IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

特開2024-175490ガラス物品の製造方法及びガラス物品
<>
  • 特開-ガラス物品の製造方法及びガラス物品 図1
  • 特開-ガラス物品の製造方法及びガラス物品 図2
  • 特開-ガラス物品の製造方法及びガラス物品 図3
  • 特開-ガラス物品の製造方法及びガラス物品 図4
  • 特開-ガラス物品の製造方法及びガラス物品 図5
  • 特開-ガラス物品の製造方法及びガラス物品 図6
  • 特開-ガラス物品の製造方法及びガラス物品 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175490
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造方法及びガラス物品
(51)【国際特許分類】
   C03C 19/00 20060101AFI20241211BHJP
   C03B 33/09 20060101ALI20241211BHJP
   C03B 33/04 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C03C19/00 Z
C03B33/09
C03B33/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093319
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勲
(72)【発明者】
【氏名】藤▲原▼ 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 康章
(72)【発明者】
【氏名】小野 丈彰
【テーマコード(参考)】
4G015
4G059
【Fターム(参考)】
4G015FA04
4G015FA06
4G015FB01
4G015FC05
4G059AA01
4G059AB05
4G059AC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】面取りにより所望の形状を得つつ、チッピングを小さくする。
【解決手段】ガラス物品10Tの製造方法は、ガラス母材を切断して、第1主面10A、第2主面10B、及び第1主面10Aと第2主面10Bとを接続する端面10Cを有し、端面10Cの算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満のガラス材10Sを得ることと、算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満の状態の端面10Cを、メディアン径D50が8μm以上24μm以下の砥粒を有する砥石Wで研削して、面取り部10D2を形成すること、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス母材を切断して、第1主面、第2主面、及び第1主面と第2主面とを接続する端面を有し、前記端面の算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満のガラス材を得ることと、
算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満の状態の前記端面を、メディアン径D50が8μm以上24μm以下の砥粒を有する砥石で研削して、面取り部を形成すること、
を含む、
ガラス物品の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス物品は、側面部、及び、前記第1主面又は前記第2主面と前記側面部とを接続する前記面取り部を有し、
前記面取り部及び前記側面部は、算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満の状態の前記端面を、メディアン径D50が8μm以上24μm以下の砥粒を有する砥石で研削することで、形成される、請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項3】
前記砥石での研削により、前記端面を、前記端面に垂直な方向に0.05mm以上0.3mm除去して、前記側面部を形成する、請求項2に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項4】
前記面取り部及び前記側面部に対応する研削面を有する総型砥石を前記砥石として用いて、前記端面を研削して、前記面取り部及び前記側面部を同時に形成する、請求項2又は請求項3に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項5】
前記面取り部の角度が、45°以上60°以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項6】
前記ガラス母材の主面に設定される仮想線に沿って、レーザ光を照射して、前記ガラス母材に前記仮想線に沿った改質部を形成し、前記仮想線に沿った前記改質部を起点として前記ガラス母材を破断して、前記端面の算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満の前記ガラス材を得る、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項7】
前記レーザ光は、パルス発振したレーザ光である、請求項6に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項8】
前記レーザ光は、波長域が250nm以上3000nm以下である、請求項6に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項9】
第1主面、第2主面、及び第1主面と第2主面とを接続する端面を有するガラス物品であって、
前記端面が、側面部、及び前記側面部と前記第1主面とを接続する面取り部を有し、
前記面取り部の算術平均高さSaが0.1μm以上0.8μm以下であり、
前記面取り部の、前記第1主面側から見た場合の周方向における100mmの長さの区間に存在するチッピングの大きさの最大値が、35μm以下である、
ガラス物品。
【請求項10】
前記面取り部には、前記第1主面側から見た場合の周方向に延在する研削スジが形成されている、請求項9に記載のガラス物品。
【請求項11】
前記面取り部と前記側面部との境界部分の曲率半径が、0.05mm以上である、請求項9又は請求項10に記載のガラス物品。
【請求項12】
前記面取り部の算術平均高さSaが、0.1μm以上0.5μm以下である、請求項9又は請求項10に記載のガラス物品。
【請求項13】
前記面取り部の角度が、45°以上60°以下である、請求項9又は請求項10に記載のガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品の製造方法及びガラス物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスの端面を面取りすることで、所望の形状のガラス物品を製造する方法が知られている。このようにガラス物品を製造する際には、ガラスをカッタースクライブなどで切断し、切断面に2段階の面取り加工を施すことが一般的である。例えば特許文献1には、ガラスの端面に面取り加工をした後、更に研磨を行う旨が記載されている。
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/149512号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法では、面取り部のチッピングが十分に小さくできないおそれがある。従って、面取りにより所望の形状を得つつ、チッピングを小さくすることが求められている。
【0005】
本発明は、面取りにより所望の形状を得つつ、チッピングを小さくすることが可能なガラス物品の製造方法及びガラス物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るガラス物品の製造方法は、ガラス母材を切断して、第1主面、第2主面、及び第1主面と第2主面とを接続する端面を有し、前記端面の算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満のガラス材を得ることと、算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満の状態の前記端面を、メディアン径D50が8μm以上24μm以下の砥粒を有する砥石で研削して、面取り部を形成すること、を含む。
【0007】
本開示に係るガラス物品は、第1主面、第2主面、及び第1主面と第2主面とを接続する端面を有するガラス物品であって、前記端面が、側面部、及び前記側面部と前記第1主面とを接続する面取り部を有し、前記面取り部の算術平均高さSaが0.1μm以上0.8μm以下であり、前記面取り部の、前記第1主面側から見た場合の周方向における100mmの長さの区間に存在するチッピングの大きさの最大値が、35μm以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、面取りにより所望の形状を得つつ、チッピングを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ガラス母材の模式的な断面図である。
図2図2は、ガラス母材の模式的な上面図である。
図3図3は、ガラス材の模式的な上面図である。
図4図4は、ガラス物品の製造方法を説明する模式図である。
図5図5は、ガラス物品の模式的な平面図である。
図6図6は、ガラス物品の模式的な上面図である。
図7図7は、ガラス物品の製造フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、数値については四捨五入の範囲が含まれる。
【0011】
本実施形態においては、ガラス母材10を切断してガラス材10Sを得て、ガラス材10Sを研削してガラス物品10Tを製造する。以下で、ガラス母材10、ガラス母材10からのガラス材10Sの製造方法、及びガラス材10Sからのガラス物品10Tの製造方法について、説明する。
なお、本実施形態におけるガラス物品10Tは、車載用の表示装置に設けられ、車載用の表示装置の表面のカバー材として用いられる。すなわち、ガラス物品10Tは、車載用の表示装置が有する表示パネルの表面(表示面)に設けられて、表示パネルの表示面を保護する。ただし、ガラス物品10Tの用途は任意であり、車載用以外の用途の表示装置のカバー材として用いてもよいし、表示装置以外の装置のカバー材として用いてもよいし、カバー材以外の用途で用いてもよい。
【0012】
(ガラス母材)
図1は、ガラス母材の模式的な断面図であり、図2は、ガラス母材の模式的な上面図である。図1に示すように、ガラス母材10は、透明なガラス製の板状部材である。なお、ここでの板状とは、平板状であることに限られず、主面の幅が厚みより長いものを指してよく、ここでの透明とは、可視光を透過することを指してよい。
以下、ガラス母材10の一方の主面を第1主面10Aとし、第1主面10Aの反対側の主面を第2主面10Bとし、第1主面10Aと第2主面10Bとを接続する端面(側面)を、端面10Xとする。また、ガラス母材10の厚み方向を、すなわち第2主面10Bと第1主面10Aとを結ぶ方向を、Z方向とする。また、Z方向と直交する一方向(図1の例では左右方向)を、X方向とし、Z方向及びX方向に直交する方向(図1の例では紙面に垂直な方向)をY方向とする。また、X方向に沿った一方の向き(図1の例では右方向)を向きX1とし、X方向に沿った他方の向き(図1の例では左方向)を向きX2とし、Y方向に沿った一方の向き(図1の例では紙面の奥側に向かう向き)を向きY1とし、Y方向に沿った他方の向き(図1の例では紙面の手前側に向かう向き)を向きY2とし、Z方向に沿った一方の向き(第1主面10Aから第2主面10Bに向かう方向)を向きZ1とし、Z方向に沿った他方の向き(第2主面10Bから第1主面10Aに向かう方向)を向きZ2とする。
なお、ここでのZ方向は、ガラス母材10の中心位置における、第1主面10Aに垂直な方向であってよい。
【0013】
図2の例では、ガラス母材10は、Z方向から見た場合に矩形の平板状であるが、ガラス母材10の形状は任意であってよい。例えば、ガラス母材10は、Z方向から見た場合に矩形であることに限られず、多角形、円形、又は楕円形などであってもよい。
【0014】
図1の例では、ガラス母材10は、第1主面10A、10Bが平坦な平板状であるが、それに限られず、平板が湾曲した形状であってもよい。すなわち、ガラス母材10は、第1主面10A、10BがZ方向に凸となる曲面状であってもよい。
ガラス母材10の第1主面10A、10BがZ方向に凸となる曲面状である場合、ガラス母材10の第1主面10A、10Bの曲率半径は、10000mm以下であることが好ましく、5000mm以下であることがより好ましく、3000mm以下であることが更に好ましい。ガラス母材10の第1主面10A、10BがZ方向に凸となる曲面状である場合、ガラス母材10の第1主面10A、10Bの曲率半径は、10mm以上が好ましく、50mm以上がより好ましく、100mm以上がさらに好ましく、200mm以上がさらに好ましい。言い換えれば、ガラス母材10の第1主面10A、10BがZ方向に凸となる曲面状である場合、ガラス母材10の第1主面10A、10Bの曲率半径は、10mm以上10000mm以下であることが好ましく、50mm以上5000mm以下であることがより好ましく、100mm以上3000mm以下であることが更に好ましく、200mm以上3000mm以下であることが更に好ましい。
【0015】
ガラス母材10の厚みDは、0.1mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、1.0mm以上が更に好ましい。また、ガラス母材10の厚みDは、5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、1.3mm以下であることが更に好ましい。言い換えれば、ガラス母材10の厚みDは、0.7mm以上5mm以下であることが好ましく、1.0mm以上3mm以下であることがより好ましく、1.1mm以上1.3mm以下であることが更に好ましい。なお、ガラス母材10の厚みDとは、第1主面10Aから第2主面10BまでのZ方向における長さを指す。
【0016】
ガラス母材10は、破壊靭性値KICが、0.6(MPa・m0.5)以上であることが好ましく、0.6(MPa・m0.5)以上1.00(MPa・m0.5)以下であることがより好ましく、0.65(MPa・m0.5)以上0.70(MPa・m0.5)以下であることが更に好ましい。破壊靭性値KICは、例えば非特許文献(NEW GASS Vol.15 No.2 2000 p18)に記載のDouble Cleavage Drilled Compression(DCDC)法により測定できる。
【0017】
ガラス母材10は、非晶質ガラスであってもよいし、表面や内部に結晶を含む結晶化ガラスであってもよい。ガラス母材10としては、例えば、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラスなどを使用できる。ガラス母材10の材料は、化学強化を適切に行うために、アルカリガラスであることが好ましい。さらに言えば、ガラス母材10としては、厚さが薄くても強化処理によって大きな応力が入りやすく薄くても高強度なガラスが得られるアルミノシリケートガラスやリチウムアルミノシリケートガラスが好ましい。アルミノシリケートガラスをベースとする化学強化用ガラス(例えば、AGC社製「ドラゴントレイル(登録商標)」)も好適に用いられる。
【0018】
ガラス母材10は、酸化物基準のモル%で、SiOを50%~80%、Alを1%~20%、およびNaOを6%~20%含有するものであってよい。また、ガラス母材10は、酸化物基準のモル%で、SiO2を50~80%、Al23を0.1~25%、Li2O+Na2O+K2Oを3~30%、MgOを0~25%、CaOを0~25%およびZrO2を0~5%含有するものであってよい。また、ガラス母材10は、酸化物基準のモル%で、SiOを50%~80%、Alを1%~20%、NaOを6%~20%、KOを0%~11%、MgOを0%~15%、CaOを0%~6%、およびZrOを0%~5%含有するものであってよい。なお、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また例えば、ここでの50%~80%とは、ガラス母材10の全量のモル%を100%とした場合に、50%以上80%以下であることを指し、他の数値範囲も同様である。また、例えばLi2O+Na2O+K2Oとは、Li2OとNa2OとK2Oとの合計含有量を指し、他で「+」を用いた場合も同様である。
【0019】
より具体的には、ガラス母材10のより好ましい組成として、以下のガラスの組成が挙げられる。なお、例えば、「MgOを0%~25%含む」とは、MgOは必須ではないが25%まで含んでもよい、の意である。(i)のガラスはソーダライムシリケートガラスに含まれ、(ii)および(iii)のガラスはアルミノシリケートガラスに含まれ、(iv)~(vi)のガラスはリチウムアルミノシリケートガラスに含まれる。
(i)モル%で表示した組成で、SiO2を63%~73%、Al23を0.1%~5.2%、Na2Oを10%~16%、K2Oを0%~1.5%、Li2Oを0%~5%、MgOを5%~13%及びCaOを4%~10%を含むガラス。
(ii)モル%で表示した組成が、SiO2を50%~74%、Al23を1%~10%、Na2Oを6%~14%、K2Oを3%~11%、Li2Oを0%~5%、MgOを2%~15%、CaOを0%~6%およびZrO2を0%~5%含有し、SiO2およびAl23の含有量の合計が75%以下、Na2OおよびK2Oの含有量の合計が12%~25%、MgOおよびCaOの含有量の合計が7%~15%であるガラス。
(iii)モル%で表示した組成が、SiO2を68%~80%、Al23を4%~10%、Na2Oを5%~15%、K2Oを0%~1%、Li2Oを0%~5%、MgOを4%~15%およびZrO2を0%~1%含有するガラス。
(iv)モル%で表示した組成が、SiO2を67%~75%、Al23を0%~4%、Na2Oを7%~15%、K2Oを1%~9%、Li2Oを0%~5%、MgOを6%~14%およびZrO2を0%~1.5%含有し、SiO2およびAl23の含有量の合計が71%~75%、Na2OおよびK2Oの含有量の合計が12%~20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス。
(v)モル%で表示した組成が、SiO2を56%~73%、Al23を10%~24%、B23を0%~6%、P25を0%~6%、Li2Oを2%~7%、Na2Oを3%~11%、K2Oを0%~5%、MgOを0%~8%、CaOを0%~2%、SrOを0%~5%、BaOを0%~5%、ZnOを0%~5%、TiO2を0%~2%、ZrO2を0%~4%含有するガラス。
(vi)モル%で表示した組成が、SiOを58%~80%、Alを13%~18%、Bを0%~5%、Pを0.5%~4%、LiOを3%~10%、NaOを5%~20%、KOを0%~2%、MgOを0%~11%、CaOを0%~20%、SrOを0%~20%、BaOを0%~15%、ZnOを0%~10%、TiOを0%~1%、ZrOを0%~2%を含有するガラス。
【0020】
ガラス母材10は、化学強化されていないことが好ましい。さらに言えば、ガラス母材10を切断して得られるガラス材10Sと、ガラス材10Sを研削して得られるガラス物品10Tとも、化学強化されていないことが好ましい。ガラス母材10が化学強化されていないことで、切断や面取り時の欠け発生を抑制できる。従って、ガラス材10S及びガラス物品10Tの材料(組成)は、ガラス母材10の材料(組成)と同じである。
ただし、研削した後のガラス物品10Tに対して化学強化を施すことが好ましい。化学強化されたガラス物品10Tは、表示装置のカバーガラスとして好適に用いられる。研削後のガラス物品10Tが化学強化された場合には、ガラス母材10の組成は、ガラス物品10Tの板厚方向における中央部分の組成に相当する。具体的には、化学強化の際に置換されて放出された元素を置換前元素とし、化学強化で置換されて取り込まれた元素を置換元素とすると、ガラス物品10Tは、ガラス物品10Tの化学強化された表面層に対して、置換元素の代わりに置換前元素が含まれる組成になるといえる。
【0021】
(ガラス材の製造)
図3は、ガラス材の模式的な上面図である。本製造方法においては、ガラス母材10を切断することで、ガラス材10Sを得る。図3に示すように、ガラス材10Sは、第1主面10A、第2主面10B、及び第1主面10Aと第2主面10Bとを接続する端面10Cを有する。ガラス材10Sの第1主面10Aは、ガラス母材10の第1主面10Aに対応し、ガラス材10Sの第2主面10Bは、ガラス母材10の第2主面10Bに対応する。従って、ガラス材10Sの厚みは、ガラス母材10の厚みDと同じである。
【0022】
ガラス材10Sの端面10Cの少なくとも一部は、ガラス母材10を切断することで形成される切断面である。本製造方法においては、ガラス材10Sの端面10Cの算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満となるように、ガラス母材10を切断する。ガラス材10Sの端面10Cの算術平均高さSaは、0.2μm以上0.7μm以下が好ましく、0.3μm以上0.7μm以下がより好ましい。端面10Cの算術平均高さSaの下限値をこのような範囲とすることで、端面10Cが滑らか過ぎることによって砥石Wが端面10C上で滑り、研削が適切にできなくなることを抑制して、砥石Wを用いた面取りにより、所望の形状を得ることができる。また、端面10Cの算術平均高さSaの上限値をこのような範囲とし、下述するような面取り方法と組み合わせることで、チッピングを小さくできる。
なお、端面10Cの算術平均高さSaは、端面10Cの全域のうちの、Z方向に直交する方向から見て、主面(第1主面10A又は第2主面10B)に接する90μm×60μm四方の領域における、算術平均高さSaとしてよい。算術平均高さSaは、ISO 25178に準拠する方法にて測定することができる。
なお、算術平均高さSaは、端面10Cから、任意の3箇所を選んで、各箇所において90μm×60μm四方の領域における算術平均高さSaを測定し、その平均値を用いるものとする。任意の3点は、全域から偏りなく選択され、また飛び値をとるような点は避けるものとする。他の位置における算術平均高さSaや、最大高さSzについても、同様である。
【0023】
本製造方法においては、ガラス材10Sの端面10Cの最大高さSzが1μm以上10μm以下となるように、ガラス母材10を切断することが好ましい。端面10Cの最大高さSzの下限値をこのような範囲とすることで、端面10Cが滑らか過ぎることによって砥石Wによる研削が適切にできなくなることを抑制して、砥石Wを用いた面取りにより、所望の形状を得ることができる。端面10Cの最大高さSzの上限値をこのような範囲とすることで、チッピングを小さくできる。
なお、端面10Cの最大高さSzは、端面10Cの全域のうちの、Z方向に直交する方向から見て、主面(第1主面10A又は第2主面10B)に接する90μm×60μm四方の領域における、最大高さSzとしてよい。最大高さSzは、ISO 25178に準拠する方法にて測定することができる。
【0024】
図2に示すように、本実施形態の例では、ガラス母材10に後述の仮想線Tを設定し、仮想線Tに沿ってガラス母材10を切断して、ガラス母材10から仮想線Tに囲われた部分を切り出して、ガラス材10Sを得る。以下、ガラス材10Sの中心を中心Oとする。すなわち、図2の例では、ガラス材10Sの端面10Cの全域が、仮想線Tに沿った切断面となる。なお、ガラス材10Sの中心Oとは、Z方向から見た場合のガラス材10Sの中心位置であり、径方向及び周方向とは、ガラス材10Sの中心Oを通りZ方向に沿った軸を軸方向とした場合の、径方向及び周方向を指す。以降でも特に断りのない限り同様である。
ただし、ガラス母材10を周方向の全区間に亘って切断することに限られない。この場合、ガラス材10Sの端面10Cの一部が切断面となり、ガラス材10Sの端面10Cの残りの部分は、ガラス母材10の端面10Xに対応する部分(すなわち切断されていないガラス母材10の端面10Xそのもの)となる。このように端面10Cの一部のみが切断面である場合は、端面10Cは、全域に亘って、算術平均高さSa及び最大高さSzが上記範囲となることが好ましい。
【0025】
図3の例では、ガラス母材10は、Z方向から見て、矩形の4つの頂点がR状(曲線状)となっている。ただし、Z方向から見たガラス母材10の形状は任意であってよい。
【0026】
また、切断によって得られるガラス材10Sの端面10Cは、Z方向に向けて平坦状であることが好ましく、例えば面取り部を有さないことが好ましい。ガラス材10Sの端面10Cは、第1主面10Aに対して垂直であることがより好ましい。ここでの垂直は、厳密に90°であることに限られず、85°以上95°以下程度も含んでよい。
【0027】
(レーザ光による切断)
ガラス母材10を切断してガラス材10Sを得る方法は任意であってよいが、本実施形態では、ガラス母材10の主面上にレーザ光Lを照射して、ガラス母材10を切断する。より詳しくは、本実施形態では、図1に示すように、ガラス母材10の第1主面10Aにレーザ光Lを照射して、ガラス母材10に改質部Hを形成し、改質部Hを起点としてガラス母材10を破断(切断)することで、ガラス材10Sを得る。なお、第1主面10Aではなく、第2主面10Bにレーザ光Lを照射してもよい。
図1に示すように、本製造方法においては、照射装置Mからガラス母材10の第1主面10Aにレーザ光Lを照射させて、ガラス母材10内に改質部Hを形成する。改質部Hは、ガラスの構造変化によって、又はガラスの溶融と再凝固によって、密度又は屈折率が変化した層である。改質部Hは、空隙を含んでもよい。なお、レーザ光Lは、例えば非線形吸収によって改質部Hを形成する。非線形吸収は、多光子吸収とも呼ばれる。多光子吸収が発生する確率は光子密度(レーザ光Lのパワー密度)に対して非線形であり、光子密度が高いほど確率が飛躍的に高くなる。例えば2光子吸収が発生する確率は、光子密度の自乗に比例する。
なお、ガラス母材10のうちで改質部Hが形成されていない部分(レーザ光Lが照射されていない部分)に対して、密度、屈折率、不対電子密度、仮想温度の少なくともいずれかが異なる箇所を、改質部Hとしてよい。なお、改質部Hが形成されていない部分は、例えば、Z方向から見て、後述する仮想線Tから10mm以上離れた位置を指してよい。
【0028】
図1に示すように、レーザ光Lを照射する照射装置Mは、光源部M1と、光学系M2と、走査機構M3とを有する。光源部M1は、レーザ光Lを発生させる光源である。光源部M1は任意のものであってよいが、例えば、NdがドープされたYAG結晶(Nd:YAG)などを用いてよい。光学系M2は、光源部M1に対してレーザ光Lの進行方向側に設けられて、光源部M1からのレーザ光Lが入射する。光学系M2は、入射したレーザ光Lを第1主面10Aに向けて出射する。走査機構M3は、レーザ光Lを走査(掃引)する機構である。すなわち、走査機構M3は、レーザ光Lの第1主面10Aに照射される位置である照射位置を、第1主面10Aに平行な方向に走査(移動)させる。走査機構M3は、レーザ光Lを走査可能であれば任意の機構であってよいが、例えばガルバノミラーなどであってよい。なお、照射装置Mの構成は以上の説明に限られず、照射位置を第1主面10Aに平行な方向に走査しつつレーザ光Lを照射可能な任意の構成であってよい。例えば、光源部M1や光学系M2などのレーザ光Lが照射されるレーザヘッドの位置が固定され、レーザ光Lが照射されるガラス母材10を移動させることで、照射位置を走査する構成であってよい。すなわち、レーザ光Lのスポット位置とガラス母材10との相対位置を移動させることで、照射位置を走査してよいといえる。
レーザ光Lの走査は、第1主面10Aに平行な方向に限られず、第1主面10Aに垂直な方向、すなわちガラス物品10aの厚さ方向に実施しても良い。例えばガラス物品10aの厚さが3mm以上である場合、厚さ方向に走査することで、破断時に必要な応力を低減しやすい。
また、レーザ光Lは、光軸方向に線状のパワー分布をもつことが好ましい。また、レーザ光Lは、光軸方向に少なくとも一つのピークがあるパワー分布をもつレーザを用いてもよい。これにより、厚み方向に改質部Hを精度よく形成できる。
なお、レーザ光Lは、非線形のカー効果による自己集束で、線状に集束してもよいし、光学系M2によって線状に集束してもよい。この場合の具体的な光学系M2として、例えばアキシコン(Axicon)レンズを用いた光学系、複屈折材料を用いた光学系、回折光学素子を用いた光学系、又は光学収差を利用した光学系などが用いられてよい。
【0029】
レーザ光Lの波長域は、250nm以上3000nm以下であることが好ましい。波長域が250nm以上3000nm以下のレーザ光は、ガラス母材10をある程度透過するため、ガラス母材10の内部に非線形吸収を生じさせて改質部Hを適切に形成できる。波長域は、260nm以上2500nm以下であることがより好ましい。
また、レーザ光Lは、パルス光(パルス発振したレーザ光)であることが好ましい。レーザ光Lのパルス幅は、10fs以上1000ns以下であることが好ましい。また、パルス幅が1000ns以下のパルスレーザ光であれば、光子密度を高め易く、ガラス母材10の内部に非線形吸収を生じさせて改質部Hを形成できる。パルス幅は、好ましくは100fs以上100ns以下である。レーザ光Lは、バーストと呼ばれるパルス群を出力してもよい。一のパルス群は、例えば、3~50の複数のパルス光を有し、各パルス光が10ns未満のパルス幅を有する。一のパルス群において、パルス光のエネルギーは徐々に減少してもよい。一つのパルス、または、一つのパルス群のエネルギーは、ガラス母材10の厚み方向に連続的に形成された点状または線状の改質部、或いは亀裂を形成出来る様に適切に設定する。例えば、10μJ~5000μJであり、好ましくは20μJ~3000μJであり、より好ましくは30μJ~2000μJである。
【0030】
本製造方法においては、照射位置を走査しつつレーザ光Lを照射することで、照射位置の走査方向(移動方向)に沿って、所定の間隔で複数の改質部Hを形成する。すなわち、図2に示すように、ガラス母材10の第1主面10Aに、レーザ光Lの照射位置の走査の軌跡である仮想線Tを設定する。そして、本製造方法では、ガラス母材10の第1主面10Aに、仮想線Tに沿って照射位置を走査(移動)させつつレーザ光Lを照射することで、仮想線Tに沿って所定の間隔で並ぶ複数の改質部Hを形成する。各改質部H同士の間隔は、例えば2μm~25μmであり、好ましくは3μm~20μmである。この範囲であると、後の工程で分断した後、分断面の品質を高くしやすい。なお、仮想線Tは、図2の例では、ガラス母材10の中心Oを周方向の全区間に亘って囲う形状となっているが、仮想線Tの形状は、任意に設定されてよい。仮想線Tの長さも任意であってよいが、例えば、10mm以上であることが好ましく、100mm以上5000mm以下であることがより好ましく、800mm以上2000mm以下であることが更に好ましい。
【0031】
なお、ガラス母材10を切断してガラス材10Sを得る方法は、レーザ光Lの照射に限られない。例えば、カッタースクライブや砥石により、ガラス母材10を切断してガラス材10Sを得てもよい。
【0032】
(ガラス物品の製造)
図4は、ガラス物品の製造方法を説明する模式図である。本製造方法においては、算術平均高さSaが上記範囲(0.1μm以上1.0μm未満)となっている状態のガラス材10Sの端面10Cを、メディアン径D50が8μm以上24μm以下の砥石Wで研削して、端面10Cに面取り部10D2を形成することで、面取り部10D2が形成されたガラス物品10Tを製造する。すなわち、本実施形態では、上記で説明した状態のガラス材10Sの端面10Cに対して他の加工工程を実行することなく、他の加工工程が実行されていない状態のガラス材10Sの端面10Cをメディアン径D50が8μm以上24μm以下の砥石Wで研削して、ガラス物品10Tを得る。砥石Wについては後述する。
【0033】
本製造方法においては、ガラス材10Sの端面10Cを砥石Wで研削することで、ガラス材10Sの端面10Cの少なくとも一部の領域を除去して端面10Dを形成し、端面10Dが形成されたガラス材10Sを、ガラス物品10Tとして得る。
ガラス物品10Tは、第1主面10A、第2主面10B、及び第1主面10Aと第2主面10Bとを接続する端面10Dを有する。ガラス物品10Tの第1主面10Aは、ガラス材10Sの第1主面10Aに対応し、ガラス物品10Tの第2主面10Bは、ガラス材10Sの第2主面10Bに対応する。従って、ガラス物品10Tの厚みは、ガラス材10Sの厚み(ガラス母材10の厚みD)と同じである。
【0034】
(端面)
ガラス物品10Tの端面10Dは、第1主面10Aと第2主面10Bとを接続する端面(側面)である。端面10Dは、側面部10D1と面取り部10D2とを含む。ガラス物品10Tの側面部10D1は、ガラス材10Sの最も径方向外側の面(側面)である。側面部10D1は、平坦状であっても曲面状であってもよい。
【0035】
面取り部10D2は、側面部10D1と主面(第1主面10A又は第2主面10B)とを接続する、面取りされた面である。面取り部10D2は、Z方向に直交する方向(図4の例ではY方向)から見て、側面部10D1及び主面(第1主面10A又は第2主面10B)の両方に対して傾斜している。面取り部10D2は、平坦状(すなわちC面取り)あっても曲面状(R面取り)であってもよい。
本実施形態では、端面10Dは、面取り部10D2として、側面部10D1と第1主面10Aとを接続する面取り部10D2と、側面部10D1と第2主面10Bとを接続する面取り部10D2とを含む。ただし、端面10Dは、側面部10D1と第1主面10Aとを接続する面取り部10D2と、側面部10D1と第2主面10Bとを接続する面取り部10D2とのいずれか一方のみを含んでいてもよい。
【0036】
(砥石)
砥石Wは、メディアン径D50が8μm以上24μm以下の砥粒を有する砥石である。すなわち、砥石Wは、メディアン径D50が8μm以上24μm以下の複数の砥粒が表面に設けられた研削用の部材である。砥石Wの砥粒のメディアン径D50は、9.4μm以上20.5μm以下が好ましく、9.4μm以上16.2μm以下がより好ましい。砥粒のメディアン径D50の上限値をこの範囲とすることで、チッピングを小さくでき、砥粒のメディアン径D50の下限値をこの範囲とすることで、一般的に流通している砥粒を用いて、チッピングを適切に小さくできる。
なお、砥粒のメディアン径D50は、粒度分布計により測定できる。
【0037】
砥石Wに設けられる砥粒の材料は任意であってよいが、例えば単結晶ダイヤモンド、立方晶の窒化ホウ素、炭化ケイ素、アルミナなどが挙げられ、単結晶ダイヤモンドが好ましい。
【0038】
砥石Wの形状は特に限られず、円柱状や球状などでもよいが、第1部分W1と第2部分W2とを有する総型砥石であることが好ましい。総型砥石とは、目的とする工作物の形状にあわせた研削面を持つ砥石である。第1部分W1は、側面部10D1に対応する研削面を有する部分であり、言い換えれば、側面部10D1を形成するための研削面を有する。第1部分W1は、円柱形状であり、外周面が研削面となっている。第2部分W2は、面取り部10D2に対応する研削面を有する部分であり、言い換えれば、面取り部10D2を形成するための研削面を有する。第2部分W2は、第1部分W1に対して軸方向側に接続され、第1部分W1から遠ざかるに従って径が大きくなるコーン形状であり、外周面が研削面となっている。本実施形態では、砥石Wは、第2部分W2として、第1部分W1の軸方向の一方側に設けられる第2部分W2と、第1部分W1の軸方向の他方側に設けられる第2部分W2とを有する。
第1部分W1の研削面と第2部分W2の研削面には、上述で説明した砥粒が設けられている。
第1部分W1の研削面(外周面)と第2部分W2の研削面(外周面)との境界部分は、R状(曲面状)となっていることが好ましい。この境界部分の曲率半径は、0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上0.5mm以下であることがより好ましく、0.2mm以上0.3mm以下であることが更に好ましい。境界部分の曲率半径がこの範囲となることで、研削によって得られる側面部10D1と面取り部10D2との境界部分の曲率半径もこの範囲とすることができ、チッピングをより好適に小さくできる。
【0039】
(砥石による研削)
本製造方法においては、図4に示すように、砥石Wの軸方向に沿った中心軸を回転軸として砥石Wを回転させつつ、ガラス材10Sの端面10Cに砥石Wを押し当てる。これにより、端面10Cが研削されて、端面10Dが形成される。本実施形態では、ガラス材10Sの端面10Cのうちで、第1部分W1が押し当てられた部分が、第1部分W1により研削(除去)されて、側面部10D1が形成される。そして、ガラス材10Sの端面10Cのうちで、第2部分W2が押し当てられた部分が、第2部分W2により研削(除去)されて、面取り部10D2が形成される。
【0040】
ここで、砥石Wの研削による端面10Cの取り代を、取り代A1とする。取り代A1は、側面部10D1における、端面10C(側面部10D1)に垂直な方向(図4の例では方向X)での取り代を指す。言い換えれば、取り代A1は、研削前のガラス材10Sの中心と研削後のガラス物品10Tの中心とを同じ位置に置いた場合の、端面10Cから側面部10D1までの、端面10C(側面部10D1)に垂直な方向における距離を指す。この場合、取り代A1は、0.05mm以上0.3mmであることが好ましく、0.05mm以上、0.15mm以下であることがより好ましく、0.1mm以上、0.15mm以下であることが更に好ましい。取り代A1の下限値をこの範囲とすることで、チッピングを十分に除去でき、取り代A1の上限値をこの範囲とすることで、研削時間が長くなることを抑制できる。
【0041】
このように、本実施形態においては、算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満となっている状態のガラス材10Sの端面10Cを、メディアン径D50が8μm以上24μm以下の砥粒を有する砥石Wで研削して、端面10Cに面取り部10D2を形成することで、面取り部10D2が形成されたガラス物品10Tを製造する。算術平均高さSaを上記範囲とする方法は特に限られないが、本実施形態のように、端面10Dを形成するための研削工程において、砥粒の粒径が異なる複数の砥石Wを用いた複数段階の研削を行わずに、砥石Wを用いた一段階の研削のみを行って、端面10Dを形成することが好ましい。ここでの一段階の研削とは、同じ領域に対して、1種類の砥石Wによる研削のみを行うことを指し、複数段階の研削とは、同じ領域に対して、複数種類の砥石を用いて順番に研削することを指す。
【0042】
また、上述のように、本実施形態では、砥石Wとして総型砥石を採用して、第1部分W1及び第2部分W2により端面10Cを研削して、側面部10D1と面取り部10D2とを同時に形成する。ただしそれに限られず、側面部10D1と面取り部10D2とを別々に形成してもよい。この場合例えば、第1部分W1を有する砥石Wで端面10Cを研削して、側面部10D1を形成する。そして、第2部分W2を有する砥石Wで、側面部10D1と主面(第1主面10A又は第2主面10B)との境界部分を研削して、面取り部10D2を形成する。この場合においても、側面部10D1は、第1部分W1を有する砥石Wのみで一段階の研削により形成され、面取り部10D2は、第2部分W2を有する砥石Wのみで一段階の研削により形成されているといえる。
【0043】
また、本実施形態では、側面部10D1は、端面10Cを研削することにより形成された研削面であるが、それに限られず、端面10Cのうちで研削されずに残った部分を、側面部10D1としてもよい。この場合例えば、端面10Cと主面(第1主面10A又は第2主面10B)との境界部分を、第2部分W2を有する砥石Wで研削して、面取り部10D2を形成する。すなわちこの場合、端面10Dのうちの面取り部10D2のみが、研削面となる。
【0044】
(端面の特性)
次に、研削により形成されたガラス物品10Tの端面10Dの特性について説明する。図5は、ガラス物品の模式的な平面図であり、図6は、ガラス物品の模式的な上面図である。
【0045】
ガラス物品10Tの面取り部10D2の算術平均高さSaは、0.1μm以上0.8μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより好ましい。ガラス物品10Tの面取り部10D2の最大高さSzは、1μm以上20μm以下が好ましく、1.0μm以上10μm以下がより好ましく、1μm以上5μm以下が更に好ましい。面取り部10D2の算術平均高さSa及び最大高さSzをこの範囲とすることで、面取り部10D2を滑らかにして、面取り部10D2を起点とした破損を抑制できる。
なお、面取り部10D2の算術平均高さSa及び最大高さSzは、面取り部10D2の全域のうちの、90μm×60μm四方の領域における、算術平均高さSa及び最大高さSzとしてよい。
【0046】
ガラス物品10Tの面取り部10D2の角度θは、30°以上60°以下が好ましく、40°以上60°以下がより好ましく、45°以上60°以下が更に好ましい。図5に示すように、角度θは、側面部10D1と面取り部10D2とのなす角度である。角度θをこの範囲とすることで、主面と面取り部10D2との境界部分が鋭りすぎることを抑制して、チッピングを適切に小さくできる。なお、面取り部10D2が曲面状の場合、面取り部10D2のうちで最も突出している部分の接線と、側面部10D1とのなす角度を、角度θとしてよい。
【0047】
ここで、図6に示すように、ガラス物品10Tの面取り部10D2のうちで、第1主面10A側から見た場合の周方向における100mmの長さの区間(領域)を、領域ARとする。すなわち、領域ARとは、図6に示すように、面取り部10D2の全域のうちで、面取り部10D2上の任意の位置AR1から、位置AR1に対して、面取り部10D2上を周方向に100mm離れた位置AR2までの、領域を指す。この場合、領域ARにおけるチッピングの大きさの最大値は、35μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。ここでのチッピングの大きさとは、チッピングが面取り部10D2からの窪み(凹)である場合には、チッピングの窪みの深さを指し、チッピングが面取り部10D2から突出している場合には、面取り部10D2からのチッピングの突出長さを指す。チッピングの大きさの最大値とは、領域ARにおけるチッピングのうちで、大きさが最大となるチッピングの大きさを指す。チッピングの大きさの最大値をこの範囲とすることで、チッピングを小さく保ち、面取り部10D2を起点とした割れを抑制できる。
【0048】
ガラス物品10Tの側面部10D1の算術平均高さSaは、0.1μm以上0.8μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.3μm以下が更に好ましい。ガラス物品10Tの側面部10D1の最大高さSzは、1.0μm以上20μm以下が好ましく、0.1μm以上10μm以下がより好ましく、1.0μm以上5μm以下が更に好ましい。側面部10D1の算術平均高さSa及び最大高さSzをこの範囲とすることで、端面10Dを滑らかにして、端面10Dを起点とした破損を抑制できる。
なお、側面部10D1の算術平均高さSa及び最大高さSzは、側面部10D1の全域のうちの、90μm×60μm四方の領域における、算術平均高さSa及び最大高さSzとしてよい。
【0049】
ガラス物品10Tの側面部10D1と面取り部10D2との境界部分は、R状(曲面状)となっていることが好ましい。この境界部分の曲率半径は、0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上0.5mm以下であることがより好ましく、0.2mm以上0.3mm以下であることが更に好ましい。境界部分の曲率半径がこの範囲となることで、面取り部10D2を起点とした割れを抑制できる。
【0050】
ガラス物品10Tの面取り部10D2は、全域に亘って、周方向に延びる研削スジが形成されていてもよい。ガラス物品10Tは、研削により面取りされているにも関わらず、チッピングを小さく保つことができる。研削スジとは、砥石Wによる研削跡である。研削スジは、面取り部10D2において、Z方向に並んで複数形成されていることが好ましい。
また、側面部10D1も研削により形成した場合には、側面部10D1にも、全域に亘って、周方向に延びる研削スジが形成されていることが好ましい。研削スジは、側面部10D1において、Z方向に並んで複数形成されていることが好ましい。すなわちこの場合、周方向に延びる研削スジが、端面10Dの全域に亘って形成されていることが好ましい。
研削スジは、マイクロスコープにより確認できる。
【0051】
本実施形態においては、砥石Wを用いた研削加工により製造されたガラス物品10Tに対して、すなわち研削により上記の特性を有した状態のガラス物品10Tに対して、端面10Dに対する更なる機械加工(研磨・研削)を行わない。ただし例えば、研削により上記の特性を有した状態のガラス物品10Tに対して、機械加工以外の処理(例えば、化学強化、曲げ形成、防眩層、反射防止層、防汚層などの層形成)を施してもよい。
【0052】
(製造フロー)
以上説明したガラス物品10Tの製造方法の処理フローを説明する。図7は、ガラス物品の製造フローを説明するフローチャートである。図7に示すように、本製造方法においては、ガラス母材10を準備し、ガラス母材10を切断してガラス材10Sを得る(ステップS10)。そして、切断により得られたガラス材10Sの端面10Cを砥石Wにより研削して、面取り部10D2を含む端面10Dが形成されたガラス物品10Tを得る(ステップS12)。
【0053】
(効果)
以上説明したように、本開示の第1態様に係る製造方法は、ガラス母材10を切断して、第1主面10A、第2主面10B、及び端面10Cを有し、端面10Cの算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満のガラス材10Sを得ることと、算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満の状態の端面10Cを、メディアン径D50が8μm以上24μm以下の砥粒を有する砥石Wで研削して、面取り部10D2を形成することと、を含む。
【0054】
ガラス材10Sの端面10Cを研削して、面取り部を有するガラス物品10Tを製造する際には、一般的には、砥粒径が異なる複数種類の砥石を用いて、端面10Cに複数段階の研削を施す。しかしながら、本発明者は、鋭意研究の結果、複数段階の研削を施した場合には、面取り部のチッピングが大きくなってしまうことを見出した。そして、本発明者は、面取り部を形成して所望の形状を得つつ、チッピングを小さく出来る製造条件を見出した。すなわち、本製造方法においては、ガラス母材10を切断して、端面10Cの算術平均高さSaが上記範囲となるガラス材10Sを製造し、算術平均高さSaが上記範囲となっている状態における端面10Cを、砥粒径が上記範囲となる砥石Wで一段階研削することで、所望の形状を得つつ、チッピングを小さくできる。
【0055】
本開示の第2態様に係る製造方法は、第1態様に係る製造方法であって、ガラス物品10Tは、側面部10D1、及び、第1主面10A又は第2主面10Bと側面部10D1とを接続する面取り部10D2を有し、面取り部10D2及び側面部10D1は、算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満の状態の端面10Cを、メディアン径D50が8μm以上24μm以下の砥粒を有する砥石Wで研削することで、形成されることが好ましい。本開示によると、側面部10D1を一段階の研削で形成しつつ、面取り部10D2を一段階の研削で形成することで、所望の形状を得つつ、チッピングを小さくできる。
【0056】
本開示の第3態様に係る製造方法は、第2態様に係る製造方法であって、砥石Wでの研削により、端面10Cを、端面10Cに垂直な方向に0.05mm以上0.3mm除去して、側面部10D1を形成することが好ましい。本開示によると、取り代A1をこの範囲とすることで、研削時間が長くなることを抑制しつつ、端面10Cを適切に研削できる。
【0057】
本開示の第4態様に係る製造方法は、第2態様又は第3態様に係る製造方法であって、面取り部10D2及び側面部10D1に対応する研削面を有する総型砥石を砥石Wとして用いて、端面10Cを研削して、面取り部10D2及び側面部10D1を同時に形成することが好ましい。本開示によると、総型砥石を用いることで、端面10Cを適切に研削できる。
【0058】
本開示の第5態様に係る製造方法は、第1態様から第4態様のいずれかに係る製造方法であって、面取り部10D2の角度θが、45°以上60°以下であることが好ましい。面取り部10D2の角度θがこの範囲となるように製造することで、面取り部10D2を起点とした割れを抑制できる。
【0059】
本開示の第6態様に係る製造方法は、第1態様から第5態様のいずれかに係る製造方法であって、ガラス母材10の主面(第1主面10A又は第2主面10B)に設定される仮想線Tに沿って、レーザ光Lを照射して、ガラス母材10に仮想線Tに沿った改質部Hを形成し、仮想線Tに沿った改質部Hを起点としてガラス母材10を破断して、端面10Cの算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満のガラス材10Sを得ることが好ましい。本開示によると、レーザ光Lによりガラス母材10を切断することで、端面10Cの算術平均高さSaが上記範囲となるガラス材10Sを適切に製造できる。
【0060】
本開示の第7態様に係る製造方法は、第6態様に係る製造方法であって、レーザ光Lは、パルス発振したレーザ光であることが好ましい。本開示によると、パルスレーザを用いることで、端面10Cの算術平均高さSaが上記範囲となるガラス材10Sを適切に製造できる。
【0061】
本開示の第8態様に係る製造方法は、第6態様又は第7態様に係る製造方法であって、レーザ光Lは、波長域が250nm以上3000nm以下であることが好ましい。本開示によると、このような波長域の赤外線レーザを用いることで、端面10Cの算術平均高さSaが上記範囲となるガラス材10Sを適切に製造できる。
【0062】
本開示の第9態様に係るガラス物品10Tは、第1主面10A、第2主面10B、及び端面10Dを有し、端面10Dが、側面部10D1、及び側面部10D1と第1主面10Aとを接続する面取り部10D2を有し、面取り部10D2の算術平均高さSaが0.1μm以上0.8μm以下であり、面取り部10D2の、第1主面10A側から見た場合の周方向における100mmの長さの区間(領域AR)に存在するチッピングの大きさの最大値が、35μm以下である。本開示によると、チッピングを小さくし、かつ所望の形状となるガラス物品10Tを得ることができる。
【0063】
本開示の第10態様に係るガラス物品10Tは、第9態様に係るガラス物品であって、面取り部10D2には、第1主面10A側から見た場合の周方向に延在する研削スジが形成されていることが好ましい。本開示によると、チッピングを小さくし、かつ所望の形状となるガラス物品10Tを得ることができる。
【0064】
本開示の第11態様に係るガラス物品10Tは、第9態様又は第10態様に係るガラス物品であって、面取り部10D2と側面部10D1との境界部分の曲率半径が、0.05mm以上であることが好ましい。境界部分の曲率半径をこの範囲とすることで、面取り部10D2を起点とした割れを抑制できる。
【0065】
本開示の第12態様に係るガラス物品10Tは、第9態様から第11態様のいずれかに係るガラス物品であって、面取り部10D2の算術平均高さSaが、0.1μm以上0.5μm以下であることが好ましい。面取り部10D2の算術平均高さSaをこの範囲とすることで、面取り部10D2からの割れを抑制できる。
【0066】
本開示の第13態様に係るガラス物品10Tは、第9態様から第12態様のいずれかに係るガラス物品であって、面取り部10D2の角度θが、45°以上60°以下であることが好ましい。面取り部10D2の角度θがこの範囲となるように製造することで、チッピングを適切に小さくできる。
【0067】
(実施例)
次に、実施例について説明する。表1は、各例の製造条件及び評価結果を示す表である。
【0068】
【表1】
【0069】
(例1)
例1においては、厚さが1.3mmのガラス母材を準備した。ガラス母材としては、AGC社製、Dragontrail(登録商標)を用いた。このガラス母材に対して、ガラス母材の中心を周方向に全区間に亘って囲う仮想線を設定して、仮想線に沿って、Rofin社製StarPico3を用いて、以下の条件でレーザ光(パルスレーザ)を照射して改質部を形成した。
・波長:1064nm
・光学系:Coherent Smart Cleave
・パルス幅:10ps
・バースト数:4バースト
・照射ピッチ:5μm
・パルスエネルギー:523μJ
・送り速度(走査速度):11250mm/min
・出力:39.2W
【0070】
例1においては、改質部を形成したガラス母材を、改質部に沿って切断して、ガラス材を得た。そして、ガラス材の端面(切断面)の算術平均高さSa及び最大高さSzを測定した。端面10Cの算術平均高さSa及び最大高さSzは、端面の全域のうちの、Z方向に直交する方向から見て、主面に接する90μm×60μm四方の領域における測定値とした。
例1においては、ガラス材に対して研削を行わず、切断により得られたガラス材を、ガラス物品として扱った。
【0071】
(例2)
例2においては、例1と同じ方法でガラス材を得た。例2においては、番手が♯800、メディアン径D50が16.2μmの砥粒を有する総型砥石を用いて、得られたガラス材の端面を研削して、面取り部の角度が45°のガラス物品を得た。研削における取り代(上述の実施形態での取り代A1)は、0.1mmとした。
研削により得られたガラス物品の、側面部(上述の実施形態での側面部10D1)の算術平均高さSa及び最大高さSzを測定した。
なお、表1において、1回目「なし」で2回目に条件が記載されたものと、2回目「なし」で1回目に条件が記載されたものとは、いずれも1度しか研削していないことを指す。
【0072】
(例3~例4)
例3~例4においては、ガラス材の端面の研削条件を表1に示したように変更した以外は、例2と同じ方法でガラス物品を得た。
【0073】
(例5~例6)
例5~例6においては、番手が♯800の砥石(東京ダイヤモンド工具製作所社製)を用いて例1と同じガラス母材を切断して、ガラス材を得た。切断時の送り速度は、100mm/min~200mm/minとした。得られたガラス材の端面を、表1に示した研削条件で研削して、ガラス物品を得た。
【0074】
(例7)
例7においては、超硬カッター(三星ダイヤモンド工業社製)を用いて例1と同じガラス母材を切断して、ガラス材を得た。切断時の送り速度は、6000mm/minとした。得られたガラス材の表面を、番手が♯400の総型砥石(東京ダイヤモンド工業社製)を用いて一段階目の研削を行った後、例2と同じ総型砥石を用いて二段階目の研削を行って、ガラス物品を得た。
【0075】
(例8)
例8においては、研削条件を表1に示したものとした以外は、例7と同様の方法でガラス物品を得た。
【0076】
(例9)
例9においては、研削条件を表1に示したものとした以外は、例5と同様の方法でガラス物品を得た。
【0077】
(例10)
例10においては、研削条件を表1に示したものとした以外は、例2と同様の方法でガラス物品を得た。
【0078】
(例11)
例11においては、番手が♯200の砥石(ノリタケカンパニーリミテッド社製)を用いて例1と同じガラス母材を切断して、ガラス材を得た。切断時の送り速度は、100mm/minとした。得られたガラス材の端面を、表1に示した研削条件で研削して、ガラス物品を得た。
【0079】
(例12~例13)
例12~例13においては、COレーザを用いて例1と同じガラス母材を切断して、ガラス材を得た。COレーザの照射装置はRofin社製SR15iとし、照射条件は以下とした。
・波長:10600nmnm
・スポット径:6.58mm
・出力:47.3W
・送り速度(走査速度):1800mm/min
【0080】
例12~例13においては、得られたガラス材の端面を、表1に示した研削条件で研削して、ガラス物品を得た。
【0081】
(評価)
評価においては、各例のガラス物品のチッピングの大きさの最大値を測定した。チッピングの大きさの最大値は、マイクロスコープにより測定した。チッピングの大きさの最大値が40μm未満を合格、40μm以上を不合格とした。
また、評価においては、面取り形状を評価した。面取り形状が得られている場合をA(合格)、得られていない場合をB(不合格)とした。
【0082】
表1に示すように、端面の算術平均高さSaが0.1μm以上1.0μm未満のガラス材に対して、メディアン径D50が8μm以上24μm以下の砥石で一段階研削した例2~例6(実施例)は、チッピングの大きさ及び面取り形状の両方が合格となっており、面取りにより所望の形状を得つつ、チッピングを小さく出来ることが分かる。
【0083】
一方、例1、例7~例13(比較例)においては、チッピングの大きさと面取り形状との少なくとも一方が不合格となっており、面取りにより所望の形状を得ることと、チッピングを小さくすることとを両立できないことが分かる。
例えば例1では、研削を行っていないため、面取り形状及びチッピングの大きさの両方が不合格であった。例7では、ガラス材の端面が粗く、二段階研削を行っているため、チッピングが大きくなってしまう。例8では、一段階研削ではあるが、ガラス材の端面が粗いため、チッピングが大きくなってしまう。例9では、一段階研削ではあるが、研削に用いた砥石の粒径が大きいため、チッピングが大きくなってしまう。例10では、0.1μm以上1.0μm未満の状態の端面に対して、研削(ここでは1回目の研削)に用いる砥石の粒径が大きすぎるため、チッピングが大きくなってしまう。例11では、一段階研削ではあるが、ガラス材の端面が粗いため、チッピングが大きくなってしまう。例12では、ガラス材の端面が滑らか過ぎ、二段階研削を行っているため、チッピングが大きくなってしまう。例13では、一段階研削ではあるが、ガラス材の端面が滑らか過ぎるため、研削ができず、所望の面取り形状が得られない。
【0084】
オプションとして、工程評価を行った。工程評価においては、例5、例6(砥石切断)においてガラス母材を切断してガラス材を得て、ガラス材を研削してガラス物品を得る際に要した工程時間を100%とした場合に、工程時間が20%以下にできるかを評価した。本評価においては、例2~4と、例5~例6とにおいて、工程時間を20%以下にできた。すなわち、例2~4、例5~例6のように、パルスレーザを用いることで工程時間が短くなり、より好ましいことが分かる。
【0085】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0086】
10 ガラス母材
10A 第1主面
10B 第2主面
10C、10D 端面
10D1 側面部
10D2 面取り部
10S ガラス材
10T ガラス物品
W 砥石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7