する軟磁性体(例えば、実施形態の軟磁性体7)と、を備え、前記永久磁石は、前記ロータコアの磁極中心と前記ロータコアの回転軸線(例えば、実施形態の軸線C)とを通るd軸上に配置され、前記d軸方向に配向されたd軸配向磁石(例えば、実施形態の第1磁石9)と、前記d軸配向磁石と周方向に隣接して配置され、前記d軸及び前記周方向に対して傾斜した方向に配向された斜め配向磁石(例えば、実施形態の第3磁石11)と、を備え、前記d軸配向磁石の前記ロータコアとは反対側の端部の位置は、前記斜め配向磁石の前記ロータコアとは反対側の端部の位置よりも前記ロータコア側に位置されており、前記d軸配向磁石の前記端部に、前記軟磁性体が設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
このように構成することで、d軸上の軟磁性体に永久磁石の磁束を集中させ、ロータのトルク密度を向上させることができる。延いては、エネルギーの効率化に寄与できる。
【0009】
(2)上記構成において、前記永久磁石は、周方向に隣り合う磁極の間の極境界と前記回転軸線とを通るq軸と直交する周方向に配向された周方向配向磁石(例えば、実施形態の第2磁石10)を備え、前記周方向配向磁石は、前記q軸と重なる箇所に配置されており、前記d軸配向磁石と前記周方向配向磁石との間に、前記斜め配向磁石が配置されてもよい。
【0010】
このように構成することで、d軸から隣接する別のd軸の間の永久磁石の配向を滑らかに変化させることができる。永久磁石の配向が滑らかに変化するので、永久磁石の配向が急激に変化する場合と比較してロータのトルク密度を向上させることができる。
【0011】
(3)上記構成において、前記斜め配向磁石は、周方向に並ぶ複数の分割磁石(例えば、実施形態の第1分割磁石13、第2分割磁石14)を有し、各前記分割磁石の配向は、前記d軸に向かうに従って徐々に前記d軸に沿うように変化してもよい。
【0012】
このように構成することで、永久磁石の配向を、q軸からd軸に向かうに従って、徐々にd軸方向に沿うように変化させることができる。永久磁石の配向が滑らかに変化するので、永久磁石の配向が急激に変化する場合と比較してロータのトルク密度を向上させることができる。
【0013】
(4)上記構成において、周方向に隣り合う磁極の間の極境界と前記回転軸線とを通るq軸と重なる箇所において、少なくとも1つの前記永久磁石と前記ロータコアとの間に、磁束を通しにくいフラックスバリア(例えば、実施形態のフラックスバリア12)を備えてもよい。
【0014】
フラックスバリアとして例えば空隙や樹脂を設けることにより、ロータを軽量化できる。永久磁石のロータコア側の磁束は、ロータのトルクに寄与しにくい。このような永久磁石とロータコアとの間にフラックスバリアを設けるので、ロータを軽量化しつつトルク密度を向上させることができる。
【0015】
(5)上記構成において、前記軟磁性体は、前記ロータコアの径方向において、前記ロータコアに向かうに従って、前記ロータコアの周方向の幅が小さくなってもよい。
【0016】
このように構成することで、永久磁石の磁束をさらにd軸上に集中させることができる。このため、d軸上での磁束密度をより大きくでき、ロータのトルク密度を向上させることができる。
【0017】
(6)上記構成において、前記フラックスバリアの前記永久磁石側の側面(例えば、実施形態のフラックスバリア12の周面12a)は、前記q軸上で凹となるように凹凸形状で形成されてもよい。
【0018】
このように構成することで、q軸を挟んで周方向の両側に配置された斜め配向磁石間の磁路のうち、ロータコア側の磁路を確保できる。このため、斜め配向磁石の磁束をできる限り有効活用できる。
【0019】
(7)上記構成において、前記ロータコアの前記永久磁石に接する周面(例えば、実施形態のロータコア5の外周面5a)は、軟磁性材(例えば、実施形態の軟磁性材5b)で構成されてもよい。
【0020】
このように構成することで、軟磁性材によりロータコアの周面に磁路を形成することができる。このため、ロータの有効磁束を増加させることができ、ロータのトルクを増加させることができる。
【0021】
(8)上記構成において、前記軟磁性体と前記フラックスバリアとの両方に接する前記永久磁石は、前記軟磁性体と前記フラックスバリアとの間の厚さ(例えば、第5変形例の軟磁性体-フラックスバリア間厚さL1)が一定であってもよい。
【0022】
このように構成することで、軟磁性体とフラックスバリアとの間において、永久磁石自身の磁路の幅を一定に保つことができる。換言すれば、軟磁性体とフラックスバリアとの間において、永久磁石自身の磁路の幅が局所的に狭くなってしまうことを防止できる。このため、永久磁石の減磁耐性及びトルク密度を向上させることができる。
【0023】
(9)上記構成において、前記フラックスバリアは、前記ロータコアと前記永久磁石とにより取り囲まれて形成された空隙と、前記空隙に充填された接着剤(例えば、第6変形例の接着剤22)と、を含んでもよい。
【0024】
q軸上の永久磁石は、ロータコアへの磁気吸引力が弱い。そこで、接着剤を用いることにより、q軸上の永久磁石におけるロータコアへの固着力を高めることができる。
【0025】
(10)上記構成において、前記フラックスバリアは、前記空隙に収納された非磁性体(例えば、第7変形例の非磁性体23)を含み、前記接着剤は、前記空隙と前記非磁性体との間に充填されてもよい。
【0026】
このように構成することで、空隙内に非磁性体を設けることにより、永久磁石全体の剛性を高めることができる。
【0027】
(11)上記構成において、前記永久磁石の前記ロータコアと反対側の周面を覆うリング部材(例えば、第8変形例のリング部材24)を設け、前記リング部材によって前記永久磁石を固定してもよい。
【0028】
このように構成することで、永久磁石に作用する遠心力をリング部材で受けることができる。このため、ロータコアに対する永久磁石の固着力を高めることができ、ロータの高速回転化も可能になる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、永久磁石の磁束を有効に活用することにより、トルク密度を向上させることができる。延いては、エネルギーの効率化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係る回転電機のロータの断面図。
【
図6】本実施形態及び第3変形例に係るロータを示す図。(a)永久磁石の磁束密度の変化を示すグラフ、(b)ロータの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0032】
<回転電機>
図1は、本実施形態に係る回転電機100の断面図である。
図2は、
図1のII部拡大図である。
図1に示すように、回転電機100は、円筒状のステータ103と、ステータ103に対して回転自在に設けられたロータ101と、を備える。
以下の説明では、ロータ101の回転軸線C(以下、単に軸線Cとする)と平行な方向を単に軸方向という。ロータ101の回転方向を周方向という。軸方向及び周方向に直交する方向を径方向という。
【0033】
<ステータ>
ステータ103は、円筒状のステータコア1と、ステータコア1に巻回されたコイル2と、を備える。
ステータコア1は、例えば複数の電磁鋼板を積層して形成される。ステータコア1は、円筒状のバックヨーク25と、バックヨーク25の内周面25aから径方向内側に向かって突出する複数のティース3と、を有する。各ティース3は、周方向に等間隔で配置されている。各ティース3間には、スロット4が形成されている。各スロット4にコイル2を挿通し、各ティース3にコイル2が巻回される。
【0034】
<ロータ>
ロータ101は、ステータ103の径方向内側に配置されている。すなわち、回転電機100は、いわゆるインナーロータ型の回転電機である。ロータ101は、シャフト102と、シャフト102の外周面に固定された円柱状のロータコア5と、ロータコア5の外周面5aに設けられた永久磁石6と、を備える。
シャフト102の中心軸線は軸線Cと一致しており、この軸線C回りに回転する。
【0035】
ロータコア5の径方向中央には、軸方向に貫通する貫通孔8が形成されている。この貫通孔8にシャフト102が挿入、又は圧入されることにより、シャフト102の外周面にロータコア5が固定される。ロータコア5の外周面5aには、軟磁性材5bが設けられている。軟磁性材5bは、ロータコア5の外周面5aの全体を被覆している。軟磁性材5bの外周面に、永久磁石6が設けられている。
【0036】
永久磁石6は、周方向に複数の磁極が設定されている。これは、ロータコア5の外周面5aに複数の磁極が設定されていることと同じある。各磁極は、磁極の向きが周方向に交互になっている。
以下の説明では、各磁極の磁極中心と軸線Cとを通る線をd軸と定義する。周方向に隣り合う磁極の間の極境界と軸線Cとを通る線をq軸と定義する。
【0037】
<永久磁石>
図2に示すように、永久磁石6のうち、1つの磁極は、d軸上に配置された第1磁石9と、q軸上に配置された第2磁石10と、第1磁石9と第2磁石10との間に配置された第3磁石11と、d軸上で、かつ第1磁石9の径方向外側に配置された軟磁性体7と、を備える。永久磁石6は、q軸と重なる箇所において、ロータコア5との間にフラックスバリア12を形成する。
【0038】
<第1磁石>
第1磁石9は、d軸方向に配向されている。より具体的には、N極の第1磁石9は径方向外側に向かって配向されている。S極の第1磁石9は、径方向内側に向かって配向されている。図中の永久磁石6に示されている矢印は、磁石の配向を示している。
第1磁石9は、軸線C方向から見て、周方向に長い長方形状の第1磁石土台部17と、第1磁石土台部17から径方向外側に向かうに従って周方向の幅が小さくなる台形状の第1磁石本体部18と、が一体形成されている。
第1磁石9の径方向の外側端部9aは、第2磁石10の径方向の外側端部10a及び第3磁石11の径方向の外側端部11aよりも径方向内側に位置する。第1磁石本体部18における周方向の側面18bは、d軸に向かって凸となるよう僅かに湾曲している。
【0039】
<第2磁石>
第2磁石10は、q軸と直交する周方向に配向されている。第2磁石10は、軸線C方向から見て、径方向に長い長方形状の第2磁石本体部15と、第2磁石本体部15の径方向内側に配置される第2磁石内側端部16と、が一体形成されている。第2磁石本体部15の外側端部15aは、軸線Cを中心とする円に沿うように湾曲形成されている。第2磁石内側端部16は、径方向内側に向かうに従って先細るように、軸線C方向からみて三角形状に形成されている。第2磁石内側端部16の先端は、q軸上に位置している。
【0040】
<第3磁石>
第3磁石11は、d軸及び周方向に対して傾斜した方向に配向されている。第3磁石11の周方向におけるq軸側側面11bは、第2磁石10の側面10bと接している。第3磁石11のq軸側側面11bは、第2磁石10の側面10bに沿うように形成されている。第3磁石11の周方向におけるd軸側側面11cは、第1磁石本体部18の側面18bと接している。第3磁石11のd軸側側面11cは、第1磁石本体部18の側面18bに沿うように形成されている。第3磁石の径方向内側の内側面11dは、第1磁石本体部18の径方向内側の角部18aと、第2磁石本体部15の径方向内側の角部15bと、を通る平面上に位置する。
【0041】
第3磁石11の外側端部11aは、軸線Cを中心とする円に沿うように湾曲形成されている。第3磁石11の外側端部11aは、第2磁石本体部15の外側端部15aと同一円上に位置している。
第3磁石11は、第3磁石11を周方向に2分割されている。すなわち、第3磁石11は、第2磁石10側に位置する第1分割磁石13と、第1磁石9側に位置する第2分割磁石14と、を備える。
【0042】
<第1分割磁石及び第2分割磁石>
第1分割磁石13と第2分割磁石14との第1分割面19は、第1磁石本体部18の側面18bと、第2磁石10の側面10bとの中央に位置している。
第2分割磁石14の第1磁石9側のd軸側側面11cのうち、径方向外側の一部は、第1磁石9の外側端部9aよりも径方向外側に位置している(以下、この箇所のd軸側側面11cを、外部側面14aという)。外部側面14aは、径方向外側に向かうに従って、d軸から離間するように傾斜形成されている。
【0043】
第1分割磁石13及び第2分割磁石14の磁化方向は、それぞれq軸からd軸へ向かうに従って徐々にd軸に沿うように変化する。このとき、第1分割磁石13の磁化方向のd軸に対する傾きは、第2分割磁石14の磁化方向のd軸に対する傾きよりも大きい。
このような第1磁石9、第2磁石10、及び第3磁石11は、軸線C方向からみてd軸を中心に線対称で、かつq軸を中心に線対称に形成されている。すなわち、永久磁石6の外周面には、第1磁石9の外側端部9aと、この第1磁石9の周方向両側に配置された第2分割磁石14の外部側面14aと、により凹部26が形成される。この凹部26に、軟磁性体7が設けられている。
【0044】
<軟磁性体>
軟磁性体7は、軸線C方向からみて径方向内側に向かうに従って周方向の幅が小さくなる台形状である。軟磁性体7の第1磁石9と接する底面7aの周方向の幅は、第1磁石9の外側端部9aの周方向の幅と同一である。軟磁性体7の周方向の側面7bは、第2分割磁石14の外部側面14aと接する。軟磁性体7の径方向外側の外側端部7cは、軸線Cを中心とする円に沿うように湾曲形成されている。外側端部7cは、第2磁石本体部15の外側端部15a及び第3磁石11の外側端部11aと同一円上に位置している。軟磁性体7の飽和磁束密度は、第1磁石9の飽和磁束密度よりも大きい。
【0045】
<フラックスバリア>
フラックスバリア12は、ロータコア5の周方向に複数形成される。フラックスバリア12は、ロータコア5の軟磁性材5bと、第1磁石土台部17の側面17aと、第3磁石11の内側面11dと、第2磁石内側端部16の内側面16aと、で周囲が囲われた空隙である。そのため、フラックスバリア12は、第2磁石内側端部16の形状により、q軸上で凹となるよう、径方向外側の周面12aが凹凸形状で形成されている。換言すれば、この周面12aの稜線12bは、第2磁石内側端部16の先端と同一である。このため、周面12aの稜線12bは、q軸上に位置する。
【0046】
<作用、効果>
次に、本実施形態に係る回転電機100のロータ101の作用、効果について説明する。
本実施形態に係るロータ101を備える回転電機100は、コイル2に給電すると、コイル2の巻回するステータコア1に鎖交磁束が形成される。鎖交磁束と永久磁石6との間で、磁気的な吸引力や反発力が生じ、ロータ101が継続的に回転する。
【0047】
永久磁石6は、配向がq軸からd軸に向かって滑らかに変化するので、永久磁石6の配向が急激に変化する場合と比較して、ロータ101の表面磁束密度をd軸上に集中しやすくできる。この結果、ロータ101のトルク密度を向上できる。しかも、第1磁石9の外側端部9aに軟磁性体7が設けられている。軟磁性体7の飽和磁束密度は、第1磁石9の飽和磁束密度よりも大きい。このため、軟磁性体7を設けない場合と比較してd軸上の表面磁束密度を大きくできる。この結果、永久磁石6の磁束をd軸上にさらに集中させることができる。よって、ロータ101のトルク密度を向上させることができ、延いては、エネルギーの効率化に寄与できる。
【0048】
第3磁石11は、周方向に分割されて第1分割磁石13と第2分割磁石14とにより構成されている。このため、第3磁石11内での配向の変化をより滑らかにすることができる。よって、ロータ101のトルク密度をさらに向上できる。
【0049】
軟磁性体7は、径方向内側に向かうに従って、周方向の幅が小さくなる。すなわち、軟磁性体7の周方向の側面7b(第2分割磁石14の外部側面14a)は、径方向外側に向かうに従って、d軸から離間するように傾斜形成されている。このため、軟磁性体7に流れ込む磁束の向きをさらにd軸上に集中させやすくできる。このため、ロータ101のトルク密度をさらに向上させることができる。
【0050】
フラックスバリア12を空隙とすることにより、ロータ101を軽量化できる。永久磁石6のロータコア5側の磁束は、ロータ101のトルクに寄与しにくい。トルクへの影響が小さい位置にフラックスバリア12を設けるので、ロータ101を軽量化しつつ、トルク密度を向上させることができる。
フラックスバリア12は、径方向外側の周面12aがq軸上で凹である。この形状は、第2磁石内側端部16の構成によるもので、磁路を確保することができる。すなわち、第1磁石9を挟んで周方向の両側に位置する第3磁石11において、両者間での径方向内側から回り込む磁束を、第2磁石内側端部16を介して通すことができる。これにより、周方向の両側に配置された第3磁石の磁束をできる限り有効活用できる。
【0051】
ロータコア5の外周面5aに軟磁性材5bが設けられている。この構成により、ロータコア5の外周面5aに磁路を形成することができる。このため、ロータ101の有効磁束をさらに増加させることができ、ロータ101のトルクを増加させることができる。
【0052】
次に、前述の実施形態の第1変形例から第8変形例について説明する。第1変形例から第8変形例においては、上述した実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1変形例から第8変形例においては、異なる点についてのみ説明する。
【0053】
[第1変形例]
まず、
図3に基づいて、第1変形例について説明する。
図3は、第1変形例に係るロータ101の構成を示す図である。
図3は、前述の
図2に対応している(以下の変形例も同様)。
前述の実施形態と第1変形例との相違点は、実施形態の永久磁石6の構成及び形状と、第1変形例の永久磁石6の構成及び形状と、が異なる点にある。
具体的には、
図3に示すように、第1磁石9は、軸線C方向からみて径方向に長い長方形状である。このため、第1磁石土台部17の側面17aは、第1磁石本体部18の側面18bと一体であり、同一平面上に位置している(以下、側面17aと側面18bを合わせて、第1磁石9の周方向の側面9bとする)。第1磁石9の側面9bは、径方向に沿っている。
【0054】
第2磁石10は、軸線C方向からみて径方向にわずかに長い長方形状である。第2磁石10は、第2磁石本体部15で形成されている。
第3磁石11は、1つの永久磁石で構成される。第3磁石11は、d軸側内側面11eが軟磁性材5bと接している。第3磁石11のq軸側内側面11fは、径方向外側に凸となるよう湾曲形成されている。第3磁石11のq軸側内側面11fの一端は、軟磁性材5bと接し、他端は第2磁石本体部15の角部15bと接している。
第3磁石11の磁化方向は、第1磁石9の磁化方向から第2磁石10の磁化方向に向かうようにd軸及び周方向に対して傾斜した方向に配向されている。
【0055】
このように構成した場合であっても、永久磁石6の配向をq軸からd軸に向かうに従って、徐々にq軸方向に沿うように変化させることができる。このため、前述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0056】
フラックスバリア12は、軟磁性材5bの外周面と、第3磁石11のq軸側内側面11fと、第2磁石本体部15の内側面15cと、で周囲が囲われた空隙である。
このような構成であっても、前述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0057】
[第2変形例]
次に、
図4に基づいて、前述の実施形態の第2変形例について説明する。
図4は、第2変形例に係るロータ101の構成を示す図である。
前述の第1変形例と第2変形例との相違点は、第1変形例で第3磁石11が1つであるのに対し、第2変形例は、第3磁石11が3つの磁石13、14、20によって構成されている点にある。
【0058】
具体的には、
図4に示すように、第2変形例の第3磁石11は、周方向に3分割されている。第3磁石11は、第2磁石10側に配置される第1分割磁石13と、第1分割磁石13の第1磁石9側に配置される第2分割磁石14と、第2分割磁石14と第1磁石9との間に配置される第3分割磁石20と、を備える。
【0059】
第1分割磁石13と第2分割磁石14との第1分割面19は、第2分割磁石14と第3分割磁石20との第2分割面21よりも第2磁石10側に位置している。第1分割面19と第2分割面21は、径方向に沿っている。
【0060】
第3磁石11のq軸側内側面11fは、一部が第3分割磁石20の内部側面20aである。このため、第3磁石11のq軸側内側面11fは、軟磁性材5bから径方向外側に向かって延びており、第3分割磁石20の内部側面20a上から第2磁石本体部15の角部15bに向かって径方向外側に凸となるよう湾曲形成されている。
第1分割磁石13、第2分割磁石14及び第3分割磁石20の磁化方向は、それぞれq軸からd軸へ向かうに従って徐々にd軸に沿うように変化する。第1分割磁石13の磁化方向のd軸に対する傾きは、第2分割磁石14の磁化方向のd軸に対する傾きよりも大きい。第2分割磁石14の磁化方向のd軸に対する傾きは、第3分割磁石20の磁化方向のd軸に対する傾きよりも大きい。
【0061】
このように構成した場合であっても、永久磁石6の配向をq軸からd軸に向かうに従って、徐々にq軸方向に沿うように変化させることができる。さらに、永久磁石6の配向を前述の実施形態よりもより滑らかに変化させることができる。このため、前述の実施形態よりもトルク密度を向上させることができる。
【0062】
[第3変形例]
次に、
図5、
図6に基づいて、第3変形例について説明する。
図5は、第3変形例に係るロータ101の構成を示す図である。
前述の実施形態と第3変形例との相違点は、前述の実施形態の軟磁性体7及び第1磁石9の形状と、第3変形例の軟磁性体7及び第1磁石9の形状とが異なる点にある。
【0063】
具体的には、
図5に示すように、第3変形例の軟磁性体7は、周方向の幅が径方向内側に向かうに従って先細るように、軸線C方向からみて三角形状に形成されている。軟磁性体7の底面7aの幅は極めて小さくなる。これに伴い、軟磁性体7の底面7aと接する第1磁石9の外側端部9aの周方向の幅も小さくなる。換言すれば、第1磁石本体部18が、径方向外側に向かうに従って先細るように形成され、軸線C方向からみて三角形状で形成されている。第1磁石本体部18の側面18bは、d軸に向かって凸で、かつ前述の実施形態よりも湾曲している。
【0064】
ここで、前述の実施形態の軟磁性体7の形状と、第3変形例における軟磁性体7の形状との違いにより、永久磁石6による磁束密度の変化について説明する。
図6は、本実施形態及び第3変形例に係るロータ101の構成を示し、(a)は、縦軸を永久磁石6の磁束密度とし、横軸をロータ101の回転角とした場合の、永久磁石6の磁束密度の変化を示すグラフ、(b)は、ロータの構成を示す図である。(b)は、説明の都合上、ロータ101に係る構成を直線状に表している。(a)は、(b)の形状に対応している。
図6において、実線は、第3変形例に係る磁束密度波形W1を示し、二点鎖線は本実施形態に係る磁束密度波形W2を示す。
【0065】
磁束密度波形W1及び磁束密度波形W2は、ともにd軸上で最大値をとる。しかしながら、磁束密度波形W1は、d軸近傍でフラットである。一方、磁束密度波形W2は、d軸上にピークを有している。前述の実施形態及び第3変形例に係る構成は、軟磁性体7を備える。軟磁性体7の周方向の側面7bは、径方向外側に向かうに従って、d軸から離間するように傾斜形成されている。このうち、第3変形例において、軟磁性体7の底面7aの周方向の幅は前述の実施形態と比べて小さい。また、軟磁性体7の側面7bのd軸に対する傾きは、前述の実施形態と比べて大きい。
【0066】
したがって、第3変形例に係る構成とすることで、前述の実施形態よりも軟磁性体7に流れ込む磁束の向きをさらにd軸上に集中させやすくすることができ、磁束密度を高めることができる。このため、前述の実施形態と比べてロータ101のトルク密度をさらに向上させることができる。
【0067】
[第4変形例]
次に、
図7に基づいて、第4変形例について説明する。
図7は、第4変形例に係るロータ101の構成を示す図である。
前述の実施形態と第4変形例との相違点は、前述の実施形態における第2磁石10、第3磁石11及びフラックスバリア12の形状と、第4変形例における第2磁石10、第3磁石11及びフラックスバリア12の形状と、が異なる点にある。
【0068】
具体的には、
図7に示すように、第4変形例の第2磁石10は、第2磁石本体部15で構成されている。
第3磁石11の内側面11dは、第1磁石本体部18の角部18aと、第1分割面19の径方向内側端部19aと、を通る平面(以下、これを第2分割磁石14の内側面14bとする)及び、第1分割面19の径方向内側端部19aと、第2磁石本体部15の角部15bと、を通る平面(以下、これを第1分割磁石13の内側面13aとする)で構成されている。第1分割磁石13の内側面13aは、ロータコア5の外周面5aに沿っている。
【0069】
第1分割面19の径方向内側端部19aは、第1磁石本体部18の角部18aと、第2磁石本体部15の角部15bと、を通る平面よりも径方向外側に位置している。
フラックスバリア12は、ロータコア5の軟磁性材5bの外周面と、第1磁石土台部17の側面17aと、第3磁石11の内側面11dと、第2磁石本体部15の内側面15cと、で囲われた空隙である。
このような構成であっても、前述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0070】
[第5変形例]
次に、
図8に基づいて、第5変形例について説明する。
図8は、第5変形例に係るロータ101の構成を示す図である。
前述の実施形態と第5変形例との相違点は、前述の実施形態における永久磁石6及び軟磁性体7の形状と、第5変形例における永久磁石6及び軟磁性体7の形状と、が異なる点にある。
第5変形例では、永久磁石6のうち軟磁性体7とフラックスバリア12との間に位置する部分の永久磁石6の厚さ(以下、軟磁性体-フラックスバリア間厚さという)L1が一定である。
【0071】
軟磁性体-フラックスバリア間厚さL1は、軟磁性体7の側面7bと、第3磁石11の内側面11dとの間に位置する永久磁石6の厚さと定義する。このとき、軟磁性体-フラックスバリア間厚さL1が一定となるように、軟磁性体7の側面7b及び第3磁石11の内側面11dのd軸に対する傾斜角度が等しく形成されている。
この構成により、軟磁性体-フラックスバリア間厚さL1が一定である永久磁石6は、磁路の幅を一定に保つことができる。換言すれば、軟磁性体7とフラックスバリア12との間において、永久磁石6自身の磁路の幅が局所的に狭くなってしまうことを防止できる。このため、永久磁石6の減磁耐性及びロータ101のトルク密度を向上させることができる。
【0072】
[第6変形例]
次に、
図9に基づいて、第6変形例について説明する。
図9は、第6変形例に係るロータ101の構成を示す図である。
前述の実施形態と第6変形例との相違点は、実施形態のフラックスバリア12の構成と、第6変形例のフラックスバリア12の構成と、が異なる点にある。
具体的には、
図9に示すように、フラックスバリア12として設けられていた空隙に、接着剤22が充填されている。
【0073】
接着剤22を介し、ロータコア5の軟磁性材5bの外周面と、第1磁石土台部17の側面17aと、第2磁石内側端部16の内側面16aと、第3磁石11の内側面11dとが結合される。これにより、ロータコア5と離れて設けられていた第2磁石10及び第3磁石11は、接着剤22を介してロータコア5と固定される。
q軸上の永久磁石6は、磁化方向がロータコア5への磁気吸引力が弱い。そこで、接着剤22を用いることにより、q軸上の永久磁石6におけるロータコア5への固着力を高めることができる。
【0074】
[第7変形例]
次に、
図10に基づいて、第7変形例について説明する。
図10は、第7変形例に係るロータ101の構成を示す図である。
前述の第6変形例と第7変形例との相違点は、第6変形例のフラックスバリア12の構成及び形状と、第7変形例のフラックスバリア12の構成及び形状と、が異なる点にある。
具体的には、
図10に示すように、フラックスバリア12として設けられていた空隙に接着剤22が充填されている。さらに、接着剤22には、非磁性体23が埋設されている。非磁性体23は、例えば樹脂である。しかしながらこれに限られるものではなく、非磁性体23は、磁性体でなければよい。フラックスバリア12の形状は、前述の第4変形例(
図7)と同様の形状である。
【0075】
前述の第6変形例と比較すると、フラックスバリア12は、さらに非磁性体23を含んでいる。
非磁性体23は、フラックスバリア12の周面12aに沿った形状で形成されている。つまり、非磁性体23は、フラックスバリア12の形状と相似であり、フラックスバリア12の空隙に挿入可能な大きさに縮小されている。
このような構成により、前述の第6変形例と同様の効果を奏することに加え、永久磁石6の剛性を高めることができる。
【0076】
[第8変形例]
次に、
図11に基づいて、第8変形例について説明する。
図11は、第8変形例に係るロータ101の構成を示す図である。
前述の実施形態と第8変形例との相違点は、前述の実施形態におけるロータ101の構成と、第8変形例におけるロータ101の構成と、が異なる点にある。
具体的には、
図11に示すように、第8変形例のロータ101は、永久磁石6及び軟磁性体7の径方向外側にリング部材24を有する。
【0077】
リング部材24は、軸線Cを中心とする円筒状に形成されている。リング部材24の内径は、ロータ101の外径と等しい。リング部材24の内周面24aは、永久磁石6の外側端部(第2磁石10の外側端部10a及び第3磁石11の外側端部11a)と、軟磁性体7の外側端部7cと、で形成されるロータ101の外周面と接する。リング部材24は、非磁性材料で形成され、例えばCFRP(炭素繊維強化プラスチック)やSUS(ステンレス鋼)で形成されている。
【0078】
リング部材24によって、ロータ101の永久磁石6及び軟磁性体7を径方向外側から押さえて固定することができる。そのため、ロータ101の回転により永久磁石6に作用する遠心力をリング部材24で受けることができる。したがって、ロータコア5に対する永久磁石6の固着力を高めることができ、ロータ101の高速回転化も可能になる。
【0079】
本発明の技術的範囲は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態及び変形例では、第3磁石11は、多くて3つに分割構成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、第3磁石11は、4つ以上の異なる配向を有する永久磁石から構成されてもよい。この場合、第3磁石を構成する複数の永久磁石は、それぞれq軸からd軸へ向かうに従って徐々にd軸に沿うように変化すればよい。
【0080】
上述の実施形態及び変形例では、永久磁石6に第2磁石を設けた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、永久磁石6に第2磁石10を設けなくてもよい。この場合、第2磁石10が配置されていた部分には、第3磁石11の一部が設けられる。したがって、q軸を中心に周方向の両側に第3磁石11が並んで配置される。このように構成した場合であっても、上述の実施形態及び変形例と同様の効果を奏する。
【0081】
上述の実施形態及び変形例では、永久磁石6にフラックスバリア12を設けた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、永久磁石6にフラックスバリア12を設けなくてもよい。
ここで、第3磁石11が1つの永久磁石で構成される第1変形例及び第3磁石11が3つの永久磁石で構成される第2変形例の場合に、軟磁性体7の有無及びフラックスバリア12の有無に関して、トルク密度の計算結果を示す。軟磁性体7の形状は、いずれの場合も同様である。フラックスバリア12は、空隙で形成されている。
【0082】
以下において、ロータ101が軟磁性体7及びフラックスバリア12をともに備えてない場合をケース1とする。ロータ101が軟磁性体7を備え、フラックスバリア12を備えていない場合をケース2とする。ロータ101が軟磁性体7及びフラックスバリア12をともに備えている場合をケース3とする。
【0083】
第1変形例では、ケース1を基準として、ケース2及びケース3でのトルク密度は、それぞれ1.29%及び3.83%増加したことが確認できた。第2変形例では、ケース1を基準として、ケース2及びケース3でのトルク密度は、それぞれ1.26%及び3.93%増加したことが確認できた。
【0084】
フラックスバリア12を設けない場合、永久磁石6の内部に磁束が通る磁路が形成されるため、トルクを大きくすることができる。一方で、永久磁石6により重量は増加する。フラックスバリア12を設ける場合、永久磁石6の内部の磁路を減少させるため、トルクは小さくなる。しかしながら、ロータ101を軽量化することができる。
【0085】
フラックスバリア12は、トルクへの影響が小さいq軸上で、かつ永久磁石6のロータコア5側に設けられていた。そのため、トルクを大きく減少させることなく、軽量化することができ、結果としてトルク密度を向上させられることが確認できた。
したがって、回転電機100の軽量化が求められる場合は、フラックスバリア12を設けるとトルク密度を増加させることができる点で、優位性を有する。
【0086】
上述した実施形態及び変形例では、回転電機100は、ステータ103の径方向内側にロータ101が配置された、いわゆるインナーロータ型の回転電機である場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、回転電機100がステータ103の径方向外側にロータ101が配置されたいわゆるアウターロータ型の回転電機であっても、上述の実施形態及び変形例の構成を採用できる。
【0087】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは、適宜可能であり、また、上述した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0088】
5…ロータコア
5a…外周面(周面)
5b…軟磁性材
6…永久磁石
7…軟磁性体
9…第1磁石(d軸配向磁石)
9a…外側端部(d軸配向磁石のロータコアとは反対側の端部)
10…第2磁石(周方向配向磁石)
11…第3磁石(斜め配向磁石)
11a…外側端部(斜め配向磁石のロータコアとは反対側の端部)
12…フラックスバリア
12a…周面(側面)
13…第1分割磁石(分割磁石)
14…第2分割磁石(分割磁石)
22…接着剤
23…非磁性体
24…リング部材
100…回転電機
101…ロータ
C…軸線(回転軸線)
L1…軟磁性体-フラックスバリア間厚さ(厚さ)