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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175527
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】車両用ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/36 20060101AFI20241211BHJP
   H01B 7/40 20060101ALI20241211BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20241211BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20241211BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H01B7/36 Z
H01B7/40 307Z
H01B7/00 301
H02G3/22
H02G1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093376
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 弘志
(72)【発明者】
【氏名】城田 照昌
【テーマコード(参考)】
5G309
5G315
5G352
5G363
【Fターム(参考)】
5G309AA01
5G309AA09
5G315JB05
5G315JC04
5G352CH01
5G363AA16
5G363BA02
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】所定の取付態様での取り付けを容易かつ確実に実行し得る車両用ケーブルを提供する。
【解決手段】車両用ケーブル1Aは、シース20上の異なる位置に設けられ、車両に固定される複数の固定部4と、シース20の表面20aに設けられた情報表示部30と、を有する。複数の固定部4は、シース20の長手方向に沿って配置されている。情報表示部30は、シース20の長手方向において隣接する2つの固定部4の間に設けられている。そして、情報表示部30の位置と情報表示部30に表示されている情報との少なくとも一方により、車両に対する車両用ケーブル1Aの取付態様が示されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、前記電線を被覆するシースとを備える車両用ケーブルであって、
前記シース上の異なる位置に設けられ、車両に固定される複数の固定部と、
前記シースの表面に設けられた情報表示部と、を有し、
複数の前記固定部は、前記シースの長手方向に沿って配置されており、
前記情報表示部は、前記シースの長手方向において隣接する2つの前記固定部の間に設けられており、
前記情報表示部の位置と前記情報表示部に表示されている情報との少なくとも一方により、車両に対する前記車両用ケーブルの取付態様が示される車両用ケーブル。
【請求項2】
前記情報は、文字,図形,記号若しくは数字若しくはこれらの組み合わせによって構成されており、
前記取付態様には、前記車両用ケーブルが取り付けられる車両の種類,車両に対する前記車両用ケーブルの取付位置,車両に対する前記車両用ケーブルの捻回方向の少なくとも1つが含まれる請求項1に記載の車両用ケーブル。
【請求項3】
複数の前記固定部には、前記シースの長手方向に沿って一列に並ぶ第1固定部,第2固定部および第3固定部が含まれ、
前記第1固定部と前記第2固定部との間に、第1情報表示部が設けられており、
前記第2固定部と前記第3固定部との間に、第2情報表示部が設けられており、
前記シースの周方向における前記第1情報表示部の位置と前記第2情報表示部の位置とが異なる請求項1に記載の車両用ケーブル。
【請求項4】
前記情報は、レーザ光によって前記情報表示部に描かれた文字,図形,記号若しくは数字若しくはこれらの組み合わせによって構成されている請求項1に記載の車両用ケーブル。
【請求項5】
前記固定部は、ゴム製のグロメットである請求項1に記載の車両用ケーブル。
【請求項6】
前記電線としての信号線を有し、
前記シースから引き出されている前記信号線の一端にセンサが設けられている請求項1に記載の車両用ケーブル。
【請求項7】
前記センサがABSセンサである請求項6に記載の車両用ケーブル。
【請求項8】
前記電線としての信号線および電源線を有し、
前記シースから引き出されている前記信号線の一端にセンサが設けられており、
前記シースから引き出されている前記電源線の一端にコネクタが設けられている請求項1に記載の車両用ケーブル。
【請求項9】
前記センサがABSセンサであり、
前記コネクタが電気ブレーキ装置と電気的に接続される電源コネクタである請求項8に記載の車両用ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には多数のケーブルが取り付けられている。例えば、車両には、電源ケーブルやセンサケーブルが取り付けられている。また、複数のケーブルが一体化された複合ケーブル(複合ハーネス)が取り付けられている車両もある。
【0003】
上記のような車両用ケーブルのシース表面には、製品規格,製造元,品番などの情報が表示されている。より特定的には、製品規格などを示す文字や記号などがシース表面に印刷されたり、刻印されたりしている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/166205号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの車両用ケーブルは、車両に対する取付態様(当該ケーブルが取り付けられる車両の種類,車両に対する当該ケーブルの取付位置,車両に対する当該ケーブルの捻回方向など)が予め定められている。したがって、車両用ケーブルの取付作業では、所定の取付態様と実際の取付態様とは合致しているか否かを確認しながら作業を進めなくてはならず、作業に時間や手間を要する。また、人為的なミスによって所定の取付態様とは異なる態様で車両用ケーブルが車両に取り付けられてしまう虞もある。
【0006】
そこで、車両用ケーブルには、所定の取付態様での取り付けを容易かつ確実に実行し得ることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態に係る車両用ケーブルは、電線と、前記電線を被覆するシースと、前記シース上の異なる位置に設けられ、車両に固定される複数の固定部と、前記シースの表面に設けられた情報表示部と、を有する。複数の前記固定部は、前記シースの長手方向に沿って配置されている。前記情報表示部は、前記シースの長手方向において隣接する2つの前記固定部の間に設けられている。そして、前記情報表示部の位置と前記情報表示部に表示されている情報との少なくとも一方により、前記車両に対する前記車両用ケーブルの取付態様が示されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所定の取付態様での取り付けを容易かつ確実に実行し得る車両用ケーブルが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施の形態に係る車両用ケーブルの側面図である。
図2A図1中のa-aに沿う車両用ケーブルの断面図である。
図2B図1中のb-bに沿う車両用ケーブルの断面図である。
図3】情報表示部に表示されている情報の一例を模式的に示す説明図である。
図4】他の一実施の形態に係る車両用ケーブルの側面図である。
図5図4中のc-cに沿う車両用ケーブルの断面図である。
図6】情報表示部に表示されている情報の他の一例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、実施の形態の一例について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を説明するために参照する全ての図面において、同一又は実質的に同一の構成や要素には同一の符号を用いる。また、一度説明した構成や要素については、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0011】
<車両用ケーブルの概要>
図1は、本実施の形態に係る車両用ケーブル1Aの側面図である。車両用ケーブル1Aの長手方向一端にはセンサ2が設けられている。より特定的には、車両用ケーブル1Aの長手方向一端(先端)に、車輪の回転速度や回転角度を検出可能なABSセンサ2が設けられている。一方、車両用ケーブル1Aの長手方向他端(後端)には、雌型のコネクタ3が設けられている。
【0012】
つまり、本実施の形態に係る車両用ケーブル1Aはセンサ用ケーブルであり、より特定的には、ABSセンサ用ケーブルである。別の見方をすると、車両用ケーブル1Aは、ABSセンサ2から出力される信号をアンチロックブレーキシステム(ABS/Anti-lock Break System)の制御部に伝送するための信号用ケーブルである。
【0013】
車両用ケーブル1Aは、複数の固定部4を有している。より特定的には、車両用ケーブル1Aは、第1固定部4a,第2固定部4b及び第3固定部4cを有している。車両用ケーブル1Aは、これら3つの固定部4(第1固定部4a,第2固定部4b及び第3固定部4c)を介して、所定の取付態様で車両に取り付けられる。
【0014】
より特定的には、車両用ケーブル1Aは、第1固定部4a,第2固定部4b及び第3固定部4cが、車両の外装パネルや内装パネル等に設けられている貫通孔に固定されることにより、当該車両の所定の位置に、所定の向きで取り付けられる。
【0015】
<信号線>
図2Aは、図1中のa-aに沿う車両用ケーブル1Aの断面図である。図2Bは、図1中のb-bに沿う車両用ケーブル1Aの断面図である。なお、図2A図2Bでは、図1に示されているコネクタ3や固定部4の図示は省略されている。
【0016】
車両用ケーブル1Aは2本の電線を有している。より特定的には、車両用ケーブル1Aは、2本の信号線10a,10bを有している。
【0017】
それぞれの信号線10a,10bは、中心導体11と、中心導体11を被覆している絶縁体12とから構成される絶縁電線である。絶縁体12の材料は特に限定されないが、本実施の形態の絶縁体12は架橋ポリエチレン(XLPE/Cross-linked Polyethylene)によって形成されている。
【0018】
信号線10a,10bは、互いに接触している。より特定的には、信号線10aの絶縁体12の外周面と信号線10bの絶縁体12の外周面とは互いに接触している。
【0019】
<シース>
車両用ケーブル1Aは、信号線10a,10bを被覆するシース20を有している。シース20の材料は特に限定されないが、本実施の形態のシース20の材料は、熱可塑性樹脂、より特定的には熱可塑性ウレタンである。
【0020】
シース20は、信号線10a,10bの周囲に押し出された熱可塑性ウレタンによって形成されている。この結果、シース20は、信号線10aと信号線10bとの間の隙間(谷間)に入り込んでいる。つまり、車両用ケーブル1Aは、充実構造のケーブルである。また、シース20は、車両用ケーブル1Aの最外層を形成している。
【0021】
もっとも、車両用ケーブル1Aの構造は充実構造に限定されない。例えば、信号線10a,10とシース20との間に介在が設けられていてもよい。
【0022】
信号線10a,10bの先端は、シース20の先端からシース20の外に引き出されており、信号線10a,10bの後端は、シース20の後端からシース20の外に引き出されている。
【0023】
図1に示されているABSセンサ2は、シース20の先端から引き出されている信号線10a,10bの先端に接続されている。また、図1に示されているコネクタ3は、シース20の後端から引き出されている信号線10a,10bの後端に接続されている。
【0024】
以下の説明では、ABSセンサ2及びコネクタ3を除いた部分を“ケーブル部分”と呼んでABSセンサ2及びコネクタ3を含む車両用ケーブル1Aの全体と区別する場合がある。もっとも、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。
【0025】
<固定部(グロメット)>
図1に示されているそれぞれの固定部4はグロメットである。そこで、以下の説明では、第1固定部4aを“グロメット4a”,第2固定部4bを“グロメット4b”,第3固定部4cを“グロメット4c”と呼ぶ場合がある。また、グロメット4a,4b,4cを“グロメット4”と総称する場合がある。
【0026】
グロメット4a,4b,4cは、シース20の長手方向に沿って一列に並んでいる。より特定的には、グロメット4a,4b,4cは、この順でシース20の先端から後端に向かって一列に並んでいる。つまり、それぞれのグロメット4a,4b,4cは、シース20上の異なる位置に設けられている。言い換えれば、グロメット4a,4b,4cは、ケーブル部分の異なる位置に設けられている。
【0027】
グロメット4a,4b,4cはゴム製である。より特定的には、グロメット4a,4b,4cは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM rubber)によって形成されている。
【0028】
グロメット4の形状や大きさは適宜変更することができるが、本実施の形態のグロメット4aは円盤状であり、グロメット4b,4cは円筒状である。もっとも、グロメット4a,4b,4cは、ケーブル部分を挿入可能な挿入孔を備えている点で共通している。また、グロメット4a,4b,4cは、車両に設けられている貫通孔の縁が嵌合可能な環状溝5を備えている点でも共通している。
【0029】
グロメット4a,4b,4cが備える挿入孔の直径(内径)は、ケーブル部分の直径(外径)よりも僅かに小さい。そこで、ケーブル部分にグロメット4a,4b,4cを装着する際には、グロメット4a,4b,4cを弾性変形させて挿入孔を僅かに拡径させる。グロメット4a,4b,4cを弾性変形させる際には、例えば、圧縮エアーが用いられる。
【0030】
上記のようにしてケーブル部分に装着されているグロメット4a,4b,4cは、自己の弾性復元力によってケーブル部分に固定される。よって、グロメット4a,4b,4cがケーブル部分に対して容易に移動することはない。もっとも、グロメット4a,4b,4cをケーブル部分に接着したり、溶着させたりしてもよい。
【0031】
<情報表示部>
図1に示されるように、シース20の表面20aには複数の情報表示部30が設けられている。より特定的には、第1情報表示部31及び第2情報表示部32がシース20の表面20aに設けられている。
【0032】
もっとも、情報表示部30は、シース20の表面20aに設定された帯状の領域であって、情報40(図3)が表示されている領域である。図1図3では、情報表示部30を明瞭に示すために、情報表示部30にハッチング(ドットパターン)を付してある。しかし、実際のシース20の表面20aに、情報表示部30とその他の領域との境界線は存在しておらず、図示されているドットパターンも存在していない。
【0033】
情報表示部30は、シース20の長手方向において隣接する2つのグロメット4の間に設けられている。より特定的には、第1情報表示部31は、グロメット4aとグロメット4bとの間に設けられている。また、第2情報表示部32は、グロメット4bとグロメット4cとの間に設けられている。
【0034】
シース20の長手方向に沿う第1情報表示部31の寸法(長さL1)は、シース20の長手方向に沿うグロメット4aとグロメット4bとの離間距離に相当する。また、シース20の長手方向に沿う第2情報表示部32の寸法(長さL2)は、シース20の長手方向に沿うグロメット4bとグロメット4cとの離間距離に相当する。
【0035】
なお、本実施の形態における第2情報表示部32の長さL2は、第1情報表示部31の長さL1よりも長い(L1<L2)。
【0036】
シース20の周方向に沿う第1情報表示部31の寸法(幅W1)と、同方向に沿う第2情報表示部32の寸法(幅W2)とは、同一または略同一である。また、幅W1及び幅W2は、シース20の周長の概ね1/4に相当する。
【0037】
シース20の周方向における第1情報表示部31の位置と第2情報表示部32の位置とは一致していない。より特定的には、シース20の周方向における第1情報表示部31の位置と第2情報表示部32の位置とは90度異なっている。言い換えれば、第1情報表示部31と第2情報表示部32とのずれ角は90度である。
【0038】
より特定的には、図2A図2Bに示されている断面内で第1情報表示部31を幅方向に二分する仮想直線Pと第2情報表示部32を幅方向に二分する仮想直線Qとが成す角度は90度である。
【0039】
<情報>
情報表示部30には、車両に対する車両用ケーブル1Aの取付態様を示す情報が表示されている。情報表示部30に表示される情報は、文字,図形,記号若しくは数字若しくはこれらの組み合わせによって構成される。これにより、色覚異常を有する作業者が作業する場合であっても、色による判別ではなく、文字,図形,記号若しくは数字若しくはこれらの組み合わせによる判別が可能となり、作業しやすくなる。
【0040】
図3は、第1情報表示部31及び第2情報表示部32にそれぞれ表示されている情報40を模式的に示す説明図である。図3に示されている情報40は、交互に繰り返される「右」の文字(漢字)と「R」の文字(ローマ字)とから構成されており、車両用ケーブル1Aの取付位置が車両の右側であることを示している。
【0041】
情報40を構成している文字(文字列)は、シース20の表面20aの一部である第1情報表示部31や第2情報表示部32に照射されたレーザ光によって描かれている。言い換えれば、情報40を構成している文字は、レーザーマーカによって第1情報表示部31や第2情報表示部32に描かれている。
【0042】
<情報表示部の位置や情報表示部に表示されている情報が示す取付態様>
既述のとおり、第1情報表示部31及び第2情報表示部32にそれぞれ表示されている情報40は、車両用ケーブル1Aの取付位置が車両の右側であることを示している。つまり、第1情報表示部31及び第2情報表示部32に表示されている情報40は、車両用ケーブル1Aの取付態様の1つである“取付位置”を示している。
【0043】
さらに、シース20の周方向で90度異なる第1情報表示部31及び第2情報表示部32の位置は、車両用ケーブル1Aの取付態様の他の1つである“捻回方向”および“捻回角度”を示している。
【0044】
したがって、第1情報表示部31及び第2情報表示部32に表示されている情報40や第1情報表示部31及び第2情報表示部32の位置を頼りに車両用ケーブル1Aを車両に取り付ければ、当該車両用ケーブル1Aを所定の取付態様で車両に取り付けることができる。
【0045】
第1情報表示部31及び第2情報表示部32の位置が車両に対する車両用ケーブル1Aの取付態様(捻回方向および捻回角度)を示し得ることをより分かりやすく説明するために、次のような取付態様を想定する。
【0046】
具体的には、車両用ケーブル1Aの取付態様として、車両用ケーブル1Aを90度または略90度捻回させることが定められていると想定する。別の見方をすると、ABSセンサ2を所定の位置に所定の向きで配置するためには、車両用ケーブル1Aを90度または略90度捻回させる必要があると想定する。
【0047】
上記想定の下、第2情報表示部32を車両の一側に向けてグロメット4c,4bを車両に固定する。その後、第1情報表示部31を、第2情報表示部32を向けた側と同じ側に向けてグロメット4aを車両に固定する。つまり、第1情報表示部31及び第2情報表示部32の両方が車両に対して同じ側を向くように、車両用ケーブル1Aを車両に取り付ける。
【0048】
すると、第1情報表示部31及び第2情報表示部32の位置は、シース20の周方向で90度異なっているので、第1情報表示部31が設けられている第1区間(グロメット4aとグロメット4bとの間の区間)は、第2情報表示部32が設けられている第2区間(グロメット4bとグロメット4cとの間の区間)に対して90度または略90度捻回される。つまり、車両用ケーブル1Aが想定した取付態様(捻回方向および捻回角度)で車両に取り付けられる。
【0049】
上記のような取付工程を作業者の視点で説明すると、次のとおりである。作業者は、車両の一側において、第2情報表示部32が自身と正対する向きでグロメット4c,4bを車両に固定する。より特定的には、作業者は、第2情報表示部32が自身と正対する向きでグロメット4c,4bを車輪やサスペンション装置の近傍(例えば、タイヤハウス)に設けられている貫通孔に固定する。その後、作業者は、第1情報表示部31が自身と正対するように車両用ケーブル1Aを捻回させた上で、グロメット4c,4bを固定した貫通孔よりも車輪に近い他の貫通孔にグロメット4aを固定する。
【0050】
上記取付態様とは異なる取付態様が求められる場合、求められる取付態様に応じて第1情報表示部31及び第2情報表示部32に表示される情報40や、第1情報表示部31及び第2情報表示部32の位置が変更される。
【0051】
例えば、車両用ケーブル1Aの取付位置が車両の左側である場合、図3に示されている情報40を構成している漢字が「右」から「左」に変更され、ローマ字が「R」から「L」に変更される。
【0052】
また、車両用ケーブル1Aの捻回角度が90度よりも小さい場合や大きい場合には、第1情報表示部31と第2情報表示部32とのずれ角が捻回角度に応じて変更される。なお、第1情報表示部31と第2情報表示部32とのずれ角によって捻回角度を示す観点からは、ずれ角が10度~180度の範囲内であることが好ましい。
【0053】
(第2実施形態)
以下、実施の形態の他の一例について図面を参照しながら説明する。図4は、本実施の形態に係る車両用ケーブル1Bの側面図である。
【0054】
本実施の形態に係る車両用ケーブル1Bは、第1実施形態に係る車両用ケーブル1Aと同一の基本構成を備えている。そこで、車両用ケーブル1Aと同一または実質的に同一の構成についての説明は適宜省略し、主に車両用ケーブル1Aとの相違点について説明する。
【0055】
<車両用ケーブルの概要>
本実施の形態に係る車両用ケーブル1Bは複数本の電線を有している。より特定的には、車両用ケーブル1Bは、信号線50と、電源線61,62と、これらを被覆する共通のシース70とを有している。
【0056】
以下の説明では、信号線50を“信号ケーブル50”と呼び、電源線61を“電源ケーブル61”と呼び、電源線62を“電源ケーブル62”と呼び、シース70を“外部シース70”と呼ぶ場合がある。つまり、本実施の形態に係る車両用ケーブル1Bは、信号ケーブル50と電源ケーブル61,62とが共通の外部シース70によって被覆されて一体化されている複合ケーブル(複合ハーネス)である。
【0057】
<信号線(信号ケーブル)>
図5は、図4中のc-c線に沿う車両用ケーブル1Bの断面図である。信号ケーブル50は、信号ケーブル50は、2本の信号線50a,50bと、信号線50a,50bを被覆するシース51と、を有している。
【0058】
それぞれの信号線50a,50bは、中心導体52と、中心導体52を被覆している絶縁体53とから構成される絶縁電線である。また、シース51は、信号線50a,50bの周囲に押し出された熱可塑性ウレタンによって形成されている。
【0059】
つまり、車両用ケーブル1Bにおける信号線50a,50bは、車両用ケーブル1Aにおける信号線10a,10bに相当する。また、車両用ケーブル1Bにおけるシース51は、車両用ケーブル1Aにおけるシース20に相当する。以下の説明では、シース51を“内部シース51”と呼んでシース(外部シース)70と区別する場合がある。
【0060】
図4に示されるように、外部シース70の先端から引き出されている信号ケーブル50の先端にはABSセンサ2が接続されている。一方、外部シース70の後端から引き出されている信号ケーブル50の後端にはコネクタ3が接続されている。
【0061】
<電源線(電源ケーブル)>
再び図5を参照する。電源ケーブル61,62は、中心導体63と、中心導体63を被覆している絶縁体64とから構成される絶縁電線である。絶縁体64は、架橋ポリエチレン(XLPE/Cross-linked Polyethylene)によって形成されている。
【0062】
図4に示されるように、外部シース70の先端から引き出されている電源ケーブル61,62の先端には電源コネクタ6が接続され、外部シース70の後端から引き出されている電源ケーブル61,62の後端にはコネクタ7が接続されている。
【0063】
電源コネクタ6は、車両に搭載されている電気ブレーキ装置と電気的に接続される。より特定的には、電源コネクタ6は、電動パーキングブレーキ(EPB/Electric Parking Brake)装置が備えるコネクタに接続される。一方、コネクタ7は、電動パーキングブレーキ装置を制御する制御装置が備えるコネクタに接続される。
【0064】
つまり、電源ケーブル61,62は、電動パーキングブレーキ装置に電力を供給する給電ケーブルである。もっとも、電源コネクタ6は、電動パーキングブレーキ装置以外の電気ブレーキ装置が備えるコネクタに接続されることもある。
【0065】
<シース(外部シース)>
外部シース70は、信号ケーブル50及び電源ケーブル61,62の周囲に押し出された熱可塑性ウレタンによって形成されている。この結果、図5に示されるように、外部シース70は、信号ケーブル50と電源ケーブル61,62との間の隙間や、電源ケーブル61と電源ケーブル62との間の隙間に入り込んでいる。つまり、車両用ケーブル1Bは、充実構造の複合ケーブル(複合ハーネス)である。また、外部シース70は、車両用ケーブル1Bの最外層を形成している。
【0066】
図4に示されるように、外部シース70上には、グロメット4a,4b,4cが外部シース70の長手方向に沿って一列に並んでいる。また、外部シース70の表面70aには複数の情報表示部30が設けられている。
【0067】
より特定的には、グロメット4aとグロメット4bとの間に第1情報表示部31が設けられており、グロメット4bとグロメット4cとの間に第2情報表示部32が設けられている。
【0068】
第1情報表示部31及び第2情報表示部32には、第1実施形態と同様に、情報40(図3)が表示されている。したがって、第1情報表示部31及び第2情報表示部32に表示されている情報40や第1情報表示部31及び第2情報表示部32の位置を頼りに車両用ケーブル1Bを車両に取り付ければ、当該車両用ケーブル1Bを所定の取付態様で車両に取り付けることができる。
【0069】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、情報表示部30の数は適宜増減させることができる。例えば、第1情報表示部31又は第2情報表示部32の一方を省略してもよい。
【0070】
仮に、第2情報表示部32が省略されても、第1情報表示部31に表示されている情報40と第1情報表示部31の位置とによって取付態様を示し得る。具体的には、第1情報表示部31に表示されている情報40(図3)によって、車両用ケーブル1Aの取付位置が車両の右側であることが示される。
【0071】
また、第1情報表示部31を車両に対して所定の側に向けてグロメット4を車両に固定すれば、車両用ケーブル1A,1Bは所定の向きで車両に取り付けられる。
【0072】
情報表示部30の長さや幅は適宜変更することができる。また、1つの情報表示部30に表示されている情報40と他の1つの情報表示部30に表示されている情報40とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0073】
図6(a),(b)は、他の一実施の形態の情報表示部30に表示されている情報40を模式的に示す説明図である。
【0074】
図6(a)に示されている情報40は、一列に並ぶ複数の四角形の図形によって構成されている。図6(a)に示されている情報40を構成している図形は、文字,数字,記号などとは異なり、何らかの観念を示すものではない。しかし、図6(a)に示されている図形やその他の図形によって構成される情報40と取付態様との関係が予め定められていれば、当該情報40は所定の取付態様を示し得る。
【0075】
図6(b)に示されている情報40は、数字と文字(ローマ字)との組み合わせによって構成されている。図6(b)に示されている情報40は、当該車両用ケーブルの製品番号である。製品番号である情報40も、当該情報40と取付態様との関係が予め定められていれば、所定の取付態様を示し得る。例えば、製品番号と車種との関係が予め定められていれば、当該情報40は取付態様の1つ(当該ケーブルが取り付けられる車両の種類)を示し得る。
【0076】
情報40を構成する文字,図形,記号,数字は、レーザーマーカ以外の手段によって描いてもよい。もっとも、レーザーマーカを用いれば、ペイントマーカを用いる場合に比べて、情報40を構成する文字などを短時間のうちに正確かつ鮮明に描くことができる。また、情報40を構成する文字などが擦れて不鮮明なることが防止され得る。なお、情報40は、人間によって読み取られる情報に限られず、読み取り装置によって読み取られる情報であってもよい。
【0077】
固定部4はグロメットに限定されない。固定部4は、例えば、一端がケーブル部分にかしめられ、他端が車両に固定される金属製や樹脂製の固定部材や連結部材であってもよい。
【0078】
本発明の車両用ケーブルは、センサケーブルや電源ケーブルに限られない。また、本発明の車両用ケーブルが備える電線の本数,構造,用途などは、特に限定されない。
【0079】
本発明の車両用ケーブルが複数本の電線を備えている場合、それら電線の全部または一部が撚り合わされていてもよい。また、複数本の電線の全部または一部がシールド層を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1A,1B 車両用ケーブル
2 センサ(ABSセンサ)
3 コネクタ
4 固定部(グロメット)
4a 第1固定部(グロメット)
4b 第2固定部(グロメット)
4c 第3固定部(グロメット)
5 環状溝
6 電源コネクタ
7 コネクタ
10a,10b 信号線
11 中心導体
12 絶縁体
20 シース
20a 表面
30 情報表示部
31 第1情報表示部
32 第2情報表示部
40 情報
50 信号線(信号ケーブル)
50a,50b 信号線
51 シース(内部シース)
52 中心導体
53 絶縁体
61,62 電源線(電源ケーブル)
63 中心導体
64 絶縁体
70 シース(外部シース)
70a 表面
P,Q 仮想直線
L1,L2 長さ
W1,W2 幅
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6