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特開2024-175533変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物及びそれからなる層を有するガスバリア材ならびに変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175533
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物及びそれからなる層を有するガスバリア材ならびに変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 216/06 20060101AFI20241211BHJP
   C08F 8/12 20060101ALI20241211BHJP
   C08F 218/08 20060101ALI20241211BHJP
   C08F 218/14 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C08F216/06
C08F8/12
C08F218/08
C08F218/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093385
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】山本 信行
(72)【発明者】
【氏名】青山 眞人
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AD02Q
4J100AD11R
4J100AG04Q
4J100AG39R
4J100CA05
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA29
4J100FA30
4J100GC04
4J100GC07
4J100HA09
4J100HB39
4J100HE13
4J100HF05
4J100JA58
(57)【要約】
【課題】良好な生分解性を示すとともに、粒子の状態で粒子同士が凝集、ブロッキングしにくい程度に、副生成物の含有量が制限されており、ガスバリア材を安定に製造できるような樹脂組成物を提供する。
【解決手段】側鎖に一級水酸基構造単位を有する変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂と共役ポリエンを含む変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物であって、
前記変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物のエチレン構造単位の含有量が2.5~16.5molであり、
前記共役ポリエンの含有量が変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物に対して0.1~500ppmであり、
前記変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物に含まれるジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量が90ppm未満である変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に一級水酸基構造単位を有する変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂と共役ポリエンを含む変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物であって、
前記変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂のエチレン構造単位の含有量が2.5~16.5mol%であり、
前記共役ポリエンの含有量が変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物に対して0.1~500ppmであり、
前記変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物に含まれるジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量が90ppm未満である、変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物からなる層を有する、ガスバリア材。
【請求項3】
請求項1に記載の変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物の製造方法であって、
前記変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物を洗浄し、共役ポリエンの含有量を変性エチレン-ビニルアルコ-ル系樹脂組成物に対して0.1~500ppm、ジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量を変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物に対して90ppm未満とする工程を備える、変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物及びそれからなる層を有するガスバリア材ならびに変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン構造単位の含有量が20~60mol%のエチレン-ビニルアルコール系樹脂(以下、エチレン-ビニルアルコール系樹脂を「EVOH系樹脂」と称することがある)は、透明性、保香性、耐溶剤性、耐油性を併せ持つことから、食品包材のガスバリア材として用いられている。
【0003】
一方、近年では環境負荷低減の観点(例えば、海洋問題)から、優れた生分解性を有するガスバリア性樹脂が求められている。しかし、エチレン構造単位の含有量が20~60mol%のEVOH系樹脂は生分解性が低いため、生分解性とガスバリア性を両立するEVOH系樹脂として、エチレン構造単位の含有率が20mol%未満のEVOH系樹脂の検討が進められている。
【0004】
また、このような生分解性とガスバリア性を両立するEVOH系樹脂として、側鎖に一級水酸基構造単位を有する変性EVOH系樹脂が提案されている。これらの変性EVOH系樹脂組成物は、通常、エチレン、ビニルエステル系モノマー、側鎖に一級水酸基を有するモノマー及び/又は側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーを共重合させた後にケン化することにより得ることができる。
【0005】
例えば、特許文献1では、エチレン構造単位を2.5~16.5mol%有し、さらに側鎖に一級水酸基構造単位を特定量有する変性EVOH系樹脂が、生分解性とガスバリア性を両立した樹脂として、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2021/235507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のような、エチレン構造単位の含有率が20mol%未満の変性EVOH系樹脂は、水と親和性が良いので、粒子の状態で湿度を含む環境下で保管する場合、粒子同士が凝集、ブロッキングしやすい傾向があった。
そこで、本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、側鎖に一級水酸基構造単位を有する変性EVOH系樹脂を含む樹脂組成物であって、生分解性を示す上に、粒子の状態で粒子同士が凝集、ブロッキングしにくい程度に制御されており、ガスバリア材を安定に製造できるような樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかるに本発明者らは鋭意検討の結果、ブロッキングしやすい傾向は、樹脂製造に由来して不可避的に含まれる、親水性の高い副生成物、特にジヒドロキシアルキルオレフィンが原因であることをつきとめた。そこで、側鎖に一級水酸基構造単位を有する変性EVOH系樹脂を含む変性EVOH系樹脂組成物において、樹脂の安定に寄与する共役ポリエンを特定量含み、変性EVOH系樹脂組成物の製造に由来するジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量を特定量未満とすることにより、上記課題を解決できることを見出して、本発明を得た。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1]側鎖に一級水酸基構造単位を有する変性EVOH系樹脂と共役ポリエンを含む変性EVOH系樹脂組成物であって、
前記変性EVOH系樹脂のエチレン構造単位の含有量が2.5~16.5mol%であり、
前記共役ポリエンの含有量が変性EVOH系樹脂組成物に対して0.1~500ppmであり、
前記変性EVOH系樹脂組成物に含まれるジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量が90ppm未満である、変性EVOH系樹脂組成物。
[2][1]に記載の変性EVOH系樹脂組成物からなる層を有する、ガスバリア材。
[3][1]に記載の変性EVOH系樹脂組成物の製造方法であって、
前記変性EVOH系樹脂組成物を洗浄し、共役ポリエンの含有量を変性EVOH系樹脂組成物に対して0.1~500ppm、ジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量を変性EVOH系樹脂組成物に対して90ppm未満にする工程を備える、変性EVOH系樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の変性EVOH系樹脂組成物は、生分解性を示すとともに、耐ブロッキング性に優れる。そのため、本発明の変性EVOH系樹脂組成物を用いることにより、ガスバリ材を安定的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態の例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が、次に説明する実施例に限定されるものではない。
【0012】
本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」又は「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)又は「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」又は「Y未満であることが好ましい」旨の意も包含する。
さらに、「x及び/又はy(x,yは任意の構成)」とは、x及びyの少なくとも一方を意味するものであって、xのみ、yのみ、x及びy、の3通りを意味するものである。
【0013】
本発明の一実施例にかかる変性EVOH系樹脂組成物(以下、「本変性EVOH系樹脂組成物」と称する場合がある)は、側鎖に一級水酸基構造単位を有する変性EVOH系樹脂と特定量の共役ポリエンを含み、前記変性EVOH系樹脂組成物に含まれるジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量が特定量未満である変性EVOH系樹脂組成物である。
以下、本発明の変性EVOH系樹脂組成物に含まれる各成分につき説明する。
【0014】
[変性EVOH系樹脂]
EVOH系樹脂は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体であるエチレン-ビニルエステル系共重合体をケン化させることにより得られる熱可塑性樹脂であり、エチレン構造単位と、ビニルアルコール構造単位を主とし、通常、ケン化されずに残る若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
【0015】
また、本変性EVOH系樹脂組成物に含まれる変性EVOH系樹脂とは、側鎖に一級水酸基を有するEVOH系樹脂であり、具体的には、下記一般式(1)の構造単位を有するEVOH系樹脂である。
【化1】
【0016】
1~R3としては、水素原子又は有機基であれば、特に限定されない。上記有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基等の炭化水素基(これらの炭化水素基は水酸基、フッ素、塩素、及び臭素等を置換基として有してもよい)等が挙げられる。
【0017】
ポリマー主鎖と一級水酸基構造とを結合する結合鎖(X)としては、特に限定されないが、例えば、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素は水酸基、フッ素、塩素、及び臭素等を置換基として有してもよい)、オキシアルキレン、オキシアルケニレン、オキシアルキニレン、オキシフェニレン、オキシナフチレン等のエーテル結合でポリマー主鎖と結合する炭化水素(これらの炭化水素は水酸基、フッ素、塩素、及び臭素等を置換基として有してもよい)のほか、-CO-、-CO(CH2)mCO-、-CO(CH2)mCOR4-、-NR5-、-CONR5-等が挙げられる(R4,R5は独立して任意の置換基であり、水素原子又はアルキル基が好ましく、mは自然数を示す)。
【0018】
前記変性EVOH系樹脂を得るためには、例えば、側鎖に一級水酸基を有するモノマー及び/又は側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーをエチレン、及びビニルエステル系モノマーと共重合させた後に、ケン化する方法が挙げられる。
【0019】
以下、変性EVOH系樹脂の製造方法について説明する。
まず、エチレン、ビニルエステル系モノマー及び、側鎖に一級水酸基を有するモノマー及び/又は側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーを共重合させる。
【0020】
前記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも、経済的な観点から、酢酸ビニルが好ましい。
【0021】
前記側鎖に一級水酸基を有するモノマーとしては、変性EVOH系樹脂の生分解性を高め、ガスバリア材を容易に形成させることができ、また、ガスバリア性能を高めるために、2個の水酸基を有し、そのうち少なくとも1個が一級水酸基であるようなモノマー(以下、「ジヒドロキシモノマー」と称することがある)が好ましい。
ジヒドロキシモノマーとしては、例えば、2-メチレン-1,3-プロパンジオール、3,4-ジオール-1-ブテン、4,5-ジオール-1-ペンテン、4,5-ジオール-3-メチル-1-ペンテン、5,6-ジオール-1-ヘキセン、グリセリンモノアリルエーテル等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0022】
また、前記側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーとしては、2個のアセトキシ基を有し、そのうち少なくとも1個が一級水酸基であるようなモノマー(以下、「ジアセトキシモノマー」と称することがある)が好ましい。
ジアセトキシモノマーとしては、例えば、上記のジヒドロキシモノマーの酢酸エステル等が挙げられる。
具体的には、例えば、2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテート、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン、4,5-ジアセトキシ-1-ペンテン、4,5-ジアセトキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-ジアセトキシ-1-ヘキセン、3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオールジアセテート等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0023】
また、側鎖に一級水酸基を有するモノマーと一級水酸基をエステル等で保護したモノマーを併用して、エチレン、ビニルエステル系モノマーと共重合させることもできる。
なかでも、重合率の制御のしやすさの観点から、一級水酸基をエステル等で保護したモノマーが好ましく、ジアセトキシモノマーがより好ましく、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン、2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテートがより好ましく、3,4-ジアセトキシ-1-ブテンが特に好ましい。
【0024】
また、共重合成分として本発明の効果を阻害しない範囲(例えば、共重合成分の10質量%以下)で、共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合させてもよい。
かかるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1~18のモノ又はジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩;アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩類あるいはその4級塩等のアクリルアミド類;メタクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、2-メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩等のメタクリルアミド類;N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;炭素数1~18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類;ビニルシラン類等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0025】
これらの共重合反応においては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、又はエマルジョン重合等、公知の方法を採用することができる。なかでも、共重合制御の容易な溶液重合が好適に用いられる。
【0026】
かかる共重合を溶液重合で実施するとき、用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール等の炭素数1~5の低級アルコール、アセトン、2-ブタノン等のケトン類が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも、重合反応の制御容易さからメタノールが好適に用いられる。また、低重合度の共重合体を合成する場合には2-プロパノールが好適に用いられる。
【0027】
上記溶媒の使用量は、目的とする変性EVOH系樹脂の重合度、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択することができる。溶媒がメタノール又は2-プロパノールのときは、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01~10(質量比)が好ましく、0.05~7(質量比)がより好ましい。
【0028】
溶液重合における共重合成分の仕込み方法としては、例えば、初期一括仕込み、分割仕込み、モノマーの反応性比を考慮したHanna法等の連続仕込み等の任意の方法を採用することができる。
【0029】
上記共重合には、重合開始剤が用いられる。かかる重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、等の過酸化物系開始剤が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0030】
上記重合開始剤の使用量は、目的とする変性EVOH系樹脂の重合度、重合開始剤の種類により異なるために一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、t-ブチルパーオキシネオデカノエートを用いる場合、ビニルエステル系モノマーに対し、通常、10~2000ppmであり、好ましくは50~1000ppmである。
【0031】
共重合の重合温度は、使用する溶媒やエチレン圧力に応じて、40℃から沸点の範囲から選択することが好ましい。
【0032】
また、共重合時に、本発明の効果を阻害しない範囲で、連鎖移動剤の存在下で共重合させてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド等のアルデヒド類;2-ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン類等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。共重合時の連鎖移動剤の添加量は、連鎖移動剤の連鎖移動定数及び目的とする変性EVOH系樹脂の重合度に応じて決定されるが、一般に、ビニルエステル系モノマー100質量部に対して0.1~10質量部が好ましい。
【0033】
本発明において、重合率の制御は、変性EVOH系樹脂組成物中のジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量を好ましい範囲とするためにも重要である。そのため、共重合反応は、共重合成分のエチレン、ビニルエステル系モノマー及び、側鎖に一級水酸基を有するモノマー及び/又は側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーを全ては反応させず、重合率が通常20~80%、好ましくは25~60%、さらに好ましくは30~50%の段階で終了させることが好ましい。
【0034】
すなわち、重合率が20%未満では未反応の側鎖に一級水酸基を有するモノマー及び/又は側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーが多く残った状態で後述するケン化工程に進むため、ケン化により生じるジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量が高くなる傾向がある。
【0035】
このような場合、後述するように変性EVOH系樹脂組成物を十分洗浄すれば、ジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量を減らすことはできるが、工程が煩雑になる傾向がある。また、本発明においてもうひとつ重要な点である、共役ポリエン量を好ましい範囲にすることが難しくなる傾向がある。
【0036】
さらに重合率が20%未満である場合、未反応モノマーを回収して、別の重合で再利用するための回収コストが高くなる傾向がある。
重合率が80%超である場合は、長時間を要したり、重合反応溶液の粘度が高くなりすぎて取り扱いが難しくなったりする傾向がある。
【0037】
重合率はいろいろな因子が複合的に寄与することによって制御されるが、例えば、重合過程における重合方法、溶液重合におけるモノマー濃度(上記のS(溶媒)/M(モノマー)比)、使用する側鎖に一級水酸基を有するモノマー及び/又は側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーの種類、ビニルエステル系モノマーと他のモノマーの比、重合開始剤の使用量、重合時間等によって制御することができる。一般的には、モノマー濃度が高いほど、ビニルエステル系モノマーと他のモノマーの比において他のモノマーが少ないほど、重合開始剤の使用量が多いほど、重合時間が長いほど、重合率は高くなる傾向にある。なかでも、上記重合率を制御する手法のうち、重合時間による制御は制御が容易なため好ましい。
【0038】
また、重合率と側鎖に一級水酸基を有するモノマー及び/又は側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーとの共重合反応性比は、変性EVOH系樹脂の側鎖に一級水酸基構造単位の含有量に影響する。
例えば、ジアセトキシモノマーとして3,4-ジアセトキシ-1-ブテンを用いた場合は、エチレン、ビニルエステルモノマーとの共重合反応性が良いことから、重合率を60%以上まで高めることが好ましい。
また、ジアセトキシモノマーとして2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテートを用いた場合、ジアセトキシモノマーがエチレン、ビニルエステルモノマーに比べて速く消費される傾向にあることから、ジアセトキシモノマーの共重合体中での分布を均一にするために、重合率が20%以上となったところで重合終了とすることが好ましい。
【0039】
共重合成分を共重合させた後は、反応を確実に停止させるために、重合禁止剤としてソルビン酸等の共役ポリエンを添加することも好ましい。
この共役ポリエンは、樹脂の安定性にも寄与し、後述する変性EVOH系樹脂組成物を洗浄するとき、洗浄とともに含有量が減少するものであるが、洗浄溶媒として適切な溶解度を示すものを選び、また、洗浄方法を制御することにより、変性EVOH系樹脂組成物中の含有量を制御することができる。
好ましい共役ポリエンの構造、添加量、変性EVOH系樹脂組成物中の好ましい含有量、作用機構の推定については、後述する。
【0040】
こうして得られたエチレン-ビニルエステル系共重合体をケン化することにより変性EVOH系樹脂を得ることができる。また、ケン化を行う前に、加熱等により、溶液中に残存する未反応のビニルエステル系モノマーの含有量を減少させることが、得られる変性EVOH系樹脂組成物の着色抑制の観点から好ましい。
【0041】
ケン化を行う前の、溶液中に残存する未反応のビニルエステル系モノマーの濃度は200ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましく、80ppm以下が特に好ましい。下限値は通常0ppmである。
【0042】
前記溶液に残存する未反応ビニルエステル系モノマーの濃度を前記数値以下とするには、例えば、前記で説明した溶液重合で用いる溶媒を加え、ビニルエステル系モノマーの沸点以上の温度で加熱することにより、未反応ビニルエステル系モノマーを留去する方法等が挙げられる。
【0043】
このとき、側鎖に一級水酸基を有するモノマー及び/又は側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーとして、例えば、ジヒドロキシモノマー及び/又はジアセトキシモノマーを用いた場合、それらは一般に、ビニルエステル系モノマーよりも沸点が高いため、上記の未反応ビニルエステル系モノマーの含有量を減少させた後でも、溶液中に残存した状態となる。
具体的には、例えば、ビニルエステル系モノマーである酢酸ビニルの沸点は常圧で72℃であるのに対し、ジアセトキシモノマーである、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン、2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテートの沸点は、常圧で、それぞれ、211.5±28℃、225.3±20℃であるため、上記操作では酢酸ビニルと同様には低減させられない。
そして、残存しているジヒドロキシモノマー及び/又はジアセトキシモノマーの濃度は、使用したジヒドロキシモノマー及び/又はジアセトキシモノマーの種類、濃度、重合率、重合度等により一概には言えないが、200ppmより高濃度であることが多い。
【0044】
上記ケン化方法は公知の方法を採用でき、例えば、上記で得られたエチレン-ビニルエステル系共重合体をアルコール又は含水アルコールに溶解した状態で、ケン化触媒を添加して行われる。
【0045】
上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数 1~5の低級アルコールが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでもメタノールが好ましい。
アルコール中のエチレン-ビニルエステル系共重合体の濃度は、粘度により適宜選択され、通常、5~60%である。
【0046】
上記ケン化触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、カリウムエチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラート等のアルカリ触媒;硫酸、塩酸、硝酸、メタスルホン酸等の酸触媒が挙げられ、好ましくは、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート等のナトリウムの水酸化物やアルコラートが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0047】
ケン化を行う温度は限定されないが、20~140℃の範囲が好適である。ケン化の進行に従って粒子状物が生成し、反応が進行したことが分かる。このとき、ゲル状の生成物が析出してくる場合には、生成物を粉砕すればよい。
【0048】
ケン化反応終了後、必要に応じて、アルカリ触媒又は酸触媒を中和することも好ましい。
【0049】
上記のケン化反応終了時の変性EVOH系樹脂組成物は、粒子状物又は、その凝集物が反応溶媒を含んだウェットケーキの状態である。このウェットケーキを固液分離した後、洗浄、乾燥させることにより、変性EVOH系樹脂、共役ポリエンを含む、変性EVOH系樹脂組成物を得ることができる。
【0050】
上記洗浄に用いる溶媒としては、ケン化物(変性EVOH系樹脂)の溶解性が低く、副生成物の溶解性が高いものが好ましく、ケン化反応時に用いた溶媒が好ましく、なかでもメタノールが好ましい。洗浄工程については、後述する。
【0051】
水酸基をエステル等で保護したモノマーを共重合させた場合、上記ケン化反応により、保護したモノマーのエステル等も同時に脱保護され、側鎖一級水酸基に変換される。
例えば、共重合成分として、3,4-ジアセトキシ-1-ブテンを用いた場合、ケン化により脱保護して得られる変性EVOH系樹脂は、下記一般式(2)で表される一級水酸基を側鎖に有する。
【0052】
【化2】
【0053】
また、共重合成分として、2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテートを用いた場合、ケン化により脱保護して得られる変性EVOH系樹脂は、下記一般式(3)で表される一級水酸基を側鎖に有する。
【0054】
【化3】
【0055】
変性EVOH系樹脂のケン化度を高めるために、二次ケン化として、一旦得たウェットケーキから洗浄等により、共重合体のビニルエステルモノマー部分とケン化溶媒とのエステル交換により生成した化合物(例えば、ビニルエステルモノマーとして酢酸ビニル、ケン化時の溶媒としてメタノールを使用したときには、酢酸メチル)を除いた後に、再度アルコール等に分散させ、アルカリ触媒等を追加して、さらに反応させることも好ましい。
【0056】
なお、変性EVOH系樹脂では、ケン化反応において、完全に脱保護されず、少量のエステル基が残存してもよく、側鎖の保護基も完全には脱保護されずに少量のエステル基が残存してもよい。
【0057】
[ケン化後の副生成物]
ケン化反応終了後の、変性EVOH系樹脂組成物には、副生成物が含まれる。その副生成物としては、すでに述べた触媒の中和物のほか、上記のように、共重合体のビニルエステルモノマー部分とケン化溶媒とのエステル交換により生成した化合物(例えば、酢酸メチル)、重合終了時に残存していたモノマーのケン化物等が挙げられる。
例えば、ビニルエステル系モノマーは大部分がアセトアルデヒドと酸になる。
【0058】
また、側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーとしてジアセトキシモノマーを用いた場合、このケン物は、ジヒドロキシアルキルオレフィンとなる。
例えば、ジアセトキシモノマーとして、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン、2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテートを用いた場合、そのケン化物は、それぞれ、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、2-メチレン-1,3-プロパンジオールである。
【0059】
側鎖に一級水酸基を有するモノマーとしてジヒドロキシモノマーを使用した場合は、ケン化反応により構造が変化することはなく、そのままジヒドロキシアルキルオレフィンとして存在する。
【0060】
[変性EVOH系樹脂組成物の洗浄方法]
上記のように、ケン化反応終了時の変性EVOH系樹脂組成物は、粒子状物又は、その凝集物が反応溶媒を含んだウェットケーキの状態であって、反応溶媒にはケン化時の副生成物が含まれているほか、重合停止に共役ポリエンを用いた場合は、その共役ポリエンも溶解している。このウェットケーキを固液分離した後、洗浄、乾燥させて、変性EVOH系樹脂組成物を得るのであるが、この洗浄工程も本発明の変性EVOH系樹脂組成物を得るには重要である。
【0061】
すなわち、エチレン構造単位の含有率が20mol%未満の変性EVOH系樹脂組成物は、水と親和性が良く、また樹脂製造に由来する副生成物としてジヒドロキシアルキルオレフィン等の親水性の高い化合物が含まれると、粒子の状態で湿度を含む環境下で保管する場合、粒子同士が凝集し、耐ブロッキング性が不十分となる。そして、このような親水性が高い副生成物を水洗して除こうとすると、変性EVOH系樹脂組成物も水に溶けて失われてしまうことから、効率的に副生成物を除くことはできなかった。
しかし、本発明は、洗浄工程を工夫し、変性EVOH系樹脂組成物が溶解しにくく、かつジヒドロキシアルキルオレフィン等の副生成物を効率的に減少させる方法を見出したものである。
【0062】
上記変性EVOH系樹脂組成物のウェットケーキを洗浄することにより、副生成物を除去するのであるが、このウェットケーキの洗浄に用いる溶媒としては、ケン化物(変性EVOH系樹脂)の溶解性が低く、副生成物の溶解性が高いものが好ましく、ケン化反応に用いた溶媒を用いることが、取り扱いが簡便で好ましく、なかでもメタノールが好ましい。
すなわち、メタノールは、変性EVOH系樹脂がほとんど溶解せず、副生成物を多く溶解させることができ、メタノールは酢酸メチル、ジヒドロキシアルキルオレフィンも溶解させることができるため好ましい。
【0063】
洗浄を強化すれば、上記副生成物も低減できるのであるが、先に述べたように、共役ポリエンにはケン化、洗浄、乾燥が終わった変性EVOH系樹脂組成物に対する好ましい含有量があるので、あまりに洗浄が少なすぎることは好ましくない。共役ポリエンは変性EVOH系樹脂組成物の乾燥後に所定量を添加することもできるが、工程が増えて煩雑になることから、共重合反応停止後の添加量と洗浄の方法によって含有量を制御するのが容易で好ましい。
そのため、共役ポリエンを多く残すために洗浄を不十分にすると、ジヒドロキシアルキルオレフィンも多く残存することになる。しかし、後述のようにジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量にも好ましい範囲があり、それらを両立するには、ただ洗浄を十分に行えばよいというわけではなく、洗浄方法に特別の工夫が必要である。
【0064】
洗浄溶媒の使用量、洗浄回数、洗浄温度、洗浄時間は、共役ポリエンや、ジヒドロキシアルキルオレフィン等のケン化反応における副生成物のウェットケーキ中の含有量と、変性EVOH系樹脂組成物での含有量を好ましい値に調節するために適切に設定する必要があるが、溶媒使用量を経済的にする観点から、ウェットケーキ1質量部に対して4~8質量部(このような質量比を以下「浴比4~8」と称することがある)の溶媒で洗浄することを、2~6回繰り返す方法が好ましい。また、洗浄時の温度は20~70℃、洗浄時間は1回あたり、0.5~3時間が好ましい。
【0065】
既にも述べたように、共重合反応の重合率は、ジヒドロキシアルキルオレフィンのウェットケーキ中の含有量に影響を与えるので、それにより洗浄方法を適切に設定する必要があるが、上記指標のうち浴比と洗浄回数を掛けた値、(「浴比×回数」)による調節方法は、重合率に依らず調整が容易なので好ましい。
具体的には、例えば、浴比4×回数3の場合、12と計算できるが、好ましい「浴比×回数」の範囲としては、9~25が好ましく、10~20がさらに好ましい。
「浴比×回数」が9未満の場合、洗浄が不十分でジヒドロキシアルキルオレフィンの量を好ましい値にすることが難しくなる傾向があり、25を超える場合、使用溶媒量も増えて経済的でないし、共重合反応終了時に添加した共役ポリエン量が少なくなりすぎる傾向がある。
【0066】
最後に固液分離、乾燥を行うことにより、変性EVOH系樹脂組成物を得ることができる。
しかし、上記の洗浄操作によっても、いくらかの副生成物は変性EVOH系樹脂に付着したまま固体側に混入したままになる。そのため、酢酸メチルや洗浄溶媒のメタノールは沸点が低いことから乾燥により容易に除去されるが、沸点の高いジヒドロキシアルキルオレフィン、共役ポリエンは除去されずに、変性EVOH系樹脂とともに樹脂組成物を形成する。
【0067】
このようにウェットケーキを洗浄し、引き続き乾燥することにより、変性EVOH系樹脂と特定量の共役ポリエンを含み、ジヒドロキシアルキルオレフィンが特定量未満である本変性EVOH系樹脂組成物が粒子状物として得られる。
【0068】
[変性EVOH系樹脂の物性]
変性EVOH系樹脂におけるエチレン構造単位の含有量は2.5~16.5mol%であり、好ましくは5~16mol%であり、さらに好ましくは7~15mol%である。エチレン構造単位の含有量が少なすぎると、樹脂中の水酸基が多いために特に高湿度条件下ではガスバリア性の発揮が難しくなる傾向がある。また、溶融成形をしようとする場合には、変性EVOH系樹脂の融点が高くなって分解しやすくなる傾向がある。
また、エチレン構造単位の含有量が多すぎると、低湿度条件下ではガスバリア性が低下し、生分解性が低下する傾向がある。
上記変性EVOH系樹脂のエチレン構造単位の含有量は、共重合時のエチレン圧力を調整することで制御することができる。
【0069】
変性EVOH系樹脂が側鎖に有する一級水酸基構造単位の含有量は、通常2.5mol%以上、好ましくは2.5~10mol%、特に好ましくは3~6mol%、さらに好ましくは3~4.5mol%である。
側鎖に一級水酸基を有する構造単位の含有量は、共重合モノマーとして用いる、側鎖に一級水酸基を有するモノマー又は上記水酸基をエステル等で保護したモノマーの仕込み量によって制御することができる。
【0070】
側鎖に一級水酸基構造を有する構造単位は、その構造単位の含有量が増えるほど、変性EVOH系樹脂の融点を低下させる効果があるが、親水性は向上する。
【0071】
側鎖一級水酸基構造単位の含有量が2.5mol%未満では、変性EVOH系樹脂の融点を低下させる効果が少なく、分解しやすくなり、溶融成形が難しくなる。また、親水性も低下することから、水溶液調製時には溶解しにくくなる。
一方で、側鎖一級水酸基構造単位の含有量を多くし過ぎると、水との親和性が高くなるので、高湿度下でのガスバリア性確保が難しくなる傾向があり、製造時に側鎖に一級水酸基を有するモノマー及び/又は上記水酸基をエステル等で保護したモノマーを多く使用する必要があり、製造コストが高くなり好ましくない。
【0072】
変性EVOH系樹脂のケン化度は、通常98.5mol%を超え、99.9mol%未満、好ましくは、99.0mol%以上99.8mol%未満である。ケン化度が低いと、特に、高湿度条件下でのバリア能が低くなる傾向にある他、保香性、耐溶剤性、耐油性が低下する傾向にある。ケン化度を99.9mol%以上とすることは、製造時に厳しい条件を用いる必要があり、価格が高くなる傾向がある。
【0073】
前記変性EVOH系樹脂の含有量は、本変性EVOH系樹脂組成物に対して、通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
【0074】
[共役ポリエン]
前記共役ポリエンは、2個の炭素-炭素二重結合と1個の炭素-炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役ジエン、3個の炭素-炭素二重結合と2個の炭素-炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役トリエン、あるいはそれ以上の数の炭素-炭素二重結合と炭素-炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役ポリエンであってもよい。
【0075】
ただし、共役する炭素-炭素二重結合の数が8個以上になると共役ポリエン自身の色により成形物が着色する傾向があるため、共役する炭素-炭素二重結合の数は7個以下であることが好ましい。また、2個以上の炭素-炭素二重結合からなる上記共役二重結合が互いに共役せずに1分子中に複数組あってもよい。例えば、桐油のように共役トリエンが同一分子内に3個ある化合物も共役ポリエンに含まれる。
【0076】
具体的な共役ポリエンとしては、例えば、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-t-ブチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3-エチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、1-メトキシ-1,3-ブタジエン、2-メトキシ-1,3-ブタジエン、1-エトキシ-1,3-ブタジエン、2-エトキシ-1,3-ブタジエン、2-ニトロ-1,3-ブタジエン、クロロプレン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、1-ブロモ-1,3-ブタジエン、2-ブロモ-1,3-ブタジエン、フルベン、トロポン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、センブレン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、アビエチン酸等の炭素-炭素二重結合2個の共役構造よりなる共役ジエン;1,3,5-ヘキサトリエン、2,4,6-オクタトリエン-1-カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール等の炭素-炭素二重結合3個の共役構造からなる共役トリエン;シクロオクタテトラエン、2,4,6,8-デカテトラエン-1-カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の炭素-炭素二重結合4個以上の共役構造からなる共役ポリエン等が挙げられる。なお、1,3-ペンタジエン、ミルセン、ファルネセンのように、複数の立体異性体を有するものについては、そのいずれを用いてもよい。かかる共役ポリエンは単独でもしくは2種類以上を併せて用いてもよい。
【0077】
これらのうち、共役ポリエンとしては、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、及びソルビン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つが好ましく、ソルビン酸が特に好ましい。これらの共役ポリエンは、EVOH系樹脂の製造において、共重合反応停止時に添加する重合禁止剤として使用することができる。これらの共役ポリエンを重合禁止剤として使用した場合、重合を確実に停止させることができ、取り扱い性に優れる傾向がある。
【0078】
また、変性EVOH系樹脂組成物の水溶液を塗布することによってガスバリア材を製造する場合、共役ポリエンとしてソルビン酸を用いると、水溶液の腐敗防止に寄与できる利点がある。
【0079】
共重合停止反応時の共役ポリエンの添加量は、ビニルエステル系モノマーの重合開始時の仕込み量100質量部に対して、通常0.0001~0.3質量部が好ましく、さらに好ましくは0.001~0.125質量部である。共役ポリエンの添加量が少なすぎると、共重合反応を停止させる効果が十分でない傾向がある。また、共役ポリエンの添加量が多過ぎると不経済となる傾向がある。
【0080】
共役ポリエンの含有量は、変性EVOH系樹脂組成物に対して0.1~500ppmであり、0.2~400ppmであることがより好ましく、0.2~50ppmであることが特に好ましく、0.2~20ppmであることが殊に好ましい。共役ポリエンの含有量が少なすぎると、変性EVOH系樹脂組成物の熱安定性が悪くなる傾向があり、例えば、後述する溶融成形によってガスバリア材を得るとき、長時間運転時にゲルやブツの発生しやすくなる傾向がある。また、共役ポリエンの含有量が多過ぎると、ガスバリア性や生分解性が低下する傾向がある。
【0081】
共役ポリエンの含有量を好ましい量に調節する手法としては、共重合反応終了時に添加する共役ポリエン量と、その後の洗浄方法を制御する方法、変性EVOH系樹脂組成物に後から所定量添加する方法がある。共重合反応終了時に添加する共役ポリエン量と、その後の洗浄方法を制御する方法が簡便で好ましい。
【0082】
[ジヒドロキシアルキルオレフィン]
既述のとおり、本変性EVOH系樹脂組成物には、樹脂製造の副生成物として、ジヒドロキシアルキルオレフィンが含まれる。
本変性EVOH系樹脂組成物中に含まれるジヒドロキシアルキルオレフィンは、既述のように、水に対して親和性が高く、沸点も高い。また、本変性EVOH系樹脂組成物は、粒子状物として得られ、エチレン変性率が2.5~16.5mol%であり、側鎖に一級水酸基構造単位を有することから、樹脂の親水性も高い。
このため、一般的な製造方法により製造された変性EVOH系樹脂組成物は、保管中に粒子同士が凝集、ブロッキングしやすい傾向がある。これはジヒドロキシアルキルオレフィンが常温(23℃)では揮発しない液体状態で粒子表面に存在するために粒子同士の凝集に寄与するためと考えられる。
一方、本発明では、ブロッキングの原因となるジヒドロキシアルキルオレフィンを既述の洗浄工程により、特定量未満とすることにより、耐ブロッキング性に優れたものとなる。
【0083】
本変性EVOH系樹脂組成物に含まれるジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量は90ppm未満であり、40ppm以下が好ましく、より好ましくは20ppm以下であり、最も好ましい下限値は、0ppmであり、通常は0.1ppm以上である。
【0084】
[他の成分]
本変性EVOH系樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば、本変性EVOH系樹脂組成物の10%以下)で、変性EVOH系樹脂、共役ポリエン以外に、他の成分を配合することができる。上記他の成分としては、例えば、変性EVOH系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂、可塑剤、滑剤、安定材、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、金属塩、充填剤、各種繊維等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0085】
他の成分を本変性EVOH系樹脂組成物と含有させる方法としては、例えば、ドライブレンド法、溶融混合法、溶液混合法、含浸法等の公知の混合方法が挙げられ、これらを任意に組み合わせることも可能である。
【0086】
本変性EVOH系樹脂組成物の生分解度は、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることが特に好ましい。なお、上記生分解度は、JIS K6950に記載された方法を参考にし、実施例に記載の方法から求められる。
【0087】
[ガスバリア材製造方法]
本変性EVOH系樹脂組成物は、ガスバリア性を有していることから、ガスバリア材として有用である。本変性EVOH系樹脂をガスバリア材とする方法としては、特に制限されない。例えば、(i)本変性EVOH系樹脂組成物の水溶液を基材樹脂のフィルムに塗工、乾燥して本変性EVOH系樹脂組成物からなる層を形成してガスバリア材とする方法、(ii)本変性EVOH系樹脂組成物を溶融成形してガスバリア材とする方法等が挙げられる。
【0088】
上記(i)の方法において、本変性EVOH系樹脂組成物の水溶液とするときに、水以外の水と親和性のある溶媒を併用してもよい。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等の炭素数1~5の低級アルコールが挙げられる。昨今の揮発性有機化合物(VOC)排出規制に対応させるために、水だけを用いることも好ましい。
また、本変性EVOH系樹脂水溶液中の固形分濃度は、通常0.5~30質量%、好ましくは4~20質量%である。
【0089】
上記本変性EVOH系樹脂組成物の溶液を塗工する方法としては、例えば、バーコーター、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等公知の方法が挙げられる。なかでもバーコーターが好ましい。
塗工後、例えば60~105℃、0.5~10分間加熱処理等により乾燥させることにより、本変性EVOH系樹脂組成物からなるガスバリア材を得ることができる。
【0090】
また、上記(ii)の方法における溶融成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、プレス成形、ブロー成形等が挙げられる。
【0091】
このようにして本変性EVOH系樹脂組成物からなる層を有するガスバリア材が得られる。上記ガスバリア材は、単層構造のガスバリア材としてもよいし、多層構造のガスバリア材としてもよいが、多層構造とすることが好ましい。上記多層構造のバリア材は、本変性EVOH系樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有することが好ましい。また、上記多層構造のガスバリア材は、本変性EVOH系樹脂からなる層を積層してもよいし、他の基材樹脂と積層させてもよい。
【0092】
上記基材樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン(ブロック及びランダム)共重合体、エチレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテン、ポリ環状オレフィン系樹脂(環状オレフィン構造を主鎖及び側鎖の少なくとも一方に有する重合体)等の(未変性)ポリオレフィン系樹脂や、これらのポリオレフィン類を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性した不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等の変性オレフィン系樹脂を含む広義のポリオレフィン系樹脂、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のハロゲン化ポリオレフィン、芳香族又は脂肪族ポリケトン類等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いてもよい。また、これらの基材樹脂は、コロナ処理等の表面処理を行ってもよい。
【0093】
上記本変性EVOH系樹脂組成物からなる層の厚みは、通常1~200μm、好ましくは1~100μm、特に好ましくは1~50μmである。なお、上記ガスバリア材が多層構造である場合は、ガスバリア材に含まれる全ての本変性EVOH系樹脂組成物からなる層の厚みを合計したものである。
【0094】
また、本変性EVOH系樹脂組成物からなる層の酸素透過度は、23℃、65%RHの環境下で3cc・3μm/m2・day・atm以下であることが好ましく、2cc・3μm/m2・day・atm以下であることがより好ましい。下限値は通常0cc・3μm/m2・day・atmである。また、上記酸素透過度は、実施例に記載のように、酸素透過度測定装置により求めることができる。
【実施例0095】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準を意味する。
【0096】
実施例における各構造単位の含有率の算出、共役ポリエンの含有量、ジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量、熱安定性試験、生分解度の測定方法を下記に示す。
【0097】
[各単量体単位の含有率、ケン化度の算出]
(側鎖に一級水酸基構造単位として、1,2-ブタンジオール構造を有している共重合体の場合)
1H-NMR:
変性EVOH系樹脂組成物約50mgをバイアル瓶に秤量し、重水素化ジメチルスルホキシド1mLを加え、加熱撹拌することで溶解させた。目視で溶解を確認してから、重水素化トリフルオロ酢酸を、パスツールピペットを用いて10滴程度滴下して、測定溶液を調製した。これをブルカー社製核磁気共鳴装置Ascend 400を用い、50℃で測定した。
δ0.9~1.9ppm、δ1.9~2.0ppm、δ3.15~4.15ppmの積分値をそれぞれa、b、cとした。
13C-NMR:
変性EVOH系樹脂組成物約200mgをバイアル瓶に秤量し、重水素化ジメチルスルホキシド1mLを加え、80℃で加熱撹拌することで溶解させた。目視で溶解を確認してから、これをブルカー社製核磁気共鳴装置Ascend 400を用い、90℃で測定した。
δ64.0~75.0ppmの積分値をδ63.2~64.0ppmの積分値で除した値をdとした。
変性EVOH系樹脂組成物のエチレン構造単位、ビニルアルコール構造単位、1,2-ブタンジオール構造単位、未ケン化のアセチル基に由来する構造単位をそれぞれ、A、B、C、Dとすると、上記a~dの4変数、
d=(B+D)/C+1と考えられるので、
D=b/3
B=(c×(d-1)-b)÷(d+2)
C=(B+D)÷(d-1)
A=[a-(2×B)-(3×C)-(2×D)]÷4
と求められて、それを百分率に換算し直すことで、各構造単位の含有率を求めた。
【0098】
(側鎖に一級水酸基構造単位として、1,3-プロパンジオール構造を有している共重合体の場合)
まず、共重合後、ケン化前のエチレン-ビニルエステル-1,3-プロパンジオールジアセテート共重合体について、1H-NMRを測定して、エチレン、ビニルエステル、1,3-プロパンジオールジアセテートの比を求めておき、それらの比をそのまま、ケン化反応後のエチレン、ビニルアルコール、1,3-プロパンジオールの比とした。ケン化度については、ビニルエステルと1,3-プロパンジオールジアセテートのアセチル基は同じモル比でケン化されたものと仮定して、ケン化度を求めた。
すなわち、共重合終了後にエチレン-ビニルエステル-1,3-プロパンジオールジアセテート共重合体のメタノール溶液を少量サンプリングし、イオン交換水中でエチレン-ビニルエステル-1,3-プロパンジオールジアセテート共重合体を析出させた。この析出物を60℃減圧で乾燥させることにより、エチレン-ビニルエステル-1,3-プロパンジオールジアセテート共重合体乾燥品を得た。この乾燥品約50mgをバイアル瓶に秤量し、重水素化ジメチルスルホキシド1mLを加え、加熱撹拌することで溶解させた。これをブルカー社製核磁気共鳴装置Ascend 400を用い、50℃で測定した。
δ0.6~1.0ppm、δ1.0~1.85ppm、δ3.7~4.1ppm、δ4.4~5.3ppm、の積分値をそれぞれx、y、z、wとした。エチレン構造単位、ビニアルコール構造単位、1,3-プロパンジオールジアセテート構造単位各構造単位の含有量をそれぞれ、E、F、G(モル%)としたとき、下記により求めた。
E=(2x+2y-z-4w)/(2x+2y+z+4w)×100
F=8w/(2x+2y+z+4w)×100
G=2z/(2x+2y+z+4w)×100
【0099】
ケン化度は、ケン化後の変性EVOH樹脂について1H-NMRを測定して求めた。すなわち、変性EVOH系樹脂約50mgをバイアル瓶に秤量し、重水素化ジメチルスルホキシド1mLを加え、加熱撹拌することで溶解させた。目視で溶解を確認してから、重水素化トリフルオロ酢酸を、パスツールピペットを用いて10滴程度滴下して、測定溶液を作製した。これをブルカー社製核磁気共鳴装置Ascend 400を用い、80℃で測定した。δ1.85~2.1ppmの残酢酸ビニル単位のメチルプロトンと、δ3.15~4.15ppmのビニルアルコール単位のメチンプロトンの積分比からケン化度を求めた。
【0100】
[ジヒドロキシアルキルオレフィンの定量]
(3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン(DHB))
以下のGC/MS分析の条件で、m/z=57のイオンクロマト抽出で平均ピーク面積を求め、標品の検量線とサンプルを比較して、2回の測定の平均値から定量を行った。
・GC部条件
使用装置:Agilent社製 HP7890B
カラム:Agilent社製 J&W GCカラム DB-WAX UI (30.0m×0.25mm×0.25μm)
温度条件:100℃で開始、保持時間なし→30℃/分で昇温→250℃で10分保持
インジェクション:250℃
マストランスファーライン:250℃
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:1mL/分
スプリット比:1/20
・MS部条件
使用装置:Agilent社製 5977A
イオン化法:電子イオン化法
測定モード:SCAN法
【0101】
(2-メチレン-1,3-プロパンジオール(MPD)の定量)
・GC部条件
使用装置:Agilent社製 HP7890A
カラム:Agilent社製 J&W GCカラム DB-WAX (30.0m×0.25mm×0.25μm)
温度条件:40℃で開始、5分保持時→10℃/分で昇温→250℃で10分保持
インジェクション:250℃
マストランスファーライン:250℃
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:1mL/分
スプリット比:1/10
・MS部条件
使用装置:Agilent社製 5975C
イオン化法:電子イオン化法
測定モード:SCAN法
【0102】
[共役ポリエンの含有量]
共役ポリエンがソルビン酸の場合、含有量は以下のようにして求めた。
樹脂組成物を凍結粉砕し、200mgを精秤した。これに3.5mLのメタノールを加えて分散させてから、水1.5mLを添加した。さらにメタノール/水=7/3(体積比)の混合溶媒を添加して全量を10mLとし、60分間超音波を照射して溶解させたものを検体とした。この検体を液体クロマトグラフィーによりソルビン酸量を定量した。なお、この方法での定量下限値は0.1ppmであり、定量下限値以下の場合「0.1ppm未満」と表記した。
【0103】
[熱安定性試験]
樹脂組成物1gを三角フラスコに取り、後記の表3に示す溶媒を100mLを注ぎ、95℃で1時間撹拌した後、室温(23℃)まで冷却した。その後、この溶液が均一な溶液であることを目視にて確認した。
次に、樹脂組成物1gをアルミ皿に取り、窒素で中を満たした230℃のイナートオーブンに30分間静置して溶融させた。溶融させた樹脂組成物を室温まで冷却、固化させた後、これを砕いて、表3に示す溶媒を100mLを注ぎ、95℃で1時間撹拌した後、室温まで冷却した。これを目視にて確認し、下記の基準にて熱安定性を評価した。
(熱安定性の評価基準)
〇(very good):未溶解分がなく、均一な溶液であった。
×(poor):未溶解分が認められた。
【0104】
[耐ブロッキング性試験]
粒子状の樹脂組成物20gを直径4cmの底部を有する金属製の円筒に詰めた(高さ約3cm)。その上から、直径3.5cmの円柱を粒子状の変性EVOH系樹脂組成物に接するように載せ、さらに、その上からおもりを載せて、円柱とおもりの合計が5kgとなるようにした。
この円筒、円柱、おもりが一体になったものを35℃、80%RHの恒温恒湿機で24時間静置した。その後、取り出し、おもりと円柱を取り除き、円筒内から樹脂組成物を取り出し、さらに23℃、50%RHで一日静置した後、下記の基準で耐ブロッキング性を評価した。
(耐ブロッキング性の評価基準)
〇(very good):ブロッキングなく、粒子がさらりと崩れる。
△(good):弱くブロッキングしていて、指で押しつぶすと崩れるが、自然には崩れていかない。
×(poor):ブロッキングしていて、指で押しても崩れない。
【0105】
[生分解度]
生分解度の評価は、JIS K6950に記載された方法を参考にし、下記の条件で行った。
・装置:タイテック社製 BOD TESTER 200F
・植種源:家庭下水を処理している下水処理場の返送汚泥
・標準試験培養液:100mL
・植種濃度:90mg/L
・温度:25±1℃
・期間:28日間
生物化学的酸素消費量と、理論的酸素要求量から、生分解度を求めた。
【0106】
下記に変性エチレン-ビニルエステル系共重合体の合成条件及び、変性EVOH系樹脂組成物の製造条件等を後記の表1に示す。
【0107】
<合成例1>
[変性エチレン-ビニルエステル系共重合体の合成]
温度制御のできるオートクレーブに、酢酸ビニル460部、側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーとして、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン42部、メタノール195部を仕込み、系内を窒素ガスで一旦置換した後、ついでエチレンで置換して、撹拌しながら、67℃まで昇温した。昇温後、エチレンをその分圧が1.01MPaとなるように圧入し、撹拌を続けながら、t-ブチルパーオキシネオデカノエート0.102部をメタノール5.2部(2%溶液)に溶解させた溶液を4時間かけて添加しつつ重合反応を行った。添加終了後もさらに67℃で3時間撹拌を続けて、重合反応を継続した。重合反応終了時の酢酸ビニルの重合率は、溶液の不揮発分から求めた結果、64%であった。
その後、重合禁止剤として、ソルビン酸0.096部(仕込みの酢酸ビニルモノマー100部に対して0.021部)をメタノール100部に溶解させた溶液を投入、室温まで冷却した。さらに未反応のモノマーを減少させる目的で、75℃加熱による揮発分追い出しとメタノール添加を繰り返すことにより、エチレン-酢酸ビニル-3,4-ジアセトキシブテン共重合体のメタノール溶液を得た。この溶液中の酢酸ビニル量はガスクロマトグラフィーにより定量したところ、25ppmであった。
【0108】
[変性EVOH系樹脂組成物の製造]
ついで、一次ケン化を行った。上記溶液をメタノールで希釈して濃度30%に調整してニーダーで撹拌し、溶液温度を45℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの8.7%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体の酢酸ビニル単位に対して9mmol当量となる量を加えて、撹拌を続けた。約15分後に粘度上昇を伴ってケン化物が析出し、ついには粒子状物を含むスラリーになった。1時間後に水酸化ナトリウムの8.7%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体の酢酸ビニル単位に対して11mmol当量となる量を加えて一次ケン化をさらに1時間継続した。
さらにケン化を進めるために、二次ケン化を行った。生成したスラリーを一旦ろ別した後、再度、ケン化物の5倍量のメタノールに分散させ、ニーダーで撹拌しつつ、水酸化ナトリウムの8.7%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体中の最初の酢酸ビニル単位に対して50mmol当量となる量を加えて、50℃で3時間反応させた。反応後、酢酸で中和し、スラリーを再度ろ別して、ウェットケーキを得た。
【0109】
変性EVOH系樹脂組成物のエチレン構造単位、1,2-ブタンジオール構造の含有量を知るために、該ウェットケーキをその5倍の質量のメタノールで3回洗浄してろ別した後、100℃熱風乾燥器中で8時間乾燥させて変性EVOH系樹脂組成物を得、NMR測定を行った。
エチレン構造単位の含有量、1,2-ブタンジオール構造単位の含有量、ケン化度は、それぞれ、9.0mol%、4.0mol%、99.7mol%であった。これらをまとめて後記の表2に示す。
【0110】
<合成例2>
[変性エチレン-ビニルエステル系共重合体の合成]
温度制御のできるオートクレーブに、酢酸ビニル460部、側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーとして、2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテート18部、メタノール75部を仕込み、系内を窒素ガスで一旦置換した後、ついでエチレンで置換して、撹拌しながら、67℃まで昇温した。昇温後、エチレンをその分圧が1.3MPaとなるように圧入し、撹拌を続けながら、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.082部をメタノール10部に溶解させた溶液を加え、撹拌しながら、内温を67℃で4時間保つことにより、重合反応を行った。重合反応終了時の酢酸ビニルの重合率は、溶液の不揮発分から求めた結果、25%であった。その後、重合反応停止工程として、ソルビン酸0.096部をメタノール100部に溶解させた溶液を投入、室温まで冷却した。
さらに未反応のモノマーを減少させる目的で、40℃で減圧による揮発分追い出しとメタノール添加を繰り返すことにより、エチレン-酢酸ビニル-(2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテート)共重合体のメタノール溶液を得た。この溶液中の酢酸ビニル量はガスクロマトグラフィーにより定量したところ、40ppmであった。
前記の方法に従って、この時点でのエチレン構造単位の含有量、1,3-プロパンジオールジアセテート構造単位の含有量から求めるために、この共重合体のメタノール溶液を一部とって乾燥させ、1H-NMR測定を行った。
【0111】
[変性EVOH系樹脂組成物の製造]
ついで、一次ケン化を行った。上記溶液をメタノールで希釈して濃度10%に調整して撹拌機と冷却管を有するフラスコにて撹拌しつつ、溶液温度を45℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの3.5%質量メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体の酢酸ビニル単位に対して10mmol当量となる量を加えて、一次ケン化を行った。約30分後にケン化物が析出し、ついには粒子状物を含むスラリーになった。
さらにケン化を進めるために、二次ケン化を行った。生成したスラリーを一旦ろ別した後、再度、ケン化物の20倍量のメタノールに分散させ、撹拌機と冷却管を有するフラスコにて撹拌しつつ、水酸化ナトリウムの3.5%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体中の最初の酢酸ビニル単位に対して50mmol当量となる量を加えて、50℃で3時間反応させた。反応後、酢酸で中和し、スラリーを再度ろ別して、ウェットケーキを得た。
【0112】
変性EVOH系樹脂組成物のケン化度を知るために、該ウェットケーキをその5倍の質量のメタノールで3回洗浄してろ別した後、100℃熱風乾燥器中で8時間乾燥させて変性EVOH系樹脂組成物を得、1H-NMR測定を行った。
上記のようにして求めたエチレン構造単位の含有量、1,3-プロパンジオール構造単位の含有量、ケン化度は、それぞれ、9.8mol%、3.8mol%、99.7mol%であった。これらをまとめて後記の表2に示す。
【0113】
<合成例3>
[変性エチレン-ビニルエステル系共重合体の合成]
実施例1における、仕込みの酢酸ビニル量、側鎖一級水酸基をエステルで保護したモノマーの量、メタノール量、エチレン分圧、t-ブチルパーオキシネオデカノエート量、重合開始剤の添加時間を後記の表1のとおりに変更して重合を行った。t-ブチルパーオキシネオデカノエートの添加を終了したら、その後の重合反応は継続しないで、重合反応停止工程に進んだ。重合反応終了時の酢酸ビニルの重合率は、溶液の不揮発分から求めた結果、41%であった。重合停止反応工程、未反応モノマーを減少させる工程は実施例1と同様に実施した。得られたエチレン-酢酸ビニル-3,4-ジアセトキシブテン共重合体のメタノール溶液の酢酸ビニル量はガスクロマトグラフィーにより定量したところ、10ppmであった。
【0114】
[変性EVOH系樹脂組成物の製造]
ついで、一次ケン化を行った。上記溶液をメタノールで希釈して濃度10%に調整して撹拌機と冷却管を有するフラスコにて撹拌しつつ、溶液温度を45℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの3.5%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体の酢酸ビニル単位に対して10mmol当量となる量を加えて、一次ケン化を行った。約30分後にケン化物が析出し、ついには粒子状物を含むスラリーになった。
さらにケン化を進めるために、二次ケン化を行った。生成したスラリーを一旦ろ別した後、再度、ケン化物の20倍量のメタノールに分散させ、撹拌機と冷却管を有するフラスコにて撹拌しつつ、水酸化ナトリウムの5%質量メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体の酢酸ビニル単位に対して50mmol当量となる量を加えて、50℃で3時間反応させた。反応後、酢酸で中和し、スラリーを再度ろ別して、ウェットケーキを得た。
【0115】
変性EVOH系樹脂組成のエチレン構造単位、1,2-ブタンジオール構造の含有量を知るために、該ウェットケーキをその5倍の質量のメタノールで3回洗浄してろ別した後、100℃熱風乾燥器中で8時間乾燥させて変性EVOH系樹脂組成物を得、NMR測定を行った。
エチレン構造単位の含有量、1,2-ブタンジオール構造単位の含有量、ケン化度は、それぞれ、11.4mol%、3.2mol%、99.9mol%であった。これらをまとめて後記の表2に示す。
【0116】
<実施例1>
合成例1で得たウェットケーキをその5倍の質量のメタノールで2回洗浄して(浴比5で2回洗浄、「浴比×回数」=10)、ろ別した後、100℃熱風乾燥器中で8時間乾燥させて粒子状の変性EVOH系樹脂組成物を得た。
得られた変性EVOH系樹脂組成物中の3,4-ジヒドロキシ-1-ブテンの含有量、ソルビン酸の含有量はそれぞれ、78ppm、1.4ppmであった。
さらに熱安定性試験では、溶媒として水を用いた場合、水の均一溶液を得ることができ、また、一度溶融させた樹脂組成物についても、水の均一溶液が得られ、熱安定性は良好であった。
耐ブロッキング性試験では、ブロッキングなく、粒子がさらりと崩れ、良好であった。
また、生分解度は59%であった。
実施例1の二次ケン化後のウェットケーキの洗浄方法、物性等を後記の表3に示す。
【0117】
<実施例2、3、比較例1、2>
合成例1で得たウェットケーキの洗浄方法を表3のように変更したほかは実施例1と同様に処理して、変性EVOH系樹脂組成物を得た。
実施例2、3、比較例1、2で得られた変性EVOH系樹脂組成物中の3,4-ジヒドロキシ-1-ブテンの含有量、ソルビン酸の含有量を後記の表3に示す。
【0118】
<実施例4>
合成例2で得たウェットケーキの洗浄方法を後記の表3のように変更したほかは実施例1と同様に処理して、変性EVOH系樹脂組成物を得た。
実施例4で得られた変性EVOH系樹脂組成物中の2-メチレン-1,3-プロパンジオールの含有量、ソルビン酸の含有量を後期の表3に示す。
さらに熱安定性試験では、溶媒として水と2-プロパノール(IPA)の8:2混合溶媒を用いた場合、均一溶液を得ることができ、また、一度溶融させた樹脂組成物についても、水と2-プロパノール(IPA)の8:2混合溶媒を用いた場合、均一溶液が得られ、熱安定性は良好であった。
【0119】
<比較例3>
合成例3で得たウェットケーキの洗浄方法を表3のように変更したほかは実施例1と同様に処理して、変性EVOH系樹脂組成物を得た。
比較例3で得られた変性EVOH系樹脂組成物中の3,4-ジヒドロキシ-1-ブテンの含有量、ソルビン酸の含有量を後記の表3に示す。
さらに熱安定性試験では、溶媒として水と2-プロパノール(IPA)の8:2混合溶媒を用いた場合、均一溶液を得ることができ、また、一度溶融させた樹脂組成物についても、水と2-プロパノール(IPA)の8:2混合溶媒を用いた場合、均一溶液が得られ、熱安定性は良好であった。
【0120】
得られた実施例1~4、比較例1~3の各樹脂組成物を用いて以下の評価を行った。結果を後記の表4に示す。
【0121】
[ペレットの作製]
実施例2、比較例3の変性EVOH系樹脂組成物を下記の条件で押出することによりペレットを作製した。
(ペレット化条件)
押出機:芝浦機械社製 2軸混練押出機 TEM-18DS
スクリュー:2軸、20mmΦ、L/D=48
シリンダー部設定温度:170~220℃
ヘッダー部設定温度:210℃
押出された樹脂の冷却方法:空冷ベルト
吐出量:4kg/hr
【0122】
〔溶融押出多層フィルム作製〕
得られた実施例2のペレットから以下の条件で押出することにより、LLDPE/LLDPE/ガスバリア層(変性EVOH系樹脂組成物からなる層)/LLDPE/LLDPEの多層構造を有する溶融押出多層フィルムを得、これをそのままガスバリア材として用いた。
(フィルム作製条件)
押出機:プラスチック工学研究所社製 3種5層インフレフィルム製膜機
スクリュー:単軸、20mmΦ、フルフライト
シリンダー部設定温度:180~210℃
フィルム厚み:90μm (LLDPE 40μm/ガスバリア層 10μm/LLDPE 40μm)
LLDPE:三菱ケミカル社製、ノバテックLL UF240
【0123】
〔溶融押出単層フィルム作製〕
得られた比較例3のペレットを下記の条件で押出することにより、溶融押出単層フィルムを得、これをそのままガスバリア材として用いた。
(フィルム作製条件)
押出機:ブラベンダー社製 プラストグラフEC-plus
スクリュー:単軸、20mmΦ、フルフライト
シリンダー部設定温度:170~220℃
冷却ロール設定温度:80℃
フィルムの厚み:20μm
【0124】
〔溶液キャストによるフィルム作製〕
実施例1、3、4、比較例1、2の樹脂組成物を下記表4に示す溶媒に10%の濃度で溶解させ、この溶液を、コロナ処理したPETフィルム基材(38μm厚)上にバーコーターで塗布、80℃で5分間乾燥させることにより、樹脂組成物からなる層を3μm有するガスバリア材を得た。
【0125】
[酸素透過度]
得られたガスバリア材について、温度23℃、湿度65%RHにおける酸素透過度を、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OXTRAN2/20」)を用いて測定し、この測定値を樹脂組成物の厚み3μmの値に換算し、ガスバリア性を示す値とした。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
上記表3、4の結果から、変性エチレン-ビニルエステル系共重合体を得るための共重合条件を適切に設定し、それに引き続くケン化工程後の洗浄を適切に設定することにより、共役ポリエンを0.1ppm以上500ppm以下含有し、副生成物であるジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量が90ppm未満である変性EVOH系樹脂組成物を得ることができ、この樹脂組成物は熱安定性、耐ブロッキング性、生分解性に優れるものであった。また、この樹脂組成物から酸素バリア性に優れるガスバリア材を得ることができた。
一方、ジヒドロキシアルキルオレフィンの含有量が本発明を満たさない比較例1、3の樹脂組成物は耐ブロッキング性に乏しいものであった。
共役ポリエン量が本発明を満たさない比較例2の樹脂組成物は熱安定性に乏しいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の変性EVOH系樹脂組成物は、良好な生分解性を示すとともに、粒子の状態で粒子同士が凝集、ブロッキングしにくいことから、環境負荷の低減が求められる分野、特に、食品包装等のガスバリア材として好適に用いることができる。