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特開2024-175447リモートプラズマ装置及びプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175447
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】リモートプラズマ装置及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20241211BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H05H1/46 B
C23C16/511
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093239
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 英紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB35
2G084CC06
2G084CC14
2G084CC33
2G084DD04
2G084DD19
2G084DD38
2G084DD42
2G084DD55
2G084FF02
2G084FF04
2G084FF15
2G084FF38
2G084FF39
4K030AA13
4K030FA02
4K030KA30
4K030KA46
(57)【要約】
【課題】リモートプラズマ装置の小型化を図る。
【解決手段】金属製の筐体と、前記筐体内を満たすように設けられた誘電体と、前記筐体に設けられ、前記筐体内にガスを供給するガス供給口と、前記筐体に設けられ、前記筐体内から前記ガスを排出するガス排出口と、前記誘電体に形成され、前記ガス供給口と前記ガス排出口とを繋ぐガスラインと、前記筐体に設けられ、前記筐体内に電磁波を供給し、前記ガスライン内にプラズマを生成するように構成される電磁波供給部と、を有するリモートプラズマ装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の筐体と、
前記筐体内を満たすように設けられた誘電体と、
前記筐体に設けられ、前記筐体内にガスを供給するガス供給口と、
前記筐体に設けられ、前記筐体内から前記ガスを排出するガス排出口と、
前記誘電体に形成され、前記ガス供給口と前記ガス排出口とを繋ぐガスラインと、
前記筐体に設けられ、前記筐体内に電磁波を供給し、前記ガスライン内にプラズマを生成するように構成される電磁波供給部と、
を有するリモートプラズマ装置。
【請求項2】
前記誘電体に前記ガスラインと平行に形成された金属製の反射アンテナを有する、
請求項1に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項3】
前記筐体の内形は、円筒形状の側面の一部に平面を有する欠損円筒形状である、
請求項1に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項4】
前記誘電体は、前記電磁波供給部が供給する周波数の前記電磁波と共振する構造を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項5】
前記誘電体の直径φは、前記誘電体内の管内波長をλgとしたとき、φ=λg/2+δであり、0≦δ≦λg/20である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項6】
前記誘電体の長さLは、前記誘電体内の管内波長をλgとしたとき、L=λg/2+δ'であり、0≦δ'≦λg/10である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項7】
前記反射アンテナの長さdは、前記誘電体の管内波長をλgとしたとき、d=λg/2+δ''であり、-λg/10≦δ''≦0である、
請求項2に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項8】
前記反射アンテナの長さdは、前記誘電体の長さL以下である、
請求項7に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項9】
前記ガスラインは、前記誘電体の中心軸の位置に設けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項10】
前記電磁波供給部は、前記電磁波を前記筐体内にスロットアンテナを介して供給する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項11】
前記電磁波供給部は、くし歯型共振器を有し、前記くし歯型共振器及び前記スロットアンテナを介して前記電磁波を前記筐体内に供給する、
請求項10に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項12】
前記スロットアンテナは、前記誘電体に形成された平面に沿って設けられている、
請求項10に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項13】
前記誘電体に前記ガスラインと平行に形成された金属製の反射アンテナは、前記ガスラインを挟んで前記スロットアンテナの反対側に設けられている、
請求項10に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項14】
前記電磁波供給部は、前記電磁波として300MHz~3THzの周波数のマイクロ波を供給する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項15】
前記反射アンテナは、前記ガスラインに向けて突出する突出部を含む、
請求項2に記載のリモートプラズマ装置。
【請求項16】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に設けられ、被処理基板が載置される載置台と、
前記プラズマ処理チャンバ内にガスの活性種を供給するように構成される、前記請求項1~3のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置と、
を有するプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リモートプラズマ装置及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、誘導結合型のリモートプラズマユニットを具備したプラズマ処理装置を提案する。リモートプラズマユニットは、誘導結合型のプラズマ源であり、プラズマ処理装置の処理空間の上方においてプラズマ生成空間を画成している。リモートプラズマユニットは、プラズマ生成空間を囲むようにコイルを有し、コイルには、高周波電力を供給する高周波電源が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-49529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、リモートプラズマ装置の小型化を図ることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、金属製の筐体と、前記筐体内を満たすように設けられた誘電体と、前記筐体に設けられ、前記筐体内にガスを供給するガス供給口と、前記筐体に設けられ、前記筐体内から前記ガスを排出するガス排出口と、前記誘電体に形成され、前記ガス供給口と前記ガス排出口とを繋ぐガスラインと、前記筐体に設けられ、前記筐体内に電磁波を供給し、前記ガスライン内にプラズマを生成するように構成される電磁波供給部と、を有するリモートプラズマ装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、リモートプラズマ装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す断面構成図。
図2】一実施形態に係るリモートプラズマ装置の一例を示す断面斜視図。
図3】一実施形態に係るリモートプラズマ装置の横断面及び縦断面を示す図。
図4】一実施形態に係るアンテナインピーダンスの周波数特性の一例を示す図。
図5】一実施形態に係る着火時の誘電体内の電界の一例を示す図。
図6】一実施形態に係る反射アンテナの長さと電界強度との関係の一例を示す図。
図7】一実施形態に係る反射アンテナの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
本明細書において平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわないほどのずれが許容される。
【0010】
[ICPプラズマを用いたプラズマ源]
プラズマ処理装置において、特にリモートソースで用いる小型で効率の良いリモートプラズマ装置(プラズマ源)が求められている。効率よくプラズマを生成するためには、管内波長をλgとして、λg/2の空間が必要である。ICP(Inductively Coupled Plasma)では、コイルに供給する高周波の周波数が最大でも27MHz程度と低いため、管内波長λgがある程度大きくなる。このため、ICPを用いた場合、装置が構造的に大きくなり、リモートプラズマ装置の小型化は難しい。
【0011】
これに対して、当該コイルに27MHzよりも高い周波数のマイクロ波を供給する。ωL(ω:角周波数(ω=2πf(f:周波数))、L:コイルのインダクタンス)で表されるインピーダンスは、周波数fが高くなると高くなり、コイルにかかる電圧が高くなるため、コイル周辺の誘電体がイオンで叩かれて損傷する。従って、ICPのコイルに周波数が高いマイクロ波を供給することはできない。
【0012】
リモートプラズマ装置自体の寸法が大きくなると、リモートプラズマ装置をプラズマ処理装置の所定のスペースへ組み込むことができないことがある。加えて、リモートプラズマ装置の製造コストも高くなってしまう傾向がある。
【0013】
そこで、本実施形態では、周波数の高いマイクロ波を使用することによりリモートプラズマ装置の小型化を図る。これにより、プラズマ処理装置に組み込みやすいリモートプラズマ装置を提案する。以下、図1図3を参照しながら、本実施形態に係るリモートプラズマ装置を組み込んだプラズマ処理装置について説明する。
【0014】
[プラズマ処理装置]
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置100の縦断面の一例を示す断面構成図である。図2は、一実施形態に係るリモートプラズマ装置1の一例を示す断面斜視図である。図3は、一実施形態に係るリモートプラズマ装置1の横断面(図2(b)のA-A切断面)及び縦断面を示す図である。
【0015】
プラズマ処理装置100は、リモートプラズマ装置1とプラズマ処理チャンバ2とを有する。リモートプラズマ装置1は、金属製の筐体10と誘電体11とガスライン12cと電磁波供給部13とを有する。
【0016】
金属製の筐体10は、例えばアルミニウム等の金属(導体)から形成されている。図2(a)に示すように、筐体10の外形は矩形状である。
【0017】
誘電体11は、筐体10内を満たすように設けられている。誘電体11は、例えば窒化アルミニウム(AlN)から形成されている。筐体10の一面10aの内形は略半円筒形状をした欠損円筒形状である。したがって、図2(a)の筐体10を便宜的に除いて示した図2(b)及び図2(b)をA-A面で切断し、図2(b)と天地を逆転させた図3(a)に示すように、筐体10内を満たすように設けられた誘電体11は、欠損円筒形状である。誘電体11は、円筒形状の側面11aの一部が欠損した平面11bを有する。
【0018】
ガスライン12cは、図1図3に示す誘電体11の中心軸axの位置(誘電体11の断面を円形と仮定した際の中心位置)に設けられている。筐体10は、筐体10内にガスを供給するガス供給口10bと、筐体10内からガスを排出するガス排出口10cとを有する。
【0019】
図1図3に示すように、上部ガス供給管12u、下部ガス供給管12d及びガスライン12cが誘電体11の中心軸axの位置に設けられる。上部ガス供給管12uは、ガス供給部16に接続されている。上部ガス供給管12uは筐体10に形成されたガス供給口10bに嵌合する。下部ガス供給管12dは筐体10に形成されたガス排出口10cに嵌合する。ガスライン12cは、誘電体11により形成され、ガスライン12cは、誘電体11を貫通し、ガス供給口10bとガス排出口10cとを繋ぐ。つまり、ガスライン12cは、誘電体11を貫通する貫通口11cである。上部ガス供給管12u、下部ガス供給管12d及びガスライン12cの内部は真空であり、後述するようにガスライン12c内においてプラズマが生成される。すなわち、ガスライン12cの内部は、プラズマ生成空間となっている。
【0020】
電磁波供給部13は、筐体10に設けられ、筐体10内に電磁波を供給し、ガスライン12c内にプラズマを生成するように構成される。本実施形態では、電磁波供給部13は、電磁波の一例として860MHzのマイクロ波を供給する。
【0021】
スロットアンテナ14は、筐体10内の誘電体11に形成された平面11bに沿って設けられている。図1に示すように、スロットアンテナ14は、筐体10内の円盤形状の石英部材15と誘電体11との間に設けられた金属製の薄板であり、リング状のスロット14a(空間)を有し、スロット14aからマイクロ波を放射する。スロット14aから放射されたマイクロ波は、誘電体11内を透過してガスライン12c内に供給される。これにより、ガス供給部16から出力され、ガス供給口10bから導入されたガスは、マイクロ波のエネルギーにより分解され、ガスライン12c内にてプラズマが生成される。スロットアンテナ14をガスライン12cの近傍に配置することにより、ガスライン12c内のプラズマ生成空間において効率的にプラズマを生成することができる。
【0022】
電磁波供給部13は、誘電体11の平面11b側の筐体10の一面に設けられており、マイクロ波出力部17と共振器18とを有する。マイクロ波出力部17は、マイクロ波を出力する。共振器18は、マイクロ波出力部17から出力されたマイクロ波をスロットアンテナ14に導く。マイクロ波出力部17は、マイクロ波発振器を有している。マイクロ波発振器は、マグネトロン型であってもよく、ソリッドステート型であってもよい。マイクロ波発振器によって生成されるマイクロ波の周波数は、例えば300MHz~3THzの周波数である。一例として、マイクロ波出力部17は、マグネトロン型のマイクロ波発振器により、860MHzのマイクロ波を出力する。なお、マイクロ波出力部17は、UHF(Ultra High Frequency)帯の電磁波を発振する発振器であってもよい。
【0023】
導波管19は、外導体19aと内導体19bとを含む同軸構造を有し、外導体19aと内導体19bとの間は、PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene:ポリテトラフルオロエチレン)等の誘電体により充填されている。共振器18は、導波管19を介してマイクロ波出力部17と接続され、給電部20を介してスロットアンテナ14と接続される。
【0024】
共振器18は、筐体10内の負荷(プラズマ)のインピーダンスをマイクロ波出力部17の出力インピーダンスに整合させる機能を有する。なお、マイクロ波出力部17と給電部20との間において、モード変換機構は共振器18がその機能を有するので省略されている。導波管19は、マイクロ波出力部17から出力されたマイクロ波を共振器18に導く。給電部20は、スロットアンテナ14の中心に接続される。マイクロ波出力部17から出力されたマイクロ波は、共振器18および給電部20を介してスロットアンテナ14のスロット14a及び誘電体11を介してガスライン12c内のプラズマ生成空間に放射される。
【0025】
外導体19aの一部は、共振器18の筐体であり、接地されたプラズマ処理チャンバ2とともにグランド電位となる。外導体19aは円筒形状であり、共振器18の側面19a1には入力ポートP1が形成される。外導体19aには、入力ポートP1が形成された側寄りの円筒の端部に出力ポートP2が形成され、他方の端部19a2は円筒を閉じるように円盤形状に形成される。端部19a2の中心には、グランドフィン21を図1における左右方向に動かすための棒状部22を保持している。
【0026】
グランドフィン21は、アルミニウムや銅等の導体で形成される。グランドフィン21は、複数のフィン23と棒状部22とを有する。複数のフィン23は、例えば同心円の円柱形状と円筒形状である。なお、複数のフィン23は、図1に示す断面ではくし歯型である。
【0027】
共振器18の筐体の内部には、複数のフィン24が設けられる。複数のフィン24は、三重の円筒形状のマルチポールアンテナである。なお、複数のフィン24は、図1に示す断面ではくし歯型である。
【0028】
フィン24の側面には、内導体19bが接続される。出力ポートP2の近傍には、筐体10の一部をくり抜いて嵌め込まれたアルミナのリング部材25及び導体の給電部20が配置されている。すなわち、入力ポートP1の内導体19bと、出力ポートP2の内導体19bと、フィン24とによって、共振器18の筐体から絶縁される給電ライン26が形成される。
【0029】
なお、複数のフィン24の先端部は、PTFE等の誘電体で覆われている。グランドフィン21はスライド可能であり、グランドフィン21が最も深くフィン24側へ挿入された場合であっても、フィン24と接触しないようになっている。グランドフィン21のフィン23は、フィン24への挿入量が変更される際に、PTFE等の誘電体に沿って移動される。このように、グランドフィン21の挿入量を変更して共振空間の寸法を変更することで、共振器18を通過する周波数(共振周波数)を変更することができる。
【0030】
以上から、共振器18は、対向する断面がくし歯型のフィン23、24を有するくし歯型共振器である。電磁波供給部13は、くし歯型共振器を有し、くし歯型共振器及びスロットアンテナ14を介して電磁波を筐体10内に供給してもよい。電磁波供給部13にくし歯型共振器を設けることにより、リモートプラズマ装置1をより小型化することができる。ただし、電磁波供給部13は、くし歯型共振器を有しなくてもよい。また、スロットアンテナ14を有しなくてもよい。すなわち、電磁波供給部13は、導波管19を介して筐体10内にマイクロ波を供給してもよい。
【0031】
リモートプラズマ装置1のガスライン12c内で生成されたプラズマに含まれる処理ガスの活性種は、下部ガス供給管12dを通り、プラズマ処理チャンバ2内に供給される。プラズマ処理装置100は、プラズマ処理チャンバ2内にて被処理基板Wに熱処理を施す熱CVD(Chemical Vapor Deposition)装置であってもよい。被処理基板Wはプラズマ処理チャンバ2内の載置台30に載置されている。プラズマ処理チャンバ2の中心軸は、リモートプラズマ装置1の中心軸axに一致する。
【0032】
プラズマ処理チャンバ2は、チャンバ本体31を含んでいる。チャンバ本体31は円筒形状を有しており、上部が開口し、側壁及び底部を提供している。チャンバ本体31は、アルミニウム等の金属から形成されている。チャンバ本体31は、接地されている。チャンバ本体31の側壁は、通路32を提供している。被処理基板Wは、プラズマ処理チャンバ2の内部と外部との間で搬送されるときに、通路32を通過する。通路32は、ゲートバルブ33によって開閉可能である。ゲートバルブ33は、チャンバ本体31の側壁に沿って設けられている。
【0033】
プラズマ処理チャンバ2は、上壁34を含む。上壁34は、アルミニウム等の金属から形成されている。上壁34は、チャンバ本体31上部の開口を閉じている。上壁34は、チャンバ本体31と共に接地されている。
【0034】
プラズマ処理チャンバ2の底部は、排気口35を提供している。排気口35は、排気装置36に接続されている。排気装置36は、自動圧力制御弁のような圧力制御器及びターボ分子ポンプのような真空ポンプを含んでいる。
【0035】
プラズマ処理チャンバ2は、載置台30に対向してシャワーヘッド37を有する。シャワーヘッド37は、アルミニウム等の金属から形成されている。シャワーヘッド37は、円盤形状を有しており、ガス拡散室38とガス拡散室38に連通する複数のガス孔39とを有する。これにより、リモートプラズマ装置1から供給された処理ガスの活性種が、ガス拡散室38及び複数のガス孔39を介してシャワーヘッド37と載置台30との間の処理空間に導入される。
【0036】
載置台30には、インピーダンス整合回路40を介して高周波電源41が接続されている。インピーダンス整合回路40は、高周波電源41の負荷のインピーダンスを、高周波電源41の出力インピーダンスに整合させるように構成される。高周波電源41から供給される高周波の周波数は、マイクロ波の周波数よりも低い周波数の高周波である。高周波の周波数は例えば13.56MHzであってもよい。なお、高周波電源41から供給される高周波は、シャワーヘッド37に供給されてもよい。
【0037】
本実施形態に係るプラズマ処理装置100では、リモートプラズマ装置1が小型であるため、既存のプラズマ処理チャンバ2に容易に組み込むことができる。リモートプラズマ装置1は、処理ガスを熱処理時よりも少し活性化させ、その活性種をプラズマ処理チャンバ2へ供給する。つまり、リモートプラズマ装置1は、プラズマ処理チャンバ2内に、程よく分解された処理ガスの活性種を供給することができる。これにより、プラズマ処理チャンバ2内において、処理ガスを熱処理よりも少し活性化させて被処理基板Wを処理することが可能となる。
【0038】
被処理基板Wを熱処理する場合、プラズマ処理チャンバ2内の処理空間に供給されたガスを熱エネルギーで活性化し、分解する。例えば、SiN膜やTiN膜の成膜にNH(アンモニア)ガスを使うとき、NHガスをガスライン12cに供給すると。ガスライン12c内でNHガスから少し活性化させたNH等の活性種が生成され、プラズマ処理チャンバ2に供給される。このようにしてリモートプラズマ装置1を用いてNHの解離状態を制御し、解離しすぎていない活性種をプラズマ処理チャンバ2に供給することにより、質の良い還元剤としてのアンモニアを供給することができる。これにより、高密度なプラズマ中のイオンの叩き込み等なく、被処理基板Wの温度が低い状態で良質な膜を形成することができる。
【0039】
このように、リモートプラズマ装置1を用いることによりNHガス等の還元剤を活性化するとき還元ガスは分解しすぎない。還元ガスを分解しすぎると反応性が良くなり過ぎて、活性種が途中で反応し、膜に形成されたホールやトレンチまで届きにくくなる。
【0040】
本実施形態に係るプラズマ処理装置100では、リモートプラズマ装置1にて所望のガスを分解しすぎず、適度に分解し、被処理基板Wの熱処理時に使用するようにプラズマ処理チャンバ2内に供給する。これにより、被処理基板Wの温度を低温に制御し、良質な膜を成膜することができる。また、高周波電源41のようにマイクロ波の周波数よりも低い周波数の高周波であっても十分に解離させることが可能な状態で還元剤をプラズマ処理チャンバ2内へ供給することができる。
【0041】
制御部90は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置100に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部90は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置100の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部90の一部又は全てがプラズマ処理装置100に含まれてもよい。制御部90は、処理部91、記憶部92及び通信インターフェース93を含んでもよい。制御部90は、例えばコンピュータにより実現される。処理部91は、記憶部92からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部92に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部92に格納され、処理部91によって記憶部92から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース93に接続されている通信回線であってもよい。処理部91は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部92は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース93は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置100との間で通信してもよい。
【0042】
[誘電体共振部]
誘電体11は、電磁波供給部13が供給する周波数のマイクロ波と共振する共振部(以下、「誘電体共振部」という。)として機能する。図4を用いて誘電体共振部(誘電体11)の周波数特性のシミュレーション結果について説明する。図4は、一実施形態に係る誘電体共振部の周波数特性の一例を示す図である。
【0043】
図4に示すグラフEは、ガスライン12c内のプラズマ負荷(プラズマ)も含めたアンテナインピーダンスの周波数特性を反射係数で示したものである。反射係数が最も小さくなる周波数(共振周波数)は、860MHzである。これは、860MHzのマイクロ波を供給した場合、誘電体11内は共振しているのでインピーダンスが非常に高い状態になっており、負荷であるプラズマのインピーダンスが多少変化しても、その変化による全体のインピーダンスへの影響が少ないことを示している。
【0044】
このように、スロットアンテナ14の近傍に誘電体共振部(誘電体11)を設けることにより、効率よくエネルギーをガスライン12c内のプラズマに伝えることができる構造になっている。また、誘電体共振部(誘電体11)により、リモートプラズマ装置1を高効率かつ小型化することができる。
【0045】
誘電体共振部(誘電体11)の直径φ(図3(a)参照)は、誘電体11での管内波長をλgとしたとき、φ=λg/2+δであってもよい。このとき、0≦δ≦λg/20であり、λg/2と同一又はややずれた数値となる。
【0046】
誘電体共振部(誘電体11)の形状のような純粋な円形導波管ではない円形導波管においては自由空間とは異なり、波長が長くなる。今回採用する共振モードはTE011モードで円形導波管の基本モードである。基本モードにおける遮断波長λcは、λc=3.4125a、aは誘電体共振部(誘電体11)の半径(a=φ/2)である。
【0047】
よって、a=4.5cmのとき、λc=15.35cmとなる。これにより、誘電体共振部(誘電体11)の管内波長λgは、式(1)で示される。
【0048】
【数1】

ここで、式(1)の波長λは、比誘電率εが8.8のAlNから形成されている誘電体11内における860MHzのマイクロ波の波長である。よって、860MHzにおいて円筒直径φおよび長さが管内半波長(管内波長の半分)、すなわち、λg/2=18.3/2≒9.2cmの円筒形状の誘電体共振部(誘電体11)を作製すれば効率よくマイクロ波電力をプラズマへ吸収させることができる。
【0049】
ただし、今回のように円筒形状の誘電体共振部(誘電体11)の一部を平坦化し且つ後述する着火促進のための金属製の反射アンテナ(導電体)をガスライン12c(プラズマ生成空間)の近傍を設けた構造においては管内波長は、やや長くなる。それゆえ、誘電体共振部(誘電体11)の直径φの好ましい寸法は、φ=λg/2+δ、0≦δ≦λg/20であり、λg/2と同一又はやや長い数値となる。
【0050】
誘電体共振部(誘電体11)の長さL(図3(b)参照)は、誘電体11の管内波長をλgとしたとき、L=λg/2+δ'であってもよく、0≦δ'≦λg/10である。誘電体共振部(誘電体11)の長さLの好ましい寸法は式(2)で示される。
【0051】
L=λg/2+δ'・・・式(2)
誘電体共振部(誘電体11)の長さLの代表寸法はδ'=λg/10程度である。よって、長さLは、λg/2と同一又はやや長い数値となる。
【0052】
[反射アンテナ]
図1図3に示すように、リモートプラズマ装置1は、更に誘電体11内にガスライン12cと平行に形成された金属棒の反射アンテナ28を有する。反射アンテナ28は、ガスライン12cを挟んでスロットアンテナ14の反対側に設けられている。図3(a)に示すように、反射アンテナ28の断面は真円である。ただし、反射アンテナ28の断面は真円に限らず、板状、四角柱等の他の形状でもよい。
【0053】
ガスライン12c(プラズマ生成空間)の中心軸axと平行な位置に反射アンテナ28を配置する。図5は、一実施形態に係る着火時の誘電体11内の電界シミュレーションの結果の一例を示す図である。図5(a)はガスライン12cと平行な位置に反射アンテナ28が配置されている場合、図5(b)は反射アンテナ28が配置されていない場合の、着火時の誘電体11内の電界の状態を示す。
【0054】
図5(a)に示すように、スロットアンテナ14のスロット14aから放射されるマイクロ波の電界ベクトルは、反射アンテナ28にて反射し、スロット14aから放射されるマイクロ波と強め合う。これにより、同位相のマイクロ波をガスライン12cに供給することができる。これにより、効率よくプラズマ生成空間へマイクロ波電力を供給でき、ガスライン12c内での着火を促進することができる。
【0055】
これに対して、図5(b)に示すように、反射アンテナ28を配置しない場合、ガスライン12c内の電界は、図5(a)に示す反射アンテナ28を配置した場合のガスライン12c内の電界よりも低くなっている。なお、反射アンテナ28を反射した電界の減衰を減らすために、反射アンテナ28の配置は、可能な限りガスライン12cの近傍に配置することが好ましい。反射アンテナ28は、ガスライン12cから2~3mm程度の位置まで近づけることができる。反射アンテナ28は、ガスライン12cに平行であることが好ましいが、平行でなくてもよい。
【0056】
反射アンテナ28の長さd(図6(a)参照)について、図6(b)のグラフを参照しながら説明する。図6(b)は、一実施形態に係る反射アンテナ28の長さと電界強度との関係のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0057】
本シミュレーションでは、反射アンテナ28の径方向の太さは考慮せずに無視できるとし、反射アンテナ28の長さと電界強度との関係を求めている。シミュレーション条件としては、図1に示すプラズマ処理装置100に860MHzのマイクロ波を供給する。図6(b)の横軸は反射アンテナ28の長さd(mm)を示し、縦軸は規格化電界強度を示す。規格化電界強度は、ガスライン12cの右端から左端までの各断面の電界の最大値を示す。図6(b)に示すように、反射アンテナ28の長さdが概ね80mmで最大電界になった。
【0058】
よって、反射アンテナ28の長さdの好ましい寸法は式(3)で示される。
【0059】
d=80mm=λg/2+δ''・・・式(3)
-λg/10≦δ''≦0である。よって、反射アンテナ28の長さdは、λg/2と同一又はやや短い数値となる。従って、反射アンテナ28の長さdは、誘電体共振部(誘電体11)の長さL(図3(b)参照)以下である。
【0060】
[反射アンテナの変形例]
図7を参照しながら、反射アンテナ28の変形例について説明する。図7は、一実施形態に係る反射アンテナ28の変形例を示す図である。図7の反射アンテナ28は、誘電体11にガスライン12cと平行に形成された反射アンテナ28の本体28aからガスライン12cに向けて突出する突出部29を含む。
【0061】
反射アンテナ28の突出部29は、導体の棒状部材29aと棒状部材29aの先端の頭部29bとを有している。
【0062】
反射アンテナ28に突出部29を設けることにより、スロットアンテナ14から放射されるマイクロ波の電界ベクトルは、突出部29にて反射し、スロット14aから放射されるマイクロ波と強め合い、同位相のマイクロ波をガスライン12cに供給できる。これにより、効率よくプラズマ生成空間へマイクロ波電力を供給でき、ガスライン12c内での着火を促進することができる。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態に係るリモートプラズマ装置1によれば、マイクロ波は波長が短いためにリモートプラズマ装置1の小型化が可能である。さらに、ガスライン12cが形成される誘電体11を誘電体共振部として機能させ、その周辺部に着火促進構造を具備する反射アンテナ28を備えることで、電力伝達効率の良い、且つ着火性能が高い、リモートプラズマ装置1の作製が可能となる。具体的には、電磁波供給部13に欠損円筒形状の誘電体11を直付けした構造として、効率よくプラズマへのエネルギー伝達を行える構造とし、加えて着火促進のため、反射アンテナ28をガスライン12c内のプラズマ生成空間近傍に設置した構造とする。
【0064】
ガスライン12cが形成される誘電体11に共振構造を採用することで、ガスライン12c内のプラズマ生成空間において効率よくプラズマを生成することができる。さらに従来のマイクロ波プラズマ源では、誘電体とチャンバ開口の金属部境界での電界集中により、プロセス条件によってはコーティング損傷等の可能性があった。これに対して、本実施形態に係るリモートプラズマ装置1によれば、誘電体11に直接形成されたガスライン12cの円筒空間内でプラズマを生成することで、その損傷懸念を解消することができる。プラズマ着火に関しては、反射アンテナ28におけるマイクロ波の反射放射を利用し、着火性を促進することが可能である。
【0065】
また、リモートプラズマ装置1自体の寸法が小型化したことにより、リモートプラズマ装置1をプラズマ処理装置100の所定のスペースへ組み込むことができる。これにより、プラズマ処理装置100に適用可能なリモートプラズマ装置1に制約が生じない。加えて、リモートプラズマ装置1の製造コストを下げることができる。
【0066】
以上に開示された実施形態は、例えば、以下の態様を含む。
【0067】
(付記1)
金属製の筐体と、
前記筐体内を満たすように設けられた誘電体と、
前記筐体に設けられ、前記筐体内にガスを供給するガス供給口と、
前記筐体に設けられ、前記筐体内から前記ガスを排出するガス排出口と、
前記誘電体に形成され、前記ガス供給口と前記ガス排出口とを繋ぐガスラインと、
前記筐体に設けられ、前記筐体内に電磁波を供給し、前記ガスライン内にプラズマを生成するように構成される電磁波供給部と、
を有するリモートプラズマ装置。
(付記2)
前記誘電体に前記ガスラインと平行に形成された金属製の反射アンテナを有する、
付記1に記載のリモートプラズマ装置。
(付記3)
前記筐体の内形は、円筒形状の側面の一部に平面を有する欠損円筒形状である、
付記1又は2に記載のリモートプラズマ装置。
(付記4)
前記誘電体は、前記電磁波供給部が供給する周波数の前記電磁波と共振する構造を有する、
付記1~3のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置。
(付記5)
前記誘電体の直径φは、前記誘電体内の管内波長をλgとしたとき、φ=λg/2+δであり、0≦δ≦λg/20である、
付記1~4のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置。
(付記6)
前記誘電体の長さLは、前記誘電体内の管内波長をλgとしたとき、L=λg/2+δ'であり、0≦δ'≦λg/10である、
付記1~5のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置。
(付記7)
前記反射アンテナの長さdは、前記誘電体の管内波長をλgとしたとき、d=λg/2+δ''であり、-λg/10≦δ''≦0である、
付記2に記載のリモートプラズマ装置。
(付記8)
前記反射アンテナの長さdは、前記誘電体の長さL以下である、
付記7に記載のリモートプラズマ装置。
(付記9)
前記ガスラインは、前記誘電体の中心軸の位置に設けられている、
付記1~8のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置。
(付記10)
前記電磁波供給部は、前記電磁波を前記筐体内にスロットアンテナを介して供給する、
付記1~9のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置。
(付記11)
前記電磁波供給部は、くし歯型共振器を有し、前記くし歯型共振器及び前記スロットアンテナを介して前記電磁波を前記筐体内に供給する、
付記10に記載のリモートプラズマ装置。
(付記12)
前記スロットアンテナは、前記誘電体に形成された平面に沿って設けられている、
付記10又は11に記載のリモートプラズマ装置。
(付記13)
前記誘電体に前記ガスラインと平行に形成された金属製の反射アンテナは、前記ガスラインを挟んで前記スロットアンテナの反対側に設けられている、
付記10に記載のリモートプラズマ装置。
(付記14)
前記電磁波供給部は、前記電磁波として300MHz~3THzの周波数のマイクロ波を供給する、
付記1~13のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置。
(付記15)
前記反射アンテナは、前記ガスラインに向けて突出する突出部を含む、
付記2に記載のリモートプラズマ装置。
(付記16)
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に設けられ、被処理基板が載置される載置台と、
前記プラズマ処理チャンバ内にガスの活性種を供給するように構成される、前記請求項1~3のいずれか1項に記載のリモートプラズマ装置と、
を有するプラズマ処理装置。
【0068】
今回開示された実施形態に係るリモートプラズマ装置及びプラズマ処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 リモートプラズマ装置
2 プラズマ処理チャンバ
10 筐体
11 誘電体
12c ガスライン
13 電磁波供給部
14 スロットアンテナ
18 共振器
28 反射アンテナ
90 制御部
100 プラズマ処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7