(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175530
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】機能性基板製造方法及び機能性基板製造システム
(51)【国際特許分類】
H05K 3/10 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
H05K3/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093382
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】京相 忠
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343AA26
5E343BB23
5E343BB25
5E343BB28
5E343BB72
5E343DD02
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5E343DD15
5E343ER45
5E343FF02
5E343FF05
5E343FF11
5E343GG08
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】効率のよい機能性液体の膜の除去と、機能性液体の膜が生成される基板に対するダメージの低減との両立が実現される、機能性基板製造方法及び機能性基板製造システムを提供する。
【解決手段】機能性基板製造方法は、基板に対して機能性液体のパターンを印刷し(S14)、機能性液体の溶剤を蒸発させて、機能性液体の未完成膜を生成し(S16)、未完成膜に対してレーザ光を照射して、未完成膜の一部を除去する(S18)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して機能性液体のパターンを印刷し、
前記機能性液体の溶剤を蒸発させて、前記機能性液体の未完成膜を生成し、
前記未完成膜に対してレーザ光を照射して、前記未完成膜の一部を除去する機能性基板製造方法。
【請求項2】
前記機能性液体は、銀、アルミニウム及び金の少なくともいずれかを含有する請求項1に記載の機能性基板製造方法。
【請求項3】
前記未完成膜の一部の除去は、前記未完成膜に対する吸収率が50パーセントを超える波長域のレーザ光が適用される請求項1に記載の機能性基板製造方法。
【請求項4】
前記未完成膜の一部の除去は、波長が532ナノメートルのレーザ光が適用される請求項3に記載の機能性基板製造方法。
【請求項5】
前記未完成膜の一部の除去は、前記未完成膜に対する吸収率が40パーセントを超える波長域のレーザ光が適用される請求項1に記載の機能性基板製造方法。
【請求項6】
前記未完成膜の一部の除去は、波長が1064ナノメートルのレーザ光が適用される請求項5に記載の機能性基板製造方法。
【請求項7】
前記未完成膜の一部の除去に対して適用されるレーザ光の出力は、0.6ワット以下である請求項1に記載の機能性基板製造方法。
【請求項8】
一部が除去された前記未完成膜を加熱して、前記機能性液体の完成膜を生成する請求項1に記載の機能性基板製造方法。
【請求項9】
前記未完成膜の一部の除去に対して適用されるレーザ光は、前記完成膜の吸収率が前記未完成膜の吸収率未満である請求項8に記載の機能性基板製造方法。
【請求項10】
前記未完成膜の一部の除去に対して適用されるレーザ光は、前記完成膜に対する吸収率が20パーセント以下である請求項8に記載の機能性基板製造方法。
【請求項11】
基板に対して機能性液体のパターンを印刷する印刷装置と、
前記機能性液体の溶剤を蒸発させて、前記機能性液体の未完成膜を形成する未完成膜生成装置と、
前記未完成膜に対してレーザ光を照射して、前記未完成膜の一部を除去するレーザ加工装置と、
を備える機能性基板製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機能性基板製造方法及び機能性基板製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、セラミック焼成層と導体層とが交互に積層される多層セラミック基板の製造方法が記載される。同文献に記載の製造方法では、セラミックグリーンシートに対して未焼結の導体ペースト層が印刷され、大まかなパターン形状を有する導体ペースト層に対してレーザ加工が施され、導体パターンが形成される。レーザ加工が施されたグリーンシートは、積層され、圧着され、一体化された積層体が形成される。積層体が焼成され、多層セラミック基板が得られる。
【0003】
特許文献2は、基板上に配置した導電粒子からなる導体パターン前駆体を加熱焼成して、導体パターンを形成する導体パターン形成方法が記載される。同文献に記載の方法は、基板に対して導体パターン前駆体を印刷し、導体パターン前駆体に対して光を照射して焼成させる。導体パターン前駆体に対して照射される光は、導体パターン前駆体に吸収されやすく、基板に吸収されにくい光が適用される。
【0004】
特許文献3は、セラミック基板上に厚膜導電ペーストを印刷塗布し、予備乾燥後に局所的にレーザ光を照射して厚膜導電ペーストを加熱焼成して、セラミック基板上に厚膜電子回路を形成する方法が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-21386号公報
【特許文献2】特開2010-87176号公報
【特許文献3】特開昭61-240667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板上に生成された機能性膜に対してレーザ光を照射して機能性膜の一部を除去加工することで、機能性膜の寸法精度の向上が可能である。しかし、レーザ光の吸収率が相対的に低い機能性膜を除去する加工をしようとすると、レーザ光の出力が不足する場合に機能性膜を除去する加工が困難になる。一方、レーザ光の出力を上げると、機能性膜を除去する加工が可能となるが、基板を痛めてしまう懸念がある。
【0007】
例えば、銀膜を加工する際に、355ナノメートルなどの銀が吸収しやすい波長域を使用すればよい。一方、銀が吸収しやすい波長域は、ガラス基板が吸収しやすい波長域であり、ガラス基板が用いられる場合のレーザ光の波長域として355ナノメートルなどの銀が吸収しやすい波長域は好ましくない。
【0008】
フェトム秒レーザ及びピコ秒データなどの超短パルスレーザを用いることで、基板へのダメージを減らせるが、フェトム秒レーザ等の超短パルスレーザの採用は、装置コストが相対的に高くなり、好ましくない。
【0009】
特許文献1に記載の製造方法は、セラミックグリーンシートの変形に起因するレーザ加工の精度低下の抑制を目的として、導電ペースト層に対するレーザ加工の後に焼成工程が実施されるものであり、導電ペースト層自体の加工精度の確保を目的とするレーザ光の照射を実施していない。
【0010】
特許文献2に記載の方法は、導体パターン前駆体の焼成を目的として、導体パターン前駆体への光の照射が実施されるものであり、導体パターン前駆体の除去を目的とする光の照射を実施していない。
【0011】
同様に、特許文献3に記載の方法は、厚膜導電ペーストの焼成を目的として、電子回路図形に沿ってレーザ光を走査させ、厚膜導電ペーストの不要な部分を溶解して除去するものであり、厚膜導電ペーストの除去を目的とするレーザ光の照射を実施していない。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、効率のよい機能性液体の膜の除去と、機能性液体の膜が生成される基板に対するダメージの低減との両立が実現される、機能性基板製造方法及び機能性基板製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の第1態様に係る機能性基板製造方法は、基板に対して機能性液体のパターンを印刷し、機能性液体の溶剤を蒸発させて、機能性液体の未完成膜を生成し、未完成膜に対してレーザ光を照射して、未完成膜の一部を除去する機能性基板製造方法である。
【0014】
本開示の第1態様に係る機能性基板製造方法によれば、機能性液体の未完成膜に対してレーザ光が照射され、未完成膜の一部が除去される。これにより、機能性液体の完成膜の除去が困難な場合であっても、完成膜の未完成状態である未完成膜の除去が実現され、かつ、完成膜が生成される基板に対するダメージの低減が実現される。
【0015】
機能性液体の一例として、導体として機能する金属粒子を含有する金属液体が挙げられる。
【0016】
未完成膜は、機能性液体の完成膜が生成される際の中間状態を適用してもよい。未完成膜は、完成膜における規定の機能が発現されていなくてもよく、加熱等の処理が施された後の完成膜において規定の機能が発現されればよい。
【0017】
第2態様に係る機能性基板製造方法は、第1態様の機能性基板製造方法において、機能性液体は、銀、アルミニウム及び金の少なくともいずれかを含有してもよい。
【0018】
かかる態様によれば、完成膜を除去する加工が困難な材料について、未完成膜における一部の除去が可能となる。
【0019】
第3態様に係る機能性基板製造方法は、第1態様又は第2態様の機能性基板製造方法において、未完成膜の一部の除去は、未完成膜に対する吸収率が50パーセントを超える波長域のレーザ光が適用されてもよい。
【0020】
かかる態様によれば、未完成膜を除去する加工の効率が相対的に高い波長域のレーザ光の照射を適用して、未完成膜を除去する好ましい加工が実現される。
【0021】
レーザ光は、半導体レーザ等の固体レーザが適用されてもよいし、炭酸ガスレーザ等の気体レーザが適用されてもよい。
【0022】
第4態様に係る機能性基板製造方法は、第3態様の機能性基板製造方法において、未完成膜の一部の除去は、波長が532ナノメートルのレーザ光が適用されてもよい。
【0023】
第5態様に係る機能性基板製造方法は、第1態様又は第2態様の機能性基板製造方法において、未完成膜の一部の除去は、未完成膜に対する吸収率が40パーセントを超える波長域のレーザ光が適用されてもよい。
【0024】
かかる態様によれば、未完成膜を除去する加工の効率が相対的に高い波長域のレーザ光の照射を適用して、未完成膜を除去する好ましい加工が実現される。
【0025】
第6態様に係る機能性基板製造方法は、第5態様の機能性基板製造方法において、未完成膜の一部の除去は、波長が1064ナノメートルのレーザ光が適用されてもよい。
【0026】
第7態様に係る機能性基板製造方法は、第1態様から第6態様のいずれか一態様の機能性基板製造方法において、未完成膜の一部の除去に対して適用されるレーザ光の出力は、0.6ワット以下であってもよい。
【0027】
かかる態様によれば、効率のよい未完成膜を除去する加工が実現され、かつ、基板に対するダメージを回避し得る。
【0028】
第8態様に係る機能性基板製造方法は、第1態様から第7態様のいずれか一態様の機能性基板製造方法において、一部が除去された未完成膜を加熱して、機能性液体の完成膜を生成してもよい。
【0029】
かかる態様によれば、規定の機能が発現した完成膜が生成される。
【0030】
かかる態様において、完成膜である機能性膜の機能の検査が実施されてもよい。
【0031】
第9態様に係る機能性基板製造方法は、第8態様の機能性基板製造方法において、未完成膜の一部の除去に対して適用されるレーザ光は、完成膜の吸収率が未完成膜の吸収率未満であってもよい。
【0032】
かかる態様によれば、完成膜の状態においてレーザ加工が困難であっても、未完成膜の状態におけるレーザ加工が可能である。
【0033】
第10態様に係る機能性基板製造方法は、第8態様の機能性基板製造方法において、未完成膜の一部の除去に対して適用されるレーザ光は、完成膜に対する吸収率が20パーセント以下であってもよい。
【0034】
かかる態様によれば、完成膜の状態においてレーザ加工が困難であっても、未完成膜の状態におけるレーザ加工が可能である。
【0035】
本開示の第11態様に係る機能性基板製造システムは、基板に対して機能性液体のパターンを印刷する印刷装置と、機能性液体の溶剤を蒸発させて、機能性液体の未完成膜を形成する未完成膜生成装置と、未完成膜に対してレーザ光を照射して、未完成膜の一部を除去するレーザ加工装置と、を備える機能性基板製造システムである。
【0036】
本開示の第11態様に係る機能性基板製造システムによれば、本開示の第1態様に係る機能性基板製造方法と同様の作用効果を得ることが可能である。第2態様から第10態様に係る機能性基板製造方法の構成要件は、他の態様に係る機能性基板製造システムの構成要件へ適用し得る。
【発明の効果】
【0037】
本開示によれば、機能性液体の未完成膜に対してレーザ光が照射され、未完成膜の一部が除去される。これにより、機能性液体の完成膜の除去が困難な場合であっても、完成膜の未完成状態である未完成膜の除去が実現され、かつ、完成膜が生成される基板に対するダメージの低減が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は実施形態に係る導電基板製造方法の手順を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は機能性材料ごとのレーザ光の波長と吸収率との関係を示すグラフである。
【
図3】
図3は銀インクの未完成膜の一例におけるレーザ光の波長と吸収率との関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は銀インクの未完成膜の他の一例におけるレーザ光の波長と吸収率との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は銀インクの未完成膜における状態の違いを表す撮影画像である。
【
図7】
図7は実施形態に係る機能性基板製造システムの全体構成図である。
【
図8】
図8は
図7に示す機能性基板製造システムの電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図9】
図9は
図7に示す機能性基板製造システムの電気的構成のハードウェア構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は適宜省略する。また、以下の実施形態において複数の構成要素が例示列挙される場合、複数の構成要素の少なくとも1つを含むと解釈し得る。
【0040】
[実施形態に係る導電基板製造方法]
図1は実施形態に係る導電基板製造方法の手順を示すフローチャートである。
図1に手順を示す導電基板製造方法は、基板に対して導電インクを印刷する印刷装置、及び導電インクの未完成膜を加工するレーザ加工装置を備える導電基板製造システムにおいて実施される。なお、実施形態に記載の導電基板製造方法は、機能性基板製造方法の一例である。
【0041】
条件設定工程S10では、導電基板製造システムに具備される制御装置は、印刷装置に対して印刷条件を設定する。また、条件設定工程S10において制御装置は、レーザ加工装置に対して加工条件を設定する。印刷条件は、基板の種類、導電インクの種類、及び温度等の印刷環境などが含まれる。加工条件は、レーザ光の波長及びレーザ光の出力などが含まれる。条件設定工程S10が実行される前に、印刷装置及びレーザ加工装置のイニシャライズが実行されてもよい。
【0042】
前処理工程S12では、制御装置は、印刷装置を適用して実施される基板に対する導電インクの印刷が実施される前に、基板の温度調整及び基板の姿勢の調整などの前処理を実行する。
【0043】
印刷工程S14では、印刷装置は、基板に対して導電インクのパターンを形成する印刷を実行する。印刷には、インクジェット方式、ディスペンサが用いられる方式、及びエアロゾルジェット技術が用いられる方式などのオンデマンド印刷を適用し得る。
【0044】
すなわち、印刷工程S14では、導電インクのパターンを表す印刷データを取得し、印刷データに応じて印刷ヘッドを動作させて、基板に対して導電インクを吐出させ、導電インクのパターンが形成される。印刷工程S14には、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷及びオフセット印刷などの様々な方式の印刷が適用されてもよい。
【0045】
導電インクは、印刷が実施される際に導体膜として機能する規定の導電性を有していなくてもよく、加熱等が適用される焼成工程を経て焼成された状態において、規定の導電性を有していればよい。
【0046】
未完成膜生成工程S16では、基板に対して印刷された導電インクの溶剤を蒸発させ、導電インクの未完成膜が生成される。導電インクの未完成膜は、導体として使用できない状態であってよい。導電インクの未完成膜を加熱して焼成させると、規定の電気的性能を有する完成膜が生成される。未完成膜は、基板おける位置が固定されていればよく、例えば、ゲル状であってもよい。
【0047】
未完成膜生成工程S16は、未完成膜生成工程S16が実行される装置の内部における環境温度が適用される待機処理を適用して、導電インクの溶剤を蒸発させてもよいし、環境温度を超える温度が適用される加熱処理を適用して、導電インクの溶剤を蒸発させてもよい。
【0048】
条件設定工程S10では、未完成膜生成工程S16における処理温度及び処理時間などの未完成膜生成条件が設定される。未完成膜生成条件は、基板の種類及び導電インクの種類に応じて予め規定される。
【0049】
未完成膜除去工程S18では、レーザ加工装置は、導体膜のパターン領域として不要となる非パターン領域の未完成膜に対してレーザ光を照射して、非パターン領域の未完成膜を除去する。未完成膜除去工程S18では、パターン領域の未完成膜が適切な形状へ加工されてもよい。導体膜のパターン領域は、設計において規定される領域として把握される。導体膜のパターン領域は、製造上の誤差が含まれていてもよい。
【0050】
非パターン領域の未完成膜は、導電インクの微液滴の発生に起因して生成され得る。非パターン領域の未完成膜は、パターン領域の未完成膜と連続する場合があり得る。微液滴は、主液滴よりも小さいサイズを有し、パターン領域へ着弾する主液滴から分離され、非パターン領域へ着弾する。微液滴は、スプラッシュ、サテライト及びミストなどと称され得る。
【0051】
完成膜生成工程S20では、ヒータ等が具備される加熱装置が用いられ、非パターン領域の未完成膜が除去された基板に対して加熱処理が施され、導電インクの完成膜である導体膜が生成される。すなわち、完成膜生成工程S20は、導電インクの未完成膜を焼成して導体膜を生成する焼成工程である。
【0052】
導電インクの導電材料が主として銀の場合、加熱温度が130℃であり、加熱時間が1時間という処理条件が適用され得る。完成膜生成工程S20に対して適用される加熱装置の例として、オーブンが挙げられる。
【0053】
条件設定工程S10では、完成膜生成工程S20における処理温度及び処理時間などの完成膜生成条件が設定される。未完成膜生成条件と同様に、完成膜生成条件は基板の種類及び導電インクの種類に応じて予め規定される。
【0054】
例えば、未完成膜生成工程S16の処理温度は、完成膜生成工程S20の処理温度よりも低く設定してもよい。また、未完成膜生成工程S16の処理時間は、完成膜生成工程S20の処理時間よりも短く設定してもよい。
【0055】
検査工程S22では、導電パターンが形成された基板の検査が実施される。検査工程S22では、テスターを用いて導電パターンの切断及び短絡が検査される。検査工程S22において、導電パターンを撮影した撮影データに基づいて、導電パターンの形状が検査されてもよい。
【0056】
終了判定工程S24では、規定の終了条件を満たすか否かが判定される。規定の終了条件を満たす場合の例として、規定の枚数の基板に対して導電パターンが生成された場合が挙げられる。
【0057】
終了判定工程S24において規定の終了条件を満たしていない場合はNo判定となり、終了判定工程S24においてYes判定となるまで、条件設定工程S10から終了判定工程S24までの各工程が繰り返し実行される。一方、終了判定工程S24において規定の終了条件を満たしている場合はYes判定となり、規定の終了処理が実行され、導電基板製造方法の手順は終了される。
【0058】
図1に示す導電基板製造方法は、工程の追加、工程の変更及び工程の削除が可能である。すなわち、
図1に示す各工程は、適宜、変更又は省略されてもよい。また、
図1に図示されない工程が追加されてもよい。
【0059】
[未完成膜除去工程に適用されるレーザ光の波長域]
図2は機能性材料ごとのレーザ光の波長と吸収率との関係を示すグラフである。
図2には、完成膜となった銀、アルミニウム及び金におけるレーザ光の波長と吸収率との関係が図示される。同図に示すグラフの横軸は波長であり、波長の単位はナノメートルである。また、横軸は吸収率であり、吸収率の単位はパーセントである。
図3及び
図4に示すグラフの横軸及び縦軸も同様である。
【0060】
例えば、完成膜となった銀膜はレーザ光を吸収しにくく、紫外線波長域以下の波長域ではレーザ光の吸収を示すが、紫外線波長域を超える波長域では、レーザ光の吸収をほとんど示さない。
【0061】
具体的には、完成膜となった銀膜は、1064ナノメートルの波長を有する基本波長レーザの吸収率が2パーセントであり、532ナノメートルの波長を有するグリーンレーザの吸収率が5パーセントである。また、完成膜となった銀膜は、355ナノメートルの波長を有する紫外レーザの吸収率が20パーセントである。
【0062】
完成膜となったアルミニウム膜は、基本波長レーザの吸収率が5パーセントであり、グリーンレーザの吸収率が8パーセントであり、紫外レーザの吸収率が8パーセントである。
【0063】
完成膜となった金膜は、基本波長レーザの吸収率が5パーセントであり、グリーンレーザの吸収率が20パーセントである。すなわち、完成膜となった銀膜、アルミニウム膜及び金膜は、532ナノメートル以上1064ナノメートル以下の波長を有するレーザ光の吸収率が20パーセント以下である。完成膜となった銀膜及びアルミニウム膜は、355ナノメートル以上1064ナノメートル以下の波長を有するレーザ光の吸収率が20パーセント以下である。
【0064】
すなわち、完成膜となった銀膜の基本波長レーザの吸収率は、後述する未完成膜の銀膜の基本波長レーザの吸収率未満である。グリーンレーザの吸収率についても同様である。また、完成膜となったアルミニウム膜及び完成膜となった金膜についても同様である。
【0065】
よって、完成膜となった銀膜の一部を除去するレーザ加工に対して、基本波長レーザ及びグリーンレーザの使用は簡単ではない。一方、紫外レーザは、基本波長レーザと比較して銀膜における吸収率が高いが、基板を痛めやすい。特に、ガラス基板は、可視光波長域の光を透過させるが、紫外線波長域の光を吸収してしまう。
【0066】
図3は銀インクの未完成膜の一例におけるレーザ光の波長と吸収率との関係を示すグラフである。同図には、溶剤の乾燥処理が実施された銀インクの未完成膜の一例におけるレーザ光の波長と吸収率との関係を示す。銀インクは、機能性材料として銀粒子を含有するインクである。
【0067】
図3にレーザ光の吸収特性を示す銀インクの未完成膜は、基本波長レーザ、グリーンレーザ及び紫外レーザについて、70パーセント以上の相対的に高い吸収率を有している。銀インクの未完成膜は、銀インクから銀インクの完成膜を生成する際の処理温度よりも低い処理温度、及び銀インクから銀インクの完成膜が生成される際の処理時間よりも短い処理時間の少なくともいずれかを適用して生成される。
【0068】
図4は銀インクの未完成膜の他の一例におけるレーザ光の波長と吸収率との関係を示すグラフである。同図には、
図3にレーザ光の吸収特性を示す未完成膜よりも完成膜に近い状態の未完成膜におけるレーザ光の吸収特性を示す。未完成膜の完成膜に近い状態とは、乾燥状態が進行した状態、及び電気抵抗値が相対的に小さい状態などを表す。
【0069】
図4にレーザ光の吸収特性を示す銀インクの未完成膜は、
図3にレーザ光の吸収特性を示す銀インクの未完成膜と比較して、基本波長レーザ、紫外レーザ及び紫外レーザに対する吸収率が低下しているが、基本波長レーザの吸収率が42パーセントであり、グリーンレーザの吸収率が51パーセントであり、紫外レーザの吸収率が70パーセントである。すなわち、銀インクの未完成膜は、非パターン領域の未完成膜の除去をする際の加工に適用されるグリーンレーザの吸収率が50パーセントを超えている。
【0070】
ここで、銀インクの未完成膜及び銀インクの完成膜のレーザ光の波長ごとの吸収率は、分光光度計を用いて測定することができる。分光光度計の例として、日本分光社製、分光光度計V-770が挙げられる。
【0071】
アルミニウムインク及び金インクの未完成膜におけるグリーンレーザの吸収率は、銀インクの未完成膜における吸収率から推測できると考えられる。アルミニウムインクの完成膜及び金インクの完成膜におけるグリーンレーザの吸収率は、銀インクの完成膜におけるグリーンレーザの吸収率よりも大きい。
【0072】
また、532ナノメートルから1064ナノメートル波長域において、アルミニウムインクの完成膜及び金インクの完成膜の吸収率を表す曲線は、吸収率が20パーセント以下の範囲において緩やかに小さく変化するという点で、銀インクの完成膜の吸収率を表す曲線と傾向が似ている。そうすると、アルミニウムインクの未完成膜及び金インクの未完成膜におけるグリーンレーザの吸収率は、銀インクの未完成膜の吸収率よりも大きいと推測される。すなわち、アルミニウムインクの未完成膜及び金インクの未完成膜におけるグリーンレーザの吸収率は、50パーセントを超えると考えられる。
【0073】
図5は銀インクの未完成膜における状態の違いを表す撮影画像である。撮影画像1は、
図3に示すグラフを作成する際の測定に使用された銀インクの未完成膜であり、スライドガラスに塗布された銀インクの未完成膜の撮影画像である。撮影画像2は、
図4に示すグラフを作成する際の測定に使用された銀インクの未完成膜であり、スライドガラスに生成された銀インクの未完成膜の撮影画像である。
【0074】
撮影画像2として図示される銀インクの未完成膜の焼成処理時間は、撮影画像1として図示される銀インクの未完成膜の焼成処理時間に対して2倍である。すなわち、撮影画像2として図示される銀インクの未完成膜は、撮影画像1として図示される銀インクの未完成膜と比較して焼成処理が進行している状態である。
【0075】
撮影画像2として図示される銀インクの未完成膜の電気抵抗値は、例えば、四端子抵抗測定器等の測定器を用いて測定可能であり、導体としての少なくとも一部の機能が発現されている。一方、撮影画像1として図示される銀インクの未完成膜の電気抵抗値は、測定器を用いて測定不能であり、導体としての機能が未発現である。すなわち、未完成膜は、導体としての機能が発現される前の状態であってもよく、導体としての機能が発現されていてもよい。
【0076】
撮影画像1として図示される銀インクの未完成膜、及び撮影画像2として図示される銀インクの未完成膜はいずれも、銀の完成膜と比較して厚みが大きい。銀インクの未完成膜及び銀インクの完成膜の厚みは、実測値を適用してもよいし、質量から換算される相対値を適用してもよい。
【0077】
[レーザ加工の結果]
図6はレーザ加工の結果を表す表である。
図6には、スライドガラスに生成された銀インクの未完成膜及び銀インクの完成膜に対して、レーザ光を照射して除去する加工ができたか否かを表す。評価Aは適切に加工ができたことを表し、評価Cは加工ができなかったことを表す。
【0078】
図6に示す表のガラス欄の評価A、評価B及び評価Cは、スライドガラスのダメージの有無を表す。評価Aは、スライドガラスを痛めていないことが確認された場合を表す。評価Bは、スライドガラスを痛めているが、ガラスのダメージが許容範囲である場合を表す。評価Cは、スライドガラスを痛めており、ガラスのダメージが許容されない場合を表す。
【0079】
未完成膜等の加工に適用されるレーザ光は、波長が532ナノメートルのグリーンレーザが適用された。レーザ光の平均出力は、0.3ワット、0.4ワット、0.5ワット、0.6ワット及び0.7ワットが適用された。レーザ光は、発振周波数が50キロヘルツ、パルス幅が3ナノ秒のパルスレーザが適用された。レーザ光のビーム径は、20マイクロメートルが適用された。
【0080】
レーザ光源には、コヒレントジャパン社製、PowerLine E 25 SHG 532ナノメートルが使用された。装置の最大平均出力は18Wである。上記のレーザ光源は、レーザ媒質としてYVO4結晶を用いたダイオード励起の固体レーザであり、第2高調波のレーザ光であり、波長が532ナノメートルのレーザ光を出力する。
【0081】
加工対象に対するレーザ光のスキャン速度は500ミリメートル毎秒、スキャン回数は4回とされ、上記したレーザ光の条件を適用して、長方形の平面形状を有する加工対象について、短手方向の中央位置を長手方向の全長についてレーザ光が走査された。すなわち、長方形の平面形状を有する加工対象が、長手方向に沿って二分割される加工が実施された。
【0082】
加工後の加工対象について、顕微鏡を用いて、レーザ光の走査位置である加工位置が拡大観察された。なお、レーザ光のパラメータ及びレーザ光のスキャンパラメータは、設定値である。銀インクの完成膜の厚み及び銀インクの未完成膜の厚みは、3.0マイクロメートルである。
【0083】
銀インクの未完成膜は、0.3ワットから0.7ワットまでの全ての出力において、加工ができ、銀インクの完成膜は、0.3ワットから0.7ワットまでの全ての出力において、加工ができなかった。
【0084】
ここで、加工後の未完成膜は、加熱して完成膜として導電性を発現させ、加工位置を挟む両側の電気抵抗を測定し、抵抗値が無限大であることを確認して加工ができたと判定した。また、加工後の完成膜は、加工位置を挟む両側の電気抵抗を測定し、電気抵抗が規定以下の抵抗値を有することを確認し、加工ができなかったと判定した。
【0085】
ガラスのダメージについて、ガラスを痛めないレーザ光の出力の上限値は、0.6ワットであり、レーザ光の出力が0.6ワットを超える場合は、ガラスを痛める懸念がある。なお、ガラスを痛めていない状態とは、顕微鏡を用いてガラスを観察した際に、光が十分に透過できている状態を意味する。
【0086】
[実施形態に係る導電基板製造方法の作用効果]
実施形態に係る導電基板製造方法は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0087】
〔1〕
基板に対して導電インクが印刷され、導電インクの未完成膜が生成され、非パターン領域の未完成膜に対してレーザ光が照射され、非パターン領域の未完成膜が除去される。これにより、導体化された完成膜の状態において除去が困難である導電パターンの非パターン領域の除去が可能となる。
【0088】
〔2〕
導体インクは、銀、アルミニウム及び金の少なくともいずれかを含有する。これにより、加工に適用される典型的な波長を有するレーザ光を用いて、加工が困難な材料の非パターン領域の除去が可能となる。
【0089】
〔3〕
非パターン領域の未完成膜を除去する際のレーザ光は、吸収率が50パーセントを超える波長が適用される。これにより、加工効率が高いレーザ光を用いて、非パターン領域の除去が可能となる。
【0090】
〔4〕
非パターン領域の未完成膜を除去する際のレーザ光の波長は、532ナノメートルである。これにより、汎用されるレーザ光が適用される好ましい未完成膜の除去が実現される。
【0091】
〔5〕
非パターン領域の未完成膜を除去する際のレーザ光の出力は、0.6ワット以下である。これにより、好ましい未完成膜の除去と基板へのダメージの回避との両立が実現される。
【0092】
〔6〕
非パターン領域の未完成膜が除去された後に、パターン領域の未完成膜に対して加熱処理が施され、未完成膜が焼成された完成膜が生成される。これにより、規定の電気抵抗を有する完成膜が生成され、非パターン領域の完成膜が除去された導電基板が製造される。
【0093】
[導電インクの完成膜の機能]
導電インクの完成膜として生成される導体膜は、電気回路基板における電気配線、及び電磁波シールドとして機能し得る。電気配線には、電源電位パターン、基準電位パターン、ランド、パッド、電極、ビア及びスルーホールなどが含まれ得る。
【0094】
[導電インクの変形例]
本実施形態では、単体においてレーザ光の吸収率が相対的に低い金属材料を含有する導電インクを例示したが、単体においてレーザ光の吸収率が相対的に低い非金属材料を含有する機能性インクについても、本実施形態に示すレーザ加工技術を適用することが可能である。なお、実施形態に記載の導電インク及び機能性インクは、それぞれ機能性液体の一例である。
【0095】
[実施形態に係る機能性基板製造システムの構成例]
図7は実施形態に係る機能性基板製造システムの全体構成図である。同図に示す機能性基板製造システム10は、印刷装置12、未完成膜生成装置14、レーザ加工装置16及び完成膜生成装置18を備える。機能性基板製造システム10は、検査装置を備える。
図7では、検査装置の図示が省略される。検査装置は符号24を用いて
図8へ図示される。検査装置は、機能性基板製造システム10の外部装置としてもよい。
【0096】
印刷装置12、
図1に示す条件設定工程S10において印刷条件が設定され、印刷工程S14を実行する。印刷装置12は、印刷搬送装置20A及び印刷ヘッド30を備える。印刷搬送装置20Aは、ベルト搬送方式が適用され、印刷装置12において基板搬送方向に沿って基板Suを搬送する。
【0097】
印刷搬送装置20Aは、第1ローラ21A、第2ローラ22A及び第1搬送ベルト23Aを備え、無端状の第1搬送ベルト23Aが第1ローラ21A及び第2ローラ22Aに巻き掛けられる構造を有する。
【0098】
印刷搬送装置20Aは、第1ローラ21A又は第2ローラ22Aを回転させ、第1搬送ベルト23Aを矢印線の方向へ走行させる。第1搬送ベルト23Aを用いて支持される基板Suは、第1搬送ベルト23Aの走行に応じて、矢印線を用いて図示される基板搬送方向へ搬送される。
【0099】
印刷ヘッド30は、基板Suの印刷面に対して機能性インクを付着させる。印刷ヘッド30としてインクジェットヘッドを備える態様では、インクジェットヘッドは、機能性インクを吐出させる複数のノズルを備える。
【0100】
インクジェットヘッドは、基板搬送方向と直交する基板幅方向において、基板Suの全長を超える長さにわたって複数のノズルが配置されるライン型ヘッドであってもよいし、基板幅方向に沿って走査させるシリアル型ヘッドであってもよい。
【0101】
インクジェットヘッドの吐出方式は、圧電素子のたわみ変形を利用するピエゾジェット方式を適用してもよいし、インクの膜沸騰現象を利用するサーマル方式を適用してもよい。
【0102】
未完成膜生成装置14は、条件設定工程S10において未完成膜生成条件が設定され、未完成膜生成工程S16を実行する。未完成膜生成装置14は、基板Suへ付与された導電インクに含まれる溶剤を蒸発させて未完成膜を生成する。
【0103】
未完成膜生成装置14は、未完成膜生成搬送装置20B及び乾燥処理ヘッド32を備える。未完成膜生成搬送装置20Bは、印刷搬送装置20Aと同様の構成を有し、かつ、同様の機能を有する。未完成膜生成搬送装置20Bは、第3ローラ21B及び第4ローラ22Bに巻き掛けられた無端状の第2搬送ベルト23Bを走行させて、第2搬送ベルト23Bを用いて支持される基板Suを基板搬送方向に沿って搬送する。
【0104】
乾燥処理ヘッド32は、未完成膜生成搬送装置20Bを用いて搬送される基板Suに対して乾燥処理を施す。乾燥処理は、予め規定される時間について、導電インクが付与された基板Suを未完成膜生成搬送装置20Bの内部に滞在させる処理を適用し得る。乾燥処理ヘッド32は、導電インクが付与された基板Suに対して熱エネルギーを付与してもよいし、導電インクが付与された基板Suに対する処理の非実施が適用されてもよい。
【0105】
熱エネルギーの付与の例として、ヒータ等が用いられる輻射熱の付与、環境温度よりも高い温度を有する温風の付与、及び輻射熱の付与と温風の付与との組み合わせが挙げられる。
【0106】
レーザ加工装置16は、条件設定工程S10においてレーザ加工条件が設定され、未完成膜除去工程S18を実行する。レーザ加工装置16は、基板Suに生成される未完成膜のうち、非パターン領域の未完成膜に対してレーザ光を照射して非パターン領域の未完成膜を除去する。
【0107】
レーザ加工装置16は、レーザ加工搬送装置20C及びレーザヘッド34を備える。レーザ加工搬送装置20Cは、印刷搬送装置20Aと同様の構成を有し、かつ、同様の機能を有する。レーザ加工搬送装置20Cは、第5ローラ21C及び第6ローラ22Cに巻き掛けられた無端状の第3搬送ベルト23Cを走行させて、第3搬送ベルト23Cを用いて支持される基板Suを基板搬送方向に沿って搬送する。
【0108】
レーザヘッド34は、基板Suに生成される未完成膜に対してレーザ光を照射する。レーザヘッド34は、集光光学系を備えてもよい。レーザ加工装置16は、基板Suに対してレーザヘッド34を走査させてもよいし、ガルバノミラーが具備されるレーザヘッド34を備え、ガルバノミラーを用いてレーザ光の照射位置を変更してもよい。
【0109】
レーザ加工装置16は、レーザ光源を備える。レーザ光源は、半導体レーザ等の固体レーザが適用されてもよいし、炭酸ガスレーザ等の気体レーザが適用されてもよい。なお、レーザ光源の図示は省略される。
【0110】
完成膜生成装置18は、条件設定工程S10において完成膜生成条件が設定され、完成膜生成工程S20を実行する。完成膜生成装置18は、非パターン領域の未完成膜が除去された基板Suに対して加熱処理を実行して完成膜を生成する。
【0111】
完成膜生成装置18は、完成膜生成搬送装置20D及び加熱ヘッド36を備える。完成膜生成搬送装置20Dは、印刷搬送装置20Aと同様の構成を有し、かつ、同様の機能を有する。完成膜生成搬送装置20Dは、第7ローラ21D及び第8ローラ22Dに巻き掛けられた無端状の第4搬送ベルト23Dを走行させて、第4搬送ベルト23Dを用いて支持される基板Suを基板搬送方向に沿って搬送する。
【0112】
加熱ヘッド36は、完成膜生成搬送装置20Dを用いて搬送される基板Suに対して加熱処理を施し、未完成膜を焼成させ完成膜を生成する。加熱処理の例として、ヒータ等が用いられる輻射熱の付与、環境温度よりも高い温度を有する温風の付与、及び輻射熱の付与と温風の付与との組み合わせが挙げられる。
【0113】
完成膜生成装置18及び未完成膜生成装置14に対して同一の構成を適用し、未完成膜生成装置14における基板Suに対する処理温度及び処理時間の少なくともいずれかを変更して、基板Suに対する加熱処理を実行し、完成膜を生成してもよい。
【0114】
図7において図示が省略される検査装置は、完成膜生成装置18の後段に配置されてもよいし、完成膜生成装置18の内部に配置されてもよい。完成膜生成装置18の後段とは、完成膜生成装置18から基板Suが搬出される搬出口の側の位置として把握される。
【0115】
機能性基板製造システム10は、印刷装置12に対して基板Suを搬入する搬入装置40を備える。機能性基板製造システム10は、印刷装置12と未完成膜生成装置14との間において基板Suを搬送する第1装置間搬送装置42、及び未完成膜生成装置14とレーザ加工装置16との間において基板Suを搬送する第2装置間搬送装置44を備える。
【0116】
機能性基板製造システム10は、レーザ加工装置16と完成膜生成装置18との間において基板Suを搬送する第3装置間搬送装置46、及び完成膜生成装置18から基板Suを搬出させる搬出装置48を備える。なお、搬入装置40、第1装置間搬送装置42、第2装置間搬送装置44、第3装置間搬送装置46及び搬出装置48は、矢印線を用いて模式的に図示される。
【0117】
機能性基板製造システム10は、前処理工程S12を実行する前処理装置を備えてもよい。前処理工程S12のうち印刷に関連する処理は、印刷装置12の内部において実行されてもよい。
【0118】
図8は
図7に示す機能性基板製造システムの電気的構成を示す機能ブロック図である。同図に示す制御装置50は、コンピュータが適用される。制御装置50に適用されるコンピュータは、パーソナルコンピュータであってもよいし、ワークステーションであってもよい。コンピュータは仮想マシンであってもよい。制御装置50は、複数台のコンピュータを用いて構成されてもよい。制御装置50を構成する複数台のコンピュータは、機能性基板製造システム10を構成する装置ごとに具備されてもよい。
【0119】
制御装置50は、システム制御部52を備える。システム制御部52は、機能性基板製造システム10の全体を統括制御する。すなわち、システム制御部52は、機能性基板製造システム10を構成する装置を制御する制御部に対して、指令信号を送信する。
【0120】
制御装置50は、搬送制御部54を備える。搬送制御部54は、システム制御部52から送信される指令信号に基づき搬送装置20の動作を制御する。搬送制御部54は、基板Suの搬送速度等を制御する。
【0121】
図8に示す搬送装置20は、
図7に示す印刷搬送装置20A、未完成膜生成搬送装置20B、レーザ加工搬送装置20C及び完成膜生成搬送装置20Dが含まれる。また、搬送装置20は、搬入装置40、第1装置間搬送装置42、第2装置間搬送装置44、第3装置間搬送装置46及び搬出装置48が含まれる。
【0122】
制御装置50は、印刷制御部56を備える。印刷制御部56は、システム制御部52から送信される指令信号に基づき印刷装置12の動作を制御する。印刷制御部56は、印刷ヘッド30を用いて、印刷データに基づく導電インクの印刷を制御する。
【0123】
制御装置50は、未完成膜生成制御部58を備える。未完成膜生成制御部58は、システム制御部52から送信される指令信号に基づき未完成膜生成装置14の動作を制御する。未完成膜生成制御部58は、未完成膜を生成する際の処理温度及び処理時間を制御する。
【0124】
制御装置50は、レーザ加工制御部60を備える。レーザ加工制御部60は、システム制御部52から送信される指令信号に基づきレーザ加工装置16の動作を制御する。レーザ加工制御部60は、レーザヘッド34から照射されるレーザ光の出力、レーザヘッド34の走査回数及びレーザヘッド34の走査速度等を制御する。
【0125】
制御装置50は、完成膜生成制御部62を備える。完成膜生成制御部62は、システム制御部52から送信される指令信号に基づき完成膜生成装置18の動作を制御する。完成膜生成制御部62は、完成膜を生成する際の処理温度及び処理時間を制御する。
【0126】
制御装置50は、検査制御部64を備える。検査制御部64は、システム制御部52から送信される指令信号に基づき検査装置24の動作を制御する。検査制御部64は、基板Suに対して生成される完成膜の電気試験を実施する際にテスターの動作を制御する。検査制御部64は、完成膜の撮影データに基づく試験を実施する際に、完成膜の撮影を実施する撮影装置を制御し、完成膜の撮影データに対する画像処理を実施する。
【0127】
制御装置50は、記憶装置70を備える。記憶装置70は、搬送制御部54等の各種の制御部が実行する各種のプログラムが記憶される。記憶装置70は、プログラムを実行する際に用いられるパラメータ及びデータが記憶される。
【0128】
制御装置50は、パラメータ設定部72を備える。パラメータ設定部72は、記憶装置70に記憶される各種の装置に適用されるパラメータを読み出し、各種の制御部に対してパラメータを送信する。パラメータ設定部72は、
図1に示す条件設定工程S10の主体として機能し得る。
【0129】
制御装置50は、データ取得部74を備える。データ取得部74は、印刷装置12に適用される印刷データなど、各種の装置において使用される各種のデータを取得し、取得したデータを対応する装置へ送信する。
【0130】
制御装置50は、センサ情報取得部76を備える。センサ情報取得部76は、機能性基板製造システム10に具備される各種のセンサからセンサ情報を取得する。各種のセンサの例として、温度センサ及び位置検出センサ等が挙げられる。
【0131】
図9は
図7に示す機能性基板製造システムの電気的構成のハードウェア構成を示す機能ブロック図である。制御装置50は、プロセッサ102、コンピュータ可読媒体104、通信インターフェース106、入出力インターフェース108及びバス110を備える。
【0132】
プロセッサ102はCPUが含まれる。プロセッサ102は、GPUが含まれてもよい。なお、CPUはCentral Processing Unitの省略語である。GPUはGraphics Processing Unitの省略語である。
【0133】
プロセッサ102は、バス110を介して、コンピュータ可読媒体104、通信インターフェース106、及び入出力インターフェース108と接続される。入力装置112及びディスプレイ114は、入出力インターフェース108を介して制御装置50と接続される。
【0134】
制御装置50は、プロセッサ102がコンピュータ可読媒体104に記憶されたプログラムを実行し、各種の機能を実現させる。なお、プログラムという用語はソフトウェアという用語と同義である。
【0135】
コンピュータ可読媒体104は、主記憶装置であるメモリ120及び補助記憶装置であるストレージ122を備える。コンピュータ可読媒体104は、半導体メモリ、ハードディスク装置及びソリッドステートドライブ装置等を適用し得る。コンピュータ可読媒体104は、複数のデバイスの任意の組み合わせを適用し得る。
【0136】
なお、ハードディスク装置は、英語表記のHard Disk Driveの省略語であるHDDと称され得る。ソリッドステートドライブ装置は、英語表記のSolid State Driveの省略語であるSSDと称され得る。コンピュータ可読媒体104は、
図8に示す記憶装置70に含まれ得る。
【0137】
制御装置50は、通信インターフェース106を介して外部装置とのデータ通信を実施する。通信インターフェース106は、USBなどの各種の規格を適用し得る。通信インターフェース106の通信形態は、有線通信及び無線通信のいずれを適用してもよい。なお、USBは、Universal Serial Busの省略語であり、登録商標である。
【0138】
プロセッサ102は、入出力インターフェース108を介して、入力装置112及びディスプレイ114が接続される。入力装置112はキーボード及びマウス等の入力デバイスが適用される。ディスプレイ114は、制御装置50に適用される各種の情報が表示される。
【0139】
ディスプレイ114は、機能性基板製造システム10に適用される各種の情報が表示される。ディスプレイ114は、入力装置112からの入力を受け付ける場合のGUIの一部として使用される。なお、ディスプレイ114は1つに限らず、複数のディスプレイを備えるマルチディスプレイの形態も可能である。GUIはGraphical User Interfaceの省略語である。
【0140】
ディスプレイ114は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプロジェクタ等を適用し得る。ディスプレイ114は、複数のデバイスの任意の組み合わせを適用し得る。なお、有機ELディスプレイのELは、Electro-Luminescenceの省略語である。
【0141】
コンピュータ可読媒体104のメモリ120は、プロセッサ102が実行する搬送プログラム130、印刷プログラム132、未完成膜生成プログラム134、レーザ加工プログラム136、完成膜生成プログラム138及び検査プログラム140が記憶される。
【0142】
搬送プログラム130は、
図8に示す搬送制御部54に適用され、基板Suを搬送する機能を実現する。印刷プログラム132は、印刷制御部56へ適用され、基板Suへの導電インクが用いられる印刷機能を実現する。未完成膜生成プログラム134は、未完成膜生成制御部58に適用され、未完成膜生成機能を実現する。
【0143】
レーザ加工プログラム136は、レーザ加工制御部60に適用され、レーザ加工機能を実現する。完成膜生成プログラム138は、完成膜生成制御部62に適用され、完成膜生成機能を実現する。検査プログラム140は、検査制御部64に適用され、検査機能を実現する。
【0144】
コンピュータ可読媒体104へ記憶される各種のプログラムは、1つ以上の命令が含まれる。コンピュータ可読媒体104は、各種のデータ及び各種のパラメータ等が記憶される。
【0145】
ここで、プロセッサ102のハードウェア的な構造例として、CPU、GPU、PLD(Programmable Logic Device)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)が挙げられる。CPUは、プログラムを実行して各種の機能部として作用する汎用的なプロセッサである。GPUは、画像処理に特化したプロセッサである。
【0146】
PLDは、デバイスを製造した後に電気回路の構成を変更可能なプロセッサである。PLDの例として、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。ASICは、特定の処理を実行させるために専用に設計された専用電気回路を備えるプロセッサである。
【0147】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。各種のプロセッサの組み合わせの例として、1以上のFPGAと1以上のCPUとの組み合わせ、1以上のFPGAと1以上のGPUとの組み合わせが挙げられる。各種のプロセッサの組み合わせの他の例として、1以上のCPUと1以上のGPUとの組み合わせが挙げられる。
【0148】
1つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成してもよい。1つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成する例として、クライアント又はサーバ等のコンピュータに代表される、SoC(System On a Chip)などの1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せを適用して1つのプロセッサを構成し、このプロセッサを複数の機能部として作用させる態様が挙げられる。
【0149】
1つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成する他の例として、1つのICチップを用いて、複数の機能部を含むシステム全体の機能を実現するプロセッサを使用する態様が挙げられる。なお、ICはIntegrated Circuitの省略語である。
【0150】
このように、各種の機能部は、ハードウェア的な構造として、上記した各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。更に、上記した各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0151】
[基板について]
導電インクが印刷される基板Suの材料は、ガラスエポキシなどのプリント配線基板に汎用される材料が適用されてもよい。基板Suの材料は、ガラス、セラミック及び金属などが適用されてもよい。基板Suは、樹脂材料が用いられ、一定の柔軟性を有するフレキシブル基板であってもよい。
【0152】
基板Suは、複数の単位基板が含まれる多面取り基板であってもよい。基板Suは、片面のみに対して導電インクが印刷されてもよいし、両面に対して導電インクが印刷されてもよい。
【0153】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。また、実施形態、変形例及び応用例は適宜組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0154】
1 撮影画像
2 撮影画像
10 機能性基板製造システム
12 印刷装置
14 未完成膜生成装置
16 印刷装置
18 完成膜生成装置
20 搬送装置
20A 印刷搬送装置
20B 未完成膜生成搬送装置
20C レーザ加工搬送装置
20D 完成膜生成搬送装置
21A 第1ローラ
21B 第3ローラ
21C 第5ローラ
21D 第7ローラ
22A 第2ローラ
22B 第4ローラ
22C 第6ローラ
22D 第8ローラ
23A 第1搬送ベルト
23B 第2搬送ベルト
23C 第3搬送ベルト
23D 第4搬送ベルト
24 検査装置
30 印刷ヘッド
32 乾燥処理ヘッド
34 レーザヘッド
36 加熱ヘッド
40 搬入装置
42 第1装置間搬送装置
44 第2装置間搬送装置
46 第3装置間搬送装置
48 搬出装置
50 制御装置
52 システム制御部
54 搬送制御部
56 印刷制御部
58 未完成膜生成制御部
60 レーザ加工制御部
62 完成膜生成制御部
64 検査制御部
70 記憶装置
72 パラメータ設定部
74 データ取得部
76 センサ情報取得部
102 プロセッサ
104 コンピュータ可読媒体
106 通信インターフェース
108 入出力インターフェース
110 バス
112 入力装置
114 ディスプレイ
120 メモリ
122 ストレージ
130 搬送プログラム
132 印刷プログラム
134 未完成膜プログラム
136 レーザ加工プログラム
138 完成膜生成プログラム
140 検査プログラム
Su 基板
S10からS24 導電基板製造方法の各工程