(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017567
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】潜像発現模様、潜像発現模様データの作成方法及び潜像発現模様データ
(51)【国際特許分類】
B42D 25/337 20140101AFI20240201BHJP
B41M 3/14 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
B42D25/337
B41M3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120287
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】木内 正人
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA01
2C005JB25
2C005JB26
2H113AA06
2H113BA09
2H113BA27
2H113BB02
2H113BB08
2H113BB22
2H113CA37
2H113CA39
2H113CA44
(57)【要約】
【課題】
位相変調模様と可視模様構成要素を有し、判別具を用いない状態では可視模様が視認でき、判別具を用いることで潜像が視認できる、潜像発現模様を提供する。
【解決手段】
本発明は、第1の方向に一定のピッチとなるように有色の画線が複数配置された万線模様において、前記有色の画線の一部の位相を第1の方向に移動することで潜像部と背景部を構成した位相変調模様と、可視模様を構成する可視模様構成要素を有し、前記可視模様構成要素は、前記位相変調模様における有色の画線が設けられていない領域に設けられ、前記位相変調模様における潜像部を構成する潜像構成画線の位相は、前記可視模様構成要素の位相と重ならない領域を有する潜像発現模様である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に一定のピッチとなるように有色の画線が複数配置された万線模様において、
前記有色の画線の一部の位相を第1の方向に移動することで潜像部と背景部を構成した位相変調模様と、
可視模様を構成する有色の可視模様構成要素を有し、
前記可視模様構成要素は、前記位相変調模様における前記有色の画線が設けられていない領域に設けられ、
前記位相変調模様における前記潜像部を構成する潜像構成画線は、前記可視模様構成要素と重ならない領域を有する、潜像発現模様。
【請求項2】
前記潜像構成画線は、前記背景部を構成する背景構成画線と異なる位相に配置されており、
前記潜像構成画線は、前記背景構成画線の位相の少なくとも一部と同じ位相に配置された濃度緩和画線が隣接して成り、
前記濃度緩和画線は、前記背景構成画線の画線幅より画線幅が狭く、前記第1の方向に隣り合う画線との中心線間の距離が前記一定のピッチより小さくなるように配置されている第1潜像構成画線、
及び前記背景構成画線の画線幅より画線幅が広く、前記第1の方向に隣り合う画線との中心線間の距離が前記一定のピッチより大きくなるように配置されている第2潜像構成画線、
のうち少なくともいずれか一方、を有する、請求項1に記載の潜像発現模様。
【請求項3】
前記万線模様中の前記潜像構成画線と前記背景構成画線が隣接する領域において、前記潜像構成画線と隣接する前記可視模様構成要素の画線幅と、
前記背景構成画線と隣接する前記可視模様構成要素の画線幅の比は、対応する前記潜像構成画線の画線幅と前記背景構成画線の画線幅の比とほぼ同じである、
請求項1又は2に記載の潜像発現模様。
【請求項4】
以下の要件(a)及び(b)のうち少なくともいずれか一方;
(a)前記位相変調模様における前記潜像構成画線が、1色以上の有彩色の色調である、
(b)前記位相変調模様における前記潜像構成画線が、前記潜像構成画線の中心線を境にして互いに補色の関係にある色調で構成されている、
を満たす、請求項1に記載の潜像発現模様。
【請求項5】
第1の方向に一定のピッチとなるように有色の画線が複数配置された万線模様において、
前記有色の画線の一部の位相を第1の方向に移動することで潜像部と背景部を構成した位相変調模様と、
可視模様を構成する可視模様構成要素を有し、
前記可視模様構成要素は、前記位相変調模様における前記有色の画線が設けられていない領域に設けられ、
前記位相変調模様における前記潜像部を構成する潜像構成画線の位相は、前記可視模様構成要素の位相と重ならない領域を有する、潜像発現模様データの作成方法であって、
以下の工程;
前記位相変調模様における前記潜像部が現す図柄を第1基画像として設定する第1基画像設定工程、
前記第1基画像設定工程の後に必要に応じて設けられる、前記第1基画像をグレースケール処理した後に、前記第1の方向に配置される画線のピッチのn倍(nは、1<n≦10である。)に相当する領域毎に濃度の平均化を行って得られた縦方向平均化画像を第2の基画像として設定する第2基画像設定工程、
前記第1基画像又は前記第2基画像の濃淡を反転して、反転画像を生成する階調反転処理工程、
前記第1基画像又は前記第2基画像に第1の臨界値配列画像を適用して、前記位相変調模様における前記潜像部を構成する第1の潜像構成画線の2値画像を生成する第1の臨界値配列画像変換処理工程、
前記反転画像に前記第1の臨界値配列画像を適用して、前記位相変調模様における前記背景部を構成する第2の背景部構成画線の2値画像を生成する第2の臨界値配列画像変換処理工程、
前記第1の潜像構成画線の2値画像と、前記第2の背景部構成画線の2値画像の合成を含む、第1の位相変調模様データの生成工程、
前記第1基画像又は前記第2基画像に第2の臨界値配列画像を適用して、前記位相変調模様における前記潜像部を構成する第2の潜像構成画線の2値画像を生成する第3の臨界値配列画像変換処理工程、
前記反転画像に前記第2の臨界値配列画像を適用して、前記位相変調模様における前記背景部を構成する第2の背景部構成画線の2値画像を生成する第4の臨界値配列画像変換処理工程、
前記第2の潜像構成画線の2値画像と、前記第2の背景部構成画線の2値画像の合成を含む、第2の位相変調模様データの生成工程、
前記第1の位相変調模様データを反転させ、反転した第1の位相変調模様データを生成する工程、
前記第2の位相変調模様データと、前記反転した第1の位相変調模様データの合成を含む、可視模様用マスクデータの生成工程、
任意の図柄、色調を有する可視模様データと、前記可視模様用マスクデータを合成して、可視模様構成データを生成する工程、
前記第1の位相変調模様データと前記可視模様構成データを合成する工程、を有し、
前記第1の位相変調模様データと前記第2の位相変調模様データは、前記第1の方向に位相が異なるものである、潜像発現模様データの作成方法。
【請求項6】
第1の方向に一定のピッチとなるように有色の画線が複数配置された万線模様において、前記有色の画線の一部の位相を第1の方向に移動することで潜像部と背景部を構成した位相変調模様と、
可視模様を構成する可視模様構成要素を有し、
前記可視模様構成要素は、前記位相変調模様における前記有色の画線が設けられていない領域に設けられ、前記位相変調模様における前記潜像部を構成する潜像構成画線の位相は、前記可視模様構成要素の位相と重ならない領域を有する、
潜像発現模様のための、潜像発現模様データの作成方法であって、
以下の工程;
前記位相変調模様における前記潜像部が現す図柄を基画像として設定する基画像設定工程、
前記基画像の濃淡を反転して、反転画像を生成する階調反転処理工程、
前記基画像に第1の臨界値配列画像を適用して、前記位相変調模様における前記潜像部を構成する第1の潜像構成画線の2値画像を生成する第1の臨界値配列画像変換処理工程、
前記反転画像に前記第1の臨界値配列画像を適用して、前記位相変調模様における前記背景部を構成する第2の背景部構成画線の2値画像を生成する第2の臨界値配列画像変換処理工程、
前記第1の潜像構成画線の2値画像と、前記第2の背景部構成画線の2値画像の合成を含む、第1の位相変調模様データの生成工程、
前記基画像に第2の臨界値配列画像を適用して、前記位相変調模様における前記潜像部を構成する第2の潜像構成画線の2値画像を生成する第3の臨界値配列画像変換処理工程、
前記反転画像に前記第2の臨界値配列画像を適用して、前記位相変調模様における前記背景部を構成する第2の背景部構成画線の2値画像を生成する第4の臨界値配列画像変換処理工程、
前記第2の潜像構成画線の2値画像と、前記第2の背景部構成画線の2値画像の合成を含む、第2の位相変調模様データの生成工程、
前記第1の位相変調模様データを反転させ、反転した第1の位相変調模様データを生成する工程、
前記第2の位相変調模様データと、前記反転した第1の位相変調模様データの合成を含む、可視模様用マスクデータの生成工程、
任意の図柄、色調を有する可視模様データと、前記可視模様用マスクデータを合成して、可視模様構成データを生成する工程、
前記位相変調模様における前記潜像部が現すカラー図柄をカラー基画像として設定する工程、
前記カラー基画像からポジ用潜像画像データを生成する工程、
前記ポジ用潜像画像のカラー反転処理を行い、ネガ用潜像画像データを生成する工程、
前記位相変調模様データと、前記可視模様用マスクデータを合成して、ポジ用カラー潜像用マスクデータを生成する工程、
前記位相変調データと、前記可視模様用マスクデータを反転させて得られる反転した可視模様用マスクデータを合成して、ネガ用カラー潜像用マスクデータを生成する工程、
前記ポジ用潜像画像データと前記ポジ用カラー潜像用マスクデータを合成して、ポジ用位相変調模様データを生成する工程、
前記ネガ用潜像画像データと前記ネガ用カラー潜像用マスクデータを合成して、ネガ用位相変調模様データを生成する工程、
前記可視模様構成データと、前記ポジ用位相変調模様データと、前記ネガ用位相変調模様データを合成する工程、を有し、
前記第1の位相変調模様データと前記第2の位相変調模様データは、前記第1の方向に位相が異なるものである、潜像発現模様データの作成方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の潜像発現模様の作成方法により得られる、潜像発現模様データ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、万線模様の画線の一部の位相を変えて潜像部と背景部を構成した位相変調模様と、可視模様を構成する可視模様構成要素を有する、潜像発現模様に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行券、旅券、有価証券等のセキュリティ印刷物は、その性質上、偽造や複製がされにくいことが要求される。セキュリティ性を高める代表的な施策として、潜像と呼ばれる不可視模様を埋め込む施策が一般的であり、施策の一つとして、位相変調を用いたものがある。位相変調を用いる技術は、例えば、一方が万線模様(均一な線幅の直線又は波線が、所定の周期をもって複数配置された模様)で、他方が一方の万線模様に対して潜像の濃度階調に応じて位相変調されている位相変調万線模様によって構成される。
【0003】
また、万線模様と位相変調万線模様を用いて、表裏合成模様の潜像化を可能とする技術として、光を透過する被印刷体の表裏いずれか一方に万線や網点等によって万線模様を印刷し、他方には万線や網点等により潜像とすべき図柄を施した画線から成る位相変調万線模様を、互いに印刷位置が合うように印刷し、この印刷物を光で透かしてみると表裏の模様が合成され、潜像が連続階調の画像として出現する技術がある。
【0004】
この技術において、被印刷体の一方の面に形成する万線模様は、画線と非画線の関係が1対1の万線であり、被印刷体の他方の面に形成する位相変調万線模様は、画線の周期に対し、任意の位相変調法によって位相差(ここでは、画線の周期の半周期)を設けることによって潜像を形成する構成である。位相変調万線模様の画線と非画線の関係も1対1の万線であって、画線の周期の半周期の位相差を設けると、潜像を形成する画線とその周りの画線は、異なる位相に配置される。
そして、一方の面に万線模様を、他方の面に位相変調万線模様を備えた被印刷体を、透過視できる環境で観察すると、位相変調万線模様に位相差がない領域は、万線模様と同じ位置で重なる一方で、位相変調万線模様に位相差がある領域は、万線模様と重ならないことで濃淡差が生じ、潜像として視認することができる。なお、こうした周期性を伴う2種類の模様を重ね合わせて任意の画像が現れることはモアレ発現現象とも称され、セキュリティ印刷物において様々な偽造防止技術として応用されている。
【0005】
本出願人の出願に係る特許文献1には、位相変調万線模様に対して、透過視の環境で観察すると潜像が階調を伴って視認できる表裏模様合成印刷物が開示されている。特許文献1の技術は、画像情報の濃淡に従って位相差を設けることで、濃淡のある潜像が視認できるもので、位相差が大きいほど透過視で潜像が濃く視認される。特許文献1に記載された発明の原理によれば、例えば、画線の周期に対して1/4周期の位相差を設けた位相変調万線模様と、画線の周期に対して1/2周期の位相差を設けた位相変調万線模様とでは、1/2周期の位相差を設けた位相変調万線模様の方が、位相差が大きいことから、透過視の環境では、濃い濃度の潜像が視認可能となる。
【0006】
本出願人の出願に係る特許文献2には、透過視できる環境で観察した際に、潜像がカラー画像として出現する表裏模様合成印刷物が開示されている。特許文献2の技術は、プロセス色分解又は人為的に色分けすることで得られたシアン、マゼンタ及びイエローの三原色の分解画像を、三原色ごとに位相変調された万線、網点等の各種スクリーン模様として被印刷体の一方に施し、被印刷体の他方に万線模様を施した構成であり、透過視できる環境で観察すると、三原色ごとに位相差がある領域が合成されて、カラーの潜像が視認可能となるものである。
【0007】
特許文献3には、位相変調万線模様を用いて、傾けて観察すると潜像が視認できる技術として、基材上に所定のピッチで凹凸形状を形成し、更に、その凹凸形状の側部である一方の面に第1の模様を形成する印刷万線を付与し、他方の面に第2の模様を形成する印刷万線を付与することにより潜像模様が形成された印刷物が開示されている。特許文献3の技術は、第1の模様と第2の模様が、位相差のある画線の構成であり、作製した印刷物は、凹凸形状の一方の側から基材を傾けると第1の模様が視認され、凹凸形状の反対方向の側から傾けると第2の模様が視認可能となるものである。
【0008】
本出願人の出願に係る特許文献4には、有色の画線が万線状に配置され、その一部の位相が異なることで潜像部と背景部に区分けされた位相変調模様と、万線模様が重なることで潜像模様が視認できる潜像模様発現構造であって、潜像部は、背景部の画線と異なる位相に配置された潜像構成画線及び背景部の画線の少なくとも一部と同じ位相に配置された濃度緩和画線が隣接して成る潜像画線から成る潜像模様発現構造が開示されている。特許文献4に開示されている潜像模様発現構造は、通常時の観察で位相差によって現わされた潜像の図柄の隠蔽性が向上した位相変調模様を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5-139022号公報
【特許文献2】特許第3362171号公報
【特許文献3】特許第4910244号公報
【特許文献4】特開2021-115799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1から3における位相変調万線模様は、透過視で観察した際に、潜像が明瞭に視認できることで、真偽判別を行うことができるとともに、単純に万線のみを真似することで偽造しようとする印刷物の真偽判別を行うことができる。しかし、注意して観察すると、万線模様に備わった位相差が目視において視認されてしまうという問題があった。特に、潜像を形成する部分においては、隣り合う画線の距離が、周辺の画線の周期よりも短く、周りの領域よりも濃い色で視認できる領域と、隣り合う画線の距離が、周辺の画線の周期より長く、空白が目立つ領域が形成されてしまう。このため、透過視で潜像として出現する画像も推測されやすく、偽造防止の観点から満足できるものではなかった。
【0011】
また、特許文献4における位相変調万線模様は、潜像を形成する部分において、隣り合う画線の距離が、周辺の画線の周期よりも短く、周りの領域よりも濃い色で視認できる領域における万線の太さを部分的に細くするとともに、隣り合う画線の距離が、周辺の画線の周期より長く、空白が目立つ領域における万線の太さを部分的に太くして、それぞれの領域を緩和することで、潜像の隠蔽性が向上したものである。
しかし、正面から観察した際は万線模様のみ視認され、他に別の可視模様(画像)が見えるものではないため、特許文献1から3における位相変調万線模様よりは潜像が確認しづらいものの、注意して観察すると、潜像として出現する画像が推測可能であり、偽造防止の観点から満足できるものではなかった。
【0012】
本発明が解決しようとする第1の課題は、位相変調模様と可視模様構成要素を有し、判別具を用いない状態では潜像画像が完全に視認することができず、可視模様のみが視認でき、判別具を用いることではじめて潜像が視認できる、潜像発現模様を提供することである。
また、本発明が解決しようとする第2の課題は、位相変調模様と可視模様構成要素を有し、判別具を用いない状態では可視模様が視認でき、判別具を用いることで潜像が視認できる、潜像発現模様データ及びその作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者等は、上記第1の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構成を有する潜像発現模様によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、発明者等は、上記第2の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の工程を含む潜像発現模様データの作成方法及び当該作成方法により得られる潜像発現模様データによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の潜像発現模様、潜像発現模様の作成方法及び潜像発現模様データを提供するものである。
【0014】
本発明は、第1の方向に一定のピッチとなるように有色の画線が複数配置された万線模様において、前記有色の画線の一部の位相を第1の方向に移動することで潜像部と背景部を構成した位相変調模様と、可視模様を構成する可視模様構成要素を有し、前記可視模様構成要素は、前記位相変調模様における有色の画線が設けられていない領域に設けられ、前記位相変調模様における潜像部を構成する潜像構成画線の位相は、前記可視模様構成要素の位相と重ならない領域を有する潜像発現模様である。
【0015】
また、本発明は、前記潜像構成画線が、前記背景部を構成する背景構成画線と異なる位相に配置されており、潜像構成画線は、前記背景構成画線の位相の少なくとも一部と同じ位相に配置された濃度緩和画線が隣接して成り、濃度緩和画線は、前記背景構成画線の画線幅より画線幅が狭く、前記第1の方向に隣り合う画線との中心線間の距離が前記一定のピッチより小さくなるように配置されている第1潜像構成画線、及び、前記背景構成画線の画線幅より画線幅が広く、前記第1の方向に隣り合う画線との中心線間の距離が前記一定のピッチより大きくなるように配置されている第2潜像構成画線のうち少なくともいずれか一方、を有する潜像発現模様である。
【0016】
また、本発明は、万線模様中の潜像構成画線と背景構成画線が隣接する領域において、潜像構成画線と隣接する可視模様構成要素の線幅と、背景構成画線と隣接する可視模様構成要素の線幅の比は、対応する潜像構成画線の線幅と背景構成画線の線幅の比とほぼ同じである潜像発現模様である。
【0017】
また、本発明は、以下の要件(a)及び(b)のうち少なくともいずれか一方;
(a)位相変調模様における潜像構成画線が、1色以上の有彩色の色調である、
(b)位相変調模様における潜像構成画線が、潜像構成画線の中心線を境にして互いに補色の関係にある色調で構成されている潜像発現模様である。
【0018】
また、本発明は、第1の方向に一定のピッチとなるように有色の画線が複数配置された万線模様において、前記有色の画線の一部の位相を第1の方向に移動することで潜像部と背景部を構成した位相変調模様と、可視模様を構成する可視模様構成要素を有し、前記可視模様構成要素は、前記位相変調模様における有色の画線が設けられていない領域に設けられ、前記位相変調模様における潜像部を構成する潜像構成画線の位相は、前記可視模様構成要素の位相と重ならない領域を有する潜像発現模様データの作成方法であって、
以下の工程;
位相変調模様における潜像部が現す図柄を第1基画像として設定する第1基画像設定工程、
前記第1基画像設定工程の後に必要に応じて設けられる、前記第1基画像をグレースケール処理した後に、前記第1の方向に配置される画線のピッチのn倍(nは、1<n≦10である。)に相当する領域毎に濃度の平均化を行って得られた縦方向平均化画像を第2の基画像として設定する第2基画像設定工程、
前記第1基画像又は第2基画像の濃淡を反転して、反転画像を生成する階調反転処理工程、
前記第1基画像又は第2基画像に第1の臨界値配列画像を適用して、位相変調模様における潜像部を構成する第1の潜像構成画線の2値画像を生成する第1の臨界値配列画像変換処理工程、
前記反転画像に第1の臨界値配列画像を適用して、位相変調模様における背景部を構成する第2の背景部構成画線の2値画像を生成する第2の臨界値配列画像変換処理工程、
前記第1の潜像構成画線の2値画像と、前記第2の背景部構成画線の2値画像の合成を含む、第1の位相変調模様データの生成工程、
前記第1基画像又は第2基画像に第2の臨界値配列画像を適用して、位相変調模様における潜像部を構成する第2の潜像構成画線の2値画像を生成する第3の臨界値配列画像変換処理工程、
前記反転画像に第2の臨界値配列画像を適用して、位相変調模様における背景部を構成する第2の背景部構成画線の2値画像を生成する第4の臨界値配列画像変換処理工程、
前記第2の潜像構成画線の2値画像と、前記第2の背景部構成画線の2値画像の合成を含む、第2の位相変調模様データの生成工程、
前記第1の位相変調模様データを反転させ、反転した第1の位相変調模様データを生成する工程、
前記第2の位相変調模様データと、前記反転した第1の位相変調模様データの合成を含む、可視模様用マスクデータの生成工程、
任意の図柄、色調を有する可視模様データと、前記可視模様用マスクデータを合成して、可視模様構成データを生成する工程、
前記第1の位相変調模様データと前記可視模様構成データを合成する工程、
を有し、
前記第1の位相変調模様データと前記第2の位相変調模様データは、前記第1の方向に位相が異なるものである潜像発現模様データの作成方法である。
【0019】
また、本発明は、第1の方向に一定のピッチとなるように有色の画線が複数配置された万線模様において、前記有色の画線の一部の位相を第1の方向に移動することで潜像部と背景部を構成した位相変調模様と、
可視模様を構成する可視模様構成要素を有し、
前記可視模様構成要素は、前記位相変調模様における有色の画線が設けられていない領域に設けられ、前記位相変調模様における潜像部を構成する潜像構成画線の位相は、前記可視模様構成要素の位相と重ならない領域を有する、
潜像発現模様のための、潜像発現模様データの作成方法であって、
以下の工程;
位相変調模様における潜像部が現す図柄を基画像として設定する基画像設定工程、
前記基画像の濃淡を反転して、反転画像を生成する階調反転処理工程、
前記基画像に第1の臨界値配列画像を適用して、位相変調模様における潜像部を構成する第1の潜像構成画線の2値画像を生成する第1の臨界値配列画像変換処理工程、
前記反転画像に第1の臨界値配列画像を適用して、位相変調模様における背景部を構成する第2の背景部構成画線の2値画像を生成する第2の臨界値配列画像変換処理工程、
前記第1の潜像構成画線の2値画像と、前記第2の背景部構成画線の2値画像の合成を含む、第1の位相変調模様データの生成工程、
前記第1基画像又は第2基画像に第2の臨界値配列画像を適用して、位相変調模様における潜像部を構成する第2の潜像構成画線の2値画像を生成する第3の臨界値配列画像変換処理工程、
前記反転画像に第2の臨界値配列画像を適用して、位相変調模様における背景部を構成する第2の背景部構成画線の2値画像を生成する第4の臨界値配列画像変換処理工程、
前記第2の潜像構成画線の2値画像と、前記第2の背景部構成画線の2値画像の合成を含む、第2の位相変調模様データの生成工程、
前記第1の位相変調模様データを反転させ、反転した第1の位相変調模様データを生成する工程、
前記第2の位相変調模様データと、前記反転した第1の位相変調模様データの合成を含む、可視模様用マスクデータの生成工程、
任意の図柄、色調を有する可視模様データと、前記可視模様用マスクデータを合成して、可視模様構成データを生成する工程、
位相変調模様における潜像部が現すカラー図柄をカラー基画像として設定する工程、
前記カラー基画像からポジ用潜像画像データを生成する工程、
前記ポジ用潜像画像のカラー反転処理を行い、ネガ用潜像画像データを生成する工程、
前記位相変調模様データと、前記可視模様用マスクデータを合成して、ポジ用カラー潜像用マスクデータを生成する工程、
前記位相変調データと、前記前記可視模様用マスクデータを反転させて得られる反転した可視模様用マスクデータを合成して、ネガ用カラー潜像用マスクデータを生成する工程、
前記ポジ用潜像画像データと前記ポジ用カラー潜像用マスクデータを合成して、ポジ用位相変調模様データを生成する工程、
前記ネガ用潜像画像データと前記ネガ用カラー潜像用マスクデータを合成して、ネガ用位相変調模様データを生成する工程、
前記可視模様構成データと、前記ポジ用位相変調模様データと、前記ネガ用位相変調模様データを合成する工程、
を有し、
前記第1の位相変調模様データと前記第2の位相変調模様データは、前記第1の方向に位相が異なるものである潜像発現模様データの作成方法である。
【0020】
また、本発明は、段落0018及び段落0019に記載の潜像発現模様の作成方法により得られる潜像発現模様データである。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、位相変調模様と可視模様構成要素を有し、判別具を用いない状態では潜像模様を完全に視認することができずに可視模様のみが視認でき、判別具を用いることではじめて潜像が視認できる、潜像発現模様が提供される。
また、本発明により、位相変調模様と可視模様構成要素を有し、判別具を用いない状態では可視模様が視認でき、判別具を用いることで潜像が視認できる、潜像発現模様データ及びその作成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る潜像発現模様及びその展開図
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る潜像発現模様の可視模様構成要素の配置例を示す図
【
図5】本発明の潜像模様及び可視模様構成要素の詳細を示す図
【
図8】本発明の位相変調模様と可視模様構成要素の詳細を示す図
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る潜像部の構成を示す図
【
図11】本発明の第1の潜像画線のより詳細な構成を示す図
【
図13】本発明の潜像発現模様データの作成装置(M)の構成を示すブロック図
【
図14】本発明の第2の実施の形態の可視模様(30)の構成を説明するための図
【
図15】本発明の第1の潜像画線(21A
1)の拡大図
【
図16】本発明の潜像発現模様(10)を構成する位相変調模様(20)と可視模様(30)の一部の領域を示す図
【
図18】本発明の潜像発現模様(10)を構成する位相変調模様(20)と可視模様(30)において
図16に示す領域とは別の一部の領域を示す図
【
図19】一般的にレンチキュラー(T2)と呼ばれている判定具の構成を示す図
【
図20】本発明のベース基材(50)の上に画線(51)が複数配置されて一体型となっている構成を示す図
【
図21】本発明の凸状万線模様(60)の構成を示す図
【
図22】本発明の基材(2)に形成された凸状万線模様(60)と潜像発現模様(10)の配置の一例を示す平面図
【
図23】本発明の基材(2)の一方の面に潜像発現模(10)が形成され、他方の面に万線模様(70)が形成された潜像模様形成体を示す図
【
図24】本発明における万線模様(70)の変形例を示す図
【
図26】本発明における隠蔽層(80)を備えた潜像模様形成体(1)を示す図
【
図27】特願2018-220872号公報に記載の位相変調万線模様(120)の構成を示す図
【
図28】本発明の位相変調模様データの生成工程(S1)を示すフロー図
【
図29】
図28に示す位相変調模様データの生成工程(S1)の詳細を示すフロー図
【
図30】本発明におけるデータベースにあらかじめ登録されたモノクロの2値画像(100)を用いた例を示す図
【
図32】本発明における階調反転処理工程(f3)によって生成された画像を示す図
【
図33】
図30(b)に示す基画像(101)の破線で囲む領域の拡大図
【
図34】
図32(a)に示す反転画像(102)の破線で囲む領域(17a)の拡大図
【
図35】
図31に示す平均化画像(102)の破線で囲む領域(16a)の拡大図
【
図36】
図32(b)に示す反転画像(102’)の破線で囲む領域(17a)の拡大図
【
図37】本発明における位相変調模様の画像を示す図
【
図38】本発明における可視画像マスクの生成工程(S2)の詳細を示すフロー図
【
図39】本発明における位相変調模様データ(19)を示す図
【
図40】本発明における位相変調模様データ(19)を示す図
【
図41】本発明における位相変調模様のデータ(19)をネガポジ反転して得られたデータを示す図
【
図42】本発明の第2の位相変調模様データ(19A)の領域を示す図
【
図43】本発明における可視画像マスクの画像データを示す図
【
図44】本発明における可視画像データの生成工程(S3)の詳細を示すフロー図
【
図45】本発明における可視画像用基画像として「三角形」の図柄を示す図
【
図46】本発明における可視画像用基画像と可視画像用マスクの画像データ(19D、19d)を重ねた画像を示す図
【
図47】本発明における位相変調模様データを示す図
【
図48】
図27(b)に示す構成の位相変調模様の画像のデータを作成する方法のフロー図
【
図50】本発明における第3の位相変調模様データ及び第4の位相変調模様データの関係を示す図
【
図51】本発明における平均化画像(102)全体に第Mの臨界値配列画像を適用して2値画像に変換された第Mの2値画像(18M)を示した図
【
図52】本発明におけるカラー潜像基画像(「円形」)(130)と、カラー潜像基画像(130)の色が反転したカラー潜像反転基画像(131)を示す図
【
図53】本発明におけるカラー潜像基画像とカラー潜像用マスクにおいて、互いの画像が重複する領域を抽出する比較合成の処理によってカラー潜像画像データ(140)を生成することを示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための実施態様について、図面を参照して詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施態様に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内であれば、各種の変形した実施態様が含まれる。
【0024】
本発明の潜像発現模様は、有色の画線が、第1の方向に一定のピッチとなるように複数配置された万線模様において、有色の画線の一部の位相を第1の方向に移動することで潜像部と背景部を構成した位相変調模様と、通常の目視で観察した際に視認できる可視模様を有し、可視模様構成要素は、位相変調模様における有色の画線が設けられていない領域に設けられ、位相変調模様における潜像部を構成する画線の位相は、可視模様構成要素の位相と重ならない領域を有するものである。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施の態様に係る潜像発現模様(10)及びその展開図を示す図である。
図1に示す潜像発現模様(10)は、位相変調模様(20)と、可視模様(30)から構成されている。位相変調模様(20)と可視模様(30)の詳細な構成については、後述するが、
図1(b)に示す位相変調模様(20)は、万線の位相差を設けることで、「円形」の図柄を現した例であり、
図1(c)に示す可視模様(30)は、「三角形」の図柄を現した例である。
以下、本発明の潜像発現模様(10)を構成する位相変調模様(20)及び可視模様(30)の詳細な構成について説明する。
【0026】
図2は、位相変調模様(20)の構成を示す図である。位相変調模様(20)は、有色の画線(21)が第1の方向(
図2においては、上下方向(V1))に一定のピッチ(P)で配置された万線において、一部の位相が異なることで、潜像の図柄を現す潜像部(
図2では、符号(20A)で示される「円形」の図柄)とその背景を現す背景部(20B)に区分けされる。
【0027】
本発明において、「画線の位相が異なる」とは、潜像部(20A)を構成する画線と背景部(20B)を構成する画線が、互いに画線の方向と直行する方向に移動する(ずれる)ことで万線の位相差が設けられることである。
図2で示される位相変調模様(20)では、潜像部(20A)を構成する画線が、第1の方向(上下方向)のうちの上方向(V1))に移動することで位相差を設けた例を示しているが、これと逆方向の第1の方向(上下方向)のうちの下方向に移動することで位相差を設けてもよい。本実施の形態では、潜像部(20A)を構成する画線が第1の方向(V1)にずれて配置された例について説明する。また、位相変調模様(20)を構成する画線(21)において、潜像部(20A)を構成する画線(21)と背景部(20B)を構成する画線(21)を個別に説明する場合は、潜像部(20A)を構成する画線を、「潜像画線(21A)」とし、背景部(20B)を構成する画線を、「背景画線(21B)」として説明する。
【0028】
潜像部(20A)を構成する画線と背景部(20B)を構成する画線が、互いに画線の方向と直行する方向に移動する移動量(ずれ幅)は、潜像の隠蔽性や視認性等の観点から、万線における一定ピッチ(P)を100%としたとき、例えば1%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、例えば99%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。
【0029】
図3は、可視模様(30)の構成を示す図である。可視模様(30)は、位相変調模様(20)を構成する有色の画線(21)が設けられていない領域に、有色の可視模様構成要素(31)が複数配置されて成り、
図3は、可視模様として、「三角形」が構成された例である。
図3では、位相変調模様(20)を構成する有色の画線(21)のピッチ(P)と同じピッチ(P)で、可視模様構成要素(31)が複数配置された例を示しているが、可視模様構成要素(31)は、位相変調模様(20)を構成する有色の画線(21)と重ならない領域に設ければよく、可視模様構成要素(31)のピッチは、特に限定されるものではない。
なお、可視模様構成要素は、必ずしも画線の形態でなくてもよい(例えば網点)が、潜像の隠蔽性や視認性等の観点から、画線形態が好ましい。
【0030】
図4は、
図1に示される潜像発現模様(10)において、潜像部、背景部を構成する画線(21)及び可視模様構成要素(31)の配置を示すものである。
図4に示すように、可視模様構成要素(31)は、位相変調模様(20)において、有色の画線(21)が設けられていない領域、すなわち、潜像部(20A)を構成する有色の画線(21A)が設けられていない領域であり、かつ、背景部(20B)を構成する有色の画線(21B)が設けられていない領域に設けられる。このような領域に可視模様構成要素(31)を選択的に設ける(配置する)ことにより、潜像発現模様(10)における濃淡差又は色味の差に起因して、目視による可視模様(30)が現す図柄の視認が可能となる。
【0031】
可視模様構成要素(31)の色は、位相変調模様(20)を構成する有色の画線(21)と同じ色であってもよいし、異なる色であってもよく、可視模様構成要素(31)の色調を調整することで、可視模様構成要素(31)から視認される色を調整することが可能であり、また、可視模様構成要素の大きさ(面積)を調整することで、可視模様構成要素から視認される濃度を調整することが可能である。
【0032】
図5は、本発明の位相変調模様(20)において、潜像部(20A)を構成する潜像画線(21A)の位相が、可視模様構成要素(31)の位相と重ならない領域を有する構成について説明する図である。本発明において、潜像画線(21A)の位相とは、位相変調模様(21)における潜像画線(21A)が配置された領域とその延長線上にある領域のことである。また、本発明において、可視模様構成要素(31)の位相とは、可視模様(30)における可視模様構成要素(31)が配置された領域とその延長線上にある領域のことである。
【0033】
図5(a)において、潜像画線(21A)の画線幅(W
21A)に対応した領域が、潜像画線(21A)の位相であり、可視模様構成要素(31)の第1の方向における幅(W
31)に対応した領域が、可視模様構成要素(31)の位相である。
図5(a)に示す構成のとき、潜像画線(21A)の一部の位相に、可視模様構成要素(31)の位相の全部が重なっており、残りの潜像画線(21A)は、可視模様構成要素(31)と重ならない領域(S)を有する構成となっている。また、
図5(b)においては、
図5(a)に示す構成に対して、可視模様構成要素(31)の位相が異なるが、可視模様構成要素(31)と重ならない二つの領域(S)を有する構成となっている。
【0034】
図5(c)は、本発明の構成の比較のため、潜像画線(21A)の位相と可視模様構成要素(31)の位相が同じであり、潜像画線(21A)の位相が、可視模様構成要素(31)の位相と重ならない領域を有しない例を示す図であり、この場合、通常の目視で観察した際に、「円形」の図柄を視認することはできるが、潜像発現模様(10)に、後述する判定具を重ねた際に視認できる図柄が変化する効果を得ることができない。
【0035】
本発明において、潜像発現模様(10)における潜像の図柄は、
図1示す「円形」の図柄に限定されるものではなく、任意の図柄(数字、文字、記号、画等)とすることができる。また、潜像発現模様(10)における可視模様(30)の図柄についても、
図1に示す「三角形」に限定されるものではなく、任意の図柄(数字、文字、記号、画等)とすることができる。
【0036】
図6(a)は、潜像発現模様(10)を紙等の基材(2)に印刷した際における、視認状態を示す図である。
図6(a)に示すように、潜像発現模様(10)を目視で視認した際には、
図6(a)に示す可視模様(30)が現す「三角形」の図柄が視認され、潜像である「円形」の図柄は目視において視認することは困難である。仮に、可視模様構成要素(31)の色と、位相変調模様(20)を構成する有色の画線(21)を同じ色とした場合、面積率差による濃淡差が生じ、「三角形」の図柄が濃い色で視認される。また、可視模様構成要素(31)の色と、位相変調模様(20)を構成する有色の画線(21)を異なる色とした場合、位相変調模様(21)の色を背景とした「三角形」の図柄が異なる色で視認される。なお、本発明において、「面積率」とは、潜像発現模様が形成された一定の領域(ここでは、基材(2))における有色の画線(21)と可視模様構成要素(31)が形成された面積の割合のことである。
【0037】
一方、
図1の潜像発現模様(10)は、位相変調模様(20)における所定のピッチ(P)と同じピッチである判定具を重ねることで、潜像部(20A)の画線がサンプリングされ、
図6(b)に示す「円形」の図柄を視認することが可能となる。判定具としては、特に限定されないが、例えば、万線フィルタ、レンチキュラー等が挙げられる。
【0038】
ここで、潜像発現模様(10)において、潜像の図柄を視認する際に用いる判定具として万線フィルタの例について説明する。
【0039】
図7は、潜像の図柄を視認する際に用いる判定具の一例として、万線フィルタ(T1)の構成を示す図である。万線フィルタ(T1)は、光透過性の基材(40)に、例えば、有色のインキを印刷して万線模様(41)が形成される。なお、万線模様(41)の色は、潜像発現模様(10)と同じ色でもよいし、異なる色でもよい。万線模様(41)は、
図7の拡大図に示すように、所定の画線幅(W
41)の画線(41A)が、位相変調模様(20)を構成する有色画線(21)と同じピッチ(P1)で複数配置されてなる。万線模様(41)を形成する基材(40)が備える光透過性とは、位相変調模様(20)が形成された基材(2)に重ねて観察した際に、位相変調模様(20)が透けて見えることであり、位相変調模様(20)が透けて見えれば着色されていてもよいが、万線模様(41)を形成する基材(40)は、好ましくは、透明なフィルムやポリマー基材がよい。
【0040】
万線模様の画線幅(W41)について、具体的に説明する。
本発明において、位相変調模様(20)の潜像が視認されるためには、万線模様(41)が、背景画線(21B)と可視模様構成要素(31)を隠蔽する必要がある。
【0041】
図8は、
図5(a)に示す位相変調模様(20)の背景画線(21B)と可視模様構成要素(31)を隠蔽する万線模様(41)の構成を示す図である。なお、
図8において、万線模様(41)のうちの一つの画線(41A)は、背景画線(21B)と可視模様構成要素(31)との配置関係を分かり易く説明するため、画線(41A)の領域を太線で示している。
図8において、背景画線(21B)の画線幅を符号(W
21B)としているが、本実施の形態において、背景画線(21B)の画線幅(W
21B)は、潜像画線(21A)の画線幅(W
21A)と同じである。
【0042】
万線模様(40)が
図8に示す構成のとき、万線模様(41)によって、背景画線(21B)と可視模様構成要素(31)が隠蔽される中で、可視模様構成要素(31)の位相と重ならない領域(S)の位相にある潜像画線(21A)が視認でき、潜像部(20A)の図柄を視認することができる。したがって、
図8に示す潜像発現模様(10)において、万線模様(41)を構成する画線(41A)の画線幅(W
41)は、背景画線(21B)の画線幅(W
21B)と可視模様構成要素(31)の第1の方向における幅(W
31)の和と同じであればよい。なお、万線模様(41)を構成する画線(41A)の画線幅(W
41)が、これよりも大きくてもよいが、潜像の視認性が低下するため、好ましくない。
【0043】
ここでは、
図8に示す構成の背景画線(21B)と可視模様構成要素(31)を隠蔽する万線模様(41)について説明したが、位相変調模様(20)における有色の画線(21)の位相差、可視模様構成要素(31)の第1の方向における幅(W
31)及び可視模様構成要素(31)の配置によって、潜像を視認するための万線模様(41)の構成は異なるので、潜像発現模様(10)における背景画線(21B)と可視模様構成要素(31)に応じた万線フィルタを用いればよい。
【0044】
本発明において、位相変調模様における潜像部を構成する潜像構成画線の位相が、前記可視模様構成要素の位相と重ならない領域の割合は、特に限定されず、潜像構成画線の位相(第1の方向の幅)を100%として、例えば100%未満、好ましくは90%未満、より好ましく80%未満であり、例えば1%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは20%とすることができる。
位相変調模様における潜像部を構成する潜像構成画線の位相が、前記可視模様構成要素の位相と重ならない領域を有することで、可視模様構成要素が構成する可視模様を目視で明確に視認することが可能となり、潜像の隠蔽性をより高めることが可能となる。
【0045】
本発明の潜像発現模様(10)は、有色の画線(21)が、第1の方向(V1)に一定のピッチ(P)となるように複数配置された万線模様において、有色の画線の一部の位相を第1の方向に移動することで潜像部と背景部を構成した位相変調模様(20)における有色の画線が設けられていない領域に、可視模様(30)を構成する可視模様構成要素(31)を設けるとともに、位相変調模様(20)における潜像部(20A)を構成する潜像画線(21A)の位相が、可視模様構成要素(31)の位相と重ならない領域を有するように構成されている。
このような構成とすることで、目視により本発明の潜像発現模様(10)を観察した際には、主として可視模様(30)が視認され、判別具を用いて本発明の潜像発現模様(10)を観察した際には、潜像を明確に視認することが可能となる。また、目視により潜像発現模様を観察した際は、可視模様(30)が主体的に視認されることから、潜像の隠蔽性を高めることが可能である。
【0046】
第2の実施の形態は、位相変調模様(20)において潜像部(20A)における隣同士の画線の間隔が所定のピッチ(周期)より短い場合と、潜像部(20A)における隣同士の画線の間隔が所定のピッチ(周期)より長い場合に、潜像の図柄が推測されてしまう課題を解決した潜像発現模様(10)である。
図9は、第1の実施の形態で説明した位相変調模様(20)の潜像部(20A)において、潜像の図柄が推測されてしまうという課題を示す図であり、
図9において、破線で囲った領域(E1)は、隣り合う画線の距離が、周辺の画線の周期よりも短く周りの領域よりも濃い色として目立ち、点線で囲った領域(E2)は、隣り合う画線の距離が、周辺の画線の周期よりも長く、空白が目立ってしまう。以下、この課題を解決する第2の実施の形態の位相変調模様(20)の詳細な構成について説明する。
【0047】
図10は、
図9に示す第1の実施の形態の位相変調模様(20)において隣同士の画線の間隔が所定のピッチ(周期)より短い場合に、潜像の図柄が推測されてしまう課題を解決した潜像部(20A)の構成を示す図である。
図10に示すように、潜像部(20A)は、背景部(20B)と隣接する境界部分に、一例として、一つの第1の潜像画線(21A
1)を備え、第1の潜像画線(21A
1)は、
図10の拡大図に示すように、背景画線(21B)と異なる位相に配置された潜像構成画線(21a
1)と、背景画線(21B)の少なくとも一部と同じ位相に配置された濃度緩和画線(21b
1)が隣接して成る。ここで、潜像構成画線(21a
1)が、背景画線(21B)と異なる位相に配置されるとは、
図10の拡大図に示すように、背景画線(21B)の延長線上に、潜像構成画線(21a)が重ならず、隣の背景画線(21B)との間の位相に配置されることである。また、濃度緩和画線(21b
1)が背景画線(21B)と同じ位相に配置されるとは、
図10の拡大図に示すように、背景画線(21B)の延長線上の少なくとも一部に濃度緩和画線(21b
1)が重なって配置されることであり、
図10の拡大図は、背景画線(21B)の一部と同じ位相に、濃度緩和画線(21b
1)が配置された例を示している。
【0048】
図11は、第1の潜像画線(21A
1)のより詳細な構成を示す図である。背景部(20B)には、第1の実施の形態の位相変調模様(20)と同様に、一定の画線幅(W
B)の背景画線(21B)が、一定のピッチ(P1)で複数配置される。また、潜像部(20A)において、上から2番目以降の画線もまた、第1の実施の形態の位相変調模様(20)と同様に、背景画線(21B)から1/2ピッチ異なる位相に潜像画線(21A)が配置され、潜像画線(21A)は、背景画線(21B)の画線幅(W
B)と同じ画線幅(W
A)で構成され、かつ、背景画線(21B)と同じピッチ(P1)で配置される。
【0049】
一方、第1の潜像画線(21A
1)の画線幅(W
A1)は、背景画線の画線幅(W
B)及び潜像画線(21A)の画線幅(W
A)より小さく、潜像構成画線(21a
1)の画線幅(Wa
1)及び濃度緩和画線(21b
1)の画線幅(Wb
1)もまた、背景画線の画線幅(W
B)よりも小さい。また、第1の方向(V1)に隣り合う第1の潜像画線(21A
1)と背景画線(21B)の中心線間の距離(L
A1-B)及び第1の潜像画線(21A
1)と潜像画線(21A)の中心線間の距離(L
A1-A0)が、潜像画線(21A)及び背景画線(21B)が配置されるピッチ(P1)より小さい。
図11に示す構成によれば、第1の実施の形態の位相変調万線模様(20)よりも、潜像部(20A)と背景部(20B)の間の非画線部が大きくなり、第1の実施の形態の位相変調万線模様(20)において、隣り合う画線の距離が所定のピッチよりも短く濃い色で視認されるという問題を解決することができる。
【0050】
図11では、第1の潜像画線(21A
1)の画線幅(W
A1)、第1の潜像画線(21A
1)と隣り合う背景画線(21B)の間の非画線部の距離(M
A1-B)及び第1の潜像画線(21A
1)と隣り合う潜像画線(21A)の間の非画線部の距離(M
A1-A)が異なる例を示しているが、これらを同じ構成とすると、潜像部(20A)と背景部(20B)の境界部分において、単位面積当たりの画線面積率が一定で濃淡差がなくなり潜像の図柄の隠蔽性が高まることから好ましい。また、第1の潜像画線(21A
1)と隣り合う背景画線(21B)の間の非画線部の距離(M
A1-B)と、第1の潜像画線(21A
1)と隣り合う潜像画線(21A)の間の非画線部の距離(M
A1-A)を同じにすることも潜像の図柄の隠蔽性が高まるために好ましい形態であるが、前者の方が効果が高い。
【0051】
ここでは、
図10及び
図11に示すように、背景部(20B)と隣接する境界部分に、一例として、一つの第1の潜像画線(21A
1)を備えた位相変調模様(20)について説明したが、前述した構成の第1の潜像画線(21A
1)を複数設けてもよい。仮に、二つの第1の潜像画線(21A
1)を設け、二つの第1の潜像画線(21A
1)の画線幅(W
A1)を同じ構成とする場合、第1の潜像画線(21A
1)と、それと隣り合う画線との間の非画線部の距離を同じにすることで、潜像の図柄の隠蔽性を高めることができる。また、仮に、二つの第1の潜像画線(21A
1)を設ける場合、背景部(20B)との境界から、潜像画線(21A)に向かって、徐々に第1の潜像画線(21A
1)の画線幅(W
A1)を大きくしたり、それに応じて隣り合う画線との間の非画線部の距離を大きくすると、画線と非画線部の変化が緩やかであり、潜像の図柄の隠蔽効果が高い構成であり好ましい。なお、第1の潜像画線(21A
1)を複数設ける構成については、本出願人に係る特許出願(特願2020-11655号(特開2021-115799号公報))に記載された技術を用いることができる。
【0052】
続いて、第1の実施の形態の位相変調万線模様(20)において隣同士の画線の間隔が所定のピッチ(周期)より長い場合に、潜像の図柄が推測されてしまう課題を解決した潜像部(20A)の構成について、
図12を用いて説明する。
【0053】
図12は、第1の実施の形態の位相変調万線模様(20)において、隣同士の画線の間隔が所定のピッチより長い場合に、潜像の図柄が推測されてしまう課題を解決した潜像部(20A)の構成を示す図である。
図12の拡大図に示すように、潜像部(20A)は、背景部(20B)と隣接する境界部分に、一例として、一つの第2の潜像画線(21A
2)を備え、第2の潜像画線(21A
2)は、
図12の拡大図に示すように、背景画線(21B)と異なる位相に配置された潜像構成画線(21a
2)と、背景画線(21B)の少なくとも一部と同じ位相に配置された濃度緩和画線(21b
2)が隣接して成る。
【0054】
図13は、第2の潜像画線(21A
2)のより詳細な構成を示す図である。背景部(20B)には、第1の実施の形態の位相変調模様(20)と同様に、一定の画線幅(W
B)の背景画線(21B)が、一定のピッチ(P1)で複数配置され、潜像部(20A)において、下から2番目より上の画線もまた、第1の実施の形態の位相変調模様(20)と同様に、背景画線(21B)から1/2ピッチ異なる位相に配置された潜像画線(21A)であり、潜像画線(21A)は、背景画線(21B)の画線幅(W
B)と同じ画線幅(W
A)で構成され、かつ、背景画線(21B)と同じピッチ(P1)で配置される。
【0055】
一方、第2の潜像画線(21A
2)の画線幅(W
A2)は、背景画線の画線幅(W
B)及び潜像画線(21A)の画線幅(W
A)より大きい。
図13に示す第2の潜像画線(21A
2)において、濃度緩和画線(21b
2)の画線幅(Wb
2)は、背景画線(21B)の画線幅(W
B)と同じ構成とした例を示しているが、第2の潜像画線(21A
2)の画線幅(W
A2)が、背景画線の画線幅(W
B)及び潜像画線(21A)の画線幅(W
A)より大きければ、濃度緩和画線(21b
2)の画線幅(Wb
2)が、背景画線(21B)の画線幅(W
B)より小さくてもよい。また、第1の方向(V1)に隣り合う第2の潜像画線(21A
2)と背景画線(21B)の中心線間の距離(L
A2-B)及び第2の潜像画線(21A
2)と潜像画線(21A)の中心線間の距離(L
A-A2)が、潜像画線(21A)及び背景画線(21B)が配置されるピッチ(P1)より大きい。
図13に示す構成によれば、第1の実施の形態の位相変調模様(20)よりも、潜像部(20A)と背景部(20B)の間の非画線部が小さいことで、潜像の図柄の一部が空白となり目立って視認されるという問題を解決することができる。
【0056】
図13では、第2の潜像画線(21A
2)の画線幅(W
A2)、第2の潜像画線(21A
2)と隣り合う背景画線(21B)の間の非画線部の距離(M
A2-B)及び第2の潜像画線(21A
2)と隣り合う潜像画線(21A)の間の非画線部の距離(M
A-A2)が異なる例を示しているが、これらを同じ構成とすると、潜像部(20A)と背景部(20B)の境界部分において、単位面積当たりの画線面積率が一定で濃淡差がなくなり潜像の図柄の隠蔽性が高まることから好ましい。また、第2の潜像画線(21A
2)と隣り合う背景画線(21B)の間の非画線部の距離(M
A2-B)と、第2の潜像画線(21A
2)と隣り合う潜像画線(21A)の間の非画線部の距離(M
A-A2)を同じにすることも潜像の図柄の隠蔽性が高まるために好ましい形態であるが、前者の方が効果が高い。
【0057】
ここでは、
図12及び
図13に示すように、背景部(20B)と隣接する境界部分に、一例として、一つの第2の潜像画線(21A
2)を備えた位相変調模様(20)について説明したが、前述した構成の第2の潜像画線(21A
2)を複数設けてもよい。仮に、二つの第2の潜像画線(21A
2)を設け、二つの第2の潜像画線(21A
2)の画線幅(W
A2)を同じ構成とする場合、第2の潜像画線(21A
2)と、それと隣り合う画線との間の非画線部の距離を同じにすることで、潜像の図柄の隠蔽性を高めることができる。また、仮に、二つの第2の潜像画線(21A
2)を設ける場合、背景部(20B)との境界から、潜像画線(21A)に向かって、徐々に第2の潜像画線(21A
2)の画線幅(W
A2)を小さくしたり、それに応じて隣り合う画線との間の非画線部の距離を小さくすると、画線と非画線部の変化が緩やかであり、潜像の図柄の隠蔽効果が高い構成であり好ましい。なお、第2の潜像画線(21A
2)を複数設ける構成についても、本出願人に係る特許出願(特願2020-11655号(特開2021-115799号公報))に記載された技術を用いることができる。
【0058】
第2の実施の形態の位相変調模様(20)においても、潜像の図柄は、任意の図柄(数字、文字、記号、画等)とすることができるが、潜像の図柄(輪郭)に応じて、隣り合う画線の間隔が狭くなる領域(位置)と、広くなる領域(位置)が異なるので、潜像の図柄に応じて、適宜、第1の潜像画線(21A1)と第2の潜像画線(21A2)を設ければよい。また、第2の実施の形態の位相変調模様(20)において、潜像画線(21A)が、第1の方向(V1)と逆の方向に位相が異なる構成の場合には、位相変調模様(20)において、濃く視認される領域と空白となる領域が入れ替わるため、背景画線(21B)の画線幅(WB)より小さい画線幅の第1の潜像画線(21A1)と、背景画線(21B)の画線幅(WB)より大きい画線幅の第2の潜像画線(21A2)を設ける位置を入れ替えて配置すればよい。
【0059】
図14は、第2の実施の形態の可視模様(30)の構成を説明するための図であり、位相変調模様(20)との関係を説明するため、二つの模様(20、30)を図示している。第2の実施の形態においても可視模様(30)は、位相変調模様(20)を構成する有色の画線(21)が設けられていない領域に、有色の可視模様構成要素(31)が複数配置されて成る。また、第2の実施の形態において位相変調模様(20)は、潜像部(20A)を構成する潜像画線(21A)、第1の潜像画線(21A
1)及び第2の潜像画線(21A
2)が、可視模様構成要素(31)の位相と重ならない領域を有する。
【0060】
第2の潜像画線(21A
2)が、可視模様構成要素(31)の位相と重ならない領域を有する構成として、
図14の拡大図に示すように、第2の潜像画線(21A
2)を構成する潜像構成画線(21a
2)の位相と可視模様構成要素(31)の位相が重ならない構成を示している。
図14の拡大図に示す領域を、前述した判定具を用いて観察すると、潜像の図柄の一部を構成する潜像画線(21A)と潜像構成画線(21a
2)を視認することができる。なお、「円形」の図形を現す潜像部(20A)に配置された可視模様構成要素(31)は、背景画線(21B)の位相と重なっているため、潜像に影響することはない。
【0061】
図15は、第1の潜像画線(21A
1)が、可視模様構成要素(31)の位相と重ならない領域を有する構成として、
図15の拡大図に示すように、第1の潜像画線(21A
1)を構成する潜像構成画線(21a
1)の位相と可視模様構成要素(31)の位相が重ならない構成を示している。
図15の拡大図に示す領域を、前述した判定具を用いて観察すると、潜像の図柄の一部を構成する潜像画線(21A)と潜像構成画線(21a
1)を視認することができる。なお、「円形」の図形を現す潜像部(20A)に配置された可視模様構成要素(31)は、背景画線(21B)の位相と重なっているため、潜像に影響することはない。
図15の拡大図に示す領域では、背景部(20B)に可視模様構成要素(31)が配置されていないが、仮に、潜像部(20A)の図柄の背景となる領域(20B)に、可視模様構成要素(31)が配置される場合においても、潜像構成画線(21a
1)が可視模様構成要素(31)の位相と重ならない領域を有する構成とすればよい。
【0062】
第2の実施の形態において、潜像の図柄(ここでは、「円形」の図柄)の隠蔽効果が高い構成について、
図16を用いて説明する。
図16は、潜像発現模様(10)を構成する位相変調模様(20)と可視模様(30)の一部の領域を示す図であり、位相変調模様(20)は、第2の潜像画線(21A
2)を備えた領域を示している。ここで、
図16に示す第2の潜像要素(21A
2)と潜像要素(21A)の間の距離(Y)、その間に設けられる可視模様構成要素(31)の幅(y)、背景要素(21B)同士の間の距離(X)、その間に設けられる可視模様構成要素(31)の幅(x)の関係を数式1とすることで、潜像の図柄の隠蔽性が高くなることから好ましい。
第2の実施の形態の位相変調模様(20)は、潜像の図柄の濃淡が目立つ領域を隠蔽するために、第1の潜像画線(21A
1)と第2の潜像画線(21A
2)を設けて、濃度を緩和する作用がある中で、
図16に示す領域では、空白が目立つことを解消するために、第2の潜像画線(21A
2)を設けている。
その際に、背景部(20B)に設ける可視模様構成要素(31)と、潜像部に設ける可視模様構成要素(31)を数式2の構成とすることで、空白が目立つ領域の濃度を緩和した位相変調模様(20)の濃度バランスが保たれることで、潜像の図柄を隠蔽する効果が得られる。
【0063】
【0064】
【0065】
図17(a)は、
図16に示す構成の比較例を示す図であり、
図16に示す潜像部(20A)に設ける可視模様構成要素(31)の幅(y)を短くした例である。この場合、第2の潜像画線(21A
2)と潜像画線(21A)の間の空白が目立つことで、潜像の図柄の隠蔽性が低下してしまう。
【0066】
図17(b)は、
図16に示す構成の別の比較例を示す図であり、
図16に示す潜像部(20A)に設ける可視模様構成要素(31)の幅(y)を長くした例である。この場合、第2の潜像画線(21A
2)と潜像画線(21A)の間が暗くなって目立つことで、潜像の図柄の隠蔽性が低下してしまう。
【0067】
図17に示す構成においても、前述した判定具を用いて観察すると、本発明の可視模様(30)と潜像が変化する効果は得られるが、潜像の隠蔽性が高いのは、
図16に示す形態である。
【0068】
図18は、潜像発現模様(10)を構成する位相変調模様(20)と可視模様(30)において、
図16に示す領域とは別の一部の領域を示す図であり、位相変調模様(20)は、第1の潜像画線(21A
1)を備えた領域を示している。
ここで、
図18に示す第1の潜像要素(21A
1)と背景要素(21B)の間の距離(Y
1)、その間に設けられる可視模様構成要素(31)の幅(y
1)、背景要素(21B)同士の間の距離(X
1)、その間に設けられる可視模様構成要素(31)の幅(x
1)の関係もまた、前述した式1とすることで、潜像の図柄の隠蔽性が高くなる。
また、
図18に示す第1の潜像要素(21A
1)と潜像要素(21A)の間の距離(Y
2)、その間に設けられる可視模様構成要素(31)の幅(y
2)、背景要素(21B)同士の間の距離(X
2)、その間に設けられる可視模様構成要素(31)の幅(x
2)の関係もまた、前述した数式1とすることで、潜像の図柄の隠蔽性が高くなる。
【0069】
以上が、本発明潜像発現模様(10)を構成する位相変調模様(20)と可視模様(30)の詳細な構成の説明であるが、続いて、本発明の潜像発現模様(10)において、潜像を視認するための判定具の別の例ついて説明する。
【0070】
図19は、レンズ構造の画線(51)が万線状に配置された、一般的にレンチキュラー(T2)と呼ばれている判定具の構成を示す図であり、
図19(a)は、レンチキュラー(T2)平面図、
図19(b)は、
図19(a)のX-X’線における断面図を示している。レンズ構造の画線(51)は、第2の方向(V2)に、位相変調模様(20)を構成する有色の画線(21)が配置されるピッチ(P)と同じピッチ(P)で、万線状に配置される。また、レンズ構造の画線(51)の画線幅(W)は、一つの画線(51)が、1ピッチ(P1)分の領域に配置された位相変調模様(20)をサンプリングできる大きさとする。具体的に、例えば、
図8に示す位相変調模様(20)においては、背景画線(21B)の画線幅(W
21B)と潜像画線(21A)の画線幅(W
21A)の和となる。また、レンズ構造の画線の高さ(H)は、位相変調模様(20)の上に重ねて観察する際の、焦点距離に応じて適宜調整される。
【0071】
図19に示すレンチキュラー(T2)は、画線(51)が離れて配置された状態を示しているが、画線(51)同士が隣接して一体型となっている構成であってもよいし、
図20に示すように、ベース基材(50)の上に画線(51)が複数配置されて一体型となっている構成でもよい。
図19及び
図20に示すレンチキュラー(T2)は、基材(2)に形成された位相変調模様(20)の上に形成した一体型の構成としてもよいし、
図7に示す構成と同様に、位相変調模様(20)が形成された基材(2)の上に、レンチキュラー(T2)を備えたベース基材(50)を重ねて潜像を視認する分離型でもよいが、位相変調模様(20)の上にレンチキュラー(T2)を重ねる際に、第2の方向(V2)と第1の方向(V1)を同じ方向にして、重ねることで潜像を視認することができる。
【0072】
続いて、本発明の潜像発現模様(10)と、潜像を観察するための画線を基材(2)に形成した潜像発現模様形成体(1)について説明する。
【0073】
図21(a)は、基材(2)に凸形状の画線(61)が、第1の方向(V1)に、位相変調模様(20)を構成する有色の画線(21)が配置されるピッチ(P)と同じピッチ(P)で配置されて成る凸状万線模様(60)の構成を示す図であり、
図21(b)は、
図21(a)のX-X’線における断面図である。凸形状の画線(61)は、紙を製造する工程で、円網やダンディロールによる公知の抄き入れ加工を施す方法や、紙又はポリマーの基材(2)にレーザ加工により、基材(2)の一部を除去することでも形成することができる。また、基材(2)に凹版印刷やスクリーン印刷等の盛りのある印刷を行うことで、凸形状の画線(61)を形成することができる。
【0074】
図21(b)の断面図において、凸形状の画線(61)の頂点(T)を境として、真上にある視点の位置(S1)から観察すると、基材(2)全体を観察することができ、基材(2)に対して傾いた方向の視点の位置(S2)から観察すると、凸形状の画線(61)の死角となって、一部の基材(2)を視認することができない。この原理を利用し、基材(2)に対して斜めの方向から観察した際に、潜像画線(21A)のみ視認できる配置で、凸状万線模様(60)の上に、潜像発現模様(10)を重ねて形成することで、潜像を視認することができる。
【0075】
図22(a)は、基材(2)に形成された凸状万線模様(60)と潜像発現模様(10)の配置の一例を示す平面図であり、実際には、凸状万線模様(60)の上に、潜像発現模様(10)が重なる構成であるが、ここでは、互いの位置関係を分かり易く説明するため、別々に図示している。また、潜像発現模様(10)と凸状万線模様(60)の対応する位置を一点鎖線で示すとともに、凸形状の画線(61)の頂点(T)の位置を破線で示している。
【0076】
図22(b)は、
図22(a)のX
1-X
1’線における断面図であり、背景部(20B)の状態を示している。
図22(b)において、凸形状の画線(61)に対して、斜めの方向の視点の位置(S2)から観察すると、可視模様構成要素(31)と背景画線(21B)は、凸形状の画線(61)の死角となって、視認することができない。
図22(c)は、
図22(a)のX
2-X
2’線における断面図であり、潜像部(20A)の状態を示している。
図22(c)において、凸形状の画線(61)に対して、斜めの方向の視点の位置(S2)から観察すると、潜像画線(21A)は、視認されるが、可視模様構成要素(31)は、凸形状の画線(61)の死角となって、視認することができない。この結果、凸形状の画線(61)に対して、斜めの方向の視点の位置(S2)から観察すると、可視模様構成要素(31)は視認することできず、潜像画線(21A)のみ視認されることで、潜像の図柄を視認することができる。なお、
図22に示す凸状万線模様(60)と潜像発現模様(10)の配置は、これに限定されるものではない。例えば、潜像画線(21A)によって潜像の図柄を視認するときに、背景画線(21B)が視認されていても、潜像部(20A)と背景部(20B)の濃淡差が生じていれば、潜像の図柄を視認することができる。また、背景画線(21B)のみ視認される場合には、ネガポジ反転した状態で潜像の図柄を視認することができる。
【0077】
図23は、基材(2)の一方の面に潜像発現模様(10)が形成され、他方の面に万線模様(70)が形成された潜像模様形成体(1)であり、特許文献1と同様に、透過光下で基材(2)の表裏に形成された位相変調模様(20)と万線模様(30)が合成される。万線模様(70)は、
図7(b)に示す構成と同様の画線(71)から成り、基材(2)に潜像発現模様(10)が形成される面とは反対側の面に形成される。基材(2)の表裏に形成する潜像発現模様(20)と万線模様(70)の位置関係は、万線模様(70)を構成する画線(71)が、位相変調模様(20)を構成する背景画線(21B)と重なる配置で形成すると、最も潜像の視認性が高いが、わずかにずれていても、潜像を視認することは可能である。この形態において基材(2)は、目視で潜像発現模様(10)側から観察した際に、万線模様(70)が視認できない程度に不透明であって、透過光で観察した際に、二つの模様が合成される程度の光透過性を有する紙材や樹脂材を用いればよい。
【0078】
図24は、本発明における万線模様(70)の変形例であり、画線(71)と異なる色の画線(72)が、画線(71)の間に画線(71)と同じピッチ(P1)で配置されて成る万線模様(70)とした例である。この場合、透過光下で観察すると、位相変調模様(20)と万線模様(70)が合成されて、「円形」の数字を現す潜像部とその周りの背景部が、それぞれの画線(71、72)の色で視認することができる。なお、
図24では、万線模様(70)が基材(2)に形成された構成を示しているが、
図7に示す光透過性の基材(3)に形成された、所謂、万線フィルタの構成であってもよい。
【0079】
また、本発明の万線模様(70)の別の形態として、特開2018-199323号公報に記載の有色万線模様とすることで、潜像の色彩表現を豊かにすることができる。特開2018-199323号公報に記載の有色万線模様(70’)は、位相変調模様(20)の潜像部(20A)の図柄に対応して有色万線模様(70’)を構成する画線の色が異なる。具体的には、
図25(a)に示すように、有色万線模様(70’)を反射光下で観察すると、無彩色の画線が一定の間隔(P1)で配置されているように見えるが、
図25(a)の拡大図に示すように、「円形」の図柄に対応した部分では、補色関係の画線(71)と画線(72)が隣接して成り、「円形」の図柄の背景に対応した部分では、無彩色の画線から成る。
図25(a)に示す有色万線模様(70’)と潜像発現模様(10)が形成された潜像模様形成体(1)を透過光下で観察すると、位相変調模様(20)と有色万線模様(70’)の配置により、「円形」の図柄が、画線(71)の色又は画線(72)の色で視認され、「円形」の図柄の背景は、無彩色として視認される。
【0080】
なお、特開2018-199323号公報に記載の有色万線模様(70’)において、
図25(a)に示す画線(71)は、補色関係の色の組合せのうちの一色で構成され、画線(72)は、補色関係の色の組合せのうちの残りの一色とする構成の他に、
図25(b)の拡大図に示すように、画線(71)の中で、部分的に色が異なってもよい。その場合、異なる色で構成される画線(71)の各部毎に、隣接する画線(72)の色が異なる。なお、
図25(b)の拡大図において、異なる色で構成された画線(71、72)は、異なるパターンで図示しているが、実際には、潜像の図柄に応じて、「青色と黄色」や「緑色と赤色」等の補色関係にある画線が隣接した構成となる。
図25(b)に示す有色万線模様(70’)においては、位相変調模様(20)の重なる配置により、画線(71)又は画線(72)の色が潜像として視認することができ、色彩が豊かな潜像を視認することができる。
【0081】
図26は、基材(2)の上に、万線模様(70)、隠蔽層(80)、潜像発現模様(10)が順に積層された潜像模様形成体(1)を示す図であり、万線模様(70)と潜像発現模様(10)の構成及び各模様を構成する画線が重なる配置については、前述したとおりであるため、説明を省略する。
【0082】
図26に示す潜像模様形成体(1)において隠蔽層(80)は、潜像発現模様(10)側から目視で観察した際に、その下の万線模様(70)を隠蔽し、透過光下で万線模様(70)が視認できるための光透過性を有する。隠蔽層(80)は、印刷用の黒以外の色の色材、例えば、一般的なプロセスCMYインキや白インキによって形成され、万線模様(70)を覆い隠すように設けられる。万線模様(70)を隠蔽する作用は、隠蔽層(80)の印刷濃度が濃い程、隠蔽効果が高く、用いる色材に含まれる顔料の粒径や、色材の厚さによっても調整可能であり、万線模様(70)が反射光下で隠蔽されるように、適宜、調整すればよい。なお、前述した隠蔽層(80)を形成する色材であれば、透過光下で万線模様(70)が透けて見え、位相変調模様(20)と合成される作用が生じるが、黒色の色材は、光が透過しないため、隠蔽層(80)を形成する材料として用いることができない。また、隠蔽層(80)を形成する色材は、透過光下の観察で視認される潜像模様の色に影響しないため、白インキを用いることが好ましい。
【0083】
図26に示す潜像模様形成体(1)は、隠蔽層(80)を備えることによって、目視で観察した際に潜像発現模様(10)による可視模様(30)が現す図柄が視認され、透過光下で観察した際に位相変調模様(20)と万線模様(70)が合成されて潜像を視認することができる。
【0084】
本発明において、潜像発現模様(10)は、前述した基材(2)に印刷して形成される構成の他に、PCやスマートフォン、携帯電話等の液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイによって画面上に表示される構成でもよい。この場合、潜像発現模様(10)は、光の3原色であるRGBの光によって構成され、RGBの光とそれらの光の強弱により、任意の色で表現することができる。また、万線模様(70)は、段落0038で説明した万線フィルタの構成でもよいし、潜像発現模様(10)と同様に、RGBの光とそれらの光の強弱により、任意の色で表現された構成でもよい。仮に、万線模様(70)が万線フィルタの構成の場合、潜像発現模様(10)を表示する画面上に万線フィルタを重ねることで、潜像模様を視認することができる。
【0085】
また、RGBの光によって潜像発現模様(10)が構成されディスプレイに表示される場合、画像処理ソフトウェアである、例えば、Photoshop(登録商標)において、潜像発現模様(10)のRGB画像を表示させ、万線模様(70)に相当するRGB画像を重ねることで、潜像を視認することができる。また、位相変調模様(20)が現す潜像を表示させる方法については、位相変調模様(20)の画像を部分的に加算又は減算処理を行うことでも可能であり、Photoshop(登録商標)の画像処理機能を用いて行ってもよいし、潜像模様を表示させる処理のみを行う専用のソフトを用いてもよい。
【0086】
本発明の潜像発現模様(1)において、位相変調模様(20)を複数の色の画線によって形成する構成について説明する。基本的な構成は、本出願人が提案している特願2018-220872号公報に記載されており、
図27を用いて説明する。
【0087】
図27(a)は、特願2018-220872号公報に記載の位相変調万線模様(120)の構成を示す図であり、位相変調万線模様(120)は、
図27(a)の拡大図に示すように、有色の画線が第1の方向(V1)に一定のピッチ(P)で配置された万線において、部分的に位相が異なることで、「円形」を現す潜像部(120A)と背景部(120B)に区分けされている。位相変調万線模様(120)の特徴は、
図27(a)の拡大図に示すように、潜像部(120A)を構成する画線の中心線を境として、画線の色が異なり、異なる色の画線(121A
1、121A
2)は、補色関係となっている。また、背景部(120B)を構成する画線(121B)は、補色関係の画線(121A
1、121A
2)の色の混合色である無彩色となっている。したがって、潜像部(120A)と背景部(120B)は、同じ無彩色の色であることから、反射光下で観察すると、潜像部(120A)と背景部(120B)を構成する画線の色の差を視認することができない。
【0088】
図27(a)に示す位相変調万線模様(120)と位相変調万線模様(120)に対応した万線模様(図示せず)が形成された潜像模様形成体を透過光下で観察すると、位相変調万線模様(120)と万線模様の配置により、「円形」が、画線(121A
1)の色又は画線(121A
2)の色で視認される。
【0089】
図27(b)は、
図27(a)の位相変調万線模様(120)の要部における別の例を拡大して示す図であり、潜像部(120A)を構成する画線(121A
1、121A
2)と同じ色を、背景部(120B)を構成する画線の中心を境として配置した例である。画線(121A
1、121A
2)が補色関係であれば、画線(121A
1、121A
2)の色を背景部(120B)の画線に用いることで、背景部(120B)を無彩色の色とすることができる。
【0090】
また、
図27(c)は、
図27(a)及び
図27(b)に示す位相変調万線模様(120)の要部とは別の例を拡大して示す図であり、画線(121A
1)の中で、部分的に色が異なってもよい。その場合、異なる色で構成される画線(121A
1)の各部毎に、隣接する画線(121A
2)の色が異なり、かつ、隣接する画線の各部の色は、補色関係となっている。
図27(b)に示す位相変調万線模様(120)においては、万線模様の重なる配置により、画線(121A
1)又は画線(121A
2)の色が潜像模様として視認することができ、色彩が豊かな潜像模様を視認することができる。
【0091】
図27に示す特願2018-220872号公報に記載されている位相変調模様(120)においては、第1の実施の形態の潜像発現模様(10)で説明した位相変調模様(20)と置き換えて用いることができる。一方、第2の実施の形態で説明した位相変調模様(20)に用いる場合は、
図27に示す潜像部(120A)の画線と同様にして、第1の潜像画線(21A
1)と第2の潜像画線(21A
2)のそれぞれの中心線を境として、画線の色を異ならせ、かつ、異色の画線を補色関係とすればよい(図示せず)。
【0092】
本発明の潜像発現模様は、紙、金属、ガラス、プラスチック等の1種以上から構成される基材の少なくとも一部に、基材と異なる色の有色のインキを用いて印刷して形成することができる。例えば、銀行券、切手、旅券、免許証や保険証等の各種証明書、有価証券等のセキュリティ印刷物に、本発明の潜像発現模様を用いることができる。
潜像発現模様を印刷する手段としては、特に限定されない。例えば、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷等の印刷機を用いた印刷手段や、インクジェットプリンタやレーザプリンタ等を用いた印刷手段等が挙げられる。
また、本発明の潜像発現模様は、レーザ照射等により基材の一部に形成できる。なお、本明細書において、潜像発現模様が形成された基材を「潜像模様形成体」という場合がある。
【0093】
本発明の潜像発現模様データの作成方法の第1及び第2の実施態様は、概略、
図28に示されるフロー図で表すことができる。
第1ステップ(S1)は、位相変調模様データ(1)の生成ステップであり、概略、
図29に示されるフローチャートで表すことができる。
第2ステップ(S2)は、可視模様用マスクデータ(2)の生成ステップであり、概略、
図30に示されるフローチャートで表すことができる。
第3ステップ(S3)は、可視模様データ(3)の生成ステップであり、概略、
図31に示されるフローチャートで表すことができる。
第4ステップ(S4)は、潜像発現模様データ(4)の生成ステップであり、第1ステップ(S1)で生成した位相変調模様データ(1)と、第3ステップ(S3)で生成した可視模様データ(3)を合成することで、潜像発現模様データを生成するものである。
以下、各工程(S1、S2、S3、S4)の詳細に説明する。
【0094】
図29は、
図28に示す位相変調模様データの生成工程(S1)の詳細を示すフロー図であり、位相変調模様データの生成工程(S1)は、特願2018-220872号公報に記載の方法と同様にして行うことができる。
図29を用いて、位相変調模様データの生成工程(S1)の詳細について説明する。
位相変調模様データの生成方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
例えば、位相変調模様における潜像部が現す図柄を基画像として設定する基画像設定工程、
前記基画像の濃淡を反転して、反転画像を生成する階調反転処理工程、
前記基画像に第1の臨界値配列画像を適用して、位相変調模様における潜像部を構成する第1の潜像構成画線の2値画像を生成する第1の臨界値配列画像変換処理工程、
前記反転画像に第1の臨界値配列画像を適用して、位相変調模様における背景部を構成する第2の背景部構成画線の2値画像を生成する第2の臨界値配列画像変換処理工程、
前記第1の潜像構成画線の2値画像と、前記第2の背景部構成画線の2値画像の合成を含む、位相変調模様データの生成工程、
により、位相変調模様データを生成することができる。
【0095】
本発明における基画像は、有色の画像であり、白色と白以外の1つの色から形成されるものである。また、基画像は、グレースケール処理された画像であってもよい。基画像を構成する色が、黒色以外の色である場合、グレースケール処理された画像は、当該色の濃淡により表された画像である。本発明における「グレースケール」は、白黒におけるグレースケールだけではなく、グレースケールにおける黒色を所定の色に代えて形成させたものも含んでいる。
【0096】
図29に示す符号(f1)は、位相変調模様(20)に埋め込む潜像の図柄の基画像をグレースケール画像の形式で設定する工程(以降、「基画像設定工程(f1)」という。)であり、デジタルカメラによる撮像した画像や、あらかじめデータベースに登録された画像を用いる。なお、画像がグレースケール画像の場合、
図30のように、そのまま基画像(101)として設定し、仮にRGB画像、モノクロの2値画像の場合、グレースケール変換を行ってグレースケール画像(8bit)に変換して基画像(101)とする。
【0097】
図30(a)は、基画像設定工程(f1)として、データベースにあらかじめ登録されたモノクロの2値画像(100)を用いた例を示しており、
図30(a)のモノクロの2値画像(100)において、「円形」の図柄は「1」の濃度データを備え、その周りは「0」の濃度データを備えた構成となっている。
図30(b)は、グレースケール変換によりグレースケール画像に変換した基画像(101)を示す図であり、この場合、「円形」の図柄は「255」の濃度データを備え、その周りは「0」の濃度データを備えた構成に変換される。
【0098】
図29に示す符号(f2)は、
図30(b)に示すグレースケールの基画像(101)を、縦方向平均化処理によって、位相変調模様(20)を構成する画線(潜像画線と背景画線)のピッチ(P1)の2倍数で、画素のグレーレベル(濃度)を縦方向に平均化する工程(以降、「縦方向平均化処理(f2)」という。)である。縦方向平均化処理工程(f2)は、第2の実施の形態の潜像発現模様(10)に係る潜像発現模様データを作成する場合に行う処理であり、第1の実施の形態の潜像発現模様(10)に係る潜像発現模様データを作成する場合は行わない。
【0099】
この平均化については空間フィルタリング等の公知の画像処理技術を用いればよい。例えば、位相変調模様(20)を構成する画線のピッチ(P1)が16ピクセルであった場合、縦方向平均化処理工程(f2)で平均化される画素は32ピクセルとなり、
図30(b)に示すグレースケールの基画像(101)を縦方向32ピクセル毎に平均化処理を行うことで、
図31に示す平均化画像(102)が得られる。なお、縦方向平均化処理工程(f2)において、横方向の大きさは、任意であり、1ピクセルでもよいし、複数のピクセルでもよい。
【0100】
図29に示す符号(f3)は、基画像(101)又は平均化画像(102)の濃淡を反転して反転画像(102、102’)を作成する工程(以降、「階調反転処理(f3)」という。)であり、位相変調模様生成手段によって処理される。濃淡を反転する処理は、例えば、モノクロの2値画像において、黒の画像が白の画像に変換され、白の画像が黒の画像に変換されることであり、更に、グレースケール画像においては、濃い黒の画像は、淡い黒の画像に変換され、淡い黒の画像は、濃い黒の画像に、それぞれ階調に応じて変換される。
図32は、階調反転処理工程(f3)によって生成された画像を示す図であり、
図32(a)は、基画像(101)の濃淡が反転された反転画像(102)を示し、
図32(b)は、平均画像(101)の濃淡が反転された反転画像(102’)を示している。
【0101】
図29に示す符号(f4)は、潜像画線(21A)に相当する2値画像を生成する工程であり、符号(f4)は、背景画線(21B)に相当する2値画像を生成する工程であり、例えば、臨界値配列画像を適用する処理によって変換することができる。まず、第1の実施の形態における位相変調模様(20)に係るデータを生成する処理について説明する。なお、
図30(b)に示す基画像(101)の破線で囲む領域(16a)と
図32(a)に示す反転画像(102)の破線で囲む領域(17a)を変換する処理について説明する。
【0102】
図33(a)は、
図30(b)に示す基画像(101)の破線で囲む領域(16a)の拡大図であり、基画像(101)の所定の領域の濃度情報を基に、臨界値配列画像(以降、「第1の臨界値配列画像」という。)を適用して、
図33(b)に示す2値画像に変換する。
なお、基画像(101)の所定の領域とは、
図33(a)に示す画像において、位相変調模様(20)を構成する画線のピッチ(P1)に相当する16ピクセル分の領域(h)のことであり、
図33(a)に示す画像において、横方向は任意であるが、ここでは、8ピクセル分の領域(i)とした例で説明する。
【0103】
本発明において、第1の臨界値配列画像とは、2値画像に変換前の画像である基画像(101)の所定の領域の濃度情報に応じて、2値画像に変換するためのパターン画像であり、あらかじめ、データベースに登録されている。また、第1の臨界値配列画像は、潜像画線の位相に2値画像を変換するもので、
図33(b)において、潜像画線の位相に相当する領域を符号「A」で示し、背景画線の位相に相当する領域を符号「B」で示している。また、第1の臨界値配列画像の大きさは、濃度情報を参照する基画像(101)の所定の領域の大きさと同じ大きさであり、ここでは、縦方向に16ピクセル、横方向に8ピクセルのパターン画像である。
【0104】
図33(a)に示す基画像(101)に対して、第1の臨界値配列画像と同じ大きさの領域毎に2値画像に変換することで、
図33(b)に示す第1の2値画像(18A)が得られる。第1の臨界値配列画像によって変換する2値画像は、
図33(a)に示す基画像(101)の所定の領域の濃度が高い程、変換された2値画像の面積が大きく変換される。また、第1の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換する処理により、
図33(a)に示す基画像(101)の所定の領域の濃度が高い程、潜像画線の位相に相当する領域(A)と背景画線の位相に相当する領域(B)の境界から、順次、面積が大きく変換される。
図33(a)に示す基画像(101)において、所定の領域の濃度が同じであることから、
図33(b)に示す所定の領域において変換された2値画像の面積も同じになる。
なお、臨界値配列画像を適用する処理については、例えば、Adobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)の、モード変換処理機能において、あらかじめ作成したカスタムパターンを用いて行うことができる。
【0105】
図33(c)は、基画像(101)全体に第1の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換された第1の2値画像(18A)を示したものであり、
図33(b)示す第1の2値画像(18A)は、
図33(c)の破線で囲む領域(18a1)に配置される。
【0106】
図34(a)は、
図32(a)に示す反転画像(102’)の破線で囲む領域(17a)の拡大図であり、反転画像(102’)の所定の領域の濃度情報を基に、臨界値配列画像(以降、「第2の臨界値配列画像」という。)を適用して、
図34(b)に示す2値画像に変換する。なお、反転画像(102)の所定の領域とは、
図34(a)に示す画像において、位相変調模様(20)を構成する画線のピッチ(P1)に相当する16ピクセル分の領域(h)のことであり、
図34(a)に示す画像において、横方向は任意であるが、ここでは、8ピクセル分の領域(i)とした例で説明する。
【0107】
本発明において、第2の臨界値配列画像とは、2値画像に変換前の画像である反転画像(102)の所定の領域の濃度情報に応じて、2値画像に変換するためのパターン画像であり、あらかじめデータベースに登録されている。また、第2の臨界値配列画像は、背景画線の位相に2値画像を変換するもので、
図34(b)において、潜像画線の位相に相当する領域を符号「A」で示し、背景画線の位相に相当する領域を符号「B」で示している。また、第2の臨界値配列画像の大きさは、濃度情報を参照する反転画像(102)の所定の領域の大きさと同じ大きさであり、ここでは、縦方向に16ピクセル、横方向に8ピクセルのパターン画像である。
【0108】
図34(a)に示す反転画像(102)に対して、第2の臨界値配列画像と同じ大きさの領域毎に2値画像に変換することで、
図34(b)に示す第2の2値画像(18B)が得られる。第2の臨界値配列画像によって変換する2値画像は、
図34(a)に示す反転画像(102)の所定の領域の濃度が高い程、変換された2値画像の面積が大きく変換される。また、第2の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換する処理により、
図34(a)に示す反転画像(102)の所定の領域の濃度が高い程、潜像画線の位相に相当する領域(A)と背景画線の位相に相当する領域(B)の境界から、順次、面積が大きく変換される。
【0109】
図34(c)は、反転画像(102)全体に第2の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換された第2の2値画像(18B)を示したものであり、
図34(b)示す第2の2値画像(18B)は、
図34(c)の破線で囲む領域(18b1)に配置される。
【0110】
続いて、第2の実施の形態における位相変調模様(20)に係るデータを生成する処理について説明する。なお、
図31に示す平均化画像(102)の破線で囲む領域(16a)と
図32(b)に示す反転画像(102’)の破線で囲む領域を変換する処理について説明する。
【0111】
図35(a)は、
図31に示す平均化画像(102)の破線で囲む領域(16a)の拡大図であり、平均化画像(102)の所定の領域の濃度情報を基に、第1の臨界値配列画像を適用して、
図35(b)に示す2値画像に変換する。第1の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換する処理は、前述のとおりであるが、縦方向平均化処理工程(f2)によって縦方向に平均化した平均化画像(102)を変換する点が異なる。
図35(a)に示す平均化画像(102)は、下側から上側に向かう所定の領域(h)毎に、徐々に濃度が淡くなっている画像であり、所定の領域(h)毎の濃度を基に第1の臨界値配列画像を適用して変換すると、第1の2値画像(18A)は、
図35(b)に示すように、徐々に面積が小さくなって変換される。
【0112】
図35(c)は、平均化画像(102)全体に第1の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換された第1の2値画像(18A)を示したものであり、
図35(b)に示す第1の2値画像(18A)は、
図35(c)の破線で囲む領域(18a1)に配置される。
【0113】
図36(a)は、
図32(b)に示す反転画像(102’)の破線で囲む領域(17a)の拡大図であり、反転画像(102’)の所定の領域の濃度情報を基に、第2の臨界値配列画像を適用して、
図36(b)に示す2値画像に変換する。第2の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換する処理は、前述のとおりであるが、縦方向平均化処理工程(f2)によって縦方向に平均化した平均化画像(102)を反転した反転画像(102‘)を変換する点が異なる。
図36(a)に示す反転画像(102’)は、下側から上側に向かう所定の領域(h)毎に、徐々に濃度が濃くなっている画像であり、所定の領域(h)毎の濃度を基に第2の臨界値配列画像を適用して変換すると、第2の2値画像(18B)は、
図36(b)に示すように、徐々に面積が大きくなって変換される。
【0114】
図36(c)は、反転画像(102’)全体に第2の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換された第2の2値画像(18B)を示したものであり、
図36(b)示す第2の2値画像(18B)は、
図36(c)の破線で囲む領域(18b1)に配置される。
【0115】
図29に示す符号(f6)は、第1及び第2の臨界値配列画像変換処理工程(f4、f5)によって得られた第1の2値画像(18A)と第2の2値画像(18B)を合成する工程(以降、「合成(f6)」という。)であり、第1の実施の形態の位相変調模様(20)に係るデータとして、
図33(c)に示す第1の2値画像(18A)と、
図34(c)に示す第2の2値画像(18B)を合成して、
図37(a)に示す位相変調模様の画像(19)を作成する。また、第2の実施の形態の位相変調模様(20)に係るデータとして、
図35(c)に示す第1の2値画像(18A)と、
図36(c)に示す第2の2値画像(18B)を合成して、
図37(b)に示す位相変調模様の画像(19)を作成する。
【0116】
続いて、
図28に示す可視画像マスクの生成工程(S2)について、
図38を用いて説明する。
図38は、可視画像マスクの生成工程(S2)の詳細を示すフロー図であり、可視画像データの生成工程(S3)によって生成する可視画像マスクの詳細については、後述するが、可視模様(30)の基画像をマスク処理して、可視模様(30)に係る画像データを生成するために用いる。
【0117】
図38に示す符号(S2-1)は、位相変調模様データの生成工程(S1)によって生成された位相変調模様の画像(19)とは異なる位相に配置された位相変調模様データ(以降、「第2の位相変調模様データ(19A)」という。)を生成する工程(以降、「第2の位相変調模様データの生成(S2-1)という。」)である。
図39(a)は、第1の実施の形態の位相変調模様(20)に係る位相変調模様のデータの生成工程(S1)によって生成された位相変調模様のデータ(19)を示す図であり、第2の位相変調模様のデータを生成する工程(S2-1)では、例えば、
図39(b)に示すように、位相変調模様(20)に対応した画像の全体を上側に位相を異ならせた画像データ(19A)を生成する。
図39(b)に示す第2の位相変調模様のデータ(19A)は、
図39(a)に示す位相変調模様のデータ(19)に対して、上側に位相を異ならせた例であるが、下側に位相を異ならせてもよい。
第2の位相変調模様のデータ(19A)を生成する方法としては、基画像(101)と平均化画像(102)に対しては、前述した第1の臨界値配列画像を適用する処理と同様にして、基画像(101)と平均化画像(102)の所定の領域の濃度に応じて2値画像に変換するが、2値画像に変換する位置が異なる。
【0118】
具体的には、第1の臨界値配列画像による変換の場合は、潜像画線の位相に相当する領域(A)と背景画線の位相に相当する領域(B)の境界から、順次、2値画像に変換するが、第2の位相変調模様のデータ(19A)の場合は、潜像画線の位相に相当する領域(A)内又は背景画線の位相に相当する領域(B)内に、2値画像に変換する基準位置を設定する。潜像画線の位相に相当する領域(A)を基準にして、2値画像に変換する場合には、
図39(a)に示すように、上側に位相が異なる第2の位相変調模様のデータ(19A)が生成され、背景画線の位相に相当する領域(B)内を基準にして、2値画像に変換する場合には、下側に位相が異なる第2の位相変調模様データ(19A)が生成される(図示せず)。
【0119】
図40(a)は、第2の実施の形態の位相変調模様(20)に係る位相変調模様データの生成工程(S1)によって生成された位相変調模様データ(19)を示す図であり、第2の位相変調模様データを生成する工程(S2-1)によって、例えば、
図40(b)に示すように、位相変調模様(20)に対応した画像の全体を上側に位相を異ならせた画像データ(19A)を生成する。
図40(b)に示す第2の位相変調模様のデータ(19A)は、
図40(a)に示す位相変調模様データ(19)に対して、上側に位相を異ならせた例であるが、下側に位相を異ならせてもよい。
【0120】
図38に示す符号(S2-2)は、位相変調模様のデータ(19)を、ネガポジ反転した反転画像(19C)を生成する工程(以降、「位相変調模様データの反転画像生成工程(S2-2)」という。)である。ネガポジ反転することによって、位相変調模様のデータ(19)において、「黒」の部分は「白」に変換され、「白」の部分は「黒」に変換される。位相変調模様データの反転画像生成工程(S2-2)によって、第1の実施の形態の位相変調模様(20)に係る位相変調模様のデータ(19)をネガポジ反転すると、
図41(a)に示す画像(19C)が生成され、第2の実施の形態の位相変調模様(20)に係る位相変調模様のデータ(19)をネガポジ反転すると
図41(b)に示す画像(19c)が生成される。
【0121】
図38に示す符号(S2-3)は、第2の位相変調模様データ(19A)と位相変調模様データの反転画像(19C、19c)を用いて、可視画像マスクの画像データ(19D)を生成する工程(以降、可視画像マスクの生成工程(S2-3)という。)であり、具体的には、第2の位相変調模様データ(19A)と位相変調模様データの反転画像(19C、19c)において、「黒」の画像部分が重複する領域を抽出する比較合成の処理を行う。
【0122】
図42(a)は、第2の位相変調模様データ(19A)の領域を示す図であり、
図42(b)は、位相変調模様データの反転画像(19C)の領域を示す図である。この二つの画像を
図42(c)に示すように重ねた際に、重複する領域のみを抽出することで、
図42(d)に示す可視画像マスクの画像データ(19D)が生成される。
同様にして、第2の位相変調模様データ(19a)と位相変調模様データの反転画像(19c)において、「黒」の画像部分が重複する領域を抽出する比較合成の処理を行うことで、
図43に示す可視画像マスクの画像データ(19d)が生成される。
【0123】
続いて、
図28に示す可視画像データの生成工程(S3)について、
図44を用いて説明する。
図44は、可視画像データの生成工程(S3)の詳細を示すフロー図である。
【0124】
図44に示す符号(S3-1)は、可視画像(30)の図柄の基画像(以降、「可視画像用基画像(X)」という。)を設定する工程(以降、「可視画像用基画像設定工程(S3-1)」という。)であり、画像入力手段(M1a)としてデジタルカメラによる撮像した画像や、あらかじめデータベースに登録された画像を用いる。
可視画像用基画像(X)の画像形成式については、特に限定がなく、RGB画像、モノクロの2値画像、グレースケール画像等を用いることができる。ここでは、
図45に示す「三角形」の図柄であり、モノクロの2値画像を設定した例について説明する。
【0125】
図44に示す符号(S3-2)は、可視画像用基画像(X)と、可視画像用マスクの画像データ(19D、19d)を用いて、可視模様(30)に係る可視画像データ(XXX)を生成する工程(以降、「可視画像データ生成工程(S3-2)」という。)であり、具体的には、可視画像用基画像(X)と可視画像用マスクの画像データ(19D、19d)において、「黒」の画像部分が重複する領域を抽出する比較合成の処理を行う。
【0126】
図46(a)は、可視画像データ生成工程(S3-2)において、可視画像用基画像(X)と可視画像用マスクの画像データ(19D、19d)を重ねた画像を示しており、可視画像用基画像(X)において、可視画像用マスクの画像データ(19D、19d)と重複する領域のみを抽出することで、
図46(b)に示す可視画像データ(XXX)が生成される。
【0127】
続いて、
図28に示す潜像発現模様データの生成工程(S4)について説明する。
潜像発現模様データの生成工程(S4)では、位相変調模様データ(19)と可視画像データ(XXX)を合成する処理を行う。
具体的には、
図47(a)に示す位相変調模様データ(19)と、
図47(b)に示す可視画像データ(XXX)を合成して、
図47(c)に示す潜像発現模様データ(ZZ)を生成する。
【0128】
位相変調模様データ(19)と可視画像データ(XXX)を合成する合成処理工程(f4)により、作成されたデータは、データベースに保存してもよいし、モニター等の表示手段に表示してもよいし、プリンタ等の出力手段によって、基材(2)に印刷してもよい。
【0129】
続いて、
図27に示す構成の位相変調模様のデータを生成する方法について説明する。
図27に示す位相変調模様(120)は、画線の中心を境に色が異なることで、色彩が豊かな潜像を視認することができるものである。ここでは、一例として、
図27(b)に示す構成の位相変調模様の画像(19X)であり、平均化画像(102)を用いて処理するデータを作成する方法について説明する。
【0130】
図48は、
図27(b)に示す構成の位相変調模様の画像データを作成する方法のフロー図を示す図である。
図48において、工程(S1-1)から工程(S1-5)については、前述した特願2018-220872号公報に記載の方法と同じであるため、説明を省略し、各工程(S1-6、S1-7、S1-8)の詳細について説明する。
【0131】
図48に示す符号(S1-6)は、
図27(b)に示す位相変調模様の画線の中心を境として、一方の側にある画線と他方の側にある画線に対応した画像を抽出するための二つのマスク画像を生成するための工程(以降、「カラー潜像用マスクの生成(S1-6)」という。)である。
具体的には、
図49(a)に示すように、位相変調模様データ(19)の画線の中心(破線で図示)を境として分割することで、
図49(b)に示すマスク画像(19M)と、
図49(c)に示すマスク画像(19N)を生成する。
【0132】
図49(b)は、
図27(b)に示す位相変調模様の画線の中心を境として、上側にある画線を抽出するためのマスク(19M)であり、
図49(a)に示す位相変調模様データ(19)における画線の中心から上側にある画像を抽出したものである。また、
図49(c)は、
図27(b)に示す位相変調模様の画線の中心を境として、下側にある画線を抽出するためのマスク(19N)であり、
図49(a)に示す位相変調模様データ(19)における画線の中心から下側にある画像を抽出したものである。以降、
図49(b)に示すマスクを「第1のカラー潜像用マスク(19M)」とし、
図49(c)に示すマスクを「第2のカラー潜像用マスク(19N)」」として説明する。
【0133】
第1のカラー潜像用マスク(19M)は、位相変調模様データ(19)と、位相変調模様データ(19)とは異なる位相に配置された位相変調模様データ(以降、「第3の位相変調模様データ(19XX)という。」)において、「黒」の画像部が重複する領域を抽出する比較合成の処理によって生成される。また、第2のカラー潜像用マスク(19N)は、位相変調模様データ(19)と、第3の位相変調模様データ(19XX)を反転した第4の位相変調模様データ(19YY)において、「黒」の画像部が重複する領域を抽出する比較合成の処理によって生成される。以下、第1のカラー潜像用マスク(19M)と第2のカラー潜像用マスク(19N)を生成する処理の詳細について説明する。
【0134】
図50は、位相変調模様データ(19)、第3の位相変調模様データ(19XX)及び第4の位相変調模様データ(19YY)の関係を示す図である。前述のように、
図50(a)に示す位相変調模様データ(19)に対して、
図50(b)に示す第3の位相変調模様データ(19XX)は、位相が異なり(二つの画像における共通の位置を示す破線の位置に対して位相が異なっている)、
図50(b)の拡大図に示すように、第3の位相変調模様データ(19XX)の全体は、位相変調模様(19)の全体に対して、画線の幅(W)の半分だけ位相がずれている。
図50(b)に示す第3の位相変調模様データ(19XX)は、位相変調模様データ(19)に対して、下型に位相を異ならせた例であるが、上側に位相を異ならせてもよい。
図50(c)に示す第4の位相変調模様データ(19YY)は、第3の位相変調模様データ(19XX)を反転した画像であり、第3の位相変調模様データ(19XX)において、「白」の画像の領域と「黒」の画像の領域が入れ替わった構成となっている。
【0135】
図50(b)に示す第3の位相変調模様データ(19XX)を生成するためには、前述した第1の臨界値配列画像と第2の臨界値配列画像によって2値画像に変換する処理に対して、画線の幅の半分だけずれた位置から2値画像に変換する「第Mの臨界値配列画像」と「第Nの臨界値配列画像」を適用して2値画像に変換する。
具体的には、
図51(a)に示す平均化画像(102)に第Mの臨界値配列画像を適用して、平均化画像(102)の所定の領域(h)毎の濃度に応じて、
図51(b)の右上がり斜線で示す位相に画像を変換して、
図51(c)に示す第Mの2値画像(18M)を生成する処理と、
図51(d)に示す平均化画像(102)を反転した反転画像(102’)に、第Nの臨界値配列画像を適用して、
図51(e)の左上がり斜線で示す位相に画像を変換して、
図51(f)に示す第Nの2値画像(18N)を生成する処理を行う。
【0136】
図51(b)は、第Mの臨界値配列画像を適用して2値画像に変換される領域を示しており、第Mの臨界値配列画像を適用する処理は、潜像画線の位相に相当する領域(A)と背景画線の位相に相当する領域(B)の境界から、下側に向かって1/4h分だけ位相が異なっており、その位置の位相から、平均化画像(102)における所定の領域の濃度に応じて、順次、面積が大きくなるように変換する。
図51(c)は、平均化画像(102)全体に第Mの臨界値配列画像を適用して2値画像に変換された第Mの2値画像(18M)を示したものであり、
図51(b)示す第Mの2値画像(18M)は、
図51(c)の破線で囲む領域(18M1)に配置される。
【0137】
図51(d)は、平均化画像(102)を反転した反転画像(102’)に第Nの臨界値配列画像を適用して2値画像に変換される領域を示しており、第Nの臨界値配列画像を適用する処理は、潜像画線の位相に相当する領域(A)と背景画線の位相に相当する領域(B)の境界から、下側に向かって1/4h分だけ位相が異なっており、その位置の位相から、反転画像(102’)における所定の領域の濃度に応じて、順次、面積が大きくなるように変換する。
図51(f)は、反転画像(102’)全体に第Nの臨界値配列画像を適用して2値画像に変換された第Nの2値画像(18N)を示したものであり、
図51(e)示す第Nの2値画像(18N)は、
図51(f)の破線で囲む領域(18N1)に配置される。
なお、第Nの臨界値配列画像によって2値画像に変換する方向(
図51(e)における上下方向)は、第Mの臨界値配列画像によって2値画像に変換する方向(
図51(b)における上下方向)と異なり、
図51(b)では、第Mの臨界値配列画像は、潜像画線の位相に相当する領域(A)と背景画線の位相に相当する領域(B)の境界に対して、下側に向かって1/4h分だけ位相が異なる位置から上側に向かって2値画像に変換し、
図51(e)では、第Nの臨界値配列画像は、潜像画線の位相に相当する領域(A)と背景画線の位相に相当する領域(B)の境界に対して、下側に向かって1/4h分だけ位相が異なる位置から下側に向かって2値画像に変換した例を示している。
【0138】
図51(c)に示す第Mの2値画像(18M)と
図51(f)に示す第Nの2値画像を合成することで、
図50(b)に示す第3の位相変調模様データ(19XX)が得られる。ここでは、第Mの臨界値配列画像と第Nの臨界値配列画像を適用する処理によって、第3の位相変調模様データ(19XX)を生成する処理について説明したが、位相変調模様データ(19)において、画線の中心を境に半分を除去する処理をするとで、同じ第3の位相変調模様データ(19XX)を生成することができる。
【0139】
図49(b)に示す第1のカラー潜像用マスク(19M)は、位相変調模様データ(19)と、位相変調模様データ(19)とは、画線の幅の半分だけ下側に位相がずれた第3の位相変調模様データ(19XX)において、「黒」の画像部が重複する領域を抽出する比較合成の処理によって生成される。すなわち、
図49(a)に示す位相変調模様データ(19)において、画線の中心から下側の画線が第3の位相変調模様データ(19XX)と重複することで、
図49(b)に示す第1のカラー潜像用マスク(19M)が生成される。
【0140】
図49(c)に示す第2のカラー潜像用マスク(19N)は、第3の位相変調模様データ(19XX)を反転した第4の位相変調模様データ(19YY)と、位相変調模様データ(19)において、「黒」の画像部が重複する領域を抽出する比較合成の処理によって生成される。第4の位相変調模様データ(19YY)は、第3の位相変調模様データ(19XX)を反転した画像であることから、これを位相変調模様データ(19)と比較合成すると、
図49(a)に示す位相変調模様データ(19)において、画線の中心から上側の画線が重複することで、
図49(c)に示す第2のカラー潜像用マスク(19N)が生成される。
【0141】
図48に示す符号(S1-7)は、潜像が複数の色で視認される位相変調模様(20)のデータを形成するための基画像(Z)を設定する工程(以降、「カラーの基画像設定(S1-7)という。」)である。ここでは、
図27に示す位相変調模様(XXX)において、「円形」の図柄とその背景が、補色関係にある2色の色で視認される例について説明する。
カラーの基画像設定工程(S1-7)では、
図52(a)に示す「円形」とその背景の色が異なる色であり、かつ、補色関係で構成されたカラー潜像基画像(130)と、
図52(b)に示すカラー潜像基画像(130)の色が反転したカラー潜像反転基画像(131)を設定する。補色関係の色の例としては、青色と黄色、緑色と赤色等の組合せがあり、所望とする色のカラー潜像基画像(130)とカラー潜像反転基画像(131)を設定すればよい。
【0142】
図48に示す符号(S1-8)は、
図27(b)に示す位相変調模様(20)のデータを生成する工程(以降、「カラー画像用位相変調模様データの生成(S1-8)という。」である。
【0143】
具体的には、
図53(a)に示すように、カラー潜像基画像(130)と第1のカラー潜像用マスク(19M)において、互いの画像が重複する領域を抽出する比較合成の処理によって、第1のカラー潜像画像データ(140)を生成する。また、
図53(b)に示すように、カラー潜像反転基画像(131)と第2のカラー潜像用マスク(19N)において、互いの画像が重複する領域を抽出する比較合成の処理によって、第2のカラー潜像画像データ(141)を生成する。第1のカラー潜像マスク(19M)は、位相変調模様データ(19)において、画線の中心から下側の画線を抽出することから、生成された第1のカラー潜像画像データ(140)もまた、
図27(b)に示す画線(121A
1)に対応した画像データとなる。また、第2のカラー潜像マスク(19N)は、位相変調模様データ(19)において、画線の中心から上側の画線を抽出することから、生成された第2のカラー潜像画像データ(141)もまた、
図27(b)に示す画線(121A
2)に対応した画像データとなる。
【0144】
ここでは、
図27(b)に示す位相変調模様(XX)を形成するための画像データを生成する例について説明したが、
図27(c)の画像データの生成でもよい。
【符号の説明】
【0145】
10 潜像発現模様
18 2値画像
19 位相変調模様データ
20 位相変調模様
21 有色の画線
21A 潜像構成画線
21B 背景構成画線
30 可視模様
31 可視模様構成要素
41 万線模様
61 凸形状の画線
70 万線模様
101 基画像
102 反転画像