(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175660
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】化合物及びそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 331/02 20060101AFI20241211BHJP
C08G 75/08 20060101ALI20241211BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C07D331/02 CSP
C08G75/08
G03F7/038 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084498
(22)【出願日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2023093099
(32)【優先日】2023-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】淺津 悠司
(72)【発明者】
【氏名】出▲崎▼ 光
【テーマコード(参考)】
2H225
4J030
【Fターム(参考)】
2H225AE01P
2H225AE06P
2H225AM12P
2H225AN31P
2H225AN82P
2H225CA21
2H225CB05
2H225CC12
2H225CD05
4J030BA03
4J030BA04
4J030BA42
4J030BA47
4J030BA48
4J030BB03
4J030BC02
4J030BC08
4J030BC12
4J030BC36
4J030BC37
4J030BC43
4J030BF03
4J030BF19
4J030BG04
4J030BG25
(57)【要約】
【課題】高い屈折率を示す硬化物を与えることができ、成膜性及び硬化性にも優れる新たな化合物を提供する。
【解決手段】式(I)で表される化合物。式中、R
1は水素原子又は1価の置換基を表す。Lは単結合又は2価の基を表し、複数あるLは同一であっても異なっていてもよい。Aは酸素原子又は硫黄原子を表し、複数あるAは同一であっても異なっていてもよい。nは0~4のいずれかの整数を表す。Rは1価の置換基を表し、Rが複数ある場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物。
[式(I)中、
R
1は水素原子又は1価の置換基を表す。
Lは単結合又は2価の基を表し、複数あるLは同一であっても異なっていてもよい。
Aは酸素原子又は硫黄原子を表し、複数あるAは同一であっても異なっていてもよい。
nは0~4のいずれかの整数を表す。
Rは1価の置換基を表し、Rが複数ある場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
式(I)中の下記式で表される基
は、Lの結合位置に対してパラ位に結合する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが酸素原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物を含む組成物。
【請求項5】
重合開始剤をさらに含む請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
溶剤をさらに含む請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物又は請求項4~6のいずれか1項に記載の組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物を含む表示装置。
【請求項9】
請求項7に記載の硬化物を含む固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物に関する。また、本発明は、該化合物を含む組成物、該化合物又は該組成物の硬化物、該硬化物を含む表示装置、及び該硬化物を含む固体撮像素子にも関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器の分野において高屈折材料が要望されている。高屈折材料によりレンズを得ることができ、レンズにより光学機器内の光路を制御することができる。固体撮像素子において各光電変換素子への集光効率を向上させる目的でレンズが用いられ、また表示装置において画素からの光の取り出し効率を向上させる目的でレンズが用いられている。従来、種々の高屈折材料の開発がなされている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、高い屈折率を示す硬化物を与えることができ、成膜性及び硬化性にも優れる新たな化合物を提供することにある。本発明の他の目的は、該化合物を含む組成物、該化合物又は該組成物の硬化物、該硬化物を含む表示装置、及び該硬化物を含む固体撮像素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下を含む。
〔1〕 式(I)で表される化合物。
[式(I)中、
R
1は水素原子又は1価の置換基を表す。
Lは単結合又は2価の基を表し、複数あるLは同一であっても異なっていてもよい。
Aは酸素原子又は硫黄原子を表し、複数あるAは同一であっても異なっていてもよい。
nは0~4のいずれかの整数を表す。
Rは1価の置換基を表し、Rが複数ある場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。]
〔2〕 式(I)中の下記式で表される基
は、Lの結合位置に対してパラ位に結合する〔1〕に記載の化合物。
〔3〕 Aが酸素原子である〔1〕又は〔2〕に記載の化合物。
〔4〕 〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の化合物を含む組成物。
〔5〕 重合開始剤をさらに含む〔4〕に記載の組成物。
〔6〕 溶剤をさらに含む〔4〕又は〔5〕に記載の組成物。
〔7〕 〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の化合物又は〔4〕~〔6〕のいずれかに記載の組成物の硬化物。
〔8〕 〔7〕に記載の硬化物を含む表示装置。
〔9〕 〔7〕に記載の硬化物を含む固体撮像素子。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高い屈折率を示す硬化物を与えることができ、成膜性及び硬化性にも優れる新たな化合物を提供することができる。また、該化合物を含む組成物、該化合物又は該組成物の硬化物、該硬化物を含む表示装置、及び該硬化物を含む固体撮像素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<化合物>
本発明に係る化合物は、式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう)である。化合物(I)は、高い屈折率を示す硬化物を与えることができ、また、優れた成膜性及び硬化性を示すことができる。また、化合物(I)は、優れたパターニング性を示し得る。
[式(I)中、
R
1は水素原子又は1価の置換基を表す。
Lは単結合又は2価の基を表し、複数あるLは同一であっても異なっていてもよい。
Aは酸素原子又は硫黄原子を表し、複数あるAは同一であっても異なっていてもよい。
nは0~4のいずれかの整数を表す。
Rは1価の置換基を表し、Rが複数ある場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。]
【0008】
式(I)は、下記式で表される基
が、ベンゼン環の、Lが結合している位置を除く任意の位置に結合していてもよいことを表す。また、式(I)における3つの下記式で表される基
は、各ベンゼン環の同じ位置に結合しなくてもよく、例えば、2つがLの結合位置に対してパラ位に結合し、残りの1つがメタ位に結合してもよい。
式(I)は、nが1~3のいずれかの整数を表す場合、各々のRが、Lが結合している位置及び下記式
で表される基が結合している位置を除くベンゼン環の任意の位置に結合していてもよいことを表す。
3つの下記式
で表される基のうち少なくとも1つの基は、Lの結合位置に対してパラ位に結合していることが好ましく、すべての基がLの結合位置に対してパラ位に結合していることがより好ましい。
【0009】
式(I)において、R1は水素原子又は1価の置換基を表す。1価の置換基としては、1価の炭化水素基やその他の置換基が挙げられる。1価の炭化水素基を表すR1としては、例えば、置換基を有していてもよい1価の脂肪族鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、及びこれらの2以上の組み合わせからなる1価の基(アラルキル基等)等の1価の炭化水素基が挙げられる。
【0010】
1価の炭化水素基に含まれる1以上の-CH2-は、-O-、-S-、-NR1A-(R1Aは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す)、-CO-、又は-SO2-で置換されていてもよい。なお、1価の炭化水素基に含まれる-CH2-が、-O-で置換された基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基等のアルコキシアルキル基等が挙げられる。
【0011】
1価の脂肪族鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基及び1価の芳香族炭化水素基が有し得る置換基とは、これらの炭化水素基において最も鎖長が長い分子鎖を主鎖とするとき、この主鎖に対して側鎖として結合する原子又は原子団をいう。
【0012】
1価の脂肪族鎖状炭化水素基としては、例えば、飽和又は不飽和の脂肪族鎖状炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基等が挙げられる。
1価の脂肪族鎖状炭化水素基の炭素数は、通常1以上20以下であり、好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上6以下、さらに好ましくは1以上4以下、なおさらに好ましくは1又は2である。
【0013】
1価の脂肪族鎖状炭化水素基が有していてもよい置換基の具体例としては、例えば、2価の脂肪族鎖状炭化水素基が有していてもよい置換基の具体例として後述するものが挙げられる。1価の脂肪族鎖状炭化水素基は、1又は2以上の置換基を有することができる。
1価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基及び1価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基についても同様である。
【0014】
1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基が挙げられ、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の単環の脂環式炭化水素基;ビシクロ[1.1.0]ブチル基、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプチル基、ビシクロ[3.2.1]オクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル基(アダマンチル基)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、ビシクロ[4.3.2]ウンデシル基、トリシクロ[5.3.1.1]ドデシル基等の多環の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
1価の脂環式炭化水素基の炭素数は、通常3以上20以下であり、好ましくは3以上10以下、より好ましくは3以上6以下であり、さらに好ましくは5又は6である。
【0015】
1価の芳香族炭化水素基は、単環であっても多環であってもよく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基等が挙げられる。1価の芳香族炭化水素基の炭素数は、通常6以上20以下であり、好ましくは6以上10以下である。
【0016】
R1である上記その他の置換基としては、例えば、ヒドロキシ基;アミノ基、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等の1つ又は2つの炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基;ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、オキサゾリニル基、チアゾリル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリル基、チエニル基、ピロリル基及びフリル基等の炭素数4~20の脂肪族複素環基又は炭素数3~20の芳香族複素環基等のヘテロ環基;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;カルボキシ基;スルホ基;チオール基;ホルミル基;-SF3基;-SF5基が挙げられる。
【0017】
R1としては、好ましくは水素原子、又は炭素数1~6の1価の脂肪族鎖状炭化水素基であり、より好ましくは水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子、又はメチル基である。
【0018】
式(I)において、Lは、それぞれ独立して、単結合又は2価の基を表す。2価の基であるLとしては、例えば、置換基を有していてもよい2価の脂肪族鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、及びこれらの2以上の組み合わせである2価の基(アラルキレン基等)等の2価の炭化水素基が挙げられる。
2価の炭化水素基に含まれる1以上の-CH2-は、-O-、-S-、-NR1B-(R1Bは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す)、-CO-、又は-SO2-で置換されていてもよい。
【0019】
2価の脂肪族鎖状炭化水素基及び2価の脂環式炭化水素基は、それぞれ、飽和の炭化水素基であってもよいし、不飽和の炭化水素基であってもよい。2価の脂肪族鎖状炭化水素基及び2価の脂環式炭化水素基は、それぞれ、好ましくは飽和の炭化水素基である。
【0020】
2価の基であるLは、それぞれ独立して、好ましくは、単結合、又は、置換基を有していてもよい2価の脂肪族鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、及びこれらの組み合わせである2価の基からなる群より選択される2価の炭化水素基である。
【0021】
式(I)中の3つのLのそれぞれについて、2価の脂肪族鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基が有し得る置換基とは、式(I)において、R1が結合する炭素(C)原子とベンゼン環との間を結合する分子鎖を主鎖とするとき、この主鎖に対して側鎖として結合する原子又は原子団をいう。
【0022】
2価の脂肪族鎖状炭化水素基としては、例えば、飽和又は不飽和の脂肪族鎖状炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基、ウンデカンジイル基、ドデカンジイル基、トリデカンジイル基、テトラデカンジイル基、ペンタデカンジイル基、ヘキサデカンジイル基、ヘプタデカンジイル基、オクタデカンジイル基、ノナデカンジイル基、エイコサンジイル基等のアルカンジイル基等が挙げられる。
2価の脂肪族鎖状炭化水素基の炭素数は、通常1以上30以下であり、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上10以下、さらに好ましくは1以上4以下であり、1又は2であってもよい。
【0023】
2価の脂肪族鎖状炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基(例えば、アルキルオキシカルボニル基等)、シアノ基、1価の脂肪族鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。2価の脂肪族鎖状炭化水素基は、1又は2以上の置換基を有することができる。
2価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基及び2価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基についても同様である。
【0024】
置換基である1価の脂肪族鎖状炭化水素基及び1価の脂環式炭化水素基は、それぞれ、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
置換基である1価の脂肪族鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基及び1価の芳香族炭化水素基の具体例としては、それぞれ、例えば、式(I)におけるR1である1価の脂肪族鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基及び1価の芳香族炭化水素基の具体例として上述したものが挙げられる。
【0025】
2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基が挙げられ、具体的には、シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基、シクロノナンジイル基、シクロデカンジイル基等の単環の脂環式炭化水素基;ビシクロ[1.1.0]ブタンジイル基、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプタンジイル基、ビシクロ[3.2.1]オクタンジイル基、ビシクロ[2.2.2]オクタンジイル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジイル基(アダマンタンジイル基)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジイル基、ビシクロ[4.3.2]ウンデカンジイル基、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジイル基等の多環の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
2価の脂環式炭化水素基の炭素数は、通常3以上30以下であり、好ましくは3以上20以下、より好ましくは3以上10以下であり、5又は6であってもよい。
【0026】
2価の芳香族炭化水素基は、単環であっても多環であってもよく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセンジイル基、フルオレンジイル基等が挙げられる。
2価の芳香族炭化水素基の炭素数は、通常6以上20以下であり、好ましくは6以上10以下である。
【0027】
置換基を有していてもよい2価の脂肪族鎖状炭化水素基と置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基との組み合わせである2価の基としては、例えば、フェニレン基とアルカンジイル基との組み合わせである2価の基が挙げられる。
【0028】
2価の基であるLの具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。ただし、Lは、下記のものに限定されるものではない。下記式中、*は、式(I)において、R1が結合する炭素(C)原子との結合手又はベンゼン環との結合手を示す。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
式(I)において、Aは酸素原子又は硫黄原子を表し、好ましくは酸素原子である。
式(I)において、Rは1価の置換基を表す。Rの具体例としては、例えば、式(I)におけるR1である1価の置換基の具体例として上述したものが挙げられる。
式(I)において、nは0~4のいずれかの整数を表し、好ましくは0又は1である。
【0034】
化合物(I)としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0035】
<化合物の製造方法>
化合物(I)は、下記に示す第1工程及び第2工程を含む方法によって製造することができる。
第1工程:式(II)
[式(II)中、R
1、L、A、n及びRは前記と同じ意味を表す。]
で表される化合物と、式(III)
[式(III)中、Xは脱離基を表す。]
で表される化合物とを反応させることにより、式(IV)
[式(IV)中、R
1、L、A、n及びRは前記と同じ意味を表す。]
で表される化合物を得る工程;
第2工程:前記式(IV)で表される化合物と硫化剤との反応により、前記式(I)で表される化合物を得る工程
【0036】
第1工程における式(II)で表される化合物(以下、「化合物(II)」ともいう)と式(III)で表される化合物(以下、「化合物(III)」ともいう)との反応は、例えば、塩基の存在下に行うことができる。2種以上の塩基を併用してもよい。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド等の金属アルコキシド;アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリイソプロピルアミン、DBU、DABCO、ピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,6-ジt-ブチルピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド等の有機塩基が挙げられる。使用する塩基の量は、化合物(II)の1モルに対して、例えば0.01~10モルであり、好ましくは0.5~5モルである。
【0037】
式(III)において、Xで表される脱離基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、パーフルオロエチルスルホニル基、パーフルオロプロピルスルホニル基、パーフルオロブチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、p-フルオロフェニルスルホニル基、ペンタフルオロフェニルスルホニル基等のアリールスルホニル基等が挙げられる。化合物(III)の一例は、エピハロヒドリン化合物(Xがハロゲン原子である化合物)である。使用する化合物(III)の量は、化合物(II)の1モルに対して、例えば0.01~20モルであり、好ましくは0.5~15モルである。2種以上の化合物(III)を用いて第1工程を実施してもよい。
【0038】
化合物(II)と化合物(III)との反応は、溶媒中で実施されることが好ましい。溶媒としては、水のほか、ケトン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、エーテル類、アルコール類、グライム類、エステル類、脂肪族ニトリル類、スルホキシド類、アミド類等の有機溶媒が挙げられる。2種以上の溶媒を併用してもよい。有機溶媒として、具体的には以下の溶媒が例示される。
【0039】
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン、2-オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等
芳香族炭化水素類:ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、アニソール、ニトロベンゼン、アニリン、テトラリン、デュレン等
ハロゲン化芳香族炭化水素:クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等
脂肪族炭化水素:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等
ハロゲン化脂肪族炭化水素類:ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロエタン等
エーテル類:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン等
アルコール類:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t-ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサフルオロイソプロパノール等
グライム類:メチルジグライム、エチルジグライム、トリグライム、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル等
エステル類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等
脂肪族ニトリル類:アセトニトリル等
スルホキシド類:ジメチルスルホキシド、スルホラン等
アミド類:N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等。
【0040】
化合物(II)と化合物(III)との反応の温度は、例えば-80~200℃であり、好ましくは0~150℃である。反応後、得られる式(IV)で表される化合物(以下、「化合物(IV)」ともいう)は、単離されてもよいし、単離されることなく第2工程に供されてもよい。
【0041】
第2工程で行う反応は、化合物(IV)が有するエポキシ基の酸素原子を硫化剤を用いて硫黄原子に置換し、チイラン基(エピスルフィド基)を形成する反応である。硫化剤としては、例えば、チオ尿素、メチルチオウレア、ジメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、テトラメチルチオウレア、テトラエチルチオウレア、エチレンチオウレア、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム等が挙げられる。使用する硫化剤の量は、化合物(IV)の1モルに対して、例えば0.01~20モルであり、好ましくは0.5~10モルである。
【0042】
化合物(IV)と硫化剤との反応は、溶媒中で実施されることが好ましい。溶媒としては、上で例示した有機溶媒を用いることができる。2種以上の有機溶媒を併用してもよい。化合物(IV)と硫化剤との反応の温度は、例えば-80~200℃であり、好ましくは0~100℃である。
【0043】
第2工程において、生成した化合物(I)の重合を抑制するために重合抑制剤を添加してもよい。重合抑制剤としては酸、酸無水物等が挙げられる。具体的には硝酸、塩酸、過塩素酸、次亜塩素酸、二酸化塩素、フッ酸、硫酸、発煙硫酸、塩化スルフリル、ホウ酸、ヒ酸、亜ヒ酸、ピロヒ酸、燐酸、亜リン酸、次亜リン酸、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、硫化リン、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、青酸、クロム酸、無水硝酸、無水硫酸、酸化ホウ素、五酸化ヒ酸、五酸化燐、無水クロム酸、シリカゲル、シリカアルミナ、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等の無機の酸性化合物、蟻酸、酢酸、過酢酸、チオ酢酸、蓚酸、酒石酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ナフテン酸、メチルメルカプトプロピオネート、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンカルボン酸、チオジプロピオン酸、ジチオジプロピオン酸酢酸、マレイン酸、安息香酸、フェニル酢酸、o-トルイル酸、m-トルイル酸、p-トルイル酸、サリチル酸、2-メトキシ安息香酸、3-メトキシ安息香酸、ベンゾイル安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、ベンジル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水トリフルオロ酢酸等の有機カルボン酸類、モノ、ジ及びトリメチルホスフェート、モノ、ジ及びトリエチルホスフェート、モノ、ジ及びトリイソブチルホスフェート、モノ、ジ及びトリブチルホスフェート、モノ、ジ及びトリラウリルホスフェート等のリン酸類及びこれらのホスフェート部分がホスファイトとなった亜リン酸類、ジメチルジチオリン酸に代表されるジアルキルジチオリン酸類等の有機リン化合物、フェノール、カテコール、t-ブチルカテコール、2,6-ジ-t-ブチルクレゾール、2,6-ジ-t-ブチルエチルフェノール、レゾルシン、ハイドロキノン、フロログルシン、ピロガロール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、ヒドロキシフェニル酢酸、ヒドロキシフェニルプロピオン酸、ヒドロキシフェニル酢酸アミド、ヒドロキシフェニル酢酸メチル、ヒドロキシフェニル酢酸エチル、ヒドロキシフェネチルアルコール、ヒドロキシフェネチルアミン、ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルフェノール、ビスフェノール-A、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビスフェノール-F、ビスフェノール-S、α-ナフトール、β-ナフトール、アミノフェノール、クロロフェノール、2,4,6-トリクロロフェノール等のフェノール類、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、m-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、o-クレゾールスルホン酸、メタニル酸、スルファニル酸、4B-酸、ジアミノスチルベンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、α-ナフタレンスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸、ペリ酸、ローレント酸、フェニルJ酸等のスルホン酸類、等があげられ、複数を併用することも可能である。使用する重合抑制剤の量は、化合物(IV)の1モルに対して、例えば0.0001~1.0モルであり、好ましくは0.01~0.2モルである。重合抑制剤としては酢酸、無水酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0044】
第2工程において、反応後の生成物溶液は酸性水溶液を用いた洗浄によって得られる化合物(I)の経時安定性を向上させることができる。酸性水溶液に用いる酸の具体例としては、硝酸、塩酸、硫酸、ホウ酸、ヒ酸、燐酸、青酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、過酢酸、チオ酢酸、蓚酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸等があげられる。これらは単独でも2種類以上を混合して用いても良い。これらの酸の水溶液は通常pH6以下で効果を現すが、より効果的な範囲はpH3以下である。好ましくは塩酸、硫酸である。
【0045】
さらに、第2工程において化合物(I)の安定性を向上させるために硫化水素吸着剤を使用することもできる。硫化水素吸着剤としては例えば、水酸化鉄(III)、酸化亜鉛、KNK-301(酸化亜鉛系吸着剤、呉羽油脂工業製)、ニオノン202A(酸化鉄系吸着剤、株式会社伊吹正製)、リモニック(水酸化鉄系、日本リモニック製)などが挙げられる。硫化水素吸着剤は第2工程の反応時に添加してもよいし、反応後の精製において使用することもできる。
【0046】
<組成物>
本発明に係る組成物(以下、「組成物(I)」ともいう)は、化合物(I)と、化合物(I)以外の他の成分とを含むことができる。組成物(I)は、化合物(I)を2種以上含んでいてもよい。組成物(I)は、化合物(I)が硬化性を有するため活性エネルギー線照射又は加熱により硬化することができる。組成物(I)を硬化させることにより、組成物(I)の硬化物を含む成形物を形成することができる。上記硬化物を含む成形物とは、上記硬化物を含む物であって、所望の形状に成形された物をいう。
【0047】
組成物(I)は、化合物(I)を含むため、高い屈性率及び優れた硬化性を示し得る。また、組成物(I)は、優れた成膜性を示し得る。さらに、組成物(I)は、優れたパターニング性を示し得る。
【0048】
組成物(I)における化合物(I)の含有率は、組成物(I)の固形分の総量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、また、100質量%以下でもよく、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下であり、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下又は60質量%以下であってもよい。
【0049】
組成物(I)の固形分の総量とは、組成物(I)に含まれる成分のうち、溶剤を除いた成分の合計を意味する。組成物の固形分中における各成分の含有率は、液体クロマトグラフィ又はガスクロマトグラフィ等の公知の分析手段で測定することができる。組成物(I)の固形分中における各成分の含有率は、該組成物調製時の配合から算出されてもよい。
【0050】
組成物(I)に含まれる上記他の成分としては、例えば、樹脂、化合物(I)以外の硬化性化合物、重合開始剤、溶剤、添加剤等が挙げられる。添加剤としては、例えば、無機粒子、充填剤、重合開始助剤、光増感剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、防汚剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤等が挙げられる。組成物(I)は、上記他の成分を2種以上含んでいてもよい。組成物(I)が添加剤を含む場合、添加剤を2種以上併用してもよい。
【0051】
(1)樹脂
組成物(I)は、1種又は2種以上の樹脂を含むことができる。組成物(I)が樹脂を含むことにより、組成物(I)の硬化物に現像性を付与又は改善したり、該硬化物及びそれを含む成形物の機械的特性及び/又は光学特性を調整したりすることが可能である。樹脂としては、熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂が挙げられる。硬化性樹脂は、活性エネルギー線照射により硬化する光硬化性樹脂であってもよいし、熱により硬化する熱硬化性樹脂であってもよい。
【0052】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、エチレン-ビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の1種を又は2種以上をポリマーブレンド若しくはポリマーアロイとして使用してもよい。
【0053】
硬化性樹脂としては、光重合性基又は熱重合性基を有する樹脂が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。本明細書において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリレート」等についても同様である。
【0054】
樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂が挙げられる。組成物(I)がアルカリ可溶性樹脂を含むことにより、組成物(I)の硬化物に現像性を付与又は改善することができる。アルカリ可溶性樹脂とは、アルカリ水溶液に可溶な樹脂をいう。具体的には、例えばカルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基を有する樹脂がある。
【0055】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、組成物(I)の硬化物の現像性及び耐溶剤性を高める観点から、好ましくは10~170mgKOH/g、より好ましくは20~150mgKOH/g、さらに好ましくは30~140mgKOH/gである。酸価は、アルカリ可溶性樹脂1gを中和するに必要な水酸化カリウムの量(mg)として測定される値であり、例えば水酸化カリウム水溶液を用いて滴定することにより求めることができる。
【0056】
また、樹脂の他の例としては、高屈折率樹脂が挙げられる。高屈折率樹脂とは、波長550nmにおける屈折率が1.60以上である樹脂をいう。
【0057】
樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、例えば1000~9000であり、好ましくは2000~8500、より好ましくは3000~8500である。樹脂のMwを上記範囲とするために、用いる原料の選択、仕込方法、反応温度及び時間等の反応条件を適宜組み合わせて調整することができる。
【0058】
組成物(I)が樹脂を含む場合、組成物(I)における樹脂の含有率は、組成物(I)の固形分の総量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0059】
(2)化合物(I)以外の硬化性化合物
組成物(I)は、化合物(I)以外の硬化性化合物を1種又は2種以上含むことができる。組成物(I)が化合物(I)以外の硬化性化合物を含むことにより、組成物(I)の屈折率、粘度又は硬化性を調整したり、得られる硬化物及びそれを含む成形物の機械的特性及び/又は光学特性を調整したりすることが可能である。
【0060】
化合物(I)以外の硬化性化合物としては、例えば、化合物(I)以外のエピスルフィド化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ヒドロキシ化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、チオール化合物、ポリフェノール化合物、イソ(チオ)シアナート化合物、(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0061】
組成物(I)が化合物(I)以外の硬化性化合物を含む場合、組成物(I)における該硬化性化合物の含有率は、組成物(I)の固形分の総量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、なおさらに好ましくは40質量%以下である。
【0062】
化合物(I)以外のエピスルフィド化合物としては、例えば、式(V)で表される化合物(以下、「化合物(V)」ともいう)が挙げられる。化合物(V)は、高い屈折率を示す硬化物を与えることができ、また、優れた成膜性及び硬化性を示すことができるため、化合物(I)との併用に好適である。
[式(V)中、
L
xは2価の基を表し、複数あるL
xは同一であっても異なっていてもよい。
pは0又は1を表し、複数あるpは同一であっても異なっていてもよい。
qは0~6のいずれかの整数を表す。
R
xは1価の置換基を表し、R
xが複数ある場合、複数のR
xは同一であっても異なっていてもよい。
R
2xは水素原子又は1価の置換基を表し、複数あるR
2xは同一であっても異なっていてもよい。]
【0063】
式(V)は、2つの下記式で表される基
がいずれもナフタレン環の1~4位の任意の位置に結合しているか、若しくはいずれも5~8位の任意の位置に結合していてもよいこと、又は、一方の基がナフタレン環の1~4位の任意の位置に結合し、かつ他方の基がナフタレン環の5~8位の任意の位置に結合していてもよいことを表す。また、式(V)は、R
xで表される1以上の1価の置換基を有する場合、該1以上の1価の置換基が、上記式で表される基が結合している位置を除くナフタレン環の1~8位の任意の位置に結合していてもよいことを表す。後述する式(Va)、式(Vb)、式(Vc)、式(Vd)、式(Ve)、式(VI)及び式(VII)についても同様である。
【0064】
式(V)において、2価の基を表す2つのLxとしては、それぞれ独立して、例えば、置換基を有していてもよい2価の脂肪族鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、及びこれらの組み合わせからなる2価の基(アラルキレン基等)等の2価の炭化水素基が挙げられる。
2価の炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-、-NR1C-(R1Cは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す)、-CO-、-SO2-で置換されていてもよい。
【0065】
2価の脂肪族鎖状炭化水素基としては、例えば、飽和又は不飽和の脂肪族鎖状炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基、ウンデカンジイル基、ドデカンジイル基、トリデカンジイル基、テトラデカンジイル基、ペンタデカンジイル基、ヘキサデカンジイル基、ヘプタデカンジイル基、オクタデカンジイル基、ノナデカンジイル基、エイコサンジイル基等のアルカンジイル基等が挙げられる。2価の脂肪族鎖状炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。2価の脂肪族鎖状炭化水素基の炭素数は、通常1~20であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4、なおさらに好ましくは1又は2である。
【0066】
2価の脂肪族鎖状炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アセチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0067】
2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基が挙げられ、具体的には、シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基、シクロノナンジイル基、シクロデカンジイル基等の単環の脂環式炭化水素基;ビシクロ[1.1.0]ブタンジイル基、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプタンジイル基、ビシクロ[3.2.1]オクタンジイル基、ビシクロ[2.2.2]オクタンジイル基、アダマンタンジイル基、ビシクロ[4.3.2]ウンデカンジイル基、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジイル基等の多環の脂環式炭化水素基等が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基の炭素数は、通常3~20であり、好ましくは3~10、より好ましくは3~6、さらに好ましくは5又は6である。
【0068】
2価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素原子数1~10(好ましくは炭素原子数1~4)のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アセチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0069】
2価の芳香族炭化水素基は、単環であっても多環であってもよく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセンジイル基、フルオレンジイル基等が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基の炭素数は、通常6~20であり、好ましくは6~10である。
【0070】
2価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素原子数1~10(好ましくは炭素原子数1~4)のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アセチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0071】
式(V)における2つのLxは、好ましくは、少なくともいずれか一方がアルカンジイル基であり、より好ましくは、両方がアルカンジイル基である。この場合において、アルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4、なおさらに好ましくは1又は2である。
【0072】
式(V)における2つのpは、それぞれ独立して、0又は1であり、好ましくは0である。より好ましくは、2つのpはいずれも0である。
qは、0~6のいずれかの整数であり、好ましくは0~4のいずれかの整数であり、より好ましくは0~2のいずれかの整数であり、さらに好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である。
【0073】
式(V)において、1価の置換基を表すRxとしては、Rxが複数ある場合はそれぞれ独立して、例えば、置換基を有していてもよい1価の脂肪族鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、及びこれらの組み合わせからなる1価の基(アラルキル基等)等の1価の炭化水素基;ヒドロキシ基;アミノ基、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等の1つ又は2つの炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基;ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、オキサゾリニル基、チアゾリル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリル基、チエニル基、ピロリル基及びフリル基等の炭素数4~20の脂肪族複素環基又は炭素数3~20の芳香族複素環基等のヘテロ環基;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;カルボキシ基;スルホ基;チオール基;ホルミル基;-SF3基;-SF5基が挙げられる。1価の炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-、-NR1D-(R1Dは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す)、-CO-、-SO2-で置換されていてもよい。なお、1価の炭化水素基に含まれる-CH2-が、-O-で置換された基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基等のアルコキシアルキル基等が挙げられる。
【0074】
1価の脂肪族鎖状炭化水素基としては、例えば、飽和又は不飽和の脂肪族鎖状炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基等が挙げられる。1価の脂肪族鎖状炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。1価の脂肪族鎖状炭化水素基の炭素数は、通常1~20であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4、なおさらに好ましくは1又は2である。
【0075】
1価の脂肪族鎖状炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アセチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0076】
1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基が挙げられ、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の単環の脂環式炭化水素基;ビシクロ[1.1.0]ブチル基、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプチル基、ビシクロ[3.2.1]オクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、アダマンチル基、ビシクロ[4.3.2]ウンデシル基、トリシクロ[5.3.1.1]ドデシル基等の多環の脂環式炭化水素基等が挙げられる。1価の脂環式炭化水素基の炭素数は、通常3~20であり、好ましくは3~10、より好ましくは3~6、さらに好ましくは5又は6である。
【0077】
1価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素原子数1~10(好ましくは炭素原子数1~4)のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アセチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0078】
1価の芳香族炭化水素基は、単環であっても多環であってもよく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基等が挙げられる。1価の芳香族炭化水素基の炭素数は、通常6~20であり、好ましくは6~10である。
【0079】
上記1価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素原子数1~10(好ましくは炭素原子数1~4)のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アセチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0080】
式(V)において、R2xは水素原子又は1価の置換基を表し、複数あるR2xは同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一である。1価の置換基の具体例としては、Rxと同じものが挙げられる。2つのR2xは、それぞれ独立して、好ましくは、水素原子又は1価の脂肪族鎖状炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子又は炭素数1~6の1価の脂肪族鎖状炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、特に好ましくは、水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0081】
式(V)で表される化合物としては、式(Va)、式(Vb)、式(Vc)、式(Vd)及び式(Ve)で表される化合物が挙げられる。式(Va)、式(Vb)、式(Vc)、式(Vd)及び式(Ve)中のq、R
x、R
2x、L
x及びpは式(V)と同じ意味である。
【0082】
式(Va)、式(Vb)、式(Vc)、式(Vd)及び式(Ve)において、2つのLxは、好ましくは、少なくともいずれか一方がアルカンジイル基であり、より好ましくは、両方がアルカンジイル基である。この場合において、アルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4、なおさらに好ましくは1又は2である。
【0083】
式(Va)、式(Vb)、式(Vc)、式(Vd)及び式(Ve)において、2つのpは、それぞれ独立して、0又は1であり、好ましくは0である。より好ましくは、2つのpはいずれも0である。
qは、0~6のいずれかの整数であり、好ましくは0~4のいずれかの整数であり、より好ましくは0~2のいずれかの整数であり、さらに好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である。
【0084】
式(Va)、式(Vb)、式(Vc)、式(Vd)及び式(Ve)において、2つのR2xは、それぞれ独立して、好ましくは、水素原子又は1価の脂肪族鎖状炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子又は炭素数1~6の1価の脂肪族鎖状炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、特に好ましくは、水素原子、メチル基又はエチル基である。2つのR2xは、好ましくは同一である。
【0085】
化合物(V)の分子量は、合成の観点から、好ましくは2000以下、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは500以下である。また、該分子量は、揮発性の観点から、好ましくは50以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは150以上である。
【0086】
<化合物の製造方法>
化合物(V)は、下記に示す第1工程及び第2工程を含む方法によって製造することができる。
第1工程:式(VI)
[式(VI)中、q及びR
xは前記と同じ意味を表す。]
で表される化合物と、式(VII)
[式(VII)中、R
2x、L
x及びpは前記と同じ意味を表し、X
xは脱離基を表す。]
で表される化合物とを反応させることにより、式(VIII)
[式(VIII)中、q、R
x、R
2x、L
x及びpは前記と同じ意味を表す。]
で表される化合物を得る工程;
第2工程:前記式(VIII)で表される化合物と硫化剤との反応により、化合物(V)を得る工程
【0087】
第1工程における式(VI)で表される化合物(以下、「化合物(VI)」ともいう)と式(VII)で表される化合物(以下、「化合物(VII)」ともいう)との反応は、例えば、塩基の存在下に行うことができる。2種以上の塩基を併用してもよい。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド等の金属アルコキシド;アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリイソプロピルアミン、DBU、DABCO、ピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,6-ジt-ブチルピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド等の有機塩基が挙げられる。使用する塩基の量は、化合物(VI)の1モルに対して、例えば0.01~10モルであり、好ましくは0.5~5モルである。
【0088】
式(VII)において、Xxで表される脱離基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、パーフルオロエチルスルホニル基、パーフルオロプロピルスルホニル基、パーフルオロブチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、p-フルオロフェニルスルホニル基、ペンタフルオロフェニルスルホニル基等のアリールスルホニル基等が挙げられる。化合物(VII)の一例は、エピハロヒドリン化合物(Xxがハロゲン原子であり、Lxがメチレン基であり、pが0である化合物)である。使用する化合物(VII)の量は、化合物(VI)の1モルに対して、例えば0.01~20モルであり、好ましくは0.5~15モルである。2種以上の化合物(VII)を用いて第1工程を実施してもよい。
【0089】
化合物(VI)と化合物(VII)との反応は、溶媒中で実施されることが好ましい。溶媒としては、水のほか、ケトン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、エーテル類、アルコール類、グライム類、エステル類、脂肪族ニトリル類、スルホキシド類、アミド類等の有機溶媒が挙げられる。2種以上の溶媒を併用してもよい。
【0090】
化合物(VI)と化合物(VII)との反応の温度は、例えば-80~200℃であり、好ましくは0~150℃である。反応後、得られる式(VIII)で表される化合物(以下、「化合物(VIII)」ともいう)は、単離されてもよいし、単離されることなく第2工程に供されてもよい。
【0091】
第2工程で行う反応は、化合物(VIII)が有するエポキシ基又はオキセタニル基の酸素原子を硫化剤を用いて硫黄原子に置換し、チイラン基(エピスルフィド基)又はチエタン基を形成する反応である。硫化剤としては、例えば、チオ尿素、メチルチオウレア、ジメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、テトラメチルチオウレア、テトラエチルチオウレア、エチレンチオウレア、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム等が挙げられる。使用する硫化剤の量は、化合物(VIII)の1モルに対して、例えば0.01~20モルであり、好ましくは0.5~10モルである。
【0092】
化合物(VIII)と硫化剤との反応は、溶媒中で実施されることが好ましい。溶媒としては、上で例示した有機溶媒を用いることができる。2種以上の有機溶媒を併用してもよい。化合物(VIII)と硫化剤との反応の温度は、例えば-80~200℃であり、好ましくは0~100℃である。
【0093】
第2工程において、生成した化合物(V)の重合を抑制するために重合抑制剤を添加してもよい。重合抑制剤としては酸、酸無水物等が挙げられ、好ましくは、酢酸、無水酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸である。使用する重合抑制剤の量は、化合物(VIII)の1モルに対して、例えば0.0001~1.0モルであり、好ましくは0.01~0.2モルである。
【0094】
(3)重合開始剤
組成物(I)は、1種又は2種以上の重合開始剤を含むことができる。重合開始剤としては、化合物(I)の重合(及び組成物(I)が化合物(V)をさらに含む場合には化合物(V)の重合)を開始できるものであれば特に制限されず、例えば、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等が挙げられ、適宜選択して用いられる。ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び熱の少なくとも1種により、それぞれ、ラジカル、酸又は塩基を発生し、化合物(I)及び化合物(V)のラジカル重合、カチオン重合又はアニオン重合を進行させる。なお、化合物(I)及び化合物(V)は、重合開始剤の不存在下でも、活性エネルギー線照射及び熱の少なくとも1種により重合硬化し得るが、反応性の点で、重合開始剤を含有することが好ましい。
【0095】
熱によりラジカル重合を開始させる熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、過安息香酸等の有機過酸化物、アゾビスブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。活性エネルギー線照射によりラジカル重合を開始させる光ラジカル重合開始剤としては、例えば、オキシム化合物、アルキルフェノン化合物、アリールケトン化合物、ビイミダゾール化合物、トリアジン化合物、アシルホスフィン化合物等が挙げられる。
【0096】
カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することができる化合物である。カチオン重合開始剤としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族アンモニウム塩、シクロペンタジエニル鉄(II)錯体等が挙げられる。これらは、構造の違いによって活性エネルギー線照射又は熱のいずれか又はいずれでもカチオン重合を開始させることができる。活性エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出することができる化合物を光カチオン重合開始剤といい、熱によりカチオン重合を開始させる物質を放出することができる化合物を熱カチオン重合開始剤という。
【0097】
アニオン重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び熱の少なくともいずれかによりアニオン重合を開始させる物質を放出することができる化合物である。アニオン重合開始剤としては、ボレート塩、アンモニウム塩、DBU(ジアザビシクロウンデセニウム)塩、DBN(ジアザビシクロノネニウム)塩、ビグアニジウム塩、芳香族ホスホニウム塩、芳香族ジメチルウレア、脂肪族ジメチルウレア等が挙げられる。これらは、構造の違いによって活性エネルギー線照射又は熱のいずれか又はいずれでもアニオン重合を開始させることができる。活性エネルギー線照射によりアニオン重合を開始させる物質を放出することができる化合物を光アニオン重合開始剤といい、熱によりアニオン重合を開始させる物質を放出することができる化合物を熱アニオン重合開始剤という。
【0098】
組成物(I)が重合開始剤を含む場合、組成物(I)の硬化性及びパターニング性を向上させる観点から、組成物(I)は、アニオン重合開始剤を含むことが好ましい。
【0099】
組成物(I)が重合開始剤を含む場合、組成物(I)における重合開始剤の含有率は、化合物(I)及びそれ以外の硬化性化合物の合計100質量部に対して、硬化性及び/又はパターニング性を高める観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、硬化物の機械的物性等の物性を良好にする観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。
【0100】
(4)溶剤
組成物(I)は、1種又は2種以上の溶剤を含んでいてもよい。溶剤は、好ましくは、化合物(I)を溶解又は分散させることができるものであり、より好ましくは、さらに化合物(I)以外の他の成分を溶解又は分散させることができるものである。溶剤としては、有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては以下が挙げられる。
【0101】
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン、2-オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等
芳香族炭化水素類:ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、アニソール、ニトロベンゼン、アニリン、テトラリン、デュレン等
ハロゲン化芳香族炭化水素:クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等
脂肪族炭化水素:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等
ハロゲン化脂肪族炭化水素類:ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロエタン等
エーテル類:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン等
アルコール類:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t-ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサフルオロイソプロパノール等
グライム類:メチルジグライム、エチルジグライム、トリグライム、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル等
エステル類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等
脂肪族ニトリル類:アセトニトリル等
スルホキシド類:ジメチルスルホキシド、スルホラン等
アミド類:N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等。
【0102】
組成物(I)における溶剤の含有率は、組成物(I)の総量に対する組成物(I)に含まれる全溶剤の合計質量の割合である。組成物(I)が溶剤を含む場合、組成物(I)における溶剤の含有率は、組成物(I)の固形分100質量部に対して、好ましくは60質量部以上、より好ましくは80質量部以上であり、また、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは500質量部以下である。組成物(I)が溶剤を含む場合、組成物(I)の固形分濃度は、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%である。
【0103】
<硬化物及び成形物>
本発明は、化合物(I)又は組成物(I)の硬化物、及び該硬化物を含む成形物を提供する。化合物(I)及び組成物(I)は成膜性及び硬化性に優れているため、硬化物又はそれを含む成形物を作製するための硬化性材料として好適である。該硬化物は、活性エネルギー線照射及び熱の少なくともいずれかにより化合物(I)又は組成物(I)を硬化させることにより得ることができる。該硬化物を含む成形物の形状は特に制限されず、フィルム(膜)状、板状、レンズ形状、粉状、粒状、非球粒子状、破砕粒子状、多孔質状、塊状連続体、繊維状、管状、中空糸状等を含む、成形物の用途等に応じた任意の形状であってよい。
【0104】
組成物(I)の硬化物、及び該硬化物を含む成形物は、組成物(I)が化合物(I)を含むため、高い屈性率を示し得る。また、組成物(I)の硬化物、及び該硬化物を含む成形物は、優れたパターニング性を示し得る。
【0105】
組成物(I)から成形物を得る方法としては、特に限定されず、基板上に膜を形成してその後エッチング等により成形を行う方法、射出成型方法、注型重合成型方法等が挙げられる。
【0106】
注型重合成型方法では、例えば、成型モールド内に化合物(I)又は組成物(I)を注入し、必要に応じて脱泡等を行い、次にオーブンでの加熱等により硬化させ、得られた成形物を取り出す。取り出した成形物に、さらに活性エネルギー線照射を行い、追加で硬化を行うこともできる。
【0107】
基板上に成形物としての膜を形成する場合、化合物(I)又は組成物(I)を基板に塗布し、必要に応じて乾燥を行って塗布層を形成し、塗布層を硬化させることにより硬化膜である成形物を得ることができる。成形物はパターニングされた硬化膜であってもよい。フォトリソグラフ法、インクジェット法、印刷法等の方法によってパターニングすることによりパターニングされた硬化膜を得ることができる。パターニング方法は、フォトリソグラフィ法であることが好ましい。フォトリソグラフィ法は、化合物(I)又は組成物(I)を基板に塗布し、必要に応じて乾燥を行って塗布層を形成し、フォトマスクを介して塗布層を露光し、ついで現像する方法である。
【0108】
基板としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミナケイ酸塩ガラス、表面をシリカコートしたソーダライムガラス等のガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂板、シリコン、上記基板上にアルミニウム、銀、銀/銅/パラジウム合金薄膜等を形成したもの等を用いることができる。化合物(I)又は組成物(I)の基板への塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、スリットアンドスピンコート法等が挙げられる。
【0109】
露光に用いられる光源としては、250nm以上450nm以下の波長の光を発生する光源が好ましい。例えば、該波長の光から、光重合開始剤の吸収波長に応じて、436nm付近、408nm付近、又は365nm付近の光をバンドパスフィルタにより選択的に取り出してもよい。光源として具体的には、水銀灯、発光ダイオード、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ等が挙げられる。パターン露光後かつ現像前に加熱(現像前ベーク)を行ってもよい。
【0110】
現像に用いる現像液としては、例えば、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等のアルカリ性化合物の水溶液や有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、エーテル類、アルコール類、グライム類、エステル類、脂肪族ニトリル類、スルホキシド類、アミド類等の有機溶剤が挙げられる。2種以上の溶剤を併用してもよい。現像液は、界面活性剤を含んでいてもよい。現像方法は、パドル法、ディッピング法及びスプレー法等のいずれでもよい。現像により得られたパターン状の膜に対してさらに加熱(ポストベーク)を行ってもよい。
【0111】
硬化物又はそれを含む成形物は、化合物(I)又はそれを含む組成物(I)から形成されるものであるため、高屈折率を示すことができ、また、それらの屈折率は、組成物(I)の組成等を調整することにより所望の屈折率に制御することができる。硬化物又はそれを含む成形物は、波長550nmにおける屈折率が、1.62以上、1.63以上、1.64以上、1.65以上、1.68以上又は1.70以上であり得る。波長550nmにおける屈折率は、例えば1.80以下であり、1.78以下、1.75以下又は1.73以下であってもよい。
【0112】
[用途]
本発明によれば、高屈折率を有する硬化物若しくは成形物、又は所望の屈折率を有する硬化物又は成形物を得ることができる。該硬化物又は成形物の用途としては、例えば、ガラス代替品とその表面コーティング材;住居、施設、輸送機器等の窓ガラス、採光ガラス及び光源保護ガラス用のコーティング材;住居、施設、輸送機器等のウインドウフィルム;住居、施設、輸送機器等の内外装材及び内外装用塗料及び該塗料によって形成させる塗膜;アルキド樹脂ラッカー塗料及び該塗料によって形成される塗膜;アクリルラッカー塗料及び該塗料によって形成される塗膜;蛍光灯、水銀灯等の紫外線を発する光源用部材;精密機械、電子電気機器用部材、各種ディスプレイから発生する電磁波等の遮断用材;食品、化学品、薬品等の容器又は包装材;ボトル、ボックス、ブリスター、カップ、特殊包装用、コンパクトディスクコート、農工業用シート又はフィルム材;印刷物、染色物、染顔料等の退色防止剤;ポリマー支持体用(例えば、機械及び自動車部品のようなプラスチック製部品用)の保護膜;印刷物オーバーコート;インクジェット媒体被膜;積層艶消し;オプティカルライトフィルム;安全ガラス/フロントガラス中間層;エレクトロクロミック/フォトクロミック用途;オーバーラミネートフィルム;太陽熱制御膜;日焼け止めクリーム、シャンプー、リンス、整髪料等の化粧品;スポーツウェア、ストッキング、帽子等の衣料用繊維製品及び繊維;カーテン、絨毯、壁紙等の家庭用内装品;プラスチックレンズ、コンタクトレンズ、義眼等の医療用器具;光学フィルタ、バックライトディスプレーフィルム、プリズム、レンズ(例えば、眼鏡レンズ、カメラレンズ、及び後述するマイクロレンズ、ピックアップレンズ等)、鏡、写真材料等の光学用品;金型膜、転写式ステッカー、落書き防止膜、テープ、インク等の文房具;標示板、標示器等とその表面コーティング材;光学装置等に用いられる基板;光導波路;ホログラム;LED封止材;等を挙げることができる。
【0113】
成形物は、光学機器に用いられる光学用品であるレンズとして好適に用いられる。光学機器としては、固体撮像素子、表示装置等が挙げられる。固体撮像素子において各光電変換素子への集光効率を向上させる目的でレンズが用いられ、また表示装置において画素からの光の取り出し効率を向上させる目的でレンズが用いられている。レンズはマイクロレンズであってもよい。表示装置としては、液晶表示装置、有機EL表示装置等に好適に用いられる。
【0114】
高屈折率材料としては、酸化ジルコニウムや酸化チタン等の無機化合物が従来知られている。しかし、無機化合物からなる高屈折率材料を含む成形物を作製する場合などにおいて、エッチングが進行しにくいなど成形が容易でないことがあり、また、成形時に高屈折率材料が飛散して汚染の問題を生じることがある。有機化合物である本発明の高屈折材料を用いることにより上記問題を解決することができる。
【実施例0115】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特に断りのない限り質量基準である。
【0116】
[製造例1:式(V-1)で表される化合物の合成]
(1)式(VIII-1)で表される化合物の合成
ジムロート冷却管及び温度計を設置した4つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、式(VI-1)で表される化合物(1,6-ナフタレンジチオール) 30部、アセトン 165部、純水 45部、及び式(VII-1)で表される化合物(エピクロロヒドリン) 139部を上記フラスコに加えて氷浴中で15分撹拌した。続いて、別のフラスコに水酸化ナトリウム 15部、アセトン 66部、及び純水 203部を加えて完溶させたのちに、上記4つ口フラスコに1時間かけて滴下した。滴下したのちに30℃まで昇温し、30℃で2時間撹拌した。得られた混合物を精製し、式(VIII-1)で表される化合物 46部を得た。
【0117】
LC-MS測定及び1H-NMR解析を行い、式(VIII-1)で表される化合物が生成したことを確認した。
1H-NMR(重クロロホルム)δ:8.37~8.39(1H)、7.85(1H)、7.39~7.70(4H)、3.08~3.29(5H)、2.94~2.98(1H)、2.57~2.81(3H)、2.39~2.41(1H)
LC-MS;[M+H]+=305.5
【0118】
(2)式(V-1)で表される化合物の合成
ジムロート冷却管及び温度計を設置した4つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、式(VIII-1)で表される化合物 3部、メタノール 30部、トルエン 30部、無水酢酸 0.05部、及びチオ尿素 3.8部を上記フラスコに加えて室温下で24時間撹拌した。得られた混合物を精製し、式(V-1)で表される化合物 2.5部を得た。
【0119】
LC-MS測定及び1H-NMR解析を行い、式(V-1)で表される化合物が生成したことを確認した。
1H-NMR(重クロロホルム)δ:8.39~8.43(1H)、7.86(1H)、7.40~7.74(4H)、3.40~3.53(2H)、3.04~3.18(2H)、2.78~2.96(2H)、2.47~2.49(1H)、2.35~2.36(1H)、2.14~2.16(1H)、1.93~1.94(1H)
LC-MS;[M+H]+=337.5
【0120】
[実施例1:式(I-1)で表される化合物の合成]
(1)式(IV-1)で表される化合物の合成
ジムロート冷却管及び温度計を設置した4つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン 5部、アセトン 27.5部、純水 7.5部、及びエピクロロヒドリン 12.1部を上記フラスコに加えて氷浴中で15分撹拌した。続いて、別のフラスコに水酸化ナトリウム 2.0部、アセトン 11部、及び純水 40部を加えて完溶させたのちに、上記4つ口フラスコに1時間かけて滴下した。滴下したのちにオイルバスで65℃まで昇温し、65℃で1時間撹拌した。得られた混合物を精製し、式(IV-1)で表される化合物 6.2部を得た。
【0121】
LC-MS測定及び1H-NMR解析を行い、式(IV-1)で表される化合物が生成したことを確認した。
1H-NMR(重クロロホルム)δ:6.96~6.99(6H)、6.78~6.82(6H)、4.16~4.20(3H)、3.94~3.95(3H)、3.32~3.34(3H)、2.88~2.90(3H)、2.63~2.75(3H)、2.06(3H)
LC-MS;[M+NH4]+=492.2
【0122】
(2)式(I-1)で表される化合物の合成
ジムロート冷却管及び温度計を設置した4つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、式(IV-1)で表される化合物 5部、トルエン 50部、メタノール 50部、チオ尿素 6.0部、及び無水マレイン酸 0.1部を上記フラスコに加えて25℃中で24時間撹拌した。得られた混合物を精製し、式(I-1)で表される化合物 3.4部を得た。
【0123】
LC-MS測定及び1H-NMR解析を行い、式(I-1)で表される化合物が生成したことを確認した。
1H-NMR(重クロロホルム)δ:6.98~7.01(6H)、6.79~6.84(6H)、4.20~4.22(3H)、3.75~3.92(3H)、3.25~3.31(3H)、2.61~2.63(3H)、2.33~2.34(3H)、2.12(3H)
LC-MS;[M+H]+=523.2
【0124】
[実施例2:式(I-2)で表される化合物の合成]
ジムロート冷却管及び温度計を設置した4つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、式(Y0)で表される化合物 5部、トルエン 50部、メタノール 50部、チオ尿素 4.8部、及び無水マレイン酸 0.1部を上記フラスコに加えて25℃中で24時間撹拌した。得られた混合物を精製し、式(I-2)で表される化合物 4.6部を得た。
【0125】
1H-NMR解析を行い、式(I-2)で表される化合物が生成したことを確認した。
1H-NMR(重クロロホルム)δ:7.14~7.19(4H)、6.92~7.00(6H)、6.76~6.82(6H)、4.11~4.21(3H)、3.84~3.89(3H)、3.23~3.29(3H)、2.59~2.61(3H)、2.30~2.36(3H)、2.09(3H)、1.64(6H)
【0126】
[実施例3:組成物の調製]
式(I-2)で表される化合物 100質量部、重合開始剤A 1質量部、及び溶剤としてのシクロペンタノン 310質量部をフラスコに入れ、攪拌して液状の組成物を得た。組成物を目視したところ透明であり、配合成分が均一に溶解されていることが確認された。
【0127】
[実施例4~10、比較例1~6:組成物の調製]
組成物における配合成分の種類及びそれらの添加量を表1に示すとおりとしたこと以外は、実施例3と同様にして液状の組成物を得た。いずれの組成物も目視したところ透明であり、配合成分が均一に溶解されていることが確認された。
【0128】
表1に示される配合成分の略称の詳細は次のとおりである。
〔1〕(I-1):式(I-1)で表される化合物
〔2〕(I-2):式(I-2)で表される化合物
〔3〕(V-1):式(V-1)で表される化合物
〔4〕(Y0):式(Y0)で表される化合物(2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-([2,3-エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン、株式会社プリンテック製「TECHMORE VG3101L」)
〔5〕(Y1):式(Y1)で表される化合物(1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、DIC株式会社製「EPICLON HP-4032D」)
〔6〕(Y2):式(Y2)で表される化合物(ポリ(1-ビニルナフタレン)、シグマアルドリッチ社製)
〔7〕(Y3):式(Y3)で表される化合物(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、DIC社製「EPICLON EXA-850CRP」)
〔8〕(Y4):式(Y4)で表される化合物(2,2’-ジグリシジルオキシ-1,1’-ビナフタレン、スガイ化学工業株式会社製「DGOBINL」)
〔9〕(Y5):式(Y5)で表される化合物(9-ビニルカルバゾール、TCI社製)
〔10〕重合開始剤A:ボレート塩タイプの光アニオン重合開始剤(富士フイルム和光純薬株式会社製「WPBG-300」)
〔11〕重合開始剤B:重合開始剤B:DBN(ジアザビシクロノネニウム)塩タイプの熱アニオン重合開始剤(サンアプロ株式会社製「U-CAT 1102」)
〔12〕光増感剤A:1,4-ジエトキシ-ナフタレン
【0129】
[評価試験]
(1)硬化物の屈折率
(1-1)屈折率測定用硬化膜の作製1(実施例3~6、比較例1~4)
上記で調製した組成物を、無アルカリガラス板(Eagle XG 厚み0.7mm、コーニング社製)上に約3cc滴下し、1000rpm、20秒の条件でスピンコーター(MS-B100、ミカサ製)を用いてスピンコートして、塗布層を形成した。塗布層が形成された無アルカリガラス板を80℃で2分間加熱した。次に、塗布層が形成された無アルカリガラス板に高圧水銀灯プロキシミティUV露光装置(UV-3300SC、ウシオ製)を用いて大気雰囲気中、1000mJ/cm2の照射エネルギーで露光した。続いて、露光後の塗布層が形成された無アルカリガラス板を120℃で5分間加熱して、硬化膜が形成された無アルカリガラス板を得た。触針式膜厚計(DekTak XT、Bruker製)で無アルカリガラス板上の硬化膜の膜厚を測定したところ1.5μmであった。
【0130】
(1-2)屈折率測定用硬化膜の作製2(実施例7~10)
上記で調製した組成物を、無アルカリガラス板(Eagle XG 厚み0.7mm、コーニング社製)上に約3cc滴下し、1000rpm、20秒の条件でスピンコーター(MS-B100、ミカサ製)を用いてスピンコートして、塗布層を形成した。塗布層が形成された無アルカリガラス板を80℃で2分間加熱した。次に、塗布層が形成された無アルカリガラス板を120℃で5分間加熱して、硬化膜が形成された無アルカリガラス板を得た。触針式膜厚計(DekTak XT、Bruker製)で無アルカリガラス板上の硬化膜の膜厚を測定したところ1.5μmであった。
【0131】
(1-3)屈折率の測定
硬化膜が形成された無アルカリガラス板について、積分球ユニット(ISV-922、日本分光製)付き可視紫外分光光度計(V-650、日本分光製)を用いて、波長300nmから800nmにおける透過スペクトルと反射スペクトルを測定した。透過スペクトルと反射スペクトルから反射スペクトルの干渉による増減を減算処理して平滑化して得られた真の反射スペクトルのうち、波長550nmの値と無アルカリガラス板(EagleXG、コーニング製)の屈折率から波長550nmにおける硬化膜の屈折率をフレネルの公式(ヘクト光学I原著5版、丸善出版、2018年、p.209-p.226)に基づいて算出した。結果を表1に示す。
【0132】
(2)成膜性
(2-1)成膜性評価用塗布層の作製(実施例3~10、比較例1~6)
上記で調製した組成物を、無アルカリガラス板(Eagle XG 厚み0.7mm、コーニング社製)上に約3cc滴下し、1000rpm、20秒の条件でスピンコーター(MS-B100、ミカサ製)を用いてスピンコートして、塗布層を形成した。塗布層が形成された無アルカリガラス板を60℃で2分間加熱した。
【0133】
(2-2)成膜性の評価
得られた塗布層を観察して、以下の評価基準に従って組成物の成膜性を評価した。結果を表1に示す。穴あき欠陥とは、塗布層に直径1mm以上の穴状の無アルカリガラス板露出部が生じた状態を指す。
A:無色透明であり、穴あき欠陥及び白濁のどちらもない
C:穴あき欠陥がある
D:白濁している
【0134】
(3)硬化性
(3-1)硬化性評価用硬化膜の作製1(実施例3~6、比較例1~4)
上記で調製した組成物を、無アルカリガラス板(Eagle XG 厚み0.7mm、コーニング社製)上に約3cc滴下し、1000rpm、20秒の条件でスピンコーター(MS-B100、ミカサ製)を用いてスピンコートして、塗布層を形成した。塗布層が形成された無アルカリガラス板を80℃で2分間加熱した。次に、塗布層が形成された無アルカリガラス板に高圧水銀灯プロキシミティUV露光装置(UV-3300SC、ウシオ製)を用いて大気雰囲気中、1000mJ/cm2の照射エネルギーで露光した。続いて、露光後の塗布層が形成された無アルカリガラス板を120℃で5分間加熱して、硬化膜が形成された無アルカリガラス板を得た。触針式膜厚計(DekTak XT、Bruker製)で無アルカリガラス板上の硬化膜の膜厚を測定したところ1.5μmであった。
【0135】
(3-2)硬化性評価用硬化膜の作製2(実施例7~10)
上記で調製した組成物を、無アルカリガラス板(Eagle XG 厚み0.7mm、コーニング社製)上に約3cc滴下し、1000rpm、20秒の条件でスピンコーター(MS-B100、ミカサ製)を用いてスピンコートして、塗布層を形成した。塗布層が形成された無アルカリガラス板を80℃で2分間加熱した。次に、塗布層が形成された無アルカリガラス板を120℃で5分間加熱して、硬化膜が形成された無アルカリガラス板を得た。触針式膜厚計(DekTak XT、Bruker製)で無アルカリガラス板上の硬化膜の膜厚を測定したところ1.5μmであった。
【0136】
(3-3)硬化性の評価
得られた硬化膜を用いて、以下の評価基準に従って組成物の硬化性を評価した。結果を表1に示す。硬化性は、23℃のアセトンに、硬化膜が形成された無アルカリガラス板を10分間浸漬し、浸漬前後の硬化膜の外観変化と浸漬前後の膜厚保持率(膜厚保持率=浸漬後膜厚÷浸漬前膜厚)によって評価した。
A:外観変化がなく、膜厚保持率が100%以下90%以上
B:外観変化がなく、膜厚保持率が90%未満80%以上
C:外観変化がなく、膜厚保持率が80%未満
D:膜厚保持率に関わらず、浸漬後に硬化膜が白濁した
【0137】
(4)パターニング性
(4-1)パターニング性評価用硬化膜の作製(実施例3~6、比較例1~4)
上記で調製した組成物を、無アルカリガラス板(Eagle XG 厚み0.7mm、コーニング社製)上に約3cc滴下し、1000rpm、20秒の条件でスピンコーター(MS-B100、ミカサ製)を用いてスピンコートして、塗布層を形成した。塗布層が形成された無アルカリガラス板を80℃で2分間加熱した。次に、塗布層が形成された無アルカリガラス板に高圧水銀灯プロキシミティUV露光装置(UV-3300SC、ウシオ製)を用いて大気雰囲気中、1000mJ/cm2の照射エネルギーでフォトマスク越しにフォトマスクと塗布層表面との間に200μmのギャップを設けてプロキシミティ露光した。続いて、露光後の塗布層が形成された無アルカリガラス板を80℃で2分間加熱した。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液に1分間浸漬したのち純水に1分間浸漬して現像を行った。続いて、ホットプレートで120℃、5分間加熱して、パターニング硬化膜が形成された無アルカリガラス板を得た。触針式膜厚計(DekTak XT、Bruker製)で無アルカリガラス板上の硬化膜の非パターニング部の膜厚を測定したところ1.5μmであった。
【0138】
(4-2)パターニング性の評価
得られた硬化膜について、以下の評価基準に従ってパターニング性を評価した。結果を表1に示す。パターニング性は、5μm幅かつ一対一のラインアンドスペースパターンの断面を観察し、トップロス率(=非パターニング部とパターニング部の膜厚差÷非パターニング部の膜厚)を用いて評価した。トップロス率が小さいほど、すなわち0%に近いほど、パターニング性が優れていることを意味する。
A:トップロス率が0%以上10%以下
B:トップロス率が10%より高く20%以下
C:トップロス率が20%より高く40%以下
【0139】