(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175465
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】箔押し装置
(51)【国際特許分類】
B65H 29/66 20060101AFI20241211BHJP
B65H 5/24 20060101ALI20241211BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20241211BHJP
B65H 9/00 20060101ALN20241211BHJP
【FI】
B65H29/66
B65H5/24
B65H5/02 G
B65H9/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093263
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】石井 賢治
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 陽平
(72)【発明者】
【氏名】辺見 香理
【テーマコード(参考)】
3F049
3F053
3F101
3F102
【Fターム(参考)】
3F049EA22
3F049EA24
3F053GA02
3F053GA05
3F053GB02
3F053GB13
3F101LA16
3F101LB03
3F102AA00
3F102AB01
3F102BA07
3F102BA10
(57)【要約】
【課題】箔フィルムの消費量を低減する箔押し装置を提供すること。
【解決手段】箔押し装置100は、箔フィルムを搬送する箔フィルム搬送部110と、箔を付着させるための接着剤で箔押し下地を予め形成した複数の記録媒体を搬送する記録媒体搬送部130と、箔フィルムの箔を記録媒体へ転写する転写部150と、を備える。記録媒体搬送部130は、先行する記録媒体の上に、後続する記録媒体をずらして重ねた状態で搬送する機能を有し、後続する記録媒体をずらして重ねる重ね合わせ量を可変とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箔フィルムを搬送する箔フィルム搬送部と、
箔を付着させるための接着剤で箔押し下地を予め形成した複数の記録媒体を搬送する記録媒体搬送部と、
前記箔フィルムの箔を前記記録媒体へ転写する転写部と、を備えた箔押し装置であって、
前記記録媒体搬送部は、先行する前記記録媒体の上に、後続する前記記録媒体をずらして重ねた状態で搬送する機能を有し、後続する前記記録媒体をずらして重ねる重ね合わせ量を可変とすることを特徴とする箔押し装置。
【請求項2】
複数の前記記録媒体に形成された箔押し下地の有無を検出する画像検出部をさらに備え、
前記記録媒体搬送部は、前記箔押し下地の有無に基づいて決定された前記重ね合わせ量を用いて、後続する前記記録媒体をずらして搬送することを特徴とする請求項1に記載の箔押し装置。
【請求項3】
複数の前記記録媒体に形成された箔押し下地の画像情報を入力する操作部をさらに備え、
前記記録媒体搬送部は、前記画像情報に基づいて決定された前記重ね合わせ量を用いて、後続する前記記録媒体をずらして搬送することを特徴とする請求項1に記載の箔押し装置。
【請求項4】
前記転写部は、少なくとも一つ以上の熱源を備えた一対のローラを有し、複数の前記記録媒体をずらして重ねた状態で、各記録媒体のエッジが通過する時に、前記一対のローラを減圧する構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の箔押し装置。
【請求項5】
前記転写部は、少なくとも一つ以上の熱源を備えた一対のローラを有し、複数の前記記録媒体をずらして重ねた状態の重ね合わせた枚数に基づいて、前記一対のローラの間の距離を段階的に拡大する構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の箔押し装置。
【請求項6】
前記箔フィルム搬送部は、複数の前記記録媒体の後端まで搬送した後、前記箔フィルムを巻き戻すことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の箔押し装置。
【請求項7】
前記転写部は、少なくとも一つ以上の熱源を備えた一対のローラを有し、前記箔フィルム搬送部が前記箔フィルムを巻き戻すときには、前記熱源の加熱を停止することを特徴とする請求項6に記載の箔押し装置。
【請求項8】
前記転写部は、少なくとも一つ以上の熱源を備えた一対のローラを有し、前記記録媒体に箔押し下地が形成された画像面側のローラ硬度が、前記記録媒体の非画像面側のローラよりも低硬度であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の箔押し装置。
【請求項9】
後続する前記記録媒体を重ねる位置Ltは、前記記録媒体の搬送方向の長さをLmとすると、Lmを整数で割った値を、先行する前記記録媒体の搬送方向先端からずらした位置としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の箔押し装置。
【請求項10】
前記転写部は、前記一対のローラの離間動作により減圧を行うときに、前記一対のローラの離間量を、前記記録媒体が重なった状態の厚み分以上とすることを特徴とする請求項4に記載の箔押し装置。
【請求項11】
前記転写部における前記記録媒体の搬送速度を検出する速度検出部を、さらに備え、
前記記録媒体搬送部は、前記搬送速度に基づいて、先行する前記記録媒体の上に、後続する前記記録媒体をずらして重ねる速度を調整する速度調整手段を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の箔押し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箔押し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーの粘着力を利用し、予めトナー印刷した用紙と箔フィルムを重ね送りし、加熱、加圧することで、トナー印字された部分のみに箔を転写させる箔転写技術として、例えば、特許文献1の技術が既に知られている。
箔フィルムをロール状に巻いた箔ロールを用いる箔押し装置では、箔ロールと記録媒体(用紙)とが一体化して搬送されるので、箔押しを形成する画像部分が全面でも用紙面内の一部でも、箔フィルムの消費量はほぼ用紙サイズと同じであった。すなわち、箔転写する部分の箔は用紙に転写されるが、非転写部分の箔はそのままフィルム上に残った状態で巻き取られて最終的に廃棄される。従って、印刷媒体(用紙)が大きく、箔押し面積が小さいような場合、箔の殆どが使用しない状態で巻き取られて消費されてしまうという課題があった。
【0003】
箔の種類も様々な物があり、特に意匠性の高い金属光沢箔のような高付加価値印刷が可能な箔ロールは高額のため、印刷業者、ユーザへのコスト負担が大きく、箔押し媒体の普及を阻害する要因の一つとなっていた。
このような課題に対して、特許文献2では、箔画像を転写する圧着動作を解除し、未使用領域の長さ分巻き戻す技術が開示されている。しかし、箔フィルムの一枚毎に巻き戻す必要があり、生産性の低下につながるため改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、箔フィルムの消費量を低減する箔押し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、
箔フィルムを搬送する箔フィルム搬送部と、
箔を付着させるための接着剤で箔押し下地を予め形成した複数の記録媒体を搬送する記録媒体搬送部と、
前記箔フィルムの箔を前記記録媒体へ転写する転写部と、を備えた箔押し装置であって、
前記記録媒体搬送部は、先行する前記記録媒体の上に、後続する前記記録媒体をずらして重ねた状態で搬送する機能を有し、後続する前記記録媒体をずらして重ねる重ね合わせ量を可変とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、箔フィルムの消費量を低減する箔押し装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る箔押し装置の一例を説明する概略図である。
【
図2】比較例の用紙の搬送状態例を説明する図である。
【
図3】実施形態の箔押し装置の用紙重ね送りの状態例を説明する図である。
【
図5】転写部の一対のローラを通過する用紙の重ね合わせの状態と、ローラ間の距離を説明する図である。
【
図6】箔押し装置を通過した箔フィルムを展開した状態例を表した概略図である。
【
図7】用紙が重なった部分に生じる用紙折れ跡の発生メカニズムを説明する図である。
【
図8】ローラのニップ形状と用紙折れ跡との関係を説明する図である。
【
図9】用紙の長さと用紙重ね位置とを説明する図である。
【
図10】箔押し下地と用紙エッジが重なる例を説明する図である。
【
図11】用紙長と用紙重ね位置と用紙エッジとの関係例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0009】
実施形態1.
図1は、本発明の実施形態に係る箔押し装置の一例を説明する概略図である。
箔押し装置(「箔押機」、「箔転写装置」ともいう)100は、前処理(前工程)で、画像形成装置により箔押し下地(「箔押し画像」、「下地画像」ともいう)を形成した記録媒体が供給され、記録媒体の箔押し下地に箔を転写(付着)させる。
前処理において、画像形成装置は、記録媒体に箔を転写させるための接着剤で所望の箔押し下地を形成し、給紙部へ送る。このとき、画像形成装置は、例えば、同じ大きさの所望数の記録媒体に箔押し下地を形成する。画像形成装置は、例えば、電子写真プリンタ、インクジェットプリンタを用いることができる。箔押し下地を形成した複数の記録媒体は、給紙部に積載され、箔押し装置100に供給される。
【0010】
記録媒体(「媒体」ともいう)は、画像を形成する媒体であり、例えば、用紙である。以下、記録媒体を、適宜「用紙」ともいう。
接着剤は、記録媒体に箔押し下地を形成するために用い、箔を付着させる。接着剤は、例えば、黒トナー、黒インク等を用いる。また、接着剤で形成される、接着層となる画像形成部はトナーに限らす、インク、ニス等の粘性部材であればいずれでも良い。
【0011】
箔押し装置100は、箔フィルム搬送部110と、記録媒体搬送部130と、転写部150とを少なくとも備える。
図1では、箔フィルムを符号F、記録媒体(用紙)を符号Pで示している。他の図も同様に符号F、符号Pを用いて示す。
【0012】
箔フィルム搬送部(「箔ロール搬送部」ともいう)110は、箔フィルムを転写部150へ搬送する構成を有し、例えば、巻き出しローラ111と、巻き取りローラ113と、箔入口ローラ115と、補助ローラ117と、分離部119とを有する。
箔フィルム(「箔シート」または「箔メディア」ともいう)は、フィルム(シート)に箔を塗布した連続紙である。箔フィルムは、ロール状に巻いた箔ロールとして、箔フィルム搬送部110に設置される。
また、箔入口ローラ115は、転写部150の上流に配置され、補助ローラ117及び分離部119は、転写部150の下流に配置される。複数の記録媒体は、箔入口ローラ115を介して、箔フィルムともに転写部150に送られ、分離部119で箔フィルムと分離された後、装置外へ排出される。
【0013】
記録媒体搬送部130は、給紙部に積載された、箔押し下地を形成した複数の記録媒体が供給され、箔押し下地を露出させるように、複数の記録媒体をずらして重ねた状態で転写部150へ送る。記録媒体搬送部130については、
図4等を参照して後述する。
【0014】
転写部(「加熱部」ともいう)150は、箔フィルム上の箔を記録媒体へ転写させる。
転写部150は、少なくとも一つ以上の熱源を備えた一対のローラを有する。
図1では、一対のローラは、加熱ローラ(「定着ローラ」ともいう)151と加圧ローラ153とから構成される例を示している。
【0015】
また、箔押し装置100は、制御部(不図示)を備える。制御部は、例えば、装置全体の動作を制御し、各種の速度、温度等を調整する。制御部は、制御対象に関する情報(画像情報、センサー等が検知した値など)の入力を受け付け、入力された情報に基づいて、制御対象の調整、制御等を行う。制御部は、例えば、転写部150の圧力調整の入力を可能とする。また、制御部は、用紙の厚さを入力できるようにしてもよい。
【0016】
箔押し装置100の動作の概略を説明する。
箔押し装置100は、給紙部に積載した用紙の搬送開始と同時に、巻き出しローラ111から巻き取りローラ113へ箔フィルムの搬送を開始させる。
この時、箔押し装置100は、用紙搬送速度と箔搬送速度とを、同じ速度となるように設定する。箔押し装置100は、例えば、上述の制御部により、用紙搬送速度と箔搬送速度とを調整する。
箔フィルムの巻き取り開始タイミングは、箔フィルムと用紙とが接触する箔入口ローラ115付近に近い方が箔ローラの無駄が少なくなる。
【0017】
箔入口ローラ115で箔ロールと用紙とが一体となり加熱ローラ151と加圧ローラ153との間に侵入すると、熱、圧力により箔裏面の接着層と用紙上のトナーが溶融し、用紙の接着剤(下地トナー部)のみに箔が付き、箔画像が形成される。
【0018】
用紙と箔フィルムとは、加熱ローラ151と加圧ローラ153との間を通過後、一体となり搬送され、分離部119により、箔フィルムと用紙とが分離され、用紙は装置外へ排出され、箔フィルムは巻き取りローラ113に巻き取られる。
【0019】
次に、記録媒体搬送部130について詳細を説明する。
記録媒体搬送部130は、先行する記録媒体(「先行媒体」ともいう)の上に、後続する記録媒体(「後続媒体」ともいう)をずらして重ねた状態で搬送する機能(以降適宜「ずらして重ねる機能」ともいう)を有する。
また、記録媒体搬送部130は、後続する記録媒体をずらして重ねる重ね合わせ量(「記録媒体ずらし量」、「用紙ずらし量」ともいう)を可変とすることができる。
【0020】
ここで、用紙の搬送方向先端の一部に箔押し下地を形成する場合を用いて、用紙を重ねた状態で搬送する用紙重ね送りの状態例について説明する。
図2は、比較例の用紙の搬送状態例を説明する図である。
図3は、実施形態の箔押し装置100の用紙重ね送りの状態例を説明する図である。上段に重ね合わせた用紙を上から見た状態例を示し、下段に重ね合わせた用紙を横から見た状態例を示している。
【0021】
図2に示すように、比較例の搬送は、複数の用紙の一枚毎に所定の間隔をもって用紙を搬送する。このため、箔フィルムは、用紙の搬送方向距離に粗等しい長さL1を消費する。また、箔押し下地以外の部分では、箔フィルムから箔が転写されないため、箔フィルムの無駄な消費となっている。
一方、
図3に示すように、箔押し装置100で用紙を重ねた状態で搬送する場合には、箔を形成したい部分の長さを予め計測しておき、同距離用紙がずれるように搬送させる。このようにすると、複数の用紙の搬送距離となる長さL2は、比較例の長さL1より短くなる。
箔押し下地面積、位置によって変化するが、箔フィルムの消費距離は、比較例よりも短くなる。これにより、箔フィルムの消費を抑制できるだけでなく、搬送距離(図の横方向長さ)を短くすることができるので生産時間が短縮される。
【0022】
図4に、用紙をずらして搬送する搬送部の構成例を示す。
記録媒体搬送部130は、搬送ローラ131と、第一搬送ベルト133と、第二搬送ベルト135とを有する。
記録媒体搬送部130は、給紙部から一枚ずつ用紙が供給され、搬送ローラ131を介して第一搬送ベルト133に用紙を送る。記録媒体搬送部130は、第一搬送ベルト133の下流に二つめの第二搬送ベルト135を配置し、用紙をベルト上で受け渡す構成とする。この際、第一搬送ベルト速度を第二搬送ベルト速度より大きく(第一搬送ベルト速度>第二搬送ベルト速度)する。このようにすると、第一搬送ベルト133から第二搬送ベルト135に用紙が受け渡される部分(受け渡し部)で用紙が重ね合わさった状態で、箔入口ローラ115を介して転写部150に用紙を送ることができる。
【0023】
先行媒体の上に後続媒体をずらして重ねる重ね合わせ量は、第一搬送ベルト速度と第二搬送ベルト速度との速度差によって調整可能であり、箔を付着させる箔押し下地(箔画像領域)に合わせて調整する。
各搬送ベルトの速度の調整は、同一画像であれば適宜マニュアル設定でも良いし、画像データを元に速度差を自動調整するような構成でも良い。
【0024】
上述したように、記録媒体搬送部130は、重ね合わせ量(用紙ずらし量)を可変でき、重ねた状態で搬送する機能を備える。このようにすると、必要な部分のみに箔転写するので無駄な箔の消費を防止できる。更に重ね送りすることで生産性が向上し作業時間の短縮が図れる。
【0025】
実施形態2.
本実施形態では、箔押し装置が、第一搬送ベルト133と第二搬送ベルト135との速度を自動調整して、重ね合わせ量を可変とする機能を有する一態様を説明する。
【0026】
記録媒体搬送部130は、例えば、箔押し下地がある部分を自動で検知して重ね合わせ量を決定する機能を有するとよい。
箔押し装置100は、各記録媒体に形成された箔押し下地の有無を検出する画像検出部をさらに有する。
記録媒体搬送部130は、画像検出部が検出した箔押し下地の有無に基づいて、重ね合わせ量を決定し、決定した重ね合わせ量を用いて、後続する記録媒体をずらして搬送する。
このようにすると、作業者が設定せずとも自動的に必要な部分のみに箔転写するので、予備調整、仕損による無駄な箔の消費を防止できる。
【0027】
また、記録媒体搬送部130は、例えば、箔押し下地がある部分を示す画像情報に基づいて重ね合わせ量を決定する機能を有するとよい。
箔押し装置100は、複数の前記記録媒体に形成された箔押し下地の画像情報の入力を受け付ける操作部をさらに有する。操作部は、例えば、ユーザが、箔押し下地の位置、大きさ等を特定する画像情報を入力可能なインタフェースとするとよい。
記録媒体搬送部130は、画像情報に基づいて、重ね合わせ量を決定し、決定した重ね合わせ量を用いて、後続する記録媒体をずらして搬送する。
このようにすると、画像センサー等の画像情報を検出する装置を備えなくても、重ね合わせ量を自動調整できる。
【0028】
上記では、記録媒体搬送部130が重ね合わせ量を決定する機能を有する形態を説明したが、これに限られるものではない。例えば、上述の制御部が、画像検出部が検出した箔押し下地の有無または操作部から入力された画像情報に基づいて、重ね合わせ量を決定し、記録媒体搬送部130は、制御部により決定された重ね合わせ量を用いるように構成してもよい。
また、箔押し装置100は、上述した二つの機能を有し、いずれかを優先して用いるように構成してもよいし、いずれかの機能を選択して制御するように構成してもよい。
【0029】
実施形態3.
本実施形態では、上記各実施形態の箔押し装置が、用紙重なり部(用紙が重ね合わさった部分)の加熱ローラ151通過時に減圧する機能をさらに有する一態様を説明する。
図5は、箔押し装置の転写部の一対のローラを通過する用紙の重ね合わせの状態と、ローラ間の距離を説明する図である。
下段に示すグラフは、横軸に、ローラ押圧部(一対のローラによるニップ形成部分)を通過する用紙の時間を示し、縦軸に、ローラ間の距離を示す。
重ね合わさった複数の用紙は、先頭部分は一枚のみだが、先頭紙に後続祇が重ね合わさると、重ね合わせ量によって用紙の重ね合わせ枚数が二枚、三枚・・・と段階的に増えていく。
【0030】
このため、箔押し装置100は、重ね送りによるローラ圧力によって用紙に折れぐせが付くのを防止することが望まれる。
転写部150は、複数の記録媒体をずらして重ねた状態で、各記録媒体のエッジが通過する時に、一対のローラ(加熱ローラ151と加圧ローラ153)を減圧する構成とするとよい。
また、転写部150は、複数の記録媒体の重ねた状態の重ね合わせた枚数に基づいて、一対のローラの間の距離を段階的に変更する構成とするとよい。具体的には、複数の記録媒体の重ねた状態の重ね合わせた枚数が増加するときには、一対のローラの間の距離を段階的に拡大し、重ね合わせた枚数が減少するときには、一対のローラの間の距離を段階的に縮小する構成とするとよい。
【0031】
例えば、転写部150は、重ね合わせ枚数に応じて一対のローラ間距離(加熱ローラ151と加圧ローラ153との間の距離)を、モータ等の手段(不図示)によって段階的に広がるように制御して、用紙へ与えられる圧力を一定になるように調整する。重ね合わせ後半では、逆に徐々に重ね合わせ枚数が減じるため、転写部150は、一対のローラ間距離は減少させる制御を行って、用紙エッジによるダメージの回避と搬送安定性(用紙スキューの防止)とを確保する。
ローラ間距離の制御は、例えば、転写部150が距離を算出してモータ等の手段を制御してもよいし、上述の制御部が距離を算出してモータ等の手段を制御してもよい。ローラ間距離は、例えば、予めユーザが紙厚さを測定し、制御部に数値入力するようにしてもよい。また、ローラ間距離は、紙厚さを測定するセンサーを用いて測定し、制御部に数値入力してもよい。
【0032】
このようにすると、用紙媒体の用紙エッジ部が加熱部ロールの圧力によって重ね合わせて通過する際に、用紙へ段差しわ、用紙折れ跡の発生を防止できる。
【0033】
実施形態4.
本実施形態では、上記各実施形態の箔押し装置が、最後の用紙搬送後に、箔フィルムを巻き戻す機能をさらに有する一態様を説明する。
図6は箔押し装置を通過した箔フィルムを展開した状態例を表した概略図である。
図1に示す箔押し装置100は、最終用紙後端は分離部119まで箔フィルムと一体となって図示しない冷却ファンによって冷却されながら搬送される。従って用紙後端が分離部119に到達するまで巻き出しローラ111から箔フィルムは搬送され続ける。このような構成では少なくとも箔入口ローラ115から分離部119までの距離(例えば、任意の試験装置では約500mm)が必要となり、この間の箔フィルムは転写されることなく無駄な部分となってしまう。
例えば、重ね合わせ枚数が少ないような作業を行う場合、上記無駄部分が増えて本来の目的効果を十分得ることができない。例えば、3枚の用紙に箔押印刷をする毎に、500mmの箔フィルムが無駄になる。
【0034】
そのため、箔押し装置100は、巻き出した分を次工程作業前に巻き戻す巻き戻し機構を備えることが望ましい。
例えば、箔フィルム搬送部110は、複数の記録媒体の後端(最後)まで搬送した後、箔フィルムを巻き戻すとよい。
【0035】
このようにすると、分離部119の位置の箔フィルムを箔入口ローラ115またはさらに上流まで巻き戻してからリスタートすることにより、転写していない箔フィルムを巻き戻して、無駄な箔を最小限にできる構成となる。
この際、用紙の搬送を伴わない為、一対のローラ間距離は最大として箔フィルムと加熱ローラ151とが非接触または接触面積が少ないような構成にするとよい。
このようにすると、箔への熱ダメージを最小限に抑えることができる。
【0036】
また巻き戻し時には加熱ローラ151への加熱はしないような温度制御を行うと良い。
例えば、転写部150は、箔フィルム搬送部110が箔フィルムを巻き戻すときには、熱源の加熱を停止するとよい。
このようにすると、箔の加熱による箔焼け、熱収縮等のダメージを低減させることができる。
【0037】
実施形態5.
本実施形態では、上記各実施形態の箔押し装置が、重ね合わさった部分の用紙の折れ線の発生を防止する構成例を有する一態様を説明する。
用紙重なり部の用紙エッジによる用紙折れ跡について説明する。
図7は、用紙が重なった部分に生じる用紙折れ跡の発生メカニズムを説明する図である。
重なった用紙がニップ部を通過すると、図中央の破線円内に示すように用紙エッジ部が他方の用紙に押し込まれ用紙折れ跡が発生する(図右側)。
【0038】
用紙折れ跡は、転写部150の一対のローラにおける、ローラニップ部の形状によって発生状態は異なる。
図8は、ローラのニップ形状と用紙折れ跡との関係を説明する図である。
図8では、図中上側を画像面側とし、画像面側にローラR1、非画像面側にローラR2を配置し、ローラR1がローラR2より低硬度のときのニップ形状例を示している。ここで、画像面は、用紙に箔押し下地が形成された面とし、非画像面は、画像面と反対側(裏側の面)とする。
例えば
図8のように、画像面側のローラ硬度を非画像面側よりも低硬度とした場合、ニップ形状は上側に凸の形状となる。
この場合、上に重なった用紙のエッジが下側の用紙に押し込まれ難いため、
図8に示す符号E1の位置では用紙折れ跡が発生しない。逆に符号E2の位置ではニップ形状とローラ弾性の影響により下側の用紙エッジが上側の用紙に押し込まれる方向に作用し顕著な用紙折れ跡が発生する。また、ローラ硬度を同等とし、ニップ形状がフラットとなるような場合には、上側と下側との両方のエッジ部で用紙折れ跡が発生することが確認されている。
【0039】
したがって、用紙のエッジによる用紙折れ跡の影響を考慮すると、ニップ形状をどちらか一方を凸形状とするほうが用紙折れ跡の抑制の点で有利であり、且つ、画像面側のローラの硬度をより低硬度とした方が、記録媒体の凹凸形状に転写ニップ部が追従しやすい。このように、転写部150は、記録媒体に箔押し下地が形成された画像面側のローラの硬度を、記録媒体の非画像面側のローラよりも低硬度とするとよい。例えば、箔押し装置100において、画像面側を
図1の上側とすると、加熱ローラ151を加圧ローラ153より低硬度とするとよい。
【0040】
このようにすると、画像面側に低硬度のローラを用いることで記録媒体の凹凸形状に追従し良好な箔転写を得ることができ、且つ非画像面側の硬度を画像面側よりも高硬度とすることで、上側の用紙エッジが下側の用紙に押し込まれる作用力を低減することで、後続媒体の先端エッジで先行媒体に用紙折れ跡を発生させる事を抑制することができる。
【0041】
実施形態6.
本実施形態では、上記各実施形態の箔押し装置が、用紙重ね位置を調整する機能をさらに有する一態様を説明する。
図9は、用紙の長さと用紙重ね位置とを説明する図である。
図9では、搬送方向の用紙の長さを用紙長Lmとし、先行媒体の搬送方向先端から先行媒体の上に後続媒体が重なる位置までの長さを用紙重ね位置Ltとしている。
図10は、箔押し下地と用紙エッジが重なる例を説明する図である。箔押し下地は、箔を付着させる箔押し下地が形成された部分(領域)である。
図11は、用紙長と用紙重ね位置と用紙エッジとの関係例を説明する図である。
【0042】
図10に示すように、用紙重ね位置Ltによっては箔押し下地と用紙エッジが重なることがある。このような場合、減圧制御などで用紙のエッジを回避した場合に箔押し下地に箔転写不良を発生させてしまう。この問題は
図11に示すように、用紙重ね位置Ltを用紙長Lmの整数分の1(整数で割った値をずらした)の位置となるように重ね制御することにより解決することができる。記録媒体搬送部130は、重ね合わせ量ずらして後続する記録媒体を重ねる位置Ltを、用紙長Lmの整数分の1として(重ね合わせ量を用紙長Lmの整数で割った値として)、後続する記録媒体を搬送する。
用紙重ね位置の算出は、例えば、記録媒体搬送部130が算出してもよいし、上述した制御部で行ってもよい。
【0043】
このようにすると、用紙を重ねて搬送した場合でも箔転写領域と用紙エッジとが重さならないため、画像部に用紙折れ跡や、上述した一対のローラの減圧時の箔転写不良を防止することができる。
【0044】
実施形態7.
本実施形態では、上記各実施形態の箔押し装置が、用紙エッジ部で減圧を行うときの調整機能をさらに有する一態様を説明する。
箔押し装置100は、用紙エッジ部で減圧を行う際は、用紙厚み以上の退避を行うことによる減圧とすることが望ましい。転写部150は、一対のローラの離間動作により減圧を行うときに、一対のローラの離間量を、記録媒体が重なった状態の厚み分以上とするとよい。
減圧の調整は、例えば、転写部150が調整機能を有するように構成してもよいし、上述した制御部が調整機能を有し、転写部150を制御して行ってもよい。
このようにすると、用紙エッジによる用紙折れ跡を確実に防止する事ができる。
【0045】
実施形態8.
本実施形態では、上記各実施形態の箔押し装置が、搬送部が搬送速度を調整する機能をさらに有する一態様を説明する。
箔押し装置100は、さらに、転写部150の用紙送り速度を検出し、記録媒体搬送部130が搬送速度を調整する機能を有するとよい。
例えば、箔押し装置100は、転写部150における記録媒体の搬送速度を検出する速度検出部をさらに備える。また、記録媒体搬送部130は、搬送速度に基づいて、先行する記録媒体の上に、後続する前記記録媒体をずらして重ねる速度を調整する速度調整手段を有する。速度調整手段は、用紙速度に応じて、所定の重ね量となるようにずらして重ねる機能(重ね搬送部)の用紙搬送速度を制御する。
このようにすると、熱によるローラ熱膨張などの影響により転写部150での用紙搬送速度が変動することによる用紙の重ね位置ずれを防止し、箔押し下地(箔画像の転写領域)に用紙エッジが重なるなどの不具合を防止することができる。
【0046】
上記各実施形態で説明した通り、箔押し装置100の一態様は、媒体重ね送りにより箔転写する部分のみ露出させて搬送することで箔ロールの消費量低減と生産性を向上させることができる。例えば、無駄な箔フィルムの消費を防止して低コストを実現すること、箔フィルムの送り方向距離を短くできるので生産性を向上させること、作業時間の短縮による人件費等のコストを削減すること等を実現できる。
【0047】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
箔フィルムを搬送する箔フィルム搬送部と、
箔を付着させるための接着剤で箔押し下地を予め形成した複数の記録媒体を搬送する記録媒体搬送部と、
前記箔フィルムの箔を前記記録媒体へ転写する転写部と、を備えた箔押し装置であって、
前記記録媒体搬送部は、先行する前記記録媒体の上に、後続する前記記録媒体をずらして重ねた状態で搬送する機能を有し、後続する前記記録媒体をずらして重ねる重ね合わせ量を可変とすることを特徴とする。
<2>
複数の前記記録媒体に形成された箔押し下地の有無を検出する画像検出部をさらに備え、
前記記録媒体搬送部は、前記箔押し下地の有無に基づいて決定された前記重ね合わせ量を用いて、後続する前記記録媒体をずらして搬送することを特徴とする
前記<1>に記載の箔押し装置である。
<3>
複数の前記記録媒体に形成された箔押し下地の画像情報を入力する操作部をさらに備え、
前記記録媒体搬送部は、前記画像情報に基づいて決定された前記重ね合わせ量を用いて、後続する前記記録媒体をずらして搬送することを特徴とする
前記<1>または<2>に記載の箔押し装置である。
<4>
前記転写部は、少なくとも一つ以上の熱源を備えた一対のローラを有し、複数の前記記録媒体をずらして重ねた状態で、各記録媒体のエッジが通過する時に、前記一対のローラを減圧する構成としたことを特徴とする
前記<1>から<3>のいずれか一つに記載の箔押し装置である。
<5>
前記転写部は、少なくとも一つ以上の熱源を備えた一対のローラを有し、複数の前記記録媒体をずらして重ねた状態の重ね合わせた枚数に基づいて、前記一対のローラの間の距離を段階的に拡大する構成としたことを特徴とする
前記<1>から<4>のいずれか一つに記載の箔押し装置である。
<6>
前記箔フィルム搬送部は、複数の前記記録媒体の後端まで搬送した後、前記箔フィルムを巻き戻すことを特徴とする
前記<1>から<5>のいずれか一つに記載の箔押し装置である。
<7>
前記転写部は、少なくとも一つ以上の熱源を備えた一対のローラを有し、前記箔フィルム搬送部が前記箔フィルムを巻き戻すときには、前記熱源の加熱を停止することを特徴とする
前記<6>に記載の箔押し装置である。
<8>
前記転写部は、少なくとも一つ以上の熱源を備えた一対のローラを有し、前記記録媒体に箔押し下地が形成された画像面側のローラ硬度が、前記記録媒体の非画像面側のローラよりも低硬度であることを特徴とする
前記<1>から<7>のいずれか一つに記載の箔押し装置である。
<9>
後続する前記記録媒体を重ねる位置Ltは、前記記録媒体の搬送方向の長さをLmとすると、Lmを整数で割った値を、先行する前記記録媒体の搬送方向先端からずらした位置としたことを特徴とする
前記<1>から<8>のいずれか一つに記載の箔押し装置である。
<10>
前記転写部は、前記一対のローラの離間動作により減圧を行うときに、前記一対のローラの離間量を、前記記録媒体が重なった状態の厚み分以上とすることを特徴とする
前記<4>または<5>に記載の箔押し装置である。
<11>
前記転写部における前記記録媒体の搬送速度を検出する速度検出部を、さらに備え、
前記記録媒体搬送部は、前記搬送速度に基づいて、先行する前記記録媒体の上に、後続する前記記録媒体をずらして重ねる速度を調整する速度調整手段を有することを特徴とする
前記<1>から<10>のいずれか一つに記載の箔押し装置である。
【0048】
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。また、上述した二以上の実施形態を適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0049】
100 箔押し装置
110 箔フィルム搬送部
111 巻き出しローラ
113 巻き取りローラ
115 箔入口ローラ
117 補助ローラ
119 分離部
130 記録媒体搬送部
131 搬送ローラ
133 第一搬送ベルト
135 第二搬送ベルト
150 転写部
151 加熱ローラ
153 加圧ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2002-127686号公報
【特許文献2】特許第6834333号公報