(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175849
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】セラミックス回路基板
(51)【国際特許分類】
H01L 23/13 20060101AFI20241212BHJP
C04B 37/02 20060101ALI20241212BHJP
H05K 1/02 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
H01L23/12 C
C04B37/02 B
H05K1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093898
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 輝行
(72)【発明者】
【氏名】坂口 寛史
【テーマコード(参考)】
4G026
5E338
【Fターム(参考)】
4G026BA17
4G026BB22
4G026BF16
4G026BF24
4G026BF44
4G026BF52
4G026BG02
4G026BG23
4G026BH07
5E338AA02
5E338AA18
5E338BB80
5E338EE33
(57)【要約】
【課題】セラミックス回路基板をあえて反らせることで、不具合を解消し、その取扱いを容易にし、製造歩留まりを向上することができるセラミックス回路基板を提供する。
【解決手段】第1の面1aと第2の面1bとを有し、第1の面1aが第1の領域と第2の領域とを含む、セラミックス基板1と、第1の領域に接合された第1の金属板2と、第2の面1bに接合された第2の金属板3と、を備え、第1の面1aは、第1の方向、および該第1の方向と交差する第2の方向に延在し、第1の面1aの第1の方向に延在する第1の辺に沿って測定される第2の領域の第1のうねり曲線は、直線状であり、第1の面1aの第2の方向に延在する第2の辺に沿って測定される第2の領域の第2のうねり曲線は、円弧状であるセラミックス回路基板10。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と第2の面とを有し、前記第1の面が第1の領域と第2の領域とを含む、セラミックス基板と、
前記第1の領域に接合された第1の金属板と、
前記第2の面に接合された第2の金属板と、を備え、
前記第1の面は、第1の方向、および前記第1の方向と交差する第2の方向に延在し、前記第1の面の前記第1の方向に延在する第1の辺に沿って測定される前記第2の領域の第1のうねり曲線は、直線状であり、
前記第1の面の前記第2の方向に延在する第2の辺に沿って測定される前記第2の領域の第2のうねり曲線は、円弧状である、
セラミックス回路基板。
【請求項2】
前記セラミックス基板は矩形状であり、前記第1の辺及び前記第2の辺はともに100mm以上である、
請求項1に記載のセラミックス回路基板。
【請求項3】
前記セラミックス基板は、前記第1の辺よりも前記第2の辺が長い、
請求項1に記載のセラミックス回路基板。
【請求項4】
前記セラミックス基板は、前記第2の辺よりも前記第1の辺が長い、
請求項1に記載のセラミックス回路基板。
【請求項5】
前記第1のうねり曲線の最大値と最小値の差(Z1)が20μm以下であり、
前記第2のうねり曲線の最大値と最小値の差(Z2)が30μm以上である、
請求項3に記載のセラミックス回路基板。
【請求項6】
前記Z2/前記Z1が2.0以上である、
請求項5に記載のセラミックス回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、セラミックス回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モーター、電力変換機器等の小型化、大電力化、高性能化の進展に伴い、それに搭載される電力半導体素子用回路基板には、より大電力が扱える高熱伝導性と温度サイクル寿命のより長い高信頼性が要求されてきている。この要求に対応するため、高熱伝導性と高信頼性とを具備する電力半導体素子用セラミックス回路基板には種々の提案が行われている。
【0003】
例えば、セラミックス基板の表面に金属回路板がろう付けされ、裏面に金属放熱板がろう付けされているセラミックス回路基板において、金属回路板を厚くした場合であっても、温度サイクル寿命を改善し得る金属回路を有するセラミックス回路基板およびその製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このセラミックス回路基板は、金属回路板とセラミックス基板とのろう付けによる接合体を-110℃で冷却処理して残留応力を緩和し、各種厚みを調整することで反り量を抑制したものである。
【0004】
また、リードフレームとの接合を考慮して、実装時における湾曲を抑制し、かつ、サーマルサイクルテスト(TCT)特性も良好なセラミックス回路基板として、所定の厚さのセラミックス基板に金属板が接合されたセラミックス回路基板であって、セラミックス基板を所定のうねり曲線を有するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-309210号公報
【特許文献2】特許第7048493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のように、一般に、セラミックス回路基板の反りやうねりは、その表面および裏面に設けられる金属板とセラミックス基板との熱膨張率の差により生じ、このような反りやうねりをなくして平坦化しようとする努力が種々なされてきた。
【0007】
しかしながら、セラミックス回路基板を平坦化した場合においても、製造上のばらつきにより、反りやうねりが発生してしまう場合があり、このとき、反りやうねりが発生するのがセラミックス回路基板のいずれの辺(例えば、矩形上のセラミックス回路基板の場合、長辺か短辺か等)であるかが制御しにくいため、吸着による搬送や、半導体素子の実装時において、その反りやうねりの状況により予定している動作を行うことができない場合があった。すなわち、反り方向による吸着不良や、半導体素子等の実装位置のズレなどが生じてしまい、その後の取り扱いが難しくなったり、製品不良が発生したり等の不具合が生じる場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、セラミックス回路基板をあえて反らせることで、上記不具合を解消し、その取扱いを容易にし、製造歩留まりを向上することができるセラミックス回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態にかかるセラミックス回路基板は、第1の面と第2の面とを有し、前記第1の面が第1の領域と第2の領域とを含む、セラミックス基板と、前記第1の領域に接合された第1の金属板と、前記第2の面に接合された第2の金属板と、を備え、前記第1の面は、第1の方向、および前記第1の方向と交差する第2の方向に延在し、前記第1の面の前記第1の方向に延在する第1の辺に沿って測定される前記第2の領域の第1のうねり曲線は、直線状であり、前記第1の面の前記第2の方向に延在する第2の辺に沿って測定される前記第2の領域の第2のうねり曲線は、円弧状である。
【発明の効果】
【0010】
セラミックス回路基板をあえて反らせることで、製造のばらつきがあったとしても反り方向を制御することが容易になる。
【0011】
また、反り方向が決まっているため、セラミックス回路基板の搬送や、セラミックス回路基板への半導体素子の実装等において、反り方向を考慮にいれることができ、セラミックス回路基板の取り扱いが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態であるセラミックス回路基板の概略構成を示す平面図である。
【
図2】
図1に示したセラミックス回路基板の概略構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態に係るセラミックス回路基板およびその製造方法について説明する。
【0014】
[セラミックス回路基板]
本実施の形態に係るセラミックス回路基板は、上記の通りの構成を有し、例えば、
図1および
図2に示したセラミックス回路基板が例示できる。
図1は、セラミックス回路基板10の概略構成を示す平面図であり、
図2はその側面図である。
【0015】
このセラミックス回路基板10は、矩形状のセラミックス基板1と、金属板(表金属板2、裏金属板3)と、セラミックス基板1の長辺の長さL11と、セラミックス基板1の短辺の長さL12と、うねり曲線の測定箇所Wと、を図示している。
図1および
図2ではセラミックス回路基板10が2つの表金属板2と1つの裏金属板3とを有する例を示している。実施形態にかかるセラミックス回路基板の構造は、上記構造に限定されず、例えばセラミックス回路基板10が1つの表金属板2または3つ以上の表金属板2を有していてもよい。同様にセラミックス回路基板10が2つ以上の裏金属板3を有していてもよい。
【0016】
セラミックス基板1は互いに対向する面1aと面1bとを有する。面1aおよび面1bのそれぞれは、第1の方向および第2の方向に延在する。第2の方向は、第1の方向と交差する。面1aおよび面1bのそれぞれが例えば長方形の面である場合、第1の方向は例えば長方形の長辺方向であり、第2の方向は例えば長方形の短辺方向である。
【0017】
面1aは、表金属板2と接合するための接合領域と、その接合領域の周りの非接合領域と、を含んでいる。非接合領域は、例えば接合領域の輪郭部分から面1aの端部まで延在する。なお、複数の表金属板2がセラミックス基板1に接合されている場合、非接合領域は複数の表金属板2の間の領域を含んでいる。面1bは、裏金属板3を受けるための接合領域と、その接合領域の周りの非接合領域と、を有していてもよい。非接合領域は、例えば接合領域の輪郭部分から面1bの端部まで延在する。なお、複数の裏金属板3がセラミックス基板1に接合されている場合、非接合領域は複数の裏金属板3の間の領域を含んでいる。
【0018】
セラミックス基板1の厚さは1.0mm以下であることが好ましい。セラミックス基板1の厚さが1.0mmを超えると所定のうねり曲線を実現することが困難となる。セラミックス基板1の厚さを薄くすることにより所定のうねり曲線を実現し易い。
【0019】
セラミックス基板1の3点曲げ強度は500MPa以上であることが好ましい。3点曲げ強度が500MPa以上であるセラミックス基板を使うことにより、基板厚さを0.4mm以下に薄くすることができる。
【0020】
3点曲げ強度が500MPa以上のセラミックス基板の例は、窒化珪素基板を含む。上記セラミックス基板の例は、高強度化された窒化アルミニウム基板、高強度化されたアルミナ基板、および高強度化されたジルコニア含有アルミナ基板を含む。
【0021】
セラミックス基板としては窒化珪素基板が特に好ましい。通常の窒化アルミニウム基板、アルミナ基板の3点曲げ強度は300~450MPa程度である。500MPa未満の強度の基板では厚さを0.4mm以下まで薄くするとTCT特性が低下する。窒化珪素基板として、3点曲げ強度500MPa以上、さらには600MPa以上の高強度の窒化珪素基板がある。
【0022】
窒化珪素基板としては、熱伝導率が50W/m・K以上、さらには80W/m・K以上の窒化珪素基板とすることができる。近年は高強度と高熱伝導の両方を併せ持つ窒化珪素基板もある。3点曲げ強度500MPa以上、熱伝導率80W/m・K以上の窒化珪素基板であれば、基板厚さを0.33mm以下と薄くすることもできる。3点曲げ強度はJIS-R-1601、熱伝導率はJIS-R-1611に準じて測定される。
【0023】
表金属板2は領域11に接合される。裏金属板3は領域13に接合される。すなわち、領域11は、面1aにおいて表金属板2と接合された領域を示す。領域13は、面1bにおいて裏金属板3と接合された領域を示す。
【0024】
表金属板2および裏金属板3は、銅、アルミニウムまたはそれらを主成分とする合金を含むことが好ましい。これら金属板は、電気抵抗が低いため回路に使用しやすい。また、銅およびアルミニウムの熱伝導率はいずれも高く、それぞれ398W/m・K、237W/m・Kである。このため、放熱性を向上させることができる。
【0025】
これらの特性を活かして金属板(表金属板2および裏金属板3)の厚さを0.6mm以上、さらには0.8mm以上にすることが好ましい。金属板を厚くすることにより、通電容量の確保と放熱性の向上の両立を図ることができる。なお、金属板の厚さの上限は特に限定されないが、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。5mmを超えて大きいと、リード端子を取り付けたときに半導体モジュールの大型化を招いてしまう。
【0026】
セラミックス基板と金属板の接合方法の例は、ろう材を介して接合する方法とろう材を介さずに直接接合する方法とを含む。なお、ろう材を介した構造であることが好ましく、
図2では、金属板2,3が、ろう材層4を介してセラミックス基板1に接合されている場合を示している。このとき、ろう材層4は、公知のろう材を使用できる。
【0027】
ここで用いるろう材としては、この種のセラミックス回路基板で用いられる公知のろう材層を用いて形成すればよく、一般に、ろう材粉末と有機バインダとを含むペーストから構成される。ここで用いられるろう材粉末としては、例えば、銀、銅等を所定の組成で含むろう材粉末が挙げられ、有機バインダとしては、様々な有機系樹脂を使用することができる。
【0028】
また、ろう材は、活性金属を含むことが好ましい。活性金属としては、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Nb(ニオブ)、およびAl(アルミニウム)から選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが好ましい。例えば、共晶組成であるAgおよびCuを主体としTi,Zr,Hf等の活性金属を添加したAg-Cu系活性ろう材が、高強度、高封着性等が得られる点で好ましい。さらにセラミックス基板と金属板の接合強度の観点から、上記Ag-Cu系活性ろう材にInが添加された三元系のAg-Cu-In系活性ろう材がより好ましい。このろう材はペースト状のものを用いて接合することが好ましい。
【0029】
ここで、面1aの上記第1の方向に延在する第1の辺に沿って測定される領域のうねり曲線(第1のうねり曲線)は、直線状であり、極値を有しない。すなわち、上記うねり曲線の極値の個数は0である。これに対して、面1aの上記第2の方向に延在する第2の辺に沿って測定される領域のうねり曲線(第2のうねり曲線)は、1つの極値を有する。すなわち、上記うねり曲線の極値の個数は1である。それぞれの極値は、極大値または極小値である。
【0030】
面1aが長方形の面である場合、面1aの長辺の沿面のうねり曲線と短辺の沿面のうねり曲線の一方が直線状、他方が略円弧状であることが好ましい。沿面とは、面1aの端から表金属板2のパターン(例えば銅パターン)の最外周までのセラミックス面を示す。
【0031】
うねり曲線(Waviness Profile)はJIS-B0601に準じて測定される。うねり曲線は断面曲線にカットオフ値λfおよびλcの輪郭曲線フィルタを順次適用することによって得られる輪郭曲線であり、粗さ曲線とは異なる。測定方式の例は、レーザ方式および接触方式を含む。面1aの長辺の沿面のうねり曲線を測定していく。長辺を一度に測定することが好ましい。仮に、基板サイズや装置サイズにより、一度に測定できないときは複数回に分けて測定して、一つのうねり曲線の測定値とする。また、短辺についても同様である。さらに、面1bについてうねり曲線を測定する場合も同様である。また、うねり曲線の測定箇所はセラミックス基板1の端部から0.5~1mmの範囲内である。
【0032】
面1aの長辺の沿面のうねり曲線と短辺の沿面のうねり曲線の一方が直線状、他方が円弧状となっている。
図3~4はうねり曲線WPを説明するための図である。
図3は直線状のうねり曲線WPを説明するための図であり、
図4は直線状または略円弧状のうねり曲線WPを説明するための図である。
【0033】
直線状とは、うねり曲線の始まりから終わりまでの間に、実質的に曲線を有することなく、極値点がない形状をいう。すなわち、極値点は0である。ただし、
図3に示したように典型的な直線状のものはもちろん含まれるが、実際には、完全な直線状となる場合はほとんどなく、
図4に示したように若干のうねりが存在する場合も含む。
【0034】
略円弧状とは、
図4に示したようにうねり曲線WPが曲線状に上がっていき、極大点(最上点)を過ぎたところで曲線状に下がっていく形状である。このとき、極値点は一箇所のみである。極値点が表面側、裏面側のどちらであってもよい。なお、極値点が裏面側を向いているときは、曲線状に下がっていき、極小点(最下点)を過ぎたところで曲線状に上がっていく形状となる。また、うねり曲線WPの始まりと終わりの部分は富士山の裾野のような広がった形状であってもよい。つまり、略円弧状とはうねり曲線WPにおいて極値点が1つである形状である。
【0035】
面1aが長方形の面である場合、面1aは互いに対向する2つの長辺を有する。2つの長辺に沿って測定される2つの第1のうねり曲線のうち、少なくとも一方の第1のうねり曲線が直線状に延在することが好ましく、さらには2つの第1のうねり曲線が直線状に延在することが好ましい。対向する2つの長辺に沿って測定される2つの第1のうねり曲線は、それぞれ直線状に延在すればよく、形状は互いに完全に一致していなくてもよい。
【0036】
2つの第2のうねり曲線のうち、少なくとも一方の第2のうねり曲線が略円弧状に延在することが好ましく、さらには2つの第2のうねり曲線が略円弧状に延在することが好ましい。2つの第2のうねり曲線は、それぞれ略円弧状に延在すればよく、形状は互いに完全に一致していなくてもよい。
【0037】
図3は第1のうねり曲線WPが直線上となる例の模式図を示している。
図3では、完全な直線を示しているが実際には上記のように若干のうねりが存在することもあり、そのうねりが小さく最大値や最小値として評価し得る点がない場合も含む。例えば、
図4の最大値と最小値の差Z(Z1)が20μm以下となるような場合、最大値や最小値として評価し得る点がないとして、直線状に含む。この場合、この差Z(Z1)は10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましく、1μm以下が特に好ましい。
【0038】
図4は第2のうねり曲線WPが円弧状となる例の模式図を示しており、うねり曲線WPの最大値と最小値の差Zを図示している(差Zが20μm以下のものは、円弧状のものとしては含まない)。
図4のうねり曲線WPの最大値と最小値の差Z(Z2)は30μm以上であることが好ましい。最大値は、うねり曲線WPの最上点の中で最も大きい値である。また、最小値はうねり曲線WPの最下点の中で最も小さな値である。うねり曲線WPの最大値と最小値の差Z(Z2)は30μm以上、さらには50μm以上であることが好ましい。
【0039】
うねり曲線WPの最大値と最小値の差Zを大きくすることにより、セラミックス回路基板10の形状方向が統一でき、その後の製造工程における取扱いが容易となる。なお、うねり曲線WPの最大値と最小値の差Z(Z2)の最大値は特に限定されないが400μm以下であることが好ましい。400μmを超えると、セラミックス基板1のうねりが大きいためリード端子を接合するなどした後にもうねりが残存し、実装性が低下するおそれがあるためである。
【0040】
また、上記した第1のうねり曲線の最大値と最小値の差(Z1)と第2のうねり曲線の最大値と最小値の差(Z2)とは、それらの比(Z2/Z1)が、2.0以上であることが好ましい。この比を2.0以上とすることで、その形状方向の特徴づけが明確となり、取り扱いの容易性を向上できる。
【0041】
セラミックス基板1の厚さと金属板の厚さ[セラミックス基板1の厚さ/金属板の厚さ]の比は1.5以下であることが好ましい。表金属板2および裏金属板3を含む複数の金属板をセラミックス基板1に接合しているときは、その中で最も厚い金属板の厚さを用いて上記比が算出される。すなわち、最も厚い金属板の厚さは、セラミックス基板1の厚さの1.5倍以下であることが好ましい。
【0042】
このセラミックス基板1の厚さ/金属板の厚さの比は1.5以下、さらには0.5以下であることが好ましい。セラミックス基板1の厚さ/金属板の厚さの比が0.5以下であることは、セラミックス基板1を薄くすること、または金属板を厚くすることを示している。これにより、うねり曲線を制御し易くすることができる。
【0043】
セラミックス基板1は矩形状であり、このセラミックス基板1の長辺の長さL11と短辺の長さL12の比が、(L11/L12)≧1.25を満足することが好ましい。すなわち、L11は、L12の1.25倍以上であることが好ましい。基板の長辺が長いほど、所望のうねりを付与し易くなる。
【0044】
また、セラミックス基板1の長辺の沿面の第1のうねり曲線と短辺の沿面の第2のうねり曲線を制御するために、金属板の配置構造を調整することも有効である。
図5Aおよび
図5Bは金属板の配置構造の一例を示す図であり、セラミックス基板1と、金属板2aと金属板2bからなる表金属板2と、裏金属板3と、を有するセラミックス基板1を示している。
図5Aは、セラミックス基板1の表金属板側から視た平面図であり、
図5Bはセラミックス基板1の裏金属板側から視た底面図である。
【0045】
この例では、金属板2aおよび2bは、同一形状の金属板を配置している。この金属板2aおよび2bは、その長さがL21aとL21bの矩形状の金属板である。このような形状の金属板2aおよび2bが、他方の金属板との距離がL21cで一様の間隔になるように並べて配置されている。
【0046】
このとき、金属板の長辺の長さの合計をΣMnとしたとき、L11に対するΣMnの比は、0.50≦ΣMn/L11≦0.95を満足することが好ましい。ΣMnは、セラミックス基板1の長辺の沿面に最も近い金属板の長さの合計であり、
図5Aでは、L21a+L21aである。nは、対象となる金属板の個数によって決まる。
図5Aでは、金属板2aと金属板2bがセラミックス基板1の長辺の沿面に最も近い。よって、ΣMnはL21a+L21aとの和である。一つの金属板の長さをMで示したとき、M/L11≦0.5であることが好ましい。
図5では金属板2aと金属板2bを図示しているが、金属板の個数は3個以上であってもよい。
【0047】
金属板の短辺側の長さの合計をΣMmとしたとき、L21bに対するΣMmの比は、0.50≦ΣMm/L21b≦0.95を満足することが好ましい。ΣMmは、セラミックス基板2の短辺の沿面に最も近い金属板の長さの合計値である。nは、対象となる金属板の個数によって決まる。
図5では、金属板2a(または2b)がセラミックス基板1の短辺の沿面に最も近い。金属板2aと金属板2bが共に同じ長さL21bを有しているため、ΣMmはL21bである。また、
図5では短辺の沿面に近い金属板が一つの場合を例示しているが、金属板が2個以上ある場合、一つの金属板の長さをMで示したとき、M/L12≧0.5であることが好ましい。
【0048】
セラミックス基板1の長さL11、L12に対し、ΣMn値、ΣMm値、M値を制御することにより、うねり曲線の形状を制御することができる。これにより、うねり曲線の形状を望ましい形状にすることができる。
【0049】
図5Aおよび
図5Bに示した場合を例にすると、セラミックス基板1は、その短辺のそれぞれの沿面に設けられた2個の金属板(2a、2b)を有し、これら金属板は独立して設けられている。そのため、長辺の沿面においては、金属板2aと金属板2bの間に隙間ができる。この隙間を設けることで、うねり曲線の極値を形成し易くなる。すなわち、短辺側については隙間が無く、直線状のうねり曲線を設けやすくなり、長辺側については、隙間があることで、円弧状のうねり曲線を設けやすくなる。
【0050】
また、セラミックス基板1の裏金属板3は、長辺側においても短辺側においても一続きの一枚の金属板とすることが好ましい。このとき、裏金属板3の長辺側の長さL31はセラミックス基板1の長辺の長さL11に対して、0.50≦L31/L11≦0.95を満足することが好ましく、裏金属板3の短辺側の長さL32はセラミックス基板1の短辺の長さL12に対して、0.50≦L32/L12≦0.95を満足することが好ましい。
【0051】
セラミックス回路基板10は、リード端子付きセラミックス回路基板に好適である。セラミックス回路基板10において、表金属板2と接続するように、リード端子と半導体素子を設け、裏金属板3と接続するように放熱部材を設け、半導体モジュールとすることができる。
【0052】
セラミックス回路基板10は、セラミックス回路基板10が有する表金属板2にリード端子を接合するようにして、リード端子付きセラミックス回路基板とすることができる。ここで、リード端子は、外部に導通させるための外部電極としての機能を有する。リード端子の形状の例は、リードフレーム型およびリードピン型を含む。リード端子の接合個数は特に限定されない。必要であれば、リード端子とワイヤボンディングとを併用してもよい。
【0053】
リード端子付きセラミックス回路基板は、表金属板2に厚さ0.2mm以上のリード端子を接合した構造に好適である。リード端子の厚さは0.2mm以上、さらには0.4mm以上であることが好ましい。リード端子の厚さの上限は特に限定されないが、3mm以下であることが好ましい。なお、リード端子の厚さは、リードフレーム型の場合はリードフレーム板の厚さ、リードピン型の場合はリードピンの幅により定義される。リード端子は、銅、アルミニウムまたはそれらの合金などの導電性の良い材料を含むことが好ましい。表金属板2とリード端子との接合方法の例は、はんだ接合、ろう材接合、超音波接合、および圧接接合を含む。リード端子を厚くすることにより通電容量を増加させ、インダクタンスを低減することができる。これにより、高性能化した半導体素子の良さを活かすことができる。
【0054】
このリード端子付きセラミックス回路基板に半導体素子を実装し、放熱部材を設けることで、半導体モジュールとすることができる。半導体素子は表金属板2に接合される。半導体素子の実装個数、実装箇所は表金属板2上であれば任意である。
【0055】
放熱部材は、裏金属板3を実装するための部材である。放熱部材は、裏金属板3の上に設けられる。放熱部材の例はヒートシンク、ベースプレート、および冷却フィンを含む。放熱部材は、板状、くし歯状、溝型やピン型など様々な形状であってもよい。放熱部材は、Cu、Al、AlSiCなど放熱性の良い材料を含む部材が適用される。
放熱部材と裏金属板3の間に、はんだ、グリースなど介在層が設けられてもよい。
【0056】
必要に応じ、樹脂封止を行ってもよい。樹脂封止工程はトランスファーモールド法などの方法が適用できる。実施形態にかかる半導体モジュールは厚いリード端子を接合しているため、樹脂封止工程にてリード端子が断線することが無い。一方、ワイヤボンディングでは線が細いため、トランスファーモールド法のように型圧力の高い方法では断線が生じ易い。言い換えると、厚いリード端子を用いることにより、樹脂封止し易いモジュール構造とすることができる。
【0057】
[セラミックス回路基板の製造方法]
次に、上記セラミックス回路基板の製造方法について説明する。セラミックス回路基板は上記構成を具備すれば、その製造方法は特に限定されないが歩留り良く得るための方法として次の方法が挙げられる。
【0058】
本実施の形態のセラミックス回路基板10の製造方法は、セラミックス基板1の表面および裏面に金属板をチタン等の活性金属を含むろう材を介して接触させ、該ろう材の溶融する温度まで上昇させ、その後は、クラックが発生しないように、例えば、5℃/分以下の降温速度で室温まで戻して接合する。
【0059】
活性金属ろう材ペーストの塗布厚さは10μm以上40μm以下であることが好ましい。接合工程は、600℃以上950℃以下の温度で行うことが好ましい。活性金属がTi、Zr、Hf、およびNbから選ばれる少なくとも一つの元素を含む場合は800℃以上950℃以下の温度で行うことが好ましい。活性金属がAlを含む場合は600℃以上800℃以下の温度で行うことが好ましい。加熱雰囲気は非酸化性雰囲気であることが好ましい。
【0060】
このとき、例えば、セラミックス基板1の表面および裏面に、その大部分を覆うように金属板を接合し、表面においては、接合した金属板をエッチングしてパターン形成するようにすればよい。例えば、
図1および
図2に示したように、一枚の金属板の中央付近をエッチングして、2つの表金属板2が接合された状態とし、裏金属板3として、1つの金属板が接合された状態となるようにする。これにより、表面および裏面の金属板の配置を異なるようにすることで、反りを所望の方向へと設けることができる。
図1では、表金属板2は、2つの独立した金属板が設けられ、それらの間にはエッチングによる隙間が存在する。なお、この表金属板2は、そもそも独立した2枚の金属板をセラミックス基板1の表面にそれぞれ接合してもよい。一方、裏金属板3は、1つの金属板が裏面に設けられている。
【0061】
そのため、金属板の面積は、裏面の方が多く、熱収縮する際に、裏面の収縮度合いが大きくなるが、ここでは、例えば、長辺方向の中央付近に表金属板2間に隙間が設けられているため、セラミックス基板1は裏面側(裏金属板3側)に引っ張られ、表面側(表金属板2側)が凸状となる。また、短辺方向においては、表金属板2も裏金属板3も同程度の長さで一続きに形成されているため、収縮度合いはあまり変わらず、短辺に沿っては平坦性を維持しやすい。
【0062】
このような関係性とすることで、所望の方向に反らせたセラミックス回路基板10を得ることができる。さらに、表金属板2はエッチングして回路パターンを形成することもできる。
【0063】
また、他の製造方法としては、例えば、表面と裏面の各金属板を接合するろう材層4の厚さを変えるようにして、所望の方向に反らせ、第1のうねり曲線を直線状に、第2のうねり曲線を円弧状にすることもできる。例えば、用いるろう材の厚さを変えることでその表面および裏面の熱収縮率の違いを利用して所望の方向に反らせるようにできる。
【0064】
具体的には、表面のろう材の厚さを厚く、裏面のろう材の厚さをそれよりも薄くすることで、ろう材の厚い面側の収縮度合いが高くなることを利用して、反らせることができる。このとき、セラミックス基板1の長辺と短辺の長さとろう材の厚さのバランスを利用して所望の形状にすることもできる。この場合、例えば、セラミックス基板1に表金属板2を接合するろう材層4を10~30μm、裏金属板3を接合するろう材層4を10~30μmとし、その厚さの差を5~20μmとする場合が例示できる。
【0065】
なお、上記ではセラミックス基板と金属板の接合方法は、ろう材層を介した接合方法について説明したが、ろう材層を介さずに直接接合する接合方法であってもよい。この場合、金属板が銅板のとき、銅と酸素の共晶を利用した直接接合法を用いることができる。セラミックス基板が窒化物のとき、表面に酸化膜を形成して行う。金属板がAl板のときは、AlSi合金板を用いて直接接合する。
【0066】
以上説明したように、上記工程を行うことにより、セラミックス基板のうねり曲線を制御することができ、例えばセラミックス基板の長辺または短辺のうねり曲線を直線状、もう一方を略円弧状にすることができる。
【0067】
そのように得られたセラミックス回路基板10を用い、公知の方法により、リード端子を接合してリード端子付きセラミックス回路基板とし、これに、半導体素子を実装して、半導体モジュールとできる。このとき、リード端子付きセラミックス回路基板を放熱部材に実装することもできる。
【実施例0068】
(実施例1)
窒化珪素基板として熱伝導率90W/m・K、3点曲げ強度700MPaの窒化珪素基板を用意した。用意した窒化珪素基板は、長辺の長さが47.3mm、短辺の長さが23.6mm、厚さが0.32mmである。表金属板、裏金属板として銅板を用意した。用意した表金属板は、無酸素銅であり、総面積が405mm2、厚さが1.2mmである。用意した裏金属板は、無酸素銅であり、総面積が880mm2、厚さが1.2mmである。窒化珪素基板と銅板とを活性金属ろう材を用いて接合した。活性金属ろう材は、70質量%のAg、3質量%のInおよび27質量%のCuからなる合金粉末(合計100質量部)に対して、0.3質量部のTiH2を添加し、さらに有機溶剤とバインダ成分を添加したペーストであった。活性金属ろう材ペーストを乾燥した後、窒化珪素基板の両面に銅板を配置し、真空中で加圧しながら800℃で加熱し、窒化珪素基板に銅板を接合した。このとき、同一条件で、5つ(サンプル1~5)のセラミックス回路基板を製造した。
【0069】
次に実施例にかかるセラミックス回路基板(サンプル1~5)の短辺のうねり曲線(第1のうねり曲線)および長辺のうねり曲線(第2のうねり曲線)を測定した。うねり曲線の測定は、セラミックス基板の端部から1mm内側の部分をレーザスキャンして測定した。測定結果をJIS-B0601に準じてうねり曲線にした。このとき得られた第1のうねり曲線および第2のうねり曲線において、それぞれうねり曲線の最大値と最小値の差Z(Z1およびZ2)も併せて測定した。それらの結果を表1および
図6~10に示した。
【0070】
【0071】
上記の結果から、本実施の形態によって、所望のうねり曲線を有するセラミックス回路基板が得られたことがわかった。このように所望の反り傾向を有するセラミックス回路基板とすることで、半導体装置の製造にあたって、その取り扱いを容易にでき、製造歩留まりを向上することもできることがわかった。
【0072】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。