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特開2024-175592耐腐食膜の塗布方法、及び、耐腐食膜
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  • 特開-耐腐食膜の塗布方法、及び、耐腐食膜 図1
  • 特開-耐腐食膜の塗布方法、及び、耐腐食膜 図2
  • 特開-耐腐食膜の塗布方法、及び、耐腐食膜 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175592
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】耐腐食膜の塗布方法、及び、耐腐食膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20241211BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20241211BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20241211BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/00
B05D5/00 E
B05D1/36 Z
B05D5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093493
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】井戸 彬文
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 誠
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AE03
4D075CA18
4D075CA33
4D075CA47
4D075CA48
4D075DC05
4D075EA05
4D075EC02
4D075EC30
4J038AA001
4J038DL001
4J038NA03
4J038NA14
4J038PA01
4J038PB05
4J038PB06
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】耐熱塗装の膜厚を厚くして耐腐食膜を塗装により形成する。
【解決手段】酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層5の成分の溶け込み(浸入)、酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層3の塗料の構造の破壊が抑制された中間層4を間に挟んで、耐熱層3(第1耐熱塗膜)、及び、耐熱層5(第2耐熱塗膜)が塗装(例えば、噴霧法)により形成され、塗料のタレや塗膜のフクレ、クラックの発生を抑制して、耐熱層3(第1耐熱塗膜)、及び、耐熱層5(第2耐熱塗膜)を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に耐熱性を有する塗料を塗布して第1耐熱塗膜を形成し、
前記第1耐熱塗膜の表面に中間塗料を塗布して中間層を形成し、
前記中間層の表面に耐熱性を有する塗料を塗布して第2耐熱塗膜を形成し、
前記第1耐熱塗膜、及び、前記第2耐熱塗膜の塗料の成分の前記中間層への溶け込みが抑制されるようにした
ことを特徴とする耐腐食膜の塗布方法。
【請求項2】
請求項1に記載の耐腐食膜の塗布方法において、
前記第1耐熱塗膜を形成する前に、基材の表面にケイ素酸化物層を形成し、前記ケイ素酸化物層の表面に前記第1耐熱塗膜を形成する
ことを特徴とする耐腐食膜の塗布方法。
【請求項3】
請求項2に記載の耐腐食膜の塗布方法において、
前記第1耐熱塗膜を形成する前に、前記ケイ素酸化物層の表面にチタン酸化物層を形成し、前記チタン酸化物層の表面に前記第1耐熱塗膜を形成する
ことを特徴とする耐腐食膜の塗布方法。
【請求項4】
請求項3に記載の耐腐食膜の塗布方法において、
前記第2耐熱塗膜の表面に第2チタン酸化物層を形成した
ことを特徴とする耐腐食膜の塗布方法。
【請求項5】
請求項4に記載の耐腐食膜の塗布方法において、
前記第2チタン酸化物層の表面に機能性塗膜を形成した
ことを特徴とする耐腐食膜の塗布方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の耐腐食膜の塗布方法において、
前記第1耐熱塗膜、及び、前記第2耐熱塗膜は、酸化アルミニウムを主成分とした塗料が塗布されたものであり、
前記中間層は、チタン酸化物の塗料が塗布されたものである
ことを特徴とする耐腐食膜の塗布方法。
【請求項7】
基材の表面に形成され、耐熱性を有する第1耐熱塗膜と、
前記第1耐熱塗膜の表面に形成され、前記第1耐熱塗膜の成分の溶け込みが抑制された中間層と、
前記中間層の表面に形成され、耐熱性を有する第2耐熱塗膜とを備えた
ことを特徴とする耐腐食膜。
【請求項8】
請求項7に記載の耐腐食膜において、
前記第1耐熱塗膜、及び、前記第2耐熱塗膜は、酸化アルミニウムを主成分とした塗膜であり、
前記中間層は、チタン酸化物である
ことを特徴とする耐腐食膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温場での硫化水素などによる腐食に対する耐腐食膜を塗布する塗布方法、及び、高温場での硫化水素などによる腐食に対する耐腐食膜に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、火力発電設備などでは、燃料を燃焼させた際に発生するガスによって、構造部材の高温伝熱管(ボイラ水冷壁管、過熱器管、再熱器管など)の外面の高温腐食が問題となっていた。腐食対策の技術として、肉盛溶接、溶射皮膜の施工、耐熱塗装などが挙げられる。
【0003】
例えば、酸化チタン粒子をコーティングして(耐熱塗装して)酸化チタンからなる被膜を構造材などに設けることにより、構造材の耐硫化腐食性を向上させることが提案されている(特許文献1)。耐熱塗装は安価かつ簡便であるという利点があり、実際の火力発電ボイラでも高温腐食対策技術として広く使われている。
【0004】
耐熱塗装は、膜厚が厚いほど耐硫化腐食性が維持され、耐用年数が増加することになる。このため、耐熱塗装を行う場合、膜厚は極力厚くすることが好ましい。しかし、一度に過剰な膜厚で耐熱塗装を施工した場合、塗料のタレや、乾燥過程で生じる内部応力によって塗膜のフクレ、クラックが発生して施工不良となるおそれがあった。このため、耐熱塗装を厚くするには限度があるのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-272990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、塗料のタレや、塗膜のフクレ、クラックが生じることなく、耐熱塗装の膜厚を厚くすることができる耐腐食膜の塗布方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、耐熱塗装の膜厚が厚くされた耐腐食膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の耐腐食膜の塗布方法は、基材の表面に耐熱性を有する塗料を塗布して第1耐熱塗膜を形成し、前記第1耐熱塗膜の表面に中間塗料を塗布して中間層を形成し、前記中間層の表面に耐熱性を有する塗料を塗布して第2耐熱塗膜を形成し、前記第1耐熱塗膜、及び、前記第2耐熱塗膜の塗料の成分の前記中間層への溶け込みが抑制されるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、第1耐熱塗膜、及び、第2耐熱塗膜の成分の溶け込みが抑制された中間層を間に挟んで第1耐熱塗膜、及び、第2耐熱塗膜を形成したので、塗料のタレや塗膜のフクレ、クラックの発生を抑制して、第1耐熱塗膜、及び、第2耐熱塗膜を形成することができる。
【0010】
この結果、膜厚を厚くした状態で塗装(例えば、噴霧法)により耐熱層を形成することができ、腐食に対する耐久性を向上させることが可能になる。
【0011】
そして、請求項2に係る本発明の耐腐食膜の塗布方法は、請求項1に記載の腐食膜の塗布方法において、前記第1耐熱塗膜を形成する前に、基材の表面にケイ素酸化物層を形成し、前記ケイ素酸化物層の表面に前記第1耐熱塗膜を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明では、基材と第1耐熱塗膜の間にケイ素酸化物層(SiO2)を形成したので、第1耐熱塗膜が形成される際の内部応力によるクラックの発生が防止される。
【0013】
また、請求項3に係る本発明の耐腐食膜の塗布方法は、請求項2に記載の耐腐食膜の塗布方法において、前記第1耐熱塗膜を形成する前に、前記ケイ素酸化物層(SiO2)の表面にチタン酸化物層(TiO2)を形成し、前記チタン酸化物層の表面に前記第1耐熱塗膜を形成することを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る本発明では、ケイ素酸化物層(SiO2)と第1耐熱塗膜の間にチタン酸化物層(TiO2)を形成したので、基材の成分が拡散することが防止される。
【0015】
また、請求項4に係る本発明の耐腐食膜の塗布方法は、請求項3に記載の耐腐食膜の塗布方法において、前記第2耐熱塗膜の表面に第2チタン酸化物層(TiO2)を形成したことを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る本発明では、耐腐食膜の最外層に第2チタン酸化物層(TiO2)を形成することができ、外部から塗膜内部へ硫化水素などの腐食性ガスが侵入することが防止される。
【0017】
また、請求項5に係る本発明の耐腐食膜の塗布方法は、請求項4に記載の耐腐食膜の塗布方法において、前記第2チタン酸化物層(TiO2)の表面に機能性塗膜を形成したことを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る本発明では、第2チタン酸化物層(TiO2)の表面に機能性塗膜を形成したので、耐腐食性以外の機能を有する複合塗膜とすることができる。
【0019】
また、請求項6に係る本発明の耐腐食膜の塗布方法は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の耐腐食膜の塗布方法において、前記第1耐熱塗膜、及び、前記第2耐熱塗膜は、酸化アルミニウムを主成分とした塗料が塗布されたものであり、前記中間層は、チタン酸化物(TiO2)の塗料が塗布されたものであることを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る本発明では、基材の表面に、酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層、チタン酸化物層(TiO2)、酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層が積層された耐腐食膜を形成することができる。
【0021】
上記目的を達成するための請求項7に係る本発明の耐腐食膜は、基材の表面に形成され、耐熱性を有する第1耐熱塗膜と、前記第1耐熱塗膜の表面に形成され、前記第1耐熱塗膜の成分の溶け込みが抑制された中間層と、前記中間層の表面に形成され、耐熱性を有する第2耐熱塗膜とを備えたことを特徴とする。
【0022】
請求項7に係る本発明では、第1耐熱塗膜、及び、第2耐熱塗膜の成分の溶け込みが抑制された中間層を間に挟んで第1耐熱塗膜、及び、第2耐熱塗膜を形成したので、第1耐熱塗膜、及び、第2耐熱塗膜を形成することができる。
【0023】
この結果、膜厚を厚くした耐熱層を、塗料のタレや塗膜のフクレ、クラックの発生を抑制して塗装により形成することができ、腐食に対する耐久性を向上させることが可能になる。
【0024】
そして、請求項8に係る本発明の耐腐食膜は、請求項7に記載の耐腐食膜において、前記第1耐熱塗膜、及び、前記第2耐熱塗膜は、酸化アルミニウムを主成分とした塗膜であり、前記中間層は、チタン酸化物であることを特徴とする。
【0025】
請求項8に係る本発明では、酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層、チタン酸化物層(TiO2)、酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層が積層された耐腐食膜が基材の表面に形成される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の耐腐食膜の塗布方法は、塗料のタレや、塗膜のフクレ、クラックが生じることなく、耐熱塗装の膜厚を厚くして耐腐食膜を形成することが可能になる。
【0027】
本発明の耐腐食膜は、耐熱塗装の膜厚が厚くされた耐腐食膜とすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施例に係る耐腐食膜の断面図である。
図2】本発明の第2実施例に係る耐腐食膜の断面図である。
図3】本発明の第3実施例に係る耐腐食膜の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
火力発電設備における、ボイラ水冷壁管、過熱器管、再熱器管など(高温伝熱管)の外面(基材の表面)には、本発明の塗布方法により耐腐食膜が形成される。耐腐食膜を形成したことで、燃料を燃焼させた際に発生するガスによる高温腐食が抑制される。本発明の耐腐食膜は、塗料のタレや、塗膜のフクレ、クラックが生じることない状態で耐熱塗装が実施され、耐熱塗装の膜厚が厚くされている。
【0030】
このため、本発明の塗布方法により耐腐食膜を形成することにより、膜厚を厚くした状態で、安価に施工できる塗装(例えば、噴霧法)により耐熱層を形成することができ、腐食に対する耐久性を向上させることが可能になる。
【0031】
以下、図面に基づいて本発明の耐腐食膜の塗布方法、及び、耐腐食膜の実施例を説明する。
【0032】
図1には本発明の第1実施例に係る耐腐食膜の断面を拡大状態で表した概念、図2には本発明の第2実施例に係る耐腐食膜の断面を拡大状態で表した概念、図3には本発明の第3実施例に係る耐腐食膜の断面を拡大状態で表した概念を示してある。
【0033】
図1に基づいて第1実施例を説明する。
【0034】
図に示すように、例えば、基材としてのボイラ水冷壁管1の表面には、ケイ素酸化物(SiO2)の塗料が塗布されて(例えば、噴霧法により塗布されて)ケイ素酸化物層2が形成されている。ケイ素酸化物層2には、耐熱性を有する塗料である酸化アルミニウムを主成分とした塗料が塗布されて(例えば、噴霧法により塗布されて)酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層(耐熱層:第1耐熱塗膜)3が形成されている。
【0035】
耐熱層3の表面には、中間塗料であるチタン酸化物(TiO2)の塗料が塗布された(例えば、噴霧法により塗布された)中間層4が形成され、中間層4の表面には、耐熱性を有する塗料である酸化アルミニウムを主成分とした塗料が塗布されて(例えば、噴霧法により塗布されて)酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層(耐熱層:第2耐熱塗膜)5が形成されている。
【0036】
例えば、肉厚が6.0mmのボイラ水冷壁管1に耐腐食膜を施工する場合(塗布する場合)、ケイ素酸化物層2の膜厚を0.5μmから1.0μm、耐熱層3、耐熱層5の膜厚を20μmから40μm、中間層4の膜厚を0.5μmから1.0μmにすることが好適である。
【0037】
中間層4は、チタン酸化物(TiO2)で形成されているので、第2耐熱塗膜である耐熱層5の塗料の成分の溶け込み(浸入)による第1耐熱塗膜である耐熱層3の構造破壊が抑制されている。
【0038】
中間層4は、酸化アルミニウムを主成分とした塗料の浸入を抑制するものであれば、チタン酸化物(TiO2)以外の物を適用することができる。例えば、酸化アルミニウムを主成分とした塗料の浸入を抑制するものとして、二酸化ケイ素の薄膜、酸化亜鉛を主成分とした薄膜、酸化鉄を主成分とした薄膜などを適用することができる。酸化アルミニウムを主成分とした塗料の構造を破壊しないものとして、特に、エタノール、メタノール、IPA(イソプロピルアルコール)を中間層4の塗料の溶媒に使うことが望ましい。
【0039】
上記構成の耐腐食膜は、ケイ素酸化物層2の表面に、耐熱層5の塗料の成分の溶け込み(浸入)が防止され、耐熱層3の塗料の構造の破壊が抑制された中間層4を間に挟んで、耐熱層3、及び、耐熱層5が塗装により形成されている。塗料のタレや塗膜のフクレ、クラックの発生を抑制して、耐熱層3(第1耐熱塗膜)、及び、耐熱層5(第2耐熱塗膜)を形成することができる。
【0040】
このため、安価な工程により施工できる塗装(例えば、噴霧法)により、耐熱部材である酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層3、5を形成し、トータルの膜厚を厚くした状態で(例えば、膜厚t=50μmから80μm)、塗装(例えば、噴霧法)により耐腐食膜を形成することができ、腐食に対する耐久性を向上させることが可能になる。
【0041】
そして、ボイラ水冷壁管1の表面にケイ素酸化物層2を形成したので、耐熱層3(第1耐熱塗膜)が形成される際の内部応力によるクラックの発生が防止される。
【0042】
上述した第1実施例では、塗料のタレや、塗膜のフクレ、クラックが生じることなく、耐熱塗装の膜厚を厚くして耐腐食膜を形成することが可能になり、耐熱塗装の膜厚が厚くされた耐腐食膜とすることが可能になる。
【0043】
図2に基づいて第2実施例を説明する。図1に示した第1実施例と同一構成部材には同一符号を付してある。
【0044】
図に示すように、酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層3(第1耐熱塗膜)を形成する前に、ケイ素酸化物層2の表面にチタン酸化物(TiO2)塗料が塗布されてチタン酸化物層11が形成されている(例えば噴霧法による塗装により形成されている)。そして、チタン酸化物層11の表面に酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層3(第1耐熱塗膜)が塗装(例えば、噴霧法)により形成されている。更に、酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層5(第2耐熱塗膜)には、チタン酸化物(TiO2)の塗料が塗布されて、第2チタン酸化物層12が形成されている(例えば噴霧法による塗装により形成されている)。
【0045】
第2実施例では、ケイ素酸化物層2と耐熱層3(第1耐熱塗膜)の間にチタン酸化物層11を形成したので、ボイラ水冷壁管1の成分が拡散することが防止される。そして、耐腐食膜の最外層に第2チタン酸化物層12を形成したので、耐腐食膜の成分が拡散することが防止される。
【0046】
図2に示した耐腐食膜の耐用年数を確認するため、熱サイクル試験を実施した。試験片にはボイラ伝熱管(ボイラ水冷壁管)として利用されるSTBA21基材を使用した。熱サイクル試験の条件は以下の通りである。
【0047】
温度サイクル:380℃-530℃
1サイクル:30分
試験時間:1500時間
雰囲気:N2/H2/CO/CO2/H2O=67/4/8/12/9、H2S=660ppm
【0048】
試験片の断面をCTスキャンにより観察した結果、本実施例の耐腐食膜を施工していない場合は腐食が進行している一方で、本実施例の耐腐食膜を施工した部分では腐食がほとんど進行していないことが確認された。
【0049】
耐腐食膜の膜厚が大きいほど高温腐食に対する耐久性が向上する知見を得ている。また、実機ボイラでは耐熱塗装の下に生成した腐食層が一定の厚さになった段階で、腐食層ごと耐熱塗装が剥離する知見を得ている。
【0050】
これらの知見、及び、実験結果から、本実施例の耐腐食膜の耐熱塗装は、腐食による剥離が生じておらず、実機での耐用年数が増加することが示された。
【0051】
図3に基づいて第3実施例を説明する。図2に示した第1実施例と同一構成部材には同一符号を付してある。
【0052】
図に示すように、第2チタン酸化物層12の表面には機能性部材の塗料が塗布されて機能性塗膜21が形成されている。第2チタン酸化物層12の表面に機能性塗膜21を形成したので、耐腐食機能に加えて他の機能を有する複合塗膜とすることができる。
【0053】
本発明の耐腐食膜の塗布方法、及び、耐腐食膜は、耐熱塗装の膜厚を厚くして耐腐食膜を塗装により形成することが可能になり、耐熱塗装の膜厚が厚くされた耐腐食膜とすることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は耐腐食膜の塗布方法、及び、耐腐食膜の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ボイラ水冷壁管
2 ケイ素酸化物層
3 酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層(耐熱膜:第1耐熱塗膜)
4 中間層
5 酸化アルミニウムを主成分とした耐熱層(耐熱膜:第2耐熱塗膜)
11 チタン酸化物層
12 第2チタン酸化物層
21 機能性塗膜

図1
図2
図3