(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175643
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ポリマーコートビーズの製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 11/087 20200101AFI20241211BHJP
C08F 293/00 20060101ALI20241211BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20241211BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20241211BHJP
【FI】
C12N11/087
C08F293/00
C08J3/12 Z CER
C08J3/12 CEZ
C12N5/0775
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001509
(22)【出願日】2024-01-09
(31)【優先権主張番号】P 2023093311
(32)【優先日】2023-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今富 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 俊薫
(72)【発明者】
【氏名】池谷 大空
(72)【発明者】
【氏名】最上 聡文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博之
【テーマコード(参考)】
4B033
4B065
4F070
4J026
【Fターム(参考)】
4B033NA16
4B033NB02
4B033NB36
4B033NC04
4B033NG05
4B033NH04
4B065AA93X
4B065BC42
4F070AA18
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4J026HA11
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4J026HB38
4J026HC11
4J026HC32
4J026HC38
4J026HE04
(57)【要約】
【課題】
ビーズへのポリマー固定量を増加し、細胞剥離率を高めることが可能なポリマーコートビーズの製造方法を提供することにある。
【解決手段】
ポリマー固定量が1.0~100.0μg/cm
2であるビーズの製造方法において、2回以上の真空含浸処理を行いポリマーコートすることを特徴とする製造方法により前記課題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー固定量が1.0~100.0μg/cm2であるビーズの製造方法において、2回以上の真空含浸処理を行いポリマーコートすることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
1回当たりの真空含浸処理で固定するポリマー固定量が0.5~5.0μg/cm2であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
ポリマーコート後に水で洗浄することを特徴とする請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
ビーズが細孔を有することを特徴とする請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
ビーズが合成高分子であることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
ポリマーの数平均分子量が1000~1000000であることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
真空含浸処理を3000Pa以下で行うことを特徴とする請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
コートするポリマーが下記(A)、(B)、(C)のブロックを含むブロック共重合体を含むことを特徴とする請求項7記載の製造方法。
(A)HLB値(グリフィン法)が7以上20以下の範囲にある重合体ブロック。
(B)HLB値(グリフィン法)が0以上7未満の範囲にある重合体ブロック。
(C)水に対する下限臨界溶解温度(LCST)が0℃~50℃の範囲にある温度応答性重合体ブロック。
【請求項9】
請求項1~8記載の製造方法で得たビーズを用いた細胞培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーコートビーズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含浸法は対象に有用成分を固定する表面処理技術であり、固体触媒や機能性材料の製造など幅広い分野で導入されている。特許文献1では、銅及びアルミナからなる固体にギ酸ナトリウムを含浸法で表面処理した固体触媒が記載されており、一酸化炭素と水素からメタノールを効率的に製造することができる。また特許文献2では、ビーズに温度応答性ポリマーを含浸法で被覆した温度応答性マイクロキャリアが記載しており、マイクロキャリア上で培養した細胞を酵素不使用の冷却処理で回収することを可能にしている。
【0003】
これら固体触媒や機能性材料の性能は有用成分の固定量に依存する。有用成分の固定量は有用成分を含む表面処理剤の濃度に依存するが、特に高濃度のポリマーを含む表面処理剤は高粘度化のため対象に有用成分が染み込みにくく、固定量を高めることができずに十分な機能を発現できない課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5626077号公報
【特許文献2】特許第6954047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本特許の目的は、ビーズへのポリマー固定量を高めることが可能なポリマーコートビーズの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以上の点を鑑み、鋭意研究を重ねた結果、ポリマー固定量が1.0~100.0μg/cm2以上であるビーズの製造方法において、2回以上の真空含浸処理を行いポリマーコートすることを特徴とする製造方法により、有用成分の固定量を高めることが可能であることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は以下の態様を含包する。
<1>ポリマー固定量が1.0~100.0μg/cm2であるビーズの製造方法において、2回以上の真空含浸処理を行いポリマーコートすることを特徴とする製造方法。
<2>1回当たりの真空含浸処理で固定するポリマー固定量が0.5~5.0μg/cm2であることを特徴とする<1>記載の製造方法。
<3>ポリマーコート後に水で洗浄することを特徴とする<2>記載の製造方法。
<4>ビーズが細孔を有することを特徴とする<3>記載の製造方法。
<5>ビーズが合成高分子であることを特徴とする<4>記載の製造方法。
<6>ポリマーの数平均分子量が1000~1000000であることを特徴とする<5>記載の製造方法。
<7>真空含浸処理を3000Pa以下で行うことを特徴とする<6>記載の製造方法。
<8>固定するポリマーが下記(A)、(B)、(C)のブロックを含むブロック共重合体であることを特徴とする<7>記載の製造方法。
(A)HLB値(グリフィン法)が7以上20以下の範囲にある重合体ブロック。
(B)HLB値(グリフィン法)が0以上7未満の範囲にある重合体ブロック。
(C)水に対する下限臨界溶解温度(LCST)が0℃~50℃の範囲にある温度応答性重合体ブロック。
<9><1>~<8>記載の製造方法で得たビーズを用いた細胞培養方法。
【発明の効果】
【0007】
ポリマー固定量が1.0~100.0μg/cm2以上であるビーズの製造方法において、2回以上の真空含浸処理を行いポリマーコートすることを特徴とする製造方法により、単回の真空含浸処理よりビーズの単位面積当たりのポリマー固定化量を増加し、細胞剥離率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例6で作製したポリマーコートビーズのSEM画像を示した図である。
【
図2】比較例6で作製したポリマーコートビーズのSEM画像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その趣旨の範囲内で適宜変更して実施できる。
【0010】
本発明はポリマー固定量が1.0~100.0μg/cm2であるビーズの製造方法において、2回以上の真空含浸処理を行いポリマーコートすることを特徴とする製造方法である。
【0011】
一般的に真空含浸処理とは、有効成分などが分散している溶液に、ビーズなどの担体粉末を加えて担体粉末を含浸し、減圧下で溶媒成分を蒸発除去する製造方法である。
【0012】
本発明において有効成分などが分散している溶液とはポリマー溶液である。ポリマーの種類に特に限定はないが、一例として下記(A)、(B)、(C)のブロックを含むブロック共重合体を例示できる。
(A)HLB値(グリフィン法)が7以上20以下の範囲にある重合体ブロック。
(B)HLB値(グリフィン法)が0以上7未満の範囲にある重合体ブロック。
(C)水に対する下限臨界溶解温度(LCST)が0℃~50℃の範囲にある温度応答性重合体ブロック。
【0013】
HLB値(Hydrophile-Lipophile Balance:HLB)とは、W.C.Griffin, Journal of the Society of Cosmetic Chemists, 1, 311(1949).に記載の、水と油への親和性の程度を表す値であり、0から20までの値を取り、0に近いほど疎水性が高く、20に近いほど親水性が高くなる。計算式によりHLB値を算出方法として、アトラス法、グリフィン法、デイビス法、川上法があるが、本明細書においては、グリフィン法により算出した値を使用し、本発明のブロック共重合体を構成する各ブロックの繰り返し単位中の親水部の式量と繰り返し単位の総式量を元に、下記の計算式により算出した。
【0014】
HLB値=20×(繰り返し単位中の親水部の式量)÷(繰り返し単位の総式量)
前述の、各ブロックの繰り返し単位中の親水部の定義として、スルホン部(-SO3-)、ホスホノ基部(-PO3-)、カルボキシル基部(-COOH)、エステル部(-COO-)、アミド部(-CONH-)、イミド部(-CON-)、アルデヒド基部(-CHO)、カルボニル基部(-CO-)、ヒドロキシル基部(-OH)、アミノ基部(-NH2)、アセチル基部(-COCH3)、エチレンアミン部(-CH2CH2N-)、エチレンオキシ部(-CH2CH2O-)、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、ハロゲン化物イオン、酢酸イオンを例示することができる。
【0015】
繰り返し単位中の親水部の算出では、親水部を構成する原子が、他の親水部を構成する原子として重複してはならない。繰り返し単位中のHLB値の算出例を以下に記載した。例えば、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(分子量:295.27)の場合、親水部は、エステル部が1部、ホスホノ基部が1部およびエチレンアミン部が1部であり、親水部の分子量は181.04であるから、HLB値は12.3である。2-ジメチルアミノエチルメタクリレート(分子量:157.11)の場合、親水部は、エステル部が1部およびエチレンアミン部が1部であり、親水部の分子量は86.07であるから、HLB値は11.0である。メチルメタクリレート(分子量:100.12)の場合、親水部は、エステル部が1部であり、親水部の分子量は44.01であるから、HLB値は8.8である。n-ブチルメタクリレート(分子量:142.20)の場合、親水部は、エステル部が1部であり、親水部の分子量は44.01であるから、HLB値は6.2である。
【0016】
下限臨界溶解温度(LCST;Lower Critical Solution Temperature)とは、この温度よりも低い温度では高分子が水に溶解して透明の溶液になるが、この温度よりも高い温度では不溶化して白濁するか沈殿が生じ、相分離する温度である。ブロック(C)に含まれる繰返し単位とその水に対するLCSTは、例えば、N-イソプロピルアクリルアミド(LCST=32℃)、N-n-プロピルメタクリルアミド(LCST=22℃)、N-テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(LCST=28℃)、N-エトキシエチルアクリルアミド(LCST=35℃)、N,N-ジエチルアクリルアミド(LCST=32℃)、N-イソプロピルメタクリルアミド(LCST=44℃)、N-n-プロピルメタクリルアミド(LCST=28℃)、N-テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(LCST=35℃)、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド(LCST=23℃)、またはN-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド(LCST=20℃)などが例示できる。本発明におけるブロック(C)は、前記繰り返し単位を1種類のみ用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また温度応答性を有するのであれば、前記温度応答性繰返し単位の他に、異なる繰返し単位を含んでも良い。
【0017】
(A)、(B)、(C)のブロックを含むブロック共重合体の一例として、(A)2-メトキシエチルアクリレート(HLB値=13.5)の繰り返し単位、(B)n-ブチルメタクリレート(HLB値=6.2)の繰り返し単位、(C)N-イソプロピルアクリルアミド(LCST=32℃)の繰り返し単位からなるブロック共重合体が挙げられる。
【0018】
ポリマーが担体に固定するためにポリマーの数平均分子量が一定以上の値であることが好ましく、またポリマー溶液粘度を低くするためにポリマーの数平均分子量が一定以下の値であることも好ましい。ポリマーの数平均分子量の一例として1000~1000000であり、好ましくは5000~500000、さらに好ましくは10000~200000である。
【0019】
ポリマー溶液の溶媒は特に限定はなく、固定するポリマーが可溶で、担体が不溶である溶媒から選択できる。ポリマー溶液の濃度は特に限定はなく、一例として0.01~99.9wt%である。ポリマー溶液の調製方法に特に限定はないが、ポリマーの溶解速度を速めるために、一例として加熱や撹拌を導入しても良い。また不溶物を除去するためにフィルターろ過しても良い。
【0020】
本発明において使用するビーズとは粉粒体である。ビーズの粒径に特に限定はなく、一例として1μm~10mmである。ビーズの形状は特に限定はなく、一例として球形、直方形、円柱形、円筒形、星形などが挙げられる。ビーズの真密度は特に限定はないが、ポリマー溶液の密度より高いほど好ましく、一例として0.9~20.0g/cm3である。またビーズに細孔があってもなくても良いが、ビーズへのポリマー固定量を増やすために細孔を有することが好ましい。ビーズの乾燥重量当たりの比表面積は特に限定はないが、一例として10~100000cm2/gである。本発明で用いたビーズの比表面積はBET法で測定した値を用いることもできるが、本出願ではSEM画像から求めた平均粒子径と粒子比重から計算して求めた。
【0021】
ビーズの素材に特に限定はなく、一例として金属、金属酸化物、無機塩、合成高分子、生体高分子、またはそれらの複合物など様々な素材に適用できるが、加工が容易なことから合成高分子であることが好ましい。合成高分子の種類は特に限定はなく、一例としてポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。ビーズは素材表面に官能基が被覆されても良く、一例としてアシル基、アクリロイル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アンモニウム基、ニトロ基、ニトリル基、ニトロソ基、リン酸、スルホ基、チオール基、ハロゲンなどが挙げられる。
【0022】
本発明においてビーズを含浸する際に使用するポリマー溶液量は特に限定はないが、ビーズの全てがポリマー溶液に浸り、且つ、溶媒成分の蒸発除去を容易にするため、一例としてビーズ体積の2~5倍である。また気泡を除くために、超音波などでビーズに衝撃を与えても良い。
【0023】
本発明において減圧下で溶媒成分を除去する方法で使用する機材は、ロータリーエバポレーターを例示できる。ロータリーエバポレーターは、ビーズとポリマー溶液を含むフラスコ、フラスコを温めるための温浴、フラスコを回転するモーター、蒸発した溶媒を液体に戻すための冷却器、液体に戻った溶媒を受ける溶媒溜め容器、真空ポンプからなる。フラスコのサイズは特に限定はなく、一例として1mL~100Lである。またトラップ球は設けても設けなくても良い。温浴の温度は特に限定はなく、一例として20~100℃であるが、ビーズの素材や官能基によって適切な温度に調整する必要がある。一例としてトリメチルアンモニウム基表面を有するポリスチレンビーズである場合は、トリメチルアンモニウム基が熱で分解するのを防ぐため、20~70℃であることが好ましい。フラスコの回転速度は特に限定はなく、一例として1~500rpmであるが、ビーズが低密度で小粒径の場合において、真空度が高くフラスコの回転速度が速い場合は、ビーズが真空ポンプに吸い込まれるため回転速度を適宜減速することが好ましい。冷却器の温度は特に限定はないが、温浴との温度差が大きいと真空度を高めることができるため、温浴に比べ10℃以上低温であることが好ましい。真空ポンプの種類は特に限定はないが、一例としてロータリーポンプやダイアフラムポンプが挙げられる。
【0024】
本発明においてビーズへのポリマー固定量は1.0~100.0μg/cm2であり、ポリマーの機能を発現するために固定量が高い方が良く、また固定量が高く設定しすぎると使用するポリマー溶液が高粘度化し対象に有用成分が染み込みにくくなるため、好ましくは2.0~50.0μg/cm2、さらに好ましくは3.0~20.0μg/cm2である。ポリマー固定量の評価方法は特に限定はないが、例えば透過型電子顕微鏡でポリマーコート膜厚を測定して評価する方法や、ポリマー成分を抽出したサンプルを液体クロマトグラフィーのピーク強度から評価する方法、ポリマーコートビーズをATR-FTIRのピーク強度から評価する方法などが挙げられる。
【0025】
本発明において真空含浸処理とは、ビーズをポリマー溶液に浸漬する工程、溶媒成分を減圧下で蒸発除去する工程を含む方法である。本発明の真空含浸処理は2回以上行うことを特徴とする。1回当たりのポリマー固定量は特に限定はないが、最終的な固定量を高めるために、好ましくは0.5~5.0μg/cm2であり、好ましくは2.0~4.0μg/cm2である。
【0026】
本発明において真空含浸処理の最終的な真空度は特に限定はないが、固定したポリマー膜を安定化させるために溶媒を十分に除去することが好ましく、一例として3000Pa以下で行うことが挙げられ、好ましくは2000Pa以下、さらに好ましくは1000Pa以下である。真空度の調整は特に限定はないが、突沸を抑制するために段階的に減圧することが好ましく、一例として100~1000Pa/minで減圧する。またフラスコ内側壁面にビーズがポリマーや溶媒成分を介して接着することがあるが、溶媒成分の蒸発除去を容易にするために、フラスコに振動や衝撃を与えてフラスコ内側壁面からビーズを剥がすことが好ましい。
【0027】
真空含浸処理後はビーズ細孔内のポリマー膜を安定化するために加圧処理を行っても良い。加圧ガスの種類は特に限定はなく、一例として空気や窒素が挙げられる。また真空含浸処理後は特に限定はないが、ポリマーコートビーズを洗浄しても良い。洗浄する場合はポリマーやビーズが不溶な溶媒を選定すると良く、一例として水やメタノールが挙げられる。洗浄の際は洗浄効率を上げるために超音波で処理しても良い。
【0028】
本発明の製造方法で得たビーズは細胞培養に用いることができる。培養する細胞の種類に特に限定はなく、一例として間葉系幹細胞、チャイニーズハムスター卵巣由来CHO細胞、マウス結合組織L929細胞、ヒト胎児腎臓由来細胞HEK293細胞、ヒト子宮頸癌由来HeLa細胞、アフリカミドリザル腎臓上皮細胞由来Vero細胞、イヌ腎臓上皮細胞由来MDCK細胞、ヒト肺組織由来正常二倍体MRC-5細胞、更に生体内の各組織、臓器を構成する上皮細胞や内皮細胞、収縮性を示す骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、神経系を構成するニューロン細胞、グリア細胞、繊維芽細胞、生体の代謝に関与する肝実質細胞、肝非実質細胞や脂肪細胞、分化能を有する細胞として、種々の組織に存在する幹細胞、さらにはそれらから分化誘導した細胞が挙げられる。これら以外でも、血液、リンパ液、髄液、喀痰、尿又は便に含まれる細胞や、体内あるいは環境中に存在する微生物、ウイルス、原虫等を例示できる。使用する培地の種類は特に限定はなく、血清培地であっても無血清培地であっても良く、細胞の種類に応じて適宜選択できる。
【0029】
本発明の製造方法で得たビーズを用いた細胞培養方法は特に限定はなく、静置条件で培養しても良いし、撹拌条件で培養しても良い。撹拌条件で培養する場合は撹拌速度に特に限定はなく、一例として1~1000rpmである。培養時の培養温度は特に限定はないが、一例として10~50℃である。ビーズに固定するポリマーがLCSTを示す温度応答性ポリマーの場合は、温度応答性ポリマーが疎水化し細胞が接着しやすいLCST以上で行うことが好ましい。培養後に細胞を回収する際はビーズに固定するポリマーの機能に応じて適宜選択できる。一般的にはトリプシンなどのタンパク質分解酵素を用いることで、細胞をビーズから剥がし回収できる。ビーズに固定するポリマーがLCSTを示す温度応答性ポリマーの場合は、LCST未満の温度に冷却することでビーズ上の細胞を回収できる。冷却方法は特に限定はなく、冷却器を使用して直接冷却しても良いし、培地を冷却液で交換しても良い。冷却液は培地であってもリン酸緩衝液であっても良いが、リン酸緩衝液を選択することで細胞がポリマーコートビーズから剥離しやすくなる。リン酸緩衝液にEDTA、EGTAなどのキレート剤を導入すると細胞がさらにビーズから剥離しやすくなる。リン酸緩衝液中のキレート剤の濃度は特に限定はなく、1μM~1mMである。
【0030】
本発明の製造方法で得たビーズを用いた細胞培養方法の培養性能は特に限定はないが、ビーズに固定するポリマーがLCSTを示す温度応答性ポリマーの場合は、全細胞数と冷却剥離率で評価する。全細胞数が従来の製造方法で得たビーズで培養した全細胞数と同等もしくは下回る場合は培養性能不良と判断する。従来の製造方法で得たビーズは、製造に用いたポリマー量が同量で、1回の真空含浸処理を行いポリマーコートしたビーズとする。温度応答性冷却剥離率の評価方法は特に限定はないが、一例として(1)冷却で回収した細胞数を測定し、さらに(2)冷却で剥離しなかった細胞はタンパク質分解酵素を用いて回収した細胞数を測定し、(1)の細胞数を、(1)と(2)の細胞数の和で割り、100を掛けた値で冷却剥離率として評価することができる。細胞数の計測方法は特に限定はないが、血球計算板などを用いて評価できる。
【実施例0031】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。なお、断りのない限り、試薬は市販品を用いた。
【0032】
<ブロック共重合体の組成解析>
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM-ECZ400S/L1)を用いたプロトン核磁気共鳴分光(1H-NMR)スペクトル分析より求めた。
【0033】
<ブロック共重合体の分子量、分子量分布の解析>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC装置は東ソー(株)製 HLC-8320GPCを用い、カラムは東ソー(株)製 TSKgel SuperAWM-Hを2本用い、カラム温度を40℃に設定し、溶離液は10mMトリフルオロ酢酸ナトリウムを含む2,2,2-トリフルオロエタノールを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mLで調製して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリメタクリル酸メチル(Sigma-Aldrich社製)を用いた。
【0034】
<ブロック共重合体MBIの合成>
100mL2口フラスコに2-メトキシエチルアクリレート(MEA)0.650g(5mmol)を加え、さらにシアノメチルドデシルカルボナトを31.8mg(100μmol)とアゾビスイソブチロニトリル1.6mg(10μmol)と1,4-ジオキサン10mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で24時間加熱撹拌した。
【0035】
1回目の加熱撹拌後、上記にn-ブチルアクリレート(BA)3.845g(30mmol)を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリル1.6mg(10μmol)と1,4-ジオキサン5mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で48時間加熱撹拌した。
【0036】
2回目の加熱撹拌後、上記にN-イソプロピルアクリルアミド(IPAAm,LCST=32℃)7.355g(65mmol)を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリル1.6mg(10μmol)と1,4-ジオキサン35mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で48時間加熱撹拌した。
【0037】
3回目の加熱撹拌後、反応液を水で再沈精製し、減圧乾燥することで黄色固体を得た。得られた黄色固体をクロロホルムに溶解し、分液ロートを用いクロロホルム相を回収した。回収したクロロホルム相をエバポレーターで濃縮し、ヘキサンで再沈精製した。沈殿物をろ過で回収し、減圧乾燥することで、ブロック共重合体MBIを5.805g得た。得られたブロック共重合体MBIの組成比はMEA/BA/IPAAm=5/26/69(mol%)であり、数平均分子量Mnは8.5万、分子量分布Mw/Mnは1.78であった。
【0038】
<エバポレーターの設置>
ロータリーエバポレーターとして東京理化器械製のN-1300、小型冷却水循環装置として東京理化器械製のCCA-1112A、ダイヤフラム型真空ポンプとして東京理化器械製のNVP-2100V、ウォーターバスとして東京理化器械製のOSB-2200をそれぞれ設置した。小型冷却水循環装置の流体に水を使用し、温度は3℃にした。ウォーターバスの温度は50℃にした。
【0039】
<ポリマーコート量の解析>
ポリマーコートビーズ1.00gのポリマーコート成分をテトラヒドロフランで抽出してビーズと分離し、テトラヒドロフランを蒸発除去してポリマーコート成分を回収した。ポリマーコート成分は1mLの10mMトリフルオロ酢酸ナトリウムを含む2,2,2-トリフルオロエタノールに溶解し、GPCのピーク強度からポリマーコートビーズ1.00g当たりのポリマーコート量を解析した。
【0040】
<ビーズの比表面積の計算>
ビーズの表面積 4×π×(平均粒子径(cm)/2)2・・(1)
ビーズの重量 4/3×π×(平均粒子径(cm)/2)3×粒子密度・・(2)
(粒子密度は実測値1.09を用いた)
比表面積 (1)/(2)
<細胞数と細胞生存率の計測>
細胞懸濁液中から10μLを細胞数測定用スライド(Thermo Fisher Scientific製、商品名Countess Cell Counting Chamber Slid)に添加し自動セルカウンター(Thermo Fisher Scientific製、商品名CountessII)を用いて、細胞数を測定した。
【0041】
実施例1
200mLのフラスコに0.025wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、さらに直径200μmで比表面積が280cm2/gの乾燥したポリスチレンビーズを10g加え、1分間静置した。フラスコをエバポレーターに設置し、撹拌速度60rpmに設定の上、12000Paで1分間定圧処理した。さらに10000Paで1分間定圧処理、8000Paで1分間定圧処理、6000Paで2分間定圧処理、4000Paで3分間定圧処理した。撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することで1500Paまで減圧した。フラスコをエバポレーターから取り外し、フラスコに0.025wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、1分間静置した。フラスコをエバポレーターに設置し、1回目と同じ方法で真空含浸処理を行った。
【0042】
フラスコをエバポレーターから取り外し、イオン交換水を150mL加え、超音波を照射し10分間静置した。ろ過で回収したビーズを200mLのフラスコに移し、エバポレーターで撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することでポリマーコートビーズ1を得た。ポリマーコートビーズ1のポリマーコート量を解析したところ5.0μg/cm2であり、用いたポリマー量が同じ比較例1よりもポリマー固定量を高めることができた。
【0043】
得られたポリマーコートビーズ1を、超親水性ポリマーを表面に固定した細胞培養である60mmΦのHydroCellに0.10g加え、さらに10vol%のウシ胎児血清を含むD-MEM培地を5mLとロンザ製のヒト骨髄由来間葉系幹細胞(継代数2)を1×105cells加えて37℃の5vol%CO2雰囲気のインキュベーター内で6日間静置培養した。
【0044】
培養後培地を抜取り、新たに5mLの1mMのEDTAを含む4℃のカルシウムとマグネシウムが不含のリン酸緩衝生理食塩水(PBS(-))を加え、10分間静置した。ピペッティングを行った後、細胞懸濁液を目開き70μmのセルストレーナーをセットした15mLのチューブに通し、さらにセルストレーナー上に2.5mLのPBS(-)を2回加え、細胞をチューブ内に回収し、遠心分離で濃縮して細胞数を計測した。冷却で回収した細胞数は2.8×105個であった。さらにセルストレーナー上のポリマーコートビーズ1を15mLのチューブに移し、5mLのTrypLE Express Enzyme(Thermo Fisher Scientific製)を加え、37℃の5vol%CO2雰囲気で5分間静置した。細胞懸濁液を目開き70μmのセルストレーナーをセットした15mLのチューブに通し、さらにセルストレーナー上に5mLのPBS(-)を2回加え、細胞をチューブ内に回収し、遠心分離で濃縮して細胞数を計測した。冷却で回収できなかった細胞数は0.2×105個であった。冷却剥離率は93%であり、用いたポリマー量が同じ比較例1よりも冷却剥離率を高めることができた。
【0045】
比較例1
200mLのフラスコに0.05wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、さらに直径200μmで比表面積が280cm2/gの乾燥したポリスチレンビーズを10g加え、1分間静置した。フラスコをエバポレーターに設置し、撹拌速度60rpmに設定の上、12000Paで1分間定圧処理した。さらに10000Paで1分間定圧処理、8000Paで1分間定圧処理、6000Paで2分間定圧処理、4000Paで3分間定圧処理した。撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することで1500Paまで減圧した。
【0046】
フラスコをエバポレーターから取り外し、イオン交換水を150mL加え、超音波を照射し10分間静置した。ろ過で回収したビーズを200mLのフラスコに移し、エバポレーターで撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することでポリマーコートビーズAを得た。ポリマーコートビーズAのポリマーコート量を解析したところ2.2μg/cm2であった。
【0047】
ポリマーコートビーズAを用いたこと以外が実施例1と同じ方法でヒト骨髄由来間葉系幹細胞を培養した。冷却で回収した細胞数は1.3×105個であった。冷却で回収できなかった細胞数は1.7×105個であった。冷却剥離率は43%だった。
【0048】
実施例2
200mLのフラスコに0.05wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、さらに直径200μmで比表面積が280cm2/gの乾燥したポリスチレンビーズを10g加え、1分間静置した。フラスコをエバポレーターに設置し、撹拌速度60rpmに設定の上、12000Paで1分間定圧処理した。さらに10000Paで1分間定圧処理、8000Paで1分間定圧処理、6000Paで2分間定圧処理、4000Paで3分間定圧処理した。撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することで2500Paまで減圧した。フラスコをエバポレーターから取り外し、フラスコに0.05wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、1分間静置し、フラスコをエバポレーターに設置し、1回目と同じ方法で真空含浸処理を行う一連の操作を3回実施した。
【0049】
フラスコをエバポレーターから取り外し、イオン交換水を150mL加え、超音波を照射し10分間静置した。ろ過で回収したビーズを200mLのフラスコに移し、エバポレーターで撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することでポリマーコートビーズ2を得た。ポリマーコートビーズ2のポリマーコート量を解析したところ19.6μg/cm2であり、用いたポリマー量が同じ比較例2よりもポリマー固定量を高めることができた。
【0050】
ポリマーコートビーズ2を用いたこと以外が実施例1と同じ方法でヒト骨髄由来間葉系幹細胞を培養した。冷却で回収した細胞数は2.4×105個であった。冷却で回収できなかった細胞数は0.4×105個であった。冷却剥離率は86%であり、用いたポリマー量が同じ比較例2よりも冷却剥離率を高めることができた。
【0051】
比較例2
200mLのフラスコに0.20wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、さらに直径200μmで比表面積が280cm2/gの乾燥したポリスチレンビーズを10g加え、1分間静置した。フラスコをエバポレーターに設置し、撹拌速度60rpmに設定の上、12000Paで1分間定圧処理した。さらに10000Paで1分間定圧処理、8000Paで1分間定圧処理、6000Paで2分間定圧処理、4000Paで3分間定圧処理した。撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することで2500Paまで減圧した。
【0052】
フラスコをエバポレーターから取り外し、イオン交換水を150mL加え、超音波を照射し10分間静置した。ろ過で回収したビーズを200mLのフラスコに移し、エバポレーターで撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することでポリマーコートビーズBを得た。ポリマーコートビーズBのポリマーコート量を解析したところ2.6μg/cm2であった。
【0053】
ポリマーコートビーズBを用いたこと以外が実施例1と同じ方法でヒト骨髄由来間葉系幹細胞を培養した。冷却で回収した細胞数は1.5×105個であった。冷却で回収できなかった細胞数は1.4×105個であった。冷却剥離率は52%だった。
【0054】
実施例4
200mLのフラスコに0.025wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、さらに直径130μmで比表面積が420cm2/gの乾燥したトリメチルアンモニウムクロライド修飾ポリスチレンビーズを10g加え、1分間静置した。フラスコをエバポレーターに設置し、撹拌速度60rpmに設定の上、12000Paで1分間定圧処理した。さらに10000Paで1分間定圧処理、8000Paで1分間定圧処理、6000Paで2分間定圧処理、4000Paで3分間定圧処理した。撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することで1500Paまで減圧した。フラスコをエバポレーターから取り外し、フラスコに0.025wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、1分間静置し、フラスコをエバポレーターに設置し、1回目と同じ方法で真空含浸処理を行う一連の操作を3回実施した。
【0055】
フラスコをエバポレーターから取り外し、イオン交換水を150mL加え、超音波を照射し10分間静置した。ろ過で回収したビーズを200mLのフラスコに移し、エバポレーターで撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することでポリマーコートビーズ4を得た。ポリマーコートビーズ4のポリマーコート量を解析したところ6.7μg/cm2であり、用いたポリマー量が同じ比較例4よりもポリマー固定量を高めることができた。
【0056】
ポリマーコートビーズ4を用いたこと以外が実施例1と同じ方法でヒト骨髄由来間葉系幹細胞を培養した。冷却で回収した細胞数は3.6×105個であった。冷却で回収できなかった細胞数は0.4×105個であった。冷却剥離率は90%であり、用いたポリマー量が同じ比較例4よりも冷却剥離率を高めることができた。
【0057】
比較例4
200mLのフラスコに0.05wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、さらに直径130μmで比表面積が420cm2/gの乾燥したトリメチルアンモニウムクロライド修飾ポリスチレンビーズを10g加え、1分間静置した。フラスコをエバポレーターに設置し、撹拌速度60rpmに設定の上、12000Paで1分間定圧処理した。さらに10000Paで1分間定圧処理、8000Paで1分間定圧処理、6000Paで2分間定圧処理、4000Paで3分間定圧処理した。撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することで1500Paまで減圧した。
【0058】
フラスコをエバポレーターから取り外し、イオン交換水を150mL加え、超音波を照射し10分間静置した。ろ過で回収したビーズを200mLのフラスコに移し、エバポレーターで撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することでポリマーコートビーズDを得た。ポリマーコートビーズDのポリマーコート量を解析したところ、1.7μg/cm2であった。
【0059】
ポリマーコートビーズDを用いたこと以外が実施例1と同じ方法でヒト骨髄由来間葉系幹細胞を培養した。冷却で回収した細胞数は0.4×105個であった。冷却で回収できなかった細胞数は3.6×105個であった。冷却剥離率は10%だった。
【0060】
実施例5
200mLのフラスコに0.025wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、さらに直径150μmで比表面積が370cm2/gの乾燥したポリメタクリレートビーズを10g加え、1分間静置した。フラスコをエバポレーターに設置し、撹拌速度60rpmに設定の上、12000Paで1分間定圧処理した。さらに10000Paで1分間定圧処理、8000Paで1分間定圧処理、6000Paで2分間定圧処理、4000Paで3分間定圧処理した。撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することで1500Paまで減圧した。フラスコをエバポレーターから取り外し、フラスコに0.025wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、1分間静置し、フラスコをエバポレーターに設置し、1回目と同じ方法で真空含浸処理を行う一連の操作を3回実施した。
【0061】
フラスコをエバポレーターから取り外し、イオン交換水を150mL加え、超音波を照射し10分間静置した。ろ過で回収したビーズを200mLのフラスコに移し、エバポレーターで撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することでポリマーコートビーズ5を得た。ポリマーコートビーズ5のポリマーコート量を解析したところ7.5μg/cm2であり、用いたポリマー量が同じ比較例5よりもポリマー固定量を高めることができた。
【0062】
ポリマーコートビーズ5を用いたこと以外が実施例1と同じ方法でヒト骨髄由来間葉系幹細胞を培養した。冷却で回収した細胞数は1.6×105個であった。冷却で回収できなかった細胞数は0.4×105個であった。冷却剥離率は80%であり、用いたポリマー量が同じ比較例5よりも冷却剥離率を高めることができた。
【0063】
比較例5
200mLのフラスコに0.05wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、さらに直径150μmで比表面積が370cm2/gの乾燥したポリメタクリレートビーズを10g加え、1分間静置した。フラスコをエバポレーターに設置し、撹拌速度60rpmに設定の上、12000Paで1分間定圧処理した。さらに10000Paで1分間定圧処理、8000Paで1分間定圧処理、6000Paで2分間定圧処理、4000Paで3分間定圧処理した。撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することで1500Paまで減圧した。
【0064】
フラスコをエバポレーターから取り外し、イオン交換水を150mL加え、超音波を照射し10分間静置した。ろ過で回収したビーズを200mLのフラスコに移し、エバポレーターで撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することでポリマーコートビーズEを得た。ポリマーコートビーズEのポリマーコート量を解析したところ、1.6μg/cm2であった。
【0065】
ポリマーコートビーズEを用いたこと以外が実施例1と同じ方法でヒト骨髄由来間葉系幹細胞を培養した。冷却で回収した細胞数は0.3×105個であった。冷却で回収できなかった細胞数は1.3×105個であった。冷却剥離率は19%だった。
【0066】
実施例6
200mLのフラスコに0.025wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、さらに直径130μmで比表面積が420cm2/gの乾燥したポリスチレンビーズを10g加え、1分間静置した。フラスコをエバポレーターに設置し、撹拌速度60rpmに設定の上、12000Paで1分間定圧処理した。さらに10000Paで1分間定圧処理、8000Paで1分間定圧処理、6000Paで2分間定圧処理、4000Paで3分間定圧処理した。撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することで1500Paまで減圧した。フラスコをエバポレーターから取り外し、フラスコに0.002wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、1分間静置し、フラスコをエバポレーターに設置し、1回目と同じ方法で真空含浸処理を行う一連の操作を2回実施した。
【0067】
フラスコをエバポレーターから取り外し、イオン交換水を150mL加え、超音波を照射し10分間静置した。ろ過で回収したビーズを200mLのフラスコに移し、エバポレーターで撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することでポリマーコートビーズ6を得た。ポリマーコートビーズ6のポリマーコート量を解析したところ4.9μg/cm
2であり、用いたポリマー量が同じ比較例6よりもポリマー固定量を高めることができた。またビーズをSEM観察した(
図1)。比較例6(
図2)と比べて表面に剥離、欠落が少ないビーズが得られた。
【0068】
比較例6
200mLのフラスコに0.075wt%のブロック共重合体MBIの1-メトキシ-2-プロパノール溶液を28g加え、さらに直径130μmで比表面積が420cm2/gの乾燥したポリスチレンビーズを10g加え、1分間静置した。フラスコをエバポレーターに設置し、撹拌速度60rpmに設定の上、12000Paで1分間定圧処理した。さらに10000Paで1分間定圧処理、8000Paで1分間定圧処理、6000Paで2分間定圧処理、4000Paで3分間定圧処理した。撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することで1500Paまで減圧した。
【0069】
フラスコをエバポレーターから取り外し、イオン交換水を150mL加え、超音波を照射し10分間静置した。ろ過で回収したビーズを200mLのフラスコに移し、エバポレーターで撹拌速度120rpmに設定の上、最終的に真空ポンプの出力を最大にして30分間処理することでポリマーコートビーズFを得た。ポリマーコートビーズFのポリマーコート量を解析したところ、2.9μg/cm
2であった。またビーズをSEM観察した(
図2)。実施例6(
図1)と比べて表面に剥離、欠落があるビーズが得られた。
【0070】