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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175552
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20241211BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093421
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一彦
(72)【発明者】
【氏名】星 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】多和田 高明
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200FA02
2H200FA08
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA44
2H200GA45
2H200GA47
2H200GB12
2H200GB22
2H200HA02
2H200HB12
2H200JA02
2H200JB10
2H200JC04
2H200JC09
2H200JC12
2H200JC19
2H200JC20
2H200LB02
2H200LB13
2H200LB39
2H200LB40
2H200PA12
2H200PA22
2H200PB15
2H200PB17
2H270KA32
2H270LA18
2H270LD03
2H270MA28
2H270MA40
2H270MB16
2H270MB18
2H270MB19
2H270ZC03
(57)【要約】
【課題】付着量検知手段の調整用パターンの付着量検出精度の低下を抑制することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナー像パターンである掻き取りパターンを、像担持体たる中間転写ベルトに形成してから、中間転写ベルト1~2周の間に、調整用パターンが形成される場合(S2のYes)は、中間転写ベルトに形成する掻き取りパターンの主走査方向の長さを、中間転写ベルトの通紙領域内に収まるように変更する(S4)。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を作像する作像手段と、
前記作像手段により作像された前記トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上の前記トナー像を記録媒体に転写する転写部材と、
前記像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記像担持体の表面に対向して配置され、前記像担持体の記録媒体通紙領域よりも前記記録媒体の幅方向の外側に形成された前記作像手段を調整するための調整用パターンのトナー付着量を検知する付着量検知手段と、を備え、
前記作像手段は、前記記録媒体に転写しないで、前記クリーニング部材に入力するトナー像パターンを前記像担持体に形成する画像形成装置において、
形成する前記トナー像パターンの前記像担持体上の位置から、このトナー像パターン形成後に前記像担持体上に形成される前記調整用パターンの前記像担持体上の位置までの前記像担持体の表面移動距離が規定範囲内の場合は、前記トナー像パターンを、前記記録媒体通紙領域の前記幅方向内に収まるように形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナー像を作像する作像手段と、
前記作像手段により作像された前記トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上の前記トナー像を記録媒体に転写する転写部材と、
前記像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記像担持体の表面に対向して配置され、前記像担持体の記録媒体通紙領域よりも前記記録媒体の幅方向の外側に形成された前記作像手段を調整するための調整用パターンのトナー付着量を検知する付着量検知手段と、を備え、
前記作像手段は、前記記録媒体に転写しないで、前記クリーニング部材に入力するトナー像パターンを前記像担持体に形成する画像形成装置において、
前記像担持体上に形成された前記トナー像パターンの位置から、形成する前記調整用パターンの前記像担持体上の位置までの前記像担持体の表面移動距離が規定範囲内に入る場合は、前記調整用パターンの形成を中止することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
トナー像を作像する作像手段と、
前記作像手段により作像された前記トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上の前記トナー像を記録媒体に転写する転写部材と、
前記像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記像担持体の表面に対向して配置され、前記像担持体の記録媒体通紙領域よりも前記記録媒体の幅方向の外側に形成された前記作像手段を調整するための調整用パターンのトナー付着量を検知する付着量検知手段と、を備え、
前記作像手段は、前記記録媒体に転写しないで、前記クリーニング部材に入力するトナー像パターンを前記像担持体に形成する画像形成装置において、
前記像担持体上に形成された前記トナー像パターンの位置から、形成する前記調整用パターンの前記像担持体上の位置までの前記像担持体の表面移動距離が規定範囲内に入る場合は、前記規定範囲から外れるように前記調整用パターンの形成タイミングを調整することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記規定範囲は、前記像担持体1周を超え、前記像担持体2周以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の画像形成装置において、
互いに異なる色のトナー像をそれぞれ形成する複数の作像手段を備え、
前記トナー像パターンの色は、変更可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の画像形成装置において、
一回のトナー像パターン形成動作で、前記トナー像パターンを所定の間隔を開けて複数形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置において、
互いに異なる色のトナー像をそれぞれ形成する複数の作像手段が、前記像担持体の表面移動方向に並べて配置されており、
複数の前記トナー像パターンは、互いに異なる色で形成され、
複数の前記トナー像パターンの前記表面移動方向の下流側からの色順が、複数の作像手段の前記表面移動方向の下流側からの色順に倣っていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置において、
複数の前記トナー像パターンの前記表面移動方向の下流側からの色順を、複数の作像手段の前記表面移動方向の下流側からの連続する色順にすることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、次のような画像形成装置が知られている。すなわち、画像形成装置は、トナー像を作像する作像手段と、作像手段により作像されたトナー像を担持する像担持体と、像担持体上のトナー像を記録媒体に転写する転写部材と、像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材とを備えている。また、像担持体の表面に対向して配置され、像担持体の記録媒体通紙領域よりも記録媒体の幅方向の外側に形成された作像手段を調整するための調整用パターンのトナー付着量を検知する付着量検知手段とを備えている。
【0003】
特許文献1には、上記画像形成装置として、像担持体たる中間転写ベルトの表面を、中間転写ベルトの表面移動方向と直交する方向であるベルト幅方向で5つの領域に分割し、分割した各領域に付着量検知手段としての光学センサを配置したものが記載されている。そして、光学センサが、中間転写ベルトの表面のフィルミングを検知したときは、その光学センサに対応する中間転写ベルトのベルト幅方向領域に記録媒体に転写しないでクリーニング部材に入力するトナー像パターンを形成する。これによれば、ベルト幅方向において、フィルミングが発生している箇所にのみ、トナー像パターンが形成されるため、ベルト幅方向全域にわたってトナー像パターンを形成する場合に比べて、トナーの浪費を避けることができると記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、調整用パターンが形成される中間転写ベルトなどの像担持体の位置と、トナー像パターンが形成された像担持体の位置との位置関係によっては、光学センサなどの付着量検知手段の調整用パターンのトナー付着量検出精度が低下するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、トナー像を作像する作像手段と、前記作像手段により作像された前記トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体上の前記トナー像を記録媒体に転写する転写部材と、前記像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材と、前記像担持体の表面に対向して配置され、前記像担持体の記録媒体通紙領域よりも前記記録媒体の幅方向の外側に形成された前記作像手段を調整するための調整用パターンのトナー付着量を検知する付着量検知手段と、を備え、前記作像手段は、前記記録媒体に転写しないで、前記クリーニング部材に入力するトナー像パターンを前記像担持体に形成する画像形成装置において、形成する前記トナー像パターンの像担持体上の位置から、このトナー像パターン形成後に像担持体上に形成される前記調整用パターンの前記像担持体上の位置までの前記像担持体の表面移動距離が規定範囲内の場合は、トナー像パターンを、前記記録媒体通紙領域の前記幅方向内に収まるように形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、付着量検知手段の調整用パターンの付着量検出精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の画像形成装置の全体構成図。
図2】画像形成装置の作像部の概略構成図。
図3】中間転写ベルト装置の概略構成図。
図4】中間転写ベルト上の階調パターンを説明する模式図。
図5】印刷動作と平行して画像調整を行う場合の中間転写ベルトに形成される画像調整用パターンの一例を示す模式図。
図6】中間転写ベルト上の掻き取りパターンの形成位置について説明する図。
図7】軽微なクリーニング不良が発生する領域について説明する図。
図8】非通紙領域の軽微なクリーニング不良による光学センサの画像調整用パターンの付着量検知精度の低下について説明する図。
図9】実施例1に対応する制御フロー図。
図10】実施例1における掻き取りパターンおよび調整用パターンの形成例を示す図。
図11】実施例2に対応する制御フロー図。
図12】実施例2における掻き取りパターンおよび調整用パターンの形成例を示す図。
図13】実施例3に対応する制御フロー図。
図14】実施例3における掻き取りパターンおよび調整用パターンの形成例を示す図。
図15】掻き取りパターンの色の変更する実施例を示す図。
図16】掻き取りパターンを短い間隔を開けて複数形成する例を示す図。
図17】検証実験における条件(1)~(3)の掻き取りパターンについて説明する図。
図18】検証実験における条件(4)~(6)の掻き取りパターンについて説明する図。
図19】掻き取りパターンを短い間隔を開けて複数形成するようにした実施例3の掻き取りパターンおよび調整用パターンの形成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものである。以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0009】
まず、図1図3を参照にして、画像形成装置100における全体の構成・動作について説明する。
図1は、画像形成装置100の全体構成図であり、図2は、画像形成装置100の作像部6の概略構成図であり、図3は、中間転写ベルト装置15の概略構成図である。
図1に示すように、画像形成装置100の中央には、中間転写ベルト装置15(ベルト装置)が設置されている。また、中間転写ベルト装置15の中間転写ベルト8(像担持体)に対向するように、各色(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)に対応した作像部6Y、6C、6M、6Kが並設されている。
【0010】
図2に示すイエローに対応した作像部6Yは、感光体ドラム1Y(感光体)と、感光体ドラム1Yの周囲に配設された帯電部4Y、現像部5Y、クリーニング部2Y、除電部、等で構成されている。そして、感光体ドラム1Yの表面で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)がおこなわれ、感光体ドラム1Y上にイエロー画像が形成される。
【0011】
なお、他の3つの作像部6C、6M、6Kも、使用されるトナーの色が異なる以外は、イエローに対応した作像部6Yとほぼ同様の構成であり、それぞれのトナー色に対応した画像が形成される。以下、他の3つの作像部6C、6M、6Kの説明を適宜に省略して、イエローに対応した作像部6Yのみの説明をおこなう。
【0012】
図2に示すように、感光体ドラム1Yは、モータによって反時計方向に回転駆動される。そして、帯電部4Yの位置で、感光体ドラム1Yの表面が一様に帯電される(帯電工程)。具体的に、帯電部4Yに、帯電バイアスが帯電電源(図3の電源部62を参照)から印加される。その後、感光体ドラム1Yの表面は、露光部7から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によってイエローに対応した静電潜像が形成される(露光工程)。このように感光体ドラム1Yの表面において静電潜像が形成された部分は、露光電位が形成される。
【0013】
その後、感光体ドラム1Yの表面は、現像部5Yとの対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、イエローのトナー像が形成される(現像工程)。次に、感光体ドラム1Yの表面は、像担持体としての中間転写ベルト8(中間転写体)及び一次転写ローラ9Yとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1Y上のトナー像が中間転写ベルト8上に転写される(一次転写工程)。このとき、感光体ドラム1Y上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
【0014】
次に、感光体ドラム1Yの表面は、クリーニング部2Yとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1Yの表面に残存した未転写トナーがクリーニングブレード2a(感光体用クリーニングブレード)によって除去される。除去された未転写トナーは、クリーニング部2Y内に回収される(クリーニング工程)。
【0015】
クリーニング部2Yには、潤滑剤供給部3が内設されている。潤滑剤供給部3によって感光体ドラム1Yの表面に潤滑剤が塗布される。潤滑剤供給部3は、潤滑剤供給ローラ3a、固形潤滑剤3b、圧縮スプリング3c、などで構成されている。潤滑剤供給部3は、図2の反時計方向に回転して感光体ドラム1Yに摺接しながら潤滑剤を供給する。固形潤滑剤3bは、潤滑剤供給ローラ3aに摺接しており、圧縮スプリング3cは、潤滑剤供給ローラ3aに向けて固形潤滑剤3bを付勢している。
【0016】
クリーニング部2Yを通過した感光体ドラム1Yの表面は、除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1上の残留電位が除去される。こうして、感光体ドラム1Y上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
【0017】
なお、上述した作像プロセスは、他の作像部6C、6M、6Kでも、イエロー作像部6Yと同様におこなわれる。すなわち、作像部の上方に配設された露光部7から、画像情報に基いたレーザ光Lが、各作像部6C、6M、6Kの感光体ドラム1C、1M、1Kの表面に向けて照射される。詳しくは、露光部7は、光源からレーザ光Lを発して、そのレーザ光Lを回転駆動されたポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学素子を介して感光体ドラム上に照射する。その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト8上に重ねて一次転写する。 こうして、中間転写ベルト8の表面にカラー画像(トナー像)が担持される。
【0018】
中間転写ベルト装置15は、図3に示すように、像担持体としての中間転写ベルト8、4つの一次転写ローラ9Y、9C、9M、9K、駆動ローラ12A、二次転写対向ローラ80、テンションローラ12B、従動ローラ12C、12D、クリーニング対向ローラ13、クリーニングブレード10(中間転写用クリーニングブレード)、二次転写ローラ70、光学センサユニット40、等で構成される。中間転写ベルト8は、複数のローラ部材80、12A~12D、13によって張架・支持されるとともに、駆動モータ61による1つのローラ部材(駆動ローラ12A)の回転駆動によって図3の矢印方向に無端移動される。
【0019】
4つの一次転写ローラ9Y、9C、9M、9Kは、それぞれ、中間転写ベルト8を感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kとの間に挟み込んで一次転写ニップを形成している。そして、一次転写ローラ9Y、9C、9M、9Kに、トナーの極性とは逆の極性の転写電圧(一次転写バイアス)が電源部62の一次転写電源から印加される。
【0020】
中間転写ベルト8は、矢印方向に走行して、一次転写ローラ9Y、9C、9M、9Kの一次転写ニップを順次通過し、感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kの表面に形成された各色のトナー像が、中間転写ベルト8の表面に重ねて一次転写される。
【0021】
各色のトナー像が重ねて一次転写された中間転写ベルト8は、二次転写ローラ70との対向位置に達する。この位置では、二次転写対向ローラ80が、二次転写ローラ70との間に中間転写ベルト8を挟み込んで二次転写ニップを形成している。中間転写ベルト8上に形成された4色のトナー像は、この二次転写ニップの位置に搬送された用紙P(シート)上に二次転写される。このとき、中間転写ベルト8には、用紙Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
【0022】
中間転写ベルト8は、クリーニングブレード10(クリーニング部材)の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト8上の未転写トナー、紙粉などの付着物が除去される。こうして、中間転写ベルト8上でおこなわれる一連の転写プロセスが終了する。
【0023】
図1に示すように、二次転写ニップの位置に搬送される用紙Pは、画像形成装置100の下方に配設された給紙部26から、給紙ローラ27やレジストローラ対28等を経由して搬送される。詳しくは、給紙部26には、用紙P(シート)が複数枚重ねて収納されている。給紙ローラ27が図1の反時計方向に回転駆動されると、一番上の用紙Pがレジストローラ対28のローラ間に向けて給送される。
【0024】
レジストローラ対28に搬送された用紙Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対28のローラニップの位置で一旦停止する。中間転写ベルト8上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対28が回転駆動され、用紙Pが二次転写ニップに向けて搬送され、用紙P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0025】
二次転写ニップの位置でカラー画像が転写された用紙Pは、定着部20に搬送され、定着ベルト及び加圧ローラによる熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が用紙P上に定着される。その後、用紙Pは、排紙ローラ対によって装置外へと排出される。排紙ローラ対によって装置外に排出された用紙Pは、出力画像として、スタック部上に順次スタックされる。こうして、画像形成装置における一連の画像形成プロセスが完了する。
【0026】
次に、図2にて、作像部における現像部5Y(現像装置)の構成・動作について、さらに詳しく説明する。
現像部5Yは、感光体ドラム1Yに対向する現像ローラ51Yと、現像ローラ51Yに対向するドクターブレード52Yと、現像剤収容部内に配設された2つの搬送スクリュ55Yと、現像剤中のトナー濃度を検知する濃度検知センサ56Yと、等で構成される。現像ローラ51Yは、内部に固設されたマグネットや、マグネットの周囲を回転するスリーブ等で構成される。現像剤収容部内には、キャリアとトナーとからなる2成分現像剤が収容されている。
【0027】
現像ローラ51Yのスリーブは、図2の矢印方向に回転しており、マグネットにより形成された磁界によって現像ローラ51Y上に担持された現像剤が、スリーブの回転にともない現像ローラ51Y上を移動する。現像部5Y内の現像剤は、現像剤中のトナーの割合(トナー濃度)が所定の範囲内になるように調整されている。具体的には、濃度検知センサ56Yによってトナー濃度が所定の範囲を下回った状態が検知されると、制御部60による制御によってトナー補給部63が制御されて、トナー容器から現像部5Yに向けて新品のトナーが補給される。これにより、現像剤中のトナーの割合(トナー濃度)が所定の範囲内になるように調整される。
【0028】
現像部5Yの現像剤収容部内に補給されたトナーは、2つの搬送スクリュ55Yによって、現像剤とともに混合・撹拌されながら、隔絶された2つの現像剤収容部を循環する(図2の紙面垂直方向の移動)。現像剤中のトナーは、キャリアとの摩擦帯電によりキャリアに吸着して、現像ローラ51Y上に形成された磁力によりキャリアとともに現像ローラ51Y上に担持される。
【0029】
現像ローラ51Y上に担持された現像剤は、図2中の矢印方向に搬送されて、ドクターブレード52Yの位置に達する。現像ローラ51Y上の現像剤は、この位置で現像剤量が適量化された後に、感光体ドラム1Yとの対向位置(現像領域)まで搬送される。そして、現像領域に形成された電界によって、感光体ドラム1Y上に形成された潜像にトナーが吸着される。その後、現像ローラ51Y上に残った現像剤はスリーブの回転にともない現像剤収容部の上方に達して、この位置で現像ローラ51Yから離脱される。
なお、現像領域に形成される電界は、感光体ドラム1Y上に形成される露光電位(画像部電位)と、現像電源(図3の電源部62を参照)から現像ローラ51Yに印加される現像バイアスとの電位差によって形成される。
【0030】
次に、図3等を用いて、本実施形態における中間転写ベルト装置15について詳述する。
図3に示すように、ベルト装置としての中間転写ベルト装置15は、像担持体としての中間転写ベルト8、4つの一次転写ローラ9Y、9C、9M、9K、駆動ローラ12A、二次転写対向ローラ80、テンションローラ12B、従動ローラ12C、12D、クリーニング対向ローラ13、中間転写用クリーニングブレードとしてのクリーニングブレード10、二次転写ローラ70、複数の光学センサからなる光学センサユニット40等で構成される。
【0031】
像担持体としての中間転写ベルト8は、先に説明したように複数の感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kの表面に形成されたトナー像が画像部としてそれぞれ一次転写される。中間転写ベルト8は、4つの感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kに対向するように配設されている。中間転写ベルト8は、主として6つのローラ部材(駆動ローラ12A、二次転写対向ローラ80、テンションローラ12B、従動ローラ12C、12D、クリーニング対向ローラ13)によって張架・支持されている。
【0032】
中間転写ベルト8は、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)、等を単層又は複数層に構成され、カーボンブラック等の導電性材料が分散されている。中間転写ベルト8は、体積抵抗率が106~1013Ωcm、ベルト裏面側の表面抵抗率が107~1013Ωcmの範囲となるように調整されている。また、中間転写ベルト8は、厚さが20~200μmの範囲となるように設定されている。本実施形態では、中間転写ベルト8の厚さが60μm程度に、体積抵抗率が109Ωcm程度に、設定されている。
【0033】
中間転写ベルト8の表面に必要に応じて離型層をコートしてもよい。コートに用いる材料としては、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、PVDF(フッ化ビニルデン)、PEA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体)、PVF(フッ化ビニル)、等のフッ素樹脂を挙げることができる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0034】
一次転写ローラ9Y、9C、9M、9Kは、それぞれ、中間転写ベルト8を介して対応する感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kに対向している。詳しくは、イエロー用の一次転写ローラ9Yは中間転写ベルト8を介してイエロー用の感光体ドラム1Yに対向している。マゼンタ用の一次転写ローラ9Mは中間転写ベルト8を介してマゼンタ用の感光体ドラム1Mに対向している。シアン用の一次転写ローラ9Cは中間転写ベルト8を介してシアン用の感光体ドラム1Cに対向している。ブラック用(黒色用)の一次転写ローラ9Kは中間転写ベルト8を介してブラック用(黒色用)の感光体ドラム1Kに対向している。一次転写ローラ9Y、9C、9M、9Kは、それぞれ、直径が10mm程度の芯金上に、外径が16mm程度の導電性スポンジ層が形成された弾性ローラである。一次転写ローラ9Y、9C、9M、9Kの体積抵抗は、106~1012Ω(好ましくは、107~109Ω)の範囲となるように調整されている。
【0035】
駆動ローラ12Aは、制御部60によって制御される駆動モータ61によって回転駆動され、中間転写ベルト8は所定の走行方向(図3の時計方向)に走行する。
【0036】
テンションローラ12Bは、中間転写ベルト8の外周面に当接している。2つの従動ローラ12C、12Dは、中間転写ベルト8の内周面に当接している。二次転写対向ローラ80とテンションローラ12Bとの間には、中間転写ベルト8を介してクリーニング対向ローラ13に対向するようにクリーニングブレード10が設置されている。このクリーニングブレード10は、中間転写ベルト8の表面に摺接して、中間転写ベルト8の表面に付着した未転写トナー、紙粉などの異物をクリーニングする。
クリーニングブレード10によって除去された異物は、クリーニングブレード10が保持された中間転写クリーニング部の内部に回収される。
【0037】
二次転写対向ローラ80は、中間転写ベルト8を介して二次転写ローラ70に当接している。二次転写対向ローラ80は、ステンレス鋼等からなる円筒状の芯金の外周面に、体積抵抗が107~10Ω程度で、硬度(JIS-A硬度)が48~58度程度のNBRゴムからなる弾性層83(層厚は5mm程度)が形成されている。
【0038】
また、二次転写対向ローラ80は、電源部62(二次転写電源)に電気的に接続されていて、その電源から-10kV程度の高圧電圧となる二次転写バイアスが印加される。この二次転写対向ローラ80に印加される二次転写バイアスは、二次転写ニップに搬送される用紙Pに中間転写ベルト8に担持されたトナー像を二次転写するためのものである。二次転写バイアスは、トナーの極性と同じ極性(本実施形態ではマイナス極性)のバイアス(直流電圧)である。これにより、中間転写ベルト8のトナー担持面(外周面)に担持されたトナーが、二次転写電界によって二次転写対向ローラ80側から二次転写ローラ70側に向かって静電移動する。
【0039】
二次転写ローラ70は、中間転写ベルト8のトナー担持面(外周面)に当接して、用紙Pが搬送される二次転写ニップを形成している。二次転写ローラ70は、外径が15.5mm程度である。二次転写ローラ70は、ステンレス鋼、アルミニウム等からなる直径9mm程度の中空状の芯金上に、硬度(アスカーC硬度)が40~50度程度の弾性層が形成(被覆)されている。二次転写ローラ70の弾性層は、ポリウレタン、EPDM、シリコーン等のゴム材料に、カーボン等の導電性フィラーを分散させたり、イオン性の導電材料を含有させたりして、ソリッド状又は発泡スポンジ状に形成されたものである。弾性層は、転写電流の集中を抑えるために、その体積抵抗が106.5~107.5Ω程度に設定されている。なお、二次転写ローラ70の表面に半導電性のフッ素樹脂やウレタン樹脂などの離型層を形成して、ローラ表面のトナーに対する離型性を向上させてもよい。
【0040】
本画像形成装置100においては、環境変動や経時における画像品質の安定化を図るために、所定のタイミングでプロセスコントロールと呼ばれる制御を実施する。
図4は、中間転写ベルト上の階調パターンを説明する模式図である。
【0041】
階調パターンは、画像濃度が互いに異なる複数のトナーパッチからなり、これら階調パターンは、中間転写ベルト8の光学センサとの対向位置(幅方向中央と、両端)に形成される。図4に示す例では、上からブラック、シアン、マゼンタ、イエローの階調パターンが形成されている。
【0042】
光学センサユニット40は、中間転写ベルト8のベルト幅方向に所定の間隔をおいて並ぶ複数の付着量検知手段としての光学センサ40R,40C,40Fを有している。それぞれの光学センサは、中間転写ベルト8や中間転写ベルト8上の階調パターンPKPC,PM,PYの光反射率に応じた信号を出力し、トナー付着量を検出する。画像形成装置100は、検出したトナー付着量に基づいて現像バイアスVbなどの作像条件を調整する。
【0043】
中間転写ベルト8の幅方向端部領域に対向するように配置された光学センサ40R,40Fは、通紙領域よりも外側に配置されている。そのため、図5に示すように、用紙に転写するトナー像形成中において、通紙領域よりも外側に画像調整用パターンを形成し、その画像調整用パターンのトナー付着量を光学センサ40R,40Fにて検知する。そして、光学センサ40R,40Fで検知したトナー付着量に基づいて、現像バイアス等を調整して画像濃度等を調整することができる。
【0044】
トナーの母体成分や、トナーに添加されたシリカや酸化チタン、その他、いわゆるトナーの外添剤が感光体ドラム1から中間転写ベルト8へ転移する。この中間転写ベルト8へ転移したトナーの外添剤が中間転写ベルト8に固着して、中間転写ベルト8にフィルミングが発生することがある。また、トナーの外添剤に加えて、潤滑剤に含まれる窒化ホウ素やステアリン酸亜鉛等の各種成分も感光体ドラム1から中間転写ベルト8へ転移する。そして、トナーの外添剤と潤滑剤とがお互いに相互作用して、中間転写ベルト8のフィルミングが悪化する場合がある。さらに、二次転写ニップにおいて、用紙Pから紙紛が中間転写ベルト8に転移し、中間転写ベルト8に固着して紙紛フィルミングが発生することがある。
【0045】
このような中間転写ベルト8のフィルミングは、中間転写ベルト8への外部からの圧力(主に感光体ドラム1との接触圧)によって、シリカなどのトナー外添剤および潤滑剤に含まれる各種成分などのフィルミング物質が固着して発生する。中間転写ベルト8にフィルミングが発生すると、全ベタ画像やハーフトーン画像を出力するとフィルミングに対応する部分にトナーが載らず、白く抜ける所謂白抜けなどの異常画像が発生してしまう。
【0046】
また、フィルミングが発生すると、ベルトの光沢度が低下する。そのため、中間転写ベルト8の光学センサ40R,40C,40Fとの対向領域にフィルミングが発生すると、出力信号が変化し、中間転写ベルト上の階調パターンの付着量を良好に検知することができなくなる。また、フィルミング状態のムラにより、光学センサの出力が安定せず正しく画像調整できないという問題もある。
【0047】
さらに、フィルミングによりクリーニングブレード10のクリーニング性が低下するおそれがある。ベルト幅方向において、クリーニングブレード10の光学センサ40R,40C,40Fの配置位置に対応する位置には、単位面積当たりの付着量が多い階調パターンが入力される機会が多い。そのため、中間転写ベルト8の光学センサ40R,40C,40Fとの対向領域にフィルミングが発生すると、階調パターンがクリーニングブレード10に入力されたときに、クリーニング不良(トナーのすり抜け)が発生するリスクが高くなる。
【0048】
上記フィルミングは、クリーニングブレード10と中間転写ベルト8の表面との当接箇所(以下「クリーニング箇所」という。)に滞留するトナーによって掻き取られ、中間転写ベルト8表面上から除去することができる。具体的には、クリーニング箇所に滞留するトナー表面の凹凸とトナーにかかるクリーニングブレード10の圧により中間転写ベルト表面のフィルミングが掻き取られる。
【0049】
そのため、本画像形成装置100は、中間転写ベルト8のフィルミングを抑制するために、所定のタイミングで中間転写ベルト8上に掻き取りパターンを形成する。そして、この掻き取りパターンをクリーニングブレード10に入力することで、クリーニング箇所に十分な量のトナーが滞留するようにしている。
【0050】
図6は、中間転写ベルト上の掻き取りパターンの形成位置について説明する図である。
図6は、通常の画像形成動作で3枚連続印刷した場合である。図6に示すように、掻き取りパターンの形成位置としては、
1.二次転写ニップへの1枚目の用紙よりも前の位置
2.二次転写ニップに通紙される用紙幅よりも外側の位置
3.二次転写ニップに通紙される用紙後端の非画像形成領域の位置
4.紙間の位置
5.最終紙が二次転写ニップを通過した後の位置
などを挙げることができる。
上記2.については、中間転写ベルト8の幅が、二次転写ローラ70の軸方向長さよりも広く、上記2.の位置では二次転写ローラ70が中間転写ベルト8に接触しない構成において採用できる。これは、上記2.の位置において、二次転写ローラ70が中間転写ベルト8に接触する構成の場合は、上記2.の位置に形成した掻き取りパターンが二次転写ローラ70に転写されるからである。また、上記2.の位置だけでは、中間転写ベルト8の幅方向の端部のみしかフィルミングを除去できないため、上記1、3~5の中間転写ベルトの幅方向に長い帯状の掻き取りパターンと組み合わせる必要がある。
【0051】
上記3.については、二次転写ニップに通紙される用紙先端の非画像形成領域の位置でもよい。上記1、3~5については、中間転写ベルト上の掻き取りパターンが二次転写ニップを抜けるときは、二次転写対向ローラ80にプラス極性のバイアスを印加する。二次転写対向ローラ80にプラス極性のバイアスを印加することで、掻き取りパターンを中間転写ベルト8に静電的に引き付け、掻き取りパターンが二次転写ローラ70や用紙Pに転写されないようにしている。
【0052】
制御部60は、中間転写ベルト8の走行距離の計測し、計測した中間転写ベルト8の走行距離に基づいて、中間転写ベルト8の表面上のフィルミング状況に基づくクリーニングブレード10への必要トナー入力量を算出する。具体的には、中間転写ベルト8の走行距離に係数を乗算して必要トナー入力量を算出する。算出した必要トナー入力量を加算して、必要トナー入力量の積算値を算出し、必要トナー入力量の積算値が閾値を超えた場合は、掻き取りパターンを形成する。次に、形成した掻き取りパターンのトナー量(クリーニングブレードへの入力トナー量)を、上記積算値から減算する。そして、算出した必要トナー入力量を加算していき、必要トナー入力量の積算値が、再び閾値を超えたら、掻き取りパターンを形成する。
【0053】
上記係数は、一定の値でもよいし、例えば、カラー画像モードとモノクロ画像モードとで、係数を変えてもよい。これは、カラー画像モードの方がモノクロ画像モードよりもフィルミングが悪化する場合があるからである。カラー画像モードの方がモノクロ画像モードより定着設定温度が高いことやモーター稼働台数が増加することにより機内温度が高くなる傾向にある。機内温度が高くなることで、クリーニングブレード10のスティックスリップ量が増加し、フィルミングが悪化するおそれがある。また、感光体ドラム1の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部を有する場合、カラー画像モードでは、中間転写ベルト17に付着するフィルミング物質の成分となる潤滑剤量がモノクロモードより増加する。そのため、カラー画像モードの方がモノクロ画像モードよりもフィルミングは悪化するおそれがある。
【0054】
そのため、例えば、カラー画像モードの係数Bを、モノクロ画像モードの係数Aよりも高い値(A<B)とする。そして、画像形成時(中間転写ベルト駆動時)に、モノクロ画像モードかカラー画像モードかを判定する。モノクロ画像モードの時は、係数Aを用いて必要トナー入力量を算出し、カラー画像モードのときは、係数Bを用いて必要トナー入力量を算出する。
【0055】
例えば、カラー画像モードが多い場合は、上述したようにフィルミングの悪化するおそれがモノクロ画像モードよりも高い。しかし、カラー画像モードが多い場合は、短い中間転写ベルト17の走行距離で必要トナー入力量の積算値が閾値を超えるため、早いタイミングで掻き取りパターンの形成が行われる。一方、モノクロ画像モードが多い場合は、カラー画像モードに比べてフィルミングが悪化し難い。そのため、モノクロ画像モードが多い場合は、必要トナー入力量の積算値が閾値を超える走行距離が長くなり、遅いタイミングで掻き取りパターンの形成が行われる。
【0056】
このように、画像モードに基づいて、掻き取りパターンの形成が行われることで、適切なタイミングで、掻き取りパターンの形成を行うことができ、無駄なトナー消費や、フィルミングの悪化を良好に抑制することができる。
【0057】
画像形成装置の稼働時に継続的に地肌汚れトナーが現像部5から供給され、この地肌汚れトナーは、中間転写ベルト8の紙間や通紙領域外に付着する場合がある。紙間や通紙領域外に付着した地汚れトナーは、クリーニングブレード10に入力される。このクリーニングブレード10に入力された地汚れトナーによっても中間転写ベルト8のフィルミングが掻き取られる。その結果、クリーニングブレード10に入力される地汚れトナー量に応じて、中間転写ベルト8のフィルミング量が異なってくる。
【0058】
そのため、クリーニングブレード10に入力される地汚れトナー量に基づいて、係数を変えてもよい。高温高湿環境下では、地汚れトナー量が多くなり、この地汚れトナーにより掻き取られるフィルミングが、低温低湿環境下や常温常湿環境下よりも多くなる。そのため、例えば、高温高湿環境下ときは地汚れ係数G1を、常温常湿環境下のときは地汚れ係数G2(G1<G2)、低温低湿環境下のときは地汚れ係数G3(G2<G3)を用い、必要トナー入力量を算出するようにしてもよい。これにより、地汚れトナー量が多い高温高湿環境下においては、必要トナー入力量の積算値が閾値を超える走行距離が長くなり、遅いタイミングで掻き取りパターンの形成が行われる。
【0059】
このように、地汚れトナー量に基づいて、掻き取りパターンの形成が行われることで、適切なタイミングで、掻き取りパターンの形成を行うことができ、無駄なトナー消費や、フィルミングの悪化を良好に抑制することができる。
【0060】
フィルミングを良好に除去するには、掻き取りパターンによってクリーニング箇所に入力されるトナー量はなるべく多い方がよいが、多すぎるとクリーニング不良が発生するおそれがある。そのため、掻き取りパターンによってクリーニング箇所に入力されるトナー量は、クリーニング不良が発生しないぎりぎりのレベルを狙って設定される。しかし、クリーニング不良が発生しやすい条件(経時、放置後、高温高湿環境等)下において、中間転写ベルト8のベルト幅方向における通紙領域外である非通紙領域で軽微なクリーニング不良が発生するおそれがある。これは、中間転写ベルト8の通紙領域では、二次転写ニップにおいて用紙と接触し、中間転写ベルト8上のフィルミング物質の一部が用紙に付着する。一方、非通紙領域では、フィルミング物質の用紙への付着が発生しない。そのため、通紙領域よりもフィルミングが悪化しやい。上述したように、フィルミングによりクリーニングブレード10のクリーニング性が低下する場合があり、通紙領域よりもフィルミングが悪化しやすい非通紙領域にのみ軽微なクリーニング不良が発生するのである。
【0061】
図7は、軽微なクリーニング不良が発生する中間転写ベルトの表面移動方向における発生領域について説明する図である。
軽微なクリーニング不良は、クリーニングブレード通過後において、中間転写ベルトの上記掻き取りパターンKPの中間転写ベルト移動方向下流側端部Aを基点にして生じる(図7(c)参照)。
【0062】
図7(d)に示すように、一次転写ニップにおいて、掻き取りパターンKPを一次転写後、中間転写ベルト8一回転後に、クリーニング不良トナーが付着した軽微なクリーニング不良発生領域の基点Aが一次転写ニップに到達する。図7(e)に示すように、この軽微なクリーニング不良発生領域が、クリーニングブレード10のクリーニング箇所を通過すると、クリーニング不良発生領域のクリーニング不良トナーは、クリーニングブレードによって除去される。従って、図7(f)に示すように、少なとも、一次転写ニップにおいて、掻き取りパターンKPを一次転写してから中間転写ベルト8の二回転目後は、中間転写ベルトのクリーニング不良が発生していない領域が、一次転写ニップを通過することになる。
なお、図7では、中間転写ベルトの一回転にわたり軽微なクリーニング不良が発生しているが、軽微なクリーニング不良が発生する領域は、装置の構成によって変わる。例えば、中間転写ベルトの周長が長い場合は、軽微なクリーニング発生領域は、中間転写ベルトの一回転よりも十分に短い範囲となる。
【0063】
図8は、非通紙領域の軽微なクリーニング不良による光学センサ40F,40Rの画像調整用パターンの付着量検知精度の低下について説明する図である。
図8に示す例では、中間転写ベルト1回転する間に、用紙が3枚通紙される。また、図7に示す例では、一次転写ニップにおいて、連続印刷開始前に、2枚目と3枚目との紙間、4枚目と5枚目の紙間に掻き取りパターンKP1,KP2、KP3が転写される。
【0064】
図7を用いて説明したように、少なくとも一次転写ニップにおいて、掻き取りパターンを一次転写してから中間転写ベルト1周を超え、2周までの間、軽微なクリーニング不良発生領域が一次転写ニップを通過する。
【0065】
図8においては、2枚目と3枚目との紙間の掻き取りパターンKP2の軽微なクリーニング不良の発生領域と4枚目と5枚目の紙間の掻き取りパターンKP3の軽微なクリーニング不良の発生領域とが重なった部分が、一次転写ニップを通過中に調整用パターンRPが中間転写ベルト8に一次転写される。
【0066】
このように調整用パターンRPが中間転写ベルト8の軽微なクリーニング不良発生領域に一次転写されると、軽微なクリーニング不良発生領域のクリーニング不良トナーの影響で、光学センサ40F,40Rの調整用パターンの付着量検知精度が低下するおそれがある。具体的には、実際の調整用パターンの付着量よりも多い付着量が検知されるおそれがある。その結果、調整用パターンの付着量に基づく画像濃度調整後の画像濃度が狙いの画像濃度よりも薄くなるおそれがある。また、調整用パターンが色ズレ調整用パターンの場合は、クリーニング不良トナーによって、光学センサ40F,40Rの色ずれ調整用パターンの検知精度が低下し、色ずれ制御が失敗してしまう場合がある。
【0067】
そこで、本実施形態では、掻き取りパターンKPの主走査方向長さを調整(実施例1)したり、掻き取りパターンの形成位置から、中間転写ベルトの1周を超え、2周以下の間には、調整用パターンRPが形成されない(実施例2、3)ようにしたりして、付着量検知精度の低下の発生を抑制するようにした。以下、本実施形態の特徴部について、具体的に説明する。
【0068】
[実施例1]
図9は、実施例1に対応する制御フロー図である。
実施例1は、図9に示すように、必要トナー入力量の積載値が閾値を超え、掻き取りパターンの形成タイミングとなったら(S1のYes)、この掻き取りパターン形成後、一次転写ニップを基点として、中間転写ベルト1周を超えて、2周までの間に階調パターンなどの調整用パターンRPが形成されるか否かを確認する(S2)。調整用パターンは、連続印刷時、所定の枚数を印刷した都度に形成される。また、中間転写ベルト8が一回転する間の印刷枚数は、予めわかる(図8に示した例では、中間転写ベルト一回転する間に3枚印刷される)。従って、例えば、調整用パターンを形成する所定の枚数をN、中間転写ベルト8が一回転する間の印刷枚数をnとした場合、掻き取りパターンを形成するときの前回調整用パターンを形成した時点からの印刷枚数が、(N-2n)以上(N-n)以下のときは、掻き取りパターン形成後、一次転写ニップを基点として、中間転写ベルト1~2周の間に調整用パターンRPが形成されると判断する(S2のYes)。よって、前回調整用パターンを形成した時点からの印刷枚数が、(N-2n)以上(N-n)以下のときは、掻き取りパターンKPを中間転写ベルト8の通紙領域内に収まる、通常の掻き取りパターンよりも主走査方向に短い掻き取りパターンとする(S3)。
【0069】
図10は、実施例1における掻き取りパターンおよび調整用パターンの形成例を示す図である。
図10に示すように、掻き取りパターンKP1については、その後形成する調整用パターンRPとの距離が、中間転写ベルト2周以上離れている。すなわち、掻き取りパターンKP1を形成するときの前回調整用パターンを形成した時点からの印刷枚数が、(N-2n)未満である。そのため、掻き取りパターンKP1については、中間転写ベルトの非通紙領域まで延び、両端が光学センサ40F,40Rの対向する領域に対向する主走査方向に長い帯状パターンとなる。
【0070】
図10に示すように、調整用パターンRPは、掻き取りパターンKP1を形成してから、中間転写ベルトの1~2周の間で発生する掻き取りパターンKP1による軽微なクリーニング不良発生領域よりも後に形成される。従って、掻き取りパターンKP1については、両端が光学センサ40F,40Rに対向する主走査方向に長い帯状パターンであっても、光学センサ40F,40Rの調整用パターンRPの付着量検知精度に影響はない。
【0071】
一方、掻き取りパターンKP2や掻き取りパターンKP3は、掻き取りパターン形成後、中間転写ベルト1~2周の間で調整用パターンRPが形成される。すなわち、掻き取りパターンKPを形成するときの前回調整用パターンを形成した時点からの印刷枚数が、(N-2n)以上、(N-n)以下である。従って、掻き取りパターンKP2、KP3に関しては、図3に示すように、中間転写ベルトの通紙領域内に収まる主走査方向に短い掻き取りパターンとなる。
【0072】
これにより、クリーニング箇所の中間転写ベルトの通紙領域よりも主走査方向(ベルト幅方向)外側の非通紙領域に対応する部分には、トナーが入力されず、掻き取りパターンKP2,KP3形成後、中間転写ベルト1~2周の間で非通紙領域に軽微なクリーニング不良の発生が抑制される。これにより、中間転写ベルト上の軽微なクリーニング不良の発生領域に調整用パターンRPが形成されるのを抑制でき、光学センサ40F,40Rで調整用パターンRPの付着量を精度よく検知することができる。
【0073】
また、中間転写ベルトの通紙領域内に収まる主走査方向に短い掻き取りパターンでは、中間転写ベルトの非通紙領域のフィルミングは除去できない。そのため、主走査方向に短い掻き取りパターンを形成後に形成される次の掻き取りパターンについて、掻き取りパターン形成後、中間転写ベルト1~2周の間に、調整用パターンRPが形成されない場合は、図10に示すように、帯状の掻き取りパターンKP4-1と、中間転写ベルトの非通紙領域のみの掻き取りパターンKP4-2(図6における2.の位置)とを形成するようにしてもよい。これにより、クリーニング箇所の中間転写ベルト8の非通紙領域に対応する部分へ入力されるトナー量が多くなり、通紙領域よりも長い期間、非通紙領域のフィルミングを除去するようにしてもよい。なお、後述するように、帯状の掻き取りパターンKP4-1と非通紙領域のみの掻き取りパターンKP4-2との間隔は、クリーニング不良が発生しないような間隔で形成される。
【0074】
[実施例2]
図11は、実施例2に対応する制御フロー図である。
実施例2は、図11に示すように、調整用パターンの形成タイミングとなったら(S11のYes)、中間転写ベルト8の調整用パターンを形成する位置から、中間転写ベルト1~2周前に掻き取りパターンの形成がされているか否かを判断する(S12)。
【0075】
中間転写ベルト1~2周前に掻き取りパターンの形成がされている場合(S12のYes)は、調整用パターンは、中間転写ベルトの軽微なクリーニング不良発生領域に形成される。そのため、この場合は、調整用パターンの形成を停止する(S13)。一方、調整用パターンを形成する位置から、中間転写ベルト1周以下、または2周以上前に掻き取りパターンの形成がされている場合(S12のNo)、調整用パターンは、中間転写ベルトの軽微なクリーニング不良発生領域には形成されない。従って、このときは、調整用パターンを形成する(S14)。
【0076】
図12は、実施例2における掻き取りパターンおよび調整用パターンの形成例を示す図である。
調整用パターンRP1は、掻き取りパターンKP1の位置から、中間転写ベルト一回転未満(印刷枚数3枚以下)の位置に形成されるため、作像が行われる。調整用パターンRP2については、掻き取りパターンKP1の位置から、中間転写ベルト1~2周の間(印刷枚数3枚超え~6枚以下)に形成される。そのため、調整用パターンRP2については、掻き取りパターンKP1の軽微なクリーニング不良発生領域に形成されることになる。従って、調整用パターンRP2の作像は行われない。
一方、調整用パターンRP3は、掻き取りパターンKP1の位置から、中間転写ベルト2周以上離れた位置に形成されるため、調整用パターンRP3の作像は行われる。
【0077】
このように、実施例2については、掻き取りパターンの軽微なクリーニング発生領域には、調整用パターンが形成されない。従って、調整用パターンの誤検知による位置ズレ制御不良や、調整用パターンの付着量検知精度の低下による画像濃度調整不良が発生するのを防止することができる。
【0078】
[実施例3]
図13は、実施例3に対応する制御フロー図である。
実施例3は、図13に示すように、調整用パターンの形成タイミングとなったとき(S21のYes)、中間転写ベルト8の調整用パターンを形成する位置から、中間転写ベルト1~2周前に掻き取りパターンKPが形成されているか否かを判断する(S22)。
【0079】
中間転写ベルト1~2周前に掻き取りパターンの形成がされている場合(S22のYes)は、調整用パターンRPの形成タイミングを変更する(S23)。具体的には、掻き取りパターンKPから、中間転写ベルト2周以上離れるように、調整用パターン形成タイミングを変更する。
【0080】
一方、調整用パターンを形成する位置から、中間転写ベルト1周以下、または、2周以上前に掻き取りパターンの形成がされている場合(S22のNo)、調整用パターンは、中間転写ベルトの軽微なクリーニング不良発生領域には形成されない。従って、このときは、調整用パターン形成タイミングを変更せずに、調整用パターンを形成する(S24)。
【0081】
図14は、実施例3における掻き取りパターンおよび調整用パターンの形成例を示す図である。
調整用パターンRP1は、掻き取りパターンKPの位置から、中間転写ベルト一回転未満(印刷枚数3枚以下)の位置に形成されるため、作像が行われる。調整用パターンRP2については、掻き取りパターンKP1の位置から、中間転写ベルト1~2周の間(印刷枚数3枚超え~6枚以下)に形成される。そのため、調整用パターンRP2が、掻き取りパターンKP1に対して、中間転写ベルト2周以上離れるように、作像タイミングが変更される。これにより、調整用パターンRP2が、掻き取りパターンKP1の軽微なクリーニング不良発生領域に形成されなくなる。
【0082】
よって、実施例3についても、調整用パターンの誤検知による位置ズレ制御不良や、調整用パターンの付着量検知精度の低下による画像濃度調整不良が発生するのを防止することができる。
【0083】
また、図15に示すように、掻き取りパターンを形成する色を変更するようにしてもよい。例えば、必要トナー入力量の積算値が閾値を超え、掻き取りパターンを形成するタイミングとなったとき、Y,C,M,Kのうち、最もトナー消費量の少ない色を、掻き取りパターン形成色として用いる。各色のトナー消費量は、例えば、各色の画像面積率等から求めることができる。図15に示す例では、掻き取りパターンKP1形成タイミングでは、Y,C,M,Kのうち、K色トナーの消費が最も少なかったため、掻き取りパターンKP1は、K色トナーを用いて形成されている。掻き取りパターンKP2形成タイミングでは、Y,C,M,Kのうち、Y色トナーの消費が最も少なかったため、掻き取りパターンKP2は、Y色トナーを用いて形成されている。これにより、Y,C,M,Kのいずれかひとつのみを用いて掻き取りパターンを形成する場合に比べて、特定色にトナーの消費が偏よるのを抑制することができる。
【0084】
クリーニング箇所に十分な量のトナーが滞留することで、中間転写ベルト17表面上のフィルミングを良好に除去でき好ましい。しかし、上記掻き取りパターンのトナー量を多くして、クリーニング箇所に一度に大量のトナー量を入力すると、トナーのすり抜けが発生し、クリーニング不良が発生するおそれがある。
【0085】
そこで、図16に示すように、掻き取りパターンKPを短い間隔を開けて複数形成するのが好ましい。
また、この図16に示す構成では、3つの掻き取りパターンを互いに異なる色のトナーで形成している。これにより、特定色にトナーの消費が偏よるのを抑制することができる。また、図16では、中間転写ベルト8の最下流の掻き取りパターンは、M色、中央の掻き取りパターンは、C色であり、最上流の掻き取りパターンは、Y色となっており、図1に示す作像部6の並び順に倣っている。このように、掻き取りパターンの色の順序を、作像部6の並び順に倣わせることで、3つの掻き取りパターンを作像する作像時間を短くすることができる。また、K、M、C色の順で3つの掻き取りパターンを中間転写ベルトに形成するようにしてもよい。かかる構成としても例えば、K、C、Y色の順として、M色を飛ばした場合に比べて、3つの掻き取りパターンを作像する作像時間を短くすることができる。なお、作像時間は、3つの作像部のうちのひとつが上述した一連の作像プロセスを開始してから3つの作像部のうちの最後のひとつが上述した一連の作像プロセスを終了するまでの時間である。
【0086】
上記間隔Spは、先行の掻き取りパターンを形成するトナーが、クリーニング箇所から完全に除去される前に、次の掻き取りパターンが入力されるように設定されている。また、上記間隔Spは、クリーニング箇所に滞留するトナー量が、クリーニング不良が発生するトナー量以下となるように設定される。これにより、クリーニング不良を抑制し、かつ、良好にフィルミングが抑制される。
【0087】
以下に、本発明者らが行った検証実験について説明する。
図17図18に示すように、掻き取りパターンの表面移動方向長さおよび掻き取りパターンの個数が互いに異なる条件(1)~(6)で検証実験を行った。
【0088】
条件(1)は、移動方向長さが32.5mmの掻き取りパターンKPを一つ形成した条件であり、条件(2)は、移動方向長さが97.5mmの掻き取りパターンKPを一つ形成した条件である。条件(3)は、移動方向長さが32.5mmの掻き取りパターンKPを間隔13mmで3つ形成した条件であり、条件(4)は、移動方向長さが80mmの掻き取りパターンKPを一つ形成した条件である。条件(5)は、移動方向長さが200mmの掻き取りパターンKPを一つ形成した条件である。条件(6)は、移動方向長さが70mm,60mm,70mmの掻き取りパターンKPを間隔80mmで3つ形成した条件である。そして、条件(1)~(6)において、それぞれ、クリーニング性と、フィルミング性を評価した。
【0089】
<クリーニング性評価>
クリーニング性の評価は、以下の条件にて行った。
・クリーニングブレード当接圧:20N/m
・中間転写ベルトの線速:300mm/s
また、クリーニング性の評価は、掻き取りパターンKPを形成後に印刷した画像に基づいて評価した。印刷画像にスジ状の異常画像が確認されなかった場合は、クリーニング性「○」と評価し、印刷画像にスジ状の異常画像が確認された場合は、クリーニング性「×」と評価した。
【0090】
<フィルミング性評価>
フィルミング性の評価は、画像面積率5%のランニングチャートを150,000枚印刷後に、中間転写ベルト上にテストパターンを形成する。そして、光学センサ40R,40C,40Fによりテストパターンの付着量を検知した際にエラーが発生しないときは、フィルミング性評価を「〇」と評価した。一方、光学センサ40R,40C,40Fによりテストパターンの付着量を検知した際にエラーが発生したときは、フィルミング性評価を「×」とした。掻き取りパターンKPは、中間転写ベルト8の走行距離に基づきトナー入力量を算出し、トナー入力量の積載値が閾値を超えたら、掻き取りパターンを形成した。
【0091】
検証実験の結果を下記表1に示す。
【表1】
【0092】
表1に示すように、条件(1)、条件(4)では、クリーニング性の評価は、「〇」評価であったが、フィルミング性は、「×」評価であった。これは、条件(1)、(4)の掻き取りパターンにおいては、クリーニング箇所に一度に入力されるトナー量が少ないため、トナーのすり抜けが発生することなく、クリーニング性の評価が「〇」となったと考えられる。一方、条件(1)や条件(4)では、フィルミング評価は、「×」であった。
【0093】
上述したように、本実施形態では、形成した掻き取りパターンのトナー量(クリーニングブレードへの入力トナー量)を、トナー入力量の積算値から減算し、トナー入力量の積算値が閾値を超えたら、掻き取りパターンを形成する。条件(1)では、クリーニングブレード10への入力トナー量が少ないため、減算値が少なく、他の条件(2)~(6)に比べて、トナー掻き取りパターンの形成動作の頻度は高い。しかし、一回の掻き取りパターンの形成動作でクリーニングブレードに入力されるトナー量が少ないことから、一回の掻き取りパターンの形成動作でのフィルミングの掻き取りが不十分である。その結果、トナー掻き取りパターンの形成動作の頻度が高くても、中間転写ベルト8のフィルミングが良好に除去できず、経時で中間転写ベルト8のフィルミングが悪化していき、フィルミング評価が「×」となったと考えられる。
【0094】
表1に示すように、移動方向長さが97.5mm以上の掻き取りパターンKPを一つ形成した条件(2)、(5)では、クリーニング性の評価は、「×」評価であった。これは、一度に大量のトナーがクリーニング箇所に入力されたことで、クリーニングブレード10の先端がクリーニング箇所に入力されたトナーの圧力に耐えることができず、トナーのすり抜けが発生し、スジ状の異常画像が生じたと考えられる。
【0095】
一方、条件(2)、条件(5)ではフィルミング評価は、「〇」であった。クリーニングブレード10に入力されるトナー量が多いことから、長い時間トナーをクリーニング箇所に留まらせることができる。これにより、ある程度長い時間継続してクリーニング箇所に留まったトナーによりフィルミングを除去できる。よって、条件(1)のように、断続的にクリーニング箇所に留まったトナーによりフィルミングを除去する場合に比べて、中間転写ベルト8のフィルミングを良好に除去できたと考えられる。その結果、経時にわたり中間転写ベルト8のフィルミングを抑制でき、フィルミング評価が「〇」となったと考えられる。
【0096】
条件(1)、(2)、(4)、(5)から、少なくとも、掻き取りパターンKPの移動方向長さを80mm以下とすることで、クリーニング不良を抑制できることが分かった。また、少なくとも、掻き取りパターンKPの移動方向長さを97.5mm以上とすることで、経時にわたり中間転写ベルト8のフィルミングを抑制できることがわかった。
【0097】
表1に示すように、条件(3)、条件(6)では、クリーニング性、フィルミング性ともに評価が「〇」であった。これは、各掻き取りパターンKPの移動方向長さが80mm以下である。よって、クリーニング箇所に一度に入力されるトナー量を、クリーニング不良が発生するトナー量以下に抑えることができ、クリーニングブレード10によってクリーニング箇所のトナーを良好に堰き止めることができたと考えられる。
【0098】
また、条件(3)、(6)では、所定の間隔で3つの掻き取りパターンが形成され、クリーニング箇所のトナーがクリーニングブレード10により完全に除去される前に、次に掻き取りパターンKPがクリーニング箇所に入力される。これにより、クリーニング箇所のトナーによるフィルミングの掻き取りが継続される。また、条件(3)では、3つの掻き取りパターンのトータルの移動方向長さが条件(2)と同じ97.5mmである。これにより、条件(2)と同量のトナー量がクリーニング箇所に入力される。よって、条件(2)と同様にある程度長い時間継続してクリーニング箇所に滞留したトナーにより中間転写ベルト8のフィルミングを除去することができ、フィルミング評価が「〇」となったと考えられる。
【0099】
なお、条件(6)は、条件(3)よりも各掻き取りパターンの移動方向長さが長い。そのため、クリーニング箇所に一度に入力されるトナー量が、条件(3)よりも多い。よって、条件(3)よりも掻き取りパターンの間隔が長くても、クリーニング箇所のトナーがクリーニングブレード10により完全に除去される前に、次に掻き取りパターンをクリーニング箇所に入力することができる。そのため、条件(6)についても、ある程度長い時間継続してクリーニング箇所に滞留したトナーにより中間転写ベルト8のフィルミングを除去することができ、フィルミング評価が「〇」となったと考えられる。
【0100】
一方で、条件(6)において、掻き取りパターンの間隔を条件(3)と同様に、13mmとすると、クリーニング箇所に滞留するトナーが多くなりすぎ、クリーニング不良が発生するおそれがある。よって、各掻き取りパターンの移動方向長さ(掻き取りパターンのトナー量)に応じて、掻き取りパターンの間隔を設定する必要がある。
【0101】
条件(3)は、条件(6)よりも、最初の掻き取りパターンから最後の掻き取りパターンまでの距離が短く、掻き取りパターン形成動作の期間が条件(6)よりも短くなり、装置のダウンタイムを短くできる。一方、条件(6)の方が、条件(3)よりも一回の掻き取りパターンの形成動作でクリーニング箇所に入力されるトータルのトナー量が多く、および、トナーがクリーニング箇所に滞留する時間も長い。従って、条件(6)の方が、条件(3)よりもフィルミング除去効果は高い。
【0102】
また、条件(2)、(3)について、BN指標を測定したところ、BN指標は、0.2程度であり、条件(1)については、0.45であった。なお、BN指標は、中間転写ベルト17上の潤滑剤の成分である窒化ホウ素の付着量を示す指標値である。BN指標値は、ATR(Attenuated Total Reflection)法赤外吸収スペクトルを利用して求めることができる。詳しくは、検証実験前の中間転写ベルト17のATR法赤外吸収スペクトルと、検証実験後の中間転写ベルト17のATR法赤外吸収スペクトルとの間の差分スペクトルをとる。この差分スペクトルにおける、中間転写ベルト由来のピーク面積に対する窒化ホウ素由来のピーク面積の比率を、BN指標として用いる。
【0103】
図19は、掻き取りパターンKPを短い間隔を開けて複数形成するようにした実施例3の掻き取りパターンおよび調整用パターンの形成例を示す図である。
M色、C色、Y色の3つの帯状の掻き取りパターンKP1(M)、KP1(C)、KP1(Y)を形成してから連続印刷が開始される。これにより、クリーニング不良を抑制しつつ、中間転写ベルト表面のフィルミングを良好に除去して、連続印刷が開始される。よって、連続印刷時に、クリーニング不良によるスジ状の異常画像や、フィルミングによる白抜けが抑制され、高品質な画像を得ることができる。また、3つの帯状の掻き取りパターンの色順が、図1に示した作像部6の中間転写ベルトの移動方向下流側からの配置順に倣っている。よって、3つの掻き取りパターンの作像時間を作像する作像時間を短くでき、連続印刷の開始の遅れを抑制することができる。また、3つの掻き取りパターンを、互いに異なる色で形成することで、特定色にトナーの消費が偏よるのを抑制することができる。
【0104】
また、紙間に形成された帯状の掻き取りパターンKP2-1(K)と、中間転写ベルトの通紙領域外に形成される掻き取りパターンKP2-2(M)の間隔を、クリーニング箇所に入力された帯状の掻き取りパターンKP2-1のトナーがクリーニングブレード10により完全に除去される前に、掻き取りパターンKP2-2(M)がクリーニング箇所に入力される間隔としている。また、非通紙領域に形成される掻き取りパターンKP2-2を、2つに分割している。これにより、中間転写ベルトの非通紙領域のフィルミングを良好に除去でき、かつ、非通紙領域でクリーニング不良が発生するのを抑制できる。これにより、フィルミングによる光学センサ40R,40Fの検知精度の低下、クリーニング不良による光学センサ40R,40Fの検知精度の低下を抑制できる。また、掻き取りパターンKP2-1(K)、非通紙領域に形成される2つの掻き取りパターンKP2-2(M),(C)を互いに異なる色で形成することで、特定色にトナーの消費が偏よるのを抑制することができる。
【0105】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0106】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
トナー像を作像する作像部6などの作像手段と、作像手段により作像されたトナー像を担持する中間転写ベルト8などの像担持体と、像担持体上のトナー像を用紙などの記録媒体に転写する二次転写ローラ70などの転写部材と、像担持体の表面をクリーニングするクリーニングブレード10などのクリーニング部材と、像担持体の表面に対向して配置され、像担持体の記録媒体通紙領域よりも主走査方向などの記録媒体の幅方向の外側に形成された作像手段を調整するための調整用パターンのトナー付着量を検知する光学センサ40R,40Fなどの付着量検知手段と、を備え、作像手段は、記録媒体に転写しないで、クリーニング部材に入力する掻き取りパターンKPなどのトナー像パターンを像担持体に形成する画像形成装置において、形成するトナー像パターンの像担持体上の位置から、このトナー像パターン形成後に像担持体上に形成される調整用パターンまでの像担持体の表面移動距離が規定範囲内の場合は、トナー像パターンを、録媒体通紙領域の幅方向内に形成する。
像担持体のフィルミングを良好に抑制するには、トナー像パターンのトナー量を多くして、クリーニング部材にある程度のトナー量を入力する必要があるが、高温高湿環境等、クリーニング不良が発生しやすい条件下で軽微なクリーニング不良が発生するおそれがある。この軽微なクリーニング不良が発生している像担持体上の表面移動方向における領域に調整用パターンが形成されると、クリーニング不良のトナーによって、付着量検知手段の調整用パターンの付着量検出精度が低下するおそれがある。
そこで、態様1では、形成するトナー像パターンの像担持体上の位置から、このトナー像パターン形成後に像担持体上の記録媒体通紙領域よりも記録媒体の幅方向の外側に形成される調整用パターンの像担持体上の位置までの像担持体の表面移動距離が規定範囲内に入り、軽微なクリーニング不良が発生している像担持体上の表面移動方向の領域に調整用パターンが形成されるおそれがあるときは、トナー像パターンを記録媒体通紙領域の幅方向内に形成する。これにより、クリーニング部材の記録媒体通紙領域の幅方向の外側には、トナー像パターンが入力されないため、記録媒体通紙領域の幅方向の外側で軽微なクリーニング不良が発生するのを抑制できる。よって、記録媒体通紙領域よりも記録媒体の幅方向の外側に形成される調整用パターンの付着量を付着量検知手段で検知するとき、クリーニング不良のトナーの影響を受けることがない。その結果、付着量検知手段により精度よく調整用パターンの付着量を検出するすることができる。
【0107】
(態様2)
トナー像を作像する作像部6などの作像手段と、作像手段により作像されたトナー像を担持する中間転写ベルト8などの像担持体と、像担持体上のトナー像を用紙などの記録媒体に転写する二次転写ローラ70などの転写部材と、像担持体の表面をクリーニングするクリーニングブレード10などのクリーニング部材と、像担持体の表面に対向して配置され、像担持体の記録媒体通紙領域よりも主走査方向などの記録媒体の幅方向の外側に形成された作像手段を調整するための調整用パターンのトナー付着量を検知する光学センサ40R,40Fなどの付着量検知手段と、を備え、作像手段は、記録媒体に転写しないで、クリーニング部材に入力する掻き取りパターンKPなどのトナー像パターンを像担持体に形成する画像形成装置において、像担持体上に形成されたトナー像パターンの位置から、形成する調整用パターンRPの像担持体上の位置までの像担持体の表面移動距離が規定範囲内に入る場合は、調整用パターンの形成を中止する。
これによれば、実施例2で説明したように、像担持体上に形成されたトナー像パターンの位置から、形成する調整用パターンRPの像担持体上の位置までの像担持体の表面移動距離が規定範囲内に入り、軽微なクリーニング不良が発生している像担持体上の領域に調整用パターンが形成されるおそれがあるときは、調整用パターンの形成が中止される。その結果、掻き取りパターンの軽微なクリーニング発生領域には、調整用パターンが形成されないため、光学センサ40R,40Fなどの付着量検知手段の調整用パターンの誤検知による位置ズレ制御不良や、調整用パターンの付着量検知精度の低下による画像濃度調整不良が発生するのを防止することができる。
【0108】
(態様3)
トナー像を作像する作像部6などの作像手段と、作像手段により作像されたトナー像を担持する中間転写ベルト8などの像担持体と、像担持体上のトナー像を用紙などの記録媒体に転写する二次転写ローラ70などの転写部材と、像担持体の表面をクリーニングするクリーニングブレード10などのクリーニング部材と、像担持体の表面に対向して配置され、像担持体の記録媒体通紙領域よりも主走査方向などの記録媒体の幅方向の外側に形成された作像手段を調整するための調整用パターンのトナー付着量を検知する光学センサ40R,40Fなどの付着量検知手段と、を備え、作像手段は、記録媒体に転写しないで、クリーニング部材に入力する掻き取りパターンKPなどのトナー像パターンを像担持体に形成する画像形成装置において、像担持体上に形成されたトナー像パターンの位置から、形成する前記調整用パターンの像担持体上の位置までの前記像担持体の表面移動距離が規定範囲内に入る場合は、規定範囲から外れるように調整用パターンの形成タイミングを調整する。
これによれば、実施例3で説明したように、像担持体上に形成されたトナー像パターンの位置から形成する調整用パターンRPの像担持体上の位置までの像担持体の表面移動距離が規定範囲内である軽微なクリーニング不良が発生している像担持体上の領域外に、調整用パターンを形成することができる。よって、光学センサ40R,40Fなどの付着量検知手段の調整用パターンの誤検知による位置ズレ制御不良や、調整用パターンの付着量検知精度の低下による画像濃度調整不良が発生するのを防止することができる。
【0109】
(態様4)
態様1乃至3いずれかにおいて、規定範囲は、像担持体1周を超え、像担持体2周以下である。
これによれば、図7を用いて説明したように、中間転写ベルト8などの像担持体上の軽微なクリーニング不良は、作像部6などの作像手段からトナー像が転写される一次転写位置を基点として、像担持体1周以降から発生し、少なくとも、像担持体が2周する間までには、解消する。よって、規定範囲を、像担持体1周を超え、像担持体2周以下に設定することで、調整用パターンが像担持体上の軽微なクリーニング発生領域に形成されるのを防止できる。
【0110】
(態様5)
態様1乃至4いずれかにおいて、互いに異なる色のトナー像をそれぞれ形成する複数の作像部6などの作像手段を備え、トナー像パターンの色は、変更可能である。
これによれば、図15を用いて説明したように、トナー像パターンの色が変更不能で、複数の色のうちいずれかひとつのみを用いて掻き取りパターンを形成する場合に比べて、特定色にトナーの消費が偏よるのを抑制することができる。
(態様6)
態様1乃至5いずれかにおいて、一回のトナー像パターン形成動作で、トナー像パターンを所定の間隔を開けて複数形成する。
これによれば、実施形態で説明したように、クリーニングブレード10などのクリーニング部材の中間転写ベルトなどの像担持体との当接箇所であるクリーニング箇所に一度に大量のトナーが入力されるのを防止して、長時間継続してクリーニング箇所に滞留したトナーにより像担持体のフィルミングを除去することができる。これにより、クリーニング不良の発生を抑制し、かつ、良好に像担持体上のフィルミングを除去することができる。
【0111】
(態様7)
態様6において、互いに異なる色のトナー像をそれぞれ形成する複数の作像手段が、中間転写ベルト8などの像担持体の表面移動方向に並べて配置されており、複数のトナー像パターンは、互いに異なる色で形成され、複数のトナー像パターンの表面移動方向下流側からの色順が、複数の作像手段の表面移動方向下流側からの色順に倣っている。
これによれば、図16を用いて説明したように、複数の掻き取りパターンなどのトナー像パターンを作像する作像時間を短くすることができる。また、複数のトナー像パターンを1色で形成する場合に比べて、特定色にトナーの消費が偏よるのを抑制することができる。
【0112】
(態様8)
態様7において、複数のトナー像パターンの表面移動方向下流側からの色順を、複数の作像手段の表面移動方向下流側からの連続する色順にする。
これによれば、図16を用いて説明したように、例えば、作像手段が像担持体の表面移動方向下流側からK,M,C,Y色の順で配置され、複数の掻き取りパターンの色順が、K,C,Y色で、M色を飛ばして連続する色順でない場合に比べて、複数の掻き取りパターンを作像する作像時間を短くすることができる。
【符号の説明】
【0113】
6 :作像部(作像手段)
10 :クリーニングブレード(クリーニング部材)
15 :中間転写ベルト装置
17 :中間転写ベルト(像担持体)
40 :光学センサユニット
40C :光学センサ(付着量検知手段)
40F :光学センサ(付着量検知手段)
40R :光学センサ(付着量検知手段)
60 :制御部
70 :二次転写ローラ(転写部材)
100 :画像形成装置
KP :掻き取りパターン
L :レーザ光
P :用紙
RP :調整用パターン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0114】
【特許文献1】特開2018-120183号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図15
図16
図17
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